特許拒絶査定不服審判
2024-013550
液晶表示パネル及び車載液晶表示装置
- 審判番号
- 2024-013550
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-572054
- 請求日
- 2024年08月22日
- 審決日
- 2025年11月10日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】武漢華星光電技術有限公司
- 【請求人代理人】松村 啓
- 審判長/審判官
- 審判長 藤田 年彦
- 審判官 吉野 三寛
- 審判官 小澤 尚由
- 分類
- P18 .121-Z (G02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-572054「液晶表示パネル及び車載液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 5月19日国際公開、WO2023/082343、令和 6年 1月25日国内公表、特表2024-503150〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)11月25日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2021年11月15日(以下「優先日」という。)、中国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 1月18日 :翻訳文の提出
令和6年 1月24日付け:拒絶理由通知書
同年 4月30日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 6月10日 :原査定の謄本の送達)
同年 8月22日 :審判請求書の提出
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年4月30日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「表示領域と、赤外光線を通過させる機能領域と、を含む液晶表示パネルであって、
複数の絶縁層を含むアレイ基板と、
前記アレイ基板に対向して設置され、複数の絶縁層を含むカラーフィルム基板と、を含み、
前記アレイ基板、及び/又は前記カラーフィルム基板において、前記機能領域に位置する屈折率の異なる隣接する絶縁層が形成する反射インターフェースの数は、前記表示領域に位置する屈折率の異なる隣接する反射インターフェースの数より大きく、前記反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層の屈折率の差の値の絶対値は、第1の所定の閾値以上であり、
前記反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層における反射インターフェースは、機能領域および表示領域に位置する反射インターフェースであり、
前記第1の所定の閾値とは、隣接する2つのフィルム層の屈折率が、ある閾値より大きい場合にのみ、前記隣接する両側のフィルム層の間のインターフェースに反射又は大きい射出が発生し、この場合にのみ、隣接する2つの絶縁層の間のインターフェースを反射インターフェースとすることを指す、液晶表示パネル。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Eまでに分説する。
<本願発明の分説>
X 表示領域と、赤外光線を通過させる機能領域と、を含む液晶表示パネルであって、
A 複数の絶縁層を含むアレイ基板と、
B 前記アレイ基板に対向して設置され、複数の絶縁層を含むカラーフィルム基板と、を含み、
C 前記アレイ基板、及び/又は前記カラーフィルム基板において、前記機能領域に位置する屈折率の異なる隣接する絶縁層が形成する反射インターフェースの数は、前記表示領域に位置する屈折率の異なる隣接する反射インターフェースの数より大きく、前記反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層の屈折率の差の値の絶対値は、第1の所定の閾値以上であり、
D 前記反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層における反射インターフェースは、機能領域および表示領域に位置する反射インターフェースであり、
E 前記第1の所定の閾値とは、隣接する2つのフィルム層の屈折率が、ある閾値より大きい場合にのみ、前記隣接する両側のフィルム層の間のインターフェースに反射又は大きい射出が発生し、この場合にのみ、隣接する2つの絶縁層の間のインターフェースを反射インターフェースとすることを指す、
X 液晶表示パネル。
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本願は、表示の技術分野に関し、特に液晶表示パネル及び車載液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示技術の発展及び安全運転の要求に伴い、従来の車両にDMS(Driver Monitor System、運転者状態監視システム)が設置されることがあり、車両にはアクティブ赤外線センサを設置し、携帯電話の赤外光情報を通じて、運転者の状態を監視する。具体的には、赤外線カメラを隠して開孔を減少させるために、赤外線カメラを液晶表示画面の下に設置し、液晶表示画面に対して孔を掘り下げることにより、赤外線カメラの正常な動作を実現する場合がある。現在、赤外線カメラを有する液晶表示画面において、ブラインドビアを掘り下げることにより、カラーフィルム基板及びアレイ基板におけるフィルム層を除去し、赤外光の透過率を向上させる場合がある。しかしながら、赤外線カメラの設置エリアにおいて、液晶表示画面から複数のフィルム層が掘り下げて除去されることで、赤外線カメラの設置領域の光線の反射率と表示領域の光線の反射率とが異なって、液晶表示画面に輝度差が存在するために全黒を達成できないという現象を引き起こす場合がある。
【0003】
したがって、従来の液晶表示画面は、赤外線カメラの設置領域と表示領域とを比較すると、光線の反射率が異なるために全黒表示を実現できないという技術的課題が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の実施例は、従来の液晶表示画面に存在する、赤外線カメラの設置領域と表示領域とを比較すると、光線の反射率が異なるために全黒表示を実現できないという技術的課題を解決するための液晶表示パネル及び車載液晶表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本願に係る技術的解決手段は、以下のとおりである。
【0006】
本願の実施例に係る、表示領域と、赤外光線を通過させる機能領域と、を含む液晶表示パネルは、
複数の絶縁層を含むアレイ基板と、
前記アレイ基板に対向して設置され、複数の絶縁層を含むカラーフィルム基板と、を含み、
前記アレイ基板、及び/又は前記カラーフィルム基板において、前記機能領域に位置する屈折率の異なる隣接する絶縁層が形成する反射インターフェースの数は、前記表示領域に位置する屈折率の異なる隣接する反射インターフェースの数より大きく、前記反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層の屈折率の差の値の絶対値は、第1の所定の閾値以上である。」
「【発明の効果】
【0026】
