特許拒絶査定不服審判
2021-015109
吸引バルブ
- 審判番号
- 2021-015109
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-564412外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年11月05日
- 審決日
- 2022年07月26日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ユナイテッド ステイツ エンドスコピー グループ,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
- 分類
- P18 .536-WY (A61B) / P18 .537-WY (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第70条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-564412「吸引バルブ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月14日国際公開、WO2017/214300、令和元年7月4日国内公表、特表2019-518548、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1.手続の経緯
本願は、平成29年(2017年)6月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年6月7日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和3年3月3日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年6月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月1日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年11月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。
第2.補正却下の決定
1 補正の却下の決定の結論
本件補正を却下する。
2 補正の却下の決定の理由
(1)本件補正の内容
本件補正は、下記ア~オの各補正事項を含む。
ア 補正事項1
本件補正後の請求項1(以下、本件補正後の各請求項について、単に「請求項1」などという。)について、「フラット部」に関する特定事項を、本件補正前の
「前記フラット部は、前記軸部本体に形成され、かつ前記側方開口部から90°の位置に配設されており、前記軸部本体の前記底端部に至る流体連通路を有しており、」
というものから、
「前記フラット部は、前記軸部本体に形成され、前記軸部本体の前記底端部に至る流体連通路を有しており、・・・前記フラット部は、前記シール領域から90°の位置にある金型の分割線により画定された非シール領域である」
というものへ補正する。
イ 補正事項2
請求項1について、本件補正前の請求項1で特定される「軸部本体」に関し、その大きさや領域区分について、
「前記軸部本体の直径は、気密シールを確実に得るために正確に制御され、
前記軸部本体は、前記軸部本体の前記底端部と前記側方開口部との間に重要な領域を有し、」
なる特定事項を追加し、また、同じく本件補正前の請求項1で特定される「シール領域」について、前記追加された「軸部本体」の特定事項に関連付けて、
「前記シール領域は、前記軸部本体の前記重要な領域に設けられ」
なる特定事項を追加する補正。
ウ 補正事項3
「前記シール領域は、前記気密シールを確実にしかつ前記軸部本体の移動を容易にするリブを有することを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の吸引バルブ軸部。」なる請求項12を追加する補正。
エ 補正事項4
「前記シール領域は、前記気密シールを確実にしかつ前記軸部本体の移動を容易にするリブを有することを特徴とする請求項10に記載の吸引バルブ。」なる請求項13を追加する補正。
オ 補正事項5
「前記シール領域は、前記気密シールを確実にしかつ前記軸部本体の移動を容易にするリブを有することを特徴とする請求項11に記載の内視鏡バルブキット。」なる請求項14を追加する補正。
(2)本件補正の適否
(2-1)補正の目的について
ア 補正事項1について
(ア)本件補正後の請求項1において、「上方」・「下方」なる用語は、下記(イ)により裏付けられるとおり、軸部本体の長軸を鉛直軸とした場合に、ある要素の位置が、該鉛直軸上で他の要素に対しそれぞれ上部(鉛直座標が大きい)の全周領域(のどこか)であるか、下部(鉛直座標が小さい)の全周領域(のどこか)であるか、との意味で用いられており、前記上部・下部のうち、前記鉛直軸に対し前記他の要素と同じ偏角部分のみ指すとの意味は備えないといえる。
また、下記(ウ)のとおり、「シール領域」は「側方開口部」の下方であるとの特定はあるものの、前記鉛直軸に対する偏角位置については特定がない。
そうすると、補正事項1により、「フラット部」の「側方開口部」に対する前記偏角位置が90°である旨の特定事項が削除されたといえるから、補正事項1は、特許法17条の2の5項2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものにはあたらず、その他特許法17条の2の5項1・3・4号のいずれを目的とするものでもない。
