特許拒絶査定不服審判
2023-021565
自動プルバックトリガの方法及びシステム
- 審判番号
- 2023-021565
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-128831
- 請求日
- 2023年12月19日
- 審決日
- 2025年06月03日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】國分 孝悦
- 審判長/審判官
- 審判長 南 宏輔
- 審判官 北島 拓馬
- 審判官 萩田 裕介
- 分類
- P18 .121-WZ (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-128831「自動プルバックトリガの方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和4年2月18日出願公開、特開2022-31226〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年8月5日(パリ条約による優先権主張 2020年8月6日 米国、2021年1月5日 米国、2021年7月21日 米国)を出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 3年11月30日 手続補正書
令和 4年11月 8日付け 拒絶理由通知書
令和 5年 5月12日 意見書・手続補正書
同年 8月14日付け 拒絶査定
同年12月19日 審判請求書・手続補正書
令和 6年12月 2日付け 拒絶理由通知書
令和 7年 4月 1日 意見書・手続補正書
以下では、令和6年12月2日付けの拒絶理由通知書を「当審拒絶理由通知」という。
第2 本願発明
本願の請求項1~14に係る発明は、令和7年4月1日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次に特定されるとおりである。ここで、各構成単位冒頭の「A」などは便宜のため当審にて付した分説番号であり、以下、各構成単位について該分説番号を用いて「構成A」などということがある。
「 【請求項1】
A 自動プルバックをトリガするためのイメージングデバイスであって、
B 血管腔から画像データを収集し、前記画像データ内の関心領域(ROI)について参照フレームを取得又は特定し、
C 前記参照フレームの前記ROIの画像強度に対する、前記ROIを示す前記画像データの1つ以上の他のフレームの各々の画像強度の変化の量を決定し、
D 前記ROIを示す前記画像データの前記1つ以上の他のフレームの各々の前記変化の前記量又はレベルによって、前記血管腔の部分的クリアリング又は診断上のクリアリングが達成されクリアランスメトリックが閾値よりも大きいことが示されるかどうか、を決定し、
E 前記変化の前記量又は前記レベルによって、前記血管腔の前記部分的クリアリング又は前記診断上のクリアリングが達成されたことが示されると決定されることに基づいて、かつ、前記クリアランスメトリックが前記閾値よりも大きいことに基づいて、前記自動プルバックをトリガするように機能する信号を発する、
F ように機能する1つ以上のプロセッサ、を備え、
G 前記クリアランスメトリックは、前記ROIの1つ以上のフレームのデータ又は強度値と前記参照フレームのデータ又は強度値との比較を用いて決定又は計算され、又は、前記クリアランスメトリックは、前記変化の前記量又は前記レベルを測定するように機能する、
H イメージングデバイス。」
第3 当審における拒絶の理由
当審拒絶理由通知により通知した拒絶の理由のうち、理由4は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2010/095370号
4.国際公開第2015/107963号
5.特開2012-157458号公報
第4 引用文献の記載等
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
当審拒絶理由通知において引用文献1として引用された国際公開第2010/095370号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審において付与した。以下同様。)。
