審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許無効審判

2021-800086

女性用衣料

審判番号
2021-800086
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2002-046590外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
3996406
請求日
2021年10月20日
審決日
2023年01月20日
公報発行日
2023年06月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P1123.121-Y (A41C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第3996406号発明「女性用衣料」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨

1 請求の趣旨

特許第3996406号発明の特許請求の範囲の請求項1、請求項2、請求項3、及び請求項5に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。

2 答弁の趣旨

本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。

第2 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第3996406号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成14年2月22日を出願日とする出願であって、平成19年8月10日に請求項1~5に係る発明についての特許権が設定登録されたものである。

本件特許無効審判は、株式会社FLORe(以下「請求人」という。)から、株式会社MIC(以下「被請求人」という。)を特許権者とする、本件特許の請求項1~3、5に係る発明の特許に対して請求されたものであり、手続の経緯の概略は、以下のとおりである。

令和3年10月20日 :審判請求書
令和4年 2月18日 :答弁書
令和4年 3月 3日 :上申書(請求人)
令和4年 3月31日 :上申書(請求人)
令和4年 6月 3日 :上申書(請求人)
令和4年 6月 3日付け :審理事項通知書
令和4年 8月30日付け :審理事項通知書
令和4年 9月 2日 :上申書(請求人)
令和4年 9月15日 :口頭審理陳述要領書(請求人)
令和4年 9月16日 :口頭審理陳述要領書(被請求人)
令和4年 9月16日 :上申書(被請求人)
令和4年 9月30日 :第1回口頭審理

第3 本件特許発明

本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」のようにいう。)は、次のとおりのものである。なお、本件特許の請求項4は、本件無効審判請求の対象外ではあるが、本件無効審判請求の対象である請求項5が請求項4の記載を引用するものであるから、【請求項4】も以下に摘記する。

【請求項1】

少なくとも女性のバスト部を覆う女性用衣料において、前記少なくとも女性のバスト部を覆うカップ部材と、前記カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され、前記バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材と、前記左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材とを備えたことを特徴とする女性用衣料。

【請求項2】

前記左右の前身頃部材を連結部材によって連結した際に、当該左右の前身頃部材によって移動したバスト部の容積に適応するように、ストレッチ性のある素材によってカップ部材が構成されていることを特徴とする請求項1記載の女性用衣料。

【請求項3】

前記左右の前身頃部材は、バスト部のトップ及びその周囲を除いて、バスト部の左右の各脇部からバスト下部の中央部、及び肩部にかけて設けられ、当該左右の前身頃部材の上端部が肩紐部材と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1記載の女性用衣料。

【請求項4】

前記女性用衣料は、女性のバスト部からヒップ部を覆うように構成され、当該女性用衣料の股部が、体の前側部分と後側部分とに分離され、前記体の前側及び後側に分割された股部を互いに連結するとともに、当該体の前後側に分割された股部の連結幅を調節可能に設けられた複数の第2の連結部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の女性用衣料。

【請求項5】

前記連結部材が、ファスナー又はフックとアイから構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の女性用衣料。

第4 当事者の主張

1 請求人の主張及び証拠方法

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は、「特許第3996406号発明の特許請求の範囲の請求項1、請求項2、請求項3、及び請求項5に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、審判請求書に添付して甲第1号証~甲第5号証を提出し、以下の無効理由を主張している。(第1回口頭審理調書両当事者欄「1」)

(1)無効理由

本件特許の請求項1~3、5に係る発明は、甲第1号証(以下「甲1」という。他も同様。)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)及び甲2~甲5に記載された事項に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~3、5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1~3、5に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)証拠方法

甲1:実願平5-53760号(実開平7-24915号)のCD-ROM
甲2:実願平5-29997号(実開平7-6217号)のCD-ROM
甲3:特開平11-200107号公報
甲4:実公昭63-29693号公報
甲5:実公平2-32641号公報

2 被請求人の主張

本件特許の請求項1~3、5に係る発明は、甲1~甲5に記載された発明に基いて、出願前に当業者が容易に想到できたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に反するものではなく、同法第123条第1項第2号に該当するものではない。

第5 当審の判断

1 提出された証拠の記載事項等

折りたたみ中(クリックで表示)

(1)甲1

ア「【実用新案登録請求の範囲】

【請求項1】 ブラジャー前部1と、このブラジャー前部1の下方の上腹密着部2と、背開き用係止布部3とを、一体に伸縮布地を用いて形成し、この背開き用係止布部3の係止用両端部に、この係止用両端部相互を係脱自在に係止する複数列の係止手段4a、4bを設け、前記上腹密着部2の左右脇部分に、前記伸縮布地よりも伸縮率の小さい伸縮布地を用いた前開きの補整用前布5の一端をそれぞれ連接し、この補整用前布5の係止用他端部に、この係止用他端部相互を係脱自在に係止する複数列の係止手段6a、6bを設けたファンデーション。」

イ「 【0001】

【産業上の利用分野】

この考案は、バストと、アンダーバストから上腹部にかけてのボディラインを美しく補整するために着用されるファンデーションに関する。

【0002】

【従来の技術】

ボディラインを美しく補整するためのファンデーションとしては、ブラジャー、ガードル、ボディスーツ、ウエストニッパ等があり、体のどの部分を補整するかによって、これらのファンデーションが単独で、あるいは組み合わせて着用される。

