特許無効審判
2023-800034
情報処理装置
- 審判番号
- 2023-800034
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2017-053378
- 登録番号
- 6554652
- 請求日
- 2023年05月31日
- 審決日
- 2024年04月18日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 カーチスホールディングス
- 【請求人代理人】鈴木 正剛
- 【請求人代理人】中村 昌雄
- 【被請求人】株式会社 リアライズコーポレーション
- 【被請求人代理人】岩池 満
- 【被請求人代理人】菅沼 和弘
- 【被請求人代理人】谷山 稔男
- 審判長/審判官
- 審判長 伏本 正典
- 審判官 相崎 裕恒
- 審判官 月野 洋一郎
- 分類
- P1123.1 -Y (G06Q) / P1123.537-Y (G06Q) / P1123.536-Y (G06Q) / P1123.121-Y (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第123条第1項第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第123条第1項第4号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6554652号発明「情報処理装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第6554652号の請求項1についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
第2 手続の経緯
特許第6554652号は、平成29年3月17日の特許出願(特願2017-53378号、優先権主張:平成28年3月17日(特願2016-53624号))について、令和元年7月19日に設定登録されたものである。
(特許第6554652号の請求項1に係る発明を「本件特許発明」といい、同請求項1に係る特許を「本件特許」という。)
本件無効審判における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和5年 5月31日付 :審判請求書
同年 9月 1日付 :答弁書
同年11月 8日付 :審理事項通知
同年12月 8日付 :口頭審理陳述要領書(1)(請求人)
同年12月15日付 :口頭審理陳述要領書(1)(被請求人)
令和6年 1月10日付 :口頭審理陳述要領書(2)
(請求人、被請求人)
同年 1月19日 :口頭審理
同年 2月 5日付 :上申書(請求人、被請求人)
同年 3月27日付 :審理終結通知
第3 本件特許発明(文節番号は、審判請求書によるものである。)
A 車種、経過年を含む履歴情報、価格を少なくともパラメータとして含む、t 台( t は1以上の整数値) の車両の購入額、及び所定の期間経過後の販売額を演算する購入販売額演算部と、
B 前記t台の車両の夫々を購入した者を貸主として、当該t台の車両の夫々を、所定の借主に対して賃貸借契約で賃貸する場合の賃貸費を演算する賃貸費演算部と、
C 前記賃貸費と、前記購入額と、前記販売額とに基づいて、前記貸主の損益額と、前記t台の車両の組合せからなるファンドの商品を購入する投資家の損益額と、の夫々を演算する損益演算部と、
D 前記パラメータ及び前記t台、前記購入額、前記販売額、前記賃貸費、前記貸主の損益、並びに前記投資家の損益の組合せを変化させて、前記購入販売額演算部、前記賃貸費演算部、及び前記損益演算部の各処理を繰り返し実行させ、その実行結果に基づいて、前記貸主の損益額が、前記投資家の所望する金額となるように、前記ファンドの商品の内容を決定する商品最適化部と、
E を備える情報処理装置。
第4 無効理由、請求人の主張及び証拠方法
1 無効理由
(1)無効理由1(発明該当性)
本件特許は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反してされたものである。(特許法第123条第1項第2号)
(2)無効理由2(明確性要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(特許法第123条第1項第4号)
(3)無効理由3(実施可能要件)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(特許法第123条第1項第4号)
(4)無効理由4(進歩性)
本件特許発明は、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(特許法第123条第1項第2号)
2 請求人の主張の概要
(1)無効理由1
ア(ア)本件特許発明の要件A~Dに記載された事項は、すべて人が行うこと、あるいは人でも行い得ることであり、自然法則利用性を肯定し得るような技術的特徴を見いだすことはできない。処理結果例とされる甲1の図5ないし図8の掲示内容は、人が行った結果と何ら変わりがない。本件特許発明は、全体としてみればビジネスを行う方法のような人為的な取り決めそのものである。(審判請求書16~17頁)
本件特許発明は、動作主体が人(各演算部担当者、商品最適化担当者、ファンド運営会社)と仮定してみた場合に無理なく読めるように記載された請求項に係る発明であり、「自然法則を利用した技術的思想の創作」といえる要素は皆無である。(請求人口頭審理陳述要領書(1)4頁)
被請求人は、「動作主体が人と仮定した場合に無理なく読める発明」は「自然法則を利用した技術的思想の創作」でないとの請求人の主張が「発明」に対する裁判所及び特許庁の考え方にも合致していないとしているが、この表現は、特許・実用新案審査ハンドブック附属書Dで紹介された知財高裁の判決(知財高判平成18年9月26日(平成17年(行ケ)第10698号))に係る出願(特願2000-319884)の拒絶査定謄本に記載された「動作主体が人間と仮定してみた場合に無理なく読めるような請求項の記載では、コンピュータシステムの動作方法を具体的に記載したものとは認められない。」の記述のうち、「人間」を「人(自然人、法人)」に置き換えたものに対応するものである。(請求人上申書4頁)
請求項には、「人が行う計算では現実的に不可能なシミュレーションを実行すること」に関する記載はなく、かかる記載が無くとも請求項の字義自体は明確であるから、被請求人の主張は特許法上の根拠を欠く。(請求人口頭審理陳述要領書(1)6頁)
仮に本件特許の明細書及び図面を参酌しても、人が行う計算では現実的に不可能であることを示唆する記載はない。7つの変数による金額の計算はせいぜい単純な四則演算である。t台は1台でよく、tを2,3に変化させてもその分が増えるだけであり、要件Dも計算結果をメモしてストックしておいたものを比較する等すればよい。(請求人口頭審理陳述要領書(1)6~7頁)
口頭審理で述べたとおり、本件特許発明は、車両の減価償却資産の耐用年数が不動産等よりも格段に短く、これにより税制面のメリットを短期に享受できるという、日本の会計上の法則(人が定めたルール)を利用して、車両で構成されるファンドに投資する投資家が所望する金額となるようにファンドの商品の内容を決定する、という「人為的な取り決め」そのものであって、自然法則を何ら利用していないものである。(請求人上申書3頁)
(イ)人が行う計算では現実的に不可能であることを可能にすることは、本件特許発明の効果ではなくコンピュータの性能による効果である。(請求人口頭審理陳述要領書(1)7~8頁)
被請求人主張の「本件特許発明による顕著な効果」は、人の精神活動の一態様にすぎない。(請求人口頭審理陳述要領書(1)8~9頁)
本件特許発明の課題及び効果について、本件明細書の段落【0004】【0005】【0013】によれば、従来よりも運用利回り、受給バランス、及び取引相場の安定性がより優れ、かつ、所望の損益を計上することができるファンドを投資対象としたいという投資家の要求に応える新たなファンドの商品を提供することと理解されるところ、ファンドの損益に関わる多数の演算及びシミュレーションを実行する情報処理システムは、本件特許出願前に提案されており(甲1【0002】)、投資家の所望する金額(損益)となるファンドの商品とすることはファンド運営上当然であるから、本件特許発明の技術的意義は、不動産や航空機のファンドに代えて投資家にとって税制面におけるメリットが大きい車両の組み合わせからなるファンドの商品とすること(【0018】、【0025】)に尽きる。本件特許発明の本質は、専ら人為的な取り決めにそのものに向けられたものであり、科学的法則を何ら利用するものでない。(請求人口頭審理陳述要領書(1)9~11頁)
(ウ)本件特許発明の要件Bの「賃貸借契約で賃貸する場合の賃貸費」は、契約当事者(貸主と借主)の合議により定められる金額つまり人が決める金額であって、情報処理により一意に演算できる性質のものではない。(審判請求書16頁)
(エ)本件特許発明の要件Cの「商品を購入する投資家の損益額」は、投資家による「ファンド」の購入額(人が決める金額:請求項に明記なし)が定まらない限り導出されないものであって、情報処理によって一意に演算される性質のものではない。(審判請求書16頁)
(オ)本件特許発明の要件Dの「投資家の所望する金額」を認識するのは人であり、数値の組み合わせを変化させる必要性を認識するのも人であり、変化した数値の組み合わせを評価して演算を繰り返す必要の有無を判断するのも人であり、「ファンドの商品の内容を決定する」のも人が行うことである。(審判請求書16頁)
イ 本件特許発明は、「機器等」の「制御」に該当しない。
「機器等を制御する」は、電子炊飯ジャーや車両の燃料噴射機構等のように対象となる機械や設備を目的通り作動するように操作すること、つまり、実在する機器等を現実に作動させることであり、このことが、ソフトウェアが「自然法則の利用」と関わる要素となる。本件特許発明は、請求項に、機器等の作動に関する具体的な制御の態様が一切記載されていないのであり、「機器等を制御する」ものに該当するという主張は、論外である。(請求人口頭審理陳述要領書(1)4頁)
ウ 本件特許発明は、「ソフトウェアとハードウェア資源」の「協働」に該当しない。
要件A~Cは、演算すべき結果を示すのみで、各「演算部に特有」となる具体的な情報処理の内容については、請求項に記載がないから、「特有の情報処理」といえる可能性があるのは要件Aないし要件Cを前提とした要件Dということになる。しかし、「・・組み合わせを変化させて・・・(中略)の各処理を繰り返し実行させ、その実行結果に基づいて・・・決定する」の文言からは、「決定する」ときに各演算部による処理は既に実行されているのであるから、各演算部に対して演算の繰り返し実行の停止及び再開の必要性の判断やそれに伴う各演算部への指示が必要となるはずであり、また「前記投資家の所望する金額」は、「投資家の損益額」から一意に判明する金額とはいえないから、そのような「金額となるように、前記ファンドの商品の内容を決定する」ためには、何らかの技術的手段が不可欠になるはずであるが、本件明細書には、これらに関する記載が一切見当たらない。本件明細書の記載から導出されるのは、要件Dに対応する「貸主の損益額が、前記投資家の所望する金額となるように、前記ファンドの商品の内容を決定する」主体は、ファンドマネージャFM(人)ということであり、要件Dもまた「人が行うこと」であり「コンピュータの情報処理の内容」といえない。よって、本件特許発明は、ソフトウェア関連発明の観点からも、「自然法則を利用した技術的思想の創作」といえない。(審判請求書17~18頁)
被請求人が主張する本件特許発明の「技術的特徴」は、請求項に記載された文言をそのまま繰り返すだけで、なんら具体性がなく、請求項のみならず明細書および図面においてすら、ソフトウェアによるハードウェア資源の利用態様、例えばファンド・貸主・投資家の各損益の演算内容や投資家が所望する金額となるようにファンドの商品の内容を決定する手順等が何ら記載されていない(請求人上申書4頁)
(2)無効理由2
ア 要件Aの記載について、t台の車両の購入額、及び所定の期間経過後の販売額を演算するための数値(金額)の所在(取得経路)が不明である。また、各車両の「経過年」や「所定の期間経過後」はどの時点を起点とした「経過」なのかが請求項の記載から明らかでない。(審判請求書19頁)
イ 要件Bの記載について、「賃貸借契約で賃貸する場合の賃貸費」がどのような内容の演算により「場合」を判断して「賃貸費」を演算するのかが、請求項の記載から明らかでない。(審判請求書19頁)
被請求人の「貸主の損益額」が「ファンドの損益額」であるとの主張によれば、「貸主=ファンド」となるが、要件Bの「・・車両・・を購入した者を貸主として、・・所定の借主に対して賃貸借契約で賃貸する場合の賃貸費・・」の記載と本件明細書の段落【0046】【0024】【0028】の記載によれば、要件Bの「賃貸費」がファンドとの「車両賃貸借契約」のもとでFMがファンドに支払う賃貸費か、借主R(運送会社)が「賃貸契約」によりFMに支払う賃貸費なのか、借主Rが直接ファンドに支払う賃貸費なのかが曖昧となる。(請求人口頭審理陳述要領書(2)3~5頁)
ウ 要件Cの記載について、「t」台の車両に「1」台が含まれ、tが1の場合に「車両の組合せ」は生じないから、記載自体が不適切である。
また、契約で決められるべき「賃貸費」に基づいて「投資家の損益額を演算する」処理の内容が請求項の記載から明らかでない。(審判請求書19頁)
エ 要件Dの記載について、「投資家の所望する金額」を情報処理装置(商品最適化部)が知るはずがないから、その「金額」となるように「・・商品の内容を決定する」処理の内容が請求項の記載から明らかでない。(審判請求書19頁)
本件明細書等の段落【0057】【0063】、図6の記載は、図6に例示された項目の組み合わせからなるファンドの商品を購入した投資家の損益が結果的に「103.87%」となり、その投資家が最終的に投資額の3.83%の配当を得ることをいうにすぎず、所定の演算処理の具体的内容が一切開示されていないから、「貸主の損益」が「投資家の所望する金額」であることや「貸主の損益」にファンドの最終損益が含まれることを導出できない。(請求人口頭審理陳述要領書(2)5頁)。
乙10~乙13は、車両の組み合わせからなるファンド商品に関するものでなく、技術常識の根拠になり得ない。(請求人口頭審理陳述要領書(2)5~6頁)
被請求人は、新たファンドの設立者は、投資家が自己のファンドに投資するように、他のファンドが投資家に提供する最終損益を参考としてファンドの商品内容を決定しなければならないと主張するが、そうであれば、現在の要件Dにはそのような事項が発明特定事項として不足していることが明らかである。(請求人口頭審理陳述要領書(2)6頁、請求人上申書5~6頁)
そもそも「投資家の所望する金額」かどうかは、投資家だけが主観的に決定することであって、各種ファンドに精通した新たなファンド設立者にとっても予測が困難であり、まして情報処理装置の商品最適化部がノーヒント(発明特定事項が不足しているとしか言いようがない状態)で「金額」まで特定できることではない。(請求人上申書5頁)
(3)無効理由3
ア 要件Bの「賃貸借契約で賃貸する場合」を認識して「賃貸費」を演算する処理の態様が発明の詳細な説明に記載されていない。発明の詳細な説明では、契約は人が行うと説明されている(本件明細書の段落【0019】、【0024】、【0028】、【0046】、【0080】)。(審判請求書19頁)
イ 要件Cの「ファンドの商品を購入する投資家」の購入額を知らない「損益演算部」が「前記賃貸費と、前記購入額と、前記販売額」のみに基づいて「投資家の損益額」を演算することは、一般的に不可能である。(審判請求書20頁)
被請求人の主張は、サポート要件の議論と混同した反論である。(請求人上申書6頁)
ウ 要件Dの「投資家の所望する金額」を知るはずのない商品最適化部が「商品の内容を決定する」ことは、一般的に不可能である。(審判請求書20頁)
「投資家の所望する金額」かどうかは、投資家だけが主観的に決定できることであって、新たなファンド設立者にとっても予測が困難であり、まして情報処理装置の商品最適化部がノーヒントで金額まで特定できることではないから、当業者は本件特許発明を実施することができない。(請求人上申書6頁)
(4)無効理由4
ア 主引用発明の認定
甲第4号証には、次の引例システムが記載されている。(請求人口頭審理陳述要領書(1)13~17頁)
(引例システム)
(要件a)融資の担保物となるt台(tは1以上の整数値)の車種、経過年を含む履歴情報、買取金額(【0023】)をパラメータとして含む、担保対象車輌の夫々の前記買取金額に基づく減価償却後の金額と、販売指定先(【0023】)への将来の販売額とを算出するt台の担保対象車輌の資産価値を示す資産価値データを算出する手段と、
(要件b)前記t台の担保対象車輌の夫々を担保物として融資する銀行を貸主として、当該t台の担保対象車輌の夫々を、融資先である中古車販売会社を借主とする担保物の抵当権設定契約で賃貸する場合の賃貸費に相当する融資額を計算する手段と、
(要件c)融資額と前記t台の担保対象車輌の資産価値に基づいて、前記t台の担保対象車輌の貸主となる前記銀行の損益額と、該銀行を指揮監督する投資家としての立場の銀行持株会社の損益額とを算出する手段と、
(要件d)前記t台の担保対象車輌の資産価値の総和が融資額以下の場合は担保対象車輌の車種や台数等を変化させることにより、前記資産価値と前記融資額の計算を繰り返し、再計算された資産価値に基づいて資産価値データを更新し、更新された前記担保対象車輌の資産価値の総和が、融資額に見合うように設定された担保資産価値の下限値を超える担保対象車輌の組み合わせを適正な担保対象物として決定する手段と、
を備える情報処理システム(【0001】、【0014】)。
イ 対比(審決注:被請求人主張の相違点の丸数字を括弧付き数字として「相違点(1)」等として示す。「第5」の「1(4)」及び「第6」の「4」においても同様。)
(ア)本件特許発明の要件Aの「車両の購入額、及び所定の期間経過後の販売額」は、当該車両の資産価値の演算に使用されるデータであり、本件特許発明と引例システムとは、「車種、経過年を含む履歴情報、価格を少なくともパラメータとして含む、t台(tは1以上の整数値)の車両の資産価値を演算する機能部」を有する点で一致する。(審判請求書24~25頁)
被請求人のいう相違点(1)(2)は存在しない。(請求人口頭審理陳述要領書(1)22~23頁)
(イ)本件特許発明と引例システムとは、「当該t台の車両の夫々を,所定の借主に対して貸借契約に基づいて貸し出す貸主の賃貸費を演算する機能部」を有する点で一致する。(審判請求書24~25頁)
