特許拒絶査定不服審判
2024-004053
制御装置、制御システム、およびプログラム
- 審判番号
- 2024-004053
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-101428
- 請求日
- 2024年03月07日
- 審決日
- 2025年10月15日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社東海理化電機製作所
- 【請求人代理人】伊藤 学
- 【請求人代理人】大山 夏子
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 柳 重幸
- 審判官 井海田 隆
- 分類
- P18 .121-Z (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-101428「制御装置、制御システム、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月27日出願公開、特開2021-196210〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年6月11日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 7月26日付け:拒絶理由通知書
同年 9月21日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和6年 1月 9日 :原査定の謄本の送達)
同年 3月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年3月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年3月7日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年3月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年9月21日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
移動体によって区画された空間である前記移動体の室内であって、当該室内の天井部より床部に近い位置に固定された位置固定型通信装置と、前記室内に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置と、が無線通信を行うことで得られた、前記位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す測距値を取得し、前記位置可変型通信装置が前記室内に位置するか否かを、前記測距値に基づいて推定する制御部、
を備える制御装置。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
車両に設けられる、窓およびドアを有する車室内であって、当該車室内に設けられる座席の座面部の高さより下である床部に近い位置または床部に固定された一の位置固定型通信装置と、前記車室内に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置と、が無線通信を行うことで得られた、前記位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す測距値と前記無線通信により送信される信号が到来する角度とに基づいて、前記位置可変型通信装置が前記車室内外のいずれに位置するかを推定する制御部、
を備える制御装置。」
2 本件補正の適否
(1) 本件補正の内容
本件補正のうち請求項1についてする補正は、次のアからエの補正をするものである。
ア 「移動体」の「室内」について、本件補正前の「移動体によって区画された空間である前記移動体の室内」との記載を「車両に設けられる、窓およびドアを有する車室内」に補正すること(以下「補正事項ア」という。)。
イ 「位置固定型通信装置」が「固定された」「位置」について、本件補正前の「室内の天井部より床部に近い位置」との記載を「車室内に設けられる座席の座面部の高さより下である床部に近い位置または床部」に補正すること(以下「補正事項イ」という。)。
ウ 「位置固定型通信装置」について、「一の位置固定型通信装置」に補正すること(以下「補正事項ウ」という。)。
エ 「制御部」について、本件補正前の「位置固定型通信装置と、前記室内に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置と、が無線通信を行うことで得られた、前記位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す測距値を取得し、前記位置可変型通信装置が前記室内に位置するか否かを、前記測距値に基づいて推定する制御部」との記載を「位置固定型通信装置と、前記車室内に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置と、が無線通信を行うことで得られた、前記位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す測距値と前記無線通信により送信される信号が到来する角度とに基づいて、前記位置可変型通信装置が前記車室内外のいずれに位置するかを推定する制御部」に補正すること(以下「補正事項エ」という。)。
(2) 特許請求の範囲の限定的減縮に該当しないことについて
ア 補正事項イについて
(ア) 「天井部」という構成が削除されたこと
前記(1)イで示した補正事項イについて検討すると、当該補正事項イによる補正後の「車室内に設けられる座席の座面部の高さより下である床部に近い位置または床部」との記載は、本件補正前には記載されていた「天井部」を含まない記載である。
そうすると、「位置固定型通信装置」が「固定された」「位置」について、本件補正前は、「天井部」と「床部」の両方から見た位置として規定されていたものを、本件補正後は、「床部」のみから見た位置として規定されたことになる。
このように「位置固定型通信装置」が「固定された」「位置」を規定するための観点を変更する補正は、限定的減縮を目的としたものであるとはいえない。
(イ) 「床部」の限定になっていないこと
a また、補正事項イによる補正後の「車室内に設けられる座席の座面部の高さより下である床部に近い位置」との記載は、「床部」が「車室内に設けられる座席の座面部の高さより下である」ことを特定するものであると解するのが自然であるところ、「床部」が「座席の座面部の高さより下である」ことは当然のことであり、上記記載は、実質的には「床部」を限定したことにならない。
b もっとも、上記記載は、「床部」が「車室内に設けられる座席の座面部の高さより下である」ことを特定するものではなく、「位置」が「車室内に設けられる座席の座面部の高さより下」にあり、かつ、「床部に近い」ことを特定しようとしたものであると解する余地がないわけではない。
c しかしながら、そのような意図の下では、本来、「車室内に設けられる座席の座面部の高さより下にある、床部に近い位置」や、「車室内に設けられる座席の座面部の高さより下にあり、床部に近い位置」と記載すべきであって、「車室内に設けられる座席の座面部の高さより下である床部に近い位置」との表現ぶりでは、その意図を正しく表現していないから、前記bのように善解することは適当ではない。
d したがって、補正事項イにおいて、「車室内に設けられる座席の座面部の高さより下である床部に近い位置」と補正することは、限定的減縮を目的としたものであるとはいえない。
(ウ) 「床部に近い」の「近い」の意味が不明になったこと
a 前記(ア)において検討したとおり、「位置固定型通信装置」が「固定された」「位置」について、本件補正前は、「天井部」と「床部」の両方から見た位置として規定されていたものを、本件補正後は、「床部」のみから見た位置として規定されたことになる。
b ここで、本件補正前は、「天井部」よりも「床部」に「近い位置」に「位置固定型通信装置」が「固定された」ことが規定されていたが、本件補正後は、「天井部」と「床部」のどちらに近いかを特定するものではなく、単に「床部に近い位置」と特定するのみであるから、「近い」が示す具体的な範囲が不明であって、本件補正後の記載は、床部を基準として具体的にどのような位置が含まれるのか不明な記載である。
c その点に関し、「天井部より床部に近い」という条件が削除され、単に「床部に近い位置」と特定するのみでは、例えば、天井部のないオープンカーや、天井部の高いバス等の車両における窓付近の位置に位置固定型通信装置を設けたものなどが含まれることになるため、補正事項イにより、本件補正前の請求項1に係る発明が想定していない設置態様も含むことになってしまう。
d したがって、補正事項イにおいて、「車室内に設けられる座席の座面部の高さより下である床部に近い位置」と補正することは、その「近さ」が不明であるように補正するものであり、限定的減縮を目的としたものであるとはいえない。
