特許無効審判
2023-800022
出力制御装置、出力制御プログラム、及びそれを用いた太陽光自家消費システム
- 審判番号
- 2023-800022
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2021-072826
- 登録番号
- 7004987
- 請求日
- 2023年03月30日
- 審決日
- 2024年08月13日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ラプラス・システム
- 【請求人代理人】弁理士法人M&Partners
- 【請求人代理人】奥村 直樹
- 【請求人代理人】工藤 嘉晃
- 【請求人代理人】松野 仁彦
- 【請求人代理人】富永 真太郎
- 【請求人代理人】小松 香織
- 【被請求人】株式会社 フィールドロジック
- 【被請求人代理人】▲高▼山 嘉成
- 【被請求人代理人】冨宅 恵
- 【被請求人代理人】藤原 誠
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 丸山 高政
- 審判官 稲葉 崇
- 分類
- P1113.536-YAA(H02J) / P1113.113-YAA(H02J) / P1113.121-YAA(H02J) / P1113.832-YAA(H02J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第3項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第169条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第7004987号発明「出力制御装置、出力制御プログラム、及びそれを用いた太陽光自家消費システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7004987号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~5〕、〔6、7〕、〔8~12〕、〔13~16〕、〔17~20〕、〔21~24〕について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
本件無効審判における請求の趣旨は以下の1のとおりであり、答弁の趣旨は以下の2のとおりである。
1 請求の趣旨
特許第7004987号の特許請求の範囲の請求項1~24に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
第2 手続の経緯
特許第7004987号(以下「本件特許」という。)は、令和3年4月22日に出願され、令和4年1月7日にその請求項1~24に係る発明について特許権の設定登録がなされた。
本件無効審判の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 5年 3月30日 審判請求書
証拠説明書
甲第1号証~甲第3号証
8月 4日 審判事件答弁書
訂正請求書
訂正特許請求の範囲
訂正明細書
11月 2日 審判事件弁駁書
証拠説明書(2)
甲第4号証~甲第6号証
令和 6年 1月12日付け 審理事項通知書
3月 5日 口頭審理陳述要領書(1)(請求人)
証拠説明書(3)
甲第7号証の1~甲第7号証の8
甲第8号証
3月 8日 口頭審理陳述要領書(1)(被請求人)
3月15日付け 審理事項通知書
3月28日 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
4月 8日 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)
4月17日 証拠説明書(4)
甲第9号証
4月24日 口頭審理期日
4月26日 手続補正書(被請求人)
5月10日 上申書(請求人)
証拠説明書(5)
甲第10号証、甲第11号証
甲第12号証の1~甲第12号証の4
甲第13号証
5月15日付け 審尋(被請求人宛)
5月24日 回答書(被請求人)
以下では、審判事件弁駁書のことを単に「弁駁書」といい、請求人が提出した口頭審理陳述要領書(1)及び口頭審理陳述要領書(2)を、それぞれ「請求人陳述要領書(1)」及び「請求人陳述要領書(2)」といい、請求人が提出した令和6年5月10日の上申書を、単に「上申書」という。
また、甲第○号証のことを「甲○」と略し、甲第○号証の△のことを「甲○-△」と略す。
また、「審判事件答弁書」のことを単に「答弁書」といい、被請求人が提出した口頭審理陳述要領書(1)及び口頭審理陳述要領書(2)を、それぞれ「被請求人陳述要領書(1)」及び「被請求人陳述要領書(2)」という。
また、令和6年1月12日付け審理事項通知書のことを「審理事項通知書(1)」といい、同年3月15日付け審理事項通知書のことを「審理事項通知書(2)」という。
第3 訂正請求について
訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求の趣旨は以下の1のとおりであり、訂正の内容は以下の2のとおりである。
1 本件訂正の請求の趣旨
本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~24について訂正することを求める。
2 本件訂正の内容
令和6年4月26日の手続補正書により補正された訂正請求書によれば、本件訂正の内容は、以下の訂正事項1~31(下線は訂正部分を示す。以下同様。)に示すとおりであり、本件訂正前の特許請求の範囲の全文を以下の(1)に示し、本件訂正後の特許請求の範囲の全文を以下の(2)に示す。なお、本件訂正前後の明細書の全文は、掲載を省略する。
訂正事項1(請求項1に係る訂正)
請求項1に「出力指定値」と記載されているのを、「出力指令値」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)
訂正事項2(請求項1に係る訂正)
請求項1に「現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値が、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値となっていることを特徴とする、出力制御装置。」と記載されているのを、「前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値が、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値となっていることを特徴とする、出力制御装置。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)
訂正事項3(請求項2に係る訂正)
請求項2に「前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率を複数段階に分けてあり、消費電力が大きくなるに従って、設定差分値が大きくなることを特徴とする、請求項1に記載の出力制御装置。」と記載されているのを、「前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率を複数段階に分けてあり、前記消費電力が大きくなるに従って、前記設定差分値が大きくなることを特徴とする、請求項1に記載の出力制御装置。」に訂正する。
(請求項2の記載を引用する請求項3~5も同様に訂正する。)
訂正事項4(請求項6に係る訂正)
請求項6に「前記出力制御装置には、前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルが記憶されており、」と記載されているのを、「前記出力制御装置には、前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルが記憶されており、前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、」に訂正する。
(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。)
訂正事項5(請求項6に係る訂正)
請求項6に「出力指定値」と記載されているのを、「出力指令値」に訂正する。
(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。)
訂正事項6(請求項8に係る訂正)
請求項8に「出力指定値」と記載されているのを、「出力指令値」に訂正する。
(請求項8の記載を引用する請求項9~12も同様に訂正する。)
訂正事項7(請求項8に係る訂正)
請求項8に「現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値が、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値となっていることを特徴とする、太陽光発電自家消費システム。」と記載されているのを、「前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値が、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値となっていることを特徴とする、太陽光発電自家消費システム。」に訂正する。
(請求項8の記載を引用する請求項9~12も同様に訂正する。)
訂正事項8(請求項9に係る訂正)
請求項9に「前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率を複数段階に分けてあり、消費電力が大きくなるに従って、設定差分値が大きくなることを特徴とする、請求項8に記載の太陽光発電自家消費システム。」と記載されているのを、「前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率を複数段階に分けてあり、前記消費電力が大きくなるに従って、前記設定差分値が大きくなることを特徴とする、請求項8に記載の太陽光発電自家消費システム。」に訂正する。
(請求項9の記載を引用する請求項10~12も同様に訂正する。)
訂正事項9(請求項13に係る訂正)
請求項13に「現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、前記設定値を参照して、算出した前記比率に対応する前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定して、前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御する制御部とを備えることを特徴とする、出力制御装置。」と記載されているのを、「現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、前記設定値を参照して、算出した前記比率に対応する前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定して、前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御する制御部とを備え、前記記憶部において、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在していることを特徴とする、出力制御装置。」に訂正する。
(請求項13の記載を引用する請求項14~16も同様に訂正する。)
訂正事項10(請求項14に係る訂正)
請求項14に「前記設定値は、現在の消費電力から差し引く設定差分値であり、前記制御部は、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力から、前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項13に出力制御装置。」と記載されているのを、「前記設定値は、現在の前記消費電力から差し引く設定差分値であり、前記制御部は、前記発電電力の上限値が現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項13に出力制御装置。」に訂正する。
訂正事項11(請求項15に係る訂正)
請求項15に「前記設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、前記制御部は、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を消費電力から引いた値として、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項13に出力制御装置。」と記載されているのを、「前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、前記制御部は、前記発電電力の上限値を、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を前記消費電力から引いた値にして、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項13に出力制御装置。」に訂正する。
訂正事項12(請求項16に係る訂正)
請求項16に「前記設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、前記制御部は、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力に前記設定比値を乗算した値として、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項13に出力制御装置。」と記載されているのを、「前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、前記制御部は、前記発電電力の上限値を、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算した値にして、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項13に出力制御装置。」に訂正する。
訂正事項13(請求項17に係る訂正)
請求項17に「前記出力制御装置には、前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記パワーコンディショナの発電電力の上限値を規定するための設定値が記憶されており、」と記載されているのを、「前記出力制御装置には、前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記パワーコンディショナの発電電力の上限値を規定するための設定値が記憶されており、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在し、」に訂正する。
(請求項17の記載を引用する請求項18~20も同様に訂正する。)
訂正事項14(請求項18に係る訂正)
請求項18に「前記設定値は、現在の消費電力から差し引く設定差分値であり、前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力から、前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御させることを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。」と記載されているのを、「前記設定値は、現在の前記消費電力から差し引く設定差分値であり、前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値が、現在の前記消費電力から、前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御させることを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。」に訂正する。
訂正事項15(請求項19に係る訂正)
請求項19に「前記設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を消費電力から引いた値として、前記パワーコンディショナを制御させることを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。」と記載されているのを、「前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値は、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を消費電力から引いた値として、前記パワーコンディショナを制御させることを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。」に訂正する。
訂正事項16(請求項20に係る訂正)
請求項20に「前記設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力に前記設定比値を乗算した値として、前記パワーコンディショナを制御させることを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。」と記載されているのを、「前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値は、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算した値として、前記パワーコンディショナを制御させることを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。」に訂正する。
訂正事項17(請求項21に係る訂正)
請求項21に「現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、前記設定値を参照して、算出した前記比率に対応する前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定して、前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御する制御部とを備えることを特徴とする、太陽光発電自家消費システム。」と記載されているのを、「現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、前記設定値を参照して、算出した前記比率に対応する前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定して、前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御する制御部とを備え、前記記憶部において、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在していることを特徴とする、太陽光発電自家消費システム。」に訂正する。
(請求項21の記載を引用する請求項22~24も同様に訂正する。)
訂正事項18(請求項22に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項22に「前記設定値は、現在の消費電力から差し引く設定差分値であり、前記制御部は、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力から、前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項21に太陽光発電自家消費システム。」と記載されているのを、「前記設定値は、現在の前記消費電力から差し引く設定差分値であり、前記制御部は、前記発電電力の上限値が現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項21に太陽光発電自家消費システム。」に訂正する。
訂正事項19(請求項23に係る訂正)
請求項23に「前記設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、前記制御部は、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を消費電力から引いた値として、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項21に太陽光発電自家消費システム。」と記載されているのを、「前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、前記制御部は、前記発電電力の上限値を、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を前記消費電力から引いた値にして、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項21に太陽光発電自家消費システム。」に訂正する。
訂正事項20(請求項24に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項24に「前記設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、前記制御部は、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力に前記設定比値を乗算した値として、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項21に太陽光発電自家消費システム。」と記載されているのを、「前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、前記制御部は、前記発電電力の上限値を、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算した値にして、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項21に記載の太陽光発電自家消費システム。」に訂正する。
訂正事項21(【0016】に係る訂正)
願書に添付した明細書の段落【0016】に「(前略)…PCS定格で割って、当該割った値を出力指定値とし、出力指令値をパワーコンディショナに送信して、パワーコンディショナの出力を制御する制御部とを備えることを特徴とする、出力制御装置である。…(後略)」と記載されているのを、「(前略)…PCS定格で割って、当該割った値を出力指令値とし、出力指令値をパワーコンディショナに送信して、パワーコンディショナの出力を制御する制御部とを備えることを特徴とする、出力制御装置である。比率・設定差分値テーブルにおいて、設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在する。…(後略)」に訂正する。
訂正事項22(【0021】に係る訂正)
願書に添付した明細書の段落【0021】に「(前略)…比率・設定差分値テーブルが記憶されており、
出力制御装置に、
現在の消費電力とPCS定格との比率を算出させ、
比率・設定差分値テーブルを参照させ、
算出した比率に対応する設定差分値を決定させ、
現在の消費電力から決定後の設定差分値を引いた値を、PCS定格で割って、当該割った値を出力指定値とさせ、
現在の消費電力から…(後略)」と記載されているのを、「(前略)…比率・設定差分値テーブルが記憶されており、
比率・設定差分値テーブルにおいて、設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、
出力制御装置に、
現在の消費電力とPCS定格との比率を算出させ、
比率・設定差分値テーブルを参照させ、
算出した比率に対応する設定差分値を決定させ、
現在の消費電力から決定後の設定差分値を引いた値を、PCS定格で割って、当該割った値を出力指令値とさせ、
現在の消費電力から…(後略)」に訂正する。
訂正事項23(【0023】に係る訂正)
願書に添付した明細書の段落【0023】に「(前略)…当該割った値を出力指定値とし、出力指令値をパワーコンディショナに送信して、パワーコンディショナの出力を制御する制御部とを備え、
現在の消費電力から決定後の設定差分値を引いた値が、…(後略)」と記載されているのを、「(前略)…当該割った値を出力指令値とし、出力指令値をパワーコンディショナに送信して、パワーコンディショナの出力を制御する制御部とを備え、
比率・設定差分値テーブルにおいて、設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在する。
現在の消費電力から決定後の設定差分値を引いた値が、…(後略)」に訂正する。
訂正事項24(【0024】に係る訂正)
願書に添付した明細書の段落【0024】に「(前略)…パワーコンディショナを制御する制御部とを備える。」と記載されているのを、「(前略)…パワーコンディショナを制御する制御部とを備える。記憶部において、設定値の値は、少なくとも二種類以上存在している。」に訂正する。
訂正事項25(【0025】に係る訂正)
願書に添付した明細書の段落【0025】に「(前略)…制御部は、発電電力の上限値は、現在の消費電力から、設定差分値を引いた値となるように、パワーコンディショナを制御するとよい。」と記載されているのを、「(前略)…制御部は、発電電力の上限値が現在の消費電力から設定差分値を引いた値となるように、パワーコンディショナを制御するとよい。」に訂正する。
訂正事項26(【0026】に係る訂正)
願書に添付した明細書の段落【0026】に「また、一実施形態として、設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、制御部は、発電電力の上限値は、現在の消費電力に設定比値を乗算して、乗算して得られた値を消費電力から引いた値として、パワーコンディショナを制御するとよい。」と記載されているのを、「また、一実施形態として、設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、制御部は、発電電力の上限値を、現在の消費電力に設定比値を乗算して、乗算して得られた値を消費電力から引いた値にして、パワーコンディショナを制御するとよい。」に訂正する。
訂正事項27(【0027】に係る訂正)
願書に添付した明細書の段落【0027】に「また、一実施形態として、設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、制御部は、発電電力の上限値は、現在の消費電力に設定比値を乗算した値として、パワーコンディショナを制御するとよい。」と記載されているのを、「また、一実施形態として、設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、制御部は、発電電力の上限値を、現在の消費電力に設定比値を乗算した値にして、パワーコンディショナを制御するとよい。」に訂正する。
訂正事項28(【0028】に係る訂正)
願書に添付した明細書の段落【0028】に「(前略)…設定値が記憶されており、
出力制御装置に、
現在の消費電力とPCS定格との比率を算出させ、
設定値を参照させ、
算出した比率に対応するパワーコンディショナの出力電力の上限値を決定させ、
パワーコンディショナの出力電力が上限値以内となるように、パワーコンディショナを制御させることを特徴とする。」と記載されているのを、「(前略)…設定値が記憶されており、
設定値の値は、少なくとも二種類以上存在し、
出力制御装置に、
現在の消費電力とPCS定格との比率を算出させ、
設定値を参照させ、
算出した比率に対応するパワーコンディショナの出力電力の上限値を決定させ、
パワーコンディショナの出力電力が上限値以内となるように、パワーコンディショナを制御させることを特徴とする。」に訂正する。
訂正事項29(【0029】に係る訂正)
願書に添付した明細書の段落【0029】に「(前略)…制御部とを備えることを特徴とする。」と記載されているのを、「(前略)…制御部とを備えることを特徴とする。
記憶部において、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在している。」に訂正する。
訂正事項30(【0069】に係る訂正)
願書に添付した明細書の段落【0069】に「(前略)…回避することが可能となる。」と記載されているのを、「(前略)…回避することが可能となる。
なお、比率・設定差分値テーブルにおいて、設定差分値の値が全て同じでは、本発明の目的が達せないので、設定差分値は、少なくとも二種類以上存在する。」に訂正する。
訂正事項31(【0098】に係る訂正)
願書に添付した明細書の段落【0098】に「(前略)…上位概念化することができるのである。」と記載されているのを、「(前略)…上位概念化することができるのである。なお、記憶部において、当該比率と対応させて記憶されている設定値は、全て同じ値では、本発明の目的が達せないので、設定値は、少なくとも二種類以上存在する。」に訂正する。
(1)本件訂正前の特許請求の範囲
本件訂正前の特許請求の範囲の記載の全文は、次のとおりである。
【請求項1】
太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、
前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルを記憶している記憶部と、
現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、前記比率・設定差分値テーブルを参照して、算出した前記比率に対応する前記設定差分値を決定し、現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値を、前記PCS定格で割って、当該割った値を出力指定値とし、前記出力指令値を前記パワーコンディショナに送信して、前記パワーコンディショナの出力を制御する制御部とを備え、
現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値が、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値となっていることを特徴とする、出力制御装置。
【請求項2】
前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率を複数段階に分けてあり、消費電力が大きくなるに従って、設定差分値が大きくなることを特徴とする、請求項1に記載の出力制御装置。
【請求項3】
前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率が100[%]よりも大きい場合においても、前記設定差分値が登録されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の出力制御装置。
【請求項4】
現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値が0以下の場合、前記出力指令値を0とすることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の出力制御装置。
【請求項5】
前記比率・設定差分値テーブルは、書き換えることができることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の出力制御装置。
【請求項6】
太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置において実行される出力制御プログラムであって、
前記出力制御装置には、前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルが記憶されており、
前記出力制御装置に、
現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出させ、
前記比率・設定差分値テーブルを参照させ、
算出した前記比率に対応する前記設定差分値を決定させ、
現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値を、前記PCS定格で割って、当該割った値を出力指定値とさせ、
前記出力指令値を前記パワーコンディショナに送信して、前記パワーコンディショナの出力を制御させ、
現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値を、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値とすることを特徴とする、出力制御プログラム。
【請求項7】
現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値が0以下の場合、前記出力指令値を0とすることを特徴とする、請求項6に記載の出力制御プログラム。
【請求項8】
太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備と、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置とを備える太陽光発電自家消費システムであって、
前記出力制御装置は、
前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルを記憶している記憶部と、
現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、前記比率・設定差分値テーブルを参照して、算出した前記比率に対応する前記設定差分値を決定し、現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値を、前記PCS定格で割って、当該割った値を出力指定値とし、前記出力指令値を前記パワーコンディショナに送信して、前記パワーコンディショナの出力を制御する制御部とを備え、
現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値が、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値となっていることを特徴とする、太陽光発電自家消費システム。
【請求項9】
前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率を複数段階に分けてあり、消費電力が大きくなるに従って、設定差分値が大きくなることを特徴とする、請求項8に記載の太陽光発電自家消費システム。
【請求項10】
前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率が100[%]よりも大きい場合においても、前記設定差分値が登録されていることを特徴とする、請求項8又は9に記載の太陽光発電自家消費システム。
【請求項11】
現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値が0以下の場合、前記出力指令値を0とすることを特徴とする、請求項8~10のいずれかに記載の太陽光発電自家消費システム。
【請求項12】
前記比率・設定差分値テーブルは、書き換えることができることを特徴とする、請求項8~11のいずれかに記載の太陽光発電自家消費システム。
【請求項13】
太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、
前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を規定するための設定値を記憶している記憶部と、
現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、前記設定値を参照して、算出した前記比率に対応する前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定して、前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御する制御部とを備えることを特徴とする、出力制御装置。
【請求項14】
前記設定値は、現在の消費電力から差し引く設定差分値であり、
前記制御部は、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力から、前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項13に出力制御装置。
【請求項15】
前記設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、
前記制御部は、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を消費電力から引いた値として、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項13に出力制御装置。
【請求項16】
前記設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、
前記制御部は、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力に前記設定比値を乗算した値として、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項13に出力制御装置。
【請求項17】
太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置において実行される出力制御プログラムであって、
前記出力制御装置には、前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記パワーコンディショナの発電電力の上限値を規定するための設定値が記憶されており、
前記出力制御装置に、
現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出させ、
前記設定値を参照させ、
算出した前記比率に対応する前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定させ、
前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御させることを特徴とする、出力制御プログラム。
【請求項18】
前記設定値は、現在の消費電力から差し引く設定差分値であり、
前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力から、前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御させることを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。
【請求項19】
前記設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、
前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を消費電力から引いた値として、前記パワーコンディショナを制御させることを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。
【請求項20】
前記設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、
前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力に前記設定比値を乗算した値として、前記パワーコンディショナを制御させることを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。
【請求項21】
太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備と、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置とを備える太陽光発電自家消費システムであって、
前記出力制御装置は、
前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記パワーコンディショナの発電電力の上限値を規定するための設定値を記憶している記憶部と、
現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、前記設定値を参照して、算出した前記比率に対応する前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定して、前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御する制御部とを備えることを特徴とする、太陽光発電自家消費システム。
【請求項22】
前記設定値は、現在の消費電力から差し引く設定差分値であり、
