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特許拒絶査定不服審判

2024-019367

電流検出器

審判番号
2024-019367
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-033723
請求日
2024年12月03日
審決日
2026年02月12日
公報発行日
2026年04月24日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社タムラ製作所
  • 【請求人代理人】山崎 崇裕
審判長/審判官
  • 審判長 濱野 隆
  • 審判官 小澤 尚由
  • 審判官 谷垣 圭二
分類
P18 .121-Z (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特願2022- 33723「電流検出器」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 9月14日出願公開、特開2023-128994〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本願は、令和4年3月4日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和6年 3月29日付け:拒絶理由通知書 同年 6月 6日 :意見書、手続補正書の提出 同年 8月26日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年 9月 3日 :原査定の謄本の送達) 同年12月 3日 :審判請求書の提出 2 本願発明について (1) 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年6月6日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。 <本願発明> 「両端部の各端面を互いに対向させた状態で、被検出電流が導通する一次導体の周囲に環状に組み合わせて配置される一対のコア部材と、 前記一次導体を挿通可能な挿通部を有し、前記挿通部の周囲に環状に形成された開口を通じて内部に一対の前記コア部材を収容するケース体と、 前記ケース体内に収容された状態で、一対の前記コア部材同士を前記各端面とは反対側の各外側面から対向方向に押し付ける力を発生する押圧部材と、 前記ケース体内に収容されて一対の前記コア部材同士が各端面を対向させる箇所にそれぞれ配置され、開口面が互いに背向して形成された一対の凹部内にそれぞれ対向する一対の前記コア部材の端部を受け入れた状態で、一対の前記コア部材の対向する端面間に規定間隔のギャップを形成するとともに前記各外側面の前記押圧部材が押し付ける力が加わる位置を支点とする前記ケース体の開口方向への前記コア部材の回転変位を抑制するギャップスペーサと、 前記ケース体内に収容された状態で、前記ギャップ内に配置させた磁気検出素子を用いて被検出電流を検出する検出回路が形成された回路基板と を備えた電流検出器。」 (2) 本願発明の分説 検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Eまでに分説する。また、参考図として、本願の【図2】を元に部材名を記入したものを掲載する。 <本願発明の分説> 構成A 両端部の各端面を互いに対向させた状態で、被検出電流が導通する一次導体の周囲に環状に組み合わせて配置される一対のコア部材と、 構成B 前記一次導体を挿通可能な挿通部を有し、前記挿通部の周囲に環状に形成された開口を通じて内部に一対の前記コア部材を収容するケース体と、 構成C 前記ケース体内に収容された状態で、一対の前記コア部材同士を前記各端面とは反対側の各外側面から対向方向に押し付ける力を発生する押圧部材と、 構成D 前記ケース体内に収容されて一対の前記コア部材同士が各端面を対向させる箇所にそれぞれ配置され、開口面が互いに背向して形成された一対の凹部内にそれぞれ対向する一対の前記コア部材の端部を受け入れた状態で、一対の前記コア部材の対向する端面間に規定間隔のギャップを形成するとともに前記各外側面の前記押圧部材が押し付ける力が加わる位置を支点とする前記ケース体の開口方向への前記コア部材の回転変位を抑制するギャップスペーサと、 構成E 前記ケース体内に収容された状態で、前記ギャップ内に配置させた磁気検出素子を用いて被検出電流を検出する検出回路が形成された回路基板と を備えた 構成X 電流検出器。 <参考図> 【図2】 [図:0001433795000001.jpg] (3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、図を明細書の対応する記載箇所に挿入した。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、被検出電流を検出する電流検出器に関する。 【背景技術】 【0002】 例えば従来、環状のコアに形成されたギャップ部にエプロン状の取付部が設けられた電流検出装置の先行技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この電流検出装置は、予めコアのギャップ部を跨ぐようにして樹脂部材の取付部をインサート成形しておき、コアをケースに固定する際は、一体成形された取付部をケースにねじ留めしつつ、磁電変換素子を取付けたプリント回路基板も取付部と共締めして固定している。 【0003】 特に上記の先行技術は、コアのギャップ部分をインサート成形した樹脂部材の中に埋め込んでおくことで、温度変化による膨張収縮でキャップ部の間隔が変化することを抑えている。また、ケースに対する取付部とプリント回路基板との共締めにより、ギャップ部と磁電変換素子との位置の設定が正確に行われると考えられている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】実開平6-86080号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、上記の先行技術のように単独で環状に形成されたコアにギャップを形成している場合、たとえ樹脂部材をインサート成形していても、コア自身の熱変形によるギャップ間隔の変化はどうしても避けられない。また、樹脂部材を予めインサート成形しておくことは工数の増加を招くことになる。 【0006】 そうかといって、複数のコア部材に分割したものを単に環状に組み合わせてケース内に配置しただけの状態では、コア部材間にギャップは形成されるものの、コア部材を正しく位置決めして姿勢を保持しておかないと、ギャップ間隔やギャップ位置そのものが安定しないという問題がある。 【0007】 そこで本発明は、コアの位置決め技術を提供するものである。」 「【発明の効果】 【0022】 本発明によれば、コアを安定して位置決めすることができる。」 「【0026】 〔全体構成〕 図2及び図3に示されているように、電流センサ100は主にケース体102、コア部材104、ギャップスペーサ106、バネスペーサ108及び回路基板110を備えており、これらが図2及び図3に示す組み立て軸線AX上に組み合わされて電流センサ100となる。また、コア部材104については、組み立て軸線AXを中心に寄せ合わせてギャップスペーサ106と組み合わされた上で組み立てられるものとなっている。」 