特許異議申立
2023-701223
電子インタフェースを備えた電子カード
- 審判番号
- 2023-701223
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-121878
- 登録番号
- 7278336
- 請求日
- 2023年11月17日
- 審決日
- 2024年08月29日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】アップル インコーポレイテッド
- 【権利者代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 【異議申立人】真角 侑子
- 審判長/審判官
- 審判長 須田 勝巳
- 審判官 大塚 俊範
- 審判官 山崎 慎一
- 分類
- P1651.121-YAA(G06K) / P1651.537-YAA(G06K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7278336号発明「電子インタフェースを備えた電子カード」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7278336号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6~12〕、〔13~18〕について訂正することを認める。
特許第7278336号の請求項1~6、8~18に係る特許を維持する。
特許第7278336号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7278336号の請求項1~18に係る特許についての出願は、令和1年8月29日(パリ条約による優先権主張 2018年9月27日(以下、「優先日」という。)、2019年3月6日、2019年7月30日 いずれも米国)の出願である特願2019-156762号の一部を、令和3年7月26日に新たな特許出願としたものであって、令和5年5月11日にその特許権の設定登録がされ、同年5月19日に特許掲載公報が発行されたものである。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年11月17日 :特許異議申立人真角侑子(以下「申立人」と
いう。)による請求項1~18に係る特許に
対する特許異議の申立て
令和6年 2月 8日付け:取消理由通知書
令和6年 5月13日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 5月28日付け:訂正請求があった旨の通知書(特許法第12
0条の5第5項)
令和6年 6月25日 :申立人による意見書(以下、「申立人意見
書」という。)の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正は、特許第7278336号(以下、「本件特許」という。)の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~18について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項1、訂正事項2-1~2-3及び訂正事項3のとおりである(なお、下線は訂正部分を示す。)。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に「前記プレート基板の前記前面上に配設され、前記端子電極アレイを囲む導電材料を含む周辺部」と記載されているのを、「前記プレート基板の前記前面上に配設され、前記端子電極アレイを囲む導電材料を含む周辺部であって、前記周辺部が楕円形の開口のアレイを画定し、前記端子電極アレイの各端子電極が前記楕円形の開口のアレイの対応する開口内に配置される、周辺部」に訂正する。
(2)訂正事項2-1
本件訂正前の請求項6に「前記プレート基板の前記前面上に配設され、前記端子電極アレイの各端子電極を囲む導電材料を含む周辺部であって、間隙によって前記端子電極アレイの各端子電極から分離されている前記周辺部」と記載されているのを、「前記プレート基板の前記前面上に配設され、前記端子電極アレイの各端子電極を囲む導電材料を含む周辺部であって、前記周辺部が間隙によって前記端子電極アレイの各端子電極から分離されており、前記周辺部が楕円形の開口のアレイを画定し、前記端子電極アレイの各端子電極が前記楕円形の開口のアレイの対応する開口内に配置される、周辺部」に訂正する。
(3)訂正事項2-2
本件訂正前の請求項7を削除する。
(4)訂正事項2-3
本件訂正前の請求項12に「前記第2の層が、約0.5μmの表面粗さRaを有し、前記強磁性膜が、約0.5μmの表面粗さRaを有する」と記載されているのを、「前記第2の層が、0.5μmの表面粗さRaを有し、前記強磁性膜が、0.5μmの表面粗さRaを有する」に訂正する。
(5)訂正事項3
本件訂正前の請求項13に「前記基板の前記第1の面上に配置され、前記導電材料の第2の部分で形成された導電コーティングであって、前記端子電極アレイの各端子電極を囲む前記導電コーティング」と記載されているのを、「前記基板の前記第1の面上に配置され、前記導電材料の第2の部分で形成された導電コーティングであって、前記導電コーティングが前記端子電極アレイの各端子電極を囲み、前記導電コーティングが楕円形の開口のアレイを画定し、前記端子電極アレイの各端子電極が前記楕円形の開口のアレイの対応する開口内に配置される、導電コーティング」に訂正する。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「周辺部」について、「周辺部が楕円形の開口のアレイを画定し、端子電極アレイの各端子電極が前記楕円形の開口のアレイの対応する開口内に配置される」ことを具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書1号に定める特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記(ア)に示したとおり、訂正事項1は、「周辺部」の構成について、具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書段落【0122】及び図面の図6Dの記載に基づいて導き出される構成であり、訂正事項1は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(2)訂正事項2-1~2-3について
ア 訂正事項2-1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2-1は、訂正前の請求項6における「周辺部」について、「周辺部が楕円形の開口のアレイを画定し、前記端子電極アレイの各端子電極が前記楕円形の開口のアレイの対応する開口内に配置される」ことを具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書1号に定める特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記(ア)に示したとおり、訂正事項2-1は、「周辺部」の構成について、具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2-1は、願書に添付した明細書段落【0122】及び図面の図6Dの記載に基づいて導き出される構成であり、訂正事項2-1は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
イ 訂正事項2-2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2-2は、訂正前の請求項7を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に定める特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2-2は、訂正前の請求項7を削除するというものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条6項に定める実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにはあたらない。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2-2は、訂正前の請求項7を削除するというものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に定める、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものと認める。
ウ 訂正事項2-3について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2-3は、訂正前の請求項12における「第2の層」及び「強磁性膜」がそれぞれ「約0.5μmの表面粗さRa」を有するとの記載から、「約」との文言を削除するものであり、明瞭でなかった表面粗さを明確にする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認める。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記(ア)に示したとおり、訂正事項2-3は、「第2の層」及び「強磁性膜」の表面粗さを明確にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2-3は、願書に添付した明細書段落【0040】、【0086】の記載に基づいて導き出される構成であり、訂正事項2-3は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3について