(エ) 補正事項イの検討のまとめ
前記(ア)~(ウ)を踏まえると、当該補正事項イは、本件補正前の請求項1の発明特定事項を限定するものではなく、いわゆる限定的減縮に該当しないことは明らかである。
イ 補正事項エについて
(ア) 「制御部」が「測距値を取得」することが削除されたこと
前記(1)エで示した補正事項エについて検討すると、当該補正事項エによる補正後の「位置固定型通信装置と、前記車室内に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置と、が無線通信を行うことで得られた、前記位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す測距値と前記無線通信により送信される信号が到来する角度とに基づいて、前記位置可変型通信装置が前記車室内外のいずれに位置するかを推定する制御部」との記載は、本件補正前は記載されていた、「制御部」が「測距値を取得」することを含まないものとなった。
したがって、補正事項エは、「制御部」が「測距値を取得」することを削除する補正を含むから、限定的減縮を目的としたものであるとはいえない。
(イ) 「推定」内容が変更されたこと
a 本件補正後の「推定」の内容
補正事項エによる補正後の「位置可変型通信装置が」「車室内外のいずれに位置するかを推定」との記載は、「制御部」が、「位置可変型通信装置が」「車室内」「に位置する」ことの「推定」、及び、「位置可変型通信装置が」「車室」「外」「に位置する」ことの「推定」を二者択一的に行うことを示すものである。
b 本件補正前の「推定」の内容
一方、本件補正前の「位置可変型通信装置が」「室内に位置するか否かを」「推定」との記載は、「制御部」が、「位置可変型通信装置が」「室内に位置する」ことの「推定」、及び、「位置可変型通信装置が」「室内に位置」しないことの「推定」を二者択一的に行うことを示すものである。
c 補正前後の「推定」内容の比較
ここで、本件補正前の「室内に位置」しないことの「推定」と、補正事項エによる補正後の「室」「外」「に位置する」ことの「推定」とを比べると、補正前は、単に室内に存在しないことを推定するだけであって、このことにより室外に存在することが当然に導かれるものではない。
また、補正後の「室内」か「室外」かの二者択一的な推定について、「室外」であるという推定が成立しない場合には、このことをもって「室内」であると推定されることになるところ、このような推定は、「測距値」に直接基づくことなく「室内」であると推定することを意味するから、本件補正前の請求項1の文言(「前記測距値に基づいて推定」)と整合的ではなく、「室内に位置するか否か」の「推定」が想定している範囲を超えるものである。
要するに、補正前後の「推定」内容を比較したとき、「室内に位置」しないことに対して、「室」「外」「に位置する」ことは、概念的に下位ではないから、「室内に位置」しないことの「推定」を、「室」「外」「に位置する」ことの「推定」とする補正は、「推定」の内容を変更するものであって、そもそも減縮とはいえない。
d 「測距値」の観点からみた検討
この点に関し、本件補正前の「推定」は「前記測距値に基づいて」行われるから、室内に位置しないような大きな測距値を示した場合には、「測距値」の観点からみると、室外に位置することを意味するので、本件補正前の「室内に位置するか否か」は、実質的には「室内外のいずれに位置するか」と同義であるとの反論も考えられる。
しかしながら、単に室内に位置しないとするに留めるか、さらに進んで室外に位置するとまで判断してしまうかは、全く異なる処理であり、後者のように判断すると、例えば、取得された測距値が大きな異常値(エラー)の場合であっても、スマートキーのドアロックを解除してしまうことになるため、「室内に位置しない」ことを「室外に位置する」こととする補正は、関連する処理内容からみて、少なくとも減縮にはなっていないと解するのが相当である。
(ウ) 補正事項エの検討のまとめ
前記(ア)、(イ)から、補正事項エの補正により、「制御部」について、「測距値を取得」することが削除され、また、「室内に位置」しないことの「推定」が、「室」「外」「に位置する」ことの「推定」に変更された。
以上を踏まえると、当該補正事項エは、本件補正前の請求項1の発明特定事項を限定するものではなく、いわゆる限定的減縮に該当しないことは明らかである。
ウ 限定的減縮についての検討のまとめ
前記ア、イから、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないから、本件補正は特許請求の範囲の限定的減縮に該当しない。
(3) その他の補正の目的要件にも該当しないことについて
そして、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
(4) 請求人の主張
請求人は、審判請求書において、本件補正は、いずれも補正前の請求項に記載の内容を限定的に減縮する補正であって、特許法第17条の2第5項第2号を目的とするものである旨主張するが、前記(2)において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
3 本件補正の適否についてのまとめ
以上検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当しない。
よって、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2に示したとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年9月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
本願発明の構成を便宜上次のように構成Xと構成A、A1、A2に分説する。
ここで、「制御部」に関連する構成に、Aを含む符号(A、A1、A2)を使用した。
また、参考図として本願の明細書の図5に部材名を加筆したものを掲載する。
<本願発明の分説>
(構成A1)移動体によって区画された空間である前記移動体の室内であって、当該室内の天井部より床部に近い位置に固定された位置固定型通信装置と、前記室内に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置と、が無線通信を行うことで得られた、前記位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す測距値を取得し、
(構成A2)前記位置可変型通信装置が前記室内に位置するか否かを、前記測距値に基づいて推定する
(構成A)制御部、を備える
(構成X)制御装置。
<参考図>
【図5】
[図:0001429499000001.jpg]
2 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、装置間で信号を送受信した結果に従って、一方の装置が他方の装置の位置を推定する技術が開発されている。位置推定技術の一例として、下記特許文献1には、UWB(Ultra-Wide Band)で無線通信を行うことで、UWB受信機がUWB送信機からの無線信号の到来角度を推定する技術が開示されている。また、位置推定技術の他の一例として、無線通信を行うことで装置間の距離を測定し、当該距離を用いて位置推定が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/176776号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、装置間に遮蔽物があると通信がうまく行われず、その結果として計測したい対象の計測精度が悪化するという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、位置推定精度を向上させることが可能な仕組みを提供することにある。
…(中略)…
【0052】
<<3.技術的課題>>
図2を参照しながら、本実施形態の技術的課題を説明する。図2は、本実施形態の技術的課題を説明する図である。図2に示すように、車両20は天井部23と床部25を含む。また、天井部と床部25とを繋ぐ側面部には、ガラス窓28が設けられる。」
「【図2】
[図:0001429499000002.jpg]
」
「【0053】
車両20の車室内には、通信装置200Eが設置される。通信装置200Eは、図1に示す本実施形態による通信装置200と実質的に同一の機能構成を有する。図2に示すように、通信装置200Eは、天井部23に配置される。通信装置200Eを天井部23に設置することで、車室内外の広い範囲において携帯機100の位置推定が可能となる。」
「【図1】
[図:0001429499000003.jpg]
」
「【0054】
ここで、車両20に乗車しているユーザDの後ろポケットに携帯機100が入れられている場合等、携帯機100からの直接波が人体や手荷物その他の物体により遮蔽される場合がある。この場合、天井部23に配置された通信装置200Eには、携帯機100から送信された信号が車室内で反射した反射波が到達する。このため、当該反射波に基づいて位置推定が行われる。
