特許異議申立
2021-701211
故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法
- 審判番号
- 2021-701211
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-104222
- 登録番号
- 6889954
- 請求日
- 2021年12月20日
- 審決日
- 2022年06月30日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社リスクベネフィット
- 【権利者代理人】辻田 朋子
- 【権利者代理人】村松 大輔
- 【異議申立人】福井 豊明
- 審判長/審判官
- 審判長 原 賢一
- 審判官 三崎 仁
- 審判官 金 公彦
- 分類
- P1651.536-YAA(A61L) / P1651.537-YAA(A61L) / P1651.55 -YAA(A61L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6889954号発明「故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6889954号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2-8〕について訂正することを認める。
特許第6889954号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6889954号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成30年12月17日に出願した特願2018-235742号の一部を令和2年6月17日に新たな特許出願としたものであって、令和3年5月26日にその特許権の設定登録がされ、同年6月18日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年12月20日 :特許異議申立人 福井豊明(以下「申立人」という。)による全請求項に対する特許異議の申立て
令和4年 2月16日付け:取消理由通知書
同年 4月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 5月25日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年4月8日に提出された訂正請求書による請求の趣旨は、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法であって」とあるのを、「故人の放置された部屋の消臭方法であって」に訂正する(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記塗料が、油性下地塗料であることを特徴とする、請求項1に記載の消臭方法」とあるのを、
「故人の放置された部屋の消臭方法であって、
体液、糞、尿から選ばれる汚物を清掃する汚物清掃作業と、
汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、
解体作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、
オゾン燻蒸作業後に、前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を油性下地塗料で覆う被覆作業を含むことを特徴とする、消臭方法」に訂正する。
(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3~8についても同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2」とあるのを、「請求項2」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3の何れか1項」とあるのを、「請求項2又は3」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4の何れか1項」とあるのを、「請求項2~4の何れか1項」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5の何れか1項」とあるのを、「請求項2~5の何れか1項」に訂正する。
(5)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7の何れか1項」とあるのを、「請求項2~7の何れか1項」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 目的の適否
訂正事項1は、「故人及び/又は動物」を「故人」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
「故人及び/又は動物」を「故人」に限定することは、新規事項の追加に該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
「故人及び/又は動物」を「故人」に限定することは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
