特許拒絶査定不服審判
2024-002434
CMP温度制御のための装置および方法
- 審判番号
- 2024-002434
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-507601
- 請求日
- 2024年02月13日
- 審決日
- 2025年05月01日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】園田・小林弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 本庄 亮太郎
- 審判官 堀内 亮吾
- 審判官 田々井 正吾
- 分類
- P18 .121-Z (B24B) / P18 .572-Z (B24B) / P18 .575-Z (B24B) / P18 .56 -Z (B24B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第1項第4号、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-507601「CMP温度制御のための装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔2021年(令和3年)2月18日国際公開、WO2021/030295、令和4年10月18日国内公表、特表2022-544375〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)8月10日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2019年8月13日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
1 令和4年 2月 7日
国内書面の提出
2 令和4年 3月31日
翻訳文の提出
3 令和5年 4月 4日付け
拒絶の理由(以下「拒絶理由」という。)の通知
4 令和5年 7月 5日
意見書及び手続補正書の提出
5 令和5年10月 3日付け
拒絶をすべき旨の査定(以下「拒絶査定」という。)
6 令和6年 2月13日
拒絶査定不服審判の請求書及び手続補正書の提出
第2 令和6年2月13日の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年2月13日提出の手続補正書によりされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項8の記載
本件補正により、本願の特許請求の範囲の請求項8の記載は、次のとおり補正がされた。(下線部は補正箇所である。)
「ガス源からのガスを先細末広ノズルまで送達することと、
液体源に結合される入口と、前記先細末広ノズルのスロートに前記先細末広ノズルの側壁から離れて位置付けられた出口と、を有し、前記先細末広ノズルの前記側壁を貫通して延びるインジェクタを通して、前記液体源からの液体を前記先細末広ノズルのスロート内へ注入することと、
前記ガスを前記先細末広ノズルに流すことによって前記ガスを冷却することと、
前記冷却されたガスを研磨パッド上へと方向付けることと、
を含む、化学機械研磨システムの温度制御方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和5年7月5日提出の手続補正書により補正をした特許請求の範囲の請求項8の記載は次のとおりである。
「ガス源からのガスを先細末広ノズルまで送達することと、
液体源に結合される入口と、前記先細末広ノズルのスロートに位置付けられた出口と、を有するインジェクタを通して、前記液体源からの液体を前記先細末広ノズルのスロート内へ注入することと、
前記ガスを前記先細末広ノズルに流すことによって前記ガスを冷却することと、
前記冷却されたガスを研磨パッド上へと方向付けることと、
を含む、化学機械研磨システムの温度制御方法。」
2 本件補正の目的について
(1)本件補正の目的の要件
本件補正は、特許法第17条の2第1項第4号に掲げる拒絶査定不服審判の請求と同時にした補正であって、特許請求の範囲についての本件補正は、同条第5項の規定により、同項第1~4号に掲げる事項を目的とするものに限られる。
(2)請求項8に関する本件補正の内容
これに対して、請求項8に関する本件補正は、補正前の請求項8に記載した発明を特定するために必要な事項である「液体源に結合される入口と、前記先細末広ノズルのスロートに位置付けられた出口と、を有するインジェクタ」について、次のア~イの事項を限定するものである。
ア 先細末広ノズルのスロートに位置付けられた出口について、「先細末広ノズルの側壁から離れて」位置付けられたものであること。
イ 「前記先細末広ノズルの前記側壁を貫通して延びる」こと。
そして、本件補正前の請求項8に記載された発明と本件補正後の請求項8に記載された発明は、いずれも、産業上の利用分野が、化学機械研磨(CMP)、より具体的には化学機械研磨中の温度制御に関するもの(本願明細書の段落0001)であり、解決しようとする課題が、化学機械研磨システムにおける研磨パッドの温度を迅速かつ効率的に制御することを実現するもの(本願明細書の段落0002~0018)であって同一である。
(3)まとめ
よって、請求項8に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
3 独立特許要件
(1)請求項8に関する本件補正への独立特許要件の適用について
上記2のとおり、請求項8に関する本件補正は、その目的が上記2のとおり特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、同条第6項の規定により特許法第126条第7項の規定が準用される。
