特許拒絶査定不服審判
2024-008943
研磨装置
- 審判番号
- 2024-008943
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-142641
- 請求日
- 2024年05月30日
- 審決日
- 2025年09月11日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】フェアウェイ エレクトロニック カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人東海特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 本庄 亮太郎
- 審判官 田々井 正吾
- 審判官 鈴木 貴雄
- 分類
- P18 .113-Z (B24B) / P18 .121-Z (B24B) / P18 .56 -Z (B24B) / P18 .572-Z (B24B) / P18 .575-Z (B24B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-142641「研磨装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 3月21日出願公開、特開2024- 38558〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件審判に係る出願は、令和4年9月8日にされた特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和5年9月29日付け:拒絶理由の通知
令和6年1月17日 :手続補正書、意見書の提出
同年 2月29日付け:拒絶査定
同年 5月30日 :本件審判(拒絶査定不服審判)の請求
本件審判の請求と同時 :手続補正書の提出
第2 令和6年5月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年5月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正のうち、特許請求の範囲の請求項1についての補正は、以下の(1)本件補正前の請求項1(すなわち、令和6年1月17日提出の手続補正書により補正がされた特許請求の範囲の請求項1)を、以下の(2)本件補正後の請求項1に補正するものである(下線部は、本件補正により記載を変更した個所として請求人が付したものである。)。
(1)本件補正前の請求項1
「【請求項1】
電気制御基板と電池セットとを備え、前記電気制御基板が前記電池セットに接続された腰部掛止装置と、
手持ち平衡体である、ワックスがけ装置と、
一端が前記腰部掛止装置に接続され、他端が前記ワックスがけ装置に接続された導管と、を含む研磨装置。」
(2)本件補正後の請求項1
「【請求項1】
電気制御基板と電池セットとを備え、前記電気制御基板が前記電池セットに接続された腰部掛止装置と、
手持ち平衡体であり、前記平衡体は、研磨をより安定させるワックスがけ装置と、
一端が前記腰部掛止装置に接続され、他端が前記ワックスがけ装置に接続された導管と、を含む研磨装置。」
2 本件補正の適否(補正の目的について)
特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の請求項1における研磨装置の構成要素の一つである「手持ち平衡体である、ワックスがけ装置」に関して、「平衡体は、研磨をより安定させる」ことの限定を付加するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された研磨装置と、本件補正後の請求項1に記載される研磨装置とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、いわゆる「特許請求の範囲の限定的減縮」を目的とするものに該当する。
3 本件補正の適否(独立特許要件について)
本件補正は、上記2のとおり、特許法第17条の2第5項第2号を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
<新規性(特許法第29条第1項第3号)及び進歩性(同条第2項)について>
(1)本件補正発明の認定
本件補正発明は、上記1(2)に示した、令和6年5月30日に提出の手続補正書により補正がされた特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2)引用発明の認定