本願は、液晶表示パネル及び車載液晶表示装置を提供する。該液晶表示パネルは、表示領域と、赤外光線を通過させる機能領域と、を含み、液晶表示パネルは、複数の絶縁層を含むアレイ基板と、アレイ基板に対向して設置され、複数の絶縁層を含むカラーフィルム基板と、を含み、アレイ基板、及び/又はカラーフィルム基板において、機能領域に位置する屈折率の異なる隣接する絶縁層が形成する反射インターフェースの数は、表示領域に位置する屈折率の異なる隣接する反射インターフェースの数より大きく、反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層の屈折率の差の値の絶対値は、第1の所定の閾値以上である。本願では、アレイ基板、及び/又はカラーフィルム基板において、機能領域に位置する屈折率の異なる隣接する絶縁層が形成する反射インターフェースの数を、表示領域に位置する屈折率の異なる隣接する反射インターフェースの数より大きくし、液晶表示パネルの反射率が各フィルム層の反射率を加算したものである。そのため、本願では、赤外光学透過率に影響することなく、機能領域の反射インターフェースの数を表示領域の反射インターフェースの数より大きくすることにより、表示領域と比較して機能領域の光線の反射率を向上させる。これにより、全黒表示時の機能領域と表示領域との輝度差を減少させ、ひいては解消する。」
「【0031】
図1に示すように、本願の実施例に係る、表示領域131と、赤外光線を通過させる機能領域132と、を含む液晶表示パネル1は、
複数の絶縁層(例えば、第2の基板121)を含むアレイ基板12と、
上記アレイ基板12に対向して設置され、複数の絶縁層(例えば、第1の基板111)を含むカラーフィルム基板11と、を含み、
ここで、上記アレイ基板12、及び/又は上記カラーフィルム基板11において、上記機能領域132に位置する屈折率の異なる隣接する絶縁層が形成する反射インターフェースの数は、上記表示領域131に位置する屈折率の異なる隣接する反射インターフェースの数より大きく、上記反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層の屈折率の差の値の絶対値は、第1の所定の閾値以上である。」
「【図1】
[図:0001433683000001.jpg]
」
「【0032】
本願の実施例に係る液晶表示パネルは、アレイ基板、及び/又はカラーフィルム基板において、機能領域に位置する屈折率の異なる隣接する絶縁層が形成する反射インターフェースの数を、表示領域に位置する屈折率の異なる隣接する反射インターフェースの数より大きくし、液晶表示パネルの反射率が各フィルム層の反射率を加算したものである。そのため、本願では、赤外光学透過率に影響することなく、機能領域の反射インターフェースの数を表示領域の反射インターフェースの数より大きくすることにより、表示領域と比較して機能領域の光線の反射率を向上させる。これにより、全黒表示時の機能領域と表示領域との輝度差を減少させ、ひいては解消する。
【0033】
なお、本願の実施例では、絶縁層とは、金属層(例えば、ゲート層)と、ITO(酸化インジウムスズ)又は他の導電材料が形成する共通電極層及び画素電極層と、半導体活性層とを含まない無機フィルム層及び有機フィルム層を指す。具体的には、ブラックマトリクスの吸光作用のため、本願の実施例で限定された絶縁層は、ブラックマトリックスを含まない。
【0034】
なお、反射インターフェースとは、屈折率の異なる隣接する絶縁層の間に可視光線を反射するインターフェースを指し、反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層の屈折率の差の値の絶対値は、第1の所定の閾値以上である。例えば、表示領域において、図1に示すように、第1の基板111とカラーレジスト層113との屈折率の差の値の絶対値は、第1の所定の閾値以上であり、第1の基板111とカラーレジスト層113との間のインターフェースは、反射インターフェースであるが、ブラックマトリクス115が光線を吸収し、光線を反射しないため、ブラックマトリクス115と第1の基板111との間のインターフェースは、反射インターフェースではない。同時に、カラーレジスト層113と保護層114との屈折率の差の値の絶対値は、第1の所定の閾値以上であり、カラーレジスト層113と保護層114との間のインターフェースは、反射インターフェースであるが、支柱116は、ブラックマトリクス115に対応するエリアに設置され、支柱116と保護層114との間に発散した光線がないか又は少なく、反射が少なく、ひいては反射がなく、且つ支柱116は、間隔を隔てて設置され、完全なインターフェースがなく、反射光線をさらに減少させ、ひいては光線を反射しないため、支柱と保護層との間に反射インターフェースがない。上記分析から分かるように、現在の液晶表示パネルにおいて、カラーフィルム基板において、表示領域に位置する反射インターフェースの数は2である。
【0035】
なお、第1の所定の閾値とは、隣接する2つのフィルム層の屈折率が、ある閾値より大きい場合にのみ、隣接する両側のフィルム層の間のインターフェースに反射又は比較的に大きい射出が発生し、この場合にのみ、隣接する2つの絶縁層の間のインターフェースを反射インターフェースとすることを指す。例えば、カラーレジスト層は、異なる色の光線を透過する複数のカラーレジストを含むが、異なる色の光線を透過する複数のカラーレジストの間の屈折率の差異が比較的に小さく、ひいては同じであり、例えば、0.01以下である。この場合、2層のカラーレジストの間のインターフェースが光線を基本的に反射しないため、2層の設置の間のインターフェースを反射インターフェースとすることではなく、2層のカラーレジストを一体とする。したがって、隣接する絶縁層の屈折率の差の値の絶対値が第1の所定の閾値以上に位置する場合、例えば、0.1以上である場合(実際の応用において、0.1、0.2、0.3、0、4、0.5等を選択してもよい)、隣接する絶縁層の間のインターフェースは、反射インターフェースであるが、隣接する絶縁層の屈折率の差の値の絶対値が第2の所定の閾値以下である場合、隣接する絶縁層を一体とみなすことができ、隣接する絶縁層の屈折率の差の値の絶対値が第2の所定の閾値と第1の所定の閾値との間にある場合、隣接する絶縁層の間のインターフェースを反射インターフェースとみなさない。
【0036】
なお、図2に示すように、液晶表示デバイスは、第1のフィルム層21、第2のフィルム層22及び第3のフィルム層23という複数の絶縁層を含み、外部光24が液晶表示デバイスに照射する場合、第1のフィルム層21の屈折率をn1とし、第2のフィルム層22の屈折率をn2とし、第3のフィルム層23の屈折率をn3とすると、外部光24の第1のフィルム層21と第2のフィルム層22との間のインターフェースでの反射率R1=(n2-n1)2/(n2+n1)2であり、外部光24の第2のフィルム層22と第3のフィルム層23との間のインターフェースでの反射率R2=(n3-n2)2/(n3+n2)2であり、液晶表示デバイスの外部光の反射率R=R1+R2である。」
「【図2】
[図:0001433683000002.jpg]
」
「【0037】
上記分析から分かるように、本願の実施例では、アレイ基板、及び/又はカラーフィルム基板において、機能領域における絶縁層が形成する反射インターフェースの数を、表示領域における絶縁層が形成する反射インターフェースの数より大きくすることにより、液晶表示パネルの機能領域の、外部環境光に対する反射率を向上させる。これにより、機能領域と表示領域との外部環境光に対する光線反射率の差異を縮小し、液晶表示パネルの全黒表示時の輝度の均一性を向上させる。」
3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する進歩性の欠如の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2010-049479号公報(主たる引用文献)
引用文献2.米国特許出願公開第2017/0185202号明細書(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2000-019318号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開平08-052404号公報(周知技術を示す文献)
