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特許異議申立

2024-700033

生体成分測定試薬キットの感度低下抑制方法

審判番号
2024-700033
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-089659
登録番号
7310282
請求日
2024年01月18日
審決日
2024年07月30日
公報発行日
2024年10月25日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】東洋紡株式会社
  • 【異議申立人】井上 憲介
審判長/審判官
  • 審判長 福井 悟
  • 審判官 中根 知大
  • 審判官 高堀 栄二
分類
P1651.113-ZC (C12Q) / P1651.121-ZC (C12Q) / P1651.536-ZC (C12Q) / P1651.537-ZC (C12Q)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7310282号発明「生体成分測定試薬キットの感度低下抑制方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7310282号の請求項6~11に係る特許を取り消す。 同請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7310282号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、令和1年5月10日に出願され、令和5年7月10日にその特許権の設定登録がされ、令和5年7月19日に特許掲載公報が発行された。その後、令和6年1月18日に特許異議申立人 井上憲介(以下、「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~11に係る特許について特許異議の申立てがされた。 当審は、令和6年4月23日付けで、請求項6~11に係る特許について取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からの応答はなかった。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」~「本件発明11」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を用いる生体成分測定法に適用される測定感度低下抑制剤であって、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-(2-クロロアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-(2-ヨードアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-イソチオシアナト-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、及びガルビノキシルからなる群より選択される少なくとも1種のラジカル化合物を含有し、該ラジカル化合物が0.01~10mg/mlとなる濃度でアミノアンチピリン系化合物と共存するように用いられ、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制することを特徴とする、生体成分の測定感度低下抑制剤。 【請求項2】 前記生体成分測定法が以下の(a)~(d)の要件を満たす試薬又は試薬セットを使用する生体成分測定法であって、(d)の要件を満たす試薬中に前記ラジカル化合物が0.01~10mg/mlとなる濃度で添加して用いることを特徴とする、請求項1に記載の生体成分の測定感度低下抑制剤。 (a)過酸化水素を発生させることができる酸化酵素を含む。 (b)ペルオキシダーゼを含む。 (c)ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還元発色試薬を含む。 (d)該酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を含む。 【請求項3】 酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を用いる生体成分測定法に適用される測定感度低下抑制方法であって、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-(2-クロロアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-(2-ヨードアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-イソチオシアナト-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、及びガルビノキシルからなる群より選択される少なくとも1種のラジカル化合物を0.01~10mg/mlとなる濃度でアミノアンチピリン系化合物と共存するように用いて4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制することを特徴とする、生体成分の測定感度低下の抑制方法。 【請求項4】 以下の(a)~(d)の要件を満たす試薬又は試薬セットを使用する生体成分測定法における測定感度低下の抑制方法であって、(d)の要件を満たす試薬中に2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-(2-クロロアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-(2-ヨードアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-イソチオシアナト-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、及びガルビノキシルからなる群より選択される少なくとも1種のラジカル化合物を0.01~10mg/mlとなる濃度で添加して4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制することを特徴とする、生体成分の測定感度低下の抑制方法。 (a)過酸化水素を発生させることができる酸化酵素を含む。 (b)ペルオキシダーゼを含む。 (c)ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還元発色試薬を含む。 (d)該酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を含む。 【請求項5】 前記生体成分が、クレアチニン又は糖化ヘモグロビンのいずれかであることを特徴とする、請求項3又は4に記載の生体成分の測定感度低下の抑制方法。 【請求項6】 酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を用いる生体成分測定試薬キットであって、請求項1に記載の測定感度低下抑制剤を含むことを特徴とする、生体成分測定試薬キット。 【請求項7】 以下の(a)~(e)の要件を満たす生体成分測定試薬キットであって、(d)及び(e)要件を満たす試薬については2つの要件を同時に満たす一つの試薬としてなることを特徴とし、該一つの試薬は(e)のラジカル化合物を0.01~10mg/ml濃度で含有し、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下が抑制される、生体成分測定試薬キット。 (a)過酸化水素を発生させることができる酸化酵素を含む。 (b)ペルオキシダーゼを含む。 (c)ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還元発色試薬を含む。 (d)該酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を含む。 (e)2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-(2-クロロアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-(2-ヨードアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-イソチオシアナト-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、及びガルビノキシルからなる群より選択される少なくとも1種のラジカル化合物を含む。 【請求項8】 前記(d)及び(e)の2つの要件を同時に満たす一つの試薬が、製造後少なくとも1か月間を経過していることを特徴とする、請求項7に記載の生体成分測定試薬キット。 【請求項9】 請求項6~8のいずれかに記載の生体成分測定キットを用いることを特徴とする生体成分測定方法。 【請求項10】 以下の(a)~(e)の要件を満たす、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する感度低下が抑制された生体成分測定試薬キットの製造方法であって、(d)及び(e)の要件を満たす試薬について2つの要件を同時に満たす一つの試薬として製造し、該一つの試薬は(e)のラジカル化合物を0.01~10mg/ml濃度で含有するように製造されることを特徴とする、生体成分測定試薬キットの製造方法。 (a)過酸化水素を発生させることができる酸化酵素を含む。 (b)ペルオキシダーゼを含む。 (c)ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還元発色試薬を含む。 (d)該酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を含む。 (e)2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-(2-クロロアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-(2-ヨードアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-イソチオシアナト-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、及びガルビノキシルからなる群より選択される少なくとも1種のラジカル化合物を含む。 【請求項11】 前記(d)及び(e)の要件を満たす試薬について2つの要件を同時に満たす一つの試薬が、生体成分測定試薬キットの製造プロセスでの中間試薬であることを特徴とする、請求項10に記載の生体成分測定試薬キットの製造方法。」 第3 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が令和6年4月23日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (新規性)請求項6~11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから、請求項6~11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (進歩性)請求項6~11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 甲第1号証:特開2014-155487号公報 甲第2号証:特開2016-19496号公報 2 甲第1号証を主引例とした新規性、進歩性の欠如 (1)甲第1号証の記載 甲第1号証(以下、「甲1」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審による。) ア 「【0006】 本発明者らは、反応系への4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル フリーラジカル(以下、AAQ-2とも記載する。)の添加によりドブタミンの影響を回避できることを見出した。さらに、AAQ-2を測定用組成物に予め添加することにより、試料の前処理を行わずにドブタミンの影響を受けない測定が出来ることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち本発明は以下のような構成からなる。」 