特許拒絶査定不服審判
2024-002323
開口部装置
- 審判番号
- 2024-002323
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-072188
- 請求日
- 2024年02月09日
- 審決日
- 2025年07月15日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三協立山株式会社
- 【請求人代理人】宮崎 恭
- 審判長/審判官
- 審判長 有家 秀郎
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 藤脇 沙絵
- 分類
- P18 .121-WZ (E06B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 72188「開口部装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 6月15日出願公開、特開2023- 83599〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年7月13日(国内優先権主張 平成28年7月20日;以下「優先権主張日」という。)に出願された特願2017-137382号の一部を分割して、令和2年12月25日に新たな特許出願とした特願2020-216831号の一部を分割して、令和4年1月20日に新たな特許出願とした特願2022-7491号の一部を分割して、同年12月20日に新たな特許出願とした特願2022-203249号の一部を分割して、令和5年4月26日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和5年 5月15日受付 :上申書、手続補正書
同年 7月27日付け :拒絶理由通知
同年 9月29日受付 :意見書
同年11月 9日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和6年 2月 9日受付 :審判請求書
同年11月14日付け :拒絶理由通知
令和7年 1月 9日受付 :意見書(以下「意見書1」という。)
第2 本願発明
令和6年11月14日付け拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)の対象となった、本願の請求項1に係る発明は、令和5年5月15日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
建物開口部を閉塞する室外側装置と、室外側装置の室内側に配置され建物開口部を閉塞する室内側装置を備え、
室外側装置は、建物開口部に求められる防火性能を有さずに、建物開口部に求められる水密性能・気密性能及び耐風圧性能を有しており、
室内側装置は、建物開口部に求められる防火性能を有している開口部装置。」
第3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知で通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)
本願発明1は、優先権主張日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
・引用文献1 特開2014-70349号公報
・引用文献2 特開2012-136878号公報
第4 当審の判断
1 引用文献
(1)引用文献1について
ア 引用文献1の記載事項
優先権主張日前である平成26年4月21日に頒布された刊行物である引用文献1(特開2014-70349号公報)には、次の記載がある(下線は当審において付した。以下同様。)。
(ア)「【0024】
建築物Aは、例えば一般住宅やビル等であり、開口部aの内縁に、開閉装置1及び窓サッシbを設けている。
この建築物Aは、建築基準法第2条の5にて定義される主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根又は階段等)を、耐火構造としている。
ここで、「耐火構造」とは、建築基準法施行令第107条に規定される技術的基準を満たす耐火構造を意味する。
【0025】
開口部aは、その内縁(上縁a1、下縁a2、左縁a3及び右縁a4)を、正面視矩形状に形成した孔であり(図3参照)、建築物Aの外壁をその厚さ方向へ貫通している。この開口部aの内縁(上縁a1、下縁a2、左縁a3及び右縁a4)、及び、開口部aを貫通形成した内外の壁等は、前記「耐火構造」を有するように構成される。
【0026】
開閉装置1は、空間を仕切ったり開放したりして上下方向へ開閉動作する開閉体10と、該開閉体10を横幅方向の両端側で開閉方向へ案内するガイドレール20,20と、該開閉体10をその開放方向側で収納したり繰り出したりする収納部30とを具備し、開口部a内縁に対し枠部材40,50,60を介して接触することで、耐火性を有する防火設備又は特定防火設備(本実施の形態の一例では防火設備)を構成している。
【0027】
前記「防火設備又は特定防火設備」とは、建築基準法第2条第九号の二ロ、建築基準法第64条、建築基準法施行令第109条の2、建築基準法施行令第136条の2の3、建築基準法施行令第112条第1項、平成12年建設省告示1360号、平成12年建設省告示1369号等に規定される「防火設備」又は「特定防火設備」を意味する。」
(イ)「【0044】
上記構成の開閉装置1を開口部a内に設置する手順は、先ず、開口部aの上縁a1,下縁a2,左縁a3,右縁a4に対し、枠部材40,40,50,60がそれぞれ別々に固定される。そして、これら枠部材40,40,50,60の内側に、開閉装置1が設置される。
なお、設置手順の他例としては、予め矩形枠状に構成した枠部材40,40,50,60を開口部a内に装着し、装着された枠部材40,40,50,60の内側に開閉装置1を設置する方法や、予め枠部材40,40,50,60及び開閉装置1を一体的に構成し、これらを開口部a内に装着する方法等とすることも可能である。
