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特許無効審判

2021-800102

発電制御装置及びそれを用いた発電制御システム

審判番号
2021-800102
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2018-042951
登録番号
6364567
請求日
2021年12月16日
審決日
2024年02月27日
公報発行日
2024年05月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社 フィールドロジック
  • 【請求人代理人】▲高▼山 嘉成
  • 【請求人代理人】冨宅 恵
  • 【請求人代理人】藤原 誠
  • 【被請求人】株式会社 ラプラス・システム
  • 【被請求人代理人】弁理士法人M&Partners
  • 【被請求人代理人】工藤 嘉晃
  • 【被請求人代理人】奥村 直樹
  • 【被請求人代理人】松野 仁彦
  • 【被請求人代理人】富永 真太郎
  • 【被請求人代理人】小松 香織
審判長/審判官
  • 審判長 土居 仁士
  • 審判官 丸山 高政
  • 審判官 寺谷 大亮
分類
P1113.851-Y (H02J) / P1113.853-Y (H02J) / P1113.841-Y (H02J) / P1113.854-Y (H02J) / P1113.855-Y (H02J) / P1113.537-Y (H02J) / P1113.121-Y (H02J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条、特許法第29条、特許法第36条、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第6364567号発明「発電制御装置及びそれを用いた発電制御システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 本件無効審判における請求の趣旨は以下の1のとおりであり、答弁の趣旨は以下の2のとおりである。 1 請求の趣旨 特許第6364567号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項2~6に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。 2 答弁の趣旨 本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。 第2 手続の経緯 本件特許は、平成30年3月9日に出願され、同年7月6日にその請求項1~6に係る発明について特許権の設定登録がなされた。 本件特許に係るその後の特許異議の申立て事件(異議2019-700006号、以下「別件異議」という。)及び訂正審判事件(訂正2021-390128号、以下「別件訂正審判」という。)の手続の概要は、以下の1のとおりであり、本件無効審判の手続の概要は、以下の2のとおりである。 1 別件異議及び別件訂正審判の手続の概要 本件特許に係る別件異議及び別件訂正審判における手続の概要は、以下のとおりである。 平成31年 1月 9日 別件異議の特許異議申立書 令和 元年12月20日 別件異議における訂正請求書 2年 2月12日付け 別件異議の決定(訂正を認め特許維持) 3年 8月25日 別件訂正審判の審判請求書 4年 1月 4日付け 別件訂正審判の審決(訂正を認める) なお、別件異議の決定及び別件訂正審判の審決が確定したことにより、本件特許の請求項1は削除された。 以下では、別件訂正審判の令和4年1月4日付け審決によって確定した訂正のことを「別件訂正」という。 2 本件無効審判の手続の概要 本件無効審判における手続の概要は、以下のとおりである。なお、令和4年8月19日付けの併合審理通知書は、本件無効審判と無効2022-800055号(以下「別件無効審判」という。)との審理の併合を通知するものである。 令和 3年12月16日 審判請求書 令和 4年 3月 4日 訂正を認める審決の確定の通知書 3月22日 手続補正書 7月 7日 審判事件答弁書 8月19日付け 併合審理通知書 12月23日付け 審理事項通知書 令和 5年 1月23日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 1月24日 口頭審理陳述要領書(1)(請求人) 2月22日 上申書(請求人) 2月22日付け 審理事項通知書 3月20日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 3月22日 口頭審理陳述要領書(2)(請求人) 4月 5日付け 審理事項通知書 4月13日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 4月14日 口頭審理陳述要領書(3)(請求人) 4月21日 第1回口頭審理期日 4月28日 上申書(請求人) 5月 1日 上申書(被請求人) 6月23日付け 審理事項通知書 7月14日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 7月18日 口頭審理陳述要領書(4)(請求人) 7月20日 上申書(被請求人) 7月25日付け 審理事項通知書 8月 2日 口頭審理陳述要領書(5)(請求人) 口頭審理陳述要領書(被請求人) 8月 9日 口頭審理陳述要領書(6)(請求人) 8月10日付け 口頭審理期日延期通知書 9月11日付け 審理事項通知書(第2回口頭審理) 審理事項通知書(第3回口頭審理) 10月 2日 口頭審理陳述要領書(被請求人)(注1) 口頭審理陳述要領書(被請求人)(注2) 10月 3日 口頭審理陳述要領書(7)(請求人) 10月 4日 口頭審理陳述要領書(8)(請求人) 10月18日付け 審理事項通知書 11月 2日 口頭審理陳述要領書(9)(請求人) 口頭審理陳述要領書7[1](被請求人) 11月13日 上申書([1]-2)(被請求人) 11月17日付け 審理事項通知書 11月24日付け 審理事項通知書 11月27日 口頭審理陳述要領書(10)(請求人) 11月28日付け 審理事項通知書 11月28日 口頭審理陳述要領書(8)(被請求人) 11月29日 口頭審理陳述要領書(9)(被請求人) 11月30日 口頭審理陳述要領書(10)(被請求人) 12月 5日 第2回口頭審理期日、証人尋問 12月 6日 第3回口頭審理期日 令和 6年 2月 6日付け 併合分離通知書 (注1)本文4頁 (注2)本文32頁 以下では、本件の審判請求書のことを単に「請求書」といい、請求人が提出した口頭審理陳述要領書(1)~口頭審理陳述要領書(10)を、それぞれ「請求人陳述要領書(1)」~「請求人陳述要領書(10)」といい、請求人が提出した上申書について、令和5年2月22日のもの及び同年4月28日のものを、それぞれ「請求人上申書(1)」及び「請求人上申書(2)」という。 また、「審判事件答弁書」のことを単に「答弁書」といい、被請求人が提出した口頭審理陳述要領書について、令和5年1月23日のもの、同年3月20日のもの、同年4月13日のもの、同年7月14日のもの及び同年8月2日のものを、それぞれ「被請求人陳述要領書(1)」~「被請求人陳述要領書(5)」といい、同年10月2日の本文4頁のもの及び同日の本文32頁のものを、それぞれ「被請求人陳述要領書(6-1)」及び「被請求人陳述要領書(6-2)」といい、同年11月2日のもの、同年同月28日のもの、同年同月29日のもの及び同年同月30日のものを、それぞれ「被請求人陳述要領書(7)」~「被請求人陳述要領書(10)」といい、被請求人が提出した上申書について、令和5年5月1日のもの、同年7月20日のもの及び同年11月13日のものを、それぞれ「被請求人上申書(1)」~「被請求人上申書(3)」という。 第3 本件発明 本件特許の請求項2~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明2」~「本件発明6」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ本件特許の特許請求の範囲(別件訂正により訂正済)の請求項2~6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その特許請求の範囲は、次のとおりである。なお、後の参照の便宜のため、各請求項を以下の2A1~6Gに分説し、「発明特定事項2A1」のようにして参照する。 【請求項1】(削除) 【請求項2】 2A1 太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、 2A2 負荷に接続された受変電部と、 2A3 前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力の上限値を制御する1つの発電制御装置と、 2A を備え、 2B 前記発電制御装置は 2B1 少なくとも演算処理部及び計時部を備え、 2B2 前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、 2C 前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避し、 2D 前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である 2E ことを特徴とする発電制御システム。 【請求項3】 3A 前記発電制御システムは、さらに蓄電池を備えることを特徴とする 3B 請求項2記載の発電制御システム。 【請求項4】 4A 前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の0次係数は、前記蓄電池の蓄電可能量に依存することを特徴とする 4B 請求項3記載の発電制御システム。 【請求項5】 5A 前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の一次係数と0次係数は、時間に依存することを特徴とする 5B 請求項2乃至4のいずれか1項記載の発電制御システム。 【請求項6】 6A 太陽電池の発電電力の上限値を制御するパワーコンディショナに接続される1つの発電制御装置であって、 6B 前記発電制御装置は少なくとも演算処理部及び計時部を備え、 6C 太陽電池の発電電力と負荷の消費電力とを取得すると共に、 6D 前記演算処理部を用いて前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し、 6E 前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避し、 6F 前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である 6G ことを特徴とする発電制御装置。 第4 請求人の主張及び証拠方法 請求人の主張の概要は以下の1のとおりであり、請求人の証拠方法は以下の2のとおりである。 1 請求人の主張の概要 請求人は以下の無効理由1から無効理由3-2を主張する。 無効理由1 別件訂正の目的は、特許法126条1項ただし書き各号に掲げるいずれにも該当しないから、本件特許は同法123条1項8号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書22頁21~27行) 無効理由2 別件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてされたものではなく、特許法126条5項に違反し、その特許は同法123条1項8号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書23頁1~7行) 無効理由3 別件訂正は、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであり、特許法126条6項の規定に違反し、その特許は同法123条1項8号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書23頁8~14行) 無効理由4-1 請求項2に係る発明は、甲1に記載された発明並びに甲4に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書23頁15~20行) 無効理由4-2 請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明並びに甲4に記載された事項及び甲8に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書23頁21~27行) 無効理由4-3 請求項4に係る発明は、甲1に記載された発明並びに甲4に記載された事項、甲8に記載された事項及びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書23頁28行~24頁5行) 無効理由4-4 請求項5に係る発明は、甲1に記載された発明と、甲4に記載された事項並びに甲1、甲2-1及び甲8に示される周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書24頁6~12行) 無効理由4-5 請求項6に係る発明は、甲1に記載された発明並びに甲4に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書24頁13~18行) 無効理由5-1 請求項2に係る発明は、甲4に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書24頁19~24行) 無効理由5-2 請求項3に係る発明は、甲4に記載された発明及び甲8に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書24頁25行~25頁1行) 無効理由5-3 請求項4に係る発明は、甲4に記載された発明並びに甲8に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書25頁2~7行) 無効理由5-4 請求項5に係る発明は、甲4に記載された発明並びに甲1、甲2-1及び甲8に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書25頁8~14行) 無効理由5-5 請求項6に係る発明は、甲4に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書25頁15~20行) 無効理由6 請求項2~6に係る発明は、特許法36条6項1号の要件を満たしておらず、本件特許は、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書25頁21~25行) 無効理由7 請求項2~6に係る発明は、特許法36条6項2号の要件を満たしておらず、本件特許は、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきである。(手続補正書25頁26行~26頁1行) 2 証拠方法 以下において、甲第○号証は「甲○」と略記し、甲第○号証の△は、「甲○-△」と略記する。 請求人は、証拠方法として、併合審理開始前に甲1、甲2-1~甲2-3及び甲3~甲23を書証申出し、併合審理中に甲24及び甲25を書証申出した。 本件審決で参照する証拠方法は、以下のとおりである。なお、甲号証の番号の右側の記載は、証拠説明書における標目である。 甲1 特開2016-178719号公報 甲2-1 資料2 出力制御機能付PCSの技術仕様について(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/keito_wg/pdf/005_02_00.pdf) 甲4 実願昭59-142040号(実開昭61-58834号)のマイクロフィルム 甲8 国際公開第2017/109935号 甲24 岩波数学入門辞典 23頁 なお、別件無効審判に対して、併合審理中に、請求人から甲第63号証~甲第100号証(枝番を含む)が書証申出され、2名の証人尋問の申出がされたが、これらの証拠は本件審決の結論を左右しない。 第5 被請求人の主張及び証拠方法 被請求人の主張の概要は以下の1のとおりであり、被請求人の証拠方法は以下の2のとおりである。 1 被請求人の主張の概要 被請求人の主張は、概略、以下のとおりである。 (1)請求人の主張の大部分は、「一次関数」と「一変数関数」とを同一視するという誤解に依拠しているので、理由がない。本件特許の請求項2及び6に係る発明の「消費電力の一次関数」という用語の技術的意味は、「消費電力を変数とする一次式で表される関数」である。(答弁書13~15頁) (2)「逆潮流の回避」と「発電効率の向上」が完全に同時に解決されなければならないとする請求人の主張には、理由がない。仮に、ある瞬間(ある時間帯)で、発電効率が他の制御方式よりも劣る結果になっても、長時間の運転で発電効率を向上させることになり2つの課題を解決したといえる。(答弁書4、20、49~50頁) (3)本件発明における具体的な一次係数及び0次係数の設定方法は本件特許明細書の発明の詳細な説明において種々の方法を説明している。(答弁書21、49頁) 一次係数a及び0次係数bの値を時間帯毎に変化させることは、課題解決との関係においても必須のものではなく、a及びbの双方を変化させる場合に加えて、「一次係数aのみ」あるいは「0次係数bのみ」を時間帯毎に変化させる場合も当然に含まれる。(答弁書23~24頁) (4)甲1を主引用例とする場合の進歩性欠如、及び、甲4を主引用例とする場合の進歩性欠如については、すべて争う。(答弁書12~13頁) 2 証拠方法 以下において、乙第○号証は「乙○」と略記し、乙第○号証の△は、「乙○-△」と略記する。 被請求人は、証拠方法として、併合審理中に乙1~乙4、乙5-1、乙5-2、乙6-1、乙6-2、乙7、乙8、乙9-1~乙9-4、乙10~乙12、乙13-1、乙13-2及び乙14~乙31を書証申出した。 本件審決で参照する証拠方法は、以下のとおりである。なお、乙号証の番号の右側の記載は、証拠説明書における標目である。 乙8 ブリタニカ国際百科事典 https://kotobank.jp/word/次数-73442 なお、別件無効審判に対して、併合審理中に、被請求人から乙第1号証~乙第33号証(枝番を含む)が書証申出されたが、これらの証拠は本件審決の結論を左右しない。 第6 書証の結果 甲各号証及び乙各号証の成立に争いはなく、真正に成立したものでないとする特段の理由もないから、これらは、真正に成立したものと認める。 書証の結果、以下が認められる。 1 甲1(特開2016-178719号公報) 甲1には、以下の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した。 (1)「【0003】 太陽光発電システムが大量に普及することで、国内の太陽光発電システムの発電電力と、発電の中断ができないようなその他の発電システムの発電電力との合計が、国内における電力需要を上回る状況が発生し得る。このような状況が発生した場合は、電力系統の周波数が上昇することで、電力系統の全ての発電システムが停止してしまう系統崩壊と呼ばれる現象が起こる可能性がある。 【0004】 このような系統崩壊を防止するため、平成22年6月8日に経済産業省で開催された「次世代送配電システム制度検討会第1ワーキンググループ」において対処手段が検討された。その際の参考資料であった下記の非特許文献1には、具体的な対処手段として、パワーコンディショナにカレンダー機能を設けることが記載されている。パワーコンディショナは、太陽光発電システムの構成要素の一つであって、太陽電池からの直流電力を交流電力に変換する装置である。パワーコンディショナのカレンダー機能によると、太陽光発電システムの発電電力が多くかつ電力需要の少ない5月の連休日を「特異日」として、特異日にはパワーコンディショナの出力の上限がパワーコンディショナの定格出力の例えば50%に設定される。また、その他の対処手段として、電力会社が設置した指令所から、通信網を介して太陽光発電システムへ、必要に応じて出力抑制指令を送信することが記載されている。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0005】 【非特許文献1】出力抑制合同検討会(電気事業連合会/社団法人 日本電機工業会/一般社団法人 太陽光発電協会)著、「「出力抑制合同検討会」検討結果最終報告 出力抑制機能の具体的な方策(技術論の検討)(次世代送配電システム制度検討会第1ワーキンググループ(WG1)(第1回)配布資料 資料6)」、経済産業省 2009年 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 上記したように、カレンダー機能または出力抑制指令のような出力抑制情報によって太陽光発電システムの出力を制限することで系統崩壊を効果的に回避し得る。一方、太陽光発電システムが大量に普及する前で、かつ、出力抑制情報の仕様が決まっていない過渡期では、パワーコンディショナに出力抑制の基本機能のみを設け、上記仕様が決まった後、出力抑制情報を有する制御機器をパワーコンディショナに後付けし、将来、太陽光発電システムが大量に普及したときに、制御機器を介して出力抑制を実施することが想定される。 【0007】 すなわち、パワーコンディショナは、制御機器が取り付けられる前には、出力抑制を実施しないが、制御機器が取り付けられた後には、出力抑制情報に従い、確実に出力抑制を実施することが要求され、たとえ制御機器が故障し、出力抑制情報が得られない場合であっても、パワーコンディショナの出力が抑制され、系統崩壊が回避される必要がある。 【0008】 本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、パワーコンディショナの出力を抑制するための出力抑制情報を有する制御機器が設置された後は、たとえ制御機器が故障した場合でも、パワーコンディショナの出力を抑制し、系統崩壊を回避することが可能な太陽光発電システムを提供することを目的とする。」 (2)「【0015】 パワーコンディショナ2は、太陽電池モジュール1が発電した直流電力を交流電力へ変換し、この交流電力を出力する。パワーコンディショナ2は、例えば住宅内に設置される。パワーコンディショナ2には交流電力の出力用に出力線11が接続され、出力線11は、住宅内の分電盤3を介して商用電源10に接続されている。また、出力線11は、分電盤3内の連系ブレーカー3aおよび分岐ブレーカー3bを介して住宅内の電気機器である負荷8に接続される。また、出力線11は、分電盤3内の連系ブレーカー3aおよび主幹ブレーカー3cを介して商用電源10に接続される。パワーコンディショナ2から出力された交流電力は、分電盤3内の連系ブレーカー3aおよび分岐ブレーカー3bを経由して負荷8に供給され、負荷8で消費される。また、パワーコンディショナ2から出力された交流電力が負荷8で消費されずに余った場合は、余った分は住宅外の商用電源10に供給される。これを逆潮流という。なお、パワーコンディショナ2は、分電盤3を介さずに商用電源10に接続される構成も可能である。また、太陽光発電システムの設置形態には、パワーコンディショナ2の発電電力を負荷8に供給することなく、発電電力を全て商用電源10に供給する形態がある。これを全量買取方式という。本実施の形態は、全量買取方式が採用された太陽光発電システムにも適用可能である。」 (3)「【0024】 図7は、出力抑制情報15の一例を示した図である。