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特許拒絶査定不服審判

2024-010208

山林苗の早期着花方法

審判番号
2024-010208
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2023-173405
請求日
2024年06月19日
審決日
2025年06月23日
公報発行日
2025年09月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】日本製紙株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 有家 秀郎
  • 審判官 立澤 正樹
分類
P18 .575-Z (A01G) / P18 .121-Z (A01G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2023-173405「山林苗の早期着花方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 7年 4月17日出願公開、特開2025- 64029〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和5年10月5日の出願であって、同年12月14日付けで拒絶理由が通知され、令和6年2月16日に意見書及び手続補正書が提出されたのに対し、同年3月7日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされたものである(謄本送達日(オンライン)は同月19日。)。 原査定に対し、同年6月19日に審判請求がされるとともに手続補正書が提出された。 第2 令和6年6月19日に提出された手続補正書による補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年6月19日に提出された手続補正書による補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 令和6年6月19日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであり、請求項1についてみれば、下記(1)に示す本件補正前(同年2月16日に提出された手続補正書による補正後)の請求項1を、下記(2)に示す本件補正後のとおり補正するものである(下線は補正箇所を示す。)。また、本件補正前の請求項2及び請求項5を削除するとともに、他の従属請求項を繰上げ、従属請求項において引用する請求項を整えるものである。 (1)本件補正前 「山林苗を、屋内で生育し、 生育期間中、環境ストレスの付与、及び、花芽分化促進剤の投与を行うこと を含み、 環境ストレスが根圏制御領域を46L以下とする根圏制御を含み、 花芽分化促進剤が、窒素、リン酸及びカリウムを少なくとも含み、リン酸含有量が窒素含有量の1.2~2.0倍である、粒状の緩効性肥料を含む、 山林苗の早期着花方法。」 (2)本件補正後 「山林苗を、屋内で生育し、 生育期間中、環境ストレスの付与、及び、花芽分化促進剤の投与を行うこと を含み、 環境ストレスが根圏制御領域を46L以下とする根圏制御と、乾燥ストレスとを含み、 花芽分化促進剤が、窒素、リン酸及びカリウムを少なくとも含み、リン酸含有量が窒素含有量の1.2~2.0倍である、粒状の緩効性肥料と、ジベレリンとを含む、 山林苗の早期着花方法。」 2 補正目的 本件補正は、請求項1についてみれば、本件補正前の請求項1に係る発明について、付与する「環境ストレス」として「乾燥ストレス」を含むこと、及び、投与する「花芽分化促進剤」として「ジベレリン」を含むことを、限定する補正であるから、特許法17条の2第5項2号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。 3 独立特許要件 本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができたか否かについて、以下に判断する。 (1)本願補正発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記1(2)に示した本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載により特定されるべきものである。 (2)本願明細書の記載 本願補正発明に関し、本願明細書には、次の記載がある(下線は当審において付した。)。 ア 「【背景技術】 【0002】 山林苗を野外で自然な状態で育てると、採種できるまで約10年を要し、かつ採種回数は3回程度に過ぎないところ、非特許文献1にはヒノキのジベレリン処理により着花量及び種子生産量が増加したことが記載されている。 【先行技術文献】 【非特許文献】 ・・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、非特許文献1の対象植物は8年生であり、早期着花、採種回数の増加への効果については確認できていない。 【0005】 本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、効率的な花芽分化を実現できる山林苗の早期着花方法を提供することを目的とする。」 イ 「【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明は、以下の〔1〕~〔8〕を提供する。 〔1〕山林苗を、屋内で生育し、 生育期間中、環境ストレスの付与、及び/又は、花芽分化促進剤の投与を行うこと を含む、山林苗の早期着花方法。 〔2〕花芽分化促進剤は、リン酸含有の緩効性肥料及び/又はジベレリンを含む、〔1〕に記載の方法。 〔3〕ジベレリンの投与は、ジベレリンを葉又は枝に投与することを含む、〔2〕に記載の方法。 〔4〕リン酸含有緩効性肥料は、窒素、リン酸及びカリウムを少なくとも含み、リン酸含有量が窒素含有量よりも多い、〔2〕に記載の方法。 〔5〕環境ストレスは、根圏制御及び/又は乾燥ストレスを含む、〔1〕に記載の方法。 〔6〕山林苗は、1年生以降の山林苗である〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の方法。 〔7〕〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の方法により山林苗の早期着花処理をすることを含む、山林苗の生産方法。 〔8〕〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の方法により早期着花処理をした後、採種することを含む、山林苗の種子の生産方法。 【発明の効果】 【0007】 本発明によれば、山林苗の花芽を早期に、かつ多くの部位で効率よく分化させることができ、その結果、開花、結実を促進できるため、山林苗の効率的な生育、ひいては、目的のクローンの種子の効率的な生産を実現することができる。」 ウ 「【0009】 山林苗は、環境ストレスの付与、及び/又は、花芽分化促進剤の投与時における樹齢は、通常、1年生以上、好ましくは2年生以上である。上限は特にないが、通常は10年以下であればよく、若齢の母樹における着花促進目的達成の観点からは、8年以下が好ましく、6年以下がより好ましい。」 エ 「【0015】 〔根圏制御〕 本明細書において根圏制御とは、各個体の根圏領域を一定の領域内に制限することを意味する。根圏の制限領域は、樹齢や植物体のサイズにもよるが、樹高0.5~2mの植物体の場合、通常、60L以下、好ましくは55L以下、より好ましくは50L以下、更に好ましくは46L以下である。下限は、植物の生育を過度に抑制しない程度であればよく、通常5L以上、好ましくは7L以上、より好ましくは8L以上である。したがって、根圏領域は、通常、5~60L、好ましくは5~55L、より好ましくは7~50L、更に好ましくは8~46Lである。必要に応じて、植物の生育を過度に抑制しない範囲で制限領域を調整(例えば、適宜大きいサイズの容器に植え替える)することができる。」 オ 「【0017】 〔乾燥ストレス処理〕 本明細書において乾燥ストレス処理とは、植物への水分供給量を減少させる処理を意味する。 ・・・・ 【0019】 ・・・・。灌水量を減少させる方法としては、例えば、灌水頻度を減少させる方法(例えば、2日毎以上、好ましくは3日毎以上、上限は、通常5日毎以下、好ましくは4日毎以下)が挙げられる。 【0020】 〔環境ストレス処理の実施期間〕 環境ストレス処理の実施期間は、処理の種類に応じて適宜調整できる。例えば、根圏制御処理は、植物の生育期間の全期間において行うことが好ましい。また、水分ストレス処理は、花芽分化期の開始前から終了時までを含む期間行うことが好ましい。ヒノキ属植物の場合、花芽分化期は、一般には、雄花芽では7月上旬~9月中旬、雌花芽では7月下旬~9月下旬の、約90日の期間である。そのため、ヒノキ属植物の水分ストレス処理の開始日は、通常6月前半(6月1日~15日の任意の時点)、好ましくは6月初旬(6月1日~10日の任意の時点)である。また、終了時は、好ましくは9月前半まで、より好ましくは9月1~15日の期間から選択できる。スギ属植物の場合の花芽分化期は、一般には、雄花芽は6月下旬~9月下旬、雌花芽では7月下旬~9月下旬の期間である。そのため、スギ属植物の乾燥ストレス処理の開始日は、通常5月後半(5月15日~31日の任意の時点)、好ましくは6月初旬(6月1日~10日の任意の時点)である。また、終了時は、好ましくは9月前半まで、より好ましくは9月1~15日の期間から選択できる。」 カ 「【0022】 〔1.4 花芽分化促進剤処理〕 花芽分化促進剤としては、花芽分化促進効果を有するものであればよく、例えば、ジベレリン、サイトカイニン等の植物ホルモン、リン酸高含有の緩効性肥料等の肥料が挙げられ、いずれか一方でもよいが両方の組み合わせが好ましい。以下、ジベレリン、リン成分高含有の緩効性肥料を例にとって説明する。」 