特許無効審判
2024-800150
エアロゾル発生物品
- 審判番号
- 2024-800150
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2024-026702外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7573773
- 請求日
- 2024年11月21日
- 審決日
- 2025年12月17日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】Future Technology 株式会社
- 【被請求人】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
- 【被請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【被請求人代理人】須田 洋之
- 【被請求人代理人】山崎 一夫
- 【被請求人代理人】大塚 文昭
- 【被請求人代理人】近藤 直樹
- 【被請求人代理人】那須 威夫
- 【被請求人代理人】鈴木 信彦
- 【被請求人代理人】岩上 健
- 分類
- P1123.121-Y (A24D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第44条第1項、特許法第29条第2項、特許法第169条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第7573773号発明「エアロゾル発生物品」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第7573773号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
本件審判請求は成り立たない。
審判費用は請求人の負担とする。
との審決を求める。
第2 手続の経緯
1 出願分割の経緯の概略
本件無効審判の請求に係る本件特許に係る出願は、令和6年2月26日にされた特許法第44条第1項の規定による特許出願であって、2017年(平成29年)3月8日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2016年3月9日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特願2018-547476号の一部を令和3年9月21日に新たな特許出願とした特願2021-153173号の一部を、さらに令和5年5月10日に新たな特許出願とした特願2023-78000号の一部を、さらに令和5年10月25日に新たな特許出願とした特願2023-183101号の一部を、さらに令和6年2月26日に新たな特許出願としたものである。
2 本件特許の出願から設定登録までの経緯
本件特許の請求項1~18に係る発明についての、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和6年 2月26日 出願(特願2024-26702号)
同年 3月27日 手続補正書の提出
同年 9月30日付け 特許査定
同年10月17日 設定登録
3 本無効審判事件の手続の経緯
本無効審判事件の手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和6年11月21日 審判請求書の提出
令和7年 3月 6日 手続補正書(方式)の提出
同年 6月19日 審判事件答弁書の提出
同年 8月 4日付け 審理事項通知
同年 8月29日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
同年 9月19日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同年10月22日 口頭審理
第3 本件発明
本件特許の請求項1~18に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
口側の端および口側の端から上流にある遠位端を有するロッドの形態に組み立てられた複数の要素を備えるエアロゾル発生物品であって、前記複数の要素が、エアロゾル形成基体内に長軸方向に配置された細長いサセプタを備えたエアロゾル形成基体を備え、プラグ要素が、前記エアロゾル形成基体から前記細長いサセプタが外れるのを防ぐように前記ロッド内で前記エアロゾル形成基体及び前記細長いサセプタの上流に位置しかつそれらに隣接し、前記プラグ要素が、空気に対して非透過性の材料で形成されており、前記プラグ要素が、空気が前記プラグ要素を通過するために長軸方向に配置された開口部を備える、エアロゾル発生物品。」
第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
審判請求書、口頭審理陳述要領書によれば、請求人が主張する無効理由は、以下のとおりである。
本件特許の本件発明は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証及び甲第3号証の記載事項に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