出力抑制情報15は、例えば、出力抑制を実施する「年月日」、「時刻」および「抑制量」をリストにしたものである。ここで、「抑制量」は、例えば、パワーコンディショナ2の定格出力に対する割合で与えられる。例えば、「年月日」が2015/05/10、「時刻」が10:00~10:59のときは、「抑制量」が70%とされているので、パワーコンディショナ2の定格出力の70%を最大値として、パワーコンディショナ2はこれ以上の発電電力を出力しないように制御される。」 (4)「【0033】 実施の形態2. 図8は、本実施の形態に係る太陽光発電システムの構成図である。図8に示すように、本実施の形態に係る太陽光発電システムは、2台の太陽電池モジュール1と、2台の太陽電池モジュール1にそれぞれ接続されると共に分電盤3を介して負荷8および商用電源10に接続された2台のパワーコンディショナ2と、2台のパワーコンディショナ2に接続され、表示ユニット4およびルーター5を介してインターネット13に接続されると共に、分電盤3と商用電源10との接続点における電流および電圧を計測する計測ユニット7とを備える。 【0034】 パワーコンディショナ2の出力線11は、分電盤3を介して商用電源10に接続されている。詳細には、出力線11は、分電盤3内の連系ブレーカー3aおよび主幹ブレーカー3cを介して商用電源10に接続される。分電盤3には、分電盤3と商用電源10との接続点における電流を計測する電流センサー6が設置されている。電流センサー6は計測ユニット7に接続され、電流センサー6の出力は計測ユニット7に入力される。また、計測ユニット7は、分電盤3に接続され、分電盤3と商用電源10との接続点における電圧、すなわち、商用電源10の電圧を計測する。なお、実施の形態1で説明したように、パワーコンディショナ2は分電盤3を介さずに商用電源10に接続されていてもよく、この場合は、計測ユニット7は、パワーコンディショナ2と商用電源10との接続点における電流および電圧を計測することとなる。 【0035】 計測ユニット7は、電流計測値および電圧計測値から電力を算出する。これにより、計測ユニット7は、逆潮流が発生しているのか否かを判定することができる。このように、計測ユニット7は、太陽光発電システムの発電電力が負荷8で消費されず、発電電力が余った場合は、太陽光発電システムから商用電源10に流れる電力を計測し、逆に太陽光発電システムの発電電力が負荷8の消費電力より少ない場合は、商用電源10から負荷8に流れる電力を計測することとなる。 【0036】 計測ユニット7は、有線である信号線12を介して2台のパワーコンディショナ2の各々と接続されており、信号線12を介して2台のパワーコンディショナ2の各々との間で通信可能である。計測ユニット7は、信号線12を介してパワーコンディショナ2の各々から制御情報を取得する。また、計測ユニット7は、無線通信を介して表示ユニット4と接続されている。 【0037】 表示ユニット4は、実施の形態1と同様に、無線通信を介してルーター5と接続され、ルーター5を介して、通信網であるインターネット13に接続される。表示ユニット4は、ルーター5およびインターネット13を介して各種情報を取得する。特に、表示ユニット4は、ルーター5およびインターネット13を介して、例えば電力会社により設置された指令所から出力抑制情報15を取得する。表示ユニット4は、指令所から出力抑制情報15を取り込んだ後、出力抑制情報15を計測ユニット7に送信する。これにより、計測ユニット7は、出力抑制情報15を取得することができる。表示ユニット4は、出力抑制情報15を計測ユニット7に転送するだけで、出力抑制情報15を記憶しない。 【0038】 計測ユニット7は、出力抑制情報15を取得した後、出力抑制情報15を2台のパワーコンディショナ2の各々に出力することで2台のパワーコンディショナ2の各々に出力抑制を実施させる制御機器である。なお、表示ユニット4は、パワーコンディショナ2の制御情報と計測ユニット7による計測値情報を表示することができる。ここで、計測ユニット7による計測値情報には、電流計測値情報、電圧計測値情報および電力計測値情報が含まれる。」 (5)「【0045】 なお、本実施の形態では、計測ユニット7および表示ユニット4の双方を設ける構成としたが、計測ユニット7のみを設け、計測ユニット7がルーター5およびインターネット13を介して指令所から出力抑制情報15を取得するようにしてもよい。 【0046】 また、本実施の形態では、計測ユニット7は、太陽光発電システムから商用電源10に流れる電力を計測することができる。太陽光発電システムから商用電源10に電力を供給しなければ、国内の電力が需要を上回ることはなく、系統崩壊は回避できるため、太陽光発電システムにおける出力抑制は、逆潮流を抑制するものであればよく、必要以上に太陽光発電システムが負荷8に供給する電力を抑制する必要はない。このため、パワーコンディショナ2が出力抑制情報15に従って出力抑制を実施したときに、計測ユニット7の電流および電圧の計測により逆潮流が発生しないと判定された場合には、計測ユニット7は、パワーコンディショナ2に出力抑制を低減しまたは停止する指令を送信することができる。つまり、計測ユニット7は、逆潮流が発生しない発電電力を上限としてパワーコンディショナ2に出力抑制の指令を送信し制御することができる。」 (6)「【0050】 また、本実施の形態では、パワーコンディショナ2、表示ユニット4、計測ユニット7およびルーター5が互いに異なる筐体内に設けられるが、これらは同一の筐体内に配置されていてもよい。」 (7)「【0052】 本実施の形態のその他の構成、動作および効果は、実施の形態1で説明した通りである。」 (8)図7 [図:0001409473000001.jpg] 図7によれば、出力制御情報15の「抑制量」は時間帯毎に変更可能である。 (9)図8 [図:0001409473000002.jpg] 図8によれば、一点鎖線の囲み3の内部に6が含まれている。そして、「分電盤3には、分電盤3と商用電源10との接続点における電流を計測する電流センサー6が設置されている。」(【0034】)から、図8の6は、分電盤3と商用電源10との接続点における電流を計測する電流センサー6であり、電流センサー6の位置は、分電盤3と商用電源10との接続点に一致すると解される。 よって、分電盤3は、分電盤3と商用電源10との接続点を含む。 2 甲2-1(出力制御機能付PCSの技術仕様について) 甲2-1には、以下の記載がある。 (1)表紙 次の記載がある。 「出力制御機能付PCSの技術仕様について 太陽光発電協会 日本電機工業会 電機事業連合会」 (2)3頁 次の記載がある。 [図:0001409473000003.jpg] (3)4頁 次の記載がある。 [図:0001409473000004.jpg] (4)7頁 次の記載がある。 [図:0001409473000005.jpg] (5)8頁 次の記載がある。 [図:0001409473000006.jpg] (6)9頁 次の記載がある。 [図:0001409473000007.jpg] 3 甲4(実願昭59-142040号のマイクロフィルム) 甲4には、以下の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した。 (1)明細書2頁4~7行 「 ≪産業上の利用分野≫ この考案は、商用交流電力系統と太陽光発電とを連係させて並列的に負荷を駆動するための太陽光発電の連係装置に関する。」 (2)明細書4頁5行~5頁1行 「 ≪考案が解決しようとする問題点≫ 第2図の従来装置では、前述したように電力の逆流により遮断器18が開路した後に、負荷16の要求電力が増大するか、あるいは太陽光発電出力が低下し、負荷16の要求電力が太陽光発電電力を上回ると、インバータ12の出力電圧が低下して、負荷16に大きな影響を与えてしまう。 この考案は上述した従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、商用交流電力系統への電力逆流を防止し、系統に悪影響を与えないで、負荷に安定な電力を供給できるようにした太陽光発電の連係装置を提供することにある。」 (3)明細書5頁15行~6頁11行 「 ≪作用≫ この考案の装置では、通常時は商用交流電力系統とインバータとで並列的に負荷が駆動される。このときインバータ出力が最大値になるまでは、負荷の消費電力を系統とインバータとで一定比率で分担するように、インバータ出力が制御される。 また上記系統が停電すると、上記出力電力制御手段によつてインバータ出力はついに零になる。すると、上記接続制御手段によつて上記リレーが開路され、負荷への給電は停止する。上記系統が復電すると、上記リレーが閉路され、系統とインバータとの並列給電が再開される。」 (4)明細書6頁12行~7頁1行 「 ≪実施例≫ 第1図はこの考案の一実施例による装置の構成を示している。太陽光発電セル10の直流出力がインバータ12で交流電力に変換され、商用交流電力系統14とともに共通の負荷16に印加される。」 (5)明細書7頁2~6行 「 インバータ12から負荷16への給電路には遮断器(ノーヒューズブレーカー)30とリレー32とが介在されている。系統14から負荷16への給電路には遮断器(ノーヒューズブレーカー)34と漏電遮断器36とが介在されている。」 (6)明細書7頁7~14行 「 また、系統14側の給電路には計器用変流器38と計器用変圧器40が設けられ、負荷16に近い共通給電路には変流器42が設けられている。 電圧検出回路44は、変圧器40の出力に基づいて負荷16への印加電圧をレベル弁別し、所定以上の電圧が印加されているときにはリレー32を閉路し、その電圧が検出されなくなるとリレー32を開路する。」 (7)明細書7頁15行~8頁7行 「 インバータ12は変圧器40の出力に従つて同期制御され、インバータ12の出力は系統14に同期する。またインバータ12は、変圧器40の出力と変流器42の出力に従つて出力電力が制御される。つまり、変圧器40と変流器42の各出力から負荷16への供給電力が求められ、その電力をPLとすると、インバータ12の出力電力がPLの90%になるように制御される。」 (8)明細書8頁15行~9頁11行 「 以上の構成において、系統14およびインバータ12の両系が正常であれば、各遮断器やリレー32はすべて閉路しており、系統14とインバータ12との両方から負荷16に電力が供給される。負荷16への供給電力PLに対し、インバータ12は90%を受けもち(インバータ12の最大出力範囲内で)、残りの10%を系統14が分担する。そのようにインバータ12の出力電力が制御される。 したがつて、太陽光発電電力が非常に大きくなつても、インバータ12の出力電力は上記の制御でPLの90%に絞られるので、インバータ12から系統14へ電力が逆流することはない。」 (9)明細書11頁1行~12行 「 ≪考案の効果≫ 以上詳細に説明したように、この考案に係る太陽光発電の連係装置によれば、太陽光発電出力の変動および負荷の変動にかかわらず負荷に安定した電力を供給でき、かつ系統への電力逆流を防止することができ、保安面や電力の売買関係にも問題が生じない。とくに負荷に見合つてインバータの出力電力が制御されるので、太陽光発電出力が過大なときでも、インバータと系統とを切り離す必要がなく、安定な電力供給ができる。また、系統の停電時にはインバータを完全に系統から切り離すことができ、保安面で効果がある。」 (10)第1図 [図:0001409473000008.jpg] (11)第2図 [図:0001409473000009.jpg] 4 甲8(国際公開第2017/109935号) 甲8には、以下の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した。 (1)「技術分野 [0001] 本発明は、発電設備から出力する電力が制限される制限期間において、電力を有効に活用できる管理装置、及び、管理システムに関する。 背景技術 [0002] 近年、太陽光発電に代表される発電設備が導入されたホームシステム(一例として、HEMS:Home Energy Management System)が普及している。このホームシステムでは、一般家庭の電力を適切に管理できるようになっている。 [0003] また、一般家庭だけでなく、ビル、工場、店舗、及び、学校といった地域全体における電力を管理する地域システム(一例として、CEMS:Community Energy Management System)も普及しつつある。 [0004] このような地域システムの先行技術として、例えば、特許文献1には、地域内の発電による余剰電力を蓄熱運転で吸収して低減できるエネルギマネジメントシステムの発明が開示されている。 先行技術文献 特許文献 [0005] 特許文献1:特開2012-55078号公報 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0006] ところで、発電設備が導入された需要家から商用電力系統(商用電源)へ電力が供給される逆潮流により、商用電力系統の需給バランスが崩れることがある。例えば、快晴の休日には、需要が大幅に減少するとともに、発電量の増加に伴い供給が増加する。 [0007] そこで、商用電力系統の需給バランスを保つために、電気事業者が需要家に対して時間を指定して逆潮流の抑制(制限)を予め指示するための制度の整備が進められている。例えば、2014年には日本の資源エネルギー庁から、太陽光発電に対する出力制御ルールが公示されている。この出力制御ルールは、発電設備の発電量を調整して、商用電力系統への売電を抑えるものである。 [0008] 具体的な運用の一例として、電気事業者は、発電設備からの出力を制限すべき制限期間(時間帯)を計画すると、その制限期間における制限内容(出力の上限)を含む制限情報を作成する。電気事業者は、作成した制限情報を、ネットワークを介して、発電設備に提供する。そして、発電設備は、提供された制限情報に沿って、制限期間が到来すると、出力上限を超えないように発電量を抑制する。 [0009] しかしながら、特許文献1に記載された発明では、上述のような逆潮流を抑制するための指示に応じて逆潮流を減少させるものではない。つまり、制限情報が提供されることを何ら考慮していないため、そのままでは、制限期間が到来しても、電力を抑制することができない。この結果、特許文献1に記載された発明では、制限期間において、電力を有効に活用することができなかった。 [0010] 本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、発電設備から出力する電力が制限される制限期間において、電力を有効に活用することのできる管理装置、及び、管理システムを提供することを目的とする。」 (2)「[0015] (実施形態1) 図1は、本発明の実施形態1に係るホームシステム1の全体構成の一例を示すブロック図である。図示するように、ホームシステム1は、電力を発電する発電設備10と、住居H内で電力を消費する機器20と、住居H内に供給される電力を遮断するブレーカ30と、住居H内で消費や発電される電力を計測する電力計測装置40と、ホームシステム1全体を制御する管理装置50と、ユーザに使用される端末装置60とを備えている。 [0016] 図1における太線は、電力線PLを示している。つまり、発電設備10、機器20、及び、ブレーカ30には、電力線PLを介して電力が供給又は、出力可能に接続されている。そして、それらの近傍には、電力線PLに流れる電力を計測するための変流器CTが配置されている。 [0017] また、図1における点線は、通信線CLを示している。つまり、発電設備10、機器20、電力計測装置40、管理装置50、及び、端末装置60は、通信線CLを通じて宅内ネットワークN1と接続されている。なお、通信線CL(宅内ネットワークN1)は、例えば、有線LAN(Local Area Network)や無線LANからなる。 [0018] また、ホームシステム1は、宅外ネットワークN2を介して、住居H外に配置されたサーバ70と通信可能となっている。このサーバ70は、発電設備10から電力の出力を制限すべき制限期間を含む制限情報71を記憶している。この制限情報71は、例えば、管理装置50から適宜読み出される。なお、制限情報71の詳細については、後述する。 [0019] 発電設備10は、一例として、発電モジュール11、及び、パワーコンディショナ12備えた太陽光発電システムである。 [0020] 発電モジュール11は、例えば、ソーラーパネルからなり、太陽光を受けて発電を行う。この発電モジュール11は、定格容量(最大発電電力)が、一例として、5kWである場合について、以下、説明する。 [0021] パワーコンディショナ12は、例えば、太陽光発電インバータ(Photo Voltec inverter)からなり、発電モジュール11で発電された電力(直流)を、交流に変換して出力する。パワーコンディショナ12は、例えば、管理装置50を介して制限情報71が供給されると、制限期間において、出力を抑制する。なお、パワーコンディショナ12は、管理装置50を介さずに、直接、サーバ70から制限情報71を読み出すようにしてもよい。 [0022] 制限情報71には、例えば、図2Aに示すように、各時間(時間帯)における出力上限(発電モジュール11の定格容量の何%まで出力できるか)が定められている。この例の場合、0時~9時、及び、15時~24時の出力が100%(つまり、制限なし)と規定されている。また、9時~11時、及び、13時~15時の出力が40%と規定されている。そして、11時~13時の出力が0%と規定されている。つまり、出力が100%よりも小さい時間帯が制限期間となり、その制限期間における出力上限が制限値となる。なお、図2Aに示す制限情報71は、一例であり、適宜変更可能である。例えば、出力上限を割合(%)で規定する代わりに、電力値(n[kW])で規定するようにしてもよい。 [0023] このような制限情報71が供給されると、パワーコンディショナ12は、例えば、図2Bに示すように、発電モジュール11が線Laに示すように発電しても、線Lpを上限として、電力を出力する。つまり、制限期間(9時~15時)において、発電モジュール11が発電した電力よりも少ない電力を出力する。特に、11時~13時は、出力する電力を0にする(電力を出力しない)。 [0024] なお、このような制限期間において、自家消費(買電)が発生している場合には、パワーコンディショナ12は、その自家消費分まで(発電モジュール11の発電量が足りている場合)、電力を出力できることが認められている。つまり、図2Cに示すように、連結点Cにおける逆潮流PRは、発電設備10から出力される電力PGと、機器20にて消費される電力PLとから、以下の式1により求まる。 [0025] PR = PG - PL・・・(式1) [0026] そして、パワーコンディショナ12は、電力PR>0の場合に、上限値(線Lp)まで抑制した電力を出力する。一方、電力PR≦0であれば、電力PR=0に収束するまで電力を増やして出力することができる。 [0027] 具体的に図3を参照して説明する。図3において、機器20にて消費される電力PLの推移を、一点鎖線にて示している。また、発電設備10から出力される電力PGを太い実線にて示している。つまり、制限期間(9時~15時)において、電力PLが上限値(線Lp)を下回っている時間帯では、パワーコンディショナ12は、上限値となる2kWまで電力PGを出力する。その後、電力PLが上限値を上回ると、パワーコンディショナ12は、電力PLと同じ電力値まで増加させて電力PGを出力する。なお、電力PLが発電量(線La)を上回ると、パワーコンディショナ12は、発電量と同じ電力値の電力PGを出力する。」 (3)図1 [図:0001409473000010.jpg] (4)図2A [図:0001409473000011.jpg] (5)図2B [図:0001409473000012.jpg] (6)図2C [図:0001409473000013.jpg] (7)図3 [図:0001409473000014.jpg] 5 甲24(岩波数学入門辞典) 23頁の「1次関数」の項目として、以下の記載がある。 「 linear function, affine function 次数が1以下の多項式(整式)で表される関数のことをいう.*アフィン関数ともいう.1変数のときはax+b(a,bは定数)であり,n変数のときは,a1x1+…+anxn+b(a1,…,an,bは定数)の形の多項式で定義される関数である.」 6 乙8(ブリタニカ国際大百科事典) 「次数」の項目として、以下の記載がある。 「じすう degree 一般に対象の個数を表わす値。特に代数式に使う。たとえば単項式3xy4z2は,7個の文字因数を含んでいるが,この文字因数の個数7を,この単項式の次数という。すなわち,これは7次の単項式である。また,ある特定の文字だけに着目して,その文字についての次数を考えることもある。上式で,yだけに着目すれば,この単項式は4次である。一般に多項式の次数とは,その多項式を構成する単項式のうち,最も高い次数を持つ項の次数で示す。たとえば,3x3y+2x2y-4xy+y2は,項3x3yの次数が最も高いから,4次の多項式となる。しかし,xだけについては3次,yだけについては2次の多項式である。一般に,a0,a1,a2,…,anを定数とするとき,xに関する多項式(整式)f(x)=a0xn+a1xn-1+…+an(a0≠0)の次数は,nである。a0=0の場合も含めて考えるとき,nはf(x)の見かけ上の次数という。すべての項の次数が等しい多項式を,同次式という。」 第7 当審の判断 以下では、別件訂正前における願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のことを「訂正前明細書等」という。 また、別件訂正後における願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のことを「本件明細書等」という。 別件訂正は明細書及び図面についての訂正を含まない(以下の3(1)イを参照)ので、別件訂正の前後の明細書及び図面は同一であり、以下、それぞれを「本件明細書」及び「本件図面」という。 当審の判断は以下のとおりである。 1 本件発明の技術的意義の認定 本件発明の技術的意義について、以下のことが認められる。 (1)本件明細書及び本件図面の記載 本件明細書及び本件図面には、以下の記載がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、発電制御装置及びそれを用いた太陽光発電の発電制御システムに関する。 【背景技術】 【0002】 従来、太陽光発電システムは、電力会社との売買契約に従って、余剰電力は商用電力線に逆潮流させ電力会社に売電されていた。しかし、太陽光発電のような分散電源が増加するにともない、逆潮流による電力系統の電圧変動という弊害が生じることとなった。そのため、現在では太陽光発電システムから電力会社への逆潮流を回避する必要が生じている。 逆潮流を抑制し、太陽電池が発電する電力(発電電力)を制御する方法として、例えば特許文献1、2が開示されている。 特許文献1には、消費電力に対する発電電力の差分値が閾値以下になると太陽電池の発電電力を制御するシステムが、特許文献2には、消費電力に対する発電電力の不足分である受電電力が閾値以下になると太陽電池の発電電力を制御するシステムが開示されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】 特開2017-093127号公報 【特許文献2】 特開2012-175858号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、いずれのシステムにおいても、消費電力に対する発電電力の差分値と閾値とを比較判定し、太陽電池の発電電力を制御するものであった。