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特許拒絶査定不服審判

2016-012262

鉄恒常性を制御するための組成物およびそれを用いる方法

審判番号
2016-012262
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-550573
請求日
2016年08月12日
審決日
2017年05月30日
公報発行日
2017年12月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】フェルマックス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】鮫島 睦
  • 【請求人代理人】新田 昌宏
  • 【請求人代理人】呉 英燦
  • 【請求人代理人】秋山 信彦
  • 【請求人】ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション
  • 【請求人代理人】鮫島 睦
  • 【請求人代理人】新田 昌宏
  • 【請求人代理人】呉 英燦
  • 【請求人代理人】秋山 信彦
審判長/審判官
  • 審判長 中島 庸子
  • 審判官 山崎 利直
  • 審判官 瀬下 浩一
分類
P18 .572-Z (C12N) / P18 .575-Z (C12N) / P18 .113-Z (C12N) / P18 .121-Z (C12N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-550573「鉄恒常性を制御するための組成物およびそれを用いる方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月 8日国際公開、WO2012/150973、平成26年 3月17日国内公表、特表2014-506452〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成24年1月19日(パリ条約による優先権主張 2011年1月19日 米国)を国際出願日とする出願であって、 平成27年10月22日付け拒絶理由に対して、平成28年1月26日に意見書と同日付の手続補正書が提出され、同年4月4日付けで拒絶査定され、同年8月12日に拒絶査定不服審判の請求がなさるとともに、同日付の手続補正書が提出されたものである。 第2 平成28年8月12日付け手続補正についての補正却下の決定 [結論] 平成28年8月12日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項15に、 「【請求項15】 融合タンパク質を含む組成物であって、融合タンパク質がN末端ポリペプチドおよびC末端ポリペプチドを含み、N末端ポリペプチドが配列番号1の配列と少なくとも95%同一であり、かつ、C末端ポリペプチドが配列番号3、4、5、6、および7からなる群から選択される配列と少なくとも95%同一である組成物であって、融合タンパク質がホモ二量体を形成し、投与された時に対象のヘモグロビンおよび/またはヘマトクリットを増加させる、組成物。」とあったものを、請求項9が削除されることにより繰り上がった請求項14において、 「【請求項14】 融合タンパク質を含む組成物であって、融合タンパク質がN末端ポリペプチドおよびC末端ポリペプチドを含み、N末端ポリペプチドが配列番号1の配列に示すアミノ酸を含み、かつ、C末端ポリペプチドが配列番号3、4、5、6、および7からなる群から選択される配列と少なくとも95%同一である組成物であって、融合タンパク質がホモ二量体を形成し、投与された時に対象のヘモグロビンおよび/またはヘマトクリットを増加させる、組成物。」とする補正事項を含むものである。 2.目的要件について 上記補正事項によって、補正後の請求項14の組成物に含まれる融合タンパク質のN末端ポリペプチドが、補正前の請求項15の「配列番号1の配列と少なくとも95%同一」のものから、「配列番号1の配列に示すアミノ酸を含」むものに特定された。 「配列番号1の配列に示すアミノ酸を含」むポリペプチドとは、配列番号1のアミノ酸配列の前後に任意のアミノ酸配列を含み得るものであり、配列番号1のアミノ酸配列の前および/または後に長いアミノ酸配列を有するようなポリペプチドの場合、補正前の「配列番号1の配列と少なくとも95%同一」の要件を満足しないポリペプチドも包含することになると認められる。 したがって、上記補正事項は、補正前の発明の限定的減縮には相当せず、また、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明にも相当しないことも明らかである。 よって、この補正事項は、特許法第17条の2第5項に掲げるいずれの事項を目的とするものとも認められない。 なお、仮に本件補正が補正前の請求項15に係る発明の限定的減縮に相当するとしても、以下3.