【0055】
より具体的には、上述した携帯機100と通信装置200Eとの間の距離を算出する測距処理において、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間ΔT2が計測されるが、当該第2の測距用信号の受信時刻とは、第2の測距用信号の第1到来波の受信時刻である。第1到来波は、直接波、遅延波、又は合成波のいずれかであり得る。直接波とは、送受信間の最短経路を経て、直接的に(即ち、反射、回折等されずに)受信側に受信される信号である。遅延波とは、送受信間の最短でない経路を経て、即ち、反射、回折等されて間接的に受信側に受信される信号である。遅延波は、直接波よりも遅延して受信側に受信される。合成波とは、複数の異なる経路を経た複数の信号が合成された状態で受信側に受信される信号である。
【0056】
したがって、第1到来波として検出された信号は、必ずしも直接波であるとは限らない。上述したように直接波が人体等により遮蔽され、第1到来波として反射波が検出された場合、上記計測されるΔT2には遅延時間が含まれる。このような遅延波の受信時刻でΔT2を計測し、当該ΔT2を用いて測距処理が行われると、実際の距離より長い誤った距離が算出される。また、遅延波に基づいて上述した角度推定処理が行われた場合も、誤った角度が算出される。このため、例えば図2に示す座標P10が、携帯機100の座標として推定され、携帯機100が車室外に存在すると誤った判定が行われる恐れがある。このように、人体等による遮蔽が、携帯機100の位置パラメータ推定の精度低下の一因となる。
【0057】
そこで、車室内において衣服のポケットや手荷物等に携帯機100が入れられて人体や手荷物等により信号が遮蔽される場合にも、より正確に位置を推定できることが望ましい。
【0058】
<<4.技術的特徴>>
制御装置300は、以下に詳しく説明する通信装置200の配置により、車室内において衣服のポケットや手荷物等に携帯機100が入れられている場合にも、直接波を第1到来波として検出する。以下では一例として、第1到来波を検出する主体が通信装置200である場合について説明する。以下に説明する処理は、携帯機100により実行されてもよい。
【0059】
<4.1.通信装置の配置>
通信装置200は、車両20に搭載される。通信装置200は、位置固定型通信装置の一例である。位置固定型通信装置とは、物体によって区画された空間である対象空間に対する相対的な位置が固定された通信装置である。
【0060】
車両20の車室は、対象空間の一例である。ここで、車室とは、ユーザが車両20に搭乗するために車両20に設けられた空間である。対象空間が車室である場合、対象空間を区画する物体の一例は、車両20の最外殻を構成する構成要素である。車両20の最外殻を構成する構成要素とは、車室を構成する構成要素のうち、車室からみて最も遠い層である。車両20の最外殻を構成する構成要素の一例は、車両20のボディを構成する鋼板、ドアを構成する鋼板、及びドアにはめ込まれたガラス窓である。なお、ボディを構成する鋼板、及びドアを構成する鋼板よりも車室側には、樹脂等で内装が施される場合がある。これら内装部分も、車室に含まれるものとする。
【0061】
図3は、本実施形態に係る通信装置200の配置の一例を示す図である。図3において、車両20の進行方向は前方向、車両20の進行方向の逆方向は後方向とも称される。また、車両20の進行方向に直交する、地面と水平の方向は左右方向とも称される。また、車両20の進行方向に直交する、地面と垂直の方向は上下方向とも称される。また、車両20は、車両20の最外殻を構成する構成要素として、天井部23と床部25と側部を有する。側部には、運転席側の側部26と、助手席側の側部と、車両20前側の側部と、車両20後側の側部と、が含まれる。」
「【図3】
[図:0001429499000004.jpg]
」
「【0062】
位置固定型通信装置は、対象空間の内部において、天井部より床部に(距離的に)近い位置に固定される。かかる配置により、車室内において衣服のポケットや手荷物等に携帯機100が入れられて、車室の上方向に伝搬する信号が人体や手荷物等により遮蔽される場合にも、携帯機100からの直接波が通信装置200に到達する。これにより、制御装置300の制御部320は、直接波に基づいて位置パラメータを推定でき、推定精度が向上する。すなわち、携帯機100の座標P1をより正確に推定し得る。例えば、携帯機100が車室内に存在することを適切に判定することが可能となる。なお、携帯機100は、位置可変型通信装置の一例である。位置可変型通信装置とは、対象空間に対する相対的な位置が可変な通信装置である。携帯機100は、ユーザに携帯され、ユーザの移動に伴い移動する。例えば、携帯機100は、車室内に位置したり、車室外に位置したりし得る。
【0063】
本実施形態による配置の一例として、例えば図3に示すように、車両20の内部における床部25の左右方向の中央部分に通信装置200が配置されていてもよい。また、通信装置200は、床部25の左右いずれかの方向(運転席側または助手席側)に寄った部分に配置されていてもよい。また、通信装置200は、床部25の前方向側の端部に配置されていてもよい。また、通信装置200は、床部25の前方向側の端部かつ、左右方向の中央部分に配置されていてもよい。
【0064】
また、本実施形態による他の配置例として、通信装置200は、座面部と床部25との間に配置されていてもよい。座面部には、運転席の座面部21、助手席の座面部、後部座席の座面部が含まれる。より限定的には、例えば通信装置200は、運転席の座面部21と、床部25との間に配置されていてもよい。また、通信装置200は、運転席の座面部21の裏側に配置されていてもよい。
【0065】
また、本実施形態による他の配置例として、通信装置200は、天井部23と床部25を繋ぐ側部であって、天井部より床部に近い位置に配置されていてもよい。より限定的には、通信装置200は、天井部23と床部25を繋ぐ、運転席側の側部26であって、かつ、座面部21より下の高さに、配置されていてもよい。例えば、通信装置200は、側部26に含まれるドアの車室内側に配置されていてもよい。
【0066】
以上説明した配置により、携帯機100の位置推定において、携帯機100が実際には車室外に位置するにもかかわらず、車室内に位置すると誤って推定され難くすることが可能である。
【0067】
<4.2.処理の流れ>
図4は、本実施形態に係る制御装置300により実行される位置パラメータ推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。」
「【図4】
[図:0001429499000005.jpg]
」
「【0068】
図4に示すように、まず、制御装置300の制御部320は、通信装置200と携帯機100との間で行われる無線通信により得られた情報に基づいて測距処理および角度推定を行い、算出した距離および角度に基づいて携帯機100の座標P1(x,y,z)を推定する(ステップS103)。上述したように、通信装置200の配置の工夫により、携帯機100からの直接波が通信装置200に到達し、制御装置300は、直接波を第1到来波として処理することができ、位置推定の精度が向上する。
【0069】
次に、制御部320は、推定した座標P1に基づいて、携帯機100が車室内外のいずれに位置しているかを判定する(ステップS106)。上述したように、通信装置200の配置の工夫により、携帯機100からの直接波が通信装置200に到達し、直接波を第1到来波として処理するため、制御装置300は、正しく車室内に携帯機100があると判定することができる。
【0070】
<4.3.車室外に位置することの判定>
本実施形態による通信装置200の配置は、車室内外の判定を正しく行うことが可能である。以下、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態による車室外判定について説明するための図である。」
「【図5】(再掲)
[図:0001429499000006.jpg]
」
「【0071】
本実施形態による通信装置200の配置では、天井部23に配置した場合と比較して、正確に位置推定を行うことが可能なエリアが狭くなる場合がある。例えば、車両20のボディを構成する鋼板やドアを構成する鋼板により、ガラス窓より下方向の車室外エリアに位置する携帯機100の直接波が遮蔽される。これにより制御装置300は、ガラス窓より下方向の車室外エリアにおける位置を正確に推定することが困難となる。
【0072】
一方、図5に示すように、ガラス窓38より下方向の車室外エリアに位置する携帯機100の回析波や反射波は通信装置200に到達し得る。かかる回析波や反射波に基づいて位置推定を実行した場合、実際の携帯機100の座標P1とは異なる座標P12が推定されるが、少なくとも車室外に位置することは正しく判定することができる。
【0073】
このように、本実施形態による通信装置200の配置は、車室内外の判定を正しく行うことが可能となる。」
