特許拒絶査定不服審判
2024-020248
情報処理装置、情報処理装置の制御方法、及びプログラム
- 審判番号
- 2024-020248
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-168614
- 請求日
- 2024年12月17日
- 審決日
- 2025年11月11日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
- 【請求人代理人】岡部 憲昭
- 【請求人代理人】穐場 仁
- 【請求人代理人】矢口 哲也
- 【請求人代理人】竹居 信利
- 審判長/審判官
- 審判長 岩間 直純
- 審判官 富澤 哲生
- 審判官 梅本 章子
- 分類
- P18 .121-WZ (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-168614「情報処理装置、情報処理装置の制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年11月29日出願公開、特開2023-169411〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)4月18日(優先権主張 平成29年4月28日)を国際出願日とする出願である特願2019-514429号の一部を、令和2年7月31日に新たな特許出願(特願2020-130686号)とし、その一部を、令和3年10月29日に新たな特許出願(特願2021-177997号)とし、その一部を、令和5年9月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 9月29日 :手続補正書の提出
令和6年 7月10日付け:拒絶理由通知書
令和6年 9月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 9月18日付け:拒絶査定
令和6年12月17日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
令和7年 5月12日付け:拒絶理由通知書
令和7年 7月10日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
令和7年7月10日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「ユーザに対し、仮想空間の画像を提示する表示装置に接続され、
実空間のユーザの各指先の位置の情報を取得する取得手段と、
仮想空間内に、仮想的なオブジェクトの位置及び画像を設定するオブジェクト設定手段と、
実空間内の対象物の平面の位置及び範囲を認識する手段と、
を有し、
前記ユーザが、前記位置の情報が取得された指先で前記仮想的なオブジェクトの移動操作を行うことにより、前記仮想的なオブジェクトの位置を移動し、前記仮想的なオブジェクトが前記認識された実空間内の対象物の平面に触れた状態と判断された場合に、前記仮想的なオブジェクトを当該平面の位置に貼り付けられた状態として、前記仮想的なオブジェクトを前記平面に貼付された位置に設定して、前記仮想的なオブジェクトの、前記移動操作による移動を中止する貼り付けモードの処理を行い、
前記オブジェクト設定手段は、前記貼り付けられた状態となった仮想的なオブジェクトに対して、所定の操作を行うまでは前記移動操作による移動を中止し、前記所定の操作が行われると、前記仮想的なオブジェクトが前記平面の位置から剥がされた状態となったものとして、前記移動操作による当該オブジェクトの移動操作が行われるよう制御し、
前記オブジェクト設定手段は、
前記仮想的なオブジェクトが前記認識された実空間内の対象物の平面に触れた状態と判断され、かつ、前記仮想的なオブジェクトの全体が前記平面に含まれる状態となったときに前記仮想的なオブジェクトを前記平面に貼付された位置に設定して、前記所定の操作を行うまでは、前記仮想的なオブジェクトの前記移動操作による移動を中止する前記貼り付けモードの処理を行い、
前記仮想的なオブジェクトが前記認識された実空間内の対象物の平面に触れた状態と判断され、かつ、前記仮想的なオブジェクトの全体が前記平面に含まれる状態とならないときに、前記仮想的なオブジェクトの前記移動操作による移動を継続する処理を行う
情報処理装置。」
第3 拒絶の理由
令和7年5月12日付けで当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、以下のとおりのものである。
本願請求項1~9に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開第2016/203792号
引用文献2:国際公開第2014/162762号
第4 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1、引用発明1
(1)当審拒絶理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。
「[0015] 図1は、本実施形態に係る表示装置1の外観構成の一例を示す図である。図1に示す表示装置1は、スマートグラスまたはHMD(Head Mounted Display)とも称される装置である。表示装置1は、例えばユーザの頭部を周回するようなフレーム構造の装着ユニット50を持ち、装着ユニット50によりユーザの頭に固定される。そしてこの表示装置1は、図1に示すような装着状態において、ユーザの眼前に、左眼用と右眼用の一対の表示部20A及び20Bが配置される構成とされている。この表示部20には、例えば透過型のディスプレイが用いられ、表示装置1は透過型のディスプレイの透過率を制御することで、スルー状態、即ち透明または半透明の状態にできる。表示部20がスルー状態とされることで、表示装置1を眼鏡のようにユーザが常時装着していても、通常の生活には支障がない。
[0016] 表示部20は、透明または半透明の状態のまま、テキストや図等の画像を表示することで、実空間の風景にARの仮想オブジェクトを重畳表示することができる。即ち、表示装置1は、透過型のHMDとして実現されてもよい。なお、透過型のHMDにおいては、図1に示したように、装着ユニット50により表示装置1がユーザの頭に固定されて、ユーザの両眼と表示部20との相対的な位置関係が固定化されることが望ましい。相対的な位置関係が変化すると、仮想オブジェクトを表示すべきディスプレイ上の位置が変化し得るためである。
[0017] また、表示部20は、撮像部10A及び10Bで撮像された実空間の撮像画像を表示しつつ、当該実空間の撮像画像に仮想オブジェクトを重畳表示することも可能である。また、表示部20は、撮像部10A及び10Bであたかも仮想空間を撮像したかのような画像を表示しつつ、当該仮想空間の画像に仮想オブジェクトを重畳表示することも可能である。即ち、表示装置1は、没入型(ビデオスルー型)のHMDとして実現されてもよい。」
「[0027] <1.2.内部構成例>
図2は、本実施形態に係る表示装置1の内部構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、表示装置1は、撮像部10、表示部20、記憶部30及び制御部40を含む。