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項13における「導電コーティング」について、「導電コーティングが楕円形の開口のアレイを画定し、前記端子電極アレイの各端子電極が前記楕円形の開口のアレイの対応する開口内に配置される」ことを具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書1号に定める特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記(ア)に示したとおり、訂正事項3は、「導電コーティング」の構成について、具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、願書に添付した明細書段落【0122】及び図面の図6Dの記載に基づいて導き出される構成であり、訂正事項3は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(4)独立特許要件について
本件においては、本件訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(5)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~5は、訂正前の請求項2~5が訂正の請求の対象である請求項1を引用しているから、本件訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、一群の請求項である。
また、本件訂正前の請求項6~12は、訂正前の請求項7~12が訂正の請求の対象である請求項6を引用しているから、本件訂正前の請求項6~12に対応する訂正後の請求項6~12は、一群の請求項である。
また、本件訂正前の請求項13~18は、訂正前の請求項14~18が訂正の請求の対象である請求項13を引用しているから、本件訂正前の請求項13~18に対応する訂正後の請求項13~18は、一群の請求項である。
そして、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
(6)申立人意見書について
申立人は、申立人意見書において、訂正事項3に関し、以下の点を主張している。
「(1)訂正要件違反(「楕円形の開口のアレイ」)
特許権者は、令和6年5月13日付け訂正請求書において、特許請求の範囲の請求項1、6に「前記周辺部が楕円形の開口のアレイを画定し」との記載を追加し、請求項13に「前記導電コーティングが楕円形の開口のアレイを画定し」との記載を追加することを求めている。
しかし、これらの訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正ではない。
この点、特許権者は、令和6年5月13日付け意見書において、本件特許明細書の段落【0122】には、「図6Dでは、端子電極662dは、空隙又は溝664dによって周辺部630dから分離されている。」との記載がなされており、図6Dには、周辺部630Dが楕円形の開口のアレイを画定することが記載されているなどと述べている(同意見書の4頁2行~5行、6頁18行~22行、10頁下から2行~11頁2行)。
[図:0001416473000001.jpg]
しかし、本件特許明細書の図6Dに記載されている周辺部の開口の形状は、長方形の短辺が外に膨らむ曲線になった形状であって、楕円形ではない。
楕円形は、一般に、「2定点F、F’からの距離の和が一定である点Pの軌跡」の形状と理解されているものであって、本件特許明細書の図6Dに示されている周辺部の開口の形状のように直線を含むものではない。
また、本件特許明細書には、周辺部の開口の形状を楕円形にすることに関する記載は一切存在しない。この点、訂正前の請求項7には、「前記周辺部が、楕円形の開口のアレイを画定し」との記載が存在する。しかし、この記載は、本件特許の審査段階における令和4年3月2日付け手続補正書による補正において追加されたものであって、その補正自体が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でされたものでなく、補正要件に違反するものであったといえる。」
上記主張について検討する。
「2定点F、F’からの距離の和が一定である点Pの軌跡」で描かれる「楕円」に類似した形状を、「楕円形」と称し得ることは、本件優先日前における技術常識である。そして、本件訂正請求書(7.(1)ウ.(イ)a.(c)「願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であること」)には、「図6Dには、周辺部630dが楕円形の開口のアレイを画定することが記載されている」と記載されていて、特許権者は、図6Dの周辺部630dの形状を、「楕円形」と称していることは明らかである。
また、令和5年11月17日付け特許異議申立書(第3の4(4)イ(キ)「本件特許発明7について」)において申立人は、
「
[図:0001416473000002.jpg]
[図:0001416473000003.jpg]
」
旨主張していることから、申立人自身も、本件明細書図面図6Dの周辺部630dの形状に類似する甲1発明の図6aにある「楕円」に類似した形状を、「楕円形」と称していると認められる。
したがって、上記申立人意見書の主張は採用の限りではない。
(7)むすび
以上のとおり、本件訂正に係る訂正事項1、訂正事項2-1~2-3及び訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書1号ないし3号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、〔6~12〕、〔13~18〕について、訂正することを認める。
第3 訂正後の本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された請求項1~18に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明18」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~18に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、各構成要件の前に付した、「1A」等の記号は、説明のために当審で付加したものであり、それぞれ、「構成要件1A」などということがある。
1 本件特許発明1
1A:電子カードであって、
1B:前面に形成された凹部を画定する金属基板と、
1C:前記前面と反対側の前記金属基板の背面に沿って配置された強磁性膜と、
1D:前記金属基板の前記凹部に配置された集積回路と、
1E:前記集積回路の上に配置された接触プレートであって、
プレート基板と、
前記プレート基板の前面上に配設された端子電極アレイであって、
前記端子電極アレイの各端子電極が前記プレート基板の縁部から
変位されている端子電極アレイと、
前記プレート基板の前記前面上に配設され、前記端子電極アレイ
を囲む導電材料を含む周辺部であって、
前記周辺部が楕円形の開口のアレイを画定し、前記端子電極ア
レイの各端子電極が前記楕円形の開口のアレイの対応する開口
内に配置される、周辺部と、
を含む接触プレートと、
を備える、電子カード。
2 本件特許発明2
前記接触プレートが、前記プレート基板から前記導電材料の一部を研磨することによって形成される研磨領域セットを更に含み、各研磨領域が、前記端子電極アレイの対応する端子電極と前記プレート基板の対応する縁部との間に配置されている、請求項1に記載の電子カード。
3 本件特許発明3
前記周辺部が、前記プレート基板から前記導電材料を研磨することによって形成される1つ以上の間隙によって前記端子電極アレイから分離されている、請求項1に記載の電子カード。
4 本件特許発明4
前記端子電極アレイが、前記プレート基板の前面の上に配設されておリ、前記接触プレートが、前記プレート基板の背面の上に配設された背面導電層を更に含み、前記端子電極アレイが、前記プレート基板を貫通する1つ以上のビアによって前記背面導電層に電気的に接続されている、請求項1に記載の電子カード。
5 本件特許発明5
前記プレート基板が非導電材料で形成されておリ、前記端子電極アレイが、前記プレート基板の前記非導電材料の上に配設された無電解めっき金属を含む第1の導電層と、前記第1の導電層の上に配設された電気めっき金属を含む第2の導電層と、を含む、請求項1に記載の電子カード。
6 本件特許発明6
6A:電子クレジットカードであって、
6B:前面に形成された凹部を画定する基板と、
6C:前記前面と反対側の前記基板の背面に沿って配置された強磁性膜と、
6D:前記基板の前記凹部に配置された集積回路と、
6E:前記集積回路の上に配置された接触プレートであって、
プレート基板と、
前記プレート基板の前面上に配設された端子電極アレイであって、
前記端子電極アレイの各端子電極が前記プレート基板の縁部から
変位されている端子電極アレイと、
前記プレート基板の前記前面上に配設され、前記端子電極アレイの
各端子電極を囲む導電材料を含む周辺部であって、
前記周辺部が間隙によって前記端子電極アレイの各端子電極から
分離されており、前記周辺部が楕円形の開口のアレイを画定し、
前記端子電極アレイの各端子電極が前記楕円形の開口のアレイの
対応する開口内に配置される、周辺部と、
を含む接触プレートと、
を備える、電子クレジットカード。
7 本件特許発明7
(削除)