3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
本願発明は、出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.国際公開第2018/168538号(主たる引用文献)
引用文献2.特開2012-172334号公報(周知技術を示す文献)
4 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
(1) 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献1(国際公開第2018/168538号)には、以下の事項が記載されている。なお、当審において、後記イの引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。
(ア) [0002]~[0008]
「技術分野
[0002] 本開示は、携帯端末位置検出装置および携帯端末位置検出方法に関する。
背景技術
[0003] 車両の周辺あるいは車室内で乗員の位置を検出することができれば、乗員に対して様々なサービスを提供可能と考えられる。そこで、今日では、乗員の多くが無線通信可能な携帯端末を携帯していることに着目して、車両の複数箇所に設置したアンテナを用いて、携帯端末からの電波を受信することによって、携帯端末の位置(従って、乗員の位置)を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
[0004] この提案の技術では、アンテナで受信する電波は、その電波の送信元からの距離が大きくなるほど受信強度が小さくなることを利用して、複数箇所に設置したアンテナで検出した受信強度に基づいて、それぞれのアンテナから携帯端末までの距離を推定する。こうすれば、原理的には少なくとも3箇所にアンテナを設置しておけば、携帯端末が存在する位置を検出することができ、従って、その携帯端末を携帯している乗員の位置を検出することができる。
…(中略)…
[0005]特許文献1:特開2003-248045号公報
[0006] しかし、上述した従来の技術では、携帯端末の位置を十分な精度で検出しようとすると、実際には多数のアンテナを設置しなければならないという懸念があった。これは次のような理由による。
[0007] 先ず、携帯端末から送信された電波は、アンテナに届くまでの間に障害物(例えば人体)に遭遇すると電波が減衰して、アンテナでの電波の受信強度が小さくなる。その結果、そのアンテナから携帯端末までの距離を実際よりも長めに見積もってしまうことになり、携帯端末の位置を誤って検出してしまう。こうした事態を避けようとすると、アンテナの搭載箇所を増やして携帯端末までの距離を見積もっておき、他のアンテナで見積もった距離と辻褄の合わない距離については、携帯端末の位置を検出する際の考慮から外したり、考慮する際の重みを軽くしたりするなどの対策が必要となる。更に、このような方法ではアンテナの設置箇所を増やした方が、精度の確保が容易となる。このため、原理的にはアンテナの数は3個でよいにも拘わらず、精度を確保するためにはアンテナの数を増やす必要が生じて、実際には、より多数(例えば8個)のアンテナを搭載する必要が生じていた。
[0008] 本開示は、アンテナの数を増加させることなく、車室内での携帯端末の存在位置を精度良く検出することが可能な携帯端末位置検出装置および携帯端末位置検出方法を提供することを目的とする。」
(イ) [0012]~[0056]、[図1]~[図7]
「[0012] 以下では、上述した本願課題の内容を明確にするために実施例について説明する。
A.装置構成:
図1には、本実施例の携帯端末位置検出装置100を搭載した車両1の大まかな構造が示されている。図示されるように、車両1の車室内には、4箇所に受信アンテナ10が搭載されている。すなわち、運転席2aの近くには受信アンテナ10aが搭載され、助手席2bの近くには受信アンテナ10bが搭載され、後部座席2cから右方向の位置には受信アンテナ10cが、後部座席2cから左方向の位置には受信アンテナ10dが搭載されている。」
「[図1]
[図:0001429499000007.jpg]
」
「[0013] 尚、運転席2a、助手席2b、後部座席2cを特に区別する必要がない場合は、単に座席2と称するものとする。受信アンテナ10a、10b、10c、10dについても同様に、これら受信アンテナ10a、10b、10c、10dを区別する必要がない場合は、単に受信アンテナ10と称するものとする。
[0014] これらの受信アンテナ10は、それぞれに接続ケーブルによって携帯端末位置検出装置100に接続されているが、それぞれの接続ケーブルは、受信アンテナ10と携帯端末位置検出装置100とを単純に接続しているわけではない。例えば、運転席2aの近くに搭載された受信アンテナ10aと携帯端末位置検出装置100とを接続する接続ケーブルaは、途中の部分が、運転席2aの座面および背もたれ面を蛇行するように配線されている。そして、この蛇行する部分が、後述する補助アンテナ20aを形成している。
…(中略)…
[0018] 図2(a)には、携帯端末位置検出装置100と受信アンテナ10a(あるいは受信アンテナ10b)とを接続する接続ケーブルa(あるいは接続ケーブルb)が、運転席2a(あるいは助手席2b)の座面および背もたれ面の上を蛇行するように配線されることによって、補助アンテナ20a(あるいは補助アンテナ20b)が形成されている様子が例示されている。」
「[図2(a)]
[図:0001429499000008.jpg]
」
「[0019] また、図2(b)には、携帯端末位置検出装置100と受信アンテナ10cとを接続する接続ケーブルcが、後部座席2cの右側の座面および背もたれ面の上を蛇行するように配線されることによって、補助アンテナ20cが形成されている様子が例示されている。携帯端末位置検出装置100と受信アンテナ10dとを接続する接続ケーブルdについても同様に、後部座席2cの左側の座面および背もたれ面の上を蛇行するように配線されることによって、補助アンテナ20dが形成されている。」
「[図2(b)]
[図:0001429499000009.jpg]
」
「[0020] 更に、接続ケーブルeについては、後部座席2cの中央の座面および背もたれ面の上を蛇行するように配線されることによって、補助アンテナ20eが形成されている。
[0021] ここで、接続ケーブルを蛇行させることによって形成される補助アンテナ20とは次のようなものである。
[0022] 一般的に、受信アンテナ10は広い受信可能範囲を有しており、携帯端末などの電波発信源が数メートル以上、離れた距離にある場合でも、電波発信源からの電波を受信することができる。図3(a)には、指向性を有する受信アンテナ10の受信可能範囲10sが概念的に表されている。」
「[図3(a)]
[図:0001429499000010.jpg]
」
「[0023] また、受信アンテナ10で受信された電波は、接続ケーブルを介して受信装置(本実施例では携帯端末位置検出装置100)に送信される。そして実際には、この接続ケーブルも、接続ケーブルを中心として5センチメートル前後の受信可能範囲を有している。電波発信源が接続ケーブルから10センチメートル以上離れていると、電波発信源からの電波を受信できなくなるので、通常は見過ごされているが、電波発信源が接続ケーブルから数センチメート程度の距離に存在する場合には、接続ケーブルでも電波を受信することが可能となる。
[0024] そこで、図3(b)に示したように、接続ケーブルの一部を面状に蛇行させておく。こうすれば、接続ケーブルの蛇行面を中心として両面側に、それぞれ5センチメートル前後の厚さの受信可能範囲を有する補助アンテナ20を形成することができる。」
「[図3(b)]
[図:0001429499000011.jpg]
」
「[0025] 尚、本実施例では、接続ケーブルの途中の部分が、座席2の座面および背もたれ面を蛇行するものとして説明するが、座面あるいは背もたれ面の何れか一方を蛇行させることによって補助アンテナ20を形成することとしてもよい。
[0026] また、図4には、本実施例の携帯端末位置検出装置100の大まかな内部構造が示されている。図示されるように、携帯端末位置検出装置100は、受信強度検出部101と、受信有無判断部102と、存在位置算出部103と、存在位置決定部104と、携帯端末位置出力部105とを備えている。」
「[図4]
[図:0001429499000012.jpg]
」
「[0027] 尚、これらの「部」は、本実施例の携帯端末位置検出装置100が、車室内に存在する携帯端末の存在位置を検出する機能に着目して、携帯端末位置検出装置100の内部を便宜的に分類した抽象的な概念である。従って、携帯端末位置検出装置100の内部が、これらの「部」に物理的に区分されていることを表すものではない。これらの「部」は、CPUで実行されるコンピュータープログラムとして実現することもできるし、LSIを含む電子回路として実現することもできるし、更にはこれらの組合せとして実現することもできる。
