特許拒絶査定不服審判
2024-000720
ナノバブル含有化粧料組成物
- 審判番号
- 2024-000720
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-209621外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年01月16日
- 審決日
- 2026年03月16日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三粧化研株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人清原国際特許事務所
- 【請求人】株式会社超微細科学研究所
- 【請求人代理人】弁理士法人清原国際特許事務所
- 【請求人】株式会社H4
- 【請求人代理人】弁理士法人清原国際特許事務所
- 分類
- P18 .536-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-209621「ナノバブル含有化粧料組成物」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 7月 7日出願公開、特開2022-103130〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年12月23日(優先権主張 令和2年12月25日)の出願であって、出願後の主な手続の経緯は次のとおりである。
令和5年 7月 3日付け:拒絶理由通知
同年 8月31日 :意見書及び手続補正書の提出
同年10月10日付け:拒絶査定
令和6年 1月 16日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和7年 9月26日付け:拒絶理由通知(当審)
同年11月28日 :意見書及び手続補正書の提出
同年12月 1日 :物件提出書の提出
第2 本願発明について
本願の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明は、令和7年11月28日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである(下線は、本件補正による記載の変更箇所を示す。)。
「【請求項1】
ナノバブル液および化粧料の成分を含み、
前記ナノバブル液は、オイル中に気泡が分散しており、前記気泡の直径は80nm~140nmであり、
前記気泡が前記オイル中に分散してから少なくとも3か月の間、ナノバブル濃度が1×107(個数/ml)以上の状態が保たれている、ナノバブル液である、ことを特徴とする、ナノバブル含有化粧料組成物であって、
前記ナノバブル含有化粧料組成物が、クレンジング用化粧料組成物、整肌用化粧料組成物、頭髪用化粧料組成物、または浴用化粧料組成物である、ナノバブル含有化粧料組成物。」
第3 当審合議体が通知した拒絶理由
令和7年9月26日付け拒絶理由通知書において当審合議体が通知した拒絶理由は、以下の理由を含むものである。
理由2(実施可能要件)
この出願は、発明の詳細な説明の記載が、下記の点で、特許法第36条4項第1号に規定する要件を満たしていない。
第4 当審合議体の判断
当審合議体は、上記第3に示した拒絶理由の「理由2」のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないと判断する。
その理由は、以下のとおりである。
1 実施可能要件について
特許法第36条第4項第1号は,「発明の詳細な説明」の記載については、「発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」(特許法施行規則24条の2)により「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである」こと(以下、「実施可能要件」という。)を、その要件として定めている。同規定の趣旨は、特許制度は、発明を公開した者に対して、技術を公開した代償として一定の期間の独占権を付与する制度であるが、仮に、特許を受けようとする者が、第三者に対して、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を開示することなく、また、発明を実施するための明確でかつ十分な事項を開示することなく、独占権の付与を受けることになるのであれば、有用な技術的思想の創作である発明を公開した代償として独占権が与えられるという特許制度の目的を失わせることになりかねず、そのような趣旨から、特許明細書の「発明の詳細な説明」に、上記事項を記載するよう求めたものである。(平成21年(行ケ)第10033号)