イ 「【0017】 (酸化還元発色試薬) 本発明に用いる酸化還元系発色試薬としては、過酸化水素と反応して呈色するものであれば、いかなる種類の色素を用いてもよく、例えば水素供与体とカップラー、ロイコ体、テトラゾリウム塩等が挙げられる。その使用量や添加の形態などについては特に限定されない。これらはいずれも、市販品などを入手することができる。 【0018】 水素供与体とカップラーを用いた代表例は、水素供与体とカップラーとをペルオキシダーゼの存在下に過酸化水素によって酸化縮合させて色素を形成させるトリンダー(Trinder)法である。 トリンダー法などに用いる水素供与体としては、フェノール、フェノール誘導体、アニリン誘導体、ナフトール、ナフトール誘導体、ナフチルアミン、ナフチルアミン誘導体等が知られている。 たとえば、N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン、N-エチル-N-スルホプロピルアニリン、N-エチル-N-スルホプロピル-3,5-ジメトキシアニリン、N-スルホプロピル-3,5-ジメトキシアニリン、N-エチル-N-スルホプロピル-3,5-ジメチルアニリン、N-エチル-N-スルホプロピル-3-メチルアニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メトキシアニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)アニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン、N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメチルアニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メトキシアニリン、N-スルホプロピルアニリン、N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-2,5-ジメチルアニリン、N-エチル-N-(3-メチルフェニル)-N’-サクシニルエチレンジアミン、N-エチル-N-(3-メチルフェニル)-N’-アセチルエチレンジアミン等が挙げられる。また、これら水素供与体はカップラーと組合せて用いることができる。 また、カップラーとしては4-アミノアンチピリン(4AA)、アミノアンチピリン誘導体、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)、スルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(SMBTH)等が知られている。」 ウ 「【0048】 (実施例4) 下記の尿酸測定試薬(UA)、中性脂肪測定試薬(TG)、総コレステロール測定試薬(TC)、HDL-C測定試薬(HDL)、LDL-C測定試薬(LDL)の各々の第一試薬に、AAQ-2を試薬中終濃度で3mmol/Lになるように調製して測定試薬とした。 試料として、液状ネスコールN(アルフレサファーマ社)に試料中終濃度が20μg/mLとなるように塩酸ドブタミンを加え、塩酸ドブタミンを加えていない液状ネスコールNを対照として影響度を確認した。 比較例として、AAQ-2を添加していない各測定試薬で同様の検討を行なった。 【0049】 (試薬の調製) … LDL-C測定試薬(LDL) 第一試薬 PIPES-NaOH 50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L 塩化マグネシウム 10mmol/L 塩化カルシウム 0.1mmol/L N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)デオキシコラミド(同仁化学社製) 0.2% 化学修飾コレステロールエステラーゼ(東洋紡社製COE-313) 0.5U/mL 未修飾コレステロールオキシダーゼ(東洋紡社製COO-321) 3U/mL カタラーゼ(東洋紡社製CAO-509) 100U/mL 4-アミノアンチピリン 0.1g/L 第二試薬 PIPES-NaOH 50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L 塩化マグネシウム 10mmol/L 塩化カルシウム 0.1mmol/L ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレンデシルエーテル(エマレックスDAPE0207:日本エマルジョン社製) 0.3% ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO-301) 8U/mL N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン(同仁化学社製) 0.4g/L」 (2)甲1に記載された発明 甲1の実施例4(上記(1)ウ)には、段落【0049】に示されたLDL-C測定試薬の第一試薬に、AAQ-2を試薬中終濃度で3mmol/Lになるように調製して測定試薬としたことが記載されているから、甲1には、次の「甲1発明1」、「甲1発明2」が記載されていると認められる。 ア 甲1発明1 「下記第一試薬及び第二試薬からなるLDL-C測定試薬(A)の第一試薬に、AAQ-2を試薬中終濃度で3mmol/Lになるように調製したLDL-C測定試薬(B) 第一試薬 PIPES-NaOH 50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L 塩化マグネシウム 10mmol/L 塩化カルシウム 0.1mmol/L N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)デオキシコラミド(同 仁化学社製) 0.2% 化学修飾コレステロールエステラーゼ(東洋紡社製COE-313) 0 .5U/mL 未修飾コレステロールオキシダーゼ(東洋紡社製COO-321) 3U /mL カタラーゼ(東洋紡社製CAO-509) 100U/mL 4-アミノアンチピリン 0.1g/L 第二試薬 PIPES-NaOH 50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L 塩化マグネシウム 10mmol/L 塩化カルシウム 0.1mmol/L ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレンデシルエーテル(エマレ ックスDAPE0207:日本エマルジョン社製) 0.3% ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO-301) 8U/mL N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン(同仁化学社製 ) 0.4g/L」 イ 甲1発明2 「下記第一試薬及び第二試薬からなるLDL-C測定試薬(A)の第一試薬に、AAQ-2を試薬中終濃度で3mmol/Lになるように調製したLDL-C測定試薬(B)を製造する方法 第一試薬 PIPES-NaOH 50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L 塩化マグネシウム 10mmol/L 塩化カルシウム 0.1mmol/L N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)デオキシコラミド(同 仁化学社製) 0.2% 化学修飾コレステロールエステラーゼ(東洋紡社製COE-313) 0 .5U/mL 未修飾コレステロールオキシダーゼ(東洋紡社製COO-321) 3U /mL カタラーゼ(東洋紡社製CAO-509) 100U/mL 4-アミノアンチピリン 0.1g/L 第二試薬 PIPES-NaOH 50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L 塩化マグネシウム 10mmol/L 塩化カルシウム 0.1mmol/L ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレンデシルエーテル(エマレ ックスDAPE0207:日本エマルジョン社製) 0.3% ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO-301) 8U/mL N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン(同仁化学社製 ) 0.4g/L」 (3)対比・判断 ア 本件発明6について (ア)対比 本件発明6と甲1発明1とを対比する。 本件特許の設定登録時の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)では、「キット」という用語について明確な定義が記載されていないが、「キット」とは、通常、「1 組み立て模型などの部品一式。2 工具・用具一式。」(広辞苑第七版)を意味し、本件明細書の【0083】~【0085】によると、複数の試薬を組み合わせて構成された一式の試薬を試薬キットと称しているので、甲1発明1の「LDL-C測定試薬(B)」は、本件特許発明6の「試薬キット」に相当する。 また、本件明細書の段落【0024】には、生体成分測定試薬キットが測定対象とする生体成分として、LDLコレステロール(LDL-C、低密度リポタンパクコレステロール)が例示されているから、甲1発明1の「LDL-C測定試薬(B)」は、本件発明6の「生体成分測定試薬キット」に相当する。 本件明細書の段落【0061】には、「4-アミノアンチピリン(4AA)、アミノアンチピリン誘導体等のアミノアンチピリン系化合物」との記載があることから、甲1発明1の「4-アミノアンチピリン」は、本件発明6の「アミノアンチピリン系化合物」に相当する。 甲1の段落【0017】(上記(1)イ)には、酸化還元系発色試薬としては、過酸化水素と反応して呈色するものであれば、いかなる種類の色素を用いてもよく、例えば水素供与体とカップラー等が挙げられることが記載されている。そして、同段落【0018】(上記(1)イ)には、水素供与体とカップラーを用いる代表例は、水素供与体とカップラーとをペルオキシダーゼの存在下に過酸化水素によって酸化縮合させて色素を形成させるトリンダー(Trinder)法であること、トリンダー法などに用いる水素供与体としては、アニリン誘導体等が知られており、例えば、N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン等が挙げられること、及び、カップラーとしては4-アミノアンチピリン等が知られていることが記載されている。 そうすると、甲1発明1の「N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン」及び「4-アミノアンチピリン」は、それぞれ酸化還元系発色試薬における水素供与体とカップラーであるといえ、甲1発明1のLDL-C測定試薬(B)において「4-アミノアンチピリン」は、「酸化還元発色試薬のカップラーとして」用いられたものであるといえる。 甲1の段落【0006】(上記(1)ア)の記載によれば、甲1発明1の「AAQ-2」は、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル フリーラジカルであるから、本件発明6で引用される請求項1の「4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル」である「ラジカル化合物」に相当する。 また、AAQ-2(4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)の分子量は170.23であることから、甲1発明1の第一試薬中のAAQ-2の終濃度である3mmol/Lは、約0.51mg/mlと換算される。そして、甲1発明1の第一試薬には、4-アミノアンチピリンが含まれていることを踏まえると、甲1発明1では、AAQ-2が約0.51mg/mlとなる濃度で4-アミノアンチピリンと共存するように用いられていることになるから、本件発明6で引用される請求項1の「該ラジカル化合物が0.01~10mg/mlとなる濃度でアミノアンチピリン系化合物と共存するように用いられ」たものであるといえる。 さらに、甲1発明1の「AAQ-2」は、甲1発明1のLDL-C測定試薬(B)、すなわち、「酸化還元発色試薬のカップラーとして」用いられた「4-アミノアンチピリン」を含み、且つ、「生体成分測定法に適用される」試薬で使用される添加剤であるから、本件発明6で引用される請求項1の「酸化還元発色試薬のカップラーとして」「アミノアンチピリン系化合物を用いる生体成分測定法に適用される」「剤」に相当する。 