「【図2】 [図:0001433795000002.jpg] 」 「【図3】 [図:0001433795000003.jpg] 」 「【0027】 そして、電流センサ100は、ケース体102にコア部材104、ギャップスペーサ106、バネスペーサ108及び回路基板110を収容した状態で、図1に示されるような一使用形態となる。図1~3は、この使用形態を想定した姿勢で電流センサ100を示しており、この使用形態では、被検出電流を導通する図示しない一次導体(バスバー等)が横方向(水平方向)に挿通されることを想定している。また、図1では、ケース体102の内部が充填材105により封止された状態で示されているが、図2及び図3には充填材105が示されていない。なお、電流センサ100はその他の姿勢(例えば平置き姿勢、小端立て姿勢、倒立姿勢等)で使用される形態であってもよい。 【0028】 〔ケース体〕 ケース体102は、一端面が開口(開放)し、他端面が閉塞された矩形の容器状をなしている。また、ケース体102は、その中央に矩形状の挿通部103が形成されており、このためケース体102の容器形状は、全体として矩形の環状をなしている。挿通部103は、組み立て状態で電流センサ100の中央を厚み方向に貫通しており、上記の図示しない一次導体は、図1に示す電流センサ100の立姿勢において、挿通部103内を横方向(水平方向)に挿通されることになる。このためケース体102には、電流センサ100を立姿勢で設置するためのフランジ102aが一体に形成されている。また、ケース体102には、挿通部103に連なってブラケット部102bが突出して形成されており、このブラケット部102bにおいて、ケース体102が図示しない一次導体とねじ留めされるものとなっている。 【0029】 〔コア部材〕 コア部材104は、図示しない一次導体の周囲で一対をなして配置されている。一対のコア部材104は、個々に横向きのU字形状(いわゆるU-U型)をなしており、互いにU字の先端面である両方の端面(つまり両端面)104aを対向させた状態で矩形の環状に配置され、1つの磁性体コアを構成する。このとき、一対のコア部材104の端面104a同士の間(2箇所)にギャップが形成されるが、これについてはさらに講述する。各コア部材104には軟磁性材料(例えばフェライト、珪素鋼等)が用いられており、図示しない一次導体に被検出電流が導通すると、その周囲に発生した磁界が一対のコア部材104に収束される。このとき一対のコア部材104は、その周方向に磁界の収束経路(磁気回路、磁気経路、磁束経路)を形成する。なお、各コア部材104にはグランド電極104bが溶接されている。 【0030】 〔ギャップスペーサ〕 ギャップスペーサ106は、例えば樹脂製の構造部品であり、ここでは全体として角筒形状をなしている。この角筒形状は、一例としてコア部材104の端部における外形状(ここでは角柱形状)に沿わせたものであり、コア部材104の端部の外形状が円柱形状であれば、ギャップスペーサ106を円筒形状としてもよいし、四角柱以外の多角柱形状であれば、ギャップスペーサ106を多角筒形状としてもよい。 【0031】 〔凹部〕 また、ギャップスペーサ106は、一対のコア部材104がこれらの両端面104aを対向させる位置(ここでは2箇所)にそれぞれ配置されている。個々のギャップスペーサ106は、一対のコア部材104の組み合わせ方向(端面104aの対向方向)でみた両側に一対をなす凹部106aを有しており、これら凹部106aは、ギャップスペーサ106の両端にて開口することにより、互いに開口面を背向(反対向きに)させている。これら凹部106aもまた、コア部材104の端部における外形状に沿わせた袋形状をなしており、コア部材104の端部が対応する凹部106a内に挿入された状態では、凹部106aの内面がコア部材104の端部における外面に沿う格好となる。また、各凹部106a内でコア部材104の端面104aは突き当たりの状態となる。なお、凹部106aについてはさらに後述する。 【0032】 〔ギャップ間凹部〕 さらにギャップスペーサ106は、一対のコア部材104の組み合わせ方向でみた中央位置にギャップ間凹部106bを有している。このギャップ間凹部106bは、両側一対の凹部106aの間に位置しており、ギャップスペーサ106の外面からは組み立て軸線AX方向に凹んでいる。なお、ギャップ間凹部106bについてもさらに後述する。 【0033】 〔押圧部材〕 バネスペーサ108は、一対のコア部材104に対応して一対をなしており、コア部材104ともにケース体102内に収容されるものとなっている。バネスペーサ108は、収容状態でケース体102に支持されるとともに、対応する一方のコア部材104を他方のコア部材104に向けて押し付ける力を発生させる(一対のコア部材104を互いの対向方向に付勢する)。バネスペーサ108は、矩形状をなす板状部分(参照符号なし)の両端縁に脚部108b及び掛止爪108cが2本ずつ形成されるとともに、板状部分の一方の長側縁にバネ部108aが形成されている。これら脚部108bや掛止爪108c、バネ部108aは板状部分からケース体102の内部に向けて延びており、電流センサ100の組み立て状態では、脚部108b、掛止爪108c及びバネ部108aはコア部材104の外周面とケース体102内面との間に配置される。このためバネスペーサ108は、ケース体102の一端面開口側からコア部材104の一側面及び外周面に被さるようにしてケース体102に収容されるものとなっている。この収容状態で、バネスペーサ108はコア部材104を所定位置に位置決めする。なお、バネスペーサ108による位置決めについてはさらに後述する。 【0034】 〔回路基板〕 回路基板110もまた、ケース体102の一端面開口やコア部材104の一側面に合わせた形状をなしているが、環状にはつながっておらず、孔空き矩形状を半割にしたようなコ字形状となっている。すなわち、回路基板110はコ字形の部分環形状をなす絶縁性の基板部材を有しており、その両側の実装面や内層部分に図示しない配線パターンやビアホールが形成されている。また、基板部材の一方の実装面には2つのASIC112がスルーホール実装されており、他方の実装面にはコネクタ110aがスルーホール実装されている。 【0035】 ASIC112は、例えばホールセンサ等の磁気検出素子を含む回路が集積された電子デバイスである。電流センサ100の組み立て状態では、回路基板110は、一方のバネスペーサ108の板状部分に重ね合わせるようにしてケース体102に収容される。この収容状態で、2つのASIC112はギャップスペーサ106のギャップ間凹部106b内に配置されるものとなっている。回路基板110には、ASIC112の出力信号を用いて被検出電流を検出するための回路が形成されている。このため、回路基板110(基板部材)の各実装面には、図示しない各種の電子部品(チップ部品、IC等)もまた実装されている。また適宜、回路基板110にはグランド電極104bのスルーホール110bが形成されている。なお、回路基板110は環状に形成されていてもよい。」 「【0042】 〔位置決め状態〕 図5は、コア部材104の位置決め状態を示す正面図である。なお、図5に回路基板110は示されていない。」 「【図5】 [図:0001433795000004.jpg] 」 「【0043】 〔ギャップの形成〕 一対のコア部材104は、ケース体102内に収容された状態で、両端面104aを対向させて環状に配置される。