特許拒絶査定不服審判
2023-016443
調節可能な治療用フェイスマスク
- 審判番号
- 2023-016443
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-572851
- 請求日
- 2023年09月28日
- 審決日
- 2024年09月03日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ドクター.デニス グロス スキンケア,エルエルシー
- 【請求人代理人】小林 克行
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 哲男
- 審判官 平瀬 知明
- 審判官 小河 了一
- 分類
- P18 .121-Z (A61N) / P18 .572-Z (A61N) / P18 .575-Z (A61N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第184条の6第3項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-572851「調節可能な治療用フェイスマスク」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年12月30日国際公開、WO2020/263258、令和 4年 8月26日国内公表、特表2022-537505〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)6月27日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年12月 7日 :特許協力条約第19条補正の翻訳文
(以下「本願翻訳文」という。)提出
令和 4年12月27日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 3月14日 :意見書の提出
令和 5年 6月23日付け:拒絶査定(送達日:令和5年6月27日)
令和 5年 9月28日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出
令和 6年 1月29日 :上申書
第2 令和5年9月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年9月28日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
令和5年9月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、本件補正により、請求項1は、次のとおり補正された。
(1)本件補正後の請求項1
「 【請求項1】
ユーザの顔の領域を覆うマスク本体を伴う調節可能な治療用フェイスマスクであって、前記マスク本体は、
-内側部及び外側部であって、
前記内側部が前記マスク本体の前記内側部に向かい複数の発光ダイオードを含むフレキシブル回路基板を含み、
前記複数の発光ダイオードが様々な色彩及び強度の光照射を発するように構成された、前記内側部及び前記外側部と、
-前記外側部に封入され、前記色彩及び前記強度の制御を含めて前記フェイスマスクの複数の機能ユニットの機能を制御するように適合された制御ユニットと、
-透明なシリコーンシートであって、前記フレキシブル回路基板を覆うように適合された前記透明なシリコーンシートと、を備え、
前記マスク本体、前記フレキシブル回路基板及び前記透明なシリコーンシートが、前記フェイスマスクを前記ユーザの顔の領域に心地よく固定することを促進するため、目、鼻孔及び口のための開口を有するとともに、
前記透明なシリコーンシートの縁が、前記複数の発光ダイオードからの光照射が前記ユーザの目に入ることを防止するため、前記ユーザの目の領域の近傍において不透明にされ、
前記フレキシブル回路基板が前記マスク本体と前記内側部に向かう前記透明なシリコーンシートとの間に固定され、
前記マスク本体が固定手段を用いて前記ユーザの顔の領域に確保されるように構成され、
前記発光ダイオードが表面実装技術(SMT)を用いて前記フレキシブル回路基板に実装されたスペクトル固有のデュアルチップ発光ダイオードである、調節可能な治療用フェイスマスク。」(下線部は、補正箇所を示す。)
(2)本件補正前の請求項1
「 【請求項1】
ユーザの顔の領域を覆うマスク本体を伴う調節可能な治療用フェイスマスクであって、前記マスク本体は、
-内側部及び外側部であって、
前記内側部が前記マスク本体の前記内側部に向かい複数の発光ダイオードを含むフレキシブル回路基板を含み、
前記複数の発光ダイオードが広い波長範囲にわたって様々な色彩及び強度の光照射を発するように構成された、前記内側部及び前記外側部と、
