審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2024-700836

ポリエステル織物の脱色方法

審判番号
2024-700836
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-080932
登録番号
7444923
請求日
2024年09月04日
審決日
2025年08月19日
公報発行日
2025年11月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
  • 【権利者代理人】村山 靖彦
  • 【権利者代理人】飯田 雅人
  • 【権利者代理人】実広 信哉
  • 【異議申立人】石川 竜郎
審判長/審判官
  • 審判長 金丸 治之
  • 審判官 岩谷 一臣
  • 審判官 神山 茂樹
分類
P1651.121-YAA(D06L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7444923号発明「ポリエステル織物の脱色方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7444923号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 特許第7444923号の請求項1~9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7444923号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和4年5月17日(パリ条約による優先権主張2021年9月13日、台湾(TW))の出願であって、令和6年2月27日にその特許権の設定登録がされ、令和6年3月6日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年 9月 4日 :特許異議申立人石川竜郎(以下「申立人」と いう。)による本件特許に対する特許異議の 申立て 令和6年10月30日 :申立人による手続補正書(方式)の提出 令和7年 2月14日付け:取消理由通知書 令和7年 5月 1日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 なお、令和7年5月20日付けで当審から申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を行い、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、当該期間内に申立人から応答はなかった。 第2 訂正の請求について 1 訂正の内容 令和7年5月1日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7444923号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記第1の脱色液は、前記染料の一部の脱色において135℃~180℃で液相となるように維持され、」とあるのを、 「前記第1の脱色液は、前記染料の一部の脱色において145℃~180℃で液相となるように維持され、」に訂正する。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~9も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「前記第1の脱色温度は、135℃~180℃であり、」とあるのを、 「前記第1の脱色温度は、145℃~180℃であり、」に訂正する。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~9も同様に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1、2 訂正事項1は、第1の脱色液が染料の一部の脱色において液相となるように維持される温度、訂正事項2は、第1の脱色温度をそれぞれ訂正前の135℃~180℃から145℃~180℃に限定するものであるから訂正事項1、2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、明細書の【0073】の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (2)一群の請求項について 訂正前の請求項2~9は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1~9〕について請求されたものである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)及び第1のL値を有し且つ染料を含むことにより染色されたポリエステル織物を提供することと、 還元剤を含む第1の脱色液、及び酸化剤を含む第2の脱色液を提供することと、 前記第1の脱色液及び前記第2の脱色液のうちの一方で前記染料の一部の脱色を行い、且つ前記第1の脱色液及び前記第2の脱色液のうちの他方で前記染料の他の一部の脱色を行うことにより前記染料の色を除去することによって、前記ポリエステル織物を白色にし、且つ前記ポリエステル織物に第1のL値を超える第2のL値を与える、脱色処理を行うことと、 を含み、 前記第1の脱色液は、前記還元剤を含む水溶液であり、前記第1の脱色液において、前記還元剤の含有量は、0.05wt%~5.00wt%であり、且つ前記第1の脱色液は、前記染料の一部の脱色において145℃~180℃で液相となるように維持され、 前記脱色処理において、前記第1の脱色液が第1の脱色温度に加熱されることにより、前記ポリエステル織物に対して洗濯及び脱色が行われ、前記第1の脱色温度は、145℃~180℃であり、 前記第1の脱色液の前記第1の脱色温度が前記ポリエステル織物の前記ガラス転移温度より高く、前記第1の脱色液が、前記染料の一部の脱色において液相となるように維持されることを特徴とする、ポリエステル織物の脱色方法。 【請求項2】 前記第2の脱色液は、前記酸化剤を含む水溶液であり、 前記脱色処理において、前記第1の脱色液は、前記染料の一部に対して還元反応を行い、前記第2の脱色液は、前記染料の他の一部に対して酸化反応を行い、 前記第1の脱色液及び前記第2の脱色液を用いて異なる脱色ステップで交互に脱色を行うことによって、前記染料の色が完全に除去される、請求項1に記載のポリエステル織物の脱色方法。 