ア 「[0008] 描出対象となる部位において血管内の血液を除去する方法としては、例えば、オクルージョンや、生理食塩水、乳酸リンゲル、造影剤などによるフラッシュ等が挙げられるが、これらの方法によって血液を除去する操作は、患者にとって大きな負担となるため、断面画像の描出のための動作はできるだけ低侵襲で行われることが望ましい。」
イ 「[0020] 図1Aに示すように、画像診断装置100は、光プローブ部101と、スキャナ/プルバック部102と、操作制御装置103とを備え、スキャナ/プルバック部102と操作制御装置103とは、信号線104により接続されている。」
ウ 「[0054] A/D変換器213で生成されたライン単位の干渉光データは、信号処理部214に入力される。信号処理部214では生体組織の深さ方向の干渉光データをビデオ信号に変換することにより、血管内の各位置での断面画像を形成し、所定のフレームレートでLCDモニタ215(図1の参照番号113に対応する)に出力する。」
エ 「[0086] なお、図4に示す信号処理部214、323では、動作開始判定部405及び判定領域設定部406を制御部407と異なる機能ブロックとして示しているが、制御部407の一機能としてソフトウェアにより実現するように構成してもよいことは言うまでもない。」
オ 「[0100] <8.動作開始判定部及び判定領域設定部における動作開始判定処理の流れ>
次に、動作開始判定部405及び判定領域設定部406における動作開始判定処理の流れについて説明する。図7は、動作開始判定部405及び判定領域設定部406における動作開始判定処理の流れを示すフローチャートである。なお、図7に示すフローチャートは、血管内においてイメージングコア130の軸方向動作が停止し、回転走査が行われている状態において実行される。
[0101] ステップS701では、判定領域設定部406が操作パネル112を介して指定された判定領域を識別し、評価値の算出に用いられる断面画像上の領域を動作開始判定部405に設定する。ステップS702では、動作開始判定部405が画像構築部404において生成された断面画像を取得する。
[0102] ステップS703では、ステップS702において取得された断面画像のうち、ステップS701において設定された領域により特定される画像データの輝度値を用いて、評価値を算出する。
[0103] ステップS704では、ステップS703において算出された評価値が、所定の閾値以下であるか否かを判定する。なお、このとき用いられる閾値は、予め定められた固定値を用いるようにする。
[0104] ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、フラッシュ前の状態の断面画像を予め取得しておき、当該フラッシュ前の状態の断面画像の判定領域に対応する断面画像上の画像データの輝度値を用いて算出した評価値に所定係数を積算することで得られた値を、閾値として用いるようにしてもよい。
[0105] ステップS704において評価値が閾値以下であると判定されなかった場合には、血管内に血液が残っていると判断し、ステップS702に戻り、次の断面画像を取得することで同様の処理を繰り返す。一方、ステップS704において、評価値が閾値以下であると判定された場合には、血管内に血液が残っていないと判断し、ステップS705に進む。
[0106] ステップS705では、制御部407に対して動作開始指示を行う。制御部407では、動作開始指示を受信すると、画像構築部404において生成された断面画像のメモリへの保存動作を開始する。これにより、診断に用いられる断面画像が取得されることとなる。」
カ 「[0129] [第3の実施形態]
上記第1の実施形態では、評価値が閾値以下となった場合に行う動作開始指示として、生成された断面画像のメモリへの保存開始指示を行う構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、断面画像のメモリへの保存開始指示とともに、プルバック開始指示を行うように構成してもよい。」
(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)ア~カの記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「造影剤などによるフラッシュ等により、描出対象となる部位において血管内の血液を除去し、血管内の各位置での断面画像を形成し、所定のフレームレートでLCDモニタ215に出力する画像診断装置100であって、(段落[0008]、[0020]、[0054])