前記制御部は、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力から、前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項21に太陽光発電自家消費システム。
【請求項23】
前記設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、
前記制御部は、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を消費電力から引いた値として、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項21に太陽光発電自家消費システム。
【請求項24】
前記設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、
前記制御部は、前記発電電力の上限値は、現在の消費電力に前記設定比値を乗算した値として、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項21に太陽光発電自家消費システム。
(2)本件訂正後の特許請求の範囲
本件訂正後の特許請求の範囲の全文は、次のとおりである。
【請求項1】
太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、
前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルを記憶している記憶部と、
現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、前記比率・設定差分値テーブルを参照して、算出した前記比率に対応する前記設定差分値を決定し、現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値を、前記PCS定格で割って、当該割った値を出力指令値とし、前記出力指令値を前記パワーコンディショナに送信して、前記パワーコンディショナの出力を制御する制御部とを備え、
前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、
現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値が、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値となっていることを特徴とする、出力制御装置。
【請求項2】
前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率を複数段階に分けてあり、前記消費電力が大きくなるに従って、前記設定差分値が大きくなることを特徴とする、請求項1に記載の出力制御装置。
【請求項3】
前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率が100[%]よりも大きい場合においても、前記設定差分値が登録されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の出力制御装置。
【請求項4】
現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値が0以下の場合、前記出力指令値を0とすることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の出力制御装置。
【請求項5】
前記比率・設定差分値テーブルは、書き換えることができることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の出力制御装置。
【請求項6】
太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置において実行される出力制御プログラムであって、
前記出力制御装置には、前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルが記憶されており、
前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、
前記出力制御装置に、
現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出させ、
前記比率・設定差分値テーブルを参照させ、
算出した前記比率に対応する前記設定差分値を決定させ、
現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値を、前記PCS定格で割って、当該割った値を出力指令値とさせ、
前記出力指令値を前記パワーコンディショナに送信して、前記パワーコンディショナの出力を制御させ、
現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値を、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値とすることを特徴とする、出力制御プログラム。
【請求項7】
現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値が0以下の場合、前記出力指令値を0とすることを特徴とする、請求項6に記載の出力制御プログラム。
【請求項8】
太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備と、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置とを備える太陽光発電自家消費システムであって、
前記出力制御装置は、
前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルを記憶している記憶部と、
現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、前記比率・設定差分値テーブルを参照して、算出した前記比率に対応する前記設定差分値を決定し、現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値を、前記PCS定格で割って、当該割った値を出力指令値とし、前記出力指令値を前記パワーコンディショナに送信して、前記パワーコンディショナの出力を制御する制御部とを備え、
前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、
現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値が、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値となっていることを特徴とする、太陽光発電自家消費システム。
【請求項9】
前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率を複数段階に分けてあり、前記消費電力が大きくなるに従って、前記設定差分値が大きくなることを特徴とする、請求項8に記載の太陽光発電自家消費システム。
【請求項10】
前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率が100[%]よりも大きい場合においても、前記設定差分値が登録されていることを特徴とする、請求項8又は9に記載の太陽光発電自家消費システム。
【請求項11】
現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値が0以下の場合、前記出力指令値を0とすることを特徴とする、請求項8~10のいずれかに記載の太陽光発電自家消費システム。
【請求項12】
前記比率・設定差分値テーブルは、書き換えることができることを特徴とする、請求項8~11のいずれかに記載の太陽光発電自家消費システム。
【請求項13】
太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、
前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を規定するための設定値を記憶している記憶部と、
現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、前記設定値を参照して、算出した前記比率に対応する前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定して、前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御する制御部とを備え、
前記記憶部において、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在していることを特徴とする、出力制御装置。
【請求項14】
前記設定値は、現在の前記消費電力から差し引く設定差分値であり、
前記制御部は、前記発電電力の上限値が現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項13に出力制御装置。
【請求項15】
前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、
前記制御部は、前記発電電力の上限値を、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を前記消費電力から引いた値にして、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項13に出力制御装置。
【請求項16】
前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、
前記制御部は、前記発電電力の上限値を、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算した値にして、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項13に出力制御装置。
【請求項17】
太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置において実行される出力制御プログラムであって、
前記出力制御装置には、前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記パワーコンディショナの発電電力の上限値を規定するための設定値が記憶されており、
前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在し、
前記出力制御装置に、
現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出させ、
前記設定値を参照させ、
算出した前記比率に対応する前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定させ、
前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御させることを特徴とする、出力制御プログラム。
【請求項18】
前記設定値は、現在の前記消費電力から差し引く設定差分値であり、
前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値が、現在の前記消費電力から、前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御させることを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。
【請求項19】
前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、
前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値は、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を消費電力から引いた値として、前記パワーコンディショナを制御させることを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。
【請求項20】
前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、
前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値は、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算した値として、前記パワーコンディショナを制御させることを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。
【請求項21】
太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備と、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置とを備える太陽光発電自家消費システムであって、
前記出力制御装置は、
前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記パワーコンディショナの発電電力の上限値を規定するための設定値を記憶している記憶部と、
現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、前記設定値を参照して、算出した前記比率に対応する前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定して、前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御する制御部とを備え、
前記記憶部において、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在していることを特徴とする、太陽光発電自家消費システム。
【請求項22】
前記設定値は、現在の前記消費電力から差し引く設定差分値であり、
前記制御部は、前記発電電力の上限値が現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項21に太陽光発電自家消費システム。
【請求項23】
前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、
前記制御部は、前記発電電力の上限値を、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を前記消費電力から引いた値にして、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項21に太陽光発電自家消費システム。
【請求項24】
前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、
前記制御部は、前記発電電力の上限値を、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算した値にして、前記パワーコンディショナを制御することを特徴とする、請求項21に記載の太陽光発電自家消費システム。
3 本件訂正の適否についての判断
以下、各訂正事項の適否について判断する。なお、以下では、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のことを「当初明細書等」といい、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のことを「本件明細書等」という。
(1)独立特許要件について
事案に鑑み、最初に特許法134条の2第9項で読み替えて準用する同法126条7項の適用の有無について判断する。
本件は、特許請求の範囲に記載された全ての請求項(請求項1~24)について無効審判を請求するものである(前記第1、1)から、本件では、特許無効審判の請求がされていない請求項が存在しない。
よって、本件訂正には、特許法134条の2第9項で読み替えて準用する同法126条7項の要件が課されない。
(2)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~5は、請求項1を直接的又は間接的に引用するから、請求項1~5は、特許法134条の2第3項に規定する一群の請求項(以下、単に「一群の請求項」という。)をなす。
本件訂正前の請求項7は、請求項6を直接的に引用するから、請求項6及び7は、一群の請求項をなす。
本件訂正前の請求項9~12は、請求項8を直接的又は間接的に引用するから、請求項8~12は、一群の請求項をなす。
本件訂正前の請求項14~16は、請求項13を直接的に引用するから、請求項13~16は、一群の請求項をなす。
本件訂正前の請求項18~20は、請求項17を直接的に引用するから、請求項17~20は、一群の請求項をなす。
本件訂正前の請求項22~24は、請求項21を直接的に引用するから、請求項21~24は、一群の請求項をなす。
そして、本件訂正は、上記一群の請求項ごとに請求したものであるから、特許法134条の2第3項の規定する要件を満たすと認められる。
(3)訂正事項1について
本件明細書等において、【発明を実施するための形態】を記載した【0039】以降には、「出力指令値」との記載は存在する(例えば、【0045】)が、「出力指定値」との記載は存在しないことから、本件訂正前の請求項1に記載された「出力指定値」は「出力指令値」の誤記であると解される。よって、本件訂正前の請求項1に記載された「出力指定値」を「出力指令値」に訂正する訂正事項1に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」に該当すると認められる。
「出力指令値」との記載は、当初明細書等の【0045】等に存在するため、訂正事項1に係る訂正は、当初明細書等に記載した範囲内においてするものであり、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項に規定する要件を満たすと認められる。
そうすると、訂正事項1に係る訂正は誤記を訂正するものに過ぎず、記載された内容を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条6項に規定する要件を満たすと認められる。
(4)訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正について、その目的及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無についての判断を以下のアに示し、新規事項追加の有無についての判断を以下のイに示し、請求人の主張についての判断を以下のウに示し、以下のエに訂正事項2についての判断の小括を示す。
ア 訂正の目的及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項2に係る訂正は、請求項1に係る発明を特定する「出力制御装置」について、「前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、」との限定を加えるものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当すると認められる。
そうすると、訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮をしており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法134条の2第9項で準用する同法126条6項に規定する要件を満たすと認められる。
イ 新規事項追加の有無
本件明細書等には、次の記載がある。
「【0064】
ここで、比率・設定差分値テーブルについて、図4を参照して説明する。なお、図4に示した比率・設定差分値テーブルは、あくまでも一例であり、本発明を限定するものではないことは言うまでもない。比率・設定差分値テーブルは、太陽光発電自家消費システム1の発電可能能力や負荷6での消費電力の大きさなどを考慮して、予め決定しておく。また、予め決定した比率・設定差分値テーブルを、入力部46を利用して、運用状況を見ながら、適宜、書き換えることができる。
【0065】
比率αは、消費電力÷PCS定格によって算出される。図4では、αをパーセント表示している。たとえば、0<α≦20[%]の場合(α1領域の場合)、設定差分値β1を、30[kW]と設定する。同様に、20<α≦40[%]の場合(α2領域の場合)、設定差分値β2を、40[kW]と設定し、40<α≦60[%]の場合(α3領域の場合)、設定差分値β3を、50[kW]と設定し、60<α≦80[%]の場合(α4領域の場合)、設定差分値β4を、60[kW]と設定し、80<α≦100[%]の場合(α5領域の場合)、設定差分値β5を、70[kW]と設定し、100<α≦110[%]の場合(α6領域の場合)、設定差分値β6を、70[kW]と設定する。」
前記記載によれば、本件明細書等には、「比率・設定差分値テーブル」には、「設定差分値」として、30[kW]、40[kW]、50[kW]、60[kW]及び70[kW]の5種類の値を用いる例が記載されており、かつ、前記例は「あくまでも一例であり、本発明を限定するものではない」(【0064】)のだから、本件明細書等には、【0065】に示した例に限られず、比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値が少なくとも二種類以上存在することが開示されていると認められる。
そうすると、訂正事項2に係る訂正によって導入される「前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、」との事項は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であると認められるから、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであると認められる。
よって、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項に規定する要件を満たすと認められる。
ウ 請求人の主張についての判断
請求人は、次のように主張する。
本件訂正は、本件訂正後の請求項1、6、8、13、17及び21に導入される「二種類以上存在し」との文言により特許請求の範囲を不明確とするものであるから、本件訂正の目的は、特許請求の範囲の減縮(特許法134条の2第1項ただし書き1号)に該当せず、また、明らかに同2号~4号のいずれにも該当しないため、本件訂正は特許法134条の2第1項ただし書きに規定する要件を満たしていない。(請求人陳述要領書(2)4頁2行「ア 請求人の主張は、合議体の理解の通りである。」との記載が指し示す審理事項通知書(2)第4、2を参照。なお、請求人陳述要領書(1)7頁2~5行の主張も同旨と解される。)
「設定差分値」は、例えば「電力」のような単位の次元を含まない、「数値」であるから、それ自体は無次元であり、そこに「種類」は存在しないから、本件訂正に係る「二種類以上存在し」との規定がいかなる技術的事項を特定しようとするものか、不明確である。(弁駁書5頁20~24行、請求人陳述要領書(1)7頁2~5行)
上記請求人の主張について検討する。
本件明細書等によれば、「比率・設定差分値テーブル」における「設定差分値」は、例えば30[kW](【0065】)のように、電力[W]の次元を持ち、無次元の値ではない点で、請求人の主張は前提において失当であるが、そもそも、設定差分値が無次元の値であるか否かは、設定差分値の値に複数の種類が存在するか否かとは無関係の事柄である。
本件明細書等の図4に示される比率・設定差分値テーブルを以下に示す。
【図4】
[図:0001437667000001.jpg]
上記比率・設定差分値テーブルには、設定差分値βとして、β1、β2、β3、β4、β5及びβ6の6つの値がある。そのうち、β5及びβ6は、いずれも同じ70[kW]という値であるから、これらの値は1種類の値として認識できる。すなわち、図4に示される比率・設定差分値テーブルでは、全部で6つの値を5種類の値に分類できると認識できる。
つまり、訂正事項2に係る訂正により導入される「前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、」という事項は、比率・設定差分値テーブルに現れる全ての設定差分値が同一の値となるのではなく、該テーブルには少なくとも2つの異なる値の設定差分値が存在するという事項を意味していると解釈できる。
そして、被請求人は、「訂正事項2によって、比率・設定差分値テーブルにおいて設定差分値が全て同一である場合が除外されており」(訂正請求書8頁14~15行)と主張しており、該主張は前記解釈と整合する。
そうすると、訂正事項2における「前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、」との記載は、比率・設定差分値テーブルに現れる設定差分値の値が全て同一であるものを除く意図であると明瞭に理解することができ、「二種類以上存在し」との文言により特許請求の範囲を不明確とするという請求人の主張は採用できない。
エ 訂正事項2についての小括
前記ア~ウによれば、訂正事項2に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当すると認められ、訂正事項2に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(5)訂正事項3について
本件訂正前の請求項2に記載された「消費電力」及び「設定差分値」は、それぞれ請求項2が引用する請求項1に記載された「消費電力」及び「設定差分値」と同じであるか否かがその文言のみからは明瞭ではなかったが、訂正事項3に係る訂正によって請求項2の「消費電力」及び「設定差分値」の前に「前記」を付すことにより、それぞれが請求項1に記載された「消費電力」及び「設定差分値」と同じであることが明瞭となる。よって、訂正事項3に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当すると認められる。
訂正事項3に係る訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件訂正前後において、請求項1を引用する請求項2に係る発明を特定する事項には何も違いがない。そうすると、訂正事項3に係る訂正は、本件明細書等に記載した範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(6)訂正事項4について
訂正事項4に係る訂正で導入される「前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、」との記載は、訂正事項2に係る訂正で導入される記載と同じであり、訂正事項4についても訂正事項2と同様のことがいえる。
よって、訂正事項4に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当すると認められ、訂正事項4に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(7)訂正事項5及び6について
訂正事項5及び6に係る訂正により、「出力指定値」を「出力指令値」に訂正することは、訂正事項1と同様である。
よって、訂正事項5及び6に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」に該当すると認められ、訂正事項5及び6に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(8)訂正事項7について
訂正事項7に係る訂正で導入される「前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、」との記載は、訂正事項2に係る訂正で導入される記載と同じであり、訂正事項7についても訂正事項2と同様のことがいえる。
よって、訂正事項7に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当すると認められ、訂正事項7に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(9)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正事項3と同様に、「消費電力」及び「設定差分値」の前に「前記」を付すものであり、訂正事項3と同様のことがいえる。
よって、訂正事項8に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当すると認められ、訂正事項8に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(10)訂正事項9について
訂正事項9に係る訂正について、その目的及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無についての判断を以下のアに示し、新規事項追加の有無についての判断を以下のイに示し、以下のウに訂正事項9についての判断の小括を示す。
ア 訂正の目的及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項9に係る訂正は、請求項13に係る発明を特定する「出力制御装置」について、「前記記憶部において、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在してい」るとの限定を加えるものである。
したがって、訂正事項9に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当すると認められる。
そうすると、訂正事項9に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮をしており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法134条の2第9項で準用する同法126条6項に規定する要件を満たすと認められる。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項9は「設定値」について言及するものであり、本件明細書等には、「一実施形態として、設定値は、現在の消費電力から差し引く設定差分値である。」(【0025】)との記載があることから、「設定値」には「設定差分値」が包含されると解される。そして、「設定差分値」について、その値が少なくとも二種類以上存在することについては、訂正事項2に係る訂正について判断したとおりである。
また、本件明細書等には、「また、一実施形態として、設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、制御部は、発電電力の上限値は、現在の消費電力に設定比値を乗算して、乗算して得られた値を消費電力から引いた値として、パワーコンディショナを制御するとよい。」(【0026】)との記載及び「また、一実施形態として、設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、制御部は、発電電力の上限値は、現在の消費電力に設定比値を乗算した値として、パワーコンディショナを制御するとよい。」(【0027】)との記載がある。これら2つの設定比値についての記載は、それぞれ「図8Cでは、たとえば、比率αが、0より大きく9以下の場合に、設定比の値として、3.5%を用いることが示されている(他の比率αも、同様)。これは、0<α≦9の場合に、消費電力に、3.5%をかけた値(PCS定格が500[kW]の場合は17.5「kW」)を、消費電力から引いた値を、パワーコンディショナの発電電力の上限値とするという意味である。」(【0101】)との記載、及び、「なお、消費電力に、設定比値3.5%をかけた値を、消費電力から引くということは、消費電力に、100-3.5=設定比値96.5%をかけるということと同じ意味である。したがって、比率・設定比値テーブルには、比率αに対応して、消費電力にかける設定比値をテーブル上で定義してもよい。」(【0102】)との記載に対応すると解され、一例として、以下に示す図8Cの比率・設定比値テーブルが示されている。
【図8C】
[図:0001437667000002.jpg]
上記比率・設定比値テーブルには、設定比値として、3.5%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%及び100%の9種類の値が示されており、かつ、上記テーブルは「比率・設定比値テーブル(例)」であるから、本件明細書等には、図8Cの例に限られず、比率・設定比値テーブルにおいて、前記設定比値の値が少なくとも二種類以上存在することが開示されていると認められる。
他方、本件明細書等には、「このように本発明を捉えた場合には、記憶部は、負荷の消費電力とパワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、パワーコンディショナの発電電力の上限値を規定するための設定値を記憶していると、上位概念化することができるのである。」(【0098】)との記載、及び「その他、消費電力とPCS定格との比率αに対応するように、パワーコンディショナの発電電力の上限値を決定付ける値として、種々の値を予めテーブルとして記憶しておき、制御部が、当該テーブルを参照して、発電電力の上限値を決定して、パワーコンディショナを制御する発明が、本発明に含まれるのである。そのため、本発明は、総称して、比率αに基づく荷重制御と呼ぶこととする。」(【0108】)との記載によれば、「設定値」とは、「設定差分値」及び「設定比値」に限定されない。そのような例として、「たとえば、図8Eに示したように、比率αに対応させて、標準差分値βと荷重比率γを決めておき、β×γの値[kW]を、消費電力から、差し引く値として定義づけてもよい。」(【0106】)との記載があり、図8Eを以下に示す。
【図8E】
[図:0001437667000003.jpg]
上記比率・設定値テーブルには、荷重比率γとして、100%、130%、160%、200%及び230%の5種類の値が示されており、かつ、上記テーブルは一例に過ぎないから、本件明細書等には、図8Eの例に限られず、比率・設定値テーブルにおいて、荷重比率γの値が少なくとも二種類以上存在することが開示されていると認められる。
そして、設定値は、「比率αに対応するように、パワーコンディショナの発電電力の上限値を決定付ける値として、種々の値を予めテーブルとして記憶してお」く(【0108】)ものであるから、設定差分値、設定比値及び荷重比率を包含するが、これらに限られるものでないことも明らかであり、そのような設定値が二種類以上存在することも、本件明細書等の開示から明らかといえる。
以上によれば、訂正事項9に係る訂正によって導入される「前記記憶部において、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在してい」るとの事項は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であると認められるから、訂正事項9に係る訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであると認められる。
よって、訂正事項9に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項に規定する要件を満たすと認められる。
ウ 訂正事項9についての小括
訂正事項9についての請求人の主張は前記(4)ウに示したとおりであり、当該主張については、図4のみならず、図8C及び図8Eについても前記(4)ウと同様のことがいえるため、採用できない。
以上によれば、訂正事項9に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当すると認められ、訂正事項9に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(11)訂正事項10について
訂正事項10に係る訂正は、「消費電力」の前に「前記」を付し、読点を1箇所削除した上で、助詞を訂正するものである。
「消費電力」に「前記」を付すことについては、訂正事項3と同様であり、読点の削除及び助詞の訂正は文意を変えていない。
よって、訂正事項10に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当すると認められ、訂正事項10に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(12)訂正事項11及び12について
訂正事項11及び12は、訂正事項10と同様である。
よって、訂正事項11及び12に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当すると認められ、訂正事項11及び12に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(13)訂正事項13について
訂正事項13に係る訂正により導入される「前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在し、」との事項は、訂正事項9と同様である。
よって、訂正事項13に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当すると認められ、訂正事項13に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(14)訂正事項14について
訂正事項14は、訂正事項10と同様である。
よって、訂正事項14に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当すると認められ、訂正事項14に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(15)訂正事項15及び16について
訂正事項15及び16に係る訂正は、「消費電力」の前に「前記」を付すものであり、訂正事項3と同様である。
よって、訂正事項15及び16に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当すると認められ、訂正事項15及び16に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(16)訂正事項17について
訂正事項17に係る訂正により導入される「前記記憶部において、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在してい」るとの事項は、訂正事項9と同じである。
よって、訂正事項17に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当すると認められ、訂正事項17に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(17)訂正事項18及び19について
訂正事項18及び19は、訂正事項10と同様である。
よって、訂正事項11及び12に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当すると認められ、訂正事項18及び19に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(18)訂正事項20について
訂正事項20に係る訂正は、訂正事項10と同様の訂正に加え、「請求項21に太陽光発電自家消費システム。」との記載を「請求項21に記載の太陽光発電自家消費システム。」に訂正することにより明瞭化したものであり、記載された内容に変更はない。
よって、訂正事項20に係る訂正の目的は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当すると認められ、訂正事項20に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすと認められる。
(19)訂正事項21について
訂正事項21に係る訂正の対象となる明細書【0016】は、課題を解決するための手段として、請求項1に係る発明に対応する事項を記載したものである。
そして、訂正事項1及び2により一群の請求項1~5の全てに対してなされる訂正と同様の訂正が、訂正事項21に係る訂正によって【0016】になされるため、特許請求の範囲と明細書との間で記載事項が整合し、それにより明細書の記載が明瞭になる。
よって、訂正事項21に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とし、同法134条の2第9項で準用する同法126条4項に規定する要件を満たすと認められる。
また、訂正事項21に係る訂正が、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは、訂正事項1及び2と同様である。