のとおり、補正後の請求項14に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができる(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する)ものとはいえない。 3.独立特許要件について (1)引用例1 拒絶査定で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、国際公開第2008/124768号(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから、当審による翻訳文を記載する。また、下線は当審が付したものである。 (1-1) 「1.以下からなる融合タンパク質: (a)ヘモジュベリン(HJV)ポリペプチドまたはそのフラグメント、該フラグメントはHJVタンパク質の一部に対して少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、少なくとも6アミノ酸であり、 (b)第一の融合パートナー:該第一の融合パートナーは該HJVポリペプチドまたはそのフラグメントに融合されている。 2.該第一の融合パートナーはHJVタンパク質フラグメントのN-末端またはC-末端に融合されている、請求項1の融合タンパク質。 3.該第一の融合パートナーはIgG1 Fcである、請求項2の融合タンパク質。 4.該IgG1 FcはヒトIgG1 Fcである、請求項3の融合タンパク質。 ・・・・ 26.HJV関連疾患の治療のための、請求項1~25の融合タンパク質。 27.HJV関連疾患が鉄関連疾患である、請求項26の融合タンパク質。 28.該鉄関連疾患が、遺伝子性ヘモクロマトーシス、ポルフィリン症、遺伝性球状赤血球症、低色素性貧血、紅芽赤血球性貧血(CDAI)、顔面麻痺性異形成(FGDY)、アールスコグ症候群、甲状腺炎、鎌形赤血球症、慢性疾患の貧血、鉄欠乏性貧血、機能性鉄欠乏症および小球性貧血からなる群から選ばれる、請求項27の融合タンパク質。 29.上記請求項に記載のいずれかの融合タンパク質と薬理学的に許容される担体を含む医薬組成物。」(特許請求の範囲) (1-2) 「本発明の詳細な説明 [0056]  本発明者らは、ヘプシジン調節を伴う状態(例えば、本明細書に記載のものなどの鉄関連疾患)の治療に有用な新規治療薬HJV.Fcを同定した。したがって、本発明は、HJV融合タンパク質(例えば、HJV.Fc)。そのようなタンパク質を含む医薬組成物、そのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチド、および鉄関連疾患(例えば、本明細書に記載されるもの)などのHJV関連疾患を治療する方法を提供する。 [0057]  本発明の一態様は、可溶性形態のHJVに関する。いくつかの実施形態では、このような可溶性形態のHJVは、完全長HJVのポリペプチドまたはHJVのフラグメントが、第2のポリペプチド、例えばIgG1 Fc またはそのフラグメントに融合されており、本明細書では「HJV.Fc」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド(すなわち、第1の融合パートナー)に融合されたHJVは、C末端GPIドメインおよび/またはN末端シグナル配列を欠くHJVなどのHJVのフラグメントであってもよく、あるいはHJVは、HJVの機能的誘導体またはHJVの機能的変異体であり得、これらの用語は、本明細書に定義される。いくつかの実施形態において、第1の融合パートナーへの有用なHJVタンパク質は、HJVの任意のアイソフォーム、例えば配列番号2,3,4または5に対応するHJVタンパク質、または機能的フラグメントもしくは機能的誘導体、または配列番号2~5に対応するHJVポリペプチドの機能的変異体である。 [0058]  さらに、HJVまたはその機能的フラグメント、誘導体もしくは改変体に結合した融合パートナーは、配列番号6に対応するFcフラグメント、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体もしくは改変体のような、IgG1 Fcフラグメントであり得る。別の実施形態では、第1の融合パートナーは、HJVポリペプチドまたはその機能的誘導体、機能的フラグメントまたは機能的誘導体の安定性を増加させる任意のポリペプチド配列であり得る。例えば、HJVポリペプチドを血清タンパク質、例えば血清アルブミンに融合させると、HJVポリペプチドの循環半減期を増加させることができる。 [0059]  いくつかの実施形態では、本明細書に開示される HJV.Fc の例は、配列番号7またはその機能的変異体または機能的誘導体に対応し、ここで、配列番号7は、ヒトHJV. Fc のアミノ酸配列であり、Fcフラグメントに融合されたGPIアンカードメインを有さないHJVの非切断型の変異体である。 [0060]  別の実施形態として、本明細書に開示される HJV.Fc は、配列番号10またはその機能的変異体または機能的誘導体であり、配列番号10はヒトHJV. Fc のアミノ酸配列であり、GPIアンカードメインを有さず、HJVが哺乳類細胞における最適な発現のためにコドン最適化され、Fcフラグメントに融合されている。 [0061]  別の実施形態として、本明細書に開示される HJV.Fc は、配列番号1またはその機能的変異体または機能的誘導体であり、配列番号1はヒトHJV. Fc のアミノ酸配列であり、細胞外シグナル配列およびFLAGタグを含むが、GPIアンカードメインは除去されている。」(第17~18頁) (1-3) 「[00147]  本発明の融合タンパク質は、全長HJVまたはHJVフラグメント、および融合パートナー、例えばHJV.Fc融合物を含む。タンパク質のHJV融合部分は、HJVの可溶性形態(例えば、GPIアンカー領域を欠いている)を含むことができ、またはHJVの任意の機能的フラグメント(例えば、ヘプシジンを調節するかBMP共受容体として作用することができるフラグメント)である。フラグメントは、N末端、C末端、またはその両方から少なくとも1,2,3,5,8,10,15,20,25,50,75,100個の欠失したアミノ酸を有していてもよいが、フラグメントは上で述べたとおり少なくとも6個のアミノ酸を含む。配列番号1に示される融合タンパク質において、例えばHJV融合タンパク質は全長ヒトHJVタンパク質のアミノ酸33~399を含み得る。他の実施形態では、融合タンパク質は、HJVの機能的フラグメントである33~339のHJV配列の一部を含み得る(例えば、1,2,3,5,8,約10、または約15以上、または少なくとも約20、または少なくとも約25、または少なくとも約50、または少なくとも約75、または少なくとも約100個のアミノ酸)を含む。N末端シグナル配列は、欠失していてもよく、あるいは、別のシグナル配列(例えば、タンパク質を核または細胞外に標的化するもの)で置換してもよい。融合タンパク質のHJV部分は、少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約99%または全長HJVタンパク質(例えば、ヒトタンパク質)の少なくとも一部と約100%同一である。」(第52頁) (1-4)配列番号2 (1-5)配列番号6 (2)引用例2(周知例) 本願の優先日前に頒布された刊行物である、国際公開第2009/074637号(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから、パテントファミリーである特表2011-505821号公報の記載を翻訳文とする。 「Fc融合タンパク質は当該技術分野において公知である。Fc融合タンパク質は、無関係なタンパク質またはタンパク質断片と融合した免疫グロブリン重鎖のFc領域から成るキメラポリペプチドである。ヒトにおける応用のため、ヒト免疫グロブリン重鎖のFc領域が典型的に用いられる。Fc領域および無関係なタンパク質またはタンパク質断片を含む単一融合ポリペプチド鎖を細胞内に発現させる際、それは一般に、免疫グロブリン内の重鎖二量体の形成に類似して、ポリペプチドを含む第2のFc領域と共にジスルフィド結合の形成を通して二量体を形成する。」(第5頁16~23行) (3)引用例3(周知例) 本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2009-148257号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0127】 本発明のさらに好ましい実施形態において、FGF様ポリペプチド、フラグメント、改変体および/または誘導体を、ヒトIgGのFc領域に融合させる。1つの例において、当業者に公知の方法を使用して、ヒトIgGのヒンジ、CH2およびCH3領域を、FGF様ポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかに融合させ得る。別の例において、ヒンジ領域の一部ならびにCH2およびCH3領域を、融合し得る。このように産生されたFGF様 Fc融合ポリペプチドは、Protein Aアフィニティーカラムを用いて精製され得る。さらに、Fc領域に融合されたペプチドおよびタンパク質は、その融合されていない対応物よりも実質的に大きい、インビボでの半減期を示すことが見い出されている。また、Fc領域への融合は、この融合ポリペプチドのダイマー化/マルチマー化を可能にする。このFc領域は、天然に存在するFc領域であり得るか、または治療的品質、循環時間、凝集の減少などのような、特定の質を改善するように変更され得る。」 (4)引用発明 上記(1)の(1-2)において、実施形態として例示された3つのHJV.Fc融合タンパク質、配列番号1、配列番号7、配列番号10(引用例1の[00155]~[00157]に、それぞれの具体的なアミノ酸配列が記載されている。)