特許拒絶査定不服審判
2021-006390
取り外し可能な治療装置および監視装置で振戦を治療するための末梢神経刺激用のシステムおよび方法
- 審判番号
- 2021-006390
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-563309
- 請求日
- 2021年05月19日
- 審決日
- 2022年03月17日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】カラ ヘルス,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】立花 顕治
- 審判長/審判官
- 審判長 村上 聡
- 審判官 平瀬 知明
- 審判官 莊司 英史
- 分類
- P18 .121-Z (A61N) / P18 .575-Z (A61N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-563309「取り外し可能な治療装置および監視装置で振戦を治療するための末梢神経刺激用のシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月15日国際公開、WO2016/201366、平成30年 6月28日国内公表、特表2018-516702〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)6月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年(平成27年)6月10日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 2月 1日 :翻訳文提出
令和 2年 3月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 8月11日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 1月14日付け:拒絶査定
令和 3年 5月19日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出
令和 3年11月 9日 :上申書
第2 令和3年5月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年5月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「患者の振戦を治療するシステムであって、
少なくとも2つの皮膚電極を含み、前記患者の皮膚に接触するように構成される第1の表面と、
少なくとも2つの受信接点を含み、前記第1の表面と反対側の第2の表面と、
前記少なくとも2つの皮膚電極、および、前記少なくとも2つの受信接点の両方と電気的に連絡するように構成される第1の電気回路と、を含むバンドと、
ウェアラブルハウジングを備えた、取り外し可能な治療装置と、
を備え、
前記ウェアラブルハウジングは、
第2の電気回路と、
前記第2の電気回路と電気的に連絡している1つ以上のセンサであって、前記患者からのデータを測定するように構成された1つ以上のセンサと、
電気刺激を生成するように構成され、前記第2の電気回路と電気的に連絡している刺激装置と、
前記刺激装置から電気刺激を受けるように構成された少なくとも2つの治療ユニット電極と、
前記少なくとも2つの治療ユニット電極は、前記少なくとも2つの受信接点に接続するように構成され、
前記少なくとも2つの治療ユニット電極と、前記少なくとも2つの受信接点とが接続されることによって、前記刺激装置と前記少なくとも2つの皮膚電極との間に電気経路が形成され、
前記刺激装置による電気刺激の生成を制御するように構成されたコントローラと、
前記第2の電気回路と電気的に連絡している電源と、
を備え、
前記取り外し可能な治療装置の前記ウェアラブルハウジングは、前記バンドに可逆的に取り付けられるように構成される、システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年8月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「患者の振戦を治療するシステムであって、
少なくとも2つの皮膚電極を含み、前記患者の皮膚に接触するように構成される第1の表面と、
少なくとも2つの受信接点を含み、前記第1の表面と反対側の第2の表面と、
前記少なくとも2つの皮膚電極、および、前記少なくとも2つの受信接点の両方と電気的に連絡するように構成される第1の電気回路と、を含むバンドと、
ウェアラブルハウジングを備えた、取り外し可能な治療装置と、
を備え、
前記ウェアラブルハウジングは、
第2の電気回路と、
前記第2の電気回路と電気的に連絡している1つ以上のセンサであって、前記患者からのデータを測定するように構成された1つ以上のセンサと、
電気刺激を生成するように構成され、前記第2の電気回路と電気的に連絡している刺激装置と、
前記刺激装置から電気刺激を受けるように構成された少なくとも2つの治療ユニット電極と、
前記少なくとも2つの治療ユニット電極は、前記少なくとも2つの受信接点に接続するように構成され、それにより前記刺激装置と前記少なくとも2つの皮膚電極との間に電気経路を形成し、
前記刺激装置による電気刺激の生成を制御するように構成されたコントローラと、
前記第2の電気回路と電気的に連絡している電源と、
を備え、
前記取り外し可能な治療装置の前記ウェアラブルハウジングは、前記バンドに可逆的に取り付けられるように構成される、システム。」
2 補正の適否
本件補正は、請求項1に関しては、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「刺激装置」と「少なくとも2つの皮膚電極」との間の「電気経路」の形成について、上記下線部のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2014/113813号(平成26年7月24日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
なお、日本語訳は、引用文献1に対応する日本語文献である、特表2016-511651号公報に基づき当審が作成したものである。また、下線は、当審による。
(記載事項)
a 「[00011] The present invention relates systems, devices, and methods for treating tremor, and more specifically relate to system, devices, and methods for treating tremor by stimulation of a peripheral nerve.」
(本発明は、振戦を治療するシステム、装置、及び方法に関し、特に、末梢神経の刺激によって振戦を治療するシステム、装置、及び方法に関する。)