8 本件特許発明8
前記接触プレートが、前記プレート基板から前記導電材料の一部を研磨することによって形成される研磨領域セットを画定し、前記研磨領域セットの各研磨領域が、前記周辺部と前記端子電極アレイの対応する端子電極との間の前記間隙に位置しており、各研磨領域が、前記プレート基板の露出部を含む、請求項6に記載の電子クレジットカード。
9 本件特許発明9
前記端子電極アレイが、前記プレート基板の第1の側に配置され、前記集積回路が、前記第1の側と反対側の前記プレート基板の第2の側に配置され、前記接触プレートが、ビアのアレイを含み、前記ビアのアレイの各ビアが、前記端子電極アレイの対応する端子電極を前記集積回路に動作可能に接続している、請求項6に記載の電子クレジットカード。
10 本件特許発明10
前記基板が、金属基板である、請求項6に記載の電子クレジットカード。
11 本件特許発明11
前記電子クレジットカードは、前記金属基板上に配置され、ポリマーと前記ポリマー内に分散された顔料とを含む第1の層と、前記第1の層上に延在し、透明ポリマーを含む第2層と、を更に含み、前記第2の層が、前記電子クレジットカードの外面を画定する、請求項10に記載の電子クレジットカード。
12 本件特許発明12
前記第2の層が、前記第1の層よリ高い硬度を有し、前記第2の層が、0.5μmの表面粗さRaを有し、前記強磁性膜が、0.5μmの表面粗さRaを有する、請求項11に記載の電子クレジットカード。
13 本件特許発明13
13A:電子カードであって、
13B:金属基板と、
13C:前記金属基板の第1の面に配置された強磁性ストリップと、
13D:前記第1の面と反対側の前記金属基板の第2の面に配置された
接触プレートであって、
非導電材料から形成される基板と、
前記基板の第1の面上に配設された端子電極アレイであって、
前記端子電極アレイの各端子電極が導電材料の第1の部分で
形成され、
前記基板の前記第1の面上に配置され、前記導電材料の第2
の部分で形成された導電コーティングであって、
前記導電コーティングが前記端子電極アレイの各端子電極
を囲み、前記導電コーティングが楕円形の開口のアレイを
画定し、前記端子電極アレイの各端子電極が前記楕円形の
開口のアレイの対応する開口内に配置される、導電コーテ
ィングと、
を含む接触プレートと、
を備える、電子カード。
14 本件特許発明14
前記端子電極アレイの各端子電極が間隙によって前記導電コーティングから分離されており、前記間隙が、均一な幅を有する、請求項13に記載の電子カード。
15 本件特許発明15
前記接触プレートが、前記基板から前記導電材料を研磨することによって形成されるレーザ研磨領域セットを含み、前記レーザ研磨領域セットの各レーザ研磨領域が、前記端子電極アレイの対応する端子電極と前記導電コーティングとの間で画定される対応する間隙内に配置されている、請求項13に記載の電子カード。
16 本件特許発明16
前記端子電極アレイの各端子電極が、無電解めっき金属で形成され、前記基板の前記非導電材料上に延在する第1の層と、電気めっき金属で形成され、前記第1の層上に延在する第2の層と、を含む、請求項13に記載の電子カード。
17 本件特許発明17
前記電子カードが、前記金属基板の第1の面上に配置された第1のポリマー材料を含む不透明層と、前記不透明層上に配置された第2のポリマー材料を含む透明層と、を含む、請求項13に記載の電子カード。
18 本件特許発明18
前記透明層の前記第2のポリマー材料が前記不透明層の前記第1のポリマー材料より高い硬度を有する、請求項17に記載の電子カード。
第4 異議申立の概要
申立人は、本件特許の請求項1~18に係る発明は、以下の1~2に示す理由により取り消すべきものである旨、また、以下の証拠(甲第1号証~甲第18号証)を提出し、本件特許の請求項1~18に係る発明は、以下の3に示す理由により、取り消すべきものである旨主張する。
1 特許法第36条第6項第1号
(1)理由1-1
本件訂正前の請求項1、6、13の「前記端子電極アレイ(前記端子電極アレイの各端子電極)を囲む導電材料を含む周辺部(前記導電コーティング)・・・を含む接触プレート」との規定は、当業者が本件特許明細書の記載から発明の課題が解決できることを認識できるものではない。
本件訂正前の請求項1、6又は13を直接または間接的に引用する本件訂正前の請求項2~5、請求項7~12、請求項14~18も同様であり、したがって本件訂正前の本件特許発明1~18についての特許は、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号により取り消されるべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由1-1」という。
(2)理由1-2
本件訂正前の請求項12の「前記第2の層が、約0.5μmの表面粗さRaを有し、前記強磁性膜が、約0.5μmの表面粗さRaを有する」との規定は、本件特許明細書に記載されたものではない。
したがって本件訂正前の本件特許発明12についての特許は、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号により取り消されるべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由1-2」という。
(3)理由1-3
本件訂正前の請求項17の「不透明層」は、本件特許明細書に記載されたものではない。
本件訂正前の請求項17を引用する本件訂正前の請求項18も同様であり、したがって本件訂正前の本件特許発明17、18についての特許は、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号により取り消されるべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由1-3」という。
2 特許法第36条第6項第2号
(1)理由2-1
本件訂正前の請求項1、6、13の「前記端子電極アレイ(前記端子電極アレイの各端子電極)を囲む導電材料を含む周辺部(前記導電コーティング)」の範囲が不明確である。
本件訂正前の請求項1、6又は13を直接または間接的に引用する本件訂正前の請求項2~5、請求項7~12、請求項14~18も同様であり、したがって本件訂正前の本件特許発明1~18についての特許は、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号により取り消されるべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由2-1」という。
(2)理由2-2
本件訂正前の請求項12の「約0.5μmの表面粗さRa」の範囲が不明確である。
したがって本件訂正前の本件特許発明12についての特許は、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号により取り消されるべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由2-2」という。
(3)理由2-3
本件訂正前の請求項17の「不透明層」の範囲が不明確である。
本件訂正前の請求項17を引用する本件訂正前の請求項18も同様であり、したがって本件訂正前の本件特許発明17、18についての特許は、同法第36条6項2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号により取り消されるべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由2-3」という。
(4)理由2-4
本件訂正前の請求項12、18の「高い硬度」の範囲が不明確である。
したがって本件訂正前の本件特許発明12、18についての特許は、同法第36条6項2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号により取り消されるべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由2-4」という。
3 特許法第29条第2項
(1)理由3-1(甲第1号証に基づく進歩性欠如)
本件訂正前の請求項1~18に係る発明は、甲第1号証及び周知技術(甲第2号証~甲第14号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由3-1」という。
(2)理由3-2(甲第2号証に基づく進歩性欠如)
本件訂正前の請求項1~18に係る発明は、甲第2号証及び周知技術(甲第1号証、甲第3号証、甲第7号証~甲第18号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
以下、この特許異議申立理由を、「理由3-2」という。
(証拠)
甲第1号証 特開平1-99894号公報
甲第2号証 特開2000-94874号公報
甲第3号証 100%ムックシリーズ 完全ガイドシリーズ200
クレジットカード完全ガイド、株式会社普遊舎、
2017年12月1日発行
甲第4号証 マスターカードがステンレス+カーボン製クレジッ
トカード発行。佐藤琢磨も使用中、https://intensive91
1.com/camera-gadjet-etc/101710/)
甲第5号証 特開昭58-92597号公報
甲第6号証 特開2013-63663号公報
甲第7号証 特開2001-210934号公報
甲第8号証 特表2012-524358号公報
甲第9号証 特開2009-260301号公報
甲第10号証 特開2010-231763号公報
甲第11号証 特開昭63-288795号公報
甲第12号証 特開2018-98415号公報
甲第13号証 特開2001―150849号公報
