特許拒絶査定不服審判
2024-012790
断熱建具
- 審判番号
- 2024-012790
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-205447
- 請求日
- 2024年08月06日
- 審決日
- 2026年02月03日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三協立山株式会社
- 【請求人代理人】宮崎 恭
- 審判長/審判官
- 審判長 澤田 真治
- 審判官 岡崎 彦哉
- 審判官 有家 秀郎
- 分類
- P18 .55 -Z (E06B) / P18 .113-Z (E06B) / P18 .121-Z (E06B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条、特許法第44条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-205447「断熱建具」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 3月 1日出願公開、特開2023- 27353〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年11月1日に出願された特願2018-206956号(以下、「原出願」という。)の一部を新たな特許出願とするものとして、令和4年12月22日に出願されたものであって、その手続の経緯は概略以下のとおりである。
令和4年12月22日 上申書及び手続補正書
令和5年12月15日付け 拒絶理由通知
令和6年 2月20日提出 意見書及び手続補正書
同年 4月30日付け 拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 5月 8日 謄本の送達日)
同年 8月 6日提出 審判請求書及び手続補正書
令和7年 1月24日提出 上申書
第2 令和6年8月6日に提出された手続補正書による補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年8月6日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、明細書の段落【0006】の記載を、以下の(補正前)のものから、(補正後)のものへと補正するものである(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)。
(補正前)(当審注;令和6年2月20日提出の補正書により補正されたもの)
「【0006】
本発明の一実施形態は、枠体と、障子とを備え、枠体が建物開口部に固定されるとともに、枠体の内周に障子が支持されることで建具が形成されており、建具を形成する枠体の室内側に露出する部分に中空部を有する樹脂製のケース体が取り付けられ、中空部が設けられることで建具の断熱性能が向上され、前記中空部に断熱材が収容されることで建具の断熱性能をさらに向上可能である断熱建具である。」
(補正後)
「【0006】
本発明の一実施形態は、枠体と、障子とを備え、枠体が建物開口部に固定されるとともに、枠体の内周に障子が支持されることで建具が形成されており、建具を形成する枠体の室内側に露出する部分に中空部を有する樹脂製のケース体が取り付けられ、中空部が設けられることで建具の断熱性能が向上され、前記中空部に断熱材が収容されることで建具の断熱性能をさらに向上可能である断熱建具である。
また、本発明の一実施形態は、枠体を備え、枠体が建物開口部に固定されるとともに、枠体の内周にガラスが支持されることで建具が形成されており、建具を形成する枠体の室内側に露出する部分に中空部を有する樹脂製のケース体が取り付けられ、中空部が設けられることで建具の断熱性能が向上され、前記中空部に断熱材が収容されることで建具の断熱性能がさらに向上可能である断熱建具である。
また、本発明の一実施形態は、枠体と、障子とを備え、枠体が建物開口部に固定されるとともに、枠体の内周に障子が支持されることで建具が形成されており、中空部を有する樹脂製のケース体が枠体に取り付けられ、障子の室内側に露出する部分に中空部が設けられることで建具の断熱性能が向上され、前記中空部に断熱材が収容されることで建具の断熱性能がさらに向上可能である断熱建具である。
また、本発明の一実施形態は、障子を備え、障子を備えることで建具が形成されており、中空部を有する樹脂製のケース体が障子に取り付けられ、障子の室内側に露出する部分に中空部が設けられることで建具の断熱性能が向上され、前記中空部に断熱材が収容されることで建具の断熱性能がさらに向上可能である断熱建具である。」
2 本件補正の適否
本件補正は、ケース体の取り付けに関し、「中空部を有する樹脂製のケース体が障子に取り付けられ」る(下線を付した最後の段落を参照)という事項の追加を含む。