b 「[00088] We have invented a peripheral nerve stimulation device and method that effectively reduces tremors without the side effects of drugs and without the risks of brain surgery. Our approach is safe, and in some embodiments non-invasive, and effective in reducing tremor. …The device is simple to use, comfortable, and adjustable to achieve the best therapy for each patient.」
(本願発明者らは、薬剤の副作用がなく、脳手術のリスクもなく、振戦を効果的に軽減する末梢神経刺激装置及び方法を発明した。本願発明者らの方式は、安全であり、実施形態によっては非侵襲的であり、振戦の軽減に効果的である。…本装置は、使いやすく、不快でなく、個々の患者にとって最良の治療を達成するように調節可能である。)
c 「[00090] FIG. 1 illustrates one embodiment of delivering stimulation to the median nerve found to reduce tremor.」
(図1は、振戦を軽減する為に見つけられた正中神経に刺激を送達する一実施形態を示す図である。)
d 「[00096] FIGS. 7A-7D are block diagrams illustrating various embodiments of a tremor altering system.」
(図7Aないし図7Dは、振戦を変化させるシステムの様々な実施形態を示すブロック図である。)
e 「[000103] FIGS. 14A-14L illustrate various non-invasive or invasive embodiments of the tremor altering system. …FIG. 14H illustrates an embodiment of a device having a form factor of a wrist watch. FIG. 141 illustrates the back of the device shown in FIG. 14H, showing the electrodes which are the interface with the user. FIG. 14J illustrates an embodiment of a disposable electrode interface that snaps into place of the wrist watch form factor of the device housing. …」
(図14Aないし図14Lは、振戦を変化させるシステムの様々な非侵襲的実施形態又は侵襲的実施形態を示す図である。…図14Hは、腕時計のフォームファクタを有する装置の一実施形態を示す。図14Iは、図14Hに示された装置の裏面を示しており、ユーザとのインターフェースである電極が示されている。図14Jは、装置ハウジングの腕時計フォームファクタの定位置にスナップ嵌入される使い捨て電極インターフェースの一実施形態を示す。…)
f 「[000120] We evaluated the method of using peripheral nerve stimulation to alter the circuit dynamics associated with ET in a clinical study. A device 100 that delivers transcutaneous electrical nerve simulation (TENS) using surface electrodes 102 positioned on the palmar side of the wrist was used to stimulate the median nerve 104 with square waves at a frequency of 150 Hz with a pulse width of 300 microseconds for 40 minutes, as illustrated in FIG. 1. Wires 106 were used in this embodiment to connect the device 100 to the electrodes 102. …」
(本願発明者らは、末梢神経刺激を用いてETに関連する回路動態を変化させる方法を、臨床研究において評価した。図1に示されるように、手首の手のひら側に配置された表面電極102を使用して経皮電気神経刺激(TENS)を送達する装置100を使用して、正中神経104を、周波数150Hz、パルス幅300マイクロ秒の方形波で40分間刺激した。この実施形態では、ワイヤ106を使用して装置100を電極102に接続した。…)
g 「[000121] This electrical stimulation effectively reduced the tremor in subjects with tremors ranging in severity from mild to severe. …Postural tremors were evaluated by measuring the angular velocity of gyroscopes worn on the back on the hand.」
(この電気刺激は、振戦の深刻度が軽度から重度までの被験者の振戦を効果的に軽減した。…姿勢振戦の評価は、手の甲に装着されたジャイロスコープの角速度を測定することにより行った。)