4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である引用文献1(特開2010-049479号公報)には、次の記載がある(なお、当合議体により、引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルに接触または近接する物体の位置などの情報を取得する表示撮像装置、およびそのような表示撮像装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、表示装置の表示面に接触あるいは近接する物体の位置などを検出する技術が知られている。その中でも代表的で一般に広く普及している技術として、タッチパネルを備えた表示装置が挙げられる。
【0003】
このタッチパネルも種々のタイプのものが存在するが、一般に普及しているものとして、静電容量を検知するタイプのものが挙げられる。このタイプのものは、指でタッチパネルに接触することでパネルの表面電荷の変化を捕らえ、物体の位置などを検出するようになっている。したがってこのようなタッチパネルを用いることで、ユーザは直感的に操作することが可能である。
【0004】
また、最近では表示面上にこのようなタッチパネルを別途設けることなく、物体の位置などを検出することを可能とする技術が各種提案されている。例えば、特許文献1~5には、低温ポリシリコンを用いて製造した液晶表示装置等において、各画素に受光センサを配置し、物体の映像などを取り込むことができるようにしたものが開示されている。これら特許文献1~5に記載されている表示装置を利用すれば、取り込んだ映像に基づいて、物体の位置などを検出することも可能である。したがって、このような表示装置を利用することで、表示面上にタッチパネルなどの部品を別途設けることなく、簡易な構成で物体の位置などを検出することが可能となる。
【0005】
しかしながら、上記のように物体で反射された反射光を利用する場合、表示光の輝度が問題となることがあった。具体的には、受光する光の輝度は表示光の輝度に左右され、この表示光の輝度は画像データに応じて変化することから、例えば表示面がいわゆる黒表示状態のときには、表示光に基づいて物体の位置などを正確に検出するのが困難となってしまう。
【0006】
そこで、上記特許文献1~5には、例えば赤外光などの非可視光を利用して物体を検出するようにした表示装置も提案されている。そのような非可視光を表示光(可視光)と共に液晶表示装置の表示面から出射するようにすれば、例えば上記のように黒表示状態のときであっても、表示面に接触または近接する物体を確実に検出することができると考えられるからである。
…(中略)…
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献1~5における表示装置においても、非可視光を含む外光(環境光)の存在が問題となることがあった。具体的には、受光する光の輝度は環境光の強度に応じて変化することから、環境光の強度に応じて、受光素子から得られる受光信号が飽和してしまうことがあった。そのような飽和が生ずると、撮像した画像に基づいて物体の位置などを正確に検出するのが困難となってしまう。
【0009】
そこで、表示装置から出射する赤外光などの非可視光の波長領域を透過領域とするバンドパスフィルタ(透過フィルタ)を、受光素子上に設ける方法が考えられる。この方法は、環境光が存在する場合において、物体検出用の赤外光等に対する感度を維持するために有効である。
【0010】
しかしながら、晴天時のような強力な太陽光下(強度の高い環境光下)では、そのような環境光に起因した赤外光等の受光信号成分のほうが、表示装置からの反射光による赤外光等の受光信号成分と比べ、依然として大きくなってしまうことがあった。特に、晴天時の太陽光直下では、環境光に起因した赤外光等の強度が20(mW/cm2)にも達するため、表示装置からの反射光による赤外光等の強度と比べ、10倍以上に達し得る。したがって、やはり受光信号が飽和してしまい、物体の位置などを正確に検出するのが困難となってしまうことがあった。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、強度の高い外光(環境光)の下において、従来よりも物体を安定して検出することが可能な表示撮像装置、およびそのような表示撮像装置を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の表示撮像装置は、表示面内に配置され、可視光領域の光を発する複数の第1発光素子と、表示面内に配置され、近赤外光を発する第2発光素子と、表示面内に配置された複数の受光素子と、表示面内の受光素子の上層に配置されると共に、近赤外領域内における、大気中の水蒸気(H2O)またはオゾン(O3)による太陽光の吸収波長領域の少なくとも1つを透過波長領域として含む透過フィルタと、表示面から可視光領域の光が表示光として出射するように、画像データに基づいて第1発光素子を表示駆動する表示駆動部と、表示面から出射して検出対象物体で反射された光のうち、透過フィルタを透過した透過波長領域内の近赤外光を検出光として表示面上で検出するように、受光素子を受光駆動する受光駆動部と、受光素子から得られた受光信号に基づいて検出対象物体を検出する検出部とを備えたものである。
【0013】
ここで、「可視光領域」とは、380nm~780nm程度の波長領域を意味する。また、「近赤外光」とは、800nm~1120nm程度の波長領域(近赤外領域)の光を意味するものとする。また、「検出対象物体」とは、表示面に対して接触または近接するように接近している指やポインタ等の物体を意味する。
【0014】
本発明の電子機器は、画像表示機能および撮像機能を有する上記表示撮像装置を備えたものである。
【0015】
本発明の表示撮像装置および電子機器では、表示面内に配置された複数の第1発光素子において、表示駆動部による表示駆動により、可視光領域の光が画像データに表示光として出射する。また、表示面内に配置された第2発光素子から、近赤外光が発せられる。そして、表示面から出射して検出対象物体で反射された反射光(可視光領域の光および近赤外光)および環境光は、表示面内の受光素子の上層に配置された透過フィルタへ到達する。この透過フィルタを透過した上記透過波長領域内の近赤外光は、受光駆動部による受光駆動により、表示面内に配置された複数の受光素子によって検出光として検出される。そして、この受光素子から得られた受光信号に基づき、検出対象物体が検出される。ここで、上記透過フィルタの透過波長領域は、近赤外領域内における、大気中の水蒸気(H2O)またはオゾン(O3)による太陽光の吸収波長領域の少なくとも1つを含んでいることにより、太陽光による環境光(外光)の強度が高い状況下であっても、受光素子から得られる受光信号が飽和しにくくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表示撮像装置または電子機器によれば、表示面内の受光素子の上層に透過フィルタを配置すると共に、この透過フィルタの透過波長領域が、近赤外領域内における、大気中の水蒸気(H2O)またはオゾン(O3)による太陽光の吸収波長領域の少なくとも1つを含んでいるようにしたので、太陽光による環境光(外光)の強度が高い状況下であっても、受光素子から得られる受光信号が飽和しにくくなる。よって、強度の高い外光(環境光)の下において、従来よりも物体を安定して検出することが可能となる。」
「【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係る表示撮像装置(液晶表示装置)の全体構成を表すものである。この液晶表示装置は、表示部1と、表示信号生成部21と、表示信号保持制御部22と、表示信号ドライバ23と、可視光発光用スキャナ24と、受光用スキャナ31と、受光信号レシーバ32と、受光信号保持部33と、位置検出部34とを備えており、画像データに基づく画像を表示部1に表示すると共に、この表示部1に接触または近接する物体(後述する検出対象物体12)の位置などを検出するものである。」
「【図1】
[図:0001433683000003.jpg]
」
【0019】
表示部1は、複数の各画素11が表示部1の全面に渡ってマトリクス状に配置されたLCD(Liquid Crystal Display)からなり、後述するように線順次動作をしながら所定の図形や文字などの画像を表示するものである。また、各画素11は、可視光および非可視光(近赤外光)をそれぞれ発する発光セルCWと、非可視光(近赤外光)を受光することが可能な受光セルCRとを有する発光受光セルCWRから構成され、後述するように画素ごとに発光動作と受光動作とを行うことができるようになっている。なお、この表示部1の構成の詳細については後述する。