(20)訂正事項22について
訂正事項22に係る訂正の対象となる明細書【0021】は、課題を解決するための手段として、請求項6に係る発明に対応する事項を記載したものである。
そして、訂正事項4及び5により一群の請求項6及び7の全てに対してなされる訂正と同様の訂正が、訂正事項22に係る訂正によって【0021】になされるため、特許請求の範囲と明細書との間で記載事項が整合し、それにより明細書の記載が明瞭になる。
よって、訂正事項22に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とし、同法134条の2第9項で準用する同法126条4項に規定する要件を満たすと認められる。
また、訂正事項22に係る訂正が、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは、訂正事項4及び5と同様である。
(21)訂正事項23について
訂正事項23に係る訂正の対象となる明細書【0023】は、課題を解決するための手段として、請求項8に係る発明に対応する事項を記載したものである。
そして、訂正事項6及び7により一群の請求項8~12の全てに対してなされる訂正と同様の訂正が、訂正事項23に係る訂正によって【0023】になされるため、特許請求の範囲と明細書との間で記載事項が整合し、それにより明細書の記載が明瞭になる。
よって、訂正事項23に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とし、同法134条の2第9項で準用する同法126条4項に規定する要件を満たすと認められる。
また、訂正事項23に係る訂正が、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは、訂正事項6及び7と同様である。
(22)訂正事項24について
訂正事項24に係る訂正の対象となる明細書【0024】は、課題を解決するための手段として、請求項13に係る発明に対応する事項を記載したものである。
そして、訂正事項9により一群の請求項13~16の全てに対してなされる訂正と同様の訂正が、訂正事項24に係る訂正によって【0024】になされるため、特許請求の範囲と明細書との間で記載事項が整合し、それにより明細書の記載が明瞭になる。
よって、訂正事項24に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とし、同法134条の2第9項で準用する同法126条4項に規定する要件を満たすと認められる。
また、訂正事項24に係る訂正が、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは、訂正事項9と同様である。
(23)訂正事項25について
訂正事項25に係る訂正の対象となる明細書【0025】は、課題を解決するための手段として、請求項14及び22に係る発明に対応する事項を記載したものである。
そして、請求項14及び22とそれぞれ一群をなす請求項13~16及び21~24に対してなされる訂正事項10及び18に係る訂正と同様の訂正が、訂正事項25に係る訂正によって【0025】になされるため、特許請求の範囲と明細書との間で記載事項が整合し、それにより明細書の記載が明瞭になる。
よって、訂正事項25に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とし、同法134条の2第9項で準用する同法126条4項に規定する要件を満たすと認められる。
また、訂正事項25に係る訂正が、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは、訂正事項10及び18と同様である。
(24)訂正事項26について
訂正事項26に係る訂正の対象となる明細書【0026】は、課題を解決するための手段として、請求項15及び23に係る発明に対応する事項を記載したものである。
そして、請求項15及び23とそれぞれ一群をなす請求項13~16及び21~24に対してなされる訂正事項11及び19に係る訂正と同様の訂正が、訂正事項26に係る訂正によって【0026】になされるため、特許請求の範囲と明細書との間で記載事項が整合し、それにより明細書の記載が明瞭になる。
よって、訂正事項26に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とし、同法134条の2第9項で準用する同法126条4項に規定する要件を満たすと認められる。
また、訂正事項26に係る訂正が、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは、訂正事項11及び19と同様である。
(25)訂正事項27について
訂正事項27に係る訂正の対象となる明細書【0027】は、課題を解決するための手段として、請求項16及び24に係る発明に対応する事項を記載したものである。
そして、請求項16及び24とそれぞれ一群をなす請求項13~16及び21~24に対してなされる訂正事項12及び20に係る訂正と同様の訂正が、訂正事項27に係る訂正によって【0027】になされるため、特許請求の範囲と明細書との間で記載が整合し、それにより明細書の記載が明瞭になる。
よって、訂正事項27に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とし、同法134条の2第9項で準用する同法126条4項に規定する要件を満たすと認められる。
また、訂正事項27に係る訂正が、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは、訂正事項12及び20と同様である。
(26)訂正事項28について
訂正事項28に係る訂正の対象となる明細書【0028】は、課題を解決するための手段として、請求項17に係る発明に対応する事項を記載したものである。
そして、訂正事項13により一群の請求項17~20の全てに対してなされる訂正と同様の訂正が、訂正事項28に係る訂正によって【0028】になされるため、特許請求の範囲と明細書との間で記載事項が整合し、それにより明細書の記載が明瞭になる。
よって、訂正事項28に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とし、同法134条の2第9項で準用する同法126条4項に規定する要件を満たすと認められる。
また、訂正事項28に係る訂正が、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは、訂正事項13と同様である。
(27)訂正事項29について
訂正事項29に係る訂正の対象となる明細書【0029】は、課題を解決するための手段として、請求項21に係る発明に対応する事項を記載したものである。
そして、訂正事項17により一群の請求項21~24の全てに対してなされる訂正と同様の訂正が、訂正事項29に係る訂正によって【0029】になされるため、特許請求の範囲と明細書との間で記載事項が整合し、それにより明細書の記載が明瞭になる。
よって、訂正事項29に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とし、同法134条の2第9項で準用する同法126条4項に規定する要件を満たすと認められる。
また、訂正事項29に係る訂正が、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは、訂正事項17と同様である。
(28)訂正事項30について
訂正事項30に係る訂正の対象となる明細書【0069】は、設定差分値による作用又は効果を記載したものであり、訂正事項30に係る訂正は、当該作用又は効果を奏するために必要な要件を「なお、比率・設定差分値テーブルにおいて、設定差分値の値が全て同じでは、本発明の目的が達せないので、設定差分値は、少なくとも二種類以上存在する。」との記載として導入するものである。
そして、前記(4)ウで示したように、訂正事項2、4及び7によりそれぞれ一群の請求項1~5、6~7及び8~12の全てに対してなされる訂正すなわち「前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、」という記載を導入する訂正は、比較・設定差分値テーブルに現れる全ての設定差分値が同一の値となるのではないという事項を意味していると解釈されるので、訂正事項30に係る訂正により導入される事項と整合する。
加えて、請求項13、17及び21に記載の「設定値」は、「設定差分値」を包含する概念であると解されるため、訂正事項9、13及び17によりそれぞれ一群の請求項13~16、17~20及び21~24の全てに対してなされる訂正すなわち「前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在してい」るという記載を導入する訂正は、比較・設定差分値テーブルに現れる全ての設定差分値が同一の値となるのではないという事項を包含していると解釈されるので、訂正事項30に係る訂正により導入される事項と整合する。
以上によれば、訂正事項30に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とし、同法134条の2第9項で準用する同法126条4項に規定する要件を満たすと認められる。
また、訂正事項30に係る訂正が、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは、訂正事項2と同様である。
(29)訂正事項31について
訂正事項31に係る訂正の対象となる明細書【0098】は、消費電力とPCS定格との比率に対応させて設定値を記憶しているという形に本件発明の実施形態を上位概念化することを記載したものであり、訂正事項31に係る訂正は、設定値による作用又は効果を奏するために必要な要件を「なお、記憶部において、当該比率と対応させて記憶されている設定値は、全て同じ値では、本発明の目的が達せないので、設定値は、少なくとも二種類以上存在する。」との記載として導入するものである。
そして、訂正事項31で導入される前記記載は、訂正事項30と同様のことを記載しており、設定差分値を設定値に上位概念化し、比率・設定差分値テーブルを記憶部に上位概念化したに過ぎないため、訂正事項2、4、7、9、13及び17に係る訂正によりそれぞれの一群の請求項である請求項1~5、6及び7、8~12、13~16、17~20並びに21~24に導入される記載と整合する。
以上によれば、訂正事項31に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とし、同法134条の2第9項で準用する同法126条4項に規定する要件を満たすと認められる。
また、訂正事項31に係る訂正が、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは、訂正事項2と同様である。
4 訂正請求についてのむすび
前記3のとおりであるから、本件訂正は訂正要件を満たしており、適法である。
よって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~5〕、〔6、7〕、〔8~12〕、〔13~16〕、〔17~20〕及び〔21~24〕について訂正することを認める。
第4 本件発明
前記第3、4のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~24に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明24」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その特許請求の範囲は、前記第3、2(2)に示したとおりである。なお、後の参照の便宜のため、請求項1~24を以下の1A~24Cに分説し、「発明特定事項1A」のようにして参照する。
【請求項1】
1A 太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、
1B 前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルを記憶している記憶部と、
1C1 現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、
1C2 前記比率・設定差分値テーブルを参照して、算出した前記比率に対応する前記設定差分値を決定し、
1C3 現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値を、前記PCS定格で割って、当該割った値を出力指令値とし、
1C 前記出力指令値を前記パワーコンディショナに送信して、前記パワーコンディショナの出力を制御する制御部とを備え、
1D 前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、
1E 現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値が、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値となっている
1F ことを特徴とする、出力制御装置。
【請求項2】
2A 前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率を複数段階に分けてあり、
2B 前記消費電力が大きくなるに従って、前記設定差分値が大きくなる
2C ことを特徴とする、請求項1に記載の出力制御装置。
【請求項3】
3A 前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率が100[%]よりも大きい場合においても、前記設定差分値が登録されている
3B ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の出力制御装置。
【請求項4】
4A 現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値が0以下の場合、前記出力指令値を0とする
4B ことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の出力制御装置。
【請求項5】
5A 前記比率・設定差分値テーブルは、書き換えることができる
5B ことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の出力制御装置。
【請求項6】
6A 太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置において実行される出力制御プログラムであって、
6B 前記出力制御装置には、前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルが記憶されており、
6C 前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、
6D 前記出力制御装置に、
6D1 現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出させ、
6D2 前記比率・設定差分値テーブルを参照させ、
6D3 算出した前記比率に対応する前記設定差分値を決定させ、
6D4 現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値を、前記PCS定格で割って、当該割った値を出力指令値とさせ、
6D5 前記出力指令値を前記パワーコンディショナに送信して、前記パワーコンディショナの出力を制御させ、
6E 現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値を、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値とする
6F ことを特徴とする、出力制御プログラム。
【請求項7】
7A 現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値が0以下の場合、前記出力指令値を0とする
7B ことを特徴とする、請求項6に記載の出力制御プログラム。
【請求項8】
8A 太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備と、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置とを備える太陽光発電自家消費システムであって、
8B 前記出力制御装置は、
8B1 前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルを記憶している記憶部と、
8B2A 現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、
8B2B 前記比率・設定差分値テーブルを参照して、算出した前記比率に対応する前記設定差分値を決定し、
8B2C 現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値を、前記PCS定格で割って、当該割った値を出力指令値とし、
8B2 前記出力指令値を前記パワーコンディショナに送信して、前記パワーコンディショナの出力を制御する制御部と
8B を備え、
8C 前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、
8D 現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値が、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値となっている
8E ことを特徴とする、太陽光発電自家消費システム。
【請求項9】
9A 前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率を複数段階に分けてあり、
9B 前記消費電力が大きくなるに従って、前記設定差分値が大きくなる
9C ことを特徴とする、請求項8に記載の太陽光発電自家消費システム。
【請求項10】
10A 前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率が100[%]よりも大きい場合においても、前記設定差分値が登録されている
10B ことを特徴とする、請求項8又は9に記載の太陽光発電自家消費システム。
【請求項11】
11A 現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値が0以下の場合、前記出力指令値を0とする
11B ことを特徴とする、請求項8~10のいずれかに記載の太陽光発電自家消費システム。
【請求項12】
12A 前記比率・設定差分値テーブルは、書き換えることができる
12B ことを特徴とする、請求項8~11のいずれかに記載の太陽光発電自家消費システム。
【請求項13】
13A 太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、
13B 前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を規定するための設定値を記憶している記憶部と、
13C1 現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、
13C2 前記設定値を参照して、算出した前記比率に対応する前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定して、
13C3 前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御する
13C 制御部とを備え、
13D 前記記憶部において、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在している
13E ことを特徴とする、出力制御装置。
【請求項14】
14A 前記設定値は、現在の前記消費電力から差し引く設定差分値であり、
14B 前記制御部は、前記発電電力の上限値が現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御する
14C ことを特徴とする、請求項13に出力制御装置。
【請求項15】
15A 前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、
15B 前記制御部は、前記発電電力の上限値を、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を前記消費電力から引いた値にして、前記パワーコンディショナを制御する
15C ことを特徴とする、請求項13に出力制御装置。
【請求項16】
16A 前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、
16B 前記制御部は、前記発電電力の上限値を、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算した値にして、前記パワーコンディショナを制御する
16C ことを特徴とする、請求項13に出力制御装置。
【請求項17】
17A 太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置において実行される出力制御プログラムであって、
17B 前記出力制御装置には、前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記パワーコンディショナの発電電力の上限値を規定するための設定値が記憶されており、
17C 前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在し、
17D 前記出力制御装置に、
17D1 現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出させ、
17D2 前記設定値を参照させ、
17D3 算出した前記比率に対応する前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定させ、
17D4 前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御させる
17E ことを特徴とする、出力制御プログラム。
【請求項18】
18A 前記設定値は、現在の前記消費電力から差し引く設定差分値であり、
18B 前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値が、現在の前記消費電力から、前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御させる
18C ことを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。
【請求項19】
19A 前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、
19B 前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値は、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を消費電力から引いた値として、前記パワーコンディショナを制御させる
19C ことを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。
【請求項20】
20A 前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、
20B 前記出力制御装置に、前記発電電力の上限値は、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算した値として、前記パワーコンディショナを制御させる
20C ことを特徴とする、請求項17に出力制御プログラム。
【請求項21】
21A 太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備と、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置とを備える太陽光発電自家消費システムであって、
21B 前記出力制御装置は、
21B1 前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記パワーコンディショナの発電電力の上限値を規定するための設定値を記憶している記憶部と、
21B2A 現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、
21B2B 前記設定値を参照して、算出した前記比率に対応する前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定して、
21B2C 前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御する
21B2 制御部と
21B を備え、
21C 前記記憶部において、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在している
21D ことを特徴とする、太陽光発電自家消費システム。
【請求項22】
22A 前記設定値は、現在の前記消費電力から差し引く設定差分値であり、
22B 前記制御部は、前記発電電力の上限値が現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値となるように、前記パワーコンディショナを制御する
22C ことを特徴とする、請求項21に太陽光発電自家消費システム。
【請求項23】
23A 前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、
23B 前記制御部は、前記発電電力の上限値を、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を前記消費電力から引いた値にして、前記パワーコンディショナを制御する
23C ことを特徴とする、請求項21に太陽光発電自家消費システム。
【請求項24】
24A 前記設定値は、現在の前記消費電力に乗算する設定比値であり、
24B 前記制御部は、前記発電電力の上限値を、現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算した値にして、前記パワーコンディショナを制御する
24C ことを特徴とする、請求項21に記載の太陽光発電自家消費システム。
第5 本件の明細書及び図面の記載事項
本件訂正後の本件の明細書及び図面には、以下の記載がある。
1 「【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池による発電電力を自家消費するためのシステムで用いられるパワーコンディショナの出力制御装置及び出力制御プログラムに関し、より特定的には、逆潮流が発生しないようにするための出力制御装置及び出力制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池による発電電力と、電力送配電網から供給される電力とを連系させて、並列的に負荷を駆動するための太陽光発電システムが知られている。
【0003】
当該太陽光発電システムでは、太陽電池による発電電力が、電力送配電網に逆流(以下、「逆潮流」という。)することを防止するために、太陽電池による発電電力を制御して、負荷による消費電力以上の発電を太陽電池が行わないようにするために、パワーコンディショナの出力が制御されている。
【0004】
逆潮流を防止する方法としては、主に、従来、2つの方法が存在する。1つは、等差制御と呼ばれるものである。等差制御と呼ばれる方法においては、消費電力に対して、一定の電力を差し引いた電力を、パワーコンディショナの発電電力の上限値とする。図9は、従来の等差制御を用いた場合のシミュレーション結果の一例を示す図である。図9では、太い実線の消費電力に対して、-30kWの電力を常に差し引いた値を、破線で示している。図9の破線で示した電力が、パワーコンディショナの発電電力の上限値として、制御される。図9に示したように、等差制御においては、消費電力とパワーコンディショナの発電電力の上限値とは、常に、一定の差(図9では30kWの差)を有するということになる。
【0005】
もう一つの方法は、等比制御と呼ばれるものである。等比制御においては、消費電力に対して、一定の比率をかけた電力を、パワーコンディショナの発電電力の上限値とする。図10は、従来の等比制御によるシミュレーション結果の一例を示す図である。図10では、太い実線の消費電力に対して、80%をかけた電力を細い破線で示している。図10の破線で示した電力が、パワーコンディショナの発電電力の上限値として制御される。図10に示したように、等比制御においては、パワーコンディショナの発電電力の上限値は、消費電力に対して、常に一定の比率をかけた値となっているのである。
【0006】
等比制御の例として、特許文献1に記載の装置が存在する。特許文献1に記載の装置においては、インバーター(「パワーコンディショナ」に相当する)の出力を制御して、たとえば、負荷への供給電力(「負荷の消費電力」に相当する)の90%がインバーターの出力となるように、制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実願昭59-142040号のマイクロフィルム
【特許文献2】特許第6364567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図9に示す等差制御の場合、パワーコンディショナの発電電力の上限値は、常に、消費電力に対して、一定の電力分だけ下回っていることとなるので、パワーコンディショナの出力電力が消費電力を上回って、上回った分の電力が、系統に対して逆潮流してしまうということが回避されているかのように見える。しかし、実際は、パワーコンディショナの制御に要するタイムラグがあり、瞬時にパワーコンディショナの出力を制御することはできないので、消費電力が急激に変化した場合、パワーコンディショナ制御が追いつかず、系統への逆潮流が発生してしまう場合がある。
【0009】
図10に示す等比制御の場合、パワーコンディショナの発電電力の上限値は、常に消費電力に対して、一定の比率をかけた分だけ下回っていることになるので、パワーコンディショナの出力電力が消費電力を上回って上回った分の電力が系統に対して逆潮流してしまうということが回避されているかのように見える。しかし、実際は先述した通り、瞬時にパワーコンディショナの出力を制御することができないので、例えば、消費電力が小さい領域(たとえば、図10の時間46までの領域など)においては、消費電力が急激に変化した場合、パワーコンディショナの制御が追いつかず、系統への逆潮流が発生してしまう場合がある。
【0010】
図11は、図9に示した等差制御と、図10に示した等比制御によるシミュレーション結果を、重ね合わせた図である。
【0011】
等比制御においては、消費電力が大きくなればなるほど、消費電力と発電電力との差が大きくなることとなる。たとえば、図11の時間46辺りから、消費電力と発電電力との開きが大きくなりだしていることが確認できる。等比制御による消費電力と発電電力との開きは、太陽電池が発電することができるにもかかわらず、パワーコンディショナの出力を抑制することで、確実な逆潮流を回避していることを意味している。
【0012】
上述したとおり、等差制御においては消費電力が大きくなればなるほど、消費電力が急激に変化した場合、逆潮流のリスクが高くなるが、等比制御においては消費電力が大きい状態においては、パワーコンディショナの出力が大きく抑制されることとなるので、逆潮流の可能性は低くなる。しかし、消費電力が大きい状況において、等比制御によっては、発電効率が低下していることとなるのである。ここで、発電効率が低下するとは、太陽電池が電力を供給することができる日照状況である関わらず、パワーコンディショナからの出力を制御することで、必要な電力を十分に取り出していないということを意味する。
【0013】
このように、等差制御および等比制御には、それぞれの問題点が存在する。その問題点を、実質的に解決しようと試みているのが、特許文献2に記載のシステムであるといえる。特許文献2に記載のシステムにおいては、発電電力の上限値と消費電力との差分が、消費電力の1次関数となるように設定している。すなわち、一次関数の傾きaに相当する部分を等比制御による比率とし、一次関数の切片bに相当する部分を等差制御による定数として、等比制御と等差制御とを組み合わせることで、発電効率を向上させようとしているのである。
【0014】
しかし、特許文献2の記載において、aとbの値の決め方ついては、抽象的に記載されているに過ぎず、また、特許文献2における説明は難解なため、実際に、具体的に、aとbの値をどのような値として決定していけばよいのか不明である。
【0015】
それゆえ、本発明は、パワーコンディショナの制御を分かりやすいものとしながらも、系統への逆潮流を回避しつつ、かつ、太陽電池の発電電力をできる限り有効活用することができる出力制御装置、出力制御プログラム、及び太陽光自家消費システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。本発明は、太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、負荷の消費電力とパワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルを記憶している記憶部と、現在の消費電力とPCS定格との比率を算出し、比率・設定差分値テーブルを参照して、算出した比率に対応する設定差分値を決定し、現在の消費電力から決定後の設定差分値を引いた値を、PCS定格で割って、当該割った値を出力指令値とし、出力指令値をパワーコンディショナに送信して、パワーコンディショナの出力を制御する制御部とを備えることを特徴とする、出力制御装置である。
比率・設定差分値テーブルにおいて、設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在する。
現在の消費電力から決定後の設定差分値を引いた値が、パワーコンディショナの出力電力の上限値となっている。
【0017】
好ましくは、比率・設定差分値テーブルは、比率を複数段階に分けてあり、消費電力が大きくなるに従って、設定差分値が大きくなるとよい。
【0018】
好ましくは、比率・設定差分値テーブルは、比率が100[%]よりも大きい場合においても、設定差分値が登録されているとよい。
【0019】
好ましくは、現在の消費電力から設定差分値を引いた値が0以下の場合、出力指令値を0とするとよい。
【0020】
好ましくは、比率・設定差分値テーブルは、書き換えることができるとよい。
【0021】
また、本発明は、太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置において実行される出力制御プログラムであって、出力制御装置には、負荷の消費電力とパワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルが記憶されており、
比率・設定差分値テーブルにおいて、設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、
出力制御装置に、
現在の消費電力とPCS定格との比率を算出させ、
比率・設定差分値テーブルを参照させ、
算出した比率に対応する設定差分値を決定させ、
現在の消費電力から決定後の設定差分値を引いた値を、PCS定格で割って、当該割った値を出力指令値とさせ、
出力指令値をパワーコンディショナに送信して、パワーコンディショナの出力を制御させ、
現在の消費電力から決定後の設定差分値を引いた値を、パワーコンディショナの出力電力の上限値とすることを特徴とする。
【0022】
好ましくは、現在の消費電力から設定差分値を引いた値が0以下の場合、出力指令値を0とするとよい。
【0023】
また、本発明は、太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備と、パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置とを備える太陽光発電自家消費システムであって、
出力制御装置は、
負荷の消費電力とパワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルを記憶している記憶部と、
現在の消費電力とPCS定格との比率を算出し、比率・設定差分値テーブルを参照して、算出した比率に対応する設定差分値を決定し、現在の消費電力から決定後の設定差分値を引いた値を、PCS定格で割って、当該割った値を出力指令値とし、出力指令値をパワーコンディショナに送信して、パワーコンディショナの出力を制御する制御部とを備え、
比率・設定差分値テーブルにおいて、設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在する。
現在の消費電力から決定後の設定差分値を引いた値が、パワーコンディショナの出力電力の上限値となっていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、負荷の消費電力とパワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、パワーコンディショナの出力電力の上限値を規定するための設定値を記憶している記憶部と、現在の消費電力とPCS定格との比率を算出し、設定値を参照して、算出した比率に対応するパワーコンディショナの出力電力の上限値を決定して、パワーコンディショナの出力電力が上限値以内となるように、パワーコンディショナを制御する制御部とを備える。記憶部において、設定値の値は、少なくとも二種類以上存在している。
【0025】
一実施形態として、設定値は、現在の消費電力から差し引く設定差分値である。制御部は、発電電力の上限値が現在の消費電力から設定差分値を引いた値となるように、パワーコンディショナを制御するとよい。
【0026】
また、一実施形態として、設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、制御部は、発電電力の上限値を、現在の消費電力に設定比値を乗算して、乗算して得られた値を消費電力から引いた値にして、パワーコンディショナを制御するとよい。
【0027】
また、一実施形態として、設定値は、現在の消費電力に乗算する設定比値であり、制御部は、発電電力の上限値を、現在の消費電力に設定比値を乗算した値にして、パワーコンディショナを制御するとよい。
【0028】
また、本発明は、太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置において実行される出力制御プログラムであって、
出力制御装置には、負荷の消費電力とパワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、パワーコンディショナの発電電力の上限値を規定するための設定値が記憶されており、
設定値の値は、少なくとも二種類以上存在し、
出力制御装置に、
現在の消費電力とPCS定格との比率を算出させ、
設定値を参照させ、
算出した比率に対応するパワーコンディショナの出力電力の上限値を決定させ、
パワーコンディショナの出力電力が上限値以内となるように、パワーコンディショナを制御させることを特徴とする。
【0029】
また、本発明は、
太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備と、パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置とを備える太陽光発電自家消費システムであって、
出力制御装置は、
負荷の消費電力とパワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、パワーコンディショナの発電電力の上限値を規定するための設定値を記憶している記憶部と、
現在の消費電力とPCS定格との比率を算出し、設定値を参照して、算出した比率に対応するパワーコンディショナの出力電力の上限値を決定して、パワーコンディショナの出力電力が上限値以内となるように、パワーコンディショナを制御する制御部とを備えることを特徴とする。
記憶部において、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在している。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、比率・設定差分値テーブルという分かりやすいテーブルを用いて、逆潮流の回避の設定を行うことができるので、パワーコンディショナの制御を分かりやすいものとすることができる。また、一律同じ値の差分値を用いて制御する等差制御と比べて、消費電力とPCS定格との比率に応じて、設定差分値を決めることができるので、発電電力上限値に余裕を持たせることができつつ、逆潮流の回避を実現しつつ、等比制御と比べて、発電電力上限値を高く設定することができるので、太陽電池の発電電力を出来る限り有効活用することができる。
