特許拒絶査定不服審判
2023-015756
防滴性、防曇持続性、及び防霧性を改善した農業ハウス用被覆材並びにその製造方法
- 審判番号
- 2023-015756
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-037297
- 請求日
- 2023年09月19日
- 審決日
- 2025年10月30日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】タキロンシーアイ株式会社
- 【請求人代理人】堅田 健史
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 立澤 正樹
- 審判官 藤脇 沙絵
- 分類
- P18 .113-WZ (A01G) / P18 .121-WZ (A01G) / P18 .537-WZ (A01G) / P18 .65 -WZ (A01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 37297「防滴性、防曇持続性、及び防霧性を改善した農業ハウス用被覆材並びにその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月 3日出願公開、特開2020-137491〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年3月1日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 5月10日付け:拒絶理由通知書
令和4年 7月13日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年11月10日付け:拒絶理由通知書
令和5年 3月14日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 6月13日付け:拒絶査定(同月20日送達)
令和5年 9月19日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和6年 9月20日付け:拒絶理由通知書
令和6年11月22日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明(以下、「本願発明1」等という。)は、令和6年11月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1についてみれば、その記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
初期防滴(維持)性、防滴性、及び液滴流れ性を有する農業ハウス用被覆材であって、
農業ハウスを構成する躯体に被覆したときに外側に位置する最外側層と、
一又は二以上の中間層と、
最内側層と、を備えてなり、
前記中間層が、防曇剤として、非イオン系界面活性剤を含んでなり、
前記最内側層は、
熱可塑性樹脂と、
初期防滴(維持)剤、防滴剤、及び液滴流れ剤として、下記単量体A、単量体B、及び単量体Cを重合成分とした共重合体(1)からなるフッ素系有機化合物1と、を含んでなり、
前記単量体A、前記単量体B、及び前記単量体Cは、同一又は異なる、一種又は二種以上の混合物を使用して共重合するものであり、
前記単量体A(A)と、前記単量体B及び前記単量体C(B+C)との共重合割合(質量比)は5:95~70:30の範囲であり、又は、
前記単量体B(B)と前記単量体C(C)の共重合割合(質量比)は30:70~99:1の範囲であり、
前記フッ素系有機化合物1の含有量は、前記フッ素系有機化合物1を含んでなる前記最内側層の樹脂成分100質量部に対して、0.01質量部以上2.0質量部以下であり、
前記防曇剤の含有量は、前記熱可塑性樹脂100質量部を基準として、0.05質量部以上10.0質量部以下であり、
前記共重合体(1)の分子量は、ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量Mwが1,000~100,000であり、
前記農業ハウス用被覆材の厚さは、30μm以上300μm以下であることを特徴とする、農業ハウス用被覆材。
単量体A:Rf-Q-OCOC(R1)=CH2
〔前記単量体Aにおいて、
Qは、-(CH2)n-又は-CH2CH2C(CH3)H-であり、式中、nは1~3の整数を表し、
R1は、水素原子又はメチル基であり、
Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
単量体B:HO(C2H4O)l1(C3H6O)m1(C2H4O)n1COC(R2)=CH2
単量体C:CH2=C(R3)COO(C2H4O)l2(C3H6O)m2(C2H4O)n2COC(R4)=CH2
〔前記単量体B及びCにおいて、
R2、R3、及びR4は、水素原子又はメチル基であり、
l1、m1、n1、l2、m2、及びn2は、1~100の整数である。〕」
第3 当審拒絶理由の概要
当審において通知した令和6年9月20日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)のうち、本願の請求項1に係る発明に対する理由3(進歩性)の概要は、以下のとおりである。
理由3.(進歩性)本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2014-131502号公報
2.国際公開第2015/079953号(周知技術を示す文献)
3.特開平11-151788号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載
1 引用文献1
(1)記載事項
