特許拒絶査定不服審判
2024-012604
中性子捕捉療法装置及びその監視システムの動作ステップ
- 審判番号
- 2024-012604
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-578595
- 請求日
- 2024年08月02日
- 審決日
- 2026年02月03日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】中硼(厦▲門▼)医▲療▼器械有限公司
- 【請求人代理人】村井 康司
- 【請求人代理人】遠藤 真治
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 正章
- 審判官 麻川 倫広
- 審判官 太田 良隆
- 分類
- P18 .121-WZ (A61N) / P18 .537-WZ (A61N) / P18 .56 -WZ (A61N) / P18 .572-WZ (A61N) / P18 .575-WZ (A61N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-578595「中性子捕捉療法装置及びその監視システムの動作ステップ」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 1月 6日国際公開、WO2022/002223、令和 5年 7月12日国内公表、特表2023-530015〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年) 7月 2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2020年 7月 3日(CN)中国、2020年 9月30日(CN)中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は概略以下のとおりである。
令和 5年 9月22日付け:拒絶理由通知書
令和 6年 3月 1日提出:意見書及び手続補正書
令和 6年 3月25日付け:拒絶査定(送達日:同年4月2日)
令和 6年 8月 2日提出:審判請求書及び手続補正書
第2 令和 6年 8月 2日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 6年 8月 2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
中性子ビームを生成する中性子ビーム照射システムと、リアルタイム中性子線量を含むリアルタイム照射パラメータを検出する検出システムと、中性子ビームの照射プロセス全体を制御する監視システムとを含み、前記監視システムは、総中性子線量、残りの照射時間及び中性子線量率を含む照射パラメータを記憶する記憶部、前記記憶部に記憶された前記総中性子線量と前記検出システムが検出した前記リアルタイム中性子線量との差に基づいて、前記記憶部に記憶された前記残りの照射時間又は前記中性子線量率を周期的に修正する修正部、及び、前記記憶部に記憶された最も新しい前記照射パラメータに基づいて治療計画を実行する制御部を含む、ことを特徴とする中性子捕捉療法装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和 6年 3月 1日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
中性子ビームを生成する中性子ビーム照射システムと、一部の照射パラメータを検出する検出システムと、中性子ビームの照射プロセス全体を制御する監視システムとを含み、前記監視システムは、前記照射パラメータを記憶する記憶部、前記記憶部に記憶された照射パラメータに基づいて治療計画を実行する制御部、及び、プリセット照射パラメータと、実際/リアルタイムの照射パラメータまたは最後に修正された残りの照射パラメータとの差に基づいて、前記記憶部に記憶された一部の照射パラメータを修正する修正部を含む、ことを特徴とする中性子捕捉療法装置。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「検出システム」が検出する「一部の照射パラメータ」を「リアルタイム中性子線量を含むリアルタイム照射パラメータ」に限定し、「記憶部」が記憶する「前記照射パラメータ」を「総中性子線量、残りの照射時間及び中性子線量率を含む照射パラメータ」に限定し、「修正部」が「修正」する「前記記憶部に記憶された一部の照射パラメータ」を「前記記憶部に記憶された前記残りの照射時間又は前記中性子線量率」に限定するとともに、当該「修正」の頻度が「周期的」である点を限定し、当該「修正」について「プリセット照射パラメータと、実際/リアルタイムの照射パラメータまたは最後に修正された残りの照射パラメータとの差」を「前記記憶部に記憶された前記総中性子線量と前記検出システムが検出した前記リアルタイム中性子線量との差」に限定し、「制御部」の「治療計画」の「実行」について「前記記憶部に記憶された照射パラメータ」を「前記記憶部に記憶された最も新しい前記照射パラメータ」に限定するものである。
