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特許無効審判

2024-800162

煙改質剤が充填された基材を含む新規なフィルタセグメント

審判番号
2024-800162
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2012-539236外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
5841060
請求日
2024年11月28日
審決日
2026年03月25日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P1123.121-Y (A24D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第2号、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第5841060号発明「煙改質剤が充填された基材を含む新規なフィルタセグメント」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 特許第5841060号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。 2 答弁の趣旨 本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。 第2 手続の経緯 本件無効審判の請求に係る特許第5841060号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、2010年(平成22年)11月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年11月23日、(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であり、その後の手続の経緯は概略以下のとおりである。 平成27年10月 7日付け:特許査定 同年11月20日 :設定登録 令和 6年11月28日 :審判請求書の提出 令和 7年 2月19日 :手続補正書の提出 同年 3月27日 :手続補正書の提出 同年 7月15日 :審判事件答弁書の提出 同年10月22日付け:審理事項通知 同年11月21日 :口頭審理陳述要領書の提出(請求人) 令和 8年 1月 5日 :口頭審理陳述要領書の提出(被請求人) 同年 1月26日 :口頭審理 第3 本件発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「喫煙物品(10、20、30、40、50)のフィルタ(14)に使用するフィルタセグメント(16)であって、前記フィルタセグメント(16)が、少なくとも1つの煙改質剤が充填された非層状基材(20)を含み、前記非層状基材(20)が、前記フィルタセグメント(16)の本体内に配置され、少なくとも約3000コレスタ単位の通気性を有するフィルタプラグラップから形成される、フィルタセグメント(16)。」 第4 請求人の主張及び証拠方法 請求人は、審判請求書において以下の証拠方法を提出し、審判請求書及び口頭審理陳述要領書を踏まえると、概略、以下の無効理由を主張している。 1 証拠方法 甲第1号証:特許第2955556号公報(以下「甲1」という。) 2 請求人が主張する無効理由の概要 (1)甲1に記載された発明は、次の構成を備えているといえる。 a1.たばこに使用するフィルターであって、 b1.フィルターが、コルゲート加工シート6を収束させて煙改質剤を構成した非層状体であるコア部2aを有する、フィルタ部2を有し、 c1.フィルタ部2はフィルターの中心に配置され、 d1.1600~3000CUの通気度を有するチップペーパー4、 から形成されるフィルター。 (2)本件発明と甲1に記載された発明を対比すると、以下の点で相違する。 相違点1:本件発明の構成Bでは、「前記フィルタセグメントが、少なくとも1つの煙改質剤が充填された」とあるが、甲1に記載された発明の構成b1では「フィルターが、コルゲート加工シート6を収束させて煙改質剤を構成した」とあること。 相違点2:本件発明の構成Dには、「少なくとも約3000コレスタ単位の通気性を有するフィルタプラグラップ」とあるが、甲1発明には「1600~3000CUの通気度を有する」とされていること。 (3)相違点1については、本件発明の構成Bは、非層状基材に煙改質剤が充填されるという、物の発明において製造方法でその構成を特定しようとしているものであるが、結果として得られるものは、甲1に記載された発明の構成b1のように非層状基材が煙改質剤を構成するものと同様であるといえる。 (4)相違点2については、甲1に記載された発明における「CU」は、コレスタ単位の英文表記CORESTA UNITの略称であるので、CUとコレスタ単位は同義である。さらにその通気度の数値範囲を1600~3000から少なくとも約3000とするかは、当業者が適宜行う設計事項に過ぎない。 (5)以上のとおり、本件発明は、甲1に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 第5 被請求人の主張 被請求人は、審判事件答弁書及び口頭審理陳述要領書を踏まえると、概略、次の主張をしている。 1 甲1に記載された発明は、香味料などを使用することなく、煙の局在化・高濃度化といった工夫をすることにより、低タールたばこ用でも喫味感を向上させたたばこフィルターを提供することを解決課題としている、と理解することができる。 この点、本件発明の実施の形態において、収束したコルゲート加工シート(6)を使用するにあたっても、「フィルター1において、コア部2aはコルゲート加工シート6を単に収束したものである。」とされているように、煙改質剤はもちろんいかなる物質についても、収束したコルゲート加工シート6に充填その他の目的でこれを適用することについては、甲1に一切開示も示唆もされていない。 したがって、甲1に記載された発明の収束したコルゲート加工シート(6)に何らかの物質を「充填」することとし、さらに、充填する物質として「煙改質剤」を採用することにより、本件発明と同様の構成とすることに想到するのは、当業者といえども容易になし得るものではない。 2 甲1に記載された発明が、チップペーパー(4)の通気度が1600~3000CUであるのが望ましいとしているのは、甲1に記載された発明のフィルター部がコア部とシース部とを有する構造であることに鑑み、「喫煙者の口中に喫煙される総タール量を、フィルターの濾過の高効率化と、外部空気(ベンチレーション空気)の導入によって低減しても、煙の局在化とこの局在化された煙を高濃度化することによって、香味の濃さ、煙量感などの喫煙に対する満足感を向上させることができる」という効果を奏することができるようにしたもの、と理解することができる。 すると、甲1の開示内容に接した当業者が、甲1に記載されている通気度の範囲を超えて、本件発明が採用するような、少なくとも約3000コレスタ単位の通気性を有するフィルタプラグラップを使用してみよう、と考える合理的理由はない。 また、本件発明において、少なくとも約3000コレスタ単位の通気性を有するフィルタプラグラップを採用することにより得られる効果は、煙改質剤の使用と密接に関連するものであるから、煙改質剤の使用について一切教示するところのない甲1の開示内容から、本件発明により得られるこの効果を予測することはできない。 3 以上のとおりであるから、本件発明は、甲1の開示内容からでは、当業者といえども容易に想到し得るものではない。 第6 当審の判断 1 甲1について (1)甲1記載事項 甲1には、次の記載事項、図示事項がある。なお、下線は、当審において付した。以下同様。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は喫煙用のたばこフィルターに関し、特にたばこ1本当たりのタール値が3mg以下となる低タールたばこ用のたばこフィルターにおいて、喫味感を向上させたたばこフィルターに関する。」 イ 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】このように種々の提案がなされているが、従来のタール3mg以下のような低タールたばこにおいて、喫煙者が感じるたばこ本来の香喫味や煙量感を十分に満足させることは困難であった。そもそも、低タールたばこにおいては、フィルターの濾過機能を高めることなどによって喫煙者が吸入するたばこの煙中のニコチン、タールなどの煙粒子成分の絶対量を少なくしたり、外部空気を取り入れることよって煙を薄めることなどによって低タール化を図るものであるから、喫煙の満足感が減少するのは避け難かった。本発明は前記事情に艦がみてなされたものであって、タール値3mg以下の低タールたばこでありながら、香喫味、煙量感などの喫煙に対する満足感が十分に得られるたばこフィルターを提供することを課題とするものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来注目されていたフィルター透過後のたばこの煙の濃度の他に、たばこの煙がフィルターを透過する流速が、喫味に多大な影響を与えることを見い出した。