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特許無効審判

2023-800080

女性用衣料

審判番号
2023-800080
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2002-046590外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
3996406
請求日
2023年12月12日
審決日
2025年04月22日
公報発行日
2026年02月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P1123.113-Y (A41C) / P1123.121-Y (A41C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第3996406号発明「女性用衣料」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 特許第3996406号発明の特許請求の範囲の請求項1、請求項2、請求項3、及び請求項5に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。 2 答弁の趣旨 本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。 第2 手続の経緯 特許第3996406号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成14年2月22日を出願日とする出願であって、平成19年8月10日に請求項1~5に係る発明についての特許権が設定登録されたものである。 本件特許無効審判は、株式会社FLORe(以下「請求人」という。)から、株式会社MIC(以下「被請求人」という。)を特許権者とする、本件特許の請求項1~3、5に係る発明の特許に対して請求されたものであり、手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和5年12月12日 :審判請求書 令和6年 6月21日 :答弁書 令和6年 9月 5日 :上申書(請求人) 令和6年10月 9日 :上申書(被請求人) 令和6年10月10日付け :審理事項通知書 令和6年11月19日 :口頭審理陳述要領書(被請求人) 令和6年11月21日 :口頭審理陳述要領書(請求人) 令和6年12月 5日 :第1回口頭審理 第3 本件特許発明 本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」のようにいう。また、本件発明1~5をまとめて「本件発明」と総称することもある。)は、次のとおりのものである。なお、本件特許の請求項4は、本件無効審判請求の対象外ではあるが、本件無効審判請求の対象である請求項5が請求項4の記載を引用するものであるから、【請求項4】も以下に摘記する。 【請求項1】 少なくとも女性のバスト部を覆う女性用衣料において、前記少なくとも女性のバスト部を覆うカップ部材と、前記カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され、前記バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材と、前記左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材とを備えたことを特徴とする女性用衣料。 【請求項2】 前記左右の前身頃部材を連結部材によって連結した際に、当該左右の前身頃部材によって移動したバスト部の容積に適応するように、ストレッチ性のある素材によってカップ部材が構成されていることを特徴とする請求項1記載の女性用衣料。 【請求項3】 前記左右の前身頃部材は、バスト部のトップ及びその周囲を除いて、バスト部の左右の各脇部からバスト下部の中央部、及び肩部にかけて設けられ、当該左右の前身頃部材の上端部が肩紐部材と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1記載の女性用衣料。 【請求項4】 前記女性用衣料は、女性のバスト部からヒップ部を覆うように構成され、当該女性用衣料の股部が、体の前側部分と後側部分とに分離され、前記体の前側及び後側に分割された股部を互いに連結するとともに、当該体の前後側に分割された股部の連結幅を調節可能に設けられた複数の第2の連結部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の女性用衣料。 【請求項5】 前記連結部材が、ファスナー又はフックとアイから構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の女性用衣料。 第4 当事者の主張 1 請求人の主張及び証拠方法 請求人は、審判請求書に添付して甲第1号証~甲第8号証(枝番含む)を提出し、以下の無効理由を主張している。(第1回口頭審理調書両当事者欄「1」) (1)無効理由 本件発明1は、甲第1号証(以下「甲1」という。他も同様。)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)であるから、特許を受けることができないものであるため、本件発明1は、特許法第29条第1項3号の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。 また、本件発明1は、甲1発明、周知技術(甲2、甲3)及び甲4に記載された事項(以下「甲4記載事項」という。他も同様。)に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許を受けることができないものであるため、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。 