一対のバネスペーサ108は、ケース体102内に収容された状態では、いずれもケース体102に対して固定されているが、バネ部108aはケース体102に接触することなく、板状部分を固定端として弾性変形可能である。このとき、一対のコア部材104の対向方向を図5中の矢印A1方向とすると、上記のバネ部108aは、コア部材104の外側面に接触して矢印A1方向とは逆向きに弾性変形しつつ、その復元力(反発力)で一対のコア部材104を矢印A1方向に押し付け合う力を発生させている。これにより、ギャップスペーサ106の各凹部106a内では、コア部材104の端面104aが当接部106dに当接した状態に保持され、対向する端面104a間に規定間隔のギャップが形成されることになる。 【0044】 〔対向方向の位置決め〕 また、一対のコア部材104は、ケース体102内に収容された状態で、ギャップスペーサ106及びバネスペーサ108によって対向方向(矢印A1方向)に位置決めされることになる。すなわち、一対のコア部材104は、バネスペーサ108のバネ部108aで対向方向に押されつつ、ギャップスペーサ106の凹部106a内で当接部106dに突き当てられることにより、ケース体102内での対向方向への変位が抑えられて位置決めされる。 【0045】 〔対向方向以外の位置決め〕 また、コア部材104の対向方向以外の位置決めは、例えばケース体102内面のリブ102fによって行われる。リブ102fは、一対のコア部材104の対向方向とは直交する方向で対向する外周壁の内面に沿って多数の位置に形成されており、各リブ102fは、ケース体102の他端側面から一端面開口に向けて筋状に延びている。各コア部材104は、ケース体102内に収容された状態で開口とは反対側(奥側)のエッジが多数のリブ102fによって案内され、開口面に沿う対向方向とは直交方向に位置決めされる。なお、ケース体102内面にはその他にも多数のリブ102c,102dが形成されているが、これらについては後述する。 【0046】 〔コア部材の変位抑制〕 ギャップスペーサ106は、上記のようにギャップを形成しつつ一対のコア部材104を互いの対向方向に位置決めすることに加えて、コア部材104がケース体102の開口方向に変位することを抑制している。以下、この点についてさらに説明する。 【0047】 図6は、ギャップスペーサ106によるコア部材104の変位抑制構造例を示した断面図(図5のVI-VI線に沿う断面図)である。ここでは、図6中(A)が本実施形態の構造例を示し、図6中(B)が比較例の構造例を示している。以下、比較例と対比しながら本実施形態の構造例について説明する。」 「【図6】 [図:0001433795000005.jpg] 」 「【0048】 〔本実施形態の構造例〕 図6中(A):上記のように一対のコア部材104は、各端面104aと反対側の各外側面からバネ部108aによって対向方向に押し付けられている。このとき、バネ部108aがコア部材104の外側面とは線接触しているため、図示の断面でみた場合、各コア部材104には、バネ部108aとの接触点を支点Pとしてケース体102の開口方向への傾き(回転)変位を生じる可能性が考えられることになる。これは、両側からバネ部108aが一対のコア部材104を対向方向に押し付け合っていることにも起因する。ただし、本実施形態の構造例の場合、ギャップスペーサ106の凹部106aが袋形状であることにより、このようなコア部材104の傾き変位が抑制されている。 【0049】 〔比較例の構造例〕 図6中(B):比較例となる構造例は、ブロック形状又は板形状のスペーサ60をギャップ内に配置したものである。この場合でも、本実施形態と同様のバネ部108aで一対のコア部材104を押し付け合えば、スペーサ60でギャップを形成し、コア部材104を位置決めすることはできると考えられる。しかしながら、ギャップの両側では、コア部材104の端部がケース体102の開口方向にフリーの状態であるため、支点Pを中心としてコア部材104が開口方向に大きく傾いて(回転)変位する可能性が高い。この場合、ギャップ間隔やギャップ位置が変動してしまい、電流検出精度が不安定になりやすい。 【0050】 この点、本実施形態の構造例(図6中(A))の場合、コア部材104の端部は凹部106a内でその内面及び当接部106dによって袋状に掴まれているため、支点Pを中心とした傾きが拘束され、上記のように変位を抑制することができる。これにより、端面104a間に形成したギャップの間隔を安定して保持するとともに、ギャップの位置が正規の位置からずれてしまうことを確実に抑制することができるので、電流検出精度の安定を図ることができる。」 3 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 (進歩性の欠如) 本願発明は、出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特開2021-9078号公報(主たる引用文献) 引用文献2.実願昭62-53888号(実開昭63-159769号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献) 4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 (1) 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である引用文献1(特開2021-9078号公報)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(2)の引用文献1の記載から把握することができる事項の認定、及び、(3)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。また、図を対応する記載箇所に挿入して示した。以下も同様である。)。 ア 特許請求の範囲 「【請求項1】 複数箇所で互いに対向させた端面間にそれぞれギャップを設けて環状に配置されることにより、被検出電流の導通により発生する磁界の収束経路を形成する複数のコア部材と、 複数の前記コア部材を環状に配置して収容するケース体と、 前記ケース体内で複数の前記コア部材同士を互いの対向方向に付勢することにより、前記ギャップが規定の間隔に保持される所定位置に複数の前記コア部材を位置決めする位置決め部材と を備えた電流検出器。 【請求項2】 請求項1に記載の電流検出器において、 前記位置決め部材に付勢された状態で複数の前記コア部材の端面間に挟み込まれることにより、前記ギャップを規定の間隔に保持する保持部材 をさらに備えたことを特徴とする電流検出器。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の電流検出器において、 前記ケース体は、 複数の前記コア部材の収容に伴い複数の前記コア部材を外周縁にて案内しつつ、前記対向方向と交差する方向に複数の前記コア部材を位置決めして前記端面同士を前記収束経路に沿って正対させる案内部を有することを特徴とする電流検出器。 【請求項4】 請求項1から3のいずれかに記載の電流検出器において、 前記位置決め部材は、 複数の前記コア部材とともに前記ケース体に収容された状態で、前記コア部材を位置決めすることを特徴とする電流検出器。 【請求項5】 請求項1から4のいずれかに記載の電流検出器において、 複数の前記コア部材とともに前記ケース体に収容され、前記ギャップ内に配置される磁気検出素子からの出力信号を用いて被検出電流を検出する回路が形成された回路基板をさらに備え、 前記位置決め部材は、 前記回路基板に実装された前記磁気検出素子が前記ギャップ内の所定位置に配置される位置を前記所定位置として複数の前記コア部材を位置決めすることを特徴とする電流検出器。」 