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特許異議申立

2024-701007

全固体用二次電池高温加圧システム及び方法

審判番号
2024-701007
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-186626外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7467807
請求日
2024年10月15日
審決日
2025年03月27日
公報発行日
2025年06月27日
結論
訂正認容
審判長/審判官
分類
P1652.121-YAA(H01M) / P1652.537-YAA(H01M) / P1652.852-YAA(H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7467807号発明「全固体用二次電池高温加圧システム及び方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第7467807号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項6について訂正することを認める。
特許第7467807号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第7467807号の請求項1~14に係る特許についての出願は、令和4年11月22日(パリ条約による優先権主張2022年1月12日、韓国)の出願であって、令和6年4月8日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日 令和6年4月16日)がされた。

これに対して、令和6年10月15日に特許異議申立人中村智子より請求項1~8に対して特許異議の申立てがなされ、証拠として甲第1号証~甲第6号証が提出された。

その後の手続の経緯は以下のとおりである。

令和6年12月 4日付け 取消理由通知

令和7年 1月10日 意見書提出及び訂正請求(特許権者)

令和7年 3月 5日 意見書提出(特許異議申立人)

(証拠として、甲第7号証を提出)

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

令和7年1月10日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、「特許第7467807号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項6について訂正することを求める。」というものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである。

なお、下線は訂正箇所である。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項6に

「 前記加圧チャンバ部は、
加圧工程の終了後に残留媒質が排出される貫通孔である流体流動孔をさらに含み、
前記配管部は、
一端が貯蔵タンクと連通し、他端が流体流動孔と連通する残留物排出部をさらに含む、請求項3に記載の全固体用二次電池高温加圧システム。」

と記載されているのを、

「 前記加圧チャンバ部は、
加圧工程の終了後に残留媒質が排出される貫通孔である残留流体排出孔をさらに含み、
前記配管部は、
一端が貯蔵タンクと連通し、他端が残留流体排出孔と連通する残留物排出部をさらに含む、請求項3に記載の全固体用二次電池高温加圧システム。」

に訂正する。

2 訂正の適否についての判断

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的

請求項6に係る発明は、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する発明である。

ここで、請求項3及び訂正前の請求項6は、以下のように記載されている。(下線は、説明のために当審で付した。以下同様。)

「【請求項3】
前記加圧チャンバ部は、
前記液体類圧力伝達用媒質が前記加圧チャンバ部の内部空間に供給及び排出されるようにする第1貫通孔と、
前記液体類圧力伝達用媒質が前記加圧チャンバ部の内部空間から供給及び排出されるようにする第2貫通孔と、をさらに含み、
前記配管部は、
一端が貯蔵タンクと連通し、他端が第1貫通孔と連通する第1配管と、
一端が貯蔵タンクと連通し、他端が第2貫通孔と連通する第2配管と、を含む、請求項2に記載の全固体用二次電池高温加圧システム。」
「【請求項6】
前記加圧チャンバ部は、
加圧工程の終了後に残留媒質が排出される貫通孔である流体流動孔をさらに含み、
前記配管部は、
一端が貯蔵タンクと連通し、他端が流体流動孔と連通する残留物排出部をさらに含む、請求項3に記載の全固体用二次電池高温加圧システム。」

一方、請求項6に係る発明に関連して、本件特許明細書の段落【0062】及び【0063】には、以下のように記載されている。

「【0062】
流体流動孔470は、圧力伝達用媒質である流体が流れる経路である貫通孔の構成であって、加圧チャンバ部40の一側に形成できる。前記流体流動孔470は、加圧チャンバ部40の内部空間に流体が供給される側である第1貫通孔471と、高温加圧工程の終了後に流体が排出される側である第2貫通孔473と、を含むことができる。別途の制限があるのではないが、前記第1貫通孔471は第1蓋部430及び第2蓋部450のうちのいずれか一つに形成され、第2貫通孔473は残りの一つに形成されることが好ましい。前記第1貫通孔471は後述する第1配管610に連結され、第2貫通孔473は第2配管630に連結され得る。
【0063】
図1を参照すると、残留流体排出孔490は、加圧チャンバ部40の内部空間に形成され、第1ベッセル310及び第2ベッセル330のうちのいずれか一つに対する加圧工程の終了後、第2貫通孔473を介して流体が抜け出した後に、前記内部空間に残留する流体がチャンバ部40の外部へ排出されるようにする貫通孔の構成である。このために、前記残留流体排出孔490は、加圧チャンバ部40の内部空間の底部に形成され、残留流体が自然に外部へ排出されるようにすることが好ましい。前記残留流体排出孔490は、後述する残留物排出部650に連結されることができる。」

すなわち、訂正前の請求項3、6の記載によれば、訂正前の請求項6に係る発明の加圧チャンバ部は、第1貫通孔と第2貫通孔とを含み、加圧工程の終了後に残留媒質が排出される貫通孔である流体流動孔をさらに含む構成であり、加圧チャンバ部の孔として、第1及び第2貫通孔と流体流動孔とは別々の孔であると解し得る。

それに対して、本件特許明細書の段落【0062】の記載によれば、流体流動孔は、圧力伝達用媒質である流体が流れる経路である貫通孔であり、第1貫通孔と第2貫通孔とを含むものであることが記載されており、加圧チャンバ部が、第1貫通孔と第2貫通孔とを含み、加圧工程の終了後に残留媒質が排出される貫通孔である流体流動孔をさらに含む構成は記載されていない。

そして、本件特許明細書の段落【0063】には、残留流体排出孔は、加圧工程の終了後、内部空間に残留する流体が排出されるようにする貫通孔であり、残留物排出部に連結されることが記載されている。

そうすると、本件特許明細書の段落【0063】の記載から、訂正前の請求項6における「加圧工程の終了後に残留媒質が排出される貫通孔」は「流体流動孔」でなく、「残留流体排出孔」の誤記であり、残留排出部の他端についても「流体流動孔と連通する」のではなく、「残留流体排出孔と連通する」ことの誤記であることは明らかであり、訂正事項1は当該誤記を正すものである。

よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否

上記アで述べたように、訂正事項1は、誤記を正すものであり、本件特許明細書の段落【0063】の記載に基づくことから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(2)まとめ

以上のとおりであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

また、訂正事項1は請求項6に係る訂正であり、特許異議申立人による特許異議申立てがなされている請求項に対する訂正であるので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項6について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2より、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】(本件発明1)

バスケットを前後方向に沿って移送させる移送部と、

内部空間に全固体用二次電池を収容するバスケットと、

一側が加圧チャンバ部と連結されて前記加圧チャンバ部の内部空間へ側方移動する或いは待機位置へ逆方向移動し、前記移送部によってバスケットが投入される入口部、及び前記投入されたバスケットを排出する出口部を有するベッセルと、

前記ベッセルが投入されるように内部空間を有する加圧チャンバ部と、

液体類圧力伝達用媒質を貯蔵する貯蔵タンクと、

一端が貯蔵タンクに連結され、他端が加圧チャンバ部に連結される配管部と、を含む、全固体用二次電池高温加圧システム。

【請求項2】(本件発明2)

前記加圧チャンバ部は、

前記投入されたベッセルの入口部を開閉する第1蓋部と、

前記投入されたベッセルの出口部を開閉する第2蓋部と、を含む、請求項1に記載の全固体用二次電池高温加圧システム。

【請求項3】(本件発明3)

前記加圧チャンバ部は、

前記液体類圧力伝達用媒質が前記加圧チャンバ部の内部空間に供給及び排出されるようにする第1貫通孔と、

前記液体類圧力伝達用媒質が前記加圧チャンバ部の内部空間から供給及び排出されるようにする第2貫通孔と、をさらに含み、

前記配管部は、

一端が貯蔵タンクと連通し、他端が第1貫通孔と連通する第1配管と、

一端が貯蔵タンクと連通し、他端が第2貫通孔と連通する第2配管と、を含む、請求項2に記載の全固体用二次電池高温加圧システム。

【請求項4】(本件発明4)

前記第1配管の一側には、

前記加圧チャンバ部の内部空間への流体供給及び前記加圧チャンバ部からの流体排出のためのポンプが設けられ、

前記第2配管の一側には、

加圧工程時に前記加圧チャンバ部の内部空間を増圧させる増圧ポンプが設けられる、請求項3に記載の全固体用二次電池高温加圧システム。

【請求項5】(本件発明5)

前記加圧チャンバ部は、

前記加圧チャンバ部の内部に設置されることにより、前記貯蔵タンクから投入される媒質に熱を伝達する第1ヒーティングブロックをさらに含む、請求項2に記載の全固体用二次電池高温加圧システム。

【請求項6】(本件発明6)

前記加圧チャンバ部は、

加圧工程の終了後に残留媒質が排出される貫通孔である残留流体排出孔をさらに含み、

前記配管部は、

一端が貯蔵タンクと連通し、他端が残留流体排出孔と連通する残留物排出部をさらに含む、請求項3に記載の全固体用二次電池高温加圧システム。

【請求項7】(本件発明7)

前記貯蔵タンクは、

前記貯蔵タンクの一側に設置され、貯蔵された媒質に熱を伝達する第2ヒーティングブロックを含む、請求項5に記載の全固体用二次電池高温加圧システム。

【請求項8】(本件発明8)

前記第1配管と第2配管は、

前記貯蔵タンクと連通する共通配管から分岐し、

前記配管部は、

一側の外面上のヒーティングジャケットをさらに含む、請求項3に記載の全固体用二次電池高温加圧システム。

第4 取消理由通知に記載した取消理由について

1 取消理由の概要

訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審が令和6年12月4日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

請求項6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(加圧チャンバ部が、第1貫通孔と第2貫通孔とを含み、流体流動孔をさらに含む構成は記載されていないので、請求項6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものと認めることはできない。)

2 当審の判断

請求項6に係る特許は、上記第2で記載したように、

「前記加圧チャンバ部は、
加圧工程の終了後に残留媒質が排出される貫通孔である残留流体排出孔をさらに含み、
前記配管部は、
一端が貯蔵タンクと連通し、他端が残留流体排出孔と連通する残留物排出部をさらに含む、請求項3に記載の全固体用二次電池高温加圧システム。」

と訂正され、本件特許明細書の段落【0063】に記載された構成に基づくものとなった。

よって、請求項6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、請求項6に係る特許を取り消すことはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要

取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、以下の通りである。

(1)申立理由1(進歩性)

請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

請求項5、7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第4号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、請求項5、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

請求項6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第5号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

請求項8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)申立理由2(サポート要件)

請求項1ないし8に係る発明は、課題を解決するための手段が反映されたものではないため、請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

証拠方法

甲第1号証:特開2021-4692号公報
甲第2号証:特開2021-132031号公報
甲第3号証:中国特許出願公開109588609号明細書
甲第4号証:特開平5-161483号公報
甲第5号証:中国特許出願公開105105275号明細書
甲第6号証:特開平2-182157号公報

2 各号証の記載

(1)甲第1号証

ア 甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付したものである。以下同様。)