本件発明2、3、5は、甲1発明、周知技術(甲2、甲3)、甲4記載事項、甲5記載事項、甲6記載事項、甲7記載事項及び甲8記載事項に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許を受けることができないものであるため、本件発明2、3、5は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。 (2)証拠方法 甲1 :米国特許第4325378号公報 甲1の2:米国特許第4325378号公報の日本語翻訳 甲2 :米国特許第1537681号公報 甲2の2:米国特許第1537681号公報の日本語翻訳 甲3 :米国特許第1242118号公報 甲3の2:米国特許第1242118号公報の日本語翻訳 甲4 :実願平5-53760号(実開平7-24915号)のCD-ROM 甲5 :特開平11-200107号公報 甲6 :実公平2-32641号公報 甲7 :実願昭58-157438号(実開昭60-66316号)のマイクロフィルム 甲8 :実公昭63-29693号公報 2 被請求人の主張 本件発明1は、甲1発明と同一の発明ではないから、特許法第29条第1項3号の規定に違反してされたものでなく、同法第123条第1項第2号に該当するものではない。 また、本件発明1~3、5は、甲1発明、周知技術(甲2、甲3)、甲4記載事項、甲5記載事項、甲6記載事項、甲7記載事項及び甲8記載事項に基づいて、出願前に当業者が容易に想到できたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に反するものではなく、同法第123条第1項第2号に該当するものではない。 第5 当審の判断 1 提出された証拠の記載事項等 (1)甲1 ア 甲1の記載 甲1には、以下の記載がある(翻訳は請求人によるものである。)。 1欄12行~21行「 [図:0001431563000001.jpg] 」 (翻訳)「 [図:0001431563000002.jpg] 」 3欄5行~10行「 [図:0001431563000003.jpg] 」 (翻訳)「 [図:0001431563000004.jpg] 」 3欄45行~60行「 [図:0001431563000005.jpg] 」 (翻訳)「 [図:0001431563000006.jpg] [図:0001431563000007.jpg] 」 3欄62行~4欄2行「 [図:0001431563000008.jpg] [図:0001431563000009.jpg] 」 (翻訳)「 [図:0001431563000010.jpg] 」 4欄4行~7行「 [図:0001431563000011.jpg] 」 (翻訳)「 [図:0001431563000012.jpg] 」 4欄10行~14行「 [図:0001431563000013.jpg] 」 (翻訳)「 [図:0001431563000014.jpg] 」 4欄20行~29行「 [図:0001431563000015.jpg] 」 (翻訳)「 [図:0001431563000016.jpg] 」 4欄36行~46行「 [図:0001431563000017.jpg] 」 (翻訳)「 [図:0001431563000018.jpg] 」 5欄14行~6欄2行「 [図:0001431563000019.jpg] [図:0001431563000020.jpg] 」 (翻訳)「 [図:0001431563000021.jpg] [図:0001431563000022.jpg] [図:0001431563000023.jpg] [図:0001431563000024.jpg] 」 図1「 [図:0001431563000025.jpg] 」 図2「 [図:0001431563000026.jpg] 」 図3「 [図:0001431563000027.jpg] 」 イ 甲1の記載から認定できる事項 甲1の4欄4行~7行の記載及び図1~図3をみるに、2つの乳房支持フラップ13、14は、乳房の左右の各脇部から乳房の側部を覆った状態で乳房の中央部にかけて設けられていることが看取される。 また、甲1の4欄36行~46行の記載並びに図1及び図2をみるに、留め具手段22は、2つの乳房支持フラップ13、14を乳房の中央部近傍で連結していることが看取される。 そして、甲1の3欄62行~4欄2行及び4欄36行~46行の記載並びに図1によれば、乳房支持フラップ14のテーパー部20が乳房支持フラップ13のループ21を通って引っ張り、締め付け、留め具手段22で固定して、乳房支持フラップ13、14による締め付け圧力を調節しているので、留め具手段22は2つの乳房支持フラップ13、14の連結幅を調節可能に設けられているといえる。 ウ 甲1発明 上記ア及びイを総合的に勘案すると、甲1には、次の発明が記載されている。 「女性の乳房を覆う女性用スポーツ衣類において、女性の乳房を覆う乳房係合ポケット12と、前記乳房係合ポケット12と独立して変位可能であり、当該乳房係合ポケット12にオーバーフィットし、前記乳房の左右の各脇部から乳房の側部を覆った状態で乳房の中央部にかけて設けられる2つの乳房支持フラップ13、14と、前記2つの乳房支持フラップ13、14を乳房の中央部近傍で連結するとともに、当該2つの乳房支持フラップ13、14の連結幅を調節可能に設けられた留め具手段22とを備えた女性用スポーツ衣類。」 (2)甲2 ア 甲2の記載 甲2には、以下の記載がある(翻訳は請求人によるものである。)。 