当審拒絶理由において引用された本願の出願日前の平成26年7月17日に頒布された刊行物である特開2014-131502号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
ア 「【0001】
本発明は、ポリオレフィン系農業用フィルムに関するものである。
【0002】
ポリオレフィン系農業用フィルムは、軽く、展張作業などが容易であることから、広く農業用ハウスに利用されている。
そして、ポリオレフィン系農業用フィルムには、2年以上、耐候性が保持され、散布された農薬などによって性能が低下しないことが求められている。例えば特許文献1には、耐農薬性の改善を目的として、トリアジン骨格および特定のピペリジン環構造を少なくとも2個以上有するヒンダードアミン化合物と紫外線吸収剤を含有するポリオレフィン系農業用フィルムが記載されており、特許文献2には、トリアジン骨格および特定のピペリジン環構造を少なくとも2個以上有するヒンダードアミン化合物と、アルミニウム、および、リチウムを金属成分とし、少なくとも1種以上のアニオン成分を含有する金属複合水酸化物塩を有効成分として含有する赤外線吸収剤を含有する農業用多層フィルムが記載されている。」
イ 「【0009】
本発明におけるポリオレフィン系農業用フィルムは、二つのポリオレフィン系樹脂層の間に、
下記式(4)で表される化合物および下記式(5)で表される化合物からなる群より選ばれる赤外線吸収剤と、下記式(1)または下記式(3)で表されるヒンダードアミン化合物と、ポリオレフィン系樹脂とを含有する層を有するポリオレフィン系農業用フィルムである。二つのポリオレフィン系樹脂層は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
本発明におけるポリオレフィン系農業用フィルムは、少なくとも3層を有する多層フィルムである。例えば、2種3層、3種3層、3種4層、4種4層、4種5層、5種5層等が例示できる。
以下、下記式(4)で表される化合物および下記式(5)で表される化合物からなる群より選ばれる赤外線吸収剤と、下記式(1)または下記式(3)で表されるヒンダードアミン化合物と、ポリオレフィン系樹脂とを含有する層を中間層と称することがある。
ポリオレフィン系農業用フィルムが4層以上の多層フィルムである場合は、ポリオレフィン系樹脂層および中間層のどちらとも異なる層を有していてもよく、ポリオレフィン系樹脂層を3層以上有していてもよく、中間層を、2層以上有していてもよい。製膜安定性の観点から、中間層は1層のみ含まれていることが好ましい。」
ウ 「【0011】
本発明に係るポリオレフィン系農業用フィルムの厚みは、フィルム強度の観点から、0.01mm以上であることが好ましい。一方、展張作業をしやすいという観点から、前記農業用フィルムの厚みは0.3mm以下が好ましい。0.05~0.25mmの範囲がより好ましく、0.10~0.15mmが特に好ましい。
【0012】
[ポリオレフィン系樹脂]
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンを主成分とするエチレンと他の単量体との共重合体などのポリエチレン系樹脂が挙げられる。」
エ 「【0019】
[中間層]
本発明に係る中間層は、式(4)で表される化合物および式(5)で表される化合物からなる群より選ばれる赤外線吸収剤と、式(1)または式(3)で表されるヒンダードアミン化合物と、ポリオレフィン系樹脂とを含有する層である。
中間層に含まれるポリオレフィン系樹脂は、上記ポリオレフィン系樹脂が用いられる。ポリオレフィン系樹脂は単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
中間層に含まれるポリオレフィン系樹脂は、好ましくは、密度が880~920kg/m3であるエチレン・α-オレフィン共重合体である。」
オ 「【0062】
[その他の添加剤]
本発明の農業用フィルムは、耐候性を更に向上させる目的で、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。」
カ 「【0069】
本発明のポリオレフィン系農業用フィルムは、防曇性を付与する目的で、防曇剤を含有することができる。防曇剤としては、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノモンタネート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート等のソルビタン脂肪酸エステルおよびそのアルキレンオキサイド付加物等のソルビタン系界面活性剤、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、トリグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンジモンタネート、グリセリンモノオレエート、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンセスキオレエート、テトラグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリントリオレエート、テトラグリセリントリオレエート、テトラグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノラウレート等のグリセリン脂肪酸エステルおよびそのアルキレンオキサイド付加物等のグリセリン系界面活性剤、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールモノステアレート等のポリエチレングリコール系界面活性剤、アルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物、ソルビタン/グリセリン縮合物と有機酸とのエステル、ポリオキシエチレン(2モル)ステアリルアミン、ポリオキシエチレン(4モル)ステアリルアミン、ポリオキシエチレン(2モル)ステアリルアミンモノステアレート、ポリオキシエチレン(4モル)ラウリルアミンモノステアレート等のポリオキシエチレンアルキルアミンおよびその脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。上記防曇剤は、農業用フィルムのいずれか一層のみに含有させてもよく、複数の層に含有させてもよい。ポリオレフィン系樹脂層に含まれてもよく、中間層に含まれてもよい。
