特許異議申立
2024-700502
防汚組成物
- 審判番号
- 2024-700502
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-524394
- 登録番号
- 7388923
- 請求日
- 2024年05月29日
- 審決日
- 2024年10月10日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ヨトゥン アーエス
- 【権利者代理人】弁理士法人池内アンドパートナーズ
- 【異議申立人】野呂 俊江
- 審判長/審判官
- 審判長 光本 美奈子
- 審判官 村守 宏文
- 審判官 天野 宏樹
- 分類
- P1651.121-Y (C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7388923号発明「防汚組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7388923号の請求項1~23に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、2016年(平成28年)11月11日(以下「本件優先日」という。)に英国に出願された出願(GB 1619149.6)をパリ条約による優先権主張の基礎出願(以下「本件基礎出願」という。)として、2017年(平成29年)11月10日である国際出願日(以下「本件出願日」という。)に特許出願されたものであって、本件優先日から二年六月以内である令和1年6月27日に、国際出願日における特許出願の明細書、請求の範囲及び要約の日本語による翻訳文が提出されたものである。
そして、令和5年11月20日に請求項1~23に係る特許(以下「本件特許」という。)の設定登録がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行されたところ、令和6年5月29日に特許異議申立人 野呂 俊江(以下「申立人」という。)により全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許発明
特許第7388923号の請求項1~23の特許に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~23に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
防汚コーティング組成物であって、
(i)シリルエステルコポリマーと(ii)メデトミジンと(iii)ロジンと(iv)シランを含有しており、
前記シリルエステルコポリマーがコモノマーとして
(a)トリイソプロピルシリルメタクリレートと;
(b)以下の式(I)で表される化合物であって、
【化1】
[図:0001416496000001.jpg]
式(I)で、R1が水素またはメチルであり、R2が環状エーテル(たとえば、オキソラン、オキサン、ジオキソラン、アルキル基にて置換または非置換のジオキサン)であり、XがC1~C4アルキレンである、化合物、および/または、以下の式(II)で表される化合物であって、
【化2】
[図:0001416496000002.jpg]
式(II)で、R3が水素またはメチルであり、R4が少なくとも1つの酸素原子もしくは窒素原子を有するC3~C18置換基である、化合物と;
(c)以下の式(III)で表される1つ以上のコモノマーであって、
【化3】
[図:0001416496000003.jpg]
式(III)で、R5が水素またはメチルであり、R6がC1~C8ヒドロカルビルである、1つ以上のコモノマーと;
を含む、防汚コーティング組成物であって、
コモノマー(a)、(b)および(c)は、シリルエステルコポリマー中のコモノマーの>95wt%を形成しており、
揮発性有機化合物(VOC)の含有量(ASTM D5201-01)が400g/L以下である、組成物。
【請求項2】
前記シリルエステルコポリマー内の成分(b)の量が2~50wt%の範囲である、請求項1に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項3】
前記シリルエステルコポリマー内の成分(b)量が2~40wt%の範囲である、請求項1または2に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項4】
前記シリルエステルコポリマー内の成分(b)量が5~35wt%の範囲である、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項5】
前記シリルエステルコポリマー内の(a)の量が前記コポリマーの5~80wt%の範囲にある、請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項6】
前記シリルエステルコポリマー内の(a)の量が前記コポリマーの25~75wt%の範囲にある、請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項7】
前記シリルエステルコポリマー内の(a)の量が前記コポリマーの30~70wt%の範囲にある、請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項8】
式(II)において、R4が式-(CH2CH2O)m-R7で表される基であり、R7がC1~C10アルキル置換基またはC6~C10アリール置換基であり、mが1~6の範囲の整数である、請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項9】
式(II)において、mが1~3の範囲の整数である、請求項8に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項10】
R4が式-(CH2CH2O)m-R7の基であり、R7がC1~C10アルキル置換基、である、請求項9に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項11】
R4が式-(CH2CH2O)m-R7の基であり、R7がメチルまたはエチル置換基である、請求項10に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項12】
mが1または2である、請求項10または11に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項13】
成分(b)が2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートおよびテトラヒドロフルフリルメタクリレートのうちの1つ以上を含む、請求項1乃至12のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項14】
メチルメタクリレートおよびn-ブチルアクリレートのうちの1つ以上を含む、請求項1乃至13のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項15】
2~60wt%の量のメチルメタクリレートをコモノマーとして含む、請求項1乃至14のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項16】
5~50wt%の量のメチルメタクリレートをコモノマーとして含む、請求項1乃至15のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項17】
1~30wt%の量のn-ブチルアクリレートをコモノマーとして含む、請求項1乃至16のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項18】
2~25wt%の量のn-ブチルアクリレートをコモノマーとして含む、請求項1乃至17のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項19】
無機銅化合物を含まない、請求項1乃至18のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項20】
前記殺生物剤が亜酸化銅および/または銅ピリチオンを含む、請求項1乃至18のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項21】
テトラエトキシシランを含む、請求項1乃至20のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項22】
対象物を付着から保護するプロセスであって、
付着の可能性のある前記対象物の少なくとも一部を請求項1乃至21のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物でコーティングすること
を含む、プロセス。
【請求項23】
請求項1乃至21のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物でコーティングされた対象物。
第3 申立ての理由の概要及び証拠方法
1 申立ての理由の概要
(1)申立理由1(甲第3号証を主引用例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1~23に係る発明は、優先権主張の利益を享受することができない発明であって、その新規性、進歩性の判断のための基準日は、本件出願日である2017年(平成29年)11月10日になるところ、本件特許の請求項1~23に係る発明は、本件出願日より前に公開された甲第3号証に記載された発明に、甲第4号証および甲第5号証に記載された発明を組み合わせることで、当業者が容易に想到し得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、特許法第113条第2号に該当するため、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲第4号証を主引用例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1~23に係る発明は、優先権主張の利益を享受することができない発明であって、その新規性、進歩性の判断のための基準日は、本件出願日である2017年(平成29年)11月10日になるところ、本件特許の請求項1~23に係る発明は、本件出願日より前に公開された甲第4号証に記載された発明に、甲第3号証に記載された発明を組み合わせることで、当業者が容易に想到し得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、特許法第113条第2号に該当するため、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(甲第5号証を主引用例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1~23に係る発明は、優先権主張の利益を享受することができない発明であって、その新規性、進歩性の判断のための基準日は、本件出願日である2017年(平成29年)11月10日になるところ、本件特許の請求項1~23に係る発明は、本件出願日より前に公開された甲第5号証に記載された発明に、甲第3号証に記載された発明を組み合わせることで、当業者が容易に想到し得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、特許法第113条第2号に該当するため、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
(1)甲第1号証:国際公開第2018/087287号
(2)甲第2号証:本件特許に係る国際特許出願(PCT/EP2017/078886)の優先権証明書(GB 1619149.6の明細書等)
(3)甲第3号証:国際公開第2016/190241号
(4)甲第4号証:国際公開第2017/094768号
(5)甲第5号証:国際公開第2017/022661号
(6)甲第6号証:ASTM Designation:D5201-01 Standard Practice for Calculating Formulation Physical Constants of Paint and Coatings及び抄訳、2001年5月
以下、「甲第1号証」~「甲第6号証」を、それぞれ「甲1」~「甲6」という。
第4 甲号証の記載事項
甲2は、本件基礎出願書類(以下「本件基礎出願書類(甲2)」という。)の記載内容を明らかにするために提出された証拠であると認められる。
1 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。なお、甲2は英語のため、当審による抄訳を記載する。
(1)第2頁第10~21行
「Medetomidine is effective in preventing barnacle settlement on the surface submerged in seawater. It is a nitrogen heterocyclic compound. Such compounds are known to negatively affect the storage stability of antifouling coating compositions and the long-term mechanical properties of antifouling coating films containing hydrolysable binders, and in particular silyl ester copolymers.
