特許訂正審判
2024-390030
ニアアイライトフィールド表示装置
- 審判番号
- 2024-390030
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2020-215979
- 登録番号
- 7408537
- 請求日
- 2024年04月10日
- 審決日
- 2024年06月20日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】中強光電股▲ふん▼有限公司
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】宮崎 修
- 審判長/審判官
- 審判長 山村 浩
- 審判官 芝沼 隆太
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P141 .852-Y (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7408537号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7408537号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔4~6〕について訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7408537号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、令和2年12月25日を出願日とする出願であって、令和5年12月22日に特許権の設定登録がされ、令和6年4月10日に訂正審判(以下「本件訂正審判」という。)の請求がされたものである。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第7408537号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4~6について訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。
第3 訂正の内容
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許請求の範囲の請求項4の【数2】に記載されている
[図:0001415232000001.jpg]
の数式を、
[図:0001415232000002.jpg]
の数式に訂正するというものである。
なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項〔4~6〕について請求されたものである。
第4 当審の判断
1 訂正の目的について
(1) 検討の順序
請求人は、訂正の目的が誤記の訂正である旨主張しているから、まずは、本件訂正に係る事項が誤記の訂正を目的とするものといえるかどうか検討する。
ここで、「誤記」というためには、訂正前の記載が誤りで訂正後の記載が正しいことが、本件特許の明細書、特許請求の範囲若しくは図面の記載又は当業者の技術常識などから明らかで、当業者であればそのことに気付いて訂正後の趣旨に理解するのが当然であるという場合でなければならないものと解される。
そこで、当審は、(i)本件特許の登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の記載に接した当業者が、訂正前の請求項4の記載になんらかの誤りがあることを認識するか、(ii)仮に上記(i)で誤りがあることを認識するのであれば、当業者は、その誤りが、訂正前の請求項4の記載のうちどこにあると特定するか、(iii)当業者は、上記(ii)で特定した誤りを正したものの意味合いを何と認識するか、さらに、その意味合いが訂正後の請求項4の記載がもつ意味合いと一致することを認識するか、の順で検討を行うこととする。
(2) 本件訂正前後における特許請求の範囲の記載
ア 本件訂正前(本件特許の登録時)の特許請求の範囲の記載
「【請求項4】
前記マイクロレンズアレイが関係式fMLA>0を満たし、かつfMLAが以下の方程式によって定義され、
【数2】
[図:0001415232000003.jpg]
ここで、fMLAは前記マイクロレンズアレイの相当焦点距離であり、nは前記マイクロレンズアレイの材質の屈折率であり、
各前記目側マイクロレンズが前記目側に向いた第一曲面を有し、各前記表示側マイクロレンズが前記表示側に向いた第二曲面を有し、R1は前記第一曲面の曲率半径であり、R2は前記第二曲面の曲率半径であり、dは前記目側面と前記表示側面との間の距離であることを特徴とする、請求項1に記載のニアアイライトフィールド表示装置。」
イ 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
「【請求項4】
前記マイクロレンズアレイが関係式fMLA>0を満たし、かつfMLAが以下の方程式によって定義され、
【数2】
[図:0001415232000004.jpg]
ここで、fMLAは前記マイクロレンズアレイの相当焦点距離であり、nは前記マイクロレンズアレイの材質の屈折率であり、
各前記目側マイクロレンズが前記目側に向いた第一曲面を有し、各前記表示側マイクロレンズが前記表示側に向いた第二曲面を有し、R1は前記第一曲面の曲率半径であり、R2は前記第二曲面の曲率半径であり、dは前記目側面と前記表示側面との間の距離であることを特徴とする、請求項1に記載のニアアイライトフィールド表示装置。」
(3) 本件特許の登録時の明細書の記載
「【0036】
【数1】
[図:0001415232000005.jpg]
fMLAはマイクロレンズアレイ120、120a、120bの相当焦点距離(equivalent focal length)であり、nはマイクロレンズアレイ120、120a、120bの材質の屈折率であり、各目側マイクロレンズ122、122a、122bが目側ESに向いた曲面CS1を有し、各表示側マイクロレンズ124、124a、124bが表示側DSSに向いた曲面CS2を有し、R1が曲面CS1の曲率半径(radius of curvature)であり、R2が第二曲面CS2の曲率半径であり、かつdが目側面ESSと表示側面DSSの中央光軸CIにおける距離である。」
(4) 判断
ア 本件明細書等の記載に接した当業者が、訂正前の請求項4の記載になんらかの誤りがあることを認識するかについて
訂正前の請求項4に【数2】として記載された数式(以下「訂正前請求項4数式」という。)の左辺は、「fMLAは前記マイクロレンズアレイの相当焦点距離であ」ることを踏まえれば、長さの次元を有している。