[0028] 受信強度検出部101は、接続ケーブルa~dを介して受信アンテナ10a~10dに接続されている。このため、受信アンテナ10a~10dが携帯端末からの電波を受信すると、その電波が接続ケーブルa~dを介して伝達されて、受信アンテナ10a~10dでの電波の受信強度を検出することができる。尚、図1および図2を用いて前述したように、接続ケーブルa~dは、途中の一部分が蛇行した状態で配線されることによって補助アンテナ20a~20dを形成している。
[0029] 受信有無判断部102は、接続ケーブルa~dを介して補助アンテナ20a~20dに接続されており、補助アンテナ20a~20dが電波を受信すると受信有無判断部102に伝わるようになっている。このため、受信有無判断部102は、補助アンテナ20a~20dが携帯端末の電波を受信したか否かを判断することが可能となっている。また、受信有無判断部102には、接続ケーブルeを介して補助アンテナ20eも接続されている。このため、受信有無判断部102は、補助アンテナ20eが携帯端末の電波を受信したか否かも判断することができる。
[0030] 存在位置算出部103は、受信有無判断部102から、補助アンテナ20a~20eで携帯端末の電波が受信されたか否かの判断結果を取得する。そして、補助アンテナ20a~20eでは携帯端末の電波が受信されていなかった場合には、受信アンテナ10a~10dのそれぞれで受信された電波の受信強度に基づいて、携帯端末の存在位置を算出する。すなわち、それぞれの補助アンテナ20a~20dでの電波の受信強度が分かれば、携帯端末までの距離を推定することができ、それぞれの補助アンテナ20a~20dから携帯端末までの距離が分かれば、携帯端末の存在位置を算出することができる。
[0031] 一方、補助アンテナ20a~20eで携帯端末の電波を受信した旨の判断結果を受信有無判断部102から受け取った場合には、存在位置算出部103では携帯端末の存在位置は算出しない。
[0032] 存在位置決定部104も、上述した存在位置算出部103と同様に、補助アンテナ20a~20eで携帯端末の電波が受信されたか否かの判断結果を、受信有無判断部102から取得する。そして、補助アンテナ20a~20eの何れかで携帯端末の電波を受信していた場合には、その受信アンテナ10a~10dが配置されている位置を、携帯端末の存在位置として決定する。例えば、補助アンテナ20aで携帯端末の電波を受信していた場合であれば、受信アンテナ10aは運転席2aに配置されているから、携帯端末の存在位置を運転席2aに決定する。
[0033] 一方、補助アンテナ20a~20eで携帯端末の電波を受信していなかった場合は、存在位置決定部104で携帯端末の存在位置を決定することはない。
[0034] 携帯端末位置出力部105は、存在位置算出部103および存在位置決定部104に接続されている。そして、存在位置算出部103が携帯端末の存在位置を算出した場合には、算出された存在位置を取得し、存在位置決定部104が携帯端末の存在位置を決定した場合には、決定された存在位置を取得して、外部に出力する。
[0035] また、存在位置算出部103が携帯端末の存在位置を算出しておらず、且つ、存在位置決定部104が携帯端末の存在位置を決定していない場合は、携帯端末が存在しない旨を外部に出力する。
[0036] このように、本実施例の携帯端末位置検出装置100では、受信アンテナ10と補助アンテナ20とを併用して携帯端末の存在位置を検出する。このため、車室内に搭載する受信アンテナ10の搭載箇所を増やさなくても、十分な精度で、携帯端末の存在位置を検出することができる。もちろん、受信アンテナ10に加えて補助アンテナ20が追加されているが、補助アンテナ20は受信アンテナ10の接続ケーブルの一部分に過ぎないので、受信アンテナ10を追加する場合に比べれば、補助アンテナ20は遙かに簡単に追加することができる。
…(中略)…
[0038] B.携帯端末位置検出処理:
図5には、本実施例の携帯端末位置検出装置100で実行される携帯端末位置検出処理のフローチャートが示されている。」
「[図5]
[図:0001429499000013.jpg]
」
「[0039] 図示されるように携帯端末位置検出処理では、先ず初めに、車室内での携帯端末の存在位置を検出するか否かを判断する(S100)。本実施例では、一定時間(例えば3秒)が経過する度に存在位置を検出するものとして説明するが、他のプログラムから要請があった場合に、携帯端末の存在位置を検出するようにしても良い。
[0040] その結果、携帯端末の存在位置を検出しないと判断した場合は(S100:no)、同じ判断(S100)を繰り返すことによって待機状態となる。
[0041] これに対して、携帯端末の存在位置を検出すると判断した場合は(S100:yes)、受信アンテナ10a~10dで受信された携帯端末の電波を、受信アンテナ10a~10dのそれぞれから取得する(S101)。続いて、補助アンテナ20a~20eで受信された携帯端末の電波を、補助アンテナ20a~20eのそれぞれから取得する(S102)。
[0042] ここで、受信アンテナ10aと補助アンテナ20aとは、どちらも接続ケーブルaによって携帯端末位置検出装置100に接続されているので、受信アンテナ10aで受信された電波も、補助アンテナ20aで受信された電波も、接続ケーブルaを介して携帯端末位置検出装置100に入力されている。しかし、受信アンテナ10aで受信した電波と、補助アンテナ20aで受信した電波とは、電波の受信強度に基づいて簡単に区別することができる。すなわち、図3を用いて前述したように、補助アンテナ20aが電波を受信可能な範囲は、補助アンテナ20aからの距離が、5センチメートル前後以内の範囲に限られる。これに対して受信アンテナ10aが電波を受信可能な範囲は、受信アンテナ10aからの距離が数メートル前後の範囲に達し、多くの場合は、受信アンテナ10aから携帯端末までは1メートル以上、離れている。
[0043] そして、一般に、電波の受信強度は、電波の発信源(ここでは携帯端末)までの距離が遠くなるほど小さくなるから、受信アンテナ10aで受信した電波の受信強度は、補助アンテナ20aで受信した電波の受信強度に比べて、大幅に小さくなる。従って、接続ケーブルaから入力された電波の大きさが、所定の閾値よりも大きかった場合は、その電波は補助アンテナ20aで受信されたものと判断することができ、逆に、閾値よりも小さかった場合は、受信アンテナ10aで受信されたものと判断することができる。
[0044] 同様なことは、接続ケーブルbを介して接続された受信アンテナ10bおよび補助アンテナ20bや、接続ケーブルcを介して接続された受信アンテナ10cおよび補助アンテナ20cや、接続ケーブルdを介して接続された受信アンテナ10dおよび補助アンテナ20dについても、全く同様に当て嵌まる。
[0045] 図6には、受信アンテナ10からの電波と、補助アンテナ20からの電波とが、接続ケーブルを介して入力される様子が概念的に示されている。図示されるように、受信アンテナ10からの電波と、補助アンテナ20からの電波とは、受信強度が大きく違うので、予め適切な閾値強度を設定しておけば、受信アンテナ10からの電波と、補助アンテナ20からの電波とは、容易に区別することができる。」
「[図6]
[図:0001429499000014.jpg]
」
「[0046] そこで、S101では、携帯端末位置検出装置100に接続されている接続ケーブルa~dのそれぞれについて、所定の閾値強度よりも受信強度が小さな電波を検出することによって、受信アンテナ10a~10dで受信された電波を取得する。
[0047] また、S102では、携帯端末位置検出装置100に接続されている接続ケーブルa~eのそれぞれについて、所定の閾値強度よりも受信強度が大きな電波を検出することによって、補助アンテナ20a~20eで受信された電波を取得する。
[0048] 続いて、携帯端末位置検出装置100は、補助アンテナ20からの電波を取得したか否かを判断する(図5のS103)。S101およびS102で複数の携帯端末からの電波を取得していた場合には、それぞれの携帯端末について、補助アンテナ20からの電波が取得されているか否かを判断する。例えば、S101およびS102では、2つの携帯端末A,Bからの電波が取得されたものとする。そして、このうちの携帯端末Aについては、受信アンテナ10および補助アンテナ20からの電波が取得されているが、携帯端末Bについては、受信アンテナ10からの電波は取得されているが、補助アンテナ20からの電波は取得されていないものとする。このような場合、S103では、携帯端末Aについては「yes」と判断されるが、携帯端末Bについては「no」と判断されることになる。
[0049] その結果、補助アンテナ20からの電波を取得していなかった場合は(S103:no)、今度は、受信アンテナ10からの電波を取得したか否かを判断する(S104)。そして、受信アンテナ10からの電波も取得していなかった場合は(S104:no)、車室内に携帯端末が存在していないと考えられるので、その旨を外部に出力する(S109)。