補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項の及び引用発明
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2012/014671号(平成24年 2月 2日国際公開。以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付したものである。)。
(ア)「[0021] 図1は、一実施形態に係る中性子線照射装置の構成を示す図であり、図2は、図1の中性子線照射装置における中性子線生成部を示す概略斜視図である。図1に示すように、中性子線照射装置1は、例えば、中性子捕捉療法を用いたがん治療などを行うために用いられる装置であり、患者等の被照射体40へ中性子線Nを照射する。
[0022] この中性子線照射装置1は、サイクロトロン10を備え、サイクロトロン10は、陽子等の荷電粒子を加速して、陽子線(陽子ビーム)を荷電粒子線Pとして作り出す。ここでのサイクロトロン10は、例えば、ビーム半径40mm、60kW(=30MeV×2mA)の荷電粒子線Pを生成する能力を有している。
[0023] サイクロトロン10から出射された荷電粒子線Pは、水平型ステアリング12、4方向スリット14、水平垂直型ステアリング16、四重極電磁石18,19,20、90度偏向電磁石22、四重極電磁石24、水平垂直型ステアリング26、四重極電磁石28、4方向スリット30、電流モニタ32、荷電粒子線走査部34を順次に通過し、中性子線生成部36に導かれる。この荷電粒子線Pは、中性子線生成部36においてターゲットTに照射され、これにより、中性子線Nが発生される。そして、中性子線Nは、治療台38上の被照射体40へ照射される。
・・・
[0026] 電流モニタ32は、ターゲットTに照射される荷電粒子線Pの電流値(つまり、電荷,照射線量率)をリアルタイムで測定するものである。電流モニタ32は、荷電粒子線Pに影響を与えずに電流測定可能な非破壊型のDCCT(DC Current Transformer)が用いられている。この電流モニタ32には、後述のコントローラ100が接続されている。なお、「線量率」とは、単位時間当たりの線量を意味する(以下、同じ)。」
(イ)「[0032] コントローラ100は、制御部102と、表示部104と、を含んで構成されている。制御部102は、電流モニタ32により測定された荷電粒子線Pの電流値から中性子線Nの照射線量を求め、該照射線量に基づき中性子線Nの照射を制御するものであり、例えばCPU、ROM及びRAM等により構成されている。表示部104は、制御部102で求められた中性子線Nの照射線量を表示するものであり、例えばディスプレイやモニタが用いられている。
[0033] ここで、本実施形態の中性子線照射装置1では、電流モニタ32及びコントローラ100により、例えば荷電粒子線Pの電流値と中性子線Nの照射線量率との間の比例関係(図3参照)を利用し、以下の制御(制御方法)を実行する。
[0034] すなわち、サイクロトロン10から出射された荷電粒子線PがターゲットTへ照射され、ターゲットTで生成された中性子線Nが被照射体40に照射されている最中において、電流モニタ32によって荷電粒子線Pの電流値をリアルタイムで測定する。これと共に、制御部102によって、測定された荷電粒子線Pの電流値を時間に関して逐次積分し、荷電粒子線Pの照射線量をリアルタイムで測定する。併せて、この荷電粒子線Pの照射線量を、下記(1)式に従って中性子線Nの照射線量へ変換する。つまり、荷電粒子線Pの照射線量から中性子線Nの照射線量を算出する。これにより、中性子線Nの照射中に、その照射線量がオンラインで測定されることとなる。
中性子線の照射線量 ∝ ∫I(t)dt …(1)
但し、I:荷電粒子線の電流値
[0035] 続いて、変換された中性子線Nの照射線量を表示部104にて表示させ、当該中性子線Nの照射線量を医師等のオペレータに報知する。そして、算出された中性子線Nの照射線量が計画値(照射を予定する所定の照射線量)に達したとき、制御部102により例えばサイクロトロン10の機能を停止させて荷電粒子線Pの生成を停止し、中性子線Nの生成及び被照射体40への照射を停止させる。
[0036] 以上、本実施形態においては、中性子線Nそのものを直接測定するのではなく、ターゲットTに照射する前の荷電粒子線Pの照射線量をリアルタイムで測定することで、中性子線Nの照射線量をオンライン(リアルタイム)で好適に測定し把握することが可能となる。その結果、例えば中性子線Nの照射中に照射線量率が変動したとしても、かかる変動に対応させ、計画値分の照射線量の中性子線Nを被照射体40に確実且つ精度よく照射することが可能となる。すなわち、中性子線Nの照射中に照射線量率が低くなったことを検出した場合には照射時間を長くし、逆に中性子線Nの照射中に照射線量率が高くなったことを検出した場合には照射時間を短くすることで、計画値分の照射線量の中性子線Nを確実且つ精度よく照射することが可能となる。よって、本実施形態によれば、中性子線Nの照射線量の精度を向上させることができる。」
(ウ)「[図1]
[図:0001436667000001.jpg]
