特許異議申立
2016-700924
人工毛髪及びそれを用いたかつら
- 審判番号
- 2016-700924
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-532699
- 登録番号
- 特許第5978306号(P5978306)
- 請求日
- 2016年09月27日
- 審決日
- 2017年10月13日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】富士ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】村上 智司
- 【異議申立人】増成 とみ江
- 審判長/審判官
- 審判長 内藤 真徳
- 審判官 関谷 一夫
- 審判官 根本 徳子
- 分類
- P1651.113-YAA(A41G) / P1651.121-YAA(A41G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5978306号発明「人工毛髪及びそれを用いたかつら」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5978306号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第5978306号の請求項4ないし5に係る特許を維持する。
特許第5978306号の請求項1~3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5978306号の請求項1-5に係る特許についての出願は、平成24年8月31日に国際出願され、平成28年7月29日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、異議申立人増成とみ江により特許異議の申立てがされ、平成29年6月26日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年9月1日に意見書の提出及び訂正の請求があったものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記ポリエステルモノフィラメントは、前記減量処理後の芯部の断面積S1と鞘部の断面積S2との比である断面積比S1/S2が、10/90~40/60であることを特徴とする請求項2又は3記載の人工毛髪。」
と記載されているのを、
「芯部と該芯部を覆う鞘部とからなる芯鞘構造を有し、
前記芯部がポリブチレンテレフタレート樹脂又はポリトリメチレンテレフタレート樹脂からなり、前記鞘部がポリエチレンテレフタレート樹脂からなるポリエステルモノフィラメントから構成され、
前記ポリエステルモノフィラメントは、アルカリ溶液を用いた減量処理によって、その表面に微細な凹凸部が形成され、前記減量処理による重量減少率が30~50%であり、
更に、前記ポリエステルモノフィラメントは、前記減量処理後の芯部の断面積S1と鞘部の断面積S2との比である断面積比S1/S2が、10/90~40/60であることを特徴とする人工毛髪。」
に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「かつらベースと、該かつらベースに植設される人工毛髪とからなるかつらであって、前記人工毛髪は、請求項1乃至4記載のいずれかの人工毛髪であることを特徴とするかつら。」
と記載されているのを、
「かつらベースと、該かつらベースに植設される人工毛髪とからなるかつらであって、
前記人工毛髪は、請求項4記載の人工毛髪であることを特徴とするかつら。」
に訂正する。
カ 訂正事項6
明細書の段落[0019]に、
「更に、前記ポリエステルモノフィラメントは、アルカリ溶液を用いた減量処理によって、その表面に微細な凹凸部が形成されていることが好ましく、その重量減少率は、30~50%であることが好ましい。」
と記載されているのを、
「更に、前記ポリエステルモノフィラメントは、アルカリ溶液を用いた減量処理によって、その表面に微細な凹凸部が形成されており、その重量減少率は、30~50%である。」
に訂正する。
キ 訂正事項7
明細書の段落[0020]に、
「また、前記ポリエステルモノフィラメントは、アルカリ溶液を用いた減量処理後の芯部の断面積S1と鞘部の断面積S2との比である断面積比S1/S2が、10/90~40/60であることが好ましい。」
と記載されているのを、
「また、前記ポリエステルモノフィラメントは、アルカリ溶液を用いた減量処理後の芯部の断面積S1と鞘部の断面積S2との比である断面積比S1/S2が、10/90~40/60である。」
に訂正する。
ク 訂正事項8
明細書の段落[0053]に、
「(実施例1-1~実施例1-4)
鞘成分としてのPET樹脂は、ユニチカ株式会社製MA-2103(固有粘度0.68)を使用した。また、艶消し剤として東ソー・シリカ株式会社製のシリカを5%含むマスターバッチをPET樹脂95重量部に対して5重量部配合した。芯成分として、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製のノバデュラン5010L(固有粘度1.0)(PBT樹脂)を使用した。鞘部のエクストルータ温度を285℃、芯部のエクストルーダ温度を270℃として、PET樹脂及びPBT樹脂を溶融し、これらの吐出量を、芯/鞘重量比がそれぞれ5/95(実施例1-1)、10/90(実施例1-2)、20/80(実施例1-3)、30/70(実施例1-4)となるように調節して、ホール数60個の芯鞘型複合繊維用紡糸口金から冷却槽中に紡出し、ついで、90℃の熱水中で4倍に延伸した後、200℃の熱風槽中で熱セットし、しかる後、油剤を付与した上でボビンに巻き取り、繊度が89dtexの芯鞘型ポリエステルモノフィラメントを得た。」