そこで、「中空部を有する樹脂製のケース体が障子に取り付けられ」るという事項が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本願当初明細書等」という。)に記載される全ての事項を総合することにより導出される事項であったか否かについて、検討する。
(1)本願当初明細書等の記載
ケース体の取り付けに関し、本願当初明細書等には、以下の事項が記載されている。
ア 特許請求の範囲
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の室内側に露出する部位にケース体が取り付けられており、
ケース体は、断熱材を収容する収容空間と、収容空間と連続する開口部を長手方向に沿って有するとともに、開口部が枠体によって塞がれた状態で取り付けられている
断熱建具。」
イ 課題を解決するための手段
「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、枠体の室内側に露出する部位にケース体が取り付けられており、ケース体は、断熱材を収容する収容空間を有するとともに、収容空間と連続する開口部を長手方向に沿って有しており、開口部が枠体によって塞がれた状態で取り付けられている断熱建具である。」
ウ 発明を実施するための形態の冒頭部
「【0009】
本発明の実施形態は、建具の枠体1の室内側に露出する部位に、内部に断熱材6が収容されたケース体5を配置することで、断熱性能を向上させた断熱建具である。
以下、具体的に説明する。」
エ 第1の実施形態~第5の実施形態
摘記を省略するが、当初明細書等の段落【0010】~【0070】及び【図1】~【図8】には、第1の実施形態ないし第5の実施形態に関する記載及び図示がされているところ、いずれの実施形態においても、「ケース体5」は「枠体1」に取り付けられている。
オ 段落【0071】~【0073】
「【0071】
また、ケース体5を取り付ける枠体1は、図9(a)に示すように、連窓を構成する方立であってもよい。
その際には、ケース体55の収容空間は、ひとつの大きな収容空間Sでもよいが、図9(b)に示すように、見付け方向に分割した複数の収容空間S1,S2によって形成されていてもよい。
【0072】
また、図10(a)に示すように、竪枠13,13に取り付けられたケース体53の室内側にさらに網戸等の付加機能部材7を配置してもよく、図10(b)に示すように、付加機能を有する部材をケース体53に一体的に形成してもよい。
【0073】
さらに、ケース体5が取り付けられる上枠、下枠及び左右の竪枠の材料、形状は、限定されるものではない。例えば、枠体等は合成樹脂製やアルミ合金からなるものでも、また、それらの複合サッシでも良い。また、枠体は、断面形状が同一のものでなくてもよく、アングル部を備えないものであってもよい。その場合には、ケース体を躯体の内周面に当接させて躯体とケース体にわたってコーキング等の接着剤を塗布しても良い。」
(2)ケース体が枠体でなく障子に取り付けられることについて
上記記載によれば、本願当初明細書等には、ケース体は枠体に取り付けられることが、特許請求の範囲、課題を解決する手段及び全ての実施形態を通じて、一貫して記載されている。
しかしながら、本願当初明細書等において、ケース体が枠体ではなく、障子に取り付けられることは、記載されていない。
段落【0071】には、「ケース体5を取り付ける枠体1」が「方立」であってもよい旨が記載されているが、当該記載から、「ケース体5」が取り付けられる対象を「枠体1」ではなく「障子」とすることが導出されるものではない。
段落【0073】には、「ケース体5」が取り付けられる「枠体」の材料や形状が特段限定されない旨が記載されているが、当該記載から、「ケース体5」が取り付けられる対象を「枠体」ではなく「障子」とすることが導出されるものではない。
そして、建具の技術分野において、枠体と障子とが同一のものを指すという技術常識、あるいは、枠体が有する上枠、下枠などの枠材と障子の框体が有する上框、下框などの框材とが同一のものを指すという技術常識があるわけではなく、本願当初明細書等においても、「枠体」と「障子」とは区別して表記されているから、たとえ「枠体」と「障子」とに若干構造が類似する部分があるとしても、そのことをもって、「枠体」に関して記載された特定の事項が、「障子」に関しても同様に記載されていたことになるものではない。
そうすると、本願当初明細書等において、一貫して「枠体」に取り付けられることが記載されている「ケース体」について、取り付けられる対象を、「枠体」ではなく「障子」であると具体的に特定して変更することは、本願当初明細書等に記載される全ての事項を総合することにより導出される事項との関係において、たとえ技術常識を考慮しても、新たな技術事項を具体的に追加して導入するものとなる。
したがって、本件補正は、本願当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(3)審判請求人の主張について
ア 本件補正についての直接の主張
(ア)審判請求人の主張