そうすると、本件発明6と甲1発明1とは、 「酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を用いる生体成分測定試薬キットであって、 酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を用いる生体成分測定法に適用される剤であって、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物を含有し、該ラジカル化合物が0.01~10mg/mlとなる濃度でアミノアンチピリン系化合物と共存するように用いられる、剤を含む、 生体成分測定試薬キット。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点1-1> 本件発明6では、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物を含有する剤について、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制する」「生体成分の測定感度低下抑制剤」であることが特定されているのに対し、 甲1発明1では、そのような特定がない点 (イ)判断 本件発明6は、特定の組成からなる試薬キットの発明であり、試薬キットの発明において、試薬キットに含まれる試薬をその作用や用途を用いて表現しても、試薬キットそのものは異なる物にはならない。 そして、本件発明6と甲1発明1とは、試薬キットとして互いに組成が一致するから、「4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物」について、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制する」ことや「生体成分の測定感度低下抑制剤」であることが特定されたとしても、そのことにより両者の試薬キットが物として区別できるとはいえない。 したがって、相違点1-1は、実質的な相違点であるとはいえない。 よって、本件発明6は、甲1に記載された発明であるか、「4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物」の濃度を変更すること等により、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明7について (ア)対比 本件発明7と甲1発明1とを対比する。 上記ア(ア)で述べたとおり、甲1発明1の「LDL-C測定試薬(B)」は、本件発明7の「生体成分測定試薬キット」に相当する。 甲1発明1の「未修飾コレステロールオキシダーゼ」は、その酵素の名称からして、コレステロールと酸素を基質としてコレスト-4-エン-3-オンと過酸化水素を生成する反応を触媒する酵素であると解されるから、本件発明7の「過酸化水素を発生させることができる酸化酵素」に相当する。そして、甲1発明1の「LDL-C測定試薬(B)」は、本件発明7の「(a)過酸化水素を発生させることができる酸化酵素を含む」との要件を満たすものである。 甲1発明1の「LDL-C測定試薬(B)」は、第二試薬にペルオキシダーゼを含むものであるから、本件発明7の「(b)ペルオキシダーゼを含む」との要件を満たすものである。 甲1の段落【0017】(上記(1)イ)には、酸化還元系発色試薬としては、過酸化水素と反応して呈色するものであれば、いかなる種類の色素を用いてもよく、例えば水素供与体とカップラー等が挙げられることが記載されている。そして、同段落【0018】(上記(1)イ)には、水素供与体とカップラーを用いる代表例は、水素供与体とカップラーとをペルオキシダーゼの存在下に過酸化水素によって酸化縮合させて色素を形成させるトリンダー(Trinder)法であること、トリンダー法などに用いる水素供与体としては、アニリン誘導体等が知られており、例えば、N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン等が挙げられること、及び、カップラーとしては4-アミノアンチピリン等が知られていることが記載されている。 したがって、甲1発明1の「N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン」及び「4-アミノアンチピリン」は、本件発明7の「ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還元発色試薬」に相当する。また、甲1発明1の「4-アミノアンチピリン」は、「酸化還元発色試薬のカップラーとして」の「アミノアンチピリン系化合物」に相当する。さらに、甲1発明1の「LDL-C測定試薬(B)」は、本件発明7の「(c)ペルオキシダーゼ の存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還元発色試薬を含む」及び「(d)該酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を含む」との要件を満たすものである。 上記ア(ア)で述べたとおり、甲1発明1の「AAQ-2」は、本件発明7の「4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル」である「ラジカル化合物」に相当するから、甲1発明1の「LDL-C測定試薬(B)」は、本件発明7の「(e)…ラジカル化合物を含む」との要件を満たすものである。 甲1発明1は、4-アミノアンチピリンを含む第一試薬にAAQ-2を添加し、3mmol/L、すなわち、約0.51mg/mlとなるように調製したものであるから、本件発明7の「(d)及び(e)要件を満たす試薬については2つの要件を同時に満たす一つの試薬としてなる」ものであり、「該一つの試薬は(e)のラジカル化合物を0.01~10mg/ml濃度で含有」するものであるといえる。 そうすると、本件発明7と甲1発明1とは、 「以下の(a)~(e)の要件を満たす生体成分測定試薬キットであって、(d)及び(e)要件を満たす試薬については2つの要件を同時に満たす一つの試薬としてなることを特徴とし、該一つの試薬は(e)のラジカル化合物を0.01~10mg/ml濃度で含有する、生体成分測定試薬キット。 (a)過酸化水素を発生させることができる酸化酵素を含む。 (b)ペルオキシダーゼを含む。 (c)ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還 元発色試薬を含む。 (d)該酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合 物を含む。 (e)4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシ ルであるラジカル化合物を含む。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点1-2> 本件発明7では、生体成分測定試薬キットについて、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下が抑制される」との特定がなされているのに対し、 甲1発明1では、そのような特定がない点 (イ)判断 本件発明7の「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下が抑制される」との特定は、生体成分測定試薬キットの用途ではなく、試薬キットが固有に備える機能・特性を表現したものと認められるが、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下が抑制される」との機能・特性で試薬キットを特定しても、試薬キットそのものは異なる物にはならない。 そして、本件明細書の【0008】には、「生体成分測定試薬キットの調製にあたり、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、ガルビノキシル、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のラジカル化合物を用いることで、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する感度低下を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。」との記載があり、実施例4、5において、それを裏付ける実験データが示されていることから、生体成分測定試薬キットにおいて所定のラジカル化合物を用いることで、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制できることが理解できるものの、本件発明7と甲1発明1とは、試薬キットとして互いに組成が一致するから、前者の試薬キットが「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下が抑制される」ことで特定されていたとしても、そのことにより両者の試薬キットが物として区別できるとはいえない。 したがって、上記相違点1-2は、実質的な相違点であるとはいえない。 よって、本件発明7は、甲1に記載された発明であるか、「4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物」の濃度を変更すること等により、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件発明8について 本件発明8と甲1発明1とを対比すると、以下の点でさらに一応相違する。 <相違点1-3> 本件発明8では、「(d)及び(e)の2つの要件を同時に満たす一つの試薬が、製造後少なくとも1か月間を経過している」ことが特定されているのに対し、 甲1発明1では、そのような特定がない点 しかしながら、本件明細書を参照しても、「(d)及び(e)の2つの要件を同時に満たす一つの試薬が、製造後少なくとも1か月間を経過している」か否かにより、試薬の組成が異なることが示されていないから、本件発明8と甲1発明1は、試薬キットという物の発明として区別することができない。 よって、相違点1-3は実質的な相違点であるとはいえない。 もっとも、本件明細書の段落【0034】の「通常、かかる測定キットは製造後、在庫・流通のプロセスを経て使用されるまでには1カ月乃至は数カ月を要すると考えられ、その間に抑制反応は進行し本発明の効果は奏されることとなる。」との記載、及び、段落【0051】の「一般的な生体成分測定キットの製品ライフサイクルにおいては、生産工程において試薬配合され、品質試験、出荷、流通、保管、使用されるまでに約数週間乃至は1カ月以上を要する」の記載によると、「製造後少なくとも1か月間」という期間は保管期間として一般的なものであり、このことは甲1発明1においても妥当するので、相違点1-3は当業者が適宜なし得たものということができる。 よって、本件発明8は、甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 本件発明9について 本件発明9は、請求項6~8のいずれかに記載の生体成分測定キットを用いる生体成分測定方法に関する発明であるが、甲1発明1のLDL-C測定試薬(B)を用いてLDL-Cを測定することは、甲1に記載されているに等しい事項といえる。 よって、本件発明9は、甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 オ 本件発明10について 上記ア(ア)及び上記イ(ア)で示した相当関係を踏まえて、本件発明10と甲1発明2とを対比すると、両者は、 「以下の(a)~(e)の要件を満たす、生体成分測定試薬キットの製造方法であって、(d)及び(e)の要件を満たす試薬について2つの要件を同時に満たす一つの試薬として製造し、該一つの試薬は(e)のラジカル化合物を0.01~10mg/ml濃度で含有するように製造される、生体成分測定試薬キットの製造方法。 (a)過酸化水素を発生させることができる酸化酵素を含む。 (b)ペルオキシダーゼを含む。 (c)ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還 元発色試薬を含む。 (d)該酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合 物を含む。 (e)4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシ ルであるラジカル化合物を含む。