「【0002】
従来、食品などの被処理物に付着する微生物の殺菌を目的として、被処理物に加圧処理(HPP処理:High Pressure Processing)を施す加圧装置(等方圧加圧装置)が知られている。このような加圧装置では、筒状の圧力容器内に被処理物が収容され、前記圧力容器内に圧力媒体が封入されることで、加圧処理が施される。このような加圧処理は、高温の加熱処理と比較して、食品の味、食感や風味などが損なわれることが少ないため有効である一方、耐圧性を有する菌(例えば、芽胞菌)を殺菌することは難しい。」
「【0027】
本発明によれば、被処理物に対して加圧処理および加熱処理を並行して行うことが可能な等方圧加圧装置および等方圧加圧処理方法が提供される。」
「【0030】
なお、以下の説明では、処理対象である被処理物Wを食品としているが、被処理物Wは、食品以外の製品(例えば飲料)であってもよいし、金属粉末・セラミック粉末といった無機物(無機粉末)であってもよい。」
「【0032】
圧力容器2は、内部に被処理物Wを収容し、被処理物Wに対して等方圧加圧処理を施す。圧力容器2は、容器本体20と、第1蓋部21と、第2蓋部22と、を有する。圧力容器2は、高い耐圧性を備えるためにステンレスなどの金属材料から構成される。」
「【0034】
第1蓋部21および第2蓋部22は、容器本体20の前記軸方向の両端部にそれぞれ装着され処理空間S1を封止する。第1蓋部21は、封入部21Aと、フランジ21Bと、を有し、第2蓋部22は、封入部22Aと、フランジ22Bと、を有する。封入部21Aおよび封入部22Aは、それぞれ、容器本体20の第1開口部20Aおよび第2開口部20Bに挿入され、処理空間S1を封止する。フランジ21Bおよびフランジ22Bは、容器本体20の軸方向の両端部に当接する。
【0035】
第1蓋部21は、給排水路211を有し、第2蓋部22は、給排水路221を有する。給排水路211は第1蓋部21の外部と処理空間S1とを連通し、加圧処理後の圧力媒体が給排水路211を通じて処理空間S1から排出される。また、給排水路221は、不図示の流路を介して、給排水ユニット31、ポンプユニット32に連通しており、当該給排水路221を通じて圧力媒体が処理空間S1に流入するとともに、給排水路221を通じて処理空間S1から圧力媒体が排出される。給排水路211および給排水路221には必要に応じて開閉可能な不図示の弁が配置されている。
続きを表示(全14行)
【0036】
収容容器50は、被処理物Wを収容するとともに圧力容器2の処理空間S1に配置される(図2)。本実施形態では、収容容器50の内部には、被処理物Wを収容することが可能な収容空間S2が形成されている(図2)。
【0037】
プレスフレーム10(図1)は、圧力容器2の両端蓋に働く軸力を支持する機能を有する。プレスフレーム10は、枠構造を有し、枠内の加圧位置Pに圧力容器2が配置されると、圧力容器2内の被処理物Wに等方圧加圧処理が施される。
【0038】
移動用レール13は、圧力容器2の容器本体20を加圧位置Pと待機位置Qとの間で移動可能なように容器本体20を案内する。容器本体20は不図示の駆動機構の駆動力を受けて加圧位置Pと待機位置Qとの間を移動する。図1に示すように、待機位置Qは、加圧位置Pから離間した位置である。なお、圧力容器2の第1蓋部21および第2蓋部22は、常に加圧位置Pに配置されている。容器本体20が加圧位置Pに配置されると、不図示の駆動シリンダが第1蓋部21および第2蓋部22を軸方向に沿って移動し、図2に示すように容器本体20の両端部に装着する。
【0039】
搬入用レール11は、加圧処理前に待機位置Qにおいて待機する容器本体20の内部に向かって収容容器50を案内する。一方、搬出用レール12は、加圧処理後に待機位置Qに移動された容器本体20から収容容器50を引き出すように収容容器50を案内する。
【0040】
給排水ユニット31は、タンク31Aを含み、圧力容器2の処理空間S1に圧力媒体を供給する。本実施形態では、圧力媒体として水、温水が使用される。」
「【0052】
次に、作業者が搬入用レール11に沿って収容容器50を容器本体20の内部に挿入する(収容容器配置工程)。また、作業者は、制御部35を操作し、容器本体20を移動用レール13に沿ってプレスフレーム10内の加圧位置Pに設置する。移動用レール13上の加圧位置Pでは、第1蓋部21および第2蓋部22が容器本体20に対向して配置されている。そして、容器本体20が加圧位置Pに配置されると、不図示の駆動シリンダが伸長し、不図示の受圧盤を介して、第1蓋部21および第2蓋部22をそれぞれ容器本体20に装着する(図2)。この結果、処理空間S1が密閉状態とされる。」
「【0054】
次に、制御部35は、ポンプユニット32を制御して、処理空間S1内の水を加圧する(等方圧加圧処理、加圧処理工程)。この際、加圧により処理空間S1内の水の体積が減少するため、常温の水(たとえば32リットル)が追加補給される。加圧時には、処理空間S1の圧力が約600MPaに設定される。一方、収容容器50内の収容空間S2は、加圧開始時に大気圧に設定されている。したがって、処理空間S1と収容空間S2との間の差圧を受けて、第1逆止弁503が第1流路L1を開放し、処理空間S1から収容空間S2に第1流路L1を通じて水(第2圧力媒体)が流入することが許容される。換言すれば、加圧中の前記処理空間S1から収容空間S2への水の流入路が、第1逆止弁503によって開放された第1流路L1に制限されながら、収容容器50内の被処理物Wに等方圧加圧処理が施される。やがて、処理空間S1と収容空間S2との圧力が互いに等しくなると、換言すれば、収容空間S2の圧力が約600MPaになると、第1逆止弁503が第1流路L1を閉止し、処理空間S1から収容空間S2への水の流入が停止する。このように、第1逆止弁503の作用によって処理空間S1と収容空間S2との間の圧力媒体の入れ代わりが抑制されるとともに収容容器50の断熱性能によって、収容空間S2内が70℃から80℃の温度に保たれながら(保温機能)、被処理物Wに高い圧力が所定の時間付与されることで、収容容器50内の被処理物Wに対する高い殺菌作用などが発現される。」
「【0056】
その後、不図示の駆動シリンダが受圧盤を介して第1蓋部21および第2蓋部22を容器本体20から脱離させる。その後、収容容器50を含む容器本体20が再び、待機位置Qに移動される(図1)。そして、搬出用レール12に沿って収容容器50が容器本体20から引き出され、収容容器50から加圧処理後の被処理物Wが取り出される。」
「【図1】
[図:0001423525000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001423525000002.jpg]
」