h 「[000131] FIGS. 7A-7D are conceptual diagrams illustrating some embodiments of a tremor altering system 700. System 700 includes a housing 720, one or more effectors 730, one or more controls 740 in electrical communication with the effector 730, and one or more power sources 750. The housing 720 can, in some embodiments, include an interface 760. The interface facilitates the coupling of the effector to the patient. For example, the interface can provide a physical, electrical, chemical, thermal or magnetic connection between the device and the patient's nerve. The housing 720 can also, in some embodiments, include a sensor 780 to detect the tremor, memory 770, display 790, and processor 797. The device in this embodiment may include a processor 797 coupled to the effector which could perform computations and control of other components. …The device may include a sensor 780 connected to the processor 797 which may detect information of predefined parameters and transmits said parameter information to the processor 797. The device may include a data storage unit 770 connected to the sensor 780 and processor 797; and a power supply 750 may be connected to the processor.」
(図7A~7Dは、振戦を変化させるシステム700の幾つかの実施形態を示す概念図である。システム700は、ハウジング720と、1つ以上の効果器730と、効果器730と電気的に連通している1つ以上の制御盤740と、1つ以上の電源750と、を含む。ハウジング720は、実施形態によっては、インターフェース760を含んでよい。インターフェースは、効果器を患者に結合することを容易にする。例えば、インターフェースは、本装置と患者の神経との間に物理的、電気的、化学的、熱的、又は磁気的な接続を与えることが可能である。ハウジング720は、実施形態によっては、振戦検出用センサ780、メモリ770、ディスプレイ790、及び処理部797を含んでよい。本実施形態の本装置は、効果器と結合されて計算及び他の構成要素の制御を実施することが可能な処理部797を含んでよい。…本装置は、処理部797に接続されたセンサ780を含んでよく、センサ780は、あらかじめ定義されたパラメータの情報を検出し、前記パラメータ情報を処理部797に送信することが可能である。本装置は、センサ780及び処理部797に接続されたデータ記憶部770を含んでよく、処理部には電源750が接続されてよい。)
i 「 [000134] In order to make the device small and simple, many of these components could be housed in a separate unit.…」
(本装置を小型且つシンプルにする為に、これらの構成要素の多くを別のユニットに収容してよい。…)
j 「 [000140] EFFECTOR: ELECTRICAL STIMULATION
[000141] In some embodiments, the effector may be an electrical stimulator. Electrical effectors can include an electrode, an electrode pair, an array of electrodes or any device capable of delivering an electrical stimulation to a desired location. Electrical stimulation may be transcutaneous or subcutaneous. …」
(効果器:電気刺激
実施形態によっては、効果器は電気刺激器であってよい。電気式効果器は、所望の場所に電気刺激を送達することが可能な電極、電極対、電極アレイ、又は何らかの装置を含んでよい。電気刺激は、経皮刺激又は皮下刺激であってよい。…)
k 「[000173] FORM FACTORS: GENERAL WEARABLE STIMULATOR」
(フォームファクタ:一般的なウェアラブル刺激器)
l 「[000174] Referring to FIG.14A-E, the system 700 from FIG. 7 can be non-invasive, fully implantable, or partially implantable. For example, a non-invasive embodiment can include a non-invasive housing such as a sleeve 1400, or a patch 1410, or a glove. In such non-invasive embodiments, the interface of the housing is in communication with an external part of the patient. …」
(図14A~Eを参照すると、図7のシステム700は、非侵襲的、又は完全インプラント可能、又は部分インプラント可能であってよい。例えば、非侵襲的な実施形態は、スリーブ1400、又はパッチ1410、又は手袋のような、非侵襲的なハウジングを含んでよい。そのような非侵襲的な実施形態では、ハウジングのインターフェースは、患者の外側部分と連通している。…)
m 「[000175] A non-invasive system housing can facilitate in maintaining the interface and/or effector in close proximity to the patient. The sleeve can cover a long stretch of arm or be a narrow band. The sleeve can cover at least a portion of the circumference of any part of a limb or the sleeve may cover the full circumference of any part of the limb. …」
(非侵襲的なシステムハウジングは、インターフェース及び/又は効果器を患者に近接させたままにすることを容易にすることが可能である。スリーブは、腕の長さ一杯を覆ってよく、細いバンドであってもよい。スリーブは、手足のいずれかの部分の外周の少なくとも一部分を覆うことが可能であり、或いは、スリーブは、手足のいずれかの部分の全外周を覆うことが可能である。…)