【0003】

ところが、アンダーバストから上腹部にかけてのボディラインを連続して補整するファンデーションは存在せず、背開きのブラジャーにおいて、バストカップを連結する連結部分が若干長めに縫製され、背中側にブラジャーの端部相互を連結する係止手段を複数列設けたものが見受けられる程度である。

【0004】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、上述の如きブラジャーは、妊産婦のように一時期に急激に体型が変化する者にとっては、係止手段の係止位置の調整のみではボディラインの補整に対処しきれず、特にアンダーバストに連続する上腹部の補整ができないという欠点がある。

【0005】

また、背中側にのみ係止手段が設けられていることから、バストに無理な締付けが生じて着用感が悪いという問題もある。

【0006】

そこで、この考案は、一時期の急激な体型の変化にも十分対応でき、且つ着用感に優れたファンデーションを提供することを課題とする。」

ウ「 【0008】

【作用】

以上のように構成されたファンデーションを着用すると、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地が伸長し、背開き用係止布部3の係止用両端部に設けた複数列の係止手段4a、4bを適宜選択して係止させることにより、このブラジャー前部1と上腹密着部2とが、バスト及びアンダーバストから上腹部に連続する部分に密着する。

【0009】

補整用前布5の係止用他端部に設けた複数列の係止手段6a、6bを適宜選択して係止させると、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地の伸長が抑制される。

【0010】

背開き用係止布部3の係止用両端部相互を係止する係止手段4a、4bと、補整用前布5の係止用他端部相互を係止する係止手段6a、6bとの、係止位置の組合せを変えることにより、このファンデーションの体に対する密着度が微妙に変化する。」

エ「 【0011】

【実施例】

図1及び図2に示すように、この考案に係るファンデーションは、バストカップ1aを有するブラジャー前部1と、このブラジャー前部1の下方に連続する上腹密着部2と、背開き用係止布部3とが、伸縮布地により一体に形成され、前記ブラジャー前部1及び上腹密着部2の左右脇部分に、前記伸縮布地よりも伸縮率の小さい伸縮布地を用いた前開きの補整用布地5の一端がそれぞれ連接されている。

【0012】

前記背開き用係止布部3の係止用両端部には、図2に示すように、1列4個のフック4aが3列、このフック4aが係止されるアイ4bが3列設けられている。

【0013】

前記補整用前布5の係止用他端部には、図1に示すように、1列5個のフック6aが3列、このフック6aが係止されるアイ6bが3列設けられている。

【0014】

即ち、この実施例においては、背開き用係止布部3の係止用両端部相互を係脱自在に係止する係止手段、及び補整用前布5の係止用他端部相互を係脱自在に係止する係止手段が、フック4a、6aとアイ4b、6bとにより構成される。

【0015】

このファンデーションを着用すると、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地が伸長し、例えば最も端部に位置するフック4aとアイ4bとを係止させることにより、このブラジャー前部1と上腹密着部2とが、バスト及びアンダーバストから上腹部に連続する部分に密着し、密着状態が保持される。

【0016】

また、補整用前布5に設けたフック6aとアイ6bとを係止させると、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地の伸長が抑制される。

【0017】

授乳期の終了等に伴う痩身にあたっては、フック4a、6aとアイ4b、6bとの係止位置を漸次中央側に移動させることにより、ブラジャー前部1と上腹密着部2と、バスト及びアンダーバストから上腹部に連続する部分との密着度を調整することができる。

【0018】

図3に示すファンデーションは、この考案に係るファンデーションの第二の実施例であり、補整用前布5′が、アンダーバストから上腹部を経てウエスト部に達する長さに形成されている。

【0019】

なお、上記第一の実施例と同様の構成及び作用を示すものについては、同じ符号を付して説明を省略する。

【0020】

背開き用係止布部3の係止用両端部には、1列8個のフック4aが3列、このフック4aが係止されるアイ4bが3列設けられている(図示省略)。

【0021】

前記補整用前布5′の係止用他端部には、2列10個のフック6aが3列、このフック6aが係止されるアイ6bが3列設けられている。

【0022】

このファンデーションを着用すると、ブラジャー前部1と上腹密着部2と背開き用係止布部3とを構成する伸縮布地が伸長し、例えば最も端部に位置するフック4aとアイ4bとを係止させることにより、このブラジャー前部1と上腹密着2とが、バスト及びアンダーバストから上腹部を経てウエスト部に連続する部分に密着し、密着状態が保持される。

【0023】

また、補整用前布5′に設けたフック6aとアイ6bとを係止させると、ブラジャー前部1と上腹密着部2とを構成する伸縮布地の伸長が抑制される。」

オ「 【0024】

【考案の効果】

以上のように、この考案に係るファンデーションは、ブラジャー前部1と上腹密着部2とが伸縮布地により構成されていることから、着用時にこの伸縮布地が伸長して、アンダーバストから上腹部に連続する部分に密着すると共に、上腹密着部2との左右脇部分に連接された補整用前布5により前記伸縮布地の伸長を適度に抑制して、体を無理なく締付けて、体型を補整することができる。

【0025】

また、補整用前布5の係止用他端部相互を係脱自在に係止する係止手段6a、6bが複数列設けられていることから、背開き用布部3の係止用両端部相互を係脱自在に係止する係止手段4a、4bの係止位置を変えることなく、この補整用前布5のみによって、ブラジャー前部1及び上腹密着部2と体との密着度を調整することができる。

