特許拒絶査定不服審判
2024-016844
ドライアイの簡易検査方法
- 審判番号
- 2024-016844
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-162122
- 請求日
- 2024年10月23日
- 審決日
- 2026年01月05日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】学校法人順天堂
- 【請求人代理人】One ip弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 加々美 一恵
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 審判官 萩田 裕介
- 分類
- P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-162122「ドライアイの簡易検査方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 4月 7日出願公開、特開2022- 54872〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年9月28日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 6年 2月 2日付け 拒絶理由通知書
同年 4月15日 意見書・手続補正書の提出
同年 7月 9日付け 拒絶査定
同年10月23日 審判請求書・手続補正書の提出
以下では、令和6年7月9日付け拒絶査定を「原査定」という。
第2 令和6年10月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年10月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「 【請求項1】
スマホアプリにより測定されたMBI(秒)とJ-OSDIの12項目の合計スコアとを入手し、前記MBIが基準値よりも少なく、かつ前記合計スコアが基準値よりも大きいことを検出することによりドライアイを検出することを特徴とする、ドライアイの検出、診断に関するスマホアプリの作動方法であって、前記MBIの基準値が10~13秒であり、前記合計スコアの基準値が13点である作動方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和6年4月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
スマホアプリにより測定されたMBI(秒)とJ-OSDIの12項目の合計スコアとを入手し、前記MBIが基準値よりも少なく、かつ前記合計スコアが基準値よりも大きいことを検出することを特徴とする、ドライアイの検出、診断に関するスマホアプリの作動方法であって、前記MBIの基準値が10~13秒であり、前記合計スコアの基準値が13点である作動方法。」
2 補正の適否
上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記MBIが基準値よりも少なく、かつ前記合計スコアが基準値よりも大きいことを検出すること」について、当該「検出すること」により「ドライアイを検出する」ことを限定し、「前記MBIが基準値よりも少なく、かつ前記合計スコアが基準値よりも大きいことを検出することによりドライアイを検出すること」としたものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用され、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「横山香織、“まばたきを12秒間我慢できないとドライアイの可能性”、[online]、平成30年10月12日、QLifePro、[令和5年1月24日検索]、インターネット<URL:https://www.qlifepro.com/news/20181012/blink-and-dry-eye.html>」(以下「引用文献1」という。)には次の記載がある。(下線は当審において付与した。以下同様。)
a 「ドライアイのセルフチェック、最大開瞼時間の有用性を検証
順天堂大学は10月10日、ドライアイ患者では最大開瞼時間が有意に低下しており、涙液層破壊時間と正の相関が認められたと発表した。この研究は、同大医院眼科の村上晶教授、猪俣武範助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
ドライアイは日本に2000万人、世界に10億人以上いると推測される最も多い眼疾患。ドライアイの原因は、加齢、ストレス、デジタル機器の使用時間の増加などがあり、ドライアイは今後も増加すると考えられている。
研究グループは、最大開瞼時間(まばたきをできるだけ我慢できる時間)のドライアイのスクリーニング検査としての有用性と、新ドライアイ診断基準(2016年)における最大開瞼時間のカットオフ値の設定のための検証を行った。
感度82.5%、特異度51.0%でドライアイの疑い