【請求項3】 前記第1の脱色液における前記還元剤は、チオ硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、ロンガリット、二酸化チオ尿素、次亜リン酸ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、塩化スズ(II)、及びヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1つであり、 前記第2の脱色液における前記酸化剤は、過酸化水素、オゾン、硝酸、硝酸塩、過マンガン酸カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カルシウム、塩素酸塩、過塩素酸塩、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸塩、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸塩、重クロム酸ナトリウム及び重クロム酸塩からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載のポリエステル織物の脱色方法。 【請求項4】 前記第2の脱色液において、前記酸化剤の含有量は、0.05wt%~5.00wt%であり、且つ前記第2の脱色液は、前記染料の一部の脱色において80℃~180℃で液相となるように維持される、請求項2に記載のポリエステル織物の脱色方法。 【請求項5】 前記第2の脱色液が第2の脱色温度に加熱されることにより前記ポリエステル織物に対して洗濯及び脱色が行われ、前記第2の脱色温度は、80℃~180℃であり、 前記第2の脱色液の前記第2の脱色温度が前記ポリエステル織物の前記ガラス転移温度より高く、前記第2の脱色液が、前記染料の一部の脱色において液相となるように維持され、 前記ポリエステル織物の前記ガラス転移温度は、90℃未満である、請求項4に記載のポリエステル織物の脱色方法。 【請求項6】 前記脱色処理において、前記ポリエステル織物に含まれる前記染料の一部は、前記第1の脱色液及び前記第2の脱色液に溶解されることによって前記ポリエステル織物から除去され、且つ、前記染料が前記酸化反応及び前記還元反応を受けることにより前記染料の分子構造が安定となり、それによって前記染料の色が除去されて無色となる、請求項5に記載のポリエステル織物の脱色方法。 【請求項7】 前記第1の脱色液は、水溶液であり有機溶剤を含有しないか、若しくは10wt%以下の有機溶剤を含有し、 前記第2の脱色液は、水溶液であり有機溶剤を含有しないか、若しくは10wt%以下の有機溶剤を含有し、 前記脱色処理において、前記ポリエステル織物の固有粘度が低下するが、低下幅は10%未満である、請求項2に記載のポリエステル織物の脱色方法。 【請求項8】 前記脱色処理において、前記第1の脱色液又は前記第2の脱色液の重量は、前記ポリエステル織物の重量の5倍~100倍であり、且つ前記第1の脱色液又は前記第2の脱色液の前記ポリエステル織物に対する洗濯時間は、0.2時間~6.0時間である、請求項2に記載のポリエステル織物の脱色方法。 【請求項9】 染色された前記ポリエステル織物の前記第1のL値は、40以下であり、且つ前記ポリエステル織物は、前記脱色処理を行った後に、70以上の前記第2のL値を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリエステル織物の脱色方法。」 第4 取消理由通知の概要 訂正前の本件発明1~9対して、当審において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 取消理由(進歩性) 本件の請求項1~9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 引用文献1 KAYADECOLOR KP-SP、[online]、2005年12月12日、日本化薬株式会社、[2024年12月9日検索]、インターネット<http://web.archive.org/web/20061008032844/http://www.nipponkayaku.co.jp/japan/kagaku/shikizai/adjuvant/adjuvant_pdf/kayadecolor_kpsp.pdf>(申立人が提出した甲第1号証) 引用文献2 KAYADECOLOR KP-HKの安全データシート、作成日2014年12月15日、改定日2020年12月25日、日本化薬株式会社(申立人が提出した甲第7号証) 引用文献3 KAYADECOLOR KP-CYの安全データシート、作成日2014年12月16日、改定日2021年1月6日、日本化薬株式会社(申立人が提出した甲第8号証) 引用文献4 KAYADECOLOR KP-LVの安全データシート、作成日2014年12月25日、改定日2020年12月25日、日本化薬株式会社(申立人が提出した甲第9号証) 引用文献5 特開平10-88412号公報(当審が発見した文献) 引用文献6 特開平4-108189号公報(当審が発見した文献) 引用文献7 特開2010-126660号公報(申立人が提出した甲第10号証) 引用文献8 特開2007-254904号公報(申立人が提出した甲第11号証) 引用文献9 特開2007-254907号公報(申立人が提出した甲第12号証) 引用文献10 特開2009-173732号公報(申立人が提出した甲第13号証) 第5 当審の判断 1 引用文献 (1)引用文献1 ア 引用文献1に記載された事項 引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。表中の枠は甲号証で付されたもの。「・・・」は省略を示す。以下、同じ。)。 「『用途特徴』 酸化脱色用助剤 ・カヤデカラー KP-SPは、ポリエステル繊維を分散染料で染色した加工布の脱色用助剤です。繊維内部に拡散染着した染料を効率よく再放出させます。 ・高い白度が得られます。 ・機械装置に対する腐食性が制御されています。 ・塩素ガスの発生が殆どなく、作業性が優れています。 ・生地の脆化がありません。」(第1頁第1行~第7行) 「 [図:0001429002000001.jpg] 」(第1頁『品質規格』) 「 [図:0001429002000002.jpg] 」(第2頁) イ 引用文献1から認定できる事項 (ア)上記表『品質規格』の「2.」より、「カヤデカラー KP-SP」は、酸化剤配合品であることが見て取れる。 (イ)引用文献1の第2頁より、カヤロンポリエステル染料によるPET100%染色布が、脱色効果として、脱色布、再脱色布になるにしたがい、より高い白度となることが看取できる。 