イ 段落【0001】~【0013】 「【技術分野】 【0001】 本発明は、被検出電流の導通により発生した磁界をコアに収束させて電流を検出する電流検出器に関する。 【背景技術】 【0002】 例えば従来、環状のコアに形成されたギャップに磁気センサを配置した電流センサの先行技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この電流センサは、筐体に収容したコアのギャップに容器状部材を介装し、この容器状部材の開口端部を外部に露出させた状態でコアを内部に封入するように筐体に樹脂製のモールド部材を充填してコアを所望の位置に固定している。 【0003】 特に上記の先行技術では、コアのギャップに介装された容器状部材の内部空間は、樹脂製のモールド部材が存在しない空間となるため、モールド部材の温度変化に起因する膨張や収縮が発生しても、磁気センサに応力が作用することを防止することができると考えられる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2012-68158号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、上記の先行技術のように、筐体内に充填したモールド部材でコアの位置を固定する場合、充填量や充填密度の不均一、また、樹脂の不均質等の要因によって樹脂硬化後にコアが最終的に固定される位置が一定せず、個体製品ごとにばらつきが生じる。また、コアの固定位置がばらつくと、ギャップ内に挿入されるホール素子についてもギャップ内での位置が安定しないため、同条件の磁束であっても製品ごとにホール素子の検出精度が大きくばらついてしまう。 【0006】 そこで本発明は、コアを位置決めする技術を提供するものである。 …(中略)… 【発明の効果】 【0013】 本発明によれば、コアを安定して位置決めすることができる。」 ウ 段落【0016】~【0022】、【図1】~【図3】 「【0016】 図1は、一実施形態の電流センサ100の組み立て状態を示す斜視図である。また、図2及び図3は、一実施形態の電流センサ100の構成を概略的に示す分解斜視図である。なお、図1中(A)に示す電流センサ100を異なる方向(180°反対側)から示すと、図1中(B)の斜視図となる。また、図2と図3とでは、斜視する方向が反転している。 【図1】 [図:0001433795000006.jpg] 【図2】 [図:0001433795000007.jpg] 【図3】 [図:0001433795000008.jpg] 【0017】 〔全体構成〕 図2及び図3に示されているように、電流センサ100は主にケース体102、磁性体コア104、ギャップ間スペーサ106、位置決めスペーサ108及び回路基板110を備えており、ケース体102に磁性体コア104、ギャップ間スペーサ106、位置決めスペーサ108及び回路基板110を収容した状態で、図1に示されるような一使用形態となる。図1~3は、この使用形態を想定した姿勢で電流センサ100を示しており、この使用形態では、被検出電流を導通する図示しない導体(バスバー等)が横方向(水平方向)に挿通されることを想定している。なお、電流センサ100はその他の姿勢(例えば平置き姿勢、小端立て姿勢、倒立姿勢等)で使用される形態であってもよい。 【0018】 〔ケース体〕 ケース体102は、一端面が開放し、他端面が閉塞された矩形の容器状をなしている。また、ケース体102は、その中央に矩形状の貫通孔102aが形成されており、このためケース体102の容器形状は、全体として矩形の環状をなしている。貫通孔102aは、組み立て状態で電流センサ100の中央を厚み方向に貫通しており、上記の図示しない導体は、図1に示す電流センサ100の立姿勢において、貫通孔102a内を横方向(水平方向)に挿通されることになる。このためケース体102には、電流センサ100を立姿勢で設置するためのフランジ(参照符号なし)が一体に形成されている。なお、ケース体102の内部構造(図中に符号を付した多数のリブ類)については後述する。 【0019】 〔コア部材,磁性体コア〕 磁性体コア104は、全体として矩形の環状をなしている。この磁性体コア104は、一対をなすコア部材104a,104bから構成されている。一対のコア部材104a,104bは、個々に横向きのU字形状(いわゆるU-U型)をなしており、互いにU字の両先端面を対向させた状態で環状に配置され、1つの磁性体コア104を構成する。このとき、一対のコア部材104a,104bの端面間(2箇所)にはギャップ104cが形成される。コア部材104a,104bには軟磁性材料(例えばフェライト、珪素鋼等)が用いられており、図示しない導体に被検出電流が導通すると、その周囲に発生した磁界が磁性体コア104に収束される。このとき磁性体コア104は、その周方向に磁界の収束経路(磁気回路、磁気経路、磁束経路)を形成する。 【0020】 〔保持部材〕 ギャップ間スペーサ106は、例えば樹脂製の薄板材料からなる。ギャップ間スペーサ106は、磁性体コア104のギャップ104c間にそれぞれ介挿して配置されるものとなっている。ギャップ間スペーサ106は、一対のコア部材104a,104bの端面間に挟み込まれた状態で、ギャップ104cを規定の間隔に保持する。具体的には、ギャップ間スペーサ106は、その厚みに相当する寸法を規定寸法としてギャップ104cの間隔を保持することができる。 【0021】 〔位置決め部材〕 位置決めスペーサ108は、ケース体102の一端面開口や磁性体コア104の一側面に合わせた環形状(孔空き矩形状)をなしている。また、位置決めスペーサ108は、環形状をなす板状部分(参照符号なし)に一対の開口108aが形成されている他、板状部分の周縁(四隅)に脚部108b及び掛止爪108cが4本ずつ形成されるとともに、対向する両側縁にばね部108dが形成されている。これら脚部108bや掛止爪108c、ばね部108dは板状部分からケース体102の内部に向けて延びており、電流センサ100の組み立て状態では、脚部108b、掛止爪108c及びばね部108dは磁性体コア104の外周面とケース体102内面との間に配置される。このため位置決めスペーサ108は、ケース体102の一端面開口側から磁性体コア104の一側面及び外周面に被さるようにしてケース体102に収容されるものとなっている。この収容状態で、位置決めスペーサ108は磁性体コア104を所定位置に位置決めする。なお、位置決めスペーサ108による位置決めについてはさらに後述する。 【0022】 〔回路基板〕 回路基板110もまた、ケース体102の一端面開口や磁性体コア104の一側面に合わせた形状をなしているが、環状にはつながっておらず、孔空き矩形状を半割にしたようなコ字形状の実装面を有している。一方の実装面には磁気検出素子として2つのホール素子112がスルーホール実装されており、また、他方の実装面にはコネクタ114がスルーホール実装されている。電流センサ100の組み立て状態では、回路基板110は位置決めスペーサ108の一側面に宛がうようにしてケース体102に収容される。この収容状態で、2つのホール素子112は位置決めスペーサ108の開口108aを通じて磁性体コア104のギャップ104c内に配置されるものとなっている。