被請求人のいう相違点(3)は存在しない。(請求人口頭審理陳述要領書(1)23頁)
(ウ)本件特許発明と引例システムとは、「前記賃貸費と前記担保資産価値とに基づいて,前記貸主の損益額を演算する機能部」を有する点で一致しており、
(相違点1)
本件特許発明では,t台の車両がファンド(トラックファンド)の商品であるのに対して,引例システムでは,t台の車両が融資の担保対象、すなわち抵当権の設定対象である点
で相違する。(審判請求書24~25頁)
請求項の記載に従えば「ファンドの商品」は「t台の車両の組み合わせからなる」ものであるから、t台の車両は、ファンドの商品の対象ではなく、ファンドの商品を構成する商品である。被請求人のいう相違点(5)(6)は存在しない。(請求人口頭審理陳述要領書(1)23~26頁)
(エ)本件特許発明と引例システムとは、「前記パラメータ及び前記t台の資産価値の組合せを変化させて,前記各機能部の処理を繰り返し実行させ,その実行結果に基づいて,前記貸主の損益額が所定の金額となるように,組み合わせる前記車両の内容を決定する機能部」を有する点で一致する。(審判請求書24~25頁)
シミュレーションが実行され、その実行結果として複数の商品の候補を作り出すことは、請求項に記載された事項でない。請求項の記載によれば、「t」は1でも良く(要件A)、「前記貸主の損益」と「前記投資家の損益」は、「前記購入額、前記販売額、前記賃貸費」に基づいて演算され(要件C)、実質的な変数は「前記購入額、前記販売額、前記賃貸費」だけであるが、これらの金額は市場相場に収束するものであって、仮にシミュレーションを繰り返しても結局は市場相場の範囲に落ち着くものであるから、被請求人の主張は誇張的主張である。(請求人口頭審理陳述要領書(1)20~21頁)
被請求人のいう相違点(7)(8)は存在しない。(請求人口頭審理陳述要領書(1)26~28頁)
ウ 相違点の判断
(ア)上記イのとおり、被請求人のいう相違点(1)~(3)、(5)~(8)は存在しない。
(イ)相違点1について、金融機関の代表例である銀行が信託法(大正十一年法律第六十五号)に基づくファンドを扱うことは本件特許発明の出願前から広く知られていることであり,また,銀行が借主である車両購入者を対象としたオートローンを投資対象となるファンドの商品として扱うことは,甲5(【0002】,【0027】,【0028】)に記載された周知事項でもある。そうすると,甲4の引例システムに触れた当業者が,周知事項に基づいて担保対象の車両を投資対象となるファンドの商品に置換することは容易というべきである。少なくとも置換の障害となる技術的要因は存在しない。(審判請求書25頁)
要件Cには「前記t台の車両の組合せからなるファンドの商品」と記載されており、オートローンは少なくとも1台の車両で構成され、甲5にはそのようなオートローンをファンドの商品とすることが記載されている。(請求人口頭審理陳述要領書(1)28頁)
甲4の引例システム,甲5に記載された技術及び本件特許発明は,車両(車輌)を資金調達及びリスク管理の対象物として扱う点で本件特許発明と産業上の利用分野が一致し,車両の資産価値を適切に評価するという課題は,いずれも重なり合う。したがって,引例システムに触れた当業者が甲5に例示される周知事項に基づいて本件特許発明の構成を想起する動機がある。(審判請求書25頁)
本件特許発明は,人が行うことをシステム化したにすぎないものであるから,一般的に進歩性欠如の典型例の一つと認識される「通常の創作能力の発揮」にあたる。(審判請求書25頁)
特許の対象は技術であり、ファンドの商品を車両で構成することは甲5に記載され、ファンドの収益源と支出減の演算及びシミュレーションを行う情報処理のシステムは、本件特許発明の出願前に提案されており、効果も当業者の予測を超えるものではないから、本件特許発明は、出願前公知の情報処理のシステムにおける非技術要素の設計変更に当たり、甲4を引用するまでもなく当業者の「通常の創作能力の発揮」にあたる。(請求人口頭審理陳述要領書(1)29頁)
3 証拠方法
甲1 特許第6554652号公報
甲2 特許・実用新案審査ハンドブック附属書B(抜粋)
甲3 知財高裁判決(平成17年(行ケ)第10170号)
甲4 特開2005-208703号公報
甲5 特開2004-30304号公報
第5 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
(1)無効理由1
ア(ア)本件明細書の段落【0030】~【0049】には、本件特許発明である情報処理装置は、サービス提供サーバ1における具体的な機能によって実現され、当該機能によって顕著な効果を奏することが記載されている(答弁書8~10頁)
本件特許発明の本質は、人では現実的な時間内に実行できない多様な組み合わせによる演算(人の精神活動では不可能な事象)に対して、人の精神活動を支援する、又はこれに置き換わる技術的手段を提供することにより、投資家に最適なファンド(投資家の所望する損益を計上するファンド)の商品を提供することにあり、本件明細書に記載した技術的課題、改題解決手段の構成、構成から導かれる効果等の技術的意義に照らして判断すれば、全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作であり、「発明」である。(答弁書12~13頁)
請求人の「動作主体が人と仮定した場合に無理なく読める発明」は「自然法則を利用した技術的思想の創作」でないとの主張は、「発明」に対する裁判所及び特許庁の考え方にも合致していない。(被請求人口頭審理陳述要領書(2)6~8頁)
本件特許発明は、人による精神活動からは導き出せない行為を担うものである。本件特許発明には、7つの変数として、「(車両の)パラメータ」、「(車両の台数)t台」、「購入額」、「販売額」、「賃貸費」、「貸主の損益」及び「投資家の損益」が存在し、これら7つの変数の組み合わせにおいて、それぞれの変数を変化させ、購入販売額演算部、賃貸費演算部、損益演算部による演算を現実的な時間内に繰り返し実行させるものであり、人が行う計算では現実的に不可能である。(答弁書10~11頁)
本件特許発明は、人による精神活動を支援する、又はこれに置き換わる技術的手段を提供するものである。人が行う計算(人の精神活動)では現実的な時間内に実行できないため、これを支援する、又は人の精神活動に置き換わる技術的手段を提供するものとして、シミュレーションを実行する情報処理装置がある(乙3、乙4、乙5)。本件特許発明の要件AないしCは、本件特許明細書のシミュレーション部201に相当する手段、即ち、シミュレーションコンピュータたる情報処理装置がシミュレーションを実行する手段(「シミュレーション実行手段」)であり、要件Dは、「貸主の損益額が、前記投資家の所望する金額となる」という目的に到達するように、7つの変数の組み合わせを変化させながら、シミュレーション実行手段によるシミュレーションを繰り返し実行させるものである。(答弁書11~12頁)
(イ)本件特許発明の技術的構成によって、要件Aにより、ファンドが将来に購入する可能性のある業務用貨物運搬用車両を含むことができ、要件Bにより、ファンドが将来に締結する可能性のある賃貸費を演算でき、要件Dにより、多数のシミュレーション結果に基づいてトラックファンドの商品内容を決定するため、複数の業務用貨物運搬用車両の最適な組合せに基づいたトラックファンドの商品を提供することができ、このような顕著な効果を奏する。(答弁書12頁)
(ウ)請求人は、貸主と借主との間に締結された賃貸契約を想定しているが、本件特許発明は、シミュレーションとして賃貸契約を締結する前に演算可能であること(実際の費用ではなく、シミュレーションの入力用変数として仮定された値が入力されて演算可能なこと)を看過している。(答弁書14頁)
(エ)本件明細書の段落【0047】記載の損益演算部は、購入販売額演算部の演算結果である「購入額」及び「販売額」並びに賃貸費演算部の演算結果である「賃貸費」を受け取り、「貸主の損益額」及び「投資家の損益額」の夫々を演算し、商品化最適化部に出力しなければならず、このような処理を現実的な時間内に繰り返し実行することは人では不可能である。なお、「貸主の損益額」は例えばファンドの損益額であり、【0047】において、車両の賃貸費及び車両の予測販売額(販売額に相当)を合算した合計額から、減価償却費及び諸費用(購入額を含む)を減産した額であることが記載されている。投資家によるファンドの購入額が定まらない限り導出されないというものではない。(答弁書14頁)
(オ)本件明細書の段落【0049】記載の商品最適化部は、シミュレーション部としての「購入販売額演算部」「賃貸費演算部」「損益演算部」の「実行結果」に基づいて「貸主の損益額」が「投資家の所望する金額」となるように「ファンドの商品の内容を決定する」のであるから、情報処理装置がシミュレーションの目標として「投資家の所望する金額」を記憶又は取得することは自明である。また、本件明細書の段落【0048】に多様な組み合わせごとに演算結果を「演算結果DB402」に記憶することが記載されており、演算結果DB402等に記憶された多様な組み合わせ毎の複数の「実行結果」に基づいて、目標として記憶又は取得された「投資家の所望する金額」となるように、商品内容を決定することが裏付けられている。(答弁書14~15頁)
イ 本件特許発明は、「機器等」の「制御」に該当する。
本件特許発明は、7つの変数の組み合わせにおいて、それぞれの変数を変化させて、購入販売額演算部、賃貸費演算部、損益演算部によるシミュレーションとしての演算を現実的な時間内に繰り返し実行させることにより、投資家に最適なファンド(投資家の所望する損益を計上できるファンド)の商品を提供するものであるから、「審査ハンドブック附属書B第1章コンピュータソフトウェア関連発明」の「(i-2) 機器等の使用目的に応じた動作を具現化させるように機器等を制御するもの」に該当する。(答弁書15頁)
コンピュータは「機器等」に該当する。(被請求人口頭審理陳述要領書(2)8頁)
ウ 本件特許発明は、「ソフトウェアとハードウェア資源」の「協働」に該当する。
本件特許発明は、7つの変数の組み合わせにおいて、それぞれの変数を変化させて、購入販売額演算部、賃貸費演算部、損益演算部によるシミュレーションとしての演算を現実的な時間内に繰り返し実行させるという発明であり、購入販売額演算部、賃貸費演算部、損益演算部及び商品最適化部という機能を有するコンピュータとソフトウェアとが協働することにより、投資家に最適なファンド(投資家の所望する損益を計上できるファンド)の商品を提供するという目的に応じた特有の演算又は加工を行っている。したがって、「審査ハンドブック附属書B第1章コンピュータソフトウェア関連発明」の「「ソフトウェアの観点に基づく考え方」に即して判断しても、本件特許発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作」といえる。(答弁書16頁)
(2)無効理由2
ア 要件Aの記載について、演算するために必要な数値の取得経路が特定されていなくても、本件特許発明の範囲は明確である。本件明細書の段落【0029】の記載から、車両における「経過年」とは、「新車として販売された時」から(購入販売額演算部が演算する時まで)の経過年数である。「所定の経過期間後の販売額」とは、売主Sから購入した時からの経過年数」であり、シミュレーションであるため、実際に購入した時ではなく、仮定として設定された時であることは自明である。(答弁書17~18頁)
イ 要件Bの記載について、「賃貸費演算部」の記載は、演算処理の内容に関わらず、賃貸借契約で賃貸する場合の賃貸費をシミュレーションとして演算するものであることが明確であり、当業者であればその技術的意味を当然に理解することができる。(答弁書18頁)
ウ 要件Cの記載について、「組合せ」の意味である「いくつかの互いに区別し得るものの集まりからとった一定の個数のものの、並んだ順序を無視した組。」(乙9)の「一定の個数」として「1つ」であることを排除しておらず、ファンドは、候補となる車両からファンドの対象となるt台の車両を選択するものであり、選択する車両が1台である場合も「組合せ」に該当する。「損益演算部」は、「貸主の損益額」と「投資家の損益額」という2つの損益額を演算するものであり、損益額の演算方法を特定するものではない。(答弁書18~19頁)
本件明細書の段落【0057】には、シミュレーション部201の損益演算部304による演算結果の具体例が記載されており、本件特許発明における要件Cに関する記載である。(被請求人上申書3頁)
エ 要件Dの商品最適化部は、「貸主の損益額」が「投資家の所望する金額」となるように、「ファンドの商品の内容を決定する」のであるから、情報処理装置がシミュレーションの目標として「投資家の所望する金額」を記憶又は取得し、各演算部の演算結果に基づく「貸主の損益額」と情報処理装置が有する「投資家の所望する金額」とを比較することは自明のことである。(答弁書19頁)
本件明細書の段落【0049】の記載に基づけば、ファンドの損益額が「貸主の損益額」に相当し(被請求人口頭審理陳述要領書(1)5頁)、段落【0057】【0063】の記載に基づけば、「投資家の所望する金額」とすべき「貸主の損益」には、ファンドの最終損益が含まれる。(被請求人口頭審陳述要領書(1)5~6頁、被請求人上申書3頁。:被請求人口頭審理陳述要領書(1)5頁の「なお、段落番号0057に記載された『最終損益(投資家の損益)』とは、ファンドの最終損益が投資家の所望する金額となることを意味する。」の記載は、口頭審理後の被請求人上申書3頁で削除されている。)
投資家がファンドに対して期待する最終損益の規模は、乙10、乙11に記載されるように、技術常識であり、シミュレーションの設定者が設定した設定値に基づいてシミュレーションを行うことは、乙12及び乙13に記載されるように、技術常識である(被請求人口頭審陳述要領書(1)7~10頁)。
投資家は、複数のファンドの商品内容を比較しながら、投資すべきファンドを決定し、新たなファンドの設立者は、投資家が自己のファンドに投資するように、他のファンド(設立者自身が過去に設立したファンドを含む)が投資家に提供する最終損益を参考として、本件特許発明の情報処理装置を利用し、ファンドの商品の内容を決定しなければならない。そうすると、新たなファンドの設立者は、他のファンドの最終損益を参考として、投資家が期待するであろう最終損益の規模を、ファンドの商品の内容を決定するためのシミュレーションの目標として、本件特許発明の情報処理装置に記憶又は取得させることは当業者にとって自明である。(被請求人口頭審陳述要領書(1)11頁)
「バイアウトファンド」(乙10)や「ヘッジファンド」(乙11)は、本件特許発明が対象とする車両から構成されるファンドではないが、ファンドを比較して魅力的なファンドに投資する投資家が重視するファンドの商品内容の1つは、ファンドの最終損益(期待リターン)であるため、バイアウトファンド及びヘッジファンド等の他のファンドと本件特許発明のファンドとは、投資を呼び込む上で競合する商品と位置付けられる。(被請求人上申書4頁)
本件特許発明における「ファンド」は、競合商品である他のファンドの最終損益(期待リターン)を考慮した上で、適切な最終損益(期待リターン)を「投資家の所望する金額」として設定し、設定された「投資家の所望する金額」と演算された「貸主の損益額」とを比較することにより、ファンドの商品の内容が決定される。具体的には、本件明細書の段落【0064】において、商品最適化部202は、パラメータ及びt台、購入額、販売額、賃貸費、貸主の損益、並びに投資家の損益の組合せを変化させた別の組合せにおいても、損益演算部304に「貸主の損益額」としてのトラックファンドの最終損益(図6では103.87パーセント)を演算させること、商品最適化部202は、組合せごとに演算された「貸主の損益額」と「投資家の所望する金額」(適切な最終損益(期待リターン)が設定されており、例えば104%である。)とを比較し、「貸主の損益額」が「投資家の所望する金額」となるような組合せ、すなわち「ファンドの商品の内容」を決定すること、が記載されている。(被請求人上申書4~5頁)
請求人は、他のファンドが投資家に提供する最終損益を参考として新たなファンドの商品の内容を決定する機能の作用等を表す情報処理装置の具体的な利用態様が要件Dの発明特定事項として不足すると主張するが、競合商品である他のファンドの最終損益(期待リターン)を考慮した適切な最終損益(期待リターン)が設定されていればよいのであって、「投資家の所望する金額」を算出する構成まで特定する必要はない。(被請求人上申書6頁)
(3)無効理由3
ア 要件Bについて、本件明細書の段落【0046】には、賃貸借契約に基づいて賃貸する場合の賃貸費を、所定のアルゴリズムによって演算することや賃貸車両を用いた役務提供によって得る対価の額に基づいて算出可能であると記載されている。そして、所定のアルゴリズムとして、例えば賃貸借契約に規定される条件に基づいて賃貸費を演算するアルゴリズムが適用できることは技術常識であり、あるいは、想定される借主が、投資家や株主に対して公開するIR情報等に記載された利益に基づいて適切な賃貸費を算出することができる。(答弁書20頁)
イ 要件Cについて、「損益演算部」は「前記賃貸費と、前記購入額と、前記販売額」のみに基づいて演算するものでなく、請求人主張は前提から誤り。本件明細書の段落【0047】の記載から、当業者であれば実施可能である。(答弁書20~21頁)
ウ 要件Dの商品最適化部は、「貸主の損益額」が「投資家の所望する金額」となるように、「ファンドの商品の内容を決定する」のであるから、情報処理装置がシミュレーションの目標として「投資家の所望する金額」を記憶又は取得し、各演算部の演算結果に基づく「貸主の損益額」と情報処理装置が有する「投資家の所望する金額」とを比較することは自明のことである。(答弁書19、21頁)
(4)無効理由4
ア 主引用発明の認定
請求人は甲4記載の発明を認定しておらず、被請求人において甲4から認定できる発明である「甲4発明」を本件特許発明と対比検討する。(答弁書23頁)
(甲4発明)
資産データベースと、融資関連データ格納部と、車種別マスタデータベースと、オークション取引データベースと、を備えた担保対象物の資産管理システムであって、(【0014】)
前記資産データベースは、少なくとも融資を受ける際の担保対象物となっている担保対象車輌の自動車検査証の記載内容および固有要因を示した担保対象車輌データと、担保対象車輌の資産価値を示した資産価値データと、を格納しており、(【0018】)