…(中略)…
【0030】
次に、図2~図7を参照して、表示部1および発光受光セルCWRの構成の詳細について説明する。
【0031】
図2は、各画素11における発光受光セルCWRの構成の一例を平面図で表したものである。この発光受光セルCWRは、前述のように、発光セルCWと受光セルCRとを有している。また、そのうちの発光セルCWは、赤色発光する赤色発光セルCWrと、緑色発光する緑色発光セルCWgと、青色発光する青色発光セルCWbとを有している。また、赤色発光セルCWrは、赤色発光する部分である赤色発光素子CLrと、この赤色発光素子CLrを駆動するスイッチ素子(後述する発光素子選択スイッチSW1R)を含むTFT(Thin Film Transistor)回路部113Rとを有し、緑色発光セルCWgは、緑色発光する部分である緑色発光素子CLgと、この緑色発光素子CLgを駆動するスイッチ素子(後述する発光素子選択スイッチSW1G)を含むTFT回路部113Gとを有し、青色発光セルCWbは、青色発光する部分である青色発光素子CLbと、この青色発光素子CLbを駆動するスイッチ素子(後述する発光素子選択スイッチSW1B)を含むTFT回路部113Bとを有している。なお、これら赤色発光素子CLr、緑色発光素子CLgおよび青色発光素子CLbとTFT回路部113との接続関係、ならびにTFT回路部113と前述の表示信号ドライバ23、可視光発光用スキャナ24、受光用スキャナ31および受光信号レシーバ32との接続関係の詳細は後述(図4)する。また、詳細は後述するが、赤色発光素子CLr、緑色発光素子CLgおよび青色発光素子CLbの形成領域と、TFT回路部113R,113G,113Bの形成領域とには、カラーフィルタ107が配置されており、この領域からは非可視光(近赤外光)も出射されるようになっている。」
「【図2】
[図:0001433683000004.jpg]
」
「【0032】
受光セルCRは、非可視光(近赤外光)を受光する部分である受光センサ111と、この受光センサ111を駆動するスイッチ素子(後述する受光素子選択スイッチSW2)を含む受光センサ回路部112とを有している。受光センサ111は例えばフォトダイオードなどから構成され、このフォトダイオードは、例えば単結晶シリコン、多結晶シリコン(ポリシリコン)または非晶質シリコン(アモルファスシリコン)などにより構成される。ここで、本実施の形態のように可視光領域よりも長波長側の非可視光(近赤外光)を利用する場合、受光センサ111は、アモルファスシリコンよりも、多結晶シリコンや単結晶シリコンから構成されていることが好ましい。これは、多結晶シリコンや単結晶シリコンによって受光センサ111を構成したほうが、受光可能な光の波長領域が広くなる(約1100nm以下の波長領域)からである。なお、詳細は後述するが、受光センサ111の形成領域(受光センサ111の上層)および受光センサ回路部112の形成領域(受光センサ回路部112の上層)には、赤外線透過フィルタ108が配置されており、近赤外領域内の所定の透過波長領域の光が選択的に受光されるようになっている。
【0033】
ここで、これら赤色発光素子CLr、緑色発光素子CLgおよび青色発光素子CLbが、本発明における「液晶素子」の一具体例に対応し、受光センサ111が本発明における「受光素子」の一具体例に対応する。
【0034】
図3は、図2におけるA-A部分の矢視断面図であり、表示部1の断面構成の一例を表したものである。この表示部1は、光源100と、各発光素子(赤色発光素子CLr、緑色発光素子CLgおよび青色発光素子CLb)ならびに受光素子(受光センサ111)を構成する積層構造とから構成されている。この積層構造は、具体的には光源100側から、偏光板101Aと、ガラス基板102Aと、回路部103と、絶縁層104と、透明画素電極105Aと、液晶層106と、透明電極105Bと、カラーフィルタ107および透過フィルタ108と、ブラックマトリクス109と、ガラス基板102Bと、偏光板101Bとから構成されている。すなわち、これら各発光素子は液晶素子から構成され、互いに対向するガラス基板102A,102Bの間に液晶層106を設けた構成となっている。」
「【図3】
[図:0001433683000005.jpg]
」
「【0035】
光源100は、可視光および非可視光(近赤外光)を上記した液晶素子へ向けて発するバックライトである。この光源100は、例えば、そのような可視光および非可視光(近赤外光;例えば、発光波長が940nmの近赤外光)を発するLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)を含んで構成されている。
【0036】
ガラス基板102A,102Bは、いずれもガラス材料からなる透明基板である。ただし、これら102A,102Bをガラス材料の代わりに、透明なプラスチック材料などから構成してもよい。なお、これらガラス基板102A,102Bが、本発明における「一対の透明基板」の一具体例である。
【0037】
回路部103は、図2に示したTFT回路部113や受光センサ111、受光センサ回路部112に対応する部分である。これらのうち、TFT回路部113に対応する回路部103の部分は、各透明画素電極105Aと電気的に接続されている。また、透明画素電極105Aは各発光セルCWr,CWg,CWbに配置されており、例えばITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ))などの透明材料から構成される。一方、透明電極105Bは透明電極105Aと対向する共通電極であり、透明電極105Aと同様に例えばITOなどの透明材料から構成される。また、絶縁層104は、各回路部103の間に形成されている。このような構成により、これら透明電極105A,105B間に表示データに応じた電圧が印加され、光源100からのバックライト光LOのうちの可視光Lrgbが、液晶層106において変調されるようになっている。
【0038】
カラーフィルタ107は、表示面10側のガラス基板102B上において、各発光セル(赤色発光セルCWr、緑色発光セルCWgおよび青色発光セルCWb)に対応する領域に配置されており、液晶層106を透過したバックライト光LOのうち、自己の発光色に対応する波長領域の可視光(赤色光Lr、緑色光Lgまたは青色光Lb)と、非可視光(近赤外光)LIRとを選択的に透過させるものである。なお、受光セルCRに対応する領域には、カラーフィルタ107は配置されないようになっている。
【0039】
赤外線透過フィルタ108は、カラーフィルタ107と同一の層内に配置されている。この赤外透過フィルタ108は、詳細は後述するが、近赤外領域内における、大気中の水蒸気(H2O)またはオゾン(O3)による太陽光の吸収波長領域の少なくとも1つを、透過波長領域として含むものである。これにより、表示面10から出射して検出対象物体(後述する検出対象物体12)で反射された反射光および環境光のうち、この赤外透過フィルタ108を透過した透過波長領域内の近赤外光が、検出光として受光センサ111(回路部103)で検出されるようになっている。
【0040】
ブラックマトリクス109は、各発光セルおよび各受光セルの間に配置されており、光源100からのバックライト光LOを遮断して表示面10側に出射しないようにするものである。
【0041】
このようにして、光源100からのバックライト光LOがカラーフィルタ107を透過することにより、各発光セルからは可視光Lrgbおよび非可視光(近赤外光)LIR、すなわち、赤色発光セルCWrからは赤色光Lr(可視光)および非可視光(近赤外光)LIRが、緑色発光セルCWgからは緑色光Lg(可視光)および非可視光(近赤外光)LIRが、青色発光セルCWbからは青色光Lb(可視光)および非可視光(近赤外光)LIRが、それぞれ出射されるようになっている。一方、受光セルCR上には赤外透過フィルタ108が配置されているため、この受光セルCRでは、非可視光(近赤外光)LIR(具体的には、赤外透過フィルタ108の透過波長領域内の近赤外光)が受光されるようになっている。