1ページ8行~14行「 [図:0001431563000028.jpg] 」 (翻訳)「 [図:0001431563000029.jpg] 」 1ページ58行~82行「 [図:0001431563000030.jpg] 」 (翻訳)「 [図:0001431563000031.jpg] [図:0001431563000032.jpg] 」 2ページ38行~43行「 [図:0001431563000033.jpg] 」 翻訳「 [図:0001431563000034.jpg] 」 図1「 [図:0001431563000035.jpg] 」 イ 甲2記載事項 上記アを総合的に勘案すると、甲2には、次の事項が記載されている。 「前面部材10と背面部材11とを備えたブラジャーであって、前記背面部材11に延長部18、19を設け、前記延長部18のストラップ20を、前記延長部19のストラップ21に連結して固定し、前記ブラジャーの位置を維持する。」 (3)甲3 ア 甲3の記載 甲3には、以下の記載がある(翻訳は請求人によるものである。)。 1ページ10行~19行「 [図:0001431563000036.jpg] 」 (翻訳)「 [図:0001431563000037.jpg] 」 1ページ86行~2ページ16行「 [図:0001431563000038.jpg] [図:0001431563000039.jpg] 」 (翻訳)「 [図:0001431563000040.jpg] [図:0001431563000041.jpg] [図:0001431563000042.jpg] [図:0001431563000043.jpg] 」 図1「 [図:0001431563000044.jpg] 」 図2「 [図:0001431563000045.jpg] 」 イ 甲3記載事項 上記アを総合的に勘案すると、甲3には、次の事項が記載されている。 「ブラジャーの背面にアイレット及びレーシングを採用するものであって、前記ブラジャーの背中を横切るように延びる部分12からなる、布製の背面被覆部分11を提供し、対向するテーパー状のタブ状部分13が設けられ、このタブ状部分13は部分12の下縁からブラジャーの前面まで延びており、前記タブ状部分13は前記背面被覆部分11の一部であり、これらのタブの端部にテープ部材14が接続され、前記テープ部材14を前面部で結ぶことで、前記アイレット及び前記レーシングを見えないように被覆部分の背中部分12が覆いかぶさるようにするとともに、被覆部分を伸ばして前記テープ部材14を結ぶことで着用者の背中が圧迫され、この部分の肉の膨らみを滑らかにする。」 (4)甲4について ア 甲4の記載 甲4には、以下の記載がある。「・・・」は省略を示し、下線部を追加している。 「 【0001】 【産業上の利用分野】 この考案は、バストと、アンダーバストから上腹部にかけてのボディラインを美しく補整するために着用されるファンデーションに関する。 【0004】 【考案が解決しようとする課題】 しかしながら、上述の如きブラジャーは、妊産婦のように一時期に急激に体型が変化する者にとっては、係止手段の係止位置の調整のみではボディラインの補整に対処しきれず、特にアンダーバストに連続する上腹部の補整ができないという欠点がある。 ・・・ 【0009】 補整用前布5の係止用他端部に設けた複数列の係止手段6a、6bを適宜選択して係止させると、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地の伸長が抑制される。 ・・・ 【0011】 【実施例】 図1及び図2に示すように、この考案に係るファンデーションは、バストカップ1aを有するブラジャー前部1と、このブラジャー前部1の下方に連続する上腹密着部2と、背開き用係止布部3とが、伸縮布地により一体に形成され、前記ブラジャー前部1及び上腹密着部2の左右脇部分に、前記伸縮布地よりも伸縮率の小さい伸縮布地を用いた前開きの補整用布地5の一端がそれぞれ連接されている。 ・・・ 【0013】 前記補整用前布5の係止用他端部には、図1に示すように、1列5個のフック6aが3列、このフック6aが係止されるアイ6bが3列設けられている。 【0014】 即ち、この実施例においては、背開き用係止布部3の係止用両端部相互を係脱自在に係止する係止手段、及び補整用前布5の係止用他端部相互を係脱自在に係止する係止手段が、フック4a、6aとアイ4b、6bとにより構成される。 【0015】 このファンデーションを着用すると、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地が伸長し、例えば最も端部に位置するフック4aとアイ4bとを係止させることにより、このブラジャー前部1と上腹密着部2とが、バスト及びアンダーバストから上腹部に連続する部分に密着し、密着状態が保持される。 【0016】 また、補整用前布5に設けたフック6aとアイ6bとを係止させると、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地の伸長が抑制される。 【0017】 授乳期の終了等に伴う痩身にあたっては、フック4a、6aとアイ4b、6bとの係止位置を漸次中央側に移動させることにより、ブラジャー前部1と上腹密着部2と、バスト及びアンダーバストから上腹部に連続する部分との密着度を調整することができる。 ・・・ 【0024】 【考案の効果】 以上のように、この考案に係るファンデーションは、ブラジャー前部1と上腹密着部2とが伸縮布地により構成されていることから、着用時にこの伸縮布地が伸長して、アンダーバストから上腹部に連続する部分に密着すると共に、上腹密着部2との左右脇部分に連接された補整用前布5により前記伸縮布地の伸長を適度に抑制して、体を無理なく締付けて、体型を補整することができる。」 図1「 [図:0001431563000046.jpg] 」 イ 甲4記載事項 上記アを総合的に勘案すると、甲4には、次の事項が記載されている。 