そして、発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件を満たすというためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要すると解される。そして、この規定のいう「実施」とは、物の発明においては、当該発明にかかる物の生産、使用等をいうものであるから、実施可能要件を満たすといえるためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が当該発明に係る物を生産し、使用することができる程度のものでなければならない。
そこで、以下、この観点に立って検討する。
2 発明の詳細な説明の記載
本願の願書に添付した明細書(以下「本願明細書」という。)の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている(摘記中の下線は、当審合議体が付したものであり、「・・・」は、摘記の省略を表す。)。
摘記a:
「【0059】
ナノバブル液は、オイルにガスを供給してナノバブル液を調製する。
【0060】
ナノバブル液は、ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)を使用して製造される。ナノバブル液の製造は、前記ナノバブル発生装置と同様のナノバブル濃度、ナノバブルの均一性の高さ、ナノバブルの安定性の高さ及びナノ粒子の混入が非常に少ないナノバブル液を製造できる装置であれば、ナノバブル発生装置は問わないものとする。
ナノバブル濃度は1×106(個数/ml)以上であり、好ましくは1×107(個数/ml)以上である。
均一性の高いナノバブルとは、5-500nm、50-300nm、80-200nmまたは80-140nmの気泡径をもつナノバブルであり、気泡径のばらつきが小さいものである。
安定性の非常に高いナノバブル液とは、オイルにナノバブルを含有させてから、少なくとも3ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、12ヶ月もしくは15ヶ月以上の間、ナノバブル濃度が1×107(個数/ml)の状態を保つナノバブル液である。
本発明に係るナノバブルは、従来の旋回液流式、スタティックミキサー式、エゼクター式、ベンチュリー式、加圧微細孔式又は加圧溶解式のナノバブル発生装置によって発生させたナノバブルに比べて、均一性や安定性が非常に高いことが特徴である。
【0061】
本発明で使用されるナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)について、図1を用いて詳細に説明する。
【0062】
図1は、本発明において使用されるナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)の概略構成を示している。同図に示すように、本発明において使用されるナノバブル発生装置1は、気体放出前の液体を貯留する貯液槽10と、この貯液槽に貯留された液体を吸い上げて送出する送液ユニット20(相対移動手段)と、この送液ユニット20による送液途中の液体にナノバブルを放出する気体放出ユニット41と、この気体放出ユニット41によって気体が放出された液体を貯留する貯液槽40から構成されている。
【0063】
前記送液ユニット20は、液体の流路を形成する送液管21と送液管部分22に設けられた可変流量形の送液ポンプ23と、送液管部分21に設けられた気体放出ユニット41の負圧度を調整するためのバルブ24とを備えており、貯液槽10に貯留された液体が気体放出ユニット41を通って貯液槽40に送出されるようになっている。
【0064】
前記気体放出ユニット41は、気体放出部材42を備えており、気体放出部材42の下面(気体放出面)に液体が接触する状態で液体の流路FCが形成される。放出される気体は、給気管46を通して給気室GRに給気され、気体放出部材42を通して液体にナノバブルとして提供される。
使用される気体は、当業者に自明のものであれば全て用いることができるが、水素、二酸化炭素、空気、もしくは酸素などを用いることが望ましい。
【0065】
貯液槽10に貯留された液体は、送液ユニット20の送液管21から気体放出ユニット41に送られ、流路FCを通って、送液ユニット20の送液管22に送られ、送液管から貯液槽40に送出されるようになっている。
本発明で使用される液体は主にオイルであり、その粘度は1000mPa・s以下であることが好ましい。
【0066】
前記気体放出部材42は、多孔質アルミナ、多孔質ガラス等の多孔質セラミックスによって形成された通気型の多孔質体からなり、孔径(モード径)が1.5[μm]以下の多数の気体放出孔が下面に開放されている。具体的には、気体放出孔の孔径(モード径)が、1.5μm、1μm、0.8μm、0.4μm、0.05μm、0.005μmの6種類である。
【0067】
以上のように構成されたナノバブル発生装置1において、貯液槽10内に液体を導入して送液ポンプ23を運転すると、貯液槽10内の液体が気体放出ユニット41の流路を通って貯液槽40に送出されるが、送液ポンプ23の吸込側に位置している気体放出ユニット41の流路FC内は負圧になっている。
この負圧によって、気体放出部材42の下面に開放された気体放出孔から流路FCを通過する液体内に空気が吸い出される。ポンプ流量は、気体放出ユニット41の流路FC内の液体流速が0.3[m/sec]以上となるように調整する。