【0045】
また、窓サッシbは、枠部材40,40,50,60に対し、その屋外側に接触して設けられるとともに、開口部a内から屋外に跨るようにして配設され、所謂出窓を構成している。
この窓サッシbは、詳細に説明すれば、開口部a内縁に接触するとともに奥側開閉装置1側へ突出する矩形枠状のサッシ枠b1と、該サッシ枠b1内で開閉する窓部b2とを具備してなる。
【0046】
サッシ枠b1は、開口部aの上縁a1に接触するとともに枠内側に窓部b2を横幅方向へ案内するレールを有する上枠部b11と、開口部aの下縁a2に接触するとともに枠内側に窓部b2を横幅方向へ案内するレールを有する下枠部b12と、開口部aの左縁a3に接触して上下方向へ延びる左枠部b13と、開口部aの右縁a4に接触して上下方向へ延びる右枠部b14とから構成される。」
(ウ)「【0048】
次に、上記開閉装置1の設置構造について、特徴的な作用効果を説明する。
開閉体10を手動で閉鎖動作し、該開閉体10の閉鎖方向端部を枠部材60に当接させれば、開閉装置1の耐火性部分が耐火構造の建築物Aの開口部aの内縁に対し、耐火性の枠部材40,40,50,60を介して、全周にわたって連続して接触する。
したがって、火災時に、全閉状態の開閉装置1の内外へ炎や煙が通過するようなことを防ぐことができ、特に、開閉装置1と開口部aの内縁との間へ炎や煙が通過するのを、耐火性の枠部材40,40,50,60によって阻むことができる。
また、窓サッシbと並列する開閉装置1を防火設備又は特定防火設備として構成しているため、窓サッシbについては防火設備又は特定防火設備として構成しなくても済む。」
イ 引用発明1について
上記(ア)ないし(ウ)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。なお、関連する段落を括弧書きで付した。
<引用発明1>
建築物Aの開口部aの内縁に、開閉装置1及び窓サッシbを設けており(【0024】)、
開口部aは、その内縁(上縁a1、下縁a2、左縁a3及び右縁a4)を、正面視矩形状に形成した孔であり(【0025】)、
開閉装置1は、開口部a内縁に対し枠部材40,50,60を介して接触することで、耐火性を有する防火設備又は特定防火設備を構成しており(【0026】)、
予め枠部材40,40,50,60及び開閉装置1を一体的に構成し、これらを開口部a内に装着することも可能であり(【0044】)、
窓サッシbは、枠部材40,40,50,60に対し、その屋外側に接触して設けられるとともに、開口部a内から屋外に跨るようにして配設され、所謂出窓を構成しており、開口部a内縁に接触するとともに奥側開閉装置1側へ突出する矩形枠状のサッシ枠b1と、該サッシ枠b1内で開閉する窓部b2とを具備してなり(【0045】)、
サッシ枠b1は、開口部aの上縁a1に接触するとともに枠内側に窓部b2を横幅方向へ案内するレールを有する上枠部b11と、開口部aの下縁a2に接触するとともに枠内側に窓部b2を横幅方向へ案内するレールを有する下枠部b12と、開口部aの左縁a3に接触して上下方向へ延びる左枠部b13と、開口部aの右縁a4に接触して上下方向へ延びる右枠部b14とから構成され(【0046】)、
開閉装置1の耐火性部分が耐火構造の建築物Aの開口部aの内縁に対し、耐火性の枠部材40,40,50,60を介して、全周にわたって連続して接触し(【0048】)、
窓サッシbと並列する開閉装置1を防火設備又は特定防火設備として構成しているため、窓サッシbについては防火設備又は特定防火設備として構成しなくても済む(【0048】)、
窓サッシb並びに開閉装置1及び枠部材40,40,50,60。
(2)引用文献2について
優先権主張日前である平成24年7月19日に頒布された刊行物である引用文献2(特開2012-136878号公報)には、次の記載がある。
「【0007】
なお、JIS A4706:2000には、窓ガラスの水密性、気密性、遮音性、及び耐風圧性の等級が規定され、また、JASS17にガラス工事に関する建築工事標準仕様が規定されている。」
2 対比・判断
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「建築物Aの開口部a」は、本願発明1の「建物開口部」に相当する。
イ 引用発明1の「窓サッシb」は、「矩形枠状のサッシ枠b1と、該サッシ枠b1内で開閉する窓部b2とを具備してなり」、「サッシ枠b1」は、「正面視矩形状」の「開口部a」の「上縁a1」、「下縁a2」、「左縁a3」、「右縁a4」に「接触」するから、窓サッシbは開口部aを閉塞するといえる。そして、引用発明1の「窓サッシb」は、「開口部a内から屋外に跨るようにして配設され、所謂出窓を構成して」いるから、本願発明1の「建物開口部を閉塞する室外側装置」に相当する。
ウ 引用発明1では「窓サッシbが、枠部材40,40,50,60に対し、その屋外側に接触して設けられ」るから、枠部材40,40,50,60は、窓サッシbの室内側に設けられるといえる。
そして、引用文献1では、「開閉装置1の耐火性部分が耐火構造の建築物Aの開口部aの内縁に対し、耐火性の枠部材40,40,50,60を介して、全周にわたって連続して接触」するから、開閉装置1及び枠部材40,40,50,60は、開口部aを閉塞するといえる。よって、引用発明1の「枠部材40,40,50,60及び開閉装置1を一体的に構成」したものは、本願発明1の「室外側装置の室内側に配置され建物開口部を閉塞する室内側装置」に相当する。
エ 引用発明1では、「窓サッシbと並列する開閉装置1を防火設備又は特定防火設備として構成しているため、窓サッシbについては防火設備又は特定防火設備として構成しなくても済む」から、窓サッシbを防火設備又は特定防火設備として構成しないことが、念頭に置かれているといえる。したがって、「窓サッシb」について「防火設備又は特定防火設備として構成しな」いものを認定することができる。