[0050] これに対して、受信アンテナ10からの電波を取得していた場合は(S104:yes)、それぞれの受信アンテナ10a~10dで取得された電波の受信強度を、受信アンテナ10a~10dから携帯端末までの距離に変換する(S105)。前述したように,電波の受信強度は、アンテナから電波の発信源までの距離が大きくなるほど強度が小さくなるから、電波の受信強度が分かれば、発信源(ここでは携帯端末)までの距離を求めることができる。(当審注 「携帯端末までの距離に返還する」は「携帯端末までの距離に変換する」と誤記を正した。)
[0051] そして、こうして得られた各受信アンテナ10a~10dから携帯端末までの距離に基づいて、携帯端末の存在位置を算出した後(S106)、得られた携帯端末の存在位置を外部に出力する(S108)。複数の受信アンテナ10から携帯端末までの距離に基づいて、携帯端末の存在位置を算出する方法は周知であるため、ここでは説明を省略する。
[0052] 以上では、補助アンテナ20からの電波を取得していないと判断した場合に(S103:no)、受信アンテナ10で受信した電波の受信強度に基づいて、携帯端末の存在位置を算出する方法について説明した。
[0053] これに対して、補助アンテナ20からの電波を取得していた場合には(S103:yes)、電波を取得した補助アンテナ20が配置されている位置を、携帯端末の存在位置として決定する(S107)。例えば、携帯端末からの電波を取得した補助アンテナ20が補助アンテナ20aであった場合、補助アンテナ20aは運転席2aに配置されているので(図1および図2を参照)、携帯端末の存在位置は運転席2aであると決定する。また、補助アンテナ20で複数の携帯端末の電波を取得していた場合には、それぞれの携帯端末について、存在位置を決定する。
[0054] こうして携帯端末の存在位置を決定したら、決定した存在位置を外部に出力した後(S108)、処理に先頭に戻って、再び、携帯端末の存在位置を検出するか否かを判断する(S100)。
[0055] 本実施例の携帯端末位置検出装置100は、以上のような処理を繰り返すことによって車室内での携帯端末の存在位置を検出する。このため、車室内での受信アンテナ10の搭載位置を5箇所以上に増やさなくても、正確に携帯端末の存在位置を検出することができる。この理由について、図7を用いて説明する。
[0056] 図7には、車室内に2人の乗員が搭乗した様子が例示されている。2人の乗員とも携帯端末5を携帯しているが、運転席2aに座っている乗員はズボンの尻ポケットに携帯端末5aを入れており、助手席2bに座っている乗員は携帯端末5bを手に持っている。」
「[図7]
[図:0001429499000015.jpg]
」
イ 引用発明の認定
前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、実施例([図1])に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「車両1の車室内には、4箇所に受信アンテナ10が搭載され、([0012])
運転席2aの近くには受信アンテナ10aが搭載され、助手席2bの近くには受信アンテナ10bが搭載され、後部座席2cから右方向の位置には受信アンテナ10cが、後部座席2cから左方向の位置には受信アンテナ10dが搭載されており、([0012])
ここで、受信アンテナ10は、それぞれに接続ケーブルによって携帯端末位置検出装置100に接続されており、接続ケーブルは、途中の部分が、座面および背もたれ面を蛇行するように配線されて、この蛇行する部分が、補助アンテナ20aを形成し、([0014])
車室内の乗員が携帯端末5を携帯するものであり、([0056])
携帯端末位置検出装置100は、受信強度検出部101と、受信有無判断部102と、存在位置算出部103と、存在位置決定部104と、携帯端末位置出力部105とを備え、([0026])
受信強度検出部101は、接続ケーブルa~dを介して受信アンテナ10a~10dに接続されており、受信アンテナ10a~10dが携帯端末からの電波を受信すると、その電波が接続ケーブルa~dを介して伝達されて、受信アンテナ10a~10dでの電波の受信強度を検出することができ、([0028])
受信有無判断部102は、接続ケーブルa~dを介して補助アンテナ20a~20dに接続されており、補助アンテナ20a~20dが電波を受信すると受信有無判断部102に伝わり、受信有無判断部102は、補助アンテナ20a~20dが携帯端末の電波を受信したか否かを判断することが可能となっており、([0029])
受信有無判断部102には、接続ケーブルeを介して補助アンテナ20eも接続され、受信有無判断部102は、補助アンテナ20eが携帯端末の電波を受信したか否かも判断することができ、([0029])
存在位置算出部103は、受信有無判断部102から、補助アンテナ20a~20eで携帯端末の電波が受信されたか否かの判断結果を取得し、補助アンテナ20a~20eでは携帯端末の電波が受信されていなかった場合には、受信アンテナ10a~10dのそれぞれで受信された電波の受信強度に基づいて、携帯端末の存在位置を算出し、([0030])
補助アンテナ20a~20eで携帯端末の電波を受信した旨の判断結果を受信有無判断部102から受け取った場合には、存在位置算出部103では携帯端末の存在位置は算出せず、([0031])
存在位置決定部104は、補助アンテナ20a~20eで携帯端末の電波が受信されたか否かの判断結果を、受信有無判断部102から取得し、補助アンテナ20a~20eの何れかで携帯端末の電波を受信していた場合には、その受信アンテナ10a~10dが配置されている位置を、携帯端末の存在位置として決定し、([0032])
補助アンテナ20a~20eで携帯端末の電波を受信していなかった場合は、存在位置決定部104で携帯端末の存在位置を決定することはせず、([0033])
携帯端末位置出力部105は、存在位置算出部103および存在位置決定部104に接続され、存在位置算出部103が携帯端末の存在位置を算出した場合には、算出された存在位置を取得し、存在位置決定部104が携帯端末の存在位置を決定した場合には、決定された存在位置を取得して、外部に出力し、([0034])
存在位置算出部103が携帯端末の存在位置を算出しておらず、且つ、存在位置決定部104が携帯端末の存在位置を決定していない場合は、携帯端末が存在しない旨を外部に出力し、([0035])
携帯端末位置検出装置100で実行される携帯端末位置検出処理のフローチャートにおいては、([0038])
先ず初めに、車室内での携帯端末の存在位置を検出するか否かを判断し(S100)、([0039])
携帯端末の存在位置を検出すると判断した場合は(S100:yes)、受信アンテナ10a~10dで受信された携帯端末の電波を、受信アンテナ10a~10dのそれぞれから取得し(S101)、続いて、補助アンテナ20a~20eで受信された携帯端末の電波を、補助アンテナ20a~20eのそれぞれから取得し(S102)、([0041])
上記S101では、携帯端末位置検出装置100に接続されている接続ケーブルa~dのそれぞれについて、所定の閾値強度よりも受信強度が小さな電波を検出することによって、受信アンテナ10a~10dで受信された電波を取得し、([0046])
上記S102では、携帯端末位置検出装置100に接続されている接続ケーブルa~eのそれぞれについて、所定の閾値強度よりも受信強度が大きな電波を検出することによって、補助アンテナ20a~20eで受信された電波を取得し、([0047])
補助アンテナ20からの電波を取得していなかった場合は(S103:no)、今度は、受信アンテナ10からの電波を取得したか否かを判断し(S104)、受信アンテナ10からの電波も取得していなかった場合は(S104:no)、車室内に携帯端末が存在していないと考えられるので、その旨を外部に出力し(S109)、([0049])
受信アンテナ10からの電波を取得していた場合は(S104:yes)、それぞれの受信アンテナ10a~10dで取得された電波の受信強度を、受信アンテナ10a~10dから携帯端末までの距離に変換し(S105)、電波の受信強度は、アンテナから電波の発信源までの距離が大きくなるほど強度が小さくなるから、電波の受信強度が分かれば、発信源(ここでは携帯端末)までの距離を求めることができ、[0050])
得られた各受信アンテナ10a~10dから携帯端末までの距離に基づいて、携帯端末の存在位置を算出した後(S106)、得られた携帯端末の存在位置を外部に出力し(S108)、([0051])
以上のような処理を繰り返すことによって車室内での携帯端末の存在位置を検出する、([0055])
携帯端末位置検出装置100。([0055])」
(2) 引用文献2の記載事項及び周知技術の認定
ア 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献2(特開2012-172334号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「【0013】
実施の形態1.