さらに、喫煙者の口中に喫煙される総タール量を、フィルターの濾過の高効率化と、外部空気(ベンチレーション空気)の導入によって低減しても、煙の局在化とこの局在化された煙を高濃度化することによって、香味の濃さ、煙量感などの喫煙に対する満足感を向上させることができることを見い出し、本発明を完成させるに至った。 【0008】本発明は、たばこ1本あたりのタール値が3mg以下の低タールたばこ用のたばこフィルターであって、中心に設けられたコア部とこの周囲に設けられたシース部とを有するフィルター部を備え、前記コア部は、透過する空気の流速が前記シース部よりも速く、前記フィルター部を17.5ml/secで吸引したときの前記コア部を透過する空気の流速が50cm/sec以上であり、かつ、前記フィルター部の断面積に対する前記コア部の断面積の割合が5~60%であることを特徴とするたばこフィルターである。前記フィルター部に対する前記コア部の重量比率は15~55%が好ましい。前記フィルター部の通気抵抗は100~170mmH2Oが好ましい。前記コア部の通気抵抗は450~800mmH2Oが好ましい。また、フィルターベンチレーション率が60~80%であると好ましい。また、前記フィルター部の周囲に巻き付けられた巻取紙と、この巻取紙の上に巻き付けられたチップペーパーを備え、前記巻取紙の通気度が10000~30000CUであり、前記チップペーパーの通気度が1600~3000CUであると好ましい。前記シース部は、繊維トウからなると好ましい。前記コア部が、コルゲート加工シートが収束されてなると好ましい。また、前記コア部と前記シース部の一方あるいは両方がセルロースアセテート繊維からなると好ましい。また、前記コア部が、その繊度が5~14dpfの繊維材料からなり、前記シース部が、その繊度が3dpf以下の繊維材料からなると好ましい。」 ウ 「【0009】 【発明の実施の形態】図1、図2は、本発明のたばこフィルター(以下フィルターと略記する)の一例を示すもので、図1は軸芯方向と直交方向に切断した断面図、図2は軸芯方向と平行に切断した側断面図である。このフィルター1は、円筒形のフィルター部2とこのフィルター部2の周囲に巻き付けられた通気性の巻取紙3とからなるフィルターチップと、この巻取紙3の上に巻き付けられたチップペーパー4とから概略構成されている。 【0010】前記フィルター部2は、その中心に設けられたコア部2aと、このコア部2aの周囲に設けられたシース部2bを有している。前記巻取紙3は、フィルター部2の形状を安定に保つもので、フィルター部2と巻取紙3とは軸芯方向の長さが等しくなっている。一方、図2に示すように、チップペーパー4はフィルター部2と巻取紙3よりも軸芯方向の長さが長くなっている。そして、チップペーパー4の一方の端部が、フィルター部2と巻取紙3とが一体化されたフィルタチップの端部と揃えられ、他方の端部がたばこ本体(たばこの巻部)5aの端部に取り付けられることにより、フィルター1がたばこ本体5aと一体化されて、たばこ5が構成されるようになっている。 【0011】チップペーパー4には、その外周にそって複数の開孔部(孔)4aが設けられている。そしてこの開孔部4aから、必要に応じて外部空気(ベンチレーション空気)がフィルター1内に取り込まれ、べンチレーション効果が得られるようになっている。フィルター部2の外径は通常7.8mmとされる。また、通常フィルター部2と巻取紙3の軸芯方向の長さは例えば25mm、チップペーパー4の軸芯方向の長さは32mmとされる。また、開孔部4aは、フィルター1の吸口端面から通常12.5mmの位置に一列に設けられている。 【0012】前記コア部2aは、好ましくは図3に示したような、熱可塑性材料からなるシート状物を波状に加工し、連続する複数の溝を形成してなるコルゲート加工シート6を、例えば丸めたり、畳んだりすることによって収束させたものである。コルゲート加工シート6の溝の深さdは、例えば0.2~2mmとされる。また、隣接する溝どうしの間隔(溝間ピッチ)pは0.5~3mmとされる。前記dが0.2mm未満であったり、あるいは、前記pが0.5mm未満である場合、波が細かすぎるので、シートをコルゲート加工することが困難となる。また、前記dが2mmをこえたり、あるいは、前記pが3mmをこえると、コルゲート加工シート6を収束してコア部2aを構成することが困難となる場合がある。また、コルゲート加工シート6のシート幅(溝と平行方向の対向辺の間の距離)は、90~240mmとされる。この範囲外であると、コア部2aを構成することが困難となる場合がある。 【0013】コルゲート加工シート6を収束させて構成したコア部2aには、コルゲート加工シート6が有する溝によって適度な隙間が形成され、これにより煙を良好に流通させる流路が形成される。