The present inventors have now surprisingly established that a silyl ester copolymer incorporating, for example, both triisopropylsilyl methacrylate and a hydrophilic (meth)acrylate comonomer in combination with medetomidine provides a self-polishing antifouling system with improved antifouling performance, in particular in terms of the prevention of barnacle fouling on marine surfaces. Moreover, the antifouling composition of the invention has excellent resistance to cracking and excellent self-polishing properties.」
メデトミジンは海水に浸されている表面にフジツボが付着するのを防止するのに有効である。メデトミジンは窒素複素環式化合物である。このような化合物は、防汚コーティング組成物の貯蔵安定性、および加水分解性バインダー、とくにシリルエステルコポリマーを含有している防汚コーティングフィルムの長期的機械的特性に悪影響を与えることが知られている。
驚くべきことに、本発明者らは、たとえばトリイソプロピルシリルメタクリレートと親水性(メタ)アクリレートコモノマーとを含むシリルエステルコポリマーにメデトミジンを組み合わせたものが、とくに海表面でのフジツボによる付着を防止するという点で防汚性能の改善が見られる自己研磨型防汚システムを提供することを見出した。さらに、本発明にかかる防汚組成物は優れた耐クラッキング性と優れた自己研磨特性とを有している。
(2)第3頁第16~19行
「There is a need therefore for silyl ester copolymers (and hence antifouling compositions) that can be combined with medetomidine to give controlled degradation of the antifouling coating, resistance to cracking and excellent antifouling properties, especially excellent anti-barnacle properties.」
したがって、メデトミジンと組み合わせることにより防汚コーティングの劣化制御、耐クラッキング性および優れた防汚特性、とくに優れたフジツボ付着阻害特性を提供することができるシリルエステルコポリマー(ひいては、防汚組成物)の必要性がある。
(3)第9頁第21~24行
「In a preferred embodiment, the comonomers triisopropylsilyl methacrylate (a), component (b) and any non-hydrophilic (meth)acrylate comonomer(s) according to Formula (III) together form >80wt%, preferably >90 wt%, especially >95 wt% of the comonomers in the silyl ester copolymer.」
好ましい実施形態では、トリイソプロピルシリルメタクリレート(a)、成分(b)および式(III)により表される非親水性(メタ)アクリレートコモノマーを合わせたコモノマーの合計がシリルエステルコポリマー内の全コモノマーの>80wt%、好ましくは>90wt%、とくに>95wt%を形成するようになっている。
(4)第18頁第14~26行
「Examples of dehydrating agents and drying agents include anhydrous calcium sulphate, calcium sulphate hemihydrate, anhydrous magnesium sulphate, anhydrous sodium sulphate, anhydrous zinc sulphate, molecular sieves and zeolites; orthoesters such as trimethyl orthoformate, triethyl orthoformate, tripropyl orthoformate, triisopropyl orthoformate, tributyl orthoformate, trimethyl orthoacetate and triethyl orthoacetate; ketals; acetals; enolethers; orthoborates such as trimethyl borate, triethyl borate, tripropyl borate, triisopropyl borate, tributyl borate and tri-tert-butyl borate; silanes such as tetraethoxysilane, trimethoxymethylsilane, triethoxymethylsilane, phenyltrimetoxysilane, vinyltrimethoxysilane, vinyltriethoxysilane and ethyl polysilicate; and isocyanates, such as p-toluenesulfonyl isocyanate.
The preferred dehydrating agents and drying agents are silanes and inorganic compounds.」
脱水剤および乾燥剤の例としては、無水硫酸カルシウム、硫酸カルシウム半水塩、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸亜鉛、モレキュラシーブ、沸石に加えて、オルトエステルであるたとえばオルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリプロピル、オルトギ酸トリイソプロピル、オルトギ酸トリブチル、オルト酢酸トリメチルおよびオルト酢酸トリエチル;ケタール;アセタール;エノールエーテル;オルソホウ酸エステルであるたとえばホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチルおよびほう酸トリ-tert-ブチル;シラン(silanes)である、たとえばテトラエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびエチルポリシリケート;ならびにイソシアン酸エステルであるたとえばイソシアン酸p-トルエンスルホニルが挙げられる。
好ましい脱水剤および乾燥剤は、シランおよび無機化合物である。
(5)第19頁第17~22行
「The amount of solvent is preferably as low as possible. The solvent content may be up to 50 wt% of the composition, preferably up to 45 wt% of the composition, such as up to 40 wt% but may be as low as 15 wt% or less, e.g. 10 wt% or less. Again, the skilled man will appreciate that the solvent content will vary depending on the other components present and the end use of the coating composition.」
溶媒の量にはできるだけ少ないことが好ましい。溶媒の含有量は、防汚コーティング組成物の最大50wt%、好ましくは防汚コーティング組成物の最大45wt%、たとえば最大40wt%であってもよいが、15wt%以下、たとえば10wt%以下であってもよい。先の場合と同様に、いうまでもなく溶媒の含有量は存在するその他の成分に応じても異なるし、コーティング組成物の最終用途に応じても異なる。
(6)第19頁第28~31行
「More preferably the antifouling coating composition should have a content of volatile organic compounds (VOC) below 500 g/L, preferably below 400 g/L, e.g. below 390 g/L. VOC content can be calculated (ASTM D5201-01) or measured, preferably measured.」
さらに好ましくは、防汚コーティング組成物は、500g/Lを下回る、好ましくは400g/Lを下回る、たとえば390g/Lを下回る揮発性有機化合物(VOC)の含有量を有する必要がある。VOCの含有量は計算(ASTM D5201-01)により求められてもよいしまたは測定により求められてもよいが、測定により求められることが好ましい。
(7)第20頁第13行~第27頁
「Examples
Materials and methods
Testing
Determination of polymer solution viscosity
The viscosity of the polymers are determined in accordance with ASTM D2196 using a Brookfield DV-1 viscometer with LV-2 or LV-4 spindle at 12 rpm. The polymers are tempered to 23.0 °C ± 0.5 °C before the measurements.
Determination of solids content of the polymer solutions
The solids content in the polymer solutions are determined in accordance with ISO 3251. A test sample of 0.5 g ± 0.1 g are taken out and dried in a ventilated oven at 150 °C for 30 minutes. The weight of the residual material is considered to be the non-volatile matter (NVM). The non-volatile matter content is expressed in weight percent. The value given is the average of three parallels.
Determination of polymer average molecular weights distribution
The polymers are characterised by Gel Permeation Chromatography (GPC) measurement. The molecular weight distribution (MWD) was determined using a Polymer Laboratories PL-GPC 50 instrument with two PLgel 5 μm Mixed-D columns from Polymer Laboratories in series, tetrahydrofuran (THF) as eluent at ambient temperature and at a constant flow rate of 1 mL/min and with a refractive index (RI) detector. The columns were calibrated using polystyrene standards Easivials PS-H from Polymer Laboratories. The data were processed using Cirrus software from Polymer Labs. Samples were prepared by dissolving an amount of polymer solution corresponding to 25 mg dry polymer in 5 mL THF. The samples were kept for minimum 3 hours at room temperature prior to sampling for the GPC measurements. The weight-average molecular weight (Mw), the number-average molecular weight (Mn) and the polydispersity index (PDI), given as Mw/Mn, are reported in the tables.