ア 引用文献に記載された事項
原査定で引用され、本件出願前に出願公開がされた特開2018-42640号公報(公開日:平成30年3月22日、以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている(下線部は、当審が付したものである。)。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】
第1の面と、前記第1の面とは反対の第2の面とを有する取付フレームと、
洗浄パッド又はブラシを支持し、前記第1の面に配置された複数の可動部と、
前記第2の面に配置され前記複数の可動部に各々対応する複数のモータを有し、前記複数の可動部を前記第1の面に平行な面内において移動させることが可能に構成された複数の駆動部と
を具備する洗浄装置。
・・・
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の洗浄装置であって、
前記複数のモータは、それぞれ扁平なコアレスモータで構成される
洗浄装置。」
(イ)発明の詳細な説明
「【技術分野】
【0001】
本発明は、往復揺動動作するパッドやブラシで床面等を洗浄したり磨いたりする洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の床面艶出機や床面研磨機、あるいは床面洗浄機は、モータの回転に従ってモータ軸に連結したディスク状(円盤状)に造ったパッドやブラシを回転することによって、床面を磨いたり洗浄したりしていたが、パッド又はブラシが円形であるため、床面の角張った隅部にはパッド又はブラシによる洗浄作用を及ぼすことができなかった。
【0003】
特に、階段を一段毎に磨いたり洗浄したりする場合等には、洗浄残りの問題に加えて、操作性や安全面の問題もあった。そこで、これらの回転式パッド等での床面洗浄装置に替えて、振動式や揺動式ポリッシャが提案された。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1や特許文献2の電動床面ポリッシャ-では、床面の隅部を磨いたり洗浄したりすることはできるが、階段を一段ずつ洗浄等する場合には、電動モータの高さが高いために重心位置が高くなり、段を移動する際などに少しでも傾くと、ポリッシャが転倒したり階段から落下する危険性があり、安全面での難題がある。また、振動機構が複雑であり、全体の重量や容量がかなり重く大きくなっているため、操作性に問題がある。
【0010】
また、特許文献3の床面清掃装置では、モータの駆動シャフトに掛かる負荷を低減することはできるとしても、他の機構部分の構成はやはり複雑であり、重心位置も高く不安定であり、仮にこの構成で矩形のパッドを揺動させるようにして床面の隅部や階段の隅部を磨いたり洗浄したりするようにしたとしても、依然として操作性の課題が残る。
・・・
【0013】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、床面の磨きや洗浄のみならず、階段や立設部や、さらには階段の蹴上部の洗浄・清掃にも配慮して、駆動音が静かで取り回ししやすい、洗浄装置を提供することにある。
・・・
【発明を実施するための形態】
・・・
【0028】
洗浄装置100は、装置本体1と、操作竿2とを有する。
・・・
【0030】
図2は、装置本体1の内部構造を示す概略図であり、Aは装置本体1が図1Aの状態のY軸方向から見た側断面図、Bは一部透過底面図である。図2Aは、図2Bにおける[A]-[A]線方向の断面図に相当する。
【0031】
図2Aに示すように、装置本体1は、取付フレーム11と、複数の可動部12と、複数の駆動部13と、カバー14と、ユニバーサルジョイント15とを有する。
・・・
【0033】
複数の可動部12は、取付フレーム11の下面111(第1の面)にそれぞれ取り付けられている。本実施形態では2つの可動部12が取付フレーム11の長辺方向に間隔をおいて配置される。各可動部12は、洗浄パッド12Pを保持する矩形の可動板121を有しており、これら可動板121は、取付フレーム11と略平行に配列されている。
【0034】
複数の駆動部13は、複数の可動部12に各々対応する(1対1で対応する)複数のモータ13Mを有する。複数のモータ13Mは、取付フレーム11の上面112(第2の面)に配置され、本実施形態では2つのモータ13Mが各可動板121の直上に配置される。各駆動部13は、後述するように、各可動板121を取付フレーム111の下面に平行な面内において移動させることが可能に構成される。
【0035】