[0028] 撮像部10は、実空間を撮像して撮像画像を出力する機能を有する。例えば、撮像部10は、図1に示した外向きステレオカメラ10及び内向きステレオカメラ10として実現され得る。
[0029] 表示部20は、画像を表示する機能を有する。例えば、表示部20は、図1に示したユーザの両眼に配置された透過型のディスプレイとして実現され得る。
[0030] 記憶部30は、各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部30は、表示部20に表示される仮想オブジェクトを関する情報を記憶する。例えば、記憶部30は、仮想オブジェクトの元となる画像又はテキスト等のコンテンツを記憶する。
[0031] 制御部40は、演算処理装置及び制御装置として機能し、各種プログラムに従って表示装置1内の動作全般を制御する機能を有する。制御部40は、例えばCPU(Central Processing Unit)、マイクロプロセッサ等の電子回路によって実現される。なお、制御部40は、使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)、及び適宜変化するパラメータ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。さらに、制御部40は、画像処理のためのGPU(Graphics Processing Unit)及びVRAM(Video RAM)等を含んでいてもよい。
[0032] 図2に示すように、制御部40は、検出部41、記憶制御部43及び表示制御部45として機能する。検出部41は、撮像部10から出力された撮像画像から各種情報を検出する機能を有する。記憶制御部43は、記憶部30に情報を記憶させたり、記憶部30に記憶された情報を取得したりする機能を有する。表示制御部45は、表示部20に画像を表示させるための表示制御を行う機能を有する。詳しくは、表示制御部45は、表示部20を制御して、仮想オブジェクトの表示を実空間に重畳させて表示させる(以下では、表示装置1は仮想オブジェクトを重畳表示する、とも記載する)。」
「[0035] <2.1.処理の概要>
まず、図3を参照して、表示装置1において行われる処理の概略を説明する。図3は、本実施形態に係る表示装置1において実行される処理の概略を示す図である。
[0036] (1)撮像処理
図3に示すように、まず、撮像部10において撮像処理が行われて、撮像画像が取得される。
[0037] (2)空間認識処理
次いで、図3に示すように、検出部41において、撮像部10から出力された撮像画像に基づいて、空間認識処理が行われる。空間認識処理により、表示装置1の実空間における位置及び姿勢を示す空間情報が取得される。」
「[0042] (3)実物体認識処理
また、図3に示すように、検出部41において、撮像部10から出力された撮像画像に基づいて、実物体認識処理が行われる。実物体認識処理により、表示装置1を装着したユーザの周辺の、例えば実空間画像に含まれる実物体が検出される。詳しくは、実物体認識処理により、実物体の位置及び形状、より正確には実空間画像における実物体の位置及び形状(即ち、撮像部10からみた実空間の凹凸)を示す実物体情報が取得される。」
「[0046] (4)ジェスチャ認識処理
また、図3に示すように、検出部41において、撮像部10から出力された撮像画像に基づいて、ジェスチャ認識処理が行われる。ジェスチャ認識処理により、表示装置1を装着したユーザ又は周辺のユーザによるジェスチャの内容を示すジェスチャ情報が取得される。ジェスチャ情報は、例えば、実物体認識処理と同様の技術を用いて取得され得る。
[0047] (5)視点位置推定処理
次いで、図3に示すように、表示制御部45において、視点位置推定処理が行われる。視点位置推定処理により、表示装置1を装着したユーザの眼の位置を示す視点位置情報が取得される。例えば、表示制御部45は、空間認識処理により取得された空間情報に基づいて、視点位置情報を推定する。表示制御部45は、内向きステレオカメラ10により取得された画像から認識されたユーザの眼球の位置、瞳孔の位置、及び視線の向き等にさらに基づいて、視点位置情報を推定してもよい。
[0048] (6)遮蔽物判定処理
また、図3に示すように、表示制御部45において、遮蔽物判定処理が行われる。遮蔽物判定処理により、表示装置1を装着したユーザから見た実物体同士の重なりを示す遮蔽物情報が取得される。例えば、表示制御部45は、実物体情報に基づいて実物体同士の位置関係、及び重なってユーザから見えなくなる領域等を認識する。
[0049] (7)表示領域設定処理
また、図3に示すように、表示制御部45において、仮想オブジェクトの表示領域の設定処理が行われる。表示領域の設定処理においては、実空間上の一領域に、仮想オブジェクトが表示(重畳)される表示領域が設定される。
[0050] 例えば、表示制御部45は、実物体情報に基づいて平面領域を検出する。平面領域とは、実物体のうち平坦な(凹凸が無い又は少ない)面を指す。また、表示制御部45は、平面領域の面積、法線、色及び色のばらつき度合等を、深度情報及び撮像画像に基づいて計算する。そして、表示制御部45は、平面領域のうち、仮想オブジェクトを表示するのに適した領域を、表示領域として設定する。表示制御部45は、信頼度が高い深度情報に基づき計算された平面領域を、信頼度が低い深度情報に基づき計算された平面領域よりも優先的に表示領域として設定してもよい。表示領域は、矩形、三角形、多角形又は円形等の多様な形状であり得る。適した領域とは、例えば、実物体の平坦な面であって、十分な面積があり、さらに撮像部10から平面へのベクトルと平面の法線との角度が小さい(即ち、ユーザに正対している)面を指す。また、適した領域とは、色の変化が平坦な領域であってもよい。このように、表示に適した領域に表示領域が設定されることにより、実世界の情報と仮想オブジェクトとの衝突が回避又は軽減される。
[0051] 一方で、表示制御部45は、実物体の面以外の、例えば空間上の任意の領域(例えば、空中)を、表示領域として設定してもよい。例えば、表示制御部45は、実物体に平坦な面が無い場合、十分な面積の面が無い又は撮像部10から平面へのベクトルと平面の法線との角度が大きい場合(即ち、ユーザに正対していない、例えば視線方向と平面とが略平行な場合)等に空中を表示領域として設定する。
[0052] また、表示制御部45は、ジェスチャ情報に基づいて、表示領域を設定してもよい。例えば、表示制御部45は、表示領域をユーザの指示に応じて拡縮したり移動させたりする。
[0053] 表示制御部45は、設定した表示領域に合わせてコンテンツをレイアウトし、レイアウトしたコンテンツをレンダリングして仮想オブジェクトのテクスチャにする。」
「[0089] <2.4.インタラクションに基づく表示制御>
表示装置1(例えば、表示制御部45)は、ユーザとのインタラクションに応じた表示制御を行い得る。
[0090] 例えば、表示装置1は、ユーザによる指示に応じて仮想オブジェクトを重畳表示する位置を制御する。他にも、表示装置1は、ユーザ指示に応じてコンテンツを切り替えたり、表示形態(色等)を制御したりしてもよい。これにより、ユーザにとってより望ましい表示が行われることとなり、仮想オブジェクトの快適な操作が実現される。ユーザによる指示は、例えば手等によるジェスチャ、視線、マーカの埋め込み等により行われ得る。ここで、図7~図10を参照して本表示例を説明する。
