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特許拒絶査定不服審判

2024-015790

体組成分析装置のデータ統合システム

審判番号
2024-015790
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2023-005600外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年10月02日
審決日
2025年09月01日
公報発行日
2026年02月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .537-Z (A61B) / P18 .536-Z (A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法36条6項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2023- 5600「体組成分析装置のデータ統合システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 8月 9日出願公開、特開2023-110874〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和5年1月18日(パリ条約による優先権主張 2022年1月28日(TW)台湾)を出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 5年12月 5日付け 拒絶理由通知書 令和 6年 3月 7日 意見書・手続補正書 同年 6月 6日付け 拒絶査定 同年10月 2日 審判請求書・手続補正書 以下では、令和6年6月6日付け拒絶査定を「原査定」という。 第2 本願発明 1 本願発明について 本願の請求項1~5に係る発明は、令和6年10月2日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次に特定されるとおりである。 「 【請求項1】 測定対象の第一体組成データを検出する高精度体組成分析装置と、 前記測定対象の第二体組成データを検出する低精度体組成分析装置と、 前記高精度体組成分析装置および前記低精度体組成分析装置に電気的に接続されて前記第一体組成データおよび前記第二体組成データを読み取る演算装置と、を備え、 前記演算装置はデータベースおよび演算ユニットを有し、 前記演算装置は前記第一体組成データおよび前記第二体組成データを前記データベースに保存し、前記演算ユニットによって前記第一体組成データを標準値にし、前記第一体組成データと前記第二体組成データとの間の偏差値を計算し、前記偏差値に基づいて前記第一体組成データまたは前記第二体組成データを修正し、修正済第二体組成データを表示し、 前記第一体組成データ及び前記第二体組成データは、いずれも骨格筋量であり、 前記第一体組成データ及び前記第二体組成データが複数である場合、前記修正済第二体組成データは、 [図:0001431824000001.jpg] で得られ、 [図:0001431824000002.jpg] は、前記修正済第二体組成データであり、 [図:0001431824000003.jpg] 及び [図:0001431824000004.jpg] は、重み付け係数であり、 σA及びσBは、それぞれ前記第一体組成データ及び前記第二体組成データの測定標準偏差であり、σAはσBよりはるかに小さく、 BiasBAは、前記第一体組成データと前記第二体組成データの平均測定偏差であり、平均測定偏差は、複数の偏差値の合計を平均することによって得られ、平均測定偏差の初期デフォルト値はゼロであり、 前記第一体組成データが1つであり、σAがゼロである場合、かつ、前記第二体組成データが複数であり、σBがゼロでない場合、 前記修正済第二体組成データは、 [図:0001431824000005.jpg] で得られ、 [図:0001431824000006.jpg] で得られるデータは、 [図:0001431824000007.jpg] で得られるデータに近似し、 xA及びxBは、それぞれ前記第一体組成データ及び前記第二体組成データである、データ統合システム。」 2 本願明細書について 本願明細書及び図面(以下、「本願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「【0004】 家庭用体組成分析装置の主要目的は日常生活で使用できることになるので軽量・薄型デザインを採用する。初期の製品の多くは4極板のデザインおよび単一周波数 50kHz のACを採用することで両足間のインピーダンス値を測定し、両足のインピーダンス値に基づいて全身の体組成を評価する方式であった。しかし、足は筋肉の割合がかなり高く、体重比の最も大きい躯幹は測定範囲外であるため、高レベルの専門用機器と比べて家庭用機器は測定結果の精度が低い。多くの研究報告により、家庭用機器は大部分の測定結果が脂肪量を比較的低く評価し、筋肉量を比較的高く評価し、僅かな部分の測定結果が脂肪量を高く評価することが判明した。