前記担保対象車輌データは、金融機関等から融資を受ける際に供された、抵当権が設定されている前記担保対象車輌に関する個別情報に関するデータの集合体であり、自動車検査証記載事項、固有要因事項および車種別マスタ検索結果から構成されており、(【0018】)
前記資産価値データは、前記担保対象車輌データに基づいて車輌資産価値算出処理を実行して得られた結果であり、前記車輌資産価値算出処理が実行されるごとに更新され、常に最新のデータが格納されており、(【0021】)
前記融資関連データ格納部は、少なくとも融資額に見合うように設定された担保資産価値の下限値などのデータが格納された記憶装置によって構成され、(【0025】)
前記オークション取引データベースは、取引履歴データとして、例えば、オークションの開催された会場、オークションの開催日、出品車輌の車種、グレード、シフト、排気量、走行距離、車検期限、車体色、型式、装備、年式、モデル等のデータ、および出品車輌の落札価格(最終落札価格)が格納されており、
前記車輛資産価値算出処理は、
前記資産データベースに格納されている前記担保対象車輌データのうち、該当車輌の車色、走行距離、事故に関する履歴(事故歴)、外装および内装の状態(コンディション、様子、条件)の程度などの情報(データ)を示す固有要因事項、およびメーカ名、車種、グレード、年式、モデル、駆動形式、装備、シフトの情報(データ)を示す前記車種別マスタ検索結果項目に関するデータを抽出し、(【0041】)
抽出した前記担保対象車輛データの前記車種別マスタ検索結果項目を検索語として、前記オークション取引データベースから前記担保対象車輛の条件と合致または近似する落札対象車輛に関する取引データを抽出し、(【0043】)
前記オークション取引データベースから前記担保対象車輛の条件と合致する落札対象車輛に関する取引データが存在する場合は、前記取引データから落札価格データを抽出し、
前記オークション取引データベースから前記担保対象車輛の条件と近似する落札対象車輛に関する取引データが存在する場合は、前記取引データから抽出された前記落札価格データに対して、前記担保対象車輌の条件と前記落札対象車輌の条件との間における走行距離の違いによる走行距離要因、年式の違いによる年式要因、車色の違いによる車色要因、外装および内装の評価点の違いによる評価点要因ごとに、所定のアルゴリズムに基づいて補正処理を実行し、(【0044】)
前記取引履歴データから抽出された落札価格データ、または前記補正処理が施された落札価格データに対して、現在時と前記落札対象車輛の落札時期との時間差に基づいて補正処理を行い、(【0047】)
前記落札対象車輛の落札時期に基づいて補正処理を行った落札価格データを、前記担保対象車輛の資産価値データとして前記資産データベースに格納する、算出処理であり、(【0048】)
前記担保対象物の資産管理システムが行う前記担保対象車輛の管理処理は、(【0049】)
前記資産データベースに格納されている全ての前記担保対象車輛に対する前記資産価値データの総和を算出し、(【0049】)
前記資産価値データの総和と、前記融資関連データ格納部に格納された、少なくとも融資額に見合うように設定された担保資産価値の下限値と、を比較し、
前記担保資産価値の下限値≦前記資産価値データの総和である場合、現状の前記担保対象車輌の有する資産価値が融資条件を満たしていると判断し、
前記担保資産価値の下限値≦資産価値データの総和でない場合、現状の前記担保対象車輌の有する資産価値が融資条件を満たしていないと判断し、
前記資産価値データの総和と、前記融資関連データ格納部に格納された、少なくとも融資額に見合うように設定された担保資産価値の下限値と、の比較結果を出力装置に出力する、管理処理である、(【0050】)
前記担保対象物の資産管理システム。
イ 対比
(ア)要件Aについて、以下の相違点(1)及び相違点(2)の点で相違する。(答弁書25~26頁)
(相違点(1))
本件特許発明は、t台(tは1以上の整数値)の車両の購入額を演算するが、甲4発明は、車輌の資産価値データを算出しているものの、車輌の「購入額」を演算するものではない。
(相違点(2))
本件特許発明は、所定の期間経過後の販売額を演算するが、甲4発明は、そのような販売額を演算していない。
(イ)要件Bについて、以下の相違点(3)で相違する。(答弁書26~27頁)
(相違点(3))
本件特許発明は、t台の車両の夫々を購入した者を貸主として、当該t台の車両の夫々を、所定の借主に対して賃貸借契約で賃貸する場合の賃貸費を演算する賃貸費演算部を備えているが、甲4発明はそのような構成を備えていない。
(ウ)要件Cについて、請求人主張の相違点1に対応する相違点(4)に加え、相違点(5)及び相違点(6)でも相違する。(答弁書27~30頁)
(相違点(4))
本件特許発明では、t台の車両がファンド(トラックファンド)の対象であるのに対して、引例システムでは、車輌がそれぞれ(融資の対象ではなく単に)融資の担保対象(抵当権の設定対象)である。
(相違点(5))
本件特許発明は、賃貸費と、購入額と、販売額とに基づいて、貸主の損益額と、t台の車輌の組合せからなるファンドの商品を購入する投資家の損益額と、の夫々を演算する損益演算部を備えている。
これに対して、甲4発明は、「賃貸費」、「購入額」及び「販売額」に相当する金額を演算していないのであるから、これらの基づいた「貸主の損益額」及び「投資家の損益額」も当然に演算しない。
(相違点(6))
本件特許発明は、貸主の損益額と、t台の車両の組合せからなるファンドの商品を購入する投資家の損益額と、の夫々を演算する損益演算部を備えている。
これに対して、甲4発明は、担保対象車輌の資産価値データを算出するにあたり、貸主である金融機関の損益額を考慮していない。また、甲4発明は、投資家としての金融機関の損益額である利息を算出していないし、仮に「融資条件を満たす金額」が投資家の損益額であったとしても、甲4発明は、少なくとも融資額に見合うように設定された担保資産価値の下限値と、担保対象車輌に対する資産価値データの総和とを比較するものであり、「融資条件を満たす金額」を算出していない。
(エ)要件Dについて、以下の相違点(7)及び相違点(8)で相違する(答弁書30~31頁)
(相違点(7))
本件特許発明は、パラメータ及びt台、購入額、販売額、賃貸費、貸主の損益、並びに投資家の損益の組合せを変化させて、購入販売額演算部、賃貸費演算部、及び損益演算部の各処理を繰り返し実行させる。
これに対して、甲4発明は、「購入額」、「販売額」、「賃貸費」、「貸主の損益」及び「投資家の損益」に相当する金額を演算していないのであるから、これらの組合せを変化させて、購入販売額演算部、賃貸費演算部、及び損益演算部の各処理を繰り返し実行させていない。
(相違点(8))
本件特許発明は、パラメータ及びt台、購入額、販売額、賃貸費、貸主の損益、並びに投資家の損益の組合せを変化させて、購入販売額演算部、賃貸費演算部、及び損益演算部の各処理を繰り返し実行させ、その実行結果に基づいて、貸主の損益額が、投資家の所望する金額となるように、ファンドの商品の内容を決定する商品最適化部を備えている。
これに対して、甲4発明は、1回の計算で求められる(その時点での)「資産価値データの総和」と担保資産価値の下限値とを比較している。
ウ 相違点の判断
(ア)相違点(1)~(3)、(5)~(8)に係る構成は、甲4及び甲5に開示されておらず、当業者にとって自明のことでもないし、設計事項ということもできない。(答弁書32頁)
(イ)相違点(4)(請求人主張の相違点1)について、甲5で開示されるファンドとは、その対象を「t台の車両」とするものではなく、「オートローン」を対象とするものにすぎず、本件特許発明の「ファンド」に該当しない。(答弁書32頁)
甲4発明の融資の対象は、車両ではなく、あくまでも車両を保有する「中古車販売会社等」である。(答弁書32頁)
仮にオートローンをファンドの商品と扱うことが周知であったとしても(被請求人は周知であると認めるものではない)、甲4発明の「担保対象車輌」を、オートローンファンドの商品である「オートローン」に置換した「資産管理システム」における車輌資産価値算出処理及び管理処理が機能するとは考えられない。たとえ甲5記載発明を甲4発明に組合せたとしても、本件特許発明の効果(段落【0013】)と同様の効果を生じるものではない。(答弁書32頁)
本件特許発明は、特許法29条1項柱書に違反せず、「人が行うことをシステム化したにすぎない」という主張は、受け入れられない。(答弁書33頁)
審査ハンドブック附属書Bの「当業者の通常の創作能力の発揮に当たる例」における「人間が行っている業務やビジネスを行う方法のシステム化」の記載は、「引用発明として、特定分野において人間が行っている業務やビジネスを行う方法について開示されるものの、その業務をどのようにシステム化するかが開示されていない場合」についての解説であり、本件特許発明と同じ演算を人間が行っていたとする文献も提示されていないのであるから、当業者の通常の創作能力の発揮に当たる」か否かを検討する必要もない。(答弁書33~34頁)
2 証拠方法
乙1 知財高裁判決(平成19年(行ケ)第10056号)
乙2 知財高裁判決(平成19年(行ケ)第10369号)
乙3 特許第7105227号公報
乙4 特許第4262560号公報
乙5 特許第5554674号公報
乙6 Weblio辞書
乙7 特許・実用新案審査ハンドブック附属書B(抜粋)
乙8 特許・実用新案審査基準 第II部第2章第3節(抜粋)
乙9 広辞苑第六版(抜粋)
乙10 「我が国経済の活性化を担うファンドの有効活用に向けた事業環境
整備に向けた基礎調査(報告書)」
乙11 「ヘッジファンドを巡る最近の動向」
乙12 「東日本大震災がサケ資源に及ぼす影響評価シミュレーション」
乙13 「資源計画のためのシミュレーションモデル:瀬戸内海東部海域の
サワラを例として」
乙14 「平成26年工業統計調査 商品分類表」(抜粋)
乙15 特開2022-55668号公報
乙16 「2023年版 日本の自動車工業」抜粋
乙17 「商用車競売、名古屋に中部初拠点 円安で輸出活性化」
乙18 特開2003-108776号公報
第6 当審の判断
1 無効理由1(発明該当性)について
(1)本件特許の明細書等の記載について
本件特許発明は、上記第3に記載のとおりであるところ、本件特許発明についての本件特許の明細書及び図面の記載は、概要、次のとおりである。
ア 従来技術、課題、効果、本件特許発明の「ファンドの商品」及び「ファンドの商品の内容」に関連する記載
(ア)従来技術、課題、効果に関する記載
「【背景技術】
【0002】
従来より、ファンドにおける投資活動を円滑に進め、投資家に対して安定的に高い配当を行うことを目的とした運用戦略立案システムは提案されている(・・)。」
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、投資家からは、・・・従来の技術と比較して、運用利回り、需給バランス、及び取引相場の安定性がより優れており、かつ、所望の損益を計上することができるファンドを投資対象としたいとする要求がある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、投資対象が、運用利回り、需給バランス、及び取引相場の安定性に優れ、かつ、投資家の所望する損益を計上することができるファンドの商品を投資家に提供することを目的とする。」
「【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、投資対象が、運用利回り、需給バランス、及び取引相場の安定性に優れ、かつ、投資家の所望する損益を計上することができるファンドの商品を提供することができる。」
(イ)「ファンドの商品」及び「ファンドの商品の内容」に関連する記載
「【0024】
即ち、本実施形態では、ファンドマネージャFMは、売主Sからt台(tは1以上の整数値)の業務用貨物運搬用車両を購入し、ファンドとの間で車両売買契約、車両賃貸借契約、及びアセット・マネジメント契約を締結する。
ここで、アセット・マネジメント契約とは、ファンドマネージャFMが、業務用貨物運搬用車両の管理を、業務用貨物運搬用車両の所有者であるファンドに代行して行うことを定めた契約をいう。
また、ファンドマネージャFMは、t台の業務用貨物運搬用車両をファンドから賃借し、当該t台の業務用貨物運搬用車両を借主Rに賃貸する。
したがって、ファンドマネージャFMは、ファンドとの車両売買契約及びアセット・マネジメント契約と、借主Rとの賃貸契約とに基づいて収益を得ることができる。
また、ファンドは、ファンドマネージャFMとの車両賃貸借契約と、所定年数経過後の当該t台の業務用貨物運搬用車両の売却とに基づいて収益を得ることができる。また、これを源泉として、投資家Iに安定的な配当を行うことができる。
なお、以下このような収益構造とするファンドを「トラックファンド」と呼ぶ。」
イ 要件E「情報処理装置」に関連する記載
(ア)「【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置を含む情報処理システムの構成の概要を示す図である。
【0017】
図1に示す情報処理システムは、ファンドマネージャFMが操作するサービス提供サーバ1と、投資家I-1乃至I-n(nは1以上の任意の整数値)の夫々が操作する投資家端末2-1乃至2-nの夫々と、売主S-1乃至S-m(mは1以上の任意の整数値)の夫々が操作する売主端末3-1乃至3-mの夫々と、借主R-1乃至R-p(pは1以上の任意の整数値)の夫々が操作する借主端末4-1乃至4-pの夫々とが、インターネット等の所定のネットワークNを介して相互に接続されることで構成される。」
「【0022】
サービス提供サーバ1は、投資家端末2、売主端末3、及び借主端末4の各動作を管理すべく、各種処理を実行する。」
「【0029】
このように、トラックファンドの商品は、投資家I、ファンドマネージャFM、及び借主Rのいずれに対してもメリットを享受させ得る魅力的なファンドである。
このため、トラックファンドの商品の内容は、投資家I、ファンドマネージャFM、トラックファンド、及び借主Rを含む4者の損益が最適化されることが望ましい。
即ち、このような最適化が行われるためには、ファンドマネージャFMは、t台の業務用貨物運搬用車両の夫々に関する下記(1)乃至(5)夫々の項目の組合せとして、最適な組合せを検討する必要がある。
(1)車種、新車として販売された時からの経過年数を含む履歴情報、及び車両価格を少なくともパラメータ(以下「パラメータ情報」と呼ぶ)として含む購入額
(2)売主Sからの購入後、所定の期間経過後の販売額(下取価格)
(3)減価償却費
(4)所定の借主Rに対し賃貸する場合の賃貸費
(5)投資家I、ファンドマネージャFM、トラックファンド、及び借主Rの損益
【0030】
本実施形態におけるサービス提供サーバ1は、上記(1)乃至(5)の各種各様な組み合わせについてシミュレーションを行う。これにより、複数の業務用貨物運搬用車両の最適な組合せに基づいたトラックファンドの商品を提供することが可能となる。
このような商品は、投資家Iの損益、ファンドマネージャFM、トラックファンド、及び借主Rの損益(賃貸費や財務上のメリットやデメリット)が総合的に考慮された最適な商品となる。」
(イ)要件E「情報処理装置」に関する記載
「【0041】
サービス提供サーバ1のCPU11(図2)においては、図3に示すように、シミュレーション部201と、商品最適化部202とが機能する。
記憶部18(図2)の一領域には、車両DB401と、演算結果DB402とが設けられている。
【0042】
シミュレーション部201は、購入販売額演算部301と、減価償却演算部302と、賃貸費演算部303と、損益演算部304とを備える。」
図3
[図:0001421107000001.jpg]
ウ 要件A「購入販売額演算部」に関する記載
「【0044】
購入販売額演算部301は、t台の業務用貨物運搬用車両の夫々について、購入額、及び所定の期間経過後の販売額(下取価格)を演算する。
トラックファンドが現在所有している業務用貨物運搬用車両については、当該業務用貨物運搬用車両を実際に購入した際に支払われた金額が購入金額として演算される。また、トラックファンドが今後購入可能な業務用貨物運搬用車両については、売主端末3から得られる情報に基づいて演算される予測購入額が購入金額となる。なお、投資家Iの投資額の具体的な金額は、このt台の業務用貨物運搬用車両の購入額に基づいて決定される。
所定の期間経過後の販売額(下取価格)は、上述のパラメータ及び業務用貨物運搬用車両の購入額に基づいて演算された予測販売額となる。
なお、購入販売額演算部301によって演算された業務用貨物運搬用車両の購入額等の具体例については、図5Aを参照して後述する。」
「【0054】
図5Aは、シミュレーション部201の購入販売額演算部301による演算結果として、演算結果DB402に記憶されている情報の具体例を示す図である。
図5Aに示す例では、8台の貨物運搬用車両の夫々についての車種名、型式、及び年式をパラメータとして、組入価格(購入額)、残価率、及び2年の償却期間経過後の売却価格(販売額)が演算されている。
具体的には、トラックファンドの商品を構成する8台の業務用貨物運搬用車両のうち1台目として、車種名が「大型バン(ウィング)」、型式が「FS64JZ-550」、年式が「(平成)19(年)」とする業務用貨物運搬用車両のパラメータに基づいて、組入価格が「2,500,000(円)」、残価率が「40.00%」、売却価格が「1,000,000(円)」という演算結果が示されている。
また、トラックファンドの商品を構成する8台の業務用貨物運搬用車両のうち2台目として、車種名が「2tバン」、型式が「XZU548-000」、年式が「(平成)21(年)」とする業務用貨物運搬用車両のパラメータに基づいて、組入価格が「1,000,000(円)」、残価率が「30.00%」、売却価格が「300,000(円)」という演算結果が示されている。
なお、購入販売額演算部301による演算結果として、演算結果DB402に記憶されている情報の他の具体例については、図5Aに示すとおりであり、組入価格の合計は「27,200,000(円)」、売却価格の合計は「15,500,000(円)」となっている。」
エ 要件B「賃貸費演算部」に関する記載
「【0046】
賃貸費演算部303は、トラックファンドからt台の業務用貨物運搬用車両の夫々を賃借したファンドマネージャFMを貸主として、t台の業務用貨物運搬用車両の夫々を、借主Rに賃貸借契約に基づいて賃貸する場合の賃貸費を演算する。この賃貸費は、変動要素であり、所定のアルゴリズムによって演算される。
また、借主Rが業務用貨物運搬用車両を用いて所定の役務の提供を行った場合に得られる対価の額に基づいて、当該業務用貨物運搬用車両の賃貸費を演算することもできる。