【0042】
したがって、各発光セルにおける可視光Lrgbおよび非可視光(近赤外光)LIRの発光スペクトルは、例えば図4(A)~(C)に示したようになる。すなわち、青色発光セルCWbでは、例えば図4(A)に示したように、しきい値波長W1(可視光領域と非可視光(近赤外光)領域とのしきい値波長)よりも短波長側である可視光領域側において青色発光スペクトルPbが観測される一方、このしきい値波長W1よりも長波長側である非可視光(近赤外光)領域(波長W1~W2の領域)には、非可視光(近赤外光)発光スペクトルPIRが観測されるようになっている。また、緑色発光セルCWgでは、例えば図4(B)に示したように、しきい値波長W1よりも短波長側である可視光領域側において緑色発光スペクトルPgが観測される一方、このしきい値波長W1よりも長波長側である非可視光(近赤外光)領域(波長W1~W2の領域)には、非可視光(近赤外光)発光スペクトルPIRが観測されるようになっている。また、赤色発光セルCWrでは、例えば図4(C)に示したように、しきい値波長W1よりも短波長側である可視光領域側において赤色発光スペクトルPrが観測される一方、このしきい値波長W1よりも長波長側である非可視光(近赤外光)領域(波長W1~W2の領域)には、非可視光(近赤外光)発光スペクトルPIRが観測されるようになっている。
【0043】
また、赤外透過フィルタ108は、例えば図5に模式的に示したように、近赤外領域内における、大気中の水蒸気(H2O)またはオゾン(O3)による太陽光の吸収波長領域の少なくとも1つ(ここでは、例えば900nm~960nm)を、透過波長領域として含んでいる。このような透過波長領域について、図6を参照して説明する。図6は、晴天時の太陽光スペクトルを示したものである。ハッチングされているのは、大気中の水蒸気(H2O)やオゾン(O3)による吸収のために、地表面での分光光強度が低下している波長帯(太陽光の吸収波長領域)である。図6において、図5に示された透過波長領域(900nm~960nm;図6中の符号P12参照)では、太陽光スペクトルが、大気中の水蒸気による吸収がなかった場合の約1/2の分光光強度になっている。したがって、詳細は後述するが、このような透過波長領域を含む赤外透過フィルタ108を用いることにより、他の透過波長領域の赤外透過フィルタを用いる場合と比べ、約2倍の環境光(外光)強度まで、物体検知を行うことが可能となるからである。
【0044】
また、この赤外透過フィルタ108は、透過波長領域として、上記した太陽光の吸収波長領域の吸収ピーク波長(930nm程度)を少なくとも含むようにするのが好ましい。また、透過波長領域として、近赤外領域内における、大気中の水蒸気(H2O)による太陽光の吸収波長領域の少なくとも1つを含むようにするのが好ましい。さらに、非可視光(近赤外光)発光スペクトルPIRは、このような透過波長領域を含む波長領域であることが好ましい。より高い環境光(外光)強度まで、物体検知を行うことが可能となるからである。
【0045】
このような透過波長領域を含む赤外透過フィルタ108は、例えば、短波長カット特性および長波長透過特性を有するフィルタと、短波長透過特性および長波長カット特性を有するフィルタとの2層構造により構成することができる。あるいは、バンドパス特性を有する単一材料の1層構造としてもよい。
【0046】
ここで、バンドパス特性を有するフィルタと、短波長カット特性および長波長透過特性を有するフィルタとの2層構造の一例について、フィルタの材料例、製造プロセス例および透過波長領域例を詳細に説明する。
【0047】
まず、レジスト塗布、パターン露光および焼成を順次行う通常のカラーフィルタ形成プロセスに先立って、TFT製造法においても用いられるプラズマCVD法を用いることにより、ガラス基板上にアモルファスシリコン(a-Si)層およびSiO2層を、例えば以下のような膜厚および順序にて交互に順次形成し、5層構造の干渉フィルタとする。
ガラス基板/a-Si(65nm)/SiO2(161nm)/a-Si(130nm)/SiO2(161nm)/a-Si(65nm)
【0048】
なお、干渉フィルタの設計方法については、藤原史朗編、光学薄膜 第2版(共立出版、1986年)、p.110の第6.2節に記載されており、この文献で言うS.H.W.型(Single Half-Wave System)フィルタを用いることができる。上記構造では、ガラス基板側から光が入射する場合、920nmを中心とした半値幅約40nmのバンドパス透過特性が得られた。
【0049】
次に、レジスト塗布、パターン露光および焼成による良く知られたフォトリソグラフィー法により、受光センサ111および受光センサ回路部112を含む受光セルCR(図2)の領域のパターンにレジストパターンを形成する。そして、反応性イオンエッチングにより、レジストパターンに覆われた部分以外の上記a-Si/SiO2の5層薄膜をエッチング除去し、最後にレジストパターンを剥離除去する。これら一連の工程により、上記a-Si/SiO2の5層薄膜の干渉フィルタが、受光セルCRの領域のパターンに形成される。
【0050】
この工程以降は、レジスト塗布、パターン露光および焼成を順次行う通常のカラーフィルタ形成プロセスにより、赤、青および緑の三色のカラーフィルタパターンを形成する。この際、上記5層薄膜の干渉フィルタは630nm以下の波長の光も透過するため、赤色カラーフィルタパターンは、図2に示した赤色発光セルCWrの領域に加え、受光センサ111および受光センサ回路部112を含む受光セルCRの領域をも覆うようにする。これにより、630nm以下の波長の光透過が防止されることになる。その結果、図5に示すような中心波長920nmバンドパス透過特性が実現された。」
(2) 引用文献1から当業者が把握できる事項の認定
ア 図3より、偏光板101A、ガラス基板102A、回路部103及び絶縁層104からなる積層体は、透明電極105B、カラーフィルタ107、透過フィルタ108、ブラックマトリクス109、ガラス基板102B、偏光板101Bからなる積層体と、液晶層106を挟んで対向していることを、当業者は把握することができる。
イ 【0047】より、ガラス基板とアモルファスシリコン(a-Si)層は異なる材料であることから、両者間に屈折率差を生じることは明らかである。また、アモルファスシリコン(a-Si)層とSiO2も同様に、両者間に屈折率差が生じることは明らかである。そうすると、引用文献1の記載から、ガラス基板上の5層薄膜の干渉フィルタにおいて、層の積層方向に5箇所屈折率差が生じていることを、当業者は把握することができる。
ウ 【0038】及び【0050】の記載から、カラーフィルタ107のレジストは、ガラス基板上に形成されるものであるところ、レジストとガラス基板は異なる材料であるから、両者間に屈折率差が生じることは明らかである。そうすると、引用文献1の記載から、ガラス基板上のカラーフィルタ107において、ガラス基板とカラーフィルタとの間に屈折率差が生じていることを、当業者は把握することができる。
(3) 引用発明の認定
前記(2)において認定した事項及び前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、【図1】~【図3】で示される実施の形態に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「液晶表示装置の表示部1であって、(【0018】)
表示部1は、複数の各画素11が表示部1の全面に渡ってマトリクス状に配置されたLCD(Liquid Crystal Display)からなり、後述するように線順次動作をしながら所定の図形や文字などの画像を表示するものであり、(【0019】)
各画素11は、可視光および非可視光(近赤外光)をそれぞれ発する発光セルCWと、非可視光(近赤外光)を受光することが可能な受光セルCRとを有する発光受光セルCWRから構成され、画素ごとに発光動作と受光動作とを行うことができ(【0019】)