2 証拠方法
・甲第1号証 :国際公開第2015/176898号
・甲第2号証 :特許第3012253号公報
・甲第3号証 :特表2015-531601号公報
(以下、それぞれ「甲1」、「甲2」及び「甲3」という。)
3 参考資料
・甲第1号証訳文:特表2017-519493号公報
(以下「甲1訳文」という。)
第5 当審の判断
1 甲1記載事項
甲1には、次の記載事項、図示事項がある。当審訳については、甲1訳文の記載及び段落を参照している。なお、下線は当審において付した。以下同様。
(1)「The present specification relates to an aerosol-generating article comprising an aerosol- forming substrate for generating an inhalable aerosol when heated. The aerosol-generating article comprises an elongate susceptor in thermal contact with the aerosol-forming substrate, such that heating of the aerosol-forming substrate may be effected by induction-heating. The specification also relates to a system comprising such an aerosol-generating article and an aerosol-generating device having an inductor for heating the aerosol-generating device.」(第1ページ第3~8行)(行数については、甲1のページ左側方に付された数字による。以下同様。)
(当審訳:「【0001】
本明細書は、加熱時に吸入可能なエアロゾルを発生させるためのエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品に関連する。エアロゾル発生物品は、エアロゾル形成基体の加熱が誘導加熱によって達成されうるように、エアロゾル形成基体と熱的に接触する細長いサセプタを備える。本明細書はまた、エアロゾル発生装置を加熱するためのインダクタを持つようなエアロゾル発生物品およびエアロゾル発生装置を備えたシステムに関連する。」)
(2)「An aerosol-generating article is provided comprising a plurality of elements assembled in the form of a rod, the rod having a mouth end and a distal end upstream from the mouth end. The plurality of elements include an aerosol-forming substrate located at, or towards, the distal end of the rod. An elongate susceptor is arranged substantially longitudinally within the rod and is in thermal contact with the aerosol-forming substrate. The susceptor may have a thickness of between 10 and 500 micrometres. In preferred embodiments the susceptor may have a thickness of between 10 and 100 micrometres. The susceptor may be configured for dissipating energy of between 1 Watt and 8 Watt when used in conjunction with a particular inductor, for example between 1.5 Watt and 6 Watt. By configured, it is meant that the elongate susceptor may be made of a specific material and may have specific dimensions that allow energy dissipation of between 1 Watt and 8 Watt when used in conjunction with a particular conductor that generates a fluctuating magnetic field of known frequency and known field strength.」(第2ページ第31行-第3ページ第5行)
(当審訳:「【0009】