(イ)請求項1における「上方」・「下方」の定義について
請求項1において「凹溝」の設置位置についての
「前記凹溝は、前記ボタンヘッドの下方でかつ前記側方開口部の上方において前記軸部本体に設けられ、かつ、前記側方開口部から90°の位置に配設されており」
なる特定事項において、前記鉛直軸に対する偏角位置を「側方開口部から90°の位置」と重ねて特定していることから、「側方開口部の上方」が「側方開口部」の直上(側方開口部と同一の偏角位置)のみならず、「側方開口部」より鉛直座標が大きい(上方)領域の全周を指す、と解されることにより裏付けられる。
そうすると、請求項1の「下方」も、「上方」と対を成す用語であるから、「上方」の定義と同様に、ある要素よりも鉛直座標が小さい部位の全周を指すと解するのが相当である。
(ウ)請求項1において、シール領域については
「前記シール領域は、前記側方開口部の下方において前記軸部本体に設けられており」、及び
「前記軸部本体は、前記軸部本体の前記底端部と前記側方開口部との間に重要な領域を有し、前記シール領域は、前記軸部本体の前記重要な領域に設けられ」、
と特定され、当該特定において、「シール領域」の前記鉛直軸に対する偏角位置は定められていない。
イ 補正事項2について
補正事項2は、上記(1)イで説示したとおり、請求項1について、本件補正前の請求項1で特定される「軸部本体」及び「シール領域」に関し、特定事項を追加する補正であるから、特許法17条の2の5項2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。
ウ 補正事項3~5について
補正事項3は、本件補正前の請求項1~9をそれぞれ、それらと、それらを減縮した(本件補正後の)請求項12とに分割する増項補正であり、同様に補正事項4は、本件補正前の請求項10を、それと請求項13とに分割する増項補正、補正事項5は、本件補正前の請求項11を、それと請求項14とに分割する増項補正であり、引用形式の請求項の独立項化や、択一的記載などにより実質的に複数の発明を含んでいた請求項の独立項化に伴う増項にはあたらない。そうすると、当該増項補正により審査対象が追加されることにより、新たな審査を必要とすることとなるものであるから、特許法17条の2の5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正には該当しない。
その他、同項1・3・4号の何れに掲げる目的とする補正にも該当しない。
エ 補正の目的まとめ
上記ア~ウのとおりであるから、上記補正事項1~5のうち補正事項1・3~5は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものではない。
よって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
(2-2)独立特許要件について
仮に、本件補正が上記(2-1)で指摘した補正の目的に関する要件を満たすとした場合、本件補正のうち少なくとも補正事項2は、上記(2-1)ウで説示したとおり特許法17条の2の5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(特許請求の範囲の限定的減縮)を目的とする補正であるから、該請求項1に係る発明が許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(独立特許要件を満たすかどうか;特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、さらに検討を要することとなる。
よって、請求項1~14に係る発明が独立特許要件を満たすかについて、以下において念のため検討する。
ア 請求項1・10・11に係る発明
独立請求項である請求項1・10・11に記載された発明(以下、それぞれ「本件補正発明1」・「本件補正発明10」・「本件補正発明11」という。)は次のとおりである。ここで、各構成単位冒頭の「A」などは当審で付した分説番号であり、以下、該各構成単位を該分説番号により「構成A」などという。また、下線部は、本件補正により変更された箇所を示す。
(ア)本件補正発明1
「【請求項1】A ボタンヘッドと、
B 前記ボタンヘッドに接続された軸部本体と、を備える
C 吸引バルブ軸部であって、
D 前記軸部本体は、空気通路、凹溝、シール領域及びフラット部を備え、
E 前記空気通路は、前記軸部本体の中央ボアを通って延びており、さらに、
F 前記空気通路は、前記軸部本体の側面に設けられた側方開口部と、前記軸部本体の底端部に設けられた底部開口部と、を有し、
G 前記凹溝は、前記ボタンヘッドの下方でかつ前記側方開口部の上方において前記軸部本体に設けられ、かつ、
H 前記側方開口部から90°の位置に配設されており、
I 前記シール領域は、前記側方開口部の下方において前記軸部本体に設けられており、
J 前記フラット部は、前記軸部本体に形成され、
K 前記軸部本体の前記底端部に至る流体連通路を有しており、
L 前記軸部本体の直径は、気密シールを確実に得るために正確に制御され、
M 前記軸部本体は、前記軸部本体の前記底端部と前記側方開口部との間に重要な領域を有し、
N 前記シール領域は、前記軸部本体の前記重要な領域に設けられ、
O 前記フラット部は、前記シール領域から90°の位置にある金型の分割線により画定された非シール領域である、ことを特徴とする