前記液体の移動により、気体放出部材42の気体放出孔から流路FCを通過する液体内に吸い出されるガスは、流路FCを流れる液体流によって、1.5μm以下の微細気泡に分断され、この微細気泡がゆっくりと収縮しながらナノオーダーの微細気泡が生成され、ナノバブルを含む液体が貯液槽に貯留される。
【0068】
前記送液ポンプは、流体路独立ポンプでポンプ作動ダストの発生しない構造を持つものであり、揚程が大きいものが望ましく、好ましくは5m以上の揚力のものを使用すればよい。
【0069】
また、従来の旋回液流式、スタティックミキサー式、エゼクター式、ベンチュリー式、加圧微細孔式又は加圧溶解式のナノバブル発生装置は、マイクロバブルも同時に発生することで、装置内部でキャビテーションを起こす。このキャビテーションにより、装置内で少量の壊食が発生し、不純物であるナノ粒子の汚染を起こす。このナノ粒子による汚染はナノバブル濃度計測の際に誤ってナノバブルとして計測されるため、ナノ粒子の汚染は好ましくない。
一方で、本発明で使用するナノバブル発生装置は、ナノバブルのみを発生させ、送液ポンプについても流体路独立ポンプでポンプ作動ダストの発生しない構造を持つものであるため、不純物であるナノ粒子の汚染は非常に少ない。」
摘記b:
「【実施例】
【0078】
以下、本発明に係るナノバブル含有化粧料組成物の実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0079】
[実施例1]
(水素ガスからなるナノバブル含有化粧料組成物の調製)
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)により発生させた、水素ガスからなるナノバブルをパルミチン酸2-エチルヘキシルに通気し、ナノバブル液を調製した。続いて、調製したナノバブル液に化粧料の成分としてトコフェロールを混合し、実施例1のナノバブル含有化粧料組成物を調製した。実施例1のナノバブル含有化粧料組成物の配合割合を表1に示した。
【0080】
[実施例2]
(酸素ガスからなるナノバブル含有化粧料組成物の調製)
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)により発生させた、酸素ガスからなるナノバブルをパルミチン酸2-エチルヘキシルに通気し、ナノバブル液を調製した。続いて、調製したナノバブル液に化粧料の成分としてトコフェロールを混合し、実施例2のナノバブル含有化粧料組成物を調製した。実施例2のナノバブル含有化粧料組成物の配合割合を表1に示した。
【0081】
[実施例3]
(二酸化炭素ガスからなるナノバブル含有化粧料組成物の調製)
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)により発生させた、二酸化炭素ガスからなるナノバブルをパルミチン酸2-エチルヘキシルに通気し、ナノバブル液を調製した。続いて、調製したナノバブル液に化粧料の成分としてトコフェロールを混合し、実施例3のナノバブル含有化粧料組成物を調製した。実施例3のナノバブル含有化粧料組成物の配合割合を表1に示した。
【0082】
[実施例4]
(水素ガスからなるナノバブル含有化粧料組成物の調製)
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)により発生させた、水素ガスからなるナノバブルをスクワランに通気し、ナノバブル液を調製した。続いて、調製したナノバブル液に化粧料の成分としてトコフェロールを混合し、実施例4のナノバブル含有化粧料組成物を調製した。実施例4のナノバブル含有化粧料組成物の配合割合を表1に示した。
・・・
【0085】
(試験方法)
実施例1-4のナノバブル含有化粧料組成物、比較例1のオイル含有化粧料組成物、および比較例2のオイル含有化粧料用基剤である各試料1mLを人の前腕部に塗布した後に指先でマッサージを行い、肌への馴染み具合と使用感を官能により評価した。効能評価試験結果を表1に示す。表1中の効果について、○は塗布後速やかに肌に馴染み、残留オイルによるベタつきがなく使用感に優れる、△は塗布後肌に馴染むが残留オイルによるベタつきがある、×は塗布後オイルが肌に残り、残留オイルによる肌のギラつきがあるとして評価した。また、表1中、ナノバブルの欄において、○はナノバブルを含有することを示し、×はナノバブルを含有しないことを示し、括弧内は使用したガスの種類を示した。なお、実施例1-4および比較例1の試料には化粧料の成分としてトコフェロールを0.1%配合した。
【0086】
【表1】
[図:0001434546000001.jpg]
【0087】
[実施例5]
(水素ガスからなるナノバブル含有化粧料組成物の調製)
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)により発生させた、水素ガスからなるナノバブルをオリーブオイルに通気し、ナノバブル液を調製した。続いて、調製したナノバブル液に化粧料の成分としてトコフェロールを混合し、実施例5のナノバブル含有化粧料組成物を調製した。実施例5のナノバブル含有化粧料組成物の配合割合を表2に示した。