[0091] 図7は、本実施形態に係る仮想オブジェクトの表示例を説明するための図である。図7に示す例は、表示装置1がジェスチャに応じて表示領域を設定する例である。図7に示すように、ユーザが、空中に表示されていた仮想オブジェクト140を平面142に指でドラッグすると、表示装置1は、仮想オブジェクト140を平面142の表面に移動させて表示する。」
「[0095] なお、図7~図10に示した例では、仮想オブジェクトを平面に移動させる例を説明したが、本技術はかかる例に限定されない。例えば、表示装置1は、ユーザ指示に応じて、仮想オブジェクトを平面から平面へ移動させてもよいし、空中から空中へ移動させてもよいし、平面から空中に移動させてもよい。」
「[0118] <<3.動作処理例>>
(1)前処理
図15は、本実施形態に係る表示装置1において実行される前処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローは、図3を参照して上記説明した、実物体認識処理、遮蔽物判定処理、及び表示領域設定処理に相当する。
[0119] 図15に示すように、検出部41は、外向きステレオカメラ10により得られた画像から、画素毎の深度情報及び当該深度情報の信頼度を取得する(ステップS102)。次いで、表示制御部45は、深度情報及び信頼度に基づいて、実物体の表面の平面領域を検出する(ステップS104)。次に、表示制御部45は、平面領域ごとの特徴を計算する(ステップS106)。平面領域ごとの特徴としては、平面領域の面積、法線、色及び色のばらつき度合等が挙げられ、例えば深度情報及び信頼度に基づいて計算され得る。
[0120] 次いで、表示制御部45は、表示に適した平面領域が存在する否かを判定する(ステップS108)。例えば、表示制御部45は、色の変化が平坦であり、ユーザに正対し、且つユーザからの距離が近い平面領域であって、まだ仮想オブジェクトが表示されていない平面領域が存在する場合に、表示に適した平面領域が存在すると判定する。また、表示制御部45は、これらの条件を満たす平面領域が存在しない場合に、表示に適した平面領域が存在しないと判定する。
[0121] 表示に適した平面領域が存在すると判定された場合(ステップS108/YES)、表示制御部45は、当該平面領域に表示領域を設定する(ステップS110)。一方で、表示に適した平面領域が存在しないと判定された場合(ステップS108/NO)、表示制御部45は、空中に表示領域を設定する(ステップS112)。
[0122] そして、表示制御部45は、設定した表示領域に応じてコンテンツをレイアウト及びレンダリングすることで、仮想オブジェクトのテクスチャを生成する(ステップS114)。以上で、本フローに係る処理は終了する。
[0123] (2)描画処理
図16は、本実施形態に係る表示装置1において実行される描画処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローは、図3を参照して上記説明した、視点位置推定処理、仮想オブジェクト描画処理及び表示処理に相当し、図15を参照して上記説明した前処理の後に実行される。
[0124] 図16に示すように、まず、検出部41は、空間情報及び視点位置情報を取得する(ステップS202)。次いで、表示制御部45は、空間情報及び視点位置情報に基づいて、前処理において設定した表示領域を表示部20上の座標に射影変換する(ステップS204)。そして、表示制御部45は、前処理において生成された仮想オブジェクトのテクスチャを、射影変換後の表示領域にマッピングして、仮想オブジェクトを表示する(ステップS206)。
[0125] 表示装置1は、以上説明した処理をフレームごとに行う。描画処理を終了しない場合(ステップS208/NO)、次フレームで再度ステップS202から処理が行われる。描画処理を終了する場合(ステップS208/NO)、本フローに係る処理は終了する。
[0126] 図17は、本実施形態に係る表示装置1において実行される描画処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローは、図16に示したフローの変形例である。
[0127] 図17に示すように、まず、ステップS302~S306において、図16を参照して上記説明したステップS202~S206と同様の処理が行われる。次いで、ステップS308~S312において、図15を参照して上記説明したステップS102~S106と同様の処理が行われる。
[0128] 次に、表示制御部45は、表示領域を変更するか否かを判定する(ステップS314)。例えば、表示制御部45は、視界の移動、実物体の追加/削除/移動、コンテンツの緊急度の変化、ユーザ指示の有無等に応じて、より適した領域(平面領域又は空中)に表示領域を変更するか否かを判定する。
[0129] 変更すると判定された場合(ステップS314/YES)、表示制御部45は、新たな領域に表示領域を再設定する(ステップS316)。一方で、変更しないと判定された場合(ステップS314/NO)、表示領域の設定は維持される。
[0130] 表示装置1は、以上説明した処理をフレームごとに行う。描画処理を終了しない場合(ステップS318/NO)、次フレームで再度ステップS302から処理が行われる。描画処理を終了する場合(ステップS318/NO)、本フローに係る処理は終了する。
[0131] (3)インタラクションに係る表示制御処理
図18は、本実施形態に係る表示装置1において実行されるインタラクションに係る表示制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
[0132] 図18に示すように、まず、検出部41は、表示領域の設定に関するユーザ指示を取得する(ステップS402)。例えば、検出部41は、ジェスチャ、視線、又はマーカが埋め込まれた平面等を検出する。
[0133] 次いで、表示制御部45は、ユーザ指示に基づいて表示領域を設定する(ステップS404)。例えば、表示制御部45は、ユーザが仮想オブジェクトを指でドラッグした先の平面に表示領域を設定する。また、表示制御部45は、ユーザが所定時間凝視した平面に表示領域を設定する。また、表示制御部45は、特定のマーカが埋め込まれた平面に表示領域を設定する。
[0134] 次に、表示制御部45は、設定した表示領域に仮想オブジェクトを表示する(ステップS406)。
[0135] 次いで、検出部41は、仮想オブジェクトへのユーザ指示を取得する(ステップS408)。例えば、検出部41は、表示領域が設定された平面又は空中へのタッチを、深度情報等に基づいて認識する。また、検出部41は、ウェラブルデバイスがユーザに装着されているか否かを判定し(ステップS410)、装着されている場合には当該ウェラブルデバイスから振動情報を取得する(ステップS412)。そして、表示制御部45は、取得したユーザ指示に対するフィードバックを表示する(ステップS414)。振動情報が取得された場合、表示制御部45は、振動情報にさらに基づいてフィードバックを表示する。以上で、本フローに係る処理は終了する。」
「[図1]
