特許無効審判
2014-800075
電圧モードの高精度電池充電器
- 審判番号
- 2014-800075
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2003-522208
- 登録番号
- 特許第3893128号(P3893128)
- 請求日
- 2014年05月15日
- 審決日
- 2016年09月21日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 訂正認容・請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本テキサス・インスツルメンツ 株式会社
- 【請求人代理人】上田 忠
- 【請求人代理人】鈴木 修
- 【請求人代理人】岡本 義則
- 【請求人代理人】神田 雄
- 【請求人代理人】佐藤 仁
- 【被請求人】オーツー マイクロ, インコーポレーテッド
- 【被請求人代理人】村山 靖彦
- 【被請求人代理人】渡邊 隆
- 【被請求人代理人】松尾 直樹
- 【被請求人代理人】坂井 康記
- 【被請求人代理人】大野 聖二
- 【被請求人代理人】小林 英了
- 【被請求人代理人】大谷 寛
- 審判長/審判官
- 審判長 堀川 一郎
- 審判官 矢島 伸一
- 審判官 久保 竜一
- 分類
- P1113.113-ZDB(H02J) / P1113.121-ZDB(H02J) / P1113.536-ZDB(H02J) / P1113.537-ZDB(H02J) / P1113.854-ZDB(H02J) / P1113.855-ZDB(H02J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法123条1項2号特許法169条民事訴訟法64条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第134条の2第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第169条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第3893128号発明「電圧モードの高精度電池充電器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
平成28年2月10日付けで補正された、平成27年12月28日付け訂正請求に係る、特許第3893128号の特許請求の範囲、請求項5ないし8を削除する訂正を認める。
特許第3893128号の請求項1ないし4、9、11ないし14に係る発明についての特許を無効とする。
特許第3893128号の請求項10に係る発明についての審判請求は、成り立たない。
審判費用は、その10分の1を請求人の負担とし、10分の9を被請求人の負担とする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第3893128号(以下「本件特許」という。)は、2002年8月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2001年8月17日,米国 2001年9月7日,米国)を国際出願日とする出願についてのものであって、平成18年12月15日に請求項1~14に係る発明について設定登録され、その後、平成26年5月15日に日本テキサス・インスツルメンツ株式会社から特許無効審判が請求されたものである。以下、特許無効審判が請求された以後の経緯を整理して示す。
平成26年 5月15日 審判請求書(請求人)
平成26年 9月29日 訂正請求書(被請求人)
平成26年 9月29日 答弁書(被請求人)
平成26年11月20日 弁駁書(請求人)
平成27年 1月15日 審尋(被請求人に対して)
平成27年 1月15日 審尋(請求人に対して)
平成27年 1月15日 訂正拒絶理由通知書(被請求人に対して)
平成27年 2月 9日 回答書(被請求人)
平成27年 2月13日 回答書(請求人)
平成27年 3月24日 訂正取下書(被請求人)
平成27年 4月23日 審理事項通知書(請求人・被請求人双方に対して)
平成27年 6月 9日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成27年 6月 9日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成27年 6月23日 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)
平成27年 6月23日 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
平成27年 6月23日 口頭審理陳述要領書(3)(被請求人)
平成27年 6月23日 口頭審理
平成27年 6月25日 上申書(被請求人)
平成27年 7月 1日 上申書(請求人)
平成27年 9月29日 審決予告
平成27年12月28日 訂正請求書(平成28年2月10日補正)(被請求人)
平成27年12月28日 上申書(被請求人)
平成28年 3月18日 弁駁書(請求人)
平成28年 4月18日 訂正拒絶理由通知書(請求人・被請求人双方に対して)
平成28年 7月26日 上申書(請求人)
第2 平成28年2月10日付けで補正された、平成27年12月28日付け訂正請求について
1 訂正の請求の趣旨
特許第3893128号の明細書及び特許請求の範囲を訂正後の請求項1及び9、2、3、4、5、6、7、8、10、11、12、13、14について本件請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求める。
2 訂正の内容
(1)請求項1~4、及び9~12からなる一群の請求項に係る訂正
(1-1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって、
電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部と、
電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器と
を具備し、」を
「PWM 言号のデューティサイクルを制御するための回路であって、
電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部と、
電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と、
電源により生成される電流の総量が所定の閾値を超過する量に比例した電力制御信号を生成する電力制御部と、
前記電流制御信号、前記電圧制御信号、および前記電力制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器と
を具備し、」
と訂正する。
(1-2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とは、共通のノードにおいて共に合計され」を「前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とは、共通のノードにおいて共に合計され」と訂正する。
(1-3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1の「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する」を「前記電流制御信号、前記電圧制御信号、および前記電力制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減し、前記電流制御信号、前記電圧制御信号、および前記電力制御信号がいずれも生成されない場合に前記デューティサイクルが最大となる」と訂正する。
(1-4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2~4と、10~12を削除する。
(2)請求項5及び6からなる一群の請求項に係る訂正
(2-1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項5及び6を削除する。
(3)請求項7及び8からなる一群の請求項に係る訂正
(3-1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項7及び8を削除する。
(4)請求項13及び14からなる一群の請求項に係る訂正
(4-1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項13の
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための方法であって、
電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する段階と、
電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する段階と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する段階と
を具備し、」を
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための方法であって、
電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する段階と、
電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する段階と、
電源により生成される電流の総量が所定の閾値を超過する量に比例した電力制御信号を生成する段階と、
前記電流制御信号、前記電圧制御信号、および前記電力制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する段階と
を具備し、」
と訂正する。
(4-2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項13の「前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とを、共通のノードにおいて共に合計する段階と」を「前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とを、共通のノードにおいて共に合計する段階と」と訂正する。
(4-3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項13の
「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号に基づいて、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルを低減させる段階と
をさらに具備する」を
「前記電流制御信号、前記電圧制御信号、および前記電力制御信号に基づいて、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルを低減させる段階と
をさらに具備し、前記電流制御信号、前記電圧制御信号、および前記電力制御信号がいずれも生成されない場合に前記デューティサイクルが最大となる」
と訂正する。
(4-4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項14を削除する。
3 訂正の適否
(1)訂正拒絶理由
当審において、平成28年 4月18日付けで訂正拒絶理由を通知し、上記訂正事項のうち請求項1及び9からなる一群の請求項に係る訂正及び、請求項13に係る訂正の請求は認められないとした。その概要は次のとおりである。
「第1.請求項1及び9からなる一群の請求項に係る訂正
(1)訂正事項1に係る「電源により生成される電流の総量が所定の閾値を超過する量に比例した電力制御信号を生成する電力制御部」について
・・・・途中省略・・・・
明細書の段落【0015】~【0017】の記載を参照すると、「電力制御部」は、「アクティブシステム」の要求を満たすように「充電電流」を低減させることにより、「アクティブシステム」が(電力の必要条件の点で)常に優先権を得ることを保証するための制御部であると説明されている。
加えて、訂正事項1の「電源により生成される電流の総量」に相当する、「アダプター(電源)電流の総量」についても示されているが、当該「アダプター(電源)電流の総量」は、システム(「アクティブシステム」)の電流と、「充電電流」とを含むことが前提となっている。
したがって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には「アクティブシステム」が必要とする電流及び「充電電流」との関連を持たない「電力制御部」や「電源により生成される電流の総量」に係る記載はない。
