商標無効審判
2021-890048
メロー
- 審判番号
- 2021-890048
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2019-045074
- 登録番号
- 6214223
- 請求日
- 2021年09月15日
- 審決日
- 2022年03月29日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サントリーホールディングス 株式会社
- 【請求人代理人】中田 和博
- 【請求人代理人】青木 博通
- 【請求人代理人】片山 礼介
- 【被請求人】来福酒造 株式会社
- 【被請求人代理人】旦 武尚
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 淳
- 審判官 平澤 芳行
- 審判官 佐藤 松江
- 分類
- T112 .13 -Y (W33)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第46条第1項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6214223号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は,成り立たない。
審判費用は,請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6214223号商標(以下「本件商標」という。)は,「MELLOW」の欧文字を横書きしてなり,平成31年3月29日に登録出願,第33類「清酒,焼酎,泡盛,合成清酒,白酒,直し,みりん,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」を指定商品として,令和元年11月19日に登録査定,同2年1月8日に設定登録されたものである。
第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の指定商品中,第33類「洋酒,果実酒,酎ハイ,薬味酒」の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件無効審判の根拠
本件商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから,本件商標の第33類の指定商品中,上記商品について,商標法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。
2 本件商標登録を無効とすべき理由
(1)「MELLOW」の意味
ア 英和辞書に記載されている「MELLOW」の意味について
(ア)「リーダーズ英和辞典第3版」(甲2の1)“〈酒が〉芳醇な,なれた”
(イ)「ベーシックジーニアス英和辞典第2版」(甲2の2)“〈酒・チーズが〉芳醇な,まろやかな”
(ウ)「ビーコン英和辞典第3版」(甲2の3)“熟して甘い,芳醇な;円熟した”
イ 「MELLOW」の読みを片仮名で表記した「メロー」に関する辞書について
(ア)「広辞苑第六版」(甲3の1)“「メロー【mellow】豊かで柔らかなさま。円熟したさま。『-な味わいのワイン』」”
(イ)「コンサイスカタカナ語辞典第3版」(甲3の2)“「メロー〔mellow〕〈1〉(果物などが熟して)甘いさま。(色や光が)柔らかくて豊かなさま。〈現〉〈2〉豊潤なさま。円熟したさま。”
ウ 国税庁が公開している「国税庁が用いる日本ワインの標準的英語表現リスト」について
「まろやかでコクのある」ワインを表現する英単語の一つとして,「mellow」が掲載されている(甲4)。
(2)食品分野における審査例
「MELLOW」に通じる「メロー」の文字が食品分野において品質表示であると指摘された出願例。
ア 商願2019-76263「メローブレンド」(甲5の1)“本願商標は,「メローブレンド」と標準文字で表してなるところ,その構成中,「メロー」の文字は,「豊かで柔らかなさま。円熟したさま。」の意味を有する語であり,「ブレンド」の文字は,「ウィスキー・コーヒー・タバコなどで,味や香りをよくするために品種の異なるものを適当に配合すること。また,配合したもの。」の意味を有する語であって,本願商標は全体として「豊かで柔らかな風味に配合(ブレンド)したもの」程の意味合いを容易に認識させる。”
イ 商願2020-61055「フレッシュ&メロー」(甲5の2)“本願商標の構成中の「フレッシュ」の文字は,「fresh」の表音と理解され,「(作りたて・取りたてで)新鮮な,新しい,取りたての,産みたての,加工してない,できたての,作りたての」の意を表す文字であり,「メロー」の文字は,「mellow」の表音と理解され,「熟している,芳醇な。」の意を表す文字であることは,需要者をして,容易に認識し理解される語といえる。そして,かかる文字(語)からなる本願商標は,取引者,需要者から見れば,全体として「新鮮で熟している」程度の意味合いを表したものというのが相当である。”
ウ これら「MELLOW」の語を含んだ商標の拒絶例はいずれも,辞書の記載を根拠に「MELLOW\メロー」の意味合いを判断しており,「MELLOW」がその他の文言と一体となって使用されているとしても,あるいは「MELLOW」の後にどのような言葉が続こうとも,「MELLOW\メロー」が“豊かで柔らかなさま。円熟したさま”“熟している,芳醇な”の意を表す文字であることには何ら変わりはない。
(3)酒類分野における使用例
「MELLOW」又は「メロー」「メロウ」の文字が酒類分野において品質表示として使用されている例。
ア 「キリン株式会社」のウェブサイトにおいて,“これからも変わらず最高品質な10種の原酒をつくり続けることでブランドの特長であるSmooth&Mellowなバーボンを皆さまにお届けします。”との記載がある(甲6の1)。
イ 「アサヒビール株式会社」のウェブサイトにおいて,“ジャックダニエル創業以来のテネシー伝統製法であるチャコール・メローイングで,滑らかでメロウな味に仕上げた,バーボンとは別格に評価される「テネシーウイスキー」としてアメリカを代表するプレミアムウイスキー。”との記載がある(甲6の2)。