その結果、最大開瞼時間は、ドライアイの診断で必須の検査である涙液層破壊時間と正の相関を示 し、ドライアイ患者では有意に低下していることが判明。最大開瞼時間が12.4秒以下の場合は、感度82.5%、特異度51.0%でドライアイを疑う可能性が高いことが示されたという。
今回の研究により、最大開瞼時間がドライアイの簡易スクリーンングとしての有用性が明らかになった。これにより、これまでドライアイと診断されないまま、ドライアイ症状でQOLや仕事の効率が低下していた人々に対し、セルフチェックの結果をもとにしたドライアイの啓蒙と眼科への受診を喚起することで、ドライアイの重症化を未然に防ぐことが期待される。
今後、研究グループは今回の研究成果をもとに、2016年11月にリリースしたiPhone用アプリ「ドライアイリズム」のまばたき測定機能の向上を検討。同アプリに搭載されているドライアイ疾患特異的質問紙票と組み合わせることで、より感度の高いドライアイのスクリーニングを行うことができるようになるとしている。(横山香織)」
上記aの記載事項から、以下、bの事項が導かれる。
b 引用文献1には、「研究グループは、最大開瞼時間(まばたきをできるだけ我慢できる時間)のドライアイのスクリーニング検査としての有用性と、新ドライアイ診断基準(2016年)における最大開瞼時間のカットオフ値の設定のための検証を行った。」と記載されているから、引用文献1には、最大開瞼時間によりドライアイのスクリーニング検査を行う方法が記載されているといえる。
また、引用文献1の「より感度の高いドライアイのスクリーニングを行う」との記載における、「スクリーニング」は、引用文献1に記載の「スクリーニング検査」と同じものを意味することは、明らかである。よって、引用文献1には、より感度の高いドライアイのスクリーニング検査を行うことが記載されているといえる。
(イ)引用文献1に記載された発明
上記(ア)aの記載事項及びbの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「最大開瞼時間によりドライアイのスクリーニング検査を行う方法であって、最大開瞼時間が12.4秒以下の場合はドライアイを疑う可能性が高いことが示され、iPhone用アプリ「ドライアイリズム」のまばたき測定機能と、同アプリに搭載されているドライアイ疾患特異的質問紙票と組み合わせることで、より感度の高いドライアイのスクリーニング検査を行う方法。」
イ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用され、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「Inomata T,Risk Factors for Severe Dry Eye Disease: Crowdsourced Research Using DryEyeRhythm,Ophthalmology,2019年05月,Vol.126, No.5,pp.766-768」(以下「引用文献2」という。)には次の記載がある(リファレンスを示す上付き文字については省略した)。また、原文の摘記の後に当審による日本語訳を示す。
a 「DryEyeRhythm was released in the Apple App Store in Japan
on November 2, 2016, and in the United States in April 2018.」(第766頁右上欄第7~8行)
(DryEyeRhythmは、2016年11月2日に日本で、2018年4月に米国でApple App Storeでリリースされた。)
b 「The Ocular Surface Disease Index (OSDI) questionnaire was
incorporated in DryEyeRhythm to ensure the study’s validity. The
OSDI total score defined symptom severity, with scores of 0 to 12
representing healthy eyes; 13 to 22 representing mild DED; 23 to
32 representing moderate DED; and 33 to 100 representing severe
DED. The OSDI measurements obtained using DryEyeRhythm
had good validity compared with those obtained using the paperbased
questionnaire (Fig S1, available at www.aaojournal.org).」(第767頁左欄第4~11行)
(研究の妥当性を確保するため、眼表面疾患指数(OSDI)質問票がDryEyeRhythmに組み込まれた。OSDI合計スコアは症状の重症度を定義し、0~12は健常眼、13~22は軽度DED、23~32は中等度DED、33~100は重度DEDを示す。DryEyeRhythmを用いて得られたOSDI測定値は、紙ベースの質問票を用いて得られた測定値と比較して良好な妥当性を示した(図S1、www.aaojournal.orgで入手可能)。)
