特許拒絶査定不服審判
2024-015012
コンクリート充填鋼管柱
- 審判番号
- 2024-015012
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-003982
- 請求日
- 2024年09月19日
- 審決日
- 2026年03月10日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社竹中工務店
- 【請求人代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 秋田 将行
- 審判官 太田 恒明
- 審判官 三橋 健二
- 分類
- P18 .121-WZ (E04B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 3982「コンクリート充填鋼管柱」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 8月 2日出願公開、特開2021-110189〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年1月14日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年10月 6日付け:拒絶理由通知書
令和6年 1月26日 :意見書、手続補正書の提出
同年 3月 8日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 4月26日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月11日付け:補正の却下の決定、拒絶査定(以下「原査定」という。)
同年 7月23日 :原査定の謄本の送達
同年 9月19日 :審判請求書の提出
令和7年11月25日付け:拒絶理由通知書
令和8年 2月 2日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~2に係る発明は、令和8年2月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~2に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。なお、符号A等は、分説のため当審で付した。以下「特定事項A」等という。
「 【請求項1】
A 鉄骨梁がそれぞれ接合される上下の仕口部と、上下の前記仕口部を接続する鋼管本体部と、前記仕口部に設けられる一対のダイアフラムと、を有する柱鋼管と、
B 上下の前記仕口部、並びに前記鋼管本体部の柱頭部及び柱脚部にそれぞれ充填されるとともに、鉄筋及び形鋼が埋設されない繊維補強コンクリートと、
C 前記鋼管本体部における前記柱頭部と前記柱脚部との間の中間部に充填される普通コンクリートと、
D を備えるコンクリート充填鋼管柱。」
第3 当審において通知した拒絶の理由の概要
令和7年11月25日付けで当審において通知した拒絶の理由の概要は、以下の理由を含むものである。
・本件補正前の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献一覧>
1.特開2012-255283号公報
2.特開平11-181958号公報
第4 当審の判断
1 引用文献
(1)引用文献1、引用発明
a 引用文献1の記載事項
上記第3の当審において通知した拒絶の理由で引用文献1として引用された、本願出願前に頒布され又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-255283号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審で付した(以下同様。)。
「【0018】
図1には、一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱10が示されている。コンクリート充填鋼管柱10は、柱鋼管12と、柱鋼管12内に充填される充填コンクリート14と、補強手段としての補強鉄筋20と、を備えている。柱鋼管12は角形鋼管で構成されており、水平部材としての鉄骨梁16が接合される上下の鋼管仕口部12Aと、これらの鋼管仕口部12A間に延びる鋼管本体部12Bを有している。
・・・・
【0020】
ここで、上下の鉄骨梁16の間にある鋼管本体部12B内に充填された充填コンクリート14は、複数の補強鉄筋20によって鋼管本体部12Bにおける軸方向中間部としての鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14の曲げ耐力に対し、軸方向端部としての鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BL内の充填コンクリート14の曲げ耐力が大きくなるように補強されている。