甲第14号証 特開2004-223764号公報
甲第15号証 特開昭61-125690号公報
甲第16号証 特開平5-274497号公報
甲第17号証 実公平5-41029号公報
甲第18号証 特開平6-183189号公報
以降において、上記甲第1号証~甲第18号証の各々を、「甲1」~「甲18」という場合がある。
第5 取消理由通知の概要
訂正前特許請求の範囲の請求項1~18に対して、当審が通知した、令和6年2月8日付けの取消理由通知(以下、「取消理由通知」という。)の要旨は、次のとおりである。
1 進歩性について
(1)本件特許発明1は、甲2発明及び(例えば、甲第3、15~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件特許発明2は、甲2発明及び(例えば、甲第3、7~9、15~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件特許発明3は、甲2発明及び(例えば、甲第3、7~9、15~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件特許発明4は、甲2発明及び(例えば、甲第3、15~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件特許発明5は、甲2発明及び(例えば、甲第3、10~12、15~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件特許発明6は、甲2発明及び(例えば、甲第17~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)本件特許発明8は、甲2発明及び(例えば、甲第7~9、17~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8)本件特許発明9は、甲2発明及び(例えば、甲第17~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(9)本件特許発明10は、甲2発明及び(例えば、甲第17~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(10)本件特許発明11は、甲2発明及び(例えば、甲第17~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(11)本件特許発明12は、甲2発明及び(例えば、甲第13~14、17~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(12)本件特許発明13は、甲2発明及び(例えば、甲第3、15~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(13)本件特許発明14は、甲2発明及び(例えば、甲第17~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(14)本件特許発明15は、甲2発明及び(例えば、甲第3、7~9、15~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(15)本件特許発明16は、甲2発明及び(例えば、甲第3、10~12、15~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(16)本件特許発明17は、甲2発明及び(例えば、甲第3、15~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(17)本件特許発明18は、甲2発明及び(例えば、甲第3、13~18号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(18)本件特許発明13は、甲1発明及び(例えば、甲第2、4~6号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(19)本件特許発明15は、甲1発明及び(例えば、甲第2、4~9号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(20)本件特許発明16は、甲1発明及び(例えば、甲第2、4~6、10~12号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(21)本件特許発明17は、甲1発明及び(例えば、甲第2、4~6、13~14号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(22)本件特許発明18は、甲1発明及び(例えば、甲第2、4~6、13~14号証に記載された)周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 サポート要件について
本件請求項1~18に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(1)訂正前の請求項12に対して
本件特許の請求項12には、第2の層及び強磁性膜が約0.5μmの表面粗さRaを有することが記載されているが、発明の詳細な説明には、第2の層及び強磁性膜が約0.5μmの表面粗さRaを有することは記載されていない。
なお、発明の詳細な説明の段落0086における「テクスチャは、電子カード300aの他の部分のテクスチャに対応する所望の外観及び/又は手触りを提供し得る。」と記載されている。しかし、当該記載は、強磁性スタックのテクスチャが、電子カード300aの他の部分のテクスチャに対応する所望の外観及び/又は手触りを提供し得ると言っているだけであって、他の部分と強磁性スタックとが同一の表面粗さを有すると言っているわけではない。そのため、上述の記載から、コーティング層の第2の層と強磁性スタックの外面とが同じ表面粗さを有するということはできない。
よって、本件特許発明12は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(2)訂正前の請求項17、18に対して
本件特許の請求項17には、電子カードが、金属基板の第1の面上に配置された第1のポリマー材料を含む不透明層を含むことが記載されているが、発明の詳細な説明には、第1のポリマー材料を含む層が「不透明」であることは記載されていない。
発明の詳細な説明の段落0080~0081には、ポリマー材料を含む層が、ポリマー材料内に分散された顔料を有するポリマー材料から形成され得ることは記載されているものの、そのポリマー材料を含む層が「不透明」であることは記載されていない。ポリマー材料を含む層に含まれる顔料の量については何ら記載されておらず、顔料を含むからといって、不透明であるとはいえない。また、ポリマー材料を含む層が「着色層」と称される場合であっても、着色には、着色透明も含まれることから、その第1の層が不透明なものであるとはいえない。
よって、本件特許発明17は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
本件特許発明17を引用する、本件特許発明18についても同様である。
3 明確性について
本件請求項1~6、8~18に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(1)訂正前の請求項1~5に対して
本件特許の請求項1には、接触プレートが「前記端子電極アレイを囲む導電材料を含む周辺部」を含むことが記載されているところ、その「前記端子電極アレイを囲む導電材料を含む周辺部」の範囲が不明確である。
この「前記端子電極アレイを囲む導電材料を含む周辺部」が、特許異議申立書第40ページの図(c)、(d)や、特許異議申立書第41ページの図(e)のような態様を含むのか否かが明確でない。
よって、本件特許発明1は明確でない。
本件特許発明1を直接又は間接的に引用する、本件特許発明2~5についても同様である。
(2)訂正前の請求項6、8~12に対して
本件特許の請求項6には、接触プレートが「前記端子電極アレイの各電極端子を囲む導電材料を含む周辺部」を含むことが記載されているところ、その「前記端子電極アレイの各電極端子を囲む導電材料を含む周辺部」の範囲が不明確である。
この「前記端子電極アレイの各電極端子を囲む導電材料を含む周辺部」が、特許異議申立書第42ページの図(a)、(c)、(d)のような態様を含むのか否かが明確でない。
よって、本件特許発明6は明確でない。
本件特許発明6を直接又は間接的に引用する、本件特許発明8~12についても同様である。
(3)訂正前の請求項12に対して
本件特許の請求項12には、第2の層及び強磁性膜が、約0.5μmの表面粗さRaを有することが記載されているが、その「約0.5μm」の範囲が不明確である。
よって、本件特許発明12は明確でない。
(4)訂正前の請求項13、15~18に対して
本件特許の請求項13には、接触プレートが「前記端子電極アレイの各電極端子を囲む前記導電コーティング」を含むことが記載されているところ、その「前記端子電極アレイの各電極端子を囲む前記導電コーティング」の範囲が不明確である。
この「前記端子電極アレイの各電極端子を囲む前記導電コーティング」が、特許異議申立書第44ページの図(a)、(c)、(d)や、特許異議申立書第45ページの図(e)のような態様を含むのか否かが明確でない。
よって、本件特許発明13に係る発明は明確でない。
本件特許発明13を直接又は間接的に引用する、本件特許発明15~18についても同様である。
(5)訂正前の請求項14に対して
本件特許の請求項14に記載された「導電コーティング」の範囲が不明確である。
