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特許拒絶査定不服審判

2024-001097

トマト果実の形状制御方法

審判番号
2024-001097
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-522235
請求日
2024年01月23日
審決日
2025年04月18日
公報発行日
2025年07月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社アクアソリューション
  • 【請求人代理人】伊東 秀明
  • 【請求人代理人】三橋 史生
審判長/審判官
  • 審判長 古屋野 浩志
  • 審判官 山本 一
  • 審判官 門 良成
分類
P18 .113-WZ (A01G) / P18 .121-WZ (A01G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
行政事件訴訟法46条特許法29条1項3号特許法49条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-522235「トマト果実の形状制御方法」拒絶査定不服審判事件〔2019年(令和元年)12月5日国際公開、WO2019/230766〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和元年)年5月29日(優先権主張 平成30年5月30日(以下「優先日」という。))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。 令和5年 5月19日付け:拒絶理由通知書 同年 7月27日 :意見書及び手続補正書の提出 同年10月30日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年11月 7日 :原査定の謄本の送達) 令和6年 1月23日 :審判請求書及び手続補正書の提出 同年12月25日付け:拒絶理由通知書 令和7年 2月20日 :意見書及び手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年2月20日に提出された手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「【請求項1】 トマト果実が生るトマトに対し、ナノバブル水を施用する、トマト果実の形状制御方法であって、 前記ナノバブル水に含まれる気泡の最頻粒子径が10~500nmであり、 前記ナノバブル水に含まれる気泡が、空気、酸素、窒素、二酸化炭素およびオゾンからなる群から選択される少なくとも1種の気体を含む、トマト果実の形状制御方法。 ここで、酸素を含む態様は、空気中の酸素よりも高い濃度で含む態様をいい、窒素を含む態様は、空気中の窒素よりも高い濃度で含む態様をいい、二酸化炭素を含む態様は、空気中の二酸化炭素よりも高い濃度で含む態様をいう。」 第3 当審において通知した拒絶の理由の概要 令和6年12月25日付けで当審において通知した拒絶の理由の概要は、以下の理由を含むものである。 3.(新規性)本件補正前の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 4.(進歩性)本件補正前の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献一覧> 1.特開2015-97509号公報 第4 当審の判断 1 引用文献 (1)引用文献1 上記第3の当審において通知した拒絶の理由で引用された、本願の優先日前である平成27年5月28日に発行された刊行物である特開2015-97509号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。 ア 「【0007】 本発明は、 a) 水または水溶液中に超微細気泡を放出する処理を行う工程、 b) 前記処理の前、処理中または処理後に、水または水溶液に肥料または養分を添加する工程、および c) 前記の肥料または養分と超微細気泡を含む水または水溶液を、植物に吸収させる工程、を含むことを特徴とする植物の栽培方法。 水または水溶液とは、超微細気泡を放出する処理の後に肥料または養分を加える場合には水中に超微細気泡が放出され、超微細気泡を放出する処理の前または処理中に肥料または養分を加える場合には水溶液中に超微細気泡が放出されることを意味する。 前記超微細気泡内は、空気、酸素、窒素、およびオゾンから選択される気体であることができる。またこれらの気体は混合して使用することができる。 前記超微細気泡のゼータ電位の絶対値は、5mV以上である事が好ましい。