[図:0001430884000001.jpg]
」
「[図7]
[図:0001430884000002.jpg]
」
(2)上記(1)の記載から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「透過型のHMDとして実現され、
撮像部10、表示部20及び制御部40を含み、
撮像部10は、実空間を撮像して撮像画像を出力する機能を有し、
制御部40は、検出部41、記憶制御部43及び表示制御部45として機能し、
撮像部10から出力された撮像画像に基づいて、空間認識処理が行われ、空間認識処理により、表示装置1の実空間における位置及び姿勢を示す空間情報が取得され、
検出部41において、撮像部10から出力された撮像画像に基づいて、実物体認識処理が行われ、実物体認識処理により、表示装置1を装着したユーザの周辺の、実空間画像に含まれる実物体が検出され、
表示制御部45において、視点位置推定処理が行われ、視点位置推定処理により、表示装置1を装着したユーザの眼の位置を示す視点位置情報が取得され、
表示制御部45において、仮想オブジェクトの表示領域の設定処理が行われ、表示制御部45は、実物体情報に基づいて平面領域を検出し、平面領域のうち、仮想オブジェクトを表示するのに適した領域を、表示領域として設定し、適した領域とは、実物体の平坦な面であって、十分な面積がある面を指し、
表示制御部45は、ユーザとのインタラクションに応じた表示制御を行い、ユーザによる指示は、手等によるジェスチャにより行われ、
ユーザが、空中に表示されていた仮想オブジェクトを平面142に指でドラッグすると、表示装置1は、仮想オブジェクトを平面142の表面に移動させて表示する、表示装置1であって、
前処理において、表示制御部45は、実物体の表面の平面領域を検出し、
表示制御部45は、表示に適した平面領域が存在する否かを判定し、表示に適した平面領域が存在すると判定された場合、表示制御部45は、当該平面領域に表示領域を設定し、表示に適した平面領域が存在しないと判定された場合、表示制御部45は、空中に表示領域を設定し、
表示制御部45は、設定した表示領域に応じてコンテンツをレイアウト及びレンダリングすることで、仮想オブジェクトのテクスチャを生成し、
描画処理において、検出部41は、空間情報及び視点位置情報を取得し、表示制御部45は、空間情報及び視点位置情報に基づいて、設定した表示領域を表示部20上の座標に射影変換し、表示制御部45は、前処理において生成された仮想オブジェクトのテクスチャを、射影変換後の表示領域にマッピングして、仮想オブジェクトを表示し、
表示制御部45は、表示領域を変更するか否かを判定し、例えば、表示制御部45は、ユーザ指示の有無等に応じて、より適した領域(平面領域又は空中)に表示領域を変更するか否かを判定し、変更すると判定された場合、表示制御部45は、新たな領域に表示領域を再設定し、
インタラクションに係る表示制御処理において、検出部41は、表示領域の設定に関するユーザ指示としてジェスチャを検出し、表示制御部45は、ユーザ指示としてユーザが仮想オブジェクトを指でドラッグした先の平面に表示領域を設定し、設定した表示領域に仮想オブジェクトを表示する、表示装置1。」
2 引用文献2、引用発明2
(1)当審拒絶理由にて引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「[0017] <1.第1の実施形態の詳細な説明>
[1-1.基本構成]
最初に、第1の実施形態によるHMD10(情報処理装置)の基本構成について、図1を参照して説明する。図1に示したように、HMD10は、例えば図2に示したような表示画面20を操作者2に見せるための表示装置である。このHMD10は、操作者2の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイであってもよいし、例えばシースルー型のディスプレイを備えたメガネ型コンピュータであってもよい。また、HMD10は、撮影された静止画、動画、またはコンピュータグラフィックスにより描画された2次元オブジェクトや3次元オブジェクトなどを表示画面20に表示することができる。
[0018] 図2は、HMD10により表示される表示画面20の例を示した説明図である。図2に示したように、表示画面20は、例えばUIパネル30a(操作面)などの操作オブジェクトを含む。なお、HMD10は、操作オブジェクトを3次元オブジェクトとして表現することも可能である。例えば、操作者2が操作オブジェクトを表示画面20の奥行方向へ移動させる操作を行った場合には、HMD10は、表示画面20において操作オブジェクトを縮小して表示することが可能である。また、HMD10は、UIパネル30を例えばビルボードのように、操作者2の姿勢が変化しても常に操作者2の眼に相対する向きに表示することが可能である。
[0019] また、図2に示したように、UIパネル30aは、例えば各種アプリケーションを起動するためのアイコン300を含む。なお、UIパネル30aは、ボタン、画像、テキストなどをさらに含んでもよい。
[0020] また、HMD10は、後述する撮像部120またはセンサ部122により取得される情報に基づいて操作者2の手形状および手の位置を認識することにより、表示画面20におけるUIパネル30の表示位置を変化させることが可能である。また、HMD10は、操作者2の手の動作を認識することにより、操作者2によるアイコン300、ボタン、画像、テキストなどの選択操作を認識することができ、そして、例えば選択されたアイコン300に対応するアプリケーションの起動など、選択操作に対応する所定の処理を実行することが可能である。」
「[0030] [1-2.構成]
(1-2-1.HMD10の構成)
以上、第1の実施形態によるHMD10の基本構成について説明した。続いて、第1の実施形態による構成について詳細に説明する。図4は、第1の実施形態によるHMD10の構成を示した機能ブロック図である。図4に示したように、HMD10は、制御部100、記憶部110、および出力部112を有する。また、制御部100は、手形状認識部102、動作認識部104、表示制御部106、および判断部108を有する。
[0031] 制御部100は、HMD10に内蔵されるCPU150、RAM154などのハードウェアを用いて、HMD10の動作を全般的に制御する機能を有する。例えば、制御部100は、記憶部110、および出力部112の動作を制御する。
[0032] 手形状認識部102は、例えば後述する撮像部120により撮像された操作者2の手の画像、または後述するセンサ部122により測定された操作者2の手の深度情報などに基づいて、操作者2の手形状を認識する。
[0033] より具体的には、手形状認識部102は、撮像された操作者2の手の画像に対して画像のパターンマッチングを行うことにより、操作者2の手形状を認識することが可能である。例えば、事前に、ある画像処理装置により、例えば図5に示した形状などの所定の形状にされた複数人の手の撮影画像データを用いて、Haar-like特徴量などの特徴量が抽出され、機械学習が行われることにより、パターンマッチング用の辞書データが作成されることが可能である。そして、手形状認識部102は、撮像部120により撮像された操作者2の画像に対して、操作者2の手までの距離と操作者2の手に関する特徴量とを算出し、算出結果と上記の辞書データとを比較することにより、操作者2の手形状が所定の手形状と同じであるか否かを判定することが可能である。なお、上記の画像処理装置は、HMD10であってもよいし、異なる装置であってもよい。