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点1-4> 本件発明10では、生体成分測定試薬キットについて、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する感度低下が抑制された」との特定がなされているのに対し、 甲1発明2では、そのような特定がない点 上記相違点1-4について検討すると、本件発明10の「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する感度低下が抑制された」との特定は、生体成分測定試薬キットの機能・特性を表現したものと認められるが、上記イ(イ)で述べたものと同様の理由により、上記の機能・特性によって、本件発明10と甲1発明2を区別することはできないから、上記相違点1-4は、実質的な相違点であるとはいえない。 よって、本件発明10は、甲1に記載された発明であるか、「4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物」の濃度を変更すること等により、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 カ 本件発明11について 本件発明11は、請求項10に係る発明の生体成分測定試薬キットの製造方法において、(d)及び(e)の要件を満たす試薬について2つの要件を同時に満たす一つの試薬が、生体成分測定試薬キットの製造プロセスでの中間試薬であることを特定するものである。 しかし、複数の試薬を含む組成物の調製においては、特段の事情が無い限り、各試薬の混合順序は当業者が適宜決定することであるため、甲1発明2のLDL-C測定試薬(B)を製造するにあたり、AAQ-2と4-アミノアンチピリンとを先に混合すること、すなわち、「(d)及び(e)の要件を満たす試薬について2つの要件を同時に満たす一つの試薬」を「中間試薬」として製造することは、甲1に記載されているに等しい事項といえる。 よって、本件発明11は、甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)小括 以上からすると、本件発明6~11は、甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、請求項6~11に係る特許は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 甲第2号証を主引例とした新規性、進歩性の欠如 (1)甲第2号証の記載 甲第2号証(以下、「甲2」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審による。) ア 「【0006】 本発明者らは、反応系への2,2,6,6-Tetramethylpiperidine 1-Oxyl Free Radical(別名TEMPO Free Radical または 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル)(CAS番号:2564-83-2)(以下、TEMPOとも記載する。)の添加によりドブタミンの影響を回避できることを見出した。さらに、TEMPOを測定用組成物に予め添加することにより、試料の前処理を行わずにドブタミンの影響を受けない測定が出来ることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち本発明は以下のような構成からなる。」 イ 「【0017】 (酸化還元発色試薬) 本発明に用いる酸化還元系発色試薬としては、過酸化水素と反応して呈色するものであれば、いかなる種類の色素を用いてもよく、例えば水素供与体とカップラー、ロイコ体、テトラゾリウム塩等が挙げられる。その使用量や添加の形態などについては特に限定されない。これらはいずれも、市販品などを入手することができる。 【0018】 水素供与体とカップラーを用いた代表例は、水素供与体とカップラーとをペルオキシダーゼの存在下に過酸化水素によって酸化縮合させて色素を形成させるトリンダー(Trinder)法である。 トリンダー法などに用いる水素供与体としては、フェノール、フェノール誘導体、アニリン誘導体、ナフトール、ナフトール誘導体、ナフチルアミン、ナフチルアミン誘導体等が知られている。 たとえば、N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン、N-エチル-N-スルホプロピルアニリン、N-エチル-N-スルホプロピル-3,5-ジメトキシアニリン、N-スルホプロピル-3,5-ジメトキシアニリン、N-エチル-N-スルホプロピル-3,5-ジメチルアニリン、N-エチル-N-スルホプロピル-3-メチルアニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メトキシアニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)アニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン、N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメチルアニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メトキシアニリン、N-スルホプロピルアニリン、N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-2,5-ジメチルアニリン、N-エチル-N-(3-メチルフェニル)-N’-サクシニルエチレンジアミン、N-エチル-N-(3-メチルフェニル)-N’-アセチルエチレンジアミン等が挙げられる。また、これら水素供与体はカップラーと組合せて用いることができる。 また、カップラーとしては4-アミノアンチピリン(4AA)、アミノアンチピリン誘導体、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)、スルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(SMBTH)等が知られている。」 ウ 「【0046】 (実施例4) 下記の尿酸測定試薬(UA)、中性脂肪測定試薬(TG)、総コレステロール測定試薬(TC)、HDL-C測定試薬(HDL)、LDL-C測定試薬(LDL)の各々の第一試薬に、TEMPOを試薬中終濃度で0.3mmol/Lになるように調製して測定試薬とした。 試料として、液状ネスコールN(アルフレサファーマ社)に試料中終濃度が20μg/mLとなるように塩酸ドブタミンを加え、塩酸ドブタミンを加えていない液状ネスコールNを対照として影響度を確認した。 比較例として、TEMPOを添加していない各測定試薬で同様の検討を行なった。 【0047】 (試薬の調製) … LDL-C測定試薬(LDL) 第一試薬 PIPES-NaOH 50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L 塩化マグネシウム 10mmol/L 塩化カルシウム 0.1mmol/L N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)デオキシコラミド(同仁化学社製) 0.2% 化学修飾コレステロールエステラーゼ(東洋紡社製COE-313) 0.5U/mL 未修飾コレステロールオキシダーゼ(東洋紡社製COO-321) 3U/mL カタラーゼ(東洋紡社製CAO-509) 100U/mL 4-アミノアンチピリン 0.1g/L 第二試薬 PIPES-NaOH 50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L 塩化マグネシウム 10mmol/L 塩化カルシウム 0.1mmol/L ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレンデシルエーテル(エマレックスDAPE0207:日本エマルジョン社製) 0.3% ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO-301) 8U/mL N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン(同仁化学社製) 0.4g/L」 (2)甲2に記載された発明 甲2の実施例4(上記(1)ウ)には、段落【0047】に示されたLDL-C測定試薬の第一試薬に、TEMPOを試薬中終濃度で0.3mmol/Lになるように調製して測定試薬としたことが記載されているから、甲2には、次の「甲2発明1」、「甲2発明2」が記載されていると認められる。 ア 甲2発明1 「下記第一試薬及び第二試薬からなるLDL-C測定試薬(A)の第一試薬に、TEMPOを試薬中終濃度で0.3mmol/Lになるように調製したLDL-C測定試薬(B) 第一試薬 PIPES-NaOH50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩0.2mmol/L 塩化マグネシウム10mmol/L 塩化カルシウム0.1mmol/L N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)デオキシコラミド(同 仁化学社製)0.2% 化学修飾コレステロールエステラーゼ(東洋紡社製COE-313)0. 5U/mL 未修飾コレステロールオキシダーゼ(東洋紡社製COO-321)3U/ mL カタラーゼ(東洋紡社製CAO-509)100U/mL 4-アミノアンチピリン0.1g/L 第二試薬 PIPES-NaOH50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩0.2mmol/L 塩化マグネシウム10mmol/L 塩化カルシウム0.1mmol/L ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレンデシルエーテル(エマレ ックスDAPE0207:日本エマルジョン社製)0.3% ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO-301)8U/mL N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン(同仁化学社製 ) 0.4g/L」 イ 甲2発明2 「下記第一試薬及び第二試薬からなるLDL-C測定試薬(A)の第一試薬に、TEMPOを試薬中終濃度で0.3mmol/Lになるように調製したLDL-C測定試薬(B)を製造する方法 第一試薬 PIPES-NaOH50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩0.2mmol/L 塩化マグネシウム10mmol/L 塩化カルシウム0.1mmol/L N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)デオキシコラミド(同 仁化学社製)0.2% 化学修飾コレステロールエステラーゼ(東洋紡社製COE-313)0. 5U/mL 未修飾コレステロールオキシダーゼ(東洋紡社製COO-321)3U/ mL カタラーゼ(東洋紡社製CAO-509)100U/mL 4-アミノアンチピリン0.1g/L 第二試薬 PIPES-NaOH50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩0.2mmol/L 塩化マグネシウム10mmol/L 塩化カルシウム0.1mmol/L ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレンデシルエーテル(エマレ ックスDAPE0207:日本エマルジョン社製)0.3% ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO-301)8U/mL N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン(同仁化学社製 ) 0.4g/L」 (3)対比・判断 ア 本件発明6について (ア)対比 本件発明6と甲2発明1とを対比する。 上記2(3)ア(ア)で述べたものと同様の理由により、甲2発明1の「LDL-C測定試薬(B)」は、本件発明6の「生体成分測定試薬キット」に相当する。 本件明細書の段落【0061】には、「4-アミノアンチピリン(4AA)、アミノアンチピリン誘導体等のアミノアンチピリン系化合物」との記載があることから、甲2発明1の「4-アミノアンチピリン」は、本件発明6の「アミノアンチピリン系化合物」に相当する。 