一方、訂正事項1に係る「電源により生成される電流の総量が所定の閾値を超過する量に比例した電力制御信号を生成する電力制御部」は、「アクティブシステム」への電流や「充電電流」にかかわらず電力制御信号を生成するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であるとはいえない。
したがって、訂正事項1を含む請求項1及び9からなる一群の請求項に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合しない。
(2)訂正前の請求項1に係る発明は、電流制御信号と電圧制御信号に基づいて、PWM信号のデューティサイクルを制御するものであるのに対して、訂正後の請求項1に係る発明は、電力制御信号も加えてPWM信号のデューティサイクルを制御するから、実質上特許請求の範囲を変更するものといえる。
したがって、請求項1及び9からなる一群の請求項に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合しない。
(3)よって、請求項1及び9からなる一群の請求項に係る訂正の請求は、拒絶すべきものである。
第2.請求項13に係る訂正
(1)訂正事項1に係る「電源により生成される電流の総量が所定の閾値を超過する量に比例した電力制御信号を生成する段階」について
上記第1.(1)で検討したとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には「アクティブシステム」が必要とする電流及び「充電電流」との関連を持たない「電源により生成される電流の総量」や「電力制御信号」に係る記載はない。
したがって、訂正事項1を含む請求項13に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合しない。
(2)訂正前の請求項13に係る発明は、電流制御信号と電圧制御信号に基づいて、PWM信号のデューティサイクルを制御するものであるのに対して、訂正後の請求項13に係る発明は、電力制御信号も加えてPWM信号のデューティサイクルを制御するから、実質上特許請求の範囲を変更するものといえる。
したがって、請求項13に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合しない。
(3)よって、請求項13に係る訂正の請求は、拒絶すべきものである。」
(2)当審の判断
(2-1)請求項1~4、及び9~12からなる一群の請求項に係る訂正について
(ア)訂正事項1のうち、特許請求の範囲の請求項1に「電源により生成される電流の総量が所定の閾値を超過する量に比例した電力制御信号を生成する電力制御部」の構成を付加することについて。
当該構成に対応する、願書に添付した明細書の段落【0015】~【0017】の記載は以下のとおりである(下線は当審で付加。)。
「〈電力制御〉
電力制御部(回路)は、感知増幅器34と、相互コンダクタンス増幅器36とを含む。電力制御部は、バック変換器のデューティサイクルを低減させるために、かつ、これにより、DC電源がより多くの電力を該電源に結びつけられたアクティブシステム72(例えば、携帯用電子装置)に供給する必要がある場合には電池に供給される充電電流を低減させるために設けられる。前記アクティブシステムは、感知抵抗Rsacを横切って、充電システム10と並列に連結される。電源14により供給される電力の総量が固定されているので、良好に設計されたシステムにおいては、アクティブシステムの負荷の必要条件と、充電回路の負荷の必要条件とは釣り合っている。電力制御部は、アクティブシステムの要求を満たすように充電電流を低減させることにより、アクティブシステムが(電力の必要条件の点で)常に優先権を得ることを保証する。これにより、電力制御部は、電池充電器とアクティブシステムとにより要求される電力が閾値Iac_limを超過する量に比例した電力制御信号66を生成する。Iac_limは、通常は、アダプター電源14により供給できる最大量である。例えば、電源14は、アクティブシステム(図示せず)への電力の供給と、電池への電流の充電とを、同時に行うことができる。携帯用システムがより多くの電力を必要とする場合には、これに応じて、電池への電流の充電が、該システムの要求を満たすように低減する。電源14は、概略的に、AC/DCアダプターから供給できるようなDC電力電源(power source)として定義される。
感知増幅器34は、感知インピーダンスRsac22を渡って電源14により供給されるアダプター電流の総量を監視する。アダプター(電源)電流の総量は、システム電流(すなわち、電源14に接続された携帯用システム(図示せず)に供給される電流)と、電池充電回路12により制御される充電電流(バック変換器18のデューティサイクルにより分割される充電電流の算定基準)とを含む。感知抵抗Rsacを横切る信号は、アダプター電流の総量に比例した信号である。相互コンダクタンス増幅器36は、感知増幅器34の出力を受け取り、かつ、この信号を、電力閾値信号Iac_limと比較する。これにより、感知抵抗Rsacを横切る信号がIac_limよりも大きければ、このことは、システムがより多くの電力を必要としていることを示し、かつ、これに応じて、電池充電電流を低減させるべきである。もちろん、この制限信号については、固定することもでき、または、システムの動的な電力の必要条件および/または電源における変化に基づいて調整することもできる。相互コンダクタンス増幅器の出力は電力制御信号66であり、該電力制御信号66は、電池充電器とアクティブシステムとにより必要とされる電力が閾値Iac_limを超過するまでゼロである。
電池充電器とアクティブシステムとにより必要とされる電力が閾値Iac_limを超過すれば、増幅器36は比例的な電力制御信号66を生成する。増幅器36の出力は電流源42の負側(ノード60)に連結されているので、増幅器36により生成されるあらゆる信号は、電源からの電流をシンクするように作用する。次に、この信号は、Ccomp38上の電圧を低減させるように動作し、これにより、PWM信号68のデューティサイクルが低減し、かつ、電池に供給される充電電流が低減する。増幅器36の出力66は入力値に比例するので、デューティサイクルは、システムと電池との間における電力を釣り合わせる要求の関数として、かつ、DC電源14の最大電力出力を超過しないように、動的に調整される。」と記載されている(下線部は当審付加)。
上記明細書の段落【0015】~【0017】の記載を参照すると、「電力制御部」は、「アクティブシステム」の要求を満たすように「充電電流」を低減させることにより、「アクティブシステム」が(電力の必要条件の点で)常に優先権を得ることを保証するための制御部であると説明されている。
さらに、訂正事項1の「電源により生成される電流の総量」に相当する、「アダプター(電源)電流の総量」についても説明されているが、当該「アダプター(電源)電流の総量」は、システム(「アクティブシステム」)の電流と、「充電電流」とを含むことが前提となっている。
したがって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には「アクティブシステム」が必要とする電流と「充電電流」とに関連を持たない「電力制御部」や「電源により生成される電流の総量」に係る記載はない。
これに対し、訂正事項1に係る「電源により生成される電流の総量が所定の閾値を超過する量に比例した電力制御信号を生成する電力制御部」は、「アクティブシステム」への電流や「充電電流」にかかわらず電力制御信号を生成するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であるとはいえない。
また、特許請求の範囲の請求項1に係る訂正である、訂正事項1、2、3すべてを総合しても、特許請求の範囲の請求項1に「電源により生成される電流の総量が所定の閾値を超過する量に比例した電力制御信号を生成する電力制御部」の構成を付加することについて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であるとはいえない。
そうすると、訂正事項1による、特許請求の範囲の請求項1に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合しない。
(イ)訂正事項1の訂正のうち、「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器」を、「前記電流制御信号、前記電圧制御信号、および前記電力制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器」と訂正すること、訂正事項2、訂正事項3について。
これらの訂正は、訂正前の請求項1に係る発明が、電流制御信号と電圧制御信号に基づいて、PWM信号のデューティサイクルを制御するものであるのに対して、訂正後の請求項1に係る発明は、電力制御信号も加えてPWM信号のデューティサイクルを制御するものに訂正するものである。
そうすると、訂正事項1~3は、実質上特許請求の範囲を変更するものである。
したがって、訂正事項1~3による、特許請求の範囲の請求項1に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合しない。
(ウ)訂正事項4について
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項2~4と、10~12を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、引用する請求項(請求項1)が属する請求単位(請求項1~4、及び9~12からなる一群の請求項)から独立した請求項として扱われることを求めるものではないから、訂正事項4の訂正の適否は、引用する請求項(請求項1)の訂正(訂正事項1~3)の適否と一体に判断されるものである。
そうすると、訂正事項4は訂正の要件を満たしていない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1~4に係る訂正を認めない。
(2-2)請求項5及び6からなる一群の請求項に係る訂正について
(ア)訂正事項1について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項5及び6からなる一群の請求項を削除するものであって、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(イ)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正を認める。
(2-3)請求項7及び8からなる一群の請求項に係る訂正について
(ア)訂正事項1について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項7及び8からなる一群の請求項を削除するものであって、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(イ)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正を認める。
(2-4)請求項13及び14からなる一群の請求項に係る訂正について
(ア)訂正事項1のうち、特許請求の範囲の請求項13に「電源により生成される電流の総量が所定の閾値を超過する量に比例した電力制御信号を生成する段階」の構成を付加することについて。
上記「(1)請求項1~4、及び9~12からなる一群の請求項に係る訂正について」の「(ア)」で検討したと同様、明細書の段落【0015】~【0017】の記載を参照すると、「電力制御信号を生成する段階」は、「アクティブシステム」の要求を満たすように「充電電流」を低減させることにより、「アクティブシステム」が(電力の必要条件の点で)常に優先権を得ることを保証するための段階であるといえる。
さらに、訂正事項1の「電源により生成される電流の総量」に相当する、「アダプター(電源)電流の総量」についても説明されているが、当該「アダプター(電源)電流の総量」は、システム(「アクティブシステム」)の電流と、「充電電流」とを含むことが前提となっている。
したがって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には「アクティブシステム」が必要とする電流と「充電電流」とに関連を持たない「電力制御信号を生成する段階」や「電源により生成される電流の総量」に係る記載はない。
これに対し、訂正事項1に係る「電源により生成される電流の総量が所定の閾値を超過する量に比例した電力制御信号を生成する段階」は、「アクティブシステム」への電流や「充電電流」にかかわらず電力制御信号を生成するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であるとはいえない。