-前記外側部に封入され、前記色彩及び強度の制御を含めて前記フェイスマスクの複数の機能ユニットの機能を制御するように適合された制御ユニットと、
-透明なシリコーンシートであって、
前記シリコーンシートが前記フレキシブル回路基板を覆うように適合され、
前記マスク本体が、前記フェイスマスクを前記ユーザの顔の領域に心地よく固定することを促進するため、目、鼻孔及び口のための開口を前記フレキシブル回路基板及び前記透明なシリコーンシートの前記開口を含めて有するとともに、前記透明なシリコーンシートの縁が、前記複数の発光ダイオードからの光が前記ユーザの目に入ることを防止するため、前記ユーザの目の領域の近傍において不透明にされ、
前記フレキシブル回路基板が前記マスク本体と前記内側部に向かう前記透明なシリコーンシートとの間に固定され、
前記マスク本体が固定手段を用いて前記ユーザの顔の領域に確保される、前記透明なシリコーンシートと、
を備える、調節可能な治療用フェイスマスク。」
2 補正の適否
(1)補正の目的要件について
本件補正は、本件補正前の請求項1の「前記複数の発光ダイオードが広い波長範囲にわたって様々な色彩及び強度の光照射を発するように構成された」のうち「広い波長範囲にわたって」との限定を省く補正を含むものであるから、本件補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するものでない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明を目的とする補正のいずれにも該当しないことは、明らかである。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当せず、同法17条の2第5項に規定する要件に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
(2)独立特許要件について
前記(1)で検討したとおり、本件補正は却下すべきものであるところ、仮に「広い波長範囲にわたって」が単に通常の発光ダイオードを意味するものであり、本件補正が特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであったとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。
イ 引用文献の記載事項
(ア)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、韓国公開特許第10-2011-0117481号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、日本語訳は、当審が作成したものである。
(記載事項)
a 請求項1 「
[図:0001418859000001.jpg]
」(請求項1
特定波長を有するLED(L1、L2、L3)取付用の回路基板(10)を設ける外カバー(20)と、上記外カバー(20)と結合する導光フィルム(30)と、上記導光フィルム(30)の外縁に嵌め込まれる間隔保持用のガスケット(40)を含む構成を特徴とするスキンケア用マスク。)
b[0001]「
[図:0001418859000002.jpg]
」(本発明は、スキンケア用マスクに関するものであり、特に、特定の波長を有するLEDによる光を顔面に照射して顔のスキンケアを行うことができるようにするものである。)
c[0002]「
[図:0001418859000003.jpg]
」(一般的に、色彩が与えるエネルギーとその光の波長により、人間に及ぼす影響力を利用して、肌の美容を目的に使われることを、カラーテラピーと称している。)
d[0003]「
[図:0001418859000004.jpg]
」(このようなカラーテラピーは、主に色の光を現すための手段としてLEDが使用されており、特に660nmの波長を有する赤色LED(皮膚の弾力、血液循環効果、皮下組織と脂肪の代謝促進などの効果があると知られている)、445nm波長を有する青色LED(にきびや乾燥肌に良いと言われている)、530nm波長を有する緑色LED(細胞層の機能を強化し、老化防止に良いと言われている)が利用され、スキンケアの目的に使用されている。)
e[0020]「
[図:0001418859000005.jpg]
」(図1は本発明の全体斜視図であり、図2は本発明の一実施形態による断面図、図3は本発明の分離断面図、図4は本発明の使用状態断面図、図5は本発明の他の実施形態による断面図、図6は本発明の使用状態正面図(外カバー省略)、図7は本発明のLED配置を示した一部省略正面図、図8は本発明の回路ブロック図、図9は本発明の他の実施形態を示す斜視図である。)
f[0021]「
[図:0001418859000006.jpg]