甲2の段落【0017】(上記(1)イ)には、酸化還元系発色試薬としては、過酸化水素と反応して呈色するものであれば、いかなる種類の色素を用いてもよく、例えば水素供与体とカップラー等が挙げられることが記載されている。そして、同段落【0018】(上記(1)イ)には、水素供与体とカップラーを用いる代表例は、水素供与体とカップラーとをペルオキシダーゼの存在下に過酸化水素によって酸化縮合させて色素を形成させるトリンダー(Trinder)法であること、トリンダー法などに用いる水素供与体としては、アニリン誘導体等が知られており、例えば、N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン等が挙げられること、及び、カップラーとしては4-アミノアンチピリン等が知られていることが記載されている。 そうすると、甲2発明1の「N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン」及び「4-アミノアンチピリン」は、それぞれ酸化還元系発色試薬における水素供与体とカップラーであるといえ、甲2発明1の試薬において「4-アミノアンチピリン」は、「酸化還元発色試薬のカップラーとして」用いられたものであるといえる。 甲2の段落【0006】(上記(1)ア)の記載によれば、甲2発明1の「TEMPO」は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル フリーラジカルであるから、本件発明6で引用される請求項1の「2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル」である「ラジカル化合物」に相当する。 また、TEMPO(4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)の分子量は156.25であることから、甲2発明1の第一試薬中のTEMPOの終濃度である0.3mmol/Lは、約0.047mg/mlと換算される。そして、甲2発明1の第一試薬には、4-アミノアンチピリンが含まれていることを踏まえると、甲2発明1では、TEMPOが約0.047mg/mlとなる濃度で4-アミノアンチピリンと共存するように用いられていることになるから、本件発明6で引用される請求項1の「該ラジカル化合物が0.01~10mg/mlとなる濃度でアミノアンチピリン系化合物と共存するように用いられ」たものであるといえる。 さらに、甲2発明1の「TEMPO」は、甲2発明1のLDL-C測定試薬(B)、すなわち、「酸化還元発色試薬のカップラーとして」用いられた「4-アミノアンチピリン」を含み、且つ、「生体成分測定法に適用される」試薬で使用される添加剤であるから、本件発明6で引用される請求項1の「酸化還元発色試薬のカップラーとして」「アミノアンチピリン系化合物を用いる生体成分測定法に適用される」「剤」に相当する。 そうすると、本件発明6と甲2発明1とは、 「酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を用いる生体成分測定試薬キットであって、 酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を用いる生体成分測定法に適用される剤であって、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物を含有し、該ラジカル化合物が0.01~10mg/mlとなる濃度でアミノアンチピリン系化合物と共存するように用いられる、剤を含む、 生体成分測定試薬キット。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点2-1> 本件発明6では、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物を含有する剤について、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制する」「生体成分の測定感度低下抑制剤」であることが特定されているのに対し、 甲2発明1では、そのような特定がない点 (イ)判断 上記2(3)ア(イ)で述べたとおり、試薬キットの発明において、試薬キットに含まれる試薬をその作用や用途を用いて表現しても、試薬キットそのものは異なる物にならない。 そして、本件発明6と甲2発明1とは、試薬キットとして互いに組成が一致するから、「2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物」について、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制する」ことや、「生体成分の測定感度低下抑制剤」であることが特定されたとしても、そのことにより両者の試薬キットが物として区別できるとはいえない。 したがって、相違点2-1は、実質的な相違点であるとはいえない。 よって、本件発明6は、甲2に記載された発明であるか、「2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物」の濃度を変更すること等により、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明7について (ア)対比 本件発明7と甲2発明1とを対比する。 上記ア(ア)で述べたとおり、甲2発明1の「LDL-C測定試薬(B)」は、本件発明7の「生体成分測定試薬キット」に相当する。 甲2発明1の「未修飾コレステロールオキシダーゼ」は、その酵素の名称からして、コレステロールと酸素を基質としてコレスト-4-エン-3-オンと過酸化水素を生成する反応を触媒する酵素であると解されるから、本件発明7の「過酸化水素を発生させることができる酸化酵素」に相当する。そして、甲2発明1の「LDL-C測定試薬(B)」は、本件発明7の「(a)過酸化水素を発生させることができる酸化酵素を含む」との要件を満たすものである。 甲2発明1の「LDL-C測定試薬(B)」は、第二試薬にペルオキシダーゼを含むものであるから、本件発明7の「(b)ペルオキシダーゼを含む」との要件を満たすものである。 甲2の段落【0017】(上記(1)イ)には、酸化還元系発色試薬としては、過酸化水素と反応して呈色するものであれば、いかなる種類の色素を用いてもよく、例えば水素供与体とカップラー等が挙げられることが記載されている。そして、同段落【0018】(上記(1)イ)には、水素供与体とカップラーを用いる代表例は、水素供与体とカップラーとをペルオキシダーゼの存在下に過酸化水素によって酸化縮合させて色素を形成させるトリンダー(Trinder)法であること、トリンダー法などに用いる水素供与体としては、アニリン誘導体等が知られており、例えば、N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン等が挙げられること、及び、カップラーとしては4-アミノアンチピリン等が知られていることが記載されている。 したがって、甲2発明1の「N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン」及び「4-アミノアンチピリン」は、本件発明7の「ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還元発色試薬」に相当する。また、甲2発明1の「4-アミノアンチピリン」は、「酸化還元発色試薬のカップラーとして」の「アミノアンチピリン系化合物」に相当する。さらに、甲2発明1の「LDL-C測定試薬(B)」は、本件発明7の「(c)ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還元発色試薬を含む」及び「(d)該酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を含む」との要件を満たすものである。 上記ア(ア)で述べたとおり、甲2発明1の「TEMPO」は、本件発明7の「2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル」である「ラジカル化合物」に相当するから、甲2発明1の「LDL-C測定試薬(B)」は、本件発明7の「(e)…ラジカル化合物を含む」との要件を満たすものである。 甲2発明1は、4-アミノアンチピリンを含む第一試薬にTEMPOを添加し、0.3mmol/L、すなわち、約0.047mg/mlとなるように調製したものであるから、本件発明7の「(d)及び(e)要件を満たす試薬については2つの要件を同時に満たす一つの試薬としてなる」ものであり、「該一つの試薬は(e)のラジカル化合物を0.01~10mg/ml濃度で含有」するものであるといえる。 そうすると、本件発明7と甲2発明1とは、 「以下の(a)~(e)の要件を満たす生体成分測定試薬キットであって、(d)及び(e)要件を満たす試薬については2つの要件を同時に満たす一つの試薬としてなることを特徴とし、該一つの試薬は(e)のラジカル化合物を0.01~10mg/ml濃度で含有する、生体成分測定試薬キット。 (a)過酸化水素を発生させることができる酸化酵素を含む。 (b)ペルオキシダーゼを含む。 (c)ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還 元発色試薬を含む。 (d)該酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合 物を含む。 (e)2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジ カル化合物を含む。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点2-2> 本件発明7では、生体成分測定試薬キットについて、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下が抑制される」との特定がなされているのに対し、 甲2発明1では、そのような特定がない点 (イ)判断 上記2(3)イ(イ)で述べたとおり、本件発明7の「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下が抑制される」との特定は、生体成分測定試薬キットの用途ではなく、試薬キットが固有に備える機能・特性を表現したものと認められるが、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下が抑制される」との機能・特性で試薬キットを特定しても、試薬キットそのものは異なる物にはならない。 そして、本件発明7と甲2発明1とは、試薬キットとして互いに組成が一致するから、前者の試薬キットが「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下が抑制される」ことで特定されていたとしても、そのことにより両者の試薬キットが物として区別できるとはいえない。 したがって、上記相違点2-2は、実質的な相違点であるとはいえない。 よって、本件発明7は、甲2に記載された発明であるか、「2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物」の濃度を変更すること等により、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件発明8について 本件発明8と甲2発明1とを対比すると、以下の点でさらに一応相違する。 <相違点2-3> 本件発明8では、「(d)及び(e)の2つの要件を同時に満たす一つの試薬が、製造後少なくとも1か月間を経過している」ことが特定されているのに対し、 甲2発明1では、そのような特定がない点 しかしながら、本件明細書を参照しても、「(d)及び(e)の2つの要件を同時に満たす一つの試薬が、製造後少なくとも1か月間を経過している」か否かにより、試薬の組成が明確に異なることが示されていないから、本件発明8と甲2発明1は、試薬キットという物の発明として区別することができない。 よって、相違点2-3は実質的な相違点であるとはいえない。 もっとも、本件明細書の【0034】、【0051】の記載から、「製造後少なくとも1か月間」という期間は保管期間として一般的なものであり、このことは甲2発明1においても妥当するので、相違点2-3は当業者が適宜なし得たものということができる。 よって、本件発明8は、甲2に記載された発明であるか、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 本件発明9について 本件発明9は、請求項6~8のいずれかに記載の生体成分測定キットを用いる生体成分測定方法に関する発明であるが、甲2発明1のLDL-C測定試薬(B)を用いてLDL-Cを測定することは、甲2に記載されているに等しい事項である。 