【0021】
具体的には、図2(A)及び図2(B)に示されるように、鋼管本体部12Bにおける鋼管上端部(柱頭部)12BU内の充填コンクリート14には、端部補強部材としての複数(本実施形態では、4本)の補強鉄筋20が埋設されている。各補強鉄筋20は、軸方向を柱鋼管12の軸方向(矢印Z方向)にすると共に、柱鋼管12の周方向に所定の間隔を空けて配列され、各々の上端部が内ダイアフラム18に溶接等で接合されている。また、鋼管本体部12Bの幅(柱せい)をDとしたときに、各補強鉄筋20の長さL(鋼管本体部12Bの軸方向に沿った長さ)が、鋼管本体部12Bの幅Dの1.0倍以上とされている。これらの補強鉄筋20によって鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14が補強されると共に、内ダイアフラム18及び補強鉄筋20を介して鋼管仕口部12A内の充填コンクリート14と鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14との間で曲げモーメントが伝達されるようになっている。これと同様に、図1に示されるように、鋼管下端部(柱脚部)12BL内の充填コンクリート14は、複数の補強鉄筋20によって補強されている。
【0022】
一方、鋼管本体部12Bにおける鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14は、補強鉄筋20によって補強されていない。これにより、鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14の曲げ耐力に対し、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BL内の充填コンクリート14の曲げ耐力が大きくなっている。
【0023】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0024】
図3に示されるように、例えば、火災時に鉄骨梁16が熱膨張によって軸方向(水平方向)へ伸張すると、鋼管仕口部12Aに水平力Fが作用し、鋼管本体部12Bに曲げモーメントMが発生する。この曲げモーメントMは、鋼管中間部12BMから鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLに向って徐々に大きくなる。一方、柱鋼管12は、火災時に熱膨張によって軸方向(矢印Z方向)へ伸張するが、温度上昇に伴う剛性の低下によって軸方向への伸張は徐々に小さくなり、ある温度に達すると軸方向への伸張変形は止まり、収縮変形に転じる。この状態で、鉄骨梁16から鋼管仕口部12Aへ水平力Fが作用すると、前述したように鋼管中間部12BMと比較して大きな曲げモーメントが発生する鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの圧縮側(矢印C側)側面に局部座屈Kが発生し易くなる。特に、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLが鋼管仕口部12Aを介して鉄骨梁16に剛接合されていて、かつ、鉄骨梁16の軸方向への伸張量が大きい場合は、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLに大きな曲率を伴う変形が生じる。この変形により鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの圧縮側(矢印C側)側面に大きな圧縮応力度が発生し、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLに局部座屈Kが生じる。
【0025】
鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLに局部座屈が発生すると、コンクリート充填鋼管柱10の曲げ剛性は著しく低下する。コンクリート充填鋼管柱10に作用する軸力(鉛直荷重)Vが大きい場合は、局部座屈Kの発生後、曲げモーメントMによる変形が急激に進展し、局部座屈K側の充填コンクリート14に圧壊を生じる。この結果、コンクリート充填鋼管柱10は荷重支持能力を喪失し、脆性的に崩壊に至る場合がある。
【0026】