したがって、本件補正後の請求項8に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明8」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものできるものでなければならないため、以下、その独立特許要件について検討する。
(2)本願補正発明8
上記1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(3)引用文献
引用文献は次のとおりである。
引用文献1:特開2013-99814号公報
引用文献3:特開2007-73615号公報
引用文献4:特開2008-270627号公報
(4)引用文献1の記載内容について
ア 引用文献1の書誌事項
引用文献1は、本願の優先日前に頒布され、原査定でも引用文献1として引用した文献である。
特開2013-99814号公報(平成25年5月23日出願公開)
イ 引用文献1の記載事項(下線は、当審にて付した。)
(ア)発明の詳細な説明
「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、研磨方法及び研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIデバイス等の製造工程で薄膜や基板表面を平坦化する際、化学機械的研磨法(Chemical Mechanical Planarization法=CMP法)が実用化されている。LSIデバイスの微細化と低コスト化に伴い、デバイス表面をより平坦、低欠陥かつ安価に加工するCMP技術が求められている。
・・・
【0004】
上記の問題に対し、より平坦性がよく、低欠陥かつ高生産性のCMP技術として、CMP温度制御が知られている。従来のCMP温度制御では、CMP中の研磨パッド表面に向かって空気を噴出させ、パッドの表面および表面のスラリーを冷却していた。しかし、この方法はエアブローによるスラリーの気化熱を利用した冷却であり、冷却能力が不十分であった。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、研磨パッドやスラリーの冷却、及び研磨パッド表面のドレッシングを効率良く行うことができる研磨方法及び研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態によれば、研磨方法は、回転させた研磨パッドに、回転させた基板を押し当て、前記研磨パッド上にスラリーを供給する工程と、前記研磨パッドの表面温度を測定する工程と、前記表面温度が所定温度以上になった場合に、前記研磨パッドに向かって、狭窄部を有するノズルから過冷却液滴を含むジェット流を噴出させる工程と、を備える。
・・・
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の説明に先立ち、発明者らが本発明をなすに至った経緯について説明する。図1はCMP処理中の研磨パッドの表面温度の時間変化の一例を示している。図1に示すように、研磨テーブルやウェーハの回転を開始し、研磨処理を始めると、回転速度の上昇に伴い摩擦熱により表面温度が徐々に上昇する。例えば、表面温度は、研磨開始時の約20℃から、20秒後には約40℃まで上昇する。その後、60秒後には、表面温度は60℃程度まで上昇する。研磨時に使用されるスラリーは、例えばCu CMPスラリーの場合には錯体形成剤や酸化剤を含んでいる。これら錯体形成剤や酸化剤は、50℃~60℃の高温域で分解し、スラリーが劣化する。スラリーが劣化すると、ウェーハ表面の平坦性が低下するため、表面温度が高温域に達する前に速やかに冷却し、スラリーの研磨性能に好適な40℃程度に表面温度を維持することが求められる。
【0012】
以下の実施形態においては、上記のような課題を解決することができる。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図2に本発明の実施形態に係る研磨装置の概略構成を示す。研磨装置1は、被研磨体保持手段であるトップリング11と、研磨テーブル12と、スラリー(研磨剤)を供給する供給ノズル14と、ラバルノズル15とを備えている。
・・・
【0015】
研磨テーブル12は、トップリング11の下方に配置されており、上面には研磨パッド13が貼付されている。研磨テーブル12は図示しない駆動機構により回転可能になっている。
【0016】
供給ノズル(供給部)14は、研磨テーブル12の上方に設けられており、研磨パッド13上にスラリーを供給する。
【0017】
ラバルノズル15は、過冷却液滴を含むジェット流を研磨パッド13上に噴出し、研磨パッド13の表面を冷却する。ラバルノズル15は、図3に示すように、円筒形のノズルの途中部分にスロート部(狭窄部)が設けられた構造のノズルである。ラバルノズル15を用いることで、液体を微粒化すると同時に断熱膨張による急冷効果により、氷粒子を含む固液二層の噴霧粒子群を形成することができる。
【0018】
例えば、図3に示すように、コンプレッサ31により圧縮された空気が除湿器32で除湿され、エアタンク33に貯気される。このエアタンク33内の空気を、減圧弁により所定圧力に調整し、バルブを開放することにより、圧縮空気がラバルノズル15に導入される。この圧縮空気は、圧力300kPa以上、流量200NL/min以上が好ましい。また、ラバルノズル15のスロート部の近傍に、少量の室温の水が供給される。例えば、バルブ34により、水の流量は100ml/min以下に調整される。水は純水であることが好ましい。
【0019】
ラバルノズル15に供給される圧縮空気や水の流量は、図2に示すジェット流制御部21により制御することができる。
【0020】