と記載されているのを、
「(実施例1-1,実施例1-2,比較例A及び比較例B)
鞘成分としてのPET樹脂は、ユニチカ株式会社製MA-2103(固有粘度0.68)を使用した。また、艶消し剤として東ソー・シリカ株式会社製のシリカを5%含むマスターバッチをPET樹脂95重量部に対して5重量部配合した。芯成分として、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製のノバデュラン5010L(固有粘度1.0)(PBT樹脂)を使用した。鞘部のエクストルータ温度を285℃、芯部のエクストルーダ温度を270℃として、PET樹脂及びPBT樹脂を溶融し、これらの吐出量を、芯/鞘重量比がそれぞれ5/95(比較例A)、10/90(実施例1-1)、20/80(実施例1-2)、30/70(比較例B)となるように調節して、ホール数60個の芯鞘型複合繊維用紡糸口金から冷却槽中に紡出し、ついで、90℃の熱水中で4倍に延伸した後、200℃の熱風槽中で熱セットし、しかる後、油剤を付与した上でボビンに巻き取り、繊度が89dtexの芯鞘型ポリエステルモノフィラメントを得た。」
に訂正する。
ケ 訂正事項9
明細書の段落[0056]に、
「(実施例1-5~実施例1-8)
芯成分として、旭化成ケミカルズ株式会社製のPTT樹脂結晶化品(固有粘度1.0)(PTT樹脂)を使用した他は、上記実施例1-1~実施例1-4と同様にして、芯/鞘重量比を5/95とした実施例1-5、同重量比を10/90とした実施例1-6、同重量比を20/80とした実施例1-7、同重量比を30/70とした実施例1-8を得た。そして、これら実施例1-5~実施例1-8に対して、上記と同様の減量処理、染色処理、還元洗浄処理、油剤付与、乾燥、切断、櫛通しの各工程を実施した。」
と記載されているのを、
「(実施例1-3,実施例1-4,比較例C及び比較例D)
芯成分として、旭化成ケミカルズ株式会社製のPTT樹脂結晶化品(固有粘度1.0)(PTT樹脂)を使用した他は、上記実施例1-1,実施例1-2,比較例A及び比較例Bと同様にして、芯/鞘重量比を5/95とした比較例C、同重量比を10/90とした実施例1-3、同重量比を20/80とした実施例1-4、同重量比を30/70とした比較例Dを得た。そして、これら実施例1-3,実施例1-4,比較例C及び比較例Dに対して、上記と同様の減量処理、染色処理、還元洗浄処理、油剤付与、乾燥、切断、櫛通しの各工程を実施した。」
に訂正する。
コ 訂正事項10
明細書の段落[0058]に、
「得られた実施例1-1~実施例1-8の人工毛髪の物性値、芯/鞘断面積比、カールセット性、縮れ性及び風合いを人毛との比較において評価した。その結果を表1及び表2に示す。」
と記載されているのを、
「得られた実施例1-1,実施例1-2,実施例1-3,実施例1-4、比較例A,比較例B,比較例C及び比較例Dの人工毛髪の物性値、芯/鞘断面積比、カールセット性、縮れ性及び風合いを人毛との比較において評価した。その結果を表1及び表2に示す。」
に訂正する。
サ 訂正事項11
明細書の段落[0059]の[表1]を
から
に訂正する。
シ 訂正事項12
明細書の段落[0060]の[表2]を、
から
に訂正する。
ス 訂正事項13
明細書の段落[0061]に、
「表1及び表2から見てとれるように、実施例1-2、実施例1-3、実施例1-6及び実施例1-7は、カールセット性、縮れ性及び風合いの全てが人毛(表4の比較例4)と同等であり、非常に良い結果を示し、満足できる品質であった。これに対して、実施例1-1及び実施例1-5はカールセット性が人毛と同等であったが、縮れ性及び風合いが人毛と比較して若干劣り、実施例1-4及び実施例1-8は縮れ性が人毛と同等であったが、カールセット性及び風合いが人毛と比較して若干劣っていた。このことから、人毛と同等のカールセット性、縮れ性及び風合いを得るには、芯/鞘断面積比(S1/S2)が10/90~40/60であることが好ましく、この比率が10/90未満の場合には、縮れ性及び風合いが人毛と比較して劣ったものとなり、この比率が40/60を超えた場合には、カールセット性及び風合いが人毛と比較して劣ったものとなることが分かる。」
と記載されているのを、
「表1及び表2から見てとれるように、実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3及び実施例1-4は、カールセット性、縮れ性及び風合いの全てが人毛(表4の比較例4)と同等であり、非常に良い結果を示し、満足できる品質であった。これに対して、比較例A及び比較例Cはカールセット性が人毛と同等であったが、縮れ性及び風合いが人毛と比較して若干劣り、比較例B及び比較例Dは縮れ性が人毛と同等であったが、カールセット性及び風合いが人毛と比較して若干劣っていた。このことから、人毛と同等のカールセット性、縮れ性及び風合いを得るには、芯/鞘断面積比(S1/S2)が10/90~40/60であることが好ましく、この比率が10/90未満の場合には、縮れ性及び風合いが人毛と比較して劣ったものとなり、この比率が40/60を超えた場合には、カールセット性及び風合いが人毛と比較して劣ったものとなることが分かる。」
に訂正する。
セ 訂正事項14
明細書の段落[0062]に、
「(実施例2-1及び実施例2-2)
アルカリ水溶液を用いた減量率が25%となるように減量処理を施した以外は、実施例1-2及び実施例1-6に準じて各処理を施し、繊度67dtexの黒色人工毛髪である実施例2-1及び実施例2-2を得た。」
と記載されているのを、
