特許拒絶査定不服審判
2024-003342
電子機器及び電流検出器
- 審判番号
- 2024-003342
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-016876
- 請求日
- 2024年02月27日
- 審決日
- 2025年05月15日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社タムラ製作所
- 【請求人代理人】山崎 崇裕
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 柳 重幸
- 審判官 谷垣 圭二
- 分類
- P18 .561-Z (G01R) / P18 .55 -Z (G01R) / P18 .575-Z (G01R) / P18 .113-Z (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項、特許法第50条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 16876「電子機器及び電流検出器」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 4月 1日出願公開、特開2022- 51841〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年7月1日に出願した特願2019-123209号の一部を令和4年2月7日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 2月 7日 :上申書の提出
令和5年 6月16日付け:拒絶理由通知書
(特許法50条の2の通知を伴う。)
同年 8月18日 :手続補正書の提出
同年11月17日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月28日 :原査定の謄本の送達)
令和6年 2月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年2月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年2月27日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和6年2月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、この補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年8月18日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
なお、請求人は令和6年2月27日に提出した手続補正書において、特許請求の範囲の記載に下線を付しているところ、下線が付された箇所が一部不適切であるため(最初に現れる「特定の前記構成部品」でなく、2番目の「特定の前記構成部品」に下線を引いている。)、当審において下線を付す箇所を正している。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
複数の構成部品を内部に収容する筐体と、
前記筐体内での収容状態で、特定の前記構成部品を他の前記構成部品との干渉が生じない位置関係が保持される規定位置に位置決めする位置決め手段と、
前記筐体内への収容に際して、特定の前記構成部品の収容方向において他の前記構成部品との干渉を生じない正規経路を通じてのみ、特定の前記構成部品が外部から前記筐体内で前記規定位置に収容されることを許容する経路規制手段と
を備えた電子機器。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
複数の構成部品を内部に収容する筐体と、
前記筐体内での収容状態で、特定の前記構成部品及び前記筐体にそれぞれ設けられた位置決め用の部位が相互の位置関係を保持することで前記特定の前記構成部品を他の前記構成部品との干渉が生じない位置関係が保持される規定位置に位置決めする位置決め手段と、
前記筐体内への収容に際して、特定の前記構成部品が収容方向において前記規定位置に正対しない場合は前記位置決め用の部位が相互に正対することなく特定の前記構成部品の収容を阻止する一方、特定の前記構成部品が収容方向において前記規定位置に正対する場合は前記位置決め用の部位が相互に正対して特定の前記構成部品の収容を許容することで、他の前記構成部品との干渉を生じない正規経路を通じてのみ、特定の前記構成部品が外部から前記筐体内で前記規定位置に収容されることを許容する経路規制手段と
を備えた電子機器。」
2 新規事項について
(1) 新規事項についての当審の判断の概要
本件補正後の請求項1の記載は、以下の発明特定事項(以下「発明特定事項A」という。)を含み、「位置決め用の部位」が「特定の前記構成部品」及び「筐体」にそれぞれ設けられたことを特定しているが、後記(2)以下において詳細に検討するとおり、「位置決め用の部位」は「回路基板」及び「筐体」にそれぞれ設けられたものしか記載されておらず、発明特定事項Aを含む本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、発明特定事項Aを追加する本件補正はいわゆる新規事項を追加するものであるから、本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反するものである。
<発明特定事項A>
「前記筐体内での収容状態で、特定の前記構成部品及び前記筐体にそれぞれ設けられた位置決め用の部位が相互の位置関係を保持することで前記特定の前記構成部品を他の前記構成部品との干渉が生じない位置関係が保持される規定位置に位置決めする位置決め手段」
(2) 請求人が示した補正の根拠
請求人は審判請求書において、発明特定事項Aを追加する補正の根拠として、【0023】、【0061】~【0065】、【0069】~【0078】、図3、図17~19等に基づくものであると説明している。
(3) 当初明細書等の記載
願書に最初に添付した明細書(以下、単に「明細書」という。)には、次の記載がある。