c 「The OSDI is suitable for DED screening because of its sensitivity; however, it may contain false-positives because of its moderate specificity, indicating the possibility of overestimating the DED population.」(第767頁右欄第5~8行)
(OSDIは感度が高いため、DEDスクリーニングに適している。しかしながら、特異度が中程度であるため、偽陽性が含まれる可能性があり、DED患者数を過大評価する可能性がある。)
(イ)引用文献2に記載された事項
上記(ア)a~cの記載事項を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「Apple App StoreでリリースされたDryEyeRhythmに眼表面疾患指数(OSDI)質問票が組み込まれており、DryEyeRhythmを用いて得られたOSDI合計スコアは症状の重症度を定義し、0~12は健常眼、13~22は軽度DED、23~32は中等度DED、33~100は重度DEDを示すこと。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「iPhone用アプリ「ドライアイリズム」」は本件補正発明の「スマホアプリ」に相当する。また、引用発明において、「ドライアイのスクリーニング検査を行う」ことは、ドライアイの検出、診断に関するものといえる。
引用発明において、「iPhone用アプリ「ドライアイリズム」のまばたき測定機能と、同アプリに搭載されているドライアイ疾患特異的質問紙票と組み合わせることで、より感度の高いドライアイのスクリーニングを行う」際には、「iPhone用アプリ「ドライアイリズム」」の作動を伴うことは明らかである。
よって、引用発明の「iPhone用アプリ「ドライアイリズム」のまばたき測定機能と、同アプリに搭載されているドライアイ疾患特異的質問紙票と組み合わせることで、より感度の高いドライアイのスクリーニング検査を行う方法」は、本件補正発明の「ドライアイの検出、診断に関するスマホアプリの作動方法」に相当する。
イ 本件補正発明における「MBI」は、本願の発明の詳細な説明、段落【0007】に「最大開瞼時間(maximum blimk interval(以下、MBIという))(秒)」と記載されていることを参酌すると、「最大開瞼時間」と同義であるといえる。よって、引用発明の「最大開瞼時間」は本件補正発明の「MBI(秒)」に相当する。
引用発明の「12.4秒」は本件補正発明の「前記MBI」の「基準値」に相当し、引用発明の「最大開瞼時間が12.4秒以下の場合」は、本件補正発明の「前記MBIが基準値よりも少な」い場合に相当する。また、引用発明の「12.4秒」は、10~13秒の範囲にあるといえる。
引用発明において、「iPhone用アプリ「ドライアイリズム」のまばたき測定機能」が、「最大開瞼時間」を測定するものであることは明らかであるから、引用発明において、「iPhone用アプリ「ドライアイリズム」のまばたき測定機能と、同アプリに搭載されているドライアイ疾患特異的質問紙票と組み合わせることで、より感度の高いドライアイのスクリーニングを行う」際の「最大開瞼時間」は、本件補正発明の「スマホアプリにより測定されたMBI(秒)」に相当する。
引用発明において、「ドライアイを疑う可能性が高いことが示さ」れることは、本件補正発明において、「ドライアイを検出する」ことに相当する。
よって、引用発明において、「最大開瞼時間が12.4秒以下の場合はドライアイを疑う可能性が高いことが示され」ることは、本件補正発明において、「スマホアプリにより測定されたMBI(秒)」「が基準値よりも少な」い「ことを検出することによりドライアイを検出する」ことであって、「前記MBIの基準値が10~13秒であ」ることに相当する。
ウ 本件補正発明における「J-OSDI」は、本願の発明の詳細な説明、段落【0006】に「以下ドライアイ疾患特異的質問紙票である日本語版Ocular Surface Disease Index(以下、J-OSDIという)」と記載されていることを参酌すると、「ドライアイ疾患特異的質問紙票」すなわち「OSDI」を日本語にしたものといえる。よって、引用発明の「ドライアイ疾患特異的質問紙票」は、本件補正発明の「J-OSDI」と、「OSDI」である点で共通する。そして、引用発明の「ドライアイ疾患特異的質問紙票」が、それを日本語にしたものであるJ-OSDIと同様に12項目の質問を有することは、自明である。
また、引用発明において、「iPhone用アプリ「ドライアイリズム」のまばたき測定機能と、同アプリに搭載されているドライアイ疾患特異的質問紙票と組み合わせることで、より感度の高いドライアイのスクリーニング検査を行う」際には、「同アプリに搭載されているドライアイ疾患特異的質問紙票」の12項目の合計スコアを入手し、それを「ドライアイのスクリーニング検査」に用いることは、自明である。
エ 一致点、相違点
上記ア~ウのとおりであるから、本件補正発明と引用発明とは、下記(ア)の点で一致し、下記(イ)~(ウ)の点で相違する。