回路基板110には、ホール素子112の磁気検出信号を用いて被検出電流を検出するための回路が形成されている。このため、回路基板110の各実装面には図示しない各種の電子部品(チップ部品、IC等)が実装されており、また、各実装面及び内層には、各種の配線パターンやビアホールが形成されている。なお、回路基板110は環状に形成されていてもよい。」 エ 段落【0032】~【0035】、【図6】 「【0032】 〔磁性体コアの配置〕 図6は、磁性体コア104(コア部材104a,104b)のケース体102内での配置を示した斜視図である。」 「【図6】 [図:0001433795000009.jpg] 」 「【0033】 磁性体コア104は、2つのコア部材104a,104bの間にギャップ間スペーサ106を挟み込んだ状態で、互いに端面同士を対向させた状態でケース体102内に配置されている。このとき、コア部材104a,104bは、上述した多数のリブ類(ギャップ位置リブ102b、案内リブ102d、中間リブ102e、補助リブ102f等)に外周面を支持(又は案内)された状態でケース体102内に収容された状態となる。なお、コア部材104a,104bの内周面については、ケース体102の内周壁の外面によって支持(又は案内)されることになる。 【0034】 ここで、電流センサ100にとっての磁性体コア104は、その検出精度(特性、性能)に大きく関わる要素であることは既に述べたとおりである。磁性体コア104は、その材料の特性(透磁率、ヒステリシス等)はもとより、実際の配置状態においてギャップ104cの間隔が予め規定された通りに正しく設定されていることや、ギャップ104cを挟んで対向するコア部材104a,104bの端面同士が正対して配置されていることが極めて重要である。 【0035】 この点、量産過程においてギャップ104cの間隔や端面同士の位置関係を1つ1つ細かく人の目視等によって検査・管理すればよいといえるが、そのような工程を設けることは工数の上でも製造コストの面でもあまり現実的でない。したがって、現実はある程度のばらつきを見越した上で品質を管理することになるが、それでもばらつきは最小に抑えられていることが好ましい。」 オ 段落【0042】~【0045】、【図9】~【図10】 「【0042】 〔長手方向位置決め〕 次に、長手方向の位置決めについて説明する。長手方向の位置決めは、上記の位置決めスペーサ108によって実現される。 【0043】 図9は、磁性体コア104に対する位置決めスペーサ108のケース体102内での配置を示した斜視図である。 上記のように位置決めスペーサ108は、コア部材104a,104bの一側面側から被さるようにしてケース体102内に収容されている。この状態で、位置決めスペーサ108はコア部材104a,104bのケース体102内からの脱落を防止するとともに、長手方向の位置決めをなしている。また、位置決めスペーサ108の2箇所の開口108aは、それぞれ対応するギャップ104cに通じる位置にある。」 「【図9】 [図:0001433795000010.jpg] 」 「【0044】 図10は、ケース体102内に収容された位置決めスペーサ108の配置を示す正面図である。また図11は、位置決めスペーサ108をケース体102及びコア部材104a,104bから分離した状態を示した分解斜視図である。 上記のように位置決めスペーサ108は、脚部108b、掛止爪108c及びばね部108dを有している。このうち脚部108bは、全体として薄板状をなしており、挿入方向で厚みや幅は略一定である。掛止爪108cは、先端部分に「返し」が形成されたボス状をなしている。ばね部108dは、長手方向で対をなす板ばね形状(クリップ形状)をなしており、これら一対のばね部108dは、間に2つのコア部材104a,104bを挟み込んで対向方向に付勢することができる。」 「【図10】 [図:0001433795000011.jpg] 」 「【0045】 電流センサ100の組み立て過程において、これら脚部108b、掛止爪108c及びばね部108dは、コア部材104a,104bの収容後にコア部材104a,104bの外周面とケース体102内面との間に挿入されるものとなっている。このような挿入過程において、脚部108b、掛止爪108c及びばね部108dは時間差を置いて順番に挿入されることで、それぞれ固有の機能を果たすことになる。以下、挿入過程について説明する。」 カ 段落【0050】~【0054】、【図14】 「【0050】 〔ばね部の挿入〕 図14は、図10中のXIV-XIV線に沿うケース体102、磁性体コア104及び位置決めスペーサ108(ばね部108d)の断面図である。ここでは、図14中(A)→(B)→(C)の順番に挿入過程が進行している。」 「【図14】 [図:0001433795000012.jpg] 」 「【0051】 図14中(A):ばね部108dは、その基端から中央方向に向けて傾斜するように延びているが、先端部分がコア部材104a,104bの対向方向とは反対に反り返っている。この反り返り部分は、長手方向でみてコア部材104a,104bの外周縁よりもオーバラップRP分だけ内側に入り込んでいる。このため挿入過程においては、ばね部108dの反り返り部分がコア部材104a,104bの外周縁と接する位置関係にある。 【0052】 図14中(B):挿入が進むと、ばね部108dが反り返り部分においてコア部材104a,104bの外周縁に接する。ここでも同様に、挿入過程の初期段階で位置決めスペーサ108の挿入開始位置が決定しているため、ばね部108dが受ける曲げ荷重及び撓み量の安定した管理が可能となる。 【0053】 この後、さらに挿入が進行することにより、コア部材104a,104bの外周縁に押されてばね部108dが全体的に撓む(弾性変形する)。このとき長手方向の両側一対でみると、ばね部108dが外側に広がるようにして曲げ変形されることになる。 【0054】 図14中(C):挿入の完了状態において、ばね部108dは元の自然状態(二点鎖線で示す)からみて長手方向の外側への曲げ変形が残ったままの状態(実線で示す)となる。このとき、ばね部108dはその復元力でコア部材104a,104bを互いの対向方向に付勢しており、コア部材104a,104bはばね部108dからの付勢力Fによって位置決めされることになる。なお、位置決めスペーサ108の挿入完了状態において、ばね部108dは補助リブ102fの間に収容される。」 (2) 引用文献1の記載から把握することができる事項の認定 図1(A)及び図2から、当業者は以下の事項を把握することができる。 