Determination of the glass transition temperature
The glass transition temperature (Tg) is obtained by Differential Scanning Calorimetry (DSC) measurements. The DSC measurements were performed on a TA Instruments DSC Q200. Samples were prepared by transfer of a small amount of polymer solution to an aluminium pan and dry the samples for minimum 10 h at 50℃ with subsequent 3 h at 150℃. The samples of approx. 10 mg dry polymer material were measured in open aluminium pans and scans were recorded at a heating rate of 10℃/min and cooling rate of 10℃/min, within a temperature range from -50℃ to 150℃, with an empty pan as reference. The data were processed using Universal Analysis software from TA Instruments. The inflection point of the glass transition range, as defined in ASTM El356-08, of the second heating is reported as the Tg of the polymers.
General procedure for preparation of antifouling coating compositions
The components were mixed in the proportions given in Table 2. The mixture was dispersed in the presence of glass beads (approx. 2mm in diameter) in a paint can of 250 ml using a vibrational shaker for 15 minutes. The glass beads were filtered of before testing.
Determination of paint viscosity using Cone and Plate viscometer
The viscosity of the antifouling paint compositions are determined according to ASTM D4287-00 using a Cone and Plate viscometer set at a temperature of 23℃and providing viscosity measurement range of 0-10 P.
Calculation of the volatile organic compound (VOC) content of the antifouling coating composition
The volatile organic compound (VOC) content of the antifouling coating composition is calculated in accordance with ASTM D5201.
Accelerated cracking testing of coating films
PVC panels are coated with an appropriate anticorrosive primer. The antifouling coatings were applied on the panels using a film applicator with gap size of 800μm. The panels were dried for 72 h at 52℃ before immersion in seawater at 40℃. At regular intervals, the panels are taken out and evaluated. The panels are evaluated for cracking visually and under 10 x magnifications upon drying at RT for 24 h and again after drying at 52℃ for 24h. The panels were then re-immersed. The rating after drying at 52 ℃ are reported in Table 3.
The panels were rated as follows:
0 - No cracks
1 - Very few cracks
2 - Moderate number of cracks
3 - Considerable number of cracks
4 - Dense cracking
Determination of the polishing rates of antifouling coating films on rotating disc in
seawater
The polishing rate is determined by measuring the reduction in film thickness of a coating film over time. For this test PVC discs are used. The coating compositions are applied as radial stripes on the disc using a film applicator. The thickness of the dry coating films are measured by a surface profiler. The PVC discs are mounted on a shaft and rotated in a container in which seawater is flowing through. The speed of the rotated shaft are giving an average simulated speed of 16 knots on the disc. Natural seawater which has been filtered and temperature-adjusted to 25℃ ± 2℃ is used. The PVC discs are taken out at regular intervals for measuring the film thickness. The discs are rinsed and allowed to dry overnight at room temperature before measuring the film thickness.
Procedure for preparation of copolymer solution S1 and S9
53 parts by weight of xylene is charged to a temperature-controlled reaction vessel equipped with a stirrer, a condenser, a nitrogen inlet and a feed inlet. The reaction vessel is heated and maintained at the reaction temperature of 85 ℃. A premix of triisopropylsilyl methacrylate, 2-methoxyethyl methacrylate, n-butyl acrylate and methyl methacrylate in the proportions given in Table 1 and 1.0 parts 2,2'-azobis(2-methylbutyronitrile) is prepared. The pre-mix is charged to the reaction vessel at a constant rate over 2 hours under a nitrogen atmosphere. Then 0.5 parts of tert-butyl peroxy-2-ethylhexanoate is added. The reaction vessel is maintained at the reaction temperature for a further 2 hours. The reactor is then heated to 110℃ and kept at this temperature for 1 hour. 30 parts of xylene is added for thinning and the reactor is cooled to room temperature.
General procedure for preparation of copolymer solution S2-S8 and comparative copolymer solution CS3-CS4
A quantity of solvent is charged to a temperature-controlled reaction vessel equipped with a stirrer, a condenser, a nitrogen inlet and a feed inlet. The reaction vessel is heated and maintained at the reaction temperature given in Table 1. A pre-mix of monomers, initiator, solvents and optional chain transfer agent is prepared. The pre-mix is charged to the reaction vessel at a constant rate over 2 hours under a nitrogen atmosphere. After further 30 minutes, post-addition of a boost initiator solution is added. The reaction vessel is maintained at the reaction temperature for a further 2 hours. The reactor is then heated to 110 ℃ and kept at this temperature for 1 hour. Additional solvent is added for thinning and the reactor is cooled to room temperature.
Procedure for preparation of comparative copolymer solution CS1
Production example 4 of EP 2 551 309 for production of silyl ester copolymer (a3-1) was repeated to prepare comparative copolymer solution CS1.
Into a temperature-controlled reaction vessel equipped with a stirrer, a condenser, a nitrogen inlet and a feed inlet, 100 parts by weight of xylene was introduced, and heating and stirring were carried out in a stream of nitrogen at a temperature of 85 ℃. With this temperature maintained, a mixture of 60 parts of triisopropylsilyl acrylate, 40 parts of methyl methacrylate and 0.3 part of 2,2'-azobis(isobutyronitrile) was charged into the reaction vessel over 2 hours. Thereafter, stirring was carried out for 4 hours at this temperature, and then 0.4 part of 2,2'-azobis(isobutyronitrile) was added, and stirring was further carried out for 4 hours at this temperature, to obtain a colourless and transparent reaction mixture containing a silyl ester copolymer.
Procedure for preparation of comparative copolymer solution CS2
Copolymer solution CS2 was prepared using the procedure described for preparation of copolymer solution CS1. The ingredients were used in the proportions given in Table 1.
Table 1. Ingredients in parts by weights and properties of copolymer solutions.
[図:0001416496000004.jpg]
Table 2. Paint formulations with ingredients in parts by weight.
[図:0001416496000005.jpg]
Table 3. Cracking resistance of coating films.