イ 甲第1号証に記載された発明

(ア)【0002】、【0027】、【0030】、【0054】より、甲第1号証には、食品、飲料、金属粉末・セラミック粉末といった無機物(無機粉末)などの被処理物に付着する微生物の殺菌を目的として、70℃から80℃の温度に保たれながら、高い圧力(約600MPa)が付与されることで、被処理物に対して加圧処理および加熱処理を並行して行うことが可能な加圧処理方法が記載されている。

そして、甲第1号証は、加圧処理方法について記載されていることから、当該加圧処理方法を利用した加圧処理システムについても記載されているといえる。

(イ)【0030】、【0036】より、甲第1号証の加圧処理システムは、内部の収容空間に食品、飲料、金属粉末・セラミック粉末といった無機物(無機粉末)などの被処理物を収容する収容容器を含むものである。

(ウ)【0039】より、甲第1号証の加圧処理システムは、収容容器を案内する搬入用レール及び搬出用レールを含むものである。

(エ)【0037】より、甲第1号証の加圧処理システムは、枠構造を有するプレスフレームを含むものである。

【0038】より、圧力容器の容器本体は、移動用レールにより加圧位置と待機位置との間で移動可能であり、【図1】をみるに、移動用レールの片側がプレスフレームと連結されていることが見て取れる。

そして、【0037】より、加圧位置は、プレスフレームの枠内である。

よって、甲第1号証の加圧処理システムは、移動用レールの片側がプレスフレームと連結され、当該移動用レールによりプレスフレームの枠内の加圧位置と待機位置との間で移動可能である圧力容器の容器本体を含むものである。

また、【0034】より、圧力容器の容器本体は、第1開口部および第2開口部を有している。

そして、【0052】、【0056】より、搬入用レールに沿って収容容器が容器本体の内部に挿入され、搬出用レールに沿って収容容器が容器本体から引き出されるものであり、【図1】をみるに、搬入用レールに沿って収容容器が容器本体の内部に挿入されるのは第2開口部であり、搬出用レールに沿って収容容器が容器本体から引き出されるのは第1開口部であることが見て取れる。

よって、甲第1号証の加圧処理システムは、搬入用レールに沿って収容容器が容器本体の内部に挿入される第2開口部、搬出用レールに沿って収容容器が容器本体から引き出される第1開口部を有する圧力容器の容器本体を含むものである。

以上より、甲第1号証の加圧処理システムは、枠構造を有するプレスフレームと、移動用レールの片側がプレスフレームと連結され、当該移動用レールによりプレスフレームの枠内の加圧位置と待機位置との間で移動可能であり、搬入用レールに沿って収容容器が容器本体の内部に挿入される第2開口部、搬出用レールに沿って収容容器が容器本体から引き出される第1開口部を有する圧力容器の容器本体とを含むものである。

(オ)【0040】より、甲第1号証の加圧処理システムは、水、温水などの圧力媒体を供給するタンクを含む給排水ユニットを含むものである。

(カ)【0035】、【0038】より、甲第1号証には、第2蓋部は給排水路を有すること、給排水路は流路を介して、給排水ユニットに連通すること、第2蓋部は常に加圧位置に配置されていることが記載されている。

よって、甲第1号証の加圧処理システムは、給排水ユニットに連通され、加圧位置に配置されている第2蓋部が有する給排水路に連結される流路を含むものである。

(キ)上記(ア)~(カ)より、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

(甲1発明)

内部の収容空間に食品、飲料、金属粉末・セラミック粉末といった無機物(無機粉末)などの被処理物を収容する収容容器と、

収容容器を案内する搬入用レール及び搬出用レールと、

枠構造を有するプレスフレームと、

移動用レールの片側がプレスフレームと連結され、当該移動用レールによりプレスフレームの枠内の加圧位置と待機位置との間で移動可能であり、搬入用レールに沿って収容容器が容器本体の内部に挿入される第2開口部、搬出用レールに沿って収容容器が容器本体から引き出される第1開口部を有する圧力容器の容器本体と、

水、温水などの圧力媒体を供給するタンクを含む給排水ユニットと、

給排水ユニットに連通され、加圧位置に配置されている第2蓋部が有する給排水路に連結される流路と、を含む、

食品、飲料、金属粉末・セラミック粉末といった無機物(無機粉末)などの被処理物に付着する微生物の殺菌を目的として、70℃から80℃の温度に保たれながら、高い圧力(約600MPa)が付与されることで、被処理物に対して加圧処理および加熱処理を並行して行うことが可能な加圧処理システム。

(2)甲第2号証

甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0109】
(全固体二次電池の製造)
正極の正極活物質層上に固体電解質層を配置し、該固体電解質層上に、第1負極活物質層が固体電解質層と接触するように、負極をそれぞれ配置して積層体を準備した。
【0110】
積層体をポーチに入れて真空密封した後、500MPaの圧力で、30分間90℃で温間静水圧(WIP:warm isostatic press)加圧し、全固体二次電池を製造した。」

(3)甲第3号証

甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、訳については、特許異議申立人の訳を参考にした。甲第5号証についても同様である。)

「
[図:0001423525000003.jpg]
」

([0004] 本発明の目的は、従来技術に存在する、低い設備効率、低い利用率、および高コストの問題を解決する高静圧場装置を提供することである。)

「
[図:0001423525000004.jpg]
」

([0024] フレーム1に設置された高静圧ユニット2は、フレーム1と回転軸で接続された回転フレーム201、回転フレーム201に円周状に配置された複数の高耐圧シリンダ202、およびフレーム1に設置された2つの密封蓋203から構成される。2つの密封蓋203は、伸縮機構によって回転フレーム201の回転軸方向に伸縮し、任意の高耐圧シリンダ202の両端を封止する。密封蓋203が高耐圧シリンダ202の両端を封止することで、密封空間が形成される。)

「
[図:0001423525000005.jpg]
」

([0033] 水ポンプ301は、密封蓋203に接続された高耐圧シリンダ202に、接続管を介して接続されている。)

「
[図:0001423525000006.jpg]
」

([0035] 密閉蓋203に接続された高耐圧シリンダ202は、接続管を介して増圧ポンプ303に接続され、増圧ポンプ303は、接続管を介して貯水タンク302に接続されている。)