P 吸引バルブ軸部。」
(イ)本件補正発明10
「【請求項10】
Q10 軸部、スプリング、スプリングカップ及びブーツを備える吸引バルブであって、
R10 前記軸部の底端部は、前記スプリング、前記スプリングカップ及び前記ブーツを通って延びており、
A10 前記軸部は、 ボタンヘッドと、
B10 前記ボタンヘッドに接続された軸部本体と、 を備え、
D10 前記軸部本体は、空気通路、凹溝、シール領域及びフラット部を備え、
E10 前記空気通路は、前記軸部本体の中央ボアを通って延びており、さらに、
F10 前記空気通路は、前記軸部本体の側面に設けられた側方開口部と、前記軸部本体の底端部に設けられた底部開口部と、を有し、
G10 前記凹溝は、前記ボタンヘッドの下方でかつ前記側方開口部の上方において前記軸部本体に設けられ、かつ、
H10 前記側方開口部から90°の位置に配設されており、
I10 前記シール領域は、前記側方開口部の下方において前記軸部本体に設けられており、
J10 前記フラット部は、前記軸部本体に形成され、
K10 前記軸部本体の前記底端部に至る流体連通路を有しており、
L10 前記軸部本体の直径は、気密シールを確実に得るために正確に制御され、
M10 前記軸部本体は、前記軸部本体の前記底端部と前記側方開口部との間に重要な領域を有し、
N10 前記シール領域は、前記軸部本体の前記重要な領域に設けられ、
O10 前記フラット部は、前記シール領域から90°の位置にある金型の分割線により画定された非シール領域である、ことを特徴とする
P10 吸引バルブ。」
(ウ)本件補正発明11
「【請求項11】
S11 吸引バルブと、 空気/水バルブと、 生検バルブと、 を備える内視鏡バルブキットであって、
Q11 前記吸引バルブは、軸部、スプリング、スプリングカップ及びブーツを備え、
R11 前記軸部の底端部は、前記スプリング、前記スプリングカップ及び前記ブーツを通って延び、
A11 前記軸部は、 ボタンヘッドと、
B11 前記ボタンヘッドに接続された軸部本体と、 を備え、
D11 前記軸部本体は、空気通路、凹溝、シール領域及びフラット部を備え、
E11 前記空気通路は、前記軸部本体の中央ボアを通って延びており、さらに、
F11 前記空気通路は、前記軸部本体の側面に設けられた側方開口部と、前記軸部本体の底端部に設けられた底部開口部と、を有し、
G11 前記凹溝は、前記ボタンヘッドの下方でかつ前記側方開口部の上方において前記軸部本体に設けられ、かつ、
H11 前記側方開口部から90°の位置に配設されており、
I11 前記シール領域は、前記側方開口部の下方において前記軸部本体に設けられており、
J11 前記フラット部は、前記軸部本体に形成され、
K11 前記軸部本体の前記底端部に至る流体連通路を有しており、
L11 前記軸部本体の直径は、気密シールを確実に得るために正確に制御され、
M11 前記軸部本体は、前記軸部本体の前記底端部と前記側方開口部との間に重要な領域を有し、
N11 前記シール領域は、前記軸部本体の前記重要な領域に設けられ、
O11 前記フラット部は、前記シール領域から90°の位置にある金型の分割線により画定された非シール領域である、ことを特徴とする
P11 内視鏡バルブキット。」
イ 明確性要件について
(ア)a 構成M・Nに加入された「重要な領域」なる用語の定義及び軸部本体上でのその位置や範囲が、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、該用語と他の用語との関係をどのように解釈しても、不明である。下記b以下に詳説する。
b 明細書の【0043】には、「分割線は、ボタンヘッドと側方開口部との間の重要でない領域だけに設けられている。」なる記載があり、同【0045】には「重要なシール領域」なる記載はある。
しかし、「重要な領域」なる用語については、本件補正後の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明を通じ記載及び説明がない。
c 上記【0043】の記載のみからは、「ボタンヘッドと側方開口部の間」が「重要でない領域」で、それ以外が「重要な領域」であるとの解釈が成り立ち得る。
d しかし、【0045】には、
「図8を参照すると、本発明の一実施例は、軸部を形成するための成形方法を示している。具体的に、前記方法は、重要なシール領域から90°の位置にあるフラット部などの非シール面に金型の分割線を配置することを含む。一実施例では、金型の分割線は、非シール領域の長さに沿って配置されている。」
と記載され、図8は存在しないものの、図7には
「
[図:0001387281000001.jpg]
」
なる記載があり、「分割線」は側方開口部の側方や、側部開口部下方の軸部本体面上にも存在していることから、上記cの解釈、つまり、ボタンヘッドと側方開口部との間以外が「重要な領域」を前提とすると、上記bで摘記した【0043】の「分割線は、ボタンヘッドと側方開口部との間の重要でない領域だけに設けられている。」なる記載事項と矛盾が生じることとなる。
e また、構成M・Nの「重要な領域」を、【0045】の「重要なシール領域」を意味する、つまり、「重要な領域」は「重要なシール領域」を意味し、両者が同義である、との解釈は、構成Nにおいて「前記シール領域は、前記軸部本体の前記重要な領域に設けられ」と、「重要な領域」が「シール領域」の設置領域を規定する、つまり、「シール領域」が「重要な領域」に含まれる一部領域であるとの関係性を以て特定されていることに照らし、成り立たない。