[図:0001416496000006.jpg]
」
実施例
材料および方法
試験
ポリマー溶液の粘度測定
ポリマーの粘度を、LV-2スピンドルまたはLV-4スピンドルを備えたBrookfied DV-I粘度計を用いて12rpmでASTM D2196に従って求める。測定前に、ポリマーを23.0℃±0.5℃でテンパリング処理(tempered)する。
ポリマー溶液の固形分の含有量の測定
ポリマー溶液中の固形分の含有量をISO 3251に従って測定する。0.5g±0.1gの試験試料を取り出し、30分間150℃で換気したオーブンの中で乾燥する。残留物の重量は不揮発分(NVM)であると見なされる。不揮発分の含有量は、重量パーセントで表現される。与えられている値は、3平行試験の平均である。
ポリマーの平均分子量分布の測定
ポリマーの特徴をゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定により求める。分子量分布(MWD)については、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として用い、屈折率(RI)検出器を用い、直列に結合されたPolymer Laboratoriesからの2つのPLgel 5μmMixed Dカラムを用い、常温において1mL/minという一定流量で、Polymer Laboratories PL-GPC 50装置を用いて求めた。2つのカラムをPolymer Laboratoriesからのポリスチレン標準物質Easivials PS-Hを用いて較正した。データをPolymer LaboratoriesからのCirrusソフトウェアを用いて処理した。5mLのTHFの中に25mgの乾燥ポリマーに対応するポリマー溶液量を溶解させることにより試料を調製した。これらの試料をGPC測定のためにサンプリングする前に最低3時間室温で保持した。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびMw/Mnとして表される多分散指数(PDI)が、表に記録されている。
ガラス転移温度の測定
ガラス転移温度(Tg)が示差走査型カロリメトリー(DSC)測定により求められている。DSC測定をTA Instruments DSC Q200を用いて行った。アルミニウムパンに少量のポリマー溶液を移し、50℃で最低10h試料を乾燥し、その後150℃で3h乾燥することにより試料を調製した。約10mgの乾燥ポリマー材料の試料を蓋のないアルミニウムパンにおいて測定し、走査データを10℃/minの加熱速度、10℃/minの冷却速度で-50℃~150℃までの温度範囲で空のパンを基準として記録した。TA InstrumentsからのUniversal Analysisソフトウェアを用いてデータを処理した。ASTM E1356-08に規定された2回目の加熱のガラス転移範囲の変曲点がポリマーのTgとして報告されている。
防汚コーティング組成物の調製の基本手順
表2に記載の比率で成分を混合した。この混合物を、250mlの塗料缶の中でガラスビーズ(直径が約2mm)の存在下で加振器を15分間用いて分散させた。試験前にガラスビーズをフィルタで取り除いた。
円錐平板型粘度計を用いた塗料粘度の測定
ASTM D4287-00に従って、防汚コーティング組成物の粘度を23℃の温度に設定されたデジタル式の円錐平板型粘度計を用いて、0~10Pの粘度測定範囲で求めた。
防汚コーティング組成物の揮発性有機化合物(VOC)含有量の計算
防汚コーティング組成物の揮発性有機化合物(VOC)含有量は、ASTM D5201に従って計算されている。
コーティングフィルムの加速亀裂試験
PVCパネルが適切な防食プライマでコーティングされている。800μmのギャップサイズのフィルムアプリケータを用いて、防汚コーティングをPVCパネルに被覆した。PVCパネルを52℃で72h間乾燥してから海水中に40℃で浸けた。PVCパネルを一定時間ごとに取り出して評価した。PVCパネルは、RTで24h間乾燥し、再び52℃で24h間乾燥して割れ目の有無が10x拡大下で視覚的に評価される。次いで、PVCパネルを再度浸けた。52℃で乾燥させた後の評価結果が表3に報告されている。
PVCパネルを以下のように評価した:
0―割れ目なし
1―わずかな数の割れ目あり
2―中程度の数の割れ目あり
3―多数の割れ目あり
4―極めて多数の割れ目あり
海水中の回転円板上の防汚コーティングフィルムの研磨速度の測定
研磨速度は、時間の経過に対するコーティングフィルムのフィルム厚の減少を測定することにより求められる。この試験にはPVC円板が用いられる。フィルムアプリケータを用いて、防汚コーティング組成物がPVC円板上に放射線状の縞として被覆される。乾燥コーティングフィルムの厚みが表面形状/粗さ測定器によって測定される。PVC円板がシャフトにマウントされて海水が流れる容器の中で回転する。このシャフトの回転速度は、PVC円板上に16ノットの平均シミュレーション速度をもたらす。濾過され、25℃±2℃に温度調節された天然の海水が用いられる。PVC円板は膜厚の測定のために一定時間ごとに取り出される。PVC円板は、すすがれ、室温で夜通し乾燥され、膜厚が測定される。
コポリマー溶液S1、S9の調製手順
撹拌機と、凝縮器と、窒素流入口と、材料流入口とを備えた温度制御型反応槽(reaction vessel、reactor)にキシレン53重量部が投入される。反応槽は85℃の反応温度まで加熱され、維持される。表1に記載の比率のトリイソプロピルシリルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、n-ブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートと1.0部の2,2 ’ -アゾビス(2-メチルブチロニトリル)と前もって混合したもの、すなわちプリミックスが調製される。このプリミックスが窒素雰囲気の下で2時間にわたって一定の速度で反応槽に投入される。次いで、0.5部のtertブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートが加えられる。反応槽はさらに2時間上記の反応温度に維持される。次いで、反応槽は110℃まで加熱され、さらに1時間この温度に維持される。30部のキシレンが希釈のために加えられ、反応槽が室温にまで冷却される。
コポリマー溶液S2-S8と比較用のコポリマー溶液CS3-CS4とを調製するための基本手順
撹拌機と、凝縮器と、窒素流入口と、材料流入口とを備える温度制御型反応槽に所定の量の溶媒が投入される。反応槽は表1に記載の反応温度まで加熱され、維持される。モノマー、開始剤、溶媒および任意選択的な連鎖移動剤を前もって混合したもの、すなわちプリミックスが調製される。このプリミックスが窒素雰囲気の下で2時間にわたって一定の速度で反応槽に投入される。それから30分後、促進開始剤溶液が加えられる。反応槽はさらに2時間上記の反応温度に維持される。次いで、反応槽が110℃まで加熱され、1時間この温度に維持される。さらなる溶媒が希釈のために加えられ、反応槽が室温にまで冷却される。
比較用のコポリマー溶液CS1の調製手順
EP2551309に記載のシリルエステルコポリマー(a3-1)を製造するための製造例4を繰り返して比較用のコポリマー溶液CS1を調製した。
撹拌機と、凝縮器と、窒素流入口と、材料流入口とを備えた温度制御型反応槽の中に100重量部のキシレンを投入し、85℃の温度で窒素流の下で加熱および撹拌を実行した。この温度を維持したまま、60部のトリイソプロピルシリルアクリレート、40部のメチルメタクリレートおよび0.3部の2,2 ’ -アゾビス(イソブチロニトリル)の混合物を2時間にわたって反応槽の中に投入した。その後、この温度で撹拌を4時間にわたって実行し、次いで、0.4部の2,2 ’ -アゾビス(イソブチロニトリル)を加え、この温度で撹拌を4時間さらに実行し、シリルエステルコポリマーを含有する無色透明な反応混合物を得た。
比較用のコポリマー溶液CS2の調製手順
コポリマー溶液CS1の調製のために記載された手順を用いてコポリマー溶液CS2を調製した。表1に記載の比率でコポリマー溶液CS2の成分を用いた。
[図:0001416496000007.jpg]
[図:0001416496000008.jpg]
[図:0001416496000009.jpg]
(8)特許請求の範囲
「1. An antifouling coating composition comprising (i) a silyl ester copolymer comprisig as comonomers:
(a) triisopropylsilyl methacrylate;
(b) a compound of Formula (I)
[図:0001416496000010.jpg]
wherein R1 is hydrogen or methyl, R2 is a cyclic ether (such as oxolane, oxane, dioxolane, dioxane optionally alkyl substituted) and X is a C1-C4 alkylene; and/or a compound of Formula (II)
[図:0001416496000011.jpg]
wherein R3 is hydrogen or methyl, and R4 is a C3-C18 substituent with at least one oxygen or nitrogen atom, preferably at least one oxygen atom; and optionally
(c) one or more comonomers of Formula (III)
[図:0001416496000012.jpg]
wherein R5 is hydrogen or methyl, and R6 is a C1l-C8 hydrocarbyl;
and (ii) medetomidine.
2. An antifouling coating composition as claimed in any preceding claim wherein the amount of component(s) (b) in the silyl ester copolymer is in the range of 2 to 50 wt%, preferably in the range of 2 to 40 wt%, more preferably in the range of 5 to 35 wt%.
3. An antifouling coating composition as claimed in any preceding claimwherein the amount of (a) in the silyl ester copolymer is in the range of 5 to 80 wt%
of the copolymer, preferably 25 to 75 wt%, especially 30 to 70 wt%.