ラバルノズル15に供給された水は、高圧エアのジェット流により、多数の微小液滴となる。ラバルノズル15は、スロート部より下流側においてノズル径が広がっているため、断熱膨張により微小な水滴が過冷却まで冷やされる。この過冷却液滴が研磨パッド13上に到達すると凍結し、その融解熱と、さらには高圧エアによる気化熱によって、研磨パッド13表面やスラリーを効率的に冷却することができる。
【0021】
図2に示すように、研磨装置1は研磨パッド13の表面温度を測定する温度センサ16を備えている。温度センサ16は例えば赤外放射温度計である。ジェット流制御部21は、温度センサ16の測定結果を取得し、研磨パッド13の表面温度に基づいてラバルノズル15からの過冷却液滴の噴出を制御する。
【0022】
次に、このような研磨装置1を用いて被研磨体を研磨する方法を図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0023】
(ステップS101)トップリング11に被研磨体であるウェーハWが保持される。
(ステップS102)駆動機構によりトップリング11及び研磨テーブル12を回転させる。また、トップリング11を下方に降下させて、ウェーハWを研磨パッド13に一定の荷重で押し当てる。この状態で、供給ノズル14からスラリーを研磨パッド13上に供給することにより研磨が行われる。
(ステップS103)温度センサ16を用いて研磨パッド13の表面温度を測定する。表面温度は摩擦熱や意図的に付加した熱源により徐々に上昇する。表面温度が所定温度以上になった場合はステップS104へ進む。
ここで、所定温度とは、例えばスラリーが劣化する温度(スラリーに含まれる錯体形成剤や酸化剤等が熱分解する温度)であり、これはスラリーの成分によって変わる。
(ステップS104)ジェット流制御部21がラバルノズル15から研磨パッド13へ過冷却液滴を噴出させる。
(ステップS105)研磨パッド13の表面温度が所定温度未満まで下がった場合はステップS106へ進み、下がらなかった場合はステップS107へ進む。
(ステップS106)ジェット流制御部21が、研磨パッド13の表面温度が所定温度以上にならないよう、ラバルノズル15に供給される高圧エアの流量を調整する。また、このとき、ジェット流制御部21は、表面温度が下がり過ぎないように、ラバルノズル15に供給される高圧エアの流量を調整する。温度が低過ぎるとスラリーの研磨性能が低下するためである。従って、ジェット流制御部21は、研磨パッド13の表面温度が所定範囲に収まるように、ラバルノズル15に供給される高圧エアの流量を調整する。
(ステップS107)ジェット流制御部21が、研磨パッド13の表面温度が所定温度未満になるよう、ラバルノズル15に供給される高圧エアの流量を大きくする。高圧エアの流量を大きくすることで、ラバルノズル15から噴出される過冷却液滴の温度は低下する。
【0024】
このように、本実施形態によれば、研磨パッド13の表面温度が所定温度以上になった際に、研磨パッド13に過冷却液滴を噴出することで、その融解熱と、高圧エアによる気化熱によって、研磨パッド13表面やスラリーを迅速に冷却することができる。過冷却液滴を用いた冷却は、従来のエアブロー方式(スラリー気化熱のみによる冷却)と比較して、冷却速度が約6倍(冷却に要する時間が約1/6)であった。
【0025】
従って、本実施形態に係る研磨方法及び研磨装置により、研磨パッドやスラリーの冷却を効率良く行うことができる。
【0026】
上記実施形態では、研磨パッド13の表面温度が所定温度以上となったときに過冷却液滴の噴出を行っていたが、トップリング11及び研磨テーブル12の回転速度と、研磨パッド13の表面温度の経時変化との関係を予め調べておき、表面温度が所定温度まで上昇する時間が経過したか否かによって、過冷却液滴の噴出を行ってもよい。
【0027】
図5に、研磨装置1のラバルノズル15の配置例を示す。ラバルノズル15は、研磨テーブル12の中心から外周方向に向かって直線状に複数配置される。また、ラバルノズル15は、トップリング11の研磨テーブル12回転方向下流側に隣接して設けることが好ましい。この領域は、研磨直後の領域であり、研磨パッド13表面やスラリーが最も温度の高い領域となるためである。」
(イ)図面
【図1】
[図:0001427435000001.jpg]
【図2】
[図:0001427435000002.jpg]
【図3】
[図:0001427435000003.jpg]
【図4】
[図:0001427435000004.jpg]
【図5】
[図:0001427435000005.jpg]
ウ 引用文献1の記載事項の整理
(ア)段落0001、0002、0004、0008~0009、0011、0025の記載からみて、引用文献1には、化学機械的研磨法の温度制御方法について、記載されている。
(イ)段落0018、図3の記載からみて、上記(ア)の温度制御方法においては、エアタンク33からの空気がラバルノズル15に導入される。
(ウ)段落0017~0018,図3の記載からみて水がラバルノズル15のスロート部の近傍に供給される。
(エ)段落0009、0017、0020、0023、図2~4の記載からみて、エアタンク33からラバルノズル15に導入された空気は、ラバルノズル15を用いることによって急冷される。
(オ)段落0009、0020、0023~0024、図2~4の記載からみて、上記(エ)の急冷された空気は、研磨パッド上へと噴出される。
エ 引用文献1記載の発明
上記イ~ウより、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が、記載されている
「エアタンク33からの空気をラバルノズル15に導入することと、
水を前記ラバルノズル15のスロート部の近傍へ供給することと、
前記空気を前記ラバルノズル15を用いることによって前記空気を急冷することと、
前記急冷された空気を研磨パッド13上へと噴出させることと、
を含む、化学機械的研磨法による温度制御方法。」
(5)引用文献3の記載内容について
ア 引用文献3の書誌事項