「バストと、アンダーバストから上腹部にかけてのボディラインを美しく補整するために着用されるファンデーションであって、前記ファンデーションは、バストカップ1aを有するブラジャー前部1と、このブラジャー前部1の下方に連続する上腹密着部2と、背開き用係止布部3とが、伸縮布地により一体に形成され、前記ブラジャー前部1及び上腹密着部2の左右脇部分に、前記伸縮布地よりも伸縮率の小さい伸縮布地を用いた前開きの補整用前布5の一端がそれぞれ連接され、前記補整用前布5の係止用他端部には、1列5個のフック6aが3列、このフック6aが係止されるアイ6bが3列設けられ、前記フック6aとアイ6bとを係止させることで、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地の伸長を抑制し、前記フック6aとアイ6bとの係止位置を漸次中央側に移動させることにより、ブラジャー前部1と上腹密着部2と、バスト及びアンダーバストから上腹部に連続する部分との密着度を調整することができ、前記補整用前布5により前記伸縮布地の伸長を適度に抑制して、体を無理なく締付けて、体型を補整する。」 2 本件発明1について (1)対比 ア 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「乳房」は、本件発明1の「バスト部」に相当し、甲1発明の「スポーツ衣類」は、本件発明1の「女性用衣料」に相当する。 そうすると、甲1発明の「女性の乳房を覆う女性用スポーツ衣類」は、本件発明1の「少なくとも女性のバスト部を覆う女性用衣料」に相当する。 また、甲1発明の「乳房係合ポケット12」は、本件発明1の「カップ部材」に相当するものであり、甲1発明の「女性の乳房を覆う乳房係合ポケット12」は、本件発明1の「前記少なくとも女性のバスト部を覆うカップ部材」に相当する。 さらに、甲1発明の「乳房支持フラップ13、14」は、本件発明1の「前身頃部材」に対応するものであり、甲1発明の「前記乳房係合ポケット12と独立して変位可能であり、当該乳房係合ポケット12にオーバーフィットし、前記乳房の左右の各脇部から乳房の側部を覆った状態で乳房の中央部にかけて設けられる2つの乳房支持フラップ13、14」と、本件発明1の「前記カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され、前記バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材」とは、「前記カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され、前記バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバストの中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材」という限りで一致する。 甲1発明の留め具手段22について、甲1には「面ファスナーのような解放可能かつ調節可能な留め具手段22」(4欄36行~46行)と記載されており、面ファスナーは、複数のループと複数のフックで構成されていることが一般的であることに照らせば、複数の連結部材からなるものであるといえるので、甲1発明の「留め具手段22」は、本件発明1の「複数の連結部材」に対応するものであり、甲1発明の「前記2つの乳房支持フラップ13、14を乳房の中央部近傍で連結するとともに、当該2つの乳房支持フラップ13、14の連結幅を調節可能に設けられた留め具手段22」は、本件発明1の「前記左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材」と、「前記左右の前身頃部材をバストの中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材」という限りで一致する。 イ そうすると、本件発明1と甲1発明の一致点と相違点は、以下のとおりである。 《一致点》 「少なくとも女性のバスト部を覆う女性用衣料において、前記少なくとも女性のバスト部を覆うカップ部材と、前記カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され、前記バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバストの中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材と、前記左右の前身頃部材をバストの中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材とを備えた女性用衣料。」 《相違点》 前記カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され、前記バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバストの中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材と、前記左右の前身頃部材をバストの中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材に関し、 本件発明1は、左右の前身頃部材が「バスト下部」の中央部にかけて設けられ、連結部材が前記左右の前身頃部材を「バスト下部」の中央部近傍で互いに連結するのに対し、 甲1発明は、乳房支持フラップ13、14が乳房係合ポケット12にオーバーフィットし、留め具手段22におけるバストとの位置関係が「バスト下部」である特定がない点。 (2)判断 ア 本件発明1の「前身頃部材」及び「連結部材」の技術的意義について まず、本件発明は、「ブラジャーやボディスーツ等の女性用衣料の場合には、女性のバスト等のサイズや形、あるいはバストアップ等の補正機能に対応するため、各種のバストのサイズや形に応じて素材を裁断(カット)したり、バストパッドをモールド成型し、これらの素材をバストパッド等とともに縫製しなければならず、女性のバストのサイズや形などに応じて、多種多様の女性用衣料を製造する必要があるため、大幅にコストがかかる」(本件明細書の【0006】)ということを課題としている。 