審判請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(2)補正の目的」において、段落【0006】についての本件補正の目的は、誤記の訂正である旨を主張している。
(イ)上記主張についての検討
審判請求人が本件補正の目的を誤記の訂正と考えるか否かによって、新規事項の追加の有無に関する上記(2)の判断が左右される事情はない。
イ 審判請求書におけるその余の主張
(ア)審判請求人の主張
審判請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「拒絶の理由1(特許法17条の2第3項)について」において、本件補正と同様に「中空部を有する樹脂製のケース体が障子に取り付けられ」るという事項を追加した、令和6年2月20日提出の手続補正書による請求項4の補正について、以下の旨を主張している。
「・・・・。
以上のように、本願明細書等には、建具に対して、さらに高い断熱性能を付与することを目的として、建具の枠体にケース体を取付けて枠体及び障子の室内側面を覆うとした実施形態(図1,2)、建具の枠体にケース体を取付けて障子の室内側面を覆うとした実施形態(図3,4)、及び、建具の枠体にケース体を取付けて枠体の室内側面を覆うとした実施形態(図7)が開示されており、当該技術分野において、建具を構成する建材に中空部を有するケース体を取り付けて建材の室内側に露出する部分に中空部を設けることで、高い断熱性能を付与するとの技術的思想が開示されております。
そして、本願明細書段落0073等には、ケース体が取り付けられる対象は限定されない旨の記載があります。
ここで、建具において、枠体と框体は極めて類似する建材であり、枠材に採用できる構成は框材に採用できることが当該技術分野において技術常識であります。
例えば、室外側を金属製の枠材(框材)で形成して、室内側を樹脂製の枠材(框材)で形成した複合材や樹脂製の中空部内に補強部材を配置してなる枠材(框材)など、枠材において採用される構成は、矛盾の生じない範囲において、框材においても普通に採用されております。
以上のような前提のもと、図3,4に記載された実施形態を見れば、当業者は、ケース体51を枠体1の内周に取付ける代わりに、障子2の上框21,下框22、左右の竪框23,23の室内側面にケース体に取付けた断熱建具を、普通に思い浮かべることができます。
すなわち、本願明細書等に、ケース体を障子に取り付けた具体的な実施例の記載はないとしても、ケース体を取り付ける対象は枠体に限定されない旨の記載があり、ケース体を障子の框体に取り付けることに対して障害となる理由がなく、その構成が明らかであれば、本願明細書中には、「中空部を有する樹脂製のケース体が障子に取り付けられ、障子の室内側に露出する部分に中空部が設けられ」た断熱建具の発明が開示もしくは示唆されていると考えるのが妥当であります。
従って、請求項4に係る発明の「中空部を有する樹脂製のケース体が障子に取り付けられ」との構成は、当初明細書等には記載もしくは示唆されており、令和6年2月20日付手続補正書は、当初明細書等に記載した事項の範囲内において行ったものであります。」
(イ)上記主張についての検討
上記(ア)の審判請求人の主張について、検討する。
審判請求人が言及する、本願当初明細書等の段落【0073】の記載は、上記(1)オに摘記したとおりのものであり、「ケース体5」が取り付けられる「枠体」の材料や形状が特段限定されない旨を示すものではあっても、審判請求人が主張するように、「ケース体5」を取り付ける対象が「枠体」に限定されない旨を示すものではない。
そして、本願当初明細書等において、「枠体」と「障子」とを区別したうえで、「ケース体」は「枠体」に取り付けられることが一貫して記載されている一方、「ケース体」が「枠体」ではなく「障子」に取り付けられることは記載も示唆もされていないところ、枠体と障子とについて若干構造が類似する箇所があるからといって、「ケース体」が取り付けられる対象を、「枠体」ではなく「障子」であると具体的に特定して変更することが、本願当初明細書等に記載されていたことになるものではない。
また、高い断熱性能を付与するという本願当初明細書等における課題(段落【0005】)について、「ケース体」が「障子」に取り付けられるという、本願当初明細書等に記載のない具体的構成によって解決され得るとしても、課題を解決し得る具体的構成自体が、本願当初明細書等に記載されていたことになるものではない。
したがって、上記(ア)の審判請求人の主張について検討しても、本件補正における新規事項の追加の有無に関して、上記(2)の判断を変更すべき事情はない。
ウ 令和6年2月20日提出の意見書における主張
(ア)審判請求人の主張
審判請求人は、令和6年2月20日提出の意見書において、本件補正と同様に「中空部を有する樹脂製のケース体が障子に取り付けられ」るという事項を追加した、令和6年2月20日提出の手続補正書による請求項4の補正について、「[補正の根拠等]」の「(4)」の中で、上記イ(ア)に示したのと同旨の主張のほかに、本願当初明細書等の段落【0071】の記載に言及して、以下の旨を主張している。