[0034] あるいは、手形状認識部102は、センサ部122により測定された操作者2の手の深度情報に基づいて、例えば指のボーン推定により操作者2の手の各指の位置を算出し、そして、算出された各指の位置関係から操作者2の手形状を認識することも可能である。
[0035] 例えば、手形状認識部102は、操作者2の第1の手の手形状が、図5および図6に示したような、UIパネル30を持つ手形状4aであるか否かを認識する。また、手形状認識部102は、操作者2の第2の手の手形状が、図8に示したような、指差しの形状6aであるか否かを認識する。なお、後述するように、第1の手は、UIパネル30の表示位置を移動させるための手であり、第2の手は、UIパネル30に対する操作を行うための手である。
[0036] なお、本明細書では以後、第1の手は左手、第2の手は右手として説明を行う。但し、かかる例に限定されず、第1の手は右手であり、第2の手は左手であってもよい。この変形例による効果として、操作者2の利き手が左右のいずれであっても操作の容易さが変化しないことが挙げられる。
[0037] 詳細については後述するが、操作者2により左手の手形状がUIパネル30を持つ手形状4aにされた場合には、HMD10は、図6に示したように、実空間において例えば左手の親指と人差し指との間の位置にUIパネル30を配置することが可能である。このため、仮に操作者2が左手を移動させた場合であっても、操作者2は、移動後のUIパネル30の実空間における位置を容易に認識することができる。
[0038] また、操作者2により右手の手形状が指差しの形状6aにされた場合には、HMD10は、実空間において例えば右手の人差し指の先端の位置に対応するUIパネル30における位置を操作者2による選択位置として認識することが可能である。この効果として、操作者2は、実空間における左手の位置、つまりUIパネル30が配置される位置と、右手の指の位置との位置関係を知覚できるので、操作者2は、UIパネル30において希望する位置を正しく選択することができることが挙げられる。
[0039] 手形状認識部102は、上述した機能に加えて、操作者2による、例えばタッチパネルにおいて採用されている操作に類似した操作を認識することも可能である。例えば、手形状認識部102は、操作者2の右手の指の位置が左手の位置よりも後方にあり、かつ、右手を上下左右方向へ移動させる動作を認識した場合には、右手の指の位置に対応する表示位置においてホバー操作がなされたことを認識してもよい。また、手形状認識部102は、右手の指の位置が左手の位置よりも前方にあることを認識した場合には、右手の指の位置に対応する表示位置においてタップなどの決定操作がなされたことを認識してもよい。また、手形状認識部102は、右手の指の位置が左手の位置よりも前方にあり、かつ、右手を上下左右方向へ移動させる動作を認識した場合には、右手の指の位置に対応する表示位置においてドラッグ操作がなされたことを認識してもよい。」
「[図1]
[図:0001430884000003.jpg]
」
「[図2]
[図:0001430884000004.jpg]
」
(2)上記(1)の記載から、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「UIパネル30a(操作面)などの操作オブジェクトを含む表示画面20が表示され、
撮像部120またはセンサ部122により取得される情報に基づいて操作者2の手形状および手の位置を認識することにより、表示画面20におけるUIパネル30の表示位置を変化させることが可能であり、また、操作者2の手の動作を認識することにより、操作者2によるアイコン300、ボタン、画像、テキストなどの選択操作を認識することができる、HMD10であって、
制御部100を有し、また、制御部100は、手形状認識部102を有し、
手形状認識部102は、センサ部122により測定された操作者2の手の深度情報に基づいて、例えば指のボーン推定により操作者2の手の各指の位置を算出し、そして、算出された各指の位置関係から操作者2の手形状を認識し、
また、手形状認識部102は、操作者2の第2の手の手形状が、指差しの形状6aであるか否かを認識し、第2の手は、UIパネル30に対する操作を行うための手であり、
操作者2により右手の手形状が指差しの形状6aにされた場合には、HMD10は、実空間において例えば右手の人差し指の先端の位置に対応するUIパネル30における位置を操作者2による選択位置として認識する、HMD10。」
3 周知技術
(1)できるクリエイター GIMP 2.8 独習ナビ,株式会社インプレスジャパン,2013年2月21日,p.184には、図面とともに次の事項が記載されている。
「[ガイドにスナップ]コマンド
レイヤー上の画像やテキストをドラッグして、設定したガイドに吸着させる機能が[ガイドにスナップ]コマンドです。きれいに配置したいときに便利な機能です。」
「◆イラストや文字をガイドにスナップさせる
[図:0001430884000005.jpg]
」
(2)InDesign CS5 スーパーリファレンス for Macintosh & Windows,株式会社ソーテック社,2010年8月31日,p.42には、図面とともに次の事項が記載されている。
「グリッドやガイドヘのスナップ
オブジェクトをレイアウトする際にガイドやグリッドは大変便利な機能です。スナップ機能を使うと、これらの補助線にオブジェクトをぴったり合わせることができます。
「表示」メニューの「グリッドとガイド」から「ガイドにスナップ」(
[図:0001430884000006.jpg]
〔セミコロン〕)をオンにすると、ガイド近くにオブジェクトを移動するとガイドに吸着するようになります。
「グリッドにスナップ」では、グリッドに吸着します。「レイアウトグリッドにスナップ」(
[図:0001430884000007.jpg]
)では、レイアウトグリッドに吸着します。」
(3)上記(1)の記載は、ユーザが、「イラストや文字」すなわちオブジェクトを、「ガイド」に位置合わせするための「ドラッグ」操作を行い、オブジェクトが「ガイドの近く」すなわち実質的に「ガイド」の位置に達したと判断される状態となったときに、「ガイドときれいに重なる部分で吸い付くように止」める、すなわちオブジェクトの「ドラッグ」操作による移動を中止する処理を行うことを開示するものといえる。ここで、オブジェクトが上記状態とならないときに、オブジェクトの移動が継続されることは明らかである。
また、上記(2)の記載も同様に、ユーザが「オブジェクト」を「ガイド」に位置合わせするための「移動」操作を行い、「オブジェクト」が「ガイド近く」すなわち実質的に「ガイド」の位置に達したと判断される状態となったときに、「ガイドに吸着するように」する、すなわち「オブジェクト」の「移動」操作による移動を中止する処理を行うことを開示するものといえ、ここで、「オブジェクト」が上記状態とならないときに、「オブジェクト」の「移動」操作による移動が継続されることは明らかである。
以上から、