ウ 「オエノンホールディングス株式会社」のウェブサイトにおいて,“マッキンレー家に伝わる秘伝のブレンデッドウイスキーで,スムース&メローなテイストはスコッチの伝統が息づく逸品です。5年ものの円熟した味と香りは,名門のマッキンレー家のスタンダードとなっています。”との記載がある(甲6の3)。
エ 「WHISKY MAGAZINE」のウェブサイトにおいて,“嘉之助蒸溜所でメローなウイスキーづくりが始動【前半/全2回】\April 16,2018”との記載がある(甲6の4)。
オ ウェブメディア「Pen」のウェブサイトにおいて,“創業当時から変わらぬ製法から生まれるパワフルかつメローなフレーバーに加え,ブランドのスピリットを体現する不変のラベルデザインもまた,世界中で多くの人々に「ジャック ダニエル」が愛されるゆえんと言えるでしょう。”との記載がある(甲6の5)。
カ これら「MELLOW」の語がその他の文言と一緒になって使用されているとしても,商品説明の前後の文脈を見れば,「MELLOW\メロー」が“豊かで柔らかなさま,円熟したさま”“熟している,芳醇な”の意を表す文字として用いられていることは明白である。
(4)「MELLOW」の自他商品識別力,及び商標法第3条第1項第3号の該当性について
ア 「MELLOW」の文字は,上述のように,芳醇な味わいを表す言葉として酒類について実際に使用されている事実がある。
そうすると,本願商標をその指定商品に使用しても,取引者及び需要者は「芳醇な味わいの酒」あるいは「まろやかな味わいの酒」であることを理解するにとどまり,本願商標は,単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示したにすぎず,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものとみるのが相当である。
イ 被請求人は,「MELLOW」の文字が識別力を有する根拠として,各種商品において多数の「メロー」関係の登録商標が存在することを挙げている。
しかしながら,自他商品識別力の有無は,商標の構成態様と指定商品に基づいて個別具体的に判断されるべきものであり,他の登録例の存在によって自他商品識別力の判断が左右されるものではない。
ちなみに,被請求人が列挙した登録商標のうち,“1.商標登録第383492号「MELLOW」(第25類),3.商標登録第2598425号「MELLOW」(第11類),4.商標登録第5169775号「Mellow」(第3類),5.商標登録第5474717号「Mellow」(第44類),6.商標登録第5742566号「メロウ/mellow」(第20類),7.商標登録第5823994号「mellow」(第14類)”は,その指定区分から判断するに酒類・チーズ類に関するものではない。「MELLOW」の言葉の意味合いを考えると,酒類・チーズ類以外の商品に関する登録例は,本件商標の識別力を判断する根拠には到底なり得ない。
ウ なお,取引者・需要者間において「MELLOW」の文字の使用例が少ないからといって,その事実によって本件商標が自他商品識別力を有すると判断すべきでない。
3 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。
第4 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べた。
1 請求人が本件商標は商標法第3条第1項第3号に該当するとして挙げる例は,単に「MELLOW」の表示のみからなるものではなく,その他の文言と一体となって特定の意味を持って使用されていることを示す表示として使用されてといる例を示しているものにすぎないものである。
過去の拒絶例として示す「メローブレンド」においては「ブレンド」が「メロー」である表示であることは明白であり,「豊かで柔らかな風味に配合されたもの」との認識を有する文言として捉えられたものであり,単に「メロー」だけで表示された語呂がよく耳触りが良く,単に豊かなさまを表示する表示態様とは異なるものである。
特にこの際には出願人は反論せず拒絶となっているものである。
さらに付言すれば「茶」「ココア」あるいはその余の商品について単に「メロー」と表示したものが「芳醇」だとか「なれた」とか意味を有し,商品の品質を普通に表示する方法のみからなる商標に該当するものではない。
2 「フレッシュ&メロー」に関しても「フレッシュ」「&」の文字と一体となった「フレッシュ&メロー」の構成であることから始めて「メロー」の意味を特定の意味を有するものとして商品との関係において商品の品質を普通に表示する方法のみからなる商標に該当するものとして認識したものである。
すなわち「フレッシュ」が「新鮮」の意味を有することから,これに対して「メロー」を「熟している」と認識して商品の品質表示として認識したものである。
これが正しいことは各種商品に対して多数の「メロー」関係の登録商標が存在することが証左として挙げられる。
(1)登録第383492号「MELLOW」第25類
(2)登録第2305424号「メロー」第32類
(3)登録第2598425号「MELLOW」第11類
(4)登録第5169775号「Mellow」第3類
(5)登録第5474717号「Mellow」第44類
(6)登録第5742566号「メロウ/mellow」第20類
(7)登録第5823994号「mellow」第14類
(8)登録第5940151号「mellow」第35類,第41類及び第43類
(9)登録第6263816号「メロウ/Mellow」第30類
以上のことより,「MELLOW」構成に関しては,自他商品識別機能を有する表示であり,又現在の商取引界において多用されている表示である。
特にその「MELLOW」のみからなる構成表示をもって特定の商品の特定の品質を表示する表現として多用されているものとはいい難く,自他商品識別力を有し特別顕著性を有する表現と考えられる。