キ 「【0023】 〔ジベレリン〕 ジベレリン(ジベレリンA3;GA3)の剤型としては、例えば、ペースト剤、粉剤、水和剤、顆粒剤、乳剤が挙げられる。粉剤、水和剤の場合、処理部位へ散布すればよい。一方、ペースト材は、処理部位に塗布するだけでよく、流れ落ちることがないためロスを軽減でき、局所的に効率的にジベレリン処理を行うことができる。 ・・・・ 【0028】 -処理時期- ジベレリン処理を行う時期は、山林苗の花芽分化期の開始前から末期までの間の任意の時点であればよく、通常は、花芽分化期の開始前1か月~花芽分化期の期間内であり、6~8月が好ましく、7~8月がより好ましい。これにより、花芽の分化時期に合わせてジベレリンによる花芽分化促進効果を発揮させることができる。7月上旬まで(平均気温20℃~25℃未満)に処理すると雄花への分化が、8月に入ってから(平均気温25℃以上)処理すると、雌花への分化が、それぞれより促進される傾向がある。1年あたりの処理回数は、1回以上であり、樹種により適切な回数に調整できる。例えば、スギ属植物(例えば、スギ)の場合、通常は2回、ヒノキ属植物(例えば、ヒノキ)の場合、通常は1回である。」 ク 「【0032】 〔リン酸高含有緩効性肥料〕 本明細書において、緩効性肥料とは、肥料効果が投与後一定期間する肥料を意味する。緩効性肥料としては、表面コーティング型の粒状の緩効性肥料が好ましい。リン酸含有緩効性肥料とは、リン酸成分を少なくとも含む緩効性肥料であればよく、リン酸の含有量(肥料成分100重量%に対する含有量、以下同じ)が通常、2~20重量%、好ましくは5~18重量%である。緩効性肥料に含まれるリン酸以外の肥料成分としては、例えば、窒素、カリウム、苦土、マンガン、ホウ素、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、カルシウム等の無機成分から選ばれる1種以上が挙げられ、窒素、リン酸、カリウムを少なくとも含むことが好ましい。窒素(アンモニア態窒素、硝酸態窒素)含有量(肥料成分100重量%に対する含有量、以下同じ)は、通常、8~22重量%、好ましくは10~20重量%である。カリウムの含有量は、通常、8~15重量%、好ましくは10~13重量%である。リン酸の含有量は、窒素の含有量よりも多いことが好ましく、1.2倍以上、1.5倍以上、又は1.8倍以上が好ましい。上限は特にないが、通常は2.0倍以下である。また、リン酸の含有量は、カリウムの含有量よりも多いことが好ましく、1.1倍以上又は1.2倍以上が好ましい。上限は特にないが、通常は1.5倍以下である。 【0033】 緩効性肥料の肥料効果持続期間は、好ましくは50日以上、70日以上、80日以上、より好ましくは100日以上、120日以上、150日以上、更に好ましくは180日以上、200日以上、250日以上、300日以上である。 【0034】 -緩効性肥料処理の方法- 緩効性肥料の施肥時期は、肥料の種類(肥料成分組成、剤型、効果持続期間など)によって適宜定めればよいが、定植直後に施肥し、その後順次追肥(効果持続期間の終了時などに追肥)が好ましい。これにより、肥料効果が継続的に発揮され、花芽促進効果を得ることができる。施肥量は、緩効性肥料の種類により適宜定めればよい。 【0035】 緩効性肥料の施肥方法は、培土に散布すればよく、培土に梳き込むように散布することがより好ましい。これにより、灌水により肥料成分を効率的に溶出させることができる。」 ケ 「【0042】 〔施肥〕 上記花芽分化促進剤として挙げた緩効性肥料以外にも、必要に応じて施肥を行うことができ、これによりヒノキ属植物の生長を促進できる。肥料は特に制限されず、速効性肥料もしくは緩効性肥料でも構わないが、無機肥料又は有機肥料がより好ましく、化成肥料が更に好ましい。 【0043】 肥料に含まれる成分は特に制限されないが、例えば、無機成分、銀イオン、抗酸化剤、炭素源、ビタミン類、アミノ酸類、ジベレリン以外の植物ホルモン類等の植物の栄養素の供給源となり得る成分が挙げられる。肥料の形態は特に制限されず、固形物(例、粉剤、粒剤)、又は液体(例、液肥)のいずれでもよい。 【0044】 無機成分としては、必須要素の窒素、リン、カリウム、および微量要素の硫黄、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、モリブデン、塩素、ヨウ素、コバルト等の元素や、これらを含む無機塩が例示される。該無機塩としては例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ホウ酸、三酸化モリブデン、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化コバルト、これらの水和物が挙げられる。必須要素においては、窒素及び/またはカリウムの含有量がリンの含有量よりも多いことが好ましい。」 コ 「【0056】 実施例1 閉鎖型採種園(ビニールハウス)において、培土を収容した46L収穫用コンテナ(横535×縦370×高さ305mm(外寸)、横477×縦320×高さ288mm(内寸))、植物の生育を過度に抑制しない範囲で必要に応じて大きな容器に植え替えを行った;培土の組成:ココピート:赤玉土小粒:鹿沼土小粒=1:1:1、供試肥料:ハイコントロール085 360日タイプ(N:P:K=10:18:15、ジェイカムアグリ株式会社))へ定植後1年目の根圏制御されたスギ5個体(1年生、樹高80cm)の枝に住友ジベレリン粉末(住友化学社製、農林水産省登録第24247号)を施用した。具体的には、ジベレリン粉剤を水に溶かし、ジベレリン濃度100ppmの水溶液を作成し、スギに噴霧した。施用時期は、2022年7月11日、2022年8月15日の2回とし、個体あたり施用量は80~100ml/本とした。灌水はドリップ灌水により行い、灌水量は、ジベレリン投与の前後の期間(2022年7月1日から8月31日)、4L/1回/2日とした(テンシオメーター(大起理化工業株式会社製、商品名「pFメーター(DIK-8333)」)を用いて、期間中のコンテナ内水分をpF2.3~2.8に調整した)。それ以外の時期は、4L/1回/1日とした。栽培中の培土のEC値は、0.3~0.8となるように調整した。EC値の測定は、試料20gをビーカーに正確に測り、そこに蒸留水100ml加え2分間撹拌・静地し、上澄み液を導電率メーター(堀場製作所 ES-51、電極:浸漬形導電率電極 9382-10D)により測定した。歩留まりは、初期の重量-終了時の重量から、容積・嵩比重を用いて重量計算した(その際、水分量は、大きく異ならない限り考慮しなかった)。 【0057】 実施例2 実施例1において、スギ(1年生、樹高110cm)を用い、個体あたり施用量は80~100ml/本を用いた他は、同様に行った。 【0058】 実施例3 実施例1において、スギ(1年生、樹高130cm)を用いた他は、同様に行った。 【0059】 実施例4 閉鎖型採種園(ビニールハウス)において、46L収穫用コンテナ(横535×縦370×高さ305mm(外寸)、横477×縦320×高さ288mm(内寸)、培土の組成:ココピート :赤玉土小粒:鹿沼土小粒=1:1:1、供試肥料:ハイコントロール085 360日タイプ(N:P:K=10:18:15、ジェイカムアグリ株式会社))へ定植後1年目の根圏制御されたヒノキ(樹高80cm)5個体から、5本/個体の枝(地際から10~50cm)を選定し、住友ジベレリンペースト(住友化学社製、農林水産省登録第24248号)を施用した。具体的には、カッターナイフで枝の基部領域(付け根の直径7mm~28.8mmの略円形領域)の樹皮を剥皮して、シリンジでジベレリンペーストを注入し、接ぎ木用テープを巻いて固定した。施用時期は、2022年7月11日の1回とし、施用量は50mg/枝とした。灌水はドリップ灌水により行い、灌水量は、ジベレリン投与の前後の期間(2022年6月15日から8月15日)、4L/1回/24日とした(テンシオメーター(大起理化工業株式会社製、商品名「pFメーター(DIK-8333)」)を用いて、期間中のコンテナ内水分をpF2.36~2.8に調整した)。それ以外の時期は、4L/1回/1日とした。栽培中の培土のEC値は、0.3~0.8となるように調整した。EC値の測定 は、試料20gをビーカーに正確に測り、そこに蒸留水100ml加え2分間撹拌・静地し、上澄み液を導電率メーター(堀場製作所 ES-51、電極:浸漬形導電率電極 9382-10D)により測定した。歩留まりは、初期の重量-終了時の重量から、容積・嵩比重を用いて重量計算した(その際、水分量は、大きく異ならない限り考慮しなかった)。 【0060】 実施例5 実施例4において、ヒノキ(1年生、樹高110cm)を用いた他は、同様に行った。 【0061】 実施例6 実施例4において、ヒノキ(1年生、樹高130cm)を用いた他は、同様に行った。 【0062】 比較例1、2 開放型採種園において地植えをして根圏制御せず、住友ジベレリン粉剤、ジベレリンペーストを施用しなかった以外、実施例1、4と同様に実施した。 【0063】 比較例3、4 住友ジベレリン粉剤、ジベレリンペーストを施用しなかった以外、実施例1、4と同様に実施した。 【0064】 比較例5、6 開放型採種園において地植えをして根圏制御しなかった以外、実施例1、4と同様に実施した。」 サ 「【0065】 [図:0001426566000001.jpg] 」 シ 「【0066】 同年10月末頃に、施用した枝について、各枝の中央より先端部分を目視で確認し、雌花および雄花への花芽分化の状況を調査したところ、比較例と比較して、実施例の処理個体では多くの花芽の分化が観察された。」 上記ア~シの記載より、本願明細書においては、ジベルリン処理によりヒノキの着花量を増加する従来技術について、対象植物を8年生としていたことから、早期着花の効果の確認が十分でなかったことを課題とし、スギとヒノキについて実施例1~実施例6及び比較例1~比較例6の実験及び対比を行ったことを基礎として、特許を受けようとする発明として本願補正発明を特定したものと認められる。 (3)引用文献の記載及び引用発明、参考資料等について ア 引用文献1 本願出願前に発行され、原査定の理由として引用された引用文献1は、次の文献である。 