この対策として本実施形態では、補強鉄筋20によって鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14の曲げ耐力に対し、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BL内の充填コンクリート14の曲げ耐力が大きくなるように充填コンクリート14を補強している。これにより、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLに局部座屈Kが発生しても、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BL内の充填コンクリート14が曲げモーメントMを負担すると共に、局部座屈Kによって生じる圧縮力に抵抗することで、充填コンクリート14の圧壊が抑制される。この結果、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLが局部座屈Kの発生後も軸力Vを負担することが可能となり、また、その軸力Vを柱鋼管12の鋼管中間部12BMに円滑に伝達することが可能となる。従って、火災時におけるコンクリート充填鋼管柱10の局部座屈K発生後の急激な耐力低下(崩壊)が抑制される。なお、せん断力は、柱鋼管12及び充填コンクリート14の残存せん断耐力と補強鉄筋20のダボ効果によって伝達される。
【0027】
また、本実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱10では、鋼管本体部12Bの全長に渡って充填コンクリート14を同じ曲げ耐力で補強する構成と比較して、施工性の向上、工期短縮、及びコスト削減を図ることができる。更に、補強鉄筋20を設ける範囲を鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLに限定することにより、工場等で内ダイアフラム18に補強鉄筋20を予め接合することができるため、現場での接合作業を省略することができる。
・・・・
【0031】
本実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱10を例により具体的に説明すると、局部座屈Kに関しては以下のことが確認された。即ち、鋼管本体部12Bの幅をD(図2(B)参照)としたときに、鋼管上端部12BUにおける局部座屈Kは、その上端から2Dまでの領域内で発生し易く、特に、上端からDの領域内で発生し易い。これと同様に、鋼管下端部12BLにおける局部座屈Kは、その下端から2Dまでの領域内で発生し易く、特に、下端からDの領域内で発生し易い。
【0032】
従って、局部座屈Kの発生を抑制する観点からすると、補強鉄筋20の長さLはD以上が好ましく、2D以上がより好ましい。更に、施工性、材料コストを考慮すると、補強鉄筋20の長さLはD≦L≦2Dとすることが望ましい。これにより、補強鉄筋20の材料コストを削減しつつ、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLの局部座屈Kの発生を抑制することができる。
・・・・
【0049】
更には、内ダイアフラム18を省略することも可能である。例えば、図13(A)に示される変形例では、鋼管仕口部12Aと鉄骨梁16とが外ダイアフラム36を介して接合されている。具体的には、鋼管仕口部12Aの外周面には、上下一対の外ダイアフラム36が設けられると共に、一対の外ダイアフラム36の間にガゼットプレート38が設けられている。各外ダイアフラム36には、鉄骨梁16のフランジ部16Aがそれぞれ溶接されている。また、ガゼットプレート38には、鉄骨梁16のウェブ部16Bが高力ボルト40で接合されている。
【0050】
このように内ダイアフラム18(図1参照)が存在しない構成では、鋼管仕口部12A内の充填コンクリート14と鋼管上端部12BU内の充填コンクリートとにまたがって補強鉄筋20を埋設すれば良い。これにより、鋼管仕口部12Aに局部座屈が発生しても、当該鋼管仕口部12A内の充填コンクリート14と鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14との間で曲げモーメントが伝達される。また、局部座屈によって生じる圧縮力に鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14が抵抗可能になるため、当該充填コンクリート14の圧壊が抑制される。
【0051】
なお、鋼管仕口部12A内の充填コンクリート14に対する補強鉄筋20の定着長さは、鋼管上端部12BUに作用する曲げモーメントに応じて適宜調整すれば良い。また、図13(B)に示されるように、鋼管下端部12BL、鋼管仕口部12A、及び鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14にまたがって補強鉄筋42を埋設しても良い。これにより、施工性が向上すると共に、鋼管仕口部12A内の充填コンクリート14と鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14との間でより大きな曲げモーメントを伝達することができる。なお、施工時には、図示しない保持金具等で補強鉄筋42を柱鋼管12に取り付けた状態で、柱鋼管12内に充填コンクリート14を充填すれば良い。
【0052】