また、特許請求の範囲の請求項13に係る訂正の、訂正事項1、2、3すべてを総合しても、特許請求の範囲の請求項13に「電源により生成される電流の総量が所定の閾値を超過する量に比例した電力制御信号を生成する段階」の構成を付加することについて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であるとはいえない。
そうすると、訂正事項1による、特許請求の範囲の請求項14に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合しない。
(イ)訂正事項1の訂正のうち、「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する段階」を、「前記電流制御信号、前記電圧制御信号、および前記電力制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する段階」と訂正すること、訂正事項2、訂正事項3について。
これらの訂正は、訂正前の請求項13に係る発明は、電流制御信号と電圧制御信号に基づいて、PWM信号のデューティサイクルを制御するものであるのに対して、訂正後の請求項13に係る発明を、電力制御信号も加えてPWM信号のデューティサイクルを制御するものとし、実質上特許請求の範囲を変更するものである。
したがって、訂正事項1~3による、特許請求の範囲の請求項13に係る訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合しない。
(ウ)訂正事項4について
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項14を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、引用する請求項(請求項13)が属する請求単位(請求項13及び14からなる一群の請求項)と独立した請求項として扱われることを求めるものではないから、訂正事項4の訂正の適否は、引用先の請求項(請求項13)の訂正(訂正事項1~3)の適否と一体に判断されるものである。
そうすると、訂正事項4は訂正の要件を満たしていない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1~4に係る訂正を認めない。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、請求項1~4、及び9~12からなる一群の請求項に係る訂正の訂正事項1~4を認めず、請求項5及び6からなる一群の請求項に係る訂正の訂正事項1(請求項5及び6の削除)を認め、請求項7及び8からなる一群の請求項に係る訂正の訂正事項1(請求項7及び8の削除)を認め、請求項13及び14からなる一群の請求項に係る訂正の訂正事項1~4を認めないので、本件特許の請求項1~4、9~14に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1~4、9~14に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである(以下、「請求項1に係る発明」を「本件特許発明1」といい、本件特許発明1~4、9~14を総称して「本件特許発明」という。)。
「【請求項1】
PWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって、
電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部と、
電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器と
を具備し、
補償キャパシタ、および、該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とは、共通のノードにおいて共に合計され、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減することを特徴とする回路。
【請求項2】
アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する電力制御部をさらに具備し、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とは、前記共通のノードにおいて共に合計され、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減することを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記電力制御部は、
前記電源により生成される電流の総量を感知するための、かつ、DC電源により生成される前記電流の総量を示す信号を生成するための感知増幅器と、
前記電源により生成される前記電流の総量を示す前記信号を、所定の電力閾値信号と比較する相互コンダクタンス増幅器と
を具備することを特徴とする請求項2に記載の回路。
【請求項4】
前記電源により生成される前記電流の総量を示す前記信号が前記電力閾値信号を超過する場合には、前記電力制御信号は、ゼロではない値を有することを特徴とする請求項3に記載の回路。
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】
固定周波数のノコギリ波信号を生成する発振器をさらに具備し、
前記比較器は、前記ノコギリ波信号と前記充電キャパシタ上の電圧の前記振幅とを比較し、かつ、前記充電キャパシタ上の電圧の前記振幅により調整されたデューティサイクルを有する前記PWM信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項10】
前記感知増幅器は、
感知抵抗と並列に連結された演算増幅器と、
前記演算増幅器の1入力とグラウンドとの間に連結されたスイッチと、
前記感知抵抗と前記演算増幅器の前記1入力との間に、および、前記スイッチと基準ノードとの間に、それぞれ配置された第1および第2利得抵抗と
を具備し、
前記演算増幅器は、感知抵抗を通る電流を感知し、前記感知抵抗を通る前記電流は、前記電池に供給される前記電流を示し、
前記スイッチの伝導状態は、前記演算増幅器の出力により制御され、
前記電池に供給される前記充電電流を示す前記信号は、前記第2抵抗と前記スイッチとの間のノードから得られることを特徴とする請求項3に記載の回路。
【請求項11】
前記アクティブシステムは、携帯用コンピュータを具備することを特徴とする請求項2に記載の回路。
【請求項12】
前記DC電源は、AC/DCアダプターを具備することを特徴とする請求項3に記載の回路。
【請求項13】
PWM信号のデューティサイクルを制御するための方法であって、
電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する段階と、
電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する段階と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する段階と
を具備し、
前記補償キャパシタを充電する段階と、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とを、共通のノードにおいて共に合計する段階と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号に基づいて、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルを低減させる段階と
をさらに具備することを特徴とする方法。
【請求項14】
アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する段階と、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とを、前記共通のノードにおいて共に合計する段階と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号に基づいて、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルを低減させる段階と
をさらに具備することを特徴とする請求項13に記載の方法。」
第4 無効理由についての当事者の主張
1 請求人が主張する無効理由の概要
無効理由1:特許法第29条第1項第3号、第2項(同法第123条第1項第2号)
本件特許発明1は、甲第2号証発明と同一の発明である。また、また、仮に微差が存在するとしても当業者が容易になし得る程度のものでしかなく、本件特許発明は甲第2号証発明から容易に想到し得たものである。
本件特許発明2~4、9、11、12は、甲第2号証発明と同一の発明である。また、仮に微差が存在するとしても、当業者が容易になし得る程度のものでしかなく、本件特許発明2~4、9、11、12は甲第2号証発明から容易に想到し得たものである。
本件特許発明10は、甲第2号証発明に甲第5号証に記載された回路構成を適用することにより当業者が容易に想到し得たものである。
本件特許発明13、14は、それぞれ、本件特許発明1、2とカテゴリーが相違するのみで実質的に新規な内容はないものであり、同様の理由により、甲第2号証発明と同一の発明であるか、仮に微差が存在するとしても、当業者が容易になし得る程度のものでしかなく、本件特許発明13、14は甲第2号証発明から容易に想到し得たものである。(審判請求書3~6頁)
無効理由2:特許法第29条第1項第3号、第2項(同法第123条第1項第2号)
本件特許発明1は、甲第3号証発明と同一の発明である。また、仮に微差が存在するとしても、当業者が容易になし得る程度のものでしかなく、本件発明1は甲第3号証発明から容易に想到し得たものである。
本件特許発明9は、甲第3号証発明と同一の発明である。また、仮に微差が存在するとしても、当業者が容易になし得る程度のものでしかなく、本件特許発明9は甲第3号証発明から容易に想到し得たものである。また、本件特許発明2~4は、甲第3号証発明に甲第4号証に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易に想到し得たものであり、本件特許発明10は、甲第3号証発明に甲第4号証に記載された技術事項及び甲第5号証に記載された回路構成を適用することにより当業者が容易に想到し得たものである。本件特許発明13は、本件特許発明1とカテゴリーが相違するのみで実質的に新規な内容はないものであり、同様の理由により、甲第3号証発明と同一の発明であるか、仮に微差が存在するとしても、当業者が容易になし得る程度のものでしかなく、本件特許発明13は甲第3号証発明から容易に想到し得たものである。
本件特許発明14は、本件特許発明2とカテゴリーが相違するのみで実質的に新規な内容はないものであり、同様の理由により、当業者が容易に想到し得たものである。(審判請求書6、7頁)
無効理由3:特許法第36条第6項第2号(同法第123条第1項第4号)
本件特許発明1には、「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器」との記載があり、また、本件特許発明13には、「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する段階」との記載がある。
しかしながら、電流制御信号、電圧制御信号の振幅に関し、電流制御信号、電圧制御信号の振動の中心位置および変位の最大値が何であるかが不明であるとともに、電流制御信号、電圧制御信号の「振幅」に基づいてどのようにPWM信号が生成されるのかも不明である。また、この点に関し、本件明細書をみても、補償キャパシタの充電電圧値に基づいてPWM信号を生成する点が記載されているのみで、電流制御信号、電圧制御信号の電流値の「振幅」に基づいてPWM信号を生成することなどは一切記載されていないから、本件特許の明細書の記載を参酌しても、その構成は不明なものと言わざるを得ない。
その余の発明は、請求項1、13を直接的又は間接的に引用するものであるから、やはり同様の瑕疵を有するものである。
また、本件特許発明10は、図2に示される回路により裏付けられているものと理解されるところ、後述するように(無効理由5参照)、図2の回路では正常な動作を達成できないから、本件特許発明10に記載された構成は動作不能であり、本件特許発明10には正常な動作を達成するための構成が記載されていない。(審判請求書7,8頁)
無効理由4:特許法第36条第6項第1号(同法第123条第1項第4号)