そして、本件発明1は、課題を解決するために、「女性のバスト部を覆うカップ部材の表面側に、左右の前身頃部材を配置し、前記左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を、複数の連結部材によって調節可能とすること」としており(同【0009】)、それにより、「左右のバストの引き寄せ効果を高める」(同【0009】)というバストアップ等の補正機能について言及している(同【0009】)。 また、本件発明1の女性用衣料のボディスーツ1は、「左右の前身頃部材6a、6aの上側部分を連結するフックを止めるアイとして、第1のアイか、第2のアイを選択することにより、左右の前身頃部材6a、6aの上側部分が合わされる連結幅を調整することができ、女性のバスト部を脇部側から中央部側に、尚かつ下側から上側に向けてアップする度合いを変化させることができる」(同【0032】)ものであるため、「従来に比較して同一のボディスーツ1で対応できる幅が広がるため、女性のバストのサイズ等に応じた製品の種類を少なくすることができ、ボディスーツ1等の女性用衣料の低コスト化をも実現することができる」(同【0032】)とされる。 さらに、本件発明1の女性用衣料のブラジャー21は、「カップ部材22の表面側に配置され、前記バスト部の左右の各脇部からバスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材としての左右の上部パネル26b、26bを備えて」(同【0036】)おり、また、「左右の上部パネル26b、26bの連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材27を備えて」(同【0038】)おり、「このように構成することにより、ボディスーツだけではなく、ブラジャー単独であっても、女性のバストのサイズや形などに応じて、多種多様の女性用衣料を個々に用意することなく、個人差を有する女性のバスト等のサイズや形、あるいはバストアップ等の補正機能などに対応することが可能な女性用衣料を低コストにて提供することが可能となっている」(同【0039】)とされる。 そうすると、本件発明1のものが、「前記カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され、前記バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材と、前記左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材とを備えた」ことによる技術的意義は、左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍にて複数の連結部材によって連結して、左右の前身頃部材の連結幅を調節することにより、それぞれのバストの側部のバスト側面に当接して左右のバストを引き寄せるとともに、左右のバスト下部のバスト下面に当接して、バストを下側から上側に向けてアップさせる(持ち上げる)ことができるため、女性のバストのサイズや形などに応じて、多種多様の女性用衣料を個々に用意することなく、個人差を有する女性のバスト等のサイズや形、あるいはバストアップ等の補正機能などに対応することが可能な女性用衣料を低コストにて提供することが可能となっていることと理解できる。 イ 甲1発明の「乳房支持フラップ13、14」及び「留め具手段22」について 次に、甲1発明の「乳房支持フラップ13、14」及び「留め具手段22」について検討する。 甲1には、課題に関して、「・・・運動や体力の人気が高まるにつれて、この活動に従事する女性は、乳房の動きによって引き起こされる痛みや不快感を経験することがよくある。不快感の1つの形態は、胸と乳首を衣服に擦り付けてこすりつけることから生じる。・・・」(甲1の1欄12行~21行)旨が記載されており、甲1発明は、女性が運動に従事する際に、乳房の動きによって痛みを引き起こされることを課題としていることが分かる。 そして、この課題を解決するための手段に関して、「・・・図2および図3に最もよく見られるように、乳房係合ポケット12は、2つの乳房支持フラップ13および14によってオーバーフィットされている。」(3欄45行~60行)、「フラップは、フラップ14の端部25にあるテーパー部20を、フラップ13の端部27に隣接して取り付けられたループ21に通すことによって、一緒に固定されるか、または相互接続される。テーパー部20がループ21を通ってさらに引っ張られ、または締め付けられ、それ自体の上に戻って取り付けられると、内向きの圧力または圧縮力が生じ、図6に示されるように、乳房を胸に向かって、そしていくらか互いに向かって押しつける。」(甲1の3欄62行~4欄2行)、「締め付けられたときにフラップ13および14によって及ぼされる支持圧力にもかかわらず、ライナー11およびフラップ13および14は、少なくとも乳房および乳房係合ポケット12に隣接する領域において、互いに独立して変位可能である。ライナー11が、締め付けられた状態でもフラップ13および14に対して相対的に動く能力は、そうでなければフラップ13および14によって完全に拘束されない乳房の動きによって生じる擦れによる刺激から乳房を保護する。」(甲1の4欄20行~29行)、「フラップ14のテーパー部20がそれ自体の上に引き戻され、フラップ13および14を締め付けるとき、面ファスナーのような解放可能かつ調節可能な留め具手段22が、フラップを固定するために使用される・・・緩みが生じると、解放可能で調節可能な留め具手段22は、着用者の運動中であっても、締め付け圧力を容易に調節することを可能にする。