発光セルCWは、赤色発光する赤色発光セルCWrと、緑色発光する緑色発光セルCWgと、青色発光する青色発光セルCWbとを有し、(【0031】)
赤色発光セルCWrは、赤色発光する部分である赤色発光素子CLrと、この赤色発光素子CLrを駆動するスイッチ素子を含むTFT(Thin Film Transistor)回路部113Rとを有し、緑色発光セルCWgは、緑色発光する部分である緑色発光素子CLgと、この緑色発光素子CLgを駆動するスイッチ素子を含むTFT回路部113Gとを有し、青色発光セルCWbは、青色発光する部分である青色発光素子CLbと、この青色発光素子CLbを駆動するスイッチ素子を含むTFT回路部113Bとを有し、(【0031】)
赤色発光素子CLr、緑色発光素子CLgおよび青色発光素子CLbの形成領域と、TFT回路部113R,113G,113Bの形成領域とには、カラーフィルタ107が配置されており、この領域からは非可視光(近赤外光)も出射されるようになっており、(【0031】)
受光セルCRは、非可視光(近赤外光)を受光する部分である受光センサ111と、この受光センサ111を駆動するスイッチ素子を含む受光センサ回路部112とを有し、(【0032】)
光源100と、各発光素子(赤色発光素子CLr、緑色発光素子CLgおよび青色発光素子CLb)ならびに受光素子(受光センサ111)を構成する積層構造とから構成され、(【0034】)
積層構造は、光源100側から、偏光板101Aと、ガラス基板102Aと、回路部103と、絶縁層104と、透明画素電極105Aと、液晶層106と、透明電極105Bと、カラーフィルタ107および透過フィルタ108と、ブラックマトリクス109と、ガラス基板102Bと、偏光板101Bとから構成され、(【0034】)
ガラス基板102A,102Bは、いずれもガラス材料からなる透明基板であり、(【0036】)
回路部103は、TFT回路部113や受光センサ111、受光センサ回路部112に対応する部分であり、(【0037】)
絶縁層104は、各回路部103の間に形成され、(【0037】)
カラーフィルタ107は、表示面10側のガラス基板102B上において、各発光セル(赤色発光セルCWr、緑色発光セルCWgおよび青色発光セルCWb)に対応する領域に配置されており、液晶層106を透過したバックライト光LOのうち、自己の発光色に対応する波長領域の可視光(赤色光Lr、緑色光Lgまたは青色光Lb)と、非可視光(近赤外光)LIRとを選択的に透過させるものであり、(【0038】)
受光セルCRに対応する領域には、カラーフィルタ107は配置されず(【0038】)
赤外線透過フィルタ108は、カラーフィルタ107と同一の層内に配置されており、(【0039】)
表示面10から出射して検出対象物体で反射された反射光および環境光のうち、この赤外透過フィルタ108を透過した透過波長領域内の近赤外光が、検出光として受光センサ111(回路部103)で検出され、(【0039】)
赤外透過フィルタ108は、透過波長領域として、太陽光の吸収波長領域の吸収ピーク波長(930nm程度)を少なくとも含むようにするのが好ましく、(【0044】)
このような透過波長領域を含む赤外透過フィルタ108は、バンドパス特性を有し、(【0045】)
バンドパス特性を有するフィルタとして、
プラズマCVD法を用いることにより、ガラス基板上にアモルファスシリコン(a-Si)層およびSiO2層を、ガラス基板/a-Si(65nm)/SiO2(161nm)/a-Si(130nm)/SiO2(161nm)/a-Si(65nm)のような膜厚および順序にて交互に順次形成し、5層構造の干渉フィルタとし、(【0046】、【0047】)
上記構造では、ガラス基板側から光が入射する場合、920nmを中心とした半値幅約40nmのバンドパス透過特性が得られ、(【0048】)
レジスト塗布、パターン露光および焼成による良く知られたフォトリソグラフィー法により、受光センサ111および受光センサ回路部112を含む受光セルCRの領域のパターンにレジストパターンを形成し、(【0049】)
レジストパターンに覆われた部分以外のa-Si/SiO2の5層薄膜をエッチング除去し、レジストパターンを剥離除去し、a-Si/SiO2の5層薄膜の干渉フィルタが、受光セルCRの領域のパターンに形成され、(【0049】)
レジスト塗布、パターン露光および焼成を順次行う通常のカラーフィルタ形成プロセスにより、赤、青および緑の三色のカラーフィルタパターンを形成し、(【0050】)
偏光板101A、ガラス基板102A、回路部103及び絶縁層104からなる積層体(以下「回路部積層体」という。)は、透明電極105B、カラーフィルタ107、透過フィルタ108、ブラックマトリクス109、ガラス基板102B、偏光板101Bからなる積層体(以下「カラーフィルタ積層体」という。)と、液晶層106を挟んで対向しており、(前記(2)ア)
ガラス基板上の5層薄膜の干渉フィルタにおいて、層の積層方向に5箇所屈折率差が生じており、(前記(2)イ)
ガラス基板上のカラーフィルタ107において、ガラス基板とカラーフィルタとの間に屈折率差が生じている(前記(2)ウ)
表示部1。」
5 引用文献3、4の記載事項及び技術常識の認定
(1) 引用文献3に記載された事項
原査定において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2000-19318号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「【0008】
基板投入収納機能部1は、製造装置内に基板をロードするあるいは製造装置から基板をアンロードする機能を有し、ハンドリングロボットから構成される。外部からこの基板投入収納機能部1を介して導入されたガラス基板は、洗浄機能部2に搬送され、洗浄処理され、次の基板乾燥機能部3に移送される。乾燥機能部3内部には、エアナイフなどの基板乾燥手段が配置され、基板に付着した洗浄液を乾燥させる。
【0009】
次いで基板はレジスト塗布機能部4に移され、黒色、赤色、緑色、青色のいずれかのカラーレジストをコーティングされ、次のプリベーク機能部5で仮焼成処理される。
【0010】
仮焼成の完了した基板は、露光機能部6内部で所定パターンに露光処理された後、次の現像機能部7で現像処理され、カラーレジストがストライプ形状にパターニングされる。そしてポストベーク機能部8でレジストの本焼成処理を受けて、一色目の着色層の形成工程が完了する。
【0011】
一色目の形成工程の完了した基板は、ハンドリングロボットで構成される基板搬送機能部9により、再び洗浄機能部2に送られ、二色目以降の着色層形成のために製造装置の各ユニット内を上記の手順で循環することにより、R、G、B、BLKの各色レジストが形成される。
【0012】
図2は、図1のレジスト塗布機能部4の内部構造を示す。スリットダイ12及びこれに接続されスリットダイ12にカラーレジスト液を供給するタンク13が4系統並べられ、基板11を保持するステージ14上に上下可動な状態で配置されている。ステージ14は、その下部に設けられたスクリュー駆動系により、一方向に平行移動できる。各色のカラーレジストの形成工程においては、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、黒色(BLK)のうちのいずれかの色系統のスリットダイ12よりカラーレジスト11が基板に供給される。」
「【図2】
[図:0001433683000006.jpg]
」
(2) 引用文献4に記載された事項
原査定において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開平8-52404号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「【0020】
カラーフィルタ用塗膜形成の場合、平板として透明平板を用いる。透明平板としては、特に限定されるものではないが、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のプラスチック平板やプラスチックフィルムおよびガラス板等全光透過率が70%以上の透明平板が好ましく用いられる。なおこれらの中ではガラス板がより好ましく用いられる。