n 「[000179] In one embodiment, the housing 1450 may have the configuration of a wristwatch as shown in FIG. 14H-K worn on the wrist or arm of the user. The housing 1450 may contain an interface 1452 separated, partially separated, or connected to the housing, and which may interact with the user. The interface 1452 may connect to the housing 1450 and be disposable after use for a period of time. The electrodes 1454 of the interface may be arranged in strips and may be arranged in anode/cathode pairs.… The interface itself may be the entire portion that is the wristband or may be a portion of the wristband or be attached to the wristband. …」
(一実施形態では、ハウジング1450は、ユーザの手首又は腕に装着される、図14H~Kに示されるような腕時計の構成を有してよい。ハウジング1450は、ハウジングと離れているか、部分的に離れているか、つながっているインターフェース1452を含んでよく、インターフェース1452はユーザとのインタラクションを行うことが可能である。インターフェース1452は、ハウジング1450に接続可能であり、一定期間の使用後に廃棄可能である。インターフェースの電極1454は、ストリップ状に並べられてよく、アノードとカソードのペアを単位として並べられてよい。…インターフェース自体は、手首バンド全体であってよく、或いは手首バンドの一部分であってよく、或いは手首バンドに取り付けられてよい。…)
o 「[000180] The disposable or non-disposable interface may be connected to the housing in a number of different ways, including but not limited to snapping features, velco, pressfit, magnets, temperature, adhesive, …As an example, FIG. 14J and FIG. 14K show one potential embodiment where there is a self aligning piece, that can be a magnet, that connects the interface to the body in 3 dimensions. …The overall shape of the aligning piece can align the interface in the final dimension, which in this particular example of embodiment is the depth. The housing can have a matching feature of this shape for which the connection can connect to. It is possible that the connection feature can be reversed and the aligning piece be placed on the housing, and the matching feature of shape be placed on the interface. …」
(使い捨て又は非使い捨てのインターフェースは、スナップ機能、ベルクロ、圧入、磁石、温度、接着などを含み、これらに限定されない様々な方法でハウジングに接続されてよく、…一例として、図14J及び図14Kは、自動位置合わせ部品がある、可能な一実施形態を示しており、この部品は、インターフェースを身体に3次元接続させる磁石であってよい。…位置合わせ部品の全体形状により、インターフェースを最終的な次元で位置合わせすることが可能であり、最終的な次元は、この特定の実施例では、深さである。ハウジングは、この形状と整合する外形を有してよく、この外形に対して接続が行われてよい。接続機能は逆であってもよく、位置合わせ部品はハウジング上に配置され、整合する外形形状はインターフェース上に配置されることが可能である。…)
p claim 31
「31. A system for treating tremor in a patient, the system comprising:
a decision unit; and
an interface unit adapted to deliver electrical stimuli to a peripheral nerve, the interface unit comprising a first peripheral nerve effector in communication with the decision unit, the first peripheral nerve effector comprising at least one electrode;
wherein the decision unit comprises a processor and a memory storing instructions that, when executed by the processor, cause the decision unit to:
deliver a first electrical stimulus to a first peripheral nerve through the first peripheral nerve effector, the electrical stimulus configured by the controller to reduce tremor in the patient's extremity by modifying the patient's neural network dynamics.」
(【請求項31】
患者の振戦を治療するシステムであって、
決定部と、
末梢神経に電気刺激を送達するように適合されたインターフェースであって、前記インターフェースは、前記決定部と通信する第1の末梢神経効果器を備え、前記第1の末梢神経効果器は少なくとも1つの電極を備える、前記インターフェースと、を備え、