引用文献3は、本願の優先日前に頒布され、原査定でも引用文献3として引用した文献である。
特開2007-73615号公報(平成19年3月22日出願公開)
イ 引用文献3の記載事項(下線は、当審にて付した。)
(ア)発明の詳細な説明
「【0019】
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る洗浄ノズル10について説明する。
洗浄ノズル10のノズル本体18は、管内径が最小となる断面円形のスロート部(喉部)11と、スロート部11の上流側にあって流れ方向に縮径されたコンバージェント部12と、スロート部11の下流側にあって流れ方向に拡径されたダイバージェント部13とによって形成されるラバールノズル14を有している。なお、ラバールノズル14は、スロート部11の直径を、例えば、3~10mmとし、コンバージェント部12及びダイバージェント部13を、供給される圧縮気体が適切に断熱膨張されて低温に冷却されるような形状に、特性曲線法で設計(解析)し、求められた形状に加工して製作される。
【0020】
ノズル本体18には、ラバールノズル14の上流側に、図示しない圧縮気体供給機構から2~10気圧(例えば、5気圧)に加圧された圧縮気体Aの一例である圧縮空気15が供給される圧縮気体供給部16が設けられている。また、ラバールノズル14のダイバージェント部13の下流側に、流れ方向に徐々に拡径する加速冷却部17が設けられている。通常、パイプ内に供給された流体は、パイプの内側壁面付近(境界層領域)で速度が低下するが、同径のパイプでは、パイプの出口付近で速度低下を起こす境界層領域が広がり、パイプの中心以外では流体の速度が低下する。しかしながら、加速冷却部17は、この境界層領域を考慮して流れ方向に徐々に拡径し、圧縮空気15とノズル本体18の内側壁面23とによって形成される境界層領域において圧縮空気15の速度低下の影響を抑えるので、ノズル本体18の出口(噴射口19)付近でも広範囲で高速の流れを十分に確保できるようになっている。
【0021】
ここで、ノズル本体18は、圧縮気体供給部16、ラバールノズル14、及び加速冷却部17によって構成されている。また、圧縮気体供給部16、ラバールノズル14、及び加速冷却部17は、例えば、テフロン(登録商標)樹脂でそれぞれ形成され、一体化されている。なお、ノズル本体18は、一体形成して製造してもよい。スロート部11の中心からノズル本体18の下流側端部の噴射口19までの距離は、例えば、100~300mmとなって、圧縮空気15を十分に加速することができる。
【0022】
圧縮空気15は、スロート部11で音速となるように、圧縮気体供給機構で圧力が調整された後、圧縮気体供給部16に送られている。なお、圧縮空気15は、圧縮気体供給部16から亜音速(例えば、50m/sec程度)でコンバージェント部12に供給されている。圧縮空気15は、コンバージェント部12で加速され、スロート部11で音速(330m/sec程度)となり、ダイバージェント部13で更に加速され、例えば、400~500m/sec程度(例えば、500m/sec)の超音速となっている。なお、圧縮空気15は、ダイバージェント部13で、加速されて超音速となると共に、図2に示すように、温度が、およそ-60~-110℃程度(本実施の形態では、およそ-110℃)となる。
【0023】
また、圧縮気体供給機構には、図示しない温度及び湿度調整部が設けられ、圧縮気体供給部16に供給される圧縮空気15の温度を、例えば0~40℃(例えば、常温)に、湿度を例えば、露点温度換算で-20~0℃(例えば、-10℃)に調整している。また、スロート部11の上流側には整流板19aが設けられ、圧縮空気15の流れが揃えられて圧力損失が少なくなり、圧縮空気15がスムーズにスロート部11に供給される。
【0024】
また、洗浄ノズル10は、管状のノズル本体18内に供給される圧縮空気15の流れと同方向に洗浄液(例えば、純水)20を吐出する洗浄液供給管21を備えている。ここで、洗浄液20の温度を、-5~30℃(例えば、25℃)に調整している。洗浄液供給管21の吐出口22は、スロート部11の近傍かつノズル本体18の内側壁面23から離れた位置、例えば、スロート部11の中心から上流方向及び下流方向にぞれぞれスロート部11の直径の5倍(例えば、1倍)の長さの範囲以内である吐出口配置位置(図中、2点鎖線で示す)24内に配置されている。
【0025】
ここで、洗浄ノズル10は、圧縮気体供給部16に供給された圧縮空気15をコンバージェント部12、スロート部11、及びダイバージェント部13を介して、超音速かつ低温の流れとし、圧縮空気15中に吐出した洗浄液20を、圧縮空気15の高速の流れによって液滴30とし、更に液滴30が冷却されて微細な氷粒子31及び過冷却液滴(0℃以下に冷却された液滴)32のいずれか一方又は双方からなる洗浄材33を生成させ、この洗浄材33をノズル本体18の噴射口19から洗浄対象物(例えば、シリコンウエハ等)35に噴射して衝突させ、洗浄対象物35表面の汚染物質36を除去する図示しない洗浄装置に組み込まれて使用される。」
(イ) 図面
「【図1】
[図:0001427435000006.jpg]
」
ウ 引用文献3に記載された技術的事項
上記イより、引用文献3には、次の技術的事項(以下「引用文献3記載の技術的事項」という。〔 〕内に引用文献3における根拠箇所を併記した。)が記載されている。
「コンバージェント部12に供給された圧縮空気15、及びスロート部11に吐出された洗浄液20を断熱膨張させて冷却し〔段落0019、0022、0024〕、ダイバージェント部13でおよそ-60~-110℃程度となる圧縮空気15、及び洗浄液が冷却されて生成された氷粒子31及び過冷却液滴32の一方又は双方を噴射するのに使用される〔段落0022、0025〕ラバールノズル14において、前記スロート部11への液体を吐出する洗浄液供給管21を、前記スロート部11の近傍かつノズル本体18の内側壁面23から離れた位置に配置された吐出口22を有し、前記ノズル本体18の外側から洗浄液20を供給する構成とする〔段落0024、図1〕こと。」