【0088】
[実施例6]
(酸素ガスからなるナノバブル含有化粧料組成物の調製)
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)により発生させた、酸素ガスからなるナノバブルをオリーブオイルに通気し、ナノバブル液を調製した。続いて、調製したナノバブル液に化粧料の成分としてトコフェロールを混合し、実施例6のナノバブル含有化粧料組成物を調製した。実施例6のナノバブル含有化粧料組成物の配合割合を表2に示した。
【0089】
[実施例7]
(二酸化炭素ガスからなるナノバブル含有化粧料組成物の調製)
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)により発生させた、二酸化炭素ガスからなるナノバブルをオリーブオイルに通気し、ナノバブル液を調製した。続いて、調製したナノバブル液に化粧料の成分としてトコフェロールを混合し、実施例7のナノバブル含有化粧料組成物を調製した。実施例7のナノバブル含有化粧料組成物の配合割合を表2に示した。
・・・
【0092】
(試験方法)
実施例5-7のナノバブル含有化粧料組成物、比較例3のオイル含有化粧料組成物、および比較例4のオイル含有化粧料用基剤である各試料1mLを人の前腕部に塗布した後に指先でマッサージを行い、肌への馴染み具合と使用感を官能により評価した。効能評価試験結果を表2に示す。表2中の効果について、○は塗布後速やかに肌に馴染み、残留オイルによるベタつきがなく使用感に優れる、△は塗布後肌に馴染むが残留オイルによるベタつきがある、×は塗布後オイルが肌に残り、残留オイルによる肌のギラつきがあるとして評価した。また、表2中、ナノバブルの欄において、○はナノバブルを含有することを示し、×はナノバブルを含有しないことを示し、括弧内は使用したガスの種類を示した。なお、実施例5-7および比較例3の試料には化粧料の成分としてトコフェロールを0.1%配合した。
【0093】
【表2】
[図:0001434546000002.jpg]
【0094】
[実施例8]
(水素ガスからなるナノバブル含有化粧料組成物の調製)
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)により発生させた、水素ガスからなるナノバブルをミネラルオイルに通気し、ナノバブル液を調製した。続いて、調製したナノバブル液に化粧料の成分としてトコフェロールを混合し、実施例8のナノバブル含有化粧料組成物を調製した。実施例8のナノバブル含有化粧料組成物の配合割合を表3に示した。
【0095】
[実施例9]
(酸素ガスからなるナノバブル含有化粧料組成物の調製)
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)により発生させた、酸素ガスからなるナノバブルをミネラルオイルに通気し、ナノバブル液を調製した。続いて、調製したナノバブル液に化粧料の成分としてトコフェロールを混合し、実施例9のナノバブル含有化粧料組成物を調製した。実施例9のナノバブル含有化粧料組成物の配合割合を表3に示した。
【0096】
[実施例10]
(二酸化炭素ガスからなるナノバブル含有化粧料組成物の調製)
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)により発生させた、二酸化炭素ガスからなるナノバブルをミネラルオイルに通気し、ナノバブル液を調製した。続いて、調製したナノバブル液に化粧料の成分としてトコフェロールを混合し、実施例10のナノバブル含有化粧料組成物を調製した。実施例10のナノバブル含有化粧料組成物の配合割合を表3に示した。
・・・
【0099】
(試験方法)
実施例8-10のナノバブル含有化粧料組成物、比較例5のオイル含有化粧料組成物、および比較例6の化粧料用基剤である各試料1mLを人の前腕部に塗布した後に指先でマッサージを行い、肌への馴染み具合と使用感を官能により評価した。効能評価試験結果を表3に示す。表3中の効果について、○は塗布後速やかに肌に馴染み、残留オイルによるベタつきがなく使用感に優れる、△は塗布後肌に馴染むが残留オイルによるベタつきがある、×は塗布後オイルが肌に残り、残留オイルによる肌のギラつきがあるとして評価した。また、表3中、ナノバブルの欄において、○はナノバブルを含有することを示し、×はナノバブルを含有しないことを示し、括弧内は使用したガスの種類を示した。なお、実施例8-10および比較例5の試料には化粧料の成分としてトコフェロールを0.1%配合した。
【0100】
【表3】
[図:0001434546000003.jpg]
【0101】
(ナノバブル含有化粧料組成物中のナノバブル安定性の測定)
本発明に用いるナノバブルの安定性を以下の条件下で比較測定した。