は、いずれもN末側にヘモジュベリンのアミノ酸配列、C末側にIgG1 Fcのアミノ酸配列を有するものと認められることから、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「N末側の配列番号2のアミノ酸配列を有するヘモジュベリンまたはそのフラグメントと、第一の融合パートナーであるC末側の配列番号6のIgG1 Fc またはそのフラグメントとを融合させた、融合タンパク質HJV.Fcを含む、鉄関連疾患の治療のための医薬組成物。」 (5)対比 本願の補正後の請求項14に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)と、引用発明を対比する。 まず、本願明細書(例えば段落【0008】)の記載から、本願に係る融合タンパク質は「ヘモジュベリン(HJV)-免疫グロブリンFcドメイン融合タンパク質」であり、段落【0038】には、HJVのアミノ酸配列として配列番号1が示されているから、本願補正発明の融合タンパク質のN末端ポリペプチドはHJVドメインであり、C末端ポリペプチドはFcドメインであると認められる。 そして、引用発明の「配列番号2」(N末側)は、その第36番目から第399番目のアミノ酸配列が、本願補正発明の「配列番号1」(N末端)と一致するから、引用発明の「配列番号2のアミノ酸配列を有するヘモジュベリン」は、本願補正発明の「配列番号1の配列に示すアミノ酸を含」むものに相当する。また、引用発明の融合タンパク質は、C末側に「配列番号6のIgG1 Fc またはそのフラグメント」というポリペプチドを含むものである。 したがって、引用発明の「N末側の配列番号2のアミノ酸配列を有するヘモジュベリンまたはそのフラグメント・・・・を融合させた、融合タンパク質HJV.Fc」は、本願補正発明の「融合タンパク質がN末端ポリペプチドおよびC末端ポリペプチドを含み、N末端ポリペプチドが配列番号1の配列に示すアミノ酸を含」む、「融合タンパク質」に相当すると認められる。 また、本願明細書の段落【0048】の記載から、本願補正発明の「配列番号3、4、5、6、および7からなる群から選択される配列と少なくとも95%同一である」、「C末端ポリペプチド」は、免疫グロブリンの「Fcドメイン」であると認められるから、引用発明の「配列番号6のIgG1 Fc またはそのフラグメント」は、本願補正発明の「配列番号3、4、5、6、および7からなる群から選択される配列と少なくとも95%同一である」「C末端ポリペプチド」と、「Fcドメイン」である点で共通する。 さらに、引用発明の「鉄関連疾患の治療のための医薬組成物」は、本願補正発明の「投与された時に対象のヘモグロビンおよび/またはヘマトクリットを増加させる、組成物」と、「組成物」である点で共通する。 したがって、両者は、「融合タンパク質を含む組成物であって、融合タンパク質がN末端ポリペプチドおよびC末端ポリペプチドを含み、N末端ポリペプチドが配列番号1の配列に示すアミノ酸を含み、かつ、C末端ポリペプチドがFcドメインである組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) C末端ポリペプチドのFcドメインについて、本願補正発明では「配列番号3、4、5、6、および7からなる群から選択される配列と少なくとも95%同一」と特定されているのに対して、引用発明では「配列番号6のIgG1 Fc またはそのフラグメント」である点。 (相違点2)本願補正発明では、融合タンパク質がホモ二量体を形成することが特定されているのに対し、引用発明では特定されていない点。 (相違点3)本願補正発明の組成物は、「投与された時に対象のヘモグロビンおよび/またはヘマトクリットを増加させる、組成物」であるのに対し、引用発明は「鉄関連疾患の治療のための医薬組成物」である点。 (6)相違点についての判断 (相違点1)について 引用発明に特定されるとおり、引用発明は、IgG1 Fcの全長タンパク質だけでなく、IgG1 Fcの(機能的)フラグメントも、融合タンパク質の第一の融合パートナー(Fcドメイン)とするものである。そして、引用発明のIgG1 Fc全長タンパク質のアミノ酸配列「配列番号6」は、その第21番目から最後までの配列が本願補正発明の「配列番号3」と一致するものである。 ここで、引用例1に具体的に例示された融合タンパク質のアミノ酸配列である配列番号1、配列番号7、配列番号10(引用例1の[00155]~[00157]に具体的な配列が示されている。)について、そのC末側に融合されたIgG1 Fcドメインについてみてみると、配列番号1、7の融合タンパク質では「配列番号6」のIgG1 Fc全長が融合されているが、配列番号10の融合タンパク質では「配列番号6」の34番目から最後までのアミノ酸配列を有する、IgG1 Fcのフラグメントが融合されていると認められる。 引用例1には、他のフラグメントを融合した具体例は記載されていないが、引用例1の記載からみて、34番目から最後までのアミノ酸配列のIgG1 Fcのフラグメント以外のフラグメントも同様に第一の融合パートナーとできるといえるから、引用発明において、IgG1 Fcのフラグメントとして、例えば、「配列番号6」の34番目近辺の“30番目から最後までのアミノ酸配列のIgG1 Fcのフラグメント”や、「配列番号6」の34番目よりも全長に近い“21番目から最後までのアミノ酸配列のIgG1 Fcのフラグメント”などを用いることは、当業者が容易になし得ることである。 