本発明は、携帯機が車両の車室内に存在するか、或いは車室外に存在するかを判別する車載無線機の装置構成と判定手順に関するものであり、先ず、その構成について説明する。
…(中略)…
【0014】
車外用アンテナ3と車内用アンテナ6には、これらアンテナにおける受信強度を算出するための検出器9が、また、車外用アンテナ4と車内用アンテナ7には、これらアンテナにおける受信強度を算出するための検出器10が、さらに、車外用アンテナ5と車内用アンテナ8には、これらアンテナにおける受信強度を算出するための検出器11がそれぞれ接続されている。
尚、車両1の両側面ドアは運転席側のドアと助手席側のドアを示し、車両の後方ドアは車両1の形状がセダンタイプであればトランク(ラゲッジ)ドアを、ミニバンタイプ等であればハッチバックドアを示す。また、検出器9~検出器11は、それぞれ携帯機2からの無線信号の信号強度を算出する検出手段を構成している。
…(中略)…
【0029】
車外用アンテナ3の取り付け位置は、アンテナ取り付けの容易性、取り付けの耐久性、かつ車両1のデザイン性を考慮して、運転席ドアのドアノブ内に実装する。車外用アンテナ3と対をなす車内用アンテナ6の取り付け位置は、運転席ドア31の車両進行方向と平行な軸32を基準として対称となる運転席ドアの内側位置で、車外用アンテナ3と同じ高さとする。これにより、車内外の判定境界を車両ボディに沿った直線(平面)で設定することができ、車両ボディに沿って車内外位置を判定することができる。
【0030】
また、別の車内用アンテナ6の取り付け位置は、運転席ドア(金属体)による無線信号の遮蔽効果を高めるために、上記の車内用アンテナ6の取り付け位置から、使用する無線信号の波長の20%未満の範囲で、車外用アンテナ3より低い位置に取り付けてもよい。これにより、ドアのウィンドウ枠で回折して車室内に伝搬する無線信号を受信し難くする効果が得られ、より携帯機2の車室内外位置を正しく判定することができる。車内用アンテナ6を車外用アンテナ3より高い位置への取り付けは、ドアウィンドウより高い位置では運転席ドアによる遮蔽効果を得ることができないので、ドアウィンドウより低い位置とする。」
イ 引用文献2の図2から読み取れる事項
引用文献2の【図2】から、以下の事項が読み取れる。
「車外用アンテナ3が実装される高さ方向の位置は、天井部よりも床部に近い程度である。」
「【図2】
[図:0001429499000016.jpg]
」
ウ 周知技術の認定
(ア) 前記イにおいて示したように、車外用アンテナ3が実装される高さ方向の位置は、天井部よりも床部に近い程度であるから、前記アにおいて摘記した記載における、「ドア(金属体)による無線信号の遮蔽効果を高めるために」、「ドアのウィンドウ枠で回折して車室内に伝搬する無線信号を受信し難くする効果が得られ」るよう、「車外用アンテナ3より低い位置に取り付け」た「車内用アンテナ6の取り付け位置」は、当然に天井部よりも床部に近いといえる。
(イ) 前記(ア)の検討から、引用文献2の摘記事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術」という。)
<周知技術>
「ドア(金属体)による無線信号の遮蔽効果を高めるために、ドアのウィンドウ枠で回折して車室内に伝搬する無線信号を受信し難くする効果が得られるよう、車内用アンテナの取り付け位置を、天井部よりも床部に近い位置とすること。」
5 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点(制御装置)
引用発明の「携帯端末位置検出装置100」は、「携帯端末位置検出処理」に係る制御を実行することは明らかであるから制御装置であるといえるところ、「制御装置」の発明である本願発明と、上記制御を実行する「携帯端末位置検出装置100」の発明である引用発明は、「制御装置」の発明である点において一致する。
イ 構成Aの観点(制御部)
構成Aは、「制御部、を備える」ことである。
引用発明の「携帯端末位置検出装置100」は、「携帯端末位置検出処理」に係る制御を実行するところ、「携帯端末位置検出装置100」が制御部を備えることは明らかであるから、本願発明と引用発明は、「制御部、を備える」点で一致する。
ウ 構成A1の観点(測距値の取得)
(ア) 構成A1は、「制御部」が、「移動体によって区画された空間である前記移動体の室内であって、当該室内の天井部より床部に近い位置に固定された位置固定型通信装置と、前記室内に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置と、が無線通信を行うことで得られた、前記位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す測距値を取得」することである。
(イ) 引用発明において、「受信アンテナ10」は「携帯端末からの電波を受信する」ものであるから、「受信アンテナ10」と「携帯端末」は無線通信を行っているところ、「受信アンテナ10」と「携帯端末」はいずれも通信装置である。
(ウ) また、引用発明において、「受信アンテナ10」は、「車両1の車室内に」「搭載され」るものであり、車内に位置固定されていることは明らかであり、「携帯端末」は、「車室内の乗員が」「携帯するものであ」るため、移動することが前提である以上、位置を変化させることができるものであることは明らかである。
(エ) 前記(イ)、(ウ)から、引用発明における「車両1の車室内に」「搭載され」るものである「受信アンテナ10」は、本願発明の「移動体によって区画された空間である前記移動体の室内であって、当該室内」「に固定された位置固定型通信装置」に相当し、引用発明における「車室内の乗員が」「携帯するものであ」る「携帯端末」は、本願発明の「室内に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置」に相当する。
(オ) 引用発明の「携帯端末位置検出装置100」は、「受信アンテナ10a~10dで受信された電波を取得」するよう制御されるものであり、ここで、「電波の受信強度は、アンテナから電波の発信源までの距離が大きくなるほど強度が小さくなるから、電波の受信強度が分かれば、発信源(ここでは携帯端末)までの距離を求めることができ」るものであるところ、「携帯端末位置検出装置100」が「電波」の「受信強度」を「取得」し、「発信源までの距離を求め」ることは、本願発明の「距離を示す測距値を取得」することに相当する。
(カ) 前記(イ)で検討したとおり、「受信アンテナ10」(「位置固定型通信装置」に相当)と「携帯端末」(「位置可変型通信装置」に相当)は無線通信を行うものであり、それにより前記(オ)で検討したとおり、「携帯端末位置検出装置100」が「電波」の「受信強度」を「取得」し、「発信源までの距離を求め」るから、本願発明と引用発明は「制御部」が「移動体によって区画された空間である前記移動体の室内」「に固定された位置固定型通信装置と、前記室内に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置と、が無線通信を行うことで得られた、前記位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す測距値を取得」する点で一致する。
(キ) 他方、引用発明において、「受信アンテナ10」(「位置固定型通信装置」に相当)の車室内における高さ方向の具体的な位置は不明である。
(ク) 前記(イ)~(キ)から、本願発明と引用発明の、構成A1の観点における一致点及び相違点は、それぞれa及びbに示すとおりである。
a 構成A1の観点における一致点
「制御部」が、「移動体によって区画された空間である前記移動体の室内に固定された位置固定型通信装置と、前記室内に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置と、が無線通信を行うことで得られた、前記位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す測距値を取得」する点。
b 構成A1の観点における相違点(以下「相違点1」という。)
<相違点1>