これにより、ファンドマネージャFMは、業務用貨物運搬用車両を賃貸すると共に、当該業務用貨物運搬用車両を用いた具体的な貨物の運搬業務自体を借主Rに提供(仲介)することができる。
なお、賃貸費演算部303によって演算された業務用貨物運搬用車両の賃貸費の具体例については、図5Cを参照して後述する。」
「【0056】
図5Cは、シミュレーション部201の賃貸費演算部303による演算結果として、演算結果DB402に記憶されている情報の具体例を示す図である。
図5Cに示す例では、8台の貨物運搬用車両の夫々についての借主(借主Rの名称)、月額リース料(グロス)、AM(アセット・マネジメント)報酬、年額支出(車検・整備)、月額賃貸収入(ネット)等、についての演算結果が示されている。
具体的には、トラックファンドの商品を構成する8台の業務用貨物運搬用車両のうち1台目として、借主Rの名称が「有限会社○○運送」、月額リース料(グロス)が「100,000(円)、AM報酬が「5,000(円)」、年額支出(車検・整備)が「477,700(円)」、月額支出(車検・整備)が「39,808(円)」、月額賃貸収入(ネット)が「50,192(円)」という演算結果が示されている。
また、トラックファンドの商品を構成する8台の業務用貨物運搬用車両のうち2台目として、借主Rの名称が「有限会社××運送」、月額リース料(グロス)が「50,000(円)、AM報酬が「2,500(円)」、年額支出(車検・整備)が「252,000(円)」、月額支出(車検・整備)が「21,000(円)」、月額賃貸収入(ネット)が「24,000(円)」という演算結果が示されている。
なお、賃貸費演算部303による演算結果として、演算結果DB402に記憶されている情報の他の具体例については、図5Cに示すとおりであるが、月額リース料(グロス)の合計は「671,000(円)」となっている。」
図5C
[図:0001421107000002.jpg]
オ 要件C「損益演算部」に関する記載
「【0047】
損益演算部304は、購入販売額演算部301による演算結果と、減価償却演算部302による演算結果と、賃貸費演算部303による演算結果とに基づいて、トラックファンドの損益額と、投資家Iの損益額と、借主Rの損益額との夫々を演算する。
ここで、トラックファンドの損益とは、主に、業務用貨物運搬用車両の賃貸収入及び販売額(下取価格)との合計額から業務用貨物運搬用車両についての減価償却費及び諸費用を減じた額である。
また、投資家Iの損益とは、主に、トラックファンドの配当額から自身の費用として計上することができる業務用貨物運搬用車両の減価償却費を減じた額である。
借主Rの損益とは、主に、業務用貨物運搬用車両を自費購入した場合要する費用と、賃貸した場合に要する費用との差額と、自社購入から賃貸に変更したことにより発生し得る自社の資産価値の向上等が含まれる。
なお、損益演算部304によって演算された各種損益額の具体例については、図6を参照して後述する。」
「【0057】
図6は、シミュレーション部201の損益演算部304による演算結果として、演算結果DB402に記憶されている情報の具体例を示す図である。
図6に示す例では、損益演算部304による演算結果として、投資条件と、キャッシュフローと、損益計算書(トラックファンドの損益額)が示されている。
投資条件しては、出資金額と、初年度損金と、2年目損金と、出資期間と、最終損益(投資家の損益)とが示されている。具体的には、最終損益(投資家の損益)が「103.87%」であることが示されている。即ち、図6に示す例では、投資家Iは、トラックファンドの商品を購入(即ち投資)することにより、最終的に投資額の3.83%の配当を得ることができることになる。なお、図5乃至図8の例における第1期(初年度)は、図5Bの「初年度決算までの月数」に示されているように、「8(ケ月間)」となっている。
【0058】
図6に示すキャッシュフローとしては、TK(匿名組合)出資額、融資、リース料(賃貸費)、仮受消費税額、消費税還付額、車両売却額(販売額)、車両購入額、費用、仮払消費税額、消費税納付額、融資返済額、TK(匿名組合)元本償還額、収支、CF(キャッシュフロー)累積額についての演算結果が示されている。なお、「TK(匿名組合)出資額」とは、投資家Iによる出資額のことをいう。また、「融資」とは、金融機関からのローンによる借入金のことをいう。即ち、業務用貨物運搬用車両の調達資金として、投資家Iからの出資金に限らず、金融機関からのローンによる借入金を利用することもできる。これにより、ファンドマネージャFMは、ファンドとローンとのバランスが考慮されたトラックファンドの商品を投資家Iに提供することができる。なお、ファンドとローンとのバランスが考慮された演算結果については、図7を参照して後述する。
【0059】
図6に示すように、第1期は、TK(匿名組合)出資額が「30,000,000(円)」、融資額が「0(円)」、リース料(賃貸費)が「5,368,000(円)」、仮受消費税額が「429,440(円)」、消費税還付額が「0(円)」、車両売却額(販売額)が「0(円)」、車両購入額が「27,200,000(円)」、費用が「4,528,000(円)」、仮払消費税額が「2,538,240(円)」、消費税納付額が「0(円)」、融資返済額が「0(円)」、TK(匿名組合)元本償還額が「0(円)」、収支が「1,531,200(円)」、CF(キャッシュフロー)累積額が「1,531,200(円)」という演算結果が示されている。
【0060】
ここで、図6に示すキャッシュフローのうち、第1期のリース料(賃貸費)「5,368,000(円)」は、図5Cに示す月額リース料(グロス)の合計「671,000(円)」の8か月分の額と一致する。また、図6に示すキャッシュフローのうち、第4期の車両売却額「15,500,000(円)」は、図5Aに示す売却価格の合計(即ち8台分の売却価格)と一致する。また、図6に示すキャッシュフローのうち、第1期の車両購入額「27,200,000(円)」は、図5Aに示す組入価格の合計(即ち8台分の組入価格)と一致する。
【0061】
図6に示す損益計算書(トラックファンドの損益額)としては、リース料(賃貸費)、及び車両売却額(販売額)を売上とし、諸費用、借入金利、及び減価償却費を費用として、利益額及び累積利益額が演算されている。
具体的には、第1期は、リース料(賃貸費)が「5,368,000(円)」、車両売却額が「0(円)」となっているため、売上合計額は「5,368,000(円)」となっている。また、諸費用が「4,528,000(円)」、借入金利が「0(円)」、減価償却費が「18,133,333(円)」となっているため、費用合計額は「22,661,333(円)」となっている。これにより、利益額が「-17,293,333(円)」、累積利益額が「-17,293,333(円)」という演算結果が示されている。
【0062】
ここで、図6に示す損益計算書のうち、第1期のリース料(賃貸費)「5,368,000(円)」は、図5Cに示す月額リース料(グロス)の合計「671,000(円)」の8か月分の額と一致する。また、図6に示す損益計算書のうち、第1期の減価償却費「18,133,333(円)」は、図5Bに示す1年目の償却額の合計(即ち1年目の8台分の償却額)と一致する。
なお、損益演算部304による演算結果として、演算結果DB402に記憶されている情報の他の具体例については、図6に示すとおりである。
【0063】
ここで、図6の損益計算書における各期の利益額の推移を見ると、上述のように第1期は、利益額が「-17,293,333(円)」である。また、第2期は、利益額が「-3,581,667(円)」であり、累積利益額が「-20,875,000(円)」である。しかし、第3期になると、利益額がプラスに転じ、「7,563,000(円)」となり、累積利益額が「-13,312,000(円)」となる。さらに、第4期になると、利益額のプラス幅が大きくなり、「14,425,000(円)」となり、累積利益額もプラスに転じ「1,113,000(円)」となる。
このように、トラックファンドの商品は、耐用年数の短いトラック等の業務用貨物運搬用車両を投資の対象としているため、全期間を通して見ると損益はプラスとなるが、第1期や第2期といった初期の会計年度において減価償却費を大きく計上することができる。このため、投資家Iのニーズに合わせて、投資対象とする複数の業務用貨物運搬用車両の組合せを決定することができる。」
図6
[図:0001421107000003.jpg]
カ 要件D「商品最適化部」に関する記載
「【0049】
商品最適化部202は、t台の業務用貨物運搬用車両の夫々に関する、パラメータと、購入額と、販売額と、減価償却費と、賃貸費と、トラックファンドの損益と、投資家Iの損益と、借主Rの損益との組合せを変化させながら、購入販売額演算部301、減価償却演算部302、賃貸費演算部303、及び損益演算部304における各処理を繰り返し実行させる。そして、商品最適化部202は、各処理の実行結果に基づいて、トラックファンドの損益額が、投資家Iの所望する金額となるようにトラックファンドの商品の内容を決定する。
即ち、商品最適化部202は、t台の業務用貨物運搬用車両の夫々に関する、パラメータと、購入額と、販売額と、減価償却費と、賃貸費と、トラックファンドの損益と、投資家Iの損益と、借主Rの損益との組合せを変化させながら、シミュレーション部201によるシミュレーションを繰り返し実行させる。
そして、商品最適化部202は、シミュレーション部201による多数のシミュレーション結果に基づいて、トラックファンドの商品内容を決定する。
このようにして、トラックファンドの商品の内容は、ファンドマネージャFM、投資家I、及び借主Rにとって最適なものとなる。
なお、商品最適化部202によって最適化されたトラックファンドの商品の具体例については、図7及び図8を参照して後述する。」
「【0064】
シミュレーション部201において演算された結果の組合せは、商品最適化部202によって最適化されることとなる。これにより、トラックファンドの損益額が投資家Iの所望する金額となるようなトラックファンドの商品が出来上がる。
具体的には、商品最適化部202は、上述のパラメータ、並びにトラックファンドの商品の対象となる業務用貨物運搬用車両についての台数、購入額、販売額、減価償却費、賃貸費、トラックファンドの損益、及び投資家Iの損益の組合せを変化させながら、購入販売額演算部301、減価償却演算部302、賃貸費演算部303、及び前記損益演算部304の各処理を繰り返し実行させる。そして、その実行結果に基づいて、トラックファンドの損益額が、投資家Iの所望する金額となるように、トラックファンドの商品の内容が決定される。
【0065】
図7は、このように商品最適化部202によって最適化がなされた結果の例を示す図である。
【0066】
図7Aには、商品最適化部202により最適化されたトラックファンドの商品に関する情報として、トラックファンドの対象となる業務用貨物運搬用車両の台数、車両購入費、車両売却額、初年度減価償却費、及び初年度賃貸費が示されている。具体的には、トラックファンドの対象となる業務用貨物運搬用車両の台数は「8(台)」が最適であり、その場合の車両購入費は「27,200,000(円)」、車両売却額は「15,500,000(円)」、初年度減価償却費は「18,133,333(円)」、初年度賃貸費は「5,368,000(円)」となることが示されている。
【0067】
ここで、図7Aに示す車両購入費「27,200,000(円)」は、図6に示すキャッシュフローのうち、第1期の車両購入額と一致する。また、図7Aに示す車両売却額「15,500,000(円)」は、図6に示すキャッシュフロー及び損益計算書のうち、第4期の車両売却額と一致する。また、図7Aに示す初年度減価償却費「18,133,333(円)」は、図6に示す損益計算書のうち、第1期の減価償却費と一致する。
【0068】
図7Bには、商品最適化部202によって最適化されたトラックファンドの商品として、ファンドとローン(金融機関からの借入金)との組合せが最適化された例が示されている。具体的には、投資家Iからの出資額に対するローンの割合(以下、単に「ローン割合」と呼ぶ)毎の、初年度損金額、金利負担額、元金返済額、投資家出資額、ローン金額、及び初年度損金率が示されている。例えば、ローン割合が「0.00%」である場合には、初年度損金額は「-17,293,333(円)」、金利負担は「0(円)」、元金返済額は「0(円)」、投資家出資額は「30,000,000(円)」、ローン金額は「0(円)」、投資家出資額に対する初年度損金額の割合である初年度損金率は「-57.64%」となることが示されている。
また、ローン割合が「10.00%」である場合には、投資家出資額は「30,000,000(円)」、ローン金額は「3,000,000(円)」となることが示されている。
【0069】
ここで、図7Bに示す初年度損金額「-17,293,333(円)」は、図6に示す損益計算書のうち、第1期の利益額と一致する。また、図7Bに示す投資家出資額「30,000,000(円)」は、図6に示すキャッシュフローのうち、第1期のTK(匿名組合)出資額と一致する。また、図7Aに示す初年度減価償却費「18,133,333(円)」は、図6に示す損益計算書のうち、第1期の減価償却費と一致する。
このように、シミュレーション部201において演算された結果の組合せが、商品最適化部202によって最適化されることにより、トラックファンドの損益額が投資家Iの所望する金額となるようなトラックファンドの商品が出来上がる。即ち、図5乃至図8に示す例では、業務用貨物運搬用車両の台数が「8台」、投資家Iの出資額が「30,000,000(円)」、初年度の損金額が「-17,293,333(円)」となるトラックファンドの商品が投資家Iに対し提案されることとなる。」
図7
[図:0001421107000004.jpg]
(2)(1)の記載によれば、次のとおりである。
ア 本件特許発明が解決しようとする課題について
上記(1)アによれば、本件特許発明は、「投資対象が、運用利回り、需給バランス、及び取引相場の安定性に優れ、かつ、投資家の所望する損益を計上することができるファンドの商品」を求める「投資家」に対してそのような「ファンドの商品」を提供することを課題とするものである。
また、そのような「ファンドの商品」である「トラック・ファンド」とは、「業務用貨物運搬用車両」を購入し所有するファンドであり、その収益構造は、「ファンドマネージャ」が、車両を売主から購入してファンドに売却し、当該車両を賃借して貸主への賃貸を行い、当該ファンドとの間で締結したアセット・マネジメント契約に基づく車両の管理を行うことにより、当該ファンドマネージャとの当該車両の賃貸借契約に基づく賃料や所定年数経過後の当該車両の売却益を源泉として、投資家Iに配当を行うというものである。
イ 要件E「情報処理装置」について
上記(1)イによれば、本件特許発明の「情報処理装置」は、本件明細書の「サービス提供サーバ1」に対応するものであり、「ファンドマネージャ」によって操作されるものである。
そして、この「サービス提供サーバ1」のCPUは、購入販売額演算部301、賃貸費演算部303及び損益演算部304を備えるシミュレーション部201や商品最適化部202として機能するものであり、購入販売額演算部301、賃貸費演算部303、損益演算部304及び商品最適化部202としてそれぞれ機能する際のCPUが、本件特許発明の要件Aの「購入販売額演算部」、要件Bの「賃貸費演算部」要件Cの「損益演算部」及び要件Dの「商品最適化部」に対応するものである。
ウ 要件A「購入販売額演算部」について
上記(1)ウによれば、シミュレーションにおける車両の「購入額」とは、ファンドへの「組入価格」(段落【0057】)であり、「購入販売額演算部」は、「ファンドが現在所有している車両」と「今後購入可能な車両」のそれぞれについて購入額(組入価格)を演算するものであって、「ファンドが現在所有する車両」については実際に支払われた金額を購入額とし、今後購入可能な車両については、所定の演算に基づいて予測された金額を購入額とする演算を行って「購入額」を演算するものである。
さらに、「購入販売額演算部」は、そのように演算されたそれぞれの車両の購入額を用いて、それぞれの車両の購入後所定の期間経過後の予測販売額を演算するものであり、その際、当該車両の車種、新車として販売された時からの経過年数を含む履歴情報、及び購入時の車両価格等のパラメータ(上記(1)イ(ア)、段落【0020】)を用いて、予測販売額を演算するものである。
エ 要件B「賃貸費演算部」について
要件Bの「前記t台の車両の夫々を購入した者を貸主」とする「賃貸借契約」における「前記t台の車両の夫々を購入した者」は、以下のとおり、ファンドマネージャではなくファンドのことであり、「賃貸費演算部」は、ファンドを貸主とする賃貸借契約を前提として賃貸費を演算するものであることが明らかである。
(ア)「前記t台の車両の夫々を購入した者」について、「ファンドマネージャFM」は「売主Sからt台(tは1以上の整数値)の業務用貨物運搬用車両を購入」する(上記(1)ア(イ)、段落【0024】)と記載されており、他にも、「トラックファンドにおいて、運送会社を営む借主Rは、ファンドマネージャFMから中古車を業務用貨物運搬用車両として賃貸する・・」、「即ち、借主Rは、・・ファンドマネージャFMとの間で締結された車両賃貸借契約の内容に基づいて、毎月賃貸費をファンドマネージャFMに支払うだけでよい。」(段落【0028】(摘記省略))との記載がある。
しかし、上記ウのとおり、演算に係る車両の「購入額」は、ファンドへの「組入価格」のことであり、シミュレーションの上での「購入」とはファンドへの組入のことである。また、段落【0024】には、上記の記載に続けて(ファンドマネージャが)「ファンドとの間で車両売買契約」を「締結」する旨、及び、ファンドマネージャが「業務用貨物運搬車両の所有者であるファンドに代行して」、アセットマネジメント契約に基づく車両の管理を行う旨が記載されており、これらの段落【0024】の記載を全体としてみれば、「前記t台の車両の夫々を購入した者」とは、ファンドマネージャではなく購入額(組入価格)をもって車両を購入して所有する「ファンド」であることが明らかである。段落【0028】の上記記載も、借主Rの契約の相手方として表示され賃貸費の支払い先となる者がファンドマネージャであることを示しているのであって、ファンドマネージャが購入した車両を所有したり、車両の所有者として借主Rと賃貸借契約を締結する趣旨を記載したものではない。