4. An antifouling coating composition as claimed in any preceding claimwherein in Formula (II), R4 is a group of formula -(CH2CH2O)m-R7 where R7 is a C1-C10 alkyl or a C6-C10 aryl substituent and m is an integer in the range of 1 to 6, preferably 1 to 3.
5. An antifouling coating composition as claimed in claim 4 wherein R4 is a group of formula -(CH2CH2O)m-R7 where R7 is a C1-C10 alkyl substituent,preferably methyl or ethyl, and mis an integer in the range of 1 to 3, preferably 1 or 2.
6. An antifouling coating composition as claimed in any preceding claim wherein component (b) comprises one or more of 2-methoxyethyl acrylate, 2-methoxyethyl methacrylate, 2-ethoxyethyl methacrylate, 2-(2-ethoxyethoxy)ethyl acrylate, 2-(2-ethoxyethoxy)ethyl methacrylate, tetrahydrofurfuryl acrylate, and tetrahydrofurfuryl methacrylate.
7. An antifouling coating composition as claimed in any preceding claimcomprising one or more non-hydrophilic comonomers of Formula (III):
[図:0001416496000013.jpg]
wherein R5 is hydrogen or methyl, and R6 is a C1-C8 hydrocarbyl substituent.
8. An antifouling coating composition as claimed in any preceding claim comprising one or more of methyl methacrylate and n-butyl acrylate.
9. An antifouling coating composition as claimed in any preceding claim comprising methyl methacrylate as a comonomer in an amount of 2 to 60 wt%, preferably 5 to 50 wt%.
10. An antifouling coating composition as claimed in any preceding claim comprising n-butyl acrylate as a comonomer in an amount of 1 to 30 wt%, preferably 2 to 25 wt%.
13. An antifouling coating composition as claimed in any preceding claim comprising rosin or a derivative thereof.
14. An antifouling coating composition as claimed in any preceding claim which is free of inorganic copper compounds.
15. An antifouling coating composition as claimed in claim 1 to 13 wherein said biocide comprises cuprous oxide and/or copper pyrithione.
16. A process for protecting an object from fouling, said process comprising coating at least a part of said object which is subject to fouling with an antifouling coating composition as claimed in any of claims 1 to 15.
17. An object coated with the antifouling coating composition as claimed in any of claims 1 to 15.
」
特許請求の範囲
1 防汚コーティング組成物であって、
(i)シリルエステルコポリマーと(ii)メデトミジンとを含有しており、
前記シリルエステルコポリマーがコモノマーとして
(a)トリイソプロピルシリルメタクリレートと;
(b)以下の式(I)で表される化合物であって、
[図:0001416496000014.jpg]
式(I)で、R1が水素またはメチルであり、R2が環状エーテル(たとえば、オキソラン、オキサン、ジオキソラン、アルキル基にて置換または非置換のジオキサン)であり、XがC1~C4アルキレンである、化合物、および/または、以下の式(II)で表される化合物であって、
[図:0001416496000015.jpg]
式(II)で、R3が水素またはメチルであり、R4が少なくとも1つの酸素原子もしくは窒素原子、好ましくは少なくとも1つの酸素原子を有するC3~C18置換基である、化合物と;
さらに任意選択的に、
(c)以下の式(III)で表される1つ以上のコモノマーであって、
[図:0001416496000016.jpg]
式(III)で、R5が水素またはメチルであり、R6がC1~C8ヒドロカルビルである、1つ以上のコモノマーと;
を含む、防汚コーティング組成物。
2 前記シリルエステルコポリマー内の成分(b)の量が2~50wt%の範囲、好ましくは2~40wt%の範囲、さらに好ましくは5~35wt%の範囲である、請求項1に記載の防汚コーティング組成物。
3 前記シリルエステルコポリマー内の(a)の量が前記コポリマーの5~80wt%、好ましくは25~75wt%、とくに30~70wt%の範囲にある、請求項1乃至2のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
4 式(II)において、R4が式-(CH2CH2O)m-R7で表される基であり、R7がC1~C10アルキル置換基またはC6~C10アリール置換基であり、mが1~6、好ましくは1~3の範囲の整数である、請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
5 R4が式-(CH2CH2O)m-R7の基であり、R7がC1~C10アルキル置換基、好ましくはメチルまたはエチルであり、mが1~3の範囲の整数、好ましくは1または2である、請求項4に記載の防汚コーティング組成物。
6 成分(b)が2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートおよびテトラヒドロフルフリルメタクリレートのうちの1つ以上を含む、請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
7 以下の式(III)で表される1つ以上の非親水性コモノマーであって、
[図:0001416496000017.jpg]
式(III)において、R5が水素またはメチルであり、R6がC1~C8ヒドロカルビル置換基である、1つ以上の非親水性コモノマーを含む、請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
8 メチルメタクリレートおよびn-ブチルアクリレートのうちの1つ以上を含む、請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
9 2~60wt%、好ましくは5~50wt%の量のメチルメタクリレートをコモノマーとして含む、請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
10 1~30wt%、好ましくは2~25wt%の量のn-ブチルアクリレートをコモノマーとして含む、請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
13 ロジンまたはその誘導体を含む、請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
14 無機銅化合物を含まない、請求項1乃至13のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
15 前記殺生物剤が亜酸化銅および/または銅ピリチオンを含む、請求項1乃至13のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
16 対象物を付着から保護するプロセスであって、
付着の可能性のある前記対象物の少なくとも一部を請求項1乃至15のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物でコーティングすること
を含む、プロセス。
17 請求項1乃至15のうちのいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物でコーティングされた対象物。
2 甲1の記載事項
甲1には、前記1に対応する記載に加え、以下の(1)~(3)の記載がなされており、以下、対応する特表2019-535868号公報の記載を並記する。
なお、前記公表公報の明細書の記載は、翻訳文の提出により願書に添付した明細書等とみなされたものであり、本件特許明細書の記載と同一である。
(1)第22頁第23~27行
「Determination of paint viscosity using Cone and Plate viscometer
The viscosity of the antifouling coating compositions were determined according to ISO 2884-1:1999 using a digital Cone and Plate viscometer set at a temperature of 23℃, working at a shear rate of 10000 s-1 and providing viscosity measurement in the range of 0-10 P. The result is given as the average of three measurements.」
円錐平板型粘度計を用いた塗料粘度の測定
ISO2884-1:1999に従って、防汚コーティング組成物の粘度を23℃の温度に設定されたデジタル式の円錐平板型粘度計を用いて10000s-1の剪断速度、0~10Pの粘度測定範囲で求めた。結果は、3つの測定値の平均として記録されている。
(2)第23頁第17行~24頁第21行
「Determination of the polishing rates of antifouling coating films on rotating disc in seawater
The polishing rate is determined by measuring the reduction in film thickness of a coating film over time. For this test PVC discs are used. The coating compositions are applied as radial stripes on the disc using a film applicator with a gap size of 300 μm. The thickness of the dry coating films are measured by a surface profiler. Typical initial dry film will depend on the solids content of the applied antifouling coating composition and the speed of application. Typical initial film thickness for the tested coatings in the example part is 100 ± 10 μm. The PVC discs are mounted on a shaft and rotated in a container in which seawater is flowing through. The speed of the rotated shaft gives an average simulated speed of 16 knots on the disc. Natural seawater which has been filtered and temperature-adjusted to 25℃ ± 2℃ is used. The PVC discs are taken out at regular intervals for measuring the film thickness. The discs are rinsed and allowed to dry overnight at room temperature before measuring the film thickness. The results are given as film reduction, i.e. the difference between the initial film thickness and the measured thickness at the given time. The coating film is considered to be polished through when a thin, non-polishing leached layer is remaining on the surface, typically 10-20 μm in thickness, or when the film is totally polished away from the surface. This is denoted as PT in the result tables.