引用文献1; 狩場 晴也、エリートツリーの種苗生産技術に関する研究 2020年度~2022年度、愛知県森林・林業技術センター報告No.60、令和5年4月発行、インターネットURL:https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/460110.pdf (本文;発行月等について、https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shinrin-ringyo-c/report.html) (ア)記載 引用文献1には、次の記載及び図示がある(下線は、当審において付した。以下、同様。)。 なお、頁数は、引用文献1の第1頁目から当審で数えたものを記載した。 a 第1頁 「要旨」 「エリートツリーのスギ及びヒノキ閉鎖型採種園において、採種木の育成に適した液体肥料の施肥条件について検討した。その結果、春から夏にかけての施肥濃度が1年間の成長に大きな影響を与えていることが明らかとなり、最も施肥濃度が高い試験区で樹高・根元径の平均成長量がスギで175cm・25mm、ヒノキで78cm・15.2mmとなった。管理方法の検討では、ヒノキの着花促進に適した潅水・施肥方法について検討した。その結果、最も雌花数が多かった試験区で、平均雌花数が1,198個/個体、雄花着花指数が高い試験区で平均2.3となり、6月から8月にかけて潅水を毎日から4日毎に変更し、水分ストレスを与えることで着花が促進されることが明らかとなった。ジベレリンによる着花促進効果の検証では、スギについて、ジベレリンの葉面散布処理の着花促進効果を調査した。その結果、ジベレリン処理個体では、雌花数が平均1,287個/個体、雄花着花指数が平均2.9となり、ジベレリン処理による着花促進効果が確認でき、従来の採種園と同様、ジベレリンの葉面散布処理が有効であることが確認できた。エリートツリーの成長特性調査では、エリートツリーの挿し木苗を植栽し、植栽1年目の成長調査を実施した。その結果、スギでは、ほとんどの系統で在来の苗木よりも樹高成長量が大きく、成長量25cm以上が4系統存在した。」 b 第1頁右欄第7行~第2頁左欄最終行 「II 方法 1.エリートツリー種苗の効率的な生産手法の開発 (1)採種木の育成方法の検討 採種木を植栽してから早期に種子生産を行うため、採種木の育成に適した液体肥料の施肥条件について検討した。2021年3月に(国研)林木育種センター(以下、育種センター)からエリートツリーのスギ・ヒノキ(以下、断りが無い場合、スギ及びヒノキはエリートツリーを示す)各9系統96本(全て特定母樹)のつぎ木苗を購入し、農業用の収穫コンテナ(サンテナーB#50(三甲(株)社製))に肥料が入っていない緑化木用培土(三河ミクロン(株)社製)を充填したもの(以下、根域抑制コンテナ)に植栽し(図-1)、スギ・ヒノキをそれぞれ当センター敷地内の閉鎖型採種園内に図-2のように設置して液体肥料自動供給システムで育成を行った。2021年5月から8月までの期間(以下、期間1)及び2021年8月から12月までの期間(以下、期間2)において、表-1のような異なる液体肥料の施肥条件の3試験区及び参照用として従来の方法である固形肥料区を設定し、その後2021年12月から2022年5月までの期間(以下、期間3)においては、固形肥料区を含む全ての試験区で試験区Aの期間2における施肥条件に変更して採種木を育成した。また、樹高及び根元径を測定し、試験期間全体及び各期間の成長量を算出した。」 c 第2頁左欄下 図-1 「 [図:0001426566000002.jpg] 」 d 第2頁右欄第1行~同欄最終行 「(2) 採種木の管理方法の検討 1.(1)のヒノキについて、種子生産のために必要な雌花及び雄花の着花促進に適した潅水・施肥条件について検討した。2022年6月1日から8月23日までの期間(以下、期間4)において、表-2のような異なる潅水・施肥条件の試験区を設定し、採種木の管理を行い、2022年12月から2023年1月に雌花、 2023年1月から2月にかけて雄花の着花状況調査を行った。雌花の調査では、採種木1個体に着花している雌花を計数した。雄花の調査では、雄花の着生範囲及び着生量から指数評価を行った。当センター職員6名が1個体につきジベレリン処理枝(以下、GA枝)を除く平均的な3枝を対象に実施した。指数には、林野庁の特定母樹応募要領における雄花着花性(ヒノキ)のジベレリン処理(以下、GA処理)による調査の場合を適用し(表-3)、得られた各枝の指数評価を平均し、個体あたりの雄花着花指数とした。また、環境データとして、あぐりログ( ( 株 )IT工房Z社製)のpFセンサ (AGL_OP_PF-01B)をA4試験区の1個体(2-122)の培土に設置し、2022年5月から9月の期間における培土のpF値を記録した。」 e 第3頁 表-1 「 [図:0001426566000003.jpg] 」 f 第4頁 表-2 「 [図:0001426566000004.jpg] 」 g 第4頁左欄第1行~同頁右欄第9行 「(3) ジベレリンによる着花促進効果の検証 1.(1)のスギについて、ジベレリン葉面散布処理による雌花及び雄花の着花促進効果について検証した。2022年7月19日、29日、8月8日に9系統46本を対象にジベレリン水溶液(100ppm)の葉面散布を行った。2022年12月から2023年1月に雌花、2023年1月から2月に雄花の調査を行った。雌花の調査では、GA処理を行った9系統25個体(以下、処理個体)及びGA処理を行っていない9系統26個体(以下、未処理個体)を対象に採種木1個体に着花している雌花を計数した。雄花の調査は雌花の調査を行った個体を対象として、1.(2)と同様に平均的な 3枝を選び職員6名が着花指数を評価し、その平均値を採種木の雄花着花指数とした。 1.(1)のヒノキのうち、2系統(2-107、2-122)20個体を対象にジベレリンペーストの包埋処理による雌花及び雄花の着花促進効果について検証した。2022年7月27日に採種木1個体あたり2枝に対し、小型の鋸で枝に傷をつけ、住友ジベレリンペースト(住友化学(株)社製)を塗布し、ビニールテープで養生した。2022年12月から2023年1月に雌花、2023年1月から2月に雄花の調査を行った。雌花の調査では、GA枝に着生した雌花を計数した。雄花調査は、1.(2)と同様に職員6名で雄花着花指数を評価し、その平均値を各GA枝の雄花着花指数とした。」 h 第7頁 図-5 「 [図:0001426566000005.jpg] 」 i 第9頁 図-9 「 [図:0001426566000006.jpg] 」 j 第10頁左欄第1行~第12頁右欄第2行 「(2) 採種木の管理方法の検討 ヒノキにおいて、試験期間中に枯死した1個体を除いた9系統95本を対象に調査を実施した(表-13)。試験区ごとの平均雌花数は、197~1,198(全体750)個/個体となり(図-13)、多重比較の結果、試験区A4でA1及びB1、試験区B4でB1よりも有意に雌花数が多かった(表-15)。雄花の試験区ごとの平均着花指数は、1.3~2.3(全体1.8)となり(図-14)、多重比較の結果、試験区A4がB1と、試験区B4がA1及びB1と比較して有意に大きくなった。このことから、花芽の分化期間と考えられる6月から8月にかけて潅水間隔を4日ごとに変更することで雌花及び雄花の着花が促進されることが分かった。あぐりログのpF値を見ると、5月では、0.8付近で安定していたが、潅水間隔を変更した6月1日から10日にかけて値が上昇し、2.8付近で一定となり、潅水間隔を毎日に戻した8月23日から5日後の28日から下降に転じ、2週間後の9月6日に 1.3になり、その後は一定の範囲で推移した(図-15)。また、2022年5月から8月(以下、期間4)における試験区ごとの樹高・根元径の平均成長量は、21~49cm・4.1~8.7mmとなり(図-16、17)、樹高・根元径の成長量ともにA4及びB4試験区がA1及びB1試験区より小さくなった。静岡県の閉鎖型採種園の管理マニュアル(静岡県農林技術研究所・林業研究センターら 2020、以下、管理マニュアル)では、ヒノキの着花促進として、6月中旬ごろから水分ストレスを与える方法が記載されており、ヒノキでは水分ストレスで花芽の形成が促進されることが示されている。これらのことから、本試験において、6月から8月にかけて潅水間隔を毎日から4日毎に変更することによって水分ストレスが生じ、採種木が樹体の成長から花芽形成に切り替えたことが考えられる。なお、本試験では、施肥条件による差は見られなかったが、農業分野では、花芽分化期に窒素の施肥量を減らす方法がとられることもあり、ヒノキでも窒素を完全に断つ等肥料構成を極端に変更することで花芽形成が促進される可能性がある。 花芽が多く形成された試験区A4及びB4の採種木について、系統ごとの平均雌花数は、131~2,656個/個体となり(図-18)、多重比較の結果、2-107 が 2-125、2-44、2-121 及び 2-120、2-122 が 2-125、2-44、2-121、2-120 及び 2-103 より優位に多くなっており(表-15)、系統間で雌花の着花性に違いが見られた。同様に系統ごとの雄花着花指数は、1.0~3.7(図-19)となり、多重比較の結果、2-101が 2-44及び2-103、2-107が2-125、2-44、2-103 及び 2-142、2-122 が 2-125、2-44及び2-103より有意に着花指数が高くなっており、系統間による差が見られた。2-107及び2-122 は雌花・雄花ともに着花性が高く、2-125及び2-44は雌花・雄花ともに着花性が低い結果となったが、林野庁が公開している特定母樹一覧表(林野庁 2022)では、2-107 及び 2-122 と 2-125及び 2-44 の雄花着生性に大きな違いは見られず、本試験の結果とは異なっていた。2-107及び2-122は、1.(3)試験で全個体について各2枝GA処理を施している。本試験での雌花・雄花の評価時には処理枝を除いているが、処理していない枝にも影響が及ぶ可能性がある。