【0026】

さらに、背開き用布部3に設けた係止手段4a、4bの係止位置と、補整用前布5に設けた係止手段6a、6bの係止位置との組合せを変えることにより、体に対する密着度を微妙に調整して、体型の変化に柔軟に対処することができ、着用感に優れたものとなる。」

カ「 【図1】 【図2】

[図:0001397657000001.jpg]

【図3】

[図:0001397657000002.jpg]

」

キ 甲1の上記記載によれば、「バストと、アンダーバストから上腹部にかけてのボディラインを美しく補整するために着用されるファンデーション」(【0001】)は、バストカップを有するブラジャー前部と、このブラジャー前部の下方に連続する上腹密着部と、背開き用係止布部とが、伸縮布地により一体に形成され、前記ブラジャー前部及び上腹密着部の左右脇部分に、前記伸縮布地よりも伸縮率の小さい伸縮布地を用いた前開きの補整用前布の一端がそれぞれ連接されている(【0011】)。

この補整用前布は、アンダーバストから上腹部を経てウエスト部に達する長さに形成されている(【0018】、【図3】)。

補整用前布の係止用他端部には、3列のフックと、このフックが係止される3列のアイが設けられている(【0021】)。

ク そうすると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「《甲1発明》
バストと、アンダーバストから上腹部にかけてのボディラインを美しく補整するために着用されるファンデーションであって、
バストカップを有するブラジャー前部と、このブラジャー前部の下方に連続する上腹密着部と、背開き用係止布部とが、伸縮布地により一体に形成されており、前記ブラジャー前部及び上腹密着部の左右脇部分に、前記伸縮布地よりも伸縮率の小さい伸縮布地を用いた前開きの補整用布地の一端がそれぞれ連接されており、
補整用前布が、アンダーバストから上腹部を経てウエスト部に達する長さに形成され、
補整用前布の係止用他端部には、3列のフックと、このフックが係止される3列のアイが設けられている、
ファンデーション。」

(2)甲2

ア「 【0001】

【産業上の利用分野】

本考案は、授乳用ブラジャーに関し、特に、左右のカップを簡単に開閉できるようにすると共に、この開閉部分の構成を簡単にするものである。」

イ「 【0013】

【実施例】

以下、本考案を図面に示す実施例により詳細に説明する。

左右のカップ11A,11Bは夫々下カップ布12と上カップ布13とを縫着して、膨らんだ乳房全体に密着しながら略完全に収容できるフルカップ形状としている。上記上カップ布13の表面側には前端縁に沿ってストレッチレース布15を重ねて縫着し、外観を良好とすると共に乳房に対する密着性を向上させている。

【0014】

上記下カップ布12は乳房の乳頭下部から脇側を収容する形状とし、上カップ布13は前側上部から乳頭上部を収容する形状とし、下カップ布12の上方へ膨出させた上端縁12aと上カップ布13の下方へ膨出させた下端縁13aとを縫着することにより乳頭部分を頂点として表面側へ膨らませ、乳房の形状に沿うようにしている。

【0015】

左右の下カップ布12の下端縁12bは、夫々左右下辺支持布16の円弧形状に凹設した上端縁16aと縫着している。

該下辺支持布16は乳房の下側より乳房の脇側に当てる形状としており、前端縁16bは前側中心部に位置し、脇端縁16cは脇線近傍に沿って位置し、下端縁16dは胃の部分に位置する。

【0016】

上記左右下辺支持布16の前端縁16bには夫々係止具17を取り付け、着脱自在に係止できるようにしている。かつ、前端縁16bより所要距離はなれた位置Pの下端部に、伸縮性テープからなる連結テープ18の先端を縫着し、係止具17の係止が解かれた状態で、連結テープ18を介して左右の下辺支持布16が互いに連結された状態となるようにしている。

上記連結テープ18と連結する点Pは前端縁16bより約3cm~5cm程度離れた点としている。

上記連結テープ18として本実施例では当たりの柔らかなストレッチテープを用いている。」

ウ「 【0026】

【考案の効果】

以上の説明より明らかなように、本考案に係わる授乳用ブラジャーでは、左右のカップを夫々縫着した下辺支持布を前側中心部で分離し、該分離した前端中央部に雌雄係止具を取り付けた構成としたため、該係止具の係止を解くだけで左右のカップを同時に横方向に開くことができる。よって、従来のブラジャーのように、左右のカップを開くために、左右カップを別個に係止している2個の係止具を解除する必要がなくなり、係止具の解除動作を簡単とすることが出来る。

このように、一組の係止具を下辺支持布に取り付けるだけでよく、構成が簡単となり、加工工程を減少させることができ、その分コストを低下させることが出来る。

【0027】

また、係止を解除して左右のカップを開いた状態でも、伸縮性テープを介して下辺支持布が連結されているため、授乳後に左右カップを閉じる場合も、簡単に左右カップを所定の位置に戻して係止具を係止し、身づくろいをすることが出来る。かつ、該伸縮性テープとしてストレッチテープ等のソフトテープを用いているため、ブラジャー着用時に胃を圧迫する締付感がない。