「コア部材104a、104bは、貫通孔102aの周囲を取り囲むように配置されること」 (3) 引用発明の認定 前記(2)において認定した事項及び前記(1)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には、実施形態(【図2】)に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「複数箇所で互いに対向させた端面間にそれぞれギャップを設けて環状に配置されることにより、被検出電流の導通により発生する磁界の収束経路を形成する複数のコア部材と、 複数の前記コア部材を環状に配置して収容するケース体と、 前記ケース体内で複数の前記コア部材同士を互いの対向方向に付勢することにより、前記ギャップが規定の間隔に保持される所定位置に複数の前記コア部材を位置決めする位置決め部材と を備えた電流検出器であって、(【請求項1】) 前記位置決め部材に付勢された状態で複数の前記コア部材の端面間に挟み込まれることにより、前記ギャップを規定の間隔に保持する保持部材をさらに備え、(【請求項2】) 位置決め部材は、 複数の前記コア部材とともに前記ケース体に収容された状態で、前記コア部材を位置決めするものであり、(【請求項4】) 複数の前記コア部材とともに前記ケース体に収容され、前記ギャップ内に配置される磁気検出素子からの出力信号を用いて被検出電流を検出する回路が形成された回路基板をさらに備え、(【請求項5】) 前記電流検出器は、電流センサ100として構成されており、(【0016】) 電流センサ100は主にケース体102、磁性体コア104、ギャップ間スペーサ106、位置決めスペーサ108及び回路基板110を備えており、ケース体102に磁性体コア104、ギャップ間スペーサ106、位置決めスペーサ108及び回路基板110を収容した状態で使用形態となるものであり、(【0017】) ケース体102は、一端面が開放し、他端面が閉塞された矩形の容器状をなしており、その中央に矩形状の貫通孔102aが形成されており、(【0018】) 被検出電流を導通する導体(バスバー等)は、貫通孔102a内を横方向(水平方向)に挿通され、(【0017】、【0018】) 磁性体コア104は、全体として矩形の環状をなしており、この磁性体コア104は、一対をなすコア部材104a,104bから構成されており、一対のコア部材104a,104bは、個々に横向きのU字形状(いわゆるU-U型)をなしており、互いにU字の両先端面を対向させた状態で環状に配置され、1つの磁性体コア104を構成し、一対のコア部材104a,104bの端面間(2箇所)にはギャップ104cが形成されており、(【0019】) ギャップ間スペーサ106は、例えば樹脂製の薄板材料からなり、磁性体コア104のギャップ104c間にそれぞれ介挿して配置されるものとなっており、一対のコア部材104a,104bの端面間に挟み込まれた状態で、ギャップ104cを規定の間隔に保持するものであり、その厚みに相当する寸法を規定寸法としてギャップ104cの間隔を保持することができるものであり、(【0020】) 磁性体コア104は、2つのコア部材104a,104bの間にギャップ間スペーサ106を挟み込んだ状態で、互いに端面同士を対向させた状態でケース体102内に配置されており、(【0033】) コア部材104a、104bは、貫通孔102aの周囲を取り囲むように配置されるものであり、(前記(2)の認定事項) 位置決めスペーサ108は、脚部108b、掛止爪108c及びばね部108dを有しており、脚部108bは、全体として薄板状をなしており、挿入方向で厚みや幅は略一定であり、掛止爪108cは、先端部分に「返し」が形成されたボス状をなしており、ばね部108dは、長手方向で対をなす板ばね形状(クリップ形状)をなしており、これら一対のばね部108dは、間に2つのコア部材104a,104bを挟み込んで対向方向に付勢することができるものであり、(【0044】) ばね部108dは、その基端から中央方向に向けて傾斜するように延びているが、先端部分がコア部材104a,104bの対向方向とは反対に反り返っており、この反り返り部分は、長手方向でみてコア部材104a,104bの外周縁よりもオーバラップRP分だけ内側に入り込んでいるため挿入過程においては、ばね部108dの反り返り部分がコア部材104a,104bの外周縁と接する位置関係にあり、(【0051】) 挿入が進むと、ばね部108dが反り返り部分においてコア部材104a,104bの外周縁に接することになり、ここでも同様に、挿入過程の初期段階で位置決めスペーサ108の挿入開始位置が決定しているため、ばね部108dが受ける曲げ荷重及び撓み量の安定した管理が可能となり、(【0052】) この後、さらに挿入が進行することにより、コア部材104a,104bの外周縁に押されてばね部108dが全体的に撓む(弾性変形する)ことになり、このとき長手方向の両側一対でみると、ばね部108dが外側に広がるようにして曲げ変形されることになり、(【0053】) 挿入の完了状態において、ばね部108dは元の自然状態からみて長手方向の外側への曲げ変形が残ったままの状態となり、このとき、ばね部108dはその復元力でコア部材104a,104bを互いの対向方向に付勢しており、コア部材104a,104bはばね部108dからの付勢力Fによって位置決めされることになり、位置決めスペーサ108の挿入完了状態において、ばね部108dは補助リブ102fの間に収容されるものである、(【0054】) 電流検出器。」 5 引用文献2に記載された事項及び周知技術の認定 (1) 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である実願昭62-53888号(実開昭63-159769号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 ア 5頁7行~6頁1行、第1図、第2図 「[実施例] 以下、第1図乃至第3図に基づき本考案による磁束検出用コアの一実施例を説明する。図中、1は矩形断面(断面積s)を有し円環状に成形されたアモルファス材料が周囲をリボン状の金属箔により巻回されてなるコア部、2はコア部1の両端1a、1a’間に画成される幅gを有するエアギャップ部、3はコア部1の端部1a、1a’を整合して収容するように形成された係合部3a、3a’を両端部に有すると共に該両端間の寸法がエアギャップ部2の幅gより大きくなるように設定されていてホール素子等の磁電変換素子4を収容保持してエアギャップ部2内に生じた磁束の方向と直交するように位置せしめ得る凹部3bが形成されているスペーサである。 第1図 [図:0001433795000013.jpg] 第2図 [図:0001433795000014.jpg] 」 イ 8頁7行~16行 「尚、上記コア部1をフェライト材料で形成した場合、端部1a、1a’の一部を切欠くことによりスペーサ3の挿着を容易ならしめ、この場合エアギャップ部2の輻gはスペーサ3によることなく一定に保持されるが、一方、磁電変換素子4自体は上記と同様にしてスペーサ3により正確に位置決めされる。かかるフェライト材料を用いた場合には、スペーサ3の両端間の寸法をエアギャップ部2の幅gより若干小さく設定することを要する。」 (2) 周知技術Aの認定 前記(1)に摘記した引用文献2の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術A」という。) <周知技術A> 「磁束検出用コアにおいて、コア部の端部同士を、コア部の端部に整合して収容可能な係合部を両端に設けたスペーサにより位置決めすること」 6 本願発明と引用発明の対比 (1) 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 ア 構成Xの観点(電流検出器) 「電流検出器」の発明である本願発明と、「電流センサ100として構成されて[いる]」「電流検出器」の発明である引用発明は、「電流検出器」の発明である点において一致する。 イ 構成Aの観点(一対のコア部材について) (ア) 構成Aは、「両端部の各端面を互いに対向させた状態で、被検出電流が導通する一次導体の周囲に環状に組み合わせて配置される一対のコア部材」を備えることである。 (イ)a 引用発明において、「磁性体コア104は、全体として矩形の環状をなしており、この磁性体コア104は、一対をなすコア部材104a,104bから構成されて[いる]」ことを踏まえると、引用発明における「2つのコア部材104a,104b」は、本願発明における「一対のコア部材」に相当する。 b 引用発明の「2つのコア部材104a,104b」は、「互いに対向させた端面間にそれぞれギャップを設けて環状に配置される」ものであるから、本願発明でいう「両端部の各端面を互いに対向させた状態で、」「環状に組み合わせて配置される」ものであるといえる。 (ウ)a 引用発明の「被検出電流を導通する導体」は、本願発明における「被検出電流が導通する一次導体」に相当する。 b 引用発明の「被検出電流を導通する導体は、貫通孔102a内を横方向(水平方向)に挿通され[る]」ものであるところ、「コア部材104a,104bは、貫通孔102aの周囲を取り囲むように配置される」ものであることを踏まえれば、引用発明の「2つのコア部材104a,104b」は、本願発明でいう「一次導体の周囲に」「配置される」ものであるといえる。 (エ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「両端部の各端面を互いに対向させた状態で、被検出電流が導通する一次導体の周囲に環状に組み合わせて配置される一対のコア部材」を備える点。 ウ 構成Bの観点(ケース体について) (ア) 構成Bは、「前記一次導体を挿通可能な挿通部を有し、前記挿通部の周囲に環状に形成された開口を通じて内部に一対の前記コア部材を収容するケース体」を備えることである。 (イ)a 引用発明における「貫通孔102a」は、本願発明における「挿通部」に、また、引用発明における「ケース体102」は、本願発明における「ケース体」にそれぞれ相当する。 b 引用発明の「ケース体102」は、「一端面が開放し、他端面が閉塞された矩形の容器状をなしており、その中央に矩形状の貫通孔102aが形成されて[いる]」ことから、前記イ(ウ)も踏まえれば、本願発明でいう「前記一次導体を挿通可能な挿通部を有し、前記挿通部の周囲に環状に形成された開口を通じて内部に一対の前記コア部材を収容する」ものであるといえる。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「前記一次導体を挿通可能な挿通部を有し、前記挿通部の周囲に環状に形成された開口を通じて内部に一対の前記コア部材を収容するケース体」を備える点。 エ 構成Cの観点(押圧部材について) (ア) 構成Cは、「前記ケース体内に収容された状態で、一対の前記コア部材同士を前記各端面とは反対側の各外側面から対向方向に押し付ける力を発生する押圧部材」を備えることである。 (イ) 引用発明の「位置決め部材」は、「前記ケース体内で複数の前記コア部材同士を互いの対向方向に付勢することにより、前記ギャップが規定の間隔に保持される所定位置に複数の前記コア部材を位置決めする」ことから、本願発明でいう「前記ケース体内に収容された状態で、一対の前記コア部材同士を前記各端面とは反対側の各外側面から対向方向に押し付ける力を発生する押圧部材」に相当する。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「前記ケース体内に収容された状態で、一対の前記コア部材同士を前記各端面とは反対側の各外側面から対向方向に押し付ける力を発生する押圧部材」を備える点。 オ 構成Dの観点(ギャップスペーサについて) (ア) 構成Dは、「前記ケース体内に収容されて一対の前記コア部材同士が各端面を対向させる箇所にそれぞれ配置され、開口面が互いに背向して形成された一対の凹部内にそれぞれ対向する一対の前記コア部材の端部を受け入れた状態で、一対の前記コア部材の対向する端面間に規定間隔のギャップを形成するとともに前記各外側面の前記押圧部材が押し付ける力が加わる位置を支点とする前記ケース体の開口方向への前記コア部材の回転変位を抑制するギャップスペーサ」を備えることである。 (イ)a 引用発明においては、「前記位置決め部材に付勢された状態で複数の前記コア部材の端面間に挟み込まれることにより、前記ギャップを規定の間隔に保持する保持部材」を備えるところ、引用発明における「ギャップ間スペーサ106」は、前記「保持部材」であって、本願発明における「ギャップスペーサ」に相当する。 b 引用発明の「ギャップ間スペーサ106」については、「位置決め部材に付勢された状態で複数の前記コア部材の端面間に挟み込まれる」ものであるところ、前記「端面間」は「複数箇所で互いに対向させた端面間」であることを踏まえると、一対のコア部材同士の端面が対向する箇所が複数あることを前提としているから、引用発明の「ギャップ間スペーサ106」は、本願発明でいう「前記ケース体内に収容されて一対の前記コア部材同士が各端面を対向させる箇所にそれぞれ配置され」、「一対の前記コア部材の対向する端面間に規定間隔のギャップを形成する」ものであるといえる。 (ウ) 一方で、「ギャップスペーサ」について、引用発明は、「樹脂製の薄板材料からなり、磁性体コア104のギャップ104c間にそれぞれ介挿して配置されるものとなっており、一対のコア部材104a,104bの端面間に挟み込まれた状態で、ギャップ104cを規定の間隔に保持するものであり、その厚みに相当する寸法を規定寸法としてギャップ104cの間隔を保持することができるものであ[る]」のに対し、本願発明は「開口面が互いに背向して形成された一対の凹部内にそれぞれ対向する一対の前記コア部材の端部を受け入れた状態で」、「前記各外側面の前記押圧部材が押し付ける力が加わる位置を支点とする前記ケース体の開口方向への前記コア部材の回転変位を抑制する」点で、両者は相違する。 (エ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Bの観点にける一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。 a 構成Bの観点における一致点 「前記ケース体内に収容されて一対の前記コア部材同士が各端面を対向させる箇所にそれぞれ配置され」、「一対の前記コア部材の対向する端面間に規定間隔のギャップを形成する」「ギャップスペーサ」を備える点。 b 構成Bの観点における相違点 「ギャップスペーサ」について、 本願発明においては、 「開口面が互いに背向して形成された一対の凹部内にそれぞれ対向する一対の前記コア部材の端部を受け入れた状態で」、「前記各外側面の前記押圧部材が押し付ける力が加わる位置を支点とする前記ケース体の開口方向への前記コア部材の回転変位を抑制する」のに対して、 引用発明においては、 「樹脂製の薄板材料からなり、磁性体コア104のギャップ104c間にそれぞれ介挿して配置されるものとなっており、一対のコア部材104a,104bの端面間に挟み込まれた状態で、ギャップ104cを規定の間隔に保持するものであり、その厚みに相当する寸法を規定寸法としてギャップ104cの間隔を保持することができるものであ[る]」点。 カ 構成Eの観点(回路基板について) (ア) 構成Eは、「前記ケース体内に収容された状態で、前記ギャップ内に配置させた磁気検出素子を用いて被検出電流を検出する検出回路が形成された回路基板」を備えることである。 (イ)a 引用発明における「回路基板」は、本願発明における「回路基板」に相当する。 b また、引用発明における「磁気検出素子」は、本願発明における「磁気検出素子」に、引用発明における「被検出電流を検出する回路」は、本願発明における「検出回路」に、それぞれ相当する。 