(6)引用文献4の記載内容について
ア 引用文献4の書誌事項
引用文献4は、本願の優先日前に頒布され、原査定でも引用文献4として引用した文献である。
特開2008-270627号公報(平成20年11月6日出願公開)
イ 引用文献4の記載事項(下線は、当審にて付した。)
(ア)発明の詳細な説明
「【0019】
次に、図3を参照して、作動流体供給部16の配管系の構成を説明する。図3において、作動流体供給部16には、洗浄水供給源22およびエア供給源21から、洗浄液として使用される水および噴射媒体として使用される圧縮空気がそれぞれ供給される。アイスブラストノズル15に洗浄水と圧縮空気を供給する配管系について説明する。エア供給源21に接続されたエア供給管21aは、レギュレータ23、フィルタ24、冷凍式エアドライヤ25、および開閉バルブ27を介してアイスブラストノズル15に接続されている。開閉バルブ27を開閉制御することにより、アイスブラストノズル15に供給される圧縮空気がオンオフ制御される。
【0020】
レギュレータ23はエア供給配管21aに供給される圧縮空気の圧力を調整し、フィルタ24は共給される圧縮空気の異物を濾過して除去する。冷凍式エアドライヤ25は圧縮空気を冷却することにより水分を凍結させて除去する。エア供給配管21aに接続された温度センサ26は、供給される圧縮空気の温度を検出する。レギュレータ23を操作することにより、アイスブラストノズル15に供給される圧力を所定の圧力に設定することができる。
【0021】
洗浄水供給源22に接続された洗浄水供給配管22aは定量吐出型のポンプ28に接続されており、ポンプ28は供給された洗浄水を定量吐出する。吐出された洗浄水は、吐出水配管28aを介して冷却ユニット32に送給される。吐出水配管28aには、流量センサ29、逆止弁30、フィルタ31が介設されている。流量センサ29は吐出水配管28aを流れる洗浄液の流量を検出する。逆止弁30は洗浄液の逆流を防止し、フィルタ31は洗浄液中の異物を濾過して除去する。
【0022】
冷却ユニット32には冷媒循環部33によって冷却される不凍液などの冷媒が循環しており、吐出水配管28aから送給された洗浄液は、冷却ユニット32内を通過することによって所定の設定温度(本実施の形態においては、約5℃)に冷却され、この状態で冷水供給配管32aを介してアイスブラストノズル15に供給される。このとき、流量センサ29の検出結果に基づいて制御部(図示省略)によってポンプ28の駆動を制御することにより、アイスブラストノズル15には常に予め設定された規定流量の冷水が供給される。
【0023】
次に図4を参照して、アイスブラストノズル15の構造およびアイスブラストノズル15による洗浄媒体20の噴射態様について説明する。図4(a)に示すように、アイスブラストノズル15は、円筒形状のノズル本体部15aを主体としており、ノズル本体部15aには長手方向に貫通して内部流路孔17が形成されている。内部流路孔17の上流側は、エア供給配管21aが接続されて圧縮空気(矢印c)が導入される導入部17aとなっている。導入部17aの下流側には、内部流路孔17の流路径が流れ方向に沿って絞られた縮径部17b、流路径が最も小さく絞られた喉部17c、流路径が拡大する拡径部17dおよび流路径が漸増する加速冷却部17eが圧縮空気の流れ方向に順次設けられている。
【0024】
すなわち、上述構成のアイスブラストノズル15は、縮径部17b、喉部17cおよび拡径部17dを有するラバールノズルを形成している。縮径部17b、喉部17cおよび拡径部17dの形状は、供給される圧縮空気が断熱膨張により低温に冷却されるように設定される。喉部17cの上流側には、洗浄液を圧縮空気の流れと同方向に導入する液滴供給管18が設けられており、冷水供給配管32aから予め設定された規定量で供給される冷却された洗浄水は、液滴供給管18の先端部から微細な液滴19の状態で下流側へ放出される。
【0025】
導入部17aに0.2Mpa~1MPa程度の圧力で供給された圧縮空気の流れは、縮径部17bによって加速され(矢印d)、音速程度の流速で喉部17cを通過する。そして拡径部17dを通過して拡径部17d内に移動することにより圧力が低下してさらに加速され(矢印e)、断熱膨張により-110℃程度まで温度が低下する。そして液滴供給管18の先端部から流出して圧縮空気の流れによって微粒化した液滴19は、温度が低下した圧縮空気によって急激に冷却され、液滴19が凍結した凍結粒子20aおよび液滴19が過冷却のまま液滴の状態で存在する液滴20bの双方またはどちらか一方が生成される。ここでは凍結粒子20aおよび液滴20bを含む固液2相の噴霧粒子群を形成させるようにしている。そしてこのような固液2相の噴霧粒子群を含む圧縮空気の流れである洗浄媒体20は、徐々に拡径する加速冷却部17e内で加速されながら下流側へ高速で流動し(矢印f)、アイスブラストノズル15の先端部から噴射される。」
(イ)図面
「【図3】
[図:0001427435000007.jpg]
【図4】
[図:0001427435000008.jpg]
」
ウ 引用文献4に記載された技術的事項
上記イより、引用文献4には、次の技術的事項(以下「引用文献4記載の技術的事項」という。〔 〕内に引用文献4における根拠箇所を併記した。)が記載されている。
「導入部17aに供給された圧縮空気、及び喉部17cに供給された洗浄液を断熱膨張させて冷却し〔段落0024~0025〕、断熱膨張でおよそ-110℃程度まで温度が低下した圧縮空気15、及び洗浄液が冷却されることで生成した凍結粒子20aと過冷却の状態で存在する液滴19の双方またはどちらか一方を噴射するのに使用される〔段落0025〕アイスブラストノズル15において、喉部17cに洗浄液を供給する液滴供給管18を、洗浄水供給源22に接続され、喉部17cの上流側かつノズル本体部15aの長手方向に貫通して形成された内部流路孔17に位置する先端部と、を有し、前記ノズル本体部15aの外側から洗浄液を供給する構成とする〔段落0021~0023、図3、図4(a)〕こと。」