ア 目的の適否
訂正事項2は、いったん訂正前の請求項2を、
「故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法であって、
体液、糞、尿から選ばれる汚物を清掃する汚物清掃作業と、
汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、
解体作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、
オゾン燻蒸作業後に、前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を油性下地塗料で覆う被覆作業を含むことを特徴とする、消臭方法」と書き下したうえで、「故人及び/又は動物」を「故人」に限定したものと解されるところ、前者は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、後者は、同ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2に係る上記アの書き下し及び「故人及び/又は動物」を「故人」に限定することは、新規事項の追加に該当せず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2に係る上記アの書き下し及び「故人及び/又は動物」を「故人」に限定することは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3~7について
訂正事項3~7は、いずれも、引用する請求項から請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、引用する請求項から一部の請求項を削除することは、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 一群の請求項について
訂正前の請求項2~8は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、請求項1~8は一群の請求項である。そして、上記訂正事項1~7はいずれも、その一群の請求項においてなされたものであるから、特許法第120条の5第4項で規定する当該一群の請求項ごとに請求されているものである。
また、訂正後の請求項2及び請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3~8に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
4 訂正についてのまとめ
上記のとおり、訂正事項1~7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2-8〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
訂正後の請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明8」といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
故人の放置された部屋の消臭方法であって、
体液、糞、尿から選ばれる汚物を清掃する汚物清掃作業と、
汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、
解体作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、
オゾン燻蒸作業後に、前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業を含むことを特徴とする、消臭方法。
【請求項2】
故人の放置された部屋の消臭方法であって、
体液、糞、尿から選ばれる汚物を清掃する汚物清掃作業と、
汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、
解体作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、
オゾン燻蒸作業後に、前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を油性下地塗料で覆う被覆作業を含むことを特徴とする、消臭方法。
【請求項3】
消臭対象とする部屋の大きさが10m3以上の部屋であり、
前記オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500mg以上、25000mg以下のオゾンを用いることを特徴とする、請求項2に記載の消臭方法。
【請求項4】
さらに、前記解体作業前に、前記オゾン燻蒸作業を行うことを特徴とする、請求項2又は3に記載の消臭方法。
【請求項5】
前記汚物清掃作業前に、安定化二酸化塩素及び/又は次亜塩素酸を含む液剤を散布する消毒液散布作業を含むことを特徴とする、請求項2~4の何れか1項に記載の消臭方法。
【請求項6】
前記オゾン燻蒸作業は、少なくとも最初のオゾン散布前に、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼから選ばれる一以上の酵素を含む消臭剤を散布する工程を含む、請求項2~5の何れか1項に記載の消臭方法。