本件明細書をみても、補償キャパシタの充電電圧値に基づいてPWM信号を生成する点が記載されているのみで、電流制御信号、電圧制御信号の電流値の「振幅」に基づいてPWM信号を生成することなどは一切記載されていないから、本件特許発明1、13はサポート要件違反に該当する。
その余の発明は、請求項1、13を直接的又は間接的に引用するものであるから、やはり同様にサポート要件違反に該当するものである。(審判請求書8頁)
無効理由5:特許法第36条第4項第1号(同法第123条第1項第4号)
本件特許発明10の裏付けとなる図2に示される回路では、明細書の段落【0012】に記載されるような「スイッチが、Rschを横切って現れかつ電源に接続されていない(floating)差動電圧を、自身の基準をグラウンドとすることにより、かつ、R2/R1により与えられる利得に従って該電圧を増幅することにより、転送する」という動作は実現できない。
したがって、本件出願は実施可能要件違反に該当する。(審判請求書8、9頁)
2 請求人の提出した証拠方法
甲第1号証:特許第3893128号公報(本件特許公報)
甲第2号証:データシート(bq24700,bq24701 NOTEBOOK PC CHARGE CONTROLLER AND SELECTOR WITH DPM)(2001年4月発行)
甲第3号証:データシート(High Frequency Switch Mode Dual Li-Ion Battery Chargers ADP3801/ADP3802)(1998年発行)
甲第4号証:データシート(Low-Cost, Multichemistry Battery-Charger Building Block MAX1772)(2000年7月発行)
甲第5号証:データシート(OZ950-DS-1.05 Smart Battery Charger Controller)(1998年4月29日発行)
甲第6号証:陳述書(ジョセフ・カヤット) (TI従業員カヤット氏の陳述書)
甲第7号証:宣誓供述書(クリストファー・バトラー)(インターネットアーカイブのオフィスマネージャーであるバトラー氏の陳述書)
甲第8号証の1、2:送り状(TI社の現地法人の製品伝票)
甲第9号証:アナログ及びミックスドシグナル製品カタログ
甲第10号証:ウェッブページ(http://www.all-electronics.de/texte/anzeigen/28694/Notebook-Laderegler-bq2470x)のプリントアウト
甲第11号証:米国仮出願60/313,260号明細書(本件の米国仮出願明細書)
甲第12号証:HTMLソースファイルのプリントアウト
甲第13号証:データシート(bq24700,bq24701 NOTEBOOK PC CHARGE CONTROLLER AND SELECTOR WITH DPM)(SLUS452B-2001年4月-2002年11月改訂)
甲第14号証:Internet Archive による アナログデバイスの製品ウェブページの1998年12月7日付け保存記録
甲第15号証:EE Times 記事 Regulator ICs keep tight tabs on notebook power use(1999年2月26日付け)
甲第16号証:Analog Dialogue Vol.31, No.3, 1997
甲第17号証:ADP3801のウェブページ(http://www.analog.com/en/obsolete/adp3801/products/product.html#)の写し
甲第18号証:データシート(High Frequency Switch Mode Dual Li-Ion Battery Chargers ADP3801/ADP3802)(Rev.0 1998年発行)
甲第19号証:甲2の充電電流による制御に関する補足説明資料
甲第20号証:濱崎教授鑑定書
甲第21号証:シミュレーション結果報告書
甲第22号証:電気電子用語の定義:TRANCECONDUCTANCE AMPLIFIER(http://www.maximintegrated.com/jp/glossary/definitions.mvp/term/Transimpedance%20Amplifier/gpk/316のコピー)
甲第23号証:Operational Transconductance Amplifier and Analog Integrated Circuit, Tahira Parveen, International Publishing House,2012
甲第24号証:ANALYSIS OF BIPOLAR AND CMOS AMPLIFIER, AMIR M. SODAGAR, CRC Press 2007
甲第25号証:Wireless Communication Electronics, Robert Sobot,Springer, 2012
甲第26号証:APPLICATIONS AND DESIGN WITH ANALOG INTEGRATED CIRCUITS,J.Michael Jacob,Regents/Prentice Hall,1993
甲第27号証:アナログ電子回路設計入門、岡山努、コロナ社、2007
甲第28号証:教えて?わかった!アナログ電子回路、小浜輝彦、オーム社2012
甲第29号証:Design and Manufacturing of Active Microsystems,S.Buttgenbach,Springer,2011
甲第30号証:SIMPLIFIED DESIGN OF SWITCHING POWER SUPPLIES, John D.Lenk,EDN,1995
甲第31号証:Analog-to-Digital Conversion, Marcel J.M. Pelgrom,Springer, 2013
甲第32号証:バイポーラトランジスタDSC3G03データシート、パナソニック社、2014年3月
甲第33号証:デザインノート194(1998年発行)
甲第34号証:データシート「PIC16(L)F1508/9」(2014年発行)
3 被請求人の主張の概要
無効理由1について
本件特許発明1~4及び9~14は、新規性及び進歩性を有するものであり、特許法第29条第1項第3号、第2項には該当しないものである。(答弁書5頁)
無効理由2について
本件特許発明1~4、及び、9~14は、新規性及び進歩性を有するものであり、特許法第29条第1項第3号、第2項に該当しないものである。(答弁書12頁)
無効理由3及び無効理由4の「振幅」について
本件特許発明1においては、本件明細書によれば、「振幅」を含む構成要件D1の意義は明らかである。他の本件特許発明についても同様である。
次いで、用語「振幅」についても、本件明細書によれば、端的に「値」を意味することが明らかである。
構成要件D1は、本件明細書にサポートされており、また、「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の値に関連して、PWM信号を生成する比較器とを具備し、」を意味することが明らかであって、不明な点はない。他の本件特許発明についても同様である。(答弁書19頁)
無効理由3の本件特許発明10と、図2に示される回路について
本件特許発明10と、図2に示される回路については、正常な動作を達成できるものであり、請求人の、請求項10の構成が本件特許の明細書からは不明であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないとの主張は、失当である。(答弁書19頁)
無効理由5について
図2の回路は、電流の方向が逆であるという軽微な瑕疵が見られるものの、正しく動作することが当業者にとって容易に理解されるものである。(答弁書22~25頁)
4 被請求人の提出した証拠方法
乙第1号証:無効2004-80208審決公報
乙第2号証:岩波書店発行「広辞苑 第五版」
乙第3号証:国際公開第2003/017413号
乙第4号証:小学館発行 ランダムハウス英和大辞典
乙第5号証:マイクロチップテクノロジーインコーポレイテッド製の製品「PIC16LF1554/1559」のデータシート
第5 無効理由1、2についての当審の判断
1 甲号証記載事項および甲号証記載発明
(1)甲第2号証(データシート(bq24700,bq24701 NOTEBOOK PC CHARGE CONTROLLER AND SELECTOR WITH DPM))
ア 甲第2号証の引例適格性について当審の判断
ア-1 請求人の主張
請求人は、甲第2号証の公知性について以下のように主張している。
「甲第2号証はウェブ上で公表されたデータシートであり、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を開示するものである。
1-2.甲第2号証の公表日時の証明について
甲第2号証が本件特許出願の優先権主張日前に公表されていることの立証に関しては弁駁書において詳述したところであるが、その要点を取りまとめると以下のとおりである。
(1)甲第2号証の表紙に2001年4月との記載があること。
データシートの目的は公衆に対して製品の機能・特性・使用法等を説明することであり、データシート上の日時の記載は、特段の事情がない限り、その公表日時を示すものであることからすると、かかる事実は甲第2号証の公表日時が2001年4月であることを直接根拠づけるものである。
(2)甲第6号証(カヤット氏の陳述書)では、(i)公衆がTIのウェブサイトにおいてTI製品のデータシートにアクセス可能であったこと、(ii)甲第2号証が2001年4月にTIのウェブサイトで公表されたことが明らかにされている。
この陳述は、甲第2号証がTIのウェブで2001年4月に公表され、公衆により利用可能であったことを直接根拠づけるものである。
(3)甲第7号証(バトラー氏の宣誓陳述書)では、下記の(i)及び(ii)の事実を示すTIの製品公表ウェブページが2001年6月17日にアーカイブされ、また、下記(iii)の事実を示す甲第2号証にかかる製品の製品ウェブページが2001年6月21日にアーカイブされたことが明らかにされている。
(i)甲第2号証は製品データシートであるが、その製品(bq24700、bq24701)が2001年4月26日に発表された
(ii)当該製品(bq24700、bq24701)の公表時にそのデータシートが公衆により入手可能であった
(iii)甲第2号証の版番はSLUS452Aであるところ、その版番をファイル名とする電子ファイルが、データシートとの標題の下で、TIの当該製品(bq24700)のウェブページでアクセス可能であった
上記(i)、(ii)の事実は、甲第2号証の公表日時が2001年4月であることを直接根拠づけるものである。また、上記(iii)の事実は、甲第2号証がTIのウェブで2001年4月に公衆により利用可能であったことを直接根拠づけるものである。そして、甲第7号証における中立な第三者の陳述と、2001年6月17日および2001年6月21日のウェブページの機械的かつ正確なアーカイブ記録は、上記(i)、(ii)、(iii)の事実を示すウェブページが2001年6月時点において確かに存在したことを示しており、上記(i)、(ii)、(iii)の事実、ひいては甲第2号証がTIのウェブで2001年4月に公表され、公衆により利用可能であったことを根拠づけるものである。
(4)甲第8号証の1では、(i)当該製品(bq24701)が2001年8月6日に出荷されたこと、甲第8号証の2では、(ii)当該製品(bq24701)が2001年8月13日に出荷されたことが明らかにされている。
上記(i)、(ii)の事実は、高度な機能を集積したICの販売が、その機能や使用法を把握しないままに行われることはないことからすれば,2001年8月以前に当該製品(bq24700,bq24701)のデータシートが公表されていたことを示すものであり、甲第2号証がTIのウェブで2001年4月に公表され、公衆により利用可能であったことと整合する。
さらに言えば、上記(i)、(ii)のIC製品の出荷日時は、本件特許の優先権主張日である2001年8月17日より前であり、甲第8号証の1及び甲第8号証の2によっても、本件特許の優先権主張日より前に当該製品(bq24701)のデータシートである甲第2号証が公衆に利用可能であったことが根拠づけられていると言える。
(5)甲第9号証では、2001年第2四半期(4月-6月)に当該IC製品(bq24700、bq24701)のデータシートが当該製品のウェブページにおいて公衆により入手可能であったことが明らかにされている。
かかる事実は、2001年第2四半期(4月-6月)にTIのウェブページにおいてデータシートが公表されていたことを示すものであり、甲第2号証がTIのウェブで2001年4月に公表され、公衆により利用可能であったことと整合する。