【0028】

さらに、授乳時に、乳房の下側の前側中央部に位置する伸縮性テープには係止具が取り付けられていないため、授乳時に乳児に係止具が接触する恐れもない。

【0029】

さらにまた、ブラジャーを構成する各布を伸びを有する素材で構成していると共に、バストを完全に包むフルカップ形状としているため、授乳期の膨らんだ乳房を収容するのに適している。さらに、乳房が形状変化しても常に、乳房に密着させることが出来る等の利点を有するものである。」

エ「 【図1】 【図2】

[図:0001397657000003.jpg]

【図3】

[図:0001397657000004.jpg]

」

(3)甲3

ア「【0001】

【発明の属する技術分野】この発明は、ブラジャー等の女性用下着に関し、特にバストを中央に引き寄せることのできる構造を有する女性用下着に関するものである。」

イ「【0014】実施の形態1

図1及び図2はこの発明に係る女性用下着の一実施の形態としてのブラジャーを示すものである。

【0015】図1及び図2において、1は女性用下着としてのブラジャーを示すものであり、このブラジャー1は、フロント部分2、3が左右に分離していて、これらの左右に分離したフロント部分2、3が交差した状態で互いに連結されるようになっており、後部は帯状のバック布4によって左右から一体的に連結されている。

【0016】上記左右のフロント部2、3は、それぞれ女性の左右のバストを覆う左右のカップ部5、6と、当該左右のカップ部5、6の上側にそれぞれ縫着された上前側布7、8と、上記左右のカップ部5、6の下側にそれぞれ縫着された下辺連結布9、10とから構成されており、これら左右のカップ部5、6と、上前側布7、8と、下辺連結布9、10は、それらの外側の端部が、上述した帯状のバック布4の端部である左右の側布4a、4bに、それぞれ側端縁11、12で縫着されている。また、上記左右のカップ部5、6は、例えば、女性のバストの乳頭Pを通る縦の直線で左右に2分割された左右のカップ布5a、5bと6a、6bを、互いに縫着することによって、女性のバストを立体的に覆うように構成されている。さらに、上記左右のカップ部4、5には、バスト基底部を安定させるため、合成樹脂や形状記憶合金等からなるボーン13が、内側に挿入された状態で縫着されている。さらに、上記上前側布7、8の三角形状に形成された上端部には、ストラップ14、15が縫着されている。

【0017】また、この実施の形態では、女性のバストをそれぞれ覆う左右のカップ部5、6のうち、右側のカップ部6を左側のカップ部5側に着脱自在に連結する連結部を、中央部よりも左側に設けると共に、前記左側のカップ部5を右側のカップ部6側に着脱自在に連結する連結部を、中央部よりも右側に設けるように構成されている。

【0018】すなわち、この実施の形態に係るブラジャー1では、左右の下辺連結布9、10の先端部9a、10aに、他方のバストカップ部5、6側と互いに連結するめめ(当審注:「連結するため」の誤記であると認める)のフックやアイ等からなる係止具16、17が、取り付けられている。また、上記右側のカップ部6の下辺連結布10の先端部10aを左側のカップ部6側に着脱自在に連結する連結部20が、中央部よりも左側に設けられていると共に、前記左側のカップ部5の下辺連結布9の先端部9aを右側のカップ部5側に着脱自在に連結する連結部21が、中央部よりも右側に設けられている。これらの連結部20、21にも、前記左右の下辺連結布9、10の先端部9a、10aに取り付けられたフックやアイ等からなる係止具16、17と相対的に係合する、アイやフックからなる係止具16、17が取り付けられている。」

「【0021】さらに、上記左右のバストカップ部5、6に縫着された連結部20、21を形成する下辺連結布9、10や布片22には、図5に示すように、左右のバストを引き寄せるために張力を持った素材、例えば、ポリウレタン系の繊維を編み込んだ布片や、エラスチックな繊維を使用した布片等を使用するのが望ましい。しかも、上記左右のバストカップ部5、6の外側にも、左右のバストを引き寄せるための張力を持たせた構造を採用するのが望ましい。
【0022】この左右のバストを引き寄せるための張力を持たせた構造としては、例えば、次に示すようなものが用いられる。その際、上記左右のフロント部2、3に縫着されるバストカップ部5、6は、この実施の形態に係るブラジャー1を着用したときのフロント部2、3の形状となるように、フロント部2、3を伸ばしながら、当該フロント部2、3にバストカップ部5、6を縫い付けることによって、フロント部2、3の伸びを考慮した形状となっている。
【0023】すなわち、上記ブラジャー1は、図6に示すように、左右のバストカップ部5、6の一部が二重構造となっており、内側に位置する肌側のバストを寄せるための裏当て布23、24を備えている。これらの裏当て布23、24は、胴回り方向のストレッチ性がない。これに対して、左右のフロント部2、3を構成する布地には、ストレッチ性がある。また、これらの裏当て布23、24は、所定の幅を有して体の側面に沿う部分23a、24aと、この側面部分から女性のバストの外側の側面から基底部に掛けて湾曲した形状の上端縁を有する基底部23b、24bとから構成されている。そして、上記バストを寄せるための裏当て布23、24のうち、右側の裏当て布25の側面部分の下端縁には、左側のフロント部2の先端部9aに取り付けられたフックやアイ等からなる係止具17と、相対的に係止するためのアイやフック等からなる係止具17を取り付けるように構成しても良い。こうした場合には、前述したアイやフック等からなる係止具17を取り付けるための布片22が不要となる。そして、左側のフロント部2の先端部9aをフックやアイ等からなる係止具17によって連動させることにより、バストをさらに引き寄せる効果を更に高めることができる。」