(イ)上記(1)エの段落【0056】と図6Cの記載によれば、賃貸費演算部303による演算結果は、車両の夫々について、借主(借主Rの名称)に対応して「月額リース料(グロス)」とこれから「月額コスト」を除いた金額である「月額賃貸収入(ネット)」が示されている。そして、「月額コスト」は、「AM(アセット・マネジメント)報酬」と「月額支出(車検・整備)」の合計となっている。
つまり、この演算結果は、ファンドと借主との間のリース契約としての賃貸借契約についての「月額リース料(グロス)」ないし「月額賃貸収入(ネット)」を演算し、さらに、ファンドマネージャに係る「AM(アセット・マネジメント)報酬」は、「月額コスト」の一部として演算されるものとなっている。このことから、賃貸費演算部303は、ファンドと借主との間のリース契約としての賃貸借契約についての「月額リース料(グロス)」ないし「月額賃貸収入(ネット)」を演算するものである。
(無効理由2及び無効理由3について2(2)及び3(3)で後述するように、演算結果のうち「AM(アセット・マネジメント)報酬」を含む「月額リース料(グロス)」を取り出せば、ファンドマネージャが借主との関係で賃貸借契約に基づく賃貸費であると観念できる金額が示されているということもできるが、段落【0056】と図6Cは、そもそもは、ファンドと借主との間のリース契約(賃貸借契約)を踏まえた演算結果を示している。)
(ウ)「ファンドマネージャFM」が「t台の業務用貨物運搬用車両をファンドから賃借」して「当該t台の業務用貨物運搬用車両を借主Rに賃貸」する旨の記載(上記(1)ア(イ)、段落【0024】)は、それぞれの車両をファンドマネージャが賃貸した上でそれぞれの借主に転貸することを示している。しかし、形式的には、ファンドからファンドマネージャーが賃貸した車両を借主に転貸する形となっていても、アセット・マネジメント契約に基づく「AM(アセット・マネジメント)報酬」や管理費用として借主から受領する賃貸料とファンドに支払う賃借料の差分が充当されており、実体としては、車両の所有者であるファンドを貸主とする賃貸借契約をファンドマネージャがアセット・マネジメント契約と関連するものとして仲介しているのであれば、その実体に即したシミュレーションを行うことは当然といえ、上記(イ)に示した段落【0056】と図6Cの記載は、そのようなシミュレーションがなされていることを示しているといえる。
(エ)以上を踏まえれば、要件Bの「賃貸借演算部」は、本件明細書の段落【0056】と図6Cの記載に対応しており、「前記t台の車両の夫々を購入した者」とはファンドマネージャではなくファンドのことであって、要件Bはシミュレーションとして、ファンドを貸主とする賃貸借契約を前提とした賃貸費を演算することが明らかである。
オ 要件C「損益演算部」について
要件Cの「前記貸主」は、上記エに示したとおり、「ファンド」のことである。そして、上記(1)オによれば、「ファンド」である「トラックファンド」の「損益額」は、「主に、業務用貨物運搬用車両の賃貸収入及び販売額(下取価格)との合計額から業務用貨物運搬用車両についての減価償却費及び諸費用を減じた額」となり(段落【0047】)、具体的には、段落【0057】に「図6に示す例」における「損益演算部304による演算結果」として示されたもののうち、「損益計算書(トラックファンドの損益額)」のことである。
また、要件Cの「前記t台の車両の組合せからなるファンドの商品を購入する投資家の損益額」については、「投資家Iの損益」が「主に、トラックファンドの配当額から自身の費用として計上することができる業務用貨物運搬用車両の減価償却費を減じた額」である旨の記載(段落【0047】)からみて、要するに、ファンドの商品を購入する投資家の投資条件となる配当等のことであり、具体的には、「図6に示す例」における「損益演算部304による演算結果」(段落【0057】)のうち、「投資条件」となる「最終損益(投資家の損益)」等のことであって、「最終損益」が「103.87%」である旨の図6の図示における、投資額に対する「3.83%」の配当等のことである。
このことから、要件Cの「損益演算部」は、要件Bの演算結果である「前記賃貸費」と要件Aの演算結果である「前記購入額」及び「前記販売額」を入力として、「前記貸主」つまりファンドの「損益額」(「損益計算書(トラックファンドの損益額)」)と、「前記t台の車両の組合せからなるファンドの商品を購入する投資家の損益額」(「配当」等の「投資条件」となる「最終損益(投資家の損益)」等)を演算するものである。
カ 要件D「商品最適化部」について
(ア)要件Dの「商品最適化部」について、本件特許の請求項1の記載において次のD1~D3が特定されている。
D1 要件Aの「購入販売演算部」、要件Bの「賃貸費演算部」及び要件Cの「損益演算部」の「各処理を繰り返し実行させ」、その際、「前記パラメータ及び前記t台、前記購入額、前記販売額、前記賃貸費、前記貸主の損益、並びに前記投資家の損益の組合せを変化させて」各処理を繰り返し実行させること、
D2 D1の繰り返し実行の「実行結果に基づいて」、「ファンドの商品の内容を決定する」こと、
D3 D2の「ファンドの商品の内容を決定する」にあたっては、「前記貸主の損益額」が「前記投資家の所望する金額となるように決定」されること
ここで、「前記投資家」とは、「ファンドの商品を購入する投資家」(要件C)のことである。
(イ)このうち、D1及びD2の記載は、本件明細書の段落【0049】の「商品最適化部202は、t台の業務用貨物運搬用車両の夫々に関する、パラメータと、購入額と、販売額と、減価償却費と、賃貸費と、トラックファンドの損益と、投資家Iの損益と、借主Rの損益との組合せを変化させながら、シミュレーション部201によるシミュレーションを繰り返し実行させる。そして、商品最適化部202は、シミュレーション部201による多数のシミュレーション結果に基づいて、トラックファンドの商品内容を決定する。」との記載に対応することが明らかである。
また、D3における「前記貸主の損益額」は、繰り返し実行される要件Cの「損益演算部」の演算を含むシミュレーションの結果として求まるものであり、D2及びD3で決定される「商品の内容」は、D1の「前記パラメータ及び前記t台、前記購入額、前記販売額、前記賃貸費、前記貸主の損益、並びに前記投資家の損益の組合せ」によって示される、「トラックファンド」に係る「t台の業務用貨物運搬用車両」及び「当該ファンドマネージャとの当該車両の賃貸借契約に基づく賃料や所定年数経過後の当該車両の売却益を源泉として、投資家Iに配当を行うという収益構造」(段落【0024】)を意味することが明らかである。
これらを踏まえれば、D3は、「前記投資家の所望する金額」を目標とするシミュレーション(段落【0049】)を繰り返して、その目標を達成する「前記貸主の損益額」を結果として得た時点における「トラックファンド」の「商品の内容」を示す「前記パラメータ及び前記t台、前記購入額、前記販売額、前記賃貸費、前記貸主の損益、並びに前記投資家の損益の組合せ」を「決定」する意味であることは、本件明細書の記載において明示されているといえる。
なお、D3は、シミュレーションの目標を「前記投資家の所望する金額」として設定する旨を示しており、それ自体で明確であるとはいえないものの、2(4)ウにおいて後述するように、技術常識を踏まえれば、トラックファンド以外のファンドにおける期待できるリターンを参考として、潜在的なトラックファンドの買い手となる投資家が所望する利益をシミュレーションの目標として設定していることを示していることが明らかである。
キ 「機器」の「制御」に該当するか否かの検討
発明の実施においてソフトウェアを利用する発明(特許・実用新案ハンドブック附属書B(以下「附属書B」という。)の「ソフトウェア関連発明」)のうち、コンピュータに対する制御等を行う発明が「機器等に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うもの」(附属書B第1章2.1.1.1(1)の(i)を参照。)であるとしてソフトウェアの観点に基づく検討を要せずに「発明」に該当するような発明はあり得る。
しかし、本件特許発明については、「ソフトウェア関連発明」に該当するものであるが、以下の(ア)(イ)に照らせば、ソフトウェアの観点に基づく検討を経ることなく「発明」に該当すると判断することはできない。
(ア)上記アに示したとおり、本件特許発明は、「投資対象が、運用利回り、需給バランス、及び取引相場の安定性に優れ、かつ、投資家の所望する損益を計上することができるファンドの商品を投資家に提供する」ことを目的とするものであって、本件特許発明の課題は、コンピュータに対する制御に向けられたものでない。
(イ)本件特許発明は、コンピュータにおける「各処理を繰り返し実行させ」ることを含むものであるが、この繰り返し実行も「ファンドの商品の内容を決定する」ために行われるものであり、コンピュータに対する制御に向けられたものでない。
この点について、被請求人は、コンピュータに対する制御等を行う発明が「機器等に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うもの」に該当する旨を主張しており、この主張は、ソフトウェアの観点からの検討を行うまでもなく本件特許発明が「発明」に該当する旨を主張するものであるが、上記(ア)(イ)に照らして、この主張を採用することはできない。
ク ソフトウェアの観点からの検討
上記キを踏まえて、ソフトウェアの観点(附属書B第1章2.1.1.2を参照。)からの検討を行う。
(ア)上記アによれば、本件特許発明は、投資家に対して、「投資対象が、運用利回り、需給バランス、及び取引相場の安定性に優れ、かつ、投資家の所望する損益を計上することができるファンドの商品」を提供するという課題を解決するためのものであり、そのために、上記イによれば、ファンドマネージャによって操作されるツールとなる情報処理装置を提供しようとするものであるといえる。
さらに、本件特許発明の情報処理装置は、上記ウ~カで検討した要件A~要件Dの機能手段を備えたものであり、このうち、要件A~要件Cの各機能手段における演算処理により求められる演算結果は、上記ウ~オに示したとおりである。
(イ)このうち、要件Bについては、演算の入力が明確でないものの、要件Aについては、「車種、経過年を含む履歴情報、価格を少なくともパラメータとして含む、t 台( t は1以上の整数値) の車両」について入力し、要件Cについては、要件A及び要件Bの演算結果を入力し、要件Dについては、要件A、要件B及び要件Cの演算結果を入力するものとなっている。
(ウ)さらに、これらの要件A~要件Cの示すシミュレーションの演算処理が要件Dにおいて「繰り返し実行」されて「最適化」されて、シミュレーションの繰り返し実行に基づく実行結果として、「貸主の損益」(「損益計算書(トラックファンドの損益額)」)と「前記t台の車両の組合せからなるファンドの商品を購入する投資家の損益額」(「配当」等の「投資条件」となる「最終損益(投資家の損益)」等)を決定するものとなっている。最適化のための「繰り返し実行」の際、「前記パラメータ及び前記t台、前記購入額、前記販売額、前記賃貸費、前記貸主の損益、並びに前記投資家の損益の組合せ」(要件D)をどのように変化させるかは明示されていないものの、「最適化」に向けた周知の適宜の方法でこれを変化させればよいことは明らかである。
そして、「最適化」の結果として、「貸主の損益」と「投資家の損益」が得られ、その際、併せて、「貸主の損益」と「投資家の損益」を含む「前記パラメータ及び前記t台、前記購入額、前記販売額、前記賃貸費、前記貸主の損益、並びに前記投資家の損益の組合せ」(要件D)も得られることになる。
(エ)このように、(ア)のファンドマネージャは、「最適化」のための(ウ)のシミュレーションの目標として、「前記投資家の所望する金額」(要件D)を設定し、そのことによって、上記(ウ)の「最適化」の結果として、「最適化」の結果として得られた「貸主の損益」と「投資家の損益」を含む「前記パラメータ及び前記t台、前記購入額、前記販売額、前記賃貸費、前記貸主の損益、並びに前記投資家の損益の組合せ」を得ることができる。この「組合せ」は、上記アの収益構造を前提とした「ファンドの商品の内容」を規定するものといえる。
(オ)以上を踏まえれば、本件特許発明は、シミュレーションの目標が「前記投資家の所望する金額」(要件D)として設定されるものであって、この設定を行うのがファンドマネージャ(人)であるとしても、そのように「前記投資家の所望する金額」を設定するファンドマネージャによって操作されて、具体的に提供されるファンドの商品やそのような商品の候補に係る「最適化」された「ファンドの商品の内容」を決定するためのツールとなる情報処理装置であり、そのための具体的なソフトウェアによる情報処理として、要件A~要件Cの演算の処理やDの繰り返しによる「最適化」のための処理を行うものとして実現されているものであり、このような意味において、「ファンドの商品の内容」を決定するためのソフトウェアによる情報処理がCPUやメモリ等のハードウェア資源を用いて具体的に実現されている。
そして、本件特許発明は、(ア)の課題を解決するために、ファンドマネージャによって操作されるツールとなる情報処理装置を上記のとおり具体的に実現するものとなっており、このことから、その課題解決に当たって、専ら、人の精神活動、意思決定、抽象的な概念や人為的な取決めそれ自体に向けられたものでないことは、明らかである。
してみると、本件特許発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作であって「発明」に該当する。
ケ まとめ
以上のとおり、本件特許発明は、ソフトウェア関連発明であり、「機器等に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うもの」としてソフトウェアの観点に基づく検討を要せずに「発明」に該当するものであるとはいえないものの、ソフトウェアの観点に基づく検討を踏まえれば、自然法則を利用した技術的思想の創作であって「発明」に該当する。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、本件特許発明は、全体としてみればビジネスを行う方法のような人為的な取り決めそのものであり、また、日本の会計上の法則(人が定めたルール)を利用して、車両で構成されるファンドに投資する投資家が所望する金額となるようにファンドの商品の内容を決定する、という「人為的な取り決め」そのものであり、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しないと主張している。(「第4」の「2(1)ア(ア)」)
しかしながら、上記(2)のとおり、本件特許発明の要件D(D3)で、シミュレーションの目標は「前記投資家の所望する金額」として設定され、この設定を行うのが情報処理装置を操作するファンドマネージャであるとしても、本件特許発明は、そのように「前記投資家の所望する金額」を設定するファンドマネージャに対してファンドマネージャにおいて具体的に提供されるファンドの商品やそのような商品の候補に係る「ファンドの商品の内容」を決定するためツールを提供するために、要件A~要件Cに示された演算や要件Dに示された繰り返しの処理を行うものとして、ソフトウェアによる情報処理が、CPUやメモリ等のハードウェア資源を用いて具体的に実現されているものである。
また、ファンドマネージャがシミュレーションの目標として「前記投資家の所望する金額」の設定の際、日本の会計上の法則(人が定めたルール)を利用するとしても、要件A~要件Dに示された演算や繰り返しの処理を行うものとして、ソフトウェアによる情報処理が、CPUやメモリ等のハードウェア資源を用いて具体的に実現されていることに変わりはない。
このことから、本件特許発明は、人為的な取り決めそのものではなく、自然法則を利用した技術的思想の創作に該当するものである。
イ 請求人は、本件特許発明は、動作主体が人(各演算部担当者、商品最適化担当者、ファンド運営会社)と仮定してみた場合に無理なく読めるように記載された請求項に係る発明であって、「自然法則を利用した技術的思想の創作」といえる要素は皆無であると主張している(「第4」の「2(1)ア(ア)」)が、上記(2)のとおり、ソフトウェアによる情報処理がCPUやメモリ等のハードウェア資源を用いて具体的に実現されており、このことに照らせば、ソフトウェアによる情報処理の一部となる個々の演算を人が行うことができることは、「発明」に該当しないことの根拠にならない。
さらには、ファンドマネージャが本件特許発明を用いずに紙とペンで要件Dの「最適化」を伴う繰り返しを行うこと(「第4」の「2(1)ア(ア)」)は現実的ではないことが明らかであり、その観点からみても、本件特許発明は、ソフトウェアによる情報処理が、CPUやメモリ等のハードウェア資源を用いて具体的に実現されており、自然法則を利用したものでないとはいえない。
ウ 請求人は、人が行う計算では現実的に不可能であることを可能にすることは、本件特許発明の効果ではなくコンピュータの性能による効果である、被請求人主張の「本件特許発明による顕著な効果」(要件Aにより、ファンドが将来に購入する可能性のある業務用貨物運搬用車両を含むことができ、要件Bにより、ファンドが将来に締結する可能性のある賃貸費を演算でき、要件Dにより、多数のシミュレーション結果に基づいてトラックファンドの商品内容を決定するため、複数の業務用貨物運搬用車両の最適な組合せに基づいたトラックファンドの商品を提供することができる等)は、人の精神活動の一態様にすぎない、ファンドの損益に関わる多数の演算及びシミュレーションを実行する情報処理システムは、本件特許出願前に提案されており(甲1【0002】)、投資家の所望する金額(損益)となるファンドの商品とすることはファンド運営上当然であり、本件特許発明の技術的意義は、不動産や航空機のファンドに変えて投資家にとって税制面におけるメリットが大きい車両の組み合わせからなるファンドの商品とすること(【0018】、【0025】)に尽きる、等として、本件特許発明の効果が専ら人為的な取り決めに向けられたものであると主張している(「第4」の「2(1)ア(イ)」)。
しかしながら、本件特許発明は、人為的な取り決めそのものではなく、自然法則を利用した技術的思想の創作に該当することは、上記(2)及び上記アのとおりである。また、人が行う計算では現実的に不可能であることを可能にすることは、必ずしもコンピュータの性能による効果であるとはいいきれず、ソフトウェアの観点からの検討によって発明該当性が肯定され得ることは否定できない。本件特許発明についても、上記クのとおり、そのような検討により発明該当性が肯定されるものである。また、本件特許発明は、ファンドマネージャに上記のとおりのツールを提供するものであり、その技術的意義が投資家にとって税制面におけるメリットが大きい車両の組み合わせからなるファンドの商品の提供に尽きるともいえない。