またゼータ電位分布の標準偏差は15以下である事が好ましい。 【0008】 前記栽培方法は好ましくは養液栽培である。 前記超微細気泡は、気液混合剪断型超微細気泡発生装置を用いて生成することができる。 栽培される植物は、好適には茄子科植物であり、特にトマトで顕著な効果が得られる。 【0009】 好ましい態様では、タンク内に水を循環しつつ気液混合剪断型超微細気泡発生装置で超微細気泡を発生させる。好適にはタンク内の水が超微細気泡発生装置で2回処理されるまで操作が行われ、より好適には3回、4回、またはそれ以上の回数まで、循環されつつ超微細気泡発生装置で処理される。 【0010】 前記超微細気泡は、最頻粒子径が500nm以下、好ましくは最頻粒子径が300nm以下、最も好ましくは最頻粒子径が150nm以下であり、1ml当たり10万個以上、好ましくは30万個以上、より好ましくは50万個以上、最も好ましくは100万個以上存在する。なお、本明細書中で言及される超微細気泡の数は、ナノ粒子解析システム ナノサイトシリーズ(NanoSight社製)により測定されたものである。」 イ 「【0022】 本発明における栽培方法は、培地に土を用いない養液栽培方法である。 トマトの一般的な養液栽培方法としては、DFT式水耕(湛液型水耕)やNFT式水耕(薄膜水耕)の栽培事例(非特許文献1)や培地耕を利用した養液栽培方法(非特許文献2)が報告されている。またベルファーム株式会社が独自に開発したベル方式養液栽培(ココピートを用いた少量多潅水方式)も有用である。 ベル方式とは、少量培地での少量多頻度給液による養液栽培であり、栽培鉢に数株植えることにより、根域制限、適度な水ストレスを付加し、品質向上を目指す方式である。栽培段数を3~10段程度の範囲で季節ごとに制限し、年2~3作、周年栽培を行う。 【0023】 本発明で栽培する植物は特に限定するものではないが、茄子科植物において好適な結果を示し、特にはトマトにおいて好適な結果を示す。また後述の実施例に示されるように高い部位の生育がより向上されるので、背の高い植物について有用であると考えられる。」 ウ 「【0025】 実施例1 気液混合せん断方式による超微細気泡発生装置である株式会社協和機設製の「BUVITAS」により、日本薬局方精製水を使用して、超微細気泡を発生させた。生成した超微細気泡の粒径をナノ粒子解析システム ナノサイトシリーズ(NanoSight社製)により測定した。測定結果を図1に示す。図の横軸はnm単位での粒子径を、縦軸は1mL当たりのNB粒子数(ナノバブル粒子数)(106個/mL)を示す。また図2に、日本薬局方精製水についての微細気泡の測定結果を示す。 生成した超微細気泡を含む水の最頻粒子径は86nm、最頻粒子径における粒子濃度は7.57×106個/mL、総粒子濃度は6.86×108個/mLであった。 日本薬局方精製水については、粒子濃度が非常に少なく、正規分布が見られないことから測定結果はノイズであると判断された。」 エ 「【0029】 実施例3 1)トマトの栽培方法 品種として「桃太郎ヨーク」を選定した。 試験実施においては、トマト栽培棟を対称に2分割し、同面積の2区画を、それぞれ対照区、試験区とした。試験区へは既設の養液供給装置に微細気泡発生装置(気液混合せん断方式のBUVITAS HYK-32((株)Ligaric社製)で生成した微細気泡水を供給し、微細気泡水を含む液肥を栽培用ポットに給水した。対照区へは既設の養液供給装置に原水を供給し、通常どおりの液肥を栽培用ポットに給水した。 ベルファーム株式会社が独自に開発したベル方式養液栽培にてトマトを栽培した。また栽培段数は、第7段までの栽培とした。 【0030】 2)微細気泡水の生成 使用する原水は、大井川水系から得られる農業用灌漑施設から採水され、一旦濾過沈殿槽に貯蔵されて浮遊する不純物等が取り除かれた水である。表2に原水水質を示す。本試験では、気液混合せん断方式の微細気泡発生装置(BUVITAS HYK-32 (株)Ligaric社製)を用いた。微細気泡水の生成条件は、樹脂製の大型給水タンクに約1000Lの水を充填し、気体に大気を用い、大気流量750ml、回転数3600rpmとした。装置の運転条件は、栽培用ポットへの給水2時間前から給水終了時までの約750分/日の条件とした。各ポットへの給水量は、栽培時期と栽培環境に合わせて調整される。一般的に栽培初期の給水量は少量で、トマトの生育が盛んになると給水量は増加する。今回の試験では、微細気泡水による効果を原水と比較する為、試験区および対照区への給水量をほぼ同量になるように調整した。 【0031】 【表2】 [図:0001424196000001.jpg] 【0032】 3)供給水の水質観察 栽培に用いた水の経日水質変化を、水温、溶存酸素濃度、PH値で観察した。