ウ 引用文献1に記載された発明 上記ア、イを総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「酸化剤配合品であるカヤデカラー KP-SPを用いた、繊維内部に拡散染着した染料を効率よく再放出させることにより、カヤロンポリエステル染料によるPET100%染色布が、脱色効果として、脱色布、再脱色布になるにしたがい、より高い白度となる脱色方法であって、 浴比を1:30~50として、 カヤデカラー KP-HK 6g/L カヤデカラー KP-CY 5g/L カヤデカラー KP-LV 2g/L ハイドロサルファイト 5~15g/L により135℃、40分で処理し、 その後、 カヤデカラー KP-SP 5g/L シュウ酸 3g/L により100℃、30分で処理する脱色方法。」 (2)引用文献7 ア 引用文献7に記載された事項 引用文献7には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 染色されたポリエステル繊維製品を脱色処理し、造粒処理して繊維造粒物を得た後、この繊維造粒物を回収ポリエステル、グリコールおよびアルカリ化合物と共に第1の反応装置に供給して解重合反応を行い、得られた低重合体を第2の反応装置に供給して重縮合反応を行うことを特徴とする再生ポリエステルの製造方法。 【請求項2】 脱色処理を、酸化還元洗浄脱色あるいは還元洗浄脱色の条件で行うことを特徴とする請求項1に記載の再生ポリエステルの製造方法。」 「【0001】 本発明は、染色されたポリエステル繊維製品から再生ポリエステルを製造する方法に関する。」 「【0015】 これらの市場から回収されたポリエステル繊維製品は、染色されているので、まず、そのポリエステル繊維製品を脱色処理する。脱色処理は、還元洗浄脱色や酸化還元洗浄脱色の条件で行なえばよい。 【0016】 還元洗浄による脱色は、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素、亜鉛スルホキシレート・ホルムアルデヒド、ナトリウムスルホキシドなどの還元剤を濃度0.1~10wt%、特に0.1~3wt%で含有する還元剤水溶液中に浸漬させることにより行えばよい。なかでも、ハイドロサルファイト0.07~7wt%と二酸化チオ尿素0.03~3wt%とを含有する還元剤水溶液を用いて行うことが好ましい。 【0017】 また、酸化還元洗浄脱色は、上記還元脱色を行った後、亜塩素酸ソーダとギ酸(またはシュウ酸や酢酸)とを濃度0.05~10wt%で含有する酸化剤水溶液に浸漬させることにより酸化処理を行う方法で行えばよい。この酸化処理は、なかでも、亜塩素酸ソーダ0.05~6wt%とギ酸0.02~2wt%とを含有する酸化剤水溶液を用いて行うことが好ましい。 【0018】 脱色処理により染料の殆どが除去されたポリエステル繊維製品は、次に、通常細かく裁断され、造粒処理されて繊維造粒物とする。例えば、細かく裁断されたポリエステル繊維製品を溶融押出機に供給し、溶融してダイからポリマーを吐出し、チップカッターを通して切断してペレット状の繊維造粒物とする。」 「【0036】 実施例1 回収されたポリエステル繊維製の染色された衣料からポリエステル以外の素材からなる付属品を除去して、実質的にポリエステルのみからなる廃衣料品とする。この廃衣料品を、還元剤としてハイドロサルファイト1.0wt%、二酸化チオ尿素0.3wt%の濃度を含有する還元剤水溶液(100℃)に60分間浸漬することにより、還元洗浄による脱色処理を行った。その後、細かく裁断した後、溶融押出機に供給し、260~270℃で溶融し、スクリーンチェンジャーを通して不要な残存物を取り除き、押出機の口金からポリマーを吐出し、ストランド状のポリマーをウォーターシュートに流してペレタイザーによりペレット状とした。このペレットを以下、回収繊維ペレットという。」 イ 引用文献7に記載された発明 上記アの記載を参酌し、特に【0015】~【0018】に着目すると、引用文献7には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「市場から回収されたポリエステル繊維製品は、染色されているので、まず、そのポリエステル繊維製品を脱色処理し、脱色処理は、還元洗浄脱色や酸化還元洗浄脱色の条件で行なえばよく(【0015】)、 還元洗浄による脱色は、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素、亜鉛スルホキシレート・ホルムアルデヒド、ナトリウムスルホキシドなどの還元剤を濃度0.1~10wt%、特に0.1~3wt%で含有する還元剤水溶液中に浸漬させることにより行えばよく、なかでも、ハイドロサルファイト0.07~7wt%と二酸化チオ尿素0.03~3wt%とを含有する還元剤水溶液を用いて行うことが好ましく(【0016】)、 また、酸化還元洗浄脱色は、上記還元脱色を行った後、亜塩素酸ソーダとギ酸(またはシュウ酸や酢酸)とを濃度0.05~10wt%で含有する酸化剤水溶液に浸漬させることにより酸化処理を行う方法で行えばよく、なかでも、亜塩素酸ソーダ0.05~6wt%とギ酸0.02~2wt%とを含有する酸化剤水溶液を用いて行うことが好ましく(【0017】)、 脱色処理により染料の殆どが除去されたポリエステル繊維製品を得るポリエステル繊維製品の脱色処理方法。」 ウ 引用文献7記載事項 上記アの【0036】を参酌すると、引用文献7には、以下の技術事項(以下「引用文献7記載事項」という。)が記載されている。 「実質的にポリエステルのみからなる廃衣料品を、還元剤としてハイドロサルファイト1.0wt%、二酸化チオ尿素0.3wt%の濃度を含有する還元剤水溶液(100℃)に60分間浸漬することにより、還元洗浄による脱色処理を行うこと。」 (3)引用文献2 ア 引用文献2に記載された事項 引用文献2には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001429002000003.jpg] 」(第1頁) 「 [図:0001429002000004.jpg] 」(第2頁) イ 引用文献2記載事項 上記アの記載を参酌すると、引用文献2には、以下の技術的事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。 「KAYADECOLOR KP-HKは、アルカリと、キレート剤と、リン化合物とを含み、有機溶剤は含まないこと。」 (4)引用文献3 ア 引用文献3に記載された事項 引用文献3には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001429002000005.jpg] 」(第1頁) 「 [図:0001429002000006.jpg] 」(第2頁) イ 引用文献3記載事項 上記アの記載を参酌すると、引用文献3には、以下の技術的事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。 「KAYADECOLOR KP-CYは、ジベンジルエーテル60%と、メタノール0.3~1.3%と、エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル0.1~1%と、プロパン-2-オール0.1~1%と、非イオン性および陰イオン性界面活性剤混合物、水とを含み、この成分から算出される有機溶剤の最大含有量は、63%程度(=60%+1.3%+1%+1%)であること。」 (5)引用文献4 ア 引用文献4に記載された事項 引用文献4には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001429002000007.jpg] 」(第1頁) 「 [図:0001429002000008.jpg] 」(第2頁) イ 引用文献4記載事項 上記アの記載を参酌すると、引用文献4には、以下の技術的事項(以下、「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。 「KAYADECOLOR KP-LVは、非イオン性および陰イオン性界面活性剤混合物と、プロパン-2-オール1~6%と、エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル0.1~1%と、水とを含み、この成分から算出される有機溶剤の最大含有量は、7%(=6%+1%)であること。」 (6) 引用文献8 ア 引用文献8に記載された事項 引用文献8には次の事項が記載されている。 「【請求項4】 アゾ系分散染料で染色されたポリエステル系繊維製品を、アルカリ剤、還元剤および非イオン系界面活性剤を含む脱色用処理液にて処理することを特徴とするリサイクル用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。 【請求項5】 前記還元剤が、ハイドロサルファイトおよび二酸化チオ尿素を含む、請求項4に記載のリサイクル用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。」 「【0026】 有用な還元剤としては、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素、亜鉛スルホキシレート・ホルムアルデヒド、ナトリウムスルホキシレート・ホルムアルデヒドなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用されてもよい。特に、ハイドロサルファイトと二酸化チオ尿素とを併用するのが好ましい。 これらの還元剤は、0.1~10%の濃度、特に0.1~3%の濃度の水溶液として用いられるのが好ましい。この濃度が0.1%未満であると脱色が十分でないことがあり、10%を超えても脱色効果にさほど差がなく、コスト的に不利である。 ・・・ 【0032】 また、脱色処理は、100~140℃、特に120~140℃で、10~180分間行われるのが好ましい。この温度が100℃を下まわると十分脱色ができないことがあり、また140℃を超えるとポリエステル系繊維が脆化してしまうことがある。 また、脱色処理されるポリエステル系繊維製品と脱色処理液の浴比は、ポリエステル系繊維製品の染色濃度によっても変わるが、1:5~1:500程度がよい。浴比が1:5を下まわると十分な脱色が得られないことがあり、1:500を超えても脱色効果にさほど差がみられないため、コスト的に不利である。」 「【実施例】 【0046】 以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。 実施例1 ポリエステルタフタ(ポリエチレンテレフタレート、タテ糸83デシテックス/72フィラメント、ヨコ糸83デシテックス/72フィラメント、密度 タテ114本/2.54cm、ヨコ92本/2.54cm)を、アゾ系分散染料Dianix Yellow 7GL200%(ピロリドンアゾ型、C.I.Disperse Yellow 126、ダイスタージャパン製)を用い、生地の質量に対し、1%omfの染料を用いて、液流染色機により、130℃で30分間染色を行い、黄色に染色した。 【0047】 次に、帯電防止剤ナイスポールFL(日華化学製)の0.5%水溶液を用いてパディング処理し、帯電防止加工を行った。 次に、上記のタフタを用いてブラウスを縫製し、リサイクル用ポリエステル系繊維製品とした。 上記ブラウスをユニホームとして着用した後、ブラウスを回収した。 回収したブラウスからボタン等を取り去り、ワッシャーにて下記脱色処理液を用い、常温より2℃/分にて昇温しながら135℃まで昇温を行い、135℃にて40分間の脱色処理を1回行った(浴比1:50)。 【0048】 脱色処理液 苛性ソーダ 0.3% ハイドロサルファイト 0.5% 二酸化チオ尿素 0.2% ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル 1.0% 硫酸化ひまし油 0.1% N-ジブチルフタルイミド 0.5% 安息香酸ベンジル 0.2% キレート剤(DTPA) 0.01% 水 残量」 イ 引用文献8記載事項 上記アの記載を参酌すると、引用文献8には、以下の技術的事項(以下、「引用文献8記載事項」という。)が記載されている。 「ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル織物の脱色方法において、ハイドロサルファイトおよび二酸化チオ尿素を含む脱色処理液の浴比は、1:5~1:500程度がよいこと。」 (7) 引用文献9 ア 引用文献9に記載された事項 引用文献9には次の事項が記載されている。 「【請求項4】 アゾ系分散染料で染色されたポリエステル繊維製品を、アルカリ剤、還元剤および非イオン系界面活性剤を含む脱色用処理液にて処理することを特徴とする染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。 【請求項5】 前記還元剤が、ハイドロサルファイトおよび二酸化チオ尿素を含む、請求項4に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。」 