(7)本願補正発明8と引用発明1の対比
ア 引用発明1の「エアタンク33」は本願補正発明8の「ガス源」に相当し、同様に「空気」は「ガス」に、「ラバルノズル15」は「先細末広ノズル」にそれぞれ相当し、そして、引用発明1の「ラバルノズル15に導入する」は本願補正発明8の「先細末広ノズルまで送達する」に相当する。
イ 引用発明1の「水」は本願補正発明8の「液体」に相当し、同様に「供給する」は「注入する」に相当する。
そして、引用発明1の「水を前記ラバルノズル15のスロート部の近傍へ供給すること」と本願補正発明8の「液体源に結合される入口と、前記先細末広ノズルのスロートに前記先細末広ノズルの側壁から離れて位置付けられた出口と、を有し、前記先細末広ノズルの前記側壁を貫通して延びるインジェクタを通して、前記液体源からの液体を前記先細末広ノズルのスロート内へ注入すること」を対比すると、両者は「液体を前記先細末広ノズルのスロート内へ注入すること」という点に限り一致する。
ウ 引用発明1の「ラバルノズル15を用いることによって」は本願補正発明8の「先細末広ノズルに流すことによって」に相当し、同様に「急冷する」は「冷却する」に相当する。
エ 引用発明1の「急冷された空気を研磨パッド13上へと噴出させること」は本願補正発明8の「冷却されたガスを研磨パッド上へと方向付けること」に相当する。
オ 引用発明1の「化学機械的研磨法による温度制御方法」は本願補正発明8の「化学機械研磨システムの温度制御方法」に相当する。
(8)本願補正発明8と引用発明1の一致点及び相違点
したがって、本願補正発明8と引用発明1は、次のアの点で一致し、イの点で相違する。
ア 一致点
ガス源からのガスを先細末広ノズルまで送達することと、
液体を前記先細末広ノズルのスロート内へ注入することと、
前記ガスを前記先細末広ノズルに流すことによって前記ガスを冷却することと、
前記冷却されたガスを研磨パッド上へと方向付けることと、
を含む、化学機械研磨システムの温度制御方法。
イ 相違点
液体を先細末広ノズルのスロート内へ注入することについて、本願補正発明8が「液体源に結合される入口と、前記先細末広ノズルのスロートに前記先細末広ノズルの側壁から離れて位置付けられた出口と、を有し、前記先細末広ノズルの前記側壁を貫通して延びるインジェクタを通して」行うのに対して、引用発明1は、液体を注入する手段(インジェクタ)の具体的な構造が明らかでない点。
(9)相違点の検討
ア ラバルノズルに関する周知技術について
(ア)周知技術を例示する引用文献3記載の技術的事項について
上記(5)ウの引用文献3記載の技術的事項の「コンバージェント部12に供給された圧縮空気15、及びスロート部11に吐出された洗浄液20を断熱膨張させて冷却し、ダイバージェント部13でおよそ-60~-110℃程度となる圧縮空気15、及び洗浄液が冷却されて生成された氷粒子31及び過冷却液滴32の一方又は双方を噴射するのに使用されるラバールノズル14」は、「入口に供給された気体とスロート部に供給された液体を断熱膨張させて冷却し、低温化した気体、及び液体が低温化された氷粒や過冷却液滴を噴射する」機能を備えたラバルノズルである。
そして、引用文献3記載の技術的事項における「前記ノズル本体18の外側から洗浄液20を供給する」点は、図1の図示内容も考慮すれば、洗浄液を供給する洗浄液供給管21について、その入口が何らかの液体源に結合されており、かつ、洗浄液供給管21はノズル本体18の内側壁面23を貫通して延びるものとして理解される。
したがって、引用文献3記載の技術的事項の「前記スロート部11への液体を吐出する洗浄液供給管21を、前記スロート部11の近傍かつノズル本体18の内側壁面23から離れた位置に配置された吐出口22を有し、前記ノズル本体18の外側から洗浄液20を供給する構成とすること」は、「前記スロート部11への液体を吐出する洗浄液供給管21を、液体源に結合される入口と、前記スロート部11の近傍かつノズル本体18の内側壁面23から離れた位置に配置された吐出口22と、を有し、前記ノズル本体18の前記内側壁面23を貫通して延びる構成とすること」であるといえ、相違点の内容に沿って換言すると「液体の供給管(スロート部11への液体を吐出する洗浄液供給管21)を、液体源に結合される入口と、ラバルノズルのスロートに前記ラバルノズルの側壁から離れて位置付けられた出口(スロート部11の近傍かつノズル本体18の内側壁面23から離れた位置に配置された吐出口22)と、を有し、前記ラバルノズルの前記側壁(前記ノズル本体18の前記内側壁面23)を貫通して延びる構成とすること」であるといえる。
(イ)周知技術を例示する引用文献4記載の技術的事項について
上記(6)ウの引用文献4記載の技術的事項の「導入部17aに供給された圧縮空気、及び喉部17cに供給された洗浄液を断熱膨張させて冷却し、断熱膨張でおよそ-110℃程度まで温度が低下した圧縮空気15、及び洗浄液が冷却されることで生成した凍結粒子20aと過冷却の状態で存在する液滴19の双方またはどちらか一方を噴射するのに使用されるアイスブラストノズル15」は、「入口に供給された気体とスロート部に供給された液体を断熱膨張させて冷却し、低温化した気体、及び液体が低温化された氷粒や過冷却液滴を噴射する」機能を備えたラバルノズルである。
そして、引用文献4記載の技術的事項における洗浄液を供給する液滴供給管18について、図4(a)の図示内容も考慮すれば、「洗浄水供給源22に接続され」ることは「入口が洗浄水供給源22に接続され」ることと理解され、同様に「前記ノズル本体部15aの外側から洗浄液を供給する構成とする」は「ノズル本体部15aを貫通して延びる」ものとして理解される。