そして、このコア部2aを煙が透過する際に、煙内に分布するタール、ニコチンなどの煙粒子成分とコルゲート加工シート6とが衝突することによって、これらの煙粒子成分が捕捉される濾過機能が得られる。フィルター1において、コア部2aはコルゲート加工シート6を単に収束したものである。例えば、その長軸直径Xは4~7mm、短軸直径Yは2~4mmとされる。他の例として、コア部2aを、好ましくは開繊した繊維トウから形成することもできる。前記トウとは、複数本のフィラメントを束ねて集合させたものである。例えばトウを開繊し、これを円筒状に収束してコア部2aを構成することもできる。 【0014】また、シース部2bは、好ましくは開繊した繊維トウなどの繊維材料などから形成されている。例えばシース部2bは、トウを開繊し、これを管状に収束して構成されたものである。このシース部2bにおいても煙粒子成分が捕捉される濾過機能が得られるようになっている。巻取紙3は、例えばその厚さが30~90μmで、好ましくは55~85μmである。また、チップペーパー4は、例えばその厚さ33~53μmである。」 エ 「【0017】コア部2aとシース部2bを形成するものとしては、繊維材料が好適であり、なかでもセルロースアセテート繊維が、喫味の点から好ましく用いられる。シース部2bを構成するフィルター材としては、セルロースアセテート製の繊維トウ(セルロースアセテートトウ)を用いると好ましい。さらに好ましくは、セルロースアセテート製の長繊維捲縮トウであり、このものを用いることにより、煙粒子成分の濾過効率が高く、また香喫味の良好なフィルター1,1A,1Bが得られる。コア部2aを構成するフィルター材としては、開繊したセルロースアセテートトウをコルゲート加工してなるコルゲート加工シートが好適である。あるいは、セルロースアセテート繊維製のウェブ(織布、不織布などのシート状物)をコルゲート加工してなるコルゲート加工シートも好適である。これらは単独で用いることもできるし、組み合わせて用いることもできる。」 オ 「【0027】本発明において、フィルター部2の通気抵抗は100~170mmH2Oが好適であり、コア部2aの通気抵抗は450~800mmH2Oが好ましい。さらに好ましくは、フィルター部2の通気抵抗が140~160mmH2Oであり、コア部2aの通気抵抗は500~600mmH2Oである。この範囲のフィルター1,1A,1Bは、煙をコア部2aに局在化させることができ、コア部2aを透過する煙の流速を高めやすい。」 カ 「【0030】また、チップペーパー4の開孔部4aからフィルター1,1A,1B内部に外部空気を取り入れるベンチレーション効果は、喫煙者の口中に到達する吸入量に対する、開孔部4aから入る外部空気量の割合(容量%)であるフィルターベンチレーション率(以下ベンチレーション率と記す)で表される。このベンチレーション率は、巻取紙3とチップペーパー4の通気度や開孔部4aの大きさや数などを変化させることによって調整できる。ベンチレーション率は、コレスタ法NO.6にしたがって測定して得られる値である。 【0031】本発明において、ベンチレーション率は、60~80%が望ましい。この際、巻取紙3の通気度が10000~30000CUであり、チップペーパー4の通気度が1600~3000CUであると望ましい。これらの通気度はコレスタ法NO.40にしたがって測定して得られる値である。前記範囲のベンチレーション率とすることにより、シース部2bに流入した煙は、シース部2bの外部から流入するベンチレーション空気の流入圧によってコア部2a中に押しやられる。この結果、コア部2aに煙をさらに集中させて、局在化することができる。 【0032】以下、フィルター1,1A,1Bの作用について説明する。フィルター部2は、上述のようにシース部2bの流速よりもコア部2aの流速が速くなるような構成となっている。このため、喫煙操作を行うと、煙の分布がコア部2aとシース部2bにおいて異なり、コア部2aとシース部2bのそれぞれから喫煙者の口中に到達する煙は、その到達速度や煙粒子成分の濃度などの特性が異なるものとなる。すなわち喫煙操作を行うと、たばこ本体5a側からフィルター部2に吸い込まれた煙の流れがコア部2aに局在化する。すると、コア部2aを透過する煙の流速は、シース部2bを透過する煙の流速、あるいはチップペーパー4と巻取紙3を介してシース部2bの側面から取り入れられるベンチレーション空気の流速よりもかなり速くなる。この結果、コア部2aを透過する煙は、コア部2a内で十分に濾過されないまま、高濃度の煙として喫煙者の口中に到達する。