【0070】
本発明のポリオレフィン系農業用フィルムは、ヒンダードアミン化合物、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、防曇剤とは異なる添加剤を必要に応じて含んでもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、防霧剤、滑剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、顔料等が挙げられる。」
キ 「【0072】
防霧剤としては、例えば、パーフルオロアルキル基、ω-ヒドロフルオロアルキル基等を有するフッ素化合物(特にフッ素系界面活性剤)、またアルキルシロキサン基を有するシリコーン系化合物(特にシリコーン系界面活性剤)等が挙げられる。フッ素系界面活性剤の具体例としては、ダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403N、DS-403、DS-406、DS-401(商品名)、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンKC-40、AF-1000、AF-2000(商品名)等が挙げられ、シリコーン系界面活性剤としては、東レダウコーニング株式会社製のSH-3746(商品名)が挙げられる。これらは、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。防霧剤の含有量は、0.01~3重量%が好ましく、0.02~2重量%がより好ましく、0.05~1重量%が特に好ましい(ただし、農業用フィルムの重量を100重量%とする)。」
ク 「【0073】
本発明のポリオレフィン系農業用フィルムは、所定量の式(1)または式(3)で表されるヒンダードアミン化合物と、式(4)で表される化合物および式(5)で表される化合物からなる群より選ばれる赤外線吸収剤と、必要に応じて各種の添加剤とをポリオレフィン系樹脂に添加して、これらを混合・混練機で混練して得られた樹脂組成物を用いて製造することができる。上記樹脂組成物の調製において、混合・混練機としては、例えば、リボンブレンダー、スーパーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、および2軸押出機などのポリオレフィン系樹脂の加工に通常使用されている装置を使用することができる。フィルムの製造には、共押出インフレーション成形法、共押出T-ダイキャスティング成形法などを用いることができ、共押出インフレーション成形法が好ましい。」
ケ 「【0102】
[実施例1]
<フィルムの作製>
内層用押出機(40mm押出機)と、中間層用押出機(40mm押出機)と、外層用押出機(40mm押出機)と、100mmΦダイス(リップ間隙 1.2mm)とを備えた3層インフレーション成形機を用い、加工温度160℃にて、三層のチューブ状フィルムを成形した。
具体的には、PE-3 74重量%とPE-5 20重量%とMB6 6重量%と(ただし、PE-3とPE-5とMB6の合計を100重量%とする)を混合した後、外層用押出機に投入し、PE-2 45重量%とPE-6 30重量%とMB4 5重量%とMB1 14重量%とMB3 6重量%と(ただし、PE-2とPE-6とMB4とMB1とMB3の合計を100重量%とする)を混合した後、中間層用押出機に投入し、
PE-1 32.3重量%とPE-2 40重量%とPE-5 20重量%と、MB6 6重量%とMB7 1.7重量%と(ただし、PE-1とPE-2とPE-5とMB6とMB7の合計を100重量%とする)を混合した後、内層用押出機に投入し、各押出機にて溶融混練した後、100mmΦダイスから、内層が30μm、中間層が90μm、外層が30μmとなるように吐出量を調整して、溶融した各層の樹脂組成物を押出し、冷却して三層のチューブ状フィルムを成形し、切り開いて三層の多層フィルムを得た。各層に用いた原料は、表1に示した。
なお、上記および表に記載した略号は以下の通りである。
PE-5:エチレン・1-ヘキセン共重合体 (商品名:スミカセンE FV203 住友化学株式会社製)
PE-6:エチレン・1-ヘキセン共重合体 (商品名:エクセレン FX201 住友化学株式会社製)」
(2)引用発明
上記(1)の記載からみて、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)。
<引用発明>
「ポリオレフィン系農業用フィルムに関して(【0001】)、
ポリオレフィン系農業用フィルムは、農業用ハウスに利用され(【0002】)、
ポリオレフィン系農業用フィルムは、二つのポリオレフィン系樹脂層の間に、ポリオレフィン系樹脂とを含有する層を有するポリオレフィン系農業用フィルムであり、ポリオレフィン系農業用フィルムは、少なくとも3層を有する多層フィルムであり(【0009】)、
ポリオレフィン系農業用フィルムの厚みは、0.05~0.25mmの範囲がより好ましく(【0011】)、
ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンを主成分とするエチレンと他の単量体との共重合体などのポリエチレン系樹脂が挙げられ(【0012】)、
中間層は、ポリオレフィン系樹脂とを含有する層であり(【0019】)、
ポリオレフィン系農業用フィルムは、防曇性を付与する目的で、防曇剤を含有することができ、防曇剤は、農業用フィルムのいずれか一層のみに含有させてもよく、中間層に含まれてもよく(【0069】)、
防曇材としては、非イオン性界面活性剤が挙げられ(【0069】)、
農業用フィルムは、耐候性を更に向上させる目的で、紫外線吸収剤を含有させることが好ましく(【0062】)、
ポリオレフィン系農業用フィルムは、防曇剤とは異なる添加剤を必要に応じて含んでもよく、添加剤としては、酸化防止剤、防霧剤が挙げられ(【0070】)、
防霧剤としては、フッ素化合物、具体例としては、ダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403N、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-1000、AF-2000が挙げられ、防霧剤の含有量は、0.01~3重量%が好ましく、0.02~2重量%がより好ましく、0.05~1重量%が特に好ましい(ただし、農業用フィルムの重量を100重量%とする)(【0072】)、
ポリオレフィン系農業用フィルム。」
2 引用文献2
(1)記載事項
当審拒絶理由において引用された本願の出願日前の平成27年6月4日に発行された刊行物である国際公開第2015/079953号(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0011】 基材樹脂
本発明に使用し得る農業用フィルムの材料(基材樹脂)としては、一般に150~250℃程度で溶融成形しうるフィルム形成能のあるものであって、一般に農業用被覆材用に用いられているものはいずれのものでも使用することができる。例えば、ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、これら樹脂に限定されるわけではない。」
イ 「【0041】
基材樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合には、防霧剤の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲で適切に選択することができ、基材樹脂100重量部に対して、通常0.01~2.0重量部であり、好ましくは0.02~1.0重量部である。
また、基材樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合には、少なくとも外層、中間層及び内層を有するポリオレフィン系樹脂多層フィルムとすることができる。この場合、多層フィルムの少なくとも外層に防霧剤を含有させるのが好ましく、防霧剤の添加量は、多層フィルムの外層中のポリオレフィン系樹脂100重量%に対し、好ましくは0.001~5.0重量%、更に好ましくは0.01~3.0重量%である。
また、本発明においては、多層フィルムの内層に防霧剤を含有させてもよく、防霧剤の添加量は、多層フィルムの内層中のポリオレフィン系樹脂100重量%に対し、好ましくは0.001~5.0重量%、より好ましくは0.01~3.0重量%、更に好ましくは0.001~0.09重量%、とりわけ好ましくは0.001以上0.05重量%未満である。
防霧剤の含有量を上記の範囲とすることにより、十分な防霧効果を発揮でき、フィルムの白濁やブリードアウトによる表面のべとつきを抑制することができる。
【0042】
本発明の農業用フィルムは、防霧剤と防曇剤とを併用することが好ましい。
防曇剤としては、好ましくはソルビタン系防曇剤が用いられる。ソルビタン系防曇剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレンオキシド付加物を用いることができる。本発明において、好ましくは、ソルビタン系防曇剤は、ソルビタンパルミチン酸エステル、ソルビタンパルミチン酸エステルのアルキレンオキシド付加物、ソルビタンステアリン酸エステル、ソルビタンステアリン酸エステルのアルキレンオキシド付加物、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンアルキレンオキシド付加物及びソルビタンモノパルミチン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である。
本発明において、ソルビタンステアリン酸エステル、ソルビタンパルミチン酸エステルには、モノエステル、ジエステル、トリエステル、及びそれらの混合物が含まれる。
ソルビタンステアリン酸エステル、ソルビタンパルミチン酸エステルに付加するアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。アルキレンオキシドが付加するモル数については、モル数が大きいと初期濡れ、低温無滴性に効果がある一方、持続性が低くなる傾向にある。
(2)引用文献2に記載の技術的事項
上記(1)からみて、引用文献2には下記の技術的事項(以下、「引用文献2に記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「農業用フィルムの材料(基材樹脂)としては、ポリオレフィン系樹脂が挙げられ、
農業用フィルムは、防霧剤を併用することが好ましく、
基材樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合には、防霧剤の添加量は、効果を損なわない範囲で適切に選択することができ、