「
[図:0001423525000007.jpg]
」

([0038] 高静圧処理は、食品の風味を保持しつつ、低温殺菌を実現する技術であり、簡便な加熱調理で消費者に提供できることから、半製品食品の市場拡大に貢献する。)

「
[図:0001423525000008.jpg]
」

(4)甲第4号証

ア 甲第4号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、内部に処理室4 を有する高圧容器1 と、該処理室4 に高圧ポンプ11によって加圧供給される圧媒のタンク10とを備え、前記処理室4 に投入された被処理物Aを圧媒の等方圧下で加圧処理する高圧処理装置の始動方法であって、前述の目的を達成するために次の技術的手段を講じている。」
「【0015】なお、加圧に伴う蓋に作用する軸力は図示省略したプレスフレームで支承するようになっている。高圧容器1 の外周にはジャケット5 が設けられており、熱媒タンク6 においてヒータ7Aによって加熱された熱媒6Aを、循環ポンプ8 でジャケット5 内を通して熱媒タンク6 に管路18A を介して戻すように循環させて、高圧容器1 の温度調節が可能となっている。なお、ジャケット5 の周囲には断熱材9 が保温用として配されている。
【0016】更に、前記圧媒タンク6 とは別に、高圧容器1 内の処理室4 に供給加圧するための圧媒のタンク10が設けられており、ヒータ7Bによって加熱された圧媒10B を、高圧ポンプ、好ましくは高低圧二連で構成される加圧ポンプ11、開閉弁12を経て下蓋3 の管路13から処理室4 内に供給加圧できるようなっている。また、開閉弁14、絞り15を経て、逆に処理室4 内の圧媒10B を圧媒タンク10に減圧回収可能としている。」

「【0019】この場合、外部加熱とは最外層からの加熱に限定されるものではなく、例えば、線巻補強された高圧容器の線巻層の内側であってもよい。なお、図1において、24は圧力計、25は測温計、Aは被処理物を示しており、該被処理物Aは、レトルトパウチのような魚肉、畜肉を初め、液またはゼリー状の包装された食品であり、熱源6Aによる熱的作用と圧媒10B による等方圧下との共存で変性、殺菌等の処理がなされる。」

「【図1】
[図:0001423525000009.jpg]
」

(5)甲第5号証

ア 甲第5号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「
[図:0001423525000010.jpg]
」

([要約書]

本発明は、温度と圧力を組み合わせた超高圧殺菌装置に関し、・・・(中略)・・・コンピュータ監視システムは、加熱装置コントローラ、温度測定装置(10)および圧カシステムを制御し、超高圧筒体(5)内の水温および圧力を制御し、温度と圧力を組み合わせた超高圧殺菌モードを採用し、高圧耐性芽胞を効果的に殺し、より徹底した超高圧殺菌を実現する。)

「
[図:0001423525000011.jpg]
」

([0001] 本発明は超高圧滅菌装置の技術分野に属し、特に温度と圧力を組み合わせた超高圧滅菌装置に関する。)

「
[図:0001423525000012.jpg]
」

([0002] 超高圧滅菌とは、食品を包装した状態で、水を満たした高圧容器に入れ、400MPa~600MPaの圧力で殺菌する、新しい食品冷間殺菌技術である。この方法は、食品の機能成分の生理活性を維持できるだけでなく、色、香り、味、そして栄養成分も損なわれにくいため、食品を効率的に殺菌する手段として利用されている。(後略))

「
[図:0001423525000013.jpg]
[図:0001423525000014.jpg]
」

([0031] 圧力開放工程において、コンピュータ制御システムによる、ピストン式栓3が超高圧筒体5から退避する動作は、以下の2つの工程に分けて行われる。第1工程は・・・(中略)・・・、第2工程は、ピストン式栓3と超高圧筒体5とが分離する工程である。超高圧筒体5内の水圧が常圧値になると、ピストン式栓3はフレーム1の立柱の方向にさらに移動し、ピストン式栓3と超高圧筒体5とが完全に分離するまでこの動きが続く。この間、超高圧筒体5内の水が、回収水槽8-2に流れ込み、回収水槽8-2の底部にある水戻し口(不図示)と管路を通って水タンクに戻る。これらの各部品の動きはすべて、コンピュータ制御システムによって自動制御される。)

「
[図:0001423525000015.jpg]
」

(6)甲第6号証

ア 甲第6号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「(産業上の利用分野)
本発明は、食品等被処理物を、温間又はマイナス温度域で、静水圧下に加圧処理するための装置に係る。」(1頁右欄下から2行~2頁左上欄2行)

「 即ち、圧媒循環装置25は、第2及び第3の管路14、15の開口部を連通ずる循環管26を有し、この循環管26の中途部に、第2の管路14から第3の管路15に向かって順番に、第1弁27、第2圧媒溜28、第1逆止弁29、圧媒循環ポンプ30、第2逆止弁31、第2圧媒溜32、第2弁33が介在されている。」(3頁左下欄8~13行)

「 尚、第2圧媒溜32には加熱装置40が設けられ、第2圧媒溜32内の圧媒を加熱するよう構成されている。」(3頁右下欄12~14行)

「 この際、被処理物に付与すべき温度・圧力に応じて、圧媒循環ポンプ30が駆動され、循環管26に設けられた加熱装置40或は、冷却装置39によって、処理室10内の圧媒が加熱又は冷却される。」(4頁左上欄14~17行)

「 第3図に示すものは、本発明の第3実施例であり、圧媒循環装置25が、圧力調整装置17を兼ねる形式のものである。
すなわち、第一圧媒溜28からの循環管26に、圧媒供給管18が開閉弁43を介して、圧媒排出管19が開閉弁24、絞り弁23を介して圧媒タンク20に接続されており、圧媒タンク20には加熱器42或は冷却器41が備えられている。」(4頁右下欄17行~5頁左上欄4行)
「
[図:0001423525000016.jpg]
」