エ 請求人は、要件Bの「賃貸借契約で賃貸する場合の賃貸費」は、契約当事者(貸主と借主)の合議により定められる金額つまり人が決める金額であって、情報処理により一意に演算できる性質のものではないと主張する(「第4」の「2(1)ア(ウ)」)が、要件Bについて記載した本件明細書の段落【0046】には「この賃貸費は、変動要素であり、所定のアルゴリズムによって演算される」と記載され、つまり、所定のアルゴリズムによる演算により定まるものとされており、人が決める金額ではない。この点で、請求人は、本件特許発明を正しく捉えていない。
オ 請求人は、要件Cの「商品を購入する投資家の損益額」は、投資家による「ファンド」の購入額が定まらない限り導出されないものであって、情報処理によって一意に演算される性質のものではないと主張している(「第4」の「2(1)ア(エ)」)が、要件Cの「投資家の損益額」は、投資家の購入額に対する配当の割合として示された損益額を含むことは明らかであり、図6の例も「投資条件」として示された「103.83%」は、トラックファンドの商品を購入した投資家が最終的に「投資額の3.83%の配当」を得ることを示しているものである。
よって、「損益演算部」は、「ファンドの商品を購入する投資家」の購入額が定まらなくても導出可能なものであり、請求人は、本件特許発明を正しく捉えていない。
カ 請求人は、要件Dの「投資家の所望する金額」を認識するのは人であり、数値の組み合わせを変化させる必要性を認識するのも人であり、変化した数値の組み合わせを評価して演算を繰り返す必要の有無を判断するのも人であり、「ファンドの商品の内容を決定する」のも人が行うことである、要件Dの「・・組み合わせを変化させて・・・(中略)の各処理を繰り返し実行させ、その実行結果に基づいて・・・決定する」の文言からは、「決定する」ときに各演算部による処理は既に実行されているのであるから、各演算部に対して演算の繰り返し実行の停止及び再開の必要性の判断やそれに伴う各演算部への指示が必要となるはずであり、また「前記投資家の所望する金額」は、「投資家の損益額」から一意に判明する金額とはいえないから、そのような「金額となるように、前記ファンドの商品の内容を決定する」ためには、何らかの技術的手段が不可欠になるはずであるが、本件明細書には、これらに関する記載が一切見当たらず、本件明細書の記載から導出されるのは、要件Dに対応する「貸主の損益額が、前記投資家の所望する金額となるように、前記ファンドの商品の内容を決定する」主体は、ファンドマネージャFM(人)ということであり、要件Dもまた「人が行うこと」であり「コンピュータの情報処理の内容」といえない、等と主張している(「第4」の「2(1)ア(オ)」)。
上記(2)クに示したとおり、シミュレーションの目標として「前記投資家の所望する金額」の設定を行うのが情報処理装置を操作するファンドマネージャであって人であるとしても、要件Dで、繰り返し実行の「実行結果に基づいて」、「ファンドの商品の内容を決定」し(D2)、「ファンドの商品の内容を決定する」にあたっては、「前記貸主の損益額」が「前記投資家の所望する金額となるように決定」される(D3)ことから、ファンドマネージャがシミュレーションの目標として「前記投資家の所望する金額」を設定した後において、数値の組み合わせを変化させるか否かは、「前記貸主の損益額」が目標として設定された「前記投資家の所望する金額」となるように「決定」されるまで、繰り返し実行がなされることになる。よって、繰り返し実行の主体は、「商品最適化部」(要件D)を備える「情報処理装置」であって、人ではない。
そして、上記(2)に示したとおり、本件特許発明は、「前記投資家の所望する金額」を設定するファンドマネージャに対してファンドマネージャにおいて具体的に提供されるファンドの商品やそのような商品の候補に係る「ファンドの商品の内容」を決定するためツールを提供するために、要件A~要件Dに示された演算や繰り返しの処理を行うものとして、ソフトウェアによる情報処理が、CPUやメモリ等のハードウェア資源を用いて具体的に実現されているものに該当する。
この点について、請求人は本件特許発明を正しく捉えていない。
(4)小括
してみると、本件特許は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反してされたものでなく、無効理由1は、理由がない。
2 無効理由2(明確性要件)について
(1)要件Aについて
ア 要件Aの記載は、「購入販売額演算部」が「t 台( t は1以上の整数値) の車両の購入額」と「所定の期間経過後の販売額」を演算する旨、それぞれの車両は「車種、経過年を含む履歴情報、価格を少なくともパラメータとして含む」ものである旨が明確である。
そして、車両の履歴情報としての「経過年」は、車両の履歴情報としての「経過年」である以上、「新車として販売された時」から起算される経過年であることは明らかでありこのことは、明細書の段落【0024】の「新車として販売された時からの経過年数」との記載とも整合している。
また、「所定の期間経過後の販売額」については、車両が中古車であり得ることに加え、同段落に「売主Sからの購入後、所定の期間経過後の販売額(下取価格)」とあることから、売主Sからの車両の購入から当該演算部における演算の基準時までの「所定の期間経過後」の「販売額」を示すことは明らかである。
イ 請求人は、演算のための数値(金額)の所在(取得経路)が不明であると主張するが、本件特許の請求項1の記載からみて、演算のための数値(金額)の所在(取得経路)は発明特定事項とされていないことが明らかであり、請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものでない。
(2)要件Bについて
ア 要件Bの「貸主」及び要件Cの「前記貸主」は、いずれも、要件Bに「前記t台の車両の夫々を購入した者」である旨が明示されている。そして、上記1(2)エ(ア)に示したとおり、「前記t台の車両の夫々を購入した者」とは、ファンドマネージャではなく「ファンド」であることが明らかであり、上記1(2)エ(イ)及び(エ)に示したとおり、要件Bの「賃貸借演算部」は、本件明細書の段落【0056】と図6Cの記載に対応しており、「前記t台の車両の夫々を購入した者」とはファンドマネージャではなく「ファンド」のことであって、要件Bはファンドを貸主とする賃貸借契約を前提とした賃貸費を演算するものであることが明らかである。
イ(ア)請求人は、「前記t台の車両の夫々を購入した者を貸主として、当該t台の車両の夫々を、所定の借主に対して賃貸借契約で賃貸する場合の賃貸費を演算する」の記載における「場合」の判断をどのような演算により行うかが不明であると主張するが、本件特許の請求項1の記載からみて、要件Bは、「車両」の夫々について、車両を購入し所有する者であるファンドを貸主とした所定の借主に対する賃貸借契約の賃貸費を演算する旨を記載したものであって、「場合」の判断に係る演算を行う旨を記載しているのではない。請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものでない。
(イ)請求人は、「貸主=ファンド」とすると、要件Bの記載と本件明細書の段落【0046】【0024】【0028】の記載から、要件Bの「賃貸費」がファンドとの「車両賃貸借契約」のもとでFMがファンドに支払う賃貸費か、借主R(運送会社)が「賃貸契約」によりFMに支払う賃貸費なのか、借主Rが直接ファンドに支払う賃貸費なのかが曖昧であると主張する。
この点、本件明細書の段落【0024】【0028】の記載については、1(2)エ(ア)に示したとおりであり、ファンドマネージャが購入した車両の所有者として借主Rと賃貸借契約を締結する趣旨を記載したものではない。また、本件明細書の段落【0046】(上記(1)エ)には、「賃貸費演算部303」が「トラックファンドからt台の業務用貨物運搬用車両の夫々を賃借したファンドマネージャFM」を「貸主」とした「賃貸借契約」に基づいて賃貸する場合の賃貸費を演算する旨の記載があり、一見すると、上記アの認定と相容れないように見えるものの、情報処理装置(サービス提供サーバ1)を操作するファンドマネージャにおいては、演算結果のうち、「AM(アセット・マネジメント)報酬」を含む「月額リース料(グロス)」は、自身の借主に対する賃貸借契約に基づく賃貸費であると観念でき、このことに照らせば、上記アの認定と相容れないとまではいえない。
そして、上記アのとおり、「貸主」はファンドであり、「賃貸費」として演算されるものは、ファンドを貸主とした所定の借主に対する賃貸借契約の賃貸費であることが明らかである。
(3)要件Cについて
ア 要件Cの記載における「前記賃貸費」は、要件Bの「賃貸費演算部」で演算される「賃貸費」のことであり、同様に、「前記購入額」及び「前記販売額」は、要件Aの「購入販売額演算部」で演算される「t台(tは1以上の整数値)の車両の購入額」及び「所定の期間経過後の販売額」のことである。
そして、要件Cの記載は、これらに基づいて、上記(2)に示した「前記貸主」に係る「前記貸主の損益額」と「前記t台の車両の組合せからなるファンドの商品を購入する投資家の損益額」の「夫々」を演算する旨を示していることが明らかである。
これらにつき、対応する本件明細書の記載については、上記1(2)オに示したとおりである。
イ 請求人は、「t」台の車両に「1」台が含まれ、tが1の場合に「車両の組み合わせ」は生じないから記載が不適切であると主張しているが、いわゆる「組合せ」がなされる「一定の個数」は1を排除しない(乙9)から、記載が不適切であるとはいえない。
また、請求人は、「賃貸費」が契約で決められるべきものであることを前提とした主張をしているが、本件特許の請求項1の記載からみて、「賃貸費」は「賃貸費演算部」の演算結果として求められるものである。請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものでない。
(4)要件Dについて
ア (上記1(2)カで既に述べたとおり)要件Dの記載は、
D1 要件Aの「購入販売演算部」、要件Bの「賃貸費演算部」及び要件Cの「損益演算部」の「各処理を繰り返し実行させ」、その際、「前記パラメータ及び前記t台、前記購入額、前記販売額、前記賃貸費、前記貸主の損益、並びに前記投資家の損益の組合せを変化させて」各処理を繰り返し実行させること、
D2 D1の繰り返し実行の「実行結果に基づいて」、「ファンドの商品の内容を決定する」こと、
D3 D2の「ファンドの商品の内容を決定する」にあたっては、「前記貸主の損益額」が「前記投資家の所望する金額となるように決定」されること
を示しており、また、D3が「前記投資家の所望する金額」を目標とするシミュレーション(段落【0049】)を繰り返して、その目標を達成する「前記貸主の損益額」を結果として得た時点における「トラックファンド」の「商品の内容」を示す「前記パラメータ及び前記t台、前記購入額、前記販売額、前記賃貸費、前記貸主の損益、並びに前記投資家の損益の組合せ」を「決定」する意味であることは、本件明細書の記載に示されており、これを参酌すれば明らかであるといえる。
イ 他方、シミュレーションの目標となるD3の「前記投資家の所望する金額」の意味は、本件明細書において明示されていないが、以下のとおり、この点は、技術常識を踏まえれば、当業者において明示されるまでもない事項であるといえる。
すなわち、本件特許発明は、「投資家の所望する損益を計上することができる」ような「ファンドの商品」を投資家に「提供」することを目的としており(本件明細書の段落【0005】)、つまり、本件特許発明は、投資家が既に投資したファンドを投資家が所望するように変更するものではなく、複数のファンドの商品のそれぞれについて期待できるリターン(ファンドを購入した投資家に提供するであろう最終損益)等を比較しつつファンドの商品を購入しようとする投資家に対して「ファンドの商品」を「提供」するものであり、そのために、「ファンドの商品」を「投資家の所望する損益を計上することができる」ものとするにあたって、シミュレーションの目標として「前記投資家の所望する金額(ファンドの商品を購入する投資家の所望する損益)」を設定するものである。
そして、期待できるリターン(ファンドを購入した投資家に提供するであろう最終損益)を検討してファンドの商品を購入しようとする投資家にとって、本件特許発明の「ファンドの商品」であるトラックファンドは、バイアウトファンド(乙10)やヘッジファンド(乙11)などの他のファンドと競合する商品と位置づけられることが明らかであり、このことに照らせば、トラックファンドを提供しようとするファンドマネージャは、これらの他のファンドにおける期待できるリターンを参考として、トラックファンドの潜在的な買い手となる投資家(「ファンドの商品を購入する投資家」)の所望する損益をシミュレーションの目標として設定せざるを得ないことになる。
このことを踏まえて、本件明細書の記載をみると、上記(3)アに示したとおり、段落【0057】において、図6に示す損益演算部の演算結果の例について、演算結果における「最終損益(投資家の損益)」が「103.87%」であって、図6の例が、トラックファンドの商品を購入した投資家Iが最終的に投資額の3.83%の配当を得ることができるとの演算結果を示すものである旨が記載されているところ、さらに、段落【0066】に、図7Aに「商品最適化部202により最適化されたトラックファンドの商品に関する情報」が示されており、段落【0067】に図7Aの「車両購入費」、「車両売却額」、「初年度減価償却費」がそれぞれ図6の「キャッシュフローのうち、第1期の車両購入額」、「キャッシュフロー及び損益計算書のうち、第4期の車両売却額」及び「損益計算書のうち、第1期の減価償却費」と一致する旨の記載がある。
これらの記載によれば、図6の例は、「商品最適化部202」により最適化されたトラックファンドの商品に対応するものであり、つまり、設定された目標に向けてシミュレーションを繰り返して、その目標を達成するような「前記貸主の損益額」を演算結果として得た時点における損益演算部の演算結果を示すものとなっている。このことから、図6と図7Aに示された例において、「最終損益(投資家の損益)」が「103.87%」であることによって達成される目標(例えば103.8%を下限とする等)がシミュレーションの目標として設定されていることは明らかである。そして、トラックファンドを投資家に提供しようとするファンドマネージャは、投資家において検討可能な他のファンドにおける期待できるリターンを参考として、トラックファンドの潜在的な買い手となる投資家の所望する損益をシミュレーションの目標として設定せざるを得ない。よって、図6と図7Aに示された例において明示されていないものの、トラックファンドの潜在的な買い手となる投資家の所望する損益が設定されていることは明らかであり、要件Dの記載においては、この損益を「ファンドの商品を購入する投資家の所望する損益」と表現し、これがシミュレーションの目標として設定されていることを示しているものである。
以上を踏まえれば、要件Dのうち、上記D3は、本件明細書において明示されていないものの、技術常識を踏まえれば、トラックファンド以外のファンドにおける期待できるリターンを参考として、潜在的なトラックファンドの買い手となる投資家が所望する利益をシミュレーションの目標として設定していることを示していることが明らかであり、明確性要件を満たしているといえる。
ウ 請求人は、乙第10号証から乙第13号証は、車両の組合せからなるファンド商品に関するものでなく、技術常識の根拠になり得ないと主張するが、上記イに示したとおり、本件特許発明が「投資家の所望する損益を計上することができる」ような「ファンドの商品」を投資家に「提供」することを目的としていることを踏まえれば、車両の組合せからなるファンド商品以外のものも投資家の所望する損益の水準の決定のための技術常識となり得ることが明らかである。
また、請求人は、要件Dには、投資家が自己のファンドに投資するように、他のファンドが投資家に提供する最終損益を参考としてファンドの商品内容を決定しなければならない点について、発明特定事項として不足しており、そのような発明特定事項として不足している状態で「金額」まで特定できない旨を主張している。
しかし、上記イに示したとおり、この点は、本件特許発明の課題と技術常識を踏まえれば「前記投資家の所望する金額」の記載それ自体が明らかなものであるといえ、発明特定事項が不足しているものではない。
(5)小括
してみると、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでなく、無効理由2は、理由がない。
3 無効理由3(実施可能要件)について
(1)要件Bについて
ア 要件Bに関連する本件明細書の記載は、上記1(2)エ及び上記2(2)アに示したとおりであり、「車両」の夫々について、車両を購入し所有する者であるファンドを貸主とした所定の借主に対する賃貸借契約の賃貸費を演算することが可能であることは明らかである。本件明細書の段落【0046】の「賃貸費演算部303」が「トラックファンドからt台の業務用貨物運搬用車両の夫々を賃借したファンドマネージャFM」を「貸主」とした「賃貸借契約」に基づいて賃貸する場合の賃貸費を演算する旨の記載も、上記2(2)イ(イ)に示したとおり、車両を購入し所有する者であるファンドを貸主とした所定の借主に対する賃貸借契約の賃貸費を演算することと相容れない記載であるとまでいえず、この点を踏まえても、要件Bについて実施可能要件違反であるとはいえない。
イ 請求人は、要件Bの「賃貸借契約で賃貸する場合」を認識して「賃貸費」を演算する処理の態様が発明の詳細な説明に記載されていないと主張するが、上記2(2)ウに示したとおり、請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものでない。
また、請求人は、本件明細書において、契約は人が行うと説明されている等と主張するが、契約を人が行うからといって賃貸借契約の賃貸費として適切な金額を演算することができないものではない。本件明細書の段落【0046】には、賃貸借契約に基づいて賃貸する場合の賃貸費を、所定のアルゴリズムによって演算することや賃貸車両を用いた役務提供によって得る対価の額に基づいて算出可能である旨が記載されており、請求人の主張は、理由がない。
(2)要件Cについて
ア 要件Cに関連する本件明細書の記載は、上記1(2)オ及び上記2(3)アに示したとおりであり、この記載からみて、要件Bについて実施可能要件違反であるとはいえない。