f 仮に、上記eにおいて、構成M・Nの「重要な領域」は明細書における「重要なシール領域」を意味し、両者が同一の領域をいうものと請求項1の文理解釈上理解し得るとしても、「重要な領域」の軸部本体における位置については、上記bで説示したとおり発明の詳細な説明において記載がなく、上記cのとおり、「重要でない領域」についての記載からも、たかたか「ボタンヘッドと側方開口部との間」以外の領域と理解されるにとどまる。この理解は、構成Iでの「シール領域」の位置についての「前記側方開口部の下方において前記軸部本体に設けられており」なる特定事項と概ね一致するから、前記理解に基づけば「シール領域」は「側方開口部」の下方全域(「ボタンヘッドと側方開口部との間」以外の領域全域)に設けられることとなり、構成Oにおける「フラット部」の「前記シール領域から90°の位置にある金型の分割線により画定された非シール領域」が存在し得ないことになり、特定事項間に矛盾が生じることとなる。
(イ)上記(ア)に関連し、請求項1において、「重要な領域」の軸部本体上の位置や範囲が不明であるため、構成Nで該「重要な領域」に設けられるとする「シール領域」の軸部本体上での位置や範囲が不明である。
(ウ)a 上記(イ)に関連し、「シール領域」の軸部本体上での位置や範囲が不明であるため、構成Oにおいて該「シール領域」に対する位置関係で規定される「フラット部」の軸部本体上における位置や範囲が不明である。
b 構成Oにおいて「フラット部」の位置及び/又は範囲は、さらに「金型の分割線」に対しても規定されているが、「金型の分割線」の軸部本体に対する位置や範囲は不明であるし、該「線」に対し「画定された」とはどのような技術事項を意味するのかも不明であるから、該規定によっても「フラット部」の軸部本体に対する位置及び範囲は不明である。
(エ)構成M・N・Oと同様の特定事項は独立請求項10のM10・N10・O10、請求項11のM11・N11・O11にも記載されており、該各独立請求項、及び、該各独立請求項を引用する請求項2~9・12~14に係る各発明についても、上記(ア)~(ウ)と同様の理由により不明確である。
(オ)以上(ア)~(エ)のとおりであるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~14に係る記載は、請求項1・10・11における本件補正により加入または変更された事項の記載自体が不明確である結果、請求項1~14に係る発明が不明確となる点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
ウ サポート要件について
(ア)上記イ(ア)で説示したとおり、構成M・N・M10・N10・M11・N11に記載された「重要な領域」の定義並びに軸部本体上での位置及び範囲について、発明の詳細な説明中に記載されておらず、矛盾なく認定できる程度に示唆されているともいえない。
(イ)上記イ(ウ)bで説示したとおり、「フラット部」の軸部本体上における位置や範囲に関する、構成O・O10・O11に記載された「金型の分割線により画定された」なる特定事項について、発明の詳細な説明中に記載されておらず、矛盾なく認定できる程度に示唆されているともいえない。
(ウ)上記(ア)・(イ)のとおり、請求項1・10・11およびそれら請求項を引用する形式で請求項2~9・12~14に記載されている、本件補正により加入または変更された事項が、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていないから、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
エ 独立特許要件のまとめ
上記イ・ウのとおりであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
(2-3)まとめ
上記(2-1)・(2-2)のとおりであるから、本件補正のうち補正事項1・3~5は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものではない。
また、仮に本件補正が特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものであるとしても、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反する。
よって、本件補正は、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3.原査定の概要
原査定は概略、次のとおりである。
1 理由4(特許法第36条第4項第1号 委任省令要件)について
(1)請求項1には、「前記軸部本体は、空気通路、凹溝、シール領域及びフラット部を備え」と記載されている。
ア 本願の発明の詳細な説明を参酌しても、「シール領域」を備えることの、技術上の意義が理解できない。
イ 本願の発明の詳細な説明を参酌しても、「フラット部」を備えることの、技術上の意義が理解できない。
ウ 請求項10~11についても、上記(ア)・(イ)と同様である。
(2)査定理由には含まれないが、拒絶査定の付記事項として、概略、下記アの拒絶理由が追記されている。
ア 請求項1には、「前記シール領域は、前記軸部本体の前記底端部まで延びている」と記載されている。
本願の発明の詳細な説明を参酌しても、「前記シール領域は、前記軸部本体の前記底端部まで延びている」ことの、技術上の意義が理解できない。