・・・」(甲1の4欄36行~46行)、「女性が本発明による衣服を着用すると、前身頃のフラップを締めることによって乳房にかかる圧縮力または締め付け力にもかかわらず、内側のライナーが乳房と乳首を擦れから保護する。・・・従って、外側のフラップは、乳房の過剰な動きを排除し、組織の損傷、ひいてはたるみを防止するのに有効であ」(甲1の5欄14行~6欄2行)る旨が記載されており、「乳房支持フラップ13、14」が乳房係合ポケット12にオーバーフィットし、乳房および乳房係合ポケット12に隣接する領域を締め付け、「留め具手段22」によって固定することで、内向きの圧力を発生させ、乳房の過度の動きを防ぐという課題を解決していると認められる(甲1の4欄20行~29行、4欄36行~46行)。 そうすると、甲1発明のものは、「乳房支持フラップ13、14」を乳房係合ポケット12にオーバーフィットするよう配置し、「乳房支持フラップ13、14」が乳房全体を覆って締め付けることで、乳房の過度の動きを防ぐものであるから、個人差を有する女性のバスト等のサイズや形、あるいはバストアップ等の補正機能などに対応するものではない。よって、当該「乳房支持フラップ13、14」をバスト下部の中央部にかけて設けることとすることは、当業者が想到するものではない。そして仮に、「乳房支持フラップ13、14」が乳房全体を覆う構成からバスト下部を覆う構成に変更した場合、少なくとも乳房を押し付ける範囲が減ることに伴い、十分に乳房の動きを拘束できなくなり、課題が解決できなくなることは明らかであるから、このような変更には阻害要因があるといえる。 さらに、当該「内向きの圧力」に関して、「・・・テーパー部20がループ21を通ってさらに引っ張られ、または締め付けられ、それ自体の上に戻って取り付けられると、内向きの圧力または圧縮力が生じ、図6に示されるように、乳房を胸に向かって、そしていくらか互いに向かって押しつける。」(甲1の3欄66行~4欄2行)旨が記載されており、「内向きの圧力」は乳房を胸に向かって押し付ける方向であるといえるとともに、「フラップを一緒に締めると、乳房の重量によって引き起こされる垂直方向の負荷とは無関係に内向きの圧力が発生し、それによって過度の動きを防ぐ。・・・」(甲1の3欄5行~10行)、「・・・フラップ13および14を締め付けることによって生じる内向きの圧力または圧縮力は、乳房の重さによって及ぼされる下向きの圧力による・・・いかなる垂直方向の負荷からも独立している。」(甲1の4欄10行~14行)旨が記載されており、「内向きの圧力」は乳房の重量によって引き起こされる垂直方向の負荷とは無関係であるといえる。 このような内向きの圧力については、甲1発明の「乳房支持フラップ13、14」及び「留め具手段22」を、乳房の上下方向における中央位置に設けることにより、より有利に生じさせることができるものである。このことは、甲1の図1及び図3に図示された態様とも整合する。 また、甲1には、「締め付けられたときにフラップ13および14によって及ぼされる支持圧力にもかかわらず、ライナー11およびフラップ13および14は、少なくとも乳房および乳房係合ポケット12に隣接する領域において、互いに独立して変位可能である。ライナー11が、締め付けられた状態でもフラップ13および14に対して相対的に動く能力は、そうでなければフラップ13および14によって完全に拘束されない乳房の動きによって生じる擦れによる刺激から乳房を保護する。」(甲1の4欄20行~29行)、「・・・女性が本発明による衣服を着用すると、前身頃のフラップを締めることによって乳房にかかる圧縮力または締め付け力にもかかわらず、内側のライナーが乳房と乳首を擦れから保護する。前述のように、ライナーと支持フラップは、互いに独立して相対的に変位可能である。従って、外側のフラップは、乳房の過剰な動きを排除し、組織の損傷、ひいてはたるみを防止するのに有効であり、ライナーは、乳房の動きが実質的に完全に排除されたとしても存在するであろう、拘束されない乳房の動きの残り、及び足の打撃による衝撃に起因する乳房の振動運動から生じるであろう擦れを防止するのに有効である」(甲1の5欄14行~6欄2行)旨が記載されており、これらの記載から、ライナー11は当該擦れを防止するべく乳房に追従して上下動しており、一方で、乳房支持フラップ13、14は乳房の過剰な動きを排除するべく上下動せずにひたすら圧力をかけていることが理解できる。この点を踏まえると、「乳房支持フラップ13、14」及び「留め具手段22」は、乳房の上下方向に対して、上方や下方に偏って設けないものであると認められる。 そうすると、内向きの圧力により乳房の過度な動きを防ぐ甲1発明の「乳房支持フラップ13、14」及び「留め具手段22」は、乳房の上下方向における中央位置に設けることが有利なものであるが、これは、左右のバスト下部のバスト下面に当接して、バストを下側から上側に向けてアップさせる(持ち上げる)ために、「前身頃部材」及び「連結部材」をバスト下部に配置する本件発明1とは、技術思想において相違するものである。 したがって、「乳房支持フラップ13、14」及び「留め具手段22」を、乳房の上下方向に対して下方に偏って設けることに阻害要因があり、甲1発明に基いて、「バスト下部」の配置を想到するものではない。 ウ 甲2~甲4に記載された事項との組み合わせについて (ア)甲2、甲3について a まず、甲2と甲3について、上記1(2)イ及び上記1(3)イのとおり、甲2記載事項の延長部18、19と、甲3記載事項の2つのタブ状部分13、13は、作用、機能が全く異なるものであり、この2つの記載事項に基づいて、周知技術を導くことはできない。以降では、甲1発明と甲2記載事項の組み合わせ、甲1発明と甲3記載事項の組み合わせについて検討する。 b 甲2には、前面部材10と背面部材11とを備えたブラジャーであって、前記背面部材11に延長部18、19を設け、前記延長部18のストラップ20を、前記延長部19のストラップ21に連結して固定し、前記ブラジャーの位置を維持する事項が記載されている(上記1(2)イ)。 