ロッドの形態に組み立てられた複数の要素を備えたエアロゾル発生物品が提供されており、ロッドは、口側の端および口側の端から上流にある遠位端を持つ。複数の要素は、ロッドの遠位端に、またはそれに向かって位置するエアロゾル形成基体を含む。細長いサセプタは、ロッド内で実質的に長軸方向に配置され、かつエアロゾル形成基体と熱的接触状態にある。サセプタは、10~500マイクロメートルの厚さを持ちうる。望ましい実施形態で、サセプタは、10~100マイクロメートルの厚さを持ちうる。サセプタは、特定のインダクタと併用した時に、分散エネルギーが1ワット~8ワット、例えば1.5ワット~6ワットとなるように構成されうる。構成という用語は、細長いサセプタが特定の材料で構成されることができ、また周知の周波数および周知の磁界強度の変動磁場を発生する特定の導体と併用した時、1ワット~8ワットのエネルギー分散が許容される特定の寸法を持ちうることを意味する。」)
(3)「The susceptor has a length dimension that is greater than its width dimension or its thickness dimension, for example greater than twice its width dimension or its thickness dimension. Thus the susceptor may be described as an elongate susceptor. The susceptor is arranged substantially longitudinally within the rod. This means that the length dimension of the elongate susceptor is arranged to be approximately parallel to the longitudinal direction of the rod, for example within plus or minus 10 degrees of parallel to the longitudinal direction of the rod. In preferred embodiments, the elongate susceptor element may be positioned in a radially central position within the rod, and extends along the longitudinal axis of the rod.」(第4ページ第35行-第5ページ第5行)
(当審訳:「【0021】
サセプタは、その幅寸法またはその厚さ寸法よりも大きい、例えばその幅寸法またはその厚さ寸法の2倍より大きい長さ寸法を持つ。こうして、サセプタは細長いサセプタとして描写されうる。サセプタはロッド内に実質的に長軸方向に配列される。これは、細長いサセプタの長さ寸法が、ロッドの長軸方向とほぼ平行に、例えばロッドの長軸方向に平行から±10度以内に並ぶことを意味する。望ましい実施形態で、細長いサセプタ素子はロッド内の半径方向に中心の位置に位置してもよく、ロッドの長軸方向に沿って延びる。」)
(4)「Figure 1 illustrates an aerosol-generating article 10 according to a preferred embodiment. The aerosol-generating article 10 comprises four elements arranged in coaxial alignment: an aerosol-forming substrate 20, a support element 30, an aerosol-cooling element 40, and a mouthpiece 50. Each of these four elements is a substantially cylindrical element, each having substantially the same diameter. These four elements are arranged sequentially and are circumscribed by an outer wrapper 60 to form a cylindrical rod. A blade-shaped susceptor 25 is located within the aerosol-forming substrate, in contact with the aerosol-forming substrate. The susceptor 25 has a length that is approximately the same as the length of the aerosol-forming substrate, and is located along a radially central axis of the aerosol-forming substrate.」(第13ページ第1~10行)
(当審訳:「【0096】