前記決定部は、処理部と、命令を記憶するメモリと、を備え、前記命令は、前記処理部によって実行されると、
前記第1の末梢神経効果器から第1の末梢神経に第1の電気刺激を送達することを前記決定部に行わせ、前記電気刺激は、前記患者の神経回路網動態を修正することによって前記患者の手足の振戦を軽減するように、前記制御部によって構成される、
システム。)
q FIG.1
[図:0001387922000001.jpg]
r FIG.7A
[図:0001387922000002.jpg]
s FIG.14H~K
[図:0001387922000003.jpg]
(認定事項)
t 非侵襲的なハウジングの実施形態が記載されていること
上記記載事項a、h及びpによれば、上記「患者の振戦を治療するシステム」は、「決定部」と「末梢神経に電気刺激を送達するように適合されたインターフェース」を備える発明であると認められる。
そして、当該発明には、上記記載事項b、e、k、l及びnによれば、患者の安全性を考慮して、ユーザの手首に装着される「非侵襲的なハウジング」(上記記載事項l参照)を備えた実施形態が含まれるものと認められる。なお、当該実施形態は、非侵襲であることに加えて、ユーザの手首に装着されることによって、手首の抹消神経に電気刺激を送達することができるため、振戦の低減に効果的であると認められる(上記記載事項b、c、f及びg参照)。
u 上記tの実施形態は、ハウジング1450及び手首バンドに電極を設けたインターフェース1452を備えること
上記tの実施形態は、上記記載事項n及びsによれば、ユーザの手首に装着されるハウジング1450を有するところ、ハウジング1450のほかにも、「ハウジング1450に接続可能であって手首バンドに電極を設けたインターフェース1452」を備えるものと認められる。
すなわち、上記sの図14Jには、「装置ハウジング…にスナップ嵌入される使い捨て電極インターフェースの一実施形態」(上記記載事項e参照)が図示されている。
ここで、上記「使い捨て電極インターフェース」であるインターフェース1452は、図14I及びJの図示内容(バンド状の構成、及び、ハウジング1450にスナップ嵌入される面が看取できる。)、並びに、「インターフェース1452は、ハウジング1450に接続可能であり」、「インターフェースの電極1454」及び「インターフェース自体は、手首バンド全体であってよく、或いは手首バンドの一部分であってよく、或いは手首バンドに取り付けられてよい」(上記記載事項n参照)によれば、ハウジング1450に接続可能なものであって、手首バンドに電極を設けた構成であると認められる。
v 上記uのインターフェース1452は、複数の電極が配置され、スナップ機能又は磁石によりハウジング1450に接続されること
上記uのインターフェース1452は、「末梢神経に経皮的に電気刺激を送達するように適合されたインターフェース」であると認められるところ(上記認定事項t)、上記記載事項n及び上記sの図14Iによれば、ストリップ状に並べられた複数の電極1454が配置された面を含むものと認められる。
また、上記記載事項o(特に下線部参照)、及び、上記認定事項uの「図14I及びJの図示内容」によれば、上記uのインターフェース1452は、スナップ機能又は磁石によって、ハウジング1450に接続されるものであって、スナップ機能を担う、又は、磁石が配置された面は、複数の電極1454が配置された面とは反対側にあると認められる。
w 上記u及びvのハウジング1450は電源750、振戦検出用センサ780及び処理部797を含むこと
上記記載事項h及び上記rの図7Aには、振戦を変化させるシステム700が、ハウジング720、効果器730、電源750、振戦検出用センサ780及び処理部797を含む全体構成が開示されているところ、上記記載事項iに、その構成要素を別のユニットに収容してもよいことが記載されていることを勘案すれば、上記sの図14H~Kには、当該システムの一態様として、皮膚電極である電極1454のみを別ユニットである手首バンドに設けたインターフェース1452(上記認定事項u及びv)を有する構成が開示されているものと認められる。
そうすると、上記u及びvのハウジング1450は、電源750、振戦検出用センサ780及び処理部797を含むものと認められる(上記tの「決定部」を構成する。)。
x 上記wの効果器730の電気刺激器はハウジング1450に含まれること
まず、上記記載事項pに、第1の末梢神経効果器から第1の末梢神経に第1の電気刺激を送達することが記載されていることに照らし、上記wの効果器730が電気刺激器を有することは明らかである(「効果器」という用語については、上記記載事項jを参照)。
そして、上記認定事項wのとおり、上記sの図14H~Kに開示された構成は、上記hの振戦を変化させるシステム700の一態様として、皮膚電極である電極1454のみを手首バンドに設けたインターフェース1452を有するものである。
そうすると、かかる一態様においては、上記wの効果器730のうち、皮膚電極1454はインターフェース1452に、電気刺激器はハウジング1450に、それぞれ配置されているものと認められる。
y 上記wの処理部797は上記xの効果器730に対して電気刺激伝達の命令を実行すること、上記wの処理部797は上記xの効果器730、電源750及び振戦検出用センサ780と電気的に接続すること
上記記載事項pによれば、上記wの処理部797は、上記xの効果器730に対して電気刺激伝達の命令を実行するものと認められる。また、上記記載事項h(特に下線部参照)によれば、上記wの処理部797は、上記xの効果器730、電源750及び振戦検出用センサ780と電気的に接続するものと認められる。
z 上記uのインターフェース1452は上記xの効果器730と患者の神経との間に電気的な接続を与えることが可能であること
上記uのインターフェース1452は、「末梢神経に経皮的に電気刺激を送達するように適合されたインターフェース」である(上記認定事項v)。
そして、上記xの効果器730は、処理器797の命令が実行されると電気刺激を伝達するものであること(上記認定事項y)及び上記記載事項hの「インターフェースは、本装置と患者の神経との間に…電気的…な接続を与えることが可能である」ことに照らすと、上記uのインターフェース1452は、上記xの効果器730と患者の神経との間に電気的な接続を与えることが可能であるものと認められる。
(イ)上記(ア)の記載事項a~s及び認定事項t~zから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「患者の振戦を治療するシステム700であって、
ユーザの手首に装着されるハウジング1450と、前記ハウジング1450に接続可能であり手首バンドに電極1454を設けたインターフェース1452を備えるものであって、