「オブジェクトを移動操作によりユーザが希望する位置に正確に位置合わせしたい場合に、前記オブジェクトが所定の位置に達する状態となったときに、前記オブジェクトの前記移動操作による移動を中止する処理を行い、前記オブジェクトが所定の位置に達した状態とならないときに、前記オブジェクトの前記移動操作による移動を継続する処理を行うこと」
は周知技術である。
第5 対比
1 本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1の「表示装置1」は、「ユーザが、空中に表示されていた仮想オブジェクトを平面142に指でドラッグすると」、「仮想オブジェクトを平面142の表面に移動させて表示する」から、ユーザに対し、仮想空間の画像である「仮想オブジェクト」を提示するといえるものである。
そして、引用発明1の「表示装置1」が、「ユーザ」に対し、仮想空間の画像である「仮想オブジェクト」を提示することと、本願発明の「情報処理装置」が、「ユーザに対し、仮想空間の画像を提示する表示装置に接続され」たものであることとは、「ユーザに対し、仮想空間の画像を提示」するという点で共通する。
(2)引用発明1の「表示装置1」における「表示制御部45」は、「前処理において」、「実物体の表面の平面領域を検出し」、「表示に適した平面領域が存在する否かを判定し、表示に適した平面領域が存在すると判定された場合」、「当該平面領域に表示領域を設定」し、「描画処理において」、「検出部41」により「取得」された「空間情報及び視点位置情報」に「基づいて」、「設定した表示領域を表示部20上の座標に射影変換し」、「前処理において生成された仮想オブジェクトのテクスチャを、射影変換後の表示領域にマッピングして、仮想オブジェクトを表示」するものであり、ここで、「生成された仮想オブジェクトのテクスチャを、射影変換後の表示領域にマッピングして、仮想オブジェクトを表示」することは、「仮想オブジェクト」の位置及び画像を設定することであるといえる。
また、「実物体の表面の平面領域を検出し」、かつ「実物体の表面」に「表示に適した平面領域が存在する否かを判定」するために、「実物体」の平面の位置及び範囲の認識が行われることは明らかである。
よって、引用発明1の「表示装置1」は、仮想空間内に、「仮想オブジェクト」の位置及び画像を設定する手段、及び「実物体」の平面の位置及び範囲を認識する手段を有するといえる。
そして、引用発明1の「仮想オブジェクト」、「実物体」、上記設定する手段、上記認識する手段は、それぞれ、本願発明の「仮想的なオブジェクト」、「実空間内の対象物」、「仮想空間内に、仮想的なオブジェクトの位置及び画像を設定するオブジェクト設定手段」、「実空間内の対象物の平面の位置及び範囲を認識する手段」に相当する。
(3)引用発明1の「表示装置1」において、「表示制御部45」が、「ユーザ指示としてユーザが仮想オブジェクトを指でドラッグした先の平面に表示領域を設定し」、「設定した表示領域に仮想オブジェクトを表示する」際の「平面」が「実物体の表面」における平面である場合が当然にあり得るといえる(引用文献1の図7はその状況を示すものと解される。)。
また、ここで、「ユーザが仮想オブジェクトを指でドラッグした先の平面に表示領域を設定」することが、「ユーザが、空中に表示されていた仮想オブジェクトを平面142に指でドラッグすると」、「仮想オブジェクトを平面142の表面に移動させて表示する」ことに対応して、「ユーザ」が「指」の先で「仮想オブジェクト」の移動操作を行うことにより、「仮想オブジェクト」の位置を移動し、その後、「仮想オブジェクト」が引用発明1における上記(2)の認識する手段により認識された「実物体」の平面に触れた状態と判断された場合に行われることは明らかであり、「設定した表示領域に仮想オブジェクトを表示する」ことは、「仮想オブジェクト」を「実物体」の平面に貼り付けられた状態として、「仮想オブジェクト」を当該平面に貼付された位置に設定して、「仮想オブジェクト」の、前記移動操作による移動を中止するモードの処理を行うことであるといえる。
すなわち、引用発明1は、「ユーザ」が指先で「仮想オブジェクト」の移動操作を行うことにより、「仮想オブジェクト」の位置を移動し、「仮想オブジェクト」が認識された「実物体」の平面に触れた状態と判断された場合に、「仮想オブジェクト」を当該平面に貼り付けられた状態として、「仮想オブジェクト」を当該平面に貼付された位置に設定して、「仮想オブジェクト」の、前記移動操作による移動を中止するモードの処理を行うとの構成を含むものである。
なお、引用発明1において、「ユーザが、空中に表示されていた仮想オブジェクトを平面142に指でドラッグする」際、「仮想オブジェクト」を「平面142に指で」正確に位置合わせすることは困難であるから、「仮想オブジェクト」が「実物体」の平面に触れた状態との判断が、近似的に触れたとみなされる場合を含めて行われることは明らかである。
以上に加え、上記(2)のとおり、引用発明1の「仮想オブジェクト」、「実物体」は、それぞれ、本願発明の「仮想的なオブジェクト」、「実空間内の対象物」に相当することから、引用発明1における上記構成と、本願発明における「前記ユーザが、前記位置の情報が取得された指先で前記仮想的なオブジェクトの移動操作を行うことにより、前記仮想的なオブジェクトの位置を移動し、前記仮想的なオブジェクトが前記認識された実空間内の対象物の平面に触れた状態と判断された場合に、前記仮想的なオブジェクトを当該平面の位置に貼り付けられた状態として、前記仮想的なオブジェクトを前記平面に貼付された位置に設定して、前記仮想的なオブジェクトの、前記移動操作による移動を中止する貼り付けモードの処理を行」うこととは、「前記ユーザが、指先で前記仮想的なオブジェクトの移動操作を行うことにより、前記仮想的なオブジェクトの位置を移動し、前記仮想的なオブジェクトが前記認識された実空間内の対象物の平面に触れた状態と判断された場合に、前記仮想的なオブジェクトを当該平面の位置に貼り付けられた状態として、前記仮想的なオブジェクトを前記平面に貼付された位置に設定して、前記仮想的なオブジェクトの、前記移動操作による移動を中止するモードの処理を行」うことである点で共通する。
(4)引用発明1における上記(3)の処理は、要するに「仮想オブジェクト」を表示する処理であるから、その実行主体が上記(2)の「仮想オブジェクト」の位置及び画像を設定する手段であることは明らかである。
よって、引用発明1は、「仮想オブジェクト」の位置及び画像を設定する手段が、「仮想オブジェクト」が認識された「実物体」の平面に触れた状態と判断された場合に、「仮想オブジェクト」を「実物体」の平面に貼り付けられた状態として、「仮想オブジェクト」を当該平面に貼付された位置に設定して、「仮想オブジェクト」の、前記移動操作による移動を中止するモードの処理を行うとの構成を含むものであり、当該構成と、本願発明における「前記オブジェクト設定手段は」、「前記仮想的なオブジェクトが前記認識された実空間内の対象物の平面に触れた状態と判断され、かつ、前記仮想的なオブジェクトの全体が前記平面に含まれる状態となったときに前記仮想的なオブジェクトを前記平面に貼付された位置に設定して、前記所定の操作を行うまでは、前記仮想的なオブジェクトの前記移動操作による移動を中止する前記貼り付けモードの処理を行」うこととは、「前記オブジェクト設定手段は」、「前記仮想的なオブジェクトが前記認識された実空間内の対象物の平面に触れた状態と判断されたときに前記仮想的なオブジェクトを前記平面に貼付された位置に設定する前記モードの処理を行」うことである点で共通する。