この「導電コーティング」が、特許異議申立書第44ページの図(a)、(c)、(d)のような態様を含むのか否かが明確でない。
よって、本件特許発明14は明確でない。
(6)訂正前の請求項17、18に対して
本件特許の請求項17には、電子カードが、金属基板の第1の面上に配置された第1のポリマー材料を含む不透明層を含むことが記載されているところ、その「不透明層」の範囲が不明確である。発明の詳細な説明には、第1のポリマー材料を含む層が「不透明」であることは記載されておらず、どのような場合に「不透明層」であるといえるのかが明らかでない。
本件特許発明17を引用する、本件特許発明18についても同様である。
第6 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)甲第2号証に基づく進歩性について
ア 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の段落0001、0019~0022、0029、0033~0034、0040、0047及び図4、6~8の記載からみて、甲第2号証には以下の甲2発明が記載されていると認められる。
「 クレジットカード等に好適に用いられるICカード(段落0001)であって、
ICモジュール207を装着する凹部203が形成された金属基板(段落0019、0034、0047及び図6、8)と、
金属基板の片面に形成された磁気ストライプ(段落0020)と、
金属基板の凹部203に装着されたICモジュール207(段落0034及び図8)と、を備え、
ICモジュール207は、ガラスエポキシ基板に、外部接続端子となる電極パターン及びICチップ電極と接続する回路パターンを形成し、外部接続端子面と回路パターン面とは、スルーホールにより導通し、このガラスエポキシ基板にICチップ205をマウントしたものであり(段落0034)前記電極パターンは端子電極がアレイ状に配置されており(図4)、
ICモジュール207のガラスエポキシ基板に形成された外部接続端子は、ガラスエポキシ基板の縁部から変位されており(図4)、
金属基板の片面又は両面には、インクジェット記録により情報が印刷されたインク受容層202が設けられ、インク受容層202は、少なくとも、無機フィラー及び有機樹脂により形成され、インクジェット記録に用いられるインクは、顔料分散体が好適であり(段落0021~0022、0034及び図8)、
インク受容層202の上には、インク受容層202の保護層として充分機能する最表層213が設けられ、最表層213は、熱可塑性樹脂粒子を含む多孔質層212を加熱処理により溶融して非孔質化することにより形成される(段落0029、0033及び図7、8)、
ICカード。」
イ 本件特許発明1と甲2発明との対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「金属基板」及び「凹部203」は、それぞれ、本件特許発明1の「金属基板」及び「凹部」に相当する。また、甲第2号証の段落0040に記載されているとおり、甲2発明のICカードにおいて、ICモジュールが装着されない方の面は裏面であるから、ICモジュール207を装着する凹部203が形成される面は、“前面”である。そうすると、甲2発明の「金属基板」は「ICモジュール207を装着する凹部203が形成され」るものであるところ、甲2発明の「金属基板」は、“前面”に形成された凹部203を“画定する”ものである。
(イ)甲2発明の「磁気ストライプ」は、本件特許発明1の「強磁性膜」に相当する。上記(ア)のとおり「金属基板」には“前面”があり、その反対側の面は、“前記前面と反対側の前記金属基板の背面”である。甲2発明の「磁気ストライプ」は「片面に形成され」るものであるが、裏面に磁気ストライプを有するICカードが技術常識であることを勘案すれば、「磁気ストライプ」が“前記前面と反対側の前記金属基板の背面に沿って配置され”ることは、甲第2号証に記載されているに等しい。したがって、甲2発明の「磁気ストライプ」は“前記前面と反対側の前記金属基板の背面に沿って配置され”るものである。
(ウ)甲2発明の「ICチップ205」は、本件特許発明1の「集積回路」に相当する。甲2発明の「ICモジュール207は、・・・ガラスエポキシ基板にICチップ205をマウントしたものであ」るから、甲2発明は、「ICモジュール207」が「金属基板の凹部203に装着され」ることにより、「金属基板」の「凹部203」に“配置された”「ICチップ205」を備えることとなる。
(エ)甲2発明の「ガラスエポキシ基板」は、本件特許発明1の「プレート基板」に相当する。
(オ)甲2発明の「外部接続端子」は、本件特許発明1の「端子電極」に相当する。また、甲2発明の「ガラスエポキシ基板」の「外部接続端子面」は、本件特許発明1の「前記プレート基板の前面」に相当する。甲2発明の「電極パターン」は、「端子電極がアレイ状に配置され」たパターンであるから、本件特許発明1の「端子電極アレイ」に相当し、「外部接続端子面」に“配設され”ている。そして、以上の検討を踏まえると、甲2発明では「ICモジュール207のガラスエポキシ基板に形成された外部接続端子は、ガラスエポキシ基板の縁部から変位されて」いるから、甲2発明の「電極パターン」において、“前記端子電極アレイの各端子電極が前記プレート基板の縁部から変位されている”。
(カ)甲2発明は、「回路パターン」が形成された「ガラスエポキシ基板」に「ICチップ205をマウント」するところ、甲2発明の「回路パターン」が形成された「ガラスエポキシ基板」は、「ICチップ205」の“上に配置され”ることとなる。そして、上記(エ)、(オ)の検討を踏まえると、甲2発明の「回路パターン」が形成された「ガラスエポキシ基板」は、「プレート基板」と「端子電極アレイ」とを含む点で、本件特許発明1の「接触プレート」と共通する。
(キ)上記(ア)~(カ)の検討を踏まえれば、甲2発明の「ICカード」は、本件特許発明1の「電子カード」に対応する。
(ク)上記(ア)~(キ)のことから、本件特許発明1と甲2発明とは、次の点で一致し、また相違する。
<一致点>
「電子カードであって、
前面に形成された凹部を画定する金属基板と、
前記前面と反対側の前記金属基板の背面に沿って配置された強磁性膜と、
前記金属基板の前記凹部に配置された集積回路と、
前記集積回路の上に配置された接触プレートであって、
プレート基板と、
前記プレート基板の前面上に配設された端子電極アレイであって、前記端子電極アレイの各端子電極が前記プレート基板の縁部から変位されている端子電極アレイと、
を含む接触プレートと、
を備える、電子カード。」
<相違点2-1>
本件特許発明1の「接触プレート」は、「前記プレート基板の前記前面上に配設され、前記端子電極アレイを囲む導電材料を含む周辺部」を含むのに対して、甲2発明の「ガラスエポキシ基板」は、その「外部接続端子面」に「前記端子電極アレイを囲む導電材料を含む周辺部」を含むものではない点。
<相違点2-A>
本件特許発明1の「周辺部」は、「楕円形の開口のアレイを画定し、前記端子電極アレイの各端子電極が前記楕円形の開口のアレイの対応する開口内に配置される」ものであるのに対して、甲2発明は、そのようなものではない点。
ウ 相違点の判断
(ア)相違点2-Aについて
事案に鑑み、まず相違点2-Aについて先に検討する。
甲第1号証の2ページ右上欄18行~左下欄5行、4ページ右上欄14行~左下欄9行、4ページ左下欄15行~右下欄3行及び6ページ左下欄3行~右下欄8行並びに図1、6aの記載からみて、甲第1号証には以下の甲1発明が記載されていると認められる。
「 超小型回路が設けられているカードであって(2ページ右上欄19行)、
支え2と(図1、4ページ右上欄16行)、
支え2の中に納められる電子モジュール1の第1のユニット5(図1、6a及び4ページ左下欄15~右上欄3行、6ページ左下欄3行~右下欄8行)であって、
絶縁基板6(図6a及び4ページ左下欄18行)と、
絶縁基板6を覆う複数の電極7であって、電極の標準化された領域を少なくとも覆い、アレイ状に配置される複数の電極7(図6a及び4ページ左下欄17~20行)と、
複数の電極7の各電極7の間に設けられている、電極7と同じ金属で形成されている領域50と、領域50と各電極7とを絶縁するために設けられる、金属のないスペース51(図6a及び6ページ左下欄9~13行)と、
を含む第1のユニット5と、
を含む、カード。」
ここで、甲第1号証の図6aを参照すると、アレイ状に配置される複数の電極7が配置されており、周辺部に相当する領域50とC5とは「52」を通じて繋がっているから、「開口」を形成しているとはいえない。
「
[図:0001416473000004.jpg]
」
そうすると、甲第1号証には、「周辺部」が、「楕円形の開口のアレイを画定し、前記端子電極アレイの各端子電極が前記楕円形の開口のアレイの対応する開口内に配置される」ものであること、すなわち相違点2-Aに係る構成が記載されているとはいえず、甲第3、16~18号証の記載事項を含め、上記相違点2-Aに係る構成が、本件優先日前に周知技術であったとする証拠もない。
よって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、上記甲1発明及び甲第3、16~18号証の記載事項を参酌しても、甲2発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
エ 本件特許発明2~18について