前記インターフェース1452は、末梢神経に経皮的に電気刺激を送達するように適合されるものであり、かつ、ストリップ状に並べられた複数の電極1454が配置された面と、前記複数の電極1454の反対側にあり、前記ハウジング1450にスナップ機能又は磁石が配置された面を含むものであって、前記インターフェース1452は、前記スナップ機能又は磁石により、前記ハウジング1450に接続されるように構成されており、
前記ハウジング1450は、末梢神経に電気刺激を送達する電気刺激器と、電源750と、振戦検出用センサ780と、処理部797とを含み、
前記処理部797は、前記電気刺激器に対して、命令を実行して、末梢神経に電気刺激を伝達させるように構成されており、
前記処理部797は、前記電気刺激器、前記電源750及び前記振戦検出用センサ780と電気的に接続し、かつ、前記電極1454は、前記電気刺激器と患者の神経との間に電気的な接続を与えることが可能であり、
これにより、前記処理部797によって命令が実行されると、前記電気刺激器から前記インターフェース1452の前記複数の電極1454を介して末梢神経に電気刺激を送達することによって、前記患者の手足の振戦を軽減する、
システム700。」
イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2009-34328号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審による。
「【0002】
従来、この種の電気刺激装置は、両端に結合手段を備え、身体のどこにでも取り付けられるようになったベルト本体に、パルス波電流用の電極を取り付け、低周波発生器によって電極に低周波電涜(審決注:「電流」の誤記)を流すことによって、ベルト本体を取り付けた身体の部分にパルス波電流を流し、パルス波電流によって筋肉を解きほぐし、或いは腰痛を和らげるといったベルトの形状をした電気治療器が知られている。」
「【0003】
このような電気治療器は、通常、肩や腰などの筋肉のこりを解消するために、治療部位にべルトによって巻き付けることによって身体に電極を固定し、治療部位から電極がずれないようにしている…。」
「【0004】
このような従来の電気治療器の一例として、…この電気治療器は、装着ベルト30と、この装着ベルト30に着脱可能に装着される低周波発生器31と、装着ベルト30の肌面側に着脱可能に装着され、且つ低周波発生器31からの治療電流を身体に流す三個の電極体32で大略構成してある。」
「【0006】
また、装着ベルト30は、その表側ベルト本体33に低周波発生器挿入用のポケット42を備えており、…ポケット42には、低周波発生器の出力端子…に接続するための接続端子…が設けてある。」
「【0007】
また、肌面側ベルト本体34には、三個の電極体32を取付けるための三個のホック44が取付けてあり、これらのホック44とポケット42の接続端子とは導電線45により接続してあり…」
「【0023】
本発明は、身体Bに刺激を与えるための刺激電流である低周波パルス電流を流し、筋肉を電気刺激によって収縮・弛緩を繰り返しながら筋肉をトレーニングするための電気刺激装置としての低周波電気刺激装置Aであり、この低周波電気刺激装置Aは、装着ベルト1と、この装着ベルト1に着脱可能に装着される低周波発生器2と、装着ベルト1の肌面側に着脱可能に装着され、且つ低周波発生器2からの刺激電流である低周波パルス電流を身体に流す複数個の電極体3で大略構成してある。」
「【0025】
また、表側ベルト本体4の外面側には、…低周波発生器装着部9が設けてある。この低周波発生器装着部9は、ポケット10と、三個の雄型リングホックからなる発生器装着用ホック11-1,11-2,11-3とで構成してある。…」
「【0026】
三個の発生器装着用ホック11-1,11-2,11-3は、逆三角形の各頂点に位置するように配置してあり…」
「【0030】
…発生器装着用ホック11-1の配線接続部11a-1とこれと対応関係にある電極体装着用ホック17-1の配線接続部17a-1とは導電性紐状配線19-1で接続してあり、発生器装着用ホック11-2の配線接続部11a-2とこれと対応関係にある電極体装着用ホック17-2の配線接続部17a-2とは導電性紐状配線19-2で接続してあり、発生器装着用ホック11-3の配線接続部11a-3とこれと対応関係にある電極体装着用ホック17-3の配線接続部17a-3とは導電性紐状配線19-3で接続してある。」
「【0036】
…低周波発生器2は、低周波治療用の治療電流を発生する電気治療発生回路…を内蔵する発生器本体2Aを備えており…」
「【0037】
…発生器本体2Aに裏面部には、電気治療発生回路が発生させた治療電流を出力するための、三個の出力端子を構成する端子側ホック23-1,23-2,23-3が逆三角形の各頂点に位置するように配置してあり、これらの端子側ホック23-1,23-2,23-3は上記した発生器装着用ホック11-1,11-2,11-3に係脱可能に係合されるものであって、雌型ホック形状にしている。」
(イ)上記記載から、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「装着ベルトと、前記装着ベルトに着脱可能に装着される低周波発生器と、前記装着ベルトの肌面側に着脱可能に装着され、且つ前記低周波発生器からの刺激電流を身体に流す複数個の電極体で構成される電気治療器において、前記低周波発生器には出力端子を、前記装着ベルトには前記低周波発生器の前記出力端子に接続するための接続端子を、それぞれ複数個設けるとともに、前記複数個の接続端子の各々と前記複数個の電極体の各々を導電線で接続したこと。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。(下線は、当審で付した。)
(ア)引用発明の「患者の振戦を治療するシステム700」は、本件補正発明の「患者の振戦を治療するシステム」に相当する。
(イ-1)引用発明の「手首バンド」は、本件補正発明の「バンド」に相当し、以下同様に、「複数の電極1454」は、経皮的に電気刺激を送達するインターフェース1452の電極であるから、「少なくとも2つの皮膚電極」に、「複数の電極1454が配置された面」は、インターフェース1452の面のうち、ユーザの手首に接する側の面に該当するから(上記認定事項u及びv参照)、「患者の皮膚に接触するように構成される第1の表面」に、「前記複数の電極1454の反対側にあり、前記ハウジング1450にスナップ機能又は磁石が配置された面」は「前記第1の表面と反対側の第2の表面」に、それぞれ相当する。
(イ-2)引用発明の「ストリップ状に並べられた複数の電極1454が配置された面」は、「複数の電極1454を含む」ものといえるから、本件補正発明の「少なくとも2つの皮膚電極を含み、前記患者の皮膚に接触するように構成される第1の表面」に相当する。
(イ-3)引用発明の「手首バンドに電極1454を設けたインターフェース1452」は、「末梢神経に経皮的に電気刺激を送達するように適合されるもの」であり、「ストリップ状に並べられた複数の電極1454が配置された面」を含むものであるから、電気刺激を送達するために、電源750側から複数の電極1454「に至る電気経路」を含むことは自明である。