観察は、樹脂製の大型給水タンク内の水を250mlポリ容器で採水後、ガラス製容器に充填し、約5分間施設環境下に放置した後、Thermo Scientific社製ポーラログラフ式測定装置(本体:Orion 1219000 5-Star マルチマーター ホ゜ータフ゛ル型、PH値:Orion 9107BNMD、溶存酸素量DO値:Orion 083005MD)を用いて行った。その結果、水温は気温変化とほぼ連動して変化し、また微細気泡水の水温は原水よりも2℃~10℃程度高いことが分かった。(図9) 微細気泡水の溶存酸素濃度は、原水の挙動とほぼ一致し、大きな変化を示さなかった。(図10) 微細気泡水のPH値もほぼ原水の挙動と同様で、大きな変化は見られなかった。(図11) 【0033】 4)結果 a)トマトの着花数と着果率 栽培したトマトの内20本ずつを試験区および対照区よりランダムに選び着花数と着果率を評価した。 第1果房~第7果房の着花数の推移を図12に示す。その結果、試験区の着花数は対照区の着花数とほぼ同数で、双方に大きな変化は見られず、対照区、試験区とも着花数4程度以上を維持していた。 次に、第4果房~第7果房の着果率(着花した花が結実し成長した割合)を図13に示す。その結果、第5果房から第7果房では、対照区の着果率が65%~77%であったのに対し、試験区の着果率は80%~87%と高くなる傾向を示した。特に、第5果房では、試験区の着果率は対照区よりも20%以上、第6果房、第7果房においても10%程度向上した。 第4果房~第7果房の着花数および着果数のデータを図14に示す。」 オ 上記ウ【0025】の「気液混合せん断方式による超微細気泡発生装置である株式会社協和機設製の「BUVITAS」により、日本薬局方精製水を使用して、超微細気泡を発生させた。・・・生成した超微細気泡を含む水の最頻粒子径は86nm、最頻粒子径における粒子濃度は7.57×106個/mL、総粒子濃度は6.86×108個/mLであった。」との記載、上記エ【0029】の「トマトの栽培方法 品種として「桃太郎ヨーク」を選定した。 試験実施においては、トマト栽培棟を対称に2分割し、同面積の2区画を、それぞれ対照区、試験区とした。試験区へは既設の養液供給装置に微細気泡発生装置(気液混合せん断方式のBUVITAS HYK-32((株)Ligaric社製)で生成した微細気泡水を供給し、微細気泡水を含む液肥を栽培用ポットに給水した。対照区へは既設の養液供給装置に原水を供給し、通常どおりの液肥を栽培用ポットに給水した。」との記載(スペースは改行を表す。)、及び上記(1)をふまえると、トマトの栽培に、最頻粒子径が86nm、総粒子濃度が6.86×108個/mLである、超微細気泡を含む水が使用されると認められる。 カ 上記ア~オから、引用文献1には下記の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「水中に超微細気泡を放出する処理を行う工程、 前記処理後に水に肥料または養分を添加する工程、 肥料または養分と超微細気泡を含む水を、トマトに吸収させる工程、 を含む、トマトの栽培方法であって、 超微細気泡を含む水の最頻粒子径が86nm、総粒子濃度が6.86×108個/mLであり、 超微細気泡は、空気、酸素、窒素、およびオゾンから選択される気体である、 トマトの栽培方法。」 2 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)後者の「トマト」は、前者の「トマト果実が実るトマト」に相当する。 (2)後者の「超微細気泡を含む水」は、最頻粒子径が86nmであるから、前者の「ナノバブル水」に相当し、前者の「ナノバブル水」と、後者の「超微細気泡を含む水」とは、「含まれる気泡の最頻粒子径が10~500nmであ」るものである点で一致する。 (3)後者の「トマトの栽培方法」は、「肥料または養分と超微細気泡を含む水を、トマトに吸収させる工程」を含む方法であるから、上記(1)、(2)をふまえると、前者の「トマト果実の形状制御方法」と、後者の「トマトの栽培方法」とは、「トマト果実が生るトマトに対し、ナノバブル水を施用する」ものである点で一致する。 (4)後者の「超微細気泡」は、空気、酸素、窒素、およびオゾンから選択される気体であるから、前者の「トマト果実の形状制御方法」と、後者の「トマトの栽培方法」とは、「ナノバブル水に含まれる気泡が、空気、酸素、窒素、およびオゾンからなる群から選択される少なくとも1種の気体を含む」ものである点で一致する。 (5)後者の「超微細気泡として水に放出する酸素、窒素」は、「酸素」、「窒素」といった、気体の名称で特定されるものであって、通常気体をその名称単独で示す場合には単体からなる気体を意味すると解され、その結果空気中のそれらの濃度よりも高い濃度となることは明らかであることから、前者の「トマト果実の形状制御方法」と、後者の「トマトの栽培方法」とは、「酸素を含む態様は、空気中の酸素よりも高い濃度で含む態様をいい、窒素を含む態様は、空気中の窒素よりも高い濃度で含む態様をい」うものである点で一致する。 (6)したがって、本願発明と引用発明とは、 「トマト果実が生るトマトに対し、ナノバブル水を施用する、トマト果実の形状制御方法であって、 前記ナノバブル水に含まれる気泡の最頻粒子径が10~500nmであり、 前記ナノバブル水に含まれる気泡が、空気、酸素、窒素、およびオゾンからなる群から選択される少なくとも1種の気体を含む、方法。 ここで、酸素を含む態様は、空気中の酸素よりも高い濃度で含む態様をいい、窒素を含む態様は、空気中の窒素よりも高い濃度で含む態様をいう。」 である点において一致し、以下の点で一応相違する。 [相違点1] 本願発明が「トマト果実の形状制御方法」であるのに対して、引用発明の「トマトの栽培方法」が、果実の形状を制御するものであるか不明である点。 3 判断・検討 (1)判断 ア 上記[相違点1]について検討する。 引用発明の「トマトの栽培方法」は、「肥料または養分と超微細気泡を含む水を、トマトに吸収させる工程」を含み、「超微細気泡を含む水の最頻粒子径が86nm」であって、「超微細気泡は、空気、酸素、窒素、およびオゾンから選択される気体であり、超微細気泡として水に放出する酸素、窒素は、空気中の酸素、窒素の濃度よりも高い濃度である」ことから、本願発明の「トマト果実の形状制御」との課題を解決するための発明特定事項を全て備えているといえる。 そうすると、引用発明の「トマトの栽培方法」は、トマト果実の形状制御がなされる「栽培方法」であると認めることができるから、上記[相違点1]は実質的な相違点とはいえない。 (2)したがって、本願発明の発明特定事項は、実質的に、すべて引用発明が備えているといえるから、本願発明と引用発明とに差異はない。 (3)また、引用文献1の【0032】には、「微細気泡水の溶存酸素濃度は、原水の挙動とほぼ一致し、大きな変化を示さなかった。」との記載があることと、引用発明の「超微細気泡」が、「空気、酸素、窒素、およびオゾンから選択される気体」からなることからみて、気体の種類として任意のものを採用し得ると解されるところ、「二酸化炭素」が上記の「酸素や窒素」と並び「空気」に含まる気体であるから、これを空気中の濃度よりも高い濃度の「超微細気泡」として採用することは、当業者が適宜実施し得る事項である。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 (4)審判請求人の主張についての検討 ア 審判請求人の主張の概要 審判請求人は、令和7年2月20日に提出された意見書の[3]において、令和6年12月25日付けで当審が通知した拒絶理由における認定に対して、概略次の主張をしている。 「図1の横軸は最も小さい値が0.5μmであって、「最頻粒子径は86nm」との技術的事項は、これに明らかに矛盾します。なお、段落[0025]には、「図の横軸はnm単位での粒子径」との記載がありますが、図1の横軸が「粒子径(μm)」と記載されていることと齟齬があります。また、最大値が「5」となっていることから、図1中の単位の記載が誤記であるとしても、やはり「最頻粒子径は86nm」ということと整合が取れません。よって、「図の横軸はnm単位での粒子径」との記載は誤記となります。 そして、図1から読み取れる最頻粒子径の粒子濃度は、たかだか104個/mLですから、「最頻粒子径における粒子濃度は7.57×106個/mL」との技術的事項も、これに明らかに矛盾します。よって、「総粒子濃度は6.86×108個/mL」との技術的事項も、図1と矛盾するものであって、同様に根拠がありません。 ・・・ このように、引用文献1の実施例1の「生成した超微細気泡を含む水の最頻粒子径は86nm、最頻粒子径における粒子濃度は7.57×106個/mL、総粒子濃度は6.86×108個/mLであった。」との記載は、「気液混合せん断方式による超微細気泡発生装置である株式会社協和機設製の「BUVITAS」により、日本薬局方精製水を使用して、超微細気泡を発生させた。生成した超微細気泡の粒径をナノ粒子解析システム ナノサイトシリーズ(NanoSight社製)により測定した。測定結果を図1に示す。」との記載と矛盾するものであって、技術的事項として開示されているものとは到底言うことができません。 そして、引用文献1の実施例2においては、実施例1の「BUVITAS」と同じブランドの装置である「BUVITAS 205D」を使用した場合に、粒子濃度が4.22×106個/mLであることが記載されていますので、これと100倍以上も値が異なる「総粒子濃度は6.86×108個/mL」との記載が正しいという信憑性は著しく低いというほかありません。 