実施例11-22に用いるナノバブル含有オイルは、ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)を用いて作製した。詳しくは、1Lの各種オイル(パルミチン酸2-エチルヘキシル、オリーブオイル、ミネラルオイル)に各種ガス(水素、二酸化炭素、酸素、空気)のナノバブルを発生させ、ナノバブル含有オイルを作製した。作製後30分静置し、調製したナノバブル含有オイルに化粧料の成分としてトコフェロールを混合し、ナノバブル含有化粧料組成物を調製した。
比較例7-9に用いるナノバブル含有オイルは、プロペラの高速回転によって作製した。詳しくは、密閉容器1L内に空気非存在化で各種オイル(パルミチン酸2-エチルヘキシル、オリーブオイル、ミネラルオイル)を満たし、完全にシーリングされた回転軸に取り付けたプロペラを1時間高速回転(10,000rpm)させることで作製した。作製後30分静置し、調製したナノバブル含有オイルに化粧料の成分としてトコフェロールを混合し、ナノバブル含有化粧料組成物を調製した。
比較例10-12に用いるナノバブル含有オイルは、ナノバブル発生装置(マイクロバブル発生ノズルよって発生したマイクロバブルを、キャビテーションさせることでナノバブルを発生させる方式)を用いて作製した。詳しくは、1Lの各種オイル(パルミチン酸2-エチルヘキシル、オリーブオイル、ミネラルオイル)にマイクロバブル発生ノズルを用いて、マイクロバブルを発生させ、振動子にて40kHzの超音波を照射してキャビテーションを起こすことでナノバブル含有オイルを作製した。作製後60分静置することでマイクロバブルを消滅させた後に、調製したナノバブル含有オイルに化粧料の成分としてトコフェロールを混合し、ナノバブル含有化粧料組成物を調製した。
それぞれの実施例及び比較例に含まれるオイルやガスは[表4]に記載のとおりである。
【0102】
【表4】
[図:0001434546000004.jpg]
【0103】
(ナノバブル含有化粧料組成物中のナノバブル計測)
ナノバブル含有化粧料組成物中のナノバブル濃度計測は、株式会社超微細科学研究所製の濃度計測装置を用いて行った。
各種オイル(パルミチン酸2-エチルヘキシル、オリーブオイル、ミネラルオイル)に各種ガス(水素、二酸化炭素、酸素、空気)のナノバブルを含有させたナノバブル含有化粧料組成物を各50ccずつ、経過時間ごとにナノバブル濃度(個数/ml)の計測をおこなった。
それぞれのナノバブル含有化粧料組成物の保存条件は常温・常圧下とした。ここでいう常温は1~30℃であり、常圧とは大気圧下のことを指す。
計測結果は以下の[表5]に記載の通りである。
【0104】
【表5】
[図:0001434546000005.jpg]
【0105】
表5に示される通り、従来のナノバブル発生方法の1つであるプロペラの高速回転を用いて作製したナノバブル含有化粧料組成物(比較例7-9)は製造後1週間でナノバブル濃度が急激に減少し、製造後1ヶ月で計測不能となっている。同様に、従来のナノバブル発生方法の1つであるマイクロバブルのキャビテーションによって作製したナノバブル含有化粧料組成物(比較例10-12)も製造後1週間でナノバブル濃度が急激に減少し、製造後1ヶ月で計測不能となっている。
一方で、本発明で使用されるナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)によって作製したナノバブル含有化粧料組成物は6ヶ月が経過してもナノバブル濃度がほとんど変化せず、1.0×107(個数/ml)以上を維持していることがわかる。
従って、従来のナノバブル発生装置によるナノバブルと本発明で使用されるナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)によるナノバブルは、従来のナノバブル発生装置で発生させるナノバブルと比較して性質の異なるものであり、従来のナノバブルに比べて安定性に優れており、化粧品等の長期安定性を必要とする用途に好適に使用することができる。
【0106】
(考察)
オイルとしてパルミチン酸2-エチルヘキシルを用いた、表1の効能評価試験結果について考察する。
【0107】
比較例1のオイル含有化粧料組成物は、肌に塗布してもオイルが馴染まず、オイルのベタつきが残ったことから、使用感に優れないことが分かった。
【0108】
比較例2のオイル含有化粧料用基剤は、界面活性剤としてモノイソステアリン酸ソルビタンを含有させており、これにより塗布後においてオイルが肌にゆっくり馴染むことが分かり、オイルに界面活性剤を添加することにより浸透性の問題については改善されることが分かった。しかし、依然として残留オイルによるベタつきは残り、使用感の改善が必要であることが分かった。
【0109】
実施例1-3のナノバブル含有化粧料組成物は、化粧料の塗布後、速やかに肌に馴染み、かつ塗布後においても残留オイルによりベタつかないことが分かり、使用感が改善されたことが分かった。また、実施例1-3のナノバブル含有化粧料組成物は、界面活性剤を含まずとも、オイルが肌に速やかに馴染み、使用感にも優れるため、オイル使用者に対する界面活性剤に起因する肌荒れなどの悪影響の虞がなく、界面活性剤に対してアレルギーを有する者であっても使用可能な化粧料組成物として好適に使用できることが分かった。また、実施例1-3では、ナノバブルにおけるガスの種類として、水素、酸素、および二酸化炭素の3種類を検討したが、いずれも肌への馴染み、および使用感が改善されたことが分かったため、前記ガスを用いる化粧料組成物は好適に使用できることが分かった。