(ア)本件特許発明2~5は、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、上記ウと同様に、上記甲1発明及び甲第3、16~18号証の記載事項を参酌しても、甲2発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(イ)本件特許発明6、13は、甲2発明に対して、上記相違点2-Aに係る構成を有するものであり、また、本件発明8~12、14~18は、本件特許発明6、13をさらに限定したものであるから、上記ウと同様に、上記甲1発明及び甲第3、16~18号証の記載事項を参酌しても、甲2発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(2)甲第1号証に基づく進歩性について
ア 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の2ページ右上欄18行~左下欄5行、4ページ右上欄14行~左下欄9行、4ページ左下欄15行~右下欄3行及び6ページ左下欄3行~右下欄8行並びに図1、6aの記載からみて、甲第1号証には以下の甲1発明が記載されていると認められる。
「 超小型回路が設けられているカードであって(2ページ右上欄19行)、
支え2と(図1、4ページ右上欄16行)、
支え2の中に納められる電子モジュール1の第1のユニット5(図1、6a及び4ページ左下欄15~右上欄3行、6ページ左下欄3行~右下欄8行)であって、
絶縁基板6(図6a及び4ページ左下欄18行)と、
絶縁基板6を覆う複数の電極7であって、電極の標準化された領域を少なくとも覆い、アレイ状に配置される複数の電極7(図6a及び4ページ左下欄17~20行)と、
複数の電極7の各電極7の間に設けられている、電極7と同じ金属で形成されている領域50と、領域50と各電極7とを絶縁するために設けられる、金属のないスペース51(図6a及び6ページ左下欄9~13行)と、
を含む第1のユニット5と、
を含む、カード。」
イ 本件特許発明13と甲1発明との対比
本件特許発明13と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「支え2」と本件特許発明13の「金属基板」は、“基板”である点で共通する。
(イ)甲1発明の「支え2」における面のうち、「電子モジュール1」が納められる面は、本件特許発明13の「第2の面」に相当する。また、甲1発明の「第1のユニット5」は、本件特許発明13の「接触プレート」に相当し、「電子モジュール1」として「支え2の中に納められる」ところ、“第2の面に配置された”ものである。
(ウ)甲1発明の「絶縁基板6」は、本件特許発明13の「非導電材料から形成される基板」に相当する。
(エ)甲1発明の「絶縁基板6」のうち「電極7」、「領域50」及び「スペース51」が設けられる面は、本件特許発明13の「第1の面」に相当する。甲1発明の「複数の電極7」は、端子電極が「アレイ状に配置され」ているから、本件特許発明13の「端子電極アレイ」に相当する。甲1発明の「複数の電極7」は、「絶縁基板6」の特に「電極の標準化された領域を少なくとも覆う」ものであるところ図6aからみれば“前記基板の第1の面上に配設された”ものであって、“導電材料の第1の部分で形成され”ているといえる。
(オ)甲1発明の「領域50」は、本件特許発明13の「導電コーティング」に相当する。甲1発明の「領域50」は、「電極7と同じ金属で形成されている」から、“前記導電材料の第2の部分で形成され”ているといえる。また、甲1発明の「領域50」は、「複数の電極7の各電極7の間に設けられている」ところ図6aからみれば「複数の電極7」“を囲む”ものといえる。しかしながら、「領域50」と「C5」とは「52」を通じて繋がっているから、「開口」を形成しているとはいえない。
(カ)甲1発明の「カード」は「超小型回路が設けられている」ものであることから、上記(ア)~(オ)の検討を踏まえれば、甲1発明の「カード」は、本件特許発明13の「電子カード」に対応する。
(キ)上記(ア)~(カ)のことから、本件特許発明13と甲1発明とは、次の点で一致し、また相違する。
<一致点>
「電子カードであって、
基板と、
前記第1の面と反対側の前記金属基板の第2の面に配置された接触プレートであって、
非導電材料から形成される基板と、
前記基板の第1の面上に配設された端子電極アレイであって、前記端子電極アレイの各端子電極が導電材料の第1の部分で形成された端子電極アレイと、
前記基板の前記第1の面上に配置され、前記導電材料の第2の部分で形成された導電コーティングであって、前記端子電極アレイの各端子電極を囲む前記導電コーティングと、
を含む接触プレートと、
を備える、電子カード。」
<相違点1-1>
「基板」に関し、本件特許発明13は、「金属基板」であるのに対して、甲1発明は、そのようなものではない点。
<相違点1-2>
本件特許発明13は、基板の第1の面に配置された強磁性ストリップを備えるのに対して、甲1発明は、強磁性ストリップについて特定されていない点。
<相違点1-A>
本件特許発明13の「導電コーティング」は、「楕円形の開口のアレイを画定し、前記端子電極アレイの各端子電極が前記楕円形の開口のアレイの対応する開口内に配置される」ものであるのに対して、甲1発明は、そのようなものではない点。
ウ 相違点の判断
(ア)相違点1-Aについて
事案に鑑み、まず相違点1-Aについて先に検討する。
上記(1)で検討したとおり、甲第2、3号証には、「導電コーディング」が、「楕円形の開口のアレイを画定し、前記端子電極アレイの各端子電極が前記楕円形の開口のアレイの対応する開口内に配置される」ものであること、すなわち相違点1-Aに係る構成が記載されているとはいえず、甲第4~6号証の記載事項も含め、上記相違点1-Aに係る構成が、本件優先日前に周知技術であったとする証拠もない。
よって、相違点1-1、1-2について検討するまでもなく、本件特許発明13は、甲第2、4~6号証の記載事項を参酌しても、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
エ 本件特許発明15~18について
(ア)本件特許発明15は、本件特許発明13をさらに限定したものであるから、上記ウと同様に、甲第2、4~9号証の記載事項を参酌しても、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(イ)本件特許発明16は、本件特許発明13をさらに限定したものであるから、上記ウと同様に、甲第2、4~6、10~12号証の記載事項を参酌しても、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(ウ)本件特許発明17、18は、本件特許発明13をさらに限定したものであるから、上記ウと同様に、甲第2、4~6、13~14号証の記載事項を参酌しても、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(3)サポート要件について
ア 本件特許発明12について
(ア)「第2の層及び強磁性膜が約0.5μmの表面粗さRaを有すること」について
a 本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書には、次の記載が認められる。(下線は当審で付加。以下同様。)
「【0040】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、二部コーティング又は多層コーティングでコーティングされた金属基板を有する電子カードに関する。コーティング層(1つ以上の個別の層又は部品で構成されている)は、電子カードにセラミック材料の外観及び/又は触感を与えるように特別に配合され得る。例えば、コーティング層は、添加物の特定の配合と、触覚にセラミックのような触感を与える表面粗さとを有し得る。コーティング層はまた、電子カードに均一な外観を与えるために使用され、カードの様々な機能要素を隠し得る。例えば、コーティング層は、コーティングの下に配置される強磁性膜、強磁性ストリップ、又は強磁性スタックを隠すために使用され得る。場合によっては、強磁性膜、強磁性ストリップ、又は強磁性スタックは、電子カードに形成された段付き領域、凹部、又はポケットに配置され、コーティング層で被覆又はコーティングされる。
…中略…
【0063】
図1Cに示すように、強磁性要素130(例えば、強磁性膜)及び裏張り層132を含む強磁性スタックは、段付き領域128内に少なくとも部分的に配置される。
…中略…
【0065】
場合によっては、強磁性スタックの外面に触覚的又は視覚効果を与えるためにテクスチャ加工される。例えば、強磁性要素130及び裏張り層132は、カードの外面に沿ってテクスチャを生成するように押圧又は形成され得る。
…中略…
【0082】
場合によっては、コーティング層333a、334aは、上述したように、ポリマー及び顔料を含み得る、ポリマー層、着色層、又は顔料層など、第1の層354に形成される第2の層356を含む。場合によっては、第2の層356は、透明である、半透明である、及び/又は透明ポリマーから形成される透明層であり得る。透明ポリマーは、下にある第1の層より高い硬度及び/又は耐摩耗性を有し得る。例えば、第2の層356は、アクリレートポリマー又はエポキシポリマーを含み得る。第2の層356は、UV光源への暴露により硬化するUV硬化性材料を含み、硬化外面を形成し得る。第2の層356は、ナノスケールの無機材料又はダイヤモンド材料などのフィラー材料を含み得る。ナノスケールのフィラー材料の直径は、100nm未満又は50nm未満であり得る。いくつかの実施例では、第2の層356は、ダイヤモンド様炭素(DLC)コーティング又は他の同様のコーティング材料を含む。例えば、コーティング層333a、334aの第2の層356は、1μm~50μmの範囲の厚さを有する四面体アモルファス炭素材料を含み得る。
…中略…
【0086】