それは異なるグループによって測定結果が異なるからである。一般的に言えば、家庭用機器は推定値の誤差が専門用機器より大きく、また用途に応じて設計されたことが原因でインピーダンス測定値の標準偏差が大きい。つまり、家庭用機器は測定結果に偏差があり、正確性が専門用機器に及ばない。それらの体脂肪または筋肉量の測定結果にも関わらず、家庭用機器の全体の測定結果は専門用機器の測定結果との相関性が高いことを示す。言い換えれば、家庭用機器で持続的に観察して求める体組成パラメータは参考に足りると考えられる。また一部分の家庭用機器は8極板および二周波の測定技術を採用するため、測定結果がさらに高レベルの専門用機器の測定結果に近づくようになるが、価額は比較的高く、家庭用機器の価額と専門用機器の価額との間であるため、普及率は低レベルの家庭用機器のほど高くない。」 (2)「【0015】 図1に示すように、本実施形態において、高精度体組成分析装置20はDXA装置である。低精度体組成分析装置30は家庭向けBIA装置である。演算装置はパソコンである。図4に示すように、別の実施形態において、高精度体組成分析装置20はCT装置、高レベルの専門用体組成分析装置またはMRI(図中未表示)である。低精度体組成分析装置30は別の家庭向けBIA装置(例えば手持ち式または着用式家庭用機器)である。演算装置はスマートフォンまたはタブレット(図中未表示)である。つまり、高精度体組成分析装置20および演算装置40は本実施形態に限定されるものではない。別の実施形態において、高精度体組成分析装置20および低精度体組成分析装置30は複数であるため、体組成分析装置のデータ統合システム10は異なる測定対象を測定し、検出した複数の測定対象の第一体組成データおよび第二体組成データをデータベース41に保存し、続いて演算ユニット43によって計算する。つまり、高精度体組成分析装置20、低精度体組成分析装置30および測定対象の人数は本実施形態に限定されるものではない。」 (3)「【0018】 【数1】 [図:0001431824000008.jpg] 【0019】 【数2】 [図:0001431824000009.jpg] 【0020】 【数3】 [図:0001431824000010.jpg] 【0021】 【数4】 [図:0001431824000011.jpg] 【0022】 【数5】 [図:0001431824000012.jpg] 【0023】 本実施形態は骨格筋量(Skeletal Muscle Mass;SMM)に対する第一体組成データおよび第二体組成データを例としてあげる。本実施形態において、重さはW1およびW2で表示される。第一体組成データの測定標準偏差は"σ A"で表示される。第二体組成データの測定標準偏差は"σ B"で表示される。修正済第二体組成データは [図:0001431824000013.jpg] で表示される。第一体組成データおよび第二体組成データの平均測定偏差は"Bias BA"で表示される。修正済第二体組成データ [図:0001431824000014.jpg] は数1によって算出される。重さW1は数2によって算出される。重さW2は数3によって算出される。第一体組成データの測定標準偏差"σ A"は第二体組成データの測定標準偏差 [図:0001431824000015.jpg] よりかなり小さい。第一体組成データおよび第二体組成データの平均測定偏差"Bias BA"の初期値が0と設定され、第一体組成データの測定標準偏差"σ A"および第二体組成データの測定標準偏差"σ B"が0ではない場合、修正済第二体組成データ [図:0001431824000016.jpg] は数4によって算出され、算出結果が数5に近い。 【0024】 別の実施形態において、第一体組成データおよび第二体組成データはボディマス指数(BMI)、脂肪筋肉評価、肥満分析、内臓脂肪、体年齢または基礎代謝率などを参考にできる。本実施形態により掲示される式、論理および原理に基づいてそれに対応する数式を修正すればよい。つまり、第一体組成データおよび第二体組成データは本実施形態に限定されるものではない。 【0025】 本実施形態において、データ統合ユニット45はデータ判断論理453を有する。データ判断論理453は複数の第一体組成データおよび第二体組成データの測定時点を読み取り、二つずつ一組に分けて測定時点の順によって統計し、複数組のデータを作成する。複数組のデータが0であり、平均測定偏差がない場合には、平均測定偏差の設定値は0である。複数組のデータが1であり、平均測定偏差がない場合には、平均測定偏差は第一体組成データおよび第二体組成データの差である。複数組のデータが3以下である場合には、平均測定偏差は使用した数の多いデータに基づいて求められる。複数組のデータが3以上である場合には、平均測定偏差は重回帰分析または機械学習などの統計方法によって計算される。」 (4)「【0029】 図3に示すように、本発明による体組成分析装置のデータ統合システムにおいて、2020年12月20日に高精度体組成分析装置20で検出した測定対象の第一体組成データは黒色正方形で表示される。