このようなシステムでは、過剰に発電電力を抑制する結果、太陽電池の発電可能な電力を十分に活用できない。 本発明は、商用電力線への逆潮流を回避しながら太陽電池の発電効率を向上させることができる自家消費型の発電制御システム、及びそれに使用する発電制御装置を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明に係る発電制御システムは、 発電電力を制御するパワーコンデショナと、負荷に接続された受変電部と、 前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンデショナの出力を制御する発電制御装置と、を備え、 前記発電制御装置は、発電電力の上限値を消費電力の関数として出力指令値を算出し、 前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナの出力が制御される ことを特徴とする。 【0006】 また、本発明に係る発電制御システムは、 前記関数は、一次関数であることを特徴とする。 【0007】 このような発電制御システムとすることにより、逆潮流を回避するために、太陽電池の発電電力を制御しながら、太陽電池の発電効率を向上させることができる。 特にパワーコンデショナによる太陽電池の発電電力を制御するためのパラメータである出力指令値を、消費電力についての関数、特に一次関数により算出することにより、容易に、従来過剰に抑制されていた太陽電池の発電電力を有効に利用することが可能となる。」 イ 「【0012】 また、本発明に係る発電制御システムは、 前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の一次係数と0次係数は、時間に依存することを特徴とする。 【0013】 このように一次関数の各係数を時間に依存する値とすることにより、様々な状況に応じて、柔軟に対応が可能となり、さらに太陽電池の発電効率の向上を実現することができる。」 ウ 「【0016】 なお、本明細書において、一次関数の一次の項の係数を一次係数、0次の項の係数を0次係数と称す。 【発明の効果】 【0017】 本発明によれば、逆潮流を回避しながら太陽電池の発電効率を向上させることができる自家消費型の発電制御システム及びそれに使用する発電制御装置を提供することができる。」 エ 「【0027】 制御装置6は、さらにマイコン等の演算処理部、記憶装置及び計時部を備える。 制御装置6は、計時部の計時機能を用い、指定された(又は記憶装置に記憶された)頻度で(又は日時に)、消費電力を取得し、演算処理部において、得られた消費電力の値を用い、後述する関数(一次関数)によって太陽電池1の発電電力の上限値を設定する。さらに制御装置6は、発電電力の上限値を太陽電池1の定格電力で除して出力指令値(=(発電電力の上限値)/(定格電力)[%])を算出する。出力指令値は、入出力部を経由してPCS2に出力され、PCS2は出力指令値に従って、太陽電池1の発電電力が上限値以下となるように制御する。 なお、発電電力の上限値そのものを出力指令値としてPCS2に出力してもよい。」 オ 「【0031】 以下、発電制御システム10、特に制御装置6による太陽電池1の発電電力の上限値(最大発電許容値)の設定方法について説明する。 【0032】 図2は、消費電力及び発電電力の上限値の朝6時から18時までの変動例を模式的に示す。横軸は時刻であり、縦軸に消費電力及び発電電力をプロットしている。 図中、曲線Sは消費電力を示し、曲線Aは、発電電力の上限値を消費電力に対して、一定量低い値に設定した場合(条件αと称す)を示し、曲線Bは発電電力の上限値を消費電力に比例した値に設定した場合(条件βと称す)を示す。 【0033】 図2に示される例においては、特許文献1、2に記載されているような条件αでは、消費電力量が少ない時間帯(6時~10時)において、条件βと比較して太陽光発電量が低くなり、発電を抑制されるため、発電効率が落ちてしまうことが分かる。 一方、消費電力が多い時間帯(12時~14時)においては、条件βは、条件αと比較して太陽光発電電力が低くなり、発電電力が抑制されるため、発電効率が落ちてしまう。 条件αの場合、消費電力に関わらず発電電力上限が一定であるが、条件βの場合は消費電力に応じて発電量の上限が高くなるためである。 【0034】 本発明に係る発電制御システム10は、発電電力上限値を以下に説明するよう一次関数式により算出し、一次係数a及び0次係数bを実際の消費電力、発電性能にあわせて設定することにより、発電効率を上げることができる。 【0035】 消費電力は時刻により変化するため、時刻tにおける消費電力及び発電電力上限をそれぞれS(t)、P(t)[W]とする。 S(t)=消費電力 [式1] P(t)=発電電力上限値(最大発電許容値) [式2] 【0036】 P(t)は、S(t)とP(t)との差分が、S(t)の一次式となるように設定する。 S(t)-P(t)=aS(t)+b [式3] ここで、aは0より大きく1以下の値とする。式3より P(t)=(1-a)S(t)-b [式4] となる。 【0037】 以下、式4により発電電力上限を設定する効果及び、一次係数a、0次係数bの設定法の例について具体的に説明する。 【0038】 式4を所定の時間間隔(t0からt1、例えば、6時から18時、0時から24時)の範囲で時間積分することにより、所定の時間の発電可能な総発電可能量[Wh](総発電量上限値)は ∫P(t)dt=∫(1-a)S(t)dt-∫bdt [式5] となる。ここで係数a、bを時間に依存しない定数とすると、 ∫P(t)dt=(1-a)∫S(t)dt-b∫dt =(1-a)∫S(t)dt-b(t1-t0) [式6] となる。 【0039】 ここで、例えば、時刻tmで消費電力量が最大となるとすると、 P(tm)=max(P(t)) [式7] となる。 もし、時刻tmを中心とする時間帯において消費電力の絶対値の変動が大きくなる場合、急な消費電力の変動に発電電力の制御が追随できないリスクが高くなる可能性がある。そのため、この時間帯において、消費電力と発電電力との差分に対して、十分なマージン(余裕度)を持たせることを想定する。すなわち、時刻tmでのS(tm)とP(tm)との差分を所定の値Z(余裕度)以上に設定すると、 S(tm)-P(tm)≧Z [式8] となる。そのため、P(tm)は、 P(tm)≦S(tm)-Z [式9] となる。 【0040】 そこで、時刻tmにおいて、P(tm)がS(tm)-Z以下の値になるという束縛条件の下で総発電可能量が最大になるようa、bを決定する。 なお、Zは、太陽電池の発電量制御の応答性、PCSのMPPT制御の変動幅や、過去の実績から想定される消費電力の変動量等から決めればよく、Zが小さいと逆潮流のリスクが高くなる。 例えば、PCS2による発電力制御の応答時間が1分程度であり、その間(1分間)の消費電力の変動量が過去の実績から50kWであったとすると、Zの値は50kW以上の値を設定する必要がある。また、応答速度が速く例えば5秒以内程度であれば、その間の消費電力の変動は少なくなると考えられるため、Zの値としてより小さい値を設定できる。 【0041】 図3は、横軸に総発電可能量、縦軸にP(tm)をプロットした相関図であり、図3(a)は、aをゼロとしたときのbの依存性(従来の制御法)を示し、図3(b)は、a及びbの依存性を示し、図3(c)は(a)及び(b)を合成した図である。 【0042】 図3(a)に示すように、bを変化(増大)させると、矢印αに示す方向に、直線LAに沿って総発電可能量及びP(tm)が変化する。 【0043】 図3(b)において、直線LB1は、bをゼロとしaを変化させた時の総発電可能量及びP(tm)を示す。直線LB1において、aを変化(増大)させると、矢印βに示す方向に、直線LB1に沿って総発電可能量及びP(tm)が変化する。 さらに、bを変化(増大)させると、直線LB1が、矢印γで示す方向に、例えば直線LB2、直線LB3へとシフトする。 なお、直線LB2、LB3において、aを変化(増大)させると、直線LB1と同様な矢印βの方向に、直線LB2、LB3に沿って総発電可能量及びP(tm)が変化する 【0044】 図3(c)は、図3(a)及び(b)を合成した図であり、視認性のため直線LA、直線LB1及び直線LB3のみをプロットしている。図中、直線Lmは、P(tm)の上限を示す。(式9参照。) 【0045】 図3(c)において、直線Lmと直線LAとが交わる点の総発電可能量が、aをゼロとしたとき(従来の制御法)の最大の総発電可能量(図中、「TA」で示す)となる。 さらに図3(c)に示すように、直線Lm以下であり且つ総発電可能量がTA以上となる領域(図中に示す、ハッチングされた領域「K」)が存在し、S(tm)と総発電可能量との組み合わせを実現できるようにa、bを設定できることが理解できる。 【0046】 領域Kの内部は、従来の発電量の制御方法よりも発電効率がよい領域である。 領域Kの内、最も総発電可能量が大きいのは、点TB1であり、その点を実現するa、bを選択することも可能であるが、領域K内部の領域で、従来よりも発電効率が高く、さらに逆潮流のリスクを低減するように発電電力の低い点、例えば図3(c)中の点TB2を選択して、a、bを決定してもよい。a、bの設定可能範囲が確定するため、利用者がその範囲から発電電力の上限を確定すればよく、太陽電池1を制御する条件の選択の幅が拡大する。 【0047】 このように、従来のような発電電力の上限値を消費電力に依存しない制御方法とくらべ、式4に示すように発電電力の上限値を消費電力の一次関数とすることで、総発電可能量を増大させることができる。 【0048】 なお、図3(c)においては、tmは消費電力が最大となる時刻としたが、他の時刻、例えば消費電力の時間変動が大きい時刻(S(t)の時間微分が最大となる時刻)、日照量が最大となる時刻等をtmとして、図3(c)に相当するグラフを作成し、一次係数a、0次係数bを決定してもよい。 【0049】 なお、図3(c)は、消費電力の時間積分により算出している。そのため、a、bを確定するための時間積分は、過去数日の消費電力の平均値を用いたり、過去数週間の同じ曜日の消費電力を使用してもよい。 また、図3(c)は、従来と比べ発電効率を向上することができることを示すものであり、a、bの設定条件は上記方法によらず、例えば、aを0(ゼロ)としてbを確定し、aの値を変化させて総発電量のデータを取得し蓄積し、総発電量が高い条件となるようにaの値を確定してもよい。また、逆にbを0(ゼロ)としてaを確定し、bの値を変化させて総発電量のデータを取得し蓄積し、総発電量が高い条件となるようにbの値を確定してもよい。 【0050】 また、時間積分する時刻t0、t1は、適宜変更が可能であり、例えば6時から10時、10時から14時、14時から18時のように複数の時間帯を設け、それぞれの時間帯でa、bを確定し、それぞれの時間帯毎に一次係数a、0次係数bの値を変えてもよい。 【0051】 また、時間積分を行わず特定の時刻t(例えば午前10時等)において、式6の代わりに式4を用いて図3に相当するグラフを作成してもよい。 【0052】 また、一次係数a、0次係数bを決めるためのZの値は、予め過去の実績等から決めておき、a、bの設定可能範囲を算出後、設定可能範囲から利用者等がa、bの値を決定し、発電電力の上限を決めてもよい。例えば、Zの値として十分に余裕を持たせて大きく設定し、使用実績を見ながら小さくしていってもよい。 【0053】 このように、太陽電池1の発電電力を制御するために2つのパラメータ(一次係数a及び0次係数b)を用いることで、太陽電池1の設置箇所、季節、時刻に応じて、様々な条件に対応することができる。 【0054】 また、制御装置6内の記憶装置に過去のデータを記憶して、最適なa、bの値を算出できるように学習機能を備えさせることが可能である。太陽電池1の使用条件に合わせて、発電電力の上限と2つのパラメータ(a、b)との相関関係についてのデータを作成及び保存、蓄積し、蓄積されたデータから、最適な条件を設定することができる。2つのパラメータを用いるため、条件の最適化の自由度が増加し、様々な状況に合わせた制御条件を得ることができる。」 カ 「【0057】 さらに発電システム10は、上述のように蓄電池7を備えてもよい。それにより発電された電力の一部を蓄電池7の充電することも可能である。 この場合、式1において0次係数bに、蓄電可能な電力分を考慮した値とすることで、容易に蓄電池7をシステムに組み込んだ発電電力の上限を設定できる。 すなわち、0次係数bを、蓄電可能な電力に相当する分だけ低く設定することで、発電電力上限値P(t)を増大できる。 また、日照量の多い時間帯のみ充電可能とし、すなわち0次係数を充電可能な量に相当する分だけ特定の時間、t0からt1、例えば10時から14時までの時間帯のみ0次係数を以下のように小さく設定してもよい。 b=b0-c(t) [式10] ここで、t0≦t≦t1。 この場合、図3(c)の領域Kに相当する領域を算出する場合、式5を用いればよい。」 キ 「【0060】 さらに一次係数a、0次係数bは、季節、時刻に依存して変更してもよい。制御装置6の計時部の時計機能を利用し、記憶部に記憶した季節、時刻毎に設定された一次係数a、0次係数bの値を用いてもよい。 例えば、太陽電池1の発電電力は、定格電力に近くなると、発電電力の変動が小さくなる。この場合Zの値を小さく設定し、それに合わせて一次係数a、0次係数bを算出してもよい。すなわち、太陽高度が高く、十分な日射量を得られ、太陽電池の定格電力に近い値が出力されるような季節及び時刻において、Zを小さく設定することも可能である。 一次係数a、0次係数bの値を太陽電池1の特性や負荷の消費電力の動向にあわせて柔軟に設定することにより、さらに太陽電池1の発電効率を向上させることができる。」 ク 図1 [図:0001409473000015.jpg] ケ 図3(a) [図:0001409473000016.jpg] コ 図3(b) [図:0001409473000017.jpg] サ 図3(c) [図:0001409473000018.jpg] (2)本件発明の技術分野及び解決すべき課題 本件発明の技術分野は「発電制御装置及びそれを用いた太陽光発電の発電制御システム」(【0001】)であり、その解決しようとする課題は、「商用電力線への逆潮流を回避しながら太陽電池の発電効率を向上させることができる自家消費型の発電制御システム、及びそれに使用する発電制御装置を提供すること」(【0004】)である。つまり、本件発明の発電制御装置及び発電制御システムは、「商用電力線への逆潮流を回避」すること(以下「逆潮流回避」又は「課題1」という。)と、「太陽電池の発電効率を向上させることができる」こと(以下「発電効率向上」又は「課題2」という。)との2つの課題を解決しようというものである。 以下、課題1及び課題2についてさらに検討する。 ア 課題1(逆潮流回避)について 本件明細書には、背景技術として、「太陽光発電のような分散電源が増加するにともない、逆潮流による電力系統の電圧変動という弊害が生じることとなった。そのため、現在では太陽光発電システムから電力会社への逆潮流を回避する必要が生じている。」(【0002】)と記載されている。 上記記載によれば、逆潮流は電力系統の電圧変動を引き起こすために、常に回避されるべきものと解される。 そして、このことは本件発明においても当然に追求されるべきことであると認められる。 他方、本件明細書の「もし、時刻tmを中心とする時間帯において消費電力の絶対値の変動が大きくなる場合、急な消費電力の変動に発電電力の制御が追随できないリスクが高くなる可能性がある。」(【0039】)との記載及び「そこで、時刻tmにおいて、P(tm)がS(tm)-Z以下の値になるという束縛条件の下で総発電可能量が最大になるようa、bを決定する。なお、Zは、太陽電池の発電量制御の応答性、PCSのMPPT制御の変動幅や、過去の実績から想定される消費電力の変動量等から決めればよく、Zが小さいと逆潮流のリスクが高くなる。」(【0040】)との記載によれば、太陽電池の発電量制御の応答性が低い場合や、PCSのMPPT制御の変動幅が大きい場合等、消費電力の変動に発電電力の制御が追随できない場合に適切な大きさのZを設定する必要があるが、消費電力の変動に対して十分な発電電力の制御の応答性が確保できている場合には、Zによる束縛条件は必要ないと理解できる。すなわち、発電電力の制御の応答性が悪いために生ずる逆潮流は、必要に応じて解決すべき課題であって、必ず解決しなければならないものではない。 よって、本件発明における課題1(逆潮流の回避)は、発電電力制御の応答性が十分である場合に、商用電力線への逆潮流を常に回避することであると解される。 イ 課題2(発電効率向上)について 発電効率向上(課題2)に関して、本件明細書には「従来のような発電電力の上限値を消費電力に依存しない制御方法とくらべ、式4に示すように発電電力の上限値を消費電力の一次関数とすることで、総発電可能量を増大させることができる。」(【0047】)との記載がある。該記載によれば、本件発明の発電効率向上は、「総発電可能量」を従来技術よりも増大させることを含んでいると解され、「総発電可能量」は、P(t)を所定の時間間隔t0~t1の範囲(以下「積分区間」という。)で時間積分したもの(【0037】、【0038】)であり、ここで、P(t)は時刻tにおける発電電力上限である(【0035】)。すなわち、発電効率向上(課題2)は、発電電力上限P(t)を積分区間(t0~t1)で時間積分して得られる総発電可能量を従来技術よりも向上させることを含むと理解される。 総発電可能量は発電電力上限の積分なので、発電電力上限が常に従来技術よりも向上していれば、総発電可能量は確実に従来技術よりも向上するが、発電電力上限が一時的に従来技術よりも落ち込むことがあっても、落ち込んだ分を上回る発電電力上限がそれ以外の時間に存在すれば、積分区間全体としての総発電可能量は従来技術よりも向上し得る。 よって、本件発明における課題2(発電効率向上)は、少なくとも、発電電力上限P(t)を積分区間(t0~t1)で時間積分して得られる総発電可能量を従来技術よりも向上させることと解され、瞬時の発電電力上限が常に従来技術よりも向上することは、必ずしも要しないと解される。 ウ 領域Kについて 本件明細書には「領域Kの内部は、従来の発電量の制御方法よりも発電効率がよい領域である。」(【0046】)との記載がある。該記載は、課題2に関係すると解される。 該記載によれば、本件発明の実施形態において従来技術よりも発電効率(総発電可能量)が向上している部分は、図3(c)における領域K、すなわち、(i)直線TAの右側、かつ、(ii)直線Lmの下側、かつ、(iii)直線LB1の左側の領域であると解される。 そこで、領域(i)~(iii)について、それぞれ以下の(ア)~(ウ)で検討する。 (ア) 領域(i)(直線TAの右側)について 直線TAは「(従来の制御法)の最大の総発電可能量」(【0045】)であるから、直線TAの右側は総発電可能量が従来技術の最大値よりも大きな領域となる。すなわち、領域(i)が発電効率向上(課題2)を解決する領域となる。 前述のとおり、総発電可能量は発電電力上限P(t)を積分区間で時間積分したものであるから、発電電力上限P(t)が従来技術よりも低い瞬間があったとしても、発電電力上限を積分区間で積分したもの、すなわちt0~t1における総発電可能量∫P(t)dtが従来技術よりも向上していれば、発電効率向上という課題(課題2)は解決されると解される。 (イ) 領域(ii)(直線Lmの下側)について 直線Lmは「P(tm)の上限」であり(【0044】)、P(tm)は「P(tm)=max(P(t))」であり、「時刻tmで消費電力量が最大となる」(【0039】)のだから、「P(tm)の上限」は、発電電力上限の最大値であると解される。そうすると、図3(c)において直線Lmの上側の領域は、発電システムが設定し得ない発電電力上限となる領域であるから、発電システムで実現可能な発電電力上限は、直線Lmの下側の領域に限られると解される。すなわち、領域(ii)は、課題1及び課題2とは直接関係しないが、発電システムが実現可能な出力上限を表すと解される。 (ウ) 領域(iii)(直線LB1の左側)について 直線LB1は「bをゼロとしaを変化させた時の総発電可能量」であり(【0043】)、図3(b)及び「bを変化(増大)させると、直線LB1が、矢印γで示す方向に、例えば直線LB2、直線LB3へとシフトする。」(【0043】)との記載によれば、直線LB1は、b=0に固定してaを動かしたときの軌跡であり、bを増大させるにつれ直線LB1が左へと移動することが理解できる。そうすると、直線LB1の左側の領域は、b≧0の領域であると解される。 ここで、[式3]によれば、S(t)-P(t)=aS(t)+bであり(【0036】)、S(t)は時刻tにおける消費電力である(【0035】)から、[式3]の左辺、すなわち、S(t)-P(t)は、時刻tにおける消費電力から発電電力上限を減じたものである。S(t)-P(t)が0以上であれば、消費電力が発電電力上限以上となるから、逆潮流が生じ得ない。つまり、逆潮流を回避するためには、S(t)-P(t)=aS(t)+b≧0でなければならない。ここで、「aは0より大きく1以下の値」である(【0036】)からaS(t)≧0であり、また、前述のとおり直線LB1よりも左側の領域ではb≧0であるから、領域(iii)においては、aS(t)+b≧0は常に成立する。すなわち、直線LB1の左側である領域(iii)は、逆潮流が常に回避される領域であり、課題1を解決する領域であると解される。 逆潮流を常に回避することは、本件発明の技術分野が「自家消費型」の発電制御システムであること、及び、「現在では太陽光発電システムから電力会社への逆潮流を回避する必要が生じている。」(【0002】)との記載とも整合する。 エ 技術分野と課題についての小括 領域(iii)についての検討(前記ウ(ウ))は、前記アに示した課題1と整合し、領域(i)についての検討(前記ウ(ア))は、前記イに示した課題2と整合する。 以上によれば、本件発明の技術分野及び解決すべき課題は、次のように解される。 技術分野 発電制御装置及びそれを用いた太陽光発電の発電制御システム 課題1(逆潮流回避) 発電電力制御の応答性が十分である場合に、商用電力線への逆潮流を常に回避すること。 課題2(発電効率向上) 総発電可能量(発電電力上限を積分区間で積分したもの)を従来技術よりも向上させること。ただし、全ての瞬間で発電電力上限が従来技術よりも向上することを要するものではない。 (3)本件発明の課題解決手段及び効果 以下では、本件発明2及び6の発明特定事項と前記(2)エに示した課題1及び課題2を解決するための手段との対応関係について検討し、さらに、課題解決以外の効果を検討する。 ア 課題1(逆潮流回避)に対する解決手段について 本件発明の実施形態における課題1に対する解決手段は、前記(2)ウ(ウ)で検討した領域(iii)であり、この実施形態ではb≧0である。 しかしながら、発明の詳細な説明には蓄電池7を備えた実施形態について「0次係数bを、蓄電可能な電力に相当する分だけ低く設定することで、発電電力上限値P(t)を増大できる。」(【0057】)との記載がある。 蓄電池に蓄電するために使用される電力を正の値pbで表すと、逆潮流が常に回避されるようにするためには、 S(t)+pb-P(t)≧0 …(式a) でなければならない。 そして、S(t)-P(t)=aS(t)+bであるから、式aは、 aS(t)+b+pb≧0 …(式b) となる。 式bにおいて逆潮流が最も生じやすくなるS(t)の値は0であるから、逆潮流が常に回避されるためには、b+pb≧0すなわちb≧-pbでなければならない。