【請求項7】
前記消臭剤を適用した後及び/又は前記消臭剤を適用する前に、界面活性剤を散布することを特徴とする、請求項6に記載の消臭方法。
【請求項8】
前記汚物清掃作業は、過酸化水素水を用いて部屋を清掃する作業を含む、請求項2~7の何れか1項に記載の消臭方法。」
第4 取消理由について
取消理由通知書で通知した取消理由1(サポート要件)の要旨は、以下のとおりである。
本件特許は、その特許請求の範囲の下記の請求項に係る記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
・訂正前の請求項1~8
(1)訂正前の請求項1~8に係る発明は、「動物の放置された部屋の消臭方法」の点において、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(2)訂正前の請求項1及び3~8に係る発明は、単に「塗料」と特定している点において、発明の詳細な説明に記載したものでない。
第5 本件特許明細書等、当初明細書等の記載
1 本件特許明細書等(下線は当審において付与した。)には、以下の事項が記載されている。
(本明1)本件発明の解決しようとする課題として、
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記先行技術のあるところ、本発明は、故人及び/又は動物の放置された部屋を消臭する方法を提供することを課題とする。」と記載されており、
そして、その課題を解決するための手段として、
「【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法であって、
体液、糞、尿から選ばれる1又は2以上からなる汚物を清掃する汚物清掃作業と
汚物清掃作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、
を含むことを特徴とする、消臭方法である。
上記の方法とすることで、故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭をすることができる。」
「【0011】
本発明の好ましい実施の形態では、オゾン燻蒸作業前に汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、
オゾン燻蒸作業後に、前記解体作業で解体した箇所を油性下地塗料で覆う被覆作業と、
を含むことを特徴とする。
上記作業を行うことで、解体作業で解体した箇所による臭気を軽減することができ、故人及び/又は動物の放置された部屋をより確実に消臭することができる。」と記載されている。
(本明2)また、上記作業について具体的に、
「【0050】
(解体作業S14)
解体作業は、汚物の付着した箇所を解体する作業である。
より具体的には、汚物の付着した部屋の表層部分を解体する作業であって、例えば、壁紙、床板、フローリング、畳等を解体する作業をいう。
解体作業により、壁紙、床板、フローリング、畳といった部屋の表層部分を解体することで、部屋の柱、梁、土台、骨組み等を表層に露出させることができ、後のオゾン燻蒸作業において、故人の放置された部屋をより確実に消臭することができる。
【0051】
(被覆作業S15)
被覆作業は、前述の解体作業S14により露出した箇所(部屋の柱、梁、土台、骨組み等)を被覆することにより、前述の解体作業S14で解体することのできない部屋の柱、梁、土台、骨組み等に由来する臭いを軽減する作業である。以下、具体的な作業について説明する。
(1)下準備(ラッカーの塗布)
本発明においては、下準備として、前述の解体作業S14により露出した箇所(部屋の柱、梁、土台、骨組み等)に対し、ラッカーの塗布を行うことが好ましい。ラッカーの塗布を行うことで、前述の解体作業S14で解体することのできない部屋の柱、梁、土台、骨組み等に由来する臭いを軽減することができる。
【0052】
ラッカーとしては、例えば、ナフサ、キシレン、トルエン、ケトン(アセトン)などの溶媒に樹脂を溶かしたものを好ましく用いることができる。ラッカーは水溶性のものであることが好ましい。水溶性のラッカーの塗布を行うことで、前述の解体作業S14で解体することのできない部屋の柱、梁、土台、骨組み等を傷つけることなく、臭いを軽減することができる。
ただし、用いるラッカーの種類、量については、特に制限はない。
【0053】
(2)被覆作業
本発明においては、前述の解体作業S14により露出した箇所(部屋の柱、梁、土台、骨組み等)に対し、油性下地塗料を塗布する形態とすることが好ましい。また、本発明においては、ラッカーの塗布の後に、油性下地塗料を塗布する形態とすることが好ましい。
ラッカーの塗布の後に、油性下地塗料の塗布を行うことで、前述の解体作業S14で解体することのできない部屋の柱、梁、土台、骨組み等に由来する臭いを軽減することができる。
油性下地塗料としては、アクリル樹脂塗料、漆塗料、ビニル樹脂塗料などを用いることができる。
ただし、用いる油性下地塗料の種類、量については、特に制限はない。
【0054】
(塗布作業S16)
塗布作業S16は、硬化剤を含む樹脂材料を用い、部屋内に残存する汚物の付着した内壁を塗布する作業である。塗布作業を行うことで、部屋内に残存する汚物の付着した内壁由来の臭いを軽減することができる。