2020年12月23日、26日、27日などに検出した測定対象の第二体組成データは黒色円形で表示される。数式に基づいて計算し、修正した後の第二体組成データは黒星で表示される。2021年1月14日に検出した第二体組成データおよび修正済第二体組成データにより、測定対象は低精度体組成分析装置30で検出した骨格筋量が約31.7であることが判明した。それに対し、本発明の技術により修正したうえで検出した骨格筋量はDXAで検出した骨格筋量に近い29.7である。」 (5)「 [図:0001431824000017.jpg] 」 第3 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、請求項1に係る発明に関連する拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 ・平均測定偏差について、請求項1には、「BiasBAは、前記第一体組成データと前記第二体組成データの平均測定偏差であり」と記載されているが、当該値の意味が不明瞭である。 ・修正済第二組成データについて、請求項1には、 「 σAがゼロでσBがゼロでない場合、 [図:0001431824000018.jpg] は、 [図:0001431824000019.jpg] に近似し」 と記載されているが、意味が理解できない。特に、式が式に近似することが、何を意味するのか理解できない。 また、σAがゼロでσBがゼロでない場合には、 [図:0001431824000020.jpg] の式は、 [図:0001431824000021.jpg] となることは自明である。上記記載が、それ以外の修正済第二組成データの求め方を意図しているのかどうか、不明瞭である。 原査定においては、少なくとも上記点を指摘したうえで、請求項1に係る発明は、明確でないとしている。 また、少なくとも上記指摘した点については、発明の詳細な説明の記載を踏まえても理解することができないことから、請求項1に記載された発明を実施することもできないため、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないとしている。 第4 当審の判断 1 平均測定偏差について 本願発明における、「BiasBAは、前記第一体組成データと前記第二体組成データの平均測定偏差であり、平均測定偏差は、複数の偏差値の合計を平均することによって得られ、平均測定偏差の初期デフォルト値はゼロであり、」との記載について検討する。 (1)明確性について ア 上記記載においては、「BiasBAは、前記第一体組成データと前記第二体組成データの平均測定偏差であ」り、かつ、「平均測定偏差は、複数の偏差値の合計を平均することによって得られ」るものであると特定されている。 そして、前者の「前記第一体組成データと前記第二体組成データの平均測定偏差であ」るとの記載に基づけば、「BiasBA」は、「第一体組成データ」と「第二体組成データ」の「測定」値の「偏差」、つまり差の「平均」を示す値であると解される。 他方で、後者の「平均測定偏差は、複数の偏差値の合計を平均することによって得られ」との記載においては、「BiasBA」である「平均測定偏差」は、「複数の偏差値の合計を平均することによって得られ」たものとなっており、「偏差値」(測定偏差)の「平均」ではなく、「偏差値の合計」の「平均」となっている。 そうすると、両者の記載で矛盾が生じることとなり、意味が不明確である。 イ また、「BiasBA」である「平均測定偏差」について、後者の記載においては、「複数の偏差値の合計を平均する」ものとなっているから、「平均する」対象となる「偏差値の合計」は、複数存在するものと解される。 そして、「第一体組成データ」と「第二体組成データ」の「偏差値」が複数ある場合において、各「偏差値の合計」を算出するにあたり、複数の「偏差値」のうち、いずれを選択して各「偏差値の合計」を計算し、どのようにして「平均」することを意味するのかわからない。同じ「偏差値」を用いた場合であっても、各「偏差値の合計」の数をどのように設定するかによって、「平均測定偏差」の値が変動することとなり、不明確である。 ウ(ア)本願発明における「BiasBAは、前記第一体組成データと前記第二体組成データの平均測定偏差であり、平均測定偏差は、複数の偏差値の合計を平均することによって得られ」との記載において、上記ア及びイで述べたとおり、「合計を平均」するとの記載は不明確であるから、上記記載が仮に「BiasBAは、前記第一体組成データと前記第二体組成データの平均測定偏差であり、平均測定偏差は、複数の偏差値を平均することによって得られ」ると解することができるかどうかついて検討する。 (イ)上記第2、2、(3)で摘記した段落【0025】においては、「複数の第一体組成データおよび第二体組成データ」を「二つずつ一組に分けて」「複数組のデータを作成」し、「複数組のデータ」から「平均測定偏差」を計算する旨が記載されているが、「複数組のデータ」から「平均測定偏差」を計算することについては、 「複数組のデータが0であり、平均測定偏差がない場合には、平均測定偏差の設定値は0である。