(5)引用発明1の「表示装置1」は、その「制御部40」において情報処理を行うことが明らかであるから、本願発明の「情報処理装置」に相当する。
2 上記1から、本願発明と引用発明1とは、以下の点で一致する。
(一致点)
「ユーザに対し、仮想空間の画像を提示し、
仮想空間内に、仮想的なオブジェクトの位置及び画像を設定するオブジェクト設定手段と、
実空間内の対象物の平面の位置及び範囲を認識する手段と、
を有し、
前記ユーザが、指先で前記仮想的なオブジェクトの移動操作を行うことにより、前記仮想的なオブジェクトの位置を移動し、前記仮想的なオブジェクトが前記認識された実空間内の対象物の平面に触れた状態と判断された場合に、前記仮想的なオブジェクトを当該平面の位置に貼り付けられた状態として、前記仮想的なオブジェクトを前記平面に貼付された位置に設定して、前記仮想的なオブジェクトの、前記移動操作による移動を中止するモードの処理を行い、
前記オブジェクト設定手段は、
前記仮想的なオブジェクトが前記認識された実空間内の対象物の平面に触れた状態と判断されたときに前記仮想的なオブジェクトを前記平面に貼付された位置に設定する前記モードの処理を行う
情報処理装置。」
3 また、本願発明と引用発明1とは、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明の「情報処理装置」は、「ユーザに対し、仮想空間の画像を提示する表示装置に接続され」たものであるのに対して、引用発明1の「表示装置1」は、それ自体が「仮想オブジェクト」を表示するものである点。
(相違点2)
本願発明の「情報処理装置」は、「実空間のユーザの各指先の位置の情報を取得する取得手段」を有するものであり、「指先」について「前記位置の情報が取得された」ものとされるのに対して、引用発明1の「表示装置1」は、「ジェスチャを検出」する手段を有し、かつ、当該手段により、「ユーザ指示としてユーザが仮想オブジェクトを指でドラッグ」することについての情報が取得されることは明らかであるものの、ユーザの各指先の位置の情報を取得する手段により当該位置の情報が取得されることが特定されるものではない点。
(相違点3)
本願発明の「情報処理装置」は、これが「有」する「前記オブジェクト設定手段」が、「前記貼り付けられた状態となった仮想的なオブジェクトに対して、所定の操作を行うまでは前記移動操作による移動を中止し、前記所定の操作が行われると、前記仮想的なオブジェクトが前記平面の位置から剥がされた状態となったものとして、前記移動操作による当該オブジェクトの移動操作が行われるよう制御」するものであるのに対して、引用発明1の「表示装置1」は、「仮想オブジェクト」の位置及び画像を設定する手段を有するといえるものの、当該手段が上記のような制御を行うことが特定されるものではない点。
(相違点4)
本願発明の「情報処理装置」は、これが「有」する「前記オブジェクト設定手段」が、「前記仮想的なオブジェクトが前記認識された実空間内の対象物の平面に触れた状態と判断され、かつ、前記仮想的なオブジェクトの全体が前記平面に含まれる状態となったときに前記仮想的なオブジェクトを前記平面に貼付された位置に設定して、前記所定の操作を行うまでは、前記仮想的なオブジェクトの前記移動操作による移動を中止する前記貼り付けモードの処理を行い」、「前記仮想的なオブジェクトが前記認識された実空間内の対象物の平面に触れた状態と判断され、かつ、前記仮想的なオブジェクトの全体が前記平面に含まれる状態とならないときに、前記仮想的なオブジェクトの前記移動操作による移動を継続する処理を行う」ものであるのに対して、引用発明1の「表示装置1」は、「仮想オブジェクト」の位置及び画像を設定する手段を有し、当該手段が、「仮想オブジェクト」が認識された「実物体」の平面に触れた状態と判断された場合に、「仮想オブジェクト」を当該平面に貼付された位置に設定し、「仮想オブジェクト」の前記移動操作による移動を中止するとはいえるものの、当該手段が、「前記仮想的なオブジェクトを前記平面に貼付された位置に設定」することを、上記判断が行われたとの条件に加えて「前記仮想的なオブジェクトの全体が前記平面に含まれる状態となった」ことを条件に行い、かつこれに加えて「前記仮想的なオブジェクトの前記移動操作による移動を中止する」ことを、「前記所定の操作を行うまで」、「貼り付けモードの処理」として行うことが特定されるものではなく、さらに、「前記仮想的なオブジェクトが前記認識された実空間内の対象物の平面に触れた状態と判断され、かつ、前記仮想的なオブジェクトの全体が前記平面に含まれる状態とならないときに、前記仮想的なオブジェクトの前記移動操作による移動を継続する処理を行う」ことが特定されるものでもない点。
第6 当審の判断
1 各相違点について
以下、各相違点について検討する。
(1)相違点1について
HMDにおいて、情報処理を実行する部分を内蔵するものとするか、それを実行する装置を外部に設けてHMDに接続されるものとするかは、任意に選択できる事項であり、引用発明1において後者の構成とすることは当業者が適宜なし得ることである。
(2)相違点2について
引用発明2において、「センサ部122により測定された操作者2の手の深度情報に基づいて、例えば指のボーン推定により操作者2の手の各指の位置を算出し、そして、算出された各指の位置関係から操作者2の手形状を認識」する「手形状認識部102」は、「HMD10」を装着する実空間の「操作者2」の各指先の位置の情報を取得するといえるものであり、そうすると、引用発明2の「HMD10」における「手形状認識部102」は、本願発明の「実空間のユーザの各指先の位置の情報を取得する取得手段」に相当する。
また、引用発明2は、「手形状認識部102」が、「操作者2」の「UIパネル30に対する操作を行うための手であ」る「第2の手の手形状」が、「指差しの形状6aであるか否かを認識し」、「操作者2により右手の手形状が指差しの形状6aにされた場合には、HMD10は、実空間において例えば右手の人差し指の先端の位置に対応するUIパネル30における位置を操作者2による選択位置として認識する」ものであり、ここで、「UIパネル30」は、仮想的なオブジェクトとして「HMD10」の「表示画面20」に表示されるものといえるから、「手形状認識部102」により位置が取得された指先で仮想的なオブジェクトに対する(「選択位置」を特定する)操作が行われたと判断する構成を含むものである。
そして、引用発明1と引用発明2とは、HMDを装着したユーザの指先でHMDに表示される仮想的なオブジェクトに対して行われる操作を検出するものである点で、作用機能が共通するから、引用発明1において、「ユーザ指示としてユーザが仮想オブジェクトを指でドラッグ」することについての情報を取得するために、引用発明2を適用して、「実空間のユーザの各指先の位置の情報を取得する取得手段」を有し、かつ「前記位置の情報が取得された指先で前記仮想的なオブジェクトの移動操作を行う」ものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(3)相違点3について