」(本発明は、特定波長を有する赤色LED(L1:660nm)、青色LED(L2:445nm)、緑色LED(L3:530nm)取付用のフレキシブルな回路基板(10)を設ける不透明の外カバー(20)と、上記外カバー(20)と結合する透明シリコンゴムを用いた薄い導光フィルム(30)(導光フィルムだけでなく可視光線が通過できるフィルムをいう)と、上記導光フィルム(30)の外縁に嵌め込まれる間隔保持用のガスケット(40)を含んで構成する。)
g[0023]及び[0024]「
[図:0001418859000007.jpg]
[図:0001418859000008.jpg]
」(ところで、上記外カバー(20)を不透明材質で形成しているが、透明ではあっても光が通過しない材質で形成しても構わない。
そして、上記外カバー(20)の内側面に取り付けられる回路基板(10)のパターンは、図6および図7に示すように構成することができるが、回路基板の配置パターンは、図6および図7のように定められているわけではなく、回路基板(10)はフレキシブルであることが好ましいが、外カバー(20)の内側面に曲げながら取り付けできる程度の曲げ性があれば十分である。)
h[0027]「
[図:0001418859000009.jpg]
」(そして、LED(L1、L2、L3)の可視光線が直接使用者の目に照射することを防止するために、使用者の目に対応する外カバー(20)の内側に目の保護のための凸型パッド(22)を形成するが、穴(23)を貫通して外が見られるようにし、使用者の口や鼻に対応する部位にも穴を開けて形成する。上記パッド(22)は、外カバー(20)と一体的に形成されてもよく、外カバー(20)に結合して形成されてもよい。)
i[0034]「
[図:0001418859000010.jpg]
」(上記説明で言及した導光フィルム(30)は、高透明シリコンゴムを用いた薄いフィルムであり、可視光線透過率(90%以上の光透過率を有する)が良く、LED光を拡散させるとともに均一な透過率を有しており、可視光線である特定波長が顔面に効果的に照射されることになる。また、上記導光フィルム(30)は、120度程度の高温でも変わらず、発光するLEDの熱によっても導光フィルム(30)による透明性は維持される。)
j[0037]「
[図:0001418859000011.jpg]
」(図8は、本発明の回路ブロック図であり、AC入力電源から供給される電圧を充電用バッテリー(60)を介して中央処理装置(CPU)に印加し、中央処理装置(CPU)と相互作用するキーパッド(70)と、キーパッド(70)の選択により、赤色LED(L1)、青色LED(L2)、緑色LED(L3)を点灯させるLEDドライバー(80)とで構成される。図中、90は表示灯、100はタイマー、110は電源スイッチである。上記表示灯(90)には、選択されたLED色が表示される。)
k[0039]「
[図:0001418859000012.jpg]
」(このように使用することになる本発明は、660nm波長を有する赤色LED(L1)を点灯させて使用する場合には、使用者の顔の肌の弾力を向上させたり、血液循環効果、皮下組織と脂肪の新陳代謝促進などの効果を享受することができ、415nm波長を有する青色LED(L2)を使用する場合には、顔の肌リンパ系の循環を助け、傷や皮膚治癒力を強化し、にきびと乾燥肌に効果をもたらし、530nm波長を有する緑色LED(L3)を使用する場合には、顔の肌細胞層の機能を強化する効果をもたらすことになるのである。)
l[0040]「
[図:0001418859000013.jpg]
」(一方、本発明は、主に使用者が横になった状態で使用できるようにヘッドバンドを省略したが、必要に応じて固定のためのヘッドバンドを本発明の外カバー中央両側に設け、使用者が本発明のマスクを着用した状態で使用できるようにすることができる。)
m 図1
「
[図:0001418859000014.jpg]
」
n 図2
「
[図:0001418859000015.jpg]
」
o 図4
「
[図:0001418859000016.jpg]
」
p 図6
「
[図:0001418859000017.jpg]
」
q 図8
「
[図:0001418859000018.jpg]
」(
[図:0001418859000019.jpg]
)
(認定事項)
r 外カバー(20)は、図1、2、4及び6(記載事項m~p)によれば、「使用者の顔の領域を覆う」ものであって、その構成及び機能に照らせば、フレキシブルな回路基板(10)が取り付けられる内側面(記載事項g)及び当該内側面以外の部分(以下「本件外側部分」という。)を備える。
s 透明シリコンゴムを用いた導光フィルム(30)(記載事項f及びi)は、その構成及び機能に照らせば、「フレキシブルな回路基板(10)を配置する空間を隔てて外カバー(20)と整合する」ものである。