【0031】
また、比率・設定差分値テーブルは、時間毎の設定や季節毎に設定されるものではないので、予め想定している消費電力の変化の動向や季節毎の日照条件の変化の動向に左右されることはなく、パワーコンディショナの発電電力の上限値を制御することが可能となるので、時刻や季節に依存することのない発電力の制御が可能となる。
【0032】
また、加えて、消費電力が大きくなっている場合に、設定差分値を大きくすることで、余裕マージンが増え、逆潮流の回避が可能となる。
【0033】
また、比率が100[%]よりも大きい場合でも設定差分値を設けることで、急な消費電力の減少が生じたとしても、逆潮流の回避が可能となる。
【0034】
低電力時にパワーコンディショナの動作が不安定となるおそれがあり、逆潮流の可能性があるが、現在の消費電力から設定差分値を引いた値が0以下の場合、出力指令値を0とすることで、低電力時にパワーコンディショナを動作させなくてもよくなるので、逆潮流の回避が可能となる。
【0035】
比率・設定差分値テーブルは、書き換えることができるようにすることで、実際運用した結果に基づいて、当該テーブルを、適切なものとすることができる。
【0036】
負荷の消費電力とパワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、パワーコンディショナの発電電力の上限値を規定するための設定値を記憶しておいて、現在の消費電力とPCS定格との比率を算出し、設定値を参照して、算出した比率に対応する発電電力の上限値を決定して、パワーコンディショナの出力電力の上限値が、当該発電電力の上限値となるように、パワーコンディショナを制御することによっても、予め想定している消費電力の変化の動向や季節毎の日照条件の変化の動向に左右されることはなく、パワーコンディショナの発電電力の上限値を制御することが可能となるので、時刻や季節に依存することのない発電力の制御が可能となる。
【0037】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。」
2 「 【0061】
図3を用いて、出力指令値算出処理について説明する。
【0062】
出力制御装置4は、現在の受電電力とPCS発電電力とを足し合わせた電力を現在の消費電力と定義する(ステップS31)。次に、出力制御装置4は、現在の消費電力÷PCS定格を計算し、現在の消費電力とPCS定格との比率αを算出する(ステップS32)。
【0063】
次に、出力制御装置4は、比率・設定差分値テーブルを参照して、設定差分値βを決定する(ステップS33)。
【0064】
ここで、比率・設定差分値テーブルについて、図4を参照して説明する。なお、図4に示した比率・設定差分値テーブルは、あくまでも一例であり、本発明を限定するものではないことは言うまでもない。比率・設定差分値テーブルは、太陽光発電自家消費システム1の発電可能能力や負荷6での消費電力の大きさなどを考慮して、予め決定しておく。また、予め決定した比率・設定差分値テーブルを、入力部46を利用して、運用状況を見ながら、適宜、書き換えることができる。
【0065】
比率αは、消費電力÷PCS定格によって算出される。図4では、αをパーセント表示している。たとえば、0<α≦20[%]の場合(α1領域の場合)、設定差分値β1を、30[kW]と設定する。同様に、20<α≦40[%]の場合(α2領域の場合)、設定差分値β2を、40[kW]と設定し、40<α≦60[%]の場合(α3領域の場合)、設定差分値β3を、50[kW]と設定し、60<α≦80[%]の場合(α4領域の場合)、設定差分値β4を、60[kW]と設定し、80<α≦100[%]の場合(α5領域の場合)、設定差分値β5を、70[kW]と設定し、100<α≦110[%]の場合(α6領域の場合)、設定差分値β6を、70[kW]と設定する。
【0066】
比率αが100[%]よりも大きい場合、消費電力がPCS定格を上回っているのであるから最大限発電したとしても良いように思うが、消費電力が急に低下した場合、最大限発電していると、パワーコンディショナの制御が追いつかずに、逆潮流を生じてしまうないしPRRが動作する場合がある。そのため比率αが100[%]よりも大きい場合でも、安全マージンを見て設定差分値を設定しておくのが好ましい。
【0067】
また、ここでは、比率αが110[%]の場合まで、設定差分値βを定義しているが、110[%]を超えても、設定差分値βを定義してもよい。どの比率αまで、設定差分値βを定義するかは、適宜決定すればよい。
【0068】
ただし、100[%]よりも大きい場合に、設定差分値を設定するかどうかは任意であり、本発明を限定するものではない。
【0069】
図4に示すように、好ましくは、比率αが大きくなるほど、設定差分値βを大きくする。これにより、消費電力が大きい領域において、急激に消費電力が低下としたとしても、設定差分値βに余裕を持たせることになるので、発電電力が消費電力を上回って、逆潮流が発生するという状況を回避することが可能となる。
なお、比率・設定差分値テーブルにおいて、設定差分値の値が全て同じでは、本発明の目的が達せないので、設定差分値は、少なくとも二種類以上存在する。」
3 「 【0080】
図5に示す例では、比率αが、40<α≦60[%]の範囲である場合を示しているが、このときは、図4の比率・差分テーブルを用いる場合、設定差分値βとして、β3=50[kW]が用いられることとなる。すなわち、α3領域において、P(t)=S(t)-50[kW]となっているのである。
【0081】
このような関係から、パワーコンディショナ3の出力上限値の時間変化P(t)は、消費電力の時間変化S(t)から、定数βを引いたものとなり、以下のような関係式1を有する。
<関係式1>
P(t)=S(t)-β
但し、βは、時間tにおける消費電力/PCS定格によって求められる比率αに応じて予め定義されている複数の定数である。
【0082】
なお、上記関係式1は、以下のように等価な関係式に変形できる。
<関係式2>
S(t)-P(t)=β
但し、βは、時間tにおける消費電力/PCS定格によって求められる比率αに応じて予め定義されている複数の定数である。
【0083】
関係式2によって、本実施形態では、消費電力と発電電力の上限値との差分は、定数となっていることが分かり、特許文献2のように、消費電力と発電電力の上限値との差分が、消費電力の一次関数となっているものではないことが分かる。
【0084】
図6を用いて、単純な例を使用して、S(t)とP(t)がどのように変化するかを説明する。図6に示す例では、消費電力が0[kW]から、PCS定格の110%まで上昇し、その後、消費電力が0[kW]まで、減少した場合を示している。この場合、図6の縦軸に示したように、それぞれのα領域において、設定差分値βが決定される。図6に示されているように、消費電力が大きくなればなるほど、設定差分値βが大きくなり、パワーコンディショナ3の出力上限値(発電電力の上限値)と消費電力との間に、余裕を持たせることができる。これによって、消費電力が急激に低下したとしても、逆潮流が生じることを、回避することができる。
【0085】
次に、図7を用いて、消費電力とパワーコンディショナ3の出力上限値(発電電力の上限値)との差分がどのように変化するかについて、図6の単純な例を用いて説明する。
【0086】
図6に示すように、消費電力とパワーコンディショナ3の出力上限値(発電電力の上限値)との差分は、β1~β6のいずれかの値をとることとなるので、各α領域における時間tでは、消費電力とパワーコンディショナ3の出力上限値(発電電力の上限値)との差分は、一定の定数となっている。したがって、消費電力と発電電力の上限値との差分の時間変化をb(t)とした場合、b(t)は、図7に示すように変化する。よって、消費電力とパワーコンディショナ3の出力上限値(発電電力の上限値)との差分の時間変化b(t)は、定数関数となる。これは、図6に示す例以外においても、同様である。
【0087】
なお、本発明による制御方法を、消費電力/PCS定格の比率αに応じて設定差分値βを変化させるため、ここでは、荷重等差制御と呼ぶことにする。
【0088】
図8Aは、荷重等差制御によるシミュレーション結果例に従来の等差制御及び等比制御によるシミュレーション結果例を重ねたグラフである。図8Aの細い実線で表したグラフが、荷重等差制御によるものである。等比制御と比べて、荷重等差制御では、PCSの出力電力の上限値が低くなるので、発電効率が低下することとなるが、等比制御と比べたら、発電効率が向上しているのがわかる。また、荷重等差制御では、等差制御と比べて、消費電力が大きい場合、消費電力との間に、余裕があることがわかるので、逆潮流は等差制御と比べて、明らかに、生じにくい。
【0089】
図8Bは、荷重等差制御によるシミュレーション結果例に従来の等差制御及び等比制御によるシミュレーション結果例を重ねたグラフであり、PCS定格が500[kW]であった場合を示している。PCS定格以上は発電できないので、図8Bに示すように、PCS定格以上で、パワーコンディショナは、最大限の発電電力の上限値をとるグラフとなる。
【0090】
また、図8Bでは、消費電力-設定差分値βが0以下の場合も示されている。このとき、ステップS36によって、出力指令値は、0となるので、PCSからの出力電力はないことがグラフで示されている。これは、「最低受電電力」を定義していると言う事もできる。パワーコンディショナは、低出力時には出力が不安定になりやすいので、「最低受電電力」を設けることで、低出力時における逆潮流を防止する効果が高まる。
【0091】
本発明の一実施形態において、あらかじめ設定しておく比率・差分テーブルは、非常にわかりやすいものである。特許文献2のように、一次関数のaとbを設定する場合に比べて、比率・差分テーブルは、分かりやすいものとなっている。そして、荷重等差制御では、逆潮流を介しながらも、太陽電池の発電電力をできる限り有効活用できている。
【0092】
なお、上記実施形態では、比率・差分テーブルにおいて、比率αを、20%毎の6段階としているが、何パーセント毎に、設定差分値を予め決めておくかは、本発明を限定するものではない。比率αを、7段階以上にしてもよいし、2段階以上5段階未満にしても良い。
【0093】
なお、上記実施形態では、受電電力とPCS発電電力との和によって、消費電力を決定したが、消費電力の求め方は、これに限られるものではない。たとえば、負荷6の消費電力を直接測定して、測定結果を、出力制御装置4が、消費電力として扱うようにしてもよい。
【0094】
(変形例)
従来の技術では、たとえば、特許文献2の段落0060に記載されているように、季節や時刻に依存して、一次関数の一次係数aおよび0次係数bを変更することが開示されている。これによって、特許文献2では、太陽電池の特性や負荷の消費電力の傾向に合わせて、一次係数aおよび0次係数bを柔軟に設定することができるとされている。しかし、時刻毎に、各係数を設定したとした場合、当初想定していたような消費電力の傾向とは、異なるような変化を消費電力がした場合、元々設定した各係数は、消費電力の向上に役に立たないものとなる。
【0095】
すなわち、時間帯や季節に依存して、各係数を設定するような特許文献2の方法では、必ずしも、消費電力の向上が実現しているとは、言えない場合が発生してしまう。
【0096】
一方、上記実施形態では、設定差分値は、消費電力とPCS定格との比率に依存しており、時間帯や季節には依存していないので、特許文献2の上記問題は、上記実施形態には、生じないのである。
【0097】
この点を踏まえて、上記実施形態の変形を考察するならば、本発明においては、消費電力とPCS定格との比率αに対応させて、パワーコンディショナが出力する発電電力の上限値を制御していると捉えることができる。
【0098】
このように本発明を捉えた場合には、記憶部は、負荷の消費電力とパワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、パワーコンディショナの発電電力の上限値を規定するための設定値を記憶していると、上位概念化することができるのである。
なお、記憶部において、当該比率と対応させて記憶されている設定値は、全て同じ値では、本発明の目的が達せないので、設定値は、少なくとも二種類以上存在する。
【0099】
そして、制御部は、現在の消費電力とPCS定格との比率を算出し、上記設定値を参照して、算出した比率に対応する発電電力の上限値を決定して、パワーコンディショナの出力電力の上限値が、当該発電電力の上限値となるように、パワーコンディショナを制御する。
【0100】
以上のように、本発明を概念的に捉え直すことができるが、下記に、その概念に含まれる発明の実施形態を例示することとする。
【0101】
図8Cに示すように、比率αと、現在の消費電力にかける比の値とを対応付けた比率・設定比値テーブルが考えられる。図8Cでは、たとえば、比率αが、0より大きく9以下の場合に、設定比の値として、3.5%を用いることが示されている(他の比率αも、同様)。これは、0<α≦9の場合に、消費電力に、3.5%をかけた値(PCS定格が500[kW]の場合は17.5「kW」)を、消費電力から引いた値を、パワーコンディショナの発電電力の上限値とするという意味である。
【0102】
なお、消費電力に、設定比値3.5%をかけた値を、消費電力から引くということは、消費電力に、100-3.5=設定比値96.5%をかけるということと同じ意味である。したがって、比率・設定比値テーブルには、比率αに対応して、消費電力にかける設定比値をテーブル上で定義してもよい。
【0103】
上記のような図8Cのような比率・設定比値テーブルを用いる実施形態を、ここでは、荷重等比制御ということにする。
【0104】
図8Dに示すように、荷重等比制御を用いれば、等差制御よりも、消費電力との間に、余裕マージンを持たせておきながら、等比制御よりも、発電電力の向上を図ることができるのが確認できる。」
4 「 【0108】
その他、消費電力とPCS定格との比率αに対応するように、パワーコンディショナの発電電力の上限値を決定付ける値として、種々の値を予めテーブルとして記憶しておき、制御部が、当該テーブルを参照して、発電電力の上限値を決定して、パワーコンディショナを制御する発明が、本発明に含まれるのである。そのため、本発明は、総称して、比率αに基づく荷重制御と呼ぶこととする。
【0109】
このように、本発明の荷重制御によれば、時間毎の設定や季節毎にテーブルが設定されるものではないので、予め想定している消費電力の変化の動向や季節毎の日照条件の変化の動向に左右されることはなく、パワーコンディショナの発電電力の上限値を制御することが可能となるので、時刻や季節に依存することのない発電力の制御が可能となる。
【0110】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。本明細書に開示されている発明の構成要件は、それぞれ独立に単独した発明として成立するものとする。各構成要件をあらゆる組み合わせ方法で組み合わせた発明も、本発明に含まれることとする。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、出力制御装置、出力制御プログラム、及びそれを用いた太陽光自家消費システムであり、産業上利用可能である。」
5 図3
[図:0001437667000004.jpg]
6 図4
[図:0001437667000005.jpg]
7 図5
[図:0001437667000006.jpg]
8 図6
[図:0001437667000007.jpg]
9 図7
[図:0001437667000008.jpg]
10 図8A
[図:0001437667000009.jpg]
11 図8B
[図:0001437667000010.jpg]
12 図8C
[図:0001437667000011.jpg]
13 図8D
[図:0001437667000012.jpg]
第6 証拠方法
請求人は、証拠方法として、以下の甲1~甲13(枝番を含む。)を書証申出した。なお、甲号証の番号の右側の記載は、証拠説明書における標目である。
なお、被請求人は証拠調べの申出をしなかった。
甲1 特開2019-161777号公報
甲2 特開2017-93127号公報
甲3 広辞苑、第七版、p.663
甲4 特開2015-149840号公報
甲5 特開2004-308651号公報
甲6 特開2002-171415号公報
甲7-1 特開2016-226238号公報
甲7-2 特開2013-156824号公報
甲7-3 特開2012-186961号公報
甲7-4 特開2008-225646号公報
甲7-5 特開2019-4558号公報
甲7-6 特開2020-67023号公報
甲7-7 特開2020-41498号公報
甲7-8 特表2019-502356号公報
甲8 広辞苑、第六版、p.1911
甲9 技術説明に使用する資料
甲10 技術説明当日に使用した資料
甲11 甲9と甲10との相違点をまとめた一覧表
甲12-1 特許法概説(株式会社有斐閣)[第13版]
甲12-2 知的財産法(株式会社有斐閣)
甲12-3 パテント(2022年Vol.75 No.12)パブリック・ドメインの保護という観点からの発明の新規性理論
甲12-4 特許・実用新案審査ハンドブック
甲13 被請求人実施品自家消費出力制御システム【フラップ】取扱説明書
第7 請求人の主張の概要
口頭審理において、請求人は、本件訂正が認められた場合の無効理由を以下の無効理由2、3-1及び3-3のとおりと主張し(口頭審理調書)、前記第3、4のとおり、本件訂正は認められたので、請求人が主張する無効理由は、無効理由2、3-1及び3-3のとおりと認める。無効理由2に関する請求人の主張の概要は、以下の1のとおりであり、無効理由3-1及び3-3に関する請求人の主張の概要は、以下の2のとおりである。
なお、以下の請求人の主張において言及される本件の明細書は、本件訂正前後のどちらの明細書を意味するのかが文脈から明らかであるか、又は、本件の訂正の影響を受けない部分に関するものであるので、特に断らずに「本件明細書」という(単に「明細書」と略すこともある。)。
無効理由2 訂正後の発明の詳細な説明の記載は、著しく不明瞭であり、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしておらず、訂正後の請求項1~24に係る特許は、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきである。
無効理由3-1 訂正後の請求項1、2、6、8及び9に係る発明は、甲1に記載された発明と同一であるため、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由3-3 訂正後の請求項3~5、7及び10~24に係る発明は、いずれも甲1に記載された発明に基いて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。
1 無効理由2に関する請求人の主張
無効理由2(実施可能要件)に関する請求人の主張を大別すると、以下の(1)にまとめた本件発明の効果に関するものと、以下の(2)にまとめた本件明細書の記載の不整合に関するものとに分けられる。
(1)本件発明の効果に関する無効理由2についての主張
請求人は、本件発明の効果が従来技術と比較して何ら格別の効果を奏するものではなく(審判請求書37頁4~5行)、本件明細書を参照しても発明の所期の効果を奏するように発明を実施できない(審判請求書38頁4~5行)ため、本件明細書は、本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない旨を主張していると認められる。
当該主張の前提として、請求人は、本件発明の効果及び従来技術に対する優位性を得るための条件について以下のアのように主張する。該前提の下、請求人は、本件発明が従来技術に対して有利な効果を奏さないことの根拠として、本件発明の設定差分値βが最適ではないこと(以下のイ)、本件発明の効果が従来技術である等差制御と同一か劣ること(以下のウ)、本件発明の効果が従来技術である等比制御と同一か劣ること(以下のエ)、本件発明の効果が従来技術である甲1発明と同一であること(以下のオ)、及び、本件発明のテーブルは効果を奏さないこと(以下のカ)を主張する。
なお、本件発明の効果に関する主張として、無効理由3-1及び3-3の根拠として本件発明の効果が格別のものではないとの主張があるが、当該主張は、結局のところ、本件発明の効果が従来技術と比較して格別の効果を奏するものではないという無効理由2についての主張と軌を一にするので、当該主張が無効理由3-1及び3-3についての文脈で述べられたものであっても、本件発明の効果に関する無効理由2についての主張として掲げる。
ア 本件発明の効果及び従来技術に対する優位性を得るための条件
請求人は、本件発明の効果、及び、本件発明が従来技術に対して優位な効果が得られるための条件に関して、概略、以下の(ア)~(エ)を主張する。
(ア)本件明細書に記載された本件発明の効果は、「比率・設定差分値テーブルという分かりやすいテーブルを用いて、逆潮流の回避の設定を行うことができるので、パワーコンディショナの制御を分かりやすいものとすることができる。また、一律同じ値の差分値を用いて制御する等差制御と比べて、消費電力とPCS定格との比率に応じて、設定差分値を決めることができるので、発電電力上限値に余裕を持たせることができつつ、逆潮流の回避を実現しつつ、等比制御と比べて、発電電力上限値を高く設定することができるので、太陽電池の発電電力を出来る限り有効活用することができる」という効果を奏するものと記載されている。(審判請求書30頁8~17行)
(イ)本件発明の設定差分値βは、比率αに対応する領域に応じて予め設定されるため、設定差分値βは、比率αが領域内(α1、α2、・・・、α6)では、消費電力Sの値によらない複数の定数である場合を含め、任意の値を設定することができると解される。また、明細書【0085】~【0087】及び図7によれば、設定差分値βの大きさは、消費電力に依存しない定数を含んでおり、かつ、時間と共に変化する。ただし、明細書に記載された実施例は、いずれも、比率α(消費電力)が大きくなるほど上限値が制限される(すなわち、制御を強める)ものであり、その効果は、「消費電力が大きい領域において、急激に消費電力が低下したとしても、設定差分値βに余裕を持たせることになるので、発電電力が消費電力を上回って、逆潮流が発生するという状況を回避することが可能となる。」(【0069】)と説明されている。(審判請求書31頁14行~32頁下から3行、36頁25~28行)
(ウ)従来技術である等差制御及び等比制御においては、「逆潮流の防止」と「発電効率の向上」とはトレードオフの関係にあるから、その本質的な問題点は、制御方法の相違によるものではなく、消費電力に応じて適切な設定値を設定することなく「一律」の制御を行う点にあると考えられる。本件発明1は、「比率・設定差分値テーブル」によって、消費電力を定格出力(定数)で割った比率αと、設定差分値β(消費電力から引く値)との対応関係を示す。従来の等差制御は設定差分値βが常に一定であるのに対して、本件発明1は消費電力に応じて設定差分値βの大きさを異なる値に設定することを趣旨とする技術思想であると解され、「比率・設定差分値テーブル」が太陽光発電システムの設置場所や季節、時間、ユーザーの使用環境等を考慮した最適なものであれば、従来技術よりも相対的に技術的な優位性が得られる。(審判請求書34頁18行~35頁27行)
(エ)逆潮流の抑制と発電効率の向上とはトレードオフの関係にあり、等差制御にも等比制御にも一長一短がある。従来技術である等差制御及び等比制御の本質的な問題点は、制御方法の相違によるものではなく、運転条件の変化に応じて適切な設定値を設定することなく常に一律の制御を行う点にあると考えられる。よって、ユーザーの事情を考慮して、細やかに「パワーコンディショナの出力電力の上限値」を設定することができれば、逆潮流の抑制と発電効率の向上の両方を図ることができ、本件発明によれば、予め「テーブル」あるいは「設定値」を用意しておき、ユーザーの事情を考慮して消費電力と適切な出力電力の上限値との関係を用意することで、逆潮流の抑制と発電電力の向上の両方を図ることができると解される。(弁駁書21頁9行~22頁2行)
イ 本件発明の設定値の技術的意義が不明であること
請求人は、本件発明の設定値(設定差分値β、設定比値を含む)の技術的意義が不明であることの根拠として、概略、以下の(ア)~(ウ)を主張する。
(ア)本件発明は、設定差分値βないし設定比値を比率αに応じてどのように設定するかが不明であり、発明の技術的意義を理解することができない。本件発明は、従来技術である等差制御を含む。また、本件明細書を参照しても、「比率・設定値テーブル」における「設定差分値」及び「比率・設定比値テーブル」における「設定比値」等にいかなる値を設定すれば本件発明の効果を奏するのかという点において、その技術的意義が理解できない。(審判請求書3頁20~32行、40頁1~4行)
(イ)本件発明が従来技術よりも優れた効果を発揮するためには、設定差分値βを太陽光発電システムの設置場所や季節、時間、ユーザーの使用環境等、ユーザーの事情を考慮した最適なものとする必要があるが、本件発明におけるβはあらゆる場合が含まれており、最適なものに限られないから、本件発明が従来技術よりも優れた効果を発揮するとは認められない。(審判請求書35頁24行~36頁3行)
本件発明は、具体的にどのように比率αや、設定差分値βを設定すれば、従来技術と比較して優れた効果を発揮するのかが不明である。(審判請求書37頁下から4行~38頁5行)
「パワーコンディショナの制御を分かりやすいものとしながらも、系統への逆潮流を回避しつつ、かつ、太陽電池の発電電力をできる限り有効活用する」(【0015】)という本件発明の目的との関係で、具体的に、如何なる値を「比率・設定差分値テーブル」として登録すれば、本件発明の課題を解決することができるのかも不明であり、本件明細書は、当業者が発明を実施できる程度に具体的に記載されたものとはいえない。「当業者の経験」が必要不可欠というのでは、発明が未完成ということになる。(審判請求書40頁5~10行、弁駁書11頁20行~12頁19行、23頁18行~24頁6行)
(ウ)本件明細書では、比率・設定差分値テーブルが時刻や季節毎に設定されるものではないことを指摘する(【0031】、【0036】)が、季節や時刻が変化すれば発電電力も消費電力も当然変化するので、「比率・設定差分値テーブル」が「時刻や季節毎に設定される」ものでないとすれば、逆潮流のリスクが高まるか、あるいは、発電効率を著しく低下させることを意味するため、技術的意義が全く理解できない。(審判請求書40頁11~16行)
ウ 本件発明の効果が等差制御と同一か劣ること
請求人は、本件発明の効果が従来技術である等差制御と同一であるか劣ることの根拠として、概略、以下の(ア)及び(イ)を主張する。
(ア)本件発明は、設定差分値βが「常に一定」の場合、すなわち、甲1のa=0かつbの値が常に一定の場合を含み、この場合は、従来の「等差制御」と同一である。(審判請求書36頁4~19行)
(イ)本件発明との比較対象である「従来の等差制御」で設定される差分値が、-30[kW]ではなく-60[kW]であったならば、α1~α3の区間では従来の等差制御の方がより上限値を低く設定することになり、「発電電力が消費電力を上回って、逆潮流が発生するという状況を回避することが可能となる。」と言える。従って、任意の設定差分値を登録できるテーブルに基づく本件発明の効果と、任意の値を設定し得る従来の等差制御による効果とを比較して優劣を論ずること自体意味を持たない。(審判請求書37頁4行~下から4行)
エ 本件発明の効果が等比制御と同一か劣ること
請求人は、本件発明の効果が従来技術である等比制御と同一であるか劣ることの根拠として、概略、以下の(ア)~(ウ)を主張する。
(ア)本件の発明の詳細な説明の図8Aでは、比較対象として「等比(80%)」が示されるが、比較対象である従来の等比制御は、「等比(80%)」ではなく、「等比(70%)」とすることも「等比(90%)」とすることもできるのだから、本件発明が「等比制御と比べて、発電電力上限値を高く設定することができる」との効果が得られるか否かは、設定差分値(あるいは設定比値等も同様)と従来の等比制御(比率が一定)との相対的な比較によって変わるのであって、一概に、本件発明が優れているわけではなく、「逆潮流のリスク」について優れていると結論づけることも、意味を持たない。(審判請求書38頁6行~39頁)
(イ)本件の図8(C)のテーブルにより制御された場合、発電効率の向上には寄与するが、消費電力が急変した場合、逆潮流のリスクは「比例制御」の場合よりも高くなる。(審判請求書41頁23~27行)
(ウ)本件発明には従来技術である等差制御だけでなく従来技術である等比制御も包含される。等比制御においては消費電力に対して一律の値を乗算した値を発電電力の上限値とするという制御になるが、任意の実数Aに数値Bを乗算することは、数値Aに(1-B)を乗算した結果を数値Aから減算することと等しい(A×B=A×(1-(1-B))=A-A×(1-B))から、「消費電力に対して一律の値を乗算した値」を「消費電力から引く値」と表現を変えても、本質的に同じである。(この場合は必ずしも「設定差分値」の値は一律にはならない)。(請求人陳述要領書(1)8頁11行~9頁3行)
オ 本件発明の効果が甲1に示される従来技術と同一であること
請求人は、本件発明の効果が甲1に示される従来技術(厳密には特許第6364567号公報に示される従来技術であるが、甲1に示される技術ないし発明と同一視できる。後述の第10、1(2)アも参照。)と同一であることの根拠として、概略、以下の(ア)及び(イ)を主張する。加えて、本件発明と甲1に記載された発明(後述の第10、2(5)において当審で認定する「甲1発明」。第10、2(6)も参照。)の技術的思想が同一であるとする後掲2(1)の主張も、本件発明の効果が甲1に示される従来技術と同一であることの根拠を成すと解される。
(ア)本件の発明の詳細な説明の図4を参照して説明される「比率・設定差分値テーブル」では、比率αが大きくなるほど設定差分値βを大きくすることが例示され、これによれば、βが常に一定値である等差制御よりも、消費電力Sが増大した際にはより大きなマージンを確保できるが、かかる技術的効果は、「消費電力の一次関数」として制御した場合(甲1に示される従来技術)と同一である。(審判請求書36頁22行~37頁1行)
本件の図4のテーブルは、α1~α5に限れば、従来技術である一次関数と同様であり、従来技術の効果を超えるものではない。よって、本件の発明の詳細な説明は当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。(請求人陳述要領書(1)9頁5行~11頁12行)
(イ)本件明細書は、従来技術の1つとして「特許文献2」(甲1の特許公報)を挙げ(【0007】)、本件発明の効果として、「比率・設定差分値テーブル」は、「時間毎の設定や季節毎に設定されるものではない」(【0031】)と記載し、特許文献2と異なり時間帯や季節には依存しない制御であって、当初想定していたような消費電力の傾向と異なるような消費電力の変化があっても効果を奏する旨の説明がある(【0094】~【0096】)。しかしながら、甲1発明における発電電力の上限値Pは、消費電力Sにのみ依存し、甲1発明の関数を設定するためのパラメータが時間毎の設定や季節毎に設定されなければならないと認定することは誤りである。この点、本件発明においても、「比率・設定差分値テーブルは書き換えることができるようにすることで、実際運用した結果に基づいて、当該テーブルを、適切なものとすることができる。」(【0035】)と説明している点で、甲1発明の効果と何ら変わるところがない。本件発明においても、実際運用した結果に基づいて最適なテーブルを設定することで逆潮流の防止と発電電力の有効活用の両立を図ることができ、甲1発明においても、実際運用した結果に基づいて一次係数a及び0次係数bを設定することで逆潮流の防止と発電電力の有効活用の両立を図ることができる。さらに、甲1発明も本件発明も、本来の発電能力を有効活用できない場合があり、この点においても、両発明の間に特筆すべき効果の相違はない。よって、本件明細書に説明された効果は、甲1発明に比して格別のものではない。(請求人陳述要領書(2)10頁24行~13頁5行)
カ 本件発明のテーブルは効果を奏さないこと
請求人は、本件発明のテーブルが従来技術に対して有利な効果を奏さないことの根拠として、概略、以下の(ア)~(ウ)を主張する。
(ア)本件明細書には、比率・設定差分値テーブルを使用することの作用効果として、「分かりやすいテーブルを用いて、逆潮流の回避の設定を行うことができるので、パワーコンディショナの制御を分かりやすいものとすることができる」(【0030】)と記載されている。しかしながら、発電を制御するために「関数」を用いること、又はこれに代えて「テーブル」を用いることは、いずれも、周知・慣用技術に過ぎない。(請求人陳述要領書(1)4頁25行~5頁4行)
(イ)階段(α)の幅(範囲)の広い・狭いは、発電効率を高めるためにどれだけきめ細やかな制御をするかにより、発電効率を高めるためには、階段(α)の幅をできる限り狭くすることとなる。もっとも、階段(α)の幅の広狭に関わらず、中央値を結ぶ直線下の面積と、階段下の面積は異ならないので、等比制御の発電効率と、本件発明の発電効率は同程度となる。(上申書14頁10~15行)
(ウ)「消費電力とPCS定格との比率に基づいて設定差分値を決めた比率・設定差分値テーブルを用いること」が甲1発明の相違点であるとしても、この点について、進歩性を基礎づけるために必要な、従来技術と比較した場合の効果が何であるのか、明細書から理解することはできない。(上申書15頁17~21行)
(2)本件明細書の記載の不整合に関する無効理由2についての主張
請求人は、本件明細書の記載の不整合について、概略、以下を主張する。
本件の発明の詳細な説明の【0101】の記載は、発電電力の上限値をどのようにして算出するのか(図8Cに示される設定比値を、消費電力に乗ずるのか、PCS定格に乗ずるのか)が不明であるため、本件の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。(審判請求書40頁17行~41頁22行、請求人陳述要領書(1)9頁4行)
2 無効理由3-1及び3-3に関する請求人の主張
請求人は、本件発明が甲1発明に対して新規性及び進歩性を有さないことの根拠として、概略、以下の(1)~(12)を主張する。
(1)本件発明及び甲1発明の技術的思想が同一
請求人は、本件発明の技術的思想と甲1発明の技術的思想が同一である旨を、概略、以下のア~ウのように主張する。
ア 甲1発明は、「発電電力の上限値を消費電力の関数として出力指令値を算出する」という技術的思想に加えて、その関数(例えば、1次関数)を、ユーザーごとの事情を考慮して随時変更するという技術的思想(一次係数a及び0次係数bを季節や時刻に依存して変更すること、a及びbを太陽電池の特性や消費電力の動向にあわせて設定すること、a及びbを制御命令の頻度に応じて設定すること)を開示している。本件発明と甲1発明とは、消費電力に基づいて上限値を求めるという点において、本質的には同一の技術的思想を開示するものである。(弁駁書22頁3行~23頁14行)
イ 訂正後の本件発明1は、一律同じ値の差分値を用いて制御する等差制御を除くものである。一方、甲1発明は、等差制御では「発電可能な電力を十分に活用できない」(【0004】)という課題を解決するためのものである。したがって、本件発明に対してなされた訂正は、「等差制御による制御以外の方法で制御すること」という甲1発明の課題解決原理を実現するための願望を単に表現したに過ぎず、何ら新規性を生じるものではない。(請求人陳述要領書(1)5頁16行~6頁5行)
ウ 訂正が認められたとしても、訂正事項によって除かれる発明は、等差制御のみであり、等差制御(0次関数)以外のあらゆる数値を予め設定することにより、0次関数以外のあらゆる関数を定義することが可能である。一方、甲1発明もまた、「消費電力の0次関数及び1次関数」に限られないあらゆる関数を含むため、実質的な相違点は存在しない。なお、甲1には、S(t)-P(t)を算出する具体的な方法として実施例に示されるのは、消費電力の1次関数及び0次関数を用いる場合であるが、本件明細書も、実施例として示される「設定差分値β」の例では、消費電力S(t)が大きくなるにつれて一定の割合で増加する例のみである。そうすると、本件発明は逆潮流の防止と発電電力の有効活用の両立を図るために消費電力の変動に対して適切な上限値を予め設定するという点において、甲1発明の課題及び解決手段を通じて示される発明と、技術的思想が実質的に同一である。(請求人陳述要領書(2)10頁2~23行)
(2)本件発明の比率αは消費電力と実質同一か消費電力から容易想到
請求人は、本件発明の比率αが消費電力と実質的に同一であるか、又は消費電力から容易想到し得る旨を、概略、以下のように主張する。
本件発明における「比率」は、負荷の消費電力に正比例する値であるから、定性的には消費電力と同一視できる。本件発明におけるPCS定格は定数であるから、甲1発明のように消費電力そのものを独立変数とすることと、本件発明のように消費電力とPCSとの比率を独立変数とすることとは、システム設計上の微差に過ぎず、この点は実質的な相違点にはならない。(審判請求書30頁28行~31頁10行、弁駁書6頁12~16行、請求人陳述要領書(1)4頁7~12行)
上限値を求めるためのパラメータが、「消費電力を定数で割ったもの」であるか、「消費電力そのもの」であるかの相違点を議論することに他ならず、Y=2X+1という一次関数をテーブルで表す例において、定数が10であった場合を仮定すると、(X÷10)をパラメータとして記載されたテーブルによりYを算出することと、XそのものをパラメータとしてYを算出することの差に過ぎない。XとX÷10とは比例関係にあるから、XとYとの比例関係に何ら影響するものではないことは初等数学の知識でも理解でき、当該相違点は甲1発明及び初等数学程度の知識に基づいて想到し得る。(請求人陳述要領書(1)32頁12行~33頁1行)
PCSの定格値Rは定数であり、αは消費電力Sを定数Rで除した値であり、消費電力Sに正比例する値である。ゆえに、比例による重み付けは、比例定数以上の意味を持たない点で、実質的にαは消費電力Sと同じである。(上申書15頁12~16行)
(3)本件発明の出力指令値と発電電力の上限値とは実質的に同一
請求人は、本件発明の出力指令値が発電電力と実質的に同一である旨を、概略、以下のように主張する。
本件発明の「現在の消費電力から決定後の設定指定値を引いた値」を「PCS定格で割った値」は、定格出力に対する発電出力上限値の割合を示すが、「消費電力」と「発電可能な上限値」とを関数として対応づけていることに変わりはない。本件発明は、消費電力から設定差分値を引いた値をPCS定格で割って出力指令値としているが、PCS定格は定数であるから、PCS定格で割るか否かは、システム設計上の微差に過ぎず、この点は実質的な相違点にはならない。(審判請求書43頁15~21行、請求人陳述要領書(1)6頁11~15行)
(4)テーブルは関数と実質同一か関数から容易想到
請求人は、テーブルが関数と実質的に同一であるか、関数から容易に想到し得る旨、及び、それを根拠に本件発明が甲1発明と同一又は甲1発明から容易に発明し得る旨を、概略、以下のア~タのように主張する。
ア 関数が数式で表される場合は都度計算が必要になるのに対して、テーブルは都度計算が不要である点で一応相違するものの、消費電力xを決めると一意に決まる上限値yが存在するとき、yはxの関数であるといえ、その対応関係はテーブルに表すことができる。甲1発明には関数を用いて「上限値」を制御することが記載されているため、「テーブル」を用いて上限値を算出し、制御することは、記載されているに等しいし、例え本件発明1~12との相違点があるとしても、当業者にとって容易に想到し得る程度の相違点に過ぎない。また、消費電力が増大するにつれて「階段状に」増加する設定差分値βは、階段関数のステップを無限に小さくすれば一次関数となるから、「消費電力に比例する関数」と同一視することができる。(審判請求書43頁29行~46頁17行、48頁10~17行、同頁23~32行、弁駁書13頁3~6行、15頁19~22行、17頁21~26行)
イ 本件発明13~24において、「出力電力の上限値を規定するための設定値」と「比率」(すなわち消費電力)が対応付けられた状態で「記憶部」に記憶されているということは、「消費電力」に対して「上限値」が一意に対応づけられているという意味において「関数」であり、甲1発明との実質的な相違点とは言えない。(審判請求書49頁25行~50頁3行、51頁30行~52頁2行、53頁13~18行、弁駁書17頁6~11行、18頁11~18行、19頁6~18行)