Determination of barnacle resistance by static immersion testing in sea water
PVC panels were prepared by applying one coat of a vinyl epoxy tie-coat (Safeguard Plus, manufactured by Jotun) and one coat of an antifouling coating (SeaQuantum Ultra S, manufactured by Jotun). The antifouling coating compositions of the invention was applied by using a film applicator with a gap size of 400 μm, giving a total test area of approx. 120 cm2. The dry test panels were immersed in the sea in subtropical waters outside Florida, USA and inspected at regular intervals.
The barnacle resistance was rated as follows:
0: None
1: <5 % coverage of barnacle fouling
2: 5-10 % coverage ofbarnacle fouling
3: 10-15% coverage of barnacle fouling
4: > 15% coverage of barnacle fouling
The rating scale is only valid for test areas of 100-150 cm2. Edge effects on the panel are excluded, as described in ASTM D6990-05, section 7.5, when rating the coating film.」
海水中の回転円板上の防汚コーティングフィルムの研磨速度の測定
研磨速度は、時間の経過に対するコーティングフィルムのフィルム厚の減少を測定することにより求められる。この試験にはPVC円板が用いられる。300μmのギャップサイズのフィルムアプリケータを用いて、防汚コーティング組成物がPVC円板上に放射線状の縞として被覆される。乾燥コーティングフィルムの厚みが表面形状/粗さ測定器によって測定される。典型的な初期乾燥フィルムは、被覆される防汚コーティング組成物の固形分の含有量および被覆速度に応じて異なる。実施例における試験コーティングの典型的な初期膜厚は100±10μmである。PVC円板がシャフトにマウントされて海水が流れる容器の中で回転する。このシャフトの回転速度は、PVC円板上に16ノットの平均シミュレーション速度をもたらす。濾過され、25℃±2℃に温度調節された天然の海水が用いられる。PVC円板は膜厚の測定のために一定時間ごとに取り出される。PVC円板は、すすがれ、室温で夜通し乾燥され、膜厚が測定される。膜厚の測定結果は、膜厚減少量、すなわち初期の膜厚と所与の時間に測定された膜厚との間の差として記録される。厚みが典型的には10~20μmの薄い非研磨溶脱層(non-polished leached layer)が表面に残っている時、すなわちコーティングフィルムが表面
から完全に取り除かれた時がコーティングフィルムの研磨終了(polished through)時であると見なされる。研磨終了時は測定結果表においてPTとして表されている。
海水中における静的浸漬試験による耐フジツボ性の測定
ビニールエポキシ製タイコート(Jotun社により製造されたSafeguar Plus)を一回塗りし、防汚コーティング(Jotun社により製造されたSeaQuantum Ultra S)を一回塗りすることによりPVCパネルを調製した。約120cm2の総試験領域を形成するために、ギャップサイズが400μmのフィルムアプリケータを用いて本発明にかかる防汚コーティング組成物を被覆した。乾燥試験パネルを米国フロリダ州の外側の亜熱帯水域の海に浸して一定時間ごとに検査した。
耐フジツボ性は次のように評価された:
0: 検出されず、
1: <5%被覆率のフジツボ付着
2: 5~10%被覆率のフジツボ付着
3: 10~15%被覆率のフジツボ付着
4: >15%被覆率のフジツ付着
評定尺度は100~150cm2の試験領域対してのみ有効である。ASTM D6990-05、7.5節に規定されているように、コーティングフィルムの評価の際、PVCパネルの周縁効果は除外されている。
(3)第30頁表4~第35頁最終行
「Table 4. Ingredients in parts by weights for antifouling coating compositions.
[図:0001416496000018.jpg]
[図:0001416496000019.jpg]
Table 5: Results for antifouling coating properties
[図:0001416496000020.jpg]
The results in Table 5 show that antifouling coatings made with copolymers comprising triisopropylsilyl methacrylate (PA1-PA9) exhibit better storage stability and more controlled polishing (film consumption) than comparative antifouling coatings made with copolymers comprising triisopropylsilyl acrylate (CPA1-CPA3). The absence of a hydrophilic comonomer in the copolymers comprising triisopropylsilyl methacrylate as in antifouling coating composition (CPA4) gives an extremely slow polishing (film consumption).
Both the paint examples and the comparative examples exhibits good barnacle resistance due to the presence of medetomidine.
Table 6. Ingredients in parts by weights for antifouling coating compositions.
[図:0001416496000021.jpg]
[図:0001416496000022.jpg]
Table 7. Ingredients in parts by weights for comparative antifouling coating compositions.
[図:0001416496000023.jpg]
[図:0001416496000024.jpg]
Table 8: Results for antifouling coating properties
[図:0001416496000025.jpg]
Table 9: Results for antifouling coating properties
[図:0001416496000026.jpg]
The results in Table 8 and Table 9 show that antifouling coatings made with copolymers comprising triisopropylsilyl methacrylate (PB1-PB13) exhibit better cracking resistance than comparative antifouling coatings made with copolymers comprising triisopropylsilylacrylate (CPB1-CPB3). The absence of a carboxylic acid such as rosin in the copolymers comprising triisopropylsilyl methacrylate as in antifouling coating composition (CPB4) will also give reduced cracking resistance. Both the paint examples and the comparativeexamples exhibits good barnacle resistance due to the presence of medetomidine.」
[図:0001416496000027.jpg]
[図:0001416496000028.jpg]
[図:0001416496000029.jpg]