特定のテクスチャを提供するように、強磁性スタックが処理され得る。テクスチャは、電子カード300aの他の部分のテクスチャに対応する所望の外観及び/又は手触りを提供し得る。例えば、強磁性スタックは、強磁性膜に結合された2つ以上のポリカーボネートシートから形成され得る。強磁性スタックは、強磁性スタックの外面にテクスチャを刻印する加熱テクスチャプレートで押圧され得る。場合によっては、刻印テクスチャの表面粗さは、0.3~1.0μmRaの範囲である。一例では、刻印テクスチャは、約0.5μmRa以上の表面粗さを有する。」
「図1C
[図:0001416473000005.jpg]
」
b 本件特許請求の範囲と本件特許明細書との対比
上記aの記載事項によれば、本件特許明細書には、次の事項(以下、「明細書記載事項1」という。)が記載されているといえる。
「触覚にセラミックのような触感を与える表面粗さとを有し得るコーティング層は、電子カードに均一な外観を与えるために使用され(【0040】)、コーティング層は、第1の層に形成される第2の層を含み(【0082】)、特定のテクスチャを提供するように、外面に強磁性膜が配置された強磁性スタックが処理され、当該テクスチャは、電子カード300aの他の部分のテクスチャに対応する所望の外観及び/又は手触りを提供し得、刻印テクスチャの表面粗さは、0.3~1.0μmRaの範囲であり、一例では、0.5μmである(【0063】、【0065】、【0086】、図1C)こと。」
特許請求の範囲の請求項12に記載された、「前記第2の層が、0.5μmの表面粗さRaを有し、前記強磁性膜が、0.5μmの表面粗さRaを有する」(以下、「特許請求の範囲記載事項1」という。)については、直接の記載は本件特許明細書に記載が認められないものの、明細書記載事項1における、「強磁性膜」、「第2の層」が、それぞれ特許請求の範囲記載事項1の「前記強磁性膜」、「前記第2の層」に対応することが理解される。
また、明細書記載事項1によれば、「触覚にセラミックのような触感を与える表面粗さとを有し得るコーティング層」は、「電子カードに均一な外観を与えるために使用され」るとともに、当該「コーティング層」は、「第1の層に形成される第2の層を含」むこと、及び、「特定のテクスチャを提供するように、強磁性スタックが処理され、当該テクスチャは、電子カード300aの他の部分のテクスチャに対応する所望の外観及び/又は手触りを提供し得」るとともに、「刻印テクスチャ」、すなわち、「強磁性スタックが処理され」ることによって生ずる、「テクスチャ」の「表面粗さ」が「0.3~1.0μmRaの範囲であり、一例では、0.5μmである」ことが理解される。
してみれば、「触覚にセラミックのような触感を与える表面粗さとを有し得るコーティング層」が、「電子カードに均一な外観を与える」機能を有する以上、「刻印テクスチャ」と同様の、「0.3~1.0μmRaの範囲であり、一例では、0.5μmである」表面粗さを有し、当該「コーティング層」の一部である「第2の層」の表面粗さが「0.3~1.0μmRaの範囲であり、一例では、0.5μmである」ことも、上記明細書記載事項1から読み取ることができるといえる。
また、強磁性膜は、強磁性スタックの外面に対応するのだから、「強磁性膜」の表面粗さが「0.3~1.0μmRaの範囲であり、一例では、0.5μmである」ことも、上記明細書記載事項1から読み取ることができるといえる。
c 小括
以上検討したとおり、特許請求の範囲記載事項1については、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものといえるから、取消理由通知のうち、上記第5の2(1)に示した事項についての理由は解消した。
イ 本件特許発明17、18について
(ア)「金属基板の第1の面上に配置された第1のポリマー材料を含む不透明層」について
a 本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書には、次の記載が認められる。
「【0040】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、二部コーティング又は多層コーティングでコーティングされた金属基板を有する電子カードに関する。コーティング層(1つ以上の個別の層又は部品で構成されている)は、電子カードにセラミック材料の外観及び/又は触感を与えるように特別に配合され得る。例えば、コーティング層は、添加物の特定の配合と、触覚にセラミックのような触感を与える表面粗さとを有し得る。コーティング層はまた、電子カードに均一な外観を与えるために使用され、カードの様々な機能要素を隠し得る。例えば、コーティング層は、コーティングの下に配置される強磁性膜、強磁性ストリップ、又は強磁性スタックを隠すために使用され得る。場合によっては、強磁性膜、強磁性ストリップ、又は強磁性スタックは、電子カードに形成された段付き領域、凹部、又はポケットに配置され、コーティング層で被覆又はコーティングされる。
…中略…
【0072】
図3A~3Cは、電子カード300a、300b、300cの断面図であり、これは、図1Bに示す電子カード100の断面B-Bに対応し得る。図3Aに示すように、電子カード300aは、コーティング又はコーティング層333a、334aでコーティングされた基板302aを含む。図3A及び本明細書で説明される他の図を参照して説明されるように、コーティング層は、コーティング、マスキング層、又はマスキングと称される場合がある。コーティング層333a、334a、基板302a、強磁性要素330a、裏張り層333aの説明は、他の図を参照して説明した他の実施形態にも適用することができ、これら及び他の要素の重複する説明は、明確化のために省略又は短縮される場合がある。
…中略…
【0081】
いくつかの実施例では、コーティング層333a、334aの第1の層354は、ポリマー材料内に分散された顔料を有するポリマー材料から形成され得る。第1の層354は、本明細書では、ポリマー層、着色層、及び/又は顔料層と称される場合もある。ポリマー層内に分散された顔料粒子は、酸化チタン(TiO2、Ti2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄(Fe3O4)などの金属酸化物を限定ではなく含む無機顔料粒子であり得る。場合によっては、顔料は、酸化アルミニウム、コバルト、銅、又は消費者製品での使用に適した他の顔料のうちの1つ以上を含む。粒子は、0.1μm~10μm又は0.1μm~1μmの範囲のサイズを有し得る。ポリマー層は、他の添加剤を更に含み得る。
…中略…
【0091】
図3Cは、別の例示的な電子カード300cを示す。電子カード300cは、他の電子カードの実施形態に関して本明細書で説明される要素及び特徴を含んでもよく、明確化のためその説明は省略する。図3Cは、電子カード300cの前面及び背面の略全て又はほぼ全てにわたって延在するコーティング層333c、334cを有する電子カード300cを示す。図3Cに示すように、コーティング層334cは、強磁性要素330c及び裏張り層332cを含む強磁性スタックを含む背面に延在する。前述したように、強磁性スタックは、電子カード300cの磁気領域を画定し得る(例えば、図1Bの領域124を参照)。強磁性要素330cにコーティング層334cを延在させることにより、強磁性要素330cを視界から隠し得る。場合によっては、コーティング層334cは、電子カード300cの磁気領域と隣接又は周囲領域との間の遷移部にわたって連続的及び/又は均一な視覚的外観を提供し得る。コーティング層334cは、強磁性要素330cと電子カード300cの隣接部分との間の遷移部を隠し得るが、追加のマーキング又は印がコーティング層334c上又は中に形成され、強磁性要素330cの磁気領域又は縁部、及び/又は強磁性要素330cによって画定される磁気領域内の符号化領域の境界のおおよその位置を示し得る。
…中略…
【0093】
コーティング層334cは通常、コーティング層334c内に分散された顔料を含む少なくとも1つの層又は領域を含み、下にある基板302c及び/又は強磁性要素330cを隠す又はマスキングするのを助ける。コーティング層333c、334cの厚さは、少なくとも部分的に顔料の色に依存する場合がある。例えば、暗い顔料は、明るい又は白い顔料よりも薄いコーティングで、下にある要素又はコンポーネントを隠し得る。」
「図3A
[図:0001416473000006.jpg]
」
b 本件特許請求の範囲と本件特許明細書との対比
上記aの記載事項によれば、本件特許明細書には、次の事項(以下、「明細書記載事項2」という。)が記載されているといえる。
「コーティング層は電子カードに均一な外観を与えるために使用され、カードの様々な機能要素を隠し、コーティングの下に配置される強磁性膜、強磁性ストリップ、又は強磁性スタックを隠すために使用され(【0040】)、
電子カード300aは、コーティング又はコーティング層333a、334aでコーティングされた基板302aを含み、コーティング層は、コーティング、マスキング層、又はマスキングと称される場合があり(【0072】、図3A)、
コーティング層333a、334aの第1の層354は、ポリマー材料内に分散された顔料を有するポリマー材料から形成され(【0081】)、
強磁性要素330cにコーティング層334cを延在させることにより、強磁性要素330cを視界から隠し(【0091】)、
コーティング層334cは通常、コーティング層334c内に分散された顔料を含む少なくとも1つの層又は領域を含み、下にある基板302c及び/又は強磁性要素330cを隠す又はマスキングするのを助けること(【0093】)。」