更に、上記実施形態では、補強鉄筋20等の端部補強部材によって鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BL内の充填コンクリート14のみを補強したが、これに限らない。柱鋼管12内の充填コンクリート14は、鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14の曲げ耐力に対し、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BL内の充填コンクリート14の曲げ耐力が大きくなるように補強されていれば良く、例えば、補強手段としての補強鉄筋20に加えて、柱鋼管12の全長に渡る補強手段としての鉄筋を充填コンクリート14に埋設しても良い。この場合、端部補強部材としての補強鉄筋20の分だけ、鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14の曲げ耐力に対し、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BL内の充填コンクリート14の曲げ耐力が大きくなる。」
b 引用文献1の認定事項
上記aに摘記した「鋼管下端部12BL、鋼管仕口部12A、及び鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14にまたがって補強鉄筋42を埋設」した「変形例」(【0049】、【0051】)は、同じく上記aに摘記した「一実施形態」(【0018】~【0032】)を踏まえたものである。
そうすると、引用文献1に記載された「変形例」について、次のことがいえる。
(a) 「変形例」の全体的な構造について
上記「変形例」は、「コンクリート充填鋼管柱10は、柱鋼管12と、柱鋼管12内に充填される充填コンクリート14と、補強手段としての補強鉄筋20と、を備え」、「柱鋼管12は」「水平部材としての鉄骨梁16が接合される上下の鋼管仕口部12Aと、これらの鋼管仕口部12A間に延びる鋼管本体部12Bを有している」こと(【0018】)。
(b) 「鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BL」について
上記「変形例」における「鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BL」は、「鋼管本体部12Bにおける」「軸方向端部」であること(【0020】)。
(c) 「鋼管上端部12BU」と「鋼管下端部12BL」の間について
上記「変形例」の「鋼管上端部12BU」と「鋼管下端部12BL」の間は、「上下の鉄骨梁16の間にある」「鋼管本体部12Bにおける軸方向中間部としての鋼管中間部12BM」であり(【0020】)、「鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14は、補強鉄筋20によって補強されて」おらず、「これにより、鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14の曲げ耐力に対し」、「複数の補強鉄筋20によって補強されている」「充填コンクリート14の曲げ耐力が大きくなっている」こと(【0022】)。
(d) 上記(a)~(c)から、引用文献1には以下の技術事項が記載されていると認められる。
ア コンクリート充填鋼管柱10は、柱鋼管12と、柱鋼管12内に充填される充填コンクリート14と、補強手段としての補強鉄筋20と、を備え、柱鋼管12は、水平部材としての鉄骨梁16が接合される上下の鋼管仕口部12Aと、これらの鋼管仕口部12A間に延びる鋼管本体部12Bを有し、
鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLは、鋼管本体部12Bにおける軸方向端部であること(以下「認定事項ア」という。)。
イ 鋼管上端部12BUと鋼管下端部12BLの間は、上下の鉄骨梁16の間にある鋼管本体部12Bにおける軸方向中間部としての鋼管中間部12BMであり、鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14は、補強鉄筋20によって補強されておらず、これにより、鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14の曲げ耐力に対し、複数の補強鉄筋20によって補強されている充填コンクリート14の曲げ耐力が大きくなっていること(以下「認定事項イ」という。)。
c 引用発明
上記a及びbから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、特定事項A等に概ね対応させて符号a等を当審で付した。以下、符号a等を付した事項を「構成a」等という。
(引用発明)