「(比較例E及び比較例F)
アルカリ水溶液を用いた減量率が25%となるように減量処理を施した以外は、実施例1-1及び実施例1-3に準じて各処理を施し、繊度67dtexの黒色人工毛髪である比較例E及び比較例Fを得た。」に訂正する。
ソ 訂正事項15
明細書の段落[0064]の[表3]を、
から
に訂正する。
タ 訂正事項16
明細書の段落[0065]に、
「表3から分かるように、実施例2-1及び実施例2-2の人工毛髪は、いずれもカールセット性は人毛と同等であったが、縮れ性が若干劣っていた。」
と記載されているのを、
「表3から分かるように、比較例E及び比較例Fの人工毛髪は、いずれもカールセット性は人毛と同等であったが、縮れ性が若干劣っていた。」
に訂正する。
チ 訂正事項17
明細書の段落[0077]に、
「更に、実施例1-1~実施例1-4の結果と比較例5-1~比較例5-3の結果から、PBT樹脂を芯部とし、PET樹脂を鞘部とした芯鞘構造にすることによって、PBT樹脂とPET樹脂とを単に混合するよりも、優れた性質を示すようになることが分かる。」
と記載されているのを、
「更に、実施例1-1,実施例1-2,比較例A及び比較例Bの結果と比較例5-1~比較例5-3の結果から、PBT樹脂を芯部とし、PET樹脂を鞘部とした芯鞘構造にすることによって、PBT樹脂とPET樹脂とを単に混合するよりも、優れた性質を示すようになることが分かる。」
に訂正する。
ツ 訂正事項18
明細書の段落[0080]に、
「(実施例3-1~実施例3-6及び比較例6~比較例8)
実施例1-2、実施例1-3、実施例2-1、実施例1-6、実施例1-7、実施例2-2、比較例1及び比較例2の人工毛髪、並びに比較例4の人毛を、かつらベースにそれぞれ植設して実施例3-1~実施例3-6及び比較例6~比較例8のかつらを得た。尚、かつらベースには、ナイロンモノフィラメントをネット状に編成したものを用いた。」
と記載されているのを、
「(実施例3-1,実施例3-2,実施例3-3,実施例3-4,比較例G,比較例H及び比較例6~比較例8)
実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3、実施例1-4、比較例E、比較例F、比較例1及び比較例2の人工毛髪、並びに比較例4の人毛を、かつらベースにそれぞれ植設して実施例3-1,実施例3-2,実施例3-3,実施例3-4,比較例G,比較例H及び比較例6~比較例8のかつらを得た。尚、かつらベースには、ナイロンモノフィラメントをネット状に編成したものを用いた。」
に訂正する。
テ 訂正事項19
明細書の段落[0082]の[表6]を、
から
に訂正する。
ト 訂正事項20
明細書の段落[0084]に、
「表6及び表7から見てとれるように、実施例3-1、実施例3-2、実施例3-4及び実施例3-5のかつらは、全ての評価項目について非常に良好な結果が得られ、特に、スチーマー、洗浄後のスタイル維持力及びスタイルのし易さについては、人毛を超える結果を示した。実施例3-3及び実施例3-6のかつらは、光沢の自然さ、手触り及び縮れ性については、人毛と比較して若干劣ってはいたものの、スチーマー、洗浄後のスタイル維持力及びスタイルのし易さについては、人毛を超える結果を示した。また、比較例6のかつらは、縮れ性が人毛と比較して極端に劣っており、比較例7のかつらは、光沢の自然さが人毛と比較して若干劣り、カールアイロン及びドライヤーについては人毛と比較して極端に劣っていた。」
と記載されているのを、
「表6及び表7から見てとれるように、実施例3-1、実施例3-2、実施例3-3及び実施例3-4のかつらは、全ての評価項目について非常に良好な結果が得られ、特に、スチーマー、洗浄後のスタイル維持力及びスタイルのし易さについては、人毛を超える結果を示した。比較例G及び比較例Hのかつらは、光沢の自然さ、手触り及び縮れ性については、人毛と比較して若干劣ってはいたものの、スチーマー、洗浄後のスタイル維持力及びスタイルのし易さについては、人毛を超える結果を示した。また、比較例6のかつらは、縮れ性が人毛と比較して極端に劣っており、比較例7のかつらは、光沢の自然さが人毛と比較して若干劣り、カールアイロン及びドライヤーについては人毛と比較して極端に劣っていた。」
に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び一群の請求項
上記(1)アの訂正事項1は、請求項1~3を引用する請求項4を、独立請求項とするものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
上記(1)イ~エの訂正事項2~4は、請求項1~3を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
上記(1)オの訂正事項5は、上記訂正事項2~4に係る請求項1~3の削除に対応して、請求項1乃至4記載のいずれかを引用する請求項5を、請求項4を引用する請求項5とするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
上記(1)カ~トの訂正事項6~20は、上記訂正事項1~5に係る特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載内容と発明の詳細な説明の記載内容とを整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