さらに言えば、甲第9号証により特定されるのは2001年第2四半期(4月-6月)という幅を持った期間であり、2001年4月という日時を直接に特定するものではないが、当該期間は本件特許の優先権主張日である2001年8月17日より前であり、甲第9号証によっても、本件特許の優先権主張日より前に当該製品(bq24700、bq24701)のデータシートである甲第2号証が公衆に利用可能であったことが根拠づけられていると言える。
(6)甲第10号証では、2001年6月1日において、当該製品(bq24700、bq24701)及びそのデータシートが、TI及び商社で入手可能であったことが明らかにされている。
かかる事実は、2001年6月1日以前に当該製品(bq24700、bq24701)のデータシートが公表されていたことを示すものであり、甲第2号証がTIのウェブで2001年4月に公表され、公衆により利用可能であったことと整合する。
さらに言えば、甲第10号証により特定されるのは2001年6月1日という日時であり、2001年4月という日時を直接に特定するものではないが、2001年6月1日は本件特許の優先権主張日である2001年8月17日より前であり、甲第10号証によっても、本件特許の優先権主張日より前に当該製品(bq24701)のデータシートである甲第2号証が公衆に利用可能であったことが根拠づけられていると言える。2001年4月という日時を離れても、本件特許の優先権主張日より前に当該製品(bQ24700、bq24701)のデータシートである甲第2号証が公衆に利用可能であったことが根拠づけられていると言える。
以上のように、甲第2号証がTIのウェブサイトで2001年4月に公表され、公衆により利用可能であったことは、甲第2号証自体の記載、甲第2号証の発行者であるTIの担当者の陳述(甲第6号証)、第三者の陳述やアーカイブ記録(甲第7号証)により根拠づけられており、また、それに整合する事実も、製品の出荷記録(甲第8号証)、製品力タログの記載(甲第9号証)およびドイツのウェブページ(甲第10号証)といったように多々あり、日時の証明として十分なものである。さらに。2001年4月という日時を措いても、甲第2号証及び甲第6~10号証により、本件特許の優先権主張日より前に甲第2号証が公衆に利用可能であったことが根拠づけられており、甲第2号証の先行技術性に疑いをさしはさむ余地はない。
(イ)甲第2号証の改変の可能性について
上記(2)(ii)及び(3)(iii)により、2001年4月にウェブで公表された当該製品(bq24700、bq24701)のデータシートは版番がSLUS452Aであるデータシート、すなわち甲第2号証であることが明らかにされており、2001年4月にウェブで公表されたデータシートと甲第2号証は同一のものである。さらに、甲第6号証(カヤット氏の陳述書)では、当該製品(bq24700、bq24701)の公衆に公表されたデータシートとして、甲第2号証であるA版と、その改訂版であるSLUS452B、すなわちB版(甲第13号証)があることが明らかにされている。この事実は改訂があった場合には版番が繰り上がることを示しており、同じ版番内(A版内)で改変がされることはない。また、改訂版である甲第13号証と甲第2号証とを対比しても特段の改訂が認められないことからみても、甲第2号証の改変がなされていないことを推認し得るものである。さらに、甲第13号証には、「SLUS452B-APRIL2001-REVISED NOVEMBER2002」との記載があり、2001年4月から2002年11月までの期間に改訂がなかったことは明らかである。」(平成27年2月13日付け回答書3~6頁、但し回答書中の記号について○の中に数字1~3で記載された箇所は、「(i)、(ii)、(iii)」と記載した。)
ア-2 被請求人の主張
これに対して、被請求人は、平成27年6月9日付け口頭審理陳述要領書において、「被請求人は以下のように、甲第6~10号証、及び、甲第13号証がいずれも、甲第2号証自体が公開されたことを示す直接的な証拠となっていないものである、と思料いたします。
まず、請求人は、TI従業員カヤット氏の陳述書(甲第6号証)に依拠し、「無効文献1は2001年4月にTIのウェブサイトでbq24700、bq24701が市場にアナウンスされた際、ほぼ同時にTIのウェブサイトで公表された」と主張しています(審判事件弁駁書5頁)。すなわち、カヤット氏は、「その製品アナウンスとほぼ同時に(注:at about the same time)、TIは“SLUS452A-APRIL-2001”と標題の付されたデータシートをTIのウェブサイトで公表しました。」(甲第6号証、下線付加)と陳述しているのであって、甲第2号証の公表時期につき、明言を明らかに避けています。甲第2号証のデータシートが2001年4月中にウェブサイトで公衆に公表されたものであるか否かは、不明であり、本件特許の優先日前に公知となっていたことは、まったく示されていないものです。また、請求人は、インターネットアーカイブのバトラー氏の陳述書(甲第7号証)に依拠し、製品bq24700、bq24701が2001年にアナウンスされたと縷々主張しています(審判事件弁駁書5~7頁)。しかしながら、請求人は、甲第2号証の内容が本件特許の優先日前に公知となっていたことは、まったく示すことができていないものです。たとえば、請求人は甲第7号証の5枚目に以下のようなリンクが示されていることを理由に、甲第2号証が2001年4月26日に公衆に公開されていたと主張するものの、請求人が依拠するバトラー氏自身、「インクーネットアーカイブにより割り当てられた日付はHTMLファイルに適用されますが、そこでリンクされている画像ファイルには適用されません。」(甲第7号証、下線付加)と陳述しており、リンク先のファイルに関しては、インターネットアーカイブの保存記録は意味を持たないことを認めています。
また、請求人は、2001年8月にbq24701がドイツ及びイギリスへ出荷されたことを製品伝票(甲第8号証の1、甲第8号証の2)に依拠し、主張しています(審判事件弁駁書7~8頁)。しかしながら、本件特許の優先日前に甲第2号証が公衆に公開されていたことを客観的に示す事実は何一つ提示されておらず、この主張は失当です。請求人は、甲第9号証のカタログに製品bq24700、bq24701が掲載されていることも主張するものの(審判事件弁駁書8頁)、やはり、本件特許の優先日前に甲第2号証が公衆に公開されていたことを客観的に示す事実は何一つ提示されておらず、このことは、甲第10号証のインターネット記事(審判事件弁駁書8頁)についてもまったく同様です。なお、請求人は、甲第13号証を参照し、「さらに、甲第6号証(カヤット氏の陳述書)では、当該製品(bq24700、bq2470l)の公衆に公表されたデータシートとして、甲第2号証であるA版と、その改訂版であるSLUS452B、すなわちB版(甲第13号証)があることが明らかにされている。この事実は改訂があった場合には版番が繰り上がることを示しており、同じ版番内(A版内)で改変がされることはない。また、改訂版である甲13号証と甲第2号証とを対比しても特段の改訂が認められないことからみても、甲第2号証の改変がなされていないことを推認し得るものである。さらに、甲第13号証には、「SLUS452B-APRIL2001-REVISED NOVEMBER2002」との記載があり、2001年4月から2002年11月までの期間に改訂がなかったことは明らかである。」と述べています(平成27年2月13日提出の回答書の6頁)。しかし、請求人のこのような主張は、本件特許の優先日前に甲第2号証が公衆に公開されていたことを客観的に示す事実を何一つ提示するものではありません。即ち、請求人によれば、甲第13号証が甲第2号証の改訂版であるとのことですが、甲第6号証は、客観的にこれを証明するものではありません。「この事実は改訂があった場合には版番が繰り上がることを示しており、同じ版番内(A版内)で改変がされることはない」についても、なんらの客観的証拠もありません。仮に、甲第13号証が甲第2号証号証の改訂版であったと仮定しても、「改訂版である甲第13号証と甲第2号証とを対比しても特段の改訂が認められないこと」から「甲第2号証の改変がなされていないことを推認し得るものである」と単純に導き出せるはずがありません。というのは、甲第2号証と甲第13号証の間の差異がわずかであるとしても、これが単なる偶然であることを否定し得るものではないためです。換言すれば、甲第2号証がそもそも改訂版であり、かつ、甲第2号証号証が当初のデータシートに対して大幅な変更を加えたものである可能性を否定するものとはなり得ません。更に、請求人によれば、「甲第13号証には、「SLUS452B-APRIL2001-REVISED NOVEMBER2002」との記載があり、2001年4月から2002年11月までの期間に改訂がなかったことは明らかである」とのことです。しかし、「SLUS452B-APRIL2001-REVISED N0VEMBER2002」との記載は、単に何らかの変更があったことを示唆し得るに過ぎず、甲第13号証が公衆に公開されたことを示す客観的な証拠とはなりません。当然、本件特許の優先日前に甲第2号証が公衆に公開されていたことを客観的に示す事実を何一つ提示するものでもありません。」(口頭審理陳述要領書3~5頁)と主張している。
ア-3 当審の判断
甲第2号証は、そのタイトル、著作権表示や下部に頁番号が振られている等の体裁から見て、型番がbq24700、bq24701であるノートPCのバッテリーのための充電コントローラである製品の技術仕様を公表することを目的としたデータシートである。
甲第10号証によれば、型番がbq24700、bq24701であるバッテリ充電制御ICが、本件出願の優先権主張日(2001年(平成13年)8月17日)前である2001年6月1日において、テキサスインスツルメンツインコーポレイテッド(TI)及びその権限のある商社において販売されており、この購入者において、データシート等の製品資料も入手可能であったことが認められる。また、甲第6号証を併せてみれば、インターネット回線を介してこのデータシートを入手可能であったものと認められる。
そして、データシート上の日時の記載は、一般的には公表日時を示すものと認められるところ、甲第2号証はその表紙に2001年4月の記載があり、甲第2号証が2001年4月に公表されたものであることは、特段の事情がない限り推認されるものである。
請求人の提出した証拠(甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証の1、甲第8号証の2、甲第9号証、甲第10号証)は、甲第2号証の公表日や公表手段を直接的に証明するものではないが、これらの証拠に基づき請求人が主張する事項は、甲第2号証が本件出願の優先権主張日(2001年(平成13年)8月17日)前にインターネット上に公表されていたことと整合するものである。
また、請求人の提出した証拠(甲第6号証、甲第13号証)は、改変の可能性がないことについて直接的に証明するものではないが、これらの証拠に基づき請求人の主張する事項は、2001年4月から2002年11月までの期間に改訂がなかったことと整合するものである。
一方、被請求人の主張は、甲第2号証の公表日が、2001年4月ではないことを証明するものでも、甲第2号証が本件出願の優先権主張日(2001年(平成13年)8月17日)前にインターネット上に公表されていないことを証明するものでもなく、請求人の主張を覆すに足りるものではない。
したがって、甲第2号証は、本件出願の優先権主張日よりも前にウェブ上で公表されたデータシートであって、少なくとも電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を示すものである。
イ.甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、次の事項が図面とともに記載されている。摘示箇所の邦訳は請求人が記載したものを記す。
なお、被請求人は邦訳に対し、疑義を申し立てていない。
(ア)1頁「description」の第1~3段落
「The bq24700/bq24701 is a highly integrated battery charge controller and selector tailored for the notebook and sub-notebook PC applications.
The bq24700/bq24701 uses Dynamic Power Management TM(審決注:TMは商標マーク) (DPM) to minimize battery charge time by maximizing use of available wall-adapter power. This is achieved by dynamically adjusting the battery charge current based on the total system (adapter) current.