特許請求の範囲の請求項17に記載された、「金属基板の第1の面上に配置された第1のポリマー材料を含む不透明層」(以下、「特許請求の範囲記載事項2」という。)については、直接の記載は本件特許明細書に記載が認められないものの、明細書記載事項2における、「第1の層354」が、特許請求の範囲記載事項2の「不透明層」に対応することが理解される。
また、明細書記載事項2によれば、「コーティング層」は「カードの様々な機能要素を隠し、コーティングの下に配置される強磁性膜、強磁性ストリップ、又は強磁性スタックを隠すために使用され」るとともに、「コーティング、マスキング層、又はマスキングと称される場合があ」って、「強磁性要素330cにコーティング層334cを延在させることにより、強磁性要素330cを視界から隠」す機能があり、「下にある基板302c及び/又は強磁性要素330cを隠す又はマスキングするのを助ける」機能も有するものであることが理解される。
また、「第1の層354」は、「コーティング層333a、334a」に存在することも理解されることから、当該「コーティング層333a、334a」の有する上記機能が、上記「第1の層354」においても機能することが理解される。
してみれば、特許請求の範囲記載事項2において、「不透明層」とは、上記明細書記載事項2において、「コーティングの下に配置される強磁性膜、強磁性ストリップ、又は強磁性スタックを隠」したり、「視界から隠」したり、「基板302c及び/又は強磁性要素330cを隠す又はマスキング」したりする層のことを意味するものと理解されるから、特許請求の範囲記載事項2は、明細書記載事項2から読み取ることができるといえる。
c 小括
以上検討したとおり、特許請求の範囲記載事項2については、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものといえるから、取消理由通知のうち、上記第5の2(2)に示した事項についての理由は解消した。
ウ むすび
以上検討したとおり、取消理由通知において、訂正前請求項12、17、18に対して指摘した、上記第5の2(1)及び(2)の点に関するサポート要件違反については、本件特許発明12及び本件特許発明17について解消した。
また、本件特許発明17を引用する本件特許発明18についても、同様に取消理由通知で指摘したサポート要件違反について解消した。
(4)明確性要件について
ア 本件特許発明1~5について
訂正事項1により、「前記端子電極アレイを囲む導電材料を含む周辺部」の範囲が明確となり、取消理由通知において、本件特許発明1~5について指摘した上記第5の3(1)の点に関する明確性要件違反について解消した。
イ 本件特許発明6、8~12について
上記アと同様、訂正事項2-1により、「前記端子電極アレイを囲む導電材料を含む周辺部」の範囲が明確となり、取消理由通知において、本件特許発明6、8~12について指摘した上記第5の3(2)の点に関する明確性要件違反について解消した。
ウ 本件特許発明12について
訂正事項2-3により、「表面粗さRa」が「0.5μm」であることが明確となり、取消理由通知において、本件特許発明12について指摘した上記第5の3(3)の点に関する明確性要件違反について解消した。
エ 本件特許発明13~18について
訂正事項1により、「前記端子電極アレイの各電極端子を囲む前記導電コーティング」の範囲が明確となり、取消理由通知において、本件特許発明13~18について指摘した上記第5の3(4)、(5)の点に関する明確性要件違反について解消した。
オ 本件特許発明17、18について
本件特許発明17、18について指摘した、上記第5の3(6)の点に関する明確性要件違反については、上記(3)イ(ア)において検討したとおり、電子カードが、「金属基板の第1の面上に配置された第1のポリマー材料を含む不透明層」を含むとの記載のうち、「不透明層」とは、本件特許明細書の上記明細書記載事項2を参酌して、「コーティングの下に配置される強磁性膜、強磁性ストリップ、又は強磁性スタックを隠」したり、「視界から隠」したり、「基板302c及び/又は強磁性要素330cを隠す又はマスキング」したりする層のことを意味するものと理解されるから、第三者に不測の不利益を与えるほどに不明確とまではいえず、本件特許発明17は、第三者に不測の不利益を与えるほどに不明確とまではいえない。
本件特許発明17を引用する本件特許発明18についても同様であり、取消理由通知において、本件特許発明17、18について指摘した上記第5の3(6)の点に関する明確性要件違反について解消した。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人が主張する、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断を以下に示す。
(1)理由1-1について
本件特許明細書の段落【0003】の記載によれば、本件特許発明の課題は、電子カードを製造するための改善された特徴及びプロセスを備えるカードを得る点にあるものと認められる。
本件特許発明1と本件特許明細書における記載箇所の対応関係は以下の通りである。
1A:電子カードであって(【0059】、図1C)、
1B:前面に形成された凹部を画定する金属基板と(【0059】、【0060】、【0102】、図1C、5A)、
1C:前記前面と反対側の前記金属基板の背面に沿って配置された強磁性膜と(【0063】、図1C)、
1D:前記金属基板の前記凹部に配置された集積回路と(【0060】、図1C)、
1E:前記集積回路の上に配置された接触プレートであって、
プレート基板と、
前記プレート基板の前面上に配設された端子電極アレイであって、
前記端子電極アレイの各端子電極が前記プレート基板の縁部から
変位されている端子電極アレイと、
前記プレート基板の前記前面上に配設され、前記端子電極アレイ
を囲む導電材料を含む周辺部であって、
前記周辺部が楕円形の開口のアレイを画定し、前記端子電極ア
レイの各端子電極が前記楕円形の開口のアレイの対応する開口
内に配置される、周辺部と、
を含む接触プレートと(【0060】、【0102】、【0103】、【0117】、【0122】、図5A、6D)、
を備える、電子カード。
そして、本件特許発明1の構成1B~1Eを備える電子カードは、当該電子カードを製造するための改善された特徴及びプロセスを備えるものであると認められるから、構成1B~1Eは、上記課題を解決する手段であるといえる。
よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものである。
本件特許発明6、13についても同様である。
したがって、申立人の主張する理由1-1については、理由が無い。
(2)理由2-4について
本件特許発明12の「前記第2の層が、前記第1の層より高い硬度を有」するとの構成は、「第2の層」が「第1の層」に比べて相対的に硬度が高いことを特定しているのだから、本件特許発明12は明確であり、第三者に不測の不利益を与えるほどに不明確とはいえない。
本件特許発明18の「前記透明層の前記第2のポリマー材料が前記不透明層の前記第1のポリマー材料より高い硬度を有する」との構成についても、「透明層の前記第2のポリマー材料」が「不透明層の前記第1のポリマー材料」に比べて相対的に硬度が高いことを特定しているのだから、本件特許発明18は明確であり、第三者に不測の不利益を与えるほどに不明確とはいえない。
したがって、申立人の主張する理由2-4については、理由が無い。
(3)理由3-1について
本件特許発明1~12、14と上記1(2)アに記載の甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点2-Aと同じ点で相違するところ、上記相違点1-Aについては、甲2~14号証にも記載も示唆も無く、甲2発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件特許発明1~12、14は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
(4)申立人意見書について
申立人は、申立人意見書において、概ね、(1)請求項12に記載された「0.5μmの表面粗さRa」の範囲が不明確であり、かつ、本件特許明細書に記載がない点、(2)請求項17に記載された「不透明層」の意義が不明確である点の主張を行っているが、上記第6の1(1)~(2)で示したとおり、いずれの事項も本件特許明細書に記載された事項であり、かつ、不明確とはいえないため、申立人意見書の主張は採用の限りではない。
また、申立人は、仮に訂正が認められた場合、「楕円形」には本件特許明細書の図6Dに示されている周辺部の開口の形状も含まれると解釈され、当該形状は甲1の図6aに示される領域50の開口の形状と略同一のものである点の主張を行っているが、上記第6の1(1)ウ(ア)で示したとおり、略同一の形状とはいえないため、申立人意見書の主張は採用の限りではない。
3 むすび
以上示したとおり、本件請求項1~6及び8~18に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項1~6及び8~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
第7 むすび
以上のとおり、請求項1~6及び8~18に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項1~6及び8~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項7に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項7に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701223