ウ 本件発明14における「設定値」が「現在の消費電力から差し引く設定差分値」である場合とは、「現在の消費電力から「設定差分値」を差し引く関数」を適用した場合と一致し、甲1発明は、発電電力の上限値を消費電力の関数として出力指令値を算出する構成を具備するから、本件発明14は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。本件発明18についても同様である。(審判請求書50頁4~21行、52頁3~20行、弁駁書19頁19行~20頁6行)
エ 本件発明22は、消費電力をS、設定値をβ、上限値をPとすると、P=S-βとして上限値を算出する。βの値は特に制限はないため、βが消費電力によらず一定値Δの場合、βが消費電力に比例する場合のいずれをも含み、これは上限値が消費電力の関数となるように制御されていることを意味する。なお、本件の図4は、設定値βが消費電力に比例するように変化させていることに他ならない。このようなことは、当業者にとって容易に想到し得たことである。(審判請求書53頁19行~54頁16行)
オ 「関数」とは「数の集合Aから数の集合Bへの写像y=f(x)のこと」(甲3)であり、関数を表すための手段の1つとして「テーブル」が用いられるという関係にある。すなわち、テーブルは関数を表現するための手段の1つであり、関数がテーブルの上位概念というわけではない。本件発明に当てはめると、消費電力Sを定めると比率αが一意に求められ、比率αに対応する設定差分値βが一意に求められ、そこから発電電力の上限値が決定されるのであるから、結局のところ、本件発明において消費電力Sと発電電力の上限値Pとが「関数」によって関係づけられていることは、甲1発明と変わらない。甲1の実施例等において例示されるように、関数を数式の形で記憶する構成に代えて(ただし、甲1発明は数式以外の関数を含む。)、本件発明1のように、関数による算定結果をテーブルに記憶する構成とすることは、システム設計上の微差に過ぎないものであり、実質的に同一である。(弁駁書7頁16行~8頁26行、請求人陳述要領書(1)5頁5~9行)
カ 甲1の「関数」は「一次関数」の上位概念であるが、「テーブル」の上位概念には当たらない。例えば、「時間の経過と共にランダムな実数が単調増加する関数」は、数式では表すことができないが、テーブルであれば表現は可能である。すなわち、「テーブル」は「関数」を表現するための一手段であって、「テーブル」と「関数」は実質的に同一視されるべきものである。「関数」は、「数の集合Aから数の集合Bへの写像y=f(x)のこと。」(甲3)とされるところ、「テーブル」も「表。一覧表」(甲8)として、ある数の集合Aと、数の集合Bとの対応関係を示したものであるから、両者の間には実質的な差は存在しない。発電の制御を実施するために「関数」を用いることも、またはこれに代えて「テーブル」を用いることも、いずれも、甲4、甲7-1~甲7-8に示されるとおり、当業者にとっては周知慣用の技術に過ぎないから、関数とテーブルは、実質的に同一又はコンピューターによる制御として実装するに際して当業者が適宜選択しうる程度の相違に過ぎない。(請求人陳述要領書(1)15頁2~15行、21頁4行~26頁14行)
キ 本件特許の図4のテーブルは、数式β=MIN(10×ROUNDUP((α/20),0)+20,70)と表せるため、P=S-MIN(10×ROUNDUP((α/20),0)+20,70)となる。関数MINや関数ROUNDUPは、市販の表計算アプリケーションでも用いられる一般的な関数に過ぎないから、前記テーブルは関数の下位概念ではなく、関数そのものである。そして、甲1には上限値Pを消費電力Sの関数として表すことが記載されており、甲1発明は消費電力に応じて発電電力の上限値を求めるという構成を開示しているのであるから、本件発明と甲1発明との間に本質的な相違点は存在しない。(弁駁書9頁下から4行~11頁19行、12頁20行~13頁2行、13頁7~19行)
ク 上限値P、消費電力S、設定差分値β、設定比値αを用いて本件発明14~16を数式で示すと、本件発明14はP=S-β、本件発明15はP=S-S・α、請求項16はP=S・αと表され、これらの式の右辺は、いずれも、Pが消費電力Sの一次関数であることを表している。本件発明18~20についても同様である。(弁駁書18頁19行~19頁5行、19頁19行~21頁6行)
ケ 本件発明1における比率・設定差分値テーブルは、いかなる数値でも入力することができ、それにより、いかなる関数も表現することができる。本件明細書の実施例は、設定差分値を消費電力の一次関数とする制御テーブルにより表現したものに過ぎず、何ら新規の制御方法を開示するものではない。(請求人陳述要領書(1)4頁13~24行)
コ テーブルを参照して解を求めることと数式によって解を求めることとを比較すると、前者においてはテーブルには予め解が算出ずみであるから、テーブルを参照すれば計算することなく直ちに解を求めることができるが、後者においては数式による演算が必要になる。しかし、本件発明の技術的課題は計算による計算時間の遅延を問題とするものではなく、また、現在のマイコンの処理速度によれば瞬時に解を求められることから考えても、テーブルで表される関数を数式により表すことは、当業者にとって単なる設計的事項程度の相違点である。(請求人陳述要領書(1)31頁27行~32頁11行)
サ S(t)を定数で割った、いわばS(t)に比例する値をパラメータとするテーブルを作成する場合、2つのテーブルの関係を表したリレーショナルデータベースを作成することで本質的には本件発明1の実施例として説明される図4のテーブルが、甲1発明同様の消費電力の一次関数となっていることが理解される。(請求人陳述要領書(1)33頁19~23行)
シ 本件明細書の図4のテーブルにおいて、縦軸をβ、横軸をαとして示したグラフにおいて、階段の中点(中点が最も理解しやすくかつ制御性も良いと考えるが、どの点でも良い)を結ぶ直線の式は、β=50α+25となり、定格電力をRで表すと、α=S/Rとなる。よって、上限値Pは、P=(1-50/R)・S-25となる。本件発明においては、設定差分値β(=S-P)の値は予め設定されているが、上述のとおり設定差分値βは、消費電力の一次関数として設定されたものとなっている。(請求人陳述要領書(2)4頁19行~7頁4行、同頁12~15行、上申書14頁22行~15頁6行)
ス 本件発明のαの値は連続値ではなく階段状に変化するため、β及びPも階段状に変化するが、階段の刻みを細かく(例えば1%刻みに)設定すれば、より滑らかな一次関数の直線になる。そのため、本件発明と甲1発明との相違は、関数による制御をコンピュータに対して適用する際にテーブルを用いる程度の相違に過ぎず、当業者にとっては単なる設計事項の範疇に過ぎない。(請求人陳述要領書(2)7頁5~11行)
セ 本件発明は、αの採りうる区分の数についての限定はないから、各区分の範囲を限りなく小さくして区分の数を増やした場合も本件発明に当然に含まれる。各区分の範囲を小さくすると、過剰な制御(発電可能な上限値を本来設定可能な値よりも低く設定する制御)を減らし、発電効率を上げることが可能となるから、各区分の範囲をできる限り小さく設定することは合理的である。本件発明のテーブルに設定すべき値には、比率及び設定差分値のいずれに対しても何らの制限がなく、それにより、あらゆる関数を表現することができるため、本件発明は甲1発明を包含しており、また、コンピュータによる制御により所定の関数を実装するうえで、予め演算済の数値に置き換えたテーブルを作成しておき、記憶媒体に保持し、演算することなくテーブルにより処理を実行することが周知慣用技術であるから、本件発明には新規性がない。(上申書3頁1行~10頁12行)
ソ 線分をもって一次関数を表現すること自体は、コンピュータ分野でしばしばみられる周知技術である。また、甲1発明は、季節や時間帯ごとに異なる複数の一次関数を設定することを前提としている。ところで、個々の太陽光発電システムにおいて、発電効率をできる限り高める場合、制御に係る出力の上限値は一義的に決せられることになり、そして、比率αの区分数を増やすために比率αの採りうる範囲を限りなく小さくして、制御に係る上限値を結んでいくと、多数の一次関数に係る短い線分の集合体となる。同時に、制御に係る出力の上限値を、幅の非常に小さい階段の集合体として表現することもできる。以上によれば、甲1発明の実施例として記載された一次関数が直線である場合ではなくても、甲1発明の実施形態として記載された一次関数による制御と本件発明の制御が実質的に同じとなる場合があり、このような場合には、できる限り発電効率を高めるという当然の要請に基づき、当業者がきめ細やかな制御を行いたい場合が必然的に生ずることとなる。しかも、たとえば異なる一次関数を複数設定するに当たり、予め1%刻みで消費電力から控除するべき値をテーブル形式で用意しておくことには、相応の合理性があるから、甲1発明の設計を合理化していくと、必然的に本件発明を想到できる。実際に、甲13に示す被請求人のシステムでは、消費電力/PCS定格が1%変化するごとに、消費電力から控除する電力の設定が可能である。(上申書10頁13行~13頁2行、16頁)
なお、本件の図8Cのように、消費電力と発電出力の上限値の関係が、厳密には3本の一次関数を示す直線になる場合であっても、結果的には1本の一次関数の近似式で表される一次関数となっている。また、甲1発明の実施例として示された一次関数は、複数の線分からなる場合をも含むことを考慮すると、これらが異なる複数の一次関数である場合も想定される。そして、発電効率を高めるべく、きめ細やかな制御を行うこととすると、図8Cに係るシステムでも、甲1発明の制御と、本件発明の制御は、実質的に同じものとなる。(上申書16頁19行~17頁6行)
タ 本件特許出願当時において、当業者にとって「関数」と「テーブル」とは適宜選択可能な手段であったことや、等比制御においても、制御が一定の時ごとに行われるため、実際には階段状の制御が行われることになることをも考慮すると、同程度の発電効率を確保する手段として、「関数」か「テーブル」のいずれを採用するかは、当業者が適宜選択可能なものである。(上申書14頁16~21行)
(5)本件発明の「設定差分値」は甲1発明のaS(t)+bに相当
請求人は、本件発明の「設定差分値」に相当するのは、甲1発明のaS(t)+b(=S(t)-P(t))である旨を、概略、以下のア~エのように主張する。
ア 本件発明1は、消費電力から引くべき設定差分値を算出し、出力指令値を算出するための基礎としているが、甲1発明も、消費電力(S(t))と発電電力上限値(P(t))の差分を、消費電力(S(t))の関数となるように設定し、算出するものであり、上記各発明の構成は同一である。(請求人陳述要領書(1)6頁6~10行)
イ 甲1【0036】に記載された[式4]を変形すると、P(t)=S(t)-(aS(t)+b)となる。(aS(t)+b)は、消費電力S(t)から引く値であるから、本件発明の設定差分値に対応する。(請求人陳述要領書(1)26頁21行~27頁6行、29頁4~8行)
ウ 甲1発明のパワーコンディショナの出力の上限値P(t)は、S(t)-(aS(t)+b)となる。この式より明らかなとおり、消費電力S(t)の変化に応じて「前記消費電力から引く電力の値」が(aS(t)+b)であることが理解できる。(請求人陳述要領書(1)33頁5~18行)
エ 本件の図5には、P(t)=S(t)-βという式が記載されており、βを左辺に移項して整理するとβ=S(t)-P(t)と表される。本件明細書には、βは設定差分値である旨が記載され、設定差分値βは、例えば図4のようなテーブルによって予め設定される。被請求人による「甲1発明のS(t)-P(t)は、確かに、差分値であるものの、この差分値は、S(t)-P(t)=aS(t)+bとなるようにして、P(t)を決定するためのもの」との主張については、甲1発明は、時々刻々と変化する消費電力に応じて設定差分値がリアルタイムに決定されるのに対して、本件発明は設定差分値が予め設定される点が相違点であるという趣旨であると理解されるが、上記の相違点は実質的な相違点とはいえない。(請求人陳述要領書(2)8頁7行~9頁10行)
(6)甲1発明の太陽電池の定格電力はPCSの最大出力に相当
請求人は、甲1発明の太陽電池の定格電力が、PCSの最大出力に相当する旨を、概略、以下のように主張する。
甲1発明の「太陽電池1の定格電力」がパワーコンディショナの最大出力を意味することは、技術常識(太陽電池は直流電力を出力するため、商用電力系統と連系させるためにはPCSにより商用電力系統と同一の周波数及び同一の出力電力を得る必要があること)及び甲1【0021】の記載(MPPT法などを例示してPCSが発電電力が最大となるように制御することについての説明)から明らかである。(請求人陳述要領書(1)27頁7~14行(当該陳述要領書中、「本件特許の明細書【0021】」とあるのは、「甲1【0021】」の誤記と認める。)、33頁27行~34頁9行)
(7)甲1発明の認定についての主張
請求人は、甲1発明の認定について、概略、以下のように主張する。
甲1発明の実施形態においては、消費電力の一次関数を用いた制御について説明しているが、明細書全体としてみれば、甲1発明は「消費電力の一次関数」に限らず、広く「関数」として説明されている。例えば、甲1には「発電電力の上限値を消費電力の関数として出力指令値を算出し」(【0005】)との記載、「前記関数は、一次関数であることを特徴とする。」(【0006】)との記載、及び、「出力指令値を、消費電力についての関数、特に一次関数により算出する」(【0007】)との記載、並びに、公開公報である甲1の請求項1の「発電電力の上限値を消費電力の関数として出力指令値を算出し」との記載、及び、従属項である請求項2の「前記関数は一次関数であることを特徴とする」との記載によれば、甲1全体において説明される「関数」には、一次関数以外の関数を含むことが前提であると理解される。甲1発明は請求人発明者らによってなされたものであり、結果的に実施例に記載したのは一次関数だったというだけであり、二次以上の高次関数や三角関数等の周期関数などを組み合わせることも技術的思想として考えられていた。なお、審査の経緯においてa=0の場合が除かれ、特許異議申立の手続により請求項1が削除されたが、上述の【0005】~【0007】の記載は当初明細書のとおりに記載されており、「消費電力の関数」として制御するとの技術的思想は甲1明細書に明確に開示されている。さらに、甲1発明は、消費電力の関数として上限値を設定するという技術的思想を開示していることに加えて、一律に同じ関数を適用して出力指令値を設定するのではなく、余裕度(マージン)と効率を考慮して、ユーザー側の使用状況に応じた適切な出力指令値を設定することにより課題を解決しうるという技術的思想を開示している。したがって、審理事項通知書(1)で合議体が示した甲1発明の構成1d、1f、1g及び1hは、以下のように認定されるべきであり、本件発明との対比も、以下に示した構成1d、1f、1g及び1hに基づいて行われるべきである。
1d 制御装置6は、負荷4の消費電力を計測し、得られた消費電力の値を用い、前記消費電力の関数によって太陽電池1の上限値を設定し、(【0005】)
1f 発電電力の上限値を前記関数により算出し、
1g (認定されない)
1h 制御装置6の計時部の時計機能を利用し、記憶部に記憶した季節、時刻毎に設定された関数を用いてもよい、
(請求人陳述要領書(1)11頁13行~15頁1行、同頁16行~21頁3行、36頁2行~37頁25行)
(8)比率αが100%超の場合についての主張(本件発明3、10)
請求人は、本件発明3及び10における「前記比率が100[%]よりも大きい場合」について、概略、以下のア~ウのように主張する。
ア 本件発明3は、「前記比率・設定差分値テーブルは、前記比率が100[%]よりも大きい場合においても、前記設定差分値が登録されている」という構成を備えるが、甲1発明の上限値を定める関数は、消費電力のみに依存する関数であるから、消費電力は定格出力よりも大きくなった場合でも定義されることは当然であり、「消費電力÷定格出力」として算出される比率αの大きさが100%よりも大きい場合でも、関数に従って上限値が制御されるようにすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。本件発明10も同様である。(審判請求書46頁18行~47頁10行、49頁1~4行、弁駁書14頁6~21行、15頁23行~16頁2行)
イ 本件発明3において、「比率が100%を超える場合」とは、消費電力がPCSの定格出力を超える場合を意味し、本件の図4では、110%までを発電制御の対象とすることが記載されているに過ぎない。甲1発明は「消費電力の関数として制御する」ことを趣旨とする発明であり、消費電力が定格出力よりも大きいときでも、甲1発明によれば「設定差分値」が関数乃至数式として得られるのであるから、この点において本件発明3と甲1発明に実質的な相違点はない。(請求人陳述要領書(1)28頁21行~29頁3行、同頁9行~30頁3行)
ウ 「比率が100%を超える場合とは、本来的には逆潮流の心配が殆どない状態であることから制御不要になるところであるが、消費電力の急減を想定して、実施例として記載された図4のテーブルでは、110%程度までは上限値制御を継続するという技術思想である。しかしながら、甲1のような消費電力の関数乃至一次関数として制御する場合には、消費電力が定格出力以上であるか否かを問わず上限値は算出される。ただし、定格出力以上の電力を出力することは物理的に不可能であるから、その場合は定格出力の100%が上限値として設定されるに過ぎない。(請求人陳述要領書(1)34頁14~25行)
(9)S-β≦0の場合についての主張(本件発明4、7、11)
請求人は、本件発明4、7及び11における「現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値が0以下の場合」について、概略、以下のように主張する。
本件発明4における「現在の前記消費電力から前記設定差分値を引いた値が0以下の場合、前記出力指令値を0とする」とは、消費電力から設定差分値を引いた結果がマイナスになることを意味するが、マイナスの電力を発電することは現実には不可能であるため、その場合に出力を0にする(すなわち発電しない)ことは当業者にとって容易に想到し得たことに過ぎず、この点は実質的な相違点とはいえない。また、その効果も格別のものとはいえない。本件発明7、11も同様である。(審判請求書47頁11~29行、48頁18~22行、49頁6~10行、弁駁書14頁22行~15頁6行、15頁15~18行、16頁3~6行、請求人陳述要領書(1)30頁10~21行、34頁26~28行)
(10)テーブルの書き換えについての主張(本件発明5、12)
請求人は、本件発明5及び12における「前記比率・設定差分値テーブルは、書き換えることができる」について、概略、以下のア~エのように主張する。
ア 本件発明5の「比例・設定差分値テーブル」を「書き換えることができる」構成とすることは、出力制御装置が一種のコンピュータであることから、当業者にとって自明であり、この点は実質的な相違点とはいえない。本件発明12も同様である(審判請求書47頁30行~48頁9行、49頁11~15行)
イ 甲1発明は、Y=aX+bで表される関数を例示し、この一次係数a及び0次係数bの値は、時間帯ごとに変更可能に設定してもよいことが記載されている。本件発明5の「比率・設定差分値テーブル」は、消費電力と発電出力とを対応づけた関数であり、その関数を時間帯ごとに異なる関数とすることは、テーブルを書き換えることに相当する。(審判請求書8頁右上欄、弁駁書15頁7~14行、16頁7~9行)
ウ 本件発明5の「前記比率・設定差分値テーブルは、書き換えることができる」という構成は、テーブルによって表される関数が書き換えられることを意味し、上限値を求めるための関数を時間的に異なるものとすることができるという意味に相当する。甲1発明において例示される「一次関数」においては、一次係数及び0次係数が時間帯毎に変更可能に設定されることが示される(【0033】~【0057】等)。甲1発明の本質は、一律に同じ制御を適用するのではなく、季節・時刻そして使用者側の消費電力の変動パターンを考慮して、最適な制御を実施する点にある。このことはすなわち、テーブル(関数)を書き換えることに他ならない。(請求人陳述要領書(1)31頁2~19行)
エ 「比率・設定差分値テーブル」を「書き換えることができる」という構成は、換言すれば、例えば、「季節、時刻」が変化するにもかかわらず、常に同じテーブル(関数)を使い続けることによる弊害(逆潮流のリスク増大、及び発電効率の低下)を是正することを目的とする構成である。この点は、まさに、甲1発明において示された技術的思想そのものであるということができる。(請求人陳述要領書(1)35頁2~9行)
(11)消費電力-消費電力×設定比値(本件発明15、19、23)
請求人は、本件発明15、19及び23における発電電力の上限値を「現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値を前記消費電力から引いた値」とすることについて、概略、以下のア~ウのように主張する。
ア 本件発明15の「消費電力に設定比値を乗算して得られた値を消費電力から引いた値」を「上限値」として設定することは、本件発明1において「上限値」を設定するにあたり「設定差分値」を「消費電力に設定比値を乗算して得られた値」としたものと変わるところがないので、「発電電力の上限値を消費電力の関数として出力指令値を算出する」ことに他ならない。よって、本件発明15は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。本件発明19についても同様である。(審判請求書50頁22行~51頁10行、52頁21行~53頁1行)
イ 本件発明23は、消費電力をS、設定比値をα、上限値をPとすると、P=S-S・αとして上限値を算出することに他ならず、かかる式は、P=(1-α)・Sと変形され、上限値が消費電力の一次関数となるように制御されていることを意味する。従って、本件発明23は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。(審判請求書54頁17~29行)
ウ 本件発明15、19及び23について、設定比値は、甲1発明における関数が甲1発明における式4で表される一次関数である場合における一次係数aそのものであり、「現在の消費電力に前記設定比値を乗算して、乗算して得られた値」とはaS(t)であり、「乗算して得られた値を前記消費電力から引いた値」とはS(t)-aS(t)のことである。これは、甲1発明における式4において、0次係数bがゼロの場合に相当する。(請求人陳述要領書(1)38頁13~23行)
(12)消費電力×設定比値(本件発明16、20、24)
請求人は、本件発明16、20及び24における発電電力の上限値を「現在の前記消費電力に前記設定比値を乗算した値」にすることについて、概略、以下のア~ウのように主張する。
ア 本件発明16は、発電電力の上限値を消費電力の関数(特に、正比例の一次関数)として出力指令値を算出するものに他ならない。これは、発電電力の上限値を消費電力の関数として出力指令値を算出する構成を具備する甲1発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。本件発明20についても同様である。(審判請求書51頁11~29行、53頁2~12行)
イ 本件発明24は、消費電力をS、設定比値をα、上限値をPとすると、P=S・αとして上限値が消費電力の一次関数となるように制御されていることを意味する。従って本件発明24は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。(審判請求書54頁30行~55頁7行)
ウ 本件発明16、20及び24における「設定比値」は、甲1発明における関数が甲1発明における式4で表される一次関数、すなわち、P(t)=(1-a)S(t)-bにおいて、一次係数である(1-a)=a’、b=0とおいた場合に相当し、設定比値をa’としてP=a’・S(t)と表されることになる。(請求人陳述要領書(1)38頁24行~39頁10行)
第8 被請求人の主張の概要
被請求人の主張の概要は次のとおりである。
1 無効理由2に関する被請求人の主張
被請求人は、無効理由2に関して、概略、以下の(1)~(3)を主張する。
(1)本件発明のテーブルは、明細書【0064】等の記載を考慮して、予め比率及び設定差分値を登録してテーブルを構成しておけばよいのであるから、かかる記載のみで、発明を実施できる。比率αに対してどの程度の設定差分値βを用いれば逆潮流を回避しかつ発電効率を高めることができるのかは、構内での負荷の使用状況や発電能力などを勘案して、設計する事項に過ぎない。(答弁書5頁1~25行、6頁3行~7頁1行、被請求人陳述要領書(1)5頁17~24行)
(2)本件発明では、等差制御の問題点を踏まえた発明の構成をしているのであるから、設定差分値が全て同じ値であるという構成は当然除外した上で発明を構成している。ただし、無用な争いを避けるため、訂正請求において、設定差分値は、二種類以上存在するという内容に訂正した。設定差分値として用いる物理量が何であるかに関係無く、比率・設定差分値テーブルに定義されている設定差分値の数値が、全て同じでないということは、当該数値は二種類以上存在していることと同義であり、「二種類以上存在し」という記載によって指し示される事項は明確である。請求項6、8、13、17及び21の「二種類以上存在し」についても同様である。(答弁書5頁26行~6頁2行、被請求人陳述要領書(2)2頁17行~3頁28行)
(3)本件明細書【0101】の「消費電力に、3.5%をかけた値(PCS定格が500[kW]の場合は17.5「kW」)」との表現は誤解を招く可能性があるかもしれないが、この表現は、αの値が大きくなれば差分する数値も大きくなるということを理解し易いように記載したものに過ぎず、図8Cには「参考値」であることが明記されている。よって、本件明細書【0101】~【0104】並びに図8C及び図8Dの記載の文脈の全体からは、発電電力の上限値を算出するためにPCS定格に3.5%を乗じることを意図しているのではなく、「比率・設定比値テーブルには、比率αに対応して、消費電力にかける設定比値をテーブル上で定義してもよい。」()ということを意図していることが明らかであり、実施可能要件を満たさないというほどに記載不備があるとは考えられない。(被請求人陳述要領書(1)3頁16行~5頁3行)
2 無効理由3-1、3-3に関する被請求人の主張
被請求人は、無効理由3-1及び3-3に関して、概略、以下の(1)~(3)を主張する。
(1)請求項1、6及び8に記載の「前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブル」という発明特定事項については、甲1に記載も示唆もされていないから、前記請求項に係る発明と甲1発明との間には、相違点が存在し、当該相違点は甲1発明から容易に想到し得るものではない。請求項3~5、7、10~12に係る発明についても同様である。(答弁書7頁2行~9頁5行、被請求人陳述要領書(1)8頁1~26行)
(2)請求項13、17及び21に記載の「前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を規定するための設定値」という発明特定事項については、甲1に記載も示唆もされていないから、前記請求項に係る発明と甲1発明との間には、相違点が存在し、当該相違点は甲1発明から容易に想到し得るものではない。請求項14~16、18~20及び22~24に係る発明についても同様である。(答弁書9頁6~30行)
(3)甲1発明の「S(t)とP(t)との差分」は、差分値ではあるが、設定差分値ではない。また、甲1発明の「発電電力の上限値」は、「現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値が、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値とな」るものではない。(被請求人陳述要領書(1)6頁1行~7頁5行)
第9 甲号証の記載事項
甲各号証の成立に争いはなく、真正に成立したものでないとする特段の理由もないから、これらは真正に成立したものと認める。
1 甲1の記載事項
甲1には、以下の記載がある。なお、下線は、後述の第10、2(5)の甲1発明の認定に使用した箇所を示すために当審で付した。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、発電制御装置及びそれを用いた太陽光発電の発電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電システムは、電力会社との売買契約に従って、余剰電力は商用電力線に逆潮流させ電力会社に売電されていた。しかし、太陽光発電のような分散電源が増加するにともない、逆潮流による電力系統の電圧変動という弊害が生じることとなった。そのため、現在では太陽光発電システムから電力会社への逆潮流を回避する必要が生じている。
逆潮流を抑制し、太陽電池が発電する電力(発電電力)を制御する方法として、例えば特許文献1、2が開示されている。
特許文献1には、消費電力に対する発電電力の差分値が閾値以下になると太陽電池の発電電力を制御するシステムが、特許文献2には、消費電力に対する発電電力の不足分である受電電力が閾値以下になると太陽電池の発電電力を制御するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2017-093127号公報
【特許文献2】 特開2012-175858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、いずれのシステムにおいても、消費電力に対する発電電力の差分値と閾値とを比較判定し、太陽電池の発電電力を制御するものであった。このようなシステムでは、過剰に発電電力を抑制する結果、太陽電池の発電可能な電力を十分に活用できない。
本発明は、商用電力線への逆潮流を回避しながら太陽電池の発電効率を向上させることができる自家消費型の発電制御システム、及びそれに使用する発電制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る発電制御システムは、
発電電力を制御するパワーコンデショナと、負荷に接続された受変電部と、
前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンデショナの出力を制御する発電制御装置と、を備え、
前記発電制御装置は、発電電力の上限値を消費電力の関数として出力指令値を算出し、
前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナの出力が制御される
ことを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る発電制御システムは、
前記関数は、一次関数であることを特徴とする。
【0007】
このような発電制御システムとすることにより、逆潮流を回避するために、太陽電池の発電電力を制御しながら、太陽電池の発電効率を向上させることができる。
特にパワーコンデショナによる太陽電池の発電電力を制御するためのパラメータである出力指令値を、消費電力についての関数、特に一次関数により算出することにより、容易に、従来過剰に抑制されていた太陽電池の発電電力を有効に利用することが可能となる。
【0008】
また、本発明に係る発電制御システムは、
さらに蓄電池を備えることを特徴とする。
【0009】
蓄電池を備え、太陽電池により発電された電力の一部を蓄電池に充電することにより、太陽電池の発電効率をさらに向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係る発電制御システムは、
前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の0次係数は、
前記蓄電池の蓄電可能量に依存することを特徴とする。
【0011】
出力指令値を算出する消費電力についての一次関数の0次係数に蓄電池の蓄電可能量を反映させることにより、容易に蓄電池による発電効率の向上を実現することができる。
【0012】
また、本発明に係る発電制御システムは、
前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の一次係数と0次係数は、時間に依存することを特徴とする。
【0013】
このように一次関数の各係数を時間に依存する値とすることにより、様々な状況に応じて、柔軟に対応が可能となり、さらに太陽電池の発電効率の向上を実現することができる。
【0014】
また、本発明に係る発電制御装置は、
発電電力及び負荷の消費電力を取得すると共に、
前記発電電力の上限値を前記消費電力の関数としてパワーコンディショナの出力指令値を算出し、前記パワーコンディショナの出力を制御する。
【0015】
このような発電制御装置を用いることにより、太陽電池の発電効率を向上させるとともに逆潮流を回避することができる発電制御システムを得ることができる。
【0016】
なお、本明細書において、一次関数の一次の項の係数を一次係数、0次の項の係数を0次係数と称す。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、逆潮流を回避しながら太陽電池の発電効率を向上させることができる自家消費型の発電制御システム及びそれに使用する発電制御装置を提供することができる。」
(2)「【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0020】
図1は、本発明に係る発電制御システム10の一実施形態の主要構成を示す。
発電制御システム10は、太陽電池1、PCS(パワーコンデショナ)2、受変電部3及び発電制御装置(以下単に、制御装置6と称す)を備え、太陽電池1により発電された電力を自家消費するシステムであり、発電制御システム10は、さらに蓄電池7を備えてもよい。
【0021】
太陽電池1は、太陽光を直流電力に変換し、電気的に接続されているPCS(パワーコンデショナ)2に直流電力を出力する。PCS2は太陽電池1から出力された直流電力を交流電力に変換するとともに太陽電池1の発電電力を制御する。すなわち、PCS2は、太陽電池1のI-V特性に従って太陽電池1の発電電力を制御することができ、例えばMPPT法により発電電力が最大となるように制御することができる。
【0022】
PCS2は、電力線によって受変電部3と電気的に接続されており、さらに受変電部3はエアコン等の1つ以上の電気設備である負荷4と電気的に接続されている。
従って、発電された電力は、PCS2及び受変電部3を経由して、負荷4に分配され消費される。
【0023】
また、受変電部3は、電力会社5等からの商用電力線に接続されており、商用電力線から電力供給を受け負荷4に電力を供給することができる。従って、受変電部3は、複数の電力源に電力線により電気的に接続されており、それらの複数の電力源から受電した電力を、電気的に接続されている負荷4へと電力の分配を行い、さらに電力源の供給電圧と負荷4の電気設備の規格電圧に差がある場合、電気設備の規格電圧に応じて変電を行う変圧器の機能を備えてもよい。
【0024】
消費電力が発電電力を上回る場合、電力会社5、及び蓄電池7を備える場合には蓄電池
7からの給電により、負荷4で消費する電力の不足分を補う。電力会社5からの給電と蓄電池7の放電による給電との優先順位は、適宜設定することができ、自己消費を優先する場合、蓄電池7からの給電を優先する。
尚、受変電部3は、PCS2と一体化されていてもよい。
【0025】
制御装置6は、太陽電池1の発電電力の上限値を設定するため、負荷4の消費電力、又は受変電部3から負荷4への供給電力を計測する計測部を備える。
なお、受変電部3側に負荷4へ供給電力を計測する機能がある場合、制御装置6は、受変電部3から負荷への供給電力の値を取得する。
また、電力の計測部は、受変電部3内に設けてもよく、制御装置6に内蔵してセンサ部のみを電力線に設置してもよい。計測部は公知の電力計を用いることができる。
【0026】
また、制御装置6は、太陽電池1の発電電力をPCS2から取得し、時々刻々変化する太陽電池1の発電電力を監視することもできる。
【0027】
制御装置6は、さらにマイコン等の演算処理部、記憶装置及び計時部を備える。
制御装置6は、計時部の計時機能を用い、指定された(又は記憶装置に記憶された)頻度で(又は日時に)、消費電力を取得し、演算処理部において、得られた消費電力の値を用い、後述する関数(一次関数)によって太陽電池1の発電電力の上限値を設定する。さらに制御装置6は、発電電力の上限値を太陽電池1の定格電力で除して出力指令値(=(発電電力の上限値)/(定格電力)[%])を算出する。出力指令値は、入出力部を経由してPCS2に出力され、PCS2は出力指令値に従って、太陽電池1の発電電力が上限値以下となるように制御する。
なお、発電電力の上限値そのものを出力指令値としてPCS2に出力してもよい。」
(3)「【0034】
本発明に係る発電制御システム10は、発電電力上限値を以下に説明するよう一次関数式により算出し、一次係数a及び0次係数bを実際の消費電力、発電性能にあわせて設定することにより、発電効率を上げることができる。
【0035】
消費電力は時刻により変化するため、時刻tにおける消費電力及び発電電力上限をそれぞれS(t)、P(t)[W]とする。
S(t)=消費電力 [式1]
P(t)=発電電力上限値(最大発電許容値) [式2]
【0036】
P(t)は、S(t)とP(t)との差分が、S(t)の一次式となるように設定する。
S(t)-P(t)=aS(t)+b [式3]
ここで、aは0以上1以下の値とする。式3より
P(t)=(1-a)S(t)-b [式4]
となる。
【0037】
以下、式4により発電電力上限を設定する効果及び、一次係数a、0次係数bの設定法の例について具体的に説明する。
【0038】
式4を所定の時間間隔(t0からt1、例えば、6時から18時、0時から24時)の範囲で時間積分することにより、所定の時間の発電可能な総発電可能量[Wh](総発電量上限値)は
∫P(t)dt=∫(1-a)S(t)dt-∫bdt [式5]
となる。ここで係数a、bを時間に依存しない定数とすると、
∫P(t)dt=(1-a)∫S(t)dt-b∫dt
=(1-a)∫S(t)dt-b(t1-t0) [式6]
となる。
【0039】
ここで、例えば、時刻tmで消費電力量が最大となるとすると、
P(tm)=max(P(t)) [式7]
となる。
もし、時刻tmを中心とする時間帯において消費電力の絶対値の変動が大きくなる場合、急な消費電力の変動に発電電力の制御が追随できないリスクが高くなる可能性がある。そのため、この時間帯において、消費電力と発電電力との差分に対して、十分なマージン(余裕度)を持たせることを想定する。すなわち、時刻tmでのS(tm)とP(tm)との差分を所定の値Z(余裕度)以上に設定すると、
S(tm)-P(tm)≧Z [式8]
となる。そのため、P(tm)は、
P(tm)≦S(tm)-Z [式9]
となる。
【0040】
そこで、時刻tmにおいて、P(tm)がS(tm)-Z以下の値になるという束縛条件の下で総発電可能量が最大になるようa、bを決定する。
なお、Zは、太陽電池の発電量制御の応答性、PCSのMPPT制御の変動幅や、過去
の実績から想定される消費電力の変動量等から決めればよく、Zが小さいと逆潮流のリスクが高くなる。
例えば、PCS2による発電力制御の応答時間が1分程度であり、その間(1分間)の消費電力の変動量が過去の実績から50kWであったとすると、Zの値は50kW以上の値を設定する必要がある。また、応答速度が速く例えば5秒以内程度であれば、その間の消費電力の変動は少なくなると考えられるため、Zの値としてより小さい値を設定できる。
【0041】
図3は、横軸に総発電可能量、縦軸にP(tm)をプロットした相関図であり、図3(a)は、aをゼロとしたときのbの依存性(従来の制御法)を示し、図3(b)は、a及びbの依存性を示し、図3(c)は(a)及び(b)を合成した図である。
【0042】
図3(a)に示すように、bを変化(増大)させると、矢印αに示す方向に、直線LAに沿って総発電可能量及びP(tm)が変化する。
【0043】
図3(b)において、直線LB1は、bをゼロとしaを変化させた時の総発電可能量及びP(tm)を示す。直線LB1において、aを変化(増大)させると、矢印βに示す方向に、直線LB1に沿って総発電可能量及びP(tm)が変化する。
さらに、bを変化(増大)させると、直線LB1が、矢印γで示す方向に、例えば直線LB2、直線LB3へとシフトする。
なお、直線LB2、LB3において、aを変化(増大)させると、直線LB1と同様な矢印βの方向に、直線LB2、LB3に沿って総発電可能量及びP(tm)が変化する
【0044】
図3(c)は、図3(a)及び(b)を合成した図であり、視認性のため直線LA、直線LB1及び直線LB3のみをプロットしている。図中、直線Lmは、P(tm)の上限を示す。(式9参照。)
【0045】
図3(c)において、直線Lmと直線LAとが交わる点の総発電可能量が、aをゼロとしたとき(従来の制御法)の最大の総発電可能量(図中、「TA」で示す)となる。