そうすると、引用発明の「末梢神経に経皮的に電気刺激を送達するように適合され」た「手首バンドに電極1454を設けたインターフェース1452」と、本件補正発明の「前記少なくとも2つの皮膚電極、および、前記少なくとも2つの受信接点の両方と電気的に連絡するように構成される第1の電気回路と、を含むバンド」とは、「前記少なくとも2つの皮膚電極に至る電気経路と、を含むバンド」の点において共通する。
(ウ-1)引用発明の「ユーザの手首に装着されるハウジング1450」は、本件補正発明の「ウェアラブルハウジング」に相当する。
(ウ-2)引用発明の「ハウジング1450」は、「末梢神経に電気刺激を送達する電気刺激器」及び「前記電気刺激器に対して、命令を実行して、末梢神経に電気刺激を伝達させるように構成され」た「処理部797」を含むから、「治療装置」であるともいえる。また、引用発明の「ハウジング1450」は、インターフェース1452に「スナップ機能又は磁石により」接続されるものであるから、インターフェース1452から「取り外し可能」に構成されることも自明である。そうすると、引用発明の「ハウジング1450」は、本件補正発明の「ウェアラブルハウジングを備えた、取り外し可能な治療装置」にも相当する。
(エ)上記(ア)~(ウ-2)によれば、引用発明の「ユーザの手首に装着されるハウジング1450と、前記ハウジング1450に接続可能であり手首バンドに電極1454を設けたインターフェース1452を備える」「患者の振戦を治療するシステム700」は、本件補正発明の「バンドと、ウェアラブルハウジングを備えた、取り外し可能な治療装置と、を備え」た「患者の振戦を治療するシステム」に相当する。
(オ-1)引用発明の「振戦検出用センサ780」は、患者の振戦を検出するものであるから、本件補正発明の「1つ以上のセンサであって、前記患者からのデータを測定するように構成された1つ以上のセンサ」に相当し、以下同様に、「末梢神経に電気刺激を送達する電気刺激器」は「電気刺激を生成するように構成され」た「刺激装置」に、「前記電気刺激器に対して、命令を実行して、末梢神経に電気刺激を伝達させるように構成され」た「処理部797」は「前記刺激装置による電気刺激の生成を制御するように構成されたコントローラ」に、「電源750」は「電源」に、それぞれ相当する。
(オ-2)引用発明の「前記処理部797は、前記電気刺激器、前記電源750及び前記振戦検出用センサ780と電気的に接続し」との構成においては、処理部797が電気刺激器による電気刺激の生成を制御するために、電気刺激器、電源750、振戦検出用センサ780及び処理部797が互いに電気的に接続された「電気回路」が形成されていることは自明である。
そうすると、引用発明の当該構成は、本件補正発明の「第2の電気回路」に相当する。
(オ-3)上記(オ-2)によれば、引用発明の「振戦検出用センサ780」は、本件補正発明の「前記第2の電気回路と電気的に連絡している1つ以上のセンサ」に相当し、以下同様に、「電気刺激器」は「前記第2の電気回路と電気的に連絡している刺激装置」に、「電源750」は「前記第2の電気回路と電気的に連絡している電源」に、それぞれ相当する。
(オ-4)上記(イ-1)~(イ-3)及び(オ-1)によれば、引用発明の「前記電極1454は、前記電気刺激器と患者の神経との間に電気的な接続を与えることが可能であり」及び「前記電気刺激器から前記インターフェース1452の前記複数の電極1454を介して末梢神経に電気刺激を送達すること」は、本件補正発明の「前記刺激装置と前記少なくとも2つの皮膚電極との間に電気経路が形成され」に相当する。
(カ)上記(オ-1)~(オ-4)によれば、引用発明の「前記ハウジング1450は、末梢神経に電気刺激を送達する電気刺激器と、電源750と、振戦検出用センサ780と、処理部797とを含み」との構成は、本件補正発明の「前記ウェアラブルハウジングは、第2の電気回路と、…1つ以上のセンサと、…刺激装置と、…コントローラと、…電源と、を備え」る構成に相当する。
(キ)本件補正発明の「可逆的に取り付けられる」は、その具体的態様(本願明細書・段落【0019】及び【0020】)に照らすと、上記(ウ-2)で検討した「取り外し可能な」と同義の表現であると認められる。
そうすると、上記(ウ-2)の相当関係によれば、引用発明の「ユーザの手首に装着されるハウジング1450」の「スナップ機能又は磁石により」インターフェース1452に接続される構成は、本件補正発明の「前記取り外し可能な治療装置の前記ウェアラブルハウジングは、前記バンドに可逆的に取り付けられるように構成される」に相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「患者の振戦を治療するシステムであって、
少なくとも2つの皮膚電極を含み、前記患者の皮膚に接触するように構成される第1の表面と、
前記第1の表面と反対側の第2の表面と、
前記少なくとも2つの皮膚電極に至る電気経路と、を含むバンドと、
ウェアラブルハウジングを備えた、取り外し可能な治療装置と、
を備え、
前記ウェアラブルハウジングは、
第2の電気回路と、
前記第2の電気回路と電気的に連絡している1つ以上のセンサであって、前記患者からのデータを測定するように構成された1つ以上のセンサと、
電気刺激を生成するように構成され、前記第2の電気回路と電気的に連絡している刺激装置と、
前記刺激装置と前記少なくとも2つの皮膚電極との間に電気経路が形成され、
前記刺激装置による電気刺激の生成を制御するように構成されたコントローラと、
前記第2の電気回路と電気的に連絡している電源と、
を備え、
前記取り外し可能な治療装置の前記ウェアラブルハウジングは、前記バンドに可逆的に取り付けられるように構成される、システム。」
【相違点1】
本件補正発明は、「少なくとも2つの受信接点」及び「前記少なくとも2つの受信接点に接続するように構成され」「前記刺激装置から電気刺激を受けるように構成された少なくとも2つの治療ユニット電極」を有するのに対して、引用発明は、当該構成について特定されていない点。
【相違点2】
上記相違点1に伴い、本件補正発明では、バンドに含まれる、少なくとも2つの皮膚電極に至る電気経路が、「前記少なくとも2つの皮膚電極、および、前記少なくとも2つの受信接点の両方と電気的に連絡するように構成される第1の電気回路」であり、また、
刺激装置と少なくとも2つの皮膚電極との間に形成される電気経路について、「前記少なくとも2つの治療ユニット電極と、前記少なくとも2つの受信接点とが接続されることによって」形成させるものであるのに対して、
引用発明では、そのような構成であることが特定されていない点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア)まず、引用文献2記載事項は、上記(2)イ(イ)で認定した、次のとおりのものである。