「【0022】 有用な還元剤としては、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素、亜鉛スルホキシレート・ホルムアルデヒド、ナトリウムスルホキシレート・ホルムアルデヒドなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用されてもよい。特に、ハイドロサルファイトと二酸化チオ尿素とを併用するのが好ましい。 これらの還元剤は、0.1~10%の濃度、特に0.1~3%の濃度の水溶液として用いられるのが好ましい。この濃度が0.1%未満であると脱色が十分でないことがあり、10%を超えても脱色効果にさほど差がなく、コスト的に不利である。 ・・・ 【0028】 ・・・ また、脱色処理は、100~140℃、特に120~140℃で、10~180分間行なわれるのが好ましい。この温度が100℃を下まわると十分脱色ができないことがあり、また140℃を超えるとポリエステル系繊維が脆化してしまうことがある。 また、脱色処理されるポリエステル系繊維製品と脱色処理液の浴比は、ポリエステル系繊維製品の染色濃度によっても変わるが、1:5~1:500程度がよい。浴比が1:5を下まわると十分な脱色が得られないことがあり、1:500を超えても脱色効果にさほど差がみられないため、コスト的に不利である。」 「【実施例】 【0030】 以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。 実施例1 ポリエステルタフタ(ポリエチレンテレフタレート、タテ糸83デシテックス/72フィラメント、ヨコ糸83デシテックス/72フィラメント、密度 タテ114本/2.54cm、ヨコ92本/2.54cm)を、アゾ系分散染料Dianix Yellow 7GL200%(ピロリドンアゾ型、C.I.Disperse Yellow 126、ダイスタージャパン製)を用い、生地の質量に対し、1%omfの染料を用いて、液流染色機により、130℃で30分間染色を行い、黄色に染色した。 【0031】 次に、帯電防止剤ナイスポールFL(日華化学製)の0.5%水溶液を用いてパディング処理し、帯電防止加工を行った。 次に、上記のタフタを用いてブラウスを縫製し、リサイクル用ポリエステル系繊維製品とした。 上記ブラウスをユニホームとして着用した後、ブラウスを回収した。 回収したブラウスからボタン等を取り去り、高圧ワッシャーにて下記脱色処理液を用い、常温より2℃/分にて昇温しながら135℃まで昇温を行い、135℃にて40分間脱色処理を1回行なった(浴比1:50)。 【0032】 脱色処理液 苛性ソーダ 0.3% ハイドロサルファイト 0.5% 二酸化チオ尿素 0.2% ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル 1.0% 硫酸化ひまし油 0.1% N-ジブチルフタルイミド 0.5% 安息香酸ベンジル 0.2% キレート剤(DTPA) 0.01% 水 残量」 イ 引用文献9記載事項 上記アの記載を参酌すると、引用文献9には、以下の技術的事項(以下、「引用文献9記載事項」という。)が記載されている。 「ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル織物の脱色方法において、 ハイドロサルファイトおよび二酸化チオ尿素を含む脱色処理液の浴比は、1:5~1:500程度がよいこと。」 (8) 引用文献10 ア 引用文献10に記載された事項 引用文献10には次の事項が記載されている。 「【0010】 本発明に適用されるポリエステル繊維製品としては、衣料製品、たとえば、ユニフォーム、レインウェア、スポーツウェア、アウターウェア、インナーウェア、ストッキング類、水着・レオタード類などの他に、カーシート、そのシートカバー車輌天井張り用や内壁張り用布帛のような自動車内装用布帛製品、ソファー張り布帛等の家具表装・内張り用布帛製品が挙げられる。まず、これらの繊維製品を市場から回収し、ファスナー、スナップ、ボタン、留め金などを取り外して実質的にポリエステル繊維のみからなる繊維製品とする。市場から回収されたポリエステル繊維製品は染色されているのが普通であるから、まず、染色されたポリエステル繊維製品を脱色する。ポリエステル繊維製品は、直接染料、反応染料、スレン染料、分散染料、カチオン染料、反応性染料、パット染料、ナフトール染料、硫化染料、媒染染料、クロム染料などの染料により染色する方法や着色顔料により染色する方法など多種多様な染色方法で染色されている可能性があるが、中でも分散染料による染色はポリエステルなどの合成繊維に対して良好な染色性を示し、極めて優れた染色方法であるため、分散染料による染色がされているポリエステル繊維製品が一般的であるから、脱色としては、還元洗浄による脱色を行うのが良い。還元洗浄とは、還元剤の水溶液で洗浄することをいうが、還元洗浄に用いられる還元剤としては、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素、亜鉛スルホキシレート・ホルムアルデヒド、ナトリウムスルホキシレート・ホルムアルデヒドなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いても良く、2種以上を併用されてもよい。これらの還元剤は、0.1~10重量%の濃度、特に0.1~3重量%の濃度の水溶液として用いるのが好ましい。この濃度が0.1重量%未満であると脱色が十分でないことがあり、10重量%を超えても脱色効果にさほど差がなく、コスト的に不利である。特に、ハイドロサルファイトと二酸化チオ尿素とを併用するのが好ましく、その場合、ハイドロサルファイトが0. 07~7重量%、二酸化チオ硫酸が0.03~3重量%の濃度となるように水溶液を作製するのが好ましい。一方、脱色には、酸化洗浄による脱色もあるが、脱色において、一般的に染色加工に用いられているステンレス製加工機を用いる場合、加工機が腐食してしまうため、チタンメッキ製などの加工機を用いることを余儀なくされ、設備費が高額となり、再生コストが高くなりがちである。還元洗浄は、ステンレス製加工機を使用して脱色処理でき、また人体に対して有害な有機溶剤を用いる必要性もないので、安価で、安全な脱色方法である。」 「【0027】 (実施例1) 回収された染色ポリエステル繊維製品を、還元剤としてハイドロサルファイト0.5重量%、二酸化チオ尿素0.2重量%の濃度に調整した水溶液に135℃で30分間浸漬・攪拌して還元洗浄による脱色を行った後、細かく裁断する。・・・」 イ 引用文献10記載事項 上記アの記載を参酌すると、引用文献10には、以下の技術的事項(以下、「引用文献10記載事項」という。)が記載されている。 