基材樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合には、少なくとも外層、中間層及び内層を有するポリオレフィン系樹脂多層フィルムとすることができ、
多層フィルムの内層に防霧剤を含有させてもよい、
農業用フィルム。」
3 引用文献3
(1)記載事項
当審拒絶理由において引用された本願の出願日前の平成11年6月8日に頒布された刊行物である特開平11-151788号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ポリオレフィン系フィルムにおいて、その防曇性、防霧性に優れた積層防曇フィルムを提供することである」
イ 「【0051】本発明の積層防曇フィルムの層構成は、A層が積層フィルムの片面側の最表層であってかつ、防曇層が反対面側の最表層であれば特に限定はない。防曇層を除いた部分はオレフィン系樹脂からなり、通常は3層から5層程度の層構成がよく用いられる。各層の樹脂および添加剤の配合は異なっていてもよい。3層以上の層構成の場合、ハウス等の施設に展帳した際、施設の外側に面する層を外層、内側に面する層を内層と称し、その他の層を中間層(多層構造であってもよい)と称するのが一般的である。通常は防曇層を内層とするため、防曇層をA層に積層することによりフィルムとハウス骨材との接触破れがより少なくなる。
【0052】本発明の積層防曇フィルムを農業用施設に用いる場合、外層には防塵処理が、内層には流滴、防霧処理がそれぞれ施されていてもよい。」
ウ 「【0062】本発明の積層防曇フィルムには、防霧性を付与する目的で、防霧剤を配合することができる。かかる防霧剤としては、パーフルオロアルキル基、ω-ヒドロフルオロアルキル基等を有するフッ素化合物(特にフッ素系界面活性剤)、アルキルシロキサン基を有するシリコン系化合物(特にシリコン系界面活性剤)等が挙げられる。防霧剤を配合する場合、その配合量はフィルム全体中に通常、0.01~3重量部、好ましくは0.02~1重量部の範囲である。」
(2)引用文献3に記載の技術的事項
上記(1)からみて、引用文献3には下記の技術的事項(以下、「引用文献3に記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「ポリオレフィン系フィルムからなる積層防曇フィルムの層構成は、3層から5層程度の層構成がよく用いられ、
積層防曇フィルムを農業用施設に用いる場合、内層には防霧処理がそれぞれ施されていてもよく、
防霧性を付与する目的で、防霧剤を配合することができる、
農業用施設に用いる積層防曇フィルム。」
第5 当審の判断
1 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「ポリオレフィン系農業用フィルム」は、「農業用ハウスに利用」されるものであるから、本願発明1の「農業用ハウス被覆材」に相当する。
(2)引用発明の「ポリオレフィン系農業用フィルム」は、「二つのポリオレフィン系樹脂層の間」に、「中間層」である「ポリオレフィン系樹脂とを含有する層を有する」「少なくとも3層を有する多層フィルム」であるから、本願発明1の「農業ハウス用被覆材」が「農業ハウスを構成する躯体に被覆したときに外側に位置する最外側層と、一又は二以上の中間層と、最内側層とを備え」ることと、引用発明の「ポリオレフィン系農業用フィルム」は、「農業ハウスを構成する躯体に被覆したときに外側に位置する最外層と、一又は二以上の中間層と、最内側層とを備え」ている点で共通する。
(3)引用発明の「ポリオレフィン系農業用フィルム」は、防曇性を付与する目的で、防曇剤を含有することができ」、「防曇剤」は、「中間層に含まれてもよ」いから、本願発明1の「中間層が、防曇剤として、非イオン系界面活性剤を含んでな」ると引用発明の「中間層」は、「中間層が防曇剤を含む」点で共通する。
(4)引用発明の「防曇剤」としては、「非イオン性界面活性剤」があげられることは、本願発明1の「防曇剤として、非イオン系界面活性剤を含」むことに相当する。
(5)引用発明の「ポリオレフィン系農業用フィルム」は、「二つのポリオレフィン系樹脂層の間に、ポリオレフィン系樹脂とを含有する層を有する」ものであって、「ポリオレフィン樹脂」は「熱可塑性樹脂」であるから、「二つのポリオレフィン系樹脂層」の一方は、本願発明1の「熱可塑性樹脂」を含む「最内側層」に相当する。
イ 一致点・相違点
上記「ア」から、本願発明1と引用発明とは、
<一致点>
「農業ハウス用被覆材であって、
農業ハウスを構成する躯体に被覆したときに外側に位置する最外側層と、
一又は二以上の中間層と、
最内側層とを備えてなり、
前記中間層が、防曇剤として、非イオン系界面活性剤を含んでなり、
前記最内側層は、
熱可塑性樹脂、
を含んでなる、
農業ハウス用被覆材。」
である点において一致し、以下の相違点1~6で相違する。
<相違点1>
本願発明1の「農業ハウス用被覆材」が「初期防滴(維持)性、防滴性、及び液滴流れ性を有する」のに対して、引用発明では「ポリオレフィン系農業用フィルム」がそのような性質が特定されていない点。
<相違点2>