したがって、引用文献4記載の技術的事項の「喉部17cに洗浄液を供給する液滴供給管18を、洗浄水供給源22に接続され、喉部17cの上流側かつノズル本体部15aの長手方向に貫通して形成された内部流路孔17に先端部を有し、前記ノズル本体部15aの外側から洗浄液を供給する構成とすること」は、「喉部17cに洗浄液を供給する液滴供給管18を、洗浄水供給源22に結合される入口と、喉部17cの上流側かつノズル本体部15aの長手方向に貫通して形成された内部流路孔17に位置する先端部と、を有し、前記ノズル本体部15aを貫通して延びる構成とすること」であるといえ、相違点の内容に沿って換言すると、「液体の供給管(喉部17cに洗浄液を供給する液滴供給管18)を、液体源(洗浄水供給源22)に結合される入口と、ラバルノズルのスロートに前記ラバルノズルの側壁から離れて位置付けられた出口(喉部17cの上流側かつノズル本体部15aの長手方向に貫通して形成された内部流路孔17に位置する先端部)と、を有し、前記ラバルノズルの前記側壁(ノズル本体部15a)を貫通して延びる構成とすること」であるといえる。
(ウ)周知技術の認定
そうすると、引用文献3記載の技術的事項、及び引用文献4記載の技術的事項は、いずれも、「入口に供給された気体とスロート部に供給された液体を断熱膨張させて冷却し、低温化した気体、及び液体が低温化された氷粒や過冷却液滴を噴射する」のに用いられるラバルノズルにおいて、「液体の供給管を、液体源に結合される入口と、ラバルノズルのスロートに前記ラバルノズルの側壁から離れて位置付けられた出口と、を有し、前記ラバルノズルの前記側壁を貫通して延びる構成とすること」を内容としており、このように用いられるラバルノズルにおいて、当該構成は周知技術であると認められる。
イ 引用発明1への周知技術の適用
引用発明1の「急冷された空気を研磨パッド13上へと噴出させること」は、引用文献1の段落0017~0020の記載からみて、ラバルノズル15が、断熱膨張による急冷効果により、氷粒子及び過冷却液滴を含む圧縮空気のジェット流を研磨パッド13上に噴出させるものであるが、ラバルノズル15は、上記ア(ウ)の周知技術に係るラバルノズルと機能が共通するものである。また、引用文献1、引用文献3及び引用文献4は、いずれも半導体デバイスの製造に関するものであり、引用発明1と当該周知技術は技術分野も共通するといえる。
そして、当該周知技術は上記相違点におけるインジェクタの構成に相当すると認められるところ、引用発明1で用いられるラバルノズル15による水の供給態様(引用文献1の図3にスロートの近傍への水の供給を調整するバルブ34を含む矢印線として図示されたものを参照。)を具体化するために、同じ機能を有するラバルノズルにおける上記周知技術である液体の供給管の配置を採用することは、化学機械研磨中の温度制御を効率的に行うために選択し得た設計的事項であり、圧縮空気に液体をスロート部近傍で液体を供給するという観点からも格別の困難性は存在しない。
したがって、本願補正発明8は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである
さらに、本願補正発明8は、引用発明1と同様に、断熱膨張により冷却されたガスと、凍結された液体の融解潜熱を利用して冷却を行うもの(本願の明細書の段落0074、引用文献1の段落0020を参照。)であり、化学機械研磨中の温度制御を効率的に行うことに対して、上記相違点により、引用発明1と比較して特異な効果、あるいは格別の効果を奏する旨の事情も認められない。
(10)請求の理由(審判請求書)における請求人の主張
ア 請求人の主張内容
(ア)本願補正発明8が引用文献に開示されていないことについて
請求人は、請求の理由の「3-4.本願発明と引用発明の対比」において、引用文献3及び引用文献4の液体の供給管がノズルのスロート部よりも上流で側壁を貫通して中央にも延び、90度折れ曲がってラバーノズルのスロート部まで長い距離にわたって延びる構成により、洗浄液が供給管を流れる間、上流から流れる気体の温度の影響を受けるため、所望の温度で洗浄液をスロート部に届けることが困難となる問題がある一方で、本願補正発明8は、引用文献1~5には開示されない「液体源に結合される入口と、前記先細末広ノズルのスロートに前記先細末広ノズルの側壁から離れて位置付けられた出口と、を有し、前記先細末広ノズルの前記側壁を貫通して延びるインジェクタを通して、前記液体源からの液体を前記先細末広ノズルのスロート内へ注入すること」という特徴を備えることを指摘する。
(イ)本願補正発明8の効果について
そして、本願の請求項1に関する「インジェクタを通って流れる液体は、先細末広ノズルのスロートの側壁を貫通して出口まで延びるため、上流側から流れるクーラントガスの温度の影響を受けることなく、スロートの側壁から離れたインジェクタの出口に届けられるため、所望の温度の液体を均一にクーラントガスに分散させることができる効果」があり、これにより、「研磨面を均一に冷却することができる効果」があることは、本願補正発明8においても同様であることを主張する。
イ 上記アの主張の検討
これに対して、上記の本願補正発明8の「液体源に結合される入口と、前記先細末広ノズルのスロートに前記先細末広ノズルの側壁から離れて位置付けられた出口と、を有し、前記先細末広ノズルの前記側壁を貫通して延びるインジェクタを通して、前記液体源からの液体を前記先細末広ノズルのスロート内へ注入すること」については、上記(9)でも検討したとおり、引用文献3及び引用文献4記載の技術的事項も備えており、本願の図3、引用文献3の図1、引用文献4の図4(a)を参酌しても、いずれも、液体の供給手段のインジェクタの出口がノズルの側壁から離れて位置付けられ、ノズルの側壁を貫通して90度折れ曲がってスロートに延びているものが図示され、本願補正発明8と引用文献3及び引用文献4記載の技術的事項がこの点で相違しないことが明らかである。