以上のとおり、引用文献1には、「最頻粒子径は86nm」および「総粒子濃度は6.86×108個/mL」との技術的事項は何ら記載されていません。」 イ 審判請求人の主張についての見解 (ア)引用文献1の【0025】には、「図の横軸はnm単位での粒子径を、縦軸は1mL当たりのNB粒子数(ナノバブル粒子数)(106個/mL)を示す。」と記載されており、当該記載をふまえて図1から読み取れるデータと、【0025】の「生成した超微細気泡を含む水の最頻粒子径は86nm、最頻粒子径における粒子濃度は7.57×106個/mL、総粒子濃度は6.86×108個/mLであった。」との記載は、審判請求人の主張するように、確かに矛盾するものである。 (イ)ここで、上記【0025】に記載された、気液混合せん断方式による超微細気泡発生装置である「BUVITAS」は、100nm程度の最頻粒子径の気泡を1mL当たり数億個程度生成することができるものである(必要ならば、再公表特許第2013/062054号(以下「周知文献1」という。)の【0024】、特開2017-2043号公報(以下「周知文献2」という。)の【0032】等参照のこと。)。 このように、「BUVITAS」を用いて生成される超微細気泡は、粒子径が100nm程度であって、数億個/mLであることは、優先日前に広く知られていたことである。 (ウ)そして、引用文献1の【0028】には、「上記と同様の方法により、4回および10回循環させた際に生成した微細気泡水の粒度分布を測定した。微細気泡の観察にはレーサ゛ー散乱式測定装置(Nano sight LM-20、日本カンタムテ゛サ゛イン社製)を用いた。図8からわかるように、循環回数の増加と共に微細粒子の濃度が上昇していることが確認された。なお、最頻粒子径は、0passでは16nm、4passでは21nm、10passでは26nmであった。」と記載されており、「上記と同様の方法」が【0025】に記載された「気液混合せん断方式による超微細気泡発生装置である株式会社協和機設製の「BUVITAS」により、日本薬局方精製水を使用して、超微細気泡を発生させた」方法を指すことは明らかであるところ、図8を参照すると、最頻粒子径のオーダーは100nm程度であることが読み取れるから、上記(イ)で示した内容に対応しているといえる。 (エ)また、周知文献1は、引用文献1と一部同一の出願人による出願の公報であって、周知文献1の【0024】の最頻粒子径と総粒子濃度についての記載が、引用文献1の【0025】最頻粒子径と総粒子濃度についての記載と一致し、また、周知文献2の【0032】に記載された最頻粒子径と総粒子濃度に係る数値の桁が、引用文献1の【0025】に記載された最頻粒子径と総粒子濃度に係る数値の桁と概ね変わらないものであることからみて、引用文献1の記載におけるこれらの数値は妥当なものであると解することができる。 (オ)そうすると、引用文献1における【0025】の記載は、少なくとも最頻粒子径や総粒子濃度に係り矛盾するものではなく、かつ、周知文献1及び周知文献2からみても、上記「BUVITAS」を用いたナノバブルの生成に係る技術常識に反しないものであって、信頼に足るものであると解されるところ、意見書において請求人が矛盾すると主張する、同段落中の最頻粒子径に係る「86nm」や、総粒子濃度に係る「6.86×108個/mL」との値についても、その妥当性を否定するだけの理由をみいだせない。 また、上記「矛盾する」との主張の根拠とする図1は、最頻粒子径及び総粒子濃度の観点から、上述のとおり【0025】における記載に対応しないものであることが明らかであるから、引用文献1の認定及び本願発明1との対比のいずれについても誤りはないものと認められる。 (カ)したがって、審判請求人の上記アの主張は、上記2の判断を左右するものでなく採用できない。 4 まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 また、本願発明は、引用発明から当業者が容易に想到し得るものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、第29条第1項の規定により特許を受けることができないものであり、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができず、同法第49条第2号に該当するから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 したがって、結論のとおり審決する。

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2024-001097

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