一方、シース部2bを透過する煙は、その速度が遅いため、シース部2bにおいて十分に濾過されるとともに、シース部2bの側面側から取り入れられるベンチレーション空気によって希釈される。そしてシース部2bからは低濃度の煙が、前記高濃度の煙の後に、喫煙者の口中に流出する。 【0033】このように、喫煙者は、コア部2aから先に流出する、タール、ニコチンなどの煙粒子成分を高濃度に含有する煙を味わうことができる。また、シース部2bから流出する煙は十分に低タール化される。したがってこれらのコア部2aから流出する煙とシース部2bから流出する煙との作用によって、香味の濃さ、煙量感などの喫煙に対する満足感を得ることができ、かつ全体としてはタール値3mg以下、好ましくは1mg以下の低タールたばこを構成できる。」 キ 「【0056】 【発明の効果】以上説明したように本発明のフィルターにおいては、コア部の流速とシース部の流速の差によって、煙の流れがコア部に局在化されるようになっている。このため、コア部を透過する煙は、コア部内で十分に濾過されないまま、高濃度の煙として喫煙者の口中に到達する。一方、シース部を透過する煙は、その速度が遅いため、シース部において十分に濾過されるとともに、シース部の側面側から取り入れられるベンチレーション空気によって希釈される。そしてシース部からは低濃度の煙が、前記高濃度の煙の後に、喫煙者の口中に流出する。このように、喫煙者は、コア部から先に流出する、タール、ニコチンなどの煙粒子成分を高濃度に含有する煙を味わうことができる。また、シース部から流出する煙は十分に低タール化される。この結果、香味の濃さ、煙量感などの喫煙に対する満足感を得ることができ、かつ全体としてタール値が3mg以下、好ましくは1mg以下の低タールたばこを構成することができる。また、本発明のフィルターにおいては、喫煙者の口中に到達する煙中のタールに対する一酸化炭素(CO)の重量比(CO/タール)を1以下、すなわちタールの重量に対してCOガスの重量を小さくできるというさらなる効果が得られる。」 ク 「【図1】 [図:0001435841000001.jpg] 【図2】 [図:0001435841000002.jpg] 【図3】 [図:0001435841000003.jpg] 」 (2)甲1発明 上記(1)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 [甲1発明] 「低タールたばこのフィルター1を構成するフィルター部2であって、前記フィルター部2が、セルロースアセテート繊維などの熱可塑性材料からなるシート状物を波状に加工し、連続する複数の溝を形成してなるコルゲート加工シート6を収束させて煙を良好に流通させる流路が形成されるように構成したコア部2aを有し、前記コア部2aの周囲にセルロースアセテート製の繊維トウなどのフィルター材を用いたシース部2bが設けられ、前記コア部2aの通気抵抗は450~800mmH2Oとされる、フィルター部2。」 (3)請求人の甲1発明の認定に対する主張について ア 請求人の主張 請求人は、口頭審理陳述要領書の「第1 合議体の認定について」において、以下の主張をする。 (ア)甲1に記載された発明のフィルターは、煙が透過する際に、煙内に分布するタール、ニコチンなどの煙粒子成分が捕捉される濾過機能を有することから、コア部2aは煙改質剤を構成していると考えます。そして、コア部2aは、コルゲート加工シート6を収束させて構成し、これが有する溝によって適度な隙間が形成され、これにより煙を良好に流通させる流路が形成されることから、コア部2aは非層状であると考えます。 したがって、甲1に記載された発明の構成b1は「フィルターが、コルゲート加工シート6を収束させて煙改質剤を構成した非層状体であるコア部2aを有する、フィルタ部2を有し、」と認定されるべきと考えます。 (イ)フィルター部は、その周囲に巻き付けられた巻取紙と、この巻取紙の上に巻き付けられたチップペーパー4を備えており、その通気度は1600~3000CUのであることから(甲1の段落0008参照)、甲1に記載された発明の構成d1は「1600~3000CUの通気度を有するチップペーパー4」と認定されるべきであると考えます。 イ 当審の判断 (ア)上記ア(ア)の主張について 甲1発明におけるフィルター部2が有するコア部2aは、煙が透過する際に、煙内に分布するタール、ニコチンなどの煙粒子成分が捕捉される濾過機能を有しており、当該濾過機能による煙改質が行われることは認められる。しかしながら、コア部2aは、「熱可塑性材料からなるシート状物を波状に加工し、連続する複数の溝を形成してなるコルゲート加工シート6を、例えば丸めたり、畳んだりすることによって収束させた」構成を備えるものであって、当該構成が、「各種の薬を調合すること、また、その薬」を意味する(参照:広辞苑第六版)「剤」である「煙改質剤」に含まれると解することはできない。 