さらに図3(c)に示すように、直線Lm以下であり且つ総発電可能量がTA以上となる領域(図中に示す、ハッチングされた領域「K」)が存在し、S(tm)と総発電可能量との組み合わせを実現できるようにa、bを設定できることが理解できる。
【0046】
領域Kの内部は、従来の発電量の制御方法よりも発電効率がよい領域である。
領域Kの内、最も総発電可能量が大きいのは、点TB1であり、その点を実現するa、bを選択することも可能であるが、領域K内部の領域で、従来よりも発電効率が高く、さらに逆潮流のリスクを低減するように発電電力の低い点、例えば図3(c)中の点TB2を選択して、a、bを決定してもよい。a、bの設定可能範囲が確定するため、利用者がその範囲から発電電力の上限を確定すればよく、太陽電池1を制御する条件の選択の幅が拡大する。
【0047】
このように、従来のような発電電力の上限値を消費電力に依存しない制御方法とくらべ、式4に示すように発電電力の上限値を消費電力の一次関数とすることで、総発電可能量を増大させることができる。
【0048】
なお、図3(c)においては、tmは消費電力が最大となる時刻としたが、他の時刻、例えば消費電力の時間変動が大きい時刻(S(t)の時間微分が最大となる時刻)、日照量が最大となる時刻等をtmとして、図3(c)に相当するグラフを作成し、一次係数a、0次係数bを決定してもよい。
【0049】
なお、図3(c)は、消費電力の時間積分により算出している。そのため、a、bを確定するための時間積分は、過去数日の消費電力の平均値を用いたり、過去数週間の同じ曜日の消費電力を使用してもよい。
また、図3(c)は、従来と比べ発電効率を向上することができることを示すものであり、a、bの設定条件は上記方法によらず、例えば、aを0(ゼロ)としてbを確定し、aの値を変化させて総発電量のデータを取得し蓄積し、総発電量が高い条件となるようにaの値を確定してもよい。また、逆にbを0(ゼロ)としてaを確定し、bの値を変化させて総発電量のデータを取得し蓄積し、総発電量が高い条件となるようにbの値を確定してもよい。
【0050】
また、時間積分する時刻t0、t1は、適宜変更が可能であり、例えば6時から10時、10時から14時、14時から18時のように複数の時間帯を設け、それぞれの時間帯でa、bを確定し、それぞれの時間帯毎に一次係数a、0次係数bの値を変えてもよい。
【0051】
また、時間積分を行わず特定の時刻t(例えば午前10時等)において、式6の代わりに式4を用いて図3に相当するグラフを作成してもよい。
【0052】
また、一次係数a、0次係数bを決めるためのZの値は、予め過去の実績等から決めておき、a、bの設定可能範囲を算出後、設定可能範囲から利用者等がa、bの値を決定し、発電電力の上限を決めてもよい。例えば、Zの値として十分に余裕を持たせて大きく設定し、使用実績を見ながら小さくしていってもよい。
【0053】
このように、太陽電池1の発電電力を制御するために2つのパラメータ(一次係数a及び0次係数b)を用いることで、太陽電池1の設置箇所、季節、時刻に応じて、様々な条件に対応することができる。
【0054】
また、制御装置6内の記憶装置に過去のデータを記憶して、最適なa、bの値を算出できるように学習機能を備えさせることが可能である。太陽電池1の使用条件に合わせて、発電電力の上限と2つのパラメータ(a、b)との相関関係についてのデータを作成及び保存、蓄積し、蓄積されたデータから、最適な条件を設定することができる。2つのパラメータを用いるため、条件の最適化の自由度が増加し、様々な状況に合わせた制御条件を得ることができる。
【0055】
図4は、本発明の別の効果を示す図であり、P(t)の時間依存性を示し、さらに、簡単のため0次係数(b)をゼロとしたときの、P(t)の一次係数aの依存性を模式的に示す。横軸は時刻であり、縦軸に各一次係数におけるP(t)をプロットしている。
図4において、曲線A、B、Cは、この順に一次係数が増大している。図4より明らかなように、一次係数が増大すると、発電電力上限値が低下するとともに、曲線の凹凸(変動幅)が低下する。例えば、極大点tUの発電電力上限値と極小点tLの発電電力上限値との差が曲線A、B、Cの順に低減することが分かる。即ち、一次係数が増大すると発電電力上限値の変動幅が少なくなる。その結果、PCS2による制御すべき発電電力の応答性が緩和されるという効果もある。
【0056】
このように本発明に係る発電制御システム10においては、従来と比較し、逆潮流を回避しながら総発電量を増大させることが可能な太陽光電池の制御が実現でき、さらに、発電電力を制御する変動幅が緩和される効果もある。」
(4)「【0060】
さらに一次係数a、0次係数bは、季節、時刻に依存して変更してもよい。制御装置6の計時部の時計機能を利用し、記憶部に記憶した季節、時刻毎に設定された一次係数a、0次係数bの値を用いてもよい。
例えば、太陽電池1の発電電力は、定格電力に近くなると、発電電力の変動が小さくなる。この場合Zの値を小さく設定し、それに合わせて一次係数a、0次係数bを算出してもよい。すなわち、太陽高度が高く、十分な日射量を得られ、太陽電池の定格電力に近い値が出力されるような季節及び時刻において、Zを小さく設定することも可能である。
一次係数a、0次係数bの値を太陽電池1の特性や負荷の消費電力の動向にあわせて柔軟に設定することにより、さらに太陽電池1の発電効率を向上させることができる。
【0061】
また、制御装置6からPCS2への制御命令は、その頻度を適宜変更できる。頻度に合わせてa、bを設定してもよい。例えば、頻度が少ない場合、消費電力、発電電力の変動を見込んで、発電電力の上限の算出には、想定される変動幅に余裕(マージン)を持たせてZ値を大きく設定し、一次係数a、0次係数bを確定する。頻度が大きい場合、発電電力の変動幅に対する余裕を少なくすることができ、Z値を小さく設定し、一次係数a、0次係数bを確定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る発電制御システムによれば、容易に、逆潮流を回避しながら太陽電池の発電効率を向上させることが可能となり、電気設備を使用する施設に広く利用することができ、産業上の利用可能性は大きい。」
(5)図1
[図:0001437667000013.jpg]
(6)図3(a)
[図:0001437667000014.jpg]
(7)図3(b)
[図:0001437667000015.jpg]
(8)図3(c)
[図:0001437667000016.jpg]
(9)図4
[図:0001437667000017.jpg]
第10 当審の判断
当審の判断を示すに当たり、最初に本件発明の技術的意義を明らかにし(以下の1)、次いで甲1が開示する技術的思想(以下「甲1技術思想」という。)を明らかにする(以下の2)。
その後、無効理由2の有無について判断し(以下の3)、次いで無効理由3-1及び3-3の有無について判断する(以下の4~19)。
1 本件発明の技術的意義
以下では、本件の特許請求の範囲(前記第4)、明細書及び図面(前記第5)を参照して、以下の(1)~(4)において、本件発明の技術的意義を明らかにする。そして、以下の(5)において、当審で認定した本件発明の技術的意義に関係する請求人の主張について判断する。
なお、以下における「本件明細書等」との語は、本件訂正が認められたことを受けて、本件訂正後の本件の特許請求の範囲、明細書及び図面を意味する。
(1)本件発明の技術分野
本件発明の技術分野は、太陽電池による発電電力を自家消費するためのシステムで用いられるパワーコンディショナの出力制御装置及び出力制御プログラムに関する。(【0001】)
(2)本件発明が解決しようとする課題
本件明細書等に記載された従来技術及びその問題点を、以下のアに示す。この従来技術及びその問題点に鑑みれば、本件発明が解決しようとする課題は、以下のイのとおりと解される。
ア 3つの従来技術の問題点
本件明細書等には、本件発明の従来技術として、3つの技術が示されている。すなわち、等差制御(【0004】)、特許文献1(実願昭59-142040号のマイクロフィルム)に例示される等比制御(【0005】~【0007】)及び特許文献2(特許第6364567号公報)に示される制御である。
特許文献2の出願番号と甲1の出願番号は同一(特願2018-42951号)であるから、特許文献2は甲1の出願の特許公報であり、両者の開示内容は、特許請求の範囲の記載以外は同一である。以上を踏まえ、本件明細書等に従来技術として挙げられた特許文献2に示される制御のことを、以下では「甲1特許制御」という。
本件明細書等では、等差制御の問題点として「消費電力が大きくなればなるほど、消費電力が急激に変化した場合、逆潮流のリスクが高くなる」こと(【0012】)を挙げ、等比制御の問題点として「消費電力が大きい状況において」「発電効率が低下していること」(【0012】)を挙げている。
そして、本件明細書等では、上記の等差制御及び等比制御の問題点を実質的に解決しようと試みているものとして、甲1特許制御を挙げている(【0013】)。甲1特許制御は、発電電力の上限値(以下では、発電電力の上限値を「P」又は「P(t)」で表す。)と消費電力(以下では、消費電力を「S」又は「S(t)」で表す。)との差分が、消費電力Sの一次関数となるように、すなわち、S-P=aS+bとなるように制御するものである(本件明細書【0013】及び甲1【0036】)。
本件明細書等では、甲1特許制御の問題点として、「aとbの値の決め方ついては、抽象的に記載されているに過ぎず、また、特許文献2における説明は難解なため、実際に、具体的に、aとbの値をどのような値として決定していけばよいのか不明である。」(【0014】)と記載している。甲1特許制御の一次係数a及び0次係数bは、「実際の消費電力、発電性能にあわせて設定する」もの(甲1【0034】)であり、運用に先立って設定されるものと解される。それらの値を「どのような値として決定していけばよいのか不明である」という問題点は、要するに、甲1特許制御を実際に運用するに先立って行う設定が難解であるということだと解される。
以上によれば、本件明細書等に示される3つの従来技術の問題点は、以下のとおりと解される。
等差制御:消費電力が大きい場合に、逆潮流のリスクが高くなる
等比制御:消費電力が大きい場合に、発電効率が低下する
甲1特許制御:運用前に行う設定が難解である
イ 本件発明が解決しようとする課題
本件明細書等では、前記アの従来技術の問題点を受け、「本発明は、パワーコンディショナの制御を分かりやすいものとしながらも、系統への逆潮流を回避しつつ、かつ、太陽電池の発電電力をできる限り有効活用することができる出力制御装置、出力制御プログラム、及び太陽光自家消費システムを提供することを目的とする。」(【0015】)と記載している。ここでいう「パワーコンディショナの制御を分かりやすいものと」するとは、前記アの従来技術の問題点のうち、甲1特許制御に係る問題点を解決しようとすることと解されるから、本件発明が解決しようとする課題は、以下の課題1~3であると認められる。
課題1:甲1特許制御よりも、運用前に行う設定を分かりやすいものとする
課題2:逆潮流を回避する
課題3:発電効率をできる限り高くする
(3)本件発明の課題を解決するための手段
以下では、本件発明の課題を解決するための手段を認定する。なお、以下では「課題を解決するための手段」を省略して「課題解決手段」という場合がある。
課題解決手段を認定するにあたり、本件明細書等の【課題を解決するための手段】の記載(【0016】~【0029】)と本件の特許請求の範囲の記載とがほぼ同一の記載となっていることに鑑み、課題解決手段の特定には、前記第4に示した分説記号を用いる。
課題解決手段について、以下のア~オのとおりである。
ア 荷重等差制御の比率・設定差分値テーブルと課題1との関係
本件明細書等には、効果の記載として「本発明によれば、比率・設定差分値テーブルという分かりやすいテーブルを用いて、逆潮流の回避の設定を行うことができるので、パワーコンディショナの制御を分かりやすいものとすることができる。」(【0030】)との記載がある。該効果は、課題1を解決するという効果に他ならないと解され、「比率・設定差分値テーブルという分かりやすいテーブルを用い」ることにより奏されるものと理解される。この理解は、「あらかじめ設定しておく比率・差分テーブルは、非常にわかりやすいものである。特許文献2のように、一次関数のaとbを設定する場合に比べて、比率・差分テーブルは、分かりやすいものとなっている。」(【0091】)との記載とも整合する。本件発明の「比率・設定差分値テーブル」の具体例は、図4に例示されており(【0064】)、消費電力SをPCS定格(以下では、PCS定格を「R」で表す。)で割った比率α(α=S/R)と設定差分値βとを対応付けたものとして説明されており(【0065】)、設定差分値βは、P=S-βとしてパワーコンディショナの出力上限値を算出するために用いられる(【0081】)。
上記のような、「比率・設定差分値テーブル」を用いて比率αから設定差分値βを求め、P=S-βとして出力上限値を算出する制御は、本件の発明の詳細な説明において「荷重等差制御」と呼ばれる(【0087】)。
そして、荷重等差制御は、本件発明1の発明特定事項1C1~1C3及び1C、本件発明6の発明特定事項6D1~6D5、本件発明8の発明特定事項8B2A~8B2C及び8B2、本件発明14の発明特定事項14B、本件発明18の発明特定事項18B、並びに、本件発明22の発明特定事項22Bに対応し、比率・設定差分値テーブルは、本件発明1~5における発明特定事項1B、本件発明6及び7における発明特定事項6B、本件発明8~12における発明特定事項8B1、本件発明14における発明特定事項14A及び13B(14C)、本件発明18における発明特定事項18A及び17B(18C)、並びに、本件発明22における発明特定事項22A及び21B1(22C)に対応するものと解される。
つまり、荷重等差制御(本件発明1~12、14、18及び22の制御)において使用される比率・設定差分値テーブル(発明特定事項1B、6B、8B1、14A及び13B(14C)、18A及び17B(18C)、並びに、22A及び21B1(22C))は、課題1を解決するための手段であると解される。なお、比率・設定差分値テーブルがどのように「分かりやすい」のかについては、以下のエ(ウ)で検討する。
イ 荷重等差制御と課題2及び課題3との関係
前記アのとおり、課題1の解決は、課題2及び3の解決とは独立して検討することが可能であったが、課題2及び3の解決については、課題2の解決と課題3の解決とが密接に関係しており両者を独立して検討するのは不適切である。荷重等差制御における課題2及び3の解決と、そのための手段について、以下に詳述する。
(ア)自家消費システムの技術的性質
課題2及び3の解決について検討する前提として、最初に、発電電力を自家消費するためのシステムの技術的性質を示す。
以下では、ある時刻tにおける実際の発電電力をp(t)と表す。p(t)≦P(t)である(P(t)は前述のとおり、発電電力の上限値)。
本件発明の技術分野(前記(1))によれば、荷重等差制御は、「発電電力を自家消費するためのシステムで用いられる」制御である。発電電力を自家消費するということは、逆潮流を認めないこと、すなわち、発電電力を消費電力以下に制御すること(S(t)≧P(t)≧p(t))に他ならない。そうすると、自家消費を前提に発電効率が最大となるのは、S(t)=P(t)≧p(t)となる場合である。(なお、P(t)>p(t)となるのは、例えば日照不足などにより、発電電力がその上限P(t)まで賄えないときに生じるもので、十分な発電量が確保できる状態であれば、p(t)=P(t)となる。以下では、十分な発電量が確保できることを仮定して、p(t)とP(t)を同一視する場合がある。)
現実に使用されるシステムでは、消費電力S(t)の測定にも、P(t)の計算にも、P(t)となるようにパワーコンディショナを制御するためにも、時間を要する。それらのための時間をΔtで表すと、現実のシステムではS(t)=P(t)となるように制御することは不可能であり、S(t)に基づいてP(t)を計算し、P(t)に基づいてパワーコンディショナを制御し、その制御が発電電力に反映された時には、時刻はt+Δtとなっている。すなわち、S(t)=P(t)とするつもりで制御しても、制御が行われた時の消費電力はS(t+Δt)に変わっており、それに対して発電電力はP(t)を上限としたままとなる。Δtの間に消費電力が減少していた場合、S(t+Δt)<P(t)となるので、発電電力が消費電力に対して過剰となって自家消費できず、余剰電力が逆潮流することとなる。この逆潮流を防止するためには、発電電力の上限値P(t)を計算する際に、P(t)をマージンm(t)=S(t)-S(t+Δt)の分だけ低く計算しておけばよい。すなわち、P(t)=S(t)-m(t)とすれば、逆潮流を完全に回避し、かつ、発電効率を最大とすることができる。
しかしながら、S(t)は現実に測定するまでわからない値であり、未来のS(t)の挙動は、ある程度の傾向を予測できたとしても、不測の変動が生じる可能性を除外することはできない。つまり、時刻tの段階で、S(t+Δt)は予測不可能であり、よって、正確なm(t)を計算することはできない。そのため、m(t)の代わりに、妥当と思われるマージンMを設定し、P(t)=S(t)-Mとして制御することになる。このことは、本件明細書等の【0008】及び【0066】の記載とも整合する。
Mの理論的な最大値はS(t)であり、この場合、逆潮流は完全に回避される(課題2の完全解決)が、P(t)=0となるので、一切発電しない(課題3の解決の放棄)。他方、Mの理論的な最小値は0であり、この場合、極めて微小な消費電力の減少があるだけで逆潮流が発生してしまう(課題2の解決の放棄)が、発電効率は最大となる(課題3の完全解決)。課題2と課題3の完全解決を両立させることは不可能であり、ある程度の逆潮流のリスクを受け入れつつ(課題2の部分的解決)、ある程度の発電効率の低下も受け入れる(課題3の部分的解決)ことを旨として、0<M<S(t)の範囲でMを設定することとなる。
前述のとおり、MはΔtの間に消費電力S(t)が減少した場合にも逆潮流を生じないようにするためのマージンであるから、Mが大きいほど、急激な消費電力低減が生じても逆潮流を起こさず、逆潮流の回避(課題2の解決)に優れることになる。反対に、Mを大きくすると、P(t)=S(t)-Mの式から明らかなように、発電電力の上限値Pが減少し、発電効率の向上(課題3の解決)については劣ることとなる。他方、Mを小さくすると課題2の解決には劣るが、課題3の解決に優れることとなる。
このように、課題2の解決と課題3の解決とは背反的な関係になっている点が、自家消費システムの技術的性質である。
(イ)図8A及び図8Bから読み取れる事項
本件明細書等では、等差制御、等比制御及び荷重等差制御それぞれのシミュレーション結果を重ねたグラフを図8A及び図8Bとして示している(【0088】、【0090】)。これらのシミュレーションでは、等比制御は80%、等差制御は-30kW(図8A、図8B)であるから、等差制御ではP=S-30[kW]として制御され、等比制御ではP=80[%]・Sとして制御されるものと解される。
図8A及び図8Bを参照すると、以下の(i)~(iv)が読み取れる。
(i) 図8Bの縦軸500.0はPCS定格を表し、縦軸0.0かつ横軸10~18の付近に矢印にて「消費電力-設定差分値β≦0の場合、出力指令値=0としているので、PCSからの出力電力はない。」との注釈があるので、図8Bの縦軸は電力を表していると解される。図8Aの縦軸も同様と解される。
(ii) 図8Bにおいて、消費電力(太い実線)が約120~180の区間(横軸で約42~51及び54~68の区間)では、等差制御の出力電力(破線)と等比制御の出力電力(点線)は、ほぼ重なっており、消費電力が上記区間よりも小さい区間では、等差制御の出力電力(破線)よりも等比制御の出力電力(点線)が大きく、消費電力が上記区間よりも大きい区間では、等差制御の出力電力(破線)よりも等比制御の出力電力(点線)が小さい。
すなわち、図8Bのシミュレーションにおいて、
消費電力が約120よりも小さい区間では、
(等差制御の出力電力)≦(等比制御の出力電力)となり、
消費電力が約120~180の区間では、
(等差制御の出力電力)≒(等比制御の出力電力)となり、
消費電力が約180よりも大きな区間では、
(等差制御の出力電力)≧(等比制御の出力電力)となる
と解される。
なお、図8Aでは、消費電力(太い実線)が約120よりも小さい区間における等差制御の出力電力(破線)が見えないため、等差制御の出力電力と等比制御の出力電力との間に、図8Bと同様の関係が成立するかは不明である。
(iii) 荷重等差制御のグラフ(細い実線)は、多くの場合、等差制御のグラフ(破線)と等比制御のグラフ(点線)との間に位置するか、等差制御又は等比制御のグラフと重なっているかである。
前記(ii)も考慮すると、荷重等差制御の出力電力は、多くの場合、等差制御の出力電力と等比制御の出力電力との間に位置すると解される。
(iv) 一部の区間(例えば、図8Aの横軸で約25~45の区間。この区間で消費電力(太い実線)は約140~180を動く。)では、荷重等差制御のグラフ(細い実線)は、等差制御のグラフ(破線)及び等比制御のグラフ(点線)のいずれよりも下に位置する。すなわち、荷重等差制御の出力電力は、等差制御及び等比制御よりも小さくなる場合があると解される。
(ウ)図8A及び図8Bから読み取れる事項と課題2及び3との関係
図8A及び図8Bにおいて、各制御の出力電力の大きさは、発電効率の高さを表すと解される。また、消費電力と各制御の出力電力との差(グラフにおける消費電力と出力電力との縦軸方向の距離)は、マージンM(前記(ア))を表し、逆潮流の回避の度合いを表すと解される。
前記(イ)(ii)~(iv)によれば、荷重等差制御の出力電力は、等差制御又は等比制御と比べて、必ずしも大きくなるわけではない。より詳細に検討すると、以下のa~eのとおりである。
a 消費電力が大きい区間での等比制御との比較
消費電力が大きい区間(消費電力が約180よりも大きい区間)について、荷重等差制御の出力電力は、等比制御の出力電力よりも大きい傾向にある。すなわち、消費電力が大きい区間では、荷重等差制御の発電効率は、等比制御よりも向上しており、課題3の解決については、荷重等差制御はより優れるといえる。
しかしながら、消費電力が大きい区間では、荷重等差制御における消費電力と発電電力との差分は、等比制御における消費電力と発電電力との差分よりも小さい傾向にある。すなわち、消費電力が大きい区間では、消費電力が急減した場合に、荷重等差制御は等比制御よりも逆潮流が発生しやすくなると解され、課題2の解決については、荷重等差制御はより劣るといえる。
b 消費電力が大きい区間での等差制御との比較
消費電力が大きい区間について、荷重等差制御の出力電力は、等差制御の出力電力よりも小さい傾向にある。すなわち、消費電力が大きい区間では、荷重等差制御の発電効率は、等差制御よりも減少しており、課題3の解決については、荷重等差制御はより劣るといえる。
しかしながら、消費電力が大きい区間では、荷重等差制御における消費電力と発電電力との差分は、等差制御における消費電力と発電電力との差分よりも大きい傾向にある。すなわち、消費電力が大きい区間では、消費電力が急減した場合に、荷重等差制御は等差制御よりも逆潮流が発生しにくくなると解され、課題2の解決については、荷重等差制御はより優れるといえる。
c 消費電力が小さい区間での等比制御との比較
消費電力が小さい区間(消費電力が約120よりも小さい区間)について、荷重等差制御の出力電力は、等比制御の出力電力よりも小さい傾向にある。すなわち、消費電力が小さい区間では、荷重等差制御の発電効率は、等比制御よりも減少しており、課題3の解決については、荷重等差制御はより劣るといえる。
しかしながら、消費電力が小さい区間では、荷重等差制御における消費電力と発電電力との差分は、等比制御における消費電力と発電電力との差分よりも大きい傾向にある。すなわち、消費電力が小さい区間では、消費電力が急減した場合に、荷重等差制御は等比制御よりも逆潮流が発生しにくくなると解され、課題2の解決については、荷重等差制御はより優れるといえる。
d 消費電力が小さい区間での等差制御との比較
消費電力が小さい区間について、荷重等差制御の出力電力は、等差制御の出力電力よりも大きい傾向にある。すなわち、消費電力が小さい区間では、荷重等差制御の発電効率は、等差制御よりも向上しており、課題3の解決については、荷重等差制御はより優れるといえる。
しかしながら、消費電力が小さい区間では、荷重等差制御における消費電力と発電電力との差分は、等差制御における消費電力と発電電力との差分よりも小さい傾向にある。すなわち、消費電力が小さい区間では、消費電力が急減した場合に、荷重等差制御は等差制御よりも逆潮流が発生しやすくなると解され、課題2の解決については、荷重等差制御はより劣るといえる。
e 一部の区間における等差制御及び等比制御との比較
一部の区間(例えば、図8Aの横軸で約25~45の区間)において、荷重等差制御における発電電力は、等差制御及び等比制御におけるそれぞれの発電電力よりも小さい。すなわち、当該区間では、荷重等差制御の発電効率は低下しており、課題3の解決については、荷重等差制御はより劣るといえる。
他方、当該区間における消費電力と発電電力との差分をみると、荷重等差制御の差分は、等差制御及び等比制御の差分のいずれよりも大きくなっている。すなわち、当該区間では、荷重等差制御では逆潮流が発生しにくくなっていると解され、課題2の解決については、荷重等差制御はより優れるといえる。
(エ)比率・設定差分値テーブルと課題2及び3との関係
前記(ウ)に示したように、荷重等差制御は、課題2及び課題3の解決について、必ずしも従来技術である等差制御及び等比制御よりも優れるわけではなく、劣る場合もある。そして、課題2の解決に優れる場合には、課題3の解決に劣り、課題3の解決に優れる場合には、課題2の解決に劣るというように、課題2の解決と課題3の解決とは背反する関係にある。これは、前記(ア)に示した自家消費システムの技術的性質に起因すると解される。
しかしながら、荷重等差制御は、P=S-βとする制御であり(【0081】)、設定差分値βは、逆潮流を回避するためのマージンM(前記(ア))に当たるため、設定差分値βを0<β<S(t)の範囲で設定すれば、課題2及び3をそれぞれ部分的に解決できる(前記(ア))。
つまり、荷重等差制御における課題2及び3の解決は、両者の完全解決を両立することを意図するのではなく、両者をそれぞれ部分的に解決することを意図していると解するべきであり、その意味で、荷重等差制御の設定差分値βは、課題2及び3の解決手段を構成すると解される。
そして、荷重等差制御の設定差分値βは、相異なる比率αの領域(α1領域~α6領域)に対してそれぞれ異なる値が設定されるものである(【0065】、図4)から、設定差分値βは、比率αの影響を受ける。加えて、本件明細書等には、「どの比率αまで、設定差分値βを定義するかは、適宜決定すればよい。」(【0067】)と記載され、「上記実施形態では、比率・差分テーブルにおいて、比率αを、20%毎の6段階としているが、何パーセント毎に、設定差分値を予め決めておくかは、本発明を限定するものではない。比率αを、7段階以上にしてもよいし、2段階以上5段階未満にしても良い。」(【0092】)と記載されているから、比率αを何個の領域にどのように分けるかも自由に設定することができ、それに応じて設定差分値βの設定も変化する。よって、比率αと設定差分値βとの対応関係を定めた比率・設定差分値テーブルは、荷重等差制御における課題2及び3の解決手段であると解される。
以上によれば、荷重等差制御において、比率αと設定差分値βとを対応付けている比率・設定差分値テーブル(発明特定事項1B、6B、8B1、14A及び13B(14C)、18A及び17B(18C)、並びに、22A及び21B1(22C))は、課題2及び課題3の解決手段のひとつと解され、ここでの課題2及び課題3の解決は、ある程度の逆潮流のリスクとある程度の発電効率の低下とを受け入れて、両課題をそれぞれ部分的に解決することであると解される。
(オ)【0066】の記載事項と課題2及び3との関係
本件明細書等には、「比率αが100[%]よりも大きい場合、消費電力がPCS定格を上回っているのであるから最大限発電したとしても良いように思うが、消費電力が急に低下した場合、最大限発電していると、パワーコンディショナの制御が追いつかずに、逆潮流を生じてしまうないしPRRが動作する場合がある。そのため比率αが100[%]よりも大きい場合でも、安全マージンを見て設定差分値を設定しておくのが好ましい。」(【0066】)との記載がある。
前記記載からは、消費電力がPCS定格を上回っている場合でも、逆潮流回避のための安全マージンを設定差分値βとして設定するのが好ましいと解されるから、「比率αが100[%]よりも大きい場合でも」「設定差分値を設定しておく」こと(本件発明3の発明特定事項3A、本件発明10の発明特定事項10A)は、課題2の解決をより優れたものとするための手段であると解される。(なお、発明特定事項3A及び10Aによれば、課題3の解決がより劣ることは明らかである。)
(カ)【0069】、【0084】の記載事項と課題2及び3との関係
本件明細書等には、「好ましくは、比率αが大きくなるほど、設定差分値βを大きくする。これにより、消費電力が大きい領域において、急激に消費電力が低下としたとしても、設定差分値βに余裕を持たせることになるので、発電電力が消費電力を上回って、逆潮流が発生するという状況を回避することが可能となる。」(【0069】)との記載、及び、「図6に示されているように、消費電力が大きくなればなるほど、設定差分値βが大きくなり、パワーコンディショナ3の出力上限値(発電電力の上限値)と消費電力との間に、余裕を持たせることができる。これによって、消費電力が急激に低下したとしても、逆潮流が生じることを、回避することができる。」(【0084】)との記載がある。
一般に、消費電力S(t)が大きい程、Δt後の消費電力S(t+Δt)の減少幅は大きくなり得る。なぜならば、最大の減少幅は、S(t)そのものであるからである(例えば、Δtの間に全ての負荷が切り離されるような場合には、S(t+Δt)は0になるから、S(t)-S(t+Δt)は、S(t)に等しくなり、最大の減少幅となる)。消費電力がS(t)であるときのΔt後の消費電力の減少幅として最大値S(t)を採用するのが最適とは限らないが、S(t1)>S(t2)として、時刻t1で予想する時刻t1+Δtにおける消費電力の減少幅を、時刻t2で予想する時刻t2+Δtにおける消費電力の減少幅よりも大きな値とすることには、一定の合理性が認められる。
そうすると、前記【0069】及び【0084】の記載は、消費電力Sが大きくなり、それに応じて比率αが大きくなるほど、消費電力の減少幅が大きくなり得るので、そのような大きな消費電力の減少があっても、逆潮流を回避できるようにするために、「消費電力が大きくなればなるほど、設定差分値βが大きくな」るようにした旨を説明していると解される。
したがって、荷重等差制御において、消費電力が大きくなればなるほど、設定差分値βが大きくなること(発明特定事項2B、9B)は、課題2の解決をより優れたものとするための手段であると解される。(なお、発明特定事項2B及び9Bによれば、課題3の解決が、消費電力が大きい区間において、より劣ることは明らかである。)
(キ)【0088】の記載事項と課題2及び3との関係
本件明細書等には、図8Aの説明として、「等比制御と比べて、荷重等差制御では、PCSの出力電力の上限値が低くなるので、発電効率が低下することとなるが、等比制御と比べたら、発電効率が向上しているのがわかる。」(【0088】、下線は強調のために当審で付した。)との記載がある。
当該記載からは、荷重等差制御の発電効率が、等比制御と比べて向上しているのか低下しているのか不明である。また、当該記載が消費電力の大小に関わらない一般的な傾向を述べようとしているのか、それとも、前記(ウ)のa~eのいずれかに限定した傾向を述べようとしているのかも、不明である。したがって、当該記載から、荷重等差制御により課題2及び3の解決がどの程度なされたかを理解することはできない。
しかしながら、【0088】の記載は、前記(エ)~(カ)に示した解釈に影響を与えるものではない。更に言えば、後述の(ク)~(コ)に示す解釈を左右するものでものない。
また、本件明細書等には、図8Aの説明として、「また、荷重等差制御では、等差制御と比べて、消費電力が大きい場合、消費電力との間に、余裕があることがわかるので、逆潮流は等差制御と比べて、明らかに、生じにくい。」(【0088】)との記載がある。当該記載は、前記(ウ)bと整合する。
(ク)【0090】の記載事項と課題2及び3との関係
本件明細書等には、図8Bの説明として、「また、図8Bでは、消費電力-設定差分値βが0以下の場合も示されている。このとき、ステップS36によって、出力指令値は、0となるので、PCSからの出力電力はないことがグラフで示されている。これは、「最低受電電力」を定義していると言う事もできる。パワーコンディショナは、低出力時には出力が不安定になりやすいので、「最低受電電力」を設けることで、低出力時における逆潮流を防止する効果が高まる。」(【0090】)との記載がある。
当該記載の「消費電力-設定差分値βが0以下の場合」に「出力指令値は、0となるので、PCSからの出力電力はない」というのは、発明特定事項4A、7A及び11Aに対応すると解される。
すなわち、荷重等差制御においてS-β≦0の場合に出力指令値を0とすること(発明特定事項4A、7A及び11A)は、課題2の解決をより優れたものとするための手段であると解される。
(ケ)【0091】の記載事項と課題2及び3との関係
本件明細書等には、「そして、荷重等差制御では、逆潮流を介しながらも、太陽電池の発電電力をできる限り有効活用できている。」(【0091】)との記載がある。
この記載のみからは、荷重等差制御が課題2及び課題3をどの程度解決しているのかを把握することはできないが、この記載は前記(エ)~(ク)に示した解釈及び以下の(コ)に示す解釈を左右するものではない。
(コ)課題2及び3を解決するための最適な比率・設定差分値テーブル
前記(エ)に示したように、課題2及び課題3の解決は、ある程度の逆潮流のリスクとある程度の発電効率の低下とを受入、両課題をそれぞれ部分的に解決することであると解される。
しかしながら、荷重等差制御において、課題2の解決と課題3の解決のどちらをどの程度優先するのが最適なのかについては、本件の発明の詳細な説明に記載はない。
他方、本件の発明の詳細な説明には、「比率・設定差分値テーブルは、太陽光発電自家消費システム1の発電可能能力や負荷6での消費電力の大きさなどを考慮して、予め決定しておく。」(【0064】)との記載があり、当該記載によれば、課題2の解決及び課題3の解決のバランスをどのように取るべきかは、需要家それぞれの事情(どのような性能の発電設備を使用するのか、どのような負荷を用いるのか、電力系統との連系の仕方がどのようになっているのか等)に応じて異なるのだと理解される。したがって、最適な比率・設定差分値テーブルが満たすべき条件や、その条件に合致する比率・設定差分値テーブルの求め方は、需要家ごとに異なり一律に論じられるものではなく、本件発明が対象とするところではないと解される。
なお、前記(カ)に示したように、比率・設定差分値テーブルを比率αが大きくなるほど設定差分値βを大きくするように作成するという大まかな指針が示されているが、αの増大に対してどの程度βを増大させるのが良いのか等、具体的なαとβの求め方については本件明細書等に示されていない点で、発明特定事項2B及び9Bも、最適な比率・設定差分値テーブルの条件やその求め方を与えるものではない。
需要家それぞれの事情に応じて適切な比率・設定差分値テーブルを設定することに関連し、本件明細書等には、「また、予め決定した比率・設定差分値テーブルを、入力部46を利用して、運用状況を見ながら、適宜、書き換えることができる。」(【0064】)との記載がある。この記載の意図は、上述のように、最適な比率・設定差分値テーブルの求め方を本件明細書等が開示していないことを前提に、需要家における実際の運用の結果をフィードバックしながら、比率・設定差分値テーブルをより最適なものへと逐次書き換えることで、課題2及び3の解決をより需要家にとって適したものに変えていこうということであると解される。
この観点から、比率・設定差分値テーブルを書き換えることができること(発明特定事項5A及び12A)は、課題2及び3を解決するための手段のひとつであるといえる。
(サ)課題2及び3の解決についての甲1特許制御との比較
本件明細書等には、「特許文献2の段落0060に記載されているように、季節や時刻に依存して、一次関数の一次係数aおよび0次係数bを変更することが開示されている。…(略)…しかし、時刻毎に、各係数を設定したとした場合、当初想定していたような消費電力の傾向とは、異なるような変化を消費電力がした場合、元々設定した各係数は、消費電力の向上に役に立たないものとなる。」【0094】との記載、「すなわち、時間帯や季節に依存して、各係数を設定するような特許文献2の方法では、必ずしも、消費電力の向上が実現しているとは、言えない場合が発生してしまう。」(【0095】)との記載、及び、「一方、上記実施形態では、設定差分値は、消費電力とPCS定格との比率に依存しており、時間帯や季節には依存していないので、特許文献2の上記問題は、上記実施形態には、生じないのである。」【0096】との記載がある。(これらの記載中、「消費電力の向上」は「発電効率の向上」の誤記と認める。)
しかしながら、前記(ア)及び(エ)で指摘したように課題2の解決と課題3の解決は背反する関係にあるので、甲1特許制御の発電効率が低下した場合は、逆潮流の回避に優れる制御となり、一概に甲1特許制御において時間帯等に依存して各係数を設定することが、荷重等差制御よりも両課題の解決において劣るということはできない。また、荷重等差制御が甲1特許発明に比して課題3の解決(発電効率の向上)を課題2の解決(逆潮流の回避)よりも格別に重視する理由もない。課題2と課題3のどちらをどの程度重視するかは、需要家の事情により決定されるべきものであり、需要家によっては、時間帯や季節毎に重視する課題が変わることもあり得ると推察される。
よって、荷重等差制御における課題2及び3の解決は、甲1特許制御における両課題の解決と比べて、一概に優劣をつけられるものではない。
ウ 荷重等差制御における課題解決手段のまとめ
本件発明における課題は前記(2)イに示した課題1~課題3であり、それらの解決手段は、前記ア及びイを総合すると、以下のA~Eのとおりと理解される。
A 荷重等差制御(本件発明1~12、14、18及び22の制御)における課題1~3の解決手段は、比率・設定差分値テーブル(発明特定事項1B、6B、8B1、14A及び13B(14C)、18A及び17B(18C)、並びに、22A及び21B1(22C))である。(前記ア及びイ(エ))
ただし、課題2及び課題3の解決は、ある程度の逆潮流のリスクとある程度の発電効率の低下とを受け入れて、両課題をそれぞれ部分的に解決することであると解される。(前記イ(エ))
B 荷重等差制御において、課題2の解決(逆潮流の回避)をより優れたものとするための手段は、消費電力が大きくなればなるほど、設定差分値βが大きくな」ること(発明特定事項2B及び9B)であり、これは、本件発明2及びそれを引用する本件発明3~5並びに本件発明9及びそれを引用する本件発明10~12が備える手段である。ただし、この手段を採用した場合、課題3の解決はより劣ることになる。(前記イ(カ))
C 荷重等差制御において、課題2の解決(逆潮流の回避)をより優れたものとするための手段は、比率αが100%よりも大きい場合でも設定差分値を設定しておくこと(発明特定事項3A及び10A)であり、これは、本件発明3及びそれを引用する請求項4と5、並びに、本件発明10及びそれを引用する本件発明11と12が備える手段である。ただし、この手段を採用した場合、課題3の解決はより劣ることになる。(前記イ(オ))
D 荷重等差制御において、課題2の解決(逆潮流の回避)をより優れたものとするための手段は、(消費電力S)-(設定差分値β)が0以下の場合に、出力指令値を0とすること(発明特定事項4A、7A及び11A)であり、これは、本件発明4及びそれを引用する本件発明5、本件発明7並びに本件発明11及びそれを引用する本件発明12が備える手段である。(前記イ(ク))
E 荷重等差制御において、課題2及び3の解決をより優れたものとするための手段は、比率・設定差分値テーブルを書き換えることができること(発明特定事項5A及び12A)であり、これは、本件発明5及び本件発明12が備える手段である。(前記イ(コ))
エ 荷重制御における課題解決手段
本件明細書等で荷重制御と総称される制御における課題2及び課題3の解決について、以下の(ア)~(ウ)がいえる。
(ア)荷重制御と総称される制御における課題解決手段
本件の発明の詳細な説明には、荷重等差制御の実施形態の変形例として、荷重等差制御を「比率αに対応させて、パワーコンディショナが出力する発電電力の上限値を制御していると捉え」た上で(【0097】)、「負荷の消費電力とパワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、パワーコンディショナの発電電力の上限値を規定するための設定値を記憶していると、上位概念化」したもの(【0098】)が記載されており、このように上位概念化した制御は、本件の発明の詳細な説明において「荷重制御」と呼ばれる(【0108】)。