図1は好ましい実施形態によるエアロゾル発生物品10を図示したものである。エアロゾル発生物品10は、エアロゾル形成基体20、支持要素30、エアロゾル冷却要素40およびマウスピース50という、同軸に整列して配置される4つの要素を含む。これら4つの要素のそれぞれは実質的に円筒形の要素であり、それぞれが実質的に同一の直径を持つ。これらの4つの要素は連続して配列され、外側ラッパー60によって取り囲まれ、円柱状のロッドを形成する。ブレード型のサセプタ25はエアロゾル形成基体内に位置し、エアロゾル形成基体と接触している。サセプタ25はエアロゾル形成基体の長さとほぼ等しい長さを持ち、エアロゾル形成基体の半径方向の中心軸に沿って位置する。」)
(5)「図1
[図:0001432837000001.jpg]
」
2 上記1から認められる事項
(1)記載事項(2)、(4)及び図示事項(5)から、エアロゾル発生物品10は、口側の端及び口側の端から上流にある遠位端を持つロッドの形態に組み立てられた、エアロゾル形成基体20、支持要素30、エアロゾル冷却要素40及びマウスピース50の4つの要素を備えたものといえる。
(2)記載事項(4)及び図示事項(5)から、ブレード型のサセプタ25はエアロゾル形成基体20内に位置し、エアロゾル形成基体20の半径方向の中心軸に沿って位置するといえる。
3 甲1発明
上記1及び2を踏まえると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
〔甲1発明〕
「口側の端及び口側の端から上流にある遠位端を持つロッドの形態に組み立てられた、エアロゾル形成基体20、支持要素30、エアロゾル冷却要素40及びマウスピース50の4つの要素を備えたエアロゾル発生物品10であって、ブレード型のサセプタ25はエアロゾル形成基体20内に位置し、エアロゾル形成基体20の半径方向の中心軸に沿って位置する、エアロゾル発生物品10。」
4 甲2記載事項
甲2には、次の記載事項、図示事項がある。
(1)「本発明は目に見える副流煙を実質的に発生しない喫煙物品に関する。特に本発明は、たばこの喫煙に伴う感覚をたばこの燃焼なしに達成する喫煙物品に関する。」(第4欄第17~19行)
(2)「本発明による喫煙物品の第一の好ましい例を第1図ないし第8図に示す。喫煙物品10は、包装紙14によって包まれる活性素子11並びに膨張冷却室12と吸口紙205によってとりつけられるマウスピース素子13とからなる。包装紙14は、酸化マグネシウム又は他の好適な耐火性紙の如き熱劣化を最小にするため処理されたシガレット紙であるのが好ましい。後に詳述する如く、活性素子11は炭素熱源20及び香味ベッド21を含み、香味ベッド21は炭素熱源を通って流れる加熱空気によって接触されたとき香味気体を放出する。この気体は膨張冷却室12を通りエアロゾルを形成し、マウスピース素子13を通って喫煙者の口に入る。」(第6欄第8~19行)
(3)「喫煙物品10の構造を詳細に説明すると、活性素子11はスリーブ22と、好ましくはスリーブ22内に設けられる内側スリーブ23とを含む複合スリーブ中に包囲されている。なお、「内側」と特記せぬ限り、単に「スリーブ」と言えば複合スリーブを称するものとする。内側スリーブ23は折り曲げられてリップ24を作る。リップ24は炭素熱源20をスリーブ22の内壁から離れて吊して保持し、環状空隙25を残す。香味ベッド21は一端で炭素熱源20並びにリップ24により、他端でクリップ付スクリーン26(これはエアロゾルを膨張冷却室12へ通過させる一方香味ベッド21のペレットを保持している)により内側スリーブ23内に保持される。膨張冷却室12は喫煙物品10に普通のシガレットの長さを与える、従ってシガレットの外観を与える。内側スリーブ23の吸口端側の部分120は、スリーブ22の吸口側の端を越えて延び、膨張冷却室12に入っている。包装紙14は活性素子11と膨張冷却室12とを連結保持する。好ましくは包装紙14は、炭素熱源20の燃焼を支持するための空気が通ることができるように充分な多孔性を有する。或いは包装紙14は環状空隙25に重なる帯域で、例えばレーザー穿孔により、孔を開けてもよい。」(第7欄第13~32行)
(4)「マウスピース素子13は中空体であってもよく、又フイルターセグメント29を含んでいてもよい。この実施例ではマウスピース素子13はフイルターセグメント29と充填セグメント200を含むのが好ましい。フイルターセグメント29はプラグ包装材料202で包まれたセルロースアセテートフイルタープラグ201である。充填セグメント200は充填物包装材料203で包まれたたばこ充填物のロッドである。この充填セグメント200は更にエアロゾルを冷却し、若干のろ過を与えることに加えて、追加のたばこの味覚を与えることができる。」(第7欄第44行~第8欄第3行)
(5)「喫煙物品10からの輻射熱損失を最小にするため、スリーブの全内面は輻射熱反射性にする。例えばスリーブ22は金属蒸着紙から作る。更に好ましくは第7図及び第8図に示される如く、スリーブ22は紙層70と内側箔層71から作る。箔層71は炭素熱源20によって放射された熱を炭素熱源20に向って反射返戻し、炭素熱源を熱く維持する。」(第9欄第12~18行)