pbは正の値であるから、-pbは負の値となり、bは負の値であってもよいことが理解できる。 そうすると、逆潮流を回避するという課題を解決するための手段は、S(t)-P(t)=aS(t)+bという関係式において、b≧0と限定する必要がないことが理解できる。 そして、本件発明2及び6の「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定し」(発明特定事項2B2、6D)との発明特定事項は、実施形態におけるS(t)-P(t)=aS(t)+bに対応し、課題1に対する解決手段であると認められる。 よって、本件発明における課題1に対する解決手段は、「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定し」(発明特定事項2B2、6D)との発明特定事項である。 イ 課題2(発電効率向上)に対する解決手段について 本件発明の実施形態における課題2に対する解決手段は、前記(2)ウ(ア)で検討した領域(i)であり、この実施形態では∫P(t)dt≧TAである。 他方、本件発明は、∫P(t)dt≧TAに対応する発明特定事項を備えていない。 しかしながら、上式は、所定期間の総発電可能量(発電電力上限の積分)が従来技術のもの(TA)以上であるという、課題2そのものを表現しているに過ぎない。そして、本件明細書及び本件図面を参照すれば、課題2を認識でき、課題2を解決するためには、そして同時に課題1を解決するためには、従来技術の総発電可能量をTAとして図3(c)のような作図をし、領域Kの中に入るようなa及びbを選択すべきことが理解できるのだから、上式が発明特定事項とされていなくとも、本件発明を具現化する際には、発明特定事項2B2及び6Dにおいて特定された一次関数の一次係数a及び0次係数bが領域K内に入るように選択されるのが当然と解される。 むしろ、本件明細書及び本件図面から直ちに理解されるのは、課題解決のために一次係数a及び0次係数bを領域K内に入るように選択することである(【0046】)のだから、一次係数a及び0次係数bが存在すること、換言すれば、一次関数の存在が課題2の解決のための前提となっている。 以上によれば、「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定」する(発明特定事項2B2、6D)前提があれば、図3(c)のような領域Kを作図できる場合には、課題2を解決する一次係数a及び0次係数bを選択できることは自明なことと認められる。 ウ 領域Kの作図について 前記アのとおり発明特定事項2B2及び6Dは課題1の解決手段となっており、さらに、前記イのとおりであるから、前記発明特定事項を前提として(S(t)-P(t)=aS(t)+bを前提として)、図3(c)のような領域Kを実際に作図することができれば、課題2が解決できることが自明である。換言すれば、領域Kの作図が可能であれば、発明特定事項2B2及び6Dは課題1及び課題2の双方の課題解決手段である。 そこで、領域Kの作図が可能か否かについて検討する。 図3(c)の作図は、横軸(以下「X軸」)を総発電可能量∫P(t)dtとし、縦軸(以下「Y軸」)を発電電力上限の最大値P(tm)として、bを一定値に固定してaを動かすと、点(∫P(t)dt,P(tm))がXY平面上で直線上(b=0の場合は直線LB1上)を動くことを利用して作図するものと解される。 しかしながら、X軸方向の値である∫P(t)dt及びY軸方向の値であるP(tm)は、現在時刻においては計算できない。すなわち、現在時刻をtnowとし、総発電可能量を算出するための積分区間をt0~t1(t0≦tnow≦t1)とした場合、tnow≦t≦t1におけるP(t)の値は、P(t)=(1-a)S(t)-bによって計算され(【0036】[式4])、その計算には積分区間t0~t1での実際の消費電力S(t)が全て既知である必要があるが、現在時刻tnowより後のS(t)の正確な値は予め知ることはできないため、tnow<t≦t1におけるP(t)の値は不明である。よって、積分区間t0~t1におけるP(t)の最大値も、積分区間t0~t1における総発電可能量∫P(t)dtも、計算することができない。 しかしながら、本件明細書は、「a、bを確定するための時間積分は、過去数日の消費電力の平均値を用いたり、過去数週間の同じ曜日の消費電力を使用」する(【0049】)と記載している。つまり、現実的にa及びbを決定するために、積分区間t0~t1での実際の積分値∫P(t)dt及びP(t)の最大値を計算するのではなく、実際の積分値と近くなると予想される「過去数日の消費電力の平均値」又は「過去数週間の同じ曜日の消費電力」を用いるのだと理解される。換言すれば、課題を解決できるような一次係数a及び0次係数bを事前に決定するために、領域Kの作図の際は、∫P(t)dt及びP(tm)の算出に際して、実際の積分区間t0~t1を用いるのではなく、実際の積分区間での値に近い値となると予想される過去の積分区間t0-T~t1-T(t0-T≦ t1-T ≦ tnow)を用いるのだと理解される。 以上によれば、本件明細書及び図面から、一次係数a及び0次係数bの選択のために領域Kを作図する際には、実際の積分区間を用いるのではなく、消費電力S(t)の挙動が実際の積分区間に近いと予想される過去の積分区間を用いるという事項が理解される。この事項によれば、領域Kの作図は近似的にではあるが可能であり、該事項が発明特定事項として特定されていなくても、本件発明の課題1及び課題2を解決しようとすれば、本件明細書及び本件図面を参照することで、該事項は本件発明の具現化の際に当然に用いられると認められる。 エ a及びbの適用可能範囲について 前記ウのとおり、本件発明の一次係数a及び0次係数bを選択する際に、実際の積分区間と消費電力S(t)の挙動が近いと予想される過去の積分区間を用いる。その際に領域Kを作図するが、その作図のために1点(∫P(t)dt,P(tm))の座標を計算する際には、a及びbを固定して計算するものである。(そうでなければ、a及びbの値とXY平面上での1点とが対応しないことになり、「直線LB1は、bをゼロとしaを変化させた時の総発電可能量及びP(tm)を示す。」ことや、「bを変化(増大)させると、直線LB1が、矢印γで示す方向に、例えば直線LB2、直線LB3へとシフトする。」(【0043】)ことにはなり得ない。) そうすると、過去の積分区間と消費電力S(t)の挙動が近いと予想される実際の積分区間でのP(t)を計算する途中でa又はbの値を変えると、実際の積分区間での∫P(t)dtやP(tm)が、過去の積分区間で計算したそれらと近似するための根拠を失わせ得るので、積分区間の間でa又はbを変更することは、本件発明においては想定されていないと解される。 このことは、異なる積分区間(例えば、時刻t1から2t1-t0)における一次係数a'及び0次係数b'が、前記a及びbと異なる値であることとは矛盾しない。もちろん、一次係数a’及び0次係数b’は、t1~2t1-t0の積分区間で変わらずに用いられるべきものである。 なお、実際の積分区間t0~t1及び過去の積分区間t0-T~t1-Tは、「1日」に固定されるものではない(【0050】)。 オ その他の効果について 本件発明は、「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」(発明特定事項2D、6F)との発明特定事項を有する。 そして、本件明細書等には「一次関数の各係数を時間に依存する値とすることにより、様々な状況に応じて、柔軟に対応が可能となり、さらに太陽電池の発電効率の向上を実現することができる。」(【0013】)との記載がある。 そうすると、本件発明の発明特定事項2D及び6Fにより、様々な状況に応じて柔軟に対応が可能となるという効果、及び、さらに太陽電池の発電効率の向上を実現することができるという効果が奏されると認められる。 なお、このように一次係数を時間帯毎に変更する際には、前記エに示したことにより、それぞれの時間帯をそれぞれ別の積分区間とするのだと解される。 (4)本件発明の技術的意義についての小括 前記(2)エ及び(3)によれば、本件発明の技術的意義は、次のとおりと認められる。 本件発明の技術分野は、発電制御装置及びそれを用いた太陽光発電の発電制御システムである。 本件発明が解決しようとする課題は2つあり、1つは、発電電力制御の応答性が十分である場合に商用電力線への逆潮流を常に回避するという課題(課題1)であり、もう1つは、少なくとも総発電可能量(発電電力上限を積分区間で積分したもの)が従来技術よりも向上することができるという課題(課題2)である。 前記2つの課題を解決するための手段は、「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定し」(発明特定事項2B2、6D)という手段である。本件発明を具現化する際には、一次関数の一次係数及び0次係数を適切に定める必要があるが、その定め方は、本件明細書及び本件図面から明らかであるように、領域Kを作図し、領域K内に入るa及びbを選択すれば良い。 課題1及び課題2の解決という効果とは別に、「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」(発明特定事項2D、6F)という事項によって、様々な状況に応じて柔軟に対応が可能となるという効果、及び、さらに太陽電池の発電効率の向上を実現することができるという効果を奏するものである。この効果を得る際には、各時間帯は、それぞれ別の積分区間となる。 2 本件発明の技術的意義に係る請求人の主張について 本件発明の技術的意義に係る請求人の主張について、以下、検討する。 (1)2つの課題について ア 請求人は、概略、以下のように主張する。 本件発明は、商用電力線への逆潮流の回避という1つ目の課題と、太陽電池の発電効率の向上という二つ目の課題を、同時に解決しようとするものである。(手続補正書28頁) ここでいう「発電効率の向上」とは、瞬間の「電力」を高めた上で、総発電可能量(電力量)を高めることを目指すことを意味している。(請求人陳述要領書(1)6頁) 本件明細書【0039】及び【0040】の記載によれば、P(tm)がS(tm)-Z以下の値になるという束縛条件は、逆潮流を回避するための条件であり、総発電可能量を高くすることはできない。当然、瞬時の時刻tでの電力を出来る限り高くなるように、a及びbを設定しなければならないはずである。(請求人陳述要領書(2)5頁) イ 前記アの請求人の主張について検討する。 本件明細書は、発電効率を上げるためのa及びbの設定(【0034】)として、総発電可能量の増大(【0047】)を明記しており、前記1(2)イのとおり、総発電可能量を従来技術よりも増大させるためには、全ての瞬間でのP(t)が従来技術よりも増大している必要はない。 他方、本件明細書には、「時間積分を行わず特定の時刻t(例えば午前10時等)において、式6の代わりに式4を用いて図3に相当するグラフを作成してもよい。」(【0051】)との記載があり、当該記載によれば、本件発明の課題2は任意の瞬間tでP(t)が従来技術よりも増大することを排除するものではないと解されるが、本件発明の課題2を【0051】に示される課題のみに限定して解釈する理由はない。 また、前記1(2)アでも触れたとおり、P(tm)がS(tm)-Z以下の値になるという束縛条件は、発電量制御の応答性が悪いとか、MPPT制御の変動幅が大きいとか(【0040】)、そういった制御の理想と現実との乖離に起因する逆潮流を防止するものであり、制御が理想的に行われるのであれば、前記1(4)に示したとおり、発明特定事項2B2及び6Dにより、課題1及び課題2が解決されるものであって、前記束縛条件を必須とするものではない。 以上によれば、本件発明は、発明特定事項2B2及び6Dの存在により、課題1(逆潮流回避)と課題2(発電効率向上)を共に解決しているが、課題1は、全ての瞬間での逆潮流を回避するという課題であるのに対し、課題2は、総発電可能量の向上を達成することが必須ではあるが、全ての瞬間での発電電力上限を向上させることまでを要求するものではないと解される。 よって、請求人の主張は採用できない。 (2)発明特定事項2B2の変遷について ア 請求人は、概略、以下のように主張する。 本件発明の発明特定事項2B2は、出願からの手続により、以下のように遷移した。 (出願時:甲9)発電電力の上限値を消費電力の関数として出力指令値を算出し、 (特許時:甲18)前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の関数となるよう設定して出力指令値を算出し、 (別件異議後:甲22)前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、 このような出願経過からして、本件発明には、式4のように、「発電電力の上限値を消費電力の関数」とすることは、除外されていると考えられる。(手続補正書30頁26行~34頁4行) イ 前記アの請求人の主張について検討する。 本件特許の出願時は、「発電電力の上限値を消費電力の関数として」と特定しており、f(・)を任意の関数とすると、P(t)=f(S(t))が特定されていた。 特許査定時は、「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の関数となるよう設定して」(下線は強調のために付した。)と特定しており、下線を引かなかった部分は、S(t)-P(t)=f(S(t))を特定しているが、下線の部分は、P(t)を具体的にどのような数式に設定するのかは特定していない。この場合、P(t)がS(t)の一次関数として、P(t)=αS(t)+βと設定することを排除しておらず、このように設定した場合、S(t)-P(t)=(1-α)S(t)-βの関係が得られるから、「前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるように」設定されているといえる。 よって、特許査定時の請求項の記載は、発電電力の上限値P(t)を、αS(t)+βのような関数に設定することを排除していない。 このことは、別件異議後の請求項の記載についても同様である。 したがって、請求人の主張は採用できない。 (3)bが常に0の場合について ア 請求人は、概略、以下のように主張する。 b=0の場合とは、本件明細書【0032】及び【0033】における条件βの場合を指すが、当該段落に記載されているように、条件βの場合は、消費電量が多い時間帯において、発電電力が抑制されて発電効率が落ちる。 したがって、常にb=0の場合は、太陽電池の発電効率を向上させるという課題を解決できない。(手続補正書34~35頁) イ 前記アの請求人の主張について検討する。 本件発明は、課題2が解決できるように、a及びbを、本件明細書及び本件図面に記載された方法により選択するものであると解釈される(前記1(4))ので、選択の結果、bとして0が選択され続けることはあり得るが、意図的にbが常に0となるような選択を行うものではない。この点において請求人の主張は失当であるが、念のため、以下ではbが0の場合における課題2の解決について検討する。 (ア)a=0としてbを所定値に設定した場合である条件α(【0032】)は、「消費電力に対する発電電力の差分値が閾値以下になると太陽電池の発電電力を抑制する」従来技術(【0002】)と同等であり、この技術を以下では「等差制御」という。 【0033】の説明について見ると、条件αの等差制御と、条件β(b=0としてaを所定値に設定した場合、以下「等比制御」という。)とを比較した場合に、等差制御は消費電力が少ない時間帯(6~10時)で等比制御よりも発電電力が落ち、等比制御は消費電力が多い時間帯(12~14時)において発電効率が落ちることを示しているに過ぎない。 他方、本件発明の実施形態においては、例として、6~18時又は0~24時の時間帯での総発電可能量(∫P(t)dt)を問題としている(【0038】)から、消費電力が少ない時間帯及び消費電力が多い時間帯の双方を包む時間帯で発電電力上限P(t)を積算した総発電可能量を課題解決の指標としており、この実施形態においては消費電力が多い時間帯のみに限定して発電効率の多寡を論ずるのは不適切である。 そうすると、前記例(6~18時又は0~24時での総発電可能量を問題とする例)の場合は、12~14時において等比制御が等差制御(従来技術)よりも発電電力が落ちるからといって、等比制御の6~18時又は0~24時での総発電可能量が従来技術の総発電可能量よりも低いとはいえない。 (イ)そして、本件発明の実施形態において一次係数a及び0次係数bを決定するために使用される図3(c)について検討すると、直線LB1は、b=0でaを変化させた場合(【0043】)、すなわち、等比制御の場合を表すが、領域Kには直線LB1の一部が含まれており、直線LB1のうち領域Kに含まれる部分に存在する点に対応する一次係数aは、6~18時又は0~24次の時間帯での総発電可能量が、従来技術の総発電可能量TA以上であるという意味で、課題2を解決できるものである(【0046】第1文)。 (ウ)他方、消費電力が多い時間帯(12~14時)において等比制御の発電効率は従来技術である等差制御よりも不利であることがわかっている(【0033】)のだから、仮にこの時間帯での総発電可能量を問題にするならば(積分区間を12~14時とするならば)、当業者が、発電効率向上(課題2)の解決に不利となるような等比制御、すなわち、b=0に固定することを選択するとは考えられない。 それにも関わらず、等比制御が不利な消費電力が多い時間帯(12~14時)において、b=0とした場合に課題2が解決できないとする請求人の主張は、そもそも課題2の解決を放棄することを前提とした主張である。 (エ)前記(ア)~(ウ)によれば、請求人の主張は採用できない。 (4)直線LB2及びLB3について ア 請求人は、概略、以下のように主張する。 請求人は、簡易な実例でシミュレーションした結果、実際には、直線LB2及びLB3のように直線的な変化とはならないことが分かった。(手続補正書40頁) イ 前記アの請求人の主張について検討する。 ある瞬間tにおける消費電力S(t)は、その瞬間tにおいて負荷が消費した電力として、唯一の値に定まる。S(t0)は、時刻t0で負荷の消費電力を測定することにより唯一に定まり、S(t1)は、時刻t1で負荷の消費電力を測定することにより唯一に定まる。その他の時刻においても同様である。よって、積分区間t0~t1における∫S(t)dtは、その積分区間に応じた定数Axとなり、積分区間t0~t1におけるS(tm)は、その積分区間に応じた定数Ayとなる。 積分区間t0~t1を固定し、a及びbを変数とすると、それぞれのa及びbに対応して、XY平面上に1点(∫P(t)dt,P(tm))が得られる。 前記点のX座標は、式[4](【0036】)により、 ∫P(t)dt = ∫((1-a)S(t)-b)dt =-a∫S(t)dt+∫S(t)dt-b∫dt =-Axa+Ax-(t1-t0)b となる。 前記点のY座標は、 P(tm)=(1-a)S(tm)-b = -Aya+Ay-b となる。 bを固定し、aをΔaだけ増加させると、前記点は、X軸方向に-AxΔa動き、Y軸方向に-AyΔaだけ動く。 よって、bを固定し、aを動かしたときの点(∫P(t)dt,P(tm))の軌跡は、傾きがAy/Axの直線となり、該直線の傾きはbに依存しない。 シミュレーションの結果はともかく、上述によれば数学的にはLB2もLB3も共に同じ傾きの直線となるのだから、請求人の主張は採用できない。 (5)直線Lmについて ア 請求人は、概略、以下のように主張する。 直線LmはPCS定格を意味するから、図3(c)の点TB1で総発電可能量が大きくなるのは当たり前のことである。すなわち、点TB1で総発電可能量が最大となっているように見えるのは、一次関数に依存するものではない。よって、図3(c)のみを以て、最適なa、bを決定することはできない。 逆潮流が最も問題となるのは、消費電力がPCS定格以下の場合であって、日照条件が良く、パワーコンディショナが消費電力の一次関数を発電電力の上限値として制御されているときに、消費電力が急激に低下した場合である。このとき、発電電力の上限値の制御が消費電力の変化に追いつくことができずに逆潮流が発生してしまう場合がある。上記事象が発生しないためにどのようにa、bを設定するかを検討するためには、本件図3(c)の直線Lmを外した上での検討が必要になるのである。 消費電力の時間変動が大きい時刻や、日射量が最大となる事項をtmとして、図3(c)に相当するグラフを作成したところで、どのようにして、一次係数及び0次係数を決定すればよいのか、当業者といえども理解することは不可能である。 (手続補正書41頁4行~48頁16行) イ 前記アの請求人の主張について検討する。 図3(c)における直線Lmは、P(tm)=Lm、すなわち、発電電力上限P(t)の最大値がLmであることを示すに過ぎない。総発電可能量はP(tm)によって定まるものではないから、P(tm)=Lmである点で総発電可能量∫P(t)dtが最大になることは保証されない。(点TB1が総発電可能量を最大とする点であるのは、点TB1が領域Kの中で最も右側に位置する点であるからである。総発電可能量は図3(c)の横軸で示されている。) よって、「直線LmはPCS定格を意味するから、図3(c)の点TB1で総発電可能量が大きくなるのは当たり前のことである」との請求人の主張は、誤解によるものである。 そして、a及びbを決定するに際しては、前記1(4)のように、領域Kを作図して領域K内に入るa及びbを選択すれば良いのであって、そのようなa及びbは、必ずしも総発電可能量を最大とするものではないが、課題2(発電効率向上)を解決するものである。 また、請求人は、発電電力の上限値の制御が消費電力の変化に追いつくことができない事象について論じているが、前記1(2)アに示したとおり、本件発明における課題1(逆潮流回避)は、発電電力制御の応答性が十分である場合を想定しているため、請求人の主張は、本件発明を逸脱したものであり、失当である。 また、領域Kが作図可能なことは、前記1(3)ウに示したとおりであるから、本件発明において一次係数a及び0次係数bをどのように設定するのかは、明確に理解できる。 以上によれば、請求人の主張は採用できない。 (6)図4について ア 請求人は、概略、以下のように主張する。 本件図4についての本件明細書【0055】及び【0056】の記載は、説明を簡単にするために、0次係数bをゼロとして、一次係数aを変化させたときに、どのように、発電電力の上限値が変化するかを説明するものであり、これは、一次係数(1-a)が小さくなる(=一次係数aが大きくなる)と、発電電力の上限値の変動が緩やかになることを意味していると想像する。 しかしながら、一次係数(1-a)を小さくすれば、発電電力の上限値の変動が緩やかになるとしたところで、本件課題であるところの逆潮流を回避しつつ発電効率を高めるということと如何なる技術的関係があるのか、本件明細書には、何ら説明がされていない。 被請求人は図4の記載を根拠に、本件発明には0次係数bが常に0の場合も含まれると主張したいのであろうが、図4は、発電電力の応答性が緩和されるという効果を説明するためのものであり、逆潮流を回避しつつ発電効率を向上させるという課題の解決手段を示したものではない。 (手続補正書53頁19行~57頁8行) イ 前記アの請求人の主張について検討する。 請求人の主張は判然としないが、本件図4並びに本件明細書【0055】及び【0056】の記載は、「本発明の別の効果」として「PCS2による制御すべき発電電力の応答性が緩和されるという効果もある。」(【0055】)ことを説明しているに過ぎない。 