本明細書において、内壁は部屋の内側にある壁面を指す。内壁には、側壁、床面、天井、クローゼット、押し入れ、靴箱の何れの壁面をも含む。
【0055】
硬化剤は、FRPポリエステル樹脂であることが好ましい。
FRPとは主材としての熱硬化性樹脂に補強材としてガラス繊維やカーボン繊維を加えた材料である。FRPとしては、主材としての熱硬化性あるいは熱可塑性樹脂に、強化材としてガラス繊維を入れた樹脂(GFRP)、強化材としてカーボン繊維を入れた樹脂(CFRP)を挙げることができる。
【0056】
また、樹脂材料は、アクリル樹脂を含むものであることが好ましい。」と記載されている。
(本明3)そして、実施例として、
「【実施例】
【0087】
以下、実施例を示しながら本発明についてより詳細に説明する。
【0088】
[実施例1]
(1-1)事例
男性の孤独死現場(死因不明)
【0089】
(1-2)消臭開始時点での部屋内の状態
故人の放置された期間は不明。
入室すると、汚物(体液)を原因とする臭気が強く感じられる。
【0090】
(1-3)消臭作業前の臭気の測定
臭気測定器(株式会社カルモア製NEO sigma)外気臭気と、室内臭気の差分を算出することにより、室内の臭気の程度の評価を行った。
消臭作業前の外気臭気の数値は172.0、室内臭気の数値は242.3であり、数値の差分は70.3であった。
【0091】
(2)消臭工程
(2-1)消毒液散布作業S11
まず、1000PPMの次亜塩素酸を含む液剤を部屋に散布した。
【0092】
(2-2)汚物清掃作業S12
次に、壁面、床面に固着していない体液、糞、尿といった汚物を、ヘラを用い、除去した。汚物の除去後、汚物の除去後、過酸化水素水(オキシドール)を部屋内に散布し、一定時間放置した後に過酸化水素水の付いた壁面をふき取ることで、汚物の清掃を行った。
【0093】
(2-3)オゾン燻蒸作業S13
(2-3-1)酵素処理
オゾン散布前に、酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ)を含む消臭剤(グランバイオプロ(株式会社カイコーポレーション 社製))を散布した。
【0094】
(2-3-2)オゾン燻蒸作業
オゾン燻蒸装置を用いて、オゾンの噴霧を行った。
【0095】
(2-4)解体作業S14
一回目のオゾン燻蒸作業後に、故人の汚物の付着した床面、及び壁紙の除去を行った。また、室内の家具の除去も行った。
【0096】
(2-5)汚物清掃作業S12~オゾン燻蒸作業S13の繰り返し作業
上記汚物清掃作業S12~オゾン燻蒸作業S13を、解体作業S14後にもう一度行った。
ここで、オゾンの総使用量は、1m3あたり9000mg程度であった。
【0097】
(2-6)被覆作業S15
まず、下準備として、前述の解体作業S14により露出した箇所(部屋の柱、梁、土台、骨組み等)に対し、ラッカーの塗布を行った。
そして、ラッカーの塗布の後に、解体作業S14により露出した箇所(部屋の柱、梁、土台、骨組み等)に対し油性下地塗料を塗布することで、解体作業で解体した箇所の被覆を行った。
【0098】
(2-7)塗布作業S16
被覆作業後に、FRPポリエステル樹脂を含む塗料を、部屋内に残存する汚物の付着した内壁に塗布した。
【0099】
(3)消臭作業後の臭気
本消臭作業により、部屋内の故人の体液を原因とする臭気は感じられなくなった。
【0100】
(3-1)消臭作業後の臭気の測定
(1-3)消臭作業前の臭気の測定と同様の方法により、外気臭気と、室内臭気を測定した。測定した外気臭気と、室内臭気の差分を算出することにより、室内の臭気の程度の評価を行った。
消臭作業前の外気臭気の数値は257.9、室内臭気の数値は284.0であり、数値の差分は26.1であった。
【0101】
以上の通り、本消臭作業により、外気臭気と室内臭気の差が軽減され、故人の放置された部屋の消臭ができることがわかった。
【0102】
[実施例2]故人の放置された部屋の消臭
(1-1)事例
男性の孤独死現場(死因不明)
【0103】
(1-2)消臭開始時点での部屋内の状態
故人の放置された期間は不明。
入室すると、汚物(体液)を原因とする臭気が強く感じられる。
消臭対象は、40m3の部屋と、およそ60m3の部屋であった。
【0104】
(2)消臭工程
(2-1)消毒液散布作業S11
まず、1000PPMの次亜塩素酸を含む液剤を部屋に散布した。
【0105】
(2-2)汚物清掃作業S12
次に、壁面、床面に固着していない体液、糞、尿といった汚物を、ヘラを用い、除去した。汚物の除去後、過酸化水素水(オキシドール)を部屋内に散布し、一定時間放置した後に過酸化水素水の付いた壁面をふき取ることで、汚物の清掃を行った。
【0106】
(2-3)オゾン燻蒸作業S13
(2-3-1)酵素処理
オゾン散布前に、酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ)を含む消臭剤を散布した。
【0107】
(2-3-2)オゾン燻蒸作業
オゾン燻蒸装置を用いて、オゾンの噴霧を行った。
【0108】
(2-4)解体作業S14
オゾン燻蒸作業後に、故人の汚物の付着した床面、及び壁紙の除去を行った。また、室内の家具の除去も行った。
【0109】
(2-5)汚物清掃作業S12~オゾン燻蒸作業S13の繰り返し作業