「【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-68490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、先行技術の構造では、磁気センサをギャップ内に正しく配置して回路基板を筐体に収容するまでには、複雑な手順を必要とするため、作業性が悪いという問題がある。また、回路基板を筐体に収容するまでの間に、コイルのような配置的にギャップとは全く無関係な部品を一旦ギャップ内に仮で配置させたり、回路基板を筐体内の取り付け位置とは無関係な方向に回転させたりしなければならないため、途中でコイルや磁気センサが他の部品に干渉し、何らかのダメージを受けやすいという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、構成部品を損傷することなく容易に筐体に収容させる技術を提供するものである。」
「【0023】
〔回路基板〕
回路基板110もまた、ケース体102の一端面開口や磁性体コア104の一側面に合わせた形状をなしているが、環状にはつながっておらず、孔空き矩形状を半割にしたようなコ字形状の実装面を有している。一方の実装面には磁気検出素子として2つのホール素子112がスルーホール実装されており、また、他方の実装面にはコネクタ114がスルーホール実装されている。電流センサ100の組み立て状態では、回路基板110は位置決めスペーサ108の一側面に宛がうようにしてケース体102に収容される。この収容状態で、2つのホール素子112は位置決めスペーサ108の開口108aを通じて磁性体コア104のギャップ104c内に配置されるものとなっている。回路基板110には、ホール素子112の磁気検出信号を用いて被検出電流を検出するための回路が形成されている。このため、回路基板110の各実装面には図示しない各種の電子部品(チップ部品、IC等)が実装されており、また、各実装面及び内層には、各種の配線パターンやビアホールが形成されている。なお、回路基板110は環状に形成されていてもよい。」
「【図3】
[図:0001425320000001.jpg]
」
「【0024】
〔内部構造〕
次に、ケース体102の内部構造について説明する。
図4は、ケース体102の内部構造を示した斜視図である。視認の便宜のため、図4中(A)と(B)とでケース体102を斜視する方向を異ならせている。なお、以下の説明では便宜上、電流センサ100の使用形態(図1の立姿勢)におけるケース体102の一端面開口側からみた矩形の長寸方向を長手方向(横方向)、短寸方向を短手方向(縦方向)とする。」
「【図3】
[図:0001425320000002.jpg]
」
「【0025】
上記のようにケース体102は、中央に貫通孔102aが形成されているため、その周囲を矩形状の内周壁(参照符号なし)により囲っている。そして、内周壁から間隔を空けて収容空間を矩形状の外周壁(参照符号なし)により囲っており、この外周壁の内面及び内周壁の外面(ケース体102にとっての内側)に多数のリブ類が形成されている。なお、多数のリブ類はいずれも、ケース体102の他端側面から一端面開口に向けて筋状に延びている。
【0026】
具体的には、先ず長手方向でみた中央位置には、短手方向で対をなす2条のギャップ位置リブ102b,102cがそれぞれ形成されている。このうち短手方向で対向する外周壁の各内面に2条ずつギャップ位置リブ102bが形成されており、対向する内周壁の各外面には2条ずつギャップ位置リブ102cが形成されている。なお、内周壁の各外面には、ギャップ位置リブ102cの間に溝(参照符号なし)が形成されている。
【0027】
次に、ギャップ位置リブ102bから長手方向の両側にそれぞれある程度の間隔を空けた位置には、短手方向で一対をなす中間リブ102eが外周壁の内面に形成されている。また、長手方向で中間リブ102eの両側に間隔を空けた位置には、短手方向で一対をなす案内リブ102dが形成されるとともに、さらにその両側に間隔を空けた位置にも短手方向で一対をなす案内リブ102dが形成されている。なお、中間リブ102e及び案内リブ102dは、外周壁の内面のみに形成されている。
【0028】
以上は、長手方向に延びる内面に形成されたリブ類について説明したものであるが、短手方向に延びる内面にもリブ類が形成されている。具体的には、長手方向で対向する外周壁の各内面には、2対をなす補助リブ102fが2条ずつ形成されている。これら補助リブ102fは、短手方向の中央位置から間隔を空けて対称に配置されている。」
「【0061】
〔回路基板の位置決め〕
図17は、回路基板110を含む電流センサ100の正面図である。回路基板110の位置決めには、ケース体102のギャップ位置リブ102b及び補助リブ102fが用いられている。このため回路基板110には、外縁部の2箇所に切欠部110aが形成されている他、1箇所に切欠部110cが形成されており、各切欠部110aの位置は、回路基板110の配置状態においてギャップ位置リブ102bの位置に対応しており、切欠部110cの位置は、補助リブ102fの位置に対応している。なお、この他にも回路基板110の外縁部には、切欠部110bが形成されている。
【0062】
具体的には、ギャップ位置リブ102bは、各ギャップ104cに対応して2条ずつ、長手方向に並べて配置されている。これに対応する切欠部110aは、2条のギャップ位置リブ102bの配列全体を受け入れ可能な大きさを有している。また、補助リブ102fは、長手方向で両側2対をなして設けられているが、切欠部110cに対応するものはこのうち1箇所である。切欠部110cもまた、対応する1つの補助リブ102fを受け入れ可能な大きさを有している。このため、回路基板110がケース体102に収容された状態では、2箇所ある切欠部110aがそれぞれギャップ位置リブ102bの配列全体を受け入れた状態となるとともに、1箇所の切欠部110cが1つの補助リブ102fを受け入れた状態となることで、回路基板110が正規(規定位置)に位置決めされる。これにより、ホール素子112をコア部材104a,104bやギャップ間スペーサ106等に干渉させることなく、ギャップ104c内の正規の位置に位置決めすることができる(位置決め手段)。なお、補助リブ102f及び切欠部110cは省略してもよい。