「ポリエステル織物の脱色方法において、135℃程度の温度の脱色液で30分間脱色を行うこと。」 (9) 周知技術 ア 引用文献5に記載された事項 引用文献5には次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、常圧で製品染めされたポリエステル外衣製品およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、色彩の変化に富み柔らかな風合を有する、常圧で製品染めされたポリエステル外衣製品およびその製造方法に関する。」 「【0009】本発明において、外衣とは、衣料用繊維製品の外衣をいい、例えば、スラックス、ボトムなどのズボン類;キュロットスカート、フレアスカート、タイトスカート、ギャザースカートなどのスカート類;ブルゾン、ジャンパーなど上衣類;セーター、カーディガンなどジャケット類;コート類;シャツ;ブラウス;オーバーオールが挙げられる。」 「【0017】・・・セットした布帛を外衣に縫製した後、例えば、常圧型染色機のロータリーワッシャーやパドル染色機など通常の染色機を用いて染色を施す。・・・ 【0018】また、本発明のポリエステル外衣製品は、製品染色後、あるいは染色工程において、色を部分的に白っぽく退色させてもよい。表面に色の変化や自然なむら感を付与でき、ジーンズ調外衣製品などに好適である。具体的には染色後にハイドロサルファイトなどの還元剤や、シルブライトや過酸化水素などの漂白剤で染色物を分解する。・・・」 イ 引用文献6に記載された事項 引用文献6には次の事項が記載されている。 「本発明は、繊維製品一般(例えば、材質が綿100%、ポリエステル100%、綿とポリエステルの混紡、毛とポリエステルの混紡等の縫製品及び原反生地)に模様を作成する方法に関する。」(第2頁左上欄第8行~第11行) 「本発明は、第1に、漂白抑制剤で所望の模様を繊維製品に描き、前記繊維製品を乾燥させ、前記製品を漂白液に浸し所定の時間攪拌し、かくして、前記模様の部分が他の部分に比して漂白前の色に残ることを特徴とする、繊維製品の模様作成方法である。 前記漂白抑制剤として使用できるものには、卵白又は卵黄又はこれらの混合物を含む糊状物質、いわゆる糊、蝋等があり、これらは繊維製品に漂白液の漂白作用に抗する抵抗力を付与する。 漂白液は、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム等から選択される。このような漂白液の適当な濃度は当業者にはよく知られている。」(第2頁右上欄第3行~第16行) 「実施例 1 まず、第3図に示すように、既に従来の方法で模様が作成されている繊維製品の生地1に、いわゆるスクリーン印刷法により、漂白抑制剤として卵白と卵の殻を粒子状に粉末になしたものを小麦粉及び水性ペンキ(色は青)の10重量%程度とともに工業用(エチル)アルコール中で混合・攪拌して作成したものを使用して図柄mが描かれた。 この繊維製品は、乾燥機内で一定時間乾燥させた後、乾燥機から取り出された。 乾燥の後、次亜塩素酸カルシウムの凡そ6(容積)%の水溶液中に投入し、一定時間(3分間)攪拌することにより脱色を行った 生地1は、第4図のように、次亜塩素酸カルシウムの脱色作用により、全体的に色抜きされた。しかし、図柄mが描かれた部分は、次亜塩素酸カルシウムの脱色作用が抑制され、図柄mの部分だけが鮮やかな漂白前の色で残っていた。」(第3頁左上欄第1行~第18行) ウ 周知技術について 上記ア、イより、以下の事項は周知の技術(以下「周知技術」という。)である。 「ポリエステル織物の脱色に酸化剤として、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムを用いること。」 3 取消理由(進歩性)について (1)引用文献1を主引用例とする場合 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 ・引用発明1の「カヤロンポリエステル染料によるPET100%染色布」は、明度として所定のL値を有していることは明らかであるから、本件発明1の「ガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)及び第1のL値を有し且つ染料を含むことにより染色されたポリエステル織物」とは、「第1のL値を有し且つ染料を含むことにより染色されたポリエステル織物染料を含むことにより染色されたポリエステル織物」の限りにおいて一致する。また、引用発明1における脱色処理に際し、この「染色布」を用いるのであるから、本件発明1の「ポリエステル織物を提供すること」に相当する。 ・引用発明1の「ハイドロサルファイト」は、本件発明1の「還元剤」に相当するので、引用発明1の「カヤデカラー KP-HK 6g/L、カヤデカラー KP-CY 5g/L、カヤデカラー KP-LV 2g/L、ハイドロサルファイト 5~15g/L」をあわせたものが、本件発明1の「還元剤を含む第1の脱色液」に相当する。また、引用発明1の「カヤデカラー KP-SP」は「酸化剤配合品」であるから、引用発明1の「カヤデカラー KP-SP 5g/L、シュウ酸 3g/L」をあわせたものが、本件発明1の「酸化剤を含む第2の脱色液」に相当する。そして、引用発明1では、脱色処理に際しこれらを用いるものであるから、これは、本件発明1における「第1の脱色液」及び「第2の脱色液」を「提供すること」に相当する。 ・引用発明1の「浴比を1:30~50として、カヤデカラー KP-HK 6g/L、カヤデカラー KP-CY 5g/L、カヤデカラー KP-LV 2g/L、ハイドロサルファイト 5~15g/Lにより135℃、40分で処理」する態様が、本件発明1の「前記第1の脱色液及び前記第2の脱色液のうちの一方で前記染料の一部の脱色を行」う態様に相当し、引用発明1の「その後、カヤデカラー KP-SP 5g/L、シュウ酸 3g/Lにより100℃、30分で処理する」する態様が、本件発明1の「且つ前記第1の脱色液及び前記第2の脱色液のうちの他方で前記染料の他の一部の脱色を行うこと」に相当する。そして、引用発明1の「繊維内部に拡散染着した染料を効率よく再放出させることにより、カヤロンポリエステル染料によるPET100%染色布が、脱色効果として、脱色布、再脱色布になるにしたがい、より高い白度となる」態様により、L値が上昇することは明らかであるから、これは、本件発明1の「前記染料の色を除去することによって、前記ポリエステル織物を白色にし、且つ前記ポリエステル織物に第1のL値を超える第2のL値を与える脱色処理を行うこと」に相当する。 ・引用発明1の「浴比を1:30~50として、カヤデカラー KP-HK 6g/L、カヤデカラー KP-CY 5g/L、カヤデカラー KP-LV 2g/L、ハイドロサルファイト 5~15g/Lを135℃、40分で処理」する態様は、最初の脱色処理として135℃を維持して40分処理するものと解されるところ、技術常識に鑑みれば、液相の状態で処理されるものに相違ない。そうすると、当該態様は、本願発明1の「第1の脱色液が、前記染料の一部の脱色において」「液相となるように維持される」こととに相当する。 ・また、引用発明1の当該態様は、本件発明1の「第1の脱色液は、前記染料の一部の脱色において145℃~180℃で液相となるように維持され、 前記脱色処理において、前記第1の脱色液が第1の脱色温度に加熱されることにより、前記ポリエステル織物に対して洗濯及び脱色が行われ、 前記第1の脱色温度は、145℃~180℃であり」との関係において、「第1の脱色液は、前記染料の一部の脱色において特定の温度で液相となるよう維持され、 前記脱色処理において、前記第1の脱色液が第1の脱色温度に加熱されることにより、前記ポリエステル織物に対して洗濯及び脱色が行われ、前記第1の脱色温度は、特定の温度であ」る限りにおいて一致する。 ・引用発明1の「ポリエステル繊維を分散染料で染色した加工布」の「脱色方法」が本件発明1の「ポリエステル織物の脱色方法」に相当する。 そうすると、本件発明1と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。 ・一致点1 「第1のL値を有し且つ染料を含むことにより染色されたポリエステル織物を提供することと、 還元剤を含む第1の脱色液、及び酸化剤を含む第2の脱色液を提供することと、 前記第1の脱色液及び前記第2の脱色液のうちの一方で前記染料の一部の脱色を行い、 且つ前記第1の脱色液及び前記第2の脱色液のうちの他方で前記染料の他の一部の脱色を行うことにより前記染料の色を除去することによって、前記ポリエステル織物を白色にし、 且つ前記ポリエステル織物に第1のL値を超える第2のL値を与える、脱色処理を行うことと、を含み、 且つ前記第1の脱色液は、前記染料の一部の脱色において特定の温度で液相となるよう維持され、 前記脱色処理において、前記第1の脱色液が第1の脱色温度に加熱されることにより、前記ポリエステル織物に対して洗濯及び脱色が行われ、 前記第1の脱色温度は、上記特定の温度であり、前記第1の脱色液が、前記染料の一部の脱色において液相となるように維持される、ポリエステル織物の脱色方法。」 ・相違点1-1 ポリエステル織物に関し、本件発明1では「ガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)」を有しているのに対して、引用発明1においてはそのような温度を有しているか不明な点。 ・相違点1-2 第1の脱色液に関し、本件発明1では「還元剤を含む水溶液」であるのに対して、引用発明1では「還元剤を含む脱色液」であるものの「水溶液」かどうか不明であり、また、還元剤の含有量についても、本件発明1では脱色液に対して「0.05wt%~5.00wt%」であるのに対して、引用発明1では、還元剤であるハイドロサルファイトの含有量が「5~15g/L」とされているが、脱色液に対する重量%は不明である点。 ・相違点1-3 第1の脱色温度に関し、本件発明1では「第1の脱色液の前記第1の脱色温度が前記ポリエステル織物の前記ガラス転移温度より高」いのに対して、引用発明1では、相違点1-1と関連してガラス転移温度が不明であり、当該構成を有するか不明な点。 ・相違点1-4 第1の脱色液の脱色における特定の温度及び第1の脱色温度である特定の温度が、本件発明1では「145℃~180℃」であるのに対して、引用発明1では「135℃」である点。 (イ)判断 事案に鑑み相違点1-4から検討する。 相違点1-4に係る本件発明1の構成について、脱色液の脱色における温度を145℃以上とすることは、引用文献1のみならず引用文献2~10のいずれにも記載も示唆も見いだせない。 むしろ、引用文献8の【0032】及び引用文献9の【0028】には、脱色処理の温度が140℃を超えるとポリエステル系繊維が脆化してしまうことがある旨の記載があることから、引用発明1における、第1の脱色液の脱色における温度及び第1の脱色温度を140℃を超えた「145℃~180℃」とすることには阻害要因があるといえる。 よって、引用発明1において相違点1-4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ)小括 以上によれば、相違点1-1~1-3を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1及び引用文献2~10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加するものであるから、上記アで説示したのと同様の理由により、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)引用文献7を主引用例とする場合 ア 本件発明1について (ア)対比 ・引用発明2の「市場から回収されたポリエステル繊維製品は、染色されているので」、明度として所定のL値を有していることは明らかであるから、本件発明1の「ガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)及び第1のL値を有し且つ染料を含むことにより染色されたポリエステル織物」とは、「第1のL値を有し且つ染料を含むことにより染色されたポリエステル織物染料を含むことにより染色されたポリエステル織物」の限りにおいて一致する。また、引用発明2における脱色処理に際し、この「ポリエステル繊維製品」を用いるのであるから、本件発明1の「ポリエステル織物を提供すること」に相当する。 ・引用発明2の「還元洗浄による脱色」を行う「ハイドロサルファイト0.07~7wt%と二酸化チオ尿素0.03~3wt%とを含有する還元剤水溶液」が、本件発明1の「還元剤を含む第1の脱色液」に相当し、引用発明2の「還元脱色を行った後」に行う「酸化還元洗浄脱色」に用いる「亜塩素酸ソーダ0.05~6wt%とギ酸0.02~2wt%とを含有する酸化剤水溶液」が、本件発明1の「酸化剤を含む第2の脱色液」に相当する。また、引用発明2では、脱色処理に際しこれらを用いるものであるから、これは、本件発明1における「第1の脱色液」及び「第2の脱色液」を「提供すること」に相当する。 ・引用発明2の「還元洗浄による脱色」が本件発明1の「前記第1の脱色液及び前記第2の脱色液のうちの一方で前記染料の一部の脱色」に相当し、引用発明2の「還元脱色を行った後」に行う「酸化還元洗浄脱色」が、本件発明1の「且つ前記第1の脱色液及び前記第2の脱色液のうちの他方で前記染料の他の一部の脱色を行うこと」に相当する。