上記汚物清掃作業S12~オゾン燻蒸作業S13を、解体作業S14後にもう一度行った。
ここで、オゾンの総使用量は、40m3の空間と、およそ60m3の空間に対し、総量で390000程度(1m3あたり、3900mg)であった。
【0110】
(2-6)被覆作業S15
まず、下準備として、前述の解体作業S14により露出した箇所(部屋の柱、梁、土台、骨組み等)に対し、ラッカーの塗布を行った。
そして、ラッカーの塗布の後に、解体作業S14により露出した箇所(部屋の柱、梁、土台、骨組み等)に対し油性下地塗料を塗布することで、解体作業で解体した箇所の被覆を行った。
【0111】
(2-7)塗布作業S16
被覆作業後に、FRPポリエステル樹脂を含む塗料を、部屋内に残存する汚物の付着した内壁に塗布した。
【0112】
(3)消臭作業後の臭気
本消臭作業により、部屋内の故人の体液を原因とする臭気は感じられなくなった。」と記載されている。
2 当初明細書等の記載
本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の記載は、上記1で摘記した本件特許明細書等の記載において、「mg」(下線を付した)と記載されている部分が「g」であることを除き、本件特許明細書等の記載と変わりはないので、ここでの摘記は割愛し、上記1の摘記の「mg」を「g」と読み替えて代用するものとする。
第6 当審の判断
1 取消理由1の(1)について
訂正前の請求項1及びそれを直接的又は間接的に引用する請求項2~8に係る発明において「故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法」であったものを、上記第2の1及び2で記載したように、訂正により「故人及び/又は動物」は「故人」に限定されたことから、本件発明1並びに本件発明2及び本件発明2を直接的又は間接的に引用する本件発明3~8は「故人の放置された部屋の消臭方法」となり、取消理由1の(1)については解消された。
2 取消理由1の(2)について
ア 具体的な指摘について
上記第4で記載した取消理由1の(2)は、上記本件特許明細書等の摘記(本明2)の記載を踏まえて、具体的には、発明の詳細な説明において、塗布作業S16の前の被覆作業(S15)において使用する塗料として記載されているのは「油性下地塗料」のみであり、それ以外の塗料まで、さらには、下地塗料として油性以外の水性塗料、粉体塗料等まで、発明の詳細な説明に本件発明の課題が解決できるものとして開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない点を指摘したものである。
イ 特許権者の主張について
特許権者は、上記アの指摘に対して、令和4年4月8日提出の意見書で以下の主張をしている。
「塗料により形成される塗膜が汚物の残存する箇所を覆うことで、汚物から発せられる臭い成分の放出を抑制し、その汚物に起因する臭いの軽減作用が発揮されることを、当業者であれば当然に認識できます。
すなわち、前記発明の詳細な説明の記載に基づいて、上記工程により、解体作業で解体した箇所による臭気を軽減し、故人の放置された部屋を消臭するという課題が解決できることが当然に認識できます。
付言すると、訂正後の請求項1にかかる発明は、解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う作業であることを特定しています。ここで、「覆う」は「露出するところがないように、全体に被せてしまう」(株式会社岩波書店 広辞苑第七版)という意味であり、「被覆」は「おおいかぶせること」(株式会社岩波書店 広辞苑第七版)という意味です。
そのため、例えば、汚物を覆えない態様で塗料を使用する場合(例えば、極度に希釈された塗料を少量使用する形態等)は本件特許発明で特定する「解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業」にはあたりません。
また、粉体粒子同士が離間するよう吹き付けられ汚物が表出したまま維持され、汚物を覆えない態様で粉体塗料(例えば、広範囲に塗料を分散させるパターンのスプレーノズルでの噴霧に用いられるような粉体塗料)を用いる場合等も、本件特許発明で特定する「解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業」にはあたりません。
すなわち、本訂正後の請求項1にかかる発明は、前記課題を解決できないような塗料の使用形態を含むものではありません。」(意見書5頁11行~最下行)
ウ 当審の判断
そこで、本件発明1においては依然として「塗料」と特定されていることから、ここで改めて、摘記(本明1)に記載されている「故人」「の放置された部屋を消臭する」という本件発明の課題について、発明の詳細な説明の記載や技術常識に照らし、「塗料」が「油性下地塗料」でなければ、その課題が解決できると当業者が認識できないのか、あるいは、「油性下地塗料」でなくとも「塗料」であれば、その課題が解決できると当業者が認識できるのかどうかについて検討する。