イ 請求人は、要件Cの「ファンドの商品を購入する投資家」の購入額を知らない「損益演算部」が「前記賃貸費と、前記購入額と、前記販売額」のみに基づいて「投資家の損益額」を演算することは、一般的に不可能であると主張するが、要件Cの「投資家の損益額」は、投資家の購入額に対する配当の割合として示された損益額を含むことは明らかであり、図6の例も「投資条件」として示された「103.83%」は、トラックファンドの商品を購入した投資家が最終的に「投資額の3.83%の配当」を得ることを示しているものである。よって、「損益演算部」は、「ファンドの商品を購入する投資家」の購入額を知らなくても、投資条件としての配当として「投資家の損益額」を演算できることが明らかである。
(3)要件Dについて
ア 要件Dに関連する本件明細書の記載、及び、期待できるリターン(ファンドを購入した投資家に提供するであろう最終損益)を検討してファンドの商品を購入しようとする投資家にとって、トラックファンドは、バイアウトファンド(乙10)やヘッジファンド(乙11)などの他のファンドと競合する商品と位置づけられ、トラックファンドを提供しようとするファンドマネージャは、これらの他のファンドにおける期待できるリターンを参考として、トラックファンドの潜在的な買い手となる投資家(「ファンドの商品を購入する投資家」)の所望する損益をシミュレーションの目標として設定せざるを得ないことは、上記1(2)カ及び上記2(4)に示したとおりであり、これらに照らせば、要件Dについて実施可能要件違反であるとはいえない。
イ 請求人は、要件Dの「投資家の所望する金額」を知るはずのない商品最適化部が「商品の内容を決定する」ことは、一般的に不可能である、「投資家の所望する金額」かどうかは、投資家だけが主観的に決定できることである、等と主張するが、いずれも、要件Dの「前記投資家の所望する金額」についての理解を誤った主張であり、採用することができない。
(4)小括
してみると、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでなく、無効理由3は、理由がない。
4 無効理由4(進歩性)について
(1)甲第4号証に記載された発明
ア 甲第4号証の記載は、次のとおりである。
「【背景技術】
【0002】
金融機関等(以下債権者とする)から融資を受ける際に、融資を受ける個人または法人(以下債務者とする)は、各種担保制度に基づいてあらかじめ担保を供する場合がある。なお、担保とは、債務の不履行時に備えて債権者に預け、債務弁済の手段に用いられるものである。
この担保には、人的担保である保証人、物的担保である質権、抵当権がある。このうち抵当権は、土地、建物、地上権に加え、特別法における自動車抵当法により、自動車を対象物とすることが認められている。
この抵当権の対象物として認められる自動車は、新車に限らず中古車であってもよい。これにより、中古車販売会社であっても、自社の所有する中古車を担保対象物として、金融機関等から融資を受けることが現実的に可能となっている。
【0003】
しかしながら、自動車は耐久消費財であるため、経過年数および走行距離などの要因で市場価値が左右されやすいものとなっている。従って、自動車を担保対象物として融資を受ける限度額は、不動産を担保対象物とした場合と比較して少額に抑えられてしまう。
そのため、自動車を担保対象物としてある程度のまとまった額の融資を受ける場合には、複数の自動車を担保対象物としなければならない。しかし、自動車の担保価値の査定処理は、大変に手間のかかる処理であるため、複数の自動車を担保対象物として、融資を受けることは非常に困難であった。・・・」
「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したように自動車は耐久消費財であるため、適切な資産価値(担保価値)を算定することは非常に困難であった。
また、自動車を担保対象物として融資を受けた場合、債務履行期間内に担保車輌の実質的な資産価値は、経年的に変動し、融資当初の査定額よりも減少してしまうおそれがあった。
そこで、本発明は、融資を受ける際の担保対象物となっている担保対象車輌の有する適正価値を算出し、算出された担保対象車輌の資産価値に基づいて、担保対象物の資産価値管理を適切に行うことができる担保対象物の資産価値管理システム、担保対象物の資産価値管理方法、担保対象物の資産価値管理プログラム、担保対象物の資産価値管理プログラムを記憶した記憶媒体を提供することを目的とする。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1から図8を参照して、詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る、担保対象物の資産管理システム(以下、車輌担保管理システムとする)の概略を示した構成図である。図1に示すように、車輌担保管理システムは、CPU(中央演算処理装置)1、ROM(リード・オンリ・メモリ)2、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)3、入力装置4、出力装置5、資産データベース(以下、資産DBとする)11、融資関連データ格納部12、車種別マスタデータベース(以下、車種別マスタDBとする)13、およびオークション取引データベース(以下、オークション取引DBとする)14を備えており、これら各部は、データバス等のバスライン6を介して接続されている。
【0015】
CPU1は、ROM2やRAM3等の記憶装置に格納されているプログラムに従って、車輌担保管理システムの制御を行う。CPU1は、レジスタと呼ばれる記憶部を有しており、このレジスタにROM2やRAM3などからプログラムを読み込んで、このプログラムに従って動作することにより車輌担保管理システムの各種機能が発揮される。なお、車輌担保管理システムの各種機能を実行するためのプログラムとしては、例えば、担保対象車輌登録更新プログラム、車種別マスタ検索プログラム、資産価値算出プログラム、資産管理処理プログラム等がある。」
「【0018】
次に、資産DB11の詳細について図2を参照して説明する。
図2は、資産DB11に格納されているデータの概略を示した表である。
資産DB11は、少なくとも融資を受ける際の担保対象物となっている担保対象車輌の自動車検査証の記載内容および固有要因を示した担保対象車輌データと、担保対象車輌の資産価値を示した資産価値データとを格納している。
担保対象車輌データは、金融機関等から融資を受ける際に供された、抵当権が設定されている車輌に関する個別情報に関するデータの集合体であり、この担保対象車輌データは、大別すると自動車検査証記載事項、固有要因事項および車種別マスタ検索結果から構成されている。
自動車検査証記載事項とは、自動車検査証(車検証)に記載されている内容に基づいて入力(登録)される情報である。自動車検査証記載事項としては、例えば、該当車輌に指定されている型式を示す型式指定番号、装備などの違いに基づいて詳細分類ごとに指定を受けた番号を示す類別指定番号、メーカで製造された順番に打刻される車体固有の番号を示す車体番号、車検証の有効期限を示す車検期限、車輌を最初に登録した年月を示す初度登録年月などのデータが登録されている。
【0019】
固有要因事項とは、車輌の資産価値を左右する要因のうちの自動車検査証の記載内容から認識することができない情報のことである。固有要因事項としては、例えば、車色、走行距離、事故に関する履歴(事故歴)、外装および内装の状態(コンディション、様子、条件)の程度(評価点)などの情報(データ)が登録されている。なお、本実施の形態では、外装および内装の状態をA~Eの5段階評価で示しているが、外装および内装の状態の程度については、例えば、民間の中古車査定機関の定める評価基準やオークション評価基準に準拠するようにしてもよい。
【0020】
車種別マスタ検索結果とは、自動車検査証記載事項である型式指定番号および類別指定番号に基づいて、後述する車種別マスタ検索処理を実行して得られた結果である。車種別マスタ検索結果としては、例えば、製造メーカを示すメーカ名、用途や型などで分類された自動車の種類を示す車種、車の等級(ランク)を示すグレード、型が開発された年を示す年式、性能や形・デザイン別に設定された呼称を示すモデル、エンジンの動力の駆動条件を示す駆動形式、車内外に備えられた装置等を示す装備、ギア(ギヤ)装置の種別を示すシフトの情報(データ)が登録されている。
なお、駆動形式としては、前輪駆動(FWD)、後輪駆動(RWD)、全輪駆動(4WD)がある。また、シフトは、オートマティック(AT)とマニュアル(MT)に大別されており、さらにそれぞれのギア数が示されている。
【0021】
担保対象車輌資産価値データは、担保対象車輌データに基づいて後述する車輌資産価値算出処理を実行して得られた結果である。本実施の形態に係る車輌担保管理システムでは、主にこの担保対象車輌資産価値データに基づいて、担保対象車輌の資産価値管理が行われるようになっている。なお、担保対象車輌資産価値データは、車輌資産価値算出処理が実行されるごとに更新され、常に最新のデータが格納されるようになっている。
資産DB11には、これらの自動車検査証記載事項、固有要因事項および車種別マスタ検索結果に関する各データが、担保対象車輌別に格納されている。なお、担保対象車輌は、中古車販売会社が設定した通し番号やID番号、ID文字列などの識別子によって識別されている。これらの識別子と当該担保対象車輌との紐付けは、金融機関側および中古車販売会社側の少なくとも一方で厳重に管理するようにする。
【0022】
この他、資産DB11に格納されている担保対象車輌に関するデータに、該当する車輌の画像データを併せて格納するようにしてもよい。このように、画像データを格納(添付)することによって、資産DB11を閲覧する際に、該当する車輌のイメージを視覚的に容易に閲覧者に対して認識させることができる。
また、画像データとして、車輌の全体像を示したデータのみならず、外装・内装の傷の様子などを示したデータ等を格納するようにしてもよい。これにより、資産DB11の閲覧者は、評価項目の内容の妥当性を容易に判断することができる。
【0023】
上述した自動車検査証記載事項および固有要因事項は、資産DB11に担保対象車輌情報を担保対象車輌の識別子ごとに登録する際に必要となるデータである。ここで、資産DB11に担保対象車輌情報を格納する処理、即ち、担保対象車輌を登録する処理について、図3を参照して説明する。
図3は、資産DB11に担保対象車輌を登録する際の登録画面を示した図である。
資産DB11に担保対象車輌を登録する場合(新規登録)、まずROM2から担保対象車輌登録更新プログラムを起動する。そして、図3に示す担保対象車輌情報の編集画面を出力装置5のディスプレイに表示させる。少なくとも、前述した型式指定番号、類別指定番号、車体番号、車検期限、初年度登録年月などの自動車検査証記載事項を該当箇所へ入力する。さらに、車体色(車色)、走行距離、事故歴、外装程度、内装程度などの固有要因事項も同様に入力する。
その他、当該車輌の管理データとして、図3に示すような販売指定先、在庫場所、管理区分、ピット、仕入区分、仕入日、買取金額などのデータを可能な範囲で入力する。
なお、この段階では、メーカ、車種、グレード、年式、モデルなどの情報の入力は必須項目とする必要はない。
各項目の入力が終了した後、画面上の更新ボタンを押下(クリック)することによって、資産DB11に担保対象車輌を登録することができるようになっている。
【0024】
また、資産DB11に登録されている担保対象車輌情報を更新(変更)する場合、ROM2から担保対象車輌登録更新プログラムを起動し、資産DB11に登録されている担保対象車輌を選択する。そして、図3に示す担保対象車輌情報の編集画面と同様の、選択した車輌に関する画面を出力装置5のディスプレイに表示させる。なお、情報を更新する車輌の選択は、該当車輌に付せられている識別子(ID番号またはID文字列データ)を指定することによって行うことができる。該当車輌情報の編集画面を表示させた後、変更(修正)内容を該当項目欄に入力する。入力終了した後、画面上の更新ボタンを押下(クリック)することによって、資産DB11に変更内容が反映されるようになっている。
なお、画面上のキャンセルボタンを押下(クリック)した場合には、修正した内容は資産DB11へ反映されずに、前回までの更新(登録)データの内容が保持されるようになっている。
【0025】
次に、図1に示されている融資関連データ格納部12について説明する。この融資関連データ格納部12は、少なくとも融資額に見合うように設定された担保資産価値の下限値などのデータが格納された記憶装置によって構成され、融資データ格納部として機能する。
また、融資関連データ格納部12は、インターネット21を介して融資機関サーバ31と接続されており、融資関連データ格納部12に格納されているデータは、融資機関サーバ31からの転送(送信)されるデータに基づいて更新されるようになっている。なお、融資関連データ格納部12のデータへの不正アクセスやデータの漏洩を防ぐためのセキュリティ管理システムを利用する。例えば、ファイアウォール、アクセス時のユーザ認証、暗号鍵などを用いるようにする。また、本実施の形態では、インターネット21を介して融資関連データ格納部12と融資機関サーバ31とを接続しているが、接続するための手段としてはインターネット21に限られるものではなく、例えば、専用線、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)、WAN(ワイド・エリア・ネットワーク)等のデータの送受信が可能なネットワークであってもよい。」
「【0040】
次に、上述したような構成を備えた車輌担保管理システムにおける担保対象車輌の資産価値の管理処理について説明する。
本実施の形態に係る車輌担保管理システムでは、資産DB11に登録されている担保対象車輌の資産価値を個別に算出した後、算出された資産価値と融資関連データとに基づいて担保対象車輌の管理処理を行うようになっている。
はじめに、車輌担保管理システムにおける担保対象車輌の資産価値の算出処理について説明する。
【0041】
図7は、車輌担保管理システムにおける担保対象車輌の資産価値の算出処理の手順を示したフローチャートである。
一般ユーザまたは管理ユーザの操作により、資産価値の算出処理の実行が指示されると、ROM2に格納されている資産価値算出プログラムが起動されるようになっている。
資産価値算出プログラムが起動されると、CPU1は、資産DB11に格納されている担保対象車輌データを読み出しRAM3に格納する(ステップ11)。ここでは、資産DB11に格納されている担保対象車輌データのうち、該当車輌の車色、走行距離、事故に関する履歴(事故歴)、外装および内装の状態(コンディション、様子、条件)の程度などの情報(データ)を示す固有要因事項、およびメーカ名、車種、グレード、年式、モデル、駆動形式、装備、シフトの情報(データ)を示す車種別マスタ検索結果項目に関するデータを抽出し、これらのデータをRAM3内の所定の領域に格納されるようになっている。
【0042】
次に、CPU1は、資産DB11から読み出した担保対象車輌データを検索語(索引語)としてオークション取引DB14から担保対象車輌の条件と合致または近似する車輌に関する取引履歴データを検索する(ステップ12)。
ここでは、はじめに車種、型式、グレード、シフトを完全一致条件として取引履歴データを検索する。そして、完全一致条件と合致する車輌が複数存在した場合には、続いて年式、走行距離、車色、外装および内装の程度を優先一致条件として、最も担保対象車輌の条件に近似する車輌を絞り込む。なお、完全一致条件および優先一致条件の基準設定、即ち条件項目については、任意に設定可能となっている。例えば、優先一致条件を用いて車輌を絞り込む際の対象項目の優先順位を、年式、走行距離、車色、外装および内装の程度の評価点の順にしたり、走行距離、年式、車色、外装および内装の程度の評価点の順にしたりなど、車輌担保管理システムの運用に適するように修正・変更を行うことができる。
【0043】
次に、CPU1は、取引履歴データの検索の結果、担保対象車輌データに合致する車輌に関する取引履歴データがオークション取引DB14に存在するか否かを判断する。そして、担保対象車輌データに合致する車輌に関する取引履歴データがオークション取引DB14に存在しない場合(ステップ13;N)、優先一致条件に基づいて絞り込まれた、最も担保対象車輌の条件に近似する車輌に関する取引履歴データを抽出する(ステップ14)。
そして、この抽出された取引履歴データから落札価格データを抽出し、RAM3内に格納する(ステップ15)。
【0044】
続いて、CPU1は、抽出された落札価格データに対して、担保対象車輌の条件と落札対象車輌の条件との間における走行距離などの相違要因に基づいて補正処理を実行する(ステップ16)。
ここで行われる補正処理は、例えば、走行距離の違いによる走行距離要因、年式の違いによる年式要因、車色の違いによる車色要因、外装および内装の評価点の違いによる評価点要因ごとに、所定のアルゴリズムに基づいて行われる。
【0045】
走行距離要因に関する補正処理は、オークション取引DB14に格納されている車種別にグループ化された走行距離の違いによる標準偏差データ(図6)を参照し、参照結果から得られた該当車輌の偏差に基づいて、所定の減算または加算処理を施すことによって行われる。
年式の違いによる年式要因に関する補正処理は、オークション取引DB14に格納されている年式別に人気度ランク(ポイント)が定義された年式テーブルを参照し、参照結果から得られた該当車輌の人気度ランク(ポイント)に基づいて、所定の減算または加算処理を施すことによって行われる。
車色要因に関する補正処理は、オークション取引DB14に格納されている車種別にグループ化された人気度の違いによる標準偏差データを参照し、参照結果から得られた該当車輌の人気度ランク(ポイント)に基づいて、所定の減算または加算処理を施すことによって行われる。
【0046】
一方、取引履歴データの検索の結果、担保対象車輌データに合致する車輌に関する取引履歴データがオークション取引DB14に存在する場合(ステップ13;Y)、検出された車輌に関する取引履歴データから落札価格データを抽出し、RAM3内に格納する(ステップ17)。
【0047】
次に、CPU1は、担保対象車輌の条件と落札対象車輌の条件との間における走行距離などの相違要因に基づいて補正処理が施された落札価格データ、または、取引履歴データから落札価格データに対して、落札対象車輌の落札時期(期日)に基づいて補正処理を実行する(ステップ18)。
この落札時期に関する補正処理は、現在時と落札対象車輌の落札時期との時間差(日数差)を根拠として所定のアルゴリズムに基づいて行われる。