【0063】
〔配置自由度〕
回路基板110は、図17に示す第1配置とは異なる第2配置に変更することができる。具体的には、回路基板110を第1配置から貫通孔102aの周方向に180°回転させると第2配置となる(図示していない)。第1配置では、コネクタ114が図17に示す正面視で右下隅に位置しているが、第2配置では、コネクタ114が左上隅に位置することになる。これにより、実際の電流センサ100の使用環境に応じてコネクタ114への接続(配線取り回し)に便宜となる位置を選択することが可能になる。」
「【図17】
[図:0001425320000003.jpg]
」
「【0064】
また、第2配置においても、上記のように2箇所ある切欠部110aがそれぞれギャップ位置リブ102bの配列全体を受け入れた状態で、回路基板110を正規に位置決めすることができる。
【0065】
上記のように、回路基板110のケース体102への収容状態(取り付け状態)においては、回路基板110が正規に位置決めされることにより、2つのホール素子112がいずれも対応するギャップ104c内へ適切に配置されている。このようにしてホール素子112を含む回路基板110を正規に位置決めできることについては、上記のようにコア部材104a,104bの位置決めが正しくなされていることも寄与している。」
「【0069】
そこで本実施形態では、ケース体102の一端面開口に対して回路基板110が正規の取り付け位置に正対している場合にのみ、回路基板110の取り付け(規定位置への収容)を許容する構造を設けている。以下、この点について説明する。
【0070】〔収容の規制態様(1)〕
図18は、電流センサ100の組み立て過程における回路基板110を取り付け途中の状態で示した図(図17中XVIII-XVIII線に沿う断面図)である。」
「【図18】
[図:0001425320000004.jpg]
」
「【0071】
ケース体102への収容前、つまり、取り付け途中にある回路基板110は、当然に未だ正規の位置には配置されておらず、また、正規の取り付け位置に必ず正対していることも保証されていない。図示の例では、回路基板110が全体的に本来の取り付け位置から図中の矢印A1方向(短手方向)にずれているため、ホール素子112の中心が開口108aの中心よりも矢印A1方向に偏っている。
【0072】
本実施形態では、例えば図18に示すように、回路基板110が正規の取り付け位置に正対していないまま回路基板110をケース体102に収容しようとしても、回路基板110(実装面)がケース体102の一端開口縁に接触してその収容が阻まれる。加えて、回路基板110がケース体102の開口縁に接触したとしても、ここではホール素子112の実装高さHTに比較して、ケース体102の開口縁から位置決めスペーサ108の外面までの深さDPが大きく設定されているため、ホール素子112が他の構成部品と干渉することはない。
【0073】
〔収容許容時(1)〕
なお、図示していないが、図18に示す状態から回路基板110を正しくケース体102に収容するとすれば、作業者や作業機械は回路基板110を正規の取り付け位置と正対する状態に修正する必要がある。その上で、ホール素子112が位置決めスペーサ108やコア部材104a,104bの外面と干渉しない経路を通じてのみ、回路基板110をケース体102内に収容することが許容されることになる。
【0074】
〔収容の規制態様(2)〕
図19は、図18とは異なる方向から電流センサ100の組み立て過程における回路基板110を取り付け途中の状態で示した図(図17中XIX-XIX線に沿う断面図)である。」
「【図19】
[図:0001425320000005.jpg]
」
「【0075】
〔収容規制時〕
図19中(A):例えば、回路基板110が正規の取り付け位置に正対しておらず、ケース体102の長手方向(図中矢印A2方向)に位置がずれたまま回路基板110をケース体102に収容しようとしても、やはり回路基板110(実装面)がケース体102の一端開口縁に接触してその収容が阻まれる。また同様に、回路基板110がケース体102の開口縁に接触したとしても、やはりホール素子112の実装高さHTに比較して、ケース体102の開口縁から位置決めスペーサ108の外面までの深さDPが大きく設定されているため、ホール素子112が他の構成部品と干渉することはない。
【0076】
〔収容許容時(2)〕
図19中(B):その後、作業者や作業機械が回路基板110を正規の取り付け位置と正対させると、その状態から取り付け位置に向かう正規の経路を通じてのみ、回路基板110をケース体102に収容することが許容される。このような正規経路を通じてのみ、回路基板110の収容(取り付け作業)を許容することにより、ホール素子112が位置決めスペーサ108やコア部材104a,104bの外面と干渉してダメージを受けることを確実に防止することができる。
【0077】
なお、上記の例は、回路基板110がいずれか一方向(矢印A1,A2)に偏っていた場合についてであるが、両方向へ複合的に偏っていた場合も同様に、そのような状態から回路基板110をケース体102に収容することは規制される。
【0078】
いずれにしても、本実施形態では、電流センサ100の組み立て過程において回路基板110のケース体102への収容は、ホール素子112とその他の構成部品との干渉が生じない正規の経路を通じてのみ、許容されている。これにより、組み立て過程でホール素子112がダメージを受けることがなく、完成後の電流センサ100の品質を保持することができる。」
(4) 新規事項の追加の有無の判断
ア 当初明細書の段落【0062】の「ホール素子112をコア部材104a,104bやギャップ間スペーサ106等に干渉させることなく」との記載等から、「発明特定事項A」における「特定の前記構成部品を他の前記構成部品との干渉が生じない」との記載中の「特定の前記構成部品」には、発明の詳細な説明における「ホール素子112」が相当する。
イ 当初明細書の段落【0062】の次の記載等から、「回路基板110」に設けられた「切欠部110a」及び「切欠部110c」、並びに、「ケース体102」に設けられた「ギャップ位置リブ102b」及び「補助リブ102f」が「位置決め手段」に相当する。