「また、段落0071には、ケース体5を取り付ける建材は、枠材1に限定されるものではなく、連窓を構成する方立であってもよい旨が記載されております。」
(イ)上記主張についての検討
上記(ア)の審判請求人の主張について、検討する。
審判請求人が言及する、本願当初明細書等の段落【0071】の記載は、上記(1)オに摘記したとおりのものであり、「ケース体5」が取り付けられる「枠体1」が「方立」であってもよい旨を示すものではあっても、審判請求人が主張するように、「ケース体5」を取り付ける対象が「枠体1」(当審注;「枠材1」は「枠体1」の誤記と考えられる)に限定されない旨を示すものではない。
したがって、上記(ア)の審判請求人の主張について検討しても、本件補正における新規事項の追加の有無に関して、上記(2)の判断を変更すべき事情はない。
(4)新規事項追加(特許法17条の2第3項)の有無についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、上記において検討したように、特許法17条の2第3項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下された。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)、及び本願の請求項4に係る発明(以下、「本願発明4」という。)は、令和6年2月20日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の、請求項1及び請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その記載は次に示すとおりである。
「【請求項1】
枠体と、障子とを備え、
枠体が建物開口部に固定されるとともに、枠体の内周に障子が支持されることで建具が形成されており、
建具を形成する枠体の室内側に露出する部分に中空部を有する樹脂製のケース体が取り付けられ、中空部が設けられることで建具の断熱性能が向上され、前記中空部に断熱材が収容されることで建具の断熱性能をさらに向上可能である断熱建具。
・・・・
【請求項4】
障子を備え、
障子を備えることで建具が形成されており、
中空部を有する樹脂製のケース体が障子に取り付けられ、障子の室内側に露出する部分に中空部が設けられることで建具の断熱性能が向上され、前記中空部に断熱材が収容されることで建具の断熱性能がさらに向上可能である断熱建具。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の理由は、次の理由を含むものである。
(1)新規事項追加
本願発明4における「中空部を有する樹脂製のケース体が障子に取り付けられ」るという事項は、令和6年2月20日提出の手続補正書による補正(以下、「本願補正」という。)で追加されたところ、本願当初明細書等に記載されているものではない。
したがって、本願発明4は、特許法17条の2第3項の規定に違反する補正がされており、本願は特許を受けることができない。
(2)分割不適による新規性・進歩性欠如
本願発明4における「中空部を有する樹脂製のケース体が障子に取り付けられ」るという事項は、原出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「原出願当初明細書等」という。)に記載されておらず、本願の出願は、原出願がされた平成30年11月1日ではなく、実際に出願がされた令和4年12月22日にされたものとなる。
そして、本願発明1は、本願の実際の出願より前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、原出願の公開公報である特開2020-70666号公報に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当する。
また、本願発明1は、本願の実際の出願より前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、原出願の公開公報である特開2020-70666号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
3 新規事項追加についての判断
原査定の理由のうち、新規事項追加の査定理由について、判断する。
本願補正により、本願発明4に追加された、「中空部を有する樹脂製のケース体が障子に取り付けられ」るという事項は、本件補正について上記第2の2(1)及び(2)に示したのと同じ理由で、本願当初明細書等の記載を総合することにより導出されるものではない。
そして、これに反する審判請求人の主張は、上記第2の2(3)イ及びウに示したとおり、採用することができない。
したがって、本願は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正がされており、新規事項追加の原査定の理由により、特許を受けることができない。
4 分割不適による新規性・進歩性欠如についての判断