複数組のデータが1であり、平均測定偏差がない場合には、平均測定偏差は第一体組成データおよび第二体組成データの差である。複数組のデータが3以下である場合には、平均測定偏差は使用した数の多いデータに基づいて求められる。複数組のデータが3以上である場合には、平均測定偏差は重回帰分析または機械学習などの統計方法によって計算される。」 とされており、「複数組のデータが0」である場合、「複数組のデータが1」である場合、「複数組のデータが3以下である場合」、「複数組のデータが3以上である場合」のいずれについても、「平均測定偏差」は、「複数組のデータ」における「第一体組成データ」と「第二体組成データ」との差を平均したものとはなっていない。 また、発明の詳細な説明には、他にも、「平均測定偏差は、複数の偏差値を平均することによって得られ」ることに対応する記載はないから、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「BiasBAは、前記第一体組成データと前記第二体組成データの平均測定偏差であり、平均測定偏差は、複数の偏差値の合計を平均することによって得られ、」との記載を、「BiasBAは、前記第一体組成データと前記第二体組成データの平均測定偏差であり、平均測定偏差は、複数の偏差値を平均することによって得られ」ると解することができるともいえない。 エ 以上より、本願発明は明確でない。 (2)実施可能要件について ア 上記第2、2、(3)で摘記した段落【0025】には、「複数の第一体組成データおよび第二体組成データ」を「二つずつ一組に分けて」「複数組のデータを作成」し、「複数組のデータ」から「平均測定偏差」を計算する旨が記載されているが、各「複数組のデータ」における、「第一体組成データ」と「第二体組成データ」の偏差について、何らかの合計を算出し、さらに、当該合計の平均を算出する旨は記載されていないし、どのようにして偏差の合計を算出し、どのようにしてそのような合計を複数算出した上で、その平均を算出するのか、段落【0025】の記載から当業者にとって自明であるともいえない。 また、発明の詳細な説明には、段落【0025】以外に、「平均測定偏差」の具体的な算出方法についての記載はないから、この出願の発明の詳細な説明は、「前記第一体組成データと前記第二体組成データの平均測定偏差であり、平均測定偏差は、複数の偏差値の合計を平均することによって得られ」るものである「BiasBA」をどのように算出すればよいのか、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 イ 上記第2、2、(3)で摘記した段落【0025】には、「複数組のデータが3以下である場合には、平均測定偏差は使用した数の多いデータに基づいて求められる。」と記載されているが、上記記載において、「使用した数」とは、何に使用した数を意味するのか記載されていない。そして、「データ」は、「複数組」を形成する「第一体組成データ」及び「第二体組成データ」であって、単に測定した結果であるから、何に使用した数を意味するのか、当業者にとって自明であるとはいえない。 また、段落【0025】には、「複数組のデータが3以上である場合には、平均測定偏差は重回帰分析または機械学習などの統計方法によって計算される。」と記載されている。しかし、重回帰分析は、2つの変数が存在することを必須の要件とするものであり、機械学習は、一般にコンピュータが大量のデータを分析してパターンや規則性を見つけ出すことで予測を行うものであるところ、「平均測定偏差」の算出は、そのような要件に当てはまるものでない。そうすると、重回帰分析や機械学習により2つの値の差に関する何らかの平均値を求めることは、技術常識であるとはいえないから、上記記載において、「3以上」の「複数組のデータ」、すなわち、「3以上」の「第一体組成データ」と「第二体組成データ」との組から、具体的にどのような「重回帰分析または機械学習」を行うことで、「平均測定偏差」を算出することができるのか、当業者にとって自明であるとはいえない。 よって、段落【0025】の上記記載を参酌しても、「複数組のデータが3以下である場合」、「複数組のデータが3以上である場合」に、どのようにして「平均測定偏差」を算出することができるのか、把握することができない。 また、発明の詳細な説明には、段落【0025】以外に、平均測定偏差の具体的な算出の仕方についての記載はないから、発明の詳細な説明には、「前記第一体組成データと前記第二体組成データの平均測定偏差であ」る「BiasBA」をどのように算出すればよいのか、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 ウ 以上より、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 (3)審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書において、 「明細書の記載に基づき、新請求項1の「平均測定偏差」の値の意味について説明致します。