【0021】
塗料の種類としては、特に限定されるものではないが、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニールアルコール樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂等の一種ないし二種以上の混合物およびこれらの感光性樹脂等が好ましく用いられる。なおこれらの樹脂に染料または顔料などの着色材を分散混合して、使用することもできる。
【0022】
透明平板への塗布後の膜厚は、特に限定されるものではないが、乾燥塗膜の状態で、0.1~5.0μmの範囲が好ましく、より好ましくは、0.2~3.0μmの範囲が好適に用いられる。乾燥後の塗膜が0.1μm未満では、乾燥塗膜に縦状のスジが発生し、品質上問題である。一方5.0μmを越える場合は、乾燥塗膜の平滑性が劣る。さらに塗料の使用量も多くなり、経済性に欠ける。
【0023】
カラーフィルタの製造方法については、たとえば、以下の方法があげられるが、これらに限定されるものではない。まず透明平板上に微細パターンからなる遮光層を形成する。この遮光層上に接着剤を添加した熱硬化性の塗料を塗布し、50~150℃の温度で乾燥して、熱硬化性塗膜を形成する。続いて該熱硬化性塗膜上にポジ型フォトレジストを塗布し、超高圧水銀灯などを用いて、マスク露光を行い、次いで該レリーフパターンをマスクとして、該熱硬化性塗膜をエッチングする。続いて該ポジ型フォトレジストを剥離した後、200~350℃に加熱焼成し、塗膜を熱硬化する。以上の工程を赤色、緑色および青色につて繰り返し、所定の赤色、緑色および青色の微細パターンを形成し、カラーフィルタとする。
【0024】
塗料の乾燥温度は、50~160℃の範囲が好ましく、より好ましくは、80~130℃の範囲が好適である。50℃未満では、乾燥時間が長く、生産効率が悪くなる。一方160℃以上では、熱硬化が進行してしまい、現像液に不溶化してしまう。
【0025】
一方着色剤を添加した感光性塗料の場合は、透明平板上に微細パターンからなる遮光層を形成し、該遮光層上に着色材を添加した感光性塗料を塗布して、50~150℃の温度で乾燥して、感光性塗膜を形成する。続いて超高圧水銀灯などを用いてマスク露光を行い、感光性塗料を光硬化する。その後遮光層上の未硬化感光性塗膜を現像、エッチングする。以上の工程を赤色、緑色および青色につて繰り返し、所定の赤色、緑色および青色の微細パターンを形成し、カラーフィルタとする。」
(3) 技術常識1の認定
前記(1)及び(2)に摘記した引用文献3、4の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。)
<技術常識1>
「レジストを利用したカラーフィルタの形成方法は、着色剤を添加したレジスト(カラーレジスト)を塗布し、仮硬化し、(引用文献3の【0009】、引用文献4の【0025】)
仮硬化後に露光処理、現像処理を行うことで、カラーレジストのパターニングを行うこと。(引用文献3の【0010】、引用文献4の【0025】)」
6 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点(液晶表示パネルについて)
(ア) 構成Xは、「表示領域と、赤外光線を通過させる機能領域と、を含む液晶表示パネル」の発明であることを特定するものである。
(イ) 引用発明の「表示部1」は、「複数の各画素11が表示部1の全面に渡ってマトリクス状に配置されたLCD(Liquid Crystal Display)からな[る]」ことから、本願発明でいう「液晶表示パネル」に相当する。
(ウ) 引用発明の「発光セルCW」及び「受光セルCR」は、それぞれ本願発明の「表示領域」及び「機能領域」に相当する。そして、引用発明の「表示部1」に配置された「各画素11」が、「可視光および非可視光(近赤外光)をそれぞれ発する発光セルCWと、非可視光(近赤外光)を受光することが可能な受光セルCRとを有する発光受光セルCWRから構成され[る]」ことを踏まえれば、引用発明の「表示部1」は、本願発明でいう「表示領域と、赤外光線を通過させる機能領域と、を含む」ものであるといえる。
(エ) 前記(ア)~(ウ)より、「液晶表示パネル」の発明である本願発明と「表示部1」の発明である引用発明は、「表示領域と、赤外光線を通過させる機能領域と、を含む液晶表示パネル」の発明である点において一致する。
イ 構成Aの観点(アレイ基板について)
(ア) 構成Aは、「複数の絶縁層を含むアレイ基板」を備えることである。
(イ) 引用発明における「回路部積層体」において、「回路部103」に対応する「TFT回路部113R、113G、113B」は、「表示部1の全面に渡ってマトリクス状に配置され[る]」各画素11の各色の発光セルCWr、CWg、CWbがそれぞれ有するものであることを踏まえれば、画素及び各色の発光セルに対応したアレイ状に配列されているといえるから、「偏光板101A、ガラス基板102A、回路部103及び絶縁層104からなる積層体」は、本願発明にいうところの「アレイ基板」であるといえる。
(ウ) 「回路部積層体」において、「回路部103」に対応する「TFT回路部113R、113G、113B」は、ゲート絶縁層等の複数の絶縁層を備えることは、例を示すまでもなく技術常識であるし、少なくともガラス基板102A及び絶縁層104は、絶縁層であるから、引用発明は、本願発明でいう「複数の絶縁層を含む」構成を備えるといえる。
(エ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「複数の絶縁層を含むアレイ基板」を備える点。
ウ 構成Bの観点(カラーフィルム基板について)
(ア) 構成Bは、「前記アレイ基板に対向して設置され、複数の絶縁層を含むカラーフィルム基板」を備えることである。
(イ) 引用発明の「カラーフィルタ積層体」は、カラーフィルタ107を備えることを踏まえれば、本願発明でいうところの「カラーフィルム基板」であるといえる。
(ウ) 引用発明の「透明電極105B、カラーフィルタ107、透過フィルタ108、ブラックマトリクス109、ガラス基板102B、偏光板101Bからなる積層体」において、「透過フィルタ」は、「ガラス基板上にアモルファスシリコン(a-Si)層およびSiO2層を」「交互に順次形成」して、「5層構造の干渉フィルタ」とするものであるから、引用発明は、本願発明でいう「複数の絶縁層を含む」構成を備えるといえる。
(エ) 引用発明の「偏光板101A、ガラス基板102A、回路部103及び絶縁層104からなる積層体は、透明電極105B、カラーフィルタ107、透過フィルタ108、ブラックマトリクス109、ガラス基板102B、偏光板101Bからなる積層体と、液晶層106を挟んで対向している」ことから、前記イも踏まえれば、引用発明は、本願発明の「前記アレイ基板に対向して設置され」る構成を備えるといえる。
(オ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記アレイ基板に対向して設置され、複数の絶縁層を含むカラーフィルム基板」を備える点。
エ 構成Cの観点(反射インターフェースの数について)
(ア) 構成Cは、「前記アレイ基板、及び/又は前記カラーフィルム基板において、前記機能領域に位置する屈折率の異なる隣接する絶縁層が形成する反射インターフェースの数は、前記表示領域に位置する屈折率の異なる隣接する反射インターフェースの数より大きく、前記反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層の屈折率の差の値の絶対値は、第1の所定の閾値以上であり」を備えることである。
(イ) 引用発明は、「カラーフィルタ積層体」が「ガラス基板上の5層薄膜の干渉フィルタにおいて、層の積層方向に5箇所屈折率差が生じている」ことから、本願発明でいう「前記機能領域に位置する屈折率の異なる隣接する絶縁層が形成する反射インターフェースの数」を第1の所定数、ここでは5つである構成を備えるものであるといえる。