「回路基板110がケース体102に収容された状態では、2箇所ある切欠部110aがそれぞれギャップ位置リブ102bの配列全体を受け入れた状態となるとともに、1箇所の切欠部110cが1つの補助リブ102fを受け入れた状態となることで、回路基板110が正規(規定位置)に位置決めされる。これにより、ホール素子112をコア部材104a,104bやギャップ間スペーサ106等に干渉させることなく、ギャップ104c内の正規の位置に位置決めすることができる(位置決め手段)。」
ウ そして、当初明細書等には、「位置決め手段」である「切欠部」や「リブ」を「特定の前記構成部品」である「ホール素子」自体に設けることは記載されておらず、当初明細書等に記載されているに同然であるとの事情もうかがえない。
エ したがって、他の構成部品との干渉が生じない規定位置に位置決めされる特定の構成部品自体に位置決め用の部位を設ける前記発明特定事項Aを追加する本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内において補正するものとは認められない。
(5) 新規事項についてのまとめ
以上検討のとおり、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法17条の2第3項の規定に違反しているから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
3 本件補正の内容を善解した検討~独立特許要件の判断
(1) 本件補正の内容の善解と検討結果の概要
ア 発明特定事項Aの内容の善解
(ア) 前記2において検討したように、本件補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
(イ) ここで当合議体は、本件補正の発明特定事項Aにおける次のaに示す記載において最初に現れる「特定の前記構成部品」をbに示すとおり「回路基板」の誤記であると善解して、進んで検討する。
a 現在の記載
「前記筐体内での収容状態で、特定の前記構成部品及び前記筐体にそれぞれ設けられた位置決め用の部位が相互の位置関係を保持することで前記特定の前記構成部品を他の前記構成部品との干渉が生じない位置関係が保持される規定位置に位置決めする位置決め手段」
b 善解した内容
「前記筐体内での収容状態で、回路基板及び前記筐体にそれぞれ設けられた位置決め用の部位が相互の位置関係を保持することで前記特定の前記構成部品を他の前記構成部品との干渉が生じない位置関係が保持される規定位置に位置決めする位置決め手段」の誤記であると善解して検討する。
イ 本件補正の内容を善解した場合の検討結果の概要
(ア) 前記アのとおり発明特定事項Aの内容を善解したとしても、次の(2)以下において詳細に検討するとおり、本件補正は特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合することが必要であるところ、本件補正後における請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(イ) よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものであるとの結論に変わりはない。
(2) 本件補正の目的
ア 本件補正のうち請求項1についてする補正は、(ア)「位置決め手段」を、「回路基板及び前記筐体にそれぞれ設けられた位置決め用の部位が相互の位置関係を保持すること」により行うものに限定するとともに、(イ)「経路規制手段」が「前記筐体内への収容に際して、特定の前記構成部品の収容方向において他の前記構成部品との干渉を生じない正規経路を通じてのみ、特定の前記構成部品が外部から前記筐体内で前記規定位置に収容されることを許容する」態様を、「前記規定位置に正対しない場合は前記位置決め用の部位が相互に正対することなく特定の前記構成部品の収容を阻止する一方、特定の前記構成部品が収容方向において前記規定位置に正対する場合は前記位置決め用の部位が相互に正対して特定の前記構成部品の収容を許容することで」行うことに限定するものである。
イ そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
ウ よって、本件補正のうち請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(3) 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項において、最初に現れる「特定の前記構成部品」を「回路基板」に正したものにより特定されるものであるところ、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Cまでに分説する。なお、分説するにあたり、適宜改行の位置を変更して表記した。また、参考図として、本願の【図2】及び【図3】に部材名を記入したものを掲載する。
<本件補正発明の分説>
(構成A) 複数の構成部品を内部に収容する筐体と、
(構成B) 前記筐体内での収容状態で、回路基板及び前記筐体にそれぞれ設けられた位置決め用の部位が相互の位置関係を保持することで前記特定の前記構成部品を他の前記構成部品との干渉が生じない位置関係が保持される規定位置に位置決めする位置決め手段と、
(構成C) 前記筐体内への収容に際して、特定の前記構成部品が収容方向において前記規定位置に正対しない場合は前記位置決め用の部位が相互に正対することなく特定の前記構成部品の収容を阻止する一方、特定の前記構成部品が収容方向において前記規定位置に正対する場合は前記位置決め用の部位が相互に正対して特定の前記構成部品の収容を許容することで、他の前記構成部品との干渉を生じない正規経路を通じてのみ、特定の前記構成部品が外部から前記筐体内で前記規定位置に収容されることを許容する経路規制手段とを備えた
(構成X) 電子機器。
<参考図(【図2】)>
[図:0001425320000006.jpg]
<参考図(【図3】)>
[図:0001425320000007.jpg]
(4) 引用文献2に記載された事項及び引用発明の認定