第一体組成データから第二体組成データを減算して偏差値を求め、複数の偏差値を加算して平均することで平均測定偏差(BiasBA)を求めます。 図3に示すように、2020年12月20日に第一体組成データが検出され、その後、2020年12月23日、2020年12月26日、2020年12月27日など、複数の第二体組成データが順次検出されています。上記から、2020年12月20日に検出された第一体組成データを、2020年12月23日以降に検出された各第二体組成データから減算することで複数の偏差値が得られていることが分かります。その後、これらの複数の偏差値を加算して平均することで平均測定偏差(BiasBA)が算出されます。 第一体組成データが複数であり、第二体組成データも複数である場合、測定時刻が近い第一体組成データと第二体組成データを減算して偏差値を求めます。次に、これらの複数の偏差値を合計して平均することで、平均測定偏差(BiasBA)を算出します。 よって、明細書の上記記載によれば、平均測定偏差(BiasBA)の値の意味は、明瞭であり、実施可能要件違反の拒絶理由は解消したものと思料致します。」 と主張しているので、検討する。 上記第2、2、(3)で摘記した段落【0025】には、「複数の第一体組成データおよび第二体組成データ」について、「二つずつ一組に分けて」「複数組のデータを作成」し、「複数組のデータ」を用いて「平均測定偏差の設定値」を算出する旨が記載されているが、当該記載の態様においては、一つの第一組成データから、複数の第二組成データのそれぞれを減算することで、複数の偏差値を得るものとはなっていない。また、発明の詳細な説明には、他に、第一体組成データと第二体組成データとを一つずつ組として偏差を得るものではなく、一つの第一組成データと複数の第二組成データのそれぞれから偏差を得ると解釈できる記載はないから、請求人の上記主張は発明の詳細な説明の記載に基づくものではなく、採用できない。 2 修正済第二データについて 請求項1における、以下の記載について検討する。 「前記第一体組成データが1つであり、σAがゼロである場合、かつ、前記第二体組成データが複数であり、σBがゼロでない場合、 前記修正済第二体組成データは、 [図:0001431824000022.jpg] で得られ、 [図:0001431824000023.jpg] で得られるデータは、 [図:0001431824000024.jpg] で得られるデータに近似し、」 (1)明確性について ア 上記 「前記修正済第二体組成データは、 [図:0001431824000025.jpg] で得られ」 るとの記載において、「=」が二つあるため、上記記載が「前記修正済第二体組成データ」を、「xA」または「xA―(xB―xA)」のどちらから得ることを意味するのかわからず、不明確である。 また、「xA―(xB―xA)」についても、「xA」となるので、いずれにしても、上記の式によって算出される「前記修正済第二体組成データ」は、「xA」の値となるといえる。 そして、本願発明には、「前記演算装置は・・・前記偏差値に基づいて前記第一体組成データまたは前記第二体組成データを修正し、修正済第二体組成データを表示し、」及び「xA及びxBは、それぞれ前記第一体組成データ及び前記第二体組成データである」との記載があるから、「修正済第二体組成データ」は「前記偏差値に基づいて前記第一体組成データまたは前記第二体組成データを修正」したものであり、「xA」は、「第一体組成データ」であるといえる。 そうすると、上記の式により算出される「修正済第二体組成データ」は、「xA」すなわち「第一体組成データ」の値そのものとなるところ、当該値は「前記偏差値に基づいて前記第一体組成データまたは前記第二体組成データを修正」したものとはいえないから、矛盾が生じ、意味が不明確である。 イ 上記 「前記修正済第二体組成データは、 [図:0001431824000026.jpg] で得られ、 [図:0001431824000027.jpg] で得られるデータは、 [図:0001431824000028.jpg] で得られるデータに近似し」 との記載において、「近似」するとは、両方の式で得られるデータがどのような状態であることを意味し、また、「近似し」との記載が本願発明をどのように限定することを意味するのかわからず、不明確である。 また、上記 [図:0001431824000029.jpg] との式において、「前記第一体組成データが1つであり、σAがゼロである場合」、「xA」と「xB-BiasBA」の値は必ずしも同じであるとはいえないところ、なぜ両者を「=」とすることができるのかわからず、意味が不明確である。 ウ 以上より、本願発明は明確でない。 (2)実施可能要件について ア 上記第2、2、(5)で示した図3においては、第一体組成データは一つであるところ、 [図:0001431824000030.jpg] との式により修正済第二体組成データを算出すると、修正済第二体組成データの値は常に第一体組成データの値と同じ値となるはずであるが、図3においてはそのようにはなっていない。 