よって、本件発明9は、甲2に記載された発明であるか、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 オ 本件発明10について 上記ア(ア)及び上記イ(ア)で示した相当関係を踏まえて、本件発明10と甲2発明2とを対比すると、両者は、 「以下の(a)~(e)の要件を満たす、生体成分測定試薬キットの製造方法であって、(d)及び(e)の要件を満たす試薬について2つの要件を同時に満たす一つの試薬として製造し、該一つの試薬は(e)のラジカル化合物を0.01~10mg/ml濃度で含有するように製造される、生体成分測定試薬キットの製造方法。 (a)過酸化水素を発生させることができる酸化酵素を含む。 (b)ペルオキシダーゼを含む。 (c)ペルオキシダーゼの存在下で過酸化水素と反応して呈色する酸化還 元発色試薬を含む。 (d)該酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合 物を含む。 (e)2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジ カル化合物を含む。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点2-4> 本件発明10では、生体成分測定試薬キットについて、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する感度低下が抑制された」との特定がなされているのに対し、 甲2発明2では、そのような特定がない点 上記相違点2-4について検討すると、本件発明10の「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する感度低下が抑制された」との特定は、生体成分測定試薬キットの機能・特性を表現したものと認められるが、上記2(3)イ(イ)で述べたものと同様の理由により、上記の機能・特性によって、本件発明10と甲2発明2とを区別することはできないから、上記相違点2-4は、実質的な相違点であるとはいえない。 よって、本件発明10は、甲2に記載された発明であるか、「2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物」の濃度を変更すること等により、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 カ 本件発明11について 本件発明11は、請求項10に係る発明の生体成分測定試薬キットの製造方法において、(d)及び(e)の要件を満たす試薬について2つの要件を同時に満たす一つの試薬が、生体成分測定試薬キットの製造プロセスでの中間試薬であることを特定するものである。 しかし、複数の試薬を含む組成物の調製においては、特段の事情が無い限り、各試薬の混合順序は当業者が適宜決定することであるため、甲2発明2のLDL-C測定試薬(B)を製造するにあたり、TEMPOと4-アミノアンチピリンとを先に混合すること、すなわち、「(d)及び(e)の要件を満たす試薬について2つの要件を同時に満たす一つの試薬」を「中間試薬」として製造することは、甲2に記載されているに等しい事項といえる。 よって、本件発明11は、甲2に記載された発明であるか、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)小括 以上からすると、本件発明6~11は、甲2に記載された発明であるか、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、請求項6~11に係る特許は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要 上記第3のとおり、本件特許の請求項6~11に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由によって、その他の特許異議申立理由について判断するまでもなく、取り消されるべきものである。 以下では、本件特許の請求項1~5に係る特許に関して、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由(以下、「申立理由」という。)について判断する。 本件特許の請求項1~5に係る特許に関して、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、以下のものである。 (1)申立理由1(甲第1号証を主引例とする新規性欠如) 本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)申立理由2(甲第2号証を主引例とする新規性欠如) 本件発明1~5は、甲第2号証に記載された発明であるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)申立理由3(サポート要件・実施可能要件) 請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 2 証拠方法 申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。なお、下記甲第1号証、甲第2号証は、それぞれ取消理由通知で引用した甲第1号証、甲第2号証と同一である。 甲第1号証:特開2014-155487号公報 甲第2号証:特開2016-19496号公報 甲第3号証:特開2019-195300号公報 甲第4号証:特開2019-196993号公報 (「甲第1号証」~「甲第4号証」を、それぞれ「甲1」~「甲4」という。) 3 当審の判断 (1)申立理由1(甲第1号証を主引例とする新規性欠如)について ア 甲1の記載及び甲1に記載された発明 甲1には、上記第3 2(1)ア~ウに示した事項が記載されている。 そして、甲1の実施例4(上記第3 2(1)ウ)には、段落【0049】に示されたLDL-C測定試薬の第一試薬に、AAQ-2を試薬中終濃度で3mmol/Lになるように調製して測定試薬としたことが記載されているから、甲1には、次の「甲1発明3」、「甲1発明4」が記載されていると認められる。 (ア)甲1発明3 「下記第一試薬及び第二試薬からなるLDL-C測定試薬の第一試薬において使用されるAAQ-2を含有する添加剤であって、前記AAQ-2が、前記第一試薬中終濃度で3mmol/Lになるように使用される添加剤 第一試薬 PIPES-NaOH 50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L 塩化マグネシウム 10mmol/L 塩化カルシウム 0.1mmol/L N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)デオキシコラミド(同 仁化学社製) 0.2% 化学修飾コレステロールエステラーゼ(東洋紡社製COE-313) 0 .5U/mL 未修飾コレステロールオキシダーゼ(東洋紡社製COO-321) 3U /mL カタラーゼ(東洋紡社製CAO-509) 100U/mL 4-アミノアンチピリン 0.1g/L 第二試薬 PIPES-NaOH 50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L 塩化マグネシウム 10mmol/L 塩化カルシウム 0.1mmol/L ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレンデシルエーテル(エマレ ックスDAPE0207:日本エマルジョン社製) 0.3% ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO-301) 8U/mL N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン(同仁化学社製 ) 0.4g/L」 (イ)甲1発明4 「下記第一試薬及び第二試薬からなるLDL-C測定試薬の第一試薬においてAAQ-2を使用する方法であって、前記AAQ-2が、前記第一試薬中終濃度で3mmol/Lになるように使用する方法 第一試薬 PIPES-NaOH 50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L 塩化マグネシウム 10mmol/L 塩化カルシウム 0.1mmol/L N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)デオキシコラミド(同 仁化学社製) 0.2% 化学修飾コレステロールエステラーゼ(東洋紡社製COE-313) 0 .5U/mL 未修飾コレステロールオキシダーゼ(東洋紡社製COO-321) 3U /mL カタラーゼ(東洋紡社製CAO-509) 100U/mL 4-アミノアンチピリン 0.1g/L 第二試薬 PIPES-NaOH 50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩 0.2mmol/L 塩化マグネシウム 10mmol/L 塩化カルシウム 0.1mmol/L ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレンデシルエーテル(エマレ ックスDAPE0207:日本エマルジョン社製) 0.3% ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO-301) 8U/mL N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン(同仁化学社製 ) 0.4g/L」 イ 対比・判断 (ア)本件発明1について 上記第3 2(3)ア(ア)で示した相当関係を踏まえて、本件発明1と甲1発明3とを対比すると、両者は、 「酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を用いる生体成分測定法に適用される剤であって、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物を含有し、該ラジカル化合物が0.01~10mg/mlとなる濃度でアミノアンチピリン系化合物と共存するように用いられる、剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3-1> 本件発明1では、「ラジカル化合物を含有」する「剤」が、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制する」「生体成分の測定感度低下抑制剤」であることが特定されているのに対し、 甲1発明3では、そのような特定がない点 上記相違点3-1について検討すると、本件明細書の段落【0005】~【0008】には、アミノアンチピリン系化合物および水素供与体を用いた酵素-ペルオキシダーゼ-発色剤系の生体成分測定試薬を調製し、それを生体成分測定に用いるにあたり、原因不明の測定感度の低下を経験したこと、測定感度の低下の程度は、測定のために調製した試薬組成物のロットによりばらつきがあったため、測定キットの試薬組成について種々検討した結果、4-アミノアンチピリン中に極微量の4-ヒドロキシアンチピリンという物質が存在することを見出したこと、及び、4-ヒドロキシアンチピリンが試薬中に存在した場合、本来の4-アミノアンチピリン-水素供与体の反応で発色する発色量が減り、感度が低下すると考えられたことから、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する感度低下を抑制する手段を提供することを課題とし、生体成分測定試薬キットの調製にあたり、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、ガルビノキシル、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のラジカル化合物を用いることで、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する感度低下を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至ったことが記載されている。