ア 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献であって、本願の出願前に発行された文献である特開2013-19795号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。なお、当合議体により、後記ウの引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体コアと磁電変換素子とを備える電流検出装置に関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0023】
以下、図1~図7を参照しつつ、本発明の実施形態に係る電流検出装置1の構成について説明する。電流検出装置1は、電気自動車又はハイブリッド自動車などの車両において、バッテリとモータなどの機器とを電気的に接続するバスバーに流れる電流を検出する装置である。図1に示されるように、電流検出装置1は、磁性体コア10、2つのホール素子20、電流検出用バスバー30、絶縁筐体40及び電子基板50を備える。」
「【図1】
[図:0001425320000008.jpg]
【図1】本発明の実施形態に係る電流検出装置1の分解斜視図である。」
「【0024】
<磁性体コア>
磁性体コア10は、フェライト又はケイ素鋼などからなる磁性体であり、両端が数ミリメートル程度のギャップ部12を介して対向し、中空部11の周囲を囲んで一連に形成された形状を有している。即ち、磁性体コア10は、狭いギャップ部12と併せて環状に形成されている。本実施形態における磁性体コア10は、ギャップ部12と併せて円形状の中空部11を囲む円環状に形成されている。
【0025】
<ホール素子(磁電変換素子)>
ホール素子20は、磁性体コア10のギャップ部12に配置され、磁性体コア10の中空部11を通過する電流に応じて変化する磁束を検出し、磁束の検出信号を電気信号として出力する磁電変換素子の一例である。電流検出装置1は、磁性体コア10のギャップ部12に配置される2つのホール素子20を備える。」
「【0030】
<電子基板>
電子基板50は、2つのホール素子20がそれらのリード線22の部分において実装されたプリント回路基板である。また、電子基板50には、2つのホール素子20の他、2つのホール素子20から出力される磁束の検出信号に対して増幅などの処理を施す回路とコネクタ51とが実装されている。」
「【0040】
<絶縁筐体>
絶縁筐体40は、磁性体コア10と電流検出用バスバー30と2つのホール素子20と電子基板50とを一定の位置関係で保持しつつ支持する絶縁性の部材である。絶縁筐体40は、磁性体コア10の両側から組み合わされる本体ケース41及び本体ケース41に取り付けられる蓋部材42の2つの部材を含む。本体ケース41及び蓋部材42の各々は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)又はABS樹脂などの絶縁性の樹脂からなる一体成形部材である。【0041】
本体ケース41は、開口部を有する箱状に形成され、蓋部材42は、本体ケース41に取り付けられることによって本体ケース41の開口部を塞ぐ。また、本体ケース41及び蓋部材42には、電流検出用バスバー30の両端子部32が内側から外側へ挿入される貫通孔であるバスバー孔45が形成されている。電流検出用バスバー30における一方の端子部32は本体ケース41のバスバー孔45に通され、他方の端子部32は蓋部材42のバスバー孔45に通される。
【0042】
また、蓋部材42は、磁性体コア10、ホール素子20及び電流検出用バスバー30を保持する本体ケース41に対し、磁性体コア10と、ホール素子20と、コネクタ51を含む電子基板50とを挟み込みつつ、本体ケース41の開口部を塞ぐように取り付けられる。その際、電流検出用バスバー30における他方の端子部32が、蓋部材42のバスバー孔45に対して内側から外側へ通され、電子基板50が本体ケース41と蓋部材42との間に挟み込まれて保持される。
【0043】
図5は、本体ケース41及び蓋部材42が組み合わされた状態における電流検出装置1の平面図である。図5に示されるように、本体ケース41及び蓋部材42(絶縁筐体40)は、電流検出用バスバー30における端子部32と、電子基板50のコネクタ51とが外部に露出する状態で、磁性体コア10と、2つのホール素子20と、電流検出用バスバー30の貫通部31とを覆いつつ、それらを一定の位置関係で支持する。」
「【図5】
[図:0001425320000009.jpg]
【図5】電流検出装置1の平面図である。」
「【0044】
より具体的には、電流通過方向(X軸方向)に直交する平面(Y-Z平面)に沿う方向における磁性体コア10及びホール素子20の絶縁筐体40内での位置は、コア支持部43及び素子支持部44によって保持される。なお、図4及び図5において、コア支持部43及び素子支持部44の部分には網点模様が記されている。
【0045】
さらに、磁性体コア10は、本体ケース41及び蓋部材42の間に挟み込まれることによって、電流通過方向(X軸方向)における位置が保持される。同様に、電子基板50に固着されたホール素子20は、電子基板50が本体ケース41及び蓋部材42の間に挟み込まれることによって、電流通過方向(X軸方向)における位置が保持される。
【0046】
また、図1、図4及び図6に示されるように、本体ケース41の側壁の内側面には、基板支持部49が突出して形成されている。この基板支持部49は、電子基板50に形成された欠け部52に嵌り込み、電子基板50を予め定められた位置で支持する。」
「【図4】
[図:0001425320000010.jpg]
【図4】電流検出装置1が備える筐体における本体ケースの正面図である。」
「【図6】
[図:0001425320000011.jpg]
【図6】電流検出装置1の電流通過方向から見た断面図である。」
「【0048】
<磁性体コア、ホール素子及び電流検出用バスバーの支持の構造>
以下、図1、図4、図6及び図7を参照しつつ、本体ケース41による磁性体コア10、ホール素子20及び電流検出用バスバー30の支持の構造について説明する。なお、図6は、図4に示される平面図におけるA-A平面での断面の図である。また、図7は、図5に示される平面図におけるB-B平面での断面の図である。」(当審注 「図7は、図4に示される平面図におけるB-B平面での断面の図である。」は「図7は、図5に示される平面図におけるB-B平面での断面の図である。」と誤記を正した。)