また、引用発明2の「ポリエステル繊維製品」が「脱色処理により染料の殆どが除去され」る態様は、染料が殆ど除去されているので、「白色」になり、そうすると明度も向上すること明らかであるから、これは、本件発明1の「染料の色を除去することによって、前記ポリエステル織物を白色にし、且つ前記ポリエステル織物に第1のL値を超える第2のL値を与える脱色処理を行うこと」に相当する。 ・引用発明2の「ハイドロサルファイト0.07~7wt%と二酸化チオ尿素0.03~3wt%とを含有する還元剤水溶液」は、還元剤の量がハイドロサルファイトと二酸化チオ尿素の合計で1.0~10wt%となる水溶液であるから、本件発明1の「前記第1の脱色液は、前記還元剤を含む水溶液であり、前記第1の脱色液において、前記還元剤の含有量は、0.05wt%~5.00wt%であり」に相当する。 ・引用発明2の「ポリエステル繊維製品の脱色処理方法」が本件発明1の「ポリエステル織物の脱色方法」に相当する。 そうすると、本件発明1と引用発明2の一致点及び相違点は次のとおりである。 ・一致点2 「第1のL値を有し且つ染料を含むことにより染色されたポリエステル織物染料を含むことにより染色されたポリエステル織物を提供することと、 還元剤を含む第1の脱色液、及び酸化剤を含む第2の脱色液を提供することと、 前記第1の脱色液及び前記第2の脱色液のうちの一方で前記染料の一部の脱色を行い、且つ前記第1の脱色液及び前記第2の脱色液のうちの他方で前記染料の他の一部の脱色を行うことにより前記染料の色を除去することによって、前記ポリエステル織物を白色にし、且つ前記ポリエステル織物に第1のL値を超える第2のL値を与える、脱色処理を行うことと、 を含み、 前記第1の脱色液は、前記還元剤を含む水溶液であり、前記第1の脱色液において、前記還元剤の含有量は、0.05wt%~5.00wt%である、ポリエステル織物の脱色方法。」 ・相違点2-1 ポリエステル織物に関し、本件発明1では「ガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)」を有しているのに対して、引用発明2においてはそのような温度を有しているか不明な点。 ・相違点2-2 本件発明1では、「第1の脱色液は、前記染料の一部の脱色において145℃~180℃で液相となるように維持され、前記脱色処理において、前記第1の脱色液が第1の脱色温度に加熱されることにより、前記ポリエステル織物に対して洗濯及び脱色が行われ、前記第1の脱色温度は、145℃~180℃であ」るのに対して、引用発明2では、還元剤水溶液による脱色温度が不明である点。 ・相違点2-3 上記相違点2-1、2-2と関連し、本件発明1では、「第1の脱色温度が前記ポリエステル繊維のガラス転移温度より高」いのに対して、引用発明2では、ポリエステル繊維製品を構成するポリエステル繊維のガラス転移温度及び還元剤水溶液による脱色温度が不明である点。 (イ)判断 事案に鑑み相違点2-2から検討する。 相違点2-2に係る本件発明1の構成について、脱色液の脱色における温度を145℃以上とすることは、引用文献1のみならず引用文献2~10のいずれにも記載も示唆も見いだせない。 むしろ、引用文献8の【0032】及び引用文献9の【0028】には、脱色処理の温度が140℃を超えるとポリエステル系繊維が脆化してしまうことがある旨の記載があることから、引用発明2における、第1の脱色液の脱色における温度及び第1の脱色温度を140℃を超えた「145℃~180℃」とすることには阻害要因があるといえる。 よって、引用発明2において相違点2-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ)小括 以上によれば、相違点2-1、2-3を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2及び引用文献1~6、8~10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加するものであるから、上記アで説示したのと同様の理由により、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1~9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によって取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700836

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決41件(南亞塑膠工業股▲分▼有限公司、石川 竜郎)
  • 2022-701189異議申立 / 2023-02-03 / 維持艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法
    同じ当事者: 南亞塑膠工業股▲分▼有限公司、石川 竜郎
  • 2025-700006異議申立 / 2026-06-12 / 訂正認容ハイブリッド成形体、成形装置、及び成形方法
    同じ当事者: 石川 竜郎
  • 2025-700797異議申立 / 2026-04-30 / 訂正認容硬化性樹脂、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物
    同じ当事者: 石川 竜郎
  • 2026-700139異議申立 / 2026-04-24 / 維持ポリエステルフィルム
    同じ当事者: 石川 竜郎
  • 2024-701058異議申立 / 2026-04-07 / 請求成立(取消)ハニカム積層体の製造方法、ハニカム積層体、積層体
    同じ当事者: 石川 竜郎
同じ論点・分野の審決(審決分類)2件(121・D06L)
  • 2022-016382拒絶査定不服審判 / 2023-12-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)水溶性単位用量物品を使用して布地を洗濯するプロセス
    共通の審決分類: 121・D06L
  • 2018-009726拒絶査定不服審判 / 2020-01-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)布地を洗濯する方法
    共通の審決分類: 121・D06L

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存