【0110】
実施例4のナノバブル含有化粧料組成物は、オイルをパルミチン酸2-エチルヘキシルからスクワランに変更したが、化粧料の塗布後、速やかに肌に馴染み、かつ塗布後においても残留オイルによりベタつかなかったため、オイルとしてスクワランを用いるナノバブル含有化粧料組成物についても好適に使用できることが分かった。
【0111】
表2の効能評価試験結果では、オイルとしてオリーブオイルを用いたが、表1の効能評価試験結果と同様の傾向が見られた。すなわち、実施例5-7のナノバブル含有化粧料組成物は、化粧料の塗布後、速やかに肌に馴染み、かつ塗布後においても残留オイルによりベタつかないことが分かり、使用感が改善されたことが分かった。
【0112】
表3の効能評価試験結果では、オイルとしてミネラルオイルを用いたが、表1および表2の効能評価試験結果と同様の傾向が見られた。すなわち、実施例8-10のナノバブル含有化粧料組成物は、化粧料の塗布後、速やかに肌に馴染み、かつ塗布後においても残留オイルによりベタつかないことが分かり、使用感が改善されたことが分かった。
【0113】
したがって、本発明に係るナノバブル含有化粧料組成物は、種々のオイルを用いたとしても、速やかに肌に馴染み、かつ塗布後においても残留オイルによりベタつかないナノバブル含有化粧料組成物として好適に用いることができることが分かった。」
摘記c:
「【図1】
[図:0001434546000006.jpg]
」
3 検討
本願発明は、「ナノバブル含有化粧料組成物」であって、ナノバブル液および化粧料の成分を含み、当該ナノバブルは「オイル中に気泡が分散しており、前記気泡の直径は80nm~140nm」である「ナノバブル液」を含むものであるから、本願発明のナノバブル含有化粧料組成物を製造するためには、上記ナノバブル液と化粧料の成分を入手する必要がある。
そこで、上記ナノバブル液を、本願明細書の以下の記載及び技術常識を参酌して、当業者に通常期待し得る程度を超える過度の試行錯誤の負担なく上記ナノバブル液を入手できるか否かを検討する。
(1)実施例の記載について
本願明細書の実施例1(摘記b)においては、ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製、モデル名 Lab-nano-GS-2A-PD51-F-2106)(以下、このモデル名の装置を「Lab2106装置」という。)により発生させた、水素ガスからなるナノバブルをパルミチン酸2-エチルヘキシルに通気し、「ナノバブル液」を調製したことが記載され、同じ装置を使用して、実施例2及び実施例3では、それぞれ、酸素ガス、二酸化炭素ガスからなるナノバブルをパルミチン酸2-エチルヘキシルに通気し、実施例4では、水素ガスからなるナノバブルをスクワランに通気し、実施例5~7では、それぞれ、水素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガスを、オリーブオイルに通気し、実施例8~10では、それぞれ、水素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガスを、ミネラルオイルに通気し、「ナノバブル液」を調製したこと、及び得られたナノバブル中のバブルの個数は記載されている(摘記b【0103】~【0104】)。
しかしながら、本願明細書には、実施例1~10で実際に製造された「ナノバブル液」における気泡の直径について記載されておらず、実際に「オイル中に気泡が分散しており、前記気泡の直径は80nm~140nm」である「ナノバブル液」が製造されたことを確認することができない。
(2)ナノバブル液を調製する手段に関する記載について
ア 本願明細書及び図面には、本願発明におけるナノバブル液を調製する手段について、以下の事項が説明されている。
(ア) ナノバブル液は、Lab2106装置を使用し、オイルにガスを供給して製造されるが、前記ナノバブル発生装置と同様のナノバブル濃度、ナノバブルの均一性の高さ、ナノバブルの安定性の高さ及びナノ粒子の混入が非常に少ないナノバブル液を製造できる装置であれば、ナノバブル発生装置は問わない(摘記a(【0059】~【0060】))。