(ア)一致点
「スマホアプリにより測定されたMBI(秒)とJ-OSDIの12項目の合計スコアとを入手し、前記MBIが基準値よりも少なことによりドライアイを検出するドライアイの検出、診断に関するスマホアプリの作動方法であって、前記MBIの基準値が10~13秒である作動方法。」
(イ)相違点1
本件補正発明は、入手する12項目の合計スコアについて、「J-OSDI」のものと特定されているのに対し、引用発明の「iPhone用アプリ「ドライアイリズム」」「に搭載されているドライアイ疾患特異的質問紙票」すなわちOSDIは、日本語の「J-OSDI」であるとは特定されていない点。
(ウ)相違点2
本件補正発明は、「前記MBIが基準値よりも少なく、かつ前記合計スコアが基準値よりも大きいことを検出することによりドライアイを検出」し、「前記合計スコアの基準値が13点である」と特定されているのに対し、引用発明は、「iPhone用アプリ「ドライアイリズム」のまばたき測定機能と、同アプリに搭載されているドライアイ疾患特異的質問紙票と組み合わせることで、より感度の高いドライアイのスクリーニング検査を行う」と特定されているものの、「ドライアイ疾患特異的質問紙票」のスコアをドライアイの検出にどのように組み合わせて用いるのか特定されていない点。
(4)判断
ア 相違点について
(ア)相違点1
日本人を利用者として想定するアプリにおいて、その記載を日本語で行うことは、一般的に行われていることであるから、引用発明において、「iPhone用アプリ「ドライアイリズム」」「に搭載されているドライアイ疾患特異的質問紙票」を日本語により記載されたJ-OSDIとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ)相違点2
a 引用文献2記載事項の「Apple App StoreでリリースされたDryEyeRhythm」は本件補正発明の「スマホアプリ」に相当する。また、OSDIが12項目であることは明らかであるから、引用文献2記載事項の「DryEyeRhythmを用いて得られたOSDI合計スコア」は本件補正発明の「スマホアプリにより測定された」「OSDIの12項目の合計スコア」に相当する。
また、引用文献2記載事項は、「OSDI合計スコアは症状の重症度を定義し、0~12は健常眼、13~22は軽度DED、23~32は中等度DED、33~100は重度DEDを示す」ものであるから、「健常眼」と「DED」すなわちドライアイとの境界となる「13」のスコアは、基準値であるといえる。
b 引用発明と引用文献2記載事項とは、OSDI質問票が組み込まれたスマホアプリを用いてドライアイの検査を行うものである点で共通するものである。
そして、引用発明において、「iPhone用アプリ「ドライアイリズム」のまばたき測定機能と、同アプリに搭載されているドライアイ疾患特異的質問紙票と組み合わせることで、より感度の高いドライアイのスクリーニング検査を行う」際に、「ドライアイ疾患特異的質問紙票」を用いた判断の基準値が必要なことは、当業者にとって自明であるから、当該基準値を、引用文献2記載事項を参酌して13とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
c 2つ以上の検査手法を用いて疾患の検査を行う際に、2つの検査手法において、いずれの検査結果も疾患であることを示す場合に疾患であることを検出したと判定すること、及び、いずれかの検査結果が疾患であることを示す場合に疾患であることを検出したと判定することは、共に慣用されている技術にすぎず、どちらを選択するかは、当該検査の精度や、検査の目的等に応じて、当業者が適宜選択し得るものといえる。
そして、引用文献2には、「OSDIは感度が高いため、DEDスクリーニングに適している。しかしながら、特異度が中程度であるため、偽陽性が含まれる可能性があり、DED患者数を過大評価する可能性がある。」との記載があり、OSDIによる検査は偽陽性が含まれやすく、それのみでは誤ってDEDすなわちドライアイと判定されやすいことが開示されていることを考慮すれば、引用文献1には、「より感度の高いドライアイのスクリーニングを行う」との記載があったとしても、引用発明において、確実に陽性であることを検出することを優先し、「iPhone用アプリ「ドライアイリズム」のまばたき測定機能と、同アプリに搭載されているドライアイ疾患特異的質問紙票と組み合わせる」態様として、「最大開瞼時間が12.4秒以下の場合」かつ「ドライアイ疾患特異的質問紙票」による合計スコアが基準値よりも大きいことを検出することで、ドライアイを検出する構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
d 以上の通り、引用発明において、引用文献2記載事項に基づき、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 効果について
本件補正発明により奏される効果も、引用発明及び引用文献2記載事項から当業者が予期し得るものであり、格別顕著なものではない。
ウ 請求人の主張について
請求人は、令和6年10月23日提出の審判請求書において、