制御部407の一機能としてソフトウェアにより実現する動作開始判定部405及び判定領域設定部406における判定処理の流れにおいて、(段落[0086]、[0100])
判定領域設定部406が操作パネル112を介して指定された判定領域を識別し、評価値の算出に用いられる断面画像上の領域を動作開始判定部405に設定し、(段落[0101])
動作開始判定部405が画像構築部404において生成された断面画像を取得し、取得された断面画像のうち、設定された領域により特定される画像データの輝度値を用いて、評価値を算出し、評価値が、所定の閾値以下であるか否かを判定し、(段落[0101]、[0102]、[0103])
評価値が閾値以下であると判定された場合には、血管内に血液が残っていないと判断し、制御部407に対して動作開始指示を行い、動作開始指示は、断面画像のメモリへの保存開始指示とともに、プルバック開始指示を行うように構成され、(段落[0105]、[0106]、[0129])
フラッシュ前の状態の断面画像を予め取得しておき、当該フラッシュ前の状態の断面画像の判定領域に対応する断面画像上の画像データの輝度値を用いて算出した評価値に所定係数を積算することで得られた値を、閾値として用いる、(段落[0104])
画像診断装置100。(段落[0020])」
2 周知技術を示す文献
当審拒絶理由通知において引用文献4として引用された国際公開第2015/107963号(以下「引用文献4」という。)及び、引用文献5として引用された特開2012-157458号公報(以下「引用文献5」という。)は、周知技術を示す文献として引用されたものである。
(1)引用文献4
引用文献4には、図面とともに次の記載がある。
ア 「[0028] 本発明のX線CT装置1は、造影剤を用いた撮影(以下、造影撮影という)に関する機能構成として、撮影条件設定部126、撮影制御部127、追い越し判定部128、及び再撮影制御部129を備える。撮影条件設定部126、撮影制御部127、及び再撮影制御部129は、システム制御装置124に設けることが好ましい。追い越し判定部128は、判定速度を高速化する観点から画像処理装置122に設けることが好ましいが、システム制御装置124に設けるようにしてもよい。」
イ 「[0031] 追い越し判定部128は、造影撮影中、データ収集装置107から計測データ(透過X線データの生データ)を取得すると、この計測データを用いて現在の撮影位置が被検体内における造影剤の位置を追い越すか否かを判定する。本発明において追い越し判定部128は、本撮影の前に行われる非造影撮影により取得した計測データと、本撮影により取得した計測データとを体軸方向位置及びビュー位置が同一となるデータ間で差分処理し、この差分データに基づいて造影剤の追い越しを判定する。
[0032] 非造影撮影とは造影剤を注入しないで行う撮影である。例えば、位置決め用のスキャノ撮影の計測データを追い越し判定に利用することができる。
[0033] また、非造影撮影の軌道を造影撮影(本撮影)の軌道と一致させて計測データを取得しておき、非造影撮影の計測データと造影撮影の計測データとの差分データに基づいて追い越し判定を行ってもよい。」
ウ 「[0040] 追い越し判定部128は、所定範囲にある素子について、素子毎に計測データの差分処理を行い、これらの差分データを積分処理する。そして、積分値が所定の閾値より大きい場合は、非造影撮影の計測データとの差がある(造影効果がある)ため追い越しが生じていないと判定する。積分値が所定の閾値以下である場合は、非造影撮影の計測データとの差が少ない(造影効果がない)ため追い越しが生じたと判定する。
[0041] 計測データ(生データ)を用いて追い越し判定を行う場合、追い越し判定のために撮影中に画像を再構成する必要がない。このため演算処理が高速化され、即時に追い越しを検知できる。差分及び積分処理は必ずしも全素子について行う必要はなく、計測中心部や関心領域等、一部の範囲としてよい。追い越し判定の詳細については、後述する。」
(2)引用文献5
引用文献5には、図面とともに次の記載がある。
ア 「【0005】
本発明の第1の態様は、被検体に造影剤を注入し、前記被検体の所定の部位をスキャンする磁気共鳴イメージング装置であって、
表示部と、
前記被検体の断面のスキャンを実行しながら、前記表示部に前記断面の画像を表示する手段と、
操作者の操作に応じて、前記表示部に表示された断面の画像に、造影剤の到達を検出するための領域を設定する領域設定手段と、
前記領域に前記造影剤が到達したか否かを判断する造影剤到達判断手段と、