そして、本件訂正前の請求項2~5は請求項1を直接あるいは間接に引用する請求項であるから、請求項1~5は一群の請求項であるところ、これらの訂正は、一群の請求項1~5に対し請求されたものである。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項4及び5に係る発明(以下「本件発明4及び5」という。)は、その訂正特許請求の範囲の請求項4及び5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
本件発明4「芯部と該芯部を覆う鞘部とからなる芯鞘構造を有し、
前記芯部がポリブチレンテレフタレート樹脂又はポリトリメチレンテレフタレート樹脂からなり、前記鞘部がポリエチレンテレフタレート樹脂からなるポリエステルモノフィラメントから構成され、
前記ポリエステルモノフィラメントは、アルカリ溶液を用いた減量処理によって、その表面に微細な凹凸部が形成され、前記減量処理による重量減少率が30~50%であり、
更に、前記ポリエステルモノフィラメントは、前記減量処理後の芯部の断面積S1と鞘部の断面積S2との比である断面積比S1/S2が、10/90~40/60であることを特徴とする人工毛髪。」
本件発明5「かつらベースと、該かつらベースに植設される人工毛髪とからなるかつらであって、
前記人工毛髪は、請求項4記載の人工毛髪であることを特徴とするかつら。」
(2)取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、上記平成29年6月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。以下、本件訂正前の請求項に係る発明を、「本件特許発明1」等という。
ア 取消理由1
本件特許発明1、5は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
イ 取消理由2
本件特許発明1~5は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)甲号証の記載
甲第1号証:特開平3-113014号公報
甲第2号証:特開2001-123328号公報
甲第3号証:特開2007-303014号公報
甲第4号証:特開2012-12738号公報
甲第1~4号証のいずれにも、本件発明4及び5のポリエステルモノフィラメントが、「減量処理後の芯部の断面積S1と鞘部の断面積S2との比である断面積比S1/S2が、10/90~40/60である」点は記載されていない。
(4)判断
(ア)取消理由1について
上記(3)のとおり、甲第1号証または甲第2号証には、本件発明5のポリエステルモノフィラメントが、「減量処理後の芯部の断面積S1と鞘部の断面積S2との比である断面積比S1/S2が、10/90~40/60である」点は記載されておらず、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明は、本件発明5と同一でない。
よって、本件発明5は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明でなく、特許法第29条第1項第3号に該当するものでない。
したがって、本件発明5に係る特許は、特許法第113条第2項に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。
(イ)取消理由2について
上記(3)のとおり、甲第1~4号証には、本件発明4、5のポリエステルモノフィラメントが、「減量処理後の芯部の断面積S1と鞘部の断面積S2との比である断面積比S1/S2が、10/90~40/60である」点は記載されておらず、本願出願前に周知の技術ということもできない。そして、本件発明4、5は、人毛と同等のカール性、縮れ性、及び、人毛に近い風合いを達成できるという格別の効果を奏するものである。
よって、本件発明4、5は、甲第1~4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでない。
したがって、本件発明4、5に係る特許は、特許法第113条第2項に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。
(5)付記
申立人は、特許異議申立書において特許法第120条の5第5項に係る意見書の提出を希望しているが、同項ただし書によれば、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるときには、この限りではないとされている。
本件についてみると、本件訂正は、上記2(2)で述べたとおり、請求項を一部削除するものであって、実質的な内容の変更を伴うものでなく、本件特許異議の申立てについての実質的な判断に影響を与えるものでないから、上記特別の事情があるときに該当する。
よって、申立人に意見書を提出する機会を与えないものとする。
4. むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項4、5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項4、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1~3に係る特許について、上記2.のとおり、請求項1~3に係る特許を削除する本件訂正請求による訂正が認められたので、請求項1~3に係る特許についての本件特許異議申立ては、その対象が存在しないものとなった。
したがって、請求項1~3に係る特許についての本件特許異議申立ては、不適法な特許異議申立てであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によ
って却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700924