そして、引用発明1の「窓サッシb」を、「防火設備又は特定防火設備として構成しな」いことは、本願発明1の「室外側装置は、建物開口部に求められる防火性能を有さ」ないことに相当する。
オ 引用発明1の「枠部材40,40,50,60及び開閉装置1を一体的に構成」したものについて、「開閉装置1は開口部a内縁に対し枠部材40,50,60を介して接触することで、耐火性を有する防火設備又は特定防火設備を構成して」いることは、本願発明1の「室内側装置は、建物開口部に求められる防火性能を有している」ことに相当する。
カ 引用発明1の「窓サッシb並びに開閉装置1及び枠部材40,40,50,60」は、本願発明1の「開口部装置」に相当する。
キ 以上より、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致する。
<一致点>
建物開口部を閉塞する室外側装置と、室外側装置の室内側に配置され建物開口部を閉塞する室内側装置を備え、
室外側装置は、建物開口部に求められる防火性能を有さず、
室内側装置は、建物開口部に求められる防火性能を有している開口部装置。
そして、両者は、以下の点で相違する。
<相違点>
本願発明1の室外側装置は、「建物開口部に求められる水密性能・気密性能及び耐風圧性能を有して」いることが特定されているのに対し、引用発明1の窓サッシbにはそのような特定がない点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
引用文献2の【0007】に示されるように、窓ガラスの水密性、気密性及び耐風圧性の等級がJISに規定されていることから、窓に水密性能、気密性能、耐風圧性能を持たせることは、規格に規定される周知技術であると認められる。
引用発明1において、規格に規定される基準を満たすことは、明示がなくとも当然に動機付けがあるところ、引用文献1において、窓サッシbについて防火性能以外の性能を落とすべきことが記載されているわけではないから、窓サッシbについて、上記規格に規定される周知技術を適用し、上記相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本願発明1は、引用発明1及び上記規格に規定される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、本願発明1が奏する「防火建具を、建物開口部における水密性、気密性及び耐風圧性を担保する建具と組み合わせて二重建具を構成することにより,全体として、水密性、気密性、耐風圧性及び防火性を有する建具を、簡単、確実に構築することができる。」(【0045】)という効果も、引用発明1において窓サッシbを防火設備として構成しなくても済む構成、引用文献1において窓サッシbについて防火性能以外の性能を落とすことが特に記載されていないこと、及び窓ガラスについての上記規格に規定される周知技術から、当業者が予測し得た程度のものと認められる。
(3)審判請求人の主張について
ア 一致点の認定について
審判請求人は意見書1において、引用文献1の【0048】に記載された「窓サッシbについては防火設備又は特定防火設備として構成しなくても済む。」との記載は、窓サッシbは、防火設備又は特定防火設備としても、しなくてもよいことを意味しているのであって、引用文献1の窓サッシbについて、「建物開口部に求められる防火性能を(積極的に)有さ」ないとの構成を認定することはできないから、一致点の認定が適切でない旨を主張している(意見書1の4.(2))。
しかし、上記(1)エに示したとおり、窓サッシbを防火設備又は特定防火設備として構成しないものを認定することはできるから、当該審判請求人の主張は採用できない。
イ 相違点の判断について
審判請求人は意見書1において、引用文献2は、あくまでグレージングチャンネルに特徴のあるガラスパネル及び窓ガラスが記載されているに過ぎず、室外側装置について、「建物開口部に求められる水密性能・気密性能及び耐風圧性能を有」するように構成することについて、開示も示唆もされていない旨を主張している。また、引用発明1の開閉装置1は、十分に耐風圧性能を有するものであることも考えられるので、窓サッシbは、必ずしも耐風圧性能を備える必要があるとはいえない旨を主張している。(意見書1の4.(3))
しかし、上記(2)に示したように、引用文献2の【0007】の記載から、窓に水密性能、気密性能、耐風圧性能を持たせることは、規格に規定される周知技術であると認められる。
また、引用発明1において、規格に規定される基準を満たすことは当然に動機付けがあるところ、仮に、引用発明1の開閉装置1が防火性能以外の性能を有していたとしても、引用文献1には、窓サッシbについて、防火性能以外の性能を落とすべきことが記載されているわけではないから、窓サッシbについて、上記規格に規定される周知技術を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。
ウ 本願発明1の効果について
審判請求人は意見書1において、本願発明1は、建物開口部に求められる水密性能・気密性能及び耐風圧性能と防火性能を室外側装置と室内側装置に分担させることで、全体としてバランスの良い防火設備とすることができるとの格別の効果を奏するものである旨を主張している(意見書1の5.)。
しかし、上記(1)、(2)に示したとおり、本願発明1の構成は、引用発明1及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たものであり、審判請求人が主張する効果に対応する明細書の【0045】に記載される効果も、上記(2)に示したとおり、引用発明1、引用文献1の記載及び規格に規定される周知技術から、当業者が予測し得た程度のものであるから、効果に関する審判請求人の上記主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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