(6)「最後に、活性素子11には末端キャップ15が設けられる。このキャップ15はスリーブ22にとめられ、とめられた部分は包装紙14で被われる。末端キャップ15は、空気を活性素子11中に導入しうる一つ以上の開口16を有する。開口16は末端キャップ15の周辺に置くのが好ましい。好ましい例においては、それぞれ直径0.080in.を有する6個の開口が等角度に間隔をおいて設けられている。末端キャップ15は活性素子11中への輻射熱の反射返戻を増大し、又喫煙物品10から炭素熱源が落ちないように炭素熱源20を保持する。これは炭素熱源20が各吹きの間に高温でくすぶっており、そして各吹きで更に熱くなることを考えたとき重大である。また末端キャップ15は炭素熱源20の燃焼により生じる灰分を保持する。」(第10欄第16~28行)
(7)「本発明による喫煙物品の第二の例を第10図ないし第13図に示す。第10図ないし第13図に示していない部分は、第一の例に対応する部分と同じである。・・・
スペーサー101を含ませることは、更に他の利点を提供する。例えば香味ベッド21からたばこペレットの破砕片が通路206を通って落下するのを防ぎ、そして喫煙物品100の前端で炭素熱源20と末端キャップ15の間を閉塞することを防ぎ、或いは末端キャップ15が設けてないとき喫煙物品100全体の落下を防ぐ。」(第10欄第40行~第11欄第15行)
(8)「【第2図】
[図:0001432837000002.jpg]
」
(9)「【第10図】
[図:0001432837000003.jpg]
」
5 上記4から認められる事項
(1)記載事項(3)、(6)及び図示事項(8)、(9)から、喫煙物品10は、活性素子11に設けられた末端キャップ15及び炭素熱源20とを含み、末端キャップ15は、活性素子11中への輻射熱の反射を行うと共に、喫煙物品10から炭素熱源20や炭素熱源20の燃焼により生じる灰分が落ちないように保持する機能を奏するものといえる。
(2)図示事項(8)、(9)から、末端キャップ15と炭素熱源20との間に、環状空隙25と連通する、空隙が存在することが看取できる。
さらに、記載事項(3)、(5)から、スリーブ22の内壁は、炭素熱源20との間に環状空隙25を残して、輻射熱の反射を行うものであるところ、末端キャップ15も、輻射熱の反射を行うものであるから、炭素熱源20との間に空隙が存在すると理解できる。
6 甲2記載技術事項
上記4及び5を踏まえると、甲2には、次の技術事項(以下「甲2記載技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
〔甲2記載技術事項〕
「活性素子11に設けられた末端キャップ15及び炭素熱源20とを含む喫煙物品10であって、前記末端キャップ15と前記炭素熱源20との間には空隙が存在し、前記末端キャップ15が、前記活性素子11中への輻射熱の反射を行うと共に、喫煙物品10から炭素熱源20、炭素熱源20の燃焼により生じる灰分の落下を防ぐものであること。」
7 甲3記載事項
甲3には、次の記載事項、図示事項がある。
(1)「【0024】
吸引のために喫煙材2の揮発成分を供するための装置1は、喫煙材加熱チェンバー3と、この加熱チェンバー3と流体連通しているマウスピース4とを含む。マウスピース4は、包装されたプラグの形体で供されるセルロースアセテートトウなどのフィルター材を含んでもよい。装置1のユーザーは、喫煙材2が加熱チェンバー3の内側で喫煙材成分を揮発させるのに充分な温度に熱せられると、マウスピース4から揮発した成分を吸引することができる。
【0025】
以下により詳しく説明するように喫煙材2は、喫煙材2に隣接して位置する加熱材5からの熱移動によって加熱される。加熱材5自体は、電磁誘導加熱工程中に抵抗加熱される。
【0026】
より具体的には加熱材5は、加熱材5が変動磁場に置かれたとき、誘導された過電流が加熱材5を抵抗加熱する限定された電気抵抗の導電性材を含む。好適な加熱材5の一例は、鉄であるが、これとは別に他の導電性金属または合金などの他の導電性材を使用することも可能である。加熱材5は、喫煙材2を燃焼させずに電磁誘導の効果によって加熱チェンバー3内でニコチンおよび芳香族化合物などの喫煙材2の成分を揮発させるのに充分な温度に加熱される。
【0027】
加熱材5は、加熱チェンバー3の内側またはこれに極めて近接して位置してもよい。上述したように一例としては、加熱材5は喫煙材2に直接隣接してまたは喫煙材2に直接隣接して位置する加熱部材6内に配置される。加熱材5の位置は、加熱チェンバー3の内側で加熱された加熱材5と喫煙材2の間で効果的な熱移動が生じるような位置であり、これにより喫煙材2はマウスピース4を介した吸引のために喫煙材2の成分を揮発させるのに充分な温度に加熱される。
【0028】
簡単に上記で触れたように加熱材5は、加熱チェンバー3内の喫煙材2に加熱材からの熱エネルギーを移行させるように構成された加熱部材6内に含まれてもよい。加熱材5に加えて加熱部材6は基材7を含んでもよく、この基材は熱保持性であり、比較的長い時間に亘って加熱材5から受けた熱エネルギーを放出するように作用し、これによりその長い時間の間喫煙材2を揮発温度に維持する。例としては以下に説明するように約3~10分間である。基材7は、加熱材5とは異なり、それ自体は変動磁場に置かれたときに渦電流の影響を受けにくい電気絶縁体であってもよい。