そして、このことを裏付ける実験結果として、実施例3では、4-ヒドロキシアンチピリンに起因して試料測定感度が低下することが実際に確認されており、実施例4、5では、ラジカル化合物として2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、又はガルビノキシルの濃度を調整することで、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する感度低下を抑制できることが示されている。 一方、甲1には、4-アミノアンチピリンが4-ヒドロキシアンチピリンを含有するものであることについて記載も示唆もされていないので、当然のことながら、4-ヒドロキシアンチピリンが、生体成分の測定感度低下の原因となることを、本件特許の優先日前の当業者は認識し得ないし、そうである以上、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する測定感度低下が、甲1発明3の試薬で使用されるAAQ-2(4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)の濃度を調整することによって抑制できることも上記の当業者は知る由がなかったといえる。また、他の甲号証の記載を参照しても、これらのことが本件特許の優先日前に当業者に知られていたとはいえない。 そうすると、本件発明1は、「2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、…、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、及びガルビノキシルからなる群より選択される少なくとも1種のラジカル化合物」について、未知の属性を発見し、その属性により、「2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、…、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、及びガルビノキシルからなる群より選択される少なくとも1種のラジカル化合物」が、相違点3-1として挙げた「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制する」「生体成分の測定感度低下抑制剤」という新たな用途に使用できることを見出したことに基づく発明であると認められるので、本件発明1は、相違点3-1により甲1発明3と実質的に相違するものである。 申立人は、本件明細書の段落【0015】、【0023】の記載、甲3及び甲4の実施例5の記載はいずれも、本件優先日当時、市販の4-アミノアンチピリン原体には4-ヒドロキシアンチピリンが含まれていたとの事実が存在したことを示すものであり、甲1に明示的な記載がないとしても、甲1に記載された発明の4-アミノアンチピリンには当然に4-ヒドロキシアンチピリンが含有されており、これにより4-ヒドロキシアンチピリンに起因する測定感度の低下は生じていたといえ、甲1においても、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルにより4-ヒドロキシアンチピリンに起因する測定感度低下の抑制効果も発揮されていたといえることを理由にして、本件発明1と甲1に記載された発明に差異はないと主張する。 しかし、本件特許の優先日当時、本件明細書、甲3及び甲4の記載内容は当業者に公知でなかったため、4-アミノアンチピリンに4-ヒドロキシアンチピリンが含まれていることを本件特許の優先日前の当業者が認識していたとは認められない。そして、このことから、本件発明1は「2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、…、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、及びガルビノキシルからなる群より選択される少なくとも1種のラジカル化合物」が、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制する」「生体成分の測定感度低下抑制剤」という新たな用途に使用できることを見出したことに基づく用途発明であると認められるので、甲1発明3において、4-アミノアンチピリンに4-ヒドロキシアンチピリンが含有されており、それにより4-ヒドロキシアンチピリンに起因する測定感度の低下効果が潜在的に生じていたとしても、それだけで本件発明1の新規性が否定される理由にはならない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 よって、本件発明1は、甲1発明3と相違点3-1で実質的に相違するため、甲1に記載された発明であるとはいえない。 (イ)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1を引用するものであり、少なくとも相違点3-1で甲1発明3と実質的に相違するため、甲1に記載された発明であるとはいえない。 (ウ)本件発明3について 上記第3 2(3)ア(ア)で示した相当関係を踏まえて、本件発明3と甲1発明4とを対比すると、両者は、 「酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を用いる生体成分測定法に適用される方法であって、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物を0.01~10mg/mlとなる濃度でアミノアンチピリン系化合物と共存するように用いる、方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3-2> 本件発明3では、「ラジカル化合物を」「用いる、方法」が、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制する」「生体成分の測定感度低下の抑制方法」であることが特定されているのに対し、 甲1発明4では、そのような特定がない点 上記相違点3-2について検討すると、甲1には、4-アミノアンチピリンが4-ヒドロキシアンチピリンを含有するものであることについて記載も示唆もされていないので、当然のことながら、4-ヒドロキシアンチピリンが、生体成分の測定感度低下の原因となることを、本件特許の優先日前の当業者は認識し得ないし、そうである以上、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する測定感度低下が、甲1発明4の試薬に添加される4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルの濃度を調整することによって抑制できることも上記の当業者は知る由もなかったといえる。また、他の甲号証の記載を参照しても、これらのことが本件特許の優先日前に当業者に知られていたとはいえない。 そうすると、本件発明3と甲1発明4は、技術思想が異なる方法の発明と解すべきであり、両者は、相違点3-2により実質的に相違点するものである。 よって、本件発明4は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 (エ)本件発明4、5について 本件発明4、5は、本件発明3と同様に「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制する」「生体成分の測定感度低下の抑制方法」という発明特定事項を含むものである。 そして、甲1及び他の甲号証の記載を参照しても、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する測定感度低下が、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルの濃度を調整することによって抑制できる旨の記載や示唆は見当たらないので、本件発明4、5は、本件発明3と同様の理由により、甲1に記載された発明であるとはいえない。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由1は理由がない。 (2)申立理由2(甲第2号証を主引例とする新規性欠如)について ア 甲2の記載及び甲2に記載された発明 甲2には、上記第3 3(1)ア~ウに示した事項が記載されている。 そして、甲2の実施例4(上記第3 3(1)ウ)には、段落【0047】に示されたLDL-C測定試薬の第一試薬に、TEMPOを試薬中終濃度で0.3mmol/Lになるように調製して測定試薬としたことが記載されているから、甲2には、次の「甲2発明3」、「甲2発明4」が記載されていると認められる。 (ア)甲2発明3 「下記第一試薬及び第二試薬からなるLDL-C測定試薬の第一試薬において使用されるTEMPOを含有する添加剤であって、前記TEMPOが、前記第一試薬中試薬中終濃度で0.3mmol/Lになるように使用される添加剤 第一試薬 PIPES-NaOH50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩0.2mmol/L 塩化マグネシウム10mmol/L 塩化カルシウム0.1mmol/L N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)デオキシコラミド(同 仁化学社製)0.2% 化学修飾コレステロールエステラーゼ(東洋紡社製COE-313)0. 5U/mL 未修飾コレステロールオキシダーゼ(東洋紡社製COO-321)3U/ mL カタラーゼ(東洋紡社製CAO-509)100U/mL 4-アミノアンチピリン0.1g/L 第二試薬 PIPES-NaOH50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩0.2mmol/L 塩化マグネシウム10mmol/L 塩化カルシウム0.1mmol/L ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレンデシルエーテル(エマレ ックスDAPE0207:日本エマルジョン社製)0.3% ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO-301)8U/mL N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン(同仁化学社製 ) 0.4g/L」 (イ)甲2発明4 「下記第一試薬及び第二試薬からなるLDL-C測定試薬の第一試薬においてTEMPOを使用する方法であって、前記TEMPOが、前記第一試薬中終濃度で0.3mmol/Lになるように使用する方法 第一試薬 PIPES-NaOH50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩0.2mmol/L 塩化マグネシウム10mmol/L 塩化カルシウム0.1mmol/L N,N-ビス(3-D-グルコンアミドプロピル)デオキシコラミド(同 仁化学社製) 0.2% 化学修飾コレステロールエステラーゼ(東洋紡社製COE-313)0. 5U/mL 未修飾コレステロールオキシダーゼ(東洋紡社製COO-321)3U/ mL カタラーゼ(東洋紡社製CAO-509)100U/mL 4-アミノアンチピリン0.1g/L 第二試薬 PIPES-NaOH50mM pH7.5 エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩0.2mmol/L 塩化マグネシウム10mmol/L 塩化カルシウム0.1mmol/L ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレンデシルエーテル(エマレ ックスDAPE0207:日本エマルジョン社製)0.3% ペルオキシダーゼ(東洋紡社製PEO-301)8U/mL N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン(同仁化学社製 ) 0.4g/L」 イ 対比・判断 (ア)本件発明1について 上記第3 3(3)ア(ア)で示した相当関係を踏まえて、本件発明1と甲2発明3とを対比すると、両者は、 「酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を用いる生体成分測定法に適用される剤であって、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物を含有し、該ラジカル化合物が0.01~10mg/mlとなる濃度でアミノアンチピリン系化合物と共存するように用いられる、剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4-1> 本件発明1では、「ラジカル化合物を含有」する「剤」が、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制する」「生体成分の測定感度低下抑制剤」であることが特定されているのに対し、 甲2発明3では、そのような特定がない点 上記相違点4-1について検討すると、甲2には、4-アミノアンチピリンが4-ヒドロキシアンチピリンを含有するものであることについて記載も示唆もされていないので、当然のことながら、4-ヒドロキシアンチピリンが、生体成分の測定感度低下の原因となることを、本件特許の優先日前の当業者は認識し得ないし、そうである以上、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する測定感度低下が、甲1発明3の試薬で使用されるTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)の濃度を調整することによって抑制できることも上記の当業者は知る由がなかったといえる。