前記造影剤到達判断手段によって前記造影剤が到達したと判断された場合、前記所定の部位のスキャンを開始すると決定するスキャン開始決定手段と、
を有する、磁気共鳴イメージング装置である。」
イ 「【0055】
操作者14は、表示画面12aに表示されている断面画像を参照しながら、造影剤の到達を検出するための断面を特定する。例えば、断面画像CS2の断面b-bが、造影剤の到達を検出するための断面として適していると判断した場合、操作者14は、断面決定ボタン12cをクリックする。断面決定ボタン12cがクリックされると、断面決定手段106(図6参照)は、断面b-bを、造影剤の到達を検出するための断面として決定する。尚、操作者14は、造影剤の到達を検出するための断面を、断面b-bとは別の断面に変更したいと考えた場合は、表示画面12aに、断面b-bとは別の断面を表示させ、断面決定ボタン12cを再びクリックすればよい。断面決定ボタン12cを再びクリックすることによって、断面の位置を変更することができる。
【0056】
ここでは、断面b-b(図9(a)参照)が、造影剤の到達を検出するための断面として決定されたとする。
【0057】
図7に戻って説明を続ける。
断面b-bが決定されると、被検体に造影剤が注入される前の断面b-bの基準画像データを取得するための基準画像スキャンBが実行される。
【0058】
基準画像スキャンBでは、断面b-bの磁気共鳴信号を収集するための信号収集シーケンスBi(i=1~n)が実行される。
【0059】
基準画像データ作成手段107(図6参照)は、信号収集シーケンスBiにより収集された磁気共鳴信号に基づいて、断面b-bの画像データIbi(i=1~n)を求め、記憶しておく。
【0060】
基準画像スキャンBが実行された後、基準画像データ作成手段107は、断面b-bの画像データIb1~Ibnに基づいて、断面b-bの基準画像データIrefを作成する。尚、基準画像スキャンBにおいて、信号収集シーケンスB1のみを実行し、信号収集シーケンスB1により得られた断面b-bの画像データIb1を基準画像データIrefとしてもよい。
【0061】
基準画像データIrefが作成されたら、表示部12に、「基準画像データIrefを作成した」旨の内容が表示される。表示部12に、「基準画像データIrefを作成した」旨の内容が表示されたら、操作者14は、操作部11を操作し、造影剤を注入するための命令を入力する。この命令が入力されると、造影剤注入装置4(図6参照)は、被検体13に造影剤の注入を開始する。したがって、基準画像スキャンBが実行された後に、被検体13に造影剤の注入が開始される。
【0062】
また、基準画像スキャンBが終了した後、断面b-bに造影剤が到達したか否かを検出するための造影剤到達検出スキャンCが実行される。造影剤到達検出スキャンCでは、断面b-bから磁気共鳴信号を収集するための信号収集シーケンスCj(j=1~m)が実行される。信号収集シーケンスCjは、基準画像スキャンBで実行される信号収集シーケンスBjと同じシーケンスである。造影剤到達判断手段108(図6参照)は、造影剤到達検出スキャンCの信号収集シーケンスCj(j=1~m)により収集された磁気共鳴信号に基づいて、断面b-bの画像データIcj(j=1~m)を求め、画像データIcjと基準画像データIrefとの差分画像データDIj(j=1~m)を算出する。断面b-bに造影剤が到達した場合、造影剤によって信号強度が増加する領域Rcが現れるので、差分画像データDIjの信号強度を求めることによって、断面b-bに造影剤が到達したか否かを判断することができる。第2の形態では、差分画像データDIjの信号強度の閾値TH1を事前に決めておき、差分画像データDIjの信号強度が、閾値TH1を越えたら、断面b-bに造影剤が到達したと判断する。図7では、差分画像データDImの信号強度が閾値TH1を越えたとする。造影剤が到達したと判断されたら、スキャン開始決定手段109(図6参照)は、本スキャンDを開始すると決定する。この決定を受けて、造影剤到達検出スキャンCが終了し、本スキャンDが開始される。」
(3)周知技術
上記(1)、(2)の記載から、以下の技術的事項は、本願優先日における周知技術であると認められる(以下の技術的事項を、以下「周知技術1」という。)。
「体内に造影剤等を注入した状態で画像を取得する画像診断装置において、造影剤等を注入する前の状態の画像から取得した強度に対する、現時点の画像から取得した強度の変化の量を決定し、当該変化の量が閾値よりも大きいことに基づいて、撮像位置に造影剤等が存在し、撮像に適した状態となっていることを判定する点。」