「引用文献1には、MBIが12.4秒以下であることでドライアイを疑うことが開示され、引用文献2には、OSDIの合計スコアが13点以上で軽度~重度のドライアイを疑うことが開示されており、拒絶理由通知書では、「いずれも同じスマートホンアプリを用いて、ドライアイを診断することを課題としている」ことから「引用文献1及び2に開示された事項に基づいて、スマートホンアプリによりMBIとOSDIのトータルスコア・・・とを測定して、これら2つの指標に基づいてドライアイを検査することは、当業者であれば容易」と認定されていた。
しかしながら、引用文献1には、MBIとOSDIとをどのように組み合わせるかについては明記されていない。引用文献1には、「同アプリに搭載されているドライアイ疾患特異的質問紙票と組み合わせることで、より感度の高いドライアイのスクリーニングを行うことができる」(下線追加)との示唆が存在しているところ、感度を上げるのであれば、MBIによる判定で陽性検出された者と、OSDIを用いた判定で陽性検出された者との両方を陽性と判定することになるのが自然である。
したがって、引用文献1に引用文献2を組み合わせようとした場合、当業者であれば、MBIが12.4秒以下であるか、OSDIの合計スコアが13点以上であるかのいずれかによりドライアイの疑いを検出することになることは自明である。」
との主張をしているので、検討する。
上記ア(イ)cで示したとおり、2つ以上の検査手法を用いて疾患の検査を行う際に、2つの検査手法において、いずれの検査結果も疾患であることを示す場合に疾患であることを検出したと判定すること、及び、いずれかの検査結果が疾患であることを示す場合に疾患であることを検出したと判定することは、共に慣用されている技術にすぎず、どちらを選択するかは、当該検査の精度や、検査の目的等に応じて、当業者が適宜選択し得るものといえ、また、引用文献2には、OSDIによる検査は偽陽性が含まれやすく、それのみでは誤ってDEDすなわちドライアイと判定されやすい旨が開示されていることを考慮すれば、引用文献1には、「より感度の高いドライアイのスクリーニングを行う」との記載があったとしても、引用発明において、確実に陽性であることを検出することを優先し、最大開瞼時間による結果とドライアイ疾患特異的質問紙票による結果の両方においてドライアイと判定された場合に、ドライアイと判定する態様を選択することは、当業者が容易になし得たことであるといえる。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。
(5)小括
以上より、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正の却下の決定についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和6年4月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に示した請求項1の記載により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
理由1(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:横山香織、“まばたきを12秒間我慢できないとドライアイの可能性”、[online]、平成30年10月12日、QLifePro、[令和5年1月24日検索]、インターネット<URL:https://www.qlifepro.com/news/20181012/blink-and-dry-eye.html>
引用文献2:Inomata T,Risk Factors for Severe Dry Eye Disease: Crowdsourced Research Using DryEyeRhythm,Ophthalmology,2019年05月,Vol.126, No.5,pp.766-768
3 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2の記載事項、引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献2記載事項は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
(1)本願発明は、上記第2の[理由]2で独立特許要件の検討をした本件補正発明における「前記MBIが基準値よりも少なく、かつ前記合計スコアが基準値よりも大きいことを検出することによりドライアイを検出すること」との事項に関して、「ドライアイを検出する」ことであるとの発明特定事項を削除して拡張し、「前記MBIが基準値よりも少なく、かつ前記合計スコアが基準値よりも大きいことを検出すること」としたものである。
(2)本願発明と引用発明との対比は、上記第2の[理由]2(3)で示したとおりである。
そして、本願発明は、本件補正発明から上記(1)で示した発明特定事項を削除して拡張したものであるから、上記第2の[理由]2(4)で検討したのと同様の理由により、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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