「a コンクリート充填鋼管柱10は、柱鋼管12と、柱鋼管12内に充填される充填コンクリート14と、補強手段としての補強鉄筋20と、を備え、柱鋼管12は、水平部材としての鉄骨梁16が接合される上下の鋼管仕口部12Aと、これらの鋼管仕口部12A間に延びる鋼管本体部12Bを有し、
鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLは、鋼管本体部12Bにおける軸方向端部であり(認定事項ア)、
鋼管仕口部12Aと鉄骨梁16とが外ダイアフラム36を介して接合されており、具体的には、鋼管仕口部12Aの外周面には、上下一対の外ダイアフラム36が設けられ、各外ダイアフラム36には、鉄骨梁16のフランジ部16Aがそれぞれ溶接されており(【0049】)、
b 鋼管仕口部12A内の充填コンクリート14と鋼管上端部12BU内の充填コンクリートとにまたがって補強鉄筋20を埋設することにより、鋼管仕口部12Aに局部座屈が発生しても、当該鋼管仕口部12A内の充填コンクリート14と鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14との間で曲げモーメントが伝達され、また、局部座屈によって生じる圧縮力に鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14が抵抗可能になるため、当該充填コンクリート14の圧壊が抑制され(【0050】)、
また、鋼管下端部12BL、鋼管仕口部12A、及び鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14にまたがって補強鉄筋42を埋設することにより、施工性が向上すると共に、鋼管仕口部12A内の充填コンクリート14と鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14との間でより大きな曲げモーメントを伝達することができ(【0051】)、
c 鋼管上端部12BUと鋼管下端部12BLの間は、上下の鉄骨梁16の間にある鋼管本体部12Bにおける軸方向中間部としての鋼管中間部12BMであり、鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14は、補強鉄筋20によって補強されておらず、これにより、鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14の曲げ耐力に対し、複数の補強鉄筋20によって補強されている充填コンクリート14の曲げ耐力が大きくなっている(認定事項イ)、
d コンクリート充填鋼管柱10(【0018】)。」
2 引用文献2
a 引用文献2の記載事項
上記第3の当審において通知した拒絶の理由で引用文献2として引用された、本願出願前に頒布され又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった特開平11-181958号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0010】
【発明の実施の形態】図1および図2は、本発明のコンクリート充填鋼管部材を、コンクリート充填鋼管柱に適用した一実施形態を示すものである。図1および図2において、このコンクリート充填鋼管柱(コンクリート充填鋼管部材)10は、角形鋼管柱(鋼管)11内に、コンクリート12中に鋼繊維13を混入した鋼繊維補強コンクリート14を充填して固化させたものである。ここで、上記鋼繊維補強コンクリート14は、20~30mm程度に切断した鋼繊維13をコンクリート12中に、単位容積当り0.5~2.0%混入させたものである。なお、図中符号15は、H形鋼からなる梁である。また、符号16は、上記コンクリート充填鋼管柱10と梁15とを接合するためのダイヤフラムであり、このダイヤフラム16の中心部分には、鋼繊維補強コンクリート圧入用の孔部17が穿設されている。
・・・・
【0013】このようにして構築されたコンクリート充填鋼管柱10によれば、角形鋼管柱11内に、鋼繊維13を混入した鋼繊維補強コンクリート14を充填・固化させているので、従来のもののように、別途鉄筋を配設することなく鋼繊維補強コンクリート14によってコンクリート充填鋼管柱10全体としての耐力を向上させることができる。しかも、鋼繊維補強コンクリート14は、内部を鉄筋コンクリート造とした上記従来のものと比較して、角形鋼管柱11の内部における水平面内の相対移動が可能であるために、より高い靱性を得ることができる。さらに、角形鋼管柱11で拘束された鋼繊維補強コンクリート14は、火災時における軸力の負担能力も増加するために、耐火性能も向上させることができる。」
b 引用文献2の技術事項
