特許拒絶査定不服審判
2024-002554
ネットワークチップ抵抗器
- 審判番号
- 2024-002554
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-528846
- 請求日
- 2024年02月14日
- 審決日
- 2024年11月11日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】北陸電気工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人西浦特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 山本 章裕
- 審判官 畑中 博幸
- 分類
- P18 .575-WYA(H01C) / P18 .121-WYA(H01C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2020-528846「ネットワークチップ抵抗器」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月 9日国際公開、WO2020/009051、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年7月1日(優先権主張 2018年7月2日)を国際出願日とする出願であって、令和5年2月10日付けで拒絶理由が通知され、同年4月12日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月18日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年9月8日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月9日付けで令和5年9月8日付け手続補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、令和6年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 原審における補正の却下の決定の適否について
1.補正の却下の決定の概要
原審における令和5年11月9日付け補正の却下の決定(以下、「本件補正の却下の決定」という。)の概要は、本件補正の却下の決定の「1 本決定の要旨」欄に記載されているとおり、
「請求項1-3についての補正は、補正前の請求項1-3に係る発明に補正前の請求項4及び請求項5に記載された事項を直列的に付加するものといえるから、限定的減縮を目的としている。この場合、補正後の請求項1-3に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
しかしながら、下記2(当審注:本件補正の却下の決定では「2」として独立特許要件を論じている)のとおり、当該補正後の請求項1-3に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、この補正は特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により上記結論のとおり決定する。」というものである。
2.本件補正の却下の決定の適否についての当審の判断
補正後の請求項に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないという独立特許要件は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に基づくものであるから、本件補正の却下の決定は、条文の適用を誤ってなされた不適法なものである。
したがって、本件補正却下の決定には理由がなく、取り消されるべきものである。
上記の通り、本件補正の却下の決定は、条文の適用を誤ってなされた不適法なものであるが、審判請求人は、令和6年2月14日提出の審判請求書の【拒絶査定の要点】の欄において、「補正却下の決定は不適法であり、その決定に基づき、却下された補正前の明細書、特許請求の範囲及び図面について特許性を判断したのは不適法であるから、却下された補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面について特許性の判断をすることを求めます。」と述べ、【本願発明が特許されるべき理由】の欄において、令和5年9月8日提出の手続補正書による請求項1ないし3に記載の発明を本願発明とし、令和5年11月9日付け補正の却下の決定において引用された引用文献ないし16に対して進歩性を有することを主張し、さらに、【むすび】の欄において、「以上述べたとおり、令和5年9月8日付提出の手続補正書で補正された請求項1乃至請求項3の発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものですので、この手続補正を却下した決定を取り消し、請求の趣旨のとおりの審決をいただきたくお願い申し上げます。」と主張しており、かつ審判請求と同時に補正がなされていないことから、審判請求人は令和5年11月9日付けの補正の却下の決定に対して不服の申立てがあるものと認められる。