系統間の着花特性については、複数年調査を実施することで正確に把握でき、雌花・雄花両方の着花性が低い系統があれば、高い系統へ入れ替えることで採種園全体の種子生産の効率性を向上させることができると考えられる。」 k 第13頁左欄第1行~第16頁左欄最終行 「(3) ジベレリンによる着花促進効果の検証 調査対象の個体は表-16の9系統51個体とした。スギの平均雌花数・雄花形成指数は、処理個体で1,287個/個体・2.9、未処理個体で257個/個体・1.4 となり(図-20、21)、Excel(Microsoft 2016)を使用した一元配置分散分析の結果、GA 処理によって雌花形成数・雄花着花指数が有意に増加していた(表-17)。このことから、GA 処理によって雌花・雄花の両方が着花促進されることが確認できた。スギの着花では、ジベレリン水溶液の葉面散布処理が一般的であり(藤澤 2015)、静岡県の閉鎖型採種園でもジベレリンの葉面散布処理によって若齢の樹木でも着花促進を行うことができると確認されている(静岡県農林技術研究所 森林・林業研究センターら 2020)。本研究での調査結果は、上記の報告と同様の結果であり、本県の閉鎖型採種園においてスギの着花促進処理は、ジベレリン水溶液の葉面散布処理が有効だと考えられる。次に、処理個体の採種木について、系統ごとの平均雌花数・雄花着花指数は、130~3,784・2.2~3.3となり(図-22、23)、多重比較の結果、雌花では 2-199が2-200を除く他の系統より有意に多くなる等複数の系統間で有意差が見られたが、雄花では見られなかった(表-18)。このことから、本県の閉鎖型採種園において、雌花では、系統による影響が大きく、雄花では特定母樹一覧表でもほとんどの系統で同じ指数となっていることから、系統間での花粉量の影響は小さいと考えられる。上記の個体とは別に 3 系統 3 本に 2021 年、2022 年の連年で GA 処理を実施したところ、2022 年の雌花数は、267~422 個/個体、雄花の着花指数は、2.4~3.6 となり、同系統で比較すると、連年処理個体でも十分に着花促進効果があることが分かった。ただし、GA 処理の実施年が植栽1年目と2年目であるため、この間に採種木が大きく成長していたため、着花位置が異なり連年処理の影響が小さかったと考えられる。採種木が一定のサイズに成長した状態での連年処理については、結果が異なる可能性があるため、今後検証が必要であると考えられる。 ヒノキのジベレリンペーストによる試験では、処理を行った枝のうち、試験期間中に枯死した個体の2枝と特定できなかった1枝を除く19個体37枝を対象とし、枝の長さ・径は、52~121(平均80)cm・4.1~13.7(平均7.1)mm であった(図-24)。雌花数・雄花着花指数は、2-107で 0~641(平均 100)個/枝・1.0~4.3(平均 2.5)、2-122で0~929(平均 462)個/枝・1.5~3.8(平均 3.1)となった(図-25、26)。採種木全体に対する GA 枝の雌花数の割合(以下、GA 枝の雌花割合)について見ると、2-107で、0~19(平均 2)%、2-122で 0~38(平均 12%)となり、2-122では、枝長が70cmを超えた辺りから大きくなる枝が見られた(図-27)。雌花数調査時の採種木1個体あたりの枝数は、2-107で31~59(平均 45.8)枝、2-122で48~56(平均 52.8)枝であり、概ね 2%が1枝の構成比となる。つまり、2-107では、GA 枝の雌花割合は、採種木全体における1枝の構成比と同程度であり、GA 処理によって雌花の形成が促進されたと認められなかった。一方、2-122では、GA 枝の雌花割合は、採種木全体における1枝の構成比の約6倍であり、特に枝長 70cmを超える大きな枝では、GA処理によって雌花の着花が促進されたと考えられる。雄花について、GA枝の雄花着花指数と処理個体全体での着花指数の関係をみると、2-107では、採種木全体よりも雄花着花指数が小さい枝が多く、2-122では、GA枝が大きい枝が多くなっており(図-28)、雄花についても2-107では着花が促進されたと認められなかったが、2-122では着花が促進されたと考えられる。1.(2)の試験では、2-107、2-122ともに雌花・雄花の着花が多く見られた系統であったが、本調査では同じような結果にならなかった。そのため、通常の系統による着花性とGA処理による影響は異なることが考えられる。また、1.(2)でも述べたようにGA処理を行っていない枝への影響については、今後検証していく必要がある。」 l 第19頁左欄第1行~第20頁左欄第21行 「IV まとめ 採種木の育成方法の検討では、液体肥料について複数の施肥条件による成長調査を実施し、育成に必要な施肥濃度を把握することができた。樹種によって成長量は異なるものの、樹高・根元径ともに春から夏にかけての施肥濃度が1 年間の成長量に影響を与えており、施肥濃度が十分かどうか注意する必要があることが分かった。また、液体肥料によって従来の固形肥料による育成と同等以上の成長量を得ることができ、液体肥料でも採種木の育成が可能であることが示された。1年を3期間に分けて成長量を見ると、それぞれの期間における成長量は、樹高・根元径で傾向が異なり、成長の制限要因だと考えられる要素も異なっていた。液体肥料では、固形肥料とは異なり、肥料構成や濃度を柔軟に変更できる。今後、スギ及びヒノキの成長について、より詳細な試験を実施し、各期間における最適な施肥条件・濃度を明らかにすることで、液体肥料の利点を最大限に生かすことが可能であると考えられる。 採種木の管理手法の検討では、ヒノキについて異なる潅水間隔・施肥条件での雌花・雄花の着花状況について調査を行い、花芽の分化期間だと考えられる 6月から8月にかけて水分ストレスを与えることで、雌花・雄花の両方で着花が促進されることが明らかとなった。閉鎖型採種園における根域抑制コンテナでの採種木管理は、従来の屋外の採種園とは異なり、降雨や土壌水分の影響を受けず、水分管理が可能となる。また、着花促進効果は、採種木全体に影響する。そのため、水分ストレスによる着花促進は、閉鎖型採種園による利点を活かした手法であり、枝毎に処理を行う必要があるジベレリンペーストの包埋処理よりも効率的な着花促進手法だと言える。また、施肥条件を変更したことによる着花促進効果について、本試験では確認できなかったが、花芽形成期間に窒素を断つ等、今後より極端な肥料構成に変更することで着花が促進される可能性がある。採種木の育成でも述べたように施肥条件を柔軟に変更できる点は液体肥料の大きな利点であるため、検討する価値があると考えられる。 ジベレリンによる着花促進効果の検証では、スギでジベレリンの葉面散布処理、ヒノキでジベレリンペーストの包埋処理について着花促進の効果を調査した。スギでは、GA処理を行うことで雌 花・雄花の両方の着花促進が確認でき、閉鎖型採 種園でも従来の採種園と同様の方法で問題ないと考えられる。屋外の採種園では、雨天の日は避ける必要があるが、閉鎖型採種園では、降雨による影響がないため、天候に影響されずGA処理を計画的に行えることも閉鎖型採種園の利点であると考えられる。ヒノキでは、系統によってGA処理の影響が異なることが分かった。今後、採種木が成長することでより大きいサイズの枝にGA処理が実施できるようになる。GA処理を今後も実施する場合は、枝サイズが大きくなっても本試験研究のように系統間での差が表れるのか検証し、より効果的な系統に集約的に処理することで作業の効率化が図れると考えられる。また、ヒノキの場合は、上述のとおり、水分ストレスによって採種木全体の着花が促進されることが明らかとなった。そのため、着花促進効果は勿論のこと採種木への影響や処理作業の効率等についても考慮しながら、どちらの手法を実施していくか検討する必要がある。」 (イ)認定事項 上記(ア)aの記載より、引用文献1には、閉鎖型採種園における、スギ及びヒノキの着花促進方法が記載されていると、認定できる。 上記(ア)bの記載より、引用文献1には、エリートツリーのスギ及びヒノキのつぎ木苗を各9系統、2021年3月に購入し、農業用の収穫コンテナであるサンテナーB♯50(三甲(株)社製)に培土を充填した根域抑制コンテナに植栽し、閉鎖型採種園内において育成したことが記載されていると、認定できる。 上記(ア)bの記載、及び上記(ア)eに示す表-1より、引用文献1には、期間1~期間3の施肥条件として、2021年5月から8月までの期間1、2021年8月から12月までの期間2は、肥料構成N:P:Kが14:11:13の液体肥料、10:18:15の液体肥料、または14:11:13の固体肥料で育成し、2021年12月から2022年5月までの期間3は、肥料構成N:P:Kが14:11:13の液体肥料で育成したことが記載されていると、認定できる。 上記(ア)gの記載より、引用文献1には、スギについて、2022年7月及び8月にジベレリン葉面散布処理を行い、2022年12月~2023年2月に着花の調査を行ったことが記載されていると、認定できる。 上記(ア)dの記載、上記(ア)fに示す表-2、及び上記(ア)gの記載より、引用文献1には、ヒノキについて、2022年6月1日から8月23日までの期間4において、肥料構成N:P:Kが14:11:13の液体肥料、及び肥料構成N:P:Kが6:20:13の液体肥料を用いたそれぞれの場合について、灌水間隔を毎日とした場合、及び4日毎とした場合を設け、また2022年7月に2系統(2-107、2-122)の木の2枝に対しシベレリンペーストを塗布し、2022年12月~2023年2月に着花の調査を行ったことが記載されていると、認定できる。 上記(ア)kの記載、及び上記(ア)lの記載より、引用文献1には、スギについて、着花促進に関して一般的であるジベレリン処理を行うことで、着花促進が確認できたことが、記載されていると認定できる。 上記(ア)kの記載、及び上記(ア)lの記載より、引用文献1には、ヒノキについて、根域抑制コンテナで水分ストレスを与えることで着花が促進されることを確認し、施肥条件を変更したことによる着花促進効果は確認できず、シベレリン処理の影響は、2系統(2-107、2-122)のうち1系統(2-107)では着花が促進されたと認められず、他の1系統(2-122)では着花が促進されたと考えられ、エリートツリーのつぎ木苗の2系統(2-107、2-122)について系統によって異なることがわかったことが、記載されていると認定できる。 (ウ)引用発明 上記(ア)及び(イ)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 <引用発明> 閉鎖型採種園における、スギ及びヒノキの着花促進方法であって、 エリートツリーのスギ及びヒノキのつぎ木苗を各9系統、2021年3月に購入し、農業用の収穫コンテナであるサンテナーB♯50(三甲(株)社製)に培土を充填した根域抑制コンテナに植栽し、閉鎖型採種園内において育成し、 2021年5月から8月までの期間1、2021年8月から12月までの期間2は、肥料構成N:P:Kが14:11:13の液体肥料、10:18:15の液体肥料、または14:11:13の固体肥料で育成し、2021年12月から2022年5月までの期間3は、肥料構成N:P:Kが14:11:13の液体肥料で育成したうえで、 スギについて、2022年7月及び8月にジベレリン葉面散布処理を行い、2022年12月~2023年2月に着花の調査を行い、 ヒノキについて、2022年6月1日から8月23日までの期間4において、肥料構成N:P:Kが14:11:13の液体肥料、及び肥料構成N:P:Kが6:20:13の液体肥料を用いたそれぞれの場合について、灌水間隔を毎日とした場合、及び4日毎とした場合を設け、また2022年7月に2系統の木の2枝に対しシベレリンペーストを塗布し、2022年12月~2023年2月に着花の調査を行い、 スギについて、着花促進に関して一般的であるジベレリン処理を行うことで、着花促進が確認でき、 ヒノキについて、根域抑制コンテナで水分ストレスを与えることで着花が促進されることを確認し、施肥条件を変更したことによる着花促進効果は確認できず、シベレリン処理の影響は、2系統のうち1系統では着花が促進されたと認められず、他の1系統では着花が促進されたと考えられ、エリートツリーのつぎ木苗の2系統について系統によって異なることがわかった、 スギ及びヒノキの着花促進方法。 イ 引用文献2 本願出願前に発行され、原査定の理由として引用された引用文献2は、次の文献である。 引用文献2; 野末尚希 他、エリートツリー種子の早期生産技術の開発、令和2年度(2020)静岡県農林技術研究所成績概要集(森林・林業編) 第8-9頁、令和3年4月発行、インターネットURL; https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/057/434/02seisekigaiyou.pdf 引用文献2には、次の記載がある。 (ア)第8頁 「1 目的」 「1 目的 静岡県では、主伐再造林に必要な十分な数量の苗木を安定供給できる体制づくりを進めている。その一環として、種子の早期多収を目的としてビニールハウスを用いた閉鎖型採種園を整備し、根域制限栽培を行っている。しかし、当該採種園においてどの程度の収穫量が得られるかといった基礎的な知見は十分蓄積されていない。また、より少ない母樹数とハウス棟数で必要な収穫量を得るため、同じハウス内の母樹から毎年種子を収穫しているのが現状であるが、この方法は3分の1ずつの面積を3年ごとに一巡して生産する従来の採種園管理と異なる方法であり、毎年連続して生産することが収穫量にどう影響するかも明らかにする必要がある。 そこで、本研究では、閉鎖型採種園でスギ種子を生産した場合に得られる収穫量や種子の発芽率の調査及び、2年連続で同じ個体から種子生産を継続した場合の影響についても検討した。」 (イ)第8頁 「2 方法」の第1段落 「2 方法 2017年10月に、樹高およそ50cmの複数系統(林木育種センターが選抜した特定母樹)のスギ90本を赤玉土、鹿沼土、バーク堆肥を等量に混合した容量46Lのコンテナへ定植し、同一のビニールハウス内に系統ごとの位置が偏らないように配置した。これらに、2018・2019年6月~7月に100ppmのジベレリン(GA3)を2回葉面散布、2019・2020年2月中旬~3月上旬に凡天または風圧式受粉機による人工交配(母樹1本あたり10~15回)、2019・2020年10月に球果収穫と2年連続の種子生産を行った。2020年の収穫までに枯損した2本を除いた88本について、各年の種子生産量と発芽率を調査した。」 ウ 引用文献3 本願出願前に発行され、原査定の理由として引用された引用文献3は、次の文献である。 引用文献3; 山田 晋也 他、根域制限栽培法を用いたスギ種子生産方法の検討、優良種苗研究会 成果集、第32-33頁、関東・中部林業試験研究機関連絡協議会優良種苗研究会、2019年12月、インターネットURL; https://www.ffpri.affrc.go.jp/kanchu/kenkyuukai/documents/yuryoshubyou-201912.pdf 引用文献3には、次の記載がある。 (ア)第32頁 「背景・ねらい」 「静岡県では「低コスト主伐・再造林」の促進に向け、令和3年度までに特定母樹由来の苗木100万本の生産体制の構築を図るため、平成28年度より閉鎖型採種園の整備を進め、ビニールハウス(20m×5.4m H=3.0m)28棟の採種園を造成した。しかし、ビニールハウス内での母樹の育成方法は試行錯誤の状況にある。そこで、当センターでは農業分野でナシやイチジクで実用化されている早期多収の栽培方法の根域制限栽培法についてスギを用いて検討した。」 (イ)第32頁 「成果の概要」 「スギによる根域制限栽培方法を、40L収穫コンテナを用い、根が空中根切できるように不織布を用いた栽培方法を検討した結果、灌水量は2年生母樹で12 月~2月が1,400ml、3月から5月が1,500ml、6月~8月が1,900ml、9月~11月が2,500ml、を与えれば十分であることが判明しました。また、種子の生産量は、ミニチュア採種園10年生母樹の生産量が20g/本のところ、根域制限栽培2年生母樹で17.6g/本と10年生母樹と遜色ない生産量であった。今年度、同じ母樹から連年で生産できるか試みたところ、9月時点で順調に育成しているので、本県では3年に1度収穫するミニチュア採種園よりも効率的に生産できる可能性がある。今後、人工交配方法や着花促進方法を検討し、さらに効率的な種子生産を目指していく予定である。」 (ウ)第33頁 「成果の活用」 「静岡県西部農林事務所育種場において、平成30年度に当センターで検討したスギの根域制限栽培法による母樹育成を約90本で実施し、約1,500gの種子の生産ができ、翌年3月には民間生産者による苗木生産が開始した。令和元年度は、ヒノキの母樹約300本、スギの母樹約400本で根域制限栽培法が実施しており、令和元年秋には初めてのヒノキ特定母樹由来の種子を生産する見込みとなっている。このまま順調に生産体制が整備できれば、目標の令和3年度までには特定母樹由来の苗木100万本分の種子が生産できることになる。その他、他県等においても本方法による栽培方法を検討している。」 エ 参考資料1 引用文献1で「根域抑制コンテナ」として用いられた「サンテナーB♯50(三甲(株)社製))」に関し、本願出願より後のカタログである参考資料1は、次の資料である。 参考資料1; サンコー 総合カタログ 2024、第728-729頁 (ア)参考資料1の第728頁~第729頁に示される、「サンテナーB♯50」の番号が付されたコンテナーは、次のものである。 「 [図:0001426566000007.jpg] [図:0001426566000008.jpg] [図:0001426566000009.jpg] [図:0001426566000010.jpg] [図:0001426566000011.jpg] 」 (イ)「サンテナーB#50」の型番が付されたコンテナーの容量、及び概略のサイズ 上記(ア)より、2024年の総合カタログに示される「サンテナーB♯50」の型番が付されたコンテナーの容量は、「サンテナーB♯50-3」の46.0Lから「サンテナーB♯50T」の47.4Lまでであり、サイズは、外寸が概略52cm×36cm×31cm程度、内寸が概略49cm×33cm×29cm程度である。 オ 参考資料2 本願出願前に公開された参考資料2は、次の資料である。 参考資料2; コンテナ苗生産の手引き、林野庁、第29頁、第54頁、令和4年3月発行 参考資料2には、次の記載がある。 (ア)第29頁 「培地に元肥として、緩効性化成肥料を配合します。多くの生産者が使用している、[ハイコントロール085(総合微量要素入り)180日タイプ(ジェイカムアグリ株式会社)]を使用する場合、培地1リットル当たり4~20gの元肥を配合します。樹種や移植する苗の大きさにより、培地に配合する元肥の量を表2を参考に調整します。 [図:0001426566000012.jpg] 緩効性化成肥料には、3大栄養素のチッ素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)が規定量で配合されています。[ハイコントロール085]の場合、N: P: K(%)=10:18:15で配合されており、さらに微量要素(Mg : Mn : B : Fe : Zn他)も含まれています。 緩効性化成肥料の肥効期間は、25℃においてチッ素が80%溶出する日数を○日タイプと表記しています。」 (イ)第54頁第2-5行 「追肥のタイミング 元肥の肥効期間が切れる前に追肥を検討します。例えば、元肥として180日タイプを配合した培地に(29ページ表2参照)2月に移植した場合、追肥は6~7月の間にハイコントロール085(180日タイプ)を育成孔当たり1~2g施用します。」 カ 参考資料3 本願出願前に公開された参考資料3は、次の資料である。 参考資料3; スギ・ヒノキのコンテナ苗生産の手引き(改訂版)、島根県中山間地域研究センター、第8頁、平成30年3月発行 参考資料3には、次の記載がある(第8頁第2行~第3行)。 「当センターでは肥効調節型肥料(ハイコントロール085-180日タイプ、ジェイカムアグリ社)を元肥として培土に混合しています。」 (4)本願補正発明の進歩性 ア 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「スギ」及び「ヒノキ」は、山林を構成する木の種類に属することが明らかであるとともに、「つぎ木苗」として購入して2年以内に着花の調査まで行っているから、引用発明における育成期間を通じて苗ということができ、本願補正発明における「山林苗」に相当する。 引用発明における「閉鎖型採種園」での「育成」は、本願補正発明における「屋内」での「育成」に相当する。 引用発明における「根域抑制コンテナに植栽」しての「育成」は、本願補正発明において、「根圏制御領域」を設けた「根圏制御」を行うこと、及び、「生育期間中」に「環境ストレス」を「付与」することに、相当する。 引用発明において、「スギ」について「ジベレリン処理」を行い「着花促進」を「確認」したこと、及び、「ヒノキ」の「2系統」について「ジベレリン処理」を行い「1系統」について「着花が促進された」ことは、いずれも、本願補正発明における「花芽分化促進剤」としての「ジベレリン」の「投与」に、相当する。 引用発明において、「N」と「P」と「K」とを含む「肥料」を用いて育成する構成と、本願補正発明において、「投与」する「花芽分化促進剤」が「窒素、リン酸及びカリウムを少なくとも含み、リン酸含有量が窒素含有量の1.2~2.0倍である、粒状の緩効性肥料」を含む構成とは、「N」が窒素であること、「K」がカリウムであること、及び「P」がリンであって肥料においてはリン酸が用いられることが技術常識であることを踏まえると、「窒素、リン酸及びカリウムを少なくとも含」む「肥料」を「投与」する点で、共通する。 引用発明において、ヒノキについて「水分ストレスを与えることで着花」を「促進」することは、「水分ストレス」が乾燥によるストレスであることが明らかであるから、本願補正発明において、「環境ストレス」として「乾燥ストレス」を付与することに、相当する。 引用発明における「スギ及びヒノキの着花促進方法」は、スギやヒノキが苗の状態で着花を促進しており、早期により多くの着花を得るように着花を促進していることが明らかであることを踏まえると、本願補正発明における「山林苗の早期着花方法」に、相当する。 イ 一致点及び相違点 上記アより、引用発明における「ヒノキ」に着目して、本願補正発明と引用発明とは次の一致点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。 <一致点> 山林苗を、屋内で生育し、 生育期間中、環境ストレスの付与、及び、花芽分化促進剤の投与を行うこと を含み、 環境ストレスが根圏制御領域を設けた根圏制御と、乾燥ストレスとを含み、 花芽分化促進剤が、ジベレリンを含み、 窒素、リン酸及びカリウムを少なくとも含む肥料を投与する、 山林苗の早期着花方法。 <相違点1> 「根圏制御領域」に関し、 本願補正発明においては、「46L以下」と特定されているのに対し、 引用発明においては、「サンテナーB#50」を用いるものであるが、「46L以下」とは特定されていない点。 <相違点2> 「窒素、リン酸及びカリウムを少なくとも含」む「肥料」に関し、 本願補正発明においては、「リン酸含有量が窒素含有量の1.2~2.0倍」であること、及び「粒状の緩効性」肥料であることが特定され、「花芽分化促進剤」とされているのに対し、 引用発明においては、N:P:Kの比率として14:11:13、10:18:15、6:20:13のものを試しており、主には液体肥料を用いており、肥料について「花芽分化促進剤」とは特定されていない点。 ウ 相違点についての判断 (ア)相違点1について 上記相違点1について判断する。 a 相違点1に係る構成の技術的意義 上記相違点1に係る本願補正発明の構成は、原審における拒絶理由に対する令和6年2月16日提出の意見書において、引用文献1で用いられる「サンテナーB♯50」の容量は47.2Lである旨の主張がされるとともに、同日提出の手続補正書による補正で、特許請求の範囲に追加されたものである。 相違点1に係る本願補正発明の構成に関し、本願明細書には、上記(2)に示した段落【0015】の記載、及び、段落【0056】~【0066】における実施例1~6、比較例1~6の記載がある。 段落【0015】の記載によれば、根圏の制限領域は、樹齢や植物体のサイズにもよるが、樹高0.5~2mの植物体の場合、通常、60L以下、好ましくは55L以下、より好ましくは50L以下、更に好ましくは46L以下であることが示されている。 段落【0056】~【0066】の記載によれば、根圏の制限領域については、46L収穫用コンテナを用いた場合(実施例1~6、比較例3及び4)と、根域制限をしなかった場合(比較例1、2、5、6)とが試されたうえで、「目視で確認」したところ「比較例と比較して、実施例の処理個体では多くの花芽の分化が観察された」ことが記載されている。 なお、比較例1、2、5及び6については、開放型か閉鎖型か、及び水分ストレスの有無について、文章による説明と「表1」の内容とが整合しない箇所がある。 以上の本願明細書の記載より、本願補正発明において「根圏の制限領域」を「46L」以下とした技術的意義は、樹齢や植物体のサイズに応じて適切な根圏の制限領域は変わり得ることを前提としたうえで、段落【0015】において樹高0.5~2mの植物体の場合について「更に好ましくは」と述べた値である「46L」、及び、段落【0056】~【0066】において「根圏制御」を「あり」とした場合に用いたコンテナの容量である「46L」を根拠として、ある程度好ましいと思われる数値を特定したことと理解される。 b 構成の容易想到性について 引用文献1には、根域抑制コンテナとして用いた「サンテナーB#50(三甲(株)社製)」の容量は直接明記されていないが、上記(3)エの参考資料1によれば、2024年の総合カタログに示される「サンテナーB♯50」の型番が付されたコンテナーの容量は、「サンテナーB♯50-3」の46.0Lから「サンテナーB♯50T」の47.4Lまでであり、サイズは、外寸が概略52cm×36cm×31cm程度、内寸が概略49cm×33cm×29cm程度である。 「サンテナーB#50」に関し、請求人は令和6年2月16日提出の意見書において、商品ホームページを示すとともに、引用文献1で用いられる根域抑制コンテナ用のサンテナーB#50(三甲(株)社製)は内容量47.2Lである旨を主張している。なお、同意見書で請求人が示す商品ホームページ(https://www.sanko-kk.co.jp/products/search/Detail.aspx?id=10000419)は、「サンテナーB#50」のうち、「(ミミナシ)」と付される品番104802のものを紹介するホームページである。 ここで、引用文献1に係る試験が行われた2021年3月において、「サンテナーB♯50」の容量が、2024年の総合カタログに示される46.0L~47.4L程度、及び請求人が主張する品番の47.2Lと比較して、大きく異なったことを示す証拠はなく、本願出願前に引用文献1に接した当業者にとって、引用文献1に記載される「サンテナーB♯50」の容量について、略50L程度と大きく相違すると理解するような事情はない。 また、引用文献1の図-5及び図-9より、試験開始時のスギ及びヒノキの樹高が50cm程度であると理解されるところ、引用文献1の図-1より、「サンテナーB#50」の高さ及び幅は、苗の樹高より有意に小さく、「サンテナーB#50」の奥行きは、苗の樹高と大きくは相違しないことが看取されるから、本願出願前に引用文献1に接した当業者は、引用文献1の記載自体に基づいて、「サンテナーB#50」の寸法は、概略30cm×30cm×50cm程度から大きく相違するものではなく、「サンテナーB#50」の容量は、概略50L程度から大きく相違するものではないと、理解できるものである。 さらに、引用文献1の図-1において、苗の根域は「サンテナーB#50」の中で、さらに白い布状の物に包まれた範囲内に制限されていることが看取されるから、引用発明における「根域抑制」の領域は、概略50L程度より小さい領域であると理解される。 そして、引用文献1において、「根域抑制」の領域について、リットル単位で高精度にコントロールする必要があるとは記載も示唆もされておらず、「サンテナーB#50」を用いて図-1とした状態より若干小さくすることを禁止するよう技術常識もないから、引用発明において「根域抑制」の領域の大きさを、図-1の図示から大きくは変更しない範囲で適宜に選択することは、当業者が実際に山林苗を根域抑制して育てる際に、適宜に行うべき設計事項程度である。 そうであるところ、たとえば上記(3)イ及びウに示した、原査定の理由で引用された引用文献2及び引用文献3の記載に示されるように、スギやヒノキを閉鎖型採種園で根域制限栽培するうえで、コンテナとして、容量が46Lや40Lのものを用いることは、適宜に行われている周知技術であるから、引用発明において、当該周知技術を勘案し、「根域抑制」の領域を、「サンテナーB#50」の容量の最大限よりも若干小さな、46L以下の適宜の値とし、もって上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到できた事項である。 c 技術的意義及び効果の観点からの検討 (a)技術的意義の観点からの検討 本願補正発明において、「根圏の制限領域」を「46L」以下とした技術的意義は、上記aに示したとおり、樹齢や植物体のサイズに応じて適切な根圏の制限領域は変わり得ることを前提としたうえで、ある程度好ましいと思われる数値を特定したものと理解される。 本願補正発明における当該技術的意義は、上記bに示したとおり、引用発明における「根域抑制」の領域の大きさを、図-1の図示から大きくは変更しない範囲で適宜に選択する際、例えば引用文献2または引用文献3に示される周知技術を考慮して、「サンテナーB#50」の容量の最大限よりも若干小さな、46L以下の適宜の値とする技術的意義と、何ら変わるところはない。 (b)効果の観点からの検討 本願補正発明において、「根圏の制限領域」を「46L」以下とする効果について、本願明細書の段落【0015】には、複数の数値とともに「好まし」い旨が記載され、段落【0056】~【0066】には、実施例1~6、比較例3及び4で46L収穫用コンテナを用いた根域制限を行い、比較例1、2、5及び6では根域制限を行わなかったこと、及び、目視で確認したところ比較例と比較して、実施例の処理個体では多くの花芽の分化が観察されたことが記載されている。 