請求項10~11についても、上記アと同様である。
2 理由5(特許法第36条第6項第2号 明確性要件)について
(1)請求項1には、「前記軸部本体は、空気通路、凹溝、シール領域及びフラット部を備え」と記載されている。
上記記載に関連して、本願の[0038]には、「図3Bを参照すると、一実施例では、フラット部36の断面は凹状をなしている。図3Cを参照すると、一実施例では、フラット部36の断面は窪み形状をなしている。」と記載されている。
上記記載を踏まえて、本願の図3B、図3Cを見るに、フラット部36の断面は、フラットではないことが見てとれる。
してみれば、どのようなものが「フラット部36」であるのか理解できず、不明確である。
請求項10~11についても、同様である。
(2)査定理由には含まれないが、拒絶査定の付記事項として、概略、下記アの拒絶理由が追記されている。
ア 請求項1には、「シール領域」と記載されている。
しかし、本願の明細書等を参酌しても、「シール領域」とは、「物の発明」として、他の領域と、どのように異なる領域であるのか(材料が異なるのか、形状が異なるかなど)が理解できず、不明確である。
なお、本願の明細書[0033]には、「一実施例では、1つのシール領域34又は2つのシール領域34は、リブを有し、かつ/又は織り目加工がされている。」と記載されているところ、「シール領域」が、「リブを有し、かつ/又は織り目加工がされている」領域に限定されているのか否か理解できず、不明確である。
請求項11についても、同様である。
第4.本願発明について
本件補正は上記第2.のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年6月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるもの(該特定される各発明について以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明11」という。)であるところ、その独立請求項である請求項1・10・11に係る発明(本願発明1・10・11)は、その請求項1・10・11に記載された次のとおりのものである。分説記号は上記第2.2(2-2)と同様であり、本件補正発明1・10・11と本願発明1・10・11とのそれぞれ実質的に共通する構成単位には共通の分説番号を付した。
1 本願発明1
「 【請求項1】
A ボタンヘッドと、
B 前記ボタンヘッドに接続された軸部本体と、 を備える
C 吸引バルブ軸部であって、
D 前記軸部本体は、空気通路、凹溝、シール領域及びフラット部を備え、
E 前記空気通路は、前記軸部本体の中央ボアを通って延びており、さらに、
F 前記空気通路は、前記軸部本体の側面に設けられた側方開口部と、前記軸部本体の底端部に設けられた底部開口部と、を有し、
G 前記凹溝は、前記ボタンヘッドの下方でかつ前記側方開口部の上方において前記軸部本体に設けられ、かつ、
H 前記側方開口部から90°の位置に配設されており、
I 前記シール領域は、前記側方開口部の下方において前記軸部本体に設けられており、
J 前記フラット部は、前記軸部本体に形成され、かつ
O’前記側方開口部から90°の位置に配設されており、
K 前記軸部本体の前記底端部に至る流体連通路を有しており、
M’前記シール領域は、前記軸部本体の前記底端部まで延びている、ことを特徴とする
P 吸引バルブ軸部。」
2 本願発明10
「 【請求項10】
Q10 軸部、スプリング、スプリングカップ及びブーツを備える吸引バルブであって、
R10 前記軸部の底端部は、前記スプリング、前記スプリングカップ及び前記ブーツを通って延びており、
A10 前記軸部は、 ボタンヘッドと、
B10 前記ボタンヘッドに接続された軸部本体と、
を備え、
D10 前記軸部本体は、空気通路、凹溝、シール領域及びフラット部を備え、
E10 前記空気通路は、前記軸部本体の中央ボアを通って延びており、さらに、
F10 前記空気通路は、前記軸部本体の側面に設けられた側方開口部と、前記軸部本体の底端部に設けられた底部開口部と、を有し、
G10 前記凹溝は、前記ボタンヘッドの下方でかつ前記側方開口部の上方において前記軸部本体に設けられ、かつ、
H10 前記側方開口部から90°の位置に配設されており、
I10 前記シール領域は、前記側方開口部の下方において前記軸部本体に設けられており、
J10 前記フラット部は、前記軸部本体に形成され、かつ
O10’前記側方開口部から90°の位置に配設されており、
K10 前記軸部本体の前記底端部に至る流体連通路を有しており、
M’前記シール領域は、前記軸部本体の前記底端部まで延びている、ことを特徴とする
P10 吸引バルブ。」
3 本願発明11
「 【請求項11】
S11 吸引バルブと、
空気/水バルブと、
生検バルブと、
を備える内視鏡バルブキットであって、
Q11 前記吸引バルブは、軸部、スプリング、スプリングカップ及びブーツを備え、
R11 前記軸部の底端部は、前記スプリング、前記スプリングカップ及び前記ブーツを通って延び、
A11 前記軸部は、
ボタンヘッドと、
B11 前記ボタンヘッドに接続された軸部本体と、
を備え、
D11 前記軸部本体は、空気通路、凹溝、シール領域及びフラット部を備え、
E11 前記空気通路は、前記軸部本体の中央ボアを通って延びており、さらに、
F11 前記空気通路は、前記軸部本体の側面に設けられた側方開口部と、前記軸部本体の底端部に設けられた底部開口部と、を有し、