t 図8の回路ブロック図(記載事項j及びq)で図示された、中央処理装置(CPU)、充電用バッテリー(60)、キーパッド(70)、LEDドライバー(80)、表示灯(90)、タイマー(100)及び電源スイッチ(110)からなる構成(以下「本件LED点灯構成」という。)は、図1、図2及び図8(記載事項m、n及びq)によれば、電線で外カバー(20)と接続されたものである。
u 本件LED点灯構成は、記載事項c、d、j、kによれば、中央処理装置(CPU)とキーパッド(70)が相互作用しながら、赤色LED(L1)、青色LED(L2)及び緑色LED(L3)を選択し点灯してカラーテラピーを行うように適合されたものである。
v 外カバー(20)、フレキシブルな回路基板(10)及び導光フィルム(30)は、記載事項h並びに図1、2、4及び6(記載事項m~p)によれば、使用者の目、鼻及び口のための穴又は開口を有するものである。
w LED(L1、L2、L3)の可視光線が使用者の目に照射することを防止するための、外カバー(20)の内側に形成された凸型パッド(22)(記載事項h)は、図1、2及び4(記載事項m~o)によれば、使用者の目の保護のために穴(23)の外周に配置されている。
x 外カバー(20)は、記載事項l及び技術常識に照らせば、「固定のためのヘッドバンドを用いて使用者がマスクを着用した状態で使用できるように構成された」ものである。
前記記載事項a~q及び認定事項r~xから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「特定の波長を有するLEDによる光を顔面に照射して顔のスキンケアを行うスキンケア用マスクであって、
特定波長を有するLED(L1、L2、L3)取付用のフレキシブルな回路基板(10)と、前記フレキシブルな回路基板(10)が内側面に取り付けられた外カバー(20)と、前記外カバー(20)と結合する導光フィルム(30)と、前記外カバー(20)と電線で接続された本件LED点灯構成と、を備え、
前記外カバー(20)は、前記内側面及び本件外側部分を備えて使用者の顔の領域を覆うものであり、
前記本件LED点灯構成は、中央処理装置(CPU)とキーパッド(70)が相互作用しながら、赤色LED(L1)、青色LED(L2)及び緑色LED(L3)を選択し点灯してカラーテラピーを行うように適合されたものであり、
前記導光フィルム(30)が高透明シリコンゴムを用いた薄いフィルムであって、前記フレキシブルな回路基板(10)を配置する空間を隔てて前記外カバー(20)と整合するものであって、
前記外カバー(20)、前記フレキシブルな回路基板(10)及び前記導光フィルム(30)が、使用者の目、鼻及び口のための穴又は開口を有するとともに、
使用者の目の保護のために穴(23)の外周に、前記LED(L1、L2、L3)の可視光線が使用者の目に照射することを防止するため、前記外カバー(20)の凸型パッド(22)が配置され、
前記フレキシブルな回路基板(10)が前記外カバー(20)と前記内側面に向かう前記導光フィルム(30)との間の空間に配置され、
前記外カバー(20)が固定のためのヘッドバンドを用いて使用者がマスクを着用した状態で使用できるように構成された、
スキンケア用マスク。」
(イ)引用文献2
同じく原査定に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2018-521747号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審による。「…」は、省略を意味する。
a「【0002】
(発明の分野)
本実施形態は、抗加齢の増進又は座瘡防止などの皮膚の健康を改善する光に基づく皮膚治療処置を供給するための装置及び方法に関し、発光ダイオード(LED)光治療を使用するものである…。」
b「【0005】
ハンドフリーの治療体験は、治療中に装置を長時間特定の位置に保持しなければならない場合より常にすぐれている。マスクやヘルメットのような装置を、種々のストラップ、ハンド、包装体、及び紐に装着するための多数のアセンブリが考案されてきた」
c「【0011】
本実施形態は、治療が意図される顔面の寸法又は領域の変化を受け入れるために調整されることが可能な、LED電球又はLEDストリップから放射されるLED光を伴う、形作られた/適合された…顔面マスク…などの形態を説明する。光強度、周波数又は方向を変化させる制御システムが含まれる。」
d「【0038】
本主題の実施形態は、方法と装置を含む光線療法システムに関し、好ましくは装置内の治療ランプに給電するための遠隔バッテリーパックを伴うウェアラブルハンドフリー装置を備える光線療法システムに関する。」
e「【0039】