第5 対比、判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)構成Aについて
引用発明において、「プルバック開始指示を行うように構成され」たものである「動作開始指示」を行うことは、本願発明において、「プルバックをトリガする」ことに相当する。
また、引用発明において、「動作開始指示」は、「制御部407の一機能としてソフトウェアにより実現する動作開始判定部405及び判定領域設定部406における判定処理の流れにおいて」行われるものであるから、「制御部407」の動作として自動で行われるものといえる。
よって、引用発明において、「プルバック開始指示を行うように構成され」た「動作開始指示を行」うことができる「画像診断装置100」は、本願発明の「自動プルバックをトリガするためのイメージングデバイス」に相当する。
(2)構成Bについて
引用発明の「血管内の各位置での断面画像」は、本願発明の「血管腔から」「収集」した「画像データ」に相当する。また、引用発明の「評価値の算出に用いられる断面画像」は、「血管内の各位置での断面画像」と同じ画像を指すことは明らかであるから、同様に、本願発明の「血管腔から」「収集」した「画像データ」に相当する。
引用発明の「判定領域」は、本願発明の「関心領域(ROI)」に相当する。
引用発明の「当該フラッシュ前の状態の断面画像の判定領域に対応する断面画像上の画像データ」は、本願発明の「前記画像データ内の関心領域(ROI)について」の「参照フレーム」に相当する。
よって、引用発明において、「当該フラッシュ前の状態の断面画像の判定領域に対応する断面画像上の画像データの輝度値を用いて算出した評価値に所定係数を積算することで得られた値を、閾値として用いる」ために「フラッシュ前の状態の断面画像を予め取得してお」くことは、本願発明において、「血管腔から画像データを収集し、前記画像データ内の関心領域(ROI)について参照フレームを取得又は特定」することに相当する。
(3)構成Dについて
ア 引用発明において、「血管内に血液が残っていない」ことは、本願発
明1において、「前記血管腔の部分的クリアリング又は診断上のクリアリングが達成され」ていることに相当する。
そして、引用発明において、「評価値」は、「閾値以下であると判定された場合には、血管内に血液が残っていないと判断」することに用いられるものであるから、本願発明の「クリアランスメトリック」に相当する。
また、引用発明において、「評価値が閾値以下であると判定され」ることは、「評価値」が減少し、閾値を超えて小さくなった時に「評価値が閾値以下である」と示されるものといえるから、本願発明の「クリアランスメトリックが閾値よりも大きいことが示される」ことと、「クリアランスメトリックが閾値」を超える「ことが示される」ことである点で共通する。
よって、引用発明において、「評価値が閾値以下であると判定された場合には、血管内に血液が残っていないと判断」することは、本願発明において、「前記血管腔の部分的クリアリング又は診断上のクリアリングが達成されクリアランスメトリックが閾値よりも大きいことが示されるかどうか、を決定」することと、「前記血管腔の部分的クリアリング又は診断上のクリアリングが達成されクリアランスメトリックが閾値」を超える「ことが示されるかどうか、を決定」することである点で共通する。
イ 引用発明の「設定された領域」及び「動作開始判定部405が」「取得し」た「画像構築部404において生成された断面画像」は、それぞれ、本願発明の「前記ROI」及び「前記画像データの前記1つ以上の他のフレーム」に相当する。
引用発明において、「取得された断面画像のうち、設定された領域により特定される画像データの輝度値を用いて」「算出し」た「評価値」が「フラッシュ前の状態の断面画像を予め取得しておき、当該フラッシュ前の状態の断面画像の判定領域に対応する断面画像上の画像データの輝度値を用いて算出した評価値に所定係数を積算することで得られた値」である「所定の閾値以下」となることは、「フラッシュ前の状態の断面画像を予め取得しておき、当該フラッシュ前の状態の断面画像の判定領域に対応する断面画像上の画像データの輝度値を用いて算出した評価値」に対する「取得された断面画像のうち、設定された領域により特定される画像データの輝度値を用いて」「算出し」た「評価値」への変化の量が増加し、所定の値(「当該フラッシュ前の状態の断面画像の判定領域に対応する断面画像上の画像データの輝度値を用いて算出した評価値に所定係数」から1を引いた値「を積算することで得られた値」)を超えたことで達成されるといえる。