本願発明1の「農業ハウス用被覆材」の「最内側層」に「初期防滴(維持)剤、防滴剤、及び液滴流れ剤として、下記単量体A、単量体B、及び単量体Cを重合成分とした共重合体(1)からなるフッ素系有機化合物1」が含まれ、「前記単量体A、前記単量体B、及び前記単量体Cは、同一又は異なる、一種又は二種以上の混合物を使用して共重合するものであり、前記単量体A(A)と、前記単量体B及び前記単量体C(B+C)との共重合割合(質量比)は5:95~70:30の範囲であり、又は、前記単量体B(B)と前記単量体C(C)の共重合割合(質量比)は30:70~99:1の範囲であり」、「前記共重合体(1)の分子量は、ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量Mwが1,000~100,000であ」るのに対して、引用発明の「ポリオレフィン系農業用フィルム」は、「添加剤としては、防霧剤を含」み、「防霧剤としては、フッ素化合物、具体例としては、ダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403N、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-1000、AF-2000が挙げられ」る点。
<相違点3>
本願発明1の「最内側層」に含まれる「フッ素系有機化合物1」の「含有量」が、「フッ素系有機化合物1を含んでなる」「最内側層の樹脂成分100質量部に対して、0.01質量部以上2.0質量部以下であ」るのに対して、引用発明の「ポリオレフィン系農業用フィルム」に含まれる「フッ素化合物」の「含有量」は、「0.01~3重量%が好ましく、0.02~2重量%がより好ましく、0.05~1重量%が特に好ましい」ものであり、数値範囲が異なる点。
<相違点4>
本願発明1の「防曇剤の含有量は、前記熱可塑性樹脂100質量部を基準として、0.05質量部以上10.0質量部以下であ」るのに対して、引用発明では、「防曇剤」の含有量が特定されていない点。
<相違点5>
本願発明1の「農業ハウス用被覆材の厚さは、30μm以上300μm以下である」のに対して、引用発明の「ポリオレフィン系農業用フィルムの厚みは、0.05~0.25mmの範囲」、すなわち「50~250μmの範囲」であり、一部の範囲で重なるものの、数値範囲が異なる点。
2 判断
各相違点について検討する。
(1)相違点1について
下記(2)で示すように、本願の発明の詳細な説明【0097】には、「農業ハウス用被覆材」に含まれる防霧剤1(フッ素系有機化合物1)として、「AGCセイミケミカル社製、商品名「サ-フロン AF-2000」」を用いる点記載されており、「実施例1」として、防霧剤1(フッ素系有機化合物1)を用いる旨記載されている。
それに対して、引用発明では、ポリオレフィン系農業用フィルムは、防曇剤とは異なる添加剤を必要に応じて含んでもよく、添加剤としては、防霧剤が挙げられ、防霧剤としては、フッ素化合物、具体例としては、ダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403N、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-1000、AF-2000が挙げられるものである。
また、フッ素系の材料は、表面張力が低いこと、及び、接触角が大きいことから、撥水性を実現することは技術常識であり、引用発明において、「ポリオレフィン系農業用フィルム」に「防霧剤」として、フッ素系の材料である「AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-2000」が添加されているのであるから、撥水性、すなわち水をはじく性質である「初期防滴(維持)性、防滴性、及び液滴流れ性」を備えていることは明らかである。
よって、相違点1は、実質的な相違点ではない。
(2)相違点2について
ア 防霧剤について
(ア)本願明細書における「防霧剤」について
本願の発明の詳細な説明【0097】には、「農業ハウス用被覆材」に含まれる防霧剤1(フッ素系有機化合物1)として、「AGCセイミケミカル社製、商品名「サ-フロン AF-2000」」を、防霧剤2(フッ素系有機化合物2)として、「AGCセイミケミカル社製、商品名「サ-フロン AF-1000」」を、防霧剤3(フッ素系有機化合物3)として、「ダイキン工業社製、商品名「DSN-403N」」を用いる点記載されており、「実施例1」として、防霧剤1(フッ素系有機化合物1)を用いる旨記載されている。
(イ)引用発明の「防霧剤」について
引用発明では、ポリオレフィン系農業用フィルムは、防曇剤とは異なる添加剤を必要に応じて含んでもよく、添加剤としては、防霧剤が挙げられ、防霧剤としては、フッ素化合物、具体例としては、ダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403N、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-1000、AF-2000が挙げられるものである。
そして、引用発明においても、防霧剤として、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-2000が用いられており、本願発明1に用いられる「フッ素系有機化合物1」と一致する。
また、フッ素系の材料は、表面張力が低いこと、及び、接触角が大きいことから、撥水性を実現することは技術常識であり、引用発明において、「ポリオレフィン系農業用フィルム」に「防霧剤」として、フッ素系の材料である「AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-2000」が添加されているのであるから、撥水性、すなわち水をはじく性質である「初期防滴(維持)性、防滴性、及び液滴流れ性」を備えていることは明らかである。
そうしてみると、引用発明で添加剤として挙げられたAGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-2000をポリオレフィン系農業用フィルムに用いた場合、「初期防滴(維持)性、防滴性、及び液滴流れ性」を備えていることは明らかである・