「【図7】
[図:0001425320000012.jpg]
【図7】電流検出装置1を右側面から見た断面図である。」
「【0049】
図1及び図4に示されるように、絶縁筐体40を構成する2つの部材の一方である本体ケース41の内側の面には、電流通過方向(X軸方向)において突出するコア支持部43及び素子支持部44が形成されている。」
「【0056】
以上に示した構造を備えた電流検出装置1において、磁性体コア10及びコア支持部43は、車両などの振動を受ける環境において衝突を繰り返すという現象が生じず、振動による摩耗が生じにくい。その結果、電流検出装置1は、磁性体コア10とそれを支持する部分とに隙間が形成される従来の電流検出装置よりも耐久性が高い。
【0057】
また、コア支持部43の内側面に樹脂製の突起部431が存在することにより、電流検出用バスバー30、コア支持部43及び磁性体コア10の各々の寸法公差が、突起部431の塑性変形の程度によって吸収される。そのため、寸法公差によって磁性体コア10と電流検出用バスバー30との間の隙間にコア支持部43を挿入できなくなる事態を回避できる。
【0058】
一方、素子支持部44は、磁性体コア10のギャップ部12の位置において、6つの側面のうちの第2側面212が相互に接する状態で重ねられた2つのホール素子20が嵌め入れられる空間の周囲を取り囲んで一連に形成されている。即ち、素子支持部44は、磁性体コア10のギャップ部12に配置された2つのホール素子20の周囲を取り囲んで一連に形成されている。
【0059】
より具体的には、素子支持部44は、第2側面212が相互に接する状態で重ねられた2つのホール素子20各々における第2側面212以外の全ての側面、即ち、第1側面211、第3側面213、第4側面214、第5側面215及び第6側面216の各々に接して2つのホール素子20を支持する。即ち、素子支持部44の内側面は、第2側面212が相互に接する状態で重ねられた2つのホール素子20全体の側面に沿って形成されている。
【0060】
図3に示されるように、2つのホール素子20の本体部21は、第2側面212が相互に接する状態で重ねられた場合、2つの本体部21全体の輪郭形状は、第2側面212の両側の部分においてくびれた形状となる。従って、素子支持部44の内側面には、2つのホール素子20が形成するくびれの部分に嵌り込む三角柱状の一対の突起部441が形成されている。一対の突起部441は、素子支持部44の内側面から内側へ突起して形成され、2つのホール素子20の本体部21における第5側面215及び第6側面216に接する。
【0061】
素子支持部44は、その内側の空間に、第2側面212が相互に接する状態で重ねられた2つのホール素子20の本体部21が嵌め込まれることにより、2つのホール素子20の本体部21をギャップ部12内の予め定められた位置で支持する。」
イ 図1から読み取れる事項の認定
図1に部材名の一部を記入し、対応する符号をマークしたものを掲載する。また、図1における本体ケース41を拡大した図を掲載する。
<図1に部材名の一部を記入したもの>
[図:0001425320000013.jpg]
<図1の本体ケース41を拡大したもの>
[図:0001425320000014.jpg]
図1から、次の技術事項(以下「図1認定事項」という。)が見て取れる。
「本体ケース41の一方の開口端部及び他方の開口端部と基板支持部49の開口側の四角形の端部の面とが面一になっていること。」。
ウ 引用発明の認定
前記イにおいて認定した事項及び前記アに摘記した引用文献2の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「磁性体コア10、2つのホール素子20、電流検出用バスバー30、絶縁筐体40及び電子基板50を備える電流検出装置1であって、(【0023】)
磁性体コア10は、フェライト又はケイ素鋼などからなる磁性体であり、両端が数ミリメートル程度のギャップ部12を介して対向し、中空部11の周囲を囲んで一連に形成された形状を有しており、(【0024】)
ホール素子20は、磁性体コア10のギャップ部12に配置され、磁性体コア10の中空部11を通過する電流に応じて変化する磁束を検出し、磁束の検出信号を電気信号として出力するものであり、(【0025】)
電子基板50は、2つのホール素子20がそれらのリード線22の部分において実装されたプリント回路基板であり、(【0030】)
電子基板50には、2つのホール素子20の他、2つのホール素子20から出力される磁束の検出信号に対して増幅などの処理を施す回路とコネクタ51とが実装されており、(【0030】)
絶縁筐体40は、磁性体コア10と電流検出用バスバー30と2つのホール素子20と電子基板50とを一定の位置関係で保持しつつ支持する絶縁性の部材であって、絶縁筐体40は、磁性体コア10の両側から組み合わされる本体ケース41及び本体ケース41に取り付けられる蓋部材42の2つの部材を含み、(【0040】)
本体ケース41は、開口部を有する箱状に形成され、蓋部材42は、本体ケース41に取り付けられることによって本体ケース41の開口部を塞ぎ、(【0041】)
蓋部材42は、磁性体コア10、ホール素子20及び電流検出用バスバー30を保持する本体ケース41に対し、磁性体コア10と、ホール素子20と、コネクタ51を含む電子基板50とを挟み込みつつ、本体ケース41の開口部を塞ぐように取り付けられ、(【0042】)
本体ケース41及び蓋部材42(絶縁筐体40)は、電流検出用バスバー30における端子部32と、電子基板50のコネクタ51とが外部に露出する状態で、磁性体コア10と、2つのホール素子20と、電流検出用バスバー30の貫通部31とを覆いつつ、それらを一定の位置関係で支持するものであり、(【0043】)
本体ケース41の側壁の内側面には、基板支持部49が突出して形成されており、この基板支持部49は、電子基板50に形成された欠け部52に嵌り込み、電子基板50を予め定められた位置で支持するものであり、(【0046】)