【0029】
基材7は加熱材5と熱接触し、加熱材5が電磁誘導によって加熱されると、加熱材5からの熱エネルギーが基材7に伝わり、基材7が加熱材5の温度にまで温まる。その後基材7に蓄えられた熱は、長時間に亘って加熱チェンバー3内に放散し、その中の喫煙材2を連続的に加熱し、喫煙材2の成分がマウスピース4を介した吸引のために連続的に揮発する。
【0030】
好適な基材7の一例としては、加熱材5より比熱容量の高い材料が挙げられる。一例として、比熱容量は約1000~3500J/kg.Kの範囲内であるが、他の値も好適な場合がある。基材7はポリマーであるが、これとは別に他の基材7も使用することも可能である。好適な基材7の例としてはHDPEまたはポリカーボネートが挙げられる。上記で簡単に説明したように基材7は、加熱材5から受け取った熱エネルギーを蓄え、上記したような長い時間に亘って加熱材5からの熱エネルギーを徐々に放散するように構成され、所望の揮発温度範囲内に喫煙材2を加熱し、その時間が経過するまで所望の揮発温度範囲内に喫煙材2の温度を維持する。タバコなどの喫煙材の成分が揮発する温度範囲の例としては、約50℃~150℃、約50℃~120℃、約50℃~100℃、約50℃~80℃または約60℃~70℃などの約50℃~約250℃の範囲が挙げられる。他の範囲であっても好適な場合がある。上述の長い時間は、従来の紙巻きタバコを喫煙するのに掛かる時間とほぼ同じ長さであってもよい。一例としては約4分~8分の間であり、約7分程度である。
【0031】
加熱材5と基材7(もし使用する場合)は、任意に各パフごとの前に加熱材5を再加熱するためにパフの間に変動磁場に置いてもよい。
【0032】
加熱部材6は装置1の長手方向軸に沿って延びてもよい。また加熱チェンバー3は、装置1の長手方向軸に沿って延びてもよく、かつ、加熱部材6に隣接して位置してもよい。例えば図1に示した加熱部材6は、装置1の中央長手方向軸に沿って実質的に延び、加熱チェンバー3はその長手方向面の周囲に位置する。加熱部材6が図1に示すように実質的に円筒状である場合、加熱チェンバー3が周囲で延びている長手方向に延びた面は加熱部材6の円周面である。この種の構成では加熱チェンバー3は、加熱部材6の周囲に同軸層を含んでもよい。これにより加熱部材6の周囲に環状の空間が設けられ、その中に以下に説明するように喫煙材2を加熱のために挿入することができる。
【0033】
別の構成として、加熱チェンバー3と加熱部材6の位置を逆にしてもよく、加熱チェンバー3が装置1の中央長手方向軸に沿って位置し、加熱部材6がその周囲に同軸層として環状に配置される。
【0034】
図1に例示するように加熱材5は加熱部材6中の基材7全体に配分された複数の個別の加熱材5の片を含んでもよい。基材7に加熱材5が実質的に均等に配分されることによって、加熱材5が加熱されると基材7を均一に加熱し、従って加熱チェンバー3内の喫煙材2も均一に加熱される。しかしながら、当然のことながら複数の個別の加熱材5の片の使用は、本発明の要件ではなく、これとは別の構成でも基材7および/または喫煙材2を均一に加熱することは同じように可能である。」
(2)「【0037】
ハウジング8は、加熱チェンバー3、マウスピース4、加熱材5および基材7などの装置1の部材を収容してもよい。図1および2ではハウジング8は、その第1端部に位置するマウスピース4およびハウジングの対向した第2端部からハウジング8の内部領域を介してハウジング8の長手方向軸に沿って延びた加熱部材6および加熱チェンバー3を有する長尺のものとして例示されている。ハウジング8は、例えば紙巻きタバコ、シガーまたはシガリロと類似の寸法を有するパイプなどの実質的に管状の形状である。ハウジング8は、吸引および通常の使用時に保持する際に装置1のユーザーにとって快適な好適なポリマー材などのプラスチックで形成してもよい。」
(3)「【図1】
[図:0001432837000004.jpg]
」
8 図示事項(3)に基づく参考図
上記7の図示事項(3)には、以下の参考図に示す断面が上下に逆T字状の部材が看取できる。
〔参考図〕
「
[図:0001432837000005.jpg]
」
9 上記7から認められる事項
(1)記載事項(2)及び図示事項(3)から、装置1は、第1端部に位置するマウスピース4および第1端部に位置するマウスピース4から上流にある第2端部(図面下端)を持つことが看取できる。
(2)記載事項(1)の段落【0024】、記載事項(2)及び図示事項(3)から、装置1は、喫煙材2や加熱部材6等の複数の要素を備えており、ロッドの形態に組み立てられていることが看取できる。
(3)記載事項(2)及び図示事項(3)から、喫煙材2は、管状のハウジング8の内部に含まれているから、ロッドの形態に組み立てられたものといえる。
(4)図示事項(3)から、喫煙材2は、装置1の第2端部に向かって位置することが看取できる。