そこで、令和5年9月8日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下するとした、令和5年11月9日付けの補正の却下の決定における独立特許要件について検討する。
(1)独立特許要件についての判断
ア.本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、令和5年9月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「表面と裏面を有する細長い絶縁基板と、
前記絶縁基板の前記表面の長手方向の両端に設けられた一対の端子電極と、
前記絶縁基板の前記長手方向と直交する幅方向に位置する一対の側面上に少なくとも設けられ、前記一対の端子電極と電気的に接続された2組の一対の側面電極と、
前記絶縁基板の前記表面の前記一対の端子電極の間に設けられた中間電極と、
前記一対の側面上に少なくとも設けられ、前記中間電極と電気的に接続された一対の中間側面電極と、
前記一対の端子電極と前記中間電極との間に設けられた一対の抵抗体と、
耐メッキ液性を有する材料により形成されて、前記一対の抵抗体の上に設けられた一対の保護層と、
前記一対の端子電極及び前記2組の一対の側面電極の上と、前記中間電極及び前記一対の中間側面電極の上にそれぞれ形成された1層以上のメッキ層とを備え、
前記絶縁基板の前記長手方向に位置する一対の側面上には側面電極がなく、
前記中間側面電極から延びて、前記絶縁基板の前記裏面上に延びる中間延長電極をさらに有しており、
前記中間延長電極は厚膜中間延長電極により構成されており、
前記絶縁基板の前記裏面には、耐メッキ液性を有する材料により形成されて、前記中間延長電極の中央部を覆うようにして前記絶縁基板の長手方向に延びる裏面側保護層が設けられていることを特徴とするネットワークチップ抵抗器。」
イ.引用文献と引用発明
本件補正の却下の決定において本件補正後の請求項1に係る発明(本願補正発明と同じ発明)の独立特許要件を否定する主たる引用文献となった特開昭63-81901号公報(以下「引用文献」という。)には以下の事項が記載されている。
(ア)「〔産業上の利用分野〕
本発明は抵抗器に係り、特に高密度実装に好適なチップ抵抗器に関する。」(1ページ左下欄10ないし12行)
(イ)「〔実施例〕
以下、本発明の一実施例を第1図により説明する。第1図は、本発明の一実施例の上面図であり抵抗体3,3’に外部電極1,1’および外部共通電極2に設けられた構成になっている。さらに、この構成を詳細に説明するために、第2図に本発明の断面構造として第1図のA-A’断面図を示す。
セラミック基板6の上にまず内部電極4,4’および内部共通電極5が印刷等の製法により形成される。抵抗体3,3’は内部電極4,4’および内部共通電極5と印刷等の製法により形成、接続される。さらに外部取出し端子として外部電極1,1’および外部共通電極2が内部電極4,4’および内部共通電極5上に形成される。また抵抗体3,3’は保護膜7で保護される。ここで内部共通電極5外部共通電極2は複数あってもなんら問題ない。」(1ページ右下欄14行ないし2ページ左上欄9行)
(ウ)第1図、第2図
[図:0001417483000001.jpg]
・上記(ア)によれば、引用文献には「チップ抵抗」について記載されている。
・上記(イ)によれば、セラミック基板6の上に内部電極4,4’が形成される。また、図1、2から、内部電極4,4’は細長いセラミック基板6の上面の両端と、長手方向の両端面にも形成されることが見て取れる。
さらに図1において、外部電極1,1’のセラミック基板6の短手方向の長さは抵抗体3,3’よりも長くなっていることから、セラミック基板6の短手方向の両側面上にも内部電極4,4’と外部電極1,1’が形成されていると考えるのが自然であり、当該側面上の内部電極4,4’は上面上の内部電極4,4’に電気的に接続されていることは明らかである。
したがって、細長いセラミック基板6の上面の両端上と、セラミック基板6の短手方向の両側面上と、セラミック基板6の長手方向の両端面上に互いに電気的に接続された内部電極4,4’が形成されているといえる。
・上記(イ)によれば、セラミック基板6の上に内部共通電極5が形成されており、図1、2も参照すれば、セラミック基板6の上面の内部電極4,4’の間に内部共通電極5が形成されているといえる。
さらに図1において外部共通電極2のセラミック基板6の短手方向の長さが抵抗体3,3’よりも長くなっていることから、セラミック基板6の短手方向の両側面上にも内部共通電極5と外部共通電極2が形成されていると考えるのが自然であり、当該内部共通電極5はセラミック基板6の上面の内部共通電極5に電気的に接続されているといえる。