より詳細には、そして、図1~図4を参照すると、主題実施形態は、好ましくはランププラットフォームAと、遠隔のバッテリーパックBを備える。プラットフォームAは、バッテリーパックBからケーブル80及びコネクタ83を介してランプまで電力を伝達するために、赤及び青のLED 12及び回路14などの複数の治療ランプを覆う壁構造体10から構成される。」
f「【0044】
バッテリーパックB(図5)は、供給バッテリー81と、ワイヤ80を経由してランプと電気通信しているプロセス制御装置82と、を保持する。コネクタ83とLEDストリップ12との間の配線は、…壁50と壁52との間に含まれる。バッテリーパックは、オンオフスイッチ84と、ユーザインターフェース86と、を含むであろう。プロセス制御装置82は、ユーザーに装置の使用を表示する種々の制御システムを含んでもよい。」
g「【0045】
図11及び図12の「お試しパッケージ(Try-me packaging)」は、包装されたままで、潜在顧客にデモンストレーションとしての使用機会を提供する。本主題の実施形態は、ランプアセンブリの操作のためのスイッチS1…が、オンモード、オフモード及びお試しモードを含む多位置有効機能を有する装置を備えるパッケージアセンブリ210を更に含む。…パッケージは、装置Aを覆う透明又は半透明のカバー212を含む。」
h「【0049】
図9及び図10を参照すると、代替実施形態が示されており、そこでは制御装置Bをなくし、エネルギー源とプロセス制御とが装置90内に一体的に組み込まれている。この場合、プラットフォーム20及び壁50、52は、図1の装置の場合と実質的に同等のままである。しかしながら、バッテリー92などのエネルギー源は、眼鏡のテンプルアームの一部として配置され、ワイヤがエネルギーをバッテリー92からフレーム20のヒンジ点を通しLEDへ、そしてLED自体への最終的な接続のために空間54内へと提供する。LCDディスプレイ96を含む制御装置94もまた、ユーザーに関して反射壁52の後ろに収容され、その壁52は、スクリーン96のための比較的小さい切り欠き…を含んでもよい。」
i「【0050】
図9及び図10の実施形態は、したがって図1の実施形態よりなおいっそうコンパクトであり、また操作中に制御装置Bをなんとかして使いこなす必要がなくなっているので、図1のものよりハンドフリーである。」
j 図1「
[図:0001418859000020.jpg]
」
k 図10「
[図:0001418859000021.jpg]
」
l 図12「
[図:0001418859000022.jpg]
」
m 図13「
[図:0001418859000023.jpg]
」
ウ 引用発明との対比
(ア)本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の各構成は、その構造及び作用から、それぞれ、次の本件補正発明の各構成に相当する。
<引用発明> <本件補正発明>
スキンケア用マスク 治療用フェイスマスク
LED(L1、L2、L3) 複数の発光ダイオード
フレキシブルな回路基板(10) フレキシブル回路基板
外カバー(20) ユーザの顔の領域を覆うマスク本体
導光フィルム(30) 透明なシリコーンシート
使用者 ユーザ
内側面 内側部
本件外側部分 外側部
目、鼻及び口のための穴又は開口 目、鼻孔及び口のための開口
固定のためのヘッドバンド 固定手段
(イ)前者の「特定波長を有するLED(L1、L2、L3)取付用のフレキシブルな回路基板(10)」「が内側面に取り付けられた外カバー(20)」は、後者の「前記内側部が前記マスク本体の前記内側部に向かい複数の発光ダイオードを含むフレキシブル回路基板を含」む「マスク本体」に相当し、前者の「赤色LED(L1)、青色LED(L2)及び緑色LED(L3)を選択し点灯」することは、後者の「前記複数の発光ダイオードが様々な色彩」「の光照射を発するように構成された」ことに相当する。
(ウ)前記(イ)における前者の構成は、「内側部及び本件外側部分を備え」た「外カバー(20)」に係るものであるから、当該「外カバー(20)」は、後者の「内側部及び外側部であって、前記内側部が前記マスク本体の前記内側部に向かい複数の発光ダイオードを含むフレキシブル回路基板を含み、前記複数の発光ダイオードが様々な色彩」「の光照射を発するように構成された、前記内側部及び前記外側部」を備える「マスク本体」に相当する。
(エ)前者の「本件LED点灯構成」は、中央処理装置(CPU)のほか、LEDドライバー(80)、表示灯(90)、タイマー(100)等の様々な機能を担う構成要素からなり(前記イ(ア)認定事項t)、LEDの制御に当たっては、当然に、表示灯(90)及びタイマー(100)等の制御を行うものである。そうすると、前者の「中央処理装置(CPU)とキーパッド(70)が相互作用しながら、赤色LED(L1)、青色LED(L2)及び緑色LED(L3)を選択し点灯してカラーテラピーを行うように適合された」「本件LED点灯構成」は、後者の「前記色彩」「の制御を含めて前記フェイスマスクの複数の機能ユニットの機能を制御するように適合された制御ユニット」に相当する。