また、本願の発明の詳細な説明【0097】には、農業ハウス用被覆材の調整として、防霧剤1(フッ素系有機化合物1:AGCセイミケミカル株式会社製、商品名「サーフロンAF-2000」)を最内側層に含有させた実施例1が記載されており、その評価試験の結果が【表1】として記載され、高い防霧性が達成された旨が記載されている。
そうしてみると、引用発明において添加されたAGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-2000も同じ製品であり、「単量体A、単量体B、及び単量体Cを重合成分とした共重合体(1)からなるフッ素系有機化合物1」が含まれ、「前記単量体A、前記単量体B、及び前記単量体Cは、同一又は異なる、一種又は二種以上の混合物を使用して共重合するものであり、前記単量体A(A)と、前記単量体B及び前記単量体C(B+C)との共重合割合(質量比)は5:95~70:30の範囲であり、又は、前記単量体B(B)と前記単量体C(C)の共重合割合(質量比)は30:70~99:1の範囲であり」、「前記共重合体(1)の分子量は、ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量Mwが1,000~100,000であ」ることと一致する。
イ 防霧剤を設ける層について
引用文献2記載の技術事項、及び、引用文献3記載の技術事項にあるように、
「ポリオレフィン系フィルムの複数層からなる農業ハウス用被覆材において、
複数層の最内側層に、防霧を目的として、防霧剤を配合する、
農業ハウス用被覆材。」
の技術は周知技術である。
そうしてみると、引用発明の「ポリオレフィン系農業用フィルム」において、「防霧剤」を設ける層として、当該周知技術の最内側層に設ける技術を採用し、本願発明1の相違点2に係る発明の構成をなすことは、当業者が容易になし得ることである。
(3)相違点3について
相違点3にあるように、本願発明1と引用発明において、「農業ハウス用被覆材」が含有する「フッ素系有機化合物1」の「含有量」は、数値範囲が異なる。
しかしながら、明細書の記載からみて、本願発明1における当該「含有量」の数値範囲を特定することによる特段の技術的意義を有するといえない。
よって、引用発明の「ポリオレフィン系農業用フィルム」において、「防霧剤」を含有するにあたり、効果を損なわない範囲で適切に選択することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
(4)相違点4について
本願の発明の詳細な説明【0080】に、「防曇剤の含有量は、各構成層(特に、最内側層又は中間層が好ましい)の熱可塑性樹脂100質量部を基準として、0.05質量部以上であり、好ましくは、0.3質量部以上であり、10.0質量部以下であり、好ましくは、7.0質量部以下である。防曇剤の含有量が上記範囲内にあることにより、防曇性が良好で、かつ、農業ハウス用被覆材表面へのブリードアウトの発生を高い次元において抑制することができる。」と記載されているが、当該記載における「防曇剤の含有量」の数値範囲を特定することにより、防曇剤を含有させることにより発揮される効果以上の格別の効果を奏するものでもなく、当該「含有量」の数値範囲を特定することによる特段の技術的意義を有するといえない。
よって、引用発明において、「防曇剤」を含有するにあたり、効果を損なわない範囲で適切に選択することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
(5)相違点5について
相違点5にあるように、本願発明1と引用発明において、「農業ハウス用被覆材の厚さ」は、一部重複はあるもの、数値範囲が異なる。
しかしながら、本願の発明の詳細な説明【0052】に「農業用ハウス用被覆材として用いたときに十分な透光性を得ると同時にハウス骨材に展張した際に必要な強度を得ることが可能となる。」と記載されていることを参酌しても、農業用ハウス用の被覆材として用いられた場合に、透光性、強度等、通常に求められる効果を満たす数値範囲であると考えられ、本願発明1における当該「厚さ」の数値範囲を特定することによる特段の技術的意義を有するといえない。
よって、引用発明の「ポリオレフィン系農業用フィルム」において、その「厚さ」を決定するにあたり、効果を損なわない範囲で適切に選択することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
(6)相違点1~5について
引用発明では、防霧剤として、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-2000が用いられている。
そして、本願の発明の詳細な説明【0013】に、「農業ハウス用被覆材を構成する何れかの層に、特定のフッ素系有機化合物を含有することにより、優れた初期防滴(維持)性、防曇(持続)性、及び防霧性を高い次元において達成することが可能となる。」と記載があり、また、【0027】に、「最外側層、一又は二の中間層、最内側層に、フッ素系有機化合物1を添加する場合には、フッ素系有機化合物1の含有量は、各層の熱可塑性樹脂100質量部を基準にして、0.01質量部以上であり、好ましくは0.03質量部以上であり、2.0質量部以下であり、好ましくは、1.0質量部以下である。当該含有量の範囲内にあることにより、農業ハウス用被覆材の初期防滴(維持)性、防曇(持続)性、及び防霧性を実現することが可能となる。」とも記載されている。