ウ「【0029】このように、前記実施の形態に係るブラジャー1では、女性のバストをそれぞれ覆う左右のカップ部5、6を互いに連結する連結部を交差させ、右側のカップ部6を左側のカップ部5側に着脱自在に連結する連結部20を、中央部よりも左側に設けると共に、前記左側のカップ部6を右側のカップ部5側に着脱自在に連結する連結部21を、中央部よりも右側に設けるように構成したので、女性の左右のバストを、当該バストをそれぞれ覆う左右のカップ部5、6によって中央に引き寄せることができ、女性本来の体型を一層引き立て、かつ魅力的に表現することが可能となる。」

エ「【図1】

[図:0001397657000005.jpg]

【図2】

[図:0001397657000006.jpg]

【図5】

[図:0001397657000007.jpg]

【図6】

[図:0001397657000008.jpg]

」

(4)甲4

「考案の詳細な説明
本考案は美容整形用のボデースーツに関するものである。
本考案の目的はバストアツプとウエスト補正を主眼にしたボデースーツであつて、単に締めるだけでなく体型の崩れを積極的に矯正でき、産後用にも好適なボデースーツを提供することにある。
即ち本考案は伸縮性材料により形成されたボデースーツ本体1の腹部に、左右一対の矯正片2,3を夫々の側辺部にて取付け、各矯正片2,3の他辺はウエストの締め方向へ調節可能な結合部材4,5により着脱可能とし、更に本体1の胸部に人体の左右胸部を夫々囲むように設けた枠体6,7にバストカツプ片8,9を開閉可能に取付けたボデースーツである。図示実施例に於けるボデースーツは胸部A、腹部B及びヒツプ部Cを一体化して成り、腹部Bに於いてはスーツ本体1の上から、また胸部Aに於いてはこれを枠体6,7とバストカツプ片8,9に分けて設けた各矯正手段を有する。調節可能な結合部材の一方4は一方の矯正片2のウエスト締め方向即ち周方向へ2列以上並列したフツク4a,4b,4c……、他方5は他の矯正片3の端辺に沿つて一列にフツクと同数個配設した止め具5aにより形成されている。尚、10,11は上開き式に形成した各バストカツプ片8,9を枠体6,7に固定するホツク、12,13は吊り紐を示す。
本考案は以上の如く構成されているので、調節の必要度合に応じて矯正片2,3の結合部材4,5の結合位置を調節し、それにより腹部Bの寸法を変え圧迫することが可能であり、しかもその操作が容易に行なえる、と同時に胸部Aに於いてバストカツプ片8,9を開いて枠体6,7を適当に拡げ、回りの脂肪を集めた上でバストカツプ片8,9を閉じ形を整えることができ、また勿論授乳の際に開くこともできるので一般美容整形のほか産後用としても適する効果がある。」(1欄11行~2欄20行)
「
[図:0001397657000009.jpg]
」(図面)

(5)甲5

「考案の詳細な説明
〔考案の技術分野〕
本考案は複数の身体補正機能を併有する女性下着としてのボデースーツに係り、特に各補正機能が適正に発揮できるようにしたボデースーツに関する。」(1欄17~22行)
「〔考案の実施例〕
以下、本考案の一実施例を図面を参照して説明する。
この実施例に係るボデースーツでは、ブラジヤー部1、ウエストニツパ部2およびガードル部3が合体している。前身頃aと後身頃bとは両ウエストラインに沿い、上下方向全体に亘つて互いに縫着してある。この前身頃aのうち、アンダーバスト部分4は相対的な上下動を許容する二重構造としている。即ち、ブラジヤー部1の下縁から一定長さの内側布4aを垂下するとともに、ウエストニツパ部2の上縁からブラジヤー部1の下縁近傍まで外側布4bを立上らせている。この内側布4aを外側布4bとは両ウエストラインに沿つて縫着するだけで、その他の部分はスライド可能に重合している。これにより、外側布4bはブラジヤー部1から分離し、かつ内側布4aに対して相対的な上下移動を許容される。なお、ウエストニツパ部2とガードル部3とは一体布によつて前身頃aを構成している。外側布4bには、その上端縁中央位置からウエストニツパ部2に亘り左右方向への開閉を可能とするフアスナー5を設けている。」(3欄17~39行)
「このように構成した実施例のボデースーツによると、ブラジヤー部1とウエストニツパ部2とがアンダーバスト部分4で上下に分離されているので、装着時にガードル部3側から生じる引下げ力はウエストニツパ部2で止り、ブラジヤー部1には伝わらない。したがつて、ブラジヤー部1が使用者の乳房にフイツトし、押下げ力が作用しないから、従来の上下一体構成のものと異なり胸部補正効果が損われず、バストラインを美しく出すことができるとともに、アンダーバストからウエストラインにかけても、ごく自然に締付けることができる。上下方向の伸び度が大きいので、胸部位置や胴長の個人差に対しても容易に適用でき、或る程度の規格で大多数の人にフイツトし得るものが提供できる。屈伸動作や過激な運動に対しても抵抗感が少ない。アンダーバスト部分4は二重構造で、ブラジヤー部1から垂下した内側布4aが外側布4bの上端縁の隙間を覆うから外観上の体裁も良い。
なお、アンダーバスト部分4のフアスナー5を引上げることによつて、ウエストニツパ部による締付け効果が得られるが、胸部近傍までの締付けを好まない場合はフアスナー5を降し左右に開いた状態でも使用できる。なお、この場合にも内側布4bで開き目を遮蔽できるので、良好な外観が保持される。」(4欄2~27行)
「
[図:0001397657000010.jpg]
」(図面)