The bq24700/bq24701 uses a fixed frequency, pulse width modulator (PWM) to accurately control battery charge current and voltage.」
(bq24700/bq24701は、ノートPC及びサブノートPCアプリケーションに合わせて設計された高集積バッテリ充電コントローラ及びセレクタである。
bq24700/bq24701は、動的電力管理(商標)(DPM)を用いて、利用可能なACアダプタ電力の使用を最大にすることによってバッテリ充電時間を最小限にする。これは、総システム(アダプタ)電流に基づいてバッテリ充電電流を動的に調整することによって実現される。
bq24700/bq24701は、固定周波数パルス幅変調(PWM)を用いて、バッテリ充電電流及び電圧を正確に制御する。)
(イ)3頁「ブロック図」
block diagram
(ウ)9頁「pin assignments」の第3段落
「ACN, ACP: Negative and positive differential inputs, respectively for ac-to-dc adapter current sense resistor.」
(ACN、ACP :それぞれAC-DCアダプタ電流感知抵抗に対する負及び正の差動入力。)
(エ)10頁第1段落
「ACSET: Adapter current programming voltage. This input sets the system current level at which dynamic power management occurs. Adapter currents above this programmed level activate the dynamic power management and proportionally reduce the available power to the battery.」
(ACSET:アダプタ電流プログラミング電圧。この入力は、動的電力管理が行われるシステム電流レベルを設定する。アダプタ電流がこのプログラムされたレベルよりも大きくなると、動的電力管理が作動し、バッテリへの利用可能な電力を比例減少させる。)
(オ)10頁第5段落
「BATP: Battery charge regulation voltage measurement input to the battery-voltage gm amplifier. The voltage on this pin is typically derived from a voltage divider network connected across the battery. In a voltage loop, BATP is regulated to the 1.25 V, ±0.5% precision reference of the battery voltage gm amplifier.」
(BATP:バッテリ電圧gmアンプへのバッテリ充電調節電圧測定入力。このピンの電圧は、典型的には、バッテリの両端に接続される電圧分割器回路網から得られる。電圧ループにおいて、BATPは、バッテリ電圧gmアンプの1.25V、±0.5%の高精度基準に調節される。)
(カ)10頁第7段落
「COMP: The inverting input to the PWM comparator and output of the gm amplifiers. A type II compensation network between COMP and GND is recommended.」
(COMP:PWMコンパレータヘの反転入力及びgmアンプの出力。COMPとGNDの間のタイプII補償回路網が推奨される。)
(キ)10頁第11段落
「PWM: Gate drive output pin drives the P-channel MOSFET for PWM control. The PWM control is active when ACPRES, ACSEL, and ENABLE are high. PWM is driven low to VHSP and high to VCC.」
(PWM:ゲート駆動出力ピンは、PWM制御用のPチャネルMOSFETを駆動する。PWM制御は、ACPRES、ACSEL、及びENABLEがハイになるとアクティブになる。PWMは、ローに駆動されてVHSPになり、ハイに駆動されてVCCになる。」
(ク)10頁第12段落
「SRN, SRP: Differential amplifier inputs for battery current sense. These pins feed back the battery charge current for PWM control. SRN is tied to the battery terminal.」
(SRN、SRP:バッテリ電流感知用の差動増幅器入力。これらのピンは、PWM制御のためにバッテリ充電電流をフィードバックする。SRNはバッテリ端子に結合される。)
(ケ)11頁「図1.典型的なノートブック充電管理アプリケーション」
(コ)11頁「dynamic power management」の項
「The Dynamic Power Management (DPM) feature allows a cost effective choice of an ac wall-adapter that accommodates 90% of the system's operating-current requirements. It minimizes battery charge time by allocating available power to charge the battery (i.e. IBAT = IADPT -ISYS). If the system plus battery charge current exceeds the adapter current limit, as shown in Figure 2, the DPM feature reduces the battery charge current to maintain an overall input current consumption within user defined power capability of the wall-adapter. As the system's current requirements decrease, additional current can be directed to the battery, thereby increasing battery charge current and minimizing battery charge time.」
(動的電力管理(DPM)機能により、システムの動作電流要件の90%を賄うACアダプタの経済的な選択が可能になる。DPMにより、利用可能な電力を割り当ててバッテリを充電する(すなわち、IBAT=IADPT-ISYS)ことによってバッテリ充電時間が最小限になる。図2に示すように、システム電流とバッテリ充電電流の和がアダプタ電流制限よりも大きくなると、DPM機能は、バッテリ充電電流を下げて、入力電流消費全体をACアダプタのユーザ規定電力性能内に維持する。システムの電流要件が低減されると、付加的な電流をバッテリに送ることができ、それによって、バッテリ充電電流が増え、バッテリ充電時間が最小限になる。)
(サ)12頁「図2.動的電力管理」
(シ)12頁「APPLICATION INFORMATION」の項
「The DPM feature is inherently designed into the PWM controller by inclusion of the three control loops, battery-charge regulation voltage, battery-charge current, and adapter-charge current, refer to Figure 3. If any of the three user programmed limits are reached, the corresponding control loop commands the PWM controller to reduce duty cycle thereby reducing the battery charge current.」
(DPM機能は、バッテリ充電調節電圧、バッテリ充電電流、及びアダプタ充電電流の3つの制御ループを含めることによって、PWMコントローラに組み込まれるように本質的に設計されている。PWMコントローラについては図3を参照されたい。ユーザによりプログラムされるこれら3つの制限のいずれか1つに達した場合、対応する制御ループがPWMコントローラに対してデューティサイクルを減少させるように指令し、これにより、バッテリ充電電流が減少する。)
(ス)13頁「battery charger operation」の第1段落~第3段落
「The bq24700/bq24701 fixed-frequency, PWM controller is designed to provide closed-loop control of battery charge-current (ICH) based on three parameters, battery-float voltage (VBAT), battery-charge current, and adapter charge current (IADPT). The bq24700/bq24701 is designed primarily for control of a buck converter using a high side P-channel MOSFET device (SW, refer to Figure 3).
The three control parameters are voltage programmable through resistor dividers from the bq24700/bq24701 precision 5-V reference, an external or internal precision reference, or directly via a DAC interface from a keyboard controller.
Adapter and battery-charge current information is sensed and fed back to two transconductance (gm) amplifiers via low-value-sense resistors in series with the adapter and battery respectively. Battery voltage information is sensed through an external resistor divider and fed back from the battery to a third gm amplifier.」
(bq24700/bq24701の固定周波数PWMコントローラは、バッテリフロート電圧(VBAT)、バッテリ充電電流、及びアダプタ充電電流(IADPT)の3つのパラメータに基づいてバッテリ充電電流(ICH)の閉ループ制御を提供するように設計されている。 bq24700/bq24701は、主に、ハイサイドPチャネルMOSFETデバイス(SW、図3参照)を用いるバックコンバータを制御するように設計されている。
これら3つの制御パラメータは、bq24700/bq24701の高精度5V基準から抵抗分割器を介して、外部又は内部高精度基準を介して、或いは、キーボードコントローラから直接DACインターフェースを介して、電圧によりプログラマブルである。
それぞれアダプタ及びバッテリと直列の低抵抗値の感知抵抗器を介してアダプタ電流情報及びバッテリ充電電流情報が感知され、2つのgmアンプ(gm)にフィードバックされる。バッテリ電圧情報は、外部抵抗分割器を介して感知され、バッテリから第3のgmアンプにフィードバックされる。)
(セ)13頁「図3.PWMコントローラ・ブロック図」
(ソ)14頁「PWM operation」の第1段落
「The three open collector gm amplifiers are tied to the COMP pin (refer to Figure 3), which is internally biased up by a 100μA constant current source. The voltage on the COMP pin is the control voltage (Vc) for the PWM comparator. The PWM comparator compares Vc to the sawtooth ramp of the internally fixed 300-kHz oscillator to provide duty cycle information for the PWM drive. The PWM drive is level shifted to provide adequate gate voltage levels for the external P-channel MOSFET.」
(3つのオープン・コレクターgmアンプは、100μA定電流源によって内部的にバイアスアップされるCOMPピン(図3参照)に結合される。COMPピンの電圧は、PWMコンパレータ用の制御電圧(VC)である。PWMコンパレータは、VCと、内部的に固定された300kHz発振器のノコギリ波とを比較して、PWM駆動用のデューティサイクル情報を提供する。PWM駆動は、外部PチャネルMOSFETに対して適切なゲート電圧レベルが提供されるようにレベルがずらされる。)
(タ)14頁「softstart」の第1段落
「When the bq24700/bq24701 PWM is enabled (ENABLE = High), the COMP pin is released and the 100μA pull-up is enabled (refer to Figure 3). The voltage on the COMP pin increases as the pullup charges the external compensation network connected to the COMP pin. As the voltage on the COMP pin increases the PWM duty cycle increases linearly as show in Figure 4.」
(bq24700/bq24701のPWMがイネーブルにされると(ENABLE=High),COMPピンが固定から解放され、100μAプルアップがイネーブルにされる(図3参照)。このプルアップがCOMPピンに接続された外部補償回路網を充電するので、COMPピンの電圧が増加する。COMPピンの電圧が増加すると、図4に示すようにPWMデューティサイクルは線形に増加する。)
(チ)14頁「図4」
(ツ)14頁最終段落
「As any one of the three controlling loops approaches the programmed limit, the gm amplifier begins to shunt current away from the COMP pin. The rate of voltage rise on the COMP pin slows due to the decrease in total current out of the pin, decreasing the rate of duty cycle increase. When the loop has reached the programmed limit the gm amplifier shunts the entire bias current (100μ A) and the duty cycle remains fixed. If any of the control parameters tries to exceed the programmed limit, the gm amplifier shunts additional current from the COMP pin, further reducing the PWM duty cycle until the offending parameter is brought into check.」
(3つの制御ループのいずれか1つがプログラムされた制限に近づくと、gmアンプはCOMPピンから電流を分路し始める。COMPピンの電圧の上昇速度は、このピンから出る電流の合計が減少するために遅くなり、そのため、デューティサイクルの増加速度が小さくなる。このループがプログラムされた制限に達すると、gmアンプがバイアス電流全体(100μA)を分路し、デューティサイクルは固定されたままになる。制御パラメータのいずれかがプログラムされた制限を超えようとした場合、gmアンプは、さらなる電流をCOMPピンから分路して、制限を超えようとするパラメータの超過が防止されるまでPWMデューティサイクルがさらに減少する。)
(テ)15頁「図5.バックコンバータにおける典型的なPWM波形(スタートアップを含む)」
(ト)15頁「setting the battery charge regulation voltage」の第1及び第2段落
「The battery charge regulation voltage is programmed through the BATSET pin, if the internal 1.25-V precision reference is not used. The BATSET input is a high-impedance input that is driven by either a keyboard controller DAC or via a resistor divider from a precision reference (see Figure 6).