原査定の理由のうち、分割不適による新規性・進歩性欠如の査定理由について、判断する。
(1)分割の適否について
原出願当初明細書等には、上記第2の2(1)に示した本願当初明細書等と同じ記載がある。
そして、原出願当初明細書等には、「ケース体」の取り付けに関して、本願当初明細書等と異なる事項は記載されていない。
したがって、本願発明4に「中空部を有する樹脂製のケース体が障子に取り付けられ」るという事項を含む本願は、原出願当初明細書等との対比において、上記第2の2に示したのと同じ理由で、原出願の一部を新たな特許出願としたものとはいえない。
よって、本願の分割出願は適法とはいえず、本願は原出願の時にしたものとみなすことができない(特許法44条2項)。
(2)原出願公開公報の記載事項
上記(1)のとおり、本願は原出願の時にしたものとみなすことができず、実際の出願の時にしたものとなるから、原査定の理由で引用された原出願公開公報は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとなる。
原出願公開公報には、以下の記載がある(下線は、当審において付した。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、建物開口部に配置される断熱建具に関する。
・・・・
【0006】
本発明の一実施形態は、枠体の室内側に露出する部位にケース体が取り付けられており、ケース体は、断熱材を収容する収容空間を有するとともに、収容空間と連続する開口部を長手方向に沿って有しており、開口部が枠体によって塞がれた状態で取り付けられている断熱建具である。
・・・・
【0010】
-第1の実施形態-
第1の実施形態の断熱建具について、図1及び図2に示す、枠体1の内周に障子2が開閉自在に配置されてなるすべり出し窓を用いて説明する。
・・・・
【0016】
上枠11に取り付けられるケース体51は、合成樹脂材料からなり、図1(b)に示すように、上枠11のアングル部113の内周面に当接される外周壁部51aと、外周壁部51aの室外側端から下方に延びる外周側室外壁部51bと、外周壁部51aの室内側端から下方に延びて下方部分が室外側に傾斜する傾斜面として形成されている室内壁部51cと、室内壁部51cの下端から室外側に延びる内周壁部51dと、内周壁部51dの室外側端から上方に延びる内周側室外壁部51eと、内周側室外壁部51eの上端から室内側に向かって延びる固定壁部51fを有し、全体として断熱材61を収容する収容空間Sを形成している。
【0017】
そして、ケース体51は、外周側室外壁部51bと固定壁部51fとの間に収容空間Sに連続する開口部aが形成されており、図1(c)に示すように、開口部aを介して真空断熱材等の断熱材61を収容することができる。そして、断熱材61は、内周部分を障子2の上框21に近接させて覆うことができるので、障子2の室内側を通って冷熱が伝達することを抑制することができ、断熱性を向上させることができる。
・・・・
【0074】
さらに、ケース体5の断面形状も各枠体に応じて異なる断面形状のものであってもよい。
また、ケース体5に収容される断熱材6は、真空断熱材に限定されるものではなく、場合によっては、断熱材を収容しなくてもよい。」
(3)原出願公開公報に記載された発明
上記(2)より、原出願公開公報には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。なお、認定の根拠とした段落番号を括弧書きで付した。
<引用発明>
建物開口部に配置される断熱建具であって、(【0001】)
枠体の室内側に露出する部位にケース体が取り付けられており、ケース体は、断熱材を収容する収容空間を有するとともに、収容空間と連続する開口部を長手方向に沿って有しており、開口部が枠体によって塞がれた状態で取り付けられており、(【0006】)
断熱建具は、枠体の内周に障子が開閉自在に配置されてなるすべり出し窓であり、(【0010】)
ケース体は、合成樹脂材料からなり、断熱材を収容する収容空間と、収容空間に連続する開口部が形成されており、開口部を介して真空断熱材等の断熱材を収容することができ、断熱材は、断熱性を向上させることができ、(【0016】、【0017】)
ケース体に、場合によっては、断熱材を収容しなくてもよい、(【0074】)
断熱建具。(【0010】)
(4)本願発明1と引用発明との対比
本願発明1と、引用発明とを、対比する。
引用発明において、「断熱建具」としての「すべり出し窓」が有する「枠体」及び「障子」は、本願発明1における「枠体」及び「障子」に、それぞれ相当する。
引用発明において、「建物開口部」に「断熱建具」が「配置」されること、及び、「断熱建具」が「枠体の内周に障子が開閉自在に配置されてなるすべり出し窓」であることは、「開閉自在」な「障子」を内周に有する「枠体」が「建物開口部」に配置されたうえで固定されることが明らかであることを踏まえると、本願発明1において、「枠体が建物開口部に固定される」ことに、相当する。