これら両記載も参酌すると、引用発明に記載の「ポリオレフィン系農業用フィルム」において、「添加剤としては、防霧剤を含」み、「防霧剤としては、フッ素化合物、具体例としては、ダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403N、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-1000、AF-2000が挙げられ」ことから、引用発明においても、防霧剤として、本願発明1と同じ製品であるAGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-2000が用いられており、その結果、本願発明1では、「初期防滴(維持)剤、防滴剤、及び液滴流れ剤として」、「フッ素系有機化合物1」が用いられているのであるから、引用発明においても、同様に「ポリオレフィン系農業用フィルム」が「初期防滴(維持)性、防滴性、及び液滴流れ性を有する」と考えられる。
3 本願発明1のまとめ
各相違点については、前記2で検討したとおりであり、また、相違点1~6を総合的に勘案しても、本願発明1の奏する効果としては、当業者にとって予測困難であり、かつ、格別顕著なものを認めることはできない。
よって、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、令和6年11月22日提出の意見書において、
「先ず、本願発明と引用文献とは、発明の対象及び発明の方向性、従来技術の問題及び解決すべき課題、発明特定事項(発明の構成)、並びに発明の効果の全てにおいて異なるものとなっております。そして、引用文献には、本願発明固有の発明特定事項;当該発明特定事項を容易に採用してみようとする理論付けとなる事項;及び当該発明特定事項を採用することにより達成される技術的意義については全く開示も示唆もなされておりません。更に、本願発明固有の効果は、引用文献に対して極めて異質かつ顕著な効果となっており、かつ、引用文献を精読した当業者にとり容易に想到することはできない特有かつ固有なものであったことが明らかに理解されます。従って、引用文献は、本願発明を容易に想到することができる理論付けとはならないことが明らかに理解されます。その当然の帰結として、当業者は、引用文献1に、引用文献2及び引用文献を容易に組み合わせてみよう(理論付け)とは決して認識しなかったと云えるのです。しかもまた、万が一、引用文献1に、引用文献2及び引用文献3を組み合わせてもなお、本願発明には容易に想到することは(理論付け)できなかったことは明らかです。よって、引用文献は、本願発明を容易に想到することができる先行技術(引用例)として当業者は容易に採用すること(理論付け)はできなかったと云えます。即ち、固有の発明特定事項を備える本願発明は、万が一、引用文献1に、引用文献2及び引用文献3を組合せた事項から、当業者が容易に想到することができなかった発明の困難性を有することが明らかに理解されるのです。」
と主張している。
(2)当審の判断
本願発明の課題とその解決手段は、本願の発明の詳細な説明【0008】、【0013】の記載から、「防滴(維持)性、防曇持続性、及び防霧性を十分に発揮させる農業ハウス用被覆材及びその製造方法の開発」であり、「農業用ハウス用被覆材を構成する何れの層に、特定のフッ素系有機化合物を含有する」ことである。
そして、引用発明も防霧剤として、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-2000を添加材として用いることにより、防霧性を担保するものである。
上記請求人の主張のとおり、たしかに引用文献1、引用文献2及び引用文献3には、本願発明1に記載された「初期防滴(維持)性、防滴性、及び液滴流れ性」についての明記はない。
しかし、上記2(1)で述べたように、フッ素系の材料は、表面張力が低いこと、及び、接触角が大きいことから、撥水性を実現することは技術常識であり、引用発明において、「ポリオレフィン系農業用フィルム」に「防霧剤」として、フッ素系の材料である「AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-2000」が添加されているのであるから、撥水性、すなわち水をはじく性質である「初期防滴(維持)性、防滴性、及び液滴流れ性」を備えていることは明らかである。
そして、本願発明1では、「農業ハウス用被覆材」が「初期防滴(維持)性、防滴性、及び液滴流れ性」を有する点限定しているが、この限定により、「農業ハウス用被覆材」の機能を限定していることは理解できるが、構成としていかに限定しているか理解できない。
そうしてみると、本願発明1と引用発明とは、「防霧剤」として、フッ素系の材料である「AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンAF-2000」が添加されることにより、「初期防滴(維持)性、防滴性、及び液滴流れ性」を結果として備えていることになるのであるから、上記請求人が主張する、「本願発明と引用文献とは、発明の対象及び発明の方向性、従来技術の問題及び解決すべき課題、発明特定事項(発明の構成)、並びに発明の効果の全てにおいて異なるもの」との主張を採用することはできない。
また、「防霧性」に関して、引用発明は、「ポリオレフィン系農業用フィルム」に「防霧剤」として用いられる「フッ素系化合物」を設ける層、及び、その「含有量」の数値範囲が、本願発明1とは異なっている。
しかし、上記2(2)(3)で述べたように、「防霧剤」を設ける層として、周知技術の最内側層に設ける技術を採用することは、当業者が容易になし得ることであり、数値範囲が異なっていたとしても、「防霧」するという目的を達成するために数値範囲が多少ずれることは想定されるが、数値範囲に技術的意義は認められず、数値範囲が格別のものであるとは認められない
(3)小括
以上のとおりであるから、請求人の主張について検討しても、上記2での判断を左右するものではなく、採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-015756