The battery voltage is fed back to the gm amplifier through a resistor divider network. The battery charge regulation voltage can be defined as:
」
(バッテリ充電調節電圧は、内部1.25V高精度基準が用いられない場合、BATSETピンを介してプログラムされる。BATSET入力は、キーボードコントローラDACによって、又は高精度基準から抵抗分割器を介して駆動されるハイインピーダンス入力である(図6参照)。
バッテリ電圧は、抵抗分割器回路網を介してgmアンプにフィードバックされる。バッテリ充電調節電圧は、下記のように定義することができる。
」
(ナ)16頁「図6.バッテリ誤差増幅器入力のマルチプレクシング・スキーム」
(ニ)16頁「programming the battery charge current」の第1段落
「The battery charge current is programmed via a voltage on the SRSET pin. This voltage can be derived from a resistor divider from the 5-V VREF or by means of an DAC. The voltage is converted to a current source that is used to develop a voltage drop across an internal offset resistor at one input of the SR gm amplifier. The charge current is then a function of this voltage drop and the sense resistor (Rs), refer to Figure 7.」
(バッテリ充電電流は、SRSETピンの電圧を介してプログラムされる。この電圧は、5V VREFから抵抗分割器を介して、又は、DACを用いて得ることができる。この電圧は、SRgmアンプの1つの入力に対する内部オフセット抵抗器の両端に電圧降下を生成する電流源に変換される。充電電流は、この電圧降下及び感知抵抗器(Rs)の関数になる。充電電流については図7を参照されたい。)
(ヌ)17頁「図7.バッテリ充電電流入力閾値機能」とそれに続く記載
・図7に続く記載
「The battery charge current can be defined as:
where VSRSET is the programming voltage on the SRSET pin. VSRSET maximum is 2.5 V.」
(バッテリ充電電流は下記のように定義される。
ここで、VSRSETはSRSETピンのプログラミング電圧である。VSRSETの最大値は2.5Vである。)
(ネ)17頁「programming the adapter current」の第1段落
「Like the battery charge current described previously, the adapter current is programmed via a voltage on the ACSET pin. That voltage can either be from an external resistor divider from the 5-V VREF or from an external DAC. The adapter current is defined as:
」
(上述のバッテリ充電電流と同様に、アダプタ電流は、ACSETピンの電圧を介してプログラムされる。この電圧は、5V REFから外部抵抗分割器を介して、又は外部DACから得られる。アダプタ電流は下記のように定義される。
)
(ノ)19頁「compensating the loop」の第1段落
「For the bq24700/bq24701 used as a buck converter, the best method of compensation is to use a Type II compensation network from the output of the transconductance amplifiers (COMP pin) to ground (GND) as shown in Figure 8. A Type II compensation adds a pole-zero pair as well as an addition pole at dc.」
(bq24700/bq24701がバックコンバータとして用いられる場合、最良の補償方法は、図8に示すように、gmアンプの出力(COMPピン)から接地(GND)まで、タイプIIの補償回路網を用いることである。タイプIIの補償により、DCでの追加のポールに加えて、ポールーゼロ・ベアが付加される。)
(ハ)19頁「図8.タイプII補償回路網」
前記摘記事項の記載及び、図面を参照する。
(A)前記摘記事項(ソ)の、「PWMコンパレータは、VCと、内部的に固定された300kHz発振器のノコギリ波とを比較して、PWM駆動用のデューティサイクル情報を提供する。」との記載、前記摘記事項(ケ)の「典型的なノートブック充電管理アプリケーション」の図1、前記摘記事項(イ)のブロック図を参照すると、PWMコントローラは、バッテリ充電管理に用いられ、PWMコンパレータ、PWMコンパレータの一方の入力に供給するノコギリ波を発生する固定周波数の発振器を含み、PWMコンパレータは、制御電圧(VC)と固定周波数の発振器から出力されるノコギリ波とを比較して、PWM駆動用のデューテイサイクル情報(PWM信号)を提供するものといえる。
(B)前記摘記事項(ス)の「それぞれアダプタ及びバッテリと直列の低抵抗値の感知抵抗器を介してアダプタ電流情報及びバッテリ充電電流情報が感知され、2つのgmアンプ(gm)にフィードバックされる。」及び、前記摘記事項(ケ)の「典型的なノートブック充電管理アプリケーション」の図1,前記摘記事項(ヌ)の「バッテリ充電電流入力閾値機能」の図7を参照すると、バッテリ充電電流(ICH)は、低抵抗値の感知抵抗器(図1の抵抗R6:図7の抵抗Rs)を介して感知され、抵抗で変換された電圧がgmアンプに送られるものといえる。
(C)摘記事項(ツ)に、「3つの制御ループのいずれか1つがプログラムされた制限に近づくと、gmアンプはCOMPピンから電流を分路し始める。COMPピンの電圧の上昇速度は、このピンから出る電流の合計が減少するために遅くなり、そのため、デューティサイクルの増加速度が小さくなる。このループがプログラムされた制限に達すると、gmアンプがバイアス電流全体(100μA)を分路し、デューティサイクルは固定されたままになる。制御パラメータのいずれかがプログラムされた制限を超えようとした場合、gmアンプは、さらなる電流をCOMPピンから分路して」の記載を参照すると、バッテリ充電電流(ICH)についてのgmアンプは、バッテリ充電電流(ICH)がプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(CH)を流し始め、バッテリ充電電流(ICH)がプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(CH)を流し、さらにバッテリ充電電流(ICH)がプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(CH)を流すものといえる。
(D)前記摘記事項(ト)の「バッテリ電圧は、抵抗分割器回路網を介してgmアンプにフィードバックされる。」及び(1)式、前記摘記事項(ケ)の「典型的なノートブック充電管理アプリケーション」の図1,前記摘記事項(ナ)の「バッテリ誤差増幅器入力のマルチプレクシング・スキーム」の図6を参照すると、バッテリ電圧(VBAT)は、外部抵抗分割器(図1の抵抗R7,R9、図6(b )の抵抗R1,R2)を介して感知され、抵抗で分圧された電圧がgmアンプに送られるものといえる。
また、上記(C)と同様、摘記事項(ツ)の、「3つの制御ループのいずれか1つがプログラムされた制限に近づくと、gmアンプはCOMPピンから電流を分路し始める。COMPピンの電圧の上昇速度は、このピンから出る電流の合計が減少するために遅くなり、そのため、デューティサイクルの増加速度が小さくなる。このループがプログラムされた制限に達すると、gmアンプがバイアス電流全体(100μA)を分路し、デューティサイクルは固定されたままになる。制御パラメータのいずれかがプログラムされた制限を超えようとした場合、gmアンプは、さらなる電流をCOMPピンから分路して」と記載されるように、バッテリ電圧VBATについてのgmアンプは、バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(BAT)を流し始めバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(BAT)を流し、さらにバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(BAT)を流すものといえる。
(E)前記摘記事項(ス)の「それぞれアダプタ及びバッテリと直列の低抵抗値の感知抵抗器を介してアダプタ電流情報及びバッテリ充電電流情報が感知され、2つのgmアンプ(gm)にフィードバックされる。」及び、前記摘記事項(ケ)の「典型的なノートブック充電管理アプリケーション」の図1を参照すると、ノートPC等のシステムに供給されるシステム電流と前記バッテリ充電電流ICHの和としてAC-DCアダプタより供給されるアダプタ電流(IADPT)は、低抵抗値の感知抵抗器(図1の抵抗R5)を介して感知され、抵抗で変換された電圧がgmアンプに送られるものといえる。
また、上記(C)と同様、摘記事項(ツ)の、「3つの制御ループのいずれか1つがプログラムされた制限に近づくと、gmアンプはCOMPピンから電流を分路し始める。COMPピンの電圧の上昇速度は、このピンから出る電流の合計が減少するために遅くなり、そのため、デューティサイクルの増加速度が小さくなる。このループがプログラムされた制限に達すると、gmアンプがバイアス電流全体(100μA)を分路し、デューティサイクルは固定されたままになる。制御パラメータのいずれかがプログラムされた制限を超えようとした場合、gmアンプは、さらなる電流をCOMPピンから分路して」と記載されるように、アダプタ電流についてのgmアンプは、アダプタ電流(IADPT)がプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(ADPT)を流し始め、アダプタ電流(IADPT)がプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(ADPT)を流し、さらにアダプタ電流(IADPT)がプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(ADPT)を流すものといえる。
(F)前記摘記事項(タ)の、「COMPピンが固定から解放され、100μAプルアップがイネーブルにされる(図3参照)。このプルアップがCOMPピンに接続された外部補償回路網を充電するので、COMPピンの電圧が増加する。COMPピンの電圧が増加すると、図4に示すようにPWMデューティサイクルは線形に増加する」の記載、また、摘記事項(ノ)の、「bq24700/bq24701がバックコンバータとして用いられる場合、最良の補償方法は、図8に示すように、gmアンプの出力(COMPピン)から接地(GND)まで、タイプIIの補償回路網を用いることである。」の記載、また、図8を参照すると、
COMPピンに接続され、前記PWM信号のデューティサイクルを決定するためのキャパシタと、COMPピンを内部的にバイアスアップし、前記キャパシタを充電する100μAの定電流源とが示され、
引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)および前記引込電流ISINK(ADPT)は100μA定電流源の充電電流との差に基づき前記キャパシタにより電圧に変換されること、
COMPピンにおいて、前記100μAの定電流源により供給される電流と、前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)、ISINK(ADPT)とが共に合計されること、
PWM信号のデューティサイクルは、前記COMPピンに接続されたキャパシタ上の電圧に基づき、前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)、ISINK(ADPT)は、前記COMPピンを介して前記キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減することが示されているものといえる。
ウ.以上を総合すれば、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明1」、「甲2発明2」、「甲2発明3」、「甲2発明4」という。)が記載されている。
(ア)甲2発明1
「PWM信号のデューテイサイクルを制御するためのPWMコントローラを含むバッテリ充電管理のための回路であって、
抵抗R6で感知したバッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(CH)を流し始め、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(CH)を流し、さらにバッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(CH)を生成するgmアンプと
抵抗R7,R9で感知したバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(BAT)を流し始め、バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(BAT)を流し、さらにバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(BAT)を生成するgmアンプと、
抵抗R5で感知した、ノートPC等のシステムに供給されるシステム電流と前記バッテリ充電電流ICHの和としてAC-DCアダプタより供給されるアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(ADPT)を流し始め、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(ADPT)を流し、さらにアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(ADPT)を生成するgmアンプと、