そうすると、引用発明は、「当該フラッシュ前の状態の断面画像の判定領域に対応する断面画像上の画像データの輝度値を用いて算出した評価値」から「取得された断面画像のうち、設定された領域により特定される画像データの輝度値を用いて」「算出し」た「評価値」への変化の量が増加したことによって、「評価値が閾値以下であると判定され」、「血管内に血液が残っていないと判断」されるものといえる。
そして、引用発明における「当該フラッシュ前の状態の断面画像の判定領域に対応する断面画像上の画像データの輝度値を用いて算出した評価値」から「取得された断面画像のうち、設定された領域により特定される画像データの輝度値を用いて」「算出し」た「評価値」への変化の量は、本願発明の「前記参照フレームの前記ROIの画像強度に対する、前記ROIを示す前記画像データの1つ以上の他のフレームの各々の画像強度の変化の量」に相当する。
ウ 以上より、引用発明は、構成Dと、「前記ROIを示す前記画像データの前記1つ以上の他のフレームの各々の」「変化の」「量」「によって、前記血管腔の部分的クリアリング又は診断上のクリアリングが達成されクリアランスメトリックが閾値」を超えたことが「示されるかどうか、を決定」する点で共通する。
(4)構成Eについて
引用発明において、「制御部407に対して動作開始指示を行」う際に、「制御部407」に対して「動作開始指示」を示す信号を発することは、明らかである。また、引用発明において、「動作開始指示は」「プルバック開始指示を行うように構成され」ているから、引用発明において、「制御部407に対して動作開始指示を行」うことは、本願発明において、「前記自動プルバックをトリガするように機能する信号を発する」ことに相当する。
また、上記(3)イの説示を踏まえると、引用発明は、「血管内に血液が残っていないと判断し、制御部407に対して動作開始指示を行」うことを、「当該フラッシュ前の状態の断面画像の判定領域に対応する断面画像上の画像データの輝度値を用いて算出した評価値」から「取得された断面画像のうち、設定された領域により特定される画像データの輝度値を用いて」「算出し」た「評価値」への変化の量が増加したこと、及び、その結果として「評価値が閾値以下であると判定された場合」となったことの両方に基づいて行うといえる。
以上より、引用発明は、構成Eと、「変化の量」「によって、前記血管腔の前記部分的クリアリング又は前記診断上のクリアリングが達成されたことが示されると決定されることに基づいて、かつ、前記クリアランスメトリックが前記閾値」を超えた「ことに基づいて、前記自動プルバックをトリガするように機能する信号を発する」点で共通する。
(5)構成Fについて
引用発明において、「動作開始判定部405及び判定領域設定部406における判定処理」は、「制御部407の一機能としてソフトウェアにより実現する」ものであるから、引用発明の「制御部407」が、「動作開始判定部405及び判定領域設定部406」を「実現」する「ソフトウェア」を実行するためのプロセッサを備えることは、自明である。
(6)構成Hについて
上記(1)で示したとおり、引用発明の「画像診断装置100」は、本願発明の「イメージングデバイス」に相当する。
2 一致点、相違点
上記1のとおりであるから、本願発明と引用発明とは、下記(1)の点で一致し、下記(2)~(5)の点で相違する。
(1)一致点
「A 自動プルバックをトリガするためのイメージングデバイスであって、
B 血管腔から画像データを収集し、前記画像データ内の関心領域(ROI)について参照フレームを取得又は特定し、
D’ 前記ROIを示す前記画像データの前記1つ以上の他のフレームの各々の変化の量によって、前記血管腔の部分的クリアリング又は診断上のクリアリングが達成されクリアランスメトリックが閾値を超えたことが示されるかどうか、を決定し、
E’変化の量によって、前記血管腔の前記部分的クリアリング又は前記診断上のクリアリングが達成されたことが示されると決定されることに基づいて、かつ、前記クリアランスメトリックが前記閾値を超えたことに基づいて、前記自動プルバックをトリガするように機能する信号を発する、
F ように機能する1つ以上のプロセッサ、を備える、
H イメージングデバイス。」
(2)相違点1(構成C)
本願発明は、「前記参照フレームの前記ROIの画像強度に対する、前記ROIを示す前記画像データの1つ以上の他のフレームの各々の画像強度の変化の量を決定」すると特定されているのに対し、引用発明はそのように特定されていない点。