c ここで、引用発明の「回路基板」は、「複数の前記コア部材とともに前記ケース体に収容され、前記ギャップ内に配置される磁気検出素子からの出力信号を用いて被検出電流を検出する回路が形成された」ものであるから、前記a及びbを踏まえると、本願発明の「前記ケース体内に収容された状態で、前記ギャップ内に配置させた磁気検出素子を用いて被検出電流を検出する検出回路が形成された回路基板」に相当する。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「前記ケース体内に収容された状態で、前記ギャップ内に配置させた磁気検出素子を用いて被検出電流を検出する検出回路が形成された回路基板」を備える点。 (2) 一致点及び相違点 前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。 ア 一致点 「両端部の各端面を互いに対向させた状態で、被検出電流が導通する一次導体の周囲に環状に組み合わせて配置される一対のコア部材と、 前記一次導体を挿通可能な挿通部を有し、前記挿通部の周囲に環状に形成された開口を通じて内部に一対の前記コア部材を収容するケース体と、 前記ケース体内に収容された状態で、一対の前記コア部材同士を前記各端面とは反対側の各外側面から対向方向に押し付ける力を発生する押圧部材と、 前記ケース体内に収容されて一対の前記コア部材同士が各端面を対向させる箇所にそれぞれ配置され、一対の前記コア部材の対向する端面間に規定間隔のギャップを形成するギャップスペーサと、 前記ケース体内に収容された状態で、前記ギャップ内に配置させた磁気検出素子を用いて被検出電流を検出する検出回路が形成された回路基板と を備えた電流検出器」である点。 イ 相違点 「ギャップスペーサ」について、 本願発明においては、 「開口面が互いに背向して形成された一対の凹部内にそれぞれ対向する一対の前記コア部材の端部を受け入れた状態で」、「前記各外側面の前記押圧部材が押し付ける力が加わる位置を支点とする前記ケース体の開口方向への前記コア部材の回転変位を抑制する」のに対して、 引用発明においては、 「樹脂製の薄板材料からなり、磁性体コア104のギャップ104c間にそれぞれ介挿して配置されるものとなっており、一対のコア部材104a,104bの端面間に挟み込まれた状態で、ギャップ104cを規定の間隔に保持するものであり、その厚みに相当する寸法を規定寸法としてギャップ104cの間隔を保持することができるものであ[る]」点。 7 判断 (1) 相違点の検討 ア 「ギャップスペーサ」の形状に係る構成について (ア) 引用発明の「ギャップ間スペーサ106」は、「位置決め部材に付勢された状態で複数の前記コア部材の端面間に挟み込まれることにより、前記ギャップを規定の間隔に保持する」ものであるところ、「ギャップを規定の間隔に保持する」という機能を満たせば、その形状をどのようなものにするかは当業者が適宜になし得る設計事項であるというべきである。 (イ) また、引用発明においては、「挿入の完了状態において」「コア部材104a,104bはばね部108dからの付勢力Fによって位置決めされることにな[る]」としても、コア部材の端部同士の相対的位置関係までもが「ばね部108dからの付勢力F」により規定されると考えるのは適当ではなく、コア部材の端部同士の位置決めをする必要があることが当然の前提となる。 (ウ) ここで、「磁束検出用コアにおいて、コア部の端部同士を、コア部の端部に整合して収容可能な係合部を両端に設けたスペーサにより位置決めすること」は、当業者にとって周知技術である(前記周知技術Aを参照)。 (エ) そうすると、引用発明において、前記(イ)において説示したとおり、コア部材の端部同士を位置決めするとの要請に従って、前記周知技術Aを適用する契機があるというべきところ、前記周知技術Aを採用すると、コア部材104の端部同士を、コア部の端部に整合して収容可能な係合部を両端に設けたギャップ間スペーサにより接続する構成(以下、「周知技術A採用構成」という。)が導かれることになる。 (オ) そして、前記(ア)において説示した「ギャップ間スペーサ106」の機能を踏まえると、周知技術A採用構成において、「ギャップ間スペーサ」は、コア部材の端面がギャップ間スペーサの係合部の底面に当接される状態となり、引用発明において、前記相違点に係る「開口面が互いに背向して形成された一対の凹部内にそれぞれ対向する一対の前記コア部材の端部を受け入れた状態」が実現されることになる。 イ 「各外側面の前記押圧部材が押し付ける力が加わる位置を支点とする前記ケース体の開口方向への前記コア部材の回転変位を抑制する」ことについて (ア) 前記相違点に係る本願発明の「ギャップスペーサ」が「前記各外側面の前記押圧部材が押し付ける力が加わる位置を支点とする前記ケース体の開口方向への前記コア部材の回転変位を抑制する」との構成について、「ギャップスペーサ」の構造は直接特定されていないものの、本願明細書の「ギャップスペーサ106の凹部106aが袋形状であることにより、このようなコア部材104の傾き変位が抑制されている」(【0048】)の記載を参照すると、上記構成におけるギャップスペーサの構造については、「ギャップスペーサ106の凹部106aが袋形状であること」を想定していると理解できる。 (イ) ここで、周知技術A採用構成のギャップ間スペーサは、前記アで検討したとおり、コア部材の端部がギャップ間スペーサの係合部に整合して収容されるものであるから、本願発明の「ギャップスペーサ」が想定するものと構造上大差はないというべきである。 (ウ) そして、周知技術A採用構成において、ギャップ間スペーサの係合部によって、コア部材の端面に沿った方向の変位が規制されることは自明であるから、周知技術A採用構成の「ばね部108dが反り返り部分においてコア部材104a,104bの外周縁に接[する]」位置を支点として生じる回転変位を抑制することも、自然と満たすことになる。 (2) 相違点の評価 前記(1)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術Aに基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、相違点を勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 8 請求人の主張について 請求人は、本願発明のギャップスペーサは、前記2(2)における構成Dのとおりの構成を有しており、前記相違点に係る構成Dについての対比検討がなされていないことを主張する。 しかしながら、構成Dによって特定されるギャップスペーサの構造は、「ギャップスペーサ106の凹部106aが袋形状であること」を想定してるのであって、周知技術A採用構成のギャップ間スペーサと構造上大差ないことは、前記7(1)イで検討したとおりである。 また、請求人は、周知技術A採用構成が本願発明に到達しないことを主張しているが、周知技術A採用構成の「ギャップ間スペーサ」は、「開口面が互いに背向して形成された一対の凹部内にそれぞれ対向する一対の前記コア部材の端部を受け入れた状態」を自然と満たすことは、前記7(1)アで検討したとおりである。 よって、請求人の前記主張は、いずれも採用できない。 9 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-019367

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