例えば「洋酒」に関しては「MELLOW」という英文字表記のみからなる商標が市場において洋酒に関する特定の品質を表示するという認識を万人が持っているとはいい難いものであり,特に普通に用いられる方法で表示するとはいい難いものである。
また,「果実酒」に関しては「MELLOW」という英文字表記のみからなる商標が用いられたとしても果実酒の特定の品質を普通に用いられる方法で表示する表示ではなく,一般的に果実酒に関してこのような「MELLOW」のみからなる表記が普通に用いられる表示とはいい得ないものである。
さらに「酎ハイ」に関しても,「MELLOW」という英文字表記のみからなる商標が用いられたとしてもどのような酎ハイの品質を表示するのか認識できないものであるとともに,酎ハイの品質を普通に表示する構成とはいい難いものといわざるを得ない。
同様に「薬味酒」に関しても同様に「MELLOW」という英文字表記のみからなる商標が用いられたとしてもどのような薬味酒の品質を表示するのか認識できないものであるとともに,薬味酒の品質を普通に表示する構成とはいい難いものといわざるを得ない。
したがって,本件商標は,その指定商品中の「洋酒,果実酒,酎ハイ,薬味酒」について商標法第3条第1項第3号に該当するものではない。
第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき,利害関係を有する者であることについては,当事者間に争いがないので,本案に入って審理する。
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張並びに職権調査によれば,次の事実を認めることができる。
ア 「mellow」の文字は,「〈香り・酒が〉芳醇な」(リーダーズ英和大辞典第3版)の意味を有する語として載録されているほか,「(酒・チーズが)芳醇な,まろやかな」(ベーシックジーニアス英和辞典第2版),「熟して甘い,芳醇な,円熟した」(ビーコン英和辞典第3版),「豊かで柔らかなさま。円熟したさま。」(広辞苑第六版),「豊潤なさま,円熟したさま」(コンサイスカタカナ語辞典第3版)等の意味を有する語として載録されている(甲2,甲3)。また,mellowの学習レベルについて,「レベル:6英検:準1級以上の単語学校レベル:大学以上の水準TOEIC L&Rスコア:730点以上の単語大学入試:最難関大対策レベル」との記載がある(https://ejje.weblio.jp/content/mellow)。
イ 「国税庁が用いる日本ワインの標準的英語表現リスト」には,ワインを表現する英単語の一つとして,「まろやかでコクのある」ワインを表現する英単語の一つとして,「mellow」が掲載されている。さらに「(注)このリストは、日本ワインを英語で説明する際に参考にしていただけるよう,作成したもので,使用を強制したり,その他の表現を排除したりするものではありません。」との記載がある(甲4)。
ウ 商願2019-76263「メローブレンド」は,全体として「豊かで柔らかな風味に配合(ブレンド)したもの」程度の意味合いを,商願2020-61055「フレッシュ&メロー」は,全体として「新鮮で熟している」程度の意味合いを表した旨の拒絶理由が通知されたのに対し,各出願人は,意見書を提出せず,当該出願は拒絶された(甲5,職権調査)。
エ バーボン,ウイスキー等を扱う会社のウェブサイトには,「ブランドの特長であるSmooth&Mellowなバーボン」「滑らかでメロウな味に仕上げた」「スムース&メローなテイストはスコッチの伝統が息づく逸品です。」「メローなウイスキーづくりが始動」「パワフルかつメローなフレーバー」などの記載がある(甲6)。
(2)判断
上記(1)によれば,「mellow」の文字は,「〈香り・酒が〉芳醇な」などの意味を有する英語であり,我が国においては,バーボンやウイスキーを紹介する際に「Mellow」やその片仮名表記である「メロウ」又は「メロー」が他の文字と結合して使用されていることは認められるものの,当該文字は、一般に親しまれた語であるとまでは認められないものである。
そして,「国税庁が用いる日本ワインの標準的英語表現リスト」に,「mellow」の語が,「まろやかでコクのある」ことを表現する英単語の一つとして掲載されているが,日本ワインを英語で説明する際の参考程度にすぎず,リストに記載されている英語表現の使用を強制したり,その他の表現を排除するものでもない。
また,商標登録出願された「メローブレンド」及び「フレッシュ&メロー」は,「mellow」の片仮名表記である「メロー」単独の標章ではなく,上記のとおり,バーボンやウイスキーを紹介する際に使用されている「Mellow」「メロウ」「メロー」についても単独の使用例ではなく,特定の意味合いをもって使用されているということもできない。
そうすると,請求人が提出した証拠は,「mellow」の文字が特定の商品の品質を表示しているものといえる直接的,具体的な証拠とみることはできない。
そして,当審において職権をもって調査するも,我が国の請求に係る商品を取り扱う業界において,「mellow」の文字が,具体的な商品の品質を表示するものとして,取引上一般に使用されている事実を発見することができず,取引者,需要者が当該文字を商品の品質を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。
してみれば,本件商標は,請求に係る指定商品との関係において,商品の品質を直接的かつ具体的に表したものとして理解,認識されるとまではいえないものであって,これをその指定商品に使用した場合には,自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第3号に該当しない。
2 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものとはいえないから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効とすべきでない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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