「装着ベルトと、前記装着ベルトに着脱可能に装着される低周波発生器と、前記装着ベルトの肌面側に着脱可能に装着され、且つ前記低周波発生器からの刺激電流を身体に流す複数個の電極体で構成される電気治療器において、前記低周波発生器には出力端子を、前記装着ベルトには前記低周波発生器の前記出力端子に接続するための接続端子を、それぞれ複数個設けるとともに、前記複数個の接続端子の各々と前記複数個の電極体の各々を導電線で接続したこと。」
そして、引用文献2記載事項は、引用文献2には、「従来の電気治療器」(【0004】)の構成として記載されており、本願の優先日前に、当業者によく知られた周知技術であると認められる。
(イ)ここで、上記相違点1に係る本件補正発明の「受信接点」及び「治療ユニット電極」は、電気刺激を生成する刺激装置と患者に電気刺激を与える電極との間に形成される電気経路における、バンドとウェアラブルハウジングとの間の電気的な接続に係る構成であるから、各構成は、引用文献2記載事項の「出力端子」又は「接続端子」に該当する(「受信接点」が「接続端子」に、「治療ユニット電極」が「出力端子」に、それぞれ該当する。)。
このように、上記相違点1に係る本件補正発明の構成は、引用文献2記載事項から導出される構成である。
(ウ)次に、引用発明には、「バンド」に相当する「手首バンドに電極1454を設けたインターフェース1452」及び「ウェアラブルハウジング」に相当する「ハウジング1450」には、上記(ア)の「出力端子」及び「接続端子」について何ら特定されていない(上記相違点1参照)。
しかしながら、引用発明は、「前記電極1454は、前記電気刺激器と患者の神経との間に電気的な接続を与えることが可能であり」及び「前記電気刺激器から前記インターフェース1452の前記複数の電極1454に電気刺激を送達する」構成を有するから、電気刺激器と複数の電極1454との間に電気経路を形成するために、インターフェース1452とハウジング1450との間に電気的な接続を確保する動機付けがある。
そして、かかる電気的な接続を確保する構成については、引用文献1には、上記記載事項jに「電気式効果器は、所望の場所に電気刺激を送達することが可能な電極、電極対、電極アレイ、又は何らかの装置を含んでよい」との記載があり、電気的な接続のための「端子」たる「電極」を採用することが示唆されている。
(エ)ここで、引用発明と引用文献2記載事項を対比するに、両者は、共に「電気治療器」の技術分野に属するとともに、患者に装着されるベルト、当該ベルトに取り付けられた電気式効果器、及び、電気刺激を患者の体に流す電極の構成においても共通する。
なお、引用文献2記載事項は、「低周波」の刺激電流を流す電気治療器に係るものであるが、引用文献2記載事項を「低周波」以外の刺激電流を流す電気治療器(引用発明もかかる類型に該当すると認められる。)に適用することを阻害するような事情は認められない。
(オ)上記(ウ)及び(エ)によれば、引用発明のインターフェース1452とハウジング1450の取り付け部に、引用文献2記載事項を適用する動機付けはあるというべきである。
(カ)以上のとおり、上記相違点1に係る本件補正発明の構成は、引用発明に引用文献2記載事項たる周知技術を適用することによって、当業者が容易に想到し得たことである。
具体的には、引用発明において、複数の電極1454に対応するように、インターフェース1452の接続面に引用文献2記載事項の「接続端子」を、ハウジング1450の接続面に引用文献2記載事項の「出力端子」をそれぞれ複数設け、当該「接続端子」と「出力端子」が接続するように構成すること(このように構成すれば、上記(イ)のとおり、上記相違点1に係る本件補正発明の構成に到達する。)は、当業者であれば容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
上記アのとおり、上記相違点1に係る本件補正発明の構成は、容易想到である。
そして、引用発明のインターフェース1452に引用文献2記載事項の「接続端子」を設ければ、複数の電極1454と「接続端子」との間で「電気回路」(上記相違点2に係る本件補正発明の「第1の電気回路」に相当する。)が形成されることとなる。
また、引用発明のインターフェース1452及びハウジング1450の各々に引用文献2記載事項の「接続端子」又は「出力端子」を設ければ、インターフェース1452側の「接続端子」とハウジング1450側の「出力端子」とが接続されることによって(上記相違点2に係る本件補正発明の「前記少なくとも2つの治療ユニット電極と、前記少なくとも2つの受信接点とが接続されることによって」に相当する。)、電気刺激器と複数の電極1454との間に電気経路が形成されることとなる。
してみれば、上記相違点1と同様の理由により、上記相違点2に係る本件補正発明の構成についても、容易想到である。
ウ 効果について
これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2記載事項たる周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 審判請求人の主張について、
審判請求人は、本件補正発明は、引用文献1及び2には開示されていない、「前記取り外し可能な治療装置の前記ウェアラブルハウジングは、前記バンドに可逆的に取り付けられるように構成される」という構成(審判請求人のいう「本件構成3」)を含むことから、バンドに対するウェアラブルハウジングの取り付け方の自由度が高められる、という顕著な作用効果を奏する旨主張している(令和3年11月9日付け上申書)。
しかしながら、上記「本件構成3」については、上記(3)ア(キ)で検討したとおり、引用文献1に開示されていると認められる。したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。
オ 小括
上記ア~エのとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2記載事項たる周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年8月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1:国際公開第2014/113813号
引用文献2:特開2009-34328号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記少なくとも2つの治療ユニット電極と、前記少なくとも2つの受信接点とが接続されることによって、」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2記載事項たる周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2記載事項たる周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-006390