そうすると、図4、【0055】及び【0056】の説明は、発電電力の応答性の緩和という効果のみを説明するにとどまり、課題1(逆潮流回避)及び課題2(発電電力向上)について説明するものではなく、課題1及び課題2の解決について不明瞭にするような説明もない。 以上によれば、前記1で認定した本件発明の技術的意義は、図4、【0055】及び【0056】の説明によって左右されないから、請求人の主張は採用できない。 3 別件訂正についての判断 無効理由1~無効理由3について判断するために、別件訂正の内容、別件訂正の目的、別件訂正による特許請求の範囲の拡張又は変更の有無、及び、別件訂正による新規事項の追加の有無を検討する。 (1)別件訂正の内容 別件訂正は、請求項2及び6について訂正するものである。 別件訂正前の請求項2及び6は、以下のアに示すとおりであり、別件訂正を構成する訂正事項は、以下のイのとおりである。 ア 別件訂正前の請求項2及び6 別件訂正前の請求項2及び6(別件異議で訂正された請求項2及び6)は、以下のとおりである。 【請求項2】 太陽電池の発電電力を制御するパワーコンデショナと、負荷に接続された受変電部と、 前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンデショナの出力を制御する発電制御装置と、を備え、 前記発電制御装置は、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、 前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する ことを特徴とする発電制御システム。 【請求項6】 太陽電池の発電電力及び負荷の消費電力を取得すると共に、 前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し、 前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する発電制御装置。 イ 別件訂正を構成する訂正事項 前記ア及び前記第3によれば、別件訂正は、以下の訂正事項1-1から訂正事項2-5からなると認められる。なお、下線は訂正部分を示すために当審で付した。 〈訂正事項1-1〉本件訂正前の請求項2の「前記パワーコンディショナの出力を制御する発電制御装置」を、「前記パワーコンディショナの出力の上限値を制御する発電制御装置」に訂正する。 〈訂正事項1-2〉本件訂正前の請求項2の「発電制御装置と、を備え」を、「1つの発電制御装置と、を備え」に訂正する。 〈訂正事項1-3〉本件訂正前の請求項2の「前記発電制御装置は、」を、「前記発電制御装置は少なくとも演算処理部及び計時部を備え、」に訂正する。 〈訂正事項1-4〉本件訂正前の請求項2の「逆潮流を回避する」を、「逆潮流を回避し、前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」に訂正する。 〈訂正事項2-1〉本件訂正前の請求項6の冒頭に、「太陽電池の発電電力の上限値を制御するパワーコンディショナに接続される1つの発電制御装置であって、前記発電制御装置は少なくとも演算処理部及び計時部を備え、」を追加する。 〈訂正事項2-2〉本件訂正前の請求項6の「太陽電池の発電電力及び負荷の消費電力を取得する」を、「太陽電池の発電電力と負荷の消費電力とを取得する」に訂正する。 〈訂正事項2-3〉本件訂正前の請求項6の「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し」を、「前記演算処理部を用いて前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し」に訂正する。 〈訂正事項2-4〉本件訂正前の請求項6の「前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避」を、「前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避」に訂正する。 〈訂正事項2-5〉本件訂正前の請求項6の「逆潮流を回避する」を、「逆潮流を回避し、前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能であることを特徴とする」に訂正する。 (2)訂正事項1-1についての判断 別件訂正前の請求項2では、発電制御装置の制御対象が「出力」であったが、本件明細書の「制御装置6は、…(中略)…発電電力の上限値を設定する。」(【0027】)との記載、及び、「制御装置6による太陽電池1の発電電力の上限値(最大発電許容値)の設定方法について説明する。」(【0031】)との記載を参照すると、発電制御装置の制御対象が「発電電力の上限値」であると理解できるため、請求項2で発電制御装置の制御対象として特定された「出力」は、文字通りに「出力」を意味するのか、それとも、本件明細書に記載された「発電電力の上限値」すなわち「出力の上限値」であるのかが不明瞭であった。 別件訂正後の請求項2は、発電制御装置の制御対象が「出力の上限値」であるとされ、前記不明瞭さは解消した。 よって、訂正事項1-1に関する別件訂正の目的は、特許法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当する。 また、訂正事項1-1に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。よって、訂正事項1-1に関する別件訂正は、特許法126条6項の要件を満たす。 そして、発電制御装置が「出力の上限値」を制御することは、前述のとおり本件明細書(【0027】、【0031】)に記載されたとおりであるから、訂正事項1-1に関する別件訂正は、訂正前明細書等に記載された範囲内においてするものであり、特許法126条5項の要件を満たす。 (3)訂正事項1-2についての判断 訂正事項1-2は、別件訂正前の請求項2に係る発明を特定する「発電制御装置」について、発電制御装置の数が「1つ」であることを限定するものである。 よって、訂正事項1-2に関する別件訂正の目的は、特許法126条1項1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。 また、訂正事項1-2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。よって、訂正事項1-2に関する別件訂正は、特許法126条6項の要件を満たす。 そして、発電制御装置が「1つ」であることは、本件図面の図1に記載されている(1つの制御装置6が記載されている)から、訂正事項1-2に関する別件訂正は、訂正前明細書等に記載された範囲内においてするものであり、特許法126条5項の要件を満たす。 (4)訂正事項1-3についての判断 訂正事項1-3は、別件訂正前の請求項2に係る発明を特定する「発電制御装置」について、発電制御装置が「少なくとも演算処理部及び計時部を備え」ることを限定するものである。 よって、訂正事項1-3に関する別件訂正の目的は、特許法126条1項1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。 また、訂正事項1-3に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。よって、訂正事項1-3に関する別件訂正は、特許法126条6項の要件を満たす。 そして、発電制御装置が「演算処理部及び計時部を備え」ることは、本件明細書の「制御装置6は、さらにマイコン等の演算処理部、記憶装置及び計時部を備える。」(【0027】)に記載されたとおりであるから、訂正事項1-3に関する別件訂正は、訂正前明細書等に記載された範囲内においてするものであり、特許法126条5項の要件を満たす。 (5)訂正事項1-4についての判断 訂正事項1-4は、別件訂正前の請求項2に係る発明を特定する「一次関数」について、「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」ことを限定するものであるが、別件訂正によって「一次関数」の概念が拡張されているか否かについて争いがあるため、以下のアで、別件訂正前後の「一次関数」の意味を検討して訂正事項1-4に係る別件訂正の目的と、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無とを判断し、以下のイで新規事項追加の有無を判断する。 ア 訂正事項1-4に係る別件訂正の目的等 以下の(ア)では別件訂正前の「一次関数」の意味を認定し、次いで以下の(イ)では別件訂正後の「一次関数」の意味を認定し、最後に以下の(ウ)において、別件訂正前の「一次関数」の意味と別件訂正後の「一次関数」の意味との比較に基づいて、訂正事項1-4に係る別件訂正の目的と、該訂正が特許請求の範囲の拡張又は変更に該当するか否かを判断する。 (ア)訂正前明細書等における「一次関数」の意味 a 別件訂正前の特許請求の範囲の記載について 別件訂正前の特許請求の範囲の請求項5(別件訂正は請求項5の記載を訂正するものではないので、前記第3に示した請求項5の記載どおりである。)には、「一次関数の一次係数と0次係数は、時間に依存する」との記載があり、請求項5は請求項2を引用している。そうすると、請求項2に記載された「一次関数」は、請求項5に記載の「一次関数の一次係数と0次係数は、時間に依存する」ような一次関数をも包含していると解するのが自然である。 請求項6の「一次関数」も同様に解するのが自然である。 b 本件明細書の記載について 本件明細書(別件訂正により訂正されていないので、別件訂正の前後で記載は同一である。)には「本明細書において、一次関数の一次の項の係数を一次係数、0次の項の係数を0次係数と称す。」(【0016】)との記載があり、該記載によって本件明細書における「一次関数」と、「一次係数」及び「0次係数」との関係が定義されている。 そして、本件明細書では実施形態として、消費電力S(t)と発電電力上限P(t)との差分S(t)-P(t)が、S(t)の一次式aS(t)+bとなるように設定すること(【0035】、【0036】)が説明されており、本件明細書における「一次関数」は、aS(t)+bを含むものと解される。 その上で、本件明細書の「それぞれの時間帯毎に一次係数a、0次係数bの値を変えてもよい。」(【0050】)との記載及び「さらに一次係数a、0次係数bは、季節、時刻に依存して変更してもよい。」(【0060】)との記載から明らかなように、本件明細書における「一次係数」及び「0次係数」は、時間とともに変化する態様も想定されている。よって、【0016】の定義によれば、本件明細書において使用される「一次関数」という語は、その一次係数a及び0次係数bが時間とともに変化する関数aS(t)+bを含むと解される。 そうすると、請求項2及び6に記載された「一次関数」も、本件明細書から理解される「一次関数」と同様の意味、すなわち、その一次係数及び0次係数が時間とともに変化する一次関数を含むものと解釈するのが自然である。 c 数学的な用語としての「一次関数」について 「一次関数」とは、「次数が1以下の多項式(整式)で表される関数」(甲24、岩波数学入門辞典)である。 そして、多項式の次数は「その多項式を構成する単項式のうち、最も高い次数を持つ項の次数で示す」もの(乙8、ブリタニカ国際大百科事典)であり、「3x3y+2x2y-4xy+y2は,項3x3yの次数が最も高いから,4次の多項式となる。しかし,xだけについては3次,yだけについては2次の多項式である。」(乙8)とされる。甲24には「一次関数」は「n変数のときは,a1x1+…+anxn+b(a1,…,an,bは定数)の形の多項式で定義される関数」である旨が記載されているが、これは、n変数の全ての変数を考慮したときの定義と解され、甲24には、例えばx1だけについての一次関数や、xnだけについての一次関数の定義については言及されていない。 そうすると、甲24及び乙8によれば、例えば3つの変数x,y,zの多項式xy+zで表される関数は、3つの変数全てを考慮した場合は二次関数となるが、yだけについては一次関数となることが理解される。 他方、別件訂正前の請求項2及び6の「一次関数」は、「消費電力の一次関数」である(前記(1)ア)から、消費電力をS(t)としたとき、一次関数がaS(t)+bの形になっていれば、a及びbが変数であるか否かによらず、数学的に「消費電力の一次関数」ということができる。 d 別件訂正前の「一次関数」の意味についての小括 前記a~cによれば、訂正前明細書等の請求項2及び6の「一次関数」は、数学的には消費電力の「一次関数」、すなわち、消費電力だけについての一次関数を意味し、その一次係数及び0次係数が変数であるものをも包含すると解釈される。 (イ)本件明細書等における「一次関数」の意味 別件訂正は請求項5の記載及び明細書を訂正するものではない。そして、別件訂正後の請求項2は請求項5を引用している。そうすると、前記(ア)と同様に、本件明細書等の請求項2及び6の「一次関数」は、消費電力だけについての一次関数を意味し、その一次係数及び0次係数が変数であるものをも包含すると解釈される点で、別件訂正前と変わることはない。 他方、別件訂正後の請求項2及び6には、「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」(発明特定事項2D、6F)との記載があることから、請求項2及び6の「一次係数」は、「時間帯毎に変更可能」であることが限定されている。つまり、別件訂正は、請求項2及び6の「一次係数」について、ある時間帯の「一次係数」は、その時間帯では一定であるが、異なる時間帯の「一次係数」とは異なり得るという限定を加えている。 よって、本件明細書等における「一次関数」は、消費電力だけについての一次関数を意味し、その一次係数及び0次係数が変数であるものをも包含し、そして、その一次係数は、一つの時間帯において一定で、異なる時間帯の一次係数とは異なり得るもの、と解釈される。 (ウ)訂正事項1-4の目的及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無 前記(ア)及び(イ)のとおりであるから、訂正事項1-4に係る別件訂正は、「一次関数」の「一次係数」について、その一次係数が、一つの時間帯において一定で、異なる時間帯の一次係数とは異なり得るとの限定を加えるにとどまると解され、別件訂正によって、別件訂正前の「一次関数」には含まれなかった関数が包含されることはないと認められる。 したがって、訂正事項1-4に関する別件訂正の目的は、特許法126条1項1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。 また、訂正事項1-4に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。よって、訂正事項1-4に関する別件訂正は、特許法126条6項の要件を満たす。 イ 訂正事項1-4に係る別件訂正の新規事項追加の有無 「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」ることは、本件明細書の「それぞれの時間帯毎に一次係数a、0次係数bの値を変えてもよい。」(【0050】)に記載されたとおりであるから、訂正事項1-4に関する別件訂正は、訂正前明細書等に記載された範囲内においてするものであり、特許法126条5項の要件を満たす。 (6)訂正事項2-1についての判断 訂正事項2-1は、別件訂正前の請求項6に係る発明を特定する「発電制御装置」について、発電制御装置が「太陽電池の発電出力の上限値を制御する」こと、発電制御装置が「パワーコンディショナに接続される」こと、発電制御装置が「1つ」であること、及び、発電制御装置が「演算処理部及び計時部を備え」ることを限定するものである。 よって、訂正事項2-1に関する別件訂正の目的は、特許法126条1項1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。 また、訂正事項2-1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。よって、訂正事項2-1に関する別件訂正は、特許法126条6項の要件を満たす。 そして、発電制御装置が「太陽電池の発電出力の上限値を制御する」ことは、本件明細書の【0027】に記載され、発電制御装置が「パワーコンディショナに接続される」こと及び発電制御装置が「1つ」であることは、本件図面の図1に記載され、発電制御装置が「演算処理部及び計時部を備え」ることは、本件明細書の【0027】に記載されたとおりであるから、訂正事項2-1に関する別件訂正は、訂正前明細書等に記載された範囲内においてするものであり、特許法126条5項の要件を満たす。 (7)訂正事項2-2についての判断 別件訂正前の請求項6の「太陽電池の発電電力及び負荷の消費電力を取得する」との文言は、「及び」という接続詞によって並列に列挙される語が、文法上、「発電電力」と「負荷」であるとも、「発電電力」と「消費電力」であるとも解釈できる曖昧さがあったが、訂正事項2-2に関する別件訂正によって前記曖昧さがなくなり、文法上、並列に列挙される語が「発電電力」と「消費電力」であることが明瞭となるので、訂正事項2-2に関する別件訂正の目的は、特許法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当する。 また、訂正事項2-2に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明をしたに過ぎないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。よって、訂正事項2-2に関する別件訂正は、特許法126条6項の要件を満たす。 そして、「太陽電池の発電電力と負荷の消費電力とを取得する」ことは、本件図面の図1に記載されたとおりである(発電力と消費電力が計測されている)から、訂正事項2-2に関する別件訂正は、訂正前明細書等に記載された範囲内においてするものであり、特許法126条5項の要件を満たす。 (8)訂正事項2-3についての判断 訂正事項2-3は、別件訂正前の請求項6に係る発明を特定する「出力指令値を算出」する処理について、当該処理を「演算処理部を用いて」行うことを限定するものである。 よって、訂正事項2-3に関する別件訂正の目的は、特許法126条1項1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。 また、訂正事項2-3に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。よって、訂正事項2-3に関する別件訂正は、特許法126条6項の要件を満たす。 そして、発電制御装置が「演算処理部を用いて」出力指令値を算出することは、本件明細書の「制御装置6は、…(中略)…演算処理部において、得られた消費電力の値を用い、後述する関数(一次関数)によって太陽電池1の発電電力の上限値を設定する。さらに制御装置6は、発電電力の上限値を太陽電池1の定格電力で除して出力指令値(=(発電電力の上限値)/(定格電力)[%])を算出する。」(【0027】)との記載から明らかな事項であるから、訂正事項2-3に関する別件訂正は、訂正前明細書等に記載された範囲内においてするものであり、特許法126条5項の要件を満たす。 (9)訂正事項2-4についての判断 訂正事項2-4は、別件訂正前の請求項6に係る発明を特定する「前記発電電力が前記上限値以下となるように制御する」との処理について、当該処理を「前記出力指令値に基づいて」行うことを限定するものである。 よって、訂正事項2-4に関する別件訂正の目的は、特許法126条1項1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。 また、訂正事項2-4に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。よって、訂正事項2-4に関する別件訂正は、特許法126条6項の要件を満たす。 そして、発電制御装置が「前記出力指令値に基づいて」発電電力が上限値以下となるように制御することは、本件明細書の「出力指令値に従って、太陽電池1の発電電力が上限値以下となるように制御する。」(【0027】)との記載のとおりであるから、訂正事項2-4に関する別件訂正は、訂正前明細書等に記載された範囲内においてするものであり、特許法126条5項の要件を満たす。 (10)訂正事項2-5についての判断 訂正事項2-5は、訂正事項1-4と同内容であるから、前記(5)と同様である。 (11)別件訂正についての小括 前記(1)~(10)のとおりであるから、別件訂正の目的は特許法126条1項1号及び3号に該当し、別件訂正は同条5項及び6項の要件を満たす。 4 別件訂正に係る請求人の主張について 別件訂正についての請求人の主張について、以下、検討する。 (1)「一次関数」の概念の拡張について ア 請求人は、概略、以下のように主張する。 別件訂正前においては「前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となる」と特定されていたのであるから、一次関数の変数は消費電力であったが、別件訂正後は「一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」とされ、一次関数の一次係数が時間と共に変化するという内容に訂正されている。すなわち、別件訂正により、一次関数において変化する変数は、消費電力及び一次係数となり、消費電力及び一次係数は、時間と共に変化するものであるから、結局のところ、一次関数の変数が時間tということになっている。変数が時間tであり、時間tによって、消費電力及び一次係数が変化するとなると、もはや、そのような関数は、数学的には、消費電力の一次関数とはいえなくなる。(手続補正書64~65頁) 一次係数aが所定の時間帯で固定されていることはあるものの、一日を通して観た場合には、時間帯によって変動しているとするならば、一次係数aはtに従属する変数となり、消費電力S(t)もtに従属する変数となるのであるから、aS(t)+bはS(t)の一次関数ではなくなる。(請求人陳述要領書(1)10頁) たとえば、消費電力が100kWと高い状況で、消費電力が70kWに急激変動する可能性を考慮せずに、aを0.8として設定してしまうと、発電電力の上限値P(t)が80kWとなるので、逆潮流が発生してしまうが、他方、消費電力が10kWと低い状況では、消費電力が急激に変動する可能性が低いので、aを0.8としてP(t)を8kWとしても、逆潮流が発生しない。このように、aの設定には、消費電力のS(t)も考慮されている。本件明細書において「消費電力を取得し、…(略)…得られた消費電力の値を用い、後述する関数(一次関数)によって太陽電池1の発電電力の上限値を設定する。」(【0027】)、「一次係数a及び0次係数bを実際の消費電力…(略)…にあわせて設定することにより、発電効率を上げることができる。」(【0034】)と記載されていることから、その瞬間の実際の消費電力S(t)に合わせて一次係数aが決められるようにしても良いし、【0052】~【0054】に記載されているように、過去の実績からaが決められるようにしても良い。このように、一次係数aは、現在の消費電力S(t)や過去の実績の消費電力S(t)に基づいて決められた値であることから、aはS(t)に従属する変数となっており、aS(t)+bは消費電力S(t)の一次関数であるとはいえない。(請求人陳述要領書(2)6~8頁、請求人上申書(2)2~3頁) イ 前記アの請求人の主張について検討する。 (ア)請求人の主張は、別件訂正前の請求項2及び6の「一次関数」について、その一次係数が時間と共に変化しないものと解釈することを前提としていると認められる。 しかしながら、前記3(5)ア(ア)のとおり、別件訂正前の請求項2及び6の「一次関数」の「一次係数」は、時間と共に変化するものをも包含していると解すべきである。 よって、請求人の主張は、前提において失当である。 (イ)別件訂正後の請求項2及び6の「一次関数」については、S(t)がtの関数であることは事実であるし、aが「時間帯毎に変化し得る」からaがtに従属することも事実であるが、これらの事実は、aS(t)+bがS(t)の一次関数であることを左右しない。 S(t)及びaの双方がtの関数であるからといっても、aがS(t)の関数として表せることにはならないし、仮に、aS(t)+bがtのn次関数であったとしても、aS(t)+bがS(t)の一次関数であることには変わりないから、aS(t)+bが消費電力S(t)の一次関数ではないということはできない。 (ウ)加えて、S(t)は時刻tにおける消費電力である(【0035】)が、時刻tにおいてaS(t)+bを計算する際に用いる一次係数a(及び0次係数b)は、時刻tにおけるS(t)の関数とはならない。 一次係数aを決定するためには、前記1(3)ウに示したとおり、過去の積分区間を用いる必要がある。したがって、過去の積分区間における総発電可能量∫P(t)dt及びP(tm)を用いて決定される一次係数aは、現在時刻tよりも過去の値により決定される値であり、現在時刻tにおけるS(t)の関数として表すことができない。よって、aS(t)+bにおけるaはS(t)の関数とはならないから、aS(t)+bは、数学的な意味においてもS(t)の一次関数である。 (エ)さらに、前記1(3)エに示したとおり、本件発明は、1つの積分区間において、a及びbを変えることは想定されていない。a又はbが変わるのは、積分区間の境界においてのみである。 そうすると、課題2の解決に係る総発電可能量を計算する積分区間においては、a及びbは一定の値であるから、積分区間においては、aS(t)+bは、紛れもなくS(t)の一次関数である。 (オ)前記(ア)~(エ)のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。 (2)一次係数aのみを時間帯毎に変化させることについて ア 請求人は、概略、以下のように主張する。 本件明細書においては、一次関数の一次係数a及び0次係数bが時間帯毎に変化することに関する記載はあるものの(【0053】、【0060】)、一次係数aのみを時間帯毎に変化させることによって、逆潮流の回避及び発電効率の向上という課題を解決できるとの記載は、存在しない。 よって、別件訂正は新規事項を追加するものである。(手続補正書65頁) イ 前記アの請求人の主張について検討する。 まず、別件訂正後に付加された請求項2及び6の「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」との限定は、0次係数について何ら限定しておらず、0次係数を固定していると解する理由はない。加えて、本件明細書【0053】は、「2つのパラメータ(一次係数a及び0次係数b)を用いることで…(中略)…季節、時刻に応じて、様々な条件に対応することができる。」と記載しているに過ぎず、bを固定してはならないとは記載していない。また、【0060】は、「一次係数a、0次係数bは、季節、時刻に依存して変更してもよい。」と記載しているに過ぎず、bを固定してはならないとは記載していない。むしろ、「一次係数a、0次係数bの値を…(中略)…柔軟に設定する」(【0060】、下線は強調のために当審で付した。)との記載によれば、一次係数aも0次係数bも柔軟に設定すべきものだから、0次係数bを固定した上で複数の一次係数aを選択するような態様を除外することは想定されていないと解される。よって、「一次係数aのみを時間帯毎に変化させる」ことを前提とした請求人の主張は、前提において失当である。 0次係数bが固定されている場合について検討しても、以下のとおりである。 本件発明の課題解決手段は、前記1(4)に示したとおり、「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定」することであり、これによって、課題1(逆潮流回避)及び課題2(発電効率向上)の双方の課題を解決できると認識できる。そして、この課題解決手段は、別件訂正前の特許請求の範囲にも記載されていたものである。そして、一次係数a及び0次係数bの一方ではなく双方を変更しない限り課題1又は課題2が解決できない旨は、別件明細書等及び本件明細書等に記載がない。そうすると、0次係数bが固定された状態で一次係数aのみを変化させることは、本件発明の課題解決を可能とするものである。 以上によれば、請求人の主張は採用できない。 (3)いわゆる限定的減縮について 請求人は、別件訂正について、発明特定事項の直列的付加でもなく、上位概念から下位概念への変更に関するものでもない旨の、いわゆる限定的減縮違反についての主張をしていた(手続補正書64~65頁、請求人陳述要領書(1)8頁)が、該主張は撤回された(請求人陳述要領書(2)8~9頁)。 5 無効理由1~無効理由3についての小括 前記3(11)及び4のとおりであるから、別件訂正に係る無効理由1~無効理由3には、いずれも理由がない。 6 サポート要件についての判断 進歩性の有無(無効理由4-1~無効理由5-5)についての判断をする前に、本件発明が発明の詳細な説明に記載したものであるか否か(無効理由6)について判断する。 特許請求の範囲の記載が、いわゆるサポート要件を定めた特許法36条6項1号に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 (1)発明の詳細な説明の記載の有無 本件発明の「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定し」との事項(発明特定事項2B2、6D)は、本件明細書の発明の詳細な説明の「P(t)は、S(t)とP(t)との差分が、S(t)の一次式となるように設定する」(【0036】)との記載のとおりである。 そして、本件発明のその他の発明特定事項は、全て、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されている。 したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明である。 (2)課題解決の認識の可否 前記1(4)のとおり、本件明細書等によれば、「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定し」(発明特定事項2B2、6D)との事項により課題1及び課題2が解決できることが認識できる。 そうすると、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるといえる。 (3)サポート要件について小括 前記(1)及び(2)のとおりであるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであり、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項1号の要件に適合する。 7 サポート要件に係る請求人の主張について サポート要件に係る請求人の主張について、以下、検討する。 (1)0次係数が常にゼロの場合について ア 請求人は、概略、以下のように主張する。 本件発明2及び6の「一次関数」において、0次係数が常にゼロの場合も含まれるのであれば、その場合は、本件明細書に記載された「条件β」(【0032】、【0033】)に該当し、消費電力が多い時間帯においては、条件αと比較して発電効率が落ちる。 そして、本件明細書の発明の詳細な説明の他の部分を見ても、0次係数をゼロにした場合に、「太陽電池の発電効率を向上させる」という課題2を解決できるということに関して、一切記載も示唆もない。 よって、0次係数が常に0である場合も本件発明に含まれるとすると、本件発明は、課題2を解決できないのであるから、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項1号の要件を満たしていない。(手続補正書130~131頁) イ 前記アの請求人の主張について検討する。 前記2(3)と同様の理由により、請求人の主張は採用できない。 (2)一次係数及び0次係数の決定について ア 請求人は、概略、以下のように主張する。 本件の発明の詳細な説明に「発電電力上限値を以下に説明するよう一次関数式により算出し、一次係数a及び0次係数bを実際の消費電力、発電性能にあわせて設定することにより、発電効率を上げることができる。」(【0034】)と記載されている一方、請求項2及び請求項6に記載の一次関数においては、一次係数及0次係数がどのように決定付けられるのか、その設定方法については何ら記載されていない。 そして、本件明細書の発明の詳細な説明において、一次係数及び0次係数をどのような値にしたとしても、「太陽電池の発電効率を向上させる」という課題2を解決することが可能であるということに関しては、記載も示唆も存在せず、そのような技術常識も存在しない。 よって、一次係数及び0次係数がどのように決定付けられるのか、その設定方法について特許請求の範囲で言及しない限り、課題2を解決することができないわけであるから、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項1号の要件を満たしていない。(手続補正書131~132頁) 合議体の暫定的見解によると、課題2は、1日の総発電可能量が従来の制御法以上になることを包含しているとしておきながら、一次係数aは所定の時間において固定されているとか、0次係数bが0に固定されて瞬時の発電電力が従来の制御法よりも落ちる場合があるものの、1日の総発電可能量が従来の制御法のものよりも大きくなるようなaが存在するなどとして、aが1日を通して固定されずに、変更していくことを想定してしまっており、全体的に矛盾している。(請求人陳述要領書(1)9頁) 一次係数aが、ある所定の時間帯での固定された定数であると考えた場合、その固定された時間帯の一次係数aを用いただけで、1日を通じた総発電可能量が従来の制御法以上となることについては、本件明細書には記載されていない。(請求人陳述要領書(1)10頁(2)) 合議体の暫定的見解では、一次係数aが固定されている時間帯のみに着目して本件発明の要旨を理解しているといえるが、一定の時間帯のみに着目し、他の時間帯においては一次係数aを特定しないというのであれば、その一定の時間帯のみ発電可能量が高くなるだけであり、全ての時間帯で発電可能量を高くするという課題を解決できるわけではない。(請求人陳述要領書(2)9~10頁) イ 前記アの請求人の主張について検討する。 まず、本件発明は一次係数a及び0次係数bをどのような値にしたとしても課題2(発電効率向上)という課題を解決できるなどとは、被請求人も主張していないし、合議体もそのような見解を示したことはない。 また、一次係数aを一定の時間帯で固定し、他の時間帯においては一次係数aを特定しないなどとは、被請求人も主張していないし、合議体もそのような見解を示したことはない。 本件発明が課題1(逆潮流回避)及び課題2(発電効率向上)を解決し得ることは、前記1(4)に示したとおりであり、請求人による本件発明の技術的意義の解釈には誤解がある。 したがって、請求人の主張は採用できない。 (3)請求項4について ア 請求人は、請求項4ついて、概略、以下のように主張する。 請求項4において、「前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の0次係数は、前記蓄電池の蓄電可能量に依存する」と特定しているだけでは、課題を解決することができない。 0次係数を蓄電池の蓄電可能量に依存させることで、如何なる技術的根拠で、課題2(発電効率向上)を解決することができるのか、発明の詳細な説明に記載がなされていない。 また、満充電状態になれば、余剰分の電力が逆潮流してしまう可能性があり、0次係数を適宜変更していかない限り、課題1(逆潮流回避)さえ解決することができない。(手続補正書132~133頁) イ 前記アの請求人の主張について検討する。 課題1に関し、蓄電池の蓄電のために使用される電力と0次係数bとの関係については、前記1(3)アに示したとおりである。すなわち、蓄電のために使用される電力をpbとすると、b≧-pbであれば逆潮流が回避される。 なお、発電電力上限P(t)を積分して総発電可能量を求める期間において、蓄電池が満充電となるか否かは、当該期間の開始時における蓄電池の蓄電量と充電器の性能とにより事前にわかることであり、満充電になることが予想される場合にはbを0以上とすれば良いことは自明であって、0次係数を瞬時のpbの値に厳密に追従させる必要はない。 そして、0次関数bを蓄電池の蓄電可能量に依存させることは、課題2の解決に必須ではない。課題2は、発明特定事項2B2及び6Dにより、解決される(前記1(4))。 以上によれば、請求人の主張は採用できない。 (4)請求項5について ア 請求人は、請求項5について、概略、以下のように主張する。 請求項5において「前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の一次係数と0次係数は、時間に依存する」と発明を特定しているだけでは、課題2(発電効率向上)を解決することができない。(手続補正書133頁) イ 前記アの請求人の主張について検討するに、課題2の解決は発明特定事項2B2及び6Dによりなされるものであり(前記1(4))、「前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の一次係数と0次係数は、時間に依存する」こととは無関係である。 よって、請求人の主張は採用できない。 8 無効理由6についての小括 前記6及び7のとおりであるから、サポート要件に係る無効理由6には、理由がない。 9 明確性要件についての判断 進歩性の有無(無効理由4-1~無効理由5-5)についての判断をする前に、本件発明が明確であるか否か(無効理由7)について判断する。 本件発明の発明特定事項2B2及び6Dは、別件訂正により訂正されていないため、当該発明特定事項における「消費電力の一次関数」の意味は、前記3(5)ア(ア)及び前記3(5)ア(イ)と同様に、一次係数と0次係数が時間に依存するような一次関数を包含していると解される。 また、別件訂正で追加された「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」(発明特定事項2D、6F)における「時間帯毎に変更可能」の意味は、前記1(3)エの理解によれば、一次係数は各時間帯において一定であるが、異なる時間帯における一次係数は異なり得ることを意味していると解される。 その他の発明特定事項はその記載から明確であるから、本件発明は明確であり、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項2号の要件に適合する。 10 明確性要件に係る請求人の主張について 明確性要件に係る請求人の主張について、以下、検討する。 (1)「一次関数」の明確性について ア 請求人は、概略、以下のように主張する。 請求項2では「消費電力の一次関数」と特定されているから、一次関数の変数は消費電力と解される。 しかし、請求項5では「一次関数の一次係数と0次係数は、時間に依存する」と特定されており、一次係数及び0次係数が時間と共に変化する変数となり、消費電力が時間と共に変化することから考えると、一次関数の変数は、時間ということになる。 したがって、請求項5の記載によって、請求項2の記載によって特定される発明が不明確となる。(手続補正書134頁) 発明の課題との関係においては、一日を通しての全ての時間帯でaを考慮しなければならないので、一次係数aも消費電力S(t)も共にtに依存する変数であるから、aS(t)+bの次数は様々となり、数学的に厳密な意味で一次関数となるとは限らない。このように解釈が生じる余地があること自体、本件発明が明確でないことの証左である。(請求人陳述要領書(1)7、8、11頁) イ 前記アの請求人の主張について検討する。 一次係数a及び消費電力S(t)が共に時間tに依存するとしても、aはS(t)に依存するものではなく、aS(t)+bは数学的な意味においてもS(t)の一次関数である(前記4(1)イ(イ)及び(ウ))。 したがって、請求人の主張は採用できない。 (2)請求項4について ア 請求人は、概略、以下のように主張する。 請求項4において、「前記出力指令値を算出する前記消費電力についての一次関数の0次係数は、前記蓄電池の蓄電可能量に依存する」とあるが、依存するとは、如何なる技術的意味を有するのか不明確である。(手続補正書134頁) イ 前記アの請求人の主張について検討する。 前記1(3)アに示したとおり、蓄電池が存在する場合、0次係数bは、蓄電池に蓄電するために使用される電力pbに依存する。蓄電するために使用される電力pbが蓄電可能量に依存することは自明である。 このことを特定するために、発明特定事項4Aは、「一次関数の0次係数は、前記蓄電池の蓄電可能量に依存する」としたものと解され、請求項4に記載された発明は明確である。 よって、請求人の主張は採用できない。 11 無効理由7についての小括 前記9及び10のとおりであるから、明確性要件に係る無効理由7には理由がない。 12 甲1発明の認定 甲1の記載(前記第6、1)によれば、実施の形態2(【0033】~【0052】)には「出力制御情報15」の具体例が示されていない。しかし、実施の形態2として記載された上記段落【0052】において「本実施の形態のその他の構成、動作および効果は、実施の形態1で説明した通りである。」との記載があるため、実施の形態2の「出力制御情報15」の具体例は、実施の形態1のもの、すなわち、【0024】及び図7に示されるものと同じと解される。 同様に、実施の形態2の「パワーコンディショナ2」の基本的な機能も、実施の形態1のもの(【0015】冒頭)と同じと解される。 よって、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明を以下の1a~1lに分説し、「構成1a」のようにして参照する。 1a 制御機器が設置された後は、たとえ制御機器が故障した場合でも、パワーコンディショナの出力を抑制し、系統崩壊を回避することが可能な太陽光発電システムであって、(【0008】) 1b1 太陽電池モジュール1と、 1b2 太陽電池モジュール1に接続されると共に分電盤3を介して負荷8および商用電源10に接続されたパワーコンディショナ2と、 1b3 パワーコンディショナ2に接続され、表示ユニット4およびルーター5を介してインターネット13に接続されると共に、分電盤3と商用電源10との接続点における電流および電圧を計測する計測ユニット7と 1b を備え、(【0033】) 1c 分電盤3は、分電盤3と商用電源10との接続点を含み、(図8) 1d パワーコンディショナ2は、太陽電池モジュール1が発電した直流電力を交流電力へ変換し、この交流電力を出力し、(【0015】) 1e パワーコンディショナ2、表示ユニット4、計測ユニット7およびルーター5は同一の筐体内に配置され、(【0050】) 1f 計測ユニット7は、電流計測値および電圧計測値から電力を算出し、これにより、計測ユニット7は、逆潮流が発生しているのか否かを判定することができ、(【0035】) 1g 表示ユニット4は、ルーター5およびインターネット13を介して、電力会社により設置された指令所から出力抑制情報15を取得し、表示ユニット4は、出力抑制情報15を計測ユニット7に転送し、(【0037】) 1h 計測ユニット7は、出力抑制情報15を取得した後、出力抑制情報15をパワーコンディショナ2に出力することでパワーコンディショナ2に出力抑制を実施させる制御機器であり、(【0038】) 1i 出力抑制情報15は、出力抑制を実施する「年月日」、「時刻」および「抑制量」をリストにしたものであり、「抑制量」は、パワーコンディショナ2の定格出力に対する割合で与えられ、例えば、「年月日」が2015/05/10、「時刻」が10:00~10:59のときは、「抑制量」が70%とされているので、パワーコンディショナ2の定格出力の70%を最大値として、パワーコンディショナ2はこれ以上の発電電力を出力しないように制御され、(【0024】) 1j 出力制御情報15の「抑制量」は時間帯毎に変更可能であり、(図7) 1k 太陽光発電システムにおける出力抑制は、逆潮流を抑制するものであればよく、計測ユニット7の電流および電圧の計測により逆潮流が発生しないと判定された場合には、計測ユニット7は、パワーコンディショナ2に出力抑制を低減しまたは停止する指令を送信することができる、(【0046】) 1l 太陽光発電システム。 13 甲4発明の認定 甲4の記載(前記第6、3)によれば、甲4には次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲4発明を以下の4a~4gに分説し、「構成4a」のようにして参照する。 4a 商用交流電力系統と太陽光発電とを連係させて並列的に負荷を駆動するための太陽光発電の連係装置であって、(前記第6、3(1)) 4b 太陽光発電セル10の直流出力がインバータ12で交流電力に変換され、商用交流電力系統14とともに共通の負荷16に印加され、(前記第6、3(4)) 4c 系統14から負荷16への給電路には遮断器34と漏電遮断器36とが介在され、(前記第6、3(5)) 4d 系統14側の給電路には計器用変流器38と計器用変圧器40が設けられ、負荷16に近い共通給電路には変流器42が設けられ、(前記第6、3(6)) 4e 変圧器40と変流器42の各出力から負荷16への供給電力が求められ、その電力をPLとすると、インバータ12の出力電力がPLの90%になるように制御され、(前記第6、3(7)) 4f 系統14およびインバータ12の両系が正常であれば、系統14とインバータ12との両方から負荷16に電力が供給され、負荷16への供給電力PLに対し、インバータ12は90%を受けもち(インバータ12の最大出力範囲内で)、残りの10%を系統14が分担するようにインバータ12の出力電力が制御されるので、インバータ12から系統14へ電力が逆流することはない(前記第6、3(8)) 4g 太陽光発電の連係装置。 14 甲8技術の認定 甲8の記載(前記第6、4)によれば、甲8には次の技術(以下「甲8技術」という。)が記載されていると認められる。 制限期間において、電力を有効に活用することのできる管理装置であって、([0010]) 電気事業者は、発電設備からの出力を制限すべき制限期間(時間帯)を計画すると、その制限期間における制限内容(出力の上限)を含む制限情報を作成し、作成した制限情報を、ネットワークを介して、発電設備に提供し、([0008]) ホームシステム1は、電力を発電する発電設備10と、住居H内で電力を消費する機器20と、住居H内に供給される電力を遮断するブレーカ30と、住居H内で消費や発電される電力を計測する電力計測装置40と、ホームシステム1全体を制御する管理装置50と、ユーザに使用される端末装置60とを備え、([0015]) 発電設備10は、発電モジュール11、及び、パワーコンディショナ12備え、([0019]) ホームシステム1は、宅外ネットワークN2を介して、住居H外に配置されたサーバ70と通信可能となっており、サーバ70は、発電設備10から電力の出力を制限すべき制限期間を含む制限情報71を記憶しており、制限情報71は、管理装置50から適宜読み出され、([0018]) 制限期間において、自家消費(買電)が発生している場合には、パワーコンディショナ12は、その自家消費分まで電力を出力できることが認められており、([0024]) 発電設備10から出力される電力PG、機器20にて消費される電力PLとし、([0024]) 制限期間(9時~15時)において、電力PLが上限値(線Lp)を下回っている時間帯では、パワーコンディショナ12は、上限値となる2kWまで電力PGを出力し、その後、電力PLが上限値を上回ると、パワーコンディショナ12は、電力PLと同じ電力値まで増加させて電力PGを出力する([0026]) 管理装置。 