そして、甲1には、このような「剤」である「煙改質剤」により煙改質を行うことは記載も示唆もないから、コア部2aが煙改質剤を構成していると解することはできない。 (イ)上記ア(イ)の主張について 本件発明の「フィルタプラグラップ」は、その記載からみて「フィルタセグメントの本体内に配置」された「非層状基材」を構成するものと理解できる。 そして、改めて甲1をみると、甲1の段落【0031】には、ベンチレーション率が60~80%の際の1600~3000CUの通気度を有するチップペーパー4が記載されているが、甲1の段落【0009】の「フィルター部2の周囲に巻き付けられた通気性の巻取紙3」及び「この巻取紙3の上に巻き付けられたチップペーパー4」という記載事項を踏まえると、当該チップペーパー4は、フィルタセグメントに該当するフィルター部2の「本体部に配置」されるものとはいえず、フィルター部2に含まれるものということもできない。 さらに、段落【0010】の「フィルター部2は、その中心に設けられたコア部2aと、このコア部2aの周囲に設けられたシース部2b」からなる旨の記載事項を踏まえると、「フィルター部2は、コア部2aとシース部2bからなるもの」と合理的に解釈できる。 そうすると、甲1発明において、フィルター部2が「1600~3000CUの通気度を有するチップペーパー4」を備えていると解することはできないといわざるを得ない。 (ウ)まとめ したがって、請求人の上記(ア)及び(イ)の主張は採用することができない。 2 対比 本件発明と、甲1発明とを対比する。 (1)甲1発明の「低タールたばこ」は、本件発明の「喫煙物品」に相当し、同様に、「フィルター1」は「フィルタ」に、「フィルター部2」は「フィルタセグメント」にそれぞれ相当する。 そして、甲1発明の「低タールたばこのフィルター1を構成するフィルター部2」は、本件発明の「喫煙物品のフィルタに使用するフィルタセグメント」に相当する。 (2)甲1発明の「セルロースアセテート繊維などの熱可塑性材料からなるシート状物を波状に加工し、連続する複数の溝を形成してなるコルゲート加工シート6を収束させて煙を良好に流通させる流路が形成されるように構成したコア部2a」は、コルゲート加工シート6を収束させたものが層状とはならず、非層状のものであるから、本件発明の「少なくとも1つの煙改質剤が充填された非層状基材(20)」とは、「非層状基材」という限りにおいて一致する。 そして、甲1発明の「前記フィルター部2が、セルロースアセテート繊維などの熱可塑性材料からなるシート状物を波状に加工し、連続する複数の溝を形成してなるコルゲート加工シート6を収束させて煙を良好に流通させる流路が形成されるように構成したコア部2aを有」することと、本件発明の「前記フィルタセグメント(16)が、少なくとも1つの煙改質剤が充填された非層状基材(20)を含」むこととは、「前記フィルタセグメントが、非層状基材を含」むという限りにおいて一致する。 (3)甲1発明の「セルロースアセテート製の繊維トウなどのフィルター材を用いたシース部2b」は、本件発明の「前記フィルタセグメントの本体」に相当する。 そして、甲1発明の「前記コア部2aの周囲にセルロースアセテート製の繊維トウなどのフィルター材を用いたシース部2bが設けられ」たことは、本件発明の「前記非層状基材(20)が、前記フィルタセグメント(16)の本体内に配置され」たことに相当する。 してみると、本件発明と、甲1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。 [一致点] 「喫煙物品のフィルタに使用するフィルタセグメントであって、前記フィルタセグメントが、非層状基材を含み、前記非層状基材が、前記フィルタセグメントの本体内に配置される、フィルタセグメント。」 [相違点1] 「非層状基材」に関し、本件発明では、「少なくとも1つの煙改質剤が充填された」ものであるのに対して、甲1発明では、かかる構成を有しているか不明である点。 [相違点2] 「非層状基材」に関し、本件発明では、「少なくとも約3000コレスタ単位の通気性を有するフィルタプラグラップから形成される」のに対して、甲1発明では、「前記コア部2aの通気抵抗は450~800mmH2Oとされる」点。 3 判断 (1)相違点1について 上記1(3)イ(ア)で述べたとおり、「剤」は「各種の薬を調合すること、また、その薬」を意味するものである。