上記aから、引用文献2には、次の技術(以下「引用文献2の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「コンクリート充填鋼管柱10は、角形鋼管柱11内に、コンクリート12中に鋼繊維13を混入した鋼繊維補強コンクリート14を充填して固化させたものであり(【0010】)、
角形鋼管柱11内に、鋼繊維13を混入した鋼繊維補強コンクリート14を充填・固化させているので、従来のもののように、別途鉄筋を配設することなく鋼繊維補強コンクリート14によってコンクリート充填鋼管柱10全体としての耐力を向上させることができる(【0013】)、技術。」
3 対比・判断
(1) 本願発明と引用発明との対比
a 特定事項Aについて
引用発明の構成aの「鉄骨梁16」、「上下の鋼管仕口部12A」、「鋼管本体部12B」、「柱鋼管12」は、それぞれ、本願発明の「鉄骨梁」、「上下の仕口部」、「鋼管本体部」、「柱鋼管」に相当する。
また、引用発明の構成aにおいて、「鋼管仕口部12Aと鉄骨梁16とが外ダイアフラム36を介して接合され」、「具体的には、鋼管仕口部12Aの外周面には、上下一対の外ダイアフラム36が設けられ」ているところ、上記「鋼管仕口部12Aの外周面」に設けられる「上下一対の外ダイアフラム36」は、本願発明の「仕口部に設けられる一対のダイアフラム」に相当する。
そうすると、「鉄骨梁16が接合される上下の鋼管仕口部12Aと、これらの鋼管仕口部12A間に延びる鋼管本体部12Bを有し」、「鋼管仕口部12Aの外周面」に「上下一対の外ダイアフラム36」が設けられる引用発明は、本願発明の特定事項A「鉄骨梁がそれぞれ接合される上下の仕口部と、上下の前記仕口部を接続する鋼管本体部と、前記仕口部に設けられる一対のダイアフラムと、を有する柱鋼管と」を備える。
b 特定事項Bについて
引用発明の構成aの「鋼管本体部12Bにおける軸方向端部であ」る「鋼管下端部12BL」、「鋼管上端部12BU」は、それぞれ、本願発明の「柱脚部」、「柱頭部」に相当する。
また、引用発明の構成bにおいて、「鋼管下端部12BL、鋼管仕口部12A、及び鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14にまたがって補強鉄筋42を埋設する」とされているところ、上記「補強鉄筋42を埋設」した「充填コンクリート14」は、(補強鉄筋42によって)「補強」された「充填コンクリート」といえる。
そうすると、引用発明には、「鋼管下端部12BL、鋼管仕口部12A、及び鋼管上端部12BU」にまたがって、(補強鉄筋42によって)「補強」された「コンクリート」が充填されていると認められる。
そして、上記aの「上下の仕口部」、「鋼管本体部」についての検討、及び、冒頭の「柱頭部」及び「柱脚部」についての検討を踏まえると、引用発明の構成bと、本願発明の特定事項Bとは、「上下の前記仕口部、並びに前記鋼管本体部の柱頭部及び柱脚部にそれぞれ充填される」「補強コンクリート」を有する点で共通する。
c 特定事項Cについて
引用発明の構成cの「鋼管上端部12BUと鋼管下端部12BLの間」の「鋼管本体部12Bにおける軸方向中間部としての鋼管中間部12BM」は、本願発明の「前記鋼管本体部における前記柱頭部と前記柱脚部との間の中間部」に相当し、引用発明の構成cの「補強鉄筋20によって補強されて」いない「鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14」は、本願発明の「中間部に充填される普通コンクリート」に相当する。
そうすると、引用発明の構成cは、本願発明の特定事項Cの「前記鋼管本体部における前記柱頭部と前記柱脚部との間の中間部に充填される普通コンクリート」を備える。
d 特定事項Dについて
引用発明の構成dの「コンクリート充填鋼管柱10」は、本願発明の特定事項Dの「コンクリート充填鋼管柱」に相当する。
してみると、引用発明の構成dは、本願発明の特定事項Dを備える。
(2)一致点、相違点
上記(1)から、本願発明と引用発明とは、
「A 鉄骨梁がそれぞれ接合される上下の仕口部と、上下の前記仕口部を接続する鋼管本体部と、を有する柱鋼管と、
B’ 上下の前記仕口部、並びに前記鋼管本体部の柱頭部及び柱脚部にそれぞれ充填される補強コンクリートと、
C 前記鋼管本体部における前記柱頭部と前記柱脚部との間の中間部に充填される普通コンクリートと、
D を備えるコンクリート充填鋼管柱。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点](特定事項B)
「上下の前記仕口部、並びに前記鋼管本体部の柱頭部及び柱脚部にそれぞれ充填される補強コンクリート」について、本願発明は「鉄筋及び形鋼が埋設されない繊維補強コンクリート」であるのに対し、引用発明は「複数の補強鉄筋20によって補強されている充填コンクリート14」であって、「鉄筋及び形鋼が埋設されない繊維補強コンクリート」ではない点。
(3) 相違点についての判断