2 本件発明1について

(1)対比

ア 本件発明1と甲1発明を対比する。

甲1発明の「バストカップ」は、本件発明1の「女性のバスト部を覆うカップ部材」に相当する。

甲1発明の「前記ブラジャー前部及び上腹密着部の左右脇部分に、前記伸縮布地よりも伸縮率の小さい伸縮布地を用いた前開きの補整用前布の一端がそれぞれ連接されており、」「アンダーバストから上腹部を経てウエスト部に達する長さに形成され」た「補整用前布」と、本件発明1の「前記カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され、前記バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材」とは、「カップ部材と分離した状態で配置される左右の布部材」という限りで一致する。

甲1発明の「補整用前布の係止用他端部には、3列のフックと、このフックが係止される3列のアイが設けられている」ことについて、甲1には「授乳期の終了等に伴う痩身にあたっては、フック4a、6aとアイ4b、6bとの係止位置を漸次中央側に移動させることにより、ブラジャー前部1と上腹密着部2と、バスト及びアンダーバストから上腹部に連続する部分との密着度を調整することができる。」(【0017】)と記載され、甲1発明の複数列のフックとアイは、係止する列を移動させることにより連結幅を調節可能といえるから、甲1発明の「補整用前布の係止用他端部には、3列のフックと、このフックが係止される3列のアイが設けられている」ことと、本件発明1の「前記左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材とを備えた」こととは、「左右の布部材の連結幅を調節可能に連結する複数の連結部材を備える」という限りで一致する。

甲1発明の「バスト」に着用される「ファンデーション」は、本件発明1の「少なくとも女性のバスト部を覆う女性用衣料」に相当する。

イ そうすると、本件発明1と甲1発明の一致点と相違点は、以下のとおりである。

《一致点》

少なくとも女性のバスト部を覆う女性用衣料において、前記少なくとも女性のバスト部を覆うカップ部材と、カップ部材と分離した状態で配置される左右の布部材と、左右の布部材の連結幅を調節可能に連結する複数の連結部材を備える、女性用衣料。」

《相違点》

「カップ部材と分離した状態で配置される左右の布部材」と、「左右の布部材の連結幅を調節可能に連結する複数の連結部材を備える」ことに関し、

本件発明1が「前記カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され、前記バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材」と、「前記左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材とを備えた」のに対し、甲1発明は「前記ブラジャー前部及び上腹密着部の左右脇部分に、前記伸縮布地よりも伸縮率の小さい伸縮布地を用いた前開きの補整用前布の一端がそれぞれ連接されており、」「アンダーバストから上腹部を経てウエスト部に達する長さに形成され」た「補整用前布」であり、「補整用前布の係止用他端部には、3列のフックと、このフックが係止される3列のアイが設けられている」点。

(2)判断

ア 本件発明1の前身頃部材の技術的意義について

従来、ブラジャーやボディスーツ等の女性用衣料の場合には、女性のバスト等のサイズや形、あるいはバストアップ等の補正機能に対応するため、各種のバストのサイズや形に応じて素材を裁断(カット)したり、バストパッドをモールド成型し、これらの素材をバストパッド等とともに縫製しなければならず、女性のバストのサイズや形などに応じて、多種多様の女性用衣料を製造する必要があるため、大幅にコストがかかるという問題点を有していた(本件明細書の【0006】)。

本件発明1は、左右の前身頃部材を、カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置し、バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバスト下部の中央部にかけて設けて、バスト下部の中央部近傍で連結幅を調節可能に連結することにより、左右のバストの引き寄せ効果を高めることができる(同【0009】、【0010】)。

また、本件発明1の女性用衣料のボディスーツ1は、「左右の前身頃部材6a、6aの上側部分を連結するフックを止めるアイとして、第1のアイか、第2のアイを選択することにより、左右の前身頃部材6a、6aの上側部分が合わされる連結幅を調整することができ、女性のバスト部を脇部側から中央部側に、尚かつ下側から上側に向けてアップする度合いを変化させることができる。」(同【0032】)ものであるため、「従来に比較して同一のボディスーツ1で対応できる幅が広がるため、女性のバストのサイズ等に応じた製品の種類を少なくすることができ、ボディスーツ1等の女性用衣料の低コスト化をも実現することができる」(同【0032】)とされる。

さらに、本件発明1の女性用衣料のブラジャー21は、「カップ部材22の表面側に配置され、前記バスト部の左右の各脇部からバスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材としての左右の上部パネル26b、26bを備えて」(同【0036】)おり、また、「左右の上部パネル26b、26bの連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材27を備えて」(同【0038】)おり、「このように構成することにより、…ブラジャー単独であっても、女性のバストのサイズや形などに応じて、多種多様の女性用衣料を個々に用意することなく、個人差を有する女性のバスト等のサイズや形、あるいはバストアップ等の補正機能などに対応することが可能な女性用衣料を低コストにて提供することが可能となっている」(同【0039】)とされる。