そして、本件の発明の詳細な説明には、荷重制御について、「その他、消費電力とPCS定格との比率αに対応するように、パワーコンディショナの発電電力の上限値を決定付ける値として、種々の値を予めテーブルとして記憶しておき、制御部が、当該テーブルを参照して、発電電力の上限値を決定して、パワーコンディショナを制御する発明が、本発明に含まれるのである。」(【0108】、下線は強調のために当審で付した。)との記載がある。当該記載によれば、発電電力の上限値を決定づける設定値を比率αに対応させてテーブルに記憶させた荷重制御も、荷重等差制御と同様に「本発明」に含まれるのだから、荷重制御に使用される前記テーブルは、荷重等差制御と同様に課題1~3を解決する手段であると解される。
よって、荷重制御(本件発明13~24の制御)における課題1~3の解決手段は、比率αに対応させて、パワーコンディショナの出力電力の上限値を規定するための設定値を記憶させたテーブル(発明特定事項13B、17B及び21B1)であると解される。
なお、以下では、本件明細書等【0108】に記載された「パワーコンディショナの発電電力の上限値を決定付ける値」のことを、発明特定事項13B、17B及び21B1の記載に従い、「設定値」という。
(イ)荷重制御のうち荷重等比制御の課題解決手段
本件の発明の詳細な説明には、荷重制御の形態の一つとして、「荷重等比制御」が記載されている(【0103】)。荷重等比制御は、比率αと、現在の消費電力にかける比の値とを対応付けた比率・設定比値テーブルを用いる(【0101】)。
本件の発明の詳細な説明には、荷重等比制御の具体的な制御が2つ記載されている。1つは、消費電力Sに設定比値(以下「ε1」)をかけた値を、消費電力から引いた値を発電電力の上限値Pとする(P=S-ε1・S)制御である(【0101】)。この制御を、以下では「荷重等比制御1」という。
もう1つは、消費電力Sに設定比値(以下「ε2」)をかけた値を、発電電力の上限値Pとする(P=ε2・S)制御である(【0102】)。この制御を、以下では「荷重等比制御2」という。なお、ε2=1-ε1とすると、荷重等比制御1と荷重等比制御2は同一の出力上限値Pを算出するという意味において等価な制御となる。
荷重等比制御1及び2の双方とも、荷重制御と総称される制御に含まれるものと解されるから、比率αと設定比値(ε1又はε2)とを対応付けた比率・設定比値テーブル(発明特定事項15A、16A、19A、20A、23A及び24A)は、荷重等差制御の比率・設定差分値テーブルと同様に、課題1~3の解決手段であると解される。なお、本件明細書等には、荷重等比制御の効果として、「図8Dに示すように、荷重等比制御を用いれば、等差制御よりも、消費電力との間に、余裕マージンを持たせておきながら、等比制御よりも、発電電力の向上を図ることができるのが確認できる。」(【0104】)との記載があるが、図8Dに示される荷重等比制御の出力の傾向は、図8A及び図8Bに示される荷重等差制御の出力の傾向と同様であり、荷重等比制御が等差制御及び等比制御と比べて、課題2及び課題3の解決の双方に優れていると一概にいうことはできない(このことは、荷重制御一般にもいえることである)。
(ウ)荷重制御が使用する「分かりやすい」テーブル
前述のとおり、本件明細書等に記載された荷重制御は荷重等差制御を上位概念化したものであり(【0097】、【0098】)、荷重等比制御(【0103】)は荷重制御と総称されるもの(【0108】)である。
本件明細書等には、荷重等差制御の比率・設定差分値テーブル、荷重等比制御の比率・設定比値テーブル及び荷重制御のテーブルが、どのように「分かりやすい」のかについての具体的な説明はない。
そこで、比率・設定差分値テーブル、比率・設定比値テーブル及び荷重制御のテーブルの共通点について見ると、いずれも、比率α(消費電力S÷PCS定格R)と設定値(設定差分値β並びに設定比値ε1及びε2を包含する)とを対応付けている点にある。
本件明細書等には、比率αについて、「比率αが100[%]よりも大きい場合、消費電力がPCS定格を上回っている」(【0066】)と記載されていることから、比率αが100%を超えれば、消費電力SがPCS定格Rを上回り、発電電力の上限値PがPCS定格Rで頭打ちとなり、S>P=Rとなって、理論的には(制御に必要な遅延Δtを無視すれば)逆潮流が起き得ない。このことは、荷重制御のテーブルにおいて、比率αを何段階に分けるかに関わらず成立することである。
すなわち、比率αが0~100%の範囲は設定値を適切に設定しないと逆潮流による不利益を被る蓋然性が高い範囲であり、比率αが100%超の範囲は理論的には逆潮流による不利益を被る蓋然性が低い範囲であるとユーザーが認識できる。比率αに対する100%という閾値は、百分率の定義に照らして自明といえるほど分かりやすい。
また、本件明細書等には「ただし、100[%]よりも大きい場合に、設定差分値を設定するかどうかは任意であり、本発明を限定するものではない」(【0068】)との記載があり、比率αが100%を超える領域には設定差分値を設定する必要がないが、それは、比率αが100%以下の領域には設定差分値の設定が必須であることを意味する。つまり、比率αを用いることで、設定差分値の設定を必須とする領域が明確に理解でき、分かりやすい。
少なくとも上記のような分かりやすさを比率αが持つがゆえに、比率αを用いた荷重制御のテーブル(比率・設定差分値テーブル及び比率・設定比値テーブルを含む)が、本件明細書等において「分かりやすいテーブル」(【0030】)として説明されていると解され、この観点において、本件発明のテーブル(比率・設定差分値テーブル及び比率・設定比値テーブルを含む。)が課題1を解決するための手段となっていると解される。
なお、需要家にとって最適なテーブルの求め方については、本件発明の対象とするところではないことは、前記イ(コ)に示したとおりである。
オ 課題解決手段についての小括
前記ア~エを総合すると、本件発明における課題を解決するための手段は、以下の(ア)~(オ)のとおりと認められる。
(ア)本件発明全てに共通する課題解決手段
本件発明において、発明の詳細な説明に記載されたテーブル(比率・設定差分値テーブル及び比率・設定比値テーブルを含む)に対応する発明特定事項1B、6B、8B1、13B、17B及び21B1は、課題1~課題3を解決するための手段である。
ここで、課題1の解決は、少なくとも、テーブルに比率αが使用されており、比率αの値が100%以下であるか100%超であるかによって、逆潮流による不利益を被る蓋然性が高い領域か、逆潮流による不利益を被る蓋然性が低い領域かが分かるという意味で、前記テーブルが分かりやすいことに起因する(前記エ(ウ))。
また、課題2の解決(逆潮流の回避)と課題3の解決(発電効率の向上)とは背反の関係にあるが、需要家の事情を考慮して需要家毎に適切な設定値を設定することにより、ある程度の逆潮流のリスクとある程度の発電効率の低下とを受け入れて、両課題をそれぞれ部分的に解決することができる(前記ウ、A)。
(イ)本件発明2~5及び9~12の課題解決手段
本件発明2~5及び9~12において、発明特定事項2B及び9B(消費電力が大きくなるに従って設定差分値が大きくなること)は、課題2の解決(逆潮流の回避)をより優れたものとするための手段である。ただし、この手段を採用した場合、課題3の解決はより劣ることになる。(前記ウ、B)
(ウ)本件発明3~5及び10~12の課題解決手段
本件発明3~5及び9~12において、発明特定事項3A及び10B(比率が100[%]よりも大きい場合においても設定差分値が登録されていること)は、課題2の解決(逆潮流の回避)をより優れたものとするための手段である。ただし、この手段を採用した場合、課題3の解決はより劣ることになる。(前記ウ、C)
(エ)本件発明4、5、7、11及び12の課題解決手段
本件発明4、5、7、11及び12において、発明特定事項4A、7A及び11A(消費電力から設定差分値を引いた値が0以下の場合に出力指令値を0とすること)は、課題2の解決(逆潮流の回避)をより優れたものとするための手段である。(前記ウ、D)
(オ)本件発明5及び12の課題解決手段
本件発明5及び12において、発明特定事項5A及び12A(比率・設定差分値テーブルが書き換えられること)は、課題2の解決(逆潮流の回避)及び課題3の解決(発電効率の向上)をより優れたものとするための手段である。(前記ウ、E)
この手段は、需要家毎の最適な比率・設定差分値テーブルの求め方を与えるものではないが、実際の運用の結果を比率・設定差分値テーブルにフィードバックして逐次書き換えることにより、比率・設定差分値テーブルを需要家にとってより適切なものとするための手段である。(前記イ(コ))
(4)本件発明の効果
本件発明の効果は、以下に示す効果1~7のとおりと認められる。
ア 本件明細書等の【0030】、【0031】、【0036】、【0088】、【0091】、【0096】、【0104】及び【0109】の記載は、比率αに対応させて設定値(設定差分値β及び設定比値を含む)を記憶させる(テーブルとして格納する)ことによる効果と、当該テーブルが時刻や季節毎に設定されるものではないことによる効果を記載したものと解されるため、前記(3)に示した課題解決手段についての検討を踏まえると、前記記載は、以下の効果1~効果3を述べたものと解される。
効果1:本件発明では、テーブル(比率・設定差分値テーブル及び比率・設定比値テーブルを含む)に使用される比率αの値が100%以下であるか100%超であるかによって逆潮流による不利益を被る蓋然性が高い領域か低い領域かが分かるという意味で分かりやすいテーブルを使用するから、運用前に行う設定が分かりやすくなる(課題1の解決)。
効果2:本件発明では、需要家の事情を考慮して需要家毎に適切な設定値を設定することにより、逆潮流の回避と発電効率の向上とのバランスを当該需要家にとって適切なものにできる(課題2及び3の部分的解決)。
効果3:本件発明では、予め想定している消費電力の変化の動向、日照条件の変化の動向、時刻及び季節に依存することのない発電電力の制御が可能となる。(この効果が課題2及び3を解決すると一概にいえるものでないことは、前記(3)イ(サ)のとおりである。)
イ 本件明細書等の【0032】、【0069】及び【0084】の記載は、消費電力が大きい場合に設定差分値を大きくすることによる効果を記載したものと解されるため、前記(3)オ(イ)に鑑みると、以下の効果4を述べたものと解される。
効果4:本件発明2~5及び9~12では、消費電力が大きい場合に設定差分値を大きくすることにより、逆潮流をより回避できる。(課題2のより優れた解決、課題3の解決には劣る)
ウ 本件明細書等の【0033】の記載は、比率αが100%よりも大きな場合でも設定差分値を設けることによる効果を記載したものと解されるため、前記(3)オ(ウ)に鑑みると、以下の効果5を述べたものと解される。
効果5:本件発明3~5及び9~12では、比率が100%よりも大きな場合でも設定差分値が登録されていることにより、逆潮流をより回避できる。(課題2のより優れた解決、課題3の解決には劣る)
エ 本件明細書等の【0034】及び【0090】の記載は、消費電力Sから設定差分値βを引いた値が0以下の場合に出力指令値を0とすることによる効果を記載したものと解されるため、前記(3)オ(エ)に鑑みると、以下の効果6を述べたものと解される。
効果6:本件発明4、5、7、11及び12では、消費電力から設定差分値を引いた値が0以下の場合に出力指令値を0とすることにより、逆潮流をより回避できる。
オ 本件明細書【0035】の記載は、比率・設定差分値テーブルを書き換えられることによる効果を記載したものと解されるため、前記(3)オ(オ)に鑑みると、以下の効果7を述べたものと解される。
効果7:本件発明5及び12では、比率・設定差分値テーブルを書き換えられることにより、実際の運用を通して比率・設定差分値テーブルを需要家にとってより適切なものに逐次書き換えることができる。(課題2及び3のより優れた解決)
(5)請求人の主張についての判断
請求人の主張のうち、本件発明の効果に関するものについて、以下、判断する。
ア 前記第7、1(1)ア(ア)の主張について
請求人は、本件発明の効果として、本件明細書に、前記第7、1(1)ア(ア)の鉤括弧内の記載があると主張する。当該記載は、本件明細書等の【0030】の記載そのものであり、本件明細書に請求人が主張する記載が存在することはそのとおりである。
しかしながら、本件明細書等の【0030】の記載は、課題2及び3の解決については、文言どおりに解釈することは不合理である(前記(3)イ)。すなわち、【0030】の「また、一律同じ値の差分値を用いて制御する等差制御と比べて、消費電力とPCS定格との比率に応じて、設定差分値を決めることができるので、発電電力上限値に余裕を持たせることができつつ、逆潮流の回避を実現しつつ、等比制御と比べて、発電電力上限値を高く設定することができるので、太陽電池の発電電力を出来る限り有効活用することができる。」との記載について、文言どおり、本件発明が従来の等差制御に比べて逆潮流の回避に優れ、本件発明が従来の等比制御に比べて発電効率の向上に優れていると解するべきではない。本件発明が等差制御よりも逆潮流の回避に劣る場合があることは、前記(3)イ(ウ)dに示したとおりであるし、本件発明が等比制御よりも発電効率の向上に劣る場合があることは、前記(3)イ(ウ)c及びeに示したとおりである。そもそも、自家消費を前提としたシステムにおいては、逆潮流の回避と発電効率の向上とは背反的な関係になっている(前記(3)イ(ア))のだから、逆潮流の回避と発電効率の向上とを独立した効果として理解することは不適当である。また、逆潮流の回避と発電効率の向上とのどちらをどの程度重視するかは、需要家の事情次第である(前記(3)イ(コ))から、逆潮流の回避及び発電効率の向上に関して本件発明と従来技術との比較をするにあたり、需要家の事情を考慮しないことも不適当である。
以上のとおりであるから、請求人の前記第7、1(1)ア(ア)の主張は、前記(4)に示した本件発明の効果の認定を左右するものではない。
イ 前記第7、1(1)ア(イ)の主張について
請求人は、設定差分値βに任意の値が設定でき、設定差分値βの大きさは消費電力に依存しない定数を含んでおり、かつ、時間と共に変化すると主張し(以下「主張A」)、さらに、本件明細書に記載された実施例は、比率αが大きくなるほど上限値Pが制限されるものであるから、逆潮流の回避が可能となると説明されている旨を主張する(以下「主張B」)。
主張Bに関しては、前記(4)イに示した効果4と整合する。
主張Aについては、請求人の主張が判然としないし、本件発明の効果との関係も判然としないが、主張Bの前提として主張されているので、ここで検討する。
本件発明の比率・設定差分値テーブルは、αをいくつかの領域に区分し、各領域に対して任意の定数である設定差分値βを設定したものであるという意味で、設定差分値βに任意の値を設定することができるとはいえるが、請求人が、1つの領域(例えばα1領域)に対応させる設定差分値β(この例ではβ1)として、消費電力の値に依存して変化する値をも設定できるという旨で主張しているならば、そのようなことは本件明細書等に開示も示唆もされていないため、失当である。
また、本件明細書等【0085】~【0087】及び図7の説明は、各α領域における時間tにおいて(例えば、α1領域に関しては、0<S(t)/R≦20%を満たす時間tにおいて)、βが一定の定数(この例ではβ1=30kW)になることを説明したものであり、S(t)が徐々に変化してαの領域が切り替わると(例えばα1領域からα2領域に切り替わると)βの値が変化する(この例ではβ1からβ2=40kWに変化する)ことを説明しているに過ぎない。請求人の主張Aはそのことを言葉を変えて説明しているとも解釈できるが、仮に、一つのα領域(例えばα1領域)に対応する設定差分値β(例えばβ1)として、消費電力には依存しないが時間には依存する値を設定できる旨を主張しているならば、そのようなことは本件明細書等に開示も示唆もされていないため失当である。
以上によれば、請求人の前記第7、1(1)ア(イ)の主張は、前記(4)に示した本件発明の効果の認定を左右するものではない。
ウ 前記第7、1(1)ア(ウ)の主張について
請求人の主張によれば、等差制御及び等比制御においては逆潮流の防止と発電効率の向上とはトレードオフの関係にあるとされているが、逆潮流の回避と発電効率の向上とが背反する関係となるのは、等差制御及び等比制御に限らず、甲1特許制御においてもそうであるし、本件発明においてもそうである。逆潮流の回避と発電効率の向上とが背反する関係となるのは、自家消費システムの技術的性質に起因するものであり(前記(3)イ(ア))、制御の形態によらず、自家消費システムにおいて等しく生じる関係である。前記関係が等差制御及び等比制御においてのみ存在するかのような請求人の主張は、自家消費システムの技術的性質を正解した主張とはいえない。
そして、請求人は、本件発明の「比率・設定差分値テーブル」が、太陽光発電システムの設置場所や季節、時間、ユーザーの使用環境等を考慮した最適なものであれば、従来技術よりも相対的に技術的な優位性が得られると主張するが、本件発明は、予め想定している消費電力の変化の動向、日照条件の変化の動向、時刻及び季節に依存することのない発電電力の制御を可能とするものである(前記(4)ア効果3)から、本件発明の比率・設定差分値テーブルを論ずるにあたり季節及び時間を考慮することを前提とするのは、本件発明の技術的意義を正解しておらず、前提において失当である。
また、請求人の主張を、比率・設定差分値テーブルが太陽光発電システムの設置場所やユーザーの使用環境等を考慮した最適なものであれば、従来技術よりも相対的に技術的な優位性が得られる旨であると善解しても、本件発明は、従来技術よりも逆潮流の回避及び発電電力の向上の双方において優位に立つとはいえない。本件発明は、等差制御や等比制御に比べて柔軟な設定ができるに過ぎず、従来技術に対して明確に得られる効果としては、逆潮流の回避と発電効率の向上とのバランスを需要家にとって適切なものにしやすいこと(前記(4)ア効果2)に尽きる。
以上によれば、請求人の前記第7、1(1)ア(ウ)の主張は、前記(4)に示した本件発明の効果の認定を左右するものではない。
エ 前記第7、1(1)ア(エ)の主張について
請求人は、本件発明においてユーザーの事情(需要家の事情と解される)を考慮してテーブルを用意しておけば、逆潮流の抑制と発電電力の向上の両方を図ることができる旨主張するが、自家消費システムにおいては逆潮流の抑制と発電効率の向上とは背反し両立し得ないものであり、需要家の事情により、逆潮流の抑制と発電効率の向上のどちらをどの程度重視するかが変わるところ、需要家の事情に最適なテーブルの求め方は、本件発明の対象とするところではない(前記(3)イ(コ))。
なお、請求人は、等差制御及び等比制御の本質的な問題点は、運転条件の変化に応じて適切な設定値を設定することなく常に一律の制御を行う点にあると主張するが、需要家の事情によっては、常に一律の制御を行うことが最適となり得ることもあり得る。
したがって、請求人の前記第7、1(1)ア(エ)の主張は、前記(4)に示した本件発明の効果の認定を左右するものではない。
2 甲1技術思想
甲1全体により開示される技術的思想については、以下の(1)~(5)のとおりである。これに関する請求人の主張についての判断を、以下の(6)に示す。
(1)甲1技術思想の技術分野
甲1の【技術分野】の記載は、「本発明は、発電制御装置及びそれを用いた太陽光発電の発電制御システムに関する。」(【0001】)であり、該記載には自家消費型のシステムであるとの明記はないが、甲1には「本発明は、商用電力線への逆潮流を回避しながら太陽電池の発電効率を向上させることができる自家消費型の発電制御システム、及びそれに使用する発電制御装置を提供することを課題とする。」(【0004】、下線は強調のため当審で付した。以下同様。)との記載があり、課題として自家消費型システムを前提としていることに加え、甲1の【産業上の利用可能性】には「逆潮流を回避しながら太陽電池の発電効率を向上させることが可能となり」(【0062】)との記載があり、自家消費型のシステムを前提として産業上利用可能であることが示されている。
以上によれば、甲1技術思想の技術分野は、自家消費型発電制御装置及びそれを用いた太陽光発電の発電制御システムに関するものであると認められる。
(2)甲1技術思想が解決しようとする課題
甲1の【0002】~【0004】の記載によれば、従来の自家消費型システムは、消費電力に対する発電電力の差分値と閾値とを比較判定し、発電電力を制御するものであり、過剰に発電電力を抑制する結果、太陽電池の発電可能な電力を十分に活用できないものであったとの問題点を示した上で、甲1技術思想が解決しようとする課題を「商用電力線への逆潮流を回避しながら太陽電池の発電効率を向上させることができる自家消費型の発電制御システム、及びそれに使用する発電制御装置を提供すること」(【0004】)と記載している。
しかしながら、自家消費型システムにおいて、逆潮流の回避と発電効率の向上とは背反的関係にあり、両者とも同時に完全な形で解決することが不可能なことは、既述のとおりである(前記1(3)イ(ア))。
その上で、甲1技術思想は、逆潮流の回避と発電効率の向上とを共に解決しようとする課題としているのだから、本件発明と同様に、両課題とも同時に完全に解決することを課題としているのではなく、両課題をそれぞれ部分的に解決することを課題としていると解釈すべきである。
(3)甲1技術思想の課題解決手段
甲1技術思想の課題解決手段については、以下のア~オのとおりである。
ア 甲1の【課題を解決するための手段】には、「発電電力の上限値を消費電力の関数として出力指令値を算出し」(【0005】)との記載及び「特にパワーコンデショナによる太陽電池の発電電力を制御するためのパラメータである出力指令値を、消費電力についての関数、特に一次関数により算出することにより、容易に、従来過剰に抑制されていた太陽電池の発電電力を有効に利用することが可能となる。」(【0007】)との記載がある。これらの記載中の「消費電力の関数」ないし「消費電力についての関数」を「f(S)」で表すと、甲1技術思想の課題解決手段は、P=f(S)として計算したPから出力指令値を算出することであると解される。この場合、逆潮流の回避のためのマージンM(前記1(3)イ(ア))は、M=S-f(S)となる。
イ 他方、甲1の【発明を実施するための形態】には、関数f(S)が一次関数f(S)=(1-a)S(t)-b(【0036】)である実施形態のみが記載され、一次関数以外の実施形態は記載されていない。そして、該一次関数において用いられる一次係数a及び0次係数bは、「従来の発電量の制御方法よりも発電効率が良い領域」である「領域K」内部の領域でa及びbを選択されるもの(【0046】)であり、当該「領域K」は、横軸を総発電可能量、縦軸をP(tm)として(【0041】)作図したとき、aを固定し(例えばa=0とし)bを変化させると、甲1の図3(a)のような直線の軌跡を描くこと(【0041】、【0042】)、aを変化させると当該直線が左へと移動すること(【0043】、図3(b))を用いて作図されるものである。ここで、総発電可能量は∫P(t)dtであり(【0038】)、P(tm)=max(P(t))である(【0039】)。ただし、該作図において、総発電可能量(=∫P(t)dt)に代えて発電電力の上限P(t)を用いても良いとされている(【0051】)。
このように、甲1の実施形態は、P(t)=(1-a)S(t)-bとしてP(t)とS(t)とを対応付けた上で、a及びbの決定のために作図を必要としており、その作図には、aを固定しbを変化させて得られる直線が、aを動かすことにより平行移動する性質を利用している。
ウ しかしながら、f(S)を一次関数以外の関数とした場合、一般には上記性質は得られない。加えて、f(S)を例えば2次関数f(S)=P(t)=uS(t)2+vS(t)+wとした場合、3つの係数u、v及びwを選択しなければならないが、その場合に領域Kに相当する領域をどのように作図すれば良いのかは甲1全体を参照しても不明であるし、技術常識からも明らかではない。
要するに、甲1には、P(t)=f(S)における関数f(S)を消費電力Sの一次関数に限定していないかのような記載がある(前記ア)ものの、甲1全体を参照しても、実際に課題を解決できると認識できる関数f(S)は一次関数のみである。よって、甲1技術思想として、実際に課題解決手段となり得るのは、P(t)=f(S)を消費電力Sの一次関数とする場合のみである。
ここで、f(S)に用いられる係数a及びbは、厳密な意味での定数ではなく、季節、時刻に依存して変更されてもよい(【0050】、【0060】)。
エ 他方、甲1には「時刻tmを中心とする時間帯において消費電力の絶対値の変動が大きくなる場合、急な消費電力の変動に発電電力の制御が追随できないリスクが高くなる可能性がある。」(【0039】)との記載がある。これは、自家消費システムの技術的性質(前記1(3)イ(ア))において示したΔt(制御に要する時間)の間に急激な消費電力の変化が生じる場合を論じたものである。
この急激な消費電力の変化に対応する手段として、甲1は、「P(tm)がS(tm)-Z以下の値になるという束縛条件の下で総発電可能量が最大になるようa、bを決定する。」(【0040】)ことを開示している。ここで、S(tm)は、「時刻tmで消費電力量が最大となる」(【0039】)から、max(S(t))に等しいと解される。
ただし、この場合においても、a、bの決定については前記イ及びウがいえる。
オ 前記ア~エを総合すると、甲1技術思想の課題解決手段は、以下の甲1課題解決手段1及び2のとおりと認められる。
甲1課題解決手段1 発電電力の上限値P(t)を、消費電力S(t)の一次関数(1-a)S(t)+bとし、a及びbは作図により求めた領域Kから選択すること。a及びbは、季節、時刻に依存して変更してもよい。
甲1課題解決手段2 急激な消費電力の変動に制御が追従できない場合(制御に要する時間Δtの間に急激な消費電力の変動がある場合)、a及びbを選択する上で、束縛条件P(tm)≦S(tm)-Zを用いること。ここで、P(tm)=max(P(t))であり、S(tm)=max(S(t))である。
(4)甲1技術思想の効果
甲1技術思想の効果は、前記(2)及び(3)を踏まえ、甲1の記載を参照すると、以下のア~ウのとおりと認められる。
ア 甲1課題解決手段1により、逆潮流の回避と発電効率の向上とのバランスを需要家にとって適切なものにできる。
イ 甲1課題解決手段2により、制御に要する時間Δtの間に急激な消費電力の変動があっても、逆潮流を回避できる。
ウ 一次係数aを増大させることにより、発電電力上限値の変動幅が少なくなり、その結果、発電電力の応答性が緩和される。(【0055】)
(5)甲1発明の認定
甲1技術思想として前記(1)~(4)(特に前記(3)ウ)に示したことを踏まえると、前記第9、1に示した甲1の記載によれば、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明を1a~1iに分説し、「構成1a」のようにして参照する。
「1a 発電制御システム10は、太陽電池1、PCS2、受変電部3及び制御装置6を備え、太陽電池1により発電された電力を自家消費するシステムであって、(【0020】)
1b PCS2は太陽電池1の発電電力を制御し、(【0021】)
1c 受変電部3は、商用電力線に接続されており、商用電力線から電力供給を受け負荷4に電力を供給し、(【0023】)
1d 制御装置6は、負荷4の消費電力を計測し(【0025】)、得られた消費電力の値を用い、一次関数によって太陽電池1の発電電力の上限値を設定し、(【0027】)
1e 制御装置6は、発電電力の上限値を太陽電池1の定格電力で除して出力指令値(=(発電電力の上限値)/(定格電力)[%])を算出し、出力指令値はPCS2に出力され、PCS2は出力指令値に従って、太陽電池1の発電電力が上限値以下となるように制御し、(【0027】)
1f 時刻tにおける消費電力及び発電電力上限をそれぞれS(t)、P(t)とし、(【0035】)
P(t)=(1-a)S(t)-b
となり、(【0036】)
一次係数a及び0次係数bを実際の消費電力、発電性能にあわせて設定し、(【0034】)
1g P(t)は、S(t)とP(t)との差分が、S(t)の一次式
S(t)-P(t)=aS(t)+b
となるように設定し、(【0036】)
1h 制御装置6の計時部の時計機能を利用し、記憶部に記憶した季節、時刻毎に設定された一次係数a、0次係数bの値を用いてもよい、(【0060】)
1i システム。」
(6)請求人の主張についての判断
請求人の主張のうち、甲1技術思想及び甲1発明に関するものについて、以下、判断する。
請求人は、甲1発明の「関数」が一次関数以外の関数を含むことが前提であると主張し、その根拠の1つとして、「甲1発明は請求人発明者らによってなされたものであり、結果的に実施例に記載したのは一次関数だったというだけであり、二次以上の高次関数や三角関数等の周期関数などを組み合わせることも技術的思想として考えられていた。」ことを挙げる。(前記第7、2(7))
しかしながら、甲1全体を参照しても、関数として二次以上の高次関数や三角関数等の周期関数などを組み合わせることについては、記載も示唆もない。そして、甲1の関数として例えば二次関数を採用した場合、二次関数に用いられる3つの係数をどのように選択すれば良いのかはわからず、二次関数を採用することにより甲1技術思想の課題が解決できるとは認識できない(前記(3)ウ)。そうすると、仮に甲1が作成された時点で「二次以上の高次関数や三角関数等の周期関数などを組み合わせることも技術的思想として考えられていた」としても、甲1全体により課題解決可能と認識できる程度に開示された関数は、一次関数のみである。
その他、請求人の主張の根拠として挙げられたものは、いずれも、甲1技術思想として課題解決可能と認識できるか否かの検討を欠いたものであり、甲1発明の関数を一次関数以外の全ての関数を包含するものとして認定すべき根拠とはなり得ない。
以上によれば、請求人の主張は採用できず、甲1発明は前記(5)に示したとおりのものと認定される。
3 無効理由2の有無についての判断
本件の発明の詳細な説明の記載については、以下のとおりである。
(1)前記1に示したとおり、本件の発明の詳細な説明の記載(本件の発明の詳細な説明には、特許請求の範囲と同等の記載(【0016】~【0029】)も含まれている。)によれば、本件発明の技術分野も、解決しようとする課題も、課題を解決するための手段も、本件発明が奏する効果も、いずれも明確に理解することができる。この点に関する請求人の主張は、以下の(3)~(13)に示すように、いずれも無効理由2に理由があることを示すものではない。(なお、第7、1(1)ア(ア)~(エ)の主張については、前記1(5)で判断済み。)
(2)他方、本件明細書等には、「図8Cに示すように、比率αと、現在の消費電力にかける比の値とを対応付けた比率・設定比値テーブルが考えられる。」(【0101】)との記載があり、当該記載によれば、比率・設定比値テーブルの設定比値は、現在の消費電力Sに乗ずる比の値を表していると解されるのに対し、本件明細書等の「これは、0<α≦9の場合に、消費電力に、3.5%をかけた値(PCS定格が500[kW]の場合は17.5「kW」)を、消費電力から引いた値を、パワーコンディショナの発電電力の上限値とするという意味である。」(【0101】)との記載によれば、設定比値はPCS定格(500kW)に乗ずる値であると解され、【0101】に互いに整合しない記載が存在している。この不整合は、前記第7、1(2)に示したように、請求人が主張するものである。
しかしながら、本件明細書等には、荷重等比制御と呼ばれる制御について、【0101】~【0104】に記載があり、荷重等比制御には、P=S-ε1・Sとする制御(荷重等比制御1、【0101】)と、P=ε2・Sとする制御(荷重等比制御2、【0102】)とがあり、ε2=1-ε1とすると、荷重等比制御1と荷重等比制御2は同一の出力上限値Pを算出するという意味において等価な制御となることは、【0102】の記載から明らかである(前記1(3)エ(イ))。よって、本件明細書等の文脈によれば、設定比値を乗ずる値はPCS定格ではなく消費電力であると解され、【0101】の「消費電力に、3.5%をかけた値(PCS定格が500[kW]の場合は17.5「kW」)」との記載の括弧書きは「消費電力」と記載すべきところを誤って「PCS定格」と記載したものと解され、図8Cに示されるテーブルにおける「PCS定格が500[kW]の場合」との記載も、同様に「消費電力が500[kW]の場合」の誤記であると解される。以上によれば、本件明細書等には誤記が存在するものの、当該誤記により本件発明を実施できないという程のものではない。よって、前記第7、1(2)の請求人の主張は、採用できない。
(3)第7、1(1)イ(ア)の主張について
請求人は、比率・設定値テーブル(「比率・設定差分値テーブル」の誤記と認める。)における設定差分値、及び、比率・設定比値テーブルにおける設定比値等(「等」には設定値が含まれると解される。)にいかなる値を設定すれば本件発明の効果を奏するのかが不明であり、その技術的意義が理解できない旨、主張する。
しかしながら、設定差分値βは逆潮流を回避するためのマージンMを設定するためのものと解釈され(前記1(3)イ(エ))、設定比値ε1についても、P=S-ε1・Sとなる(前記1(3)エ(イ))から、ε1・Sが逆潮流を回避するためのマージンMとなり、設定比値ε2についても、ε2=1-ε1とすればP=S-ε1・Sとなるから、設定比値ε1と同様であり、設定値(以下「ζ」で表す。)についても、設定値ζから出力電力の上限値Pを得るための関数をgで表すと、S-g(ζ)が逆潮流を回避するためのマージンMとなることは、明らかである。そして、自家消費型システムにおいて、マージンMが課題2及び3を部分的にではあるが同時に解決するための手段であることは、前記1(3)イ(ア)に示したとおりである。よって、設定値(設定差分値及び設定比値を含む。)には、マージンMが0<M<S(t)となるような値を設定すれば、課題2及び3をそれぞれ部分的に解決でき(前記1(3)イ(ア))、その技術的意義は明確に理解できる。
なお、設定値(設定差分値及び設定比値を含む。)として需要家に最適な値をどのように求めるかについては、本件発明が対象とするところではない(前記1(3)イ(コ))。
以上によれば、請求人の主張は採用できない。
(4)前記第7、1(1)イ(イ)の主張について
請求人は、本件発明において、具体的にどのように比率αや設定差分値βを設定すれば、すなわち、本件発明のテーブルを具体的にどのように設定すれば、本件発明が従来技術よりも優れた効果を発揮するのか不明である旨、主張する。
しかしながら、ユーザー(需要家)の事情を考慮した最適な設定値ひいてはテーブルの求め方は、本件発明が対象とするところではない(前記1(3)イ(コ))から、最適なテーブルを設定することに当業者の経験が必要不可欠であることをもって本件発明が未完成ということはできないし、これによって本件発明が実施できないということもない。
また、テーブルが必ずしも需要家にとって最適とはいえなくとも、課題2及び3をそれぞれ部分的に解決できることは前記1(3)イ(ア)に示したとおりである。
さらに、本件発明においては、甲1特許制御よりも運用前に行う設定を分かりやすいものとするという課題1(前記1(2)イ)も主要な課題の1つである。そして、本件発明のテーブルが課題1を解決することは、前記1(3)エ(ウ)のとおりであるから、本件発明は、課題1を解決するという意味で、従来技術よりも優れた効果を発揮する。
以上によれば、請求人の主張は採用できない。
(5)前記第7、1(1)イ(ウ)の主張について
請求人は、季節や時刻が変化すれば発電電力も消費電力も当然変化することを前提として、本件発明のテーブルは時刻や季節毎に設定されるものではないから、逆潮流のリスクが高まるか、あるいは、発電効率を著しく低下させることを意味する旨、主張する。
しかしながら、再三繰り返すことであるが課題2の解決と課題3の解決は背反的な関係にあるから、逆潮流のリスクが高まるならば、発電効率は向上するし、発電効率が著しく低下するならば、その分、逆潮流の回避に優れることになる。請求人の主張は、課題2及び3の解決における不利な側面だけを強調しているに過ぎない。
また、季節や時間が変化することにより発電電力及び消費電力が変化するか否かは、それぞれの需要家の設備や運用形態によるものであり、季節や時間が変化したからといって、必ずしも発電電力や消費電力が変化するものではない。
以上によれば、請求人の主張は採用できない。
(6)前記第7、1(1)ウ(ア)及び第7、1(1)エ(ウ)の主張について
請求人は、本件発明の制御が従来の等差制御及び等比制御を含むことを根拠に、本件発明の効果が等差制御及び等比制御と同一になると主張する。
しかしながら、自家消費システムにおいて、逆潮流の回避と発電効率の向上とは背反的な関係にあり(前記1(3)イ(ア))、それらの最適なバランスは、需要家の事情により決定されるものである(前記1(3)イ(サ))から、課題2及び課題3の解決について、従来技術との優劣は一概にいえるものではない。
また、需要家の事情によっては、従来の等差制御及び等比制御と同じ制御をすることが最適となることもあり得る。このような場合に、従来技術と同等の制御が不可能になっていたならば、本件発明はむしろ従来技術よりも課題2及び課題3の解決のバランスにおいて劣ることとなる。
よって、本件発明の制御が、特定のテーブルにおいて従来技術と同等の制御となるからといって、本件発明が従来技術よりも優れていないとはいえず、請求人の主張は採用できない。
(7)前記第7、1(1)ウ(イ)及び第7、1(1)エ(ア)の主張について
請求人は、本件発明との比較対象となる等差制御の差分値が-30kWではなく-60kWである場合や、等比制御の比率が80%ではなく70%又は90%である場合を想定し、本件発明と比較対象との優劣を論じることに意味はないと主張する。
課題2及び3の解決については、繰り返し述べているように、需要家の事情により最適なバランスが決められるものであって、等差制御の差分値や等比制御の比率の具体的な値のみにより優劣を論ずるべきものではない。
よって、請求人の主張は採用できない。
(8)前記第7、1(1)エ(イ)の主張について
請求人は、本件の図8(C)のテーブルにより制御された場合、発電効率の向上には寄与するが、消費電力が急変した場合、逆潮流のリスクは「比例制御」の場合よりも高くなると主張するが、図8(C)のテーブルに限らず、いかなるテーブルにより制御されようとも、発電効率が向上する場合には逆潮流の回避に劣ることとなる。これは、自家消費システムの技術的性質によるものであり(前記1(3)イ(ア))、本審決は自家消費システムの技術的性質を考慮してされている。
したがって、請求人の主張は、結論を左右しない。
(9)前記第7、1(1)オ(ア)の主張について
請求人は、本件明細書等の図4のテーブルによる制御は、従来技術である甲1特許制御の一次関数による制御と同様である旨を主張する。
しかしながら、請求人の主張は、本件発明が課題1を解決することについて触れていない。そもそも、自家消費システムにおける課題2及び3の解決は、背反的な関係にあり、それらの最適なバランスは需要家の事情により決まるものであるから、本件発明と甲1特許制御との優劣を、課題2及び3の解決の観点でのみ論ずることは適切ではない。
そして、従来技術である甲1特許制御は、比率αを使用したテーブルを用いるものではないので、課題1を解決し得ない。
よって、本件発明は、従来技術である甲1特許制御よりも優れた効果を発揮すると認められ、請求人の主張は採用できない。
(10)前記第7、1(1)オ(イ)の主張について
請求人は、本件明細書等の【0031】の効果を否定し、本件発明の効果と甲1特許制御の効果との間に特筆すべき差がないことを主張する。
繰り返しになるが、課題2及び3の解決は、背反的な関係にあり、最適なバランスは需要家の事情により異なる。
その意味で、本件発明のテーブルが時間毎の設定や季節毎の設定を行わないことが、課題2及び3の解決に関して優れた効果を奏するとする本件明細書等【0031】の記載内容は、適切とはいえない。時間毎、季節毎の設定をした方が良いか否かは需要家の事情が時間毎、季節毎に異なるか否かによるものであるから、課題2及び3の解決に関する効果のみを、本件発明と甲1特許制御とで比較することは適切とはいえない。
他方、本件発明は課題1を解決するものであり、甲1特許制御は課題1を解決し得ない。
よって、本件発明は従来技術である甲1特許制御よりも優れた効果を発揮すると認められ、請求人の主張は採用できない。
(11)前記第7、1(1)カ(ア)の主張について
請求人は、関数に代えてテーブルを用いることは周知・慣用技術に過ぎないことを根拠に、本件発明の課題1の解決は、従来技術よりも優れた効果ではない旨、主張していると解される。
しかしながら、本件発明のテーブルは、単に関数をテーブルにしたものではない。本件発明のテーブルは、消費電力とPCS定格との比率(比率α)と、設定値とを対応させたものである。本件発明は、前記1(3)オ(ア)に示したとおり、比率αを使用することにより、テーブルが分かりやすいものとなるという効果を奏する。