(ウ)a 引用発明は、「ガラス基板上のカラーフィルタ107において、ガラス基板とカラーフィルタとの間に屈折率差が生じている」ことから、本願発明でいう「前記表示領域に位置する屈折率の異なる隣接する反射インターフェースの数」を第2の所定数、ここでは1つである構成を備えるものであるといえる。
b 一方で、引用発明においては、「カラーフィルタ107」内での層構造は明らかにされておらず、単層であるか複数層であるか不明であることから、カラーフィルタ107内において、その積層方向に屈折率差を生じているか不明である。
(エ) 引用発明は、「ガラス基板上の5層薄膜の干渉フィルタにおいて、層の積層方向に5箇所屈折率差が生じている」とともに「ガラス基板上のカラーフィルタ107において、ガラス基板とカラーフィルタとの間に屈折率差が生じている」ところ、これらの屈折率差のいずれもこれらの屈折率差の最小値未満の値より大きいことは自明であるから、本願発明でいう「前記反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層の屈折率の差の値の絶対値は、第1の所定の閾値以上であ[る]」構成を備えるといえる。
(オ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Cの観点にける一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Cの観点における一致点
「前記アレイ基板、及び/又は前記カラーフィルム基板において、前記機能領域に位置する屈折率の異なる隣接する絶縁層が形成する反射インターフェースの数は、」第1の所定数であり、「前記表示領域に位置する屈折率の異なる隣接する反射インターフェースの数」は、第2の所定数であり、「前記反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層の屈折率の差の値の絶対値は、第1の所定の閾値以上であ[る]」点。
b 構成Cの観点における相違点
本願発明においては、第1の所定数は、第2の所定数より大きいのに対して、
引用発明においては、第1の所定数は5つであるものの、カラーフィルタ107内において、その積層方向に屈折率差を生じているか不明であることから、第2の所定数が定まらない点。
オ 構成Dの観点(反射インターフェースの位置について)
(ア) 構成Dは、「前記反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層における反射インターフェースは、機能領域および表示領域に位置する反射インターフェースであり、」を備えることである。
(イ) 前記エ(イ)~同(エ)を踏まえれば、引用発明は、本願発明でいう「前記反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層における反射インターフェースは、機能領域および表示領域に位置する反射インターフェースであ[る]」構成を備えるといえる。
カ 構成Eの観点(第1閾値について)
(ア) 構成Eは、「前記第1の所定の閾値とは、隣接する2つのフィルム層の屈折率が、ある閾値より大きい場合にのみ、前記隣接する両側のフィルム層の間のインターフェースに反射又は大きい射出が発生し、この場合にのみ、隣接する2つの絶縁層の間のインターフェースを反射インターフェースとすることを指す、」を備えることである。
(イ) 引用発明の「赤外線透過フィルタ108」において、「5層構造の干渉フィルタ」であり、「層の積層方向に5箇所」生じている「屈折率差」によって、透過光以外の光は反射されるものであるから、前記エも踏まえると、引用発明は、本願発明でいう「前記第1の所定の閾値とは、隣接する2つのフィルム層の屈折率が、ある閾値より大きい場合にのみ、前記隣接する両側のフィルム層の間のインターフェースに反射又は大きい射出が発生し、この場合にのみ、隣接する2つの絶縁層の間のインターフェースを反射インターフェースとすることを指す」ことを備えるといえる。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「表示領域と、赤外光線を通過させる機能領域と、を含む液晶表示パネルであって、
複数の絶縁層を含むアレイ基板と、
前記アレイ基板に対向して設置され、複数の絶縁層を含むカラーフィルム基板と、を含み、
前記アレイ基板、及び/又は前記カラーフィルム基板において、前記機能領域に位置する屈折率の異なる隣接する絶縁層が形成する反射インターフェースの数は、第1の所定数であり、前記表示領域に位置する屈折率の異なる隣接する反射インターフェースの数は、第2の所定数であり、前記反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層の屈折率の差の値の絶対値は、第1の所定の閾値以上であり、
前記反射インターフェースの両側の隣接する絶縁層における反射インターフェースは、機能領域および表示領域に位置する反射インターフェースであり、
前記第1の所定の閾値とは、隣接する2つのフィルム層の屈折率が、ある閾値より大きい場合にのみ、前記隣接する両側のフィルム層の間のインターフェースに反射又は大きい射出が発生し、この場合にのみ、隣接する2つの絶縁層の間のインターフェースを反射インターフェースとすることを指す、液晶表示パネル。」である点。
イ 相違点1
本願発明においては、前記第1の所定数は、前記第2の所定数より大きいのに対して、引用発明においては、前記第1の所定数は5つであるものの、カラーフィルタ107内において、その積層方向に屈折率差を生じているか不明であることから、前記第2の所定数が定まらない点。
7 判断
(1) 相違点1について
前記相違点1を検討する。
引用発明において、カラーフィルタ107は、「レジスト塗布、パターン露光および焼成を順次行う通常のカラーフィルタ形成プロセスにより、赤、青および緑の三色のカラーフィルタパターンを形成」するものであるところ、前記5(3)の技術常識1を採用し、カラーレジストを塗布し、仮硬化し、仮硬化後に露光処理、現像処理を行うことで、カラーフィルタ107を形成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、技術常識1の方法を採用して形成されるカラーフィルタは、着色剤を添加したカラーレジストを用いることになり、いわゆる吸収型のカラーフィルタであることから、カラーフィルタ107のレジスト層(絶縁層)は1層のみとなると解することが自然であるところ、このように1層のカラーフィルタ107が形成されれば、引用発明において、第1の所定数は5つである一方、第2の所定数は1つとなるから、前記相違点の構成は、自然と満たされる。
(2) 相違点についてのまとめ
前記(1)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点1に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
請求人は、令和6年8月22日に提出した審判請求書において、引用文献3、4に記載した事項からは、カラーフィルタの形成領域において、複数の絶縁層が形成されないことは読み取れないことを主張している。
(2) 請求人の主張についての検討
前記7(1)で検討したとおり、引用発明に技術常識1を採用した場合、カラーフィルタ107のレジスト層(絶縁層)は1層のみとなる。ここで、当該技術常識1において、複数のレジスト層が形成されるためには、レジストの仮硬化後に、レジストの塗布と仮硬化を複数回繰り返す必要があるところ、技術常識を開示する引用文献3、4には、そのようなことは記載も示唆もない。
仮に、何らかの理由でレジスト層を複数層形成したとしても、(そもそも引用文献3、4には複数層とすることも記載されていない以上、レジスト材料の異同については一切記載されていないが)使用するレジスト材料を異ならせることが自然であるともいえず、同一材料で形成することになると解されるところ、屈折率差の生じない多数の層が形成されるにとどまるから、前記第2の所定数に変化はない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
9 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-013550