よって、発明の詳細な説明の記載及び図面は、 「前記第一体組成データが1つであり、σAがゼロである場合、かつ、前記第二体組成データが複数であり、σBがゼロでない場合、 前記修正済第二体組成データは、 [図:0001431824000031.jpg] で得られ、」 との記載と対応しないものとなっている。 また、段落【0023】における「数4によって算出され、算出結果が数5に近い」との記載、すなわち、本願発明における、 「得られるデータは、 [図:0001431824000032.jpg] で得られるデータに近似し、」 との記載に対応する何らかの事項により、図3のような結果が得られると解釈したとしても、数4が数5に近い(近似する)との事項を、具体的にどのように修正済第二体組成データの計算に用いるのか、発明の詳細な説明には記載されていないし、発明の詳細な説明の記載から当業者にとって自明であるともいえない。 以上より、発明の詳細な説明を参酌しても、本願発明における 「前記第一体組成データが1つであり、σAがゼロである場合、かつ、前記第二体組成データが複数であり、σBがゼロでない場合、 前記修正済第二体組成データは、 [図:0001431824000033.jpg] で得られ、 [図:0001431824000034.jpg] で得られるデータは、 [図:0001431824000035.jpg] で得られるデータに近似し、」 に対応する実施態様について、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、当業者が実施することができるとはいえない。 ウ 以上より、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 (3)審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書において、 「審判請求と同時に提出する手続補正書にて、明細書の段落0025の記載に基づいて、拒絶理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明を目的とする補正を行いました。よって、この補正は、新規事項の追加ではないと思料致します。 具体的には、 ・・・ との記載に補正したため、意味が理解可能となり、この点に関する明確性要件違反及び実施可能要件違反の拒絶理由は解消したものと思料致します。」 との主張をしているが、上記(1)、(2)で示した通り、依然として本願発明は明確ではないし、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、審判請求人の上記主張は採用できない。 3 測定標準偏差について 本願発明における、「σA及びσBは、それぞれ前記第一体組成データ及び前記第二体組成データの測定標準偏差であり、σAはσBよりはるかに小さく、」との記載について検討する。 (1)明確性について ア 上記記載では、「σA及びσB」は、「前記第一体組成データ及び前記第二体組成データの測定標準偏差」であるとされている。 また、上記第2、2、(2)で摘記した段落【0015】には、「つまり、高精度体組成分析装置20、低精度体組成分析装置30および測定対象の人数は本実施形態に限定されるものではない。」と記載されていることを参酌すると、本願発明における「第一体組成データ」及び「第二体組成データ」は、一人の測定対象者の測定データに限定されず複数の測定対象者の測定データである場合を含むものであり、また、一人の測定対象者の測定データについても、例えば図3における第二体組成データのように、異なる日時に測定した複数の測定データを含む場合があると認められる。 そして、そのように異なる測定対象者、異なる時間における複数の測定データからなる場合がある「第一体組成データ」及び「第二体組成データ」のうち、どのデータを用いて標準偏差を計算したものが「σA及びσB」となるのか把握することができず、不明確である。 イ 標準偏差は、データの散らばりの度合いを示す指標であり、上記第2、2、(1)で摘記した段落【0004】には、「一般的に言えば、家庭用機器は推定値の誤差が専門用機器より大きく、また用途に応じて設計されたことが原因でインピーダンス測定値の標準偏差が大きい。つまり、家庭用機器は測定結果に偏差があり、正確性が専門用機器に及ばない。」と記載されていることを参酌すれば、「前記第一体組成データ及び前記第二体組成データの測定標準偏差」である「σA及びσB」は、本願発明において特定されている「測定対象の第一体組成データを検出する高精度体組成分析装置」及び「前記測定対象の第二体組成データを検出する低精度体組成分析装置」の測定値の正確性を示す値であると認められる。 そして、複数の測定対象者について測定した体組成データの値、あるいは、同じ測定対象者であっても異なる時間に測定した体組成データの値は、測定対象者のその時の体組成の状態に応じてそれぞれ異なる値となることは自明であるから、全ての「第一体組成データ」及び「第二体組成データ」を用いて、それぞれ「σA及びσB」を求めたとしても、「高精度体組成分析装置」及び「低精度体組成分析装置」についての測定値の正確性のような、技術的に意味のある状態を示す値とはならないから、上記記載が、測定した全ての「第一体組成データ」及び「第二体組成データ」を用いて計算した「標準偏差」を「σA及びσB」とすることを意味すると解釈することはできない。 