これに対して、甲1特許制御は、比率αを使用するものではない。甲1特許制御は、「S(t)-P(t)=aS(t)+b」となるようにS(t)とP(t)との差分を設定しており、「P(t)=(1-a)S(t)-b」となる(甲1【0036】)。これらの式によれば、仮に甲1特許制御をテーブルで実現するとしても、該テーブルはS(t)とP(t)とを対応させたテーブルになるに過ぎず、消費電力S(t)をPCS定格で除した比率αを該テーブルに用いる必要性はない。
したがって、仮に甲1特許制御においてテーブルを用いることが周知技術による設計変更に過ぎなかったとしても、そのようなテーブルは比率αを使用するものではないから、課題1を解決し得ない。
よって、本件発明は、課題1を解決するという甲1特許制御では得られない効果を奏するので、請求人の主張は採用できない。
(12)前記第7、1(1)カ(イ)の主張について
請求人は、発電効率(課題3の解決)の観点で、本件発明と等比制御とが同程度であると主張する。
しかしながら、課題3の解決のみの観点で本件発明の効果を論ずるのは適切ではない。
また、本件発明の比較対象としての等比制御は、「消費電力に対して、80%をかけた電力」(【0005】)を発電電力の上限値とするものであるから、消費電力をPCS定格で割った値である比率αを使用するものではない。その意味で、等比制御は課題1を解決しておらず、本件発明の効果は、課題1を解決するという効果において、等比制御よりも優れていると認められる。これは、本件発明において、比率αの領域をどの程度の幅とするかによらない。
よって、請求人の主張は採用できない。
(13)前記第7、1(1)カ(ウ)の主張について
請求人は、本件発明の「消費電力とPCS定格との比率に基づいて設定差分値を決めた比率・設定差分値テーブルを用いること」による効果が本件明細書等から理解できないと主張する。
しかしながら、本件明細書等から前記1(4)アに示した効果1を理解できるから、請求人の主張は採用できない。
(14)無効理由2についての小括
以上によれば、本件の発明の詳細な説明は、本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであると認められ、無効理由2には理由がない。
4 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1及び2の無効理由3-1の有無、並びに、本件発明3~5の無効理由3-2の有無について判断するために、まず、本件発明1(前記第4を参照)について、甲1発明(前記2(5)を参照)との一致点及び相違点を明らかにする。
(1)発明特定事項1A及び1Fについて
発明特定事項1A「太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、」及び発明特定事項1F「ことを特徴とする、出力制御装置。」について、甲1発明と対比すると、以下のア~ケのとおりである。
ア 甲1発明の「太陽電池1」(構成1a)は、本件発明1の「太陽電池」に相当する。
イ 甲1発明の「PCS2」は、「太陽電池1の発電電力を制御」する(構成1b)から、本件発明1の「太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナ」に相当する。
ウ 甲1発明の「商用電力線」(構成1c)は、商用電力の送配電網を構成するものと解されるから、本件発明1の「電力送配電網」に相当する。
エ 甲1発明の「商用電力線から電力供給」される「電力」(構成1c)は、本件発明1の「電力送配電網からの商用電力」に相当する。
オ 甲1発明の「負荷4」(構成1c)は、本件発明1の「負荷」に相当する。
カ 甲1発明の「受変電部3」は、「商用電力線から電力供給を受け負荷4に電力を供給」する(構成1c)から、「商用電力線から電力供給」された「電力」を「負荷4」に供給するためのものである。
そして、甲1発明の「受変電部3」は、「発電制御システム10」に備わるもの(構成1a)であるから、「発電制御システム10」を構成する設備であると解される。よって、甲1発明の「受変電部3」は、本件発明1の「受変電設備」に相当する。
よって、甲1発明の「商用電力線から電力供給」された「電力」を「負荷4」に供給する「受変電部3」は、本件発明1の「電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備」に相当する。
キ 甲1発明の「発電制御システム10」は、「太陽電池1により発電された電力を自家消費するシステム」(構成1a)であるから、本件発明1の「太陽光発電自家消費システム」に相当する。
そして、甲1発明の「発電制御システム10」は、「太陽電池1、PCS2、受変電部3」「を備え」る(構成1a)。
よって、甲1発明の「太陽電池1、PCS2、受変電部3」「を備える」「発電制御システム10」は、本件発明1の「太陽電池と」「パワーコンディショナと」「受変電設備とを備える太陽光発電制自家消費システム」に相当する。
ク 甲1発明では、「制御装置6」が「出力指令値」を「PCS2に出力」し、「PCS2」は「出力指令値に従って、太陽電池1の発電電力」を「制御」する(構成1e)から、甲1発明の「制御装置6」は、本件発明1の「前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置」に相当する。
そして、甲1発明の「発電制御システム10」は「制御装置6を備え」る(構成1a)から、甲1発明の「制御装置6」は、「発電制御システム10」における「制御装置6」である。
よって、本件発明1の「出力制御装置」と甲1発明の「制御装置6」とは、
「太陽光発電自家消費システムにおいて」「出力制御装置であ」る点で一致する。
ケ 前記ア~クを総合すると、本件発明1の「出力制御装置」と甲1発明の「制御装置6」とは、「太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であ」る点で一致する。
(2)発明特定事項1Bについて
発明特定事項1B「前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブルを記憶している記憶部と、」について、甲1発明と対比すると、以下のア~エのとおりである。
ア 甲1発明の「負荷4の消費電力」(構成1d)は、本件発明1の「前記負荷の消費電力」に相当する。
イ 甲1発明の「S(t)-P(t)」は「aS(t)+b」に等しい(構成1g)。甲1発明では「消費電力」が「S(t)」で表され、「発電電力上限」が「P(t)」で表される(構成1f)ことに鑑みると、甲1発明の「S(t)-P(t)」すなわち「aS(t)+b」は、消費電力S(t)と発電電力上限P(t)との差分となる値である。
よって、本件発明1の「設定差分値」と甲1発明の「S(t)-P(t)」すなわち「aS(t)+b」とは、「差分値」である点で共通する。
請求人は、甲1発明のS(t)-P(t)(=aS(t)+b)が、本件発明1の「設定差分値」に相当する旨、主張する(前記第7、2(5))が、本件発明1の「設定差分値」は、「前記消費電力から引く電力の値」を比率・設定差分値テーブルに「予め登録した」ものである。それに対して、甲1発明のaS(t)+bという値は、消費電力Sから上限値Pを引いた値であり、甲1には、aS(t)+bを消費電力Sから引くこと、すなわち、SからaS(t)+bを減算するという演算は、記載されていない。また、S(t)-P(t)(=aS(t)+b)は、S(t)の値を実測するまで定まらない値であるので、「予め登録」することができない。したがって、甲1発明のS(t)-P(t)(=aS(t)+b)は、SとPとの差分値ではあるものの、本件発明1の「設定差分値」に相当するとはいえない。
ウ 前記イにおける甲1発明の「a」及び「b」は、「一次係数a及び0次係数b」のことであり、「実際の消費電力、発電性能にあわせて設定し」た値である(構成1f)。そうすると、甲1発明は、「一次係数a及び0次係数b」を当然に記憶しており、それらを記憶するための記憶部を当然に備えると認められる。
また、甲1発明の「一次係数a及び0次係数b」は、「aS(t)+b」(構成1g)ないし「(1-a)S(t)-b」(構成1f)のように、S(t)すなわち消費電力の一次関数における一次係数及び0次係数として用いられるものであるから、甲1発明の「一次係数a及び0次係数b」は、「消費電力」に関連付けて記憶されると認められる。
そして、甲1発明の「制御装置6」は、「一次関数によって太陽電池1の発電電力の上限値を設定」する(構成1d)のだから、「一次関数」に用いる「一次係数a及び0次係数b」を記憶する記憶部は、「制御装置6」に備わると認められる。
加えて、甲1発明の「発電電力の上限値を設定」するための「一次関数」は、発電電力上限値がP(t)で表されることに鑑みると、「P(t)=(1-a)S(t)-b」(構成1f)のことであると解され、該「一次関数」も前記記憶部に記憶されると認められる。該「一次関数」は、S(t)についての一次関数であるから、「消費電力」に関連付けられたものである。
エ 前記ア~ウを総合すると、甲1発明の「制御装置6」は、「消費電力」であるS(t)に関連付けて「一次係数a及び0次係数b」並びに「一次関数」(P(t)=(1-a)S(t)-b)を記憶している記憶部を備え、甲1発明の「aS(t)+b」は、差分値「S(t)-P(t)」であると認められる。
甲1発明の記憶部に記憶される「一次係数a及び0次係数b」並びに「一次関数」は、いずれも情報として記憶部に記憶されると認められる。他方、本件発明1の「記憶部」に記憶されている「比率・設定差分値テーブル」も、情報として「記憶部」に記憶されていると認められる。
よって、本件発明1の「出力制御装置」と甲1発明の「制御装置6」とは、「前記負荷の消費電力に関連付けて、情報を記憶している記憶部」を備え、「差分値」の概念がある点で共通するが、本件発明1の「記憶部」に記憶される情報は、「前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブル」であるのに対し、甲1発明の記憶部に記憶される情報は、「消費電力」に関連付けられた「一次係数a及び0次係数b」並びに「一次関数P(t)=(1-a)S(t)-b」である点で相違し、さらに、甲1発明の差分値である「aS(t)+b」が記憶部に記憶されているか否かが定かでない点でも相違する。
(3)発明特定事項1C1について
甲1発明は、本件発明1の発明特定事項1C1「現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、」に相当する構成を備えていない。
(4)発明特定事項1C2について
甲1発明は、本件発明1の「比率・設定差分値テーブル」に相当する構成を備えていない(前記(2)エ)ので、本件発明1の発明特定事項1C2「前記比率・設定差分値テーブルを参照して、算出した前記比率に対応する前記設定差分値を決定し、」に相当する構成も備えていない。
(5)発明特定事項1C3について
発明特定事項1C3「現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値を、前記PCS定格で割って、当該割った値を出力指令値とし、」について、甲1発明と対比すると、以下のア及びイのとおりである。
ア 本件発明1の「現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値」は、発明特定事項1Eによれば、「前記パワーコンディショナの出力電力の上限値となっている」から、発電電力の上限値に等しいと解される。
よって、本件発明1の「現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値」と甲1発明の「発電電力の上限値」とは、「発電電力の上限値」である点で共通する。
イ 甲1発明の「制御装置6」は、「発電電力の上限値を太陽電池1の定格電力で除して出力指令値(=(発電電力の上限値)/(定格電力)[%])を算出」する(構成1e)から、「発電電力の上限値」を「太陽電池1の定格電力」で割って、当該割った値を「出力指令値(=(発電電力の上限値)/(定格電力)[%])」としている。
よって、前記アも考慮すると、本件発明1の「出力制御装置」と甲1発明の「制御装置6」とは、「発電電力の上限値を、定格で割って、当該割った値を出力指令値と」する点で共通するが、本件発明1の発電電力の上限値は「現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値」であるのに対し、甲1発明の「発電電力の上限値」P(t)は「P(t)=(1-a)S(t)-b」により与えられる点で相違し、加えて、発電電力の上限値を割る値が、本件発明1では「PCS定格」であるのに対し、甲1発明では「太陽電池1の定格電力」である点で相違する。
(6)発明特定事項1Cについて
発明特定事項1C「前記出力指令値を前記パワーコンディショナに送信して、前記パワーコンディショナの出力を制御する制御部とを備え、」について、甲1発明と対比すると、以下のとおりである。
甲1発明の「制御装置6」は、「出力指令値」を「PCS2に出力」する(構成1e)から、「出力指令値」を「PCS2」に送信すると解される。
また、甲1発明では「PCS2は出力指令値に従って、太陽電池1の発電電力が上限値以下となるように制御」する(構成1e)から、甲1発明の「制御装置6」は、「出力指令値」を「PCS2」に送信して、「PCS2」の出力を「制御」していると解される。
甲1発明の「制御装置6」のうち、「出力指令値を算出し」、「出力指令値」を「PCS2」送信し、PCS2の出力の制御する(構成1e)機能を担う部分を「制御部」と呼ぶことは任意である。
よって、本件発明1の「出力制御装置」と甲1発明の「制御装置6」とは、「前記出力指令値を前記パワーコンディショナに送信して、前記パワーコンディショナの出力を制御する制御部とを備え」る点で一致する。
(7)発明特定事項1Dについて
発明特定事項1D「前記比率・設定差分値テーブルにおいて、前記設定差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、」について、甲1発明と対比すると、以下のとおりである。
甲1発明の差分値「S(t)-P(t)」は、「aS(t)+b」に等しく(構成1g)、相異なる消費電力S(t)の値に対してそれぞれ異なる値となるから、本件発明1の「設定差分値」の値と甲1発明の差分値「S(t)-P(t)」の値とは、「少なくとも二種類以上存在」する点で共通する。
(8)発明特定事項1Eについて
発明特定事項1E「現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値が、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値となっている」について、甲1発明と対比すると、以下のとおりである。
前記(2)イのとおり、本件発明1の「設定差分値」に対応する甲1発明の構成は、差分値「S(t)-P(t)」である。
甲1発明において、消費電力S(t)から前記差分値すなわち「S(t)-P(t)」を引いた値は、S(t)-(S(t)-P(t))=P(t)となり、発電電力上限すなわちPCS2の出力電力の上限値に等しくなっている。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「現在の前記消費電力から決定後の前記差分値を引いた値が、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値となっている」点で共通する。
(9)本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点
前記(1)~(8)によれば、本件発明1の「出力制御装置」と甲1発明の「制御装置6」との一致点及び相違点は、以下のとおりと認められる。
〈一致点〉
「太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、
前記負荷の消費電力に関連付けて、情報を記憶している記憶部と、
発電電力の上限値を、定格で割って、当該割った値を出力指令値とし、前記出力指令値を前記パワーコンディショナに送信して、前記パワーコンディショナの出力を制御する制御部とを備え、
差分値の値は、少なくとも二種類以上存在し、
現在の前記消費電力から決定後の前記差分値を引いた値が、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値となっていることを特徴とする、出力制御装置。」である点。
〈相違点1-1〉
本件発明1の「記憶部」に記憶される情報は、「前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記消費電力から引く電力の値を設定差分値として予め登録した比率・設定差分値テーブル」であるのに対し、甲1発明の記憶部に記憶される情報は、「消費電力」に関連付けられた「一次係数a及び0次係数b」並びに「一次関数P(t)=(1-a)S(t)-b」である点。(発明特定事項1B)
さらに、甲1発明の差分値である「aS(t)+b」が記憶部に記憶されているか否かが定かでない点。(発明特定事項1B、1D)
さらに、本件発明1の「出力制御装置」は、「現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出」するのに対し、甲1発明の「制御装置6」は、該比率を算出しない点。(発明特定事項1C1)
上記に付随して、本件発明1の「出力制御装置」は、「前記比率・設定差分値テーブルを参照して、算出した前記比率に対応する前記設定差分値を決定」するのに対し、甲1発明の「制御装置6」は、そのような構成を備えていない点。(発明特定事項1C2)
また、上記に付随して、本件発明1の「出力制御装置」において、発電電力の上限値は、「現在の前記消費電力から決定後の前記設定差分値を引いた値」であるのに対し、甲1発明の「発電電力の上限値」P(t)は、「P(t)=(1-a)S(t)-b」により与えられる点。(発明特定事項1C3、1E)
〈相違点1-2〉
出力指令値を算出する際に発電電力の上限値を割る値が、本件発明1では「PCS定格」であるのに対し、甲1発明では「太陽電池1の定格電力」である点。(発明特定事項1C3)
5 本件発明1及び2についての無効理由3-1の有無
以下では、(1)において相違点1-1が実質的な相違点であることを示し、(2)において請求人の主張について判断し、(3)において本件発明1及び2についての無効理由3-1の理由の有無を小括する。
(1)相違点1-1が実質的な相違点であること
前記1(3)オ(ア)に示したように、本件発明において比率・設定差分値テーブルに比率αが使用されることにより、比率αの値が100%以下であるか100%超であるかに応じて、逆潮流による不利益を被る蓋然性が高い領域か、低い領域かが分かるという意味で、比率・設定差分値テーブルが分かりやすくなり、課題1を解決している。
これに対して、甲1には、消費電力P(t)とPCS定格との比率αを算出することについて、記載も示唆もない。甲1発明は、「S(t)-P(t)=aS(t)+b」となるようにS(t)とP(t)との差分を設定しており(構成1g)、「P(t)=(1-a)S(t)-b」となる(構成1f)。これらの式によれば、S(t)と、一次係数a及び0次係数bとから発電電力の上限値P(t)を求めることが可能となり、S(t)をPCS定格で除して比率αを求める必然性は存在しない。
以上によれば、相違点1-1は、本件発明の課題1についての課題解決手段の有無の相違に他ならず、実質的な相違点と認められる。
よって、本件発明1と甲1発明とは同一ではない。また、本件発明2は本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに、発明特定事項2A及び2Bを備えるものであるから、本件発明2と甲1発明とは少なくとも相違点1-1において異なっており、両者は同一ではない。
(2)請求人の主張についての判断
本件発明1及び2の新規性の有無に関する請求人の主張について、以下、判断する。
ア 前記第7、2(1)アの主張について
請求人は、本件発明と甲1発明とは、消費電力に基づいて発電電力の上限値を求めるという点において、本質的には同一の技術的思想を開示するものであると主張する。
しかしながら、技術的思想の本質は、開示された技術的意義により理解されるべきであり、本件発明の場合、特に、課題1~3を解決するための手段(前記1(3)オ)及び効果(前記1(4))に着目すべきである。
本件発明は、単に消費電力に基づいて発電電力の上限値を求めるものではなく、比率αを用いたテーブルにより、課題1を解決し(前記1(3)オ(ア)、運用前に行う設定が分かりやすくなるという効果を奏する(前記1(4)ア効果1)点が、その技術的思想の本質であると認められる。
そのような本件発明に対し、甲1発明は、消費電力S(t)に基づいて発電電力の上限値P(t)を算出するが、算出の過程で比率αを用いる必然性がないため、本件発明の技術的思想とは本質を異にしている。
したがって、請求人の主張は採用できない。
イ 前記第7、2(1)イの主張について
請求人は、本件訂正により、本件発明から等差制御が除かれたこと、及び、甲1発明は等差制御における「発電可能な電力を十分に活用できない」という課題を解決するためのものであることを根拠に、本件発明に対してなされた訂正は、甲1発明の課題解決原理(等差制御以外の方法で制御すること)を実現するための願望を単に表現したに過ぎず、何ら新規性を生じるものではない旨、主張する。
本件発明が解決しようとする課題は、課題1~3であり、課題2の解決(逆潮流の回避)と課題3の解決(発電効率の向上)とは背反的な関係にあるものであるから、課題2及び3の解決は、需要家の事情の考慮なしに論ずることはできない。これは、本件発明が等差制御と同等の制御を行うことができるか否かに依存しない。
加えて、本件発明と甲1発明とは、課題1の解決手段である比率αを使用したテーブルを備えるか否かにおいて相違する。
以上によれば、請求人の主張は採用できない。
ウ 前記第7、2(1)ウの主張について
請求人は、本件発明は0次関数以外のあらゆる関数が定義可能であり、甲1発明もあらゆる関数を含むため、両者の間に実質的な相違点が存在しない旨を主張し、さらに、実施例として、両者はどちらも一次関数を例示するのみであるから、本件発明は甲1発明の課題及び解決手段を通じて示される発明と、技術的思想が実質的に同一である旨を主張する。
しかしながら、本件発明の技術的思想と甲1発明の技術的思想は、課題1を解決するか否かの点において、前述のとおり異なっている。
また、甲1に開示される技術的思想は、発電電力の上限値P(t)が消費電力S(t)の一次関数となるもののみであり(前記2(3)ウ)、甲1発明はあらゆる関数を含むものとはいえない。
よって、請求人の主張は採用できない。
エ 前記第7、2(2)の主張について
請求人は、PCS定格は定数であり、本件発明の比率αは消費電力に正比例する値であるから、定性的には消費電力と同一視でき、甲1発明のように消費で力そのものを独立変数とするか、本件発明のように比率αを独立変数とするかは、システム設計上の微差に過ぎず、この点は実質的な相違点にはならない旨、主張する。
しかしながら、消費電力をPCS定格で除した比率αは、その値が100%以下であるか100%超であるかによって、逆潮流による不利益を被る蓋然性が高いか低いかを理解するのに役立ち、課題1を解決するための手段となるものである(前記1(3)オ(ア))。
したがって、消費電力をそのまま独立変数とするか、消費電力をPCS定格で除した比率αを独立変数とするかは、課題1の解決の観点から微差とはいえない。
よって、請求人の主張は採用できない。
オ 前記第7、2(4)の主張について
請求人の主張は、関数もテーブルも数の集合Aから数の集合Bへの写像であることに変わりがないから、甲1発明における関数をテーブルとすることは微差に過ぎないということであると解される。
しかしながら、甲1発明は、消費電力Sの一次関数として発電電力の上限値Pを表すものであって、甲1には、消費電力SをPCS定格Rで除した比率αの関数としてPを表すという技術思想は記載も示唆もされていない。
そして、甲1発明が比率αを用いない点は、本件発明との本質的相違点である(前記(1))。
したがって、仮に関数とテーブルとの相違が微差に過ぎないものであったとしても、本件発明と甲1発明とは、比率αを用いるか否かの点で実質的に相違するため、請求人の主張は採用できない。
(3)本件発明1及び2についての無効理由3-1の小括
前記(1)及び(2)によれば、相違点1-2について判断するまでもなく、本件発明1及び2と甲1発明とは相違点1-1において異なるため、無効理由3-1に理由はない。
6 本件発明3~5についての無効理由3-3の有無
本件発明3~5は本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに、発明特定事項3A、4A又は5Aを備えるものであるから、本件発明3~5と甲1発明とは少なくとも相違点1-1において異なっており、両者は同一ではない。
そこで、相違点1-1の容易想到性について判断する。
前記5(1)に示したように、甲1には、消費電力P(t)とPCS定格との比率αを算出することについて、記載も示唆もない。甲1発明は、S(t)と、一次係数a及び0次係数bとから発電電力の上限値P(t)を求めることが可能であり、S(t)をPCS定格で除して比率αを求める必要性は存在しない。
他方、その他の証拠を参照しても、甲1発明においてS(t)をPCS定格で除して比率αを求めることについての動機付けは認められない。
したがって、当業者といえども、甲1発明から相違点1-1に係る構成は容易に想到し得ない。
これに関する請求人の主張は、専ら、消費電力Sと、消費電力SをPCS定格で除したものとが、同一視できることを根拠にしたものであり、甲1発明において消費電力SをPCS定格で除する動機付けがあることについては、初等数学程度の知識に基づいて想到し得ることを主張するにとどまる(請求人陳述要領書(1)32頁12行~33頁1行)。
そして、初等数学程度の知識によれば、消費電力Sと消費電力を定数で除したものとが比例関係にあることに思い至りはするものの、消費電力をPCS定格で除するように動機付けすることについては、初等数学程度の知識は何も示唆しない。したがって、請求人の主張は採用できない。
よって、本件発明3~5は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められず、無効理由3-3には理由がない。
7 本件発明6と甲1発明との対比
本件発明6は、本件発明1を出力制御プログラムの発明として特定したものであり、本件発明1の発明特定事項1B~1C3及び1Dと同様の発明特定事項6B、6D1~6D4及び6Cを備える。
そうすると、本件発明6と甲1発明との間には、少なくとも相違点1-1と同様の相違点(以下「相違点6-1」という。)が存在する。
8 本件発明6についての無効理由3-1の有無
相違点6-1は、相違点1-1と同様の相違点であるから、前記5(1)と同様に、実質的な相違点である。
よって、その他の相違点について判断するまでもなく、本件発明6と甲1発明とは相違点6-1において異なるため、無効理由3-1に理由はない。
9 本件発明7についての無効理由3-3の有無
本件発明7は本件発明6の発明特定事項を全て備え、さらに、発明特定事項7Aを備えるものであるから、本件発明7と甲1発明とは少なくとも相違点6-1において異なっており、両者は同一ではない。
そして、相違点6-1は相違点1-1と同様の相違点であるから、相違点6-1の容易想到性については、前記6と同様である。
よって、本件発明7は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められず、無効理由3-3には理由がない。
10 本件発明8と甲1発明との対比
本件発明8は、本件発明1を太陽光発電自家消費システムとして特定したものであり、本件発明1の発明特定事項1B~1C3及び1Dと同様の発明特定事項8B1~8B2C及び8Cを備える。
そうすると、本件発明8と甲1発明との間には、少なくとも相違点1-1と同様の相違点(以下「相違点8-1」という。)が存在する。
11 本件発明8及び9についての無効理由3-1の有無
相違点8-1は、相違点1-1と同様の相違点であるから、前記5(1)と同様に、実質的な相違点である。
また、本件発明9は本件発明8の発明特定事項を全て備え、さらに、発明特定事項9A及び9Bを備えるものであるから、本件発明9と甲1発明とは少なくとも実質的な相違点である相違点8-1において異なっている。
よって、その他の相違点について判断するまでもなく、本件発明8及び9と甲1発明とは相違点8-1において異なるため、無効理由3-1に理由はない。
12 本件発明10~12についての無効理由3-3の有無
本件発明10~12は本件発明8の発明特定事項を全て備え、さらに、発明特定事項9A、9B、10A、11A又は12Aを備えるものであるから、本件発明10~12と甲1発明とは少なくとも相違点8-1において異なっており、両者は同一ではない。
そして、相違点8-1は相違点1-1と同様の相違点であるから、相違点8-1の容易想到性については、前記6と同様である。
よって、本件発明10~12は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められず、無効理由3-3には理由がない。
13 本件発明13と甲1発明との対比
本件発明13~16の無効理由3-3の有無について判断するために、まず、本件発明13(前記第4を参照)について、甲1発明(前記2(5)を参照)との一致点及び相違点を明らかにする。
(1)発明特定事項13A及び13Eについて
発明特定事項13A「太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、」及び発明特定事項13E「ことを特徴とする、出力制御装置。」について、甲1発明と対比する。
発明特定事項13A及び発明特定事項13Eは、それぞれ、発明特定事項1A及び発明特定事項1Fと同じ記載により特定されているから、前記4(1)と同じことがいえる。
したがって、本件発明13の「出力制御装置」と甲1発明の「制御装置6」とは、「太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であ」る点で一致する。
(2)発明特定事項13Bについて
発明特定事項13B「前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を規定するための設定値を記憶している記憶部と、」について、甲1発明と対比すると、以下のア~エのとおりである。
ア 甲1発明の「負荷4の消費電力」(構成1d)は、本件発明1の「前記負荷の消費電力」に相当する。
イ 甲1発明の「太陽電池1の発電電力の上限値」(構成1d)は、PCS2が出力する電力の上限値に等しいと解されるから、本件発明13の「前記パワーコンディショナの出力電力の上限値」に相当する。
ウ 甲1発明の発電電力の上限値P(t)は、(1-a)S(t)-bにより算出される(構成1f)から、甲1発明の「一次係数a及び0次係数b」(構成1f)は、発電電力の上限値を規定するために「設定」された(構成1f)値である。よって、甲1発明の「一次係数a及び0次係数b」は、本件発明13の「前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を規定するための設定値」に相当する。
また、甲1発明の「一次係数a及び0次係数b」は、消費電力S(t)の一次関数(1-a)S(t)-bの係数であるから、消費電力に関連付けられている。
エ 甲1発明の「一次係数a、0次係数b」は、「記憶部に記憶」されている(構成1h)。
前記ア~ウも考慮すると、本件発明13の「出力制御装置」と甲1発明の「制御装置6」とは、「前記負荷の消費電力に関連付けて、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を規定するための設定値を記憶している記憶部」を備える点で共通するが、本件発明13の「設定値」は、「前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて」記憶されているのに対し、甲1発明の「一次係数a及び0次係数b」は、消費電力に関連付けられているものの、消費電力とPCS定格との比率に対応させたものではない点で相違する。
(3)発明特定事項13C1について
甲1発明は、本件発明13の発明特定事項13C1「現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出し、」に相当する構成を備えていない。
(4)発明特定事項13C2について
発明特定事項13C2「前記設定値を参照して、算出した前記比率に対応する前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定して、」について、甲1発明と対比する。
甲1発明では、P(t)=(1-a)S(t)-bとなる(構成1f)から、発電電力の上限値P(t)を決定するためには、「一次係数a及び0次係数b」を参照すると解される。すなわち、甲1発明の「制御装置6」は、「一次係数a及び0次係数b」を参照して、消費電力S(t)に対応する発電電力の上限値P(t)を決定するものと解される。
そうすると、本件発明13の「出力制御装置」と甲1発明の「制御装置6」とは、「前記設定値を参照して、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定」する点で共通するが、本件発明13の「上限値」は、「算出した前記比率に対応する」ものであるのに対し、甲1発明の「上限値」は、消費電力S(t)に対応した「(1-a)S(t)-b」である点で相違する。
(5)発明特定事項13C3について
発明特定事項13C3「前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御する」について、甲1発明と対比すると、以下のとおりである。
甲1発明の「制御装置6」は、「出力指令値」を「PCS2に出力」し、「PCS2は出力指令値に従って、太陽電池1の発電電力が上限値以下となるように制御」する(構成1e)から、甲1発明の「制御装置6」は、発電電力の上限値が「上限値以下」となるように「制御」していると解される。
よって、本件発明13の「出力制御装置」と甲1発明の「制御装置6」とは、「前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御する」点で一致する。
(6)発明特定事項13Cについて
発明特定事項13C「制御部とを備え、」について、甲1発明と対比すると、以下のとおりである。
甲1発明の「制御装置6」のうち、上限値を決定して(前記(4))、制御する(前記(5))機能を担う部分を「制御部」と呼ぶことは任意である。
よって、本件発明13の「出力制御装置」と甲1発明の「制御装置6」とは、「制御部とを備え」る点で一致する。
(7)発明特定事項13Dについて
発明特定事項13D「前記記憶部において、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在している」について、甲1発明と対比すると、以下のとおりである。
甲1発明の「一次係数a、0次係数b」は、「季節、時刻毎に設定された」ものである(構成1h)から、季節、時刻毎に異なる一次係数a及び0次係数bが存在する。
したがって、本件発明13と甲1発明とは、「前記記憶部において、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在している」点で共通する。
(8)本件発明13と甲1発明との一致点及び相違点
前記(1)~(7)によれば、本件発明13の「出力制御装置」と甲1発明の「制御装置6」との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「太陽電池と、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、電力送配電網からの商用電力を負荷に供給するための受変電設備とを備える太陽光発電自家消費システムにおいて、前記パワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、
前記負荷の消費電力に関連付けて、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を規定するための設定値を記憶している記憶部と、
前記設定値を参照して、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値を決定して、前記パワーコンディショナの出力電力が前記上限値以内となるように、前記パワーコンディショナを制御する制御部とを備え、
前記記憶部において、前記設定値の値は、少なくとも二種類以上存在していることを特徴とする、出力制御装置。」である点。
〈相違点13〉
本件発明13の「設定値」は、「前記負荷の消費電力と前記パワーコンディショナの最大出力可能電力であるPCS定格との比率に対応させて」記憶されているのに対し、甲1発明の「一次係数a及び0次係数b」は、消費電力に関連付けられているものの、消費電力とPCS定格との比率に対応させたものではない点。(発明特定事項13B)
さらに、本件発明13は「現在の前記消費電力と前記PCS定格との前記比率を算出」するのに対し、甲1発明は比率αを算出する構成を備えない点。(発明特定事項13C1)
上記に付随して、本件発明13の「上限値」は「算出した前記比率に対応する」ものであるのに対し、甲1発明の「上限値」は、消費電力S(t)に対応した「(1-a)S(t)-b」である点。(発明特定事項13C2)
14 本件発明13~16についての無効理由3-3の有無
本件発明13において、「消費電力と」「PCS定格との比率に対応させて」「設定値を記憶」すること(発明特定事項13B)は、要するに、比率αと設定値とを対応させたテーブルを記憶することに他ならない。
そうすると、相違点13は、要するに、本件発明13のテーブルに比率αが使用されるのに対し、甲1発明は比率αが使用されていないという相違点であり、相違点1-1と同様のものと解される。
そうすると、相違点13については、前記5及び前記6で検討した相違点1-1と同様のことがいえるため、相違点13は実質的な相違点であり、甲1発明から容易に想到し得たものではない。
以上によれば、本件発明13は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められず、無効理由3-3には理由がない。
本件発明13を引用する本件発明14~16についても同様である。
15 本件発明17と甲1発明との対比
本件発明17は、本件発明13を出力制御プログラムの発明として特定したものであり、本件発明13の発明特定事項13B~13C2と同様の発明特定事項17B及び17D1~17D3を備える。
そうすると、本件発明17と甲1発明との間には、少なくとも相違点13と同様の相違点(以下「相違点17」という。)が存在する。
16 本件発明17~20についての無効理由3-3の有無
相違点17は、相違点13と同様の相違点であるから、前記14と同様のことがいえる。
よって、本件発明17は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められず、無効理由3-3には理由がない。
本件発明17を引用する本件発明18~20についても同様である。
17 本件発明21と甲1発明との対比
本件発明21は、本件発明13を太陽光発電自家消費システムの発明として特定したものであり、本件発明13の発明特定事項13B~13C2と同様の発明特定事項21B1~21B2Bを備える。
そうすると、本件発明21と甲1発明との間には、少なくとも相違点13と同様の相違点(以下「相違点21」という。)が存在する。
18 本件発明21~24についての無効理由3-3の有無
相違点21は、相違点13と同様の相違点であるから、前記14と同様のことがいえる。
よって、本件発明21は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められず、無効理由3-3には理由がない。
本件発明21を引用する本件発明22~24についても同様である。
19無効理由3-1及び3-3の有無についての小括
前記5、8及び11によれば、本件発明1、2、6、8及び9についての無効理由3-1には理由がない。
また、前記6、9、12、14、16及び18によれば、本件発明3~5、7及び10~24についての無効理由3-3には理由がない。
第11 むすび
前記第10、3及び第10、19のとおりであるから、無効理由2、無効理由3-1及び無効理由3-3はいずれも理由がないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1~24についての特許は、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-800022