(ア)本件発明1は、上記第3で記載したとおり、「体液、糞、尿から選ばれる汚物を清掃する汚物清掃作業と、汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、解体作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、オゾン燻蒸作業後に」、さらに「前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業」行うものである。
ここで、摘記(本明1)を参照すると、本件発明1の「体液、糞、尿から選ばれる汚物を清掃する汚物清掃作業と、汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、解体作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と」を行うことにより、故人の放置された部屋を消臭することができるものであり、さらに、「前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業」行うことによって、より確実に消臭することができるようにしたものといえる。
(イ)本件発明1では、上記のとおり「前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業」における「塗料」が「油性下地塗料」とは特定されていないものの、「覆う」及び「被覆」とは、特許権者が主張するとおり「露出するところがないように、全体に被せてしまう」及び「おおいかぶせること」であるから、露出した汚物の残存する箇所を「塗料」で「露出するところがないように、全体に被せてしまう」及び「おおいかぶせる」ことによって、「体液、糞、尿から選ばれる汚物を清掃する汚物清掃作業と、汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、解体作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業」を行うことに加えて、さらに、消臭できることは当業者からみて明らかである。
また、「油性下地塗料」とは、申立人が提出した以下の甲第1号証の418頁の「油性下地塗料」の項目によれば「オイルプライマー,オイルパテ,オイルサーフェーサー,プライマーオイル,ウッドフィラー等塗装の際に素地調整のため,下塗りに用いる油性塗料の総称.」と記載されており、このような素地調整のための下塗りに用いる油性塗料でなければ、解体作業で露出した汚物の残存する箇所を覆う被覆作業をしても、消臭できないとの技術常識はない。
(ウ)そうすると、本件発明1の「体液、糞、尿から選ばれる汚物を清掃する汚物清掃作業と、汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、解体作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と」を行い、さらに「オゾン燻蒸作業後に、前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業」を行うにあたり、その塗料が、発明の詳細な説明において具現された
「油性下地塗料」でなく、単に「塗料」であっても、同様に機能し、故人の放置された部屋を消臭するという本件発明の課題を解決できることは、発明の詳細な説明の記載や技術常識に基づいて当業者が認識できるものである。
エ 申立人の主張について
(ア)申立人は、上記イの特許権者の主張に対して、令和4年5月25日提出の意見書で以下の主張をしている。
「請求項1に記載された「塗料」という技術用語は、本願明細書段落【0053】、【0097】、【0110】等に被覆作業で用いる塗料として記載された、塗料の下位概念である「油性下地塗料」のみならず、他の油性塗料、水性塗料、粉体塗料等の全ての塗料を包含する上位概念であること、即ち、単に「塗料」という場合、油性塗料のみならず、水性塗料、粉体塗料等の全ての塗料を包含する広範な用語であることは、当業者の常識とするところである。例えば、甲第1号証の「塗料」等の項目に、塗料には、その溶剤として、有機溶剤を用いる油性塗料、水を用いる水性塗料、更には溶剤を用いない粉体塗料等を包含することが記載されている通りである。
してみれば、出願時の技術常識に照らしても、被覆作業(S15)において使用する「油性下地塗料」を下地としての塗料以外の塗料にまで、更には、油性塗料以外の水性塗料、粉体塗料等を全て包含する最大上位概念である単なる「塗料」にまでも、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとは到底言えない。
よって、請求項1が、特許法第36第6項第1号のサポート要件を欠如することは、明白である。」(意見書3頁20行~4頁8行)
甲第1号証:社団法人色材協会編「塗料用語辞典」技法堂出版株式会社、1993年1月20日、1版1刷発行、198~199頁、277頁、357頁、418頁
(イ)申立人の主張に対する当審の判断
申立人が主張する「「塗料」という技術用語は、・・・下位概念である「油性下地塗料」のみならず、他の油性塗料、水性塗料、粉体塗料等の全ての塗料を包含する上位概念であること、即ち、単に「塗料」という場合、油性塗料のみならず、水性塗料、粉体塗料等の全ての塗料を包含する広範な用語である」との説明は、一般的な技術事項としては正当なことであるといえるものの、上記ウで説示したとおり、本件発明1の「塗料」のような、解体作業で露出した汚物の残存する箇所を「覆う」、「被覆」する、すなわち「露出するところがないように、全体に被せてしまう」及び「おおいかぶせる」ことができる「塗料」であれば、故人の放置された部屋を消臭するという本件発明の課題を解決できることは、発明の詳細な説明の記載などに基づいて