また引用発明において、「枠体の内周に障子が開閉自在に配置されてなる」ことは、本願発明1において、「枠体の内周に障子が支持される」ことに、相当する。
そして引用発明において、「断熱建具」として「建物開口部に配置され」たうえで、「枠体の内周に障子が開閉自在に配置され」ることで「すべり出し窓」となることは、本願発明1において、「枠体が建物開口部に固定されるとともに、枠体の内周に障子が支持されることで建具が形成され」ることに、相当する。
引用発明において、「枠体の室内側に露出する部位にケース体が取り付けられており、」「ケース体は、合成樹脂材料からなり、断熱材を収容する収容空間」を有することは、本願発明1において、「建具を形成する枠体の室内側に露出する部分に中空部を有する樹脂製のケース体が取り付けられ」ることに、相当する。
引用発明において、「ケース体は、断熱材を収容する収容空間を有するとともに、収容空間と連続する開口部を長手方向に沿って有しており、開口部が枠体によって塞がれた状態で取り付けられており、」「ケース体に、場合によっては、断熱材を収容しなくてもよい」ことは、断熱材を収容しない「ケース体」を取り付けた場合であっても、「開口部が枠体によって塞がれた状態」の「収容空間」内に閉じ込められた空気の熱伝導率が低いことによって、「ケース体」を取り付けない場合、あるいは「ケース体」が中実である場合に比較して、建具の断熱性能が向上することが明らかであることを踏まえると、本願発明1において、「中空部が設けられることで建具の断熱性能が向上され」ることに、相当する。
引用発明において、「ケース体」の「開口部を介して真空断熱材等の断熱材を収容することができ、断熱材は、断熱性を向上させることができ」ることは、本願発明1において、「前記中空部に断熱材が収容されることで建具の断熱性能をさらに向上可能である」ことに、相当する。
引用発明において、「断熱建具」であることは、本願発明1において、「断熱建具」であることに、相当する。
以上を整理すると、本願発明1と引用発明とは、
「枠体と、障子とを備え、
枠体が建物開口部に固定されるとともに、枠体の内周に障子が支持されることで建具が形成されており、
建具を形成する枠体の室内側に露出する部分に中空部を有する樹脂製のケース体が取り付けられ、中空部が設けられることで建具の断熱性能が向上され、前記中空部に断熱材が収容されることで建具の断熱性能をさらに向上可能である断熱建具。」
の点で一致する。
(5)新規性、及び進歩性の判断
上記(4)のとおり、本願発明1は引用発明であり、両者の間に相違点はないから、本願発明1は特許法29条1項3号に該当し、新規性がない。
また、仮に本願発明1と引用発明との間に、若干の相違点があったとしても、当該相違点は、当業者が適宜になし得た設計事項程度である。
したがって、本願発明1は引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
(6)審判請求人の主張について
審判請求人は審判請求書の「(5)拒絶の理由3(新規性)について」「エ.引用文献4に記載された発明について」において、以下のとおり主張している。
「拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2020-70666号公報)は、分割出願である本願の原出願(特願2018-206956号)の公開公報であります。
本願は、上記「(3)拒絶の理由1(特許法17条の2第3項)について」に記載したと同様の理由により、原出願の明細書等に記載した事項の範囲内のものであって、原出願を適法に分割したものであり、出願日は遡及されます。
従いまして、引用文献4は、本願発明1ないし本願発明4の新規性及び進歩性についての証拠となるものではありません。」
しかしながら、新規事項の追加に関する審判請求人の主張は、上記第2の2(3)イで示したとおり、採用することができないから、分割が適法である旨の審判請求人の主張も、採用することができない。
(7)分割不適による新規性・進歩性欠如のまとめ
したがって、本願発明1は、分割不適による新規性・進歩性欠如の原査定の理由により、特許を受けることができないから、本願発明2~4の新規性・進歩性について検討するまでもなく、本願は特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正がされているという原査定の理由のとおり、拒絶されるべきものである。
また、本願は分割が不適であって原出願の時にされたとみなすことができず、本願発明1は、本願の実際の出願より前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった原出願公開公報に記載された引用発明であって特許法29条1項3号に該当するか、または引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、本願発明2~4の新規性・進歩性について判断するまでもなく、本願は原査定の理由のとおり、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-012790