3 申立理由1について

(1)本件発明1について

ア 本件発明1と甲1発明との対比

(ア)まず、甲1発明の「内部の収容空間に食品、飲料、金属粉末・セラミック粉末といった無機物(無機粉末)などの被処理物を収容する収容容器」と、本件発明1の「内部空間に全固体用二次電池を収容するバスケット」とを対比する。

甲1発明の「内部の収容空間」は、本件発明1の(バスケットの)「内部空間」に相当するので、甲1発明の「収容容器」と本件発明1の「バスケット」とは、「内部空間に被処理物を収容するバスケット」である点で共通する。

しかし、被処理物に関して、本件発明1は、「全固体用二次電池」であるのに対し、甲1発明は、「食品、飲料、金属粉末・セラミック粉末といった無機物(無機粉末)などの被処理物」である点で相違する。

(イ)甲1発明の「収容容器を案内する搬入用レール及び搬出用レール」は、いずれのレールも収容容器を案内即ち移送させるためのレールであり、その移送方向を前後方向と称すると、本件発明1の「バスケットを前後方向に沿って移送させる移送部」に相当する。

(ウ)本件発明1の「加圧チャンバ部」と甲1発明の「枠構造を有するプレスフレーム」とは、「加圧するための構成」である点で共通するといえる。

また、本件発明1の「加圧チャンバ部の内部空間」と甲1発明の「プレスフレームの枠内」とは、いずれも「加圧するための構成の内側」である点で共通するといえる。

そうすると、甲1発明において、加圧位置へ移動する際の方向を側方と称することにより、本件発明1の「ベッセル」と甲1発明の「圧力容器の容器本体」とは、「一側が加圧するための構成と連結されて前記加圧するための構成の内側へ側方移動する或いは待機位置へ逆方向移動」する「ベッセル」である点で共通する。

また、甲1発明の「搬入用レールに沿って収容容器が容器本体の内部に挿入される第2開口部、搬出用レールに沿って収容容器が容器本体から引き出される第1開口部」は、本件発明1の「前記移送部によってバスケットが投入される入口部、及び前記投入されたバスケットを排出する出口部」に相当する。

以上より、本件発明1の「ベッセル」と甲1発明の「圧力容器の容器本体」とは、「一側が加圧するための構成と連結されて前記加圧するための構成の内側へ側方移動する或いは待機位置へ逆方向移動し、前記移送部によってバスケットが投入される入口部、及び前記投入されたバスケットを排出する出口部を有するベッセル」である点で共通する。

しかし、加圧するための構成に関して、本件発明1は、「加圧チャンバ部」であるのに対し、甲1発明は、「枠構造を有するプレスフレーム」である点で相違する。

また、加圧するための構成の内側に関して、本件発明1は、「加圧チャンバ部の内部空間」であるのに対し、甲1発明は、「プレスフレームの枠内」である点で相違する。

(エ)甲1発明において、「プレスフレームの枠内の加圧位置」に圧力容器の容器本体が「移動可能」であることから、プレスフレームは、容器本体が投入されるように枠内を有するものといえる。

そして、上記(ウ)での検討を援用すると、本件発明1と甲1発明とは、「前記ベッセルが投入されるように加圧するための構成の内側を有する加圧するための構成」を含む点で共通する。

しかし、上記(ウ)と同様に、加圧するための構成に関して、本件発明1は、「加圧チャンバ部」であるのに対し、甲1発明は、「枠構造を有するプレスフレーム」である点で相違し、加圧するための構成の内側に関して、本件発明1は、「加圧チャンバ部の内部空間」であるのに対し、甲1発明は、「プレスフレームの枠内」である点で相違する。

(オ)甲1発明の「タンク」は、「水、温水などの圧力媒体」を貯蔵するものといえる。ここで、「水、温水などの圧力媒体」は液体であり、加圧のための圧力を伝える媒体であるといえるから、甲1発明の「水、温水などの圧力媒体を供給するタンク」は、本件発明1の「液体類圧力伝達用媒質を貯蔵する貯蔵タンク」に相当する。

(カ)甲1発明の流路は、タンクを含む給排水ユニットに連通していることから、流路の一端はタンクに連結しているといえ、加圧位置に配置されている第2蓋部が有する給排水路に連結していることから、流路の他端は加圧位置すなわちプレスフレームの枠内に連結しているといえる。

そうすると、甲1発明の「給排水ユニットに連通され、加圧位置に配置されている第2蓋部が有する給排水路に連結される流路」と、本件発明1の「配管部」とは、「一端が貯蔵タンクに連結され、他端が加圧するための構成に連結される配管部」である点で共通する。

しかしながら、上記(ウ)と同様に、加圧するための構成に関して、本件発明1は、「加圧チャンバ部」であるのに対し、甲1発明は、「枠構造を有するプレスフレーム」である点で相違する。

(キ)甲1発明の「加圧処理システム」は、70℃から80℃の温度という高温で加圧するシステムであるから、本件発明1とは、「被処理物高温加圧システム」である点で共通する。

しかし、上記(ア)と同様に、被処理物に関して、本件発明1は、「全固体用二次電池」であるのに対し、甲1発明は、「食品、飲料、金属粉末・セラミック粉末といった無機物(無機粉末)などの被処理物」である点で相違する。

イ 一致点、相違点

以上より、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。

(一致点)

バスケットを前後方向に沿って移送させる移送部と、

内部空間に被処理物を収容するバスケットと、

一側が加圧するための構成と連結されて前記加圧するための構成の加圧位置へ側方移動する或いは待機位置へ逆方向移動し、前記移送部によってバスケットが投入される入口部、及び前記投入されたバスケットを排出する出口部を有するベッセルと、

前記ベッセルが投入されるように加圧位置を有する加圧するための構成と、

液体類圧力伝達用媒質を貯蔵する貯蔵タンクと、

一端が貯蔵タンクに連結され、他端が加圧するための構成に連結される配管部と、を含む、被処理物高温加圧システム。

(相違点1)