(オ)前者の「導光フィルム(30)」は、「前記フレキシブルな回路基板(10)を配置する空間を隔てて前記外カバー(20)と整合する」ものであるから、後者の「前記フレキシブル回路基板を覆うように適合された前記透明なシリコーンシート」に相当する。
(カ)前者の「前記外カバー(20)、前記フレキシブルな回路基板(10)及び前記導光フィルム(30)」は、「使用者の目、鼻及び口のための穴又は開口を有する」から、当然に、後者の「前記ユーザの顔の領域に心地よく固定することを促進する」「前記フェイスマスク」に相当する。
(キ)前者の「使用者の目の保護のために穴(23)の外周に、前記LED(L1、L2、L3)の可視光線が使用者の目に照射することを防止するため、前記外カバー(20)の凸型パッド(22)が配置され」た構成と、後者の「前記透明なシリコーンシートの縁が、前記複数の発光ダイオードからの光照射が前記ユーザの目に入ることを防止するため、前記ユーザの目の領域の近傍において不透明にされ」た構成とは、「前記複数の発光ダイオードからの光照射が前記ユーザの目に入ることを防止するための構成がなされ」の限りで一致する。
(ク)前者の「前記フレキシブルな回路基板(10)が前記外カバー(20)と前記内側面に向かう前記導光フィルム(30)との間の空間に配置され」は、当該配置態様において、フレキシブルな回路基板(10)は、外カバー(20)に取り付けられているから、後者の「前記フレキシブル回路基板が前記マスク本体と前記内側部に向かう前記透明なシリコーンシートとの間に固定され」に相当する。
(ケ)前者の「前記外カバー(20)が固定のためのヘッドバンドを用いて使用者がマスクを着用した状態で使用できるように構成された」は、後者の「前記マスク本体が固定手段を用いて前記ユーザの顔の領域に確保されるように構成され」に相当する。
(コ)前記(ウ)及び(エ)に照らせば、前者の「特定の波長を有するLEDによる光を顔面に照射して顔のスキンケアを行うスキンケア用マスク」は、後者の「調節可能な治療用フェイスマスク」に相当する。
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「ユーザの顔の領域を覆うマスク本体を伴う調節可能な治療用フェイスマスクであって、前記マスク本体は、
-内側部及び外側部であって、
前記内側部が前記マスク本体の前記内側部に向かい複数の発光ダイオードを含むフレキシブル回路基板を含み、
前記複数の発光ダイオードが様々な色彩の光照射を発するように構成された、前記内側部及び前記外側部と、
-前記色彩の制御を含めて前記フェイスマスクの複数の機能ユニットの機能を制御するように適合された制御ユニットと、
-透明なシリコーンシートであって、前記フレキシブル回路基板を覆うように適合された前記透明なシリコーンシートと、を備え、
前記マスク本体、前記フレキシブル回路基板及び前記透明なシリコーンシートが、前記フェイスマスクを前記ユーザの顔の領域に心地よく固定することを促進するため、目、鼻孔及び口のための開口を有するとともに、
前記複数の発光ダイオードからの光照射が前記ユーザの目に入ることを防止するための構成がなされ、
前記フレキシブル回路基板が前記マスク本体と前記内側部に向かう前記透明なシリコーンシートとの間に固定され、
前記マスク本体が固定手段を用いて前記ユーザの顔の領域に確保されるように構成された、
調節可能な治療用フェイスマスク。」
(相違点1)
本件補正発明の制御ユニットは、「前記外側部に封入され」たものであるのに対して、引用発明の本件LED点灯構成は、「前記外カバー(20)と電線で接続された」ものである点。
(相違点2)
本件補正発明は、複数の発光ダイオードが「様々な強度」の光照射を発するように構成され、制御ユニットが「前記強度」を制御するものであるのに対して、引用発明は、LED(L1、L2、L3)及び本件LED点灯構成がそのように特定されていない点。
(相違点3)
「複数の発光ダイオードからの光照射が前記ユーザの目に入ることを防止するための構成」について、本件補正発明は、「前記透明なシリコーンシートの縁が」「前記ユーザの目の領域の近傍において不透明にされ」た構成であるのに対して、
引用発明は、「使用者の目の保護のために穴(23)の外周に」「前記外カバー(20)の凸型パッド(22)が配置され」た構成である点。
(相違点4)
本件補正発明の発光ダイオードは、「表面実装技術(SMT)を用いて前記フレキシブル回路基板に実装されたスペクトル固有のデュアルチップ発光ダイオード」であるのに対して、引用発明のLED(L1、L2、L3)は、そのように特定されていない点。
エ 相違点の検討
(ア)相違点1について