」
イ 引用発明
上記ア(ア)~(ウ)を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「荷電粒子線Pを生成するサイクロトロン10と、荷電粒子線PがターゲットTに照射され中性子線Nを発生する中性子線生成部36と、
ターゲットTに照射される荷電粒子線Pの電流値をリアルタイムで測定する電流モニタ32と、
電流モニタ32により測定された荷電粒子線Pの電流値から中性子線Nの照射線量をオンライン(リアルタイム)で求め、該照射線量に基づき中性子線Nの照射を制御する制御部102とを備え、
制御部102は、算出された中性子線Nの照射線量が計画値(照射を予定する所定の照射線量)に達したとき、中性子線Nの照射を停止する、
中性子捕捉療法を用いたがん治療などを行うために用いられる中性子線照射装置1。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「中性子線N」は本件補正発明の「中性子ビーム」に相当する。したがって、引用発明の「荷電粒子線Pを生成するサイクロトロン10と、荷電粒子線PがターゲットTに照射され中性子線Nを発生する中性子線生成部36」は本件補正発明の「中性子ビームを生成する中性子ビーム照射システム」に相当する。
イ 引用発明の「電流モニタ32」により「リアルタイム」で測定された「荷電粒子線Pの電流値」から「制御部102」で「オンライン(リアルタイム)で求め」た「中性子線Nの照射線量」は、本件補正発明の「リアルタイム中性子線量」及び「リアルタイム照射パラメータ」に相当する。
したがって、引用発明の「ターゲットTに照射される荷電粒子線Pの電流値をリアルタイムで測定する電流モニタ32」と「電流モニタ32により測定された荷電粒子線Pの電流値から中性子線Nの照射線量をオンライン(リアルタイム)で求め」る「制御部102」とは、本件補正発明の「リアルタイム中性子線量を含むリアルタイム照射パラメータを検出する検出システム」に相当する。
ウ 引用発明の「制御部102」は、中性子線Nの照射線量に基づき中性子線Nの照射を制御するから、中性子線Nの照射プロセス全体を監視しているといえ、本件発明の「中性子ビームの照射プロセス全体を制御する監視システム」に相当する。
エ 引用発明の「制御部102」が「算出された中性子線Nの照射線量が計画値(照射を予定する所定の照射線量)に達したとき、中性子線Nの照射を停止する」ことと、本件補正発明の「前記監視システム」が「含む」「制御部」が「前記記憶部に記憶された最も新しい前記照射パラメータに基づいて治療計画を実行する」こととは、「前記監視システム」が「含む」「制御部」が「治療計画を実行する」ことの限りで一致する。
オ 引用発明の「中性子捕捉療法を用いたがん治療などを行うために用いられる中性子線照射装置1」は、本件補正発明の「中性子捕捉療法装置」に相当する。
カ そうすると、両者は、
「中性子ビームを生成する中性子ビーム照射システムと、リアルタイム中性子線量を含むリアルタイム照射パラメータを検出する検出システムと、中性子ビームの照射プロセス全体を制御する監視システムとを含み、前記監視システムは、治療計画を実行する制御部を含む、中性子捕捉療法装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
本件補正発明の「前記監視システム」が、「総中性子線量、残りの照射時間及び中性子線量率を含む照射パラメータを記憶する記憶部、前記記憶部に記憶された前記総中性子線量と前記検出システムが検出した前記リアルタイム中性子線量との差に基づいて、前記記憶部に記憶された前記残りの照射時間又は前記中性子線量率を周期的に修正する修正部、及び、前記記憶部に記憶された最も新しい前記照射パラメータに基づいて治療計画を実行する制御部を含む」のに対し、引用発明は、「電流モニタ32により測定された荷電粒子線Pの電流値から中性子線Nの照射線量をオンライン(リアルタイム)で求め、該照射線量に基づき中性子線Nの照射を制御する制御部102」「を備え、制御部102は、算出された中性子線Nの照射線量が計画値(照射を予定する所定の照射線量)に達したとき、中性子線Nの照射を停止する」点。
(4)判断
ア 上記相違点について検討する。
引用文献1には、「中性子線Nの照射中に照射線量率が低くなったことを検出した場合には照射時間を長くし、逆に中性子線Nの照射中に照射線量率が高くなったことを検出した場合には照射時間を短くすることで、計画値分の照射線量の中性子線Nを確実且つ精度よく照射すること」が記載されている(上記(2)ア(イ)の段落[0036]参照)。
そして、「計画値」と「算出された中性子線Nの照射線量」との差を中性子線Nの照射線量率で除せば、中性子線Nの照射線量が計画値に達するまでの残りの照射時間となることは技術常識である。
また、引用文献1には、荷電粒子線Pの電流値(照射線量率)をリアルタイムで測定すること、荷電粒子線Pの電流値と中性子線Nの照射線量率とが比例関係にあることも記載されている(上記(2)ア(ア)の段落[0026]及び同(イ)の段落[0033]参照)。