a 引用文献2の技術事項において、「コンクリート充填鋼管柱10」の「角形鋼管柱11内に、コンクリート12中に鋼繊維13を混入した鋼繊維補強コンクリート14を充填して固化させた」「鋼繊維補強コンクリート14」によって、「別途鉄筋を配設することなく」「コンクリート充填鋼管柱10全体としての耐力を向上させることができる」としている。
上記「別途鉄筋を配設することな」い「鋼繊維補強コンクリート14」は、「鉄筋及び形鋼が埋設されない繊維補強コンクリート」といえる。
b また、上記aの「鋼繊維補強コンクリート14」によって、「別途鉄筋を配設することなく」「コンクリート充填鋼管柱10全体としての耐力を向上させることができる」は、「コンクリート充填鋼管柱10」の全体に「別途鉄筋を配設」したものと、「コンクリート充填鋼管柱10」に「鋼繊維補強コンクリート14」を充填したものとを、耐力について比較したものと理解される、すなわち、「別途鉄筋を配設」しなくても、「鋼繊維補強コンクリート14」を充填したものを用いることにより、「鉄筋」を配設するのと同様に耐力を向上させることができることを意味するものと理解される。
c そして、引用発明において、「充填コンクリート14の圧壊」を抑制し、「鋼管仕口部12A内の充填コンクリート14と鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14との間でより大きな曲げモーメントを伝達する」ために、「鋼管下端部12BL、鋼管仕口部12A、及び鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14にまたがって補強鉄筋42を埋設」し(構成b)、それによって、「鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14の曲げ耐力に対し、複数の補強鉄筋20によって補強されている充填コンクリート14の曲げ耐力が大きくなっている」(構成c)ところ、引用発明の「鋼管中間部12BM内の充填コンクリート14の曲げ耐力に対し、複数の補強鉄筋20によって補強されている充填コンクリート14」と、引用文献2の技術事項の「鋼繊維補強コンクリート14」は、コンクリート充填鋼管柱に用いられる補強コンクリートという作用機能が共通するから、引用発明の「鋼管下端部12BL、鋼管仕口部12A、及び鋼管上端部12BU内」「にまたがって」「補強鉄筋42を埋設」した「充填コンクリート14」に換えて、「別途鉄筋を配設」する必要がない、引用文献2の技術事項に記載された「鋼繊維補強コンクリート14」を用い、上記相違点に係る本願発明の特定事項Bの構成とすることは、当業者にとっては容易である。
d また、引用文献1には、「コンクリート充填鋼管柱10では、鋼管本体部12Bの全長に渡って充填コンクリート14を同じ曲げ耐力で補強する構成と比較して、施工性の向上、工期短縮、及びコスト削減を図ることができる」ことが記載されており(【0027】)、コンクリートに他の材料を埋設した補強コンクリートを形成するにあたり、他の材料が埋設される範囲は、引用発明の補強鉄筋が埋設される範囲であることが明らかであるといえるから、他の材料をコンクリートに埋設する示唆がない「中間部」にまで、鋼繊維13をコンクリート12中に混入させた「繊維補強コンクリート14」を用いることが必須であると考えるべき理由は見当たらない。
e 本願発明の奏する効果は、引用発明、引用発明2の技術事項の奏する効果から、当業者が予測することができる程度のものである。
(4) 請求人の主張について
出願人は、令和8年2月2日提出の意見書の「4.本願発明と引用発明との相違」の(3)~(5)において、以下のような主張をしている。
a 主張(3)について
(a) 請求人は、上記意見書の(3)において、引用文献1には、充填コンクリート14のうち補強鉄筋20が埋設された部位を、引用文献2の鋼繊維補強コンクリート14で置換するための動機付けが存在せず、当該置換が当業者にとって容易である、ということはできず、また、仮に引用文献1において、充填コンクリート14のうち補強鉄筋20が埋設された部位を、引用文献2の鋼繊維補強コンクリート14に置換すると、鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLと鋼管仕口部12Aとの間で曲げモーメントを伝達するという機能が消失し、つまり、引用文献1において、充填コンクリート14のうち補強鉄筋20が埋設された部位を、引用文献2の鋼繊維補強コンクリート14で置換することには、阻害要因がある旨主張している。