(3)相違点2(構成D)
本願発明は、「前記ROIを示す前記画像データの前記1つ以上の他のフレームの各々の前記変化の前記量又はレベルによって、前記血管腔の部分的クリアリング又は診断上のクリアリングが達成されクリアランスメトリックが閾値よりも大きいことが示されるかどうか、を決定」すると特定されているのに対し、引用発明は、変化の量が、「前記参照フレームの前記ROIの画像強度に対する、前記ROIを示す前記画像データの1つ以上の他のフレームの各々の画像強度の変化の量を決定」(構成C)することによって決定されたものではなく、また、引用発明は、「評価値が、所定の閾値以下であるか否かを判定」するものであって、「クリアランスメトリックが閾値よりも大きいことが示されるかどうか、を決定」するものではない点。
(4)相違点3(構成E)
本願発明は、「前記変化の前記量又は前記レベルによって、前記血管腔の前記部分的クリアリング又は前記診断上のクリアリングが達成されたことが示されると決定されることに基づいて、かつ、前記クリアランスメトリックが前記閾値よりも大きいことに基づいて、前記自動プルバックをトリガするように機能する信号を発する」と特定されているのに対し、引用発明は、変化の量が、「前記参照フレームの前記ROIの画像強度に対する、前記ROIを示す前記画像データの1つ以上の他のフレームの各々の画像強度の変化の量を決定」(構成C)することによって決定されたものではなく、また、「制御部407に対して動作開始指示を行」うのは、「評価値が閾値以下であると判定された場合」であって、「前記クリアランスメトリックが前記閾値よりも大きいこと」に基づいて行われるものでもない点。
(5)相違点4(構成G)
本願発明は、「前記クリアランスメトリックは、前記ROIの1つ以上のフレームのデータ又は強度値と前記参照フレームのデータ又は強度値との比較を用いて決定又は計算され、又は、前記クリアランスメトリックは、前記変化の前記量又は前記レベルを測定するように機能する」と特定されているのに対し、引用発明はそのように特定されていない点。
3 相違点について
事案に鑑み、相違点1~4を合わせて検討する。
(1)上記第4、2(3)で示したとおり、以下の技術的事項は、周知技術であると認められる。
「体内に造影剤等を注入した状態で画像を取得する画像診断装置において、造影剤等を注入する前の状態の画像から取得した強度に対する、現時点の画像から取得した強度の変化の量を決定し、当該変化の量が閾値よりも大きいことに基づいて、撮像位置に造影剤等が存在し、撮像に適した状態となっていることを判定する点。」(周知技術1)
(2)ア 周知技術1において、「造影剤等を注入する前の状態の画像から取得した強度に対する、現時点の画像から取得した強度の変化の量」は、本願発明の「クリアランスメトリック」に相当し、周知技術1において、「造影剤等を注入する前の状態の画像から取得した強度に対する、現時点の画像から取得した強度の変化の量を決定」することは、本願発明において、「前記参照フレームの前記ROIの画像強度に対する、前記ROIを示す前記画像データの1つ以上の他のフレームの各々の画像強度の変化の量を決定」(構成C)することに相当する。
イ 周知技術1において、「造影剤等を注入する前の状態の画像から取得した強度に対する、現時点の画像から取得した強度の変化の量」は、「造影剤等を注入する前の状態の画像から取得した強度」と「現時点の画像から取得した強度」とを比較した結果として計算されたものといえるから、本願発明の「1つ以上のフレームのデータ又は強度値と前記参照フレームのデータ又は強度値との比較を用いて決定又は計算され」た「前記クリアランスメトリック」(構成G)に相当する。
また、周知技術1の「造影剤等を注入する前の状態の画像から取得した強度に対する、現時点の画像から取得した強度の変化の量」は、本願発明の「前記変化の前記量又は前記レベルを測定するように機能する」「前記クリアランスメトリック」(構成G)にも相当する。
(3)引用発明と上記周知技術1とは、体内に造影剤等を注入した状態で画像を取得する画像診断装置である点で、共通する技術分野に属するものである。
また、引用発明において、「血管内に血液が残っていないと判断」することは、「造影剤などによるフラッシュ等により」「血管内」の「描出対象となる部位」に、血液ではなく「造影剤」が存在する状態を判断することといえるから、引用発明と上記周知技術1とは、造影剤等を注入する前の状態の画像と現時点の画像とを用いて撮像位置に造影剤等が存在することの判定を行うものである点で、共通するものである。