G11 前記凹溝は、前記ボタンヘッドの下方でかつ前記側方開口部の上方において前記軸部本体に設けられ、かつ、
H11 前記側方開口部から90°の位置に配設されており、
I11 前記シール領域は、前記側方開口部の下方において前記軸部本体に設けられており、
J11 前記フラット部は、前記軸部本体に形成され、かつ
O11’前記側方開口部から90°の位置に配設されており、
K11 前記軸部本体の前記底端部に至る流体連通路を有しており、
M11’前記シール領域は、前記軸部本体の前記底端部まで延びている、ことを特徴とする
P11 内視鏡バルブキット。」
第5.判断
1 理由4(特許法第36条第4項第1号 委任省令要件)について
(1)「シール領域」について
ア 構成D・D10・D11・I・I10・I11・M’・M10’・M11’に記載される「シール領域」について、下記(ア)・(イ)の記載がある。
(ア)「一実施例では、軸部20は、ユーザ(臨床医)が作動させ、患者に対する真空(吸引)を制御するツールとして機能する。軸部20は、内視鏡を通して真空吸引を可能にするために押し下げられ、真空吸引を停止するために解放される。(【0029】)
(イ)「一実施例では、内視鏡と軸部20との間のインターフェイスは、使用時に吸引力が失われないようにするシール面を形成しつつ、円滑に作動することが必要であるため重要である。軸部と内視鏡との間のインターフェイスが不十分であると、軸部周囲から漏出する真空吸引によって患者の体内の空気が失われることとなる。また、この付属品は、内視鏡から吸い上げられた流体が患者の体内に戻るのを軽減する油圧シールを形成する必要がある。軸部20の一実施例では、内視鏡の吸引シリンダ/ポート内の気密シール又は実質的に気密のシールを確実に得るために、軸部の直径が正確に制御される。」(【0030】)
(ウ)「一実施例では、1つのシール領域34又は2つのシール領域34は、リブを有し、かつ/又は織り目加工がされている。しかし、シール領域は、気密シールを確実なものとすることができる。リブを有するシール領域34は、軸部20の移動を容易にする。」(【0033】)
イ 上記アに摘記した各記載から、「シール領域」(「シール面」)は、使用時すなわち軸部を押し下げて内視鏡を通して真空吸引する時に、軸部を挿入した内視鏡の吸引シリンダの内周面との間に「気密シール」を形成して「吸引力が失われないようにし」、また、「軸部周囲から漏出する真空吸引によって患者の体内の空気が失われ」ないようにすることを課題とし、その解決を目的とする要素であることを読み取ることができる。
上記摘記した【0030】の「軸部20の一実施例では、内視鏡の吸引シリンダ/ポート内の気密シール又は実質的に気密のシールを確実に得るために、軸部の直径が正確に制御される。」なる記載と、2つの部材が密着していれば気密性・液密性(漏気・漏水の防止)が確保されるとの出願時の技術常識に照らせば、「シール領域」が、例えば前記内視鏡の吸引シリンダと軸部本体の外周面とが正確に密着するように軸部本体のシール面における外周形状を制御(制作)することによって前記目的を達し得ることも明らかである。
よって、当業者が明細書の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、発明の課題と「シール領域」との実質的な関係について、容易に理解することができるといえるから、本願各発明が「シール領域」を備えることについて、委任省令要件違反には該当しない。
(2)「フラット部」について
ア 本願発明1~11に係る「フラット部」について、発明の詳細な説明には次の各記載がある。
(ア)「フラット部は、軸部本体の底端部に至る流体連通路を有している。」(【0005】)
(イ)「【0034】
・・・ある従来技術では、軸部が押し下げられたときに、内視鏡の吸引シリンダ/ポートと軸部との間の実質的な気密シールにより、油圧ロック現象が生じることがあった。このような油圧ロック現象により、軸部が解放されて上方位置へと戻ることが妨げられてしまう。
【0035】
図2A,図2C,図5及び図6を参照すると、一実施例では、軸部本体24は、フラット部36をさらに備える。一実施例では、軸部本体24は、1つのフラット部36を備える。一実施例では、軸部本体24は、2つのフラット部36を備える。一実施例では、フラット部は、軸部本体24の反対側に位置する面にそれぞれ設けられている。一実施例では、フラット部36は、凹溝26の下方でかつ軸部本体24の底部側に設けられている。一実施例では、フラット部36は、軸部本体24の底部まで延びている。一実施例では、フラット部36は、少なくとも第1の側方開口部28又は第2の側方開口部281の底部まで延びている。一実施例では、フラット部36は、第1の側方開口部28又は第2の側方開口部281の中間部分まで延びている。一実施例では、フラット部36と、凹溝26とは、離間しており、したがって、互いに流体連通していない。一実施例では、フラット部36と、第1の側方開口部28及び第2の側方開口部281とは、離間しており、したがって、互いに流体連通していない。
・・・
【0038】