表5に記載の結果から、トリイソプロピルシリルメタクリレートを含むコポリマーで作製された防汚コーティング(PA1~PA9)がトリイソプロピルシリルアクリレートを含むコポリマーで作製された防汚コーティング(CPA1~CPA3)と比べてより良好な貯蔵安定性および制御研磨性(フィルム消費)を示していることが分かる。防汚コーティング組成物(CPA4)のようにトリイソプロピルシリルメタクリレートを含むシリルエステルコポリマー内に親水性コモノマーが存在しないと非常に研磨が遅くなる(フィルム消費)。メデトミジンの存在に起因して塗料例および比較例の両方において良好な耐フジツボ性を示している。
[図:0001416496000030.jpg]
[図:0001416496000031.jpg]
[図:0001416496000032.jpg]
[図:0001416496000033.jpg]
[図:0001416496000034.jpg]
[図:0001416496000035.jpg]
表8および表9に記載の結果から、トリイソプロピルシリルメタクリレート(PB1~PB13)を含むコポリマーで形成された防汚コーティングがトリイソプロピルシリルアクリレート(CPB1~CPB3)を含むコポリマーから形成された比較用防汚コーティングに比べてより良好な耐亀裂性を示していることが分かる。防汚コーティング組成物(CPB4)のようなトリイソプロピルシリルメタクリレートを含むシリルエステルコポリマー内にロジンの如きカルボン酸を欠いている場合も耐クラッキング性を劣化させる。メデトミジンの存在に起因して、塗料例および比較例の両方が良好な耐フジツボ性を示している。
3 甲3~甲6の記載事項
甲3~甲6の記載事項については摘記を省略する。
第5 申立理由についての判断
前記第3 1に記載の申立理由1~3は、いずれも、本件特許発明1~23について、パリ条約による優先権主張の効果が認められないことを前提とするものである。
優先権主張の効果についての申立人の主張は、より具体的には、以下のとおりである。
(1)本件特許に係る発明が、本件基礎出願明細書等(第一国出願の出願書類全体)に記載した事項との関係において、新規事項の追加されたものとなる場合には、パリ条約による優先権の主張の効果は認められないものと判断されるものであり、その一例として、本件特許に係る発明が、本件基礎出願明細書等の記載に基づいて当業者が実施することができなかった発明であったが、実施の形態の追加により、実施することができる発明となった場合が該当する。
(2)本件特許発明1~23は、本件基礎出願明細書等(第一国出願の出願書類全体)の記載に基づいて当業者が実施することができなかった発明であって、本件原文明細書およびその日本語による翻訳文である本件特許明細書において初めて実施できる発明となったものであるから、前記(1)から、本件特許発明1についてパリ条約による優先権の主張の効果は認められない。
しかしながら、以下に述べるとおり、当審は、申立人が申し立てる申立理由1~3によっては本件特許を取り消すことはできないと判断する。
1 パリ条約に基づく優先権主張の主張について
(1)前提
工業所有権の保護に関するパリ条約(以下、「パリ条約」という。)によれば、優先権の主張の効果が認められるためには、発明の構成部分が第一国出願に係る出願書類の全体により明らかにされていなければならない(第4条H)。
そして、パリ条約による優先権の主張の効果については、原則として請求項ごとに判断される。外国語特許出願の場合は、第一国出願に係る出願書類と、外国語特許出願の明細書等とみなされた翻訳文又はその後に補正がされた場合は補正後の明細書等に記載された事項を比較して判断されることとなり、特許の請求項に係る発明の構成部分が第一国出願に係る出願書類の全体により明らかにされているか否かについては、特許明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書」という。)が第一国出願について補正されたものと仮定した場合において、その補正がされたことにより、当該特許の請求項に係る発明が、「第一国出願の出願書類全体に記載した事項」との関係において、新たな技術的事項を導入されたものであるか否かで判断されるものといえる。
そこで、上述の観点から、本件発明1~23が「第一国出願の出願書類」である本件基礎出願書類全体に記載した事項との関係において、新たな技術的事項が導入されたものか否かについて検討する。
(2)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1と本件特許明細書の記載との関係について
(ア)本件特許発明1の発明特定事項
本件特許発明1は、前記第2に記載したとおり、防汚コーティング組成物であって(以下「構成1」という。)、(i)シリルエステルコポリマーと(ii)メデトミジンと(iii)ロジンと(iv)シランを含有し(以下「構成2」という。)、前記シリルエステルコポリマーがコモノマーとして(a)トリイソプロピルシリルメタクリレートと、(b)式(I)で表される所定の化合物および/または式(II)で表される所定の化合物と(c)式(III)で表される所定の化合物とを含み(以下「構成3」という。)、コモノマー(a)、(b)および(c)は、シリルエステルコポリマー中のコモノマーの>95wt%を形成しており(以下「構成4」という。)、揮発性有機化合物(VOC)の含有量(ASTM D5201-01)が400g/L以下であること(以下「構成5」という。)を発明特定事項とするものである。
(イ)本件特許明細書の記載
本件特許明細書には、海水に浸されている表面にフジツボが付着するのを防止するのに有効であるメデトミジンが、防汚コーティング組成物の貯蔵安定性、および加水分解性バインダー、とくにシリルエステルコポリマーを含有している防汚コーティングフィルムの長期的機械的特性に悪影響を与えるという背景技術と、メデトミジンと組み合わせることにより防汚コーティングの劣化制御、耐クラッキング性および優れた防汚特性、とくに優れたフジツボ付着阻害特性を提供することができるシリルエステルコポリマー(ひいては、防汚組成物)の必要性という課題(甲1の第2頁第10~21行、第3頁第16~20行に対応する段落0007~0008、段落0014)、及び、前記課題に対応した効果を裏付ける複数の実施例(甲1の第21頁第4行~第35頁最終行に対応する段落0119~0148)が記載されている。
具体的には、表1に記載のS1~S9の配合比で調製したシリルエステルコポリマーを用い、表2に記載のP1、P2の配合で調製した防汚コーティング組成物が、表3に記載のとおり良好な耐クラッキング性を有すること、表4に記載のPA1~PA9の配合比で調製した防汚コーティング組成物が、表5に記載のとおり良好な貯蔵安定性、制御研磨性、耐フジツボ性を有すること、表6に記載のPB1~PB13の配合比で調製した防汚コーティング組成物が、表8に記載のとおり良好な耐クラッキング性、耐フジツボ性を有することが開示されている。
(ウ)前記(ア)と前記(イ)の対応について
前記(イ)のS1~S9のシリルエステルコポリマーはいずれも前記アの本件特許発明1の構成3、4を満たし、前記P1、P2、PA1~PA9、PB1~PB13の防汚コーティング組成物は、前記アの本件特許発明1の構成1~4を満たすものである。
一方、VOCの含有量(ASTM D5201-01)が構成5を満たすことが開示されている実施例は、PB1~PB13の防汚コーティング組成物のみである。
PB1~PB13の防汚コーティング組成物に関する実施例は、前記第4の2(3)に対応するものであり、本件基礎出願書類(甲2)には記載されていない。
イ 本件基礎出願書類(甲2)の記載
本件基礎出願書類(甲2)には、防汚コーティング組成物について、(i)シリルエステルコポリマーと(ii)メデトミジンを含有しており、前記シリルエステルコポリマーがコモノマーとして(a)トリイソプロピルシリルメタクリレートと、(b)式(I)で表される所定の化合物および/または式(II)で表される所定の化合物と(c)式(III)で表される所定の化合物とを含むこと(甲2の特許請求の範囲の請求項1参照)、ロジンまたはその誘導体を含むこと(甲2の特許請求の範囲の請求項13参照)、テトラエトキシシランの如きシランを含むこと(甲2の第18頁第14~26行参照)、トリイソプロピルシリルメタクリレート(a)、成分(b)および式(III)により表される非親水性(メタ)アクリレートコモノマーを合わせたコモノマーの合計がシリルエステルコポリマー内の全コモノマーの>95wt%を形成すること(甲2の第9頁第21~24行参照)、並びに、400g/Lを下回る揮発性有機化合物(VOC)の含有量(ASTM D5201-01)を有すること(甲2の第19頁第28~31行参照)が記載されており、本件特許発明1の構成1~5が文言上記載されている。
また、本件基礎出願書類(甲2)における背景技術、課題、解決手段についての記載は、甲1の記載と同一であり(甲2の第2頁第10~21行、第3頁第16~19行参照)、本件特許明細書の記載と同様である。
他方、本件基礎出願書類(甲2)に開示された実施例は、VOCの含有量(ASTM D5201-01)の開示がないP1、P2の防汚コーティング組成物のみである。
ウ 検討
以下、前記ア(ウ)のPB1~PB13の防汚コーティング組成物に関する実施例の記載が追加されたことにより、本件特許発明1に新たな技術的事項を導入されたか否かという点について検討する。