しかし、甲2記載事項の延長部18、19はブラジャーの位置を維持するためのものであるから、甲1発明の乳房支持フラップ13、14と作用、機能が全く異なるものであり、甲2記載事項の延長部18、19は、甲1発明の乳房支持フラップ13、14に対応するものとはいえず、甲1発明の乳房支持フラップ13、14をバスト下部に位置させるように換える動機付けを示唆するものではない。 そうすると、甲1発明において、甲2記載事項を参考にしても、乳房支持フラップ13、14を、本件発明1の、上記相違点に係る位置とすることに、想到し得たものとはいえない。 c 甲3には、ブラジャーの背面にアイレット及びレーシングを採用するものであって、前記ブラジャーの背中を横切るように延びる部分12からなる、布製の背面被覆部分11を提供し、対向するテーパー状のタブ状部分13が設けられ、このタブ状部分13は部分12の下縁からブラジャーの前面まで延びており、前記タブ状部分13は前記背面被覆部分11の一部であり、これらのタブの端部にテープ部材14が接続され、前記テープ部材14を前面部で結ぶことで、前記アイレット及び前記レーシングを見えないように被覆部分の背中部分12が覆いかぶさるようにするとともに、前記被覆部分を伸ばして前記テープ部材14を結ぶことで着用者の背中が圧迫され、この部分の肉の膨らみを滑らかにする事項が記載されている(上記1(3)イ)。 しかし、甲3記載事項のタブ状部分13は、被覆部分を伸ばしてテープ部材14を結ぶことでアイレット及びレーシングを見えないようにするとともに着用者の背中の肉の膨らみを滑らかにするためのものであるから、甲1発明の乳房支持フラップ13、14と作用、機能が全く異なるものであり、甲3記載事項のタブ状部分13が、甲1発明の乳房支持フラップ13、14に対応するものとはいえず、甲1発明の乳房支持フラップ13、14をバスト下部に位置させるように換える動機付けを示唆するものではない。 そうすると、甲1発明において、甲3記載事項を参考にしても、乳房支持フラップ13、14を、本件発明1の、上記相違点に係る位置とすることに、想到し得たものとはいえない。 (イ)甲4について 甲4には、バストと、アンダーバストから上腹部にかけてのボディラインを美しく補整するために着用されるファンデーションであって、前記ファンデーションは、バストカップ1aを有するブラジャー前部1と、このブラジャー前部1の下方に連続する上腹密着部2と、背開き用係止布部3とが、伸縮布地により一体に形成され、前記ブラジャー前部1及び上腹密着部2の左右脇部分に、前記伸縮布地よりも伸縮率の小さい伸縮布地を用いた前開きの補整用前布5の一端がそれぞれ連接され、前記補整用前布5の係止用他端部には、1列5個のフック6aが3列、このフック6aが係止されるアイ6bが3列設けられ、前記フック6aとアイ6bとを係止させることで、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地の伸長を抑制し、前記フック6aとアイ6bとの係止位置を漸次中央側に移動させることにより、ブラジャー前部1と上腹密着部2と、バスト及びアンダーバストから上腹部に連続する部分との密着度を調整することができ、前記補整用前布5により前記伸縮布地の伸長を適度に抑制して、体を無理なく締付けて、体型を補整する事項が記載されている(上記1(4)イ)。 甲1発明は、上記イで検討したとおり、女性が運動に従事する際に、乳房の動きによって痛みを引き起こされるという課題を解決するために、甲1発明の乳房支持フラップ13、14で乳房係合ポケット12を締め付け、留め具手段22によって固定することで、内向きの圧力を発生させ、乳房の過度の動きを防ぐものであり、一方、甲4には、バストと、アンダーバストから上腹部にかけてのボディラインを美しく補整するという課題(甲4の【0001】、【0004】)を解決するために、フック6a及びアイ6bを係止して、補整用前布5により上腹密着部2を締め付けている。 そうすると、両者の課題は異なるし、両者の締め付け位置はその課題を解決することに直結するものであるから、甲1発明において、甲4記載事項を参考にしても、留め具手段22を、本件発明1の、上記相違点に係る位置とすることに、想到し得たものとはいえない。 エ 請求人の主張 請求人は、口頭審理陳述要領書において、 「甲1発明のFIG.1~4(ともに上掲参照)のとおり、「flaps 13 and 14(フラップ13および14)」は、バストの正面も、バストの下側も覆う状態となる。ここで、甲1発明は、「The inward pressure or compressive force created by cinching flaps 13 and 14, designated by arrows 30, as shown in FIG. 3, is independent of any vertical loads, designated by arrows 32, due to downward pressure exerted by the weight of the breasts.」、参考訳「図3に示すように、矢印30で指定される、フラップ13および14を締め付けることによって生じる内向きの圧力または圧縮力は、乳房の重さによって及ぼされる下向きの圧力による、矢印32で指定される、いかなる垂直方向の負荷からも独立している。」と開示する。 つまり、「flaps 13 and 14(フラップ13および14)」の締め付けにより、FIG.3の矢印30(赤枠囲み参照)のとおり、バストの下部が覆われ、締め付けられる。甲1発明にて開示の図面からは実質的にバストの下部が覆っていることに他ならない、敢えて加えると、甲1発明にて開示の図面はバストの下部を覆わないと積極的に解することができない。 