したがって、セラミック基板6の上面の内部電極4,4’の間に内部共通電極5が形成され、セラミック基板6の短手方向の両側面上にも電気的に接続された内部共通電極5が形成されているといえる。
・上記(イ)によれば、抵抗体3,3’はセラミック基板6の上面の内部電極4,4’および内部共通電極5と接続され、また保護膜7で保護されており、図1、2も参照すれば、抵抗体3,3’は、内部電極4,4’と内部共通電極5との間に形成された一対の抵抗体であり、保護膜7は当該一対の抵抗体3,3’を保護している。
・上記(イ)及び図1、2によれば、外部電極1,1’および外部共通電極2が内部電極4,4’および内部共通電極5上に形成されている。
・図2によれば、セラミック基板6の下面にも内部共通電極5とその上に外部共通電極2が形成されていることが見てとれ、当該内部共通電極5はセラミック基板6の短手方向の両側面上の内部共通電極5に接続されていると考えるのが自然である。
したがって、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「 細長いセラミック基板6の上面の両端上と、セラミック基板6の短手方向の両側面上と、セラミック基板6の長手方向の両端面上に、互いに電気的に接続された内部電極4,4’が形成されたチップ抵抗であって、
セラミック基板6の上面の内部電極4,4’の間に内部共通電極5が形成され、セラミック基板6の短手方向の両側面上にも電気的に接続された内部共通電極5が形成されており、
セラミック基板6の上面の内部電極4,4’と内部共通電極5との間に一対の抵抗体である抵抗体3,3’が形成され、保護膜7は当該一対の抵抗体3,3’を保護しており、
外部電極1,1’および外部共通電極2が、内部電極4,4’および内部共通電極5上に形成され、
セラミック基板6の下面にも内部共通電極5とその上に外部共通電極2が形成され、当該セラミック基板6の下面の内部共通電極5は、セラミック基板6の短手方向の両側面上の内部共通電極5に接続されている、チップ抵抗。」
ウ.対比・判断
(ア)対比
本願補正発明を引用発明1と対比すると、
・引用発明1の「上面」と「下面」を有する「細長いセラミック基板6」が、本願補正発明の「表面」と「裏面」を有する「細長い絶縁基板」に相当する。
・引用発明1のセラミック基板6の上面の両端上の「内部電極4,4’」が本願補正発明の「前記絶縁基板の前記表面の長手方向の両端に設けられた一対の端子電極」に相当する。
・引用発明1の「セラミック基板6の短手方向の両側面上」の「内部電極4,4’」はセラミック基板6の上面の両端上の「内部電極4,4’」と互いに電気的に接続されているから、本願補正発明の「前記絶縁基板の前記長手方向と直交する幅方向に位置する一対の側面上に少なくとも設けられ、前記一対の端子電極と電気的に接続された2組の一対の側面電極」に相当する。
・引用発明1のセラミック基板6の上面の内部電極4,4’の間に形成された「内部共通電極5」が、本願補正発明の「前記絶縁基板の前記表面の前記一対の端子電極の間に設けられた中間電極」に相当する。
・引用発明1のセラミック基板6の上面の内部共通電極5と電気的に接続された「セラミック基板6の短手方向の両側面上」に形成された「内部共通電極5」が、本願補正発明の「前記一対の側面上に少なくとも設けられ、前記中間電極と電気的に接続された一対の中間側面電極」に相当する。
・引用発明1の「内部電極4,4’と内部共通電極5との間に」形成された「一対の抵抗体である抵抗体3,3’」が、本願補正発明の「前記一対の端子電極と前記中間電極との間に設けられた一対の抵抗体」に相当する。
・引用発明1の「保護膜7」は一対の抵抗体3,3’を保護しており、本願補正発明の一対の抵抗体の上に設けられた一対の「保護層」に相当するが、本願補正発明の「保護層」は「耐メッキ液性を有する材料により形成されて」いるのに対して、引用発明1では耐メッキ液性を有する材料により形成されているか不明である点で相違する。
・引用発明1の「内部電極4,4’および内部共通電極5上に形成され」る「外部電極1,1’および外部共通電極2」は、本願補正発明の「前記一対の端子電極及び前記2組の一対の側面電極の上と、前記中間電極及び前記一対の中間側面電極の上にそれぞれ形成された1層以上のメッキ層」に対応するものの、引用発明1では「メッキ層」により構成されているか明らかではない点で相違する。
・本願補正発明では「前記絶縁基板の前記長手方向に位置する一対の側面上には側面電極がな」いのに対して、引用発明1では「セラミック基板6の長手方向の両端面上に」「内部電極4,4’」を有している点で相違する。
・引用発明1の「セラミック基板6の下面」に形成された「内部共通電極5」が、本願補正発明の「中間側面電極から延びて、前記絶縁基板の前記裏面上に延びる中間延長電極」に相当する。
・本願補正発明の「前記中間延長電極は厚膜中間延長電極により構成されて」いるのに対して、引用発明1の「内部共通電極5」は厚膜電極として構成されているか不明である点で相違する。