そして、「配列番号6」の“30番目から最後までのアミノ酸配列のIgG1 Fcのフラグメント”は、232アミノ酸からなる本願補正発明の「配列番号3」に対して、N末側が9アミノ酸短いアミノ酸配列を有するものに相当することになり、また、“21番目から最後までのアミノ酸配列のIgG1 Fcのフラグメント”は、本願補正発明の「配列番号3」と同じアミノ酸配列を有するものに相当ことになるから、これらの“フラグメント”は、いずれも「配列番号3、4、5、6、および7からなる群から選択される配列と少なくとも95%同一」のFcドメインに相当するものとなる。 したがって、相違点1は、当業者が容易になし得ることである。 (相違点2)について 引用例2、3に記載されるように、Fcドメインと融合された融合タンパク質が二量体を形成することは周知であると認められ、融合されるFcドメインがFcの機能的フラグメントである場合にも、同様に二量体を形成すると考えられるから、引用発明の融合タンパク質HJV.Fcにおいて、FcドメインがFcの機能的フラグメントである場合にも、二量体を形成すると認められる。 したがって、相違点2は、実質的な相違点ではない。 また、仮に相違点であるとしても、引用発明の融合タンパク質HJV.Fcについて、二量体を形成するものとすることは、当業者が容易になし得ることである。 (相違点3)について 上記(1-1)のとおり、引用例1の請求項28には、鉄関連疾患として貧血が記載されており、貧血とは正常より低いヘモグロビンレベルであること、貧血が治療されることでヘモグロビンレベルが高くなることが技術常識であるから(必要であれば、引用例1の[00212]を参照。)、引用発明の医薬組成物で貧血の患者を治療し、患者に治療効果があれば、患者のヘモグロビンやヘマトクリットが増加するといえる。 したがって、引用発明の「鉄関連疾患の治療のための医薬組成物」は、投与された時に対象(患者)のヘモグロビンおよび/またはヘマトクリットを増加させるといえるから、相違点3は、実質的な相違点ではない。 仮に相違点であるとしても、引用発明の融合タンパク質HJV.Fcについて、投与された時に対象のヘモグロビンおよび/またはヘマトクリットを増加させることを特定することは、当業者が容易になし得ることである。 そして、本願補正発明において、引用例1の記載から予測できない効果が奏されたとは認められない。 よって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.小括 以上のとおり、上記の補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、あるいは、同法第17条の2第6項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、この出願の請求項1~27に係る発明は、平成28年1月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~27に記載の事項により特定される発明であり、そのうち、請求項15に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項15に記載される以下とおりのものと認める。 「【請求項15】 融合タンパク質を含む組成物であって、融合タンパク質がN末端ポリペプチドおよびC末端ポリペプチドを含み、N末端ポリペプチドが配列番号1の配列と少なくとも95%同一であり、かつ、C末端ポリペプチドが配列番号3、4、5、6、および7からなる群から選択される配列と少なくとも95%同一である組成物であって、融合タンパク質がホモ二量体を形成し、投与された時に対象のヘモグロビンおよび/またはヘマトクリットを増加させる、組成物。」 2.引用例、引用発明 引用例1には、上記第2 3.(1)に記載した事項が記載されており、また、引用発明は、上記第2 3.(4)に記載した、以下のとおりのものであると認められる。 「N末側の配列番号2のアミノ酸配列を有するヘモジュベリンまたはそのフラグメントと、第一の融合パートナーであるC末端側の配列番号6のIgG1 Fc またはそのフラグメントとを融合させた、融合タンパク質HJV.Fcを含む、鉄関連疾患の治療のための医薬組成物。」 3.対比 本願発明と引用発明は、 「融合タンパク質を含む組成物であって、融合タンパク質がN末端ポリペプチドおよびC末端ポリペプチドを含み、N末端ポリペプチドがHJVドメインであり、かつ、C末端ポリペプチドがFcドメインである組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1’) 本願発明では、N末端ポリペプチドのHJVドメインについて「配列番号1の配列と少なくとも95%同一」、C末端ポリペプチドのFcドメインについて、「配列番号3、4、5、6、および7からなる群から選択される配列と少なくとも95%同一」と特定されているのに対して、引用発明ではN末端ポリペプチドのHJVドメインについて「配列番号2のアミノ酸配列を有するヘモジュベリンまたはそのフラグメント」、C末端ポリペプチドのFcドメインについて「配列番号6のIgG1 Fc またはそのフラグメント」と特定されている点。 (相違点2)本願発明では、融合タンパク質がホモ二量体を形成することが特定されているのに対し、引用発明では特定されていない点。 (相違点3)本願発明の組成物は、「投与された時に対象のヘモグロビンおよび/またはヘマトクリットを増加させる、組成物」であるのに対し、引用発明は「鉄関連疾患の治療のための医薬組成物」である点。 なお、(相違点2)、(相違点3)は、上記第2 3.(5)で認定した(相違点2)、(相違点3)と同じである。 4.当審の判断 まず、(相違点1’)のうち、C末端ポリペプチドのFcドメインに関する相違点については、第2 3.(6)における(相違点1)について検討したとおりであり、当業者が容易になし得ることである。 次に、N末端ポリペプチドのHJVドメインに関する相違点について検討する。 上記第2 3.(5)に記載したとおり、引用発明の「配列番号2」は、その第36番目から第399番目のアミノ酸配列が、本願発明の「配列番号1」と一致する。 そして、上記第2 3.(1)(1-3)のとおり、引用例1には「配列番号1に示される融合タンパク質において、例えばHJV融合タンパク質は全長ヒトHJVタンパク質のアミノ酸33~399を含み得る。他の実施形態では、融合タンパク質は、HJVの機能的フラグメントである33~339のHJV配列の一部を含み得る。」と記載されており、引用例1にHJVのアミノ酸配列として示されている配列番号2~5のうち、339アミノ酸以上であるのは配列番号2のみであるから、引用例1には、引用発明のHJV.Fc融合タンパク質として、配列番号2のアミノ酸配列を有する全長ヒトHJVタンパク質の、アミノ酸33~399フラグメントを含むものとすることが示されていると認められる。 したがって、引用発明の「配列番号2のアミノ酸配列を有するヘモジュベリンまたはそのフラグメント」として、配列番号2のアミノ酸33~399フラグメントを用いることは、当業者が容易になし得ることである。 そして、引用発明の「配列番号2のアミノ酸配列を有するヘモジュベリンまたはそのフラグメント」(HJVドメイン)として、配列番号2のアミノ酸33~399フラグメントを用いた場合、引用発明のHJVドメインは、364アミノ酸からなる本願発明の「配列番号1」に加え、さらにN末側に3アミノ酸長いものに相当するから、本願発明の「配列番号1の配列と少なくとも95%同一」のものに相当することなる。 したがって、N末端ポリペプチドのHJVドメインに関する相違点についても、当業者が容易になし得ることである。 よって、相違点1’は、当業者が容易になし得ることである。 また、相違点2、3については、第2 3.(6)において検討したとおりであるから、本願発明は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。 以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5.上申書の補正案について 審判請求人は、平成29年1月16日付け上申書において補正案を示しているから、以下検討する。 上申書の補正案の請求項14には、C末端ポリペプチドについて「配列番号3、4、5、6、および7からなる群から選択される配列を含む」と特定されているから、補正案の請求項14に係る発明(以下、「補正案発明」という。)と引用発明との一致点は、第2 3.(5)で認定した一致点と同じであり、相違点については、第2 3.(5)で認定した相違点1~3のうち、相違点2、3は同じであり、相違点1に代えて以下の相違点1”で相違すると認められる。 (相違点1”) C末端ポリペプチドのFcドメインについて、補正案発明では「配列番号3、4、5、6、および7からなる群から選択される配列を含む」と特定されているのに対して、引用発明では「配列番号6のIgG1 Fc またはそのフラグメント」である点。 第2 3.(6)における(相違点1)についての検討で記載したように、引用発明の「配列番号6」は、その第21番目から最後までのアミノ酸配列が補正案発明の「配列番号3」と一致するものであるから、引用発明の「配列番号6」は、補正案発明の「配列番号3」の配列を含むものに相当する。 したがって、相違点1”は実質的な相違点ではない。 また、相違点2、3については、第2 3.(6)において検討したとおりである。 よって、補正案発明は、引用発明と同一であるか、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、この出願の請求項15に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-012262

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