(イ) Lab2106装置は、図1に示すように、気体放出前の液体を貯留する貯液槽10と、この貯液槽に貯留された液体を吸い上げて送出する送液ユニット20(相対移動手段)と、この送液ユニット20による送液途中の液体にナノバブルを放出する気体放出ユニット41と、この気体放出ユニット41によって気体が放出された液体を貯留する貯液槽40から構成される。貯液槽10に貯留された液体は、送液ユニット20の送液管21から気体放出ユニット41に送られ、流路FCを通って、送液ユニット20の送液管22に送られ、送液管から貯液槽40に送出され、前記気体放出ユニット41は、気体放出部材42を備え、気体放出部材42の下面(気体放出面)に液体が接触する状態で液体の流路FCが形成される。放出される気体は、給気管46を通して給気室GRに給気され、気体放出部材42を通して液体にナノバブルとして提供され、使用される気体は、水素、二酸化炭素、空気、もしくは酸素などが望ましく、使用される液体は主にオイルであり、その粘度は1000mPa・s以下であることが好ましい(摘記a(【0062】~【0065】))。
(ウ) 前記気体放出部材42は、多孔質アルミナ、多孔質ガラス等の多孔質セラミックスによって形成された通気型の多孔質体からなり、孔径(モード径)が1.5[μm]以下、具体的には、1.5μm、1μm、0.8μm、0.4μm、0.05μm、0.005μmの6種類の多数の気体放出孔が下面に開放されており、貯液槽10内に液体を導入して送液ポンプ23を運転すると、送液ポンプ23の吸込側に位置している気体放出ユニット41の流路FC内の負圧によって、気体放出部材42の下面に開放された気体放出孔から流路FCを通過する液体内に空気が吸い出される。ポンプ流量は、気体放出ユニット41の流路FC内の液体流速が0.3[m/sec]以上となるように調整し、前記液体の移動により、気体放出部材42の気体放出孔から流路FCを通過する液体内に吸い出されるガスは、流路FCを流れる液体流によって、1.5μm以下の微細気泡に分断され、この微細気泡がゆっくりと収縮しながらナノオーダーの微細気泡が生成され、ナノバブルを含む液体が貯液槽に貯留される(摘記a(【0066】~【0067】))。
イ 上記ア(ア)~(ウ)のとおり、本願明細書には、Lab2106装置を使用して、ナノバブル液を調製し得る旨の説明が、当該装置の構造、動作についての説明とともに記載されており、ポンプ流量は、気体放出ユニット41の流路FC内の液体流速が0.3[m/sec]以上となるように調整され、液体の移動により、気体放出部材42の気体放出孔から流路FCを通過する液体内に吸い出されるガスは、流路FCを流れる液体流によって、1.5μm以下の微細気泡に分断され、この微細気泡がゆっくりと収縮しながらナノオーダーの微細気泡が生成されるとのことから、上記装置を使用して、液体中に微細気泡を発生させることが可能であることは理解できる。
しかしながら、本願明細書には、当該微細気泡の直径を80~140nmという特定の範囲とするための、上記装置の運転条件については、記載されていない。
(3)実施可能要件の判断について
上記(1)のとおり、本願明細書の記載からは、実際に、「オイル中に気泡が分散しており、前記気泡の直径は80nm~140nm」である「ナノバブル液」が製造されたことを確認することができず、上記(2)のとおり、本願明細書には、Lab2106装置又はこれと同様にナノバブル液を製造できる装置を使用して、液体中に微細気泡を発生可能であることは理解できるものの、当該微細気泡の直径を80~140nmという特定の範囲とするための、上記装置の運転条件については、記載されていない。
また、本願明細書の記載を検討しても、Lab2106装置を使用して、ガスを液体中に吹き込むことで、オイル中に気泡が分散しているナノバブル液の気泡の直径を80nm~140nmの範囲とすることができるといえる技術常識の存在も認められない。
そうすると、仮に、Lab2106装置が本願出願時に一般的に利用可能であり、また、当該装置によって、本願発明の発明者がオイル中の気泡の直径が80nm~140nmであるナノバブル液を製造可能であったとしても、オイル中に気泡が分散しているナノバブル液の気泡の直径を80nm~140nmの範囲とするために必要な装置の運転時の制御等に関する記載のない本願明細書の記載に基づいて、当該装置によって、オイル中の気泡の直径が80nm~140nmであるナノバブル液を製造することは、技術常識を考慮しても、当業者に通常期待し得る程度を超える過度の試行錯誤を要する。
したがって、本願明細書の記載から、「オイル中に気泡が分散しており、前記気泡の直径は80nm~140nm」である「ナノバブル液」を得て、本願発明のナノバブル含有化粧料組成物を製造することができるとはいえず、このような本願明細書の発明の詳細な説明は、本願発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
4 請求人の主張について
請求人は、令和7年9月26日付けの拒絶理由通知に対し、同年11月28日に「証明書」を添付した意見書を提出し、同年12月2日に物件提出書を提出し、以下の主張をしている。
(1)ナノバブルの気泡直径について
ア 請求人は、上記「証明書」において、以下の摘記dに記載されるデータを示し、また、技術的解説をするとともに、上記意見書2.(2)において、以下の摘記eに示される主張をしている。
(ア)証明書の記載事項
摘記d:
「
[図:0001434546000007.jpg]
」
[図:0001434546000008.jpg]