そうすると、甲1発明に開示の文章、図面における「flaps 13 and 14(フラップ13および14)」の機能から、甲1発明の「flaps 13 and 14(フラップ13および14)」は、構成要件Cの「バスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材」を開示していることの他ならない。 」(3頁9行~4頁8行。以下、「主張1」という。)、 「甲1発明のFIG.3の図示より、フラップ13および14に設けられたテーパー部20及びループ21、面ファスナーのような解放可能かつ調節可能な留め具手段22の位置を見ると、バストの正面ないし下部と解される。少なくともバストの上部であるとは言えない。 また、フラップ13および14と、フラップ13および14により覆われるポケット12とは相対的な位置関係であるため、留め具手段22の位置は、FIG.3の図示よりも下方、つまりバストの下部に移動する場合がある。例えば、着用者の体形、バストの大きさ、ポケット12の大きさ等の要因により、FIG.3の図示からの位置の変動は、許容される範囲内である。甲1発明においては、バスト下部の文言が直接的に存在していないからと言って、留め具手段22の位置がバスト下部であることを積極的に排除している記載はない。加えて、甲1発明の留め具手段22の技術的な役割、効果から、殊更、バスト下部を排除して甲1発明の留め具手段22の位置を解する理由は見当たらない。」(14頁24行~15頁10行。以下、「主張2」という。)と主張する。 最初に、主張1について検討する。 本件発明は、女性のバストのサイズや形などに応じて、多種多様の女性用衣料を個々に用意することなく、個人差を有する女性のバスト等のサイズや形、あるいはバストアップ等の補正機能などに対応するものであり、その課題や作用からして、前身頃部材は、バスト下部の中央部にかけて設けられるものであって、バスト全体を覆うものではない。 一方で、上記イで述べたとおり、甲1発明の乳房支持フラップ13、14は、バストの全体を覆う構成であり、これにより、バスト全体に内向きの圧力を発生させ、乳房の過度の動きを防ぐという課題を解決している。 したがって、甲1発明の乳房支持フラップ13、14は「バスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材」を充足しないし、当該乳房支持フラップ13、14をバスト下部の中央部にかけて設けることとすることは、当業者が想到するものではない。 加えて、甲1発明において、乳房の過度の動きを防ぐという課題の観点から、バスト全体を覆う構成をバスト下部を覆う構成に変更することに阻害要因があるといえる。 次に、主張2について検討する。 まず、前提として、甲1は公開特許公報であるから、甲1に掲載された図は、いずれも特許出願の願書に添付された図面に描かれたものであるところ、特許出願の願書に添付される図面は、明細書を補完し、特許を受けようとする発明に係る技術内容を当業者に理解させるための説明図であるから、当該発明の技術内容を理解するために必要な程度の正確さを備えていれば足りるものであり、そうすると図3から直ちに、留め具手段22の位置を認定することはできず、留め具手段22の位置については、明細書の記載をも参照して認定すべきものである。 次に、図3の留め具手段22の位置に関し、明細書の記載を踏まえて検討すると、甲1には、留め具手段22のバストに対する位置について、少なくとも直接的な記載は存在しないし、上記イで示したとおり、甲1発明の課題、解決手段及び作用効果からみて、留め具手段22はバストの上下方向における中央位置に設けることにより、より有利に内向きの圧力を生じさせることができるものであるから、バスト下部に配置することを想定されていないといえる。さらに、上記イで述べたように、甲1発明の留め具手段22を、本件発明1の連結部材のようにバスト下部の中央部近傍に配置させる動機付けはなく、留め具手段22をバストの上下方向に対して下方に偏って設けることに阻害要因があると認められる。 なお、留め具手段22の位置の移動や変動については、その根拠を確認することはできず、また、設計事項の範囲内であるともいえない。 したがって、請求人の上記主張1、2は採用できない。 (3)本件発明1についてのまとめ 上述したとおり、上記相違点は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明ではなく、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、甲1発明、甲2記載事項、甲3記載事項及び甲4記載事項に基いて容易に発明をすることができたものでもない。 2 本件発明2、3、5について 本件発明2、3、5の各発明は、いずれも本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであり、本件発明1は、上記1で述べたように、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、甲1発明、甲2記載事項、甲3記載事項及び甲4記載事項に基いて容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2、3、5の各発明も同様に、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、甲1発明及び甲2~8記載事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由によっては、本件発明1~3、5についての特許を無効にすることはできない。 審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-800080

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