引用文献2には、発光ダイオードを使用する光線療法システムのマスクの装置であって、ランププラットフォームAと、ケーブル80でランププラットフォームAと接続されている遠隔のバッテリーパックBを備える装置のほか(記載事項a~f、j)、代替実施形態として、「バッテリーパックのエネルギー源とプロセス制御装置とが一体的に組み込まれる光線療法システムの装置」(以下「引用文献2構成」という。記載事項h、i、k)が記載されている。
そして、引用発明と引用文献2構成は、共に、発光ダイオードからの光照射を利用する治療用フェイスマスクの技術分野に属するものである。
また、引用発明は、外カバー(20)が固定のためのヘッドバンドを用いて使用者がマスクを着用した状態で使用できるように構成されたものであって、引用文献2に、ハンドフリーのフェイスマスクとして、ヘッドバンドを装着した態様のものが記載(記載事項b)されていることに照らすと、引用発明においては、ウェアラブルハンドフリー装置(記載事項d、h、i)である引用発明2構成を採用する動機があるといえる。
そうすると、引用発明に引用文献2構成を組み合わせることで、本件LED点灯構成を外カバー(20)の本件外側部分に「一体的に組み」、もって、相違点1に係る本件補正発明の「外側部に封入」の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。
(イ)相違点2について
引用発明は、「特定の波長を有するLEDによる光を顔面に照射して顔のスキンケアを行うスキンケア用マスクであって、」「赤色LED(L1)、青色LED(L2)及び緑色LED(L3)を選択し点灯してカラーテラピーを行う」ものであるところ、それぞれのLEDの光照射が担う治療目的に照らして、光照射の強度を調整することは、発光ダイオードからの光照射を利用する治療装置における技術常識である(例えば、引用文献2の記載事項c、特表2008ー508985号公報の【0041】を参照)。
そうすると、かかる技術常識に照らせば、引用発明のLED(L1、L2、L3)及び本件LED点灯構成は、相違点2に係る本件補正発明の構成を備えているものであって、相違点2は、実質的な相違点ではない。
また、仮に相違点2が実質的な相違点であったとしても、かかる技術常識に接した当業者であれば、引用発明において、カラーテラピーを最適に実施すべく、相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、容易に想到し得たことである。
(ウ)相違点3について
相違点3に係る本件補正発明の「前記透明なシリコーンシートの縁が」「前記ユーザの目の領域の近傍において不透明にされ」は、「ユーザの目の領域の近傍において不透明にされ」る「縁」が「透明なシリコーンシート」と一体であるといった限定はなく、別体の態様も含んでいる(「縁」には「領域の範囲を決定づける線」又は「境界線」の意味も含まれる(出展:weblio類語辞典(https://thesaurus.weblio.jp/content/境界)))。
そうすると、かかる「縁」とは、透明なシリコーンシートの「目のための開口」の周囲が不透明にされた構成のほか、マスク本体の「目のための開口」の周囲が不透明にされた構成であって、かつ、マスク本体と透明なシリコーンシートの二つの「開口」が近接して整列されて配置された構成も含むと解するのが相当である。
そして、引用発明の「前記外カバー(20)の凸型パッド(22)」が不透明であることは、引用文献1に示唆されているところ(記載事項g)、当該「凸型パッド(22)」は、外カバー(20)の「目のための穴」の周囲に形成されており(記載事項m参照)、かつ、「使用者の目の保護のために穴(23)の外周に」「配置され」ている。
してみれば、引用発明の「凸型パッド(22)」は、前記「縁」なる構成に相当することとなるから、相違点3は、実質的な相違点ではない。
また、仮に相違点3が実質的な相違点であったとしても、引用発明の「凸型パッド(22)」を導光フィルム(30)と一体とするのか否か(外カバー(20)と導光フィルム(30)のいずれに配置するのか)は、当業者が適宜選択すべき設計的事項にすぎないから、引用発明において、導光フィルム(30)と一体とする態様を選択し、もって、相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、容易に想到し得たことである。
(エ)相違点4について
表面実装技術(SMT)を用いてフレキシブル回路基板に実装されたスペクトル固有のデュアルチップ発光ダイオードは、本願の国際出願日前の周知技術にすぎず、発光ダイオードからの光照射を利用する治療装置においても、かかる発光ダイオードを使用することが周知技術であることは、例えば、特表2008ー508985号公報の【0007】及び特開2006-288965号公報の【0027】に示されている。