引用発明1における「表示制御部45は、表示領域を変更するか否かを判定し、例えば、表示制御部45は、ユーザ指示の有無等に応じて、より適した領域(平面領域又は空中)に表示領域を変更するか否かを判定」するとの構成は、「平面領域」に設定された「表示領域」を、「ユーザ指示」により、「空中」に移動するように「変更」することを示唆するものといえる。
この点は、引用文献1の「表示装置1は、ユーザ指示に応じて、仮想オブジェクトを・・・平面から空中に移動させてもよい。」([0095])との記載からも明らかである。
そして、「表示制御部45」が、「ユーザ指示としてユーザが仮想オブジェクトを指でドラッグした先の平面に表示領域を設定し」、「設定した表示領域に仮想オブジェクトを表示する」引用発明1において、上記示唆に基づいて、「平面に表示領域を設定」された「仮想オブジェクト」が、新たな「ユーザ指示」に対応する所定の操作が行われると、「平面」から「空中」に移動するように変更する、すなわち、「平面」の位置から剥がされた状態となったものとして、「ドラッグ」操作による「仮想オブジェクト」のさらなる移動操作が行われるよう制御するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、その場合、「平面に表示領域を設定し」た状態となった「仮想オブジェクト」に対して、上記所定の操作が行われるまでは「ドラッグ」操作による移動を中止するものとなることは自明である。
(4)相違点4について
ア 引用発明1は、「仮想オブジェクトの表示領域の設定処理」において、「実物体情報に基づいて平面領域を検出し、平面領域のうち、仮想オブジェクトを表示するのに適した領域を、表示領域として設定し、適した領域とは、実物体の平坦な面であって、十分な面積がある面を指」すというものであるから、「表示装置1」の「検出部41」が、「表示領域の設定に関するユーザ指示としてジェスチャを検出し」、「表示制御部45」が、「ユーザ指示としてユーザが仮想オブジェクトを指でドラッグした先の平面に表示領域を設定し、表示制御部45は、設定した表示領域に仮想オブジェクトを表示する」ことにおける「表示領域」は、「実物体の平坦な面であって、十分な面積がある」とされるものである。
ここで、「実物体の平坦な面」の「面積」が「十分」か否かの具体的な判断基準が任意であることは明らかである一方、引用文献1の段落[0091]の記載が参照する図7から、仮想オブジェクト140の全体が平面142に含まれる状態とすることが見て取れるから、引用発明1において、前記判断基準として「前記仮想オブジェクトの全体が前記平面に含まれる状態」を取り得る「実物体の平坦な面」を採用することは、当業者が適宜なし得ることである。
そして、「仮想オブジェクト」の全体が含まれる状態とすることが可能な「実物体の平坦な面」を「適した領域」と判断して「表示領域として設定」した上で、「ユーザ指示としてユーザが仮想オブジェクトを指でドラッグした先の平面に表示領域を設定し、表示制御部45は、設定した表示領域に仮想オブジェクトを表示する」ことを、「仮想オブジェクト」が認識された「実物体」の平面に触れた状態(近似的に触れたとみなされる場合を含む)と判断されたとの条件(以下「条件1」という。)に加えて、前記判断基準に対応する「仮想オブジェクト」の全体が「実物体の平坦な面」に含まれる状態(近似的に含まれるとみなされる場合を含む)となったとの条件(以下「条件2」という。)が満足される場合に実行するものとすることも、引用発明1から、当業者が容易に想到し得ることであり、そのような「仮想オブジェクト」の「表示」処理は、相違点3について検討した、「仮想オブジェクト」に対して所定の操作が行われるまでは「ドラッグ」操作による移動を中止することと併せると、本願発明の「前記所定の操作を行うまでは、前記仮想的なオブジェクトの前記移動操作による移動を中止する」、「貼り付けモードの処理」にほかならない。
イ また、引用発明1において、「ユーザが、空中に表示されていた仮想オブジェクトを平面142に指でドラッグする」際、「仮想オブジェクト」を「平面142に指で」正確に位置合わせすることは、上記第5の1(3)で述べたように困難であるところ、このような、オブジェクトを移動操作によりユーザが希望する位置に正確に位置合わせしたい場合に、「前記オブジェクトが所定の位置に達する状態となったときに、前記オブジェクトの前記移動操作による移動を中止する処理を行い、前記オブジェクトが所定の位置に達した状態とならないときに、前記オブジェクトの前記移動操作による移動を継続する処理を行うこと」は、上記第4の3(3)のとおり周知技術であり、引用発明1に当該周知技術を適用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
ここで、条件1及び条件2が満足される場合とは異なる場合として、条件1のみが満足されて、条件2が満足されない場合があり得ることは当業者には自明であり、特にその場合について「仮想オブジェクト」の移動を継続するものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
2 作用効果について
本願発明の作用効果は、引用発明1、引用発明2、引用文献1の記載事項及び周知技術から、当業者が容易に予測し得る程度のものである。
3 請求人の主張について
請求人は、令和7年7月10日提出の意見書において、本願発明は、貼り付けモードの処理を行う場合と、貼り付けモードの処理を行わずに、仮想的なオブジェクトの移動を継続する処理を行う場合とを、仮想的なオブジェクトの「全体」が平面に含まれる状態となるか、ならないかで、「前記仮想的なオブジェクトが前記認識された実空間内の対象物の平面に触れた状態と判断され、かつ、前記仮想的なオブジェクトの全体が前記平面に含まれる状態となったときに前記仮想的なオブジェクトを前記平面に貼付された位置に設定して、前記所定の操作を行うまでは、前記仮想的なオブジェクトの前記移動操作による移動を中止する前記貼り付けモードの処理を行い、前記仮想的なオブジェクトが前記認識された実空間内の対象物の平面に触れた状態と判断され、かつ、前記仮想的なオブジェクトの全体が前記平面に含まれる状態とならないときに、前記仮想的なオブジェクトの前記移動操作による移動を継続する処理を行う」と、明確に区別して規定しているのに対して、引用文献1には、本願発明の「前記仮想的なオブジェクトの全体が前記平面に含まれる状態とならないとき」に該当する場合に、貼り付け処理を行わずに移動を継続する処理を行うかどうかについて、記載も示唆もされていない旨主張する。
しかしながら、本願発明において上記のように規定されている点は、相違点4において引用発明1と相違するものの、当該相違点4については上記1(4)で検討したとおりであり、引用発明1、引用文献1の記載事項及び周知技術から容易に想到し得るものであるから、請求人の上記主張は採用できない。
4 小括
よって、本願発明は、引用発明1、引用発明2、引用文献1の記載事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1、引用発明2、引用文献1の記載事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-020248