(5)記載事項(1)及び上記8に示した参考図から、「加熱部材6」は、上下に逆T字状であり、「実質的に円筒状」であって、「装置1の長手方向軸に沿って延びてもよい」とされ、また「加熱材5は加熱部材6中の基材7全体に配分された複数の個別の加熱材5の片を含んでもよい。」とされているから、加熱部材6は、加熱部材6中の基材7全体に配分された複数の個別の加熱材5の片を含み、装置1の長手方向軸に沿って延びるように配置されていることものといえる。
(6)記載事項(1)から、加熱部材6は、装置1の長手方向軸に沿って延びるように配置されるものであり、加熱部材6は、喫煙材2に直接隣接して位置して喫煙材2に熱エネルギーを移行させるものといえる。
10 甲3記載技術事項
上記7及び9を踏まえると、甲3には、次の技術事項(以下「甲3記載技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
〔甲3記載技術事項〕
「第1端部に位置するマウスピース4および前記第1端部に位置するマウスピース4から上流にある第2端部を持つ、ロッドの形態に組み立てられた複数の要素を備えた装置1におて、前記複数の要素が、ロッドの形態に組み立てられた装置1の第2端部に向かって位置する喫煙材2を含み、上下に逆T字状かつ円筒状の加熱部材6が、加熱部材6中の基材7全体に配分された複数の個別の加熱材5の片を含み、装置1の長手方向軸に沿って延びるように配置され、かつ前記喫煙材2と直接隣接して位置して喫煙材2に熱エネルギーを移行させること。」
11 本件発明と甲1発明との対比
本件発明と、甲1発明とを対比すると、甲1発明の「口側の端及び口側の端から上流にある遠位端を持つロッド」及び「エアロゾル発生物品10」は、それぞれ、本件発明の「口側の端および口側の端から上流にある遠位端を有するロッド」及び「エアロゾル発生物品」に相当する。
また、甲1発明の「エアロゾル形成基体20、支持要素30、エアロゾル冷却要素40及びマウスピース50の4つの要素」は、本件発明の「複数の要素」に相当する。
そうすると、甲1発明の「口側の端及び口側の端から上流にある遠位端を持つロッドの形態に組み立てられた、エアロゾル形成基体20、支持要素30、エアロゾル冷却要素40及びマウスピース50の4つの要素を備えたエアロゾル発生物品10」は、本件発明の「口側の端および口側の端から上流にある遠位端を有するロッドの形態に組み立てられた複数の要素を備えるエアロゾル発生物品」に相当する。
また、甲1発明の「エアロゾル形成基体20」、「エアロゾル形成基体20内に位置し、エアロゾル形成基体20の半径方向の中心軸に沿って位置する」及び「ブレード型のサセプタ25」は、それぞれ、本件発明の「エアロゾル形成基体」、「エアロゾル形成基体内に長軸方向に配置された」及び「細長いサセプタ」に相当する。
そして、甲1発明の「ブレード型のサセプタ25はエアロゾル形成基体20内に位置し、エアロゾル形成基体20の半径方向の中心軸に沿って位置する」ことは、「エアロゾル形成基体20」が、「複数の要素」に含まれることを踏まえると、本件発明の「前記複数の要素が、エアロゾル形成基体内に長軸方向に配置された細長いサセプタを備えたエアロゾル形成基体を備え」ることに相当するといえる。
してみると、本件発明と、甲1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点〕
「口側の端および口側の端から上流にある遠位端を有するロッドの形態に組み立てられた複数の要素を備えるエアロゾル発生物品であって、前記複数の要素が、エアロゾル形成基体内に長軸方向に配置された細長いサセプタを備えたエアロゾル形成基体を備える、エアロゾル発生物品。」
〔相違点〕
本件発明では、「プラグ要素が、前記エアロゾル形成基体から前記細長いサセプタが外れるのを防ぐように前記ロッド内で前記エアロゾル形成基体及び前記細長いサセプタの上流に位置しかつそれらに隣接し、前記プラグ要素が、空気に対して非透過性の材料で形成されており、前記プラグ要素が、空気が前記プラグ要素を通過するために長軸方向に配置された開口部を備え」るのに対して、甲1発明では、このような構成を備えていない点。
12 判断
上記相違点について検討する。
(1)甲1発明に甲2記載技術事項を適用する動機付けについて
甲1発明の「サセプタ25」は、甲1の記載事項(3)によれば、「サセプタはロッド内に実質的に長軸方向に配列される。これは、細長いサセプタの長さ寸法が、ロッドの長軸方向とほぼ平行に、例えばロッドの長軸方向に平行から±10度以内に並ぶことを意味する。望ましい実施形態で、細長いサセプタ素子はロッド内の半径方向に中心の位置に位置してもよく、ロッドの長軸方向に沿って延びる。」ものである。
そして、上記記載から、甲1発明の「サセプタ25」の配置は、「ロッド内の半径方向に中心の位置」で、「ロッドの長軸方向に平行から±10度以内」に位置することが望ましいことが理解されるから、上記記載は、「ロッド内」の「サセプタ25」の角度や径方向の位置についての望ましい配置を記載又は示唆するものといえる。また、甲1の記載事項(2)、(4)にも、サセプタはロッド内で実質的に長軸方向に配置されるとの、望ましい配置が記載されているといえる。
しかしながら、「ロッド内」の「サセプタ25」の望ましい配置についての上記記載が、「サセプタ25」が「ロッド」から落下することや、「ロッド内」で位置ずれすることを意味するものではないから、上記記載が、「サセプタ25」がロッドから落下することや、ロッド内で位置ずれすることを防止することの動機付けとなるということはできない。