しかしながら、本願明細書における上記段落【0015】の記載は、「根圏の制限領域」を「46L」とすることについて、単に好ましい旨を述べるにとどまる。 また、本願明細書における上記段落【0056】~【0066】の記載は、複数の実施例及び比較例の中に根域制限を行った場合と行わなかった場合とを含めたうえで、実施例の方が比較例より目視で花芽の分化が多く観察されたことを述べるにとどまる。なお、段落【0056】~【0066】において、「根圏制御」が「なし」とされているのは比較例1、比較例2、比較例5及び比較例6であるところ、段落【0061】~【0064】の文章からすれば、比較例1、比較例2、比較例5及び比較例6はいずれも開放型採種園で、水分ストレスを付与したことになる一方、段落【0065】の【表1】によれば、いずれも水分ストレスはなしで、比較例1及び2は閉鎖型採種園とされているから、本願明細書の記載は、各々の比較例に関する育成条件自体についても、整合性がない。そして、前述した記載の不整合を別としても、結局のところ本願明細書において、実施例1~6及び比較例1~6について実施例の方が優れていた旨をいう記載は、個々の育成条件と効果との対応関係を十分に明確に示すとはいえないとともに、育成条件のうちの一つである根域制限の領域について、「46L」という特定の数値の前後で、他の数値の場合とは異質な効果や予測できない顕著な効果が生じることを示すものではない。 引用発明において、「根域抑制」の領域の大きさを、図-1の図示から大きくは変更しない範囲で適宜に選択したことによる効果は、引用文献1~3に記載または示唆される根域制限の効果と同質なものであろうと予測されるところ、本願補正発明において「根圏の制限領域」を「46L」以下としたことの効果は、本願明細書の記載及び技術常識を考慮しても、上述したとおり「46L」という数値の前後で異質または予測できない顕著な効果が生じることが示されているわけではないから、引用発明において「根域抑制」の領域の大きさを適宜に選択する際に予測される効果を超える、格別顕著なものとはいえない。 (c)小括 したがって、技術的意義、及び効果の観点から検討しても、相違点1に係る本願補正発明の構成は、上記bに示した構成上の容易想到性を覆すような、引用発明とは格別異なる技術的意義を有するとはいえず、異質かつ顕著な効果を奏するものともいえない。 (イ)相違点2について a 相違点2に係る構成の技術的意義 上記相違点1に係る本願補正発明の構成に関し、本願明細書には、上記(2)に示した段落【0022】の記載、段落【0032】~【0035】の記載、段落【0042】~【0044】の記載、及び、段落【0056】~【0066】の実施例1~6及び比較例1~6の記載がある。 段落【0022】及び段落【0032】~【0035】の記載によれば、リン酸成分を少なくとも含む緩効性肥料に関し、窒素の含有量よりリン酸の含有量が多いものが好ましいとされ、両者の比率について好ましいと例示された数値範囲のものは、肥料効果を継続的に発揮すれば花芽促進効果を得ることができるとされている。肥料の施肥時期や施肥方法について、通常と異なる特別な施肥時期や施肥方法が説明されているわけではない。 段落【0042】~【0044】の記載によれば、花芽分化促進剤として挙げた緩効性肥料以外にも、適宜に施肥を行ってよく、肥料の形態は緩効性や粒状のものであってよく、必須要素においては、窒素及び/またはカリウムの含有量がリンの含有量よりも多いことが好ましいとされている。 上記段落【0022】及び段落【0032】~【0035】の記載と、上記段落【0042】~【0044】の記載とを総合すれば、肥料としては、粒状の緩効性肥料として、窒素の含有量よりリン酸の含有量が多いものと、窒素の含有量がリンの含有量よりも多いものとを併せて与えてもよく、総合的な窒素の含有量とリン酸の含有量との比率や施肥時期を特に問うことなく、継続的に肥料効果を与える肥料の一部に窒素の含有量よりリン酸の含有量が多いものが含まれていれば、当該肥料の一部は「花芽分化促進剤」と位置づけられる。 段落【0056】~【0066】には、実施例1~6及び比較例1~6として、定植後1年目の苗について2022年に育成を行い、ジベルリン処理を行うものについては7月頃にジベルリン処理を行ったうえで、10月末頃に「目視で確認」したところ「比較例と比較して、実施例の処理個体では多くの花芽の分化が観察された」ことが記載されている。肥料については、実施例1~6及び比較例1~6のいずれについても、「ハイコントロール085 360日タイプ(N:P:K=10:18:15)」を与えており、肥料の成分比率や施肥状況を変更したことは一切記載されていない。 以上の本願明細書の記載より、本願補正発明において、「肥料」について「リン酸含有量が窒素含有量の1.2~2.0倍」であること、及び「粒状の緩効性」肥料であることを特定するとともに、「花芽分化促進剤」と表記した技術的意義は、少なくとも当該成分比の肥料が「粒状の緩効性」肥料としてある程度継続的に与えられれば、さらに詳細に具体的な施肥の時期や総合的に与える肥料の成分比まで特定しなくとも、少なくとも相違点2に係る肥料成分単独で見れば花芽分化を促進する効果が期待できるであろうという観点から、与える肥料の一部を特定して「花芽分化促進剤」と表記したものであり、具体的には市販の肥料である、「N:P:K=10:18:15」の「ハイコントロール085」が用いられていれば足りる趣旨と理解される。 b 構成上の容易想到性について 上記(3)オ及びカに示した参考資料2及び参考資料3から明らかなとおり、3大栄養素のチッ素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)がN:P:K=10:18:15で配合されている緩効性化成肥料の「ハイコントロール085」は、本願出願時点において、スギやヒノキのコンテナ苗生産において多くの者が使用する市販の肥料であり、成分が長期間をかけて溶出する粒状の肥料であったことが、技術常識である。 引用発明では、液体肥料では肥料構成や濃度を柔軟に変更できる観点から、主に液体肥料を用いているが(上記(3)ア(ア)l参照)、肥料におけるN:P:Kの比率は14:11:13、10:18:15または6:20:13であり、ヒノキについて期間4にN:P:Kを14:11:13と6:20:13にした場合について、着花の促進に関する効果の相違は確認できていない。 引用発明において、試験の観点を離れて種苗生産を実際に行う際に、窒素とリン酸とカリウムの比率が使用した3種の成分比率のうち中間的な比率と合致する「10:18:15」であって、かつスギやヒノキのコンテナ苗生産において多くの者が使用する市販の肥料であることが技術常識であった「ハイコントロール085」を用い、もって相違点2に係る本願補正発明の構成に相当する構成とすること(本願明細書によれば「ハイコントロール085」が「花芽分化促進剤」と言い得ることも含めて)は、広範に用いられ入手や使用が容易である市販品を用いるという一般的な観点から、当業者であれば容易に想到できた事項である。 c 技術的意義及び効果の観点からの検討 本願補正発明において、「肥料」について「リン酸含有量が窒素含有量の1.2~2.0倍」であること、及び「粒状の緩効性」肥料であることを特定するとともに、「花芽分化促進剤」と表記し、上記相違点2に係る構成とした技術的意義は、具体的には市販の肥料である「N:P:K=10:18:15」の「ハイコントロール085」が用いられていれば足りる趣旨と理解される。 本願補正発明において、上記相違点2に係る構成による効果は、本願明細書において唯一記載される肥料の具体例であり、実施例1~6及び比較例1~6の全てにおいて区別なく用いられている肥料である、「N:P:K=10:18:15」の「ハイコントロール085」を用いることで生じる効果と、相違しない。 上記bに示したとおり、引用発明において、試験の観点を離れて種苗生産を実際に行う際に、スギやヒノキのコンテナ苗生産において多くの者が使用する市販の肥料であることが技術常識であった「ハイコントロール085」を用いることは、想到容易であるところ、本願補正発明において相違点2に係る構成が有する技術的意義、及び奏する効果は、引用発明において多くの者が使用することが技術常識であった「ハイコントロール085」を用いることによる技術的意義、及び予想される効果と、特段異なるものではない。 したがって、技術的意義、及び効果の観点から検討しても、相違点2に係る本願補正発明の構成は、上記bに示した構成上の容易想到性を覆すような、引用発明とは格別異なる技術的意義を有するとはいえず、異質かつ顕著な効果を奏するものともいえない。 エ 請求人の主張について (ア)請求人の主張 請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。 a 肥料について 引用文献1においては、肥料としてN:P:K=10:18:15の液体肥料を用いることが記載されているが(引用文献1 表-3)、粒状であるだけでなく、NとPが特定の比率である肥料を用いることが花芽促進効果に影響することについて、記載も示唆もされていない。(審判請求書第3頁第22行~第25行) b 根圏制御の際の容量について 引用文献2においては(当審注;引用文献1の誤記と認める)、苗を植栽するにあたり使用する容器として市販の農業用コンテナを利用したことを記載するにとどまり、その容量を明記していないので、当業者であれば根圏制御の際の容量と花芽分化への影響に着目する動機づけを得ない。(審判請求書第3頁第26行~第4頁第2行) c 効果について 「そこで、本願出願人は、本願発明において、肥料としてリン酸含有量が窒素の含有量の1.2倍未満、2.0倍超の肥料を用いた参考比較例1~3、及び、根圏制御領域を46L超とした場合の花芽促進効果に関する参考比較例4、液状の肥料を用いた参考比較例5を準備させていただきましたので、ご参照いただければと思います。 [参考比較例1~5] 肥料の清浄、肥料中のN,P,K成分の比率、および育苗容器の容積を下記表1のとおり調整したほかは、実施例1と同様に試験を行い、花芽分化の状況を調べた。花芽分化の評価は、以下のとおりとした:〇 多くの花芽分化が確認された;△ 花芽分化はみられたが実施例1よりは少なかった(1個以上10個未満);× 花芽分化が確認できなかった(表1)。 [図:0001426566000013.jpg] 表1から明らかなように、リン酸含有量の窒素含有量に対する比率(N/P)が1.2倍未満である参考比較例1,2、N/Pが2.0倍を超える参考比較例3、育苗容器の大きさが46Lを超える参考比較例4、および液状の肥料を用いた参考比較例5では、花芽分化が少ないか、または確認できなかった。これに対し、本願明細書の実施例1においては、多くの花芽分化を確認することができた。 上記参考比較例の結果と本願実施例1をはじめとする実施例の結果との比較から、本願発明によれば、屋内で山林苗を生育する際に、根圏制御領域を46L以下とし、乾燥ストレスを付与し、窒素、リン酸及びカリウムを含む肥料であってリン酸含有量と窒素含有量の比率が所定の範囲内であり、かつ粒状の緩効性肥料を投与するとともにジベレリン処理を行うことにより、花芽分化を効率的に促進できることが明らかです。このような本願発明の効果は、引用文献1からは予想できない顕著な効果であることが明らかです。」(審判請求書第4頁第22行~第25行) (イ)上記主張についての検討 a 上記(ア)aの主張について 上記(ア)aの主張について検討する。 請求人が主張する、NとPが特定の比率である肥料を用いることによる花芽促進効果については、本願明細書において、実施例1~6及び比較例1~6の全てで、スギやヒノキのコンテナ苗生産において多くの者が使用する市販の肥料であることが技術常識であった市販の「ハイコントロール085」を用いたうえで、「ハイコントロール085」の成分比率を含む範囲を段落【0032】において「好ましい」ことを述べるとともに特許請求の範囲において特定したに過ぎず、上記ウ(イ)a及びcに指摘したとおり、肥料に関する本願補正発明における特定が、特段の技術的意義や効果を奏するものとはいえない。 そして、本願補正発明における肥料に係る構成の容易想到性については、上記ウ(イ)bに示したとおりである。 また、肥料に係る本願補正発明の構成について、請求人が審判請求書で上記(ア)cに示す参考比較例との対比に基づいて主張する効果は、後記cに示すとおり採用することができず、格別のものとも認められない。 したがって、上記(ア)aの請求人の主張について検討しても、肥料に係る本願補正発明の構成の容易想到性について、上記ウ(イ)の判断を変更すべき事情はない。 b 上記(ア)bの主張について 上記(ア)bの主張について検討する。 根圏制御の際の容量と花芽分化への影響に関し、本願明細書においては、単に根圏制御を有りとする場合に一律に容量46Lのコンテナを用いているに過ぎず、上記ウ(ア)a及びcに示したとおり、46L以下という数値について、引用発明や周知技術において行っている根圏制御とは異なる技術的意義を有することや、格別顕著な効果を奏することが示されているものではない。 そして、本願補正発明における肥料に係る構成の容易想到性については、上記ウ(ア)bに示したとおりである。 また、根域制御の際の容量を46L以下とする本願補正発明の構成について、請求人が審判請求書で上記(ア)cに示す参考比較例との対比に基づいて主張する効果は、後記cに示すとおり採用することができず、格別のものとも認められない。 したがって、上記(ア)bの請求人の主張について検討しても、根域制御の際の容量に係る本願補正発明の構成の容易想到性について、上記ウ(ア)の判断を変更すべき事情はない。 c 上記(ア)cの主張について 上記(ア)cの主張について検討する。 まず第一に、請求人が審判請求書において新たに提示した参考比較例との対比結果は、本願明細書に記載されたものではないから、本願出願時点において本願補正発明で特定する構成について特段の効果を発見した根拠として、進歩性の判断において参酌できるものではない。 第二に、本願明細書において、実施例1は2022年に1年生のスギを育成し、同年7月にジベレリン処理を行い、同年10月末に花芽分化の状況を調査したものであるところ、審判請求書における参考比較例1~5の実験が、原査定の到達日(2024年3月19日)から審判請求書の提出日(同年6月19日)までの間に、そもそも実施例1におけるジベレリン処理や花芽分化の状況の調査時期を含まない期間において、実施例1と一部の条件を変えた以外は同様のものとして実施されたとは、合理的に考えられない。参考比較例1~5に関し、仮に何らかの実験が行われたとしても、実験の期間やジベレリン処理の時期、及び花芽分化の状況の調査の時期は、実施例1とは全く異なると考えられ、その他の条件についても、実施例1は同様ではない蓋然性が高い。このような参考比較例1~5を、実施例1と同列に比較して、本願補正発明の各構成が奏する特有の効果が示されたと理解することは、妥当ではない。 第三に、たとえ参考比較例1~5について、表1に示される条件以外については実施例1と概略同じ条件で実験されており、単に本願出願の時点で明細書に記載していなかったものであったとしても、育苗容器の大きさを「100L」とした参考比較例4と「46L」とした実施例1との対比をもって、「根圏の制限領域」について「46L」という数値の前後で異質または予測できない顕著な効果が生じることが示されるものではない。また、肥料を「液状」としただけではなくNとPとKとの比率を実施例1と異ならせ、かつ、「液状」とした肥料の施肥間隔や施肥濃度をどのように調整したかが不明な参考比較例5と実施例1との対比をもって、肥料として「液状」の肥料ではなく「粒状の緩効性肥料」を用いることにより、引用文献1及び汎用される市販の「ハイコントロール085」を知る当業者が予測できない顕著な効果が生じることが示されるものではない。また、「粒状」の肥料についてN/Pの比率を変えたとする参考比較例1~3と実施例1との対比をもって、肥料のN/Pの比を本願補正発明で特定される「1.2~2.0倍」とすることにより、本願実施例と同じ市販品であって汎用される「ハイコントロール085」を知る当業者が予測できない顕著な効果が生じることが示されるものではない。 したがって、請求人が上記(ア)cの主張で提示する参考比較例1~5と実施例1との対比は、本願補正発明の進歩性の判断において参酌できるものではなく、対比自体が適切かつ妥当なものではなく、たとえ考慮したとしても上記ウにおける進歩性の判断を変更すべき事情を示すものではない。 オ 進歩性のまとめ 上記ア~エのとおりであるから、本願補正発明は、引用発明、及び、引用文献2、3に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)独立特許要件のまとめ 以上より、本願補正発明は、特許法29条2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができたものではない。 4 補正の却下の決定のまとめ 上記2及び3のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により、却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願について 1 本願発明 上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正前の令和6年2月16日に提出された手続補正書によって補正された、特許請求の範囲の請求項1の記載により特定されるべきものである。 本願発明を特定する、特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記第2の1(1)に摘記したとおりである。 2 原査定の理由の概要 原査定の理由の概要は、以下のとおりである。 ・進歩性欠如 本願発明は、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2、3に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、引用文献1~3は、上記第2の3で本願補正発明の進歩性について検討した引用文献1~3と同じである。 3 当審の判断 本願発明は、本願補正発明から一部の構成(付与する「環境ストレス」として「乾燥ストレス」を含むこと、及び、投与する「花芽分化促進剤」として「ジベレリン」を含むこと)を削除したものであるから、引用発明と対比すると、上記第2の3(4)イに示した相違点1及び相違点2において相違し、その余の点で一致する。 相違点1については、上記第2の3(4)ウ(ア)に判断したのと同様であり、原査定の理由において示したとおり、「根圏制御領域を46L以下とすることは、スギ等の採種木の根域抑制制御における周知技術(例えば、引用文献2の「2 方法」欄、引用文献3の「成果の概要」欄を参照)であるから、引用文献1に記載された発明において、上記周知技術を適用することにより、上記相違点2(当審注;原査定では「相違点2」として判断した)に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た」ものである。 相違点2については、上記第2の3(4)ウ(イ)に判断したのと同様であり、原査定の理由において示したとおり、「粒状の固体肥料は、スギ等の採種木の育成において従来から広く用いられているものであるから、引用文献1に記載された発明における肥料として、従来から広く用いられ、同等の効果が得られる粒状の固体肥料を用いることは、当業者が適宜なし得る設計的事項」程度である。 したがって、本願発明は、原査定の理由において示したとおり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、他の請求項について判断するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-010208

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