そして、引用発明において、「フラッシュ前の状態の断面画像」と「評価値の算出に用いられる断面画像」とを用いて「血管内に血液が残っていないと判断」するための構成として上記周知技術を適用し、「閾値」と比較する値を、「当該フラッシュ前の状態の断面画像の判定領域に対応する断面画像上の画像データの輝度値を用いて算出した評価値」に対する「取得された断面画像のうち、設定された領域により特定される画像データの輝度値を用いて」「算出」した「評価値」の変化の量を決定した値であるクリアランスメトリック値とし、当該変化の量であるクリアランスメトリック値が閾値よりも大きいことに基づいて「血管内に血液が残っていないと判断し、制御部407に対して動作開始指示を行い、動作開始指示は、断面画像のメモリへの保存開始指示とともに、プルバック開始指示を行う」ものとし、上記相違点1~4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
4 本願発明の作用効果
上記相違点1~4を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術1の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
5 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 審判請求人の主張について
(1)審判請求人は、意見書において、「審判官殿は、引用文献1の「評価値」が本願発明の「クリアランスメトリック」に相当すると認定されているようです。しかしながら、引用文献1には、例えば図7及び図9に示されているように、評価値が閾値以下である(ステップS704又はS904で"YES")場合に「画像構築部404において生成された断面画像のメモリへの保存動作」の開始指示が行われることが開示されています(引用文献1の段落[0083]、[0106]も参照)。これに対し、本願発明では、閾値比較には「クリアランスメトリック」が「閾値を超える」という反対の関係が必要であることが記載されています。また、引用文献1は、評価値が輝度値の総和又は平均であってもよいし、画像データの輝度値の分布の標準偏差であってもよいことを教示しているにすぎないと考えます(例えば引用文献1の段落[0095]~[0098]参照)。したがって、引用文献1の「評価値」は本願発明の「クリアランスメトリック」に相当するものではないので、引用文献1の「評価値」が本願発明の「クリアランスメトリック」に相当すると認定は誤りであると考えます。更に、引用文献1には開示も示唆もされていないと認定された相違点1~4について、引用文献4、5には、それらを是正するような内容は開示も示唆もされていないと考えます。」と主張しているので、当該主張について検討する。
(2)引用発明の「評価値」は、「閾値以下であると判定された場合には、血管内に血液が残っていないと判断」することに用いられるものであるから、「血管内に血液が残っていない」状態、すなわち、クリアランス状態を判定するための値であるといえる。よって、引用発明の「評価値」は、本願発明の「クリアランスメトリック」に相当する。よって、審判請求人の主張は採用できない。
(3)また、仮に、審判請求人の主張するとおり、引用発明の「評価値」は、「閾値以下であるか否かを判定」されるものであって「閾値よりも大きい」ことが判定されるものではないことをもって、本願発明の「クリアランスメトリック」に相当するとまではいえないと解釈したとしても、周知技術1の「造影剤等を注入する前の状態の画像から取得した強度に対する、現時点の画像から取得した強度の変化の量」は、「閾値よりも大きい」ことが判断されるものであり、上記3で示したとおり、引用発明において周知技術1を適用し、「当該フラッシュ前の状態の断面画像の判定領域に対応する断面画像上の画像データの輝度値を用いて算出した評価値」に対する「取得された断面画像のうち、設定された領域により特定される画像データの輝度値を用いて」「算出」した「評価値」の変化の量を決定してクリアランスメトリック値とした場合には、当該クリアランスメトリック値は、閾値よりも大きいことが判定されるものとなるから、本願発明が進歩性を有するとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-021565