したがって、甲2記載技術事項において、末端キャップ15が、喫煙物品10から炭素熱源20、炭素熱源20の燃焼により生じる灰分の落下を防ぐものであるとしても、甲1発明に当該甲2記載技術事項を適用する動機付けは見当たらない。
(2)甲2記載技術事項を適用しても相違点に係る本件発明の構成が得られないことについて
また、仮に甲1発明に当該甲2記載技術事項を適用する動機付けがあるとしても、甲2記載技術事項は「前記末端キャップ15と前記炭素熱源20との間には空隙が存在し、前記末端キャップ15が、前記活性素子11中への輻射熱の反射を行うと共に、喫煙物品10から炭素熱源20、炭素熱源20の燃焼により生じる灰分の落下を防ぐものである」ところ、甲1発明に甲2記載技術事項を適用したものは、サセプタ25及びエアロゾル形成基体20と末端キャップとの間に空隙を有するものとなり、「前記エアロゾル形成基体から前記細長いサセプタが外れるのを防ぐように前記ロッド内で前記エアロゾル形成基体及び前記細長いサセプタの上流に位置しかつそれらに隣接」するものとならないため、甲1発明に甲2記載技術事項を適用しても、相違点に係る本件発明の構成には至らない。
(3)甲3記載技術事項を適用しても相違点に係る本件発明の構成が得られないことについて
また、甲3記載技術事項の「喫煙材2」は、本件発明の「エアロゾル形成基体」に相当し、甲3記載技術事項の「上下に逆T字状かつ円筒状の加熱部材6」は、図1において、その上下に延びる長さ方向の大部分が円筒状の箇所に該当し、幅寸法又はその厚さ寸法よりも大きい長さ寸法を持つ細長い形状であることが看取でき、甲3の記載事項(1)の段落【0026】を参酌すると、「円筒状の加熱部材6」は、鉄、導電性金属又は合金からなる加熱材5を含むものであって、加熱材5が変動磁場に置かれたとき、誘導された過電流が加熱材5を抵抗加熱するものであり、電磁エネルギーを熱に変換できる材料を含むものといえるから、本件発明の「細長いサセプタ」に相当する。
しかしながら、甲3には、「喫煙材2」及び「上下に逆T字状かつ円筒状の加熱部材6」の上流に位置しかつそれらに隣接するような部材についての記載又は示唆がないから、甲3記載技術事項は、「前記エアロゾル形成基体から前記細長いサセプタが外れるのを防ぐように前記ロッド内で前記エアロゾル形成基体及び前記細長いサセプタの上流に位置しかつそれらに隣接」するような「プラグ要素」を備えるものということはできない。
したがって、甲1発明に甲3記載技術事項を適用しても、「プラグ要素」の構成は得られないから、相違点に係る本件発明の構成には至らない。
(4)本件発明の作用効果について
さらに、本件発明は、上記相違点に係る構成を備えることで、物品の一貫性を向上させるという作用効果、すなわち、エアロゾル形成基体の中でサセプタの位置ずれを防ぐという顕著な作用効果を奏するものといえる。
そして、本件発明が奏する上記作用効果は、甲1発明並びに甲2記載技術事項及び甲3記載技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものであるということはできない。
13 請求人の主張
請求人は、口頭審理陳述要領書の「6.陳述の要領」の第3(2)(第3~4ページ)及び第3(5)(第4ページ)において、以下の主張をしている。
(1)「末端キャップ15は、喫煙物品の内容物が落ちないように配置されている点では「プラグ要素」に相当するものであり、「香味ベッド21」や「充填セグメント200」と「末端キャップ15」が隣接しているかどうかは当業者にとって設計変更等である。」
(2)「甲第3号証のFIG.1を見ると、位置的に明らかに加熱チェンバー3の蓋的な役割を有しているといえる。したがって、基材7が喫煙材2を加熱する構成の一部であったとしても、同時に喫煙材2を加熱チェンバー3から外れないように保持する機能も有するので、プラグ要素に相当する構成を開示しているといえる。」
しかしながら、上記12(2)で説示したとおり、仮に甲1発明に当該甲2記載技術事項を適用する動機付けがあるとしても、甲1発明に甲2記載技術事項を適用したものは、サセプタ25及びエアロゾル形成基体20と末端キャップとの間に空隙が存在して、輻射熱の反射を行う機能を奏するように構成されるものとなるから、末端キャップを、サセプタ25及びエアロゾル形成基体20に隣接させることが当業者にとって設計変更にすぎない、ということはできない。
よって、請求人の上記(1)の主張を採用することはできない。
また、上記12(3)で説示したとおり、甲3記載技術事項は、「プラグ要素」を備えるものではない。
よって、請求人の上記(2)の主張を採用することはできない。
14 小括
したがって、本件発明は、甲1発明並びに甲2記載技術事項及び甲3記載技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、無効理由には理由がないものであり、本件発明についての特許は、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-800150