操作竿2の基端部(装置本体1側の端部)は、ユニバーサルジョイント15に結合されていて、装置本体1に対して3軸まわりに回動自在に構成されている。また、操作竿2は手元側の先端部及びその近傍には、2つのハンドル21、22が取り付けられている。一方のハンドル21は、操作竿2の先端部を屈曲させた端部に設けられ、利用者が一方の手で保持しやすいように滑り止めの把持部を有する。もう一方のハンドル22は、ハンドル21の近傍に操作竿2に直角に接合された短い竿で構成され、利用者が他方の手で保持しやすいように滑り止めの把持部を有する。
・・・
【0037】
伸縮竿部24の中空パイプ23側の端部は、伸縮竿部24が最大限伸長したときにノブ26の図示しない雄ネジ部に当接するフランジ部を有し、これら雄ネジ部とフランジ部との当接により伸縮竿部24がそれ以上伸長できないように構成される。また、中空パイプ23の端部25は、伸縮竿部24を最も縮小させたときに、ユニバーサルジョイント15の外周面に嵌合し、ユニバーサルジョイント15を可動不能に保持する保持端部として構成される(図9参照)。
・・・
【0039】
後述するように、可動板121及び洗浄パッド12Pは駆動部13によって高速の振動動作をし、それにより洗浄パッド12Pの接触部(床面等)を洗浄・清掃する、所謂ポリッシャとして動作する。床面等に、別途、洗浄水や洗剤が供給されてもよいことは言うまでもない。
・・・
【0044】
各可動板121の下面には、図示しない面ファスナが接着されている。洗浄パッド12Pは面ファスナによって可動板121に接合されるが、外力によって接合を離すことで、容易に交換することもできる。洗浄パッド12Pは代表的なものはポリエステル不織布に鉱物粒子を塗布したポリッシャ用のパッドであるが、他の素材や、洗浄ブラシであってもよい。
・・・
【0060】
<電気的構成>
図5は、本発明の実施形態に係る洗浄装置100の電気ブロック図である。
【0061】
コントローラ30は、制御回路301と、モータ駆動回路302と、操作入力部303と、表示部304と、二次電池305と、二次電池電圧検出回路306とを有する。
【0062】
制御回路301は、モータ13Mを駆動するモータ駆動回路302を制御する。制御回路302(当審注:「制御回路301」の誤記と認める。)は、典型的には、インターフェイスおよびCPU、メモリ等で構成される。2つのモータ13Mをモータ1、モータ2とすると、制御回路301は、それらを各々が独立で回転制御できるように構成されている。また、制御回路301は、モータ1、モータ2を同期させて回転するように回転制御することもできる。さらに、モータ1、モータ2の回転方向を変えたり、一方のみを停止・起動したりも、容易に行えるよう、モータ駆動回路302は、モータ1、モータ2用の独立した駆動回路を有している。モータ駆動回路302は、電源コード31(図1参照)を通じて、各モータ13M(モータ1、モータ2)に電気的に接続されている。
【0063】
制御回路301には、さらに操作入力部303、表示部304が接続される。また、二次電池電圧検出回路305が接続されていて、二次電池305に接続される。即ち、コントローラ30は洗浄装置用のポータブルの電源・操作装置として構成される。ただし、コントローラ30は、商用電源等のAC電源に接続されてもよい。またはこれらの併用が可能となるように、電源制御回路を構成していてもよい。なお、少なくとも操作入力部303のうち、モータ駆動ON/OFFスイッチのみ、洗浄装置100の装置本体1に設けるようにしてもよい。
【0064】
<使用状態の説明>
図6は、以上のように構成される本実施形態の洗浄装置100の使用状態の説明図である。ここでは、典型的な階段の洗浄・清掃作業を洗浄装置100で行う場合を説明する。
・・・
【0067】
なお当然ながら、踏面V1及び蹴上面V2は、屋内の階段であれば、床面材料と同じような色や模様が施された、シート状の床材を貼り付けて仕上げている場合が多い。従って、洗浄に使用する洗剤や艶出しに使用するワックスなども、床面用途のものを使用することになる。
【0068】
このような階段を作業者Uが清掃・洗浄・艶出し作業など(以下洗浄作業)を行う場合、階段からの転落が最も懸念される。そこで、作業者Uの脚などに絡みつきやすいAC電源線などはなくし、図のようにポータブルのコントローラ30を作業者Uの腰などにウエストポーチ状に取り付け、若しくは肩掛けベルトなどで括り付けられる。コントローラ30から洗浄装置100の装置本体1には電源コード31が接続されていて、電源コード31がばらつかないように操作竿2にコードクリップ27で一部が固定された状態での洗浄作業となっている。