(ア)本件基礎出願書類(甲2)及び本件特許明細書に実施例として記載されるP1、P2の防汚コーティング組成物は、前記イのとおり、VOCの含有量(ASTM D5201-01)が不明である点を除けば、本件特許発明1の発明特定事項を満たしており、良好な耐クラッキング性、耐フジツボ性も有するものである。
(イ)本件基礎出願書類(甲2)には、防汚コーティング組成物のVOC含有量はASTM D5201に従って計算されることに加え(甲2の第22頁第5~8行参照)、溶媒はできるだけ少ないことが好ましい(甲2の第19頁第17~22行参照)、及び、好ましくは400g/Lを下回るVOCの含有量を有する必要がある(甲2の第19頁第28~31行参照)と記載されている。
そして、本件基礎出願書類(甲2)の記載から、本件優先日当時の技術常識を備えた当業者は、防汚コーティング組成物中のVOCの多くは、溶媒(P1及びP2ではキシレン)に由来するものであると把握できると認められるところ、前記記載に接した当業者であれば、防汚コーティング組成物の良好な耐クラッキング性、耐フジツボ性の効果は維持しつつも、溶媒や他成分の溶剤等として含有するキシレンの含有量を適宜低減させることで、場合によっては、殺生物剤や顔料等の固形分量も適宜調整することや、具体的な材料を適宜選択することにより、VOCの含有量(ASTM D5201-01)を400g/L以下に調整しうるものと理解でき、VOCの含有量(ASTM D5201-01)を400g/L以下とすることが格別困難であったとの事情も見いだせない。
(ウ)そうすると、本件特許発明1は、PB1~PB13の防汚コーティング組成物に関する実施例の記載をもって初めて実施できることの裏付けがなされたものではないから、PB1~PB13の実施例の記載により、本件特許発明1に本件基礎出願書類(甲2)との関係において、新たな技術的事項が導入されたとはいえない。
エ 小括
したがって、本件特許発明1は、パリ条約による優先権の主張の効果が認められる発明である。
(3) 本件特許発明2~23について
本件特許発明2~23は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用し、さらに特定したものであり、これらの特定事項はいずれも本件基礎出願書類(甲2)に記載されたものである(甲2の特許請求の範囲の請求項1~10、13~17、第18頁第14~26行参照)。そして、本件特許明細書と本件基礎出願書類(甲2)の記載の関係は、前記ア(ウ)のとおりであって、これらの特定事項に関する実施例等の具体的な記載の追加が、本件特許明細書においてなされたものでもない。
したがって、本件特許発明2~23も、前記(2)と同様の理由から、パリ条約による優先権の主張の効果が認められる発明である。
2 申立理由1~3について
前記1のとおり、本件特許発明1~23については、パリ条約による優先権の主張の効果が認められるから、本件優先日後で本件出願日前に公開された甲3~甲5は、本件特許発明1~23の新規性及び進歩性を否定する証拠とはなり得ないものである。
したがって、甲3~甲5の記載事項について検討するまでもなく、本件特許発明1~23は、甲3~甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではないから、同法第113条第2号の規定により、本件特許発明1~23に係る特許を取り消されるべきものであるとすることはできない。
3 申立人の主張について
(1)申立人は、特許異議申立書において、以下ア~エのとおり主張する。
ア 本件特許明細書の記載、特に実施例(塗料例PB1~PB13)の開示に鑑みれば、本件特許明細書の記載は一応、本件特許発明1(少なくとも塗料例PB1~PB13のような実施形態)との関係で実施可能要件を満たしているものと認められるが、本件基礎出願書類(甲2)の実施例には、本件特許明細書と異なり、塗料例PB1~PB13の配合組成や、これらの塗料例の「VOC計算(g/L)」(ASTM D5201)は開示されていない。
イ 本件基礎出願書類(甲2)の実施例、第26頁には、塗料配合物P1及びP2の配合組成は開示されているが、それらの塗料配合物の「VOC計算(g/L)」の測定結果は開示されておらず、塗料配合物P1及びP2が、「400g/Lを下回る」VOCを含有するものであることは何ら前提とされておらず、「500g/Lを下回る」(が400g/Lを下回らない)VOCを含有する実施形態として、あるいは500g/Lを下回らないVOCを含有する実施形態として開示されていることも何ら否定できない。
ウ ASTM D5201によるVOC含有量(g/L)を算出するためには、塗料配合物P1及びP2全体としての密度(比重)及び固形分含量(重量%)の両方が明らかになっているか、塗料配合物P1及びP2に含まれる全成分それぞれの密度(比重)及び重量が明らかになっている必要があるが、本件基礎出願書類(甲2)実施例の開示は、どちらの方法によってASTM D5201によるVOC含有量(g/L)を算出するとしても不十分なものでしかなく、特に、「Rosin solution(60% in xylene)」、「Talc」、「Silyl ester copolymer solution」などの成分の比重によって、それらの成分を含有する塗料配合物P1及びP2の密度(比重)も変動することに鑑み、それらの成分の密度(比重)が明記されていない限り、あるいは塗料配合物P1及びP2の「VOC計算(g/L)」が直接的に明記されていない限り、塗料配合物P1及びP2が「揮発性有機化合物(VOC)の含有量(ASTM D5201-01)が400g/L以下である」という構成5を満たしていると認めることはできない。
エ 「揮発性有機化合物(VOC)の含有量(ASTM D5201-01)が400g/L以下である」という構成5を満たそうとするために用いた成分が、貯蔵安定性、長期的機械特性(耐クラック性)等に悪影響を及ぼし、それらに係る課題を解決できないものとなっては本末転倒であり、本件基礎出願書類(甲2)には、「ロジン」に関する構成2(iii)及び「シラン」に関する構成2(iv)が上記課題bの解決の可能性にどのように影響するかや、構成5によるVOC含有量の低減と貯蔵安定性等に関する上記課題の解決をどのようにすれば両立できるか、本件基礎出願書類(甲2)には(特に実施例による開示を通じて)何ら記載されていないことからすれば、本件基礎出願書類(甲2)の記載、特に実施例の開示を参酌しても、「揮発性有機化合物(VOC)の含有量(ASTM D5201-01)が400g/L以下である」という構成5を満たし、同時に構成1~4も満たす防汚コーティング組成物であって、本件特許発明の課題を解決できるものを製造するためには、当業者といえども過度の試行錯誤を要することになる。
(2)検討
ア 前記(1)の主張アについて
前記1(2)ウで検討したとおり、本件特許発明1~23は、PB1~PB13の実施例の記載が追加されたことをもって実施をすることができる発明となったと評価できるようなものではなく、本件基礎出願書類(甲2)の記載に基づいて当業者が実施することができたものと認められるから、前記主張アの点をもって、本件特許発明1~23が本件基礎出願書類(甲2)に基づく優先権主張の効果を受けられないとはいえない。
イ 前記(1)の主張イ及びウについて
前記1(2)ウで検討したとおり、本件特許発明1~23は、本件特許明細書に構成5に対応する実施例の記載がなされていなければ実施することができないというものではない。
したがって、本件基礎出願書類(甲2)と本件特許明細書の双方に記載される実施例であるP1及びP2のVOCが本件特許発明1~23の範囲であるか否かという点は、本件特許発明1~23が本件基礎出願書類(甲2)に基づく優先権主張の効果を受けられるか否かの判断に影響を及ぼすものではない。
ウ 前記(1)の主張エについて
前記1(2)ウで検討したとおり、本件基礎出願書類(甲2)の記載に接した当業者であれば、防汚コーティング組成物について、良好な耐クラッキング性、耐フジツボ性の効果は維持しつつも、キシレンの含有量を低減させるように調整することで、場合によっては、殺生物剤や顔料等の固形分量も適宜調整することで、VOCの含有量(ASTM D5201-01)を400g/L以下に調整しうるものと理解できる。また前記調整に際して、VOCの含有量はASTM D5201-01に従い、防汚コーティング組成物に含まれる全成分それぞれの密度及び重量から計算することが可能であり、防汚コーティング組成物に含まれる各成分及びその密度は、具体的な実施にあたり、当業者が具体的な材料を適宜選択し、その密度を確認することによって把握できるものであるから、前記調整は当業者に過度の試行錯誤を要するものではない。
したがって、申立人の前記主張エも採用できない。
第6 むすび
以上から、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1~23に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1~23に係る発明を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700502