図3Aを参照すると、一実施例では、フラット部36の断面は平面状をなしている。図3Bを参照すると、一実施例では、フラット部36の断面は凹状をなしている。図3Cを参照すると、一実施例では、フラット部36の断面は窪み形状をなしている。図3Dを参照すると、一実施例では、フラット部36の断面はスロット形状をなしている。図3Eを参照すると、一実施例では、フラット部36の断面は4つの平坦面を有する形状をなしている。図3A~3Eを参照すると、一実施例では、軸部本体のフラット部36と、内部チャンネル38とは、離間しており、したがって、互いに流体連通していない。一実施例では、フラット部36により、真空吸引が行われているときのノイズが減少する。」
イ 上記摘記した本願明細書等の摘記記載から、本願各発明における「軸部本体」は円筒形を呈し(上記第2.2(2-2)イで摘記した図7等)、それに対しフラット部の断面は平面状、凹状、または窪み形状とされ(【0038】)、軸部本体の底部側で、底端部から側方開口部の底部または中間部分まで延び(【0035】)、軸部本体の底端部に至る流体連通路を形成する(【0005】)ものであり、軸部が押し下げられたときに、内視鏡の吸引シリンダ/ポートと軸部との間の実質的な気密シールにより、油圧ロック現象が生じ、軸部が解放されて上方位置へと戻ることが妨げられてしまうことを防止すること(【0034】)、及び真空吸引が行われているときのノイズ減少(【0038】)を目的とする要素であると読み取ることができる。
また、陰圧を生じる管路や容器に対する栓材などにおいて、陰圧の吸引力により栓材が管路(容器)壁に密着して容易に抜けなくなる現象が起きること、栓材と管路壁との隙間が非常に小さい場合に、この隙間を通って陰圧側へ流体が高速に移動することによって栓材に振動が生じることがあること、及び、栓材の側面に、陰圧側と連通する切り欠きを設けて陰圧側と陽圧側とを連通させる(管路(容器)壁と密着しない部分を形成する)ことで、容易に栓材を抜き取ることができるようになることは、日常生活においても経験し得る、本願出願時における技術常識であるといえる。
そうすると、前記本願の明細書等から読み取った事項と、前記技術常識とを総合すれば、本願各発明における「フラット部」は、円筒形状の軸部本体の外周面に、円筒面を平坦又は凹状に切り欠いたフラット領域を形成することで、他の外周面の領域が内視鏡の吸引シリンダに、真空吸引により密着したとしても、該フラット領域では該密着が生じないため、一定程度真空吸引側に流体が流通し、軸部本体が内視鏡の吸引シリンダに密着したり、振動してノイズを発生したりといった現象を生じにくくすることを目的とする要素であることが、当業者にとって容易に理解されるということができる。
よって、本願各発明が「フラット部」を備えることについて、委任省令要件に適合する。
(3)シール領域が軸部本体の底端部まで延びていることについて
ア 「シール部」の設置領域に関連して、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明には次の記載がある。
(ア)請求項1の記載(請求項10・11についても同様)
「I 前記シール領域は、前記側方開口部の下方において前記軸部本体に設けられており、
J 前記フラット部は、前記軸部本体に形成され、かつ
O’前記側方開口部から90°の位置に配設されており、
K 前記軸部本体の前記底端部に至る流体連通路を有しており、
M’前記シール領域は、前記軸部本体の前記底端部まで延びている」
(イ)「【0031】
図4~6を参照すると、一実施例では、軸部本体24は、1つのシール領域34を有する。一実施例では、軸部本体24は、2つのシール領域34を有する。一実施例では、シール領域34は、側方開口部28,281の下方における軸部本体24の下方部分に設けられている。一実施例では、シール領域34は、軸部本体24の反対側に位置した面にそれぞれ設けられている。
【0032】
一実施例では、シール領域34は、第1の側方開口部28及び第2の側方開口部281と同じ高さに配置されている。」
イ 上記請求項1の特定事項から、フラット部は軸部本体の側方開口部から90°の位置に形成され、かつ、軸部本体の底端部に至る流路を有するのであるから、該フラット部は、側方開口部の90°の位置で、かつ側方開口部からその下方、軸部本体底端部に至るまでの領域にわたり形成されるといえる。
シール領域は、その機能(内視鏡シリンダをシールするか、流路を形成するか)の相違に照らし、フラット部と同じ領域には形成され得ないのであるから、最大で、側方開口部の下方領域であり、かつ、フラット部の存在しない、側方開口部の下方から軸部本体底端部に至る領域が存在可能領域となる。
また、軸部本体の側面について、本願各発明では、「凹溝」・「シール領域」・「フラット部」なる3つの要素のみが規定されるから、該側面がこれら3つの要素のみからなる場合を少なくとも含み、その場合、側面開口の下方には「シール領域」と「フラット部」のみが存在することになり、フラット部が前記のとおり、側方開口部の90°の位置で、かつ側方開口部からその下方、軸部本体底端部に至るまでの領域にわたり形成されるのであれば、残る側方開口部下方(側方開口部の0°の位置)で軸部底端部に至る領域はすべて、必然的に「シール領域」に占められることとなる。
そうすると、構成M’は、前記フラット部の存在領域から導かれるシール領域の(最大)存在可能領域、または、必然的な存在領域を規定したものであると位置づけることができるから、本願各発明が「フラット部」を備えることについて、上記(2)のとおり、委任省令要件に適合する以上、該「フラット部」の存在領域により規定される、「シール領域」の存在領域を本願各発明において特定したことも、委任省令要件に適合するといえる。
2 理由5(特許法第36条第6項第2号 明確性要件)について