また、上記ア(ア)の「引用文献3及び引用文献4の液体の供給管がノズルのスロート部よりも上流で側壁を貫通して中央にも延び、90度折れ曲がってラバーノズルのスロート部まで長い距離にわたって延びる構成により、洗浄液が供給管を流れる間、上流から流れる気体の温度の影響」、及び上記ア(イ)の「インジェクタを通って流れる液体は、先細末広ノズルのスロートの側壁を貫通して出口まで延びるため、上流側から流れるクーラントガスの温度の影響を受けることなく、スロートの側壁から離れたインジェクタの出口に届けられるため、所望の温度の液体を均一にクーラントガスに分散させることができる効果」は、本願補正発明8のインジェクタが貫通するノズルの側壁の部位がスロートであり、引用文献3及び引用文献4に記載されたものがスロートより上流であることを前提として主張されているが、本願補正発明8に関して、インジェクタが貫通するノズルの側壁の部位がスロートに限定されていることはないから、当該主張は請求項8の記載に基づいたものとはいえない。
また、上流側から流れるクーラントガスの温度が液体に及ぼす影響について一応みても、その具体的な内容や根拠が明細書には記載がなく、技術常識から明らかともいえないし、むしろ、本願明細書の段落0072に、インジェクタはノズルの先細区画202内、スロート204内、末広区画206内、末広区画206の直後のいずれの位置に水滴を注入しても良いことが記載されていることを踏まえれば、本願補正発明8と引用文献3~4記載のものとの差違を推認させる根拠になるとはいえない。
以上のとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。
(11)本願補正発明8の進歩性
したがって、本願補正発明8は、引用発明1、及び引用文献3及び引用文献4に例示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(12)本件補正の独立特許要件についてのまとめ
上記(11)より、本願補正発明8は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するものである。
4 本件補正についてのむすび
上記3のとおりであるから、本件補正は、請求項8に関し、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~14に係る発明は、令和5年7月5日提出の手続補正書により補正をした特許請求の範囲の請求項1~14に記載した事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項8に係る発明(以下「本願発明8」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載した事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶理由
原査定の理由となった拒絶理由は、本願の請求項1~14に係る発明を対象とするものであるところ、そのうち請求項8に係る発明に対する拒絶理由は以下のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項8に係る発明は、引用発明1、及び引用文献3~引用文献5に例示される周知技術に基いて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用文献
原査定の拒絶理由で引用された文献は、前記第2の[理由]3(3)と同じものに引用文献5を加えた、次のとおりのものである。
引用文献1:特開2013-99814号公報
引用文献3:特開2007-73615号公報
引用文献4:特開2008-270627号公報
引用文献5:特開2018-1789号公報
そして、引用文献1、引用文献3、及び引用文献4の記載事項は、前記第2の[理由]3(4)~(6)に記載したとおりである。
また、引用文献5の記載事項は省略する。上記2における「引用文献3~引用文献5に例示される周知技術」は、上記第2で検討したラバルノズルに関する周知技術であって、必ずしも引用文献5を例示しなくとも、上記第2(9)アのとおり、引用文献3及び4の例示で認定できるものである。
4 対比・判断
本願発明8は、本願補正発明8を特定するために必要な事項である「液体源に結合される入口と、前記先細末広ノズルのスロートに前記先細末広ノズルの側壁から離れて位置付けられた出口と、を有し、前記先細末広ノズルの前記側壁を貫通して延びるインジェクタ」に関し、「先細末広ノズルの側壁から離れて」という限定事項、及び「前記先細末広ノズルの前記側壁を貫通して延びる」という限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明8の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明8が、前記第2の[理由]3(2)~(11)に記載したとおり、引用発明1、及び引用文献3及び引用文献4に例示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明8も、同様に、引用発明1、及び引用文献3及び引用文献4に例示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 本願発明8の進歩性について
上記4のとおり、本願発明8は、引用発明1、及び引用文献3及び引用文献4に例示される周知技術により当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第5 むすび
第4のとおり、本願発明8は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-002434