本体ケース41の一方の開口端部及び他方の開口端部と基板支持部49の開口側の四角形の端部の面とが面一になっており、(「図1認定事項」)
素子支持部44は、磁性体コア10のギャップ部12の位置において、6つの側面のうちの第2側面212が相互に接する状態で重ねられた2つのホール素子20が嵌め入れられる空間の周囲を取り囲んで一連に形成されており、(【0058】)
素子支持部44は、その内側の空間に、第2側面212が相互に接する状態で重ねられた2つのホール素子20の本体部21が嵌め込まれることにより、2つのホール素子20の本体部21をギャップ部12内の予め定められた位置で支持するものであり、(【0061】)
絶縁筐体40を構成する2つの部材の一方である本体ケース41の内側の面には、電流通過方向(X軸方向)において突出するコア支持部43及び素子支持部44が形成されている、(【0049】)
電流検出装置1。」
(5) 対比・判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
まず、本件補正発明の構成Xの対比を行い、その後、構成Aから構成Cの対比を行う。
(ア) 構成Xの観点
「電子機器」の発明である本件補正発明と「電流検出装置1」の発明である引用発明は、「電子機器」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aの観点
構成Aは、「複数の構成部品を内部に収容する筐体」を備えた点である。
a 引用発明における「2つのホール素子20」及び「磁性体コア10」は、本件補正発明における「複数の構成部品」に相当する。
b そして、引用発明における「本体ケース41」は、本件補正発明における「筐体」に相当する。
c 引用発明においては、「本体ケース41及び蓋部材42(絶縁筐体40)は、電流検出用バスバー30における端子部32と、電子基板50のコネクタ51とが外部に露出する状態で、磁性体コア10と、2つのホール素子20と、電流検出用バスバー30の貫通部31とを覆いつつ、それらを一定の位置関係で支持するものであ[る]」(【0043】)から、「本体ケース41」に「2つのホール素子20」及び「磁性体コア10」が収納されているといえる。
d そうすると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「複数の構成部品を内部に収容する筐体」を備えた点。
(ウ) 構成Bの観点
構成Bは、「前記筐体内での収容状態で、回路基板及び前記筐体にそれぞれ設けられた位置決め用の部位が相互の位置関係を保持することで前記特定の前記構成部品を他の前記構成部品との干渉が生じない位置関係が保持される規定位置に位置決めする位置決め手段」を備えた点である。
a 次の引用発明の欄に記載した引用発明の各構成は、それぞれ、対応する本件補正発明の欄に記載した次の本件補正発明の構成に相当する。
<引用発明> <本件補正発明>
ホール素子20 特定の前記構成部品
電子基板50 回路基板
磁性体コア10 他の前記構成部品
b そして、引用発明における、「「電子基板50」に設けられた「欠け部52」」及び「「本体ケース41」に設けられた「基板支持部49」」は、それぞれ本件補正発明における「「回路基板」に「設けられた位置決め用の部位」」及び「「筐体」に「設けられた位置決め用の部位」」に相当し、引用発明における「ギャップ部12内の予め定められた位置」は、本件補正発明における「前記特定の前記構成部品を他の前記構成部品との干渉が生じない位置関係が保持される規定位置」に相当する。
c 引用発明においては、「素子支持部44は、その内側の空間に、第2側面212が相互に接する状態で重ねられた2つのホール素子20の本体部21が嵌め込まれることにより、2つのホール素子20の本体部21をギャップ部12内の予め定められた位置で支持するものであ[る]」(【0061】)ものの、「電子基板50は、2つのホール素子20がそれらのリード線22の部分において実装されたプリント回路基板であり」(【0030】)、「本体ケース41の側壁の内側面には、基板支持部49が突出して形成されており、この基板支持部49は、電子基板50に形成された欠け部52に嵌り込み、電子基板50を予め定められた位置で支持する」(【0046】)のであるから、「ホール素子20」と「磁性体コア10」等が「本体ケース41」に収容された状態において、「「電子基板50」に設けられた「欠け部52」」と「「本体ケース41」に設けられた「基板支持部49」」は、相互の位置関係を保持することで、「ホール素子20」を「磁性体コア10」との干渉が生じない位置関係が保持される規定位置に位置決めする機能を有しているといえる。
d そうすると、引用発明も、本件補正発明にいうところの、「前記筐体内での収容状態で、回路基板及び前記筐体にそれぞれ設けられた位置決め用の部位が相互の位置関係を保持することで前記特定の前記構成部品を他の前記構成部品との干渉が生じない位置関係が保持される規定位置に位置決めする位置決め手段」を備えたものであるといえる。
e したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記筐体内での収容状態で、回路基板及び前記筐体にそれぞれ設けられた位置決め用の部位が相互の位置関係を保持することで前記特定の前記構成部品を他の前記構成部品との干渉が生じない位置関係が保持される規定位置に位置決めする位置決め手段」を備えた点。
(エ) 構成Cの観点
構成Cは、「前記筐体内への収容に際して、特定の前記構成部品が収容方向において前記規定位置に正対しない場合は前記位置決め用の部位が相互に正対することなく特定の前記構成部品の収容を阻止する一方、特定の前記構成部品が収容方向において前記規定位置に正対する場合は前記位置決め用の部位が相互に正対して特定の前記構成部品の収容を許容することで、他の前記構成部品との干渉を生じない正規経路を通じてのみ、特定の前記構成部品が外部から前記筐体内で前記規定位置に収容されることを許容する経路規制手段」を備えた点である。
a 本件補正発明は、「物」のカテゴリーの発明であるから、組立ての工程の手順などの製法の観点の相違点は、結果として出来上がる物が同一である限り相違点にならない。