加圧するための構成に関して、本件発明1は「加圧チャンバ部」であり、「内部空間」を有し、当該内部空間にベッセルが移動する構成であるのに対して、甲1発明は「枠構造を有するプレスフレーム」であり、「内部空間」を有する構成ではない点。

(相違点2)

被処理物に関して、本件発明1は、「全固体用二次電池」であるのに対し、甲1発明は、「食品、飲料、金属粉末・セラミック粉末といった無機物(無機粉末)などの被処理物」である点。

ウ 検討

事案に鑑み、先に相違点2について検討する。

甲1発明は、食品、飲料、金属粉末・セラミック粉末といった無機物(無機粉末)などの被処理物に付着する微生物の殺菌を目的とするものであるのに対し、本件発明1は、全固体用二次電池における固体電解質は、イオンが固体格子の間で移動するので、活物質と電解質との接触界面を最大化しながらも界面抵抗を最小化しなければならないために、水圧プレス装備で圧力を加える方式で製作されてきたが、当該方式の全固体用二次電池は量産に適さないという問題点があり、かかる問題点を解決するための全固体用二次電池高温加圧システムである。(本件特許明細書の【0005】、【0006】)

そして、上記2(2)に記載したように、甲第2号証には、温間静水圧加圧して全固体二次電池を製造する技術事項(【0110】)が記載されているだけであり、食品、飲料、金属粉末・セラミック粉末といった無機物(無機粉末)などの被処理物に付着する微生物の殺菌を行う技術を全固体用二次電池に適用し得ることについて記載も示唆もされておらず、また、そのような適用が普通に行われる事項であるとも認められない。

そうすると、甲第1号証に接した当業者といえども、食品、飲料、金属粉末・セラミック粉末といった無機物(無機粉末)などの被処理物に付着する微生物の殺菌を目的とする甲1発明の構成を、活物質と電解質との接触界面を最大化しながらも界面抵抗を最小化しなければならない全固体用二次電池の高温加圧システムに適用することは、容易には想起し得ないことである。

したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、上記相違点2に係る構成を備える請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2について

請求項1に係る発明は、上記(1)のとおり、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1を引用する請求項2に係る発明は、同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3について

請求項1に係る発明は、上記(1)のとおり、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

また、甲第3号証には、食品の風味を保持しつつ、低温殺菌を実現する技術事項([0038])が記載されているのみであり、全固体用二次電池に関する技術について記載されているものではない。よって、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、請求項1を間接的に引用する請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

(4)本件発明4について

上記(3)を援用するに、請求項1を間接的に引用する請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

(5)本件発明5、7について

甲第4号証には、レトルトパウチのような魚肉、畜肉を初め、液またはゼリー状の包装された食品のような被処理物に対する殺菌処理がなされる技術事項(【0019】)が記載されているのみであり、全固体用二次電池に関する技術について記載されているものではない。よって、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第4号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、請求項1を間接的に引用する請求項5、7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第4号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

(6)本件発明6について

甲第5号証には、食品に対する殺菌処理がなされる技術事項([0002])が記載されているのみであり、全固体用二次電池に関する技術について記載されているものではない。よって、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第5号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、請求項1を間接的に引用する請求項6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第5号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

(7)本件発明8について

甲第6号証には、食品等被処理物に対する加圧処理がなされる技術事項(1頁右欄下から2行~2頁左上欄2行)が記載されているのみであり、全固体用二次電池に関する技術について記載されているものではない。よって、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、請求項1を間接的に引用する請求項8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

(8)令和7年3月5日に提出された意見書における特許異議申立人の主張について

特許異議申立人は、令和7年3月5日に提出された意見書において、新たに甲第7号証(特開2018-69245号公報)を提出し、請求項1~請求項8に係る発明は、甲第1号証~甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである旨の主張をしているが、そもそも上記相違点2についての主張をするものでなく、また、新たに提出された甲第7号証も食品、金属粉末、セラミック粉末を殺菌するための加圧処理に関する発明(【0002】、【0010】)にすぎない。したがって、上記相違点2に係る構成を備える請求項1~8に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、意見書における特許異議申立人の主張は、採用することができない。