・・・
【0075】
また、モータ13Mは、扁平なコアレスモータで構成される。これにより、取付フレーム11の上部が突出せず、装置本体1が薄型化・小型化でき、携帯に便利で、装置本体1の重心が低く抑えられるので、洗浄・清掃時の姿勢が安定する。
・・・
【0077】
そして、モータ13Mを駆動させる電源装置(コントローラ30)は、取付フレーム11若しくは操作竿2から切り離された状態で清掃・洗浄作業が可能に構成されている。これにより、操作竿2を操作しての清掃作業において装置本体1の重心が低く抑えられているので、姿勢が安定して装置本体1が転倒する危険性も少なく、清掃・洗浄作業が容易で、さらに持ち運びがし易い。また、電源部を二次電池で駆動するにも好適である。
・・・
【0089】
<さらに他の実施例の説明>
図9は、本実施形態に係る洗浄装置100の他の実施例の使用状態の説明図である。
【0090】
本実施形態の洗浄装置100において、操作竿2の伸縮竿部24を最も縮小させると、操作竿2(中空パイプ23)のユニバーサルジョイント15側の端部25が、ユニバーサルジョイント15の支軸に被さるように構成される。このようにしてノブ26を締め込んで伸縮竿部24の位置が固定されると、ユニバーサルジョイント15の作用を全く無効にする事ができる。即ち、ユニバーサルジョイント15の可動不能状態が保持される。
【0091】
また、この際の操作竿2の長さは最も短い状態となる。この様な状態にある洗浄装置100の装置本体1は、操作竿2に対して固定されるので持ち運びがしやすく、また、階段や床面以外の、例えば壁面Wや立設した被洗浄物を横から押圧しながら洗浄する場合に好適な構成となる。市販のオービタルサンダーと類似の磨き作業ができるツールにも使用できるということで、洗浄パッド12Pの素材をそのような磨き作業用のものに取り替えるなどで、洗浄装置100の有効活用にも繋がる。」
(ウ)図面
「【図1】
[図:0001431706000001.jpg]
【図2】
[図:0001431706000002.jpg]
【図5】
[図:0001431706000003.jpg]
【図6】
[図:0001431706000004.jpg]
【図9】
[図:0001431706000005.jpg]
」
イ 引用文献の記載からわかること
上記アから、引用文献には、以下の事項が記載されている、といえる。
(ア)引用文献の段落【0028】及び【0060】~【0062】の記載、並びに、図1及び図5~6の図示内容から、引用文献に記載された「洗浄装置100」は、装置本体1及び操作竿2、コントローラ30、並びに、電源コード31を含んで構成されるといえる。また、引用文献の段落【0001】~【0003】、【0039】、【0044】、【0067】~【0068】及び【0091】の記載から、当該「洗浄装置100」は、床面や、階段の踏面V1及び蹴上面V2等に対し、洗剤を使用した洗浄や、ワックスを使用した艶出しといった、清掃・洗浄・艶出し作業などの洗浄作業(段落【0067】~【0068】)をするための、いわゆる「ポリッシャ」として動作し(段落【0039】)、また、「磨き作業」(段落【0091】)つまり「研磨」を行う機能も有することがわかる。
(イ)引用文献の段落【0060】~【0063】の記載から、上記(ア)の「コントローラ30」は、制御回路301と二次電池305とを備えており、制御回路301は、二次電池電圧検出回路305を介して二次電池305に接続されることがわかる。また、引用文献の段落【0068】の記載及び図6の図示内容から、当該コントローラ30はポータブルであって、作業者Uの腰などにウエストポーチ状に取り付けることが可能なものであるといえる。
(ウ)引用文献の段落【0035】の記載、及び、【図6】の図示内容から、上記(ア)の「装置本体1及び操作竿2」は、ユニバーサルジョイント15により回動自在に結合されており、操作竿2のハンドル21、22を作業者Uが手で保持することで、装置本体1による上記(ア)の清掃・洗浄・艶出し・研磨等の作業を行うことができるといえる。
そして、引用文献の段落【0075】、【0077】の記載から、当該装置本体1は、薄型化・小型化でき、携帯に便利で、重心が低く抑えられて上記作業時の姿勢が安定する構造であることがわかり、引用文献の【図2】のBのZ軸方向からみた一部透過底面図によれば、当該装置本体1は、平面視で略上下対称、左右対称、又は、平面視でユニバーサルジョイント15が固定される略中心位置に対して点対称に配置された構造をしていることが看取される。