・本願補正発明は「前記絶縁基板の前記裏面には、耐メッキ液性を有する材料により形成されて、前記中間延長電極の中央部を覆うようにして前記絶縁基板の長手方向に延びる裏面側保護層が設けられている」のに対して、引用発明1は当該構成を有していない点で相違する。
したがって、本願補正発明を引用発明1とは以下の点で相違し、その余の点では一致している。
(相違点1)
保護層について、本願補正発明では「耐メッキ液性を有する材料により形成されて」いるのに対して、引用発明1では耐メッキ液性を有する材料により形成されているか不明である点。
(相違点2)
一対の端子電極及び2組の一対の側面電極の上と、中間電極及び一対の中間側面電極の上にそれぞれ形成された1層以上の層について、本願補正発明では「メッキ層」であることを特定するのに対して、引用発明1では「メッキ層」により構成されているかが明らかではない点。
(相違点3)
本願補正発明では「前記絶縁基板の前記長手方向に位置する一対の側面上には側面電極がな」いのに対して、引用発明1では「セラミック基板6の長手方向の両端面上に」「内部電極4,4’」を有している点。
(相違点4)
中間延長電極について、本願補正発明では「厚膜中間延長電極」により構成されているのに対して、引用発明1では厚膜電極として構成されているか不明である点。
(相違点5)
本願補正発明は「前記絶縁基板の前記裏面には、耐メッキ液性を有する材料により形成されて、前記中間延長電極の中央部を覆うようにして前記絶縁基板の長手方向に延びる裏面側保護層が設けられている」のに対して、引用発明1は当該構成を有していない点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点5について検討する。
本件補正の却下の決定において引用された引用文献4:実願昭57-181396号(実開昭59-84802号)のマイクロフィルム(2ページ7行ないし5ページ6行、図3、4参照)、及び引用文献5:特開平11-317301号公報(段落【0019】ないし【0030】、図1ないし4参照)に例示されるように、チップ抵抗器において、基板の裏面上に耐メッキ液性を有する材料であることが明らかであるガラスや樹脂などからなる裏面保護層を形成することは周知技術である。
そこで、引用発明1に上記周知技術を適用し、引用発明1のセラミック基板6の下面の外部共通電極2を覆うように下面に耐メッキ液性を有する材料からなる裏面保護層を形成すると、引用発明1のチップ抵抗の実装面である下面において電極を保護層で覆うことになり、電気的接続が困難となることから、引用発明1に上記周知技術を適用するには阻害要因が存在するというべきである。そうしてみると引用発明1と上記周知技術から相違点5とした構成を発明できたとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明1と周知技術から当業者が容易に発明できたものではない。
本願請求項1の構成を全て含み、さらに構成を付加した発明である本願請求項2及び3に係る発明についても請求項1と同様の理由により当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(2)まとめ
以上のとおり、補正後の請求項1ないし3に係る発明は当業者が容易に発明できたものとはいえず、本件補正の却下の決定における独立特許要件の判断には誤りがあり、また、他に本件補正を却下すべき理由も見出すことはできないから、令和5年11月9日付けの補正の却下の決定を取り消す。
第3 原査定について
原査定の拒絶の理由は、「この出願については、令和5年7月18日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです」というものであり、令和5年7月18日付け拒絶理由通知書に記載した理由1は、この出願に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された「引用文献1」に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
ここで、原査定の拒絶の理由において主たる引用例となった上記「引用文献1」は、上記「第2 2.(1)イ.」で引用した引用文献(特開昭63-81901号公報)である。
そうしてみると、上記「第2 2.(1)ウ.(イ)」で検討したように、本願の請求項1ないし3に係る発明は特開昭63-81901号公報を主たる引用例としては、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、原査定の理由によって本願の請求項1ないし3に係る発明を拒絶することはできない。
第4 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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