その一方で、訂正前請求項4数式の右辺は、「nは前記マイクロレンズアレイの材質の屈折率であり」、無次元の量であること、及び、「R1は前記第一曲面の曲率半径であり、R2は前記第二曲面の曲率半径であり、dは前記目側面と前記表示側面との間の距離であ」り、R1、R2及びdが長さの次元を有する量であることを踏まえれば、全体として長さの逆数の次元を有している。
このように、訂正前請求項4数式では、左辺と右辺とで次元が一致していないから、当業者は、当該数式になんらかの誤りがあることを当然に認識する。
イ 当業者は、その誤りが、訂正前の請求項4の記載のうちどこにあると特定するか、及び、特定した誤りを正したものの意味合いを何と認識するか、さらに、その意味合いが訂正後の請求項4の記載がもつ意味合いと一致することを認識するかについて
当業者が、その誤りが、訂正前の請求項4の記載のうちどこにあると特定するかという点、及び、特定した誤りを正したものの意味合いを何と認識するか、さらに、その意味合いが訂正後の請求項4の記載がもつ意味合いと一致するかという点について合わせて検討する。
本件明細書等の【0036】には、【数1】(以下「本件明細書数式」という。)として、訂正前請求項4数式において左辺をfMLAから1/fMLAに変更したものに相当する数式が記載されている。ここで、本件明細書数式では、左辺と右辺とがともに長さの逆数の次元を有しており、両辺の次元が一致しているし、また、本件明細書数式は、技術常識であるところの厚肉レンズの焦点距離を求める公式とも一致するものであるから、当業者は、本件明細書数式の記載が正しいと認識する。
してみると、当業者は、訂正前請求項4数式の左辺に誤りがあり、誤りを正した数式は、左辺を1/fMLAとしたものであると認識する。
そして、当業者は、そのようにして誤りを正した数式が、訂正後の請求項4に【数2】として記載された数式(以下「訂正後請求項4数式」という。)と一致することを認識する。
ウ 小括
このように、本件明細書等の記載に接した当業者は、訂正前の請求項4の記載のうち、訂正前請求項4数式の左辺に誤りがあると認識し、誤りを正したものの意味合いが、訂正後請求項4数式を含む訂正後の請求項4の記載と一致することを認識するといえるから、本件訂正は、明らかな誤記を訂正するものであって、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものである。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書の規定に適合する。
2 新規事項の有無
(1) 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲(以下「当初明細書等」という。)の記載
ア 「【0036】
【数1】
[図:0001415232000006.jpg]
fMLAはマイクロレンズアレイ120、120a、120bの相当焦点距離(equivalent focal length)であり、nはマイクロレンズアレイ120、120a、120bの材質の屈折率であり、各目側マイクロレンズ122、122a、122bが目側ESに向いた曲面CS1を有し、各表示側マイクロレンズ124、124a、124bが表示側DSSに向いた曲面CS2を有し、R1が曲面CS1の曲率半径(radius of curvature)であり、R2が第二曲面CS2の曲率半径であり、かつdが目側面ESSと表示側面DSSの中央光軸CIにおける距離である。」
「【請求項4】
前記マイクロレンズアレイが関係式fMLA>0を満たし、かつfMLAが以下の方程式によって定義され、
【数2】
[図:0001415232000007.jpg]
ここで、fMLAは前記マイクロレンズアレイの相当焦点距離であり、nは前記マイクロレンズアレイの材質の屈折率であり、各前記目側マイクロレンズが前記目側に向いた第一曲面を有し、各前記表示側マイクロレンズが前記表示側に向いた第二曲面を有し、R1は前記第一曲面の曲率半径であり、R2は前記第二曲面の曲率半径であり、dは前記目側面と前記表示側面との間の距離であることを特徴とする、請求項1に記載のニアアイライトフィールド表示装置。」
イ 前記アによれば、当初明細書等には、相当焦点距離fMLAについて、【数1】及び【数2】が記載されているところ、これらは同一のものであって、いずれの左辺も(1/fMLAではなく)fMLAであると認められる(以下、これらの数式を「当初明細書等数式」という。)。
(2) 判断
本件訂正に係る訂正後請求項4数式は、前記1(2)イのとおり、左辺が1/fMLAである。
他方、当初明細書等には、訂正後請求項4数式(上記のとおり左辺が1/fMLAである。)は明記されておらず、むしろ、前記(1)アのとおり、当初明細書等数式(左辺がfMLAであり、訂正前請求項4数式と一致する。)が明記されることで一貫していたものである。
そこで、このような訂正後請求項4数式が新規事項を追加しないものといえるかについて検討すると、前記1(4)ア及びイで説示したのと同様の理由で、当初明細書等の記載に接した当業者は、当初明細書等数式の両辺の次元が異なることを当然に認識するし、また、前記の技術常識であるところの厚肉レンズの焦点距離を求める公式をも認識していることから、当初明細書等数式の左辺におけるfMLAが1/fMLAの誤記であると当然に認識できる。
このように、当初明細書等の記載に接した当業者は、技術常識に照らして、当初明細書等数式の記載が訂正後請求項4数式の記載の誤記であることを当然に認識できることから、訂正後請求項4数式に係る訂正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
3 実質上特許請求の範囲を拡張又は変更することの有無
前記1のとおり、本件訂正は、明らかな誤記を訂正するものであって、当業者は訂正前請求項4数式の記載を当然に訂正後請求項4の記載であると認識することから、本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当しない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
4 独立特許要件について
前記1のとおり、本件訂正は、明らかな誤記を訂正するにとどまるところ、本件訂正後の請求項4に記載された発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができないとする理由はない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
第5 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項、第6項及び第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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