そして、甲1には、喫煙時にフィルター部2を通過する主流煙に風味又は匂いを付与する等の煙改質を行うための、「各種の薬を調合すること、また、その薬」を意味する「剤」である「煙改質剤」をコア部2aに充填することは、何ら記載も示唆もない。 また、喫煙物品のフィルタに使用するフィルタセグメントにおいて、加工シートを収束させて煙を良好に流通させる流路が形成されるように構成した基材に、少なくとも1つの煙改質剤を充填することが本件特許の優先日前に技術常識であったいえる事情もない。 そうすると、甲1発明において、コア部2aを少なくとも1つの煙改質剤が充填されたものとし、相違点1に係る本件発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (2)相違点2について 甲1には、コルゲート加工シート6を収束させて煙を良好に流通させる流路が形成されるように構成したコア部2aに、そもそも煙改質剤を充填することは記載も示唆もないから、コア部2aに煙改質剤を充填することを前提に、コア部2aの通気度を特定することは、当業者であっても容易になし得るものではない。 そうすると、甲1発明におけるコア部2aについて、相違点2に係る本件発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (3)本件発明の効果について 本件発明は、相違点1及び2に係る発明特定事項を備えることにより、本件特許の明細書の段落【0013】に記載された「本発明のフィルタセグメント本体内の基材に大量の煙改質剤を充填することを可能にする。喫煙時、少なくとも約3000コレスタ単位の通気性を有するフィルタプラグラップの開放構造はまた、好都合には、フィルタプラグラップが吸収した液体の放出を促進する。」という効果、及び段落【0115】に記載された「本発明で使用に適したフィルタプラグラップから形成されたスレッドは、これら自体の重量の100パーセント以上を吸収できる。この高い吸収率は、好都合には、本発明のフィルタセグメント内のスレッド及び他の非層状基材を公知の充填剤中のコットン又は酢酸セルローススレッド又はヤーンと比較して増加量の香味料及び他の液体煙改質剤を充填し、従って、使用時に主流煙に対して香味強化を改質できるようにする。」という所期の効果を奏するものである。 (4)請求人の主張について ア 請求人の上記第4の2(3)の主張について検討すると、当該主張は、「非層状基材に煙改質剤が充填される」との事項が製造方法で特定されたことを前提とした主張と解される。しかしながら、煙改質剤は、煙を改質するために「各種の薬を調合すること、また、その薬」といえ、「充填される」についても「充填されている構造」と理解できるものであるから、「少なくとも1つの煙改質剤が充填された非層状基材」は「その中に少なくとも1つの煙改質剤が充填されている構造」を備えた「非層状基材」という構成として特定されるものといえる。 そして、上述のとおりの相違点1が認められ、当該相違点1については上記(1)のとおり判断できる。 そうすると、上記第4の2(3)の主張は採用することができない。 イ 請求人の上記第4の2(4)の主張について検討すると、上記(2)の相違点2についての判断で検討したとおり、甲1には、コア部2aに煙改質剤を充填することは記載も示唆もないから、コア部2aに煙改質剤を充填することを前提に、コア部2aの通気度を特定する、という技術思想は当業者であっても容易になし得るものではなく、そのような技術思想が本件特許の優先日前に技術常識であるともいえる格段の事情もない。また、甲1の段落【0031】に、ベンチレーション率が60~80%の際の1600~3000CUの通気度を有するチップペーパー4が記載されているが、当該チップペーパー4は大量の煙改質剤の充填を可能とするものではないから、大量の煙改質剤を充填することを可能とするために、上記チップペーパー4を甲1発明のコア部2aに適用することは、当業者であっても容易に想到し得ないものである。 そうすると、上記第4の2(4)の主張は採用することができない。 (5)まとめ したがって、本件発明は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとすることはできない。 よって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすることはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1に係る特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-800162

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