15 本件発明2と甲1発明との対比 無効理由4-1~無効理由4-4について判断するために、本件発明2と甲1発明とを対比する。 (1)発明特定事項2A1について 甲1発明の「太陽電池モジュール1」及び「パワーコンディショナ2」(及び「パワーコンディショナ」)は、それぞれ、本件発明2の「太陽電池」及び「パワーコンディショナ」に相当する。 甲1発明の「パワーコンディショナ2」は、「太陽電池モジュール1が発電した直流電力を交流電力へ変換し、この交流電力を出力」するもの(構成1d)であり、「出力制御情報15」によって「出力抑制を実施」するもの(構成1h)であるから、太陽電池モジュール1が発電した電力を制御すると解される。 他方、本件発明2の「パワーコンディショナ」(実施形態の「PCS2」に対応する。)は、本件明細書に「PCS2は、太陽電池1のI-V特性に従って太陽電池1の発電電力を制御することができ、例えばMPPT法により発電電力が最大となるように制御することができる。」(【0021】)と記載されているように、太陽電池それ自体の発電電力を制御するものを包含すると解される。 そうすると、本件発明2の「パワーコンディショナ」と甲1発明の「パワーコンディショナ」とは、「太陽電池からの発電電力を制御するパワーコンディショナ」である点で共通するが、本件発明2の「パワーコンディショナ」が制御する対象は「太陽電池の発電電力」すなわち太陽電池が発電する電力それ自体を包含するのに対し、甲1発明の「パワーコンディショナ2」が制御する対象は、太陽電池が発電した電力であるものの、太陽電池が発電する電力それ自体を含むか否かは不明である点で相違する。 (2)発明特定事項2A2について 甲1発明の「分電盤3と商用電源10との接続点」(構成1b3)は、商用電源10の受電を行う部分であると解され、「分電盤3と商用電源10との接続点」は、「分電盤3」に含まれる(構成1c)から、甲1発明の「分電盤3」は、本件発明2の「受変電部」に対応し、両者は「受電部」である点で一致する。 甲1発明では、「パワーコンディショナ2」と「負荷8」とは「分電盤3を解して」接続されている(構成1b2)から、「分電盤3」は「負荷8」に接続されている。 よって、本件発明2の「受変電部」と甲1発明の「分電盤3」とは、「負荷に接続された受電部」である点で共通するが、本件発明2の「受変電部」は「変電」の機能を有しているのに対し、甲1発明の「分電盤3」は変電の機能を有していない点で相違する。 (3)発明特定事項2A3について 甲1発明の「パワーコンディショナ2、表示ユニット4、計測ユニット7およびルーター5」は「同一の筐体内に配置され」る(構成1e)から、1つの装置(以下「計測ユニット等」という。)であると解される。 甲1発明の「計測ユニット7」は、「出力抑制情報15をパワーコンディショナ2に出力することでパワーコンディショナ2に出力抑制を実施させる制御機器であ」り(構成1h)、「出力制御情報15」に含まれる「抑制量」は、パワーコンディショナ2がこれ以上の発電電力を出力しないように制御する(構成1i)から、「計測ユニット7」はパワーコンディショナ2の出力の上限値を制御していると解される。 そうすると、甲1発明の「計測ユニット等」は、パワーコンディショナ2の出力の上限値を制御する発電制御装置であるといえるので、本件発明2の「発電制御装置」と甲1発明の「計測ユニット等」とは、「前記パワーコンディショナの出力の上限値を制御する1つの発電制御装置」である点で一致する。 そして、甲1発明の「計測ユニット7」は「分電盤3と商用電源10との接続点における電流および電圧を計測し」(構成1b3)、「電流計測値および電圧計測値から電力を算出」する(構成1f)から、分電盤3と商用電源10との接続点における電力を取得していると解される。 以上によれば、本件発明2の「発電制御装置」と甲1発明の「計測ユニット等」とは、「電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力の上限値を制御する1つの発電制御装置」である点で共通するが、本件発明2の「発電制御装置」が取得する電力は「前記負荷の消費電力」であるのに対し、甲1発明で取得される電力は、分電盤3と商用電源10との接続点における電力である点で相違する。 (4)発明特定事項2A及び2Eについて 甲1発明は「太陽光発電システム」である(構成1a)が、「制御機器」としての「計測ユニット7」により「パワーコンディショナ2」の出力抑制を実施する(構成1h)から、全体として発電制御システムとなっている。 そして、甲1発明の「太陽光発電システム」は、「パワーコンディショナ2」と、「分電盤3」と、「パワーコンディショナ2、表示ユニット4、計測ユニット7およびルーター5」を同一の筐体内に配置してなる1つの装置」とを備えている(構成1b2、1b3、1e)。 よって、本件発明2の「発電制御システム」と甲1発明の「太陽光発電システム」とは、「パワーコンディショナ」と、「受電部」と、「1つの発電制御装置」と、を備える「発電制御システム」である点で共通する。 (5)発明特定事項2B及び2B1について 甲1発明の「計測ユニット7」は、「出力抑制情報15をパワーコンディショナ2に出力することでパワーコンディショナ2に出力抑制を実施させ」(構成1h)、「出力制御情報15の「抑制量」は時間帯毎に変更可能であ」る(構成1j)から、甲1発明の「パワーコンディショナ2」又は「計測ユニット7」は、時間帯毎に設定された抑制量に従ってパワーコンディショナ2の出力抑制を実現するために、計時部を備えることが明らかである。 また、「計測ユニット等」が演算処理部を有することは明らかである。 そうすると、本件発明2の「発電制御装置」と甲1発明の「計測ユニット等」とは、「少なくとも演算処理部及び計時部を備え」る点で一致する。 (6)発明特定事項2B及び2B2について 甲1発明の「出力抑制情報15」の「抑制量」は、「パワーコンディショナ2の定格出力に対する割合で与えられ」、「パワーコンディショナ2はこれ以上の発電電力を出力しないように制御され」る(構成1i)のであるから、本件発明2の「出力指令値」に相当する。 しかし、甲1発明の「抑制量」は、「電力会社により設置された指令所から」取得した「出力抑制情報15」に含まれる(構成1i)ものであって、算出されるものではない。 よって、本件発明2の「発電制御装置」と甲1発明の「計測ユニット等」とは、「出力指令値を得」る点で共通するが、本件発明2の「出力指令値」は「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して」「算出」されるのに対し、甲1発明の「抑制量」は、「パワーコンディショナ2の定格出力に対する割合で与えられ」(構成1i)、「電力会社により設置された指令所から」「取得」される(構成1g)点で相違する。 (7)発明特定事項2Cについて 甲1発明では、「出力抑制情報15をパワーコンディショナ2に出力することでパワーコンディショナ2に出力抑制を実施させ」(構成1h)、「出力制御情報15」に含まれる「抑制量」は、パワーコンディショナ2がこれ以上の発電電力を出力しないように制御する(構成1i)から、「抑制量」に基づいてパワーコンディショナ2は太陽電池が発電した電力が上限値以下となるよう制御している。 また、甲1発明の出力抑制は、「逆潮流を抑制するものであればよ」い(構成1k)のだから、逆潮流を回避するために行っていると解される。 よって、本件発明2と甲1発明とは、「前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避」する点で共通する。 (8)発明特定事項2Dについて 本件発明2の「一次関数の一次係数」は、発電電力の上限値を定めるために使用される値である(発明特定事項2B2、2D)。 甲1発明の「抑制量」は、発電電力の上限値を定めるために使用される値である(構成1i)。 そうすると、甲1発明の「抑制量」は本件発明2の「一次係数」に対応し、両者は「発電電力の上限値を定めるために使用される値」である点で共通する。 そして、甲1発明では、「抑制量」を「時間帯毎に変更可能であ」る(構成1j)。 以上によれば、本件発明2と甲1発明とは、「前記発電電力の上限値を定めるために使用される値は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」点で共通するが、本件発明2で時間帯毎に変更可能な値は「前記一次関数の一次係数」であるのに対し、甲1発明では「抑制量」である点で相違する。 (9)一致点及び相違点 前記(1)~(8)によれば、本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 〈一致点〉 「太陽電池からの発電電力を制御するパワーコンディショナと、負荷に接続された受電部と、 電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力の上限値を制御する1つの発電制御装置と、を備え、 前記発電制御装置は少なくとも演算処理部及び計時部を備え、出力指令値を得、 前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避し、 前記発電電力の上限値を定めるために使用される値は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能であることを特徴とする発電制御システム。」である点。 〈相違点1-1〉 本件発明2のパワーコンディショナが制御する対象は、「太陽電池の発電電力」すなわち太陽電池が発電する電力それ自体を包含するのに対し、甲1発明のパワーコンディショナ2が制御する対象は、太陽電池が発電した電力であるものの、太陽電池が発電する電力それ自体を含むか否かは不明である点。 〈相違点1-2〉 本件発明2は「受変電部」を備えるのに対し、甲1発明の「分電盤3」は、受電はするが、「変電」の機能を有していない点。 〈相違点1-3〉 本件発明2の発電制御装置が取得する電力は「前記負荷の消費電力」であるのに対し、甲1発明で取得される電力は、分電盤3と商用電源10との接続点における電力である点。 〈相違点1-4〉 本件発明2の「出力指令値」は、「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して」「算出」されるのに対し、甲1発明の「抑制量」は、「パワーコンディショナ2の定格出力に対する割合で与えられ」、「電力会社により設置された指令所から」「取得」される点。 これに付随し、本件発明2で時間帯毎に変更可能な値は「前記一次関数の一次係数」であるのに対し、甲1発明では「抑制量」である点。 16 相違点1-3についての判断 甲1発明は、系統崩壊を回避することを目的としたものであって(構成1a)、パワーコンディショナ2の出力抑制を指示する「出力抑制情報15」は一例として「電力会社により設置された指令所」から取得される(構成1g)ものであるから、甲1発明の「出力抑制情報15」は、系統を管理する側が決めるものであって、個々の需要家が各自の消費電力を考慮して決めるものではない。 また、甲1発明は、「パワーコンディショナ2の発電電力を負荷8に供給することなく、発電電力を全て商用電源10に供給する」「全量買い取り方式」への適用を排除していない(【0015】)から、負荷の消費電力を測定して取得する必要がない。 さらに、甲1発明は、「逆潮流が発生しているのか否かを判定する」ために「計測ユニット7は、電流計測値および電圧計測値から電力を算出し」ている(構成1f)が、当該電流計及び電圧計は「分電盤3と商用電源10との接続点における電流および電圧を計測する」ものであって(構成1b3)、当該接続点の電力さえ測定できれば逆潮流の有無は判定できるのであるから、当該接続点以外の電力、例えば負荷の消費電力を測定する必要がない。 以上によれば、甲1発明において、負荷の消費電力を取得する動機付けはないから、当業者といえども、相違点1-3に係る発明特定事項2A3の構成は、甲1発明から容易に想到し得たものではない。 17 相違点1-4についての判断 前記16のとおり、甲1発明において負荷の消費電力を取得する動機付けがない以上、甲1発明の「抑制量」を作成するために、負荷の消費電力を用いることも、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 仮に、甲1発明が負荷の消費電力を取得していたとしても、甲1発明の「抑制量」は、系統崩壊を回避することを目的としたものであり、系統を管理する側(例えば、「電力会社により設置された指令所」)が「特異日」(【0004】)等を考慮して作成した「出力制御情報15」として与えられることを前提としているから、甲1発明においては、需要家に備わる「計測ユニット等」が「抑制量」を算出するよう構成する動機付けが存在しない。 さらに、甲1発明の出力抑制に用いられる「抑制量」は、「パワーコンディショナ2の定格出力に対する割合で与えられ」る(構成1i)ものであって、この割合に従ってパワーコンディショナ2を制御することが想定されているのだから、「抑制量」とは別にパワーコンディショナ2を制御するための値を改めて「算出」する必要がない。 加えて、甲1発明の出力抑制は、「逆潮流を抑制するものであればよく、計測ユニット7の電流および電圧の計測により逆潮流が発生しないと判定された場合には、計測ユニット7は、パワーコンディショナ2に出力抑制を低減しまたは停止する指令を送信することができる」もの(構成1k)であるから、分電盤3と商用電源10との接続点における電力が測定されてさえいれば、「抑制量」による抑制が例え不十分であったとしても逆潮流が抑制できる。そうすると、甲1発明の抑制量を、発電電力の上限値と消費電力との差分が消費電力の一次関数になるよう設定して算出する必要性は存在しない。 以上によれば、甲1発明の「計測ユニット等」が「負荷の消費電力」を用いて「抑制量」を「算出」する動機付けはないから、当業者といえども、相違点1-4に係る発明特定事項2B及び2B2の構成は、甲1発明から容易に想到し得たものではない。 18 請求人の主張についての判断 本件発明の甲1発明からの容易想到性に関する請求人の主張について、以下、検討する。 (1)甲4発明との組み合わせについて ア 請求人は、相違点1-4について、概略、以下のように主張する。 甲4には、「太陽光発電と系統とを連係したシステムにおいて、負荷への消費電力を計測し、太陽光発電による直流電力を交流電力に変換するインバータの出力を制御する出力制御手段を備え、負荷の消費電力のうちの所定比率分がインバータの出力電力の上限となるようにインバータの出力電力を制御することで、系統への逆潮流を防止する」事項(当審注:甲4発明の構成4a、4b、4e及び4fに相当)が記載されている。 パワーコンディショナにインバータが含まれることは周知技術に過ぎず、逆潮流を防止するために、パワーコンディショナの出力電力の上限を負荷の消費電力の所定比率分とすることは、甲4事項に基づけば、当業者にとって容易に想到できる。 そして、甲1発明と甲4事項とは、逆潮流を防止するという点で技術的課題が共通しているため、甲1発明に甲4事項を適用する動機付けは存在する。 よって、相違点1-4に係る構成は、甲1発明、甲4事項及び周知技術に基づいて、当業者であれば、容易に想到することが出来る。 (手続補正書109~110頁) イ 前記アの請求人の主張について検討する。 甲4発明における制御は、「負荷16への供給電力PLに対し、インバータ12は90%を受けもち(インバータ12の最大出力範囲内で)、残りの10%を系統14が分担するようにインバータ12の出力電力が制御される」もの(構成4f)である。この制御におけるインバータ12の出力の上限値は「インバータ12の最大出力」であるから、インバータ12の定格出力であると解され、これは、制御の対象とはなっていない。甲4発明において制御される値は、インバータ12の出力の上限値ではなく、インバータ12の出力そのものである。また、その制御内容は、「負荷16への供給電力PLに対し」「90%」、すなわち、消費電力に対する割合となっている。 これに対し、甲1発明は、「抑制量」によって「パワーコンディショナ2の定格出力に対する割合」を制御するものであって「これ以上の発電電力を出力しないように制御され」るもの(構成1i)である。すなわち、パワーコンディショナ2の出力そのものを制御しているのではなく、出力の最大値を制御しており、その制御内容は、パワーコンディショナ2の定格出力に対する割合である。 そうすると、甲1発明と甲4発明とでは、制御する値が出力の最大値であるか、出力そのものであるかにおいて異なっているし、制御内容についても、パワーコンディショナの定格出力に対する割合であるか、負荷の消費電力に対する割合であるかにおいて異なっており、甲1発明と甲4発明の制御の態様は大きく異なる。よって、甲1発明に甲4発明を適用する動機付けは存在しない。 仮に、甲1発明に甲4発明を適用できたとすると、甲1発明のように、パワーコンディショナの定格出力に対する割合を「抑制値」によって制限されつつ、甲4発明のように、パワーコンディショナが出力する電力が消費電力の90%となり、系統からの買電電力が10%となるように制御されるにとどまり、本件発明2のように「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定」される態様にはなり得ない。 以上によれば、請求人の主張は採用できない。 (2)技術常識の考慮について ア 請求人は、概略、以下のように主張する。 甲2-1に示される技術常識を考慮すると、「出力制御スケジュールをIDにて判別することにより、需給状況に応じた細かな出力制御を実現する」(9頁)のだから、甲1発明の「出力抑制情報15」は、需給状況を予測して、逆潮流が発生しないように、個別のIDで管理されている太陽光発電所に、送信される出力制御スケジュールであると解される。 したがって、合議体の暫定的見解、すなわち、「「出力制御情報15」を消費電力の一次関数として計算することは想定されていない。むしろ、消費電力ではなく逆潮流を検出することによって、逆潮流が発生しない範囲で「出力抑制を低減しまたは停止する指令」を出すようにしている」との見解は、明らかに間違いである。(請求人陳述要領書(1)12頁) イ しかしながら、甲2-1は、「パターンA 0%制御」、「パターンB 部分制御」及び「パターンC 出力制御なし」の3つのパターンに各発電所を割り当てることを開示するのみであり、各発電所が自身の消費電力に基づいて独自の出力抑制を行うことを開示するものではない。よって、甲2-1でいう「需給状況に応じた細やかな出力制御」は、抑制量を各自の消費電力から算出することを意味するのではなく、3パターンの出力制御のうち、どのパターンの出力制御を行わせるかを、系統管理者側が定めることを意味しているに過ぎない。 そうすると、甲2-1に示される技術常識を考慮したとしても、甲1発明の「抑制量」は系統管理者側が定めるものに過ぎず、需要家が自身の消費電力に基づいて算出するものにはなり得ない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 19 本件発明6と甲1発明との対比 無効理由4-5について判断するために、本件発明6と甲1発明とを対比する。 (1)発明特定事項6A及び6Gについて 甲1発明の「太陽電池モジュール1」及び「パワーコンディショナ2」は、それぞれ、本件発明6の「太陽電池」及び「パワーコンディショナ」に相当する。 前記15(3)に示したように、甲1発明の「計測ユニット等」は、同一の筐体内に配置されていると解されるから、本件発明6の「発電制御装置」に相当する。 前記15(3)に示したように、甲1発明の「計測ユニット7」はパワーコンディショナ2の出力の上限値を制御しており、前記15(1)に示したように、甲1発明の「パワーコンディショナ2」は、太陽電池モジュール1が発電した電力を制御しているから、本件発明6の「発電制御装置」と甲1発明の「計測ユニット等」とは、「太陽電池からの発電電力の上限値を制御する」「1つの発電制御装置」である点で共通する。 そして、甲1発明の「計測ユニット等」は、「パワーコンディショナ2」と同一の筐体内に配置されており、「パワーコンディショナ2」の電力を制御しているから、「計測ユニット等」と「パワーコンディショナ2」とは接続されていると解される。 以上によれば、本件発明6の「発電制御装置」と甲1発明の「計測ユニット等」とは、「太陽電池からの発電電力の上限値を制御するパワーコンディショナに接続される1つの発電制御装置であ」る点で共通するが、本件発明6の「発電制御装置」が制御する対象は「太陽電池の発電電力の上限値」すなわち太陽電池が発電する電力の上限値それ自体を包含するのに対し、甲1発明の「計測ユニット等」が制御する対象は、太陽電池が発電した電力の上限値であるものの、太陽電池が発電する電力の上限値それ自体を含むか否かは不明である点で相違する。 (2)発明特定事項6Bについて 前記15(5)と同様に、本件発明6の「発電制御装置」と甲1発明の「計測ユニット等」とは、「少なくとも演算処理部及び計時部を備え」る点で一致する。 (3)発明特定事項6Cについて 前記15(3)と同様に、本件発明6の「発電制御装置」と甲1発明の「計測ユニット等」とは、「電力を取得する」点で共通するが、本件発明6の「発電制御装置」が取得する電力は「太陽電池の発電電力と前記負荷の消費電力」であるのに対し、甲1発明で取得される電力は、分電盤3と商用電源10との接続点における電力である点で相違する。 (4)発明特定事項6Dについて 甲1発明の「計測ユニット等」は演算処理部を備えている(前記(2))ことを考慮すると、前記15(6)と同様に、本件発明6の「発電制御装置」と甲1発明の「計測ユニット等」とは、「演算処理部を用いて」「パワーコンディショナの出力指令値を得」る点で共通するが、本件発明6の「出力指令値」は「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して」「算出」されるのに対し、甲1発明の「抑制量」は、「電力会社により設置された指令所から」「取得」される(構成1g)点で相違する。 (5)発明特定事項6Eについて 前記15(7)と同様に、本件発明6と甲1発明とは、「前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避」する点で共通する。 (6)発明特定事項6Fについて 前記15(8)と同様に、本件発明6と甲1発明とは、「前記発電電力の上限値を定めるために使用される値は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」点で共通するが、本件発明6で時間帯毎に変更可能な値は「前記一次関数の一次係数」であるのに対し、甲1発明では「抑制量」である点で相違する。 (7)一致点及び相違点 前記(1)~(6)によれば、本件発明6と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 〈一致点〉 「太陽電池からの発電電力の上限値を制御するパワーコンディショナに接続される1つの発電制御装置であって、 前記発電制御は装置少なくとも演算処理部及び計時部を備え、 電力を取得すると共に、 前記演算処理部を用いてパワーコンディショナの出力指令値を得、 前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避し、 前記発電電力の上限値を定めるために使用される値は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能であることを特徴とする発電制御装置。」である点。 〈相違点1-5〉 本件発明6の発電制御装置が制御する対象は、「太陽電池の発電電力の上限値」すなわち太陽電池が発電する電力それ自体を包含するのに対し、甲1発明の計測ユニット等が制御する対象は、太陽電池が発電した電力であるものの、太陽電池が発電する電力それ自体を含むか否かは不明である点。 〈相違点1-6〉 本件発明6の発電制御装置が取得する電力は「太陽電池の発電電力と前記負荷の消費電力」であるのに対し、甲1発明で取得される電力は、分電盤3と商用電源10との接続点における電力である点。 〈相違点1-7〉 本件発明6の「出力指令値」は、「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して」「算出」されるのに対し、甲1発明の「抑制量」は、「パワーコンディショナ2の定格出力に対する割合で与えられ」、「電力会社により設置された指令所から」「取得」される点。 これに付随し、本件発明6で時間帯毎に変更可能な値は「前記一次関数の一次係数」であるのに対し、甲1発明では「抑制量」である点。 20 相違点1-6及び1-7についての判断 相違点1-6は相違点1-3と同じく「負荷の消費電力」の取得の有無に係るものであり、相違点1-7は相違点1-4と同じく「発電制御装置」が「負荷の消費電力」を用いて「出力指令値」を「算出」するか否かに係るものであるから、前記16~18と同様である。 したがって、相違点1-6及び1-7に係る発明特定事項6C及び6Dの構成は、当業者といえども、甲1発明から容易に想到し得たものではない。 21 無効理由4-1~4-5についての小括 前記16~18及び20のとおりであるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2及び6は、当業者が甲1発明並びに甲4発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。 また、本件発明3~5は、いずれも、本件発明2の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項(発明特定事項3A、4A及び5A)を備えるものであるから、本件発明3~5と甲1発明との間には少なくとも前記15(9)に示した相違点1-3及び1-4が存在する。よって、本件発明3~5は、いずれも、当業者が甲1発明並びに甲4発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。 以上によれば、本件発明は、いずれも、特許法29条2項の規定には該当しないため、無効理由4-1~無効理由4-5には理由がない。 22 本件発明2と甲4発明との対比 無効理由5-1~無効理由5-4について判断するために、本件発明2と甲4発明とを対比する。 (1)発明特定事項2A1について 甲4発明は、「太陽光発電セル10の直流出力がインバータ12で交流電力に変換され」る(構成4b)ものであり、甲4発明の「太陽光発電セル10」及び「直流出力」は、本件発明2の「太陽電池」及び「発電電力」に相当し、甲4発明の「インバータ12」は本件発明2の「パワーコンディショナ」に対応し、両者は電力変換器である点で共通する。 甲4発明では、「太陽光発電セル10の直流出力がインバータ12で交流電力に変換され」た(構成4b)上で、「インバータ12の出力電力がPLの90%になるように制御」する(構成4e)から、「太陽光発電セル10の直流出力」を「PLの90%になるように制御」するものと解される。 そうすると、本件発明2と甲4発明とは、「太陽電池からの発電電力を制御する電力変換器」を備える点で共通するが、本件発明2が制御する対象は「太陽電池の発電電力」すなわち太陽電池が発電する電力それ自体を包含するのに対し、甲4発明が制御する対象は「太陽光発電セル10」が発電する電力それ自体を含むか否かは不明である点で相違するとともに、本件発明2の電力変換器は「パワーコンディショナ」であるのに対し、甲4発明の電力変換器は「インバータ12」である点で相違する。 (2)発明特定事項2A2について 甲4発明は、「系統14から負荷16への給電路」(構成4c)を備え、該「給電路」は、「負荷16」に接続されていると共に、「系統14」からの電力を受電する部分であると解される。 なお、甲4発明においては「系統14側の給電路には…(中略)…計器用変圧器40が設けられ」ている(構成4d)が、「計器用変圧器40」は負荷への供給電力を求めるために用いられるものであり(構成4e)、系統からの電力を負荷に供給するために変圧するものではないから、「計器用変圧器40」の機能は、本件発明2における「受変電部」の変電とは機能が異なると解される。 よって、本件発明2と甲4発明とは、「負荷に接続された受電部」を備える点で共通するが、本件発明2の「受変電部」は「変電」の機能を有しているのに対し、甲4発明の「系統14側から負荷16への給電路」は変電の機能を有していない点で相違する。 (3)発明特定事項2A3について 甲4発明では、「変圧器40と変流器42の各出力から負荷16への供給電力が求められ」ており(構成4e)、「負荷16への供給電力」は、換言すれば、「負荷16」の消費電力であるといえる。 甲4発明の「インバータ12」には「最大出力」があり(構成4f)、該「最大出力」は、「インバータ12」の定格出力であると解される。 甲4発明は「商用交流電力系統と太陽光発電とを連係させて並列的に負荷を駆動するための太陽光発電の連係装置」であって(構成4a)、「インバータ12の出力電力が制御される」もの(構成4f)であるから、「太陽光発電セル10」が発電した電力を「変圧器40と変流器42」及び「インバータ12」によって制御していると言う意味で、発電制御装置であるといえる。 以上によれば、本件発明2と甲4発明とは、「前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力の上限値を定める発電制御装置」である点で共通するが、本件発明2の「出力の上限値」は「制御」されているのに対し、甲4発明の「最大出力」は制御されるものではない点で相違すると共に、本件発明2の「発電制御装置」は「1つの」装置であるのに対し、甲4発明の「変圧器40と変流器42」及び「インバータ12」を備える「連係装置」は、1つの装置となっているか否かが不明である点で相違する。 (4)発明特定事項2A及び2Eについて 甲4発明の「商用交流電力系統と太陽光発電とを連係させて並列的に負荷を駆動するための太陽光発電の連係装置」(構成4a)それ自体は、「商用交流電力系統」とは別体であると解される。よって、甲4発明の「連係装置」は、「商用交流電力系統」とともに発電制御システムを形成していると認められる。 そして、甲4発明の「連係装置」は、「インバータ12」、「系統14側から負荷16への給電路」及び「変圧器40と変流器42」を備えているから、甲4発明の「連係装置」に「商用交流電力系統」を加えて構成された発電制御システムも、「インバータ12」、「系統14側から負荷16への給電路」及び「変圧器40と変流器42」を備える。 以上によれば、本件発明2と甲4発明とは、電力変換器、受電部及び発電制御装置を備える「発電制御システム」である点で共通する。 (5)発明特定事項2B及び2B1について 甲4発明の「連係装置」が「演算処理部及び計時部」を備えるか否かは不明である。 (6)発明特定事項2B及び2B2について 甲4発明の「連係装置」は、「負荷16への供給電力PLに対し、インバータ12は90%を受けもち(インバータ12の最大出力範囲内で)、残りの10%を系統14が分担するようにインバータ12の出力電力が制御される」ものであるが、「インバータ12の最大出力」は制御していない。 また、甲4発明の「連係装置」は、「インバータ12」の出力を「供給電力PLに対し」「90%」とするものであり、該「90%」という値は、「インバータ12」の出力を指令している値という意味で出力指令値といえるが、該「90%」という値が算出されているか否かは不明である。 そうすると、本件発明2と甲4発明とは、発電制御装置が「出力指令値を持つ」点で共通するが、本件発明2の「出力指令値」は「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して」「算出」されるものであるのに対し、甲4発明の「90%」という値は算出されているか否かが不明である点で相違する。 (7)発明特定事項2Cについて 甲4発明の「インバータ12」は「インバータ12の最大出力範囲内で」(構成4f)負荷への供給電力を受け持つから、「インバータ12」の出力電力は、「最大出力」以下となるが、これは、定格電力により定まったに過ぎず、制御の結果ではない。 他方、甲4発明では、「インバータ12は90%を受けも」つ「ようにインバータ12の出力電力が制御されるので、インバータ12から系統14へ電力が逆流することはない」(構成4f)から、「90%」という値に基づいて「インバータ12」の出力電力を制御することで逆潮流が回避されている。 以上によれば、本件発明2と甲4発明とは、「前記出力指令値に基づいて前記電力変換器は前記発電電力を制御することで逆潮流を回避し、前記発電電力は前記上限値以下となる」点で共通するが、本件発明2の「前記上限値」は「逆潮流を回避」するために「制御」される値であるのに対し、甲4発明の「最大出力」は、制御される値ではなく、逆潮流の回避のために設けられたものではない点で相違する。 (8)発明特定事項2Dについて 甲4発明には、本件発明2の「一次関数」に対応する構成がなく、そのため「一次関数の一次係数」に対応する構成もない。 また、甲4発明は「計時部」を有するか否かが不明であり、そのため、「計時部の計時機能」を有するかも不明である。 したがって、甲4発明は「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」とはいえない。 (9)一致点及び相違点 前記(1)~(8)によれば、本件発明2と甲4発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 〈一致点〉 「太陽電池からの発電電力を制御する電力変換器と、負荷に接続された受電部と、 前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力の上限値を定める発電制御装置と、を備え、 出力指令値を持ち、 前記出力指令値に基づいて前記電力変換器は前記発電電力制御することで逆潮流を回避し、前記発電電力は前記上限値以下となる 発電制御システム。」である点。 〈相違点4-1〉 本件発明2が制御する対象は「太陽電池の発電電力」すなわち太陽電池が発電する電力それ自体を包含するのに対し、甲4発明が制御する対象は「太陽光発電セル10」が発電する電力それ自体を含むか否かは不明である点。 〈相違点4-2〉 本件発明2の電力変換器は「パワーコンディショナ」であるのに対し、甲4発明の電力変換器は「インバータ12」である点。 〈相違点4-3〉 本件発明2の「受変電部」は「変電」の機能を有しているのに対し、甲4発明の「系統14側から負荷16への給電路」は変電の機能を有していない点。 〈相違点4-4〉 本件発明2の「出力の上限値」は「制御」されているのに対し、甲4発明の「最大出力」は制御されるものではない点。 これと関連し、本件発明2の「前記上限値」は「逆潮流を回避」するために「制御」される値であるのに対し、甲4発明の「最大出力」は、制御される値ではなく、逆潮流の回避のために設けられたものではない点。 〈相違点4-5〉 本件発明2の「発電制御装置」は「1つの」装置であるのに対し、甲4発明の「変圧器40と変流器42」及び「インバータ12」を備える「連係装置」は、1つの装置となっているか否かが不明である点。 〈相違点4-6〉 本件発明2の「発電制御装置」は、「演算処理部及び計時部を備え」るのに対し、甲4発明の「連係装置」が「演算処理部及び計時部」を備えるか否かは不明である点。 〈相違点4-7〉 本件発明2の「出力指令値」は「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して」「算出」されるものであるのに対し、甲4発明の「90%」という値は算出されているか否かが不明である点。 〈相違点4-8〉 本件発明2は「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」のに対し、甲4発明はそのようになっていない点。 23 相違点4-4についての判断 甲4発明の「インバータ12」の出力は「インバータ12の最大出力範囲内で」制御される(構成4f)に過ぎず、「最大出力」を制御するものではない。甲4発明の作用についての「このときインバータ出力が最大値になるまでは、負荷の消費電力を系統とインバータとで一定比率で分担するように、インバータ出力が制御される。」(前記第6、3(3))との記載を参照しても、インバータ出力の「最大値」は制御されていない。そして、甲4発明において、「最大出力」を変更することは、示唆もされていない。そうすると、甲4発明のインバータの「最大出力」ないし「最大値」は、インバータによって一意に定まる最大出力であり、インバータの定格出力であると解される。 そうすると、インバータの定格出力は制御できるものではないし、仮に甲4発明のインバータの「最大出力」が定格出力ではないとしても、当該「最大出力」を制御するという発想自体、甲4には記載も示唆もされていない。 加えて、甲4発明の課題、すなわち、「系統への電力逆流を防止し、系統に悪影響を与えない」こと、及び、「負荷に安定な電力を供給できる」こと(前記第6、3(2))は、インバータの出力それ自体を負荷の消費電力の90%とすること(構成4e、4f)により解決されていると認められ(前記第6、3(9))、インバータの出力それ自体の他に、インバータの「最大出力」を制御する必要性がない。 したがって、甲4発明において、インバータの「最大出力」を制御することは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 24 請求人の主張についての判断 請求人は、甲4発明における所定比率(当審注:構成4e及び4fにおける「90%」に対応)が、本件発明2の一次関数の一次係数に相当すると主張し(手続補正書123頁)、相違点4-4の存在を否認している。 しかしながら、本件発明2における「一次関数」は、「前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定し」たもの(発明特定事項2B2)であるから、「発電電力の上限値」を設定するものである。 他方、甲4発明の「90%」という値は、「インバータ12の出力電力」を制御するものであり(構成4e)、「最大出力」を設定するものではないため、本件発明2の「一次関数の一次係数」に相当し得ない。 よって、請求人の主張は採用できない。 25 本件発明6と甲4発明との対比 無効理由5-5について判断するために、本件発明6と甲4発明とを対比する。 (1)発明特定事項6A及び6Gについて 甲4発明の「太陽光発電セル10」は、本件発明6の「太陽電池」に相当し、甲4発明の「インバータ12」は、本件発明6の「パワーコンディショナ」に対応し、両者は「太陽電池からの発電電力を制御する電力変換器」である点で共通する(前記22(1)と同様)が、本件発明6が制御する対象は「太陽電池の発電電力の上限値」であるのに対し、甲4発明が制御する対象は「太陽光発電セル10の直流出力」である点で相違する。 甲4発明の「連係装置」は、本件発明6の「発電制御装置」に相当するが、本件発明6の「発電装置」は「1つの」装置であるのに対し、甲4発明の「連係装置」は1つの装置となっているか否かが不明である(前記22(3)と同様)。 甲4発明の「連係装置」は、「インバータ12」を備え(前記22(3))、「インバータ12の出力電力」を制御する(構成4e)から、本件発明6の「連係装置」と「インバータ12」とは接続されていると解される。 以上によれば、本件発明6の「発電制御装置」と甲4発明の「連係装置」とは、「太陽電池からの発電電力に関する値を制御する電力変換器に接続される発電制御装置であ」る点で共通するが、本件発明6の電力変換器は「パワーコンディショナ」であるのに対し、甲4発明の電力変換器は「インバータ12」である点で相違するとともに、本件発明6の「発電制御装置」が制御する対象は「太陽電池の発電電力の上限値」であるのに対し、甲4発明の「連係装置」が制御する対象は、「インバータ12の出力電力」(構成4e)すなわち「太陽光発電セル10の直流出力がインバータ12で交流電力に変換され」た電力(構成4b)である点で相違するとともに、本件発明6の「発電制御装置」は「1つの」装置であるのに対し、甲4発明の「連係装置」は1つの装置となっているか否かが不明である点で相違する。 (2)発明特定事項6Bについて 甲4発明の「連係装置」が「演算処理部及び計時部」を備えるか否かは不明である。 (3)発明特定事項6Cについて 前記22(3)と同様に、本件発明6の「発電制御装置」と甲4発明の「連係装置」とは、「負荷の電力を取得する」点で共通するが、本件発明6の「発電制御装置」は「太陽電池の発電電力」を取得するのに対し、甲4発明の「連係装置」は、「太陽光発電セル10」の発電電力を取得しているか否かが不明である点で相違する。 (4)発明特定事項6Dについて 前記22(6)と同様に、本件発明6の「発電制御装置」と甲4発明の「連係装置」とは、「出力指令値を持つ」点で共通するが、本件発明6の「出力指令値」は「前記演算処理部を用いて前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して」「算出」されるものであるのに対し、甲4発明の「90%」という値は算出されているか否かが不明である点で相違する。 (5)発明特定事項6Eについて 前記22(7)と同様に、本件発明6と甲4発明とは、「前記出力指令値に基づいて前記電力変換器は前記発電電力を制御することで逆潮流を回避し、前記発電電力は前記上限値以下となる」点で共通するが、本件発明6の「前記上限値」は「逆潮流を回避」するために「制御」される値であるのに対し、甲4発明の「最大出力」は、制御される値ではなく、逆潮流の回避のために設けられたものではない点で相違する。 (6)発明特定事項6Fについて 前記22(8)と同様に、甲4発明は「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」とはいえない。 (7)一致点及び相違点 前記(1)~(6)によれば、本件発明6と甲4発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 〈一致点〉 「太陽電池からの発電電力に関する値を制御する電力変換器に接続される発電制御装置であって、 負荷の電力を取得すると共に、 出力指令値を持ち、 前記出力指令値に基づいて前記電力変換器は前記発電電力を制御することで逆潮流を回避し、前記発電電力は前記上限値以下となる 発電制御装置。」である点。 〈相違点4-9〉 本件発明6の電力変換器は「パワーコンディショナ」であるのに対し、甲4発明の電力変換器は「インバータ12」である点。 〈相違点4-10〉 本件発明6の「発電制御装置」が制御する対象は「太陽電池の発電電力の上限値」であるのに対し、甲4発明の「連係装置」が制御する対象は、「インバータ12の出力電力」すなわち「太陽光発電セル10の直流出力がインバータ12で交流電力に変換され」た電力である点。 これに関連して、本件発明6の「前記上限値」は「逆潮流を回避」するために「制御」される値であるのに対し、甲4発明の「最大出力」は、制御される値ではなく、逆潮流の回避のために設けられたものではない点。 〈相違点4-11〉 本件発明6の「発電制御装置」は「1つの」装置であるのに対し、甲4発明の「変圧器40と変流器42」及び「インバータ12」を備える「連係装置」は、1つの装置となっているか否かが不明である点。 〈相違点4-12〉 本件発明6の「発電制御装置」は「演算処理部及び計時部を備え」るのに対し、甲4発明の「連係装置」が「演算処理部及び計時部」を備えるか否かは不明である点。 〈相違点4-13〉 本件発明6の「発電制御装置」は「太陽電池の発電電力」を取得するのに対し、甲4発明の「連係装置」は、「太陽光発電セル10」の発電電力を取得しているか否かが不明である点。 〈相違点4-14〉 本件発明6の「出力指令値」は「前記演算処理部を用いて前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して」「算出」されるものであるのに対し、甲4発明の「90%」という値は算出されているか否かが不明である点。 〈相違点4-15〉 本件発明6は「前記一次関数の一次係数は、前記計時部の計時機能を用いて時間帯毎に変更可能である」が、甲4発明はそうとはいえない点。 26 相違点4-10についての判断 相違点4-10は相違点4-4と同じく「出力の上限値」が「制御」されているか否かに係るものであるから、前記23及び24と同様であり、甲4発明において、インバータの「最大出力」を制御することは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 27 無効理由5-1~5-5についての小括 前記23、24及び26のとおりであるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2及び6は、当業者が甲4発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。 また、本件発明3~5は、いずれも、本件発明2の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項(発明特定事項3A、4A及び5A)を備えるものであるから、本件発明3~5と甲4発明との間には少なくとも前記22(9)に示した相違点4-4が存在する。よって、本件発明3~5は、いずれも、当業者が甲4発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。 以上によれば、本件発明は、いずれも、特許法29条2項の規定には該当しないため、無効理由5-1~無効理由5-5には理由がない。 第8 むすび 前記第7、5のとおりであるから、別件訂正に係る無効理由1から無効理由3には、いずれも理由がない。 また、前記第7、21のとおりであるから、甲1発明からの容易想到性に係る無効理由4-1から無効理由4-5にはいずれも理由がなく、前記第7、27のとおりであるから、甲4発明からの容易想到性に係る無効理由5-1から無効理由5-5にはいずれも理由がない。 そして、前記第7、8のとおりであるから、サポート要件に係る無効理由6には、理由がない。 加えて、前記第7、11のとおりであるから、明確性要件に係る無効理由7には、理由がない。 以上によれば、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明2~6についての特許は、無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-800102

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