(エ)引用文献の段落【0062】の記載から、上記(ア)の「電源コード31」は、モータ駆動回路302と、各モータ13M(モータ1、モータ2)とを電気的に接続するものであって、段落【0031】、【0033】、【0061】、図6と併せてみれば、一端がコントローラ30に接続され、他端が装置本体1に接続されているといえる。
ウ 引用発明
上記ア及びイから、引用文献に記載された事項を本件補正発明に合わせて整理すると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている、といえる。
「制御回路301と二次電池305とを備え、制御回路301が二次電池305に接続された、作業者Uの腰などにウエストポーチ状に取り付けることが可能なコントローラ30と、
操作竿2のハンドル21、22を作業者が手で保持することで携帯可能であって、平面視で対称に配置された構造を有し、重心が低く抑えられて、清掃・洗浄・ワックスを使用した艶出し・研磨等の作業時の姿勢が安定する装置本体1と、
一端がコントローラ30に接続され、他端が装置本体1に接続された電源コード31と、
を含む洗浄装置100。」
(3)本件補正発明と引用発明との対比、判断
ア 本件補正発明と引用発明との相当関係
本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下の相当関係が認められる。
(ア)引用発明における「制御回路301」は、その機能・作用からみて、本件補正発明における「電気制御基板」に相当し、同様に、「二次電池305」は「電池セット」に相当する。また、引用発明における「コントローラ30」は、作業者Uの腰などにウエストポーチ状に取り付けることが可能なものであるから、本件補正発明における「腰部掛止装置」に相当する。
(イ)引用発明の「装置本体1」は、操作竿2のハンドル21、22を作業者が手で保持することで携帯可能なものであるから、「手持ち」であるといえ、また、平面視で略対称に配置された構造を有していること及び重心が低く抑えられて清掃・洗浄・ワックスを使用した艶出し・研磨等の作業時の姿勢が安定する構造であることから、本件補正発明における、「手持ち平衡体」であり「研磨をより安定させる」「ワックスがけ装置」に相当するといえる。
(ウ)引用発明における「電源コード31」は、その機能・作用からみて、本件補正発明における「導管」に相当する。また、引用発明における「洗浄装置100」は、磨き作業も可能であるから、本件補正発明における「研磨装置」に相当する。
イ 一致点・相違点、及び、新規性の判断
上記アから、本件補正発明と引用発明とは次の<一致点>で一致し、相違点は存在しない。
<一致点>
「電気制御基板と電池セットとを備え、前記電気制御基板が前記電池セットに接続された 腰部掛止装置と、
手持ち平衡体であり、前記平衡体は、研磨をより安定させるワックスがけ装置と、
一端が前記腰部掛止装置に接続され、他端が前記ワックスがけ装置に接続された導管と、を含む研磨装置。」
したがって、本件補正発明は、引用発明である。
ウ 予備的見解(進歩性の判断)
なお仮に、引用発明の装置本体1が「平衡体」であるとまでいえない場合について、予備的な見解を以下に示す。
この場合、引用発明の装置本体1が「平衡体」であるか不明な点で、本件補正発明のワックスがけ装置と相違する(以下「仮の相違点」という。)。
しかしながら、上記上記(2)イ(ウ)のとおり、引用発明の装置本体1は、薄型化・小型化でき、携帯に便利で、重心が低く抑えられて、作業研磨時の姿勢が安定するような構造とすることが示唆されている。そして、手持ちで操作する装置一般において、装置の重量バランスに鑑みて平衡となるように当該装置の各要素を配置することは、例示するまでもなく常套手段であるといえるから、引用発明においても、当該仮の相違点に係る本件補正発明のように、装置本体1の重量バランスを平衡となるような設計とすることも、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(4)請求人の審判請求書での主張
ア 審判請求人は、審判請求書において、概ね、以下の点を主張する。
(ア)引用発明は、ワックスがけ装置の本体を操作竿2により操作するもので、操作竿2の両手での操作が必要不可欠であるのに対し、本件補正発明はワックスがけ装置の本体を手で直接接触して操作するもので、片手で直接に力を加える操作が可能である点。
(イ)引用発明では装置本体1は長方形であるのに対して、本件補正発明ではワックスがけ装置の底面は円形に設計されるため、ブラシレスモータの円心からワックスがけ装置の底面の各辺または各頂点までの距離は等しく、すなわち平衡体である点。