「位置固定型通信装置」が固定される位置について、
本願発明においては、「室内の天井部より床部に近い位置」であるのに対して、
引用発明においては、車室内における高さ方向の具体的な位置が不明である点。
エ 構成A2の観点(室内に位置するか否かの推定)
(ア) 構成A2は、「制御部」が、「前記位置可変型通信装置が前記室内に位置するか否かを、前記測距値に基づいて推定する」ことである。
(イ) 引用発明の「携帯端末位置検出装置100」は、「受信アンテナ10からの電波を取得していた場合」、「取得された電波の受信強度を、受信アンテナ10a~10dから携帯端末までの距離に変換し」、「車室内での携帯端末の存在位置を検出する」よう制御されるから、「携帯端末位置検出装置100」の制御部は、「携帯端末」(「位置可変型通信装置」に相当)の「車室内」の「存在位置」を、「受信強度」から得られた「携帯端末までの距離」(「測距値」に相当)に基づいて「検出」している。
(ウ) 前記(イ)から、本願発明と引用発明は、「制御部」が「前記位置可変型通信装置が前記室内に位置する」こと「を、前記測距値に基づいて推定する」点で一致する。
(エ) 引用発明の「携帯端末位置検出装置100」は、「補助アンテナ20からの電波を取得していなかった場合」であって、「受信アンテナ10からの電波も取得していなかった場合」、「車室内に携帯端末が存在していない」「旨を外部に出力」するよう制御されるから、本願発明と引用発明は、「制御部」が「前記位置可変型通信装置が前記室内に位置」しないことを、「推定する」点で一致する。
(オ) 他方、引用発明においては、「車室内に携帯端末が存在していない」ことの推定が、「受信強度」から得られた「携帯端末までの距離」(「測距値」に相当)に基づいたものであるのか不明である。
(カ) 前記(イ)~(オ)から、本願発明と引用発明の、構成A2の観点における一致点及び相違点は、それぞれa及びbに示すとおりである。
a 構成A2の観点における一致点
「制御部」が、「前記位置可変型通信装置が前記室内に位置することを、前記測距値に基づいて推定」し、「前記位置可変型通信装置が前記室内に位置しないことを、推定する」点。
b 構成A2の観点における相違点(以下「相違点2」という。)
<相違点2>
「位置可変型通信装置が」「室内に位置」しないことを、
本願発明においては、「測距値に基づいて推定」しているのに対して、
引用発明においては、「受信強度」から得られた「携帯端末までの距離」に基づいて推定しているか不明である点。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、後記イに示す相違点において相違すると認められる。
ア 一致点
「移動体によって区画された空間である前記移動体の室内に固定された位置固定型通信装置と、前記室内に対する相対的な位置が可変な位置可変型通信装置と、が無線通信を行うことで得られた、前記位置固定型通信装置と前記位置可変型通信装置との間の距離を示す測距値を取得し、
前記位置可変型通信装置が前記室内に位置することを、前記測距値に基づいて推定し、前記位置可変型通信装置が前記室内に位置しないことを、推定する、制御部、を備える
制御装置」である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1
「位置固定型通信装置」が固定される位置について、
本願発明においては、「室内の天井部より床部に近い位置」であるのに対して、
引用発明においては、車室内における高さ方向の具体的な位置が不明である点。
(イ) 相違点2
「位置可変型通信装置が」「室内に位置」しないことを、
本願発明においては、「測距値に基づいて推定」しているのに対して、
引用発明においては、「受信強度」から得られた「携帯端末までの距離」に基づいて推定しているか不明である点。
6 判断
(1) 相違点1について
ア 引用発明における「受信アンテナ10」は、「車室内での携帯端末の存在位置を検出する」ためのものであるから、検出精度向上のために、車外から車室内に伝搬する信号を受信アンテナ10が受信しないようにすることは、自明な課題である。
イ 前記第3の4(2)ウにおいて周知技術と認定したとおり、次の技術事項は、本願の出願前に当業者にとって周知の技術であった。
「ドア(金属体)による無線信号の遮蔽効果を高めるために、ドアのウィンドウ枠で回折して車室内に伝搬する無線信号を受信し難くする効果が得られるよう、車内用アンテナの取り付け位置を、天井部よりも床部に近い位置とすること。」
ウ 前記アの自明な課題を解決するために、引用発明における「受信アンテナ10」の取り付け位置をどのようにすべきかについては、当業者が当然配慮すべき設計事項であり、前記イの周知技術に基づいて、天井部よりも床部に近い位置とすることにより、前記相違点1に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとって容易である。
(2) 相違点2について
ア 引用発明において、「受信アンテナ10からの電波を取得していた場合は(S104:yes)、それぞれの受信アンテナ10a~10dで取得された電波の受信強度を、受信アンテナ10a~10dから携帯端末までの距離に変換する(S105)」ところ、「電波の受信強度は、アンテナから電波の発信源までの距離が大きくなるほど強度が小さくなるから」、「受信強度」が0(ゼロ)近傍の極めて小さいときは、「アンテナから電波の発信源までの距離」が相当程度大きくなっており、「車室内に携帯端末が存在していない」ことが推定される。
イ そうすると、引用発明の「S105」の後の処理として、「S106」の処理とは別の処理として、「受信アンテナ10a~10dから携帯端末までの距離に変換」した結果、「アンテナから電波の発信源までの距離」が相当程度大きい値を示した場合に、「車室内に携帯端末が存在していない」と推定する処理を設けることは、当業者が適宜なし得た設計変更にすぎない。
ウ この場合、「車室内に携帯端末が存在していない」(ここで、携帯端末は「位置可変型通信装置」に相当)ことを、「受信強度」から得られた「携帯端末までの距離」(「測距値」に相当)に基づいて推定しているといえるから、前記相違点2に係る「位置可変型通信装置が」「室内に位置」しないことを、「測距値に基づいて推定」するという構成が導出されることになる。
(3) 総合評価
前記(1)、(2)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点1、2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1、2を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 請求人の主張について
ア 請求人の主張内容
請求人は審判請求書において、下記(ア)~(ウ)の主張をする。
(ア) 引用文献1では、複数の各受信アンテナ10は車室内を広く検出できる位置(天井近くと解される)に配置されることが想定される。
(イ) 本件補正後の発明は、「車両に設けられる、窓およびドアを有する車室内であって、当該車室内に設けられる座席の座面の高さより下である床部に近い位置または床部」に、位置固定型通信装置が固定されている構成を有し、かかる構成は、引用文献等には記載も示唆もない。
(ウ) 本件補正後の発明は、「一の位置固定型通信装置」が無線通信において得た測距値と信号到来角度に基づいて、位置可変型通信装置が車室内外のいずれに位置するかを推定することを特徴としている。
イ 請求人の主張についての検討
(ア) 前記ア(ア)の主張について、前記(1)で示したとおり、引用発明に周知技術を適用して受信アンテナ10を天井部よりも床部に近い位置とすることは、当業者にとって容易である。
(イ) 前記ア(イ)、(ウ)の主張は、本件補正により補正された構成に基づく主張であるところ、本件補正は、前記第2に示したとおり却下されたので、当該主張は、本願発明に係る請求項の記載に基づくものではない。
(ウ) 前記(ア)、(イ)から、請求人の主張は前記(3)の結論を左右するものではない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-004053