また、「第一体組成データ」又は「第二体組成データ」を、一人の測定対象者が同じ時に複数回取得し、その標準偏差を計算すれば、それは「高精度体組成分析装置」及び「低精度体組成分析装置」についての測定値の正確性を示す値となるといえるが、発明の詳細な説明には、「第一体組成データ」又は「第二体組成データ」を、一人の測定対象者が同じ日に複数回測定する旨の記載もないし、そのように測定することが技術常識であるともいえない。また、他に、技術的に意味のある「σA及びσB」を算出するための「第一体組成データ」及び「第二体組成データ」の選定の仕方は、当業者にとって自明であるとはいえない。 ウ したがって、本願発明の「σA及びσBは、それぞれ前記第一体組成データ及び前記第二体組成データの測定標準偏差であり、」との記載が、「σA及びσB」が、それぞれ複数あり得る「前記第一体組成データ及び前記第二体組成データ」のうちどのデータを用いて「標準偏差」を算出したものであることを意味するのかわからず、不明確である。 よって、本願発明は、明確でない。 (2)実施可能要件について ア 発明の詳細な説明には、複数の測定対象者について測定したデータ、あるいは、同じ測定対象者であっても異なる時間に測定したデータであり得る複数の「第一体組成データ」及び「第二体組成データ」のうち、どのデータを用いて「それぞれ第一体組成データ及び第二体組成データの測定標準偏差」である「σA及びσB」を算出するかについての記載はない。 そして、上記(1)イで示した通り、「前記第一体組成データ及び前記第二体組成データの測定標準偏差」である「σA及びσB」は、「高精度体組成分析装置」及び「低精度体組成分析装置」の測定値の正確性を示す値であると認められるところ、複数の「第一体組成データ」及び「第二体組成データ」を示す値のうち、どの値を用いて「σA及びσB」を求めれば、「高精度体組成分析装置」及び「低精度体組成分析装置」についての測定値の正確性を示す値を取得できるのか、発明の詳細な説明の記載から当業者にとって自明であるともいえない。 イ また、本願発明は、 「前記第一体組成データ及び前記第二体組成データが複数である場合、前記修正済第二体組成データは、 [図:0001431824000036.jpg] で得られ、 [図:0001431824000037.jpg] は、前記修正済第二体組成データであり、 [図:0001431824000038.jpg] 及び [図:0001431824000039.jpg] は、重み付け係数であり、」 と特定されているから、σA及びσBは、w1及びw2の算出に用いられ、さらに、当該w1、w2は、 [図:0001431824000040.jpg] との式により修正済第二体組成データを得るのに用いられるものといえる。 そして、w1とw2の比はσA及びσBそれぞれの2乗の比となり、また「σAはσBよりはるかに小さ」いものであるから、w1はw2に比べてはるかに大きい値となるといえる。また、w1とw2との和が1であることは、明らかである。 そうすると、上記の式により算出した修正済第二体組成データは、実質的にxAの値そのものとなり、その場合、修正済第二体組成データは、第二体組成データであるxBの値が反映されたものとはいえないし、また、修正済第二体組成データが、個人の体組成の変化を表すものとなるとはいえない。 また、「第一体組成データ」と「第二体組成データ」の二つの測定データの偏差の平均値である「BiasBA」を、一方の測定データである「第二体組成データ」の偏差値(散らばりの度合い)に基づいて重み付けすることの技術的意味も見出せず、そのような値に基づいて算出される「修正済第二体組成データ」が、ユーザーの個人の体組成の変化を正確に表すように「前記第一体組成データまたは前記第二体組成データを修正」した値となることが、技術常識であったとはいえない。 以上より、「σA」及び「σB」の値を求め、上記の式により「修正済第二体組成データ」を求めたとしても、それがユーザーの個人の体組成の変化を正確に表すように「前記第一体組成データまたは前記第二体組成データを修正」した値となることが、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、当業者が把握することができない。 ウ 以上より、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 第5 むすび 以上のとおり、本願は、請求項1に係る発明が明確ではないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。また、本願は、明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、そのほかの請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-015790

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