したがって、引用発明においては、「ホール素子20」を「基板50」に実装してから「本体ケース41」と組み立てるのか、それとも、「ホール素子20」を先に「本体ケース41」と組み立ててから「ホール素子20」を「基板50」に実装するのか不明であるが、かかる点は相違点にならない。
そうすると、引用発明について「ホール素子20」を「基板50」に実装してから「本体ケース41」と組み立てた場合に、構成Cの観点における相違点がないならば、本件補正発明と引用発明は、構成Cの観点において一致するといえる。
b 引用発明においては、「本体ケース41の一方の開口端部及び他方の開口端部と、基板支持部49の開口側の四角形の端部の面が面一になって[いる]」(「図1認定事項」)ところ、「本体ケース41の一方の開口端部及び他方の開口端部と基板支持部49の開口側の四角形の端部と」は、全体として、「ホール素子20」を実装した「基板50」が「ケース本体41」に収容される経路を規制するものであり、その結果「ホール素子20」が「ケース本体41」に収容される経路を規制することとなるから、「経路規制手段」であるといえる。
c そして、引用発明においては、「「電子基板50」に設けられた「欠け部52」」と「「本体ケース41」に設けられた「基板支持部49」」とが嵌合(かんごう)しない位置関係の場合、明らかに、「ホール素子20」は「素子支持部44」に嵌め込まれることとはならないから、本件補正発明における「前記筐体内への収容に際して、特定の前記構成部品が収容方向において前記規定位置に正対しない場合は前記位置決め用の部位が相互に正対することなく特定の前記構成部品の収容を阻止する」ことに相当する構成を備えているといえる。
d また、引用発明においては、「「電子基板50」に設けられた「欠け部52」」と「「本体ケース41」に設けられた「基板支持部49」」とが嵌合する位置関係の場合、「ホール素子20」は「素子支持部44」に完全に嵌め込むことが可能となるから、「前記筐体内への収容に際して」、「特定の前記構成部品が収容方向において前記規定位置に正対する場合は前記位置決め用の部位が相互に正対して特定の前記構成部品の収容を許容することで、他の前記構成部品との干渉を生じない正規経路を通じてのみ、特定の前記構成部品が外部から前記筐体内で前記規定位置に収容されることを許容する」ことに相当する構成を備えているといえる。
イ 対比のまとめ
前記アの対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、
「複数の構成部品を内部に収容する筐体と、
前記筐体内での収容状態で、特定の前記構成部品を実装した回路基板及び前記筐体にそれぞれ設けられた位置決め用の部位が相互の位置関係を保持することで前記特定の前記構成部品を他の前記構成部品との干渉が生じない位置関係が保持される規定位置に位置決めする位置決め手段と、
前記筐体内への収容に際して、特定の前記構成部品が収容方向において前記規定位置に正対しない場合は前記位置決め用の部位が相互に正対することなく特定の前記構成部品の収容を阻止する一方、特定の前記構成部品が収容方向において前記規定位置に正対する場合は前記位置決め用の部位が相互に正対して特定の前記構成部品の収容を許容することで、他の前記構成部品との干渉を生じない正規経路を通じてのみ、特定の前記構成部品が外部から前記筐体内で前記規定位置に収容されることを許容する経路規制手段とを備えた
電子機器」である点で一致し、相違点はない。
ウ 判断
以上のとおり、本件補正発明は引用発明と、全ての点において一致するから、本件発明は引用文献2に記載された発明である。
(6) 請求人の主張について
請求人は、本件補正発明は構成B及び構成Cを備えているのに対し、引用文献2は構成B及び構成Cを一体として備えた発明を開示していない点において相違する旨主張する。
しかしながら、本件発明は物の発明であるから、組立ての工程は相違点とはならない点に留意すると、前記(5)アにおいて検討したとおり、相違点は見当たらないから、請求人の上記主張は、前記(5)ウの結論を左右するものではない。
(7) 独立特許要件についてのまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は引用発明であるから、本件補正発明は特許法29条1項3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正の内容を善解したとしても、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1、2に係る発明は、令和5年8月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。
2 拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次の理由を含む。
理由1(新規性の欠如)
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、下記の引用文献により電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
記
引用文献2:特開2013-19795号公報
3 引用発明について
引用文献2に記載された事項及び引用発明は、前記第2の3(4)アからウにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
前記第2の3(5)アの対比における検討結果も踏まえると、本願発明と引用発明は、
「複数の構成部品を内部に収容する筐体と、
前記筐体内での収容状態で、特定の前記構成部品を他の前記構成部品との干渉が生じない位置関係が保持される規定位置に位置決めする位置決め手段と、
前記筐体内への収容に際して、特定の前記構成部品の収容方向において他の前記構成部品との干渉を生じない正規経路を通じてのみ、特定の前記構成部品が外部から前記筐体内で前記規定位置に収容されることを許容する経路規制手段とを備えた電子機器」である点で一致し、相違点はない。
したがって、本願発明は引用文献2に記載された発明である。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当するから、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-003342