(1)本願各発明における「フラット部」の定義について
「フラット部」の形状については上記1(2)で摘記したとおり、
「図3Aを参照すると、一実施例では、フラット部36の断面は平面状をなしている。図3Bを参照すると、一実施例では、フラット部36の断面は凹状をなしている。図3Cを参照すると、一実施例では、フラット部36の断面は窪み形状をなしている。図3Dを参照すると、一実施例では、フラット部36の断面はスロット形状をなしている。」(【0038】)
と説明されている。
「フラット」とは「平坦」を意味する用語であり、前記【0038】の説明に含まれる、「フラット部」が「平面状」である態様は、当該用語の意味と整合する。
前記【0038】には「フラット部」の態様として、その断面が「凹状」・「窪み形状」・「スロット形状」など、平坦面でない態様も記載されている。しかし、本願各発明において、該「フラット面」を「平面状面」などと前記態様の一つを用いて総称しているものではなく、何れの態様とも異なる「フラット部」なる外来語からなる用語により特定しているのであるから、本願特許請求の範囲の記載に接した当業者は、特許法70条2項にしたがって本願の発明の詳細な説明を参酌し、該「フラット部」なる用語が、「凹状」・「窪み形状」・「スロット形状」など【0038】に列挙された非平坦形状も含む概念であると容易に理解できるのであるから、第三者に不測の不利益を与えるほどに、特許請求の範囲の記載において「フラット部」なる用語の定義が不明確であるとまでいうことはできない。
(2)「シール領域」について
ア シール領域の形態について、発明の詳細な説明において、下記(ア)の説明がなされている。
(ア)「【0030】
一実施例では、内視鏡と軸部20との間のインターフェイスは、使用時に吸引力が失われないようにするシール面を形成しつつ、円滑に作動することが必要であるため重要である。軸部と内視鏡との間のインターフェイスが不十分であると、軸部周囲から漏出する真空吸引によって患者の体内の空気が失われることとなる。また、この付属品は、内視鏡から吸い上げられた流体が患者の体内に戻るのを軽減する油圧シールを形成する必要がある。軸部20の一実施例では、内視鏡の吸引シリンダ/ポート内の気密シール又は実質的に気密のシールを確実に得るために、軸部の直径が正確に制御される。
・・・
【0032】
・・・
一実施例では、1つのシール領域34は、第1開口部28又は第2の側方開口部281の直径と同程度の幅を有していてもよい。一実施例では、1つのシール領域34は、軸部本体24の外周の約半分と同程度の幅を有していてもよい。一実施例では、シール領域34の最小長さは、約0.280インチである。一実施例では、シール領域34の最大長さは、約0.440インチである。一実施例では、シール領域34の最小幅は、約0.158インチである。一実施例では、シール領域34の最大幅は、約0.198インチである。
【0033】
一実施例では、1つのシール領域34又は2つのシール領域34は、リブを有し、かつ/又は織り目加工がされている。しかし、シール領域は、気密シールを確実なものとすることができる。リブを有するシール領域34は、軸部20の移動を容易にする。」
イ 上記発明の詳細な説明の記載によれば、「シール領域」の形態は「内視鏡の吸引シリンダ/ポート内の気密シール又は実質的に気密のシールを確実に得るために、軸部の直径が正確に制御される」「シール面」であり(【0030】)、その大きさは【0032】に例示されるものが含まれ、その一態様としては「1つのシール領域34又は2つのシール領域34は、リブを有し、かつ/又は織り目加工がされている」ものも含まれる(【0033】)ことが説明されているといえる。
ここで、「内視鏡の吸引シリンダ/ポート内の気密シール又は実質的に気密のシールを確実に得るために、軸部の直径が正確に制御される」「シール面」であることには、部材間の密接により気密性・水密性が得られるとの出願時の技術常識に照らせば、内視鏡シリンダ内周面と軸部本体側面とがシール面(シール領域)において正確に一致する(密接する)ようなシール領域の形態が第一義的に含まれるといえ、「リブ」や「織り目加工」など、何らかの凹凸を持つシール領域の形態は「一実施例」すなわち副次的な態様として説明されていると理解することができる。
また、上記発明の詳細な説明に例示されたもの以外にどのような形態が含まれうるのかについても、内視鏡の吸引シリンダと軸部本体側面との間に「内視鏡の吸引シリンダ/ポート内の気密シール又は実質的に気密のシールを確実に得る」(【0030】)という機能を担保する形態に限られるのであるし、上記「フラット部」のように平面状や凹状等の、円筒形状から外れ、内視鏡の吸引シリンダとの間に隙間を生じるような形態が排除されることと併せることで、当業者であれば、「シール領域」にどのような形態が含まれうるのかについて相当程度の明確性を以て想定することができるのであり、その外縁が第三者に不測の不利益を与えるほどにまで不明確であるということはできない。
第6.結び
以上のとおり、本件出願は、発明の詳細な説明の記載について特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないということはできず、また、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないということもできない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-015109