例えば、現在時と落札対象車輌の落札時期との時間差(日数差)が30日以内の場合には、一律落札価格データの3%の減算処理を行う。また、90日以内の場合には7%の減算処理を行う。
なお、現在時と落札対象車輌の落札時期との時間差(日数差)を根拠とする減算処理のアルゴリズム(算出条件)は、任意の値に設定することができるようになっている。
【0048】
次に、CPU1は、落札対象車輌の落札時期(期日)に基づく補正処理が施された落札価格データ、即ち、算出された担保対象車輌の資産価値データを資産DB11に格納(登録)し(ステップ19)、担保対象車輌の資産価値の算出処理を終了する。資産価値データを資産DB11に格納する際には、算出された資産価値の金額と共に、この資産価値の算出処理を実行した日時データを格納するようにする。資産DB11は、担保対象車輌の資産価値の算出処理が実行されるごとに更新される。
なお、上述した担保対象車輌の資産価値の算出処理は資産DB11に格納(登録)されている全ての担保対象車輌に対して実行する。
【0049】
次に、車輌担保管理システムにおける担保対象車輌の管理処理について説明する。
図8は、車輌担保管理システムにおける担保対象車輌の管理処理の手順を示したフローチャートである。
前述した資産価値の算出処理が資産DB11に格納(登録)されている全ての担保対象車輌に対して実行されると、ROM2に格納されている資産管理処理プログラムが起動されるようになっている。
資産管理処理プログラムが起動されると、CPU1は、資産DB11に格納されている担保対象車輌データの資産価値データを全て読み出してこれらの総和を算出し、この算出結果をRAM3に格納する(ステップ21)。
【0050】
続いて、CPU1は、融資関連データ格納部12にアクセスし担保資産価値の下限値データを読み出し、この担保資産価値の下限値と資産価値の総和を比較する(ステップ22)。
担保資産価値の下限値と資産価値データの総和との比較の結果、担保資産価値の下限値≦資産価値の総和である場合(ステップ23;Y)、現状の担保対象車輌の有する資産価値が、融資条件を満たしていると判断する。そして、担保対象車輌の資産価値が適正値である旨をユーザに通知し(ステップ24)、担保対象車輌の管理処理を終了する。
一方、担保資産価値の下限値と資産価値データの総和との比較の結果、担保資産価値の下限値≦資産価値の総和でない場合(ステップ23;N)、現状の担保対象車輌の有する資産価値が、融資条件を満たしていないと判断する。そして、担保対象車輌の資産価値が適正値でない旨をユーザに通知し(ステップ25)、担保対象車輌の管理処理を終了する。即ち、現状の担保対象車輌の有する資産価値が、融資条件を満たしていない場合には、メッセージの表示やアラーム発動機能を用いて警告を発するようになっている。
担保対象車輌の管理処理においては、担保資産価値の下限値と資産価値データの総和との比較の結果を、比較処理の都度、出力装置5に出力するようになっている。なお、出力方法としては、処理結果をディスプレイへの表示、プリンタを用いて紙媒体等への印刷などがある。
【0051】
担保対象車輌の資産価値が適正値である旨、または担保対象車輌の資産価値が適正値でない旨を通知する通知機能としては、例えば、担保対象車輌の資産価値の管理処理を指示したユーザや管理ユーザ宛に電子メールによるアナウンスを行うなどのメッセージ送信処理を実行することによって実現させることができる。このようなメッセージを確認することによって、ユーザは、担保対象車輌の資産価値の現状を適切に把握することができる。
また、担保対象車輌の資産価値が適正値である場合において、融資条件で設定されている担保資産価値の下限値までの差額状況を併せて通知するようにしてもよい。融資を受ける側においては、これらのメッセージ内容を、担保対象車輌の追加およびキャンセル(削除)等の処理を行う場合の判断要素として利用することが可能となり、より適切な担保対象車輌の資産価値の管理処理を行うことができる。融資をしている金融機関などにおいては、担保対象車輌の資産価値の適正値を把握することができるため、迅速な融資停止処理等の適切なリスク管理が容易にできる。」
イ アによれば、甲第4号証には、下記の甲4発明Aが記載されていると認められる。(下線は被請求人主張における甲4発明と相違する部分である。)
(甲4発明A)
資産データベースと、融資関連データ格納部と、車種別マスタデータベースと、オークション取引データベースと、を備えた担保対象物の資産管理システムであって、(【0014】)
前記資産データベースは、少なくとも融資を受ける際の担保対象物となっている担保対象車輌の自動車検査証の記載内容および固有要因を示した担保対象車輌データと、担保対象車輌の資産価値を示した資産価値データと、を格納しており、(【0018】)
前記担保対象車輌データは、金融機関等から融資を受ける際に供された、抵当権が設定されている前記担保対象車輌に関する個別情報に関するデータの集合体であり、自動車検査証記載事項、固有要因事項および車種別マスタ検索結果から構成されており、(【0018】)
前記資産価値データは、前記担保対象車輌データに基づいて車輌資産価値算出処理を実行して得られた結果であり、前記車輌資産価値算出処理が実行されるごとに更新され、常に最新のデータが格納されており、(【0021】)
前記融資関連データ格納部は、少なくとも融資額に見合うように設定された担保資産価値の下限値などのデータが格納された記憶装置によって構成され、(【0025】)
前記オークション取引データベースは、取引履歴データとして、例えば、オークションの開催された会場、オークションの開催日、出品車輌の車種、グレード、シフト、排気量、走行距離、車検期限、車体色、型式、装備、年式、モデル等のデータ、および出品車輌の落札価格(最終落札価格)が格納されており、
前記車輛資産価値算出処理は、
前記資産データベースに格納されている前記担保対象車輌データのうち、該当車輌の車色、走行距離、事故に関する履歴(事故歴)、外装および内装の状態(コンディション、様子、条件)の程度などの情報(データ)を示す固有要因事項、およびメーカ名、車種、グレード、年式、モデル、駆動形式、装備、シフトの情報(データ)を示す前記車種別マスタ検索結果項目に関するデータを抽出し、(【0041】)
抽出した前記担保対象車輛データの前記車種別マスタ検索結果項目を検索語として、前記オークション取引データベースから前記担保対象車輛の条件と合致または近似する落札対象車輛に関する取引データを抽出し、(【0043】)
前記オークション取引データベースから前記担保対象車輛の条件と合致する落札対象車輛に関する取引データが存在する場合は、前記取引データから落札価格データを抽出し、
前記オークション取引データベースから前記担保対象車輛の条件と近似する落札対象車輛に関する取引データが存在する場合は、前記取引データから抽出された前記落札価格データに対して、前記担保対象車輌の条件と前記落札対象車輌の条件との間における走行距離の違いによる走行距離要因、年式の違いによる年式要因、車色の違いによる車色要因、外装および内装の評価点の違いによる評価点要因ごとに、所定のアルゴリズムに基づいて補正処理を実行し、(【0044】)
前記取引履歴データから抽出された落札価格データ、または前記補正処理が施された落札価格データに対して、現在時と前記落札対象車輛の落札時期との時間差に基づいて補正処理を行い、(【0047】)
前記落札対象車輛の落札時期に基づいて補正処理を行った落札価格データを、前記担保対象車輛の資産価値データとして前記資産データベースに格納する、算出処理であり、(【0048】)
前記担保対象物の資産管理システムが行う前記担保対象車輛の管理処理は、(【0049】)
前記資産データベースに格納されている全ての前記担保対象車輛に対する前記資産価値データの総和を算出し、(【0049】)
前記資産価値データの総和と、前記融資関連データ格納部に格納された、少なくとも融資額に見合うように設定された担保資産価値の下限値と、を比較し、
前記担保資産価値の下限値≦前記資産価値データの総和である場合、現状の前記担保対象車輌の有する資産価値が融資条件を満たしていると判断し、担保車両の資産価値が適正値である旨をユーザに通知し、
前記担保資産価値の下限値≦資産価値データの総和でない場合、現状の前記担保対象車輌の有する資産価値が融資条件を満たしていないと判断し、担保車両の資産価値が適正値でない旨をユーザに通知し、
前記資産価値データの総和と、前記融資関連データ格納部に格納された、少なくとも融資額に見合うように設定された担保資産価値の下限値と、の比較結果を出力装置に出力する、管理処理であり、(【0050】)
ユーザは、担保対象車輌の資産価値の現状を適切に把握することができ、融資を受ける側において担保対象車輌の追加およびキャンセル(削除)などの処理を行う場合の判断要素として利用することが可能である(【0051】)、
前記担保対象物の資産管理システム。
ウ 請求人は、甲第4号証には、「第4」「2(4)」アに示した「引例システム」の発明が記載されていると主張しているが、次のとおり、採用することができない。
(ア)要件aについて
甲第4号証の段落【0023】には、「当該車輌の管理データ」として「販売指定先」と「買取金額」を「入力」する旨が記載されているにとどまり、担保対象車輌の夫々の前記買取金額に基づく減価償却後の金額や販売指定先への将来の販売額を算出することは記載されていない。
そして、甲第4号証の段落【0041】~【0048】の記載からみて、甲第4号証は、担保対象車輌の「資産価値データ」の算出にあたって、当該担保対象車輌に合致または近似するオークション取引の落札対象車両に関する取引履歴データからその落札価格データを抽出し、これに所定の補正処理を施したものを「資産価値データ」とするのであって、このようは補正処理として、「現在時と前記落札対象車輛の落札時期との時間差」に基づく補正処理(段落【0047】【0048】)を行うことから、現在時における資産価値データを算出するにとどまり、販売指定先への将来の販売額を算出するものではないことが明らかである。
よって、甲第4号証に、「引例システム」の要件aは記載されていない。
(イ)要件bについて
甲第4号証は、「融資」の「担保対象車輌」の「資産価値データ」を算出するものであり、この「資産価値データ」は、「自動車を担保対象物として融資を受ける限度額」(甲4の段落【0003】や「自動車の担保価値」の「査定額」(同段落【0004】)に代替するものといえるものの、自動車を担保対象物としてなされる融資の「融資額」そのものでないことが明らかである。
さらには、銀行が融資を行うにあたって自動車を担保対象物とすることは、銀行が貸主となって融資先に自動車を貸与することを意味しないことも明らかである。
よって、甲第4号証に、「引例システム」の要件bは記載されていない。
(ウ)要件cについて
上記(イ)に示したとおり、銀行は、担保対象車輌の貸主でなく、甲第4号証には、自動車を担保対象物としてなされる融資の「融資額」を「資産価値データ」として算出することは記載されておらず、資産価値データに基づいて、銀行や銀行持株会社の損益額を算出することは記載されていない。
よって、甲第4号証には、「引例システム」の要件cは記載されていない。
(2)対比
ア 上記(1)のとおり、甲第4号証には、甲4発明Aが記載されており、請求人が主張する「引例システム」は記載されていない。
このことに鑑み、本件特許発明と甲4発明Aとを対比する。
イ(ア)要件Aについて
甲4発明Aの車輌は、本件特許発明の「車両」に相当し、いずれも「車種、経過年を含む履歴情報、価格を少なくともパラメータとして含む」点でも共通するといえる。
また、甲4発明Aの「資産データベースに格納されている全ての前記担保対象車輛に対する前記資産価値データの総和」は、車両の購入販売に係る金額であるといえ、この点で、本件特許発明の要件Aの「t台(tは1以上の整数値)の車両の購入額、及び所定の期間経過後の販売額」と共通するといえ、本件特許発明と甲4発明Aは、「t台(tは1以上の整数値)の車両の購入販売に係る金額を演算する購入販売に係る金額の演算部」を備える点で、共通するといえる。
(イ)要件Bについて
甲4発明Aは、本件特許発明の要件Bに対応する構成を備えていない。
(ウ)要件Cについて
甲4発明Aには、本件特許発明の要件Cに対応する構成を備えていない。
(エ)要件Dについて
甲4発明Aは、前記担保資産価値の下限値≦資産価値データの総和でない場合、担保車両の資産価値が適正値でない旨をユーザに通知し、通知を受けた融資を受ける側のユーザにおいて担保対象車輌の追加の処理を行う場合の判断要素として利用することが可能であることから、上記(ア)の「t台(tは1以上の整数値)の車両の購入販売に係る金額を演算する購入販売に係る金額の演算部」の演算の処理を、追加車輌に係る「前記パラメータ及び前記t台」を変化させて、実行結果となる担保対象車輌の資産価値データの総和が担保資産価値の下限値以上の適正値となるように、繰り返し実行させることを予定しているといえる。
よって、本件特許発明と甲4発明Aは、前記パラメータ及び前記t台を変化させて、前記購入販売に係る金額の演算部の処理を繰り返し実行させる手段を備える点で、共通するといえる。
ウ してみると、本件特許発明と甲4発明の一致点は、以下のとおりである。
(一致点)
車種、経過年を含む履歴情報、価格を少なくともパラメータとして含む、t台(tは1以上の整数値)の車両の購入販売に係る金額を演算する購入販売に係る金額の演算部と、
前記パラメータ及び前記t台を変化させて、前記購入販売に係る金額の演算部の処理を繰り返し実行させる手段を備える、
情報処理装置
エ そして、両者は、以下の相違点A~相違点D2において、相違する。
(相違点A)
車両の購入販売に係る金額として、本件特許発明は、「t台(tは1以上の整数値)の車両の購入額、及び所定の期間経過後の販売額」を演算するが、甲4発明Aは、「資産データベースに格納されている全ての前記担保対象車輛に対する前記資産価値データの総和」を演算するものであって、車両の購入額や所定期間経過後の販売額を演算しない点
(相違点B)
本件特許発明は、「前記t台の車両の夫々を購入した者を貸主として、当該t台の車両の夫々を、所定の借主に対して賃貸借契約で賃貸する場合の賃貸費を演算する賃貸費演算部」を備えるのに対し、甲4発明Aは、これを備えない点
(相違点C)
本件特許発明は、「前記賃貸費と、前記購入額と、前記販売額とに基づいて、前記貸主の損益額と、前記t台の車両の組合せからなるファンドの商品を購入する投資家の損益額と、の夫々を演算する損益演算部」を備えるのに対し、甲4発明Aは、これを備えない点
(相違点D1)
「繰り返し実行」について、本件特許発明では、「前記パラメータ及び前記t台、前記購入額、前記販売額、前記賃貸費、前記貸主の損益、並びに前記投資家の損益の組合せを変化させ」て「前記購入販売額演算部、前記賃貸費演算部、及び前記損益演算部の各処理」を繰り返し実行させる。
これに対して、甲4発明Aでは、「購入額」、「販売額」、「賃貸費」、「貸主の損益」及び「投資家の損益」に相当する金額を演算しておらず、これらの組合せを変化させて、賃貸費演算部及び損益演算部の各処理を繰り返し実行していない点
(相違点D2)
本件特許発明では、繰り返し実行の「実行結果に基づいて」、「ファンドの商品の内容を決定」し、その際、「前記貸主の損益額」が「前記投資家の所望する金額となるように決定」されるのに対し、甲4発明では、繰り返し実行の「実行結果に基づいて」、「ファンドの商品の内容を決定」していない(「前記貸主の損益額」が「前記投資家の所望する金額となるように決定」されてもいない)点
なお、相違点Aは、被請求人主張の相違点(1)及び相違点(2)に対応し、相違点Bは、被請求人主張の相違点(3)に対応し、相違点Cは、被請求人主張の相違点(4)、相違点(5)及び相違点(6)及び請求人主張の相違点1に対応するものであり、その内容を含むものである。また、相違点D1及び相違点D2は、実質的に被請求人主張の相違点(7)及び相違点(8)に対応する。
オ 請求人は、上記(1)ウの「引例システム」が甲第4号証に記載されていることを前提として、被請求人の相違点(1)~(3)、(5)~(8)はなく、また、要件Cについても相違点は相違点1にとどまる旨主張するが、上記(1)ウに示したとおり、「引例システム」が甲第4号証に記載されておらず、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(3)判断
ア 相違点C以外の相違点について
請求人は、上記相違点A、相違点B、相違点D1及び相違点D2について、一致点であるとして、これらの相違点を克服するために必要となる副引用発明を示していない。
(要件Cに係る相違点Cの一部についても、副引用発明を示していないが、事案に鑑み、後述イにおいて、相違点Cとしてまとめて検討する。)
よって、請求人の主張は、進歩性欠如の無効理由の主張として完結しておらず、相違点A、相違点B、相違点D1及び相違点D2は、いずれも容易想到であるといえない。
イ 相違点Cについて
請求人は、要件Cについての相違点1を主張し、相違点1は甲第5号証に記載された周知技術との組合せ、あるいは当業者の「通常の創作能力の発揮」にすぎないとして、容易想到である旨を主張している。
しかしながら、要件Cについての相違点は相違点1にとどまらず、相違点Cであって、甲第5号証に記載された周知技術であるとも当業者の「通常の創作能力の発揮」にすぎないともいえない。
甲第4号証は、担保対象車輌の資産価値に係る処理を行うものであり、甲第5号証(摘記省略)は、「オートローン等のローンに投資する金銭信託であるローンファンド」(段落【0002】)に関するものであり、いずれも、本件特許発明の要件C及び要件Dが予定する「貸主の損益額」と「投資家の損益額」の夫々の演算において用いることが可能な技術を開示するものでないし、相違点Cについて、当業者の「通常の創作能力の発揮」にすぎないともいえない。
よって、甲第4号証及び甲第5号証の文献の記載から相違点Cについて容易想到であるということはできない。
(4)小括
以上のとおり、本件特許発明は、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、無効理由4は、理由がない。
第7 むすび
以上のとおり、請求人が主張する無効理由1~無効理由4はいずれも理由がなく、これらの無効理由によって本件特許を無効とすることはできない。
審判に係る費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって結論のとおり審決する。
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2023-800034