当業者が認識できるものであるといえる。
また、申立人は、本件発明1の「前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業」を行う「塗料」が「油性下地塗料」でなければ、故人の放置された部屋を消臭することはできないことの理由は述べておらず、「塗料」が「油性下地塗料」でなければ、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できるものではないとはいえない。
よって、申立人の主張によっては、上記ウで述べた判断は変わらない。
オ 取消理由1の(2)のまとめ
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載や技術常識に基づいて、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲内のものであるから、発明の詳細な説明に記載したものである。
なお、上記アで記載したとおり、本件発明2及びそれを引用する本件発明3~8には、取消理由1の(2)について通知しておらず、本件発明3~8は、訂正により本件発明2を直接的又は間接的に引用するものとなったことから、本件発明3~8について取消理由1の(2)は解消されている。
3 取消理由1のまとめ
以上のことから、本件発明1~8は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、取消理由1によって、本件発明1~8に係る特許を取り消すことはできない。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由として、申立人は、以下の理由を主張している。
(1)申立理由1(新規事項)
「補正によって、請求項1に追加された「前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業」は、本件特許の出願当初の明細書等に明示的に記載された事項でもないし、出願当初の明細書等の記載から自明な事項、即ち出願当初の明細書等の記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、補正された事項が出願当初の明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項でもない。
よって、請求項1において、「オゾン燻蒸作業後に、前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業を含むこと」を追加した補正は、発明特定事項を上位概念化するものであり、本件特許の出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、新規事項を追加するものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないことは明白である。
また、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~8も、請求項1の要件を含んでいる以上、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないことは明白である。」(特許異議申立書7頁26行~8頁11行)
(2)申立理由2(実施可能要件)
「甲第1号証の「油性下地塗料」の項目に記載されている通り、油性下地塗料とは、「オイルプライマー,オイルパテ,オイルサーフェーサー,プライマーオイル,ウッドフィラー等塗装の際に素地調整のため,下塗りに用いる油性塗料の総称」である。
従って、解体作業で露出した汚物の残存する箇所の被覆作業に用いる「塗料」について、「油性下地塗料」以外に、どのようなものを使用するのかを発見するためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を強いることになると言わざるを得ない。
してみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1及びこれを直接的又は間接的に引用する請求項3~8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、特許法第36条第4項第1号の実施可能要件を欠如することは明白である。」(特許異議申立書8頁22行~9頁6行)
2 申立理由に対する当審の判断
(1)申立理由1について
ア 当初明細書等の実施例の記載である摘記(本明3)を参照すると、
実施例1の【0095】~【0098】(下線部参照)には、「オゾン燻蒸作業後に、」「解体作業S14により露出した箇所(部屋の柱、梁、土台、骨組み等)に対し油性下地塗料を塗布することで、解体作業で解体した箇所の被覆を行い」「塗料を、部屋内に残存する汚物の付着した内壁に塗布した」との記載があり、