また、他の甲号証の記載を参照しても、これらのことが本件特許の優先日前に当業者に知られていたとはいえない。 そして、上記(1)イ(ア)で検討したものと同様に、本件発明1は、「2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、…、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、及びガルビノキシルからなる群より選択される少なくとも1種のラジカル化合物」について、未知の属性を発見し、その属性により、「2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、…、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、及びガルビノキシルからなる群より選択される少なくとも1種のラジカル化合物」が、相違点4-1として挙げた「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制する」「生体成分の測定感度低下抑制剤」という新たな用途に使用できることを見出したことに基づく発明であると認められるので、本件発明1は、相違点4-1により甲2発明3と実質的に相違するものである。 なお、上記相違点4-1に関連して、申立人は、上記(1)イ(ア)に記載した主張と同様の主張をしているが、当該主張に理由がないことは既に述べたとおりである。 よって、本件発明1は、甲2発明3と相違点4-1で実質的に相違するため、甲2に記載された発明であるとはいえない。 (イ)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1を引用するものであり、少なくとも相違点4-1で甲2発明3と実質的に相違するため、甲2に記載された発明であるとはいえない。 (ウ)本件発明3について 上記第3 3(3)ア(ア)で示した相当関係を踏まえて、本件発明3と甲2発明4とを対比すると、両者は、 「酸化還元発色試薬のカップラーとしてアミノアンチピリン系化合物を用いる生体成分測定法に適用される方法であって、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルであるラジカル化合物を0.01~10mg/mlとなる濃度でアミノアンチピリン系化合物と共存するように用いる、方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4-2> 本件発明3では、「ラジカル化合物を」「用いる、方法」が、「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制する」「生体成分の測定感度低下の抑制方法」であることが特定されているのに対し、 甲2発明4では、そのような特定がない点 上記相違点4-2について検討すると、甲2には、4-アミノアンチピリンが4-ヒドロキシアンチピリンを含有するものであることについて記載も示唆もされていないので、当然のことながら、4-ヒドロキシアンチピリンが、生体成分の測定感度低下の原因となることを、本件特許の優先日前の当業者は認識し得ないし、そうである以上、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する測定感度低下が、甲2発明4の試薬に添加される2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルの濃度を調整することによって抑制できることも上記の当業者は知る由もなかったといえる。また、他の甲号証の記載を参照しても、これらのことが本件特許の優先日前に当業者に知られていたとはいえない。 そうすると、本件発明3と甲2発明4は、技術思想が異なる方法の発明と解すべきであり、両者は、相違点4-2により実質的に相違点するものである。 よって、本件発明4は、甲2に記載された発明であるとはいえない。 (エ)本件発明4、5について 本件発明4、5は、本件発明3と同様に「4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分の測定感度の低下を抑制する」「生体成分の測定感度低下の抑制方法」という発明特定事項を含むものである。 そして、甲2及び他の甲号証の記載を参照しても、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する測定感度低下が、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルの濃度を調整することによって抑制できる旨の記載や示唆は見当たらないので、本件発明4、5は、本件発明3と同様の理由により、甲2に記載された発明であるとはいえない。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由2は理由がない。 (3)申立理由3(サポート要件・実施可能要件)について ア 本件発明1のサポート要件・実施可能要件の判断 本件明細書の【0007】の記載によると、本件発明が解決しようとする課題は、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する感度低下を抑制する手段を提供することにあるものと認められる。 これに対し、本件明細書の段落【0008】には、生体成分測定試薬キットの調製にあたり、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、ガルビノキシル、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のラジカル化合物を用いることで、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する感度低下を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至ったことが記載されている。また、本件明細書の実施例4、5では、ラジカル化合物として2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、又はガルビノキシルを所定のクレアチニン測定試薬の第二試薬中終濃度となるように添加した後、それぞれ冷蔵条件(6℃)及び加速試験(35℃)の温度条件で3日間保存した第二試薬を用いて、測定感度(mABS)を調べたことが記載されている。そして、その結果を示した表2、3では、4-ヒドロシキアンチピリン(4-HA)を添加していない4-アミノアンチピリン(4-AA)を用いた対照(a)、(c)、(e)又は(g)と比較して、4-ヒドロキシアンチピリンを含む4-アミノアンチピリンを用いた対照(b)、(d)、(f)又は(h)の測定感度が低下しており、所定のラジカル化合物を所定の濃度で添加した実験No.1~33では、それぞれ各表の対応する対照(b)、(d)、(f)又は(h)と比較して、測定感度が高くなっていることから、所定のラジカル化合物を所定の濃度で用いることにより、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する測定感度の低下を抑制できることを具体的に確認できる。 よって、本件発明1は、当業者が、本件発明の詳細な説明の記載から、上記の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。 したがって、本件発明1は、サポート要件を満たすものである。 また、本件発明1は、上記の本件発明の詳細な説明の記載より、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができるから、実施可能要件を満たすものである。 イ 申立人の主張について 申立人は、4-ヒドロキシアンチピリンとラジカル化合物を冷蔵(6℃)及び35℃の温度条件で3日間以外の温度条件及び保存期間で保存する場合や、4-ヒドロキシアンチピリンの濃度が1.6μg/ml~10μg/ml以外である場合には、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する測定感度低下の抑制効果が確かめられていないし、測定感度低下を抑制できることを理解できるような本件特許の出願時の技術常識も存在しなかった旨主張する。 しかし、上記アで説示したとおり、本件明細書の実施例4、5の結果から、所定のラジカル化合物を用いることにより、4-ヒドロキシアンチピリンに起因する感度低下を抑制できることを具体的に確認でき、本件明細書の段落【0023】の「本発明の生体成分の測定感度低下抑制方法は、前記(d)の要件を満たす試薬中に存在する4-ヒドロキシアンチピリンの濃度が、ラジカル化合物を添加する前の濃度で、0.1~50μg/ml程度である場合に、特に効果を得られやすい。…前記イオンを添加する前の前記(d)の要件を満たす試薬中に存在する4-ヒドロキシアンチピリンの濃度が50μg/mlより多い場合は、4-ヒドロキシアンチピリンによる生体成分の測定感度低下を抑制するためには高濃度のラジカル化合物を必要とし」との記載、同【0050】の「本発明に用いるラジカル化合物は、アミノアンチピリン系化合物と共に配合した後に、アミノアンチピリン系化合物の不純物として含有される4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分測定の感度低下を抑制する効果を発現するためには、配合した後に一定時間の経過させることが好ましい。本発明に用いるラジカル化合物が4-ヒドロキシアンチピリンに起因する生体成分測定の感度低下を抑制する効果を発現するためには、保管温度が1℃~10℃では2週間乃至はそれ以上、11℃~25℃では1週間乃至はそれ以上、26℃~40℃では2日間乃至はそれ以上、41℃~60℃では5時間乃至はそれ以上、61℃~80℃では1時間乃至はそれ以上が好ましく、保管温度に依存して温度が高いほど短く、温度が低いほど長い時間が必要となる。反応させる時間の上限は特に限定されないが、例えば、10年間以下とすることができる。」との記載に照らすと、実施例の保存条件や濃度条件を外れる場合であっても、上記の測定感度の低下抑制の効果は期待できるといえる。 もっとも、4-ヒドロキシアンチピリンとラジカル化合物の保存条件や4-ヒドロキシアンチピリンの濃度によって、測定感度の低下抑制効果に多少の影響が生じる可能性があったとしても、そのことだけで、本件発明の課題の達成や本件発明の実施において支障が生じるとまではいえない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 ウ 本件発明2~5について 本件発明2は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものなので、本件発明1と同様の理由により、実施可能要件及びサポート要件を満たすものである。 本件発明3~5は、本件発明1と同様の発明特定事項を含む発明であるので、本件発明1と同様の理由により、実施可能要件及びサポート要件を満たすものである。 エ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由3は理由がない。 第5 むすび 上記の第3の2、3で検討したとおり、本件特許の請求項6~11に係る特許は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 また、上記の第4の3で検討したとおり、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700033

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