そして、引用発明は、赤色LED(L1)、青色LED(L2)及び緑色LED(L3)を選択し点灯してカラーテラピーを行うものであり、記載事項d及びkに照らして、これら三色のうち二色を用いて治療することは、当然に想定される。
そうすると、引用発明に前記周知技術を適用することにより、相違点4に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。
(オ)効果について
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2構成及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ 小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明、引用文献2構成及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正却下の決定におけるむすび
前記2(1)で検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項に規定する要件に違反するから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮に本件補正が特許法第17条の2第5項の規定に適合するとしても、前記2(2)で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~11に係る発明は、特許法第184条の6第3項により、願書に添付して提出した特許請求の範囲とみなされた、本願翻訳文記載の特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2 の [理由]1(2)のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、この出願の請求項1~11に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2に記載された事項及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)イに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、実質的には、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から「前記発光ダイオードが表面実装技術(SMT)を用いて前記フレキシブル回路基板に実装されたスペクトル固有のデュアルチップ発光ダイオードである」との限定事項を削除するとともに、複数の発光ダイオードの光照射につき「広い波長範囲にわたって」との事項を追加したものである。
そうすると、本願発明の「広い波長範囲にわたって」との事項は、引用文献1の[0039](記載事項k)に記載ないし示唆されており、引用発明の構成として追加で認定することができる事項であるから、本願発明と引用発明は、前記第2の「理由」2(2)ウに記載した相違点1~3で相違し、その余の点で一致する。
したがって、本願発明は、前記第2の[理由]2(2)エに記載したとおり、引用発明及び引用文献2構成に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 上申書の補正案について
請求人は、令和6年1月29日に提出した上申書において、請求項1(本件補正発明)等に「広い波長範囲にわたって」及び「前記制御ユニットは、前記外側部の外側で額の位置に取り付けられる装着ブラケットと、額カバーによって生み出された中空部分に収容される」との事項を追加する補正案を提示している。
しかしながら、補正案の「広い波長範囲にわたって」は、前記第3の4のとおり、引用文献1の[0039](記載事項k)に記載ないし示唆されている事項である。
また、補正案の「前記制御ユニットは、前記外側部の外側で額の位置に取り付けられる装着ブラケットと、額カバーによって生み出された中空部分に収容される」については、(1)マスク本体の外側部にカバーを設けて、制御ユニットを収容する中空空間を形成することは、引用文献2の【0045】及び図12~13(記載事項g、l、m)に記載ないし示唆されていることであり、(2)装着ブラケットは、部品の取付手段として慣用手段にすぎず、(3)制御ユニットの取付箇所を額の位置とすることは、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。
そうすると、補正案の請求項1に係る発明であっても、依然として、引用発明、引用文献2構成及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-016443