4 申立理由2について

(1)特許異議申立人の主張

特許異議申立人は、申立理由2について以下の主張をしている。

「<9.1.>発明が解決しようとする課題について
本件発明1が解決しようとする課題として、下記の2つの課題が、本件明細書に記載されている。
[課題1]全固体用二次電池の量産に適した全固体用二次電池高温加圧システムを提示すること(本件明細書の[0005]、[0006])。
[課題2]全固体用二次電池の接触界面の最大化及び界面抵抗の最小化を可能にする全固体用二次電池高温加圧システムを提供すること(本件明細書の[0008])。
続きを表示(全40行)
(中略)
<9.2.>上記[課題1]を解決するための手段の検討(その1)
上記[課題1]は、全固体用二次電池の量産に適した全固体用二次電池高温加圧システムを提示すること、すなわち、全固体用二次電池の量産性を上げることである。
この[課題1]を解決するための手段は、本件明細書[0009]に、以下のように記載されている。
(中略)
よって、上記[課題1]を解決するための手段は、
・一対のベッセルが左右両側に形成されること
・いずれか一方のベッセルに対する加圧工程の終了後に、(加圧工程が終了したベッセルが)加圧チャンバ部の内部空間から排出されて待機位置に戻ると、待機中の残りのベッセルが前記加圧チャンバ部の内部空間に直ちに投入されるようにすること
である。
この構成は、本件請求項9および11には記載されている。
しかし、この構成は、本件請求項1~8には記載されていない。すなわち、本件請求項1~8では、上記[課題1]を解決するために必要な構成が欠落しており、上記[課題1]を解決するための手段が反映されていない。
<9.3.>上記[課題1]を解決するための手段の検討(その2)
ここで、本件の請求項1には、下記の記載がある。この記載事項が、上記の[課題1]を解決するための手段であるか否かについて検討する。
「【請求項1】
・・・(中略)・・・
一側が加圧チャンバ部(40)と連結されて前記加圧チャンバ部(40)の内部空間へ側方移動する或いは待機位置へ逆方向移動し、前記移送部(10)によってバスケット(20)が投入される入口部(311)、及び前記投入されたバスケット(20)を排出する出口部(313)を有するベッセル(30)と、
・・・(以下略)」
検討すると、上記記載の下線部では、ベッセル(30)が、加圧チャンバ部(40)の内部空間へ側方移動する或いは待機位置へ逆方向移動すると規定されているだけである。
例えば、ベッセル(30)が加圧チャンバ部(40)に対して移動しない場合と比べると、ベッセル(30)の移動時間の分だけ、工程時間が長くなり、工程効率が低下する場合があると考えられる。
また、例えば、甲1に記載の発明(甲1の図1参照)でも、容器本体20(本件発明1におけるベッセル(30)は、プレスフレーム10の枠内の加圧位置P(本件発明1における加圧チャンバ部(40)の内部空間)へ側方移動する或いは待機位置Qへ逆方向移動する。よって、本件発明1では、甲1に記載の発明に対して、工程時間の短縮や工程効率の上昇という効果は得られない。
そのため、ベッセル(30)が、加圧チャンバ部(40)の内部空間ヘ側方移動する或いは待機位置へ逆方向移動することは、全固体用二次電池の量産性を上げるという上記[課題1]を解決する手段とは言えない。
よって、請求項1~8では、全固体用二次電池の量産性を上げるという上記[課題1]を解決するために必要な構成が欠落しており、上記[課題1]を解決するための手段が反映されていない。
<9.4.>上記[課題2]を解決するための手段の検討
<9.4.1.>上記[課題2]を解決するための手段の特定
上記[課題2]は、全固体用二次電池の接触界面の最大化及び界面抵抗の最小化を可能にする全固体用二次電池高温加圧システムを提供することである。
(中略)
このように、全固体用二次電池の接触界面の最大化及び界面抵抗の最小化を可能にするという上記[課題2]を解決するための手段は、
[手段1]内部にバスケットが投入されたベッセルが側方移動して
[手段2]加圧チャンバ部の内部空間で高温加圧工程が行われるようにすること
であると、[0008]には記載されている。
(中略)
<9.4.4>上記[課題2]を解決するための手段についての結論
したがって、「内部にバスケットが投入されたベッセルが側方移動して加圧チャンバ部の内部空間で高温加圧工程が行われるようにすること」 (上記[手段1]および[手段2])は、全固体用二次電池の接触界面の最大化及び界面抵抗の最小化を可能にするという課題(上記[課題2]を解決するための手段とは言えない。
よって、請求項1~8では、全固体用二次電池の接触界面の最大化及び界面抵抗の最小化を可能にするという課題を解決するために必要な構成が欠落しており、上記[課題2]を解決するための手段が反映されていない。
<9.5>本件発明1~8のサポート要件の結論
したがって、本件発明1~8は、課題を解決するための手段が反映されたものではないため、発明の詳細な説明に記載したものとは言えない。よって、本件発明1~8に係る本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。」(特許異議申立書80~85頁)

(2)特許異議申立人の主張についての検討

本件特許明細書には、背景技術及び発明が解決しようとする課題に関する記載として、以下のような記載がある。

(下線は、説明のために当審で付した。)

「【0005】
このような全固体用二次電池における固体電解質は、イオンが固体格子の間で移動するので、活物質と電解質との接触界面を最大化しながらも界面抵抗を最小化しなければならない。このために、固体電解質層を積層した後など、水圧プレス装備で圧力を加える方式で製作されてきたが、当該方式の全固体用二次電池は量産に適さないという問題点がある。
【0006】
かかる問題点を解決するために、本発明の発明者は、改善された構造/方式を有する新規の全固体用二次電池高温加圧システムを提示し、詳細な内容は後述する。」
「【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、内部にバスケットが投入されたベッセルが側方移動して加圧チャンバ部の内部空間で高温加圧工程が行われるようにすることにより、全固体用二次電池の接触界面の最大化及び界面抵抗の最小化を可能にする全固体用二次電池高温加圧システム及び方法を提供することを目的とする。」

すなわち、全固体用二次電池における固体電解質は、活物質と電解質との接触界面を最大化しながらも界面抵抗を最小化しなければならないために、従来から水圧プレス装備で圧力を加える方式で製作されてきたが、当該方式の全固体用二次電池は量産に適さないという問題点があったため、そのような問題点を解決するために、内部にバスケットが投入されたベッセルが側方移動して加圧チャンバ部の内部空間で高温加圧工程が行われるような構成にし、全固体用二次電池の接触界面の最大化及び界面抵抗の最小化を可能にする全固体用二次電池高温加圧システムを提供するものである。

そして、請求項1に係る発明のように、移送部によりバスケットを移送させ、内部にバスケットが投入されたベッセルが側方移動して加圧チャンバ部の内部空間で高温加圧工程が行われるような構成を採用することにより、従来の技術よりも量産されるようになることは明らかであり、[課題1](全固体用二次電池の量産に適した全固体用二次電池高温加圧システムを提示すること)を解決しているといえる。

また、そのような構成を採用した請求項1に係る発明は、全固体用二次電池の接触界面の最大化及び界面抵抗の最小化を可能にする全固体用二次電池高温加圧システムを提供するものである。

なお、特許異議申立人は、本件発明1では、甲1発明に対して、工程時間の短縮や工程効率の上昇という効果は得られない旨の主張をしているが、上記第5の3(1)で検討したように、そもそも、甲1発明は、食品、飲料、金属粉末・セラミック粉末といった無機物(無機粉末)などの被処理物に付着する微生物の殺菌を目的とするものであり、全固体用二次電池に関する発明ではないので、[課題1](全固体用二次電池の量産に適した全固体用二次電池高温加圧システムを提示すること)を解決しているものではない。

以上より、請求項1ないし8に係る発明は、課題を解決するための手段が反映されたものであるといえ、請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているので、特許異議申立人の主張を採用することはできない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2024-701007

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