(b) しかしながら、引用発明は、「鋼管下端部12BL、鋼管仕口部12A、及び鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14にまたがって補強鉄筋42を埋設」したものであって、「鋼管仕口部12A内の充填コンクリート14と鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14との間でより大きな曲げモーメントを伝達することができ」るものであり(構成b)、同様に、「鋼管仕口部12A内の充填コンクリート14」と「鋼管下端部12BL」内の充填コンクリート14との間でより大きな曲げモーメントを伝達することができることが明らかであるから、引用発明は、出願人の主張する「鋼管上端部12BU及び鋼管下端部12BLと鋼管仕口部12Aとの間で曲げモーメントを伝達するという機能」を備える。
ここで、上記(3)cで検討したように、引用発明の「複数の補強鉄筋20によって補強されている充填コンクリート14」と、引用文献2の技術事項の「鋼繊維補強コンクリート14」は、コンクリート充填鋼管柱に用いられる補強コンクリートという作用機能が共通するから、引用発明の「複数の補強鉄筋20によって補強されている充填コンクリート14」に換えて、引用文献2の技術事項における「別途鉄筋を配設」する必要がない「鋼繊維補強コンクリート14」を用いることには、動機付けがあるといえる。
また、上記(3)c、dで検討したように、引用発明の「補強鉄筋42を埋設」した「充填コンクリート14」に換えて、引用文献2の技術事項における「別途鉄筋を配設」する必要がない「鋼繊維補強コンクリート14」を用いたものにおいても、引用発明の上記「曲げモーメントを伝達するという」機能を発揮することが明らかであるから、「補強鉄筋42を埋設」した「充填コンクリート14」に換えて「鋼繊維補強コンクリート14」を用いることに、阻害要因があるとはいえない。
そうすると、請求人の主張するような「引用文献1において」「引用文献2の鋼繊維補強コンクリート14で置換するための動機付けが存在」しないということはなく、また、「引用文献1において、充填コンクリート14のうち補強鉄筋20が埋設された部位を、引用文献2の鋼繊維補強コンクリート14で置換することには、阻害要因がある」とはいえない。
よって、請求人の上記主張(3)の主張は採用できない。
c 主張(4)について
(a) 請求人は、上記意見書の(4)において、引用文献1の補強鉄筋20は、図1等に示されるように、鋼管仕口部12Aには埋設されておらず、そのため、仮に引用文献1に引用文献2の鋼繊維補強コンクリート14を適用しても、引用文献1において、鋼管仕口部12A内の充填コンクリート14は、普通コンクリートのままで、引用文献2の鋼繊維補強コンクリート14によって置換されることはなく、本願発明の構成は、仮に引用文献1に引用文献2を組み合わせても得ることはできない旨主張している。
(b) しかしながら、引用発明は、「鋼管下端部12BL、鋼管仕口部12A、及び鋼管上端部12BU内の充填コンクリート14にまたがって補強鉄筋42を埋設」したものであるから、上記(3)c、dで検討したように、引用発明の「補強鉄筋42を埋設」した「充填コンクリート14」に換えて、「別途鉄筋を配設」する必要がない、引用文献2の技術事項に記載された「鋼繊維補強コンクリート14」を充填したものは、「鋼管仕口部12A」にも「鋼繊維補強コンクリート14」が充填されることとなるから、請求人の主張するような「鋼管仕口部12A内の充填コンクリート14は、普通コンクリートのまま」ということはない。
よって、請求人の上記主張(4)の主張も採用できない。
e 主張(5)について
(a) 請求人は、上記意見書の(5)において、引用文献1の図13(A)及び図13(B)に示される構成では、鋼管仕口部12A及び鋼管上端部12BUに補強鉄筋20がまたがるように配筋されているが、この構成では、鋼管仕口部12Aに一対のダイアフラムが存在しないことを前提として構成されており、したがって、引用文献1の図13(A)及び図13(B)に示される構成から、本願発明を容易に想到することはできない旨主張している。
(b) 上記「一対のダイアフラム」について、本願の発明の詳細な説明には、次のように記載されている。
「【0024】
なお、一対のダイアフラム18は、内ダイアフラムに限らず、通しダイアフラム又は外ダイアフラム等であっても良い。また、一対のダイアフラム18は、省略されても良い。」
これによれば、本願における「一対のダイアフラム18」は「内ダイアフラム」のみを意味するものではなく「外ダイアフラム」等も意味し、本願発明の「一対のダイアフラム」には、「外ダイアフラム」も含まれる。
(c) そうすると、「鋼管仕口部12Aの外周面には、上下一対の外ダイアフラム36が設けられ」ている引用発明は、「仕口部に設けられる一対のダイアフラム」を備えているといえるから、引用発明において、出願人の主張するような、「鋼管仕口部12Aに一対のダイアフラムが存在しないことを前提」として構成されているということはない。
よって、請求人の上記主張(5)の主張も採用できない。
(5) 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-015012