同様に、実施例2の【0108】~【0111】(下線部参照)には、「オゾン燻蒸作業後に、」「解体作業S14により露出した箇所(部屋の柱、梁、土台、骨組み等)に対し油性下地塗料を塗布することで、解体作業で解体した箇所の被覆を行い」「塗料を、部屋内に残存する汚物の付着した内壁に塗布した」との記載がある。
イ 一方、当初明細書等の摘記(本明2)の【0053】には「被覆作業」として「油性下地塗料を塗布する形態とすることが好ましい。また、本発明においては、ラッカーの塗布の後に、油性下地塗料を塗布する形態とすることが好ましい。」と記載されており、「被覆作業」として「塗布する形態」が記載されている。
そうすると、「塗料を、部屋内に残存する汚物の付着した内壁に塗布」することにおける「塗布」は「被覆」ともいえるものであり、「被覆」とは、上記第6の2のイで記載されているように「おおいかぶせること」であり、塗布とは「一面に塗りつけること(広辞苑第四版)」であるから、「一面に塗りつけること」(塗布)は「おおいかぶせること」(被覆)でもあるといえる。
ウ また、当初明細書等の摘記(本明2)の【0050】には、
「解体作業は、汚物の付着した箇所を解体する作業である。
より具体的には、汚物の付着した部屋の表層部分を解体する作業であって、例えば、壁紙、床板、フローリング、畳等を解体する作業をいう。」と記載されており、また、【0054】には「内壁は部屋の内側にある壁面を指す。内壁には、側壁、床面、天井、クローゼット、押し入れ、靴箱の何れの壁面をも含む。」と記載されていることから、上記アで記載した「部屋内に残存する汚物の付着した内壁」とは、「解体作業で露出した汚物の残存する箇所」といえる。
エ 上記イ及びウを踏まえると、上記アの部屋内に残存する汚物の付着した内壁に塗布される塗料も、「前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業」における塗料に含まれるものであり、この塗料は油性下地塗料に限定されるものではないから、「オゾン燻蒸作業後に、前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業を含むこと」は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。
オ 小括
したがって、「オゾン燻蒸作業後に、前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業を含むこと」は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないことから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものではない。
よって、申立理由1によって、本件発明1~8に係る特許を取り消すことはできない。
(2)申立理由2について
ア 本件発明1では「前記解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う被覆作業」と特定されているとおり、解体作業で露出した汚物の残存する箇所を「覆う」、「被覆」する、すなわち「露出するところがないように、全体に被せてしまう」及び「おおいかぶせる」ことができる「塗料」でなければならない。そして、このような塗料であれば、本件発明1において「体液、糞、尿から選ばれる汚物を清掃する汚物清掃作業と、汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、解体作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業」に加えて、故人の放置された部屋をより消臭することができるといえる。
さらに、このような塗料を用いることは、上記(1)エで述べたように、当初明細書等(すなわち本件特許明細書等)に記載されているといえる。
また、「露出するところがないように、全体に被せてしまう」及び「おおいかぶせる」ことができる「塗料」は、「油性下地塗料」(申立人が提示した甲1によれば「オイルプライマー,オイルパテ,オイルサーフェーサー,プライマーオイル,ウッドフィラー等塗装の際に素地調整のため,下塗りに用いる油性塗料の総称」)以外に、多数存在するものであり、その選択に特段の困難はないから、申立人が主張する「解体作業で露出した汚物の残存する箇所の被覆作業に用いる「塗料」について、「油性下地塗料」以外に、どのようなものを使用するのかを発見するためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を強いることになると言わざるを得ない。」ということはない。
してみれば、本件発明1の「解体作業で露出した汚物の残存する箇所を塗料で覆う」際の「塗料」について、当業者が実施することができないとはいえない。
イ 小括
したがって、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえることから、特許法第36条第4項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
なお、本件発明3~8は、訂正により本件発明1を直接的又は間接的に引用するものでなくなったことから、申立理由2の対象ではない。
よって、申立理由2によって、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701211