そうすると、本件発明1の「左右の前身頃部材」が、「バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバスト下部の中央部にかけて設けられる」こと、「バスト下部の中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材とを備えた」ことによる技術的意義は、左右の前身頃部材が、それぞれのバストの側部のバスト側面に当接して左右のバストを引き寄せるとともに、左右のバスト下部のバスト下面に当接してバストアップすることができるため、女性のバストのサイズや形などに応じて、多種多様の女性用衣料を個々に用意することなく、個人差を有する女性のバスト等のサイズや形、あるいはバストアップ等の補正機能などに対応することが可能な女性用衣料を低コストにて提供することが可能となっていることと理解できる。

イ 甲1発明の補整用前布について

一方、甲1発明の補整用前布について検討すると、従来、アンダーバストから上腹部にかけてのボディラインを連続して補整するファンデーションは存在せず、妊産婦のように一時期に急激に体型が変化する者にとっては、係止手段の係止位置の調整のみではボディラインの補整に対処しきれず、特にアンダーバストに連続する上腹部の補整ができないという課題(甲1の【0003】、【0004】)を解決するために、甲1発明の補整用前布を「アンダーバストから上腹部を経てウエスト部に達する長さに形成」し、「3列のフックと、このフックが係止される3列のアイ」の係止位置を移動可能として補整できるようにしたものである。

そのため、甲1発明の補整用前布は、「アンダーバストから上腹部を経てウエスト部に達する長さに形成」され、アンダーバスト、すなわち、バストより下方に位置するものであり、甲1の図1及び図3に図示された態様においても、補整用前布の上方の縁は、バストを覆うバストカップ1aの下部に重なっておらず、その下方に位置している。

また、甲1発明の補整用前布は、「ブラジャー前部及び上腹密着部の左右脇部分に、前記伸縮布地よりも伸縮率の小さい伸縮布地を用いた前開きの補整用前布の一端がそれぞれ連接され」ているが、バスト側部に位置するものとはされておらず、甲1の図1及び図3に図示された態様においても、左右脇部分からアンダーバストに向かってバストカップを避けて配置されており、補整用前布の左右の縁は、バストを覆うバストカップ1aの側部に重なっていない。

これらのことからすると、甲1発明の補整用前布のバストに対する配置は、本件発明1の前身頃部材のバストの側部とバスト下部に配置されるものとは異なるものである。そして、甲1発明のファンデーションは、アンダーバスト、すなわち、バストより下方のボディラインを補整することを意図するものであり、左右のバストを引き寄せ、バストアップすることにより、女性のバストのサイズや形などに応じて、多種多様の女性用衣料を個々に用意することなく、個人差を有する女性のバスト等のサイズや形、あるいはバストアップ等の補正機能などに対応することは課題とはされていないから、本件発明1のように、前身頃部材をバストの側部と下部に位置させ、バスト下部の中央部近傍で互いに連結するとともに、その連結幅を調節可能とする動機付けはない。

ウ 甲2~甲5に記載された事項について

(ア)甲2には、左右のカップを夫々縫着した下辺支持布を前側中心部で分離し、該分離した前端中央部に雌雄係止具を取り付けた構成とし、該係止具の係止を解くだけで左右のカップを同時に横方向に開くことができる授乳用ブラジャーが記載されている(甲2【0026】)。

しかし、甲2には、カップと分離した状態でカップの表面側に配置された前身頃部材について記載がなく、甲1発明の補整用前布をバストの側部と下部に位置させるように換える動機付けを示唆するものではない。

仮に組み合わせたとしても、甲1発明のバストカップを横方向に開くように換えることになり、本件発明1の、上記相違点に係る「前記カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され、前記バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材」と、「前記左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材とを備えた」構成を、想到し得たものとはいえない。

(イ)甲3には、女性のバストをそれぞれ覆う左右のカップ部5、6を互いに連結する連結部を交差させ、右側のカップ部6を左側のカップ部5側に着脱自在に連結する連結部20を、中央部よりも左側に設けると共に、前記左側のカップ部6を右側のカップ部5側に着脱自在に連結する連結部21を、中央部よりも右側に設けるように構成したブラジャーが記載されている(甲3【0029】)。

しかし、甲3も、甲2と同様に、左右のカップ部と分離した状態でカップ部の表面側に配置された前身頃部材について記載がなく、甲1発明の補整用前布をバストの側部と下部に位置させるように換える動機付けを示唆するものではない。

また、仮に組み合わせたとしても、上記相違点に係る本件発明1の構成を想到し得たものではない。

(ウ)甲4には、伸縮性材料により形成されたボデースーツ本体1の腹部に、左右一対の矯正片2,3を夫々の側辺部にて取付け、各矯正片2,3の他辺はウエストの締め方向へ調節可能な結合部材4,5により着脱可能とし、調節の必要度合に応じて矯正片2,3の結合部材4,5の結合位置を調節し、それにより腹部Bの寸法を変え圧迫することが可能としたボデースーツが記載されている(1欄17~21行、2欄11~14行)。