そうすると、引用発明において、「算出された中性子線Nの照射線量が計画値(照射を予定する所定の照射線量)に達したとき、中性子線Nの生成及び被照射体40への照射を停止させる」代わりに、上記記載に従うに当って、具体的に電流モニタ32によりリアルタイムで測定された荷電粒子線Pの電流値(照射線量率)と中性子線Nの照射線量率との比例関係を利用し、中性子線Nの照射中に、荷電粒子線Pの電流値から中性子線Nの照射線量及び照射線量率をリアルタイムで求め、計画値と算出された中性子線Nの照射線量との差及び算出された中性子線Nの照射線量率に基づいて、残りの照射時間を周期的に修正し、修正された残りの照射時間、すなわち、最も新しい残りの照射時間(本願でいうところの「最も新しい照射パラメータ」)に基づいて治療計画を実行することは、当業者が容易に想到できたことである。
そして、制御部における演算処理に用いられる数値が制御部の記憶手段(メモリ)に記憶されることは技術常識であるから、上記のとおり、引用発明の制御部102が、計画値と算出された中性子線Nの照射線量との差及び算出された中性子線Nの照射線量率に基づいて残りの照射時間を修正する際、これに用いられる計画値、中性子線Nの照射線量率が、制御部102の記憶手段に記憶され、さらに、修正された残りの照射時間も当該記憶手段に記憶され、制御部102による治療計画の実行に用いられることは自明である。
よって、引用発明において、上記相違点に係る本件補正発明の事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
イ 請求人の主張
なお、請求人は令和 6年 8月 2日提出の審判請求書において、主に以下の点を主張している。
(ア)本願請求項1に記載の中性子捕捉療法装置では、記憶部に記憶された照射パラメータに含まれる、残りの照射時間又は中性子線量率が、修正部により「周期的に」、すなわち何度も繰り返し、修正される。
そして、制御部により、記憶部に記憶された最も新しい照射パラメータに基づいて治療計画が実行されるため、本願請求項1に記載の中性子捕捉療法装置は、中性子捕捉療法を正確に実行することが可能である。
(イ)本願請求項1に記載の中性子捕捉療法装置は、リアルタイム中性子線量を含むリアルタイム照射パラメータを検出する検出システムを備え、検出されたリアルタイム中性子線量を用いて照射パラメータを修正することを特徴とする。リアルタイム中性子線量を直接検出するため、引用文献1に記載の荷電粒子線量を検出する方法に比べて、照射パラメータのより正確な修正が可能になる。
以下、請求人の上記(ア)、(イ)の主張について検討する。
まず、(ア)の主張について、上記アのとおり、引用発明において、中性子線Nの照射線量率をリアルタイムで検出し、残りの照射時間を周期的に修正するよう構成することは、当業者が容易に想到できたことである。そして、それによる効果も自明のものであるから、上記(ア)の主張は採用できない。
次に、(イ)の主張について、請求人は、本件補正発明が、リアルタイム中性子線量を「直接」検出している旨を主張している。しかしながら、請求項1には、「検出システム」について、「リアルタイム中性子線量を含むリアルタイム照射パラメータを検出する」とあるだけで、リアルタイム中性子線量を直接検出するための具体的な検出手段について何ら特定されていない。そして、引用文献1では、「中性子線Nの照射線量をオンライン(リアルタイム)で好適に測定し」ているから(上記(2)ア(イ)の段落[0036]参照)、上記(イ)の主張は採用できない。
以上のとおり、請求人の主張はいずれも採用できない。
ウ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和 6年 3月 1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略次の拒絶理由を含むものである。
本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.国際公開第2012/014671号
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「検出システム」が検出する「一部の照射パラメータ」を「リアルタイム中性子線量を含むリアルタイム照射パラメータ」に限定する事項、「記憶部」が記憶する「前記照射パラメータ」を「総中性子線量、残りの照射時間及び中性子線量率を含む照射パラメータ」に限定する事項、「修正部」が「修正」する「前記記憶部に記憶された一部の照射パラメータ」を「前記記憶部に記憶された前記残りの照射時間又は前記中性子線量率」に限定するとともに、当該「修正」の頻度が「周期的」である点を限定する事項、当該「修正」について「プリセット照射パラメータと、実際/リアルタイムの照射パラメータまたは最後に修正された残りの照射パラメータとの差」を「前記記憶部に記憶された前記総中性子線量と前記検出システムが検出した前記リアルタイム中性子線量との差」に限定する事項、「制御部」の「治療計画」の「実行」について「前記記憶部に記憶された照射パラメータ」を「前記記憶部に記憶された最も新しい前記照射パラメータ」に限定する事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-012604