[図:0001434546000009.jpg]
」
(イ)意見書の記載事項
摘記e:
「(2)気泡直径のデータについては、添付する証明書において、証明しております。
また、ナノバブルは製造方法によって大きく性質が異なることは当業者によく知られています。一方、ナノバブルの測定については、バブルの気泡直径が小さいため、大きな困難を伴います。このため、現状では粒子径と個数濃度以外のアプローチは存在しません。
・・・
特に、媒体をオイルとして計測した粒径のデータは存在しません。なぜなら、媒体がオイルの場合には、ナノバブルの粒径の測定装置は、製造されていません。
本願明細書中に記載のナノバブルの粒子径は、理論値を示しています。必要であれば、理論値の例を具体的に示します。」
イ 上記アで請求人が主張している点について、検討する。
(ア) 上記証明書及び意見書においても、結局、本願明細書に記載された実施例のナノバブル液の気泡直径の具体的な数値については明らかにされていない。
(イ) 証明書の図において示される水中のナノバブルの気泡直径は、図から読み取ると50~300nm程度であると認められるが、これをオイルにおいて実施すると80~140nmとできる根拠については記載されていないから、提出されたデータを参酌しても、本願明細書に記載されるナノバブル発生装置を利用して、オイル中の気泡の直径が80~140nmであるナノバブル液を製造できるものと理解することはできない。
(ウ) また、請求人が明らかにしようとしている「理論値の例」が何であるか不明であるものの、そもそも、本願明細書に記載の実施例においても、単にLab2106装置を用いたこと、吹き込んだガスの種類及びオイルの種類が記載されているだけで、装置の具体的運転条件は明らかにされていないのであるから、当該理論値の例によって、本願明細書に記載されたナノバブル液の気泡直径の具体的な数値が明らかになるものとも解されない。
(エ) 以上のとおりであるから、請求人の上記主張アによって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、当業者が本願発明の実施をすることができるということはできない。
(2)ナノバブル発生装置の入手可能性について
ア 請求人は、上記意見書2.(3)において、以下の主張をしている。
「(3)本願請求項1に記載のナノバブル液を製造できるナノバブル発生装置が、出願時に、当業者が販売等により、入手できるものであったことを示す証拠
証明書にも記載した通り、株式会社超微細科学研究所は、「細孔式」かつガスの加圧をほぼ行わずに、ナノバブルを発生させる手法を用いる、ナノバブル発生装置を製造販売しています。証明書にも記載したように、使用する液体に対する製造時の微妙な調整等のノウハウや、研究または製造などの使用目的、使用規模を考慮した装置が必要となります。今回物件提出書にて提出する請求書は、本願の出願以前に、株式会社超微細科学研究所が販売した証拠です。これらの請求書から、本願請求項1に記載のナノバブル液を製造できるナノバブル発生装置が、出願時に、当業者が販売等により、入手できるものであったことは明確です。」
イ 請求人の上記アで主張する点について検討する。
上記主張における、「物件提出書」には、「ナノバブル発生装置 LAb-nano(GN-O-037)」についての販売実績が記載されているが、Lab2106装置とはモデル名が異なり、また、この装置とLab2106装置の関係も不明であるから、Lab2106装置が一般的に販売されていた事実の証明とはならず、請求人の主張と物件提出書を参酌しても、Lab2106装置の利用が、出願当時から当業者において、一般的に可能であったとは認められない。
かえって、請求人は、ナノバブル発生装置の運転時の制御につき「正確には、装置さえあればナノバブルが作れるわけではなく、使用する液体に対する製造時の微妙な調製等のノウハウや、使用規模を考慮した調製が必要となる。」(摘記d)と述べ、意見書において「証明書にも記載したように、使用する液体に対する製造時の微妙な調整等のノウハウや、研究または製造などの使用目的、使用規模を考慮した装置が必要となります。」と述べていることからすると、出願時、仮にLab2106装置が、一般的に利用可能であったとしても、請求人が本願発明におけるナノバブルの製造に必要であると主張する上記微妙なノウハウや調製に関することは、本願明細書に記載されていないのであるから、本願発明の実施には、当業者に期待し得る程度を超える過度の試行錯誤を要するものであるといわざるを得ない。
5 小括
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は、本願発明について当業者がその実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願は、明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、その余について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-000720