しかし、甲4には、ボデースーツ本体の表側に取り付けた矯正片を、バスト部の下部と側部の位置まで配置することは記載されておらず、甲4に記載された事項を甲1発明と組み合わせても、上記相違点に係る本件発明1の構成を想到できるとはいえない。

(エ)甲5には、前身頃aのうち、アンダーバスト部分4は相対的な上下動を許容する二重構造として、ブラジヤー部1の下縁から一定長さの内側布4aを垂下するとともに、ウエストニツパ部2の上縁からブラジヤー部1の下縁近傍まで外側布4bを立上らせており、ブラジヤー部1とウエストニツパ部2とがアンダーバスト部分4で上下に分離されているので、装着時にガードル部3側から生じる引下げ力はウエストニツパ部2で止り、ブラジヤー部1には伝わらず、ブラジヤー部1が使用者の乳房にフイツトし、押下げ力が作用しないから、従来の上下一体構成のものと異なり胸部補正効果が損われず、バストラインを美しく出すことができるとともに、アンダーバストからウエストラインにかけても、ごく自然に締付けることができるボデースーツが記載されている(3欄24~29行、4欄3~13行)。

しかし、甲5についても、ボデースーツ本体の表側に取り付けた外側布を、バスト部の下部と側部の位置まで配置することは記載されておらず、甲5に記載された事項を甲1発明と組み合わせても、上記相違点に係る本件発明1の構成を想到できるとはいえない。

エ 請求人の主張

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は、口頭審理陳述要領書(19頁3行~22頁7行)において、

「甲1発明には上記の補整用前布5の位置を変えた図は存在しないものの、甲1発明以前の技術、そして甲1発明へとつながる女性用下着の改良発展の流れから、甲1発明の補整用前布5の位置をバストカップ1aに近づける改良、発展の流れは、当業者であれば容易に想到することが可能な範囲内である。」、「当業者にしてみれば、甲1発明の補整用前布5の位置を変更すること(本書面の20ページ目参照)は甲1発明からの設計事項の範囲内に過ぎない。」と主張する。

しかし、上記イで述べたように、甲1発明の補整用前布を、本件発明1の前身頃部材のようにバストの側部と下部に配置させる動機付けはなく、提出された証拠からは、甲1発明の補整用前布の配置をバストカップに近づける改良、発展の流れがあるとすることはできず、また、設計事項の範囲内であるともいえないから、請求人の上記主張は採用できない。

(3)本件発明1についてのまとめ

よって、本件発明1は、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、甲1発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。

2 本件発明2、3、5について

本件発明2、3、5の各発明は、いずれも本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであり、本件発明1は、上記1で述べたように、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、甲1発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2、3、5の各発明も同様に、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、甲1発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由によっては、本件発明1~3、5についての特許を無効にすることはできない。

審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-800086

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ出願・登録の審決1件(出願 特願2002-046590)
  • 2023-800080無効審判 / 2025-04-22 / 請求不成立女性用衣料
    同じ出願番号
同じ当事者の審決3件(株式会社 FLORe、株式会社 MIC)
  • 2023-800080無効審判 / 2025-04-22 / 請求不成立女性用衣料
    同じ当事者: 株式会社 FLORe、株式会社 MIC
  • 2022-012463拒絶査定不服審判 / 2023-10-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)女性用衣料
    同じ当事者: 株式会社 MIC
  • 2019-010663拒絶査定不服審判 / 2020-07-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)バスト引き寄せ力を持ったトップ
    同じ当事者: 株式会社 MIC
同じ根拠条文の審決768件(民事訴訟法61条、特許法169条2項)
  • 2023-800080無効審判 / 2025-04-22 / 請求不成立女性用衣料
    共通の条文: 民事訴訟法61条、特許法169条2項
  • 2024-800166無効審判 / 2026-07-15 / 請求不成立エアロゾル発生物品内でセグメントとして使用するためのエアロゾル発生物品および低抵…
    共通の条文: 民事訴訟法61条、特許法169条2項
  • 2025-800050無効審判 / 2026-07-15 / 請求不成立エアロゾル発生物品内でセグメントとして使用するためのエアロゾル発生物品および低抵…
    共通の条文: 民事訴訟法61条、特許法169条2項
  • 2024-800068無効審判 / 2026-05-18 / 請求不成立二環式化合物組成物およびその安定化方法
    共通の条文: 民事訴訟法61条、特許法169条2項
  • 2024-800069無効審判 / 2026-05-18 / 請求不成立下剤組成物
    共通の条文: 民事訴訟法61条、特許法169条2項
同じ論点・分野の審決(審決分類)23件(121・A41C)
  • 2023-800080無効審判 / 2025-04-22 / 請求不成立女性用衣料
    共通の審決分類: 121・A41C
  • 2023-019131拒絶査定不服審判 / 2026-01-06 / 原査定取消(特許/登録すべき)ブラジャ
    共通の審決分類: 121・A41C
  • 2024-013655拒絶査定不服審判 / 2025-11-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)バストを大きくする方法、大きなバストにする方法
    共通の審決分類: 121・A41C
  • 2024-017863拒絶査定不服審判 / 2025-09-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)胸部を覆う衣類
    共通の審決分類: 121・A41C
  • 2024-000229拒絶査定不服審判 / 2025-07-29 / 原査定取消(特許/登録すべき)ブラジャー
    共通の審決分類: 121・A41C

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存