イ 上記アの主張について検討する。
(ア)まず上記ア(ア)の点についてみると、本件補正発明では、ワックスがけ装置が「手持ち」であることは特定されているものの、その手持ちのための具体的な構造等については特定されておらず、ワックスがけ装置を直接手に持って作業するものに限られず、引用発明の操作竿2のように、手持ちのための間接的な部位を備えるようにして操作するものも、発明の範囲に含まれるといえる。
(イ)また、上記ア(イ)の点についてみると、「平衡体」に関して、本願明細書には、段落【0025】に「ワックスがけ装置14は平衡体であり、研磨をより安定させる」という記載があるのみである。したがって、明細書の記載を参酌すると、本件補正発明の「平衡体」とは「研磨が安定する程度に姿勢が平衡であるもの」と解することができる。そして、「平衡」という用語は、一般的な日本語の解釈では、つりあいがとれることを意味するといえることから、本件補正発明の「平衡体」とは、円形に設計されるものに限定されることなく、単に「形状・重量的につりあいのとれたもの」と解するのが相当である。他方、引用発明においても、上記(2)イ(ウ)で述べたとおり、装置本体1は、平面視で対称に配置された構造を有し、薄型化・小型化でき、携帯に便利で、重心が低く抑えられて研磨等の作業時の姿勢が安定する構造であるといえるものである。
また、仮に相違するとしても、上記(3)ウのとおり、手持ちで操作する装置一般において、装置の重量バランスに鑑みて平衡となるように当該装置の各要素を配置することは、例示するまでもなく常套手段であるといえ、引用発明の装置本体1においても、当然に重量バランスを考慮した配置となるよう設計されるものといえる。
(ウ)したがって、請求人が主張する上記ア(ア)~(イ)の点は、採用することはできない。
(5)独立特許要件についての小括
上記(1)~(4)のとおり、本件補正発明は、引用発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。また仮に、上記仮の相違点で相違するとしても、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 補正の却下の決定についてのむすび
本件補正は、上記3のとおり、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しているものと認められるので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本件発明について
1 本件発明の認定
令和6年5月30日にされた手続補正は、上記第2のとおり却下されたので、本件の請求項1に係る発明は、令和6年1月17日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、また、請求項2~6に係る発明は、当該請求項1に係る発明を願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項2~6に記載された事項によりそれぞれ限定したものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)の請求項1に記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定における本件発明に対する拒絶の理由は、本件発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、又は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 判断
本件発明は、上記第2の[理由]2での検討から明らかなように、本件補正発明から、「平衡体は、研磨をより安定させる」ことの限定事項を削除したものである。
そうすると、本件補正発明が、上記第2の[理由]3で検討したとおり、引用発明と同一である、又は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明から上記限定事項を削除した本件発明についても同様に、原査定の拒絶の理由のとおり、引用発明と同一である、又は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本件の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである、又は、同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-008943