COMPピンに接続され、前記PWM信号のデューティサイクルを決定するためのキャパシタと、
前記COMPピンを内部的にバイアスアップし、前記キャパシタを充電する100μAの定電流源と、
前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)および前記引込電流ISINK(ADPT)が前記100μA定電流源の充電電流との差に基づき前記キャパシタにより電圧に変換され、前記キャパシタにより作り出される前記COMPピンの電圧VCに基づいて前記PWM信号を生成するPWMコンパレータと
を具備し、
前記COMPピンにおいて、前記100μAの定電流源により供給される電流と、前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)、ISINK(ADPT)とが共に合計され、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記COMPピンに接続されたキャパシタ上の電圧に基づき、
前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)、ISINK(ADPT)は、前記COMPピンを介して前記キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する回路。」
(イ)甲2発明2
「PWM信号のデューテイサイクルを制御するためのPWMコントローラを含むバッテリ充電管理のための回路であって、
抵抗R6で感知したバッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(CH)を流し始め、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(CH)を流し、さらにバッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(CH)を生成するgmアンプと
抵抗R7,R9で感知したバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(BAT)を流し始め、バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(BAT)を流し、さらにバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(BAT)を生成するgmアンプと、
抵抗R5で感知した、ノートPC等のシステムに供給されるシステム電流と前記バッテリ充電電流ICHの和としてAC-DCアダプタより供給されるアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(ADPT)を流し始め、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(ADPT)を流し、さらにアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(ADPT)を生成するgmアンプと、
COMPピンに接続され、前記PWM信号のデューティサイクルを決定するためのキャパシタと、
前記COMPピンを内部的にバイアスアップし、前記キャパシタを充電する100μAの定電流源と、
前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)および前記引込電流ISINK(ADPT)が前記100μA定電流源の充電電流との差に基づき前記キャパシタにより電圧に変換され、前記キャパシタにより作り出される前記COMPピンの電圧VCに基づいて前記PWM信号を生成するPWMコンパレータと、
を具備する回路。」
(ウ)甲2発明3
「甲2発明1において、前記PWMコントローラは、前記PWMコンパレータ、前記PWMコンパレータの一方の入力に供給するノコギリ波を発生する発振器をさらに含み、前記PWMコンパレータは、前記COMPピンの電圧VCと内部的に固定された300kHz発振器から出力されるノコギリ波とを比較してPWM駆動用のデューティサイクル情報を提供する回路。」
(エ)甲2発明4
「PWM信号のデューテイサイクルを制御するためのPWMコントローラを含むバッテリ充電管理のための方法であって、
抵抗R6で感知したバッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(CH)を流し始め、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(CH)を流し、さらにバッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(CH)を生成する段階を有するgmアンプと、
抵抗R7,R9で感知したバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(BAT)を流し始め、バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(BAT)を流し、さらにバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(BAT)を生成する段階を有するgmアンプと、
抵抗R5で感知した、ノートPC等のシステムに供給されるシステム電流と前記バッテリ充電電流ICHの和としてAC-DCアダプタより供給されるアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(ADPT)を流し始め、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(ADPT)を流し、さらにアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(ADPT)を生成する段階を有するgmアンプと、
100μAの定電流源により、前記COMPピンを内部的にバイアスアップし、キャパシタを充電する段階と、
前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)および前記引込電流ISINK(ADPT)が前記100μA定電流源の充電電流との差に基づき前記キャパシタにより電圧に変換され、前記キャパシタにより作り出される前記COMPピンの電圧VCに基づいてPWMコンパレータが前記PWM信号を生成する段階と、
前記COMPピンにおいて、前記100μAの定電流源により供給される電流と、前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)、ISINK(ADPT)とが共に合計される段階と、
前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)、ISINK(ADPT)は、前記COMPピンを介して前記キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する段階と、
をさらに有する方法。」
(2)甲第3号証の記載
ア.甲第3号証の引用適格性についての当審の判断
ア-1 請求人の主張
・甲第3号証はウェブ上で公表されたデータシートであるが、甲第3号証の20頁にはprinted in USA C3351-8-10/98との記載があり、刊行物であるとも考えられるが、少なくとも電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を開示するものである。(平成27年2月13日付け回答書15頁)
・甲第3号証の公表日時の証明について
甲第3号証が本件出願の優先権主張日前に公表されていることの立証に関して、その要点を取りまとめると以下のとおりである。
(1)甲第3号証の記載自体(日付とWeb Siteの記載)
甲第3号証の表紙に1998年の著作権マークとアナログデバイスのウェブサイトのHTMLアドレスの記載がある。
甲第3号証の最終頁に、PRINTED IN U.S.A.10/98の記載がある。
係る表紙と最終頁の記載は甲第3号証が少なくとも1998年末までには公表されていたことを根拠づける。また、表紙のウェブサイトのHTMLアドレスの記載は、ウェブサイトによる公表がその公表方法として採用されていたことを根拠づける。
(2)Internet Archiveによるアナログデバイスの製品ウェブページの1998年12月7日付け保存記録(甲第14号証)
1998年12月7日午前2時29分17秒に保存されたアナログデバイスの製品ウェブページを甲第14号証として提出する。甲第14号証には、甲第3号証の製品ADP3801及びADP3802が記載されている。(なお保存日時は、甲第7号証で述べられているように、Internet Archiveの当該保存データのウェブページのHTMLアドレスに示されている。)
Internet Archive によるウェブページの機械的な保存とその正確性は既に弁駁書及び甲第7号証で明らかである。したがって、この事実は、これらのデバイスが少なくとも1998年末までには販売され、かつ、アナログデバイスの製品ウェブページにおいて当該製品の情報が公衆に提供されていたことを根拠づけるものである。
(3)EE Times 記事 Regulator ICs keep tight tabs on note book power use(1999年2月26日付け)(甲第15号証)
EE Times 記事 Regulator ICs keep tight tabs on note book power use(1999年2月26日付け)を甲第15号証として提出する。
1999年2月26日付けの記事である甲第15号証には、甲第3号証の製品ADP3801及びADP3802が1000個の注文に対して$2.80という値段で販売されていることが記載されている。また、当該記事には、アナログデバイスのコンタクト先として電話番号に加えてアナログデバイスのウェブサイトのHTMLアドレスが示されている。
この事実は、製品ADP3801及びADP3802が少なくとも1998年末までには販売され、かつ、アナログデバイスのウェブサイトにおいて当該製品の情報が公衆に提供されていたことと整合するものである。
(4)Analog DialogueVol.31,No.3,1997(甲第16号証)
アナログデバイスの技術紙であるAnalog DialogueVol.31,No.3,1997を甲第16号証として提出する。
甲第16号証の最終頁、上から6行目には、データシートを含めたアナログデバイスの製品情報がアナログデバイスのウェブページで入手可能であることが記載されている。
係る事実は、1997年において既に、アナログデバイスのデータシートがウェブサイトにおいて公表されていたことを示しており、甲第3号証が少なくとも1998年12月末までにアナログデバイスのウェブサイトで公表されたことを根拠づけるものである。
以上のように、甲第3号証がアナログデバイスのウェブサイトで少なくとも1998年12月末までに公表され、公衆により利用可能であったことは、甲第3号証自体の記載に加え、第三者であるInternet Archive によるアーカイブ記録(甲第14号証)、第三者である出版社EE Times の記事(甲第15号証)及び第三者であるアナログデバイスの技術誌の記載(甲第16号証)により根拠づけられており、甲第3号証の先行技術性に疑いをさしはさむ余地はない。(平成27年2月13日付け回答書15~16頁)
・甲第3号証の改変の可能性について
アナログデバイスのADP3801の現在のウェブページのコピーを甲17として提出する。また、当該現在のウェブページからダウンロードしたデータシートを甲第18号証として提出する。
甲第17号証で、ダウンロード可能なデータシートの版番はRev 0 10/1998 となっており、甲第3号証の版番と同一である。
また、甲第18号証の版番はRev. 0 10/1998 であり、さらに甲第18号証はObsolete (製品の廃止)との背景が入っている以外、甲第3号証と同一の記載となっている。
したがって、ADP3801には一つの版番のデータシートしかなく、改変はない。(平成27年2月13日付け回答書16頁)
ア-2 被請求人の主張
・請求人は、甲第3号証の「USA C3351-8-10/98」との記載から、少なくとも電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった、と述べています(請求人の回答書、15頁)。しかし、これは甲3号証に「USA C3351-8-10/98」との記載があることを述べるにすぎず、本件特許の優先日前に甲第3号証が公衆に公開されていたことを客観的に示す事実を提示するものではございません。
また、請求人は、甲第3号証の最終頁に「PRINTED IN U.S.A. 10/98」とあることから、甲3号証が少なくとも1998年末までには公表されていたと述べています(請求人の回答書、15頁)。しかし、これは甲第3号証に「PATENTED IN U.S.A. 10/98」との記載があることを述べるにすぎず、本件特許の優先日前に甲第3号証が公衆に公開されていたことを客観的に示す事実を提示するものではありません。「10/98」が1998年末であるとする根拠は、単に数字から推測したものといった程度にとどまり、なんらの客観的な証拠でもありません。仮に、「10/98」が1998年末、例えば、1998年10月を指すと仮定しても、「PRINTED IN U. S. A.」との記載から1998年10月に米国で印刷されたとの記載がある、と解するほうが自然です。1998年10月に米国で印刷されたとの記載が、少なくとも1998年末までには公表されていたことを示す客観的証拠とはなり得ません。単に印刷され、社内文書として存在したに過ぎない等であれば、公衆に公開されていたものとは到底言い得ません。
甲第14号証号証は、Internet Archive の製品ウェブページですが、これについては上記の甲第7号証と同様に、甲第3号証の内容が本件特許の優先日前に公知となっていたことを直接示すものとは、全くなり得ないものです。
甲第15号証は製品販売の記事を示すもののようですが、製品販売の時期が1999年2月26日以後であろうことが推測され得るにすぎず、かつ、甲第3号証を直接示すものともなっておらず、甲第3号証の内容が本件特許の優先日前に公知となっていたことを示すものとは、全くなり得ません。
甲第16号証は製品の記事を示す記事であるようですが、仮に記載されたウェブサイトから何らかの製品情報が入手可能であったと仮定しても、それが甲第3号証であったか否かは明らかではありません。甲第16号証も、甲第第3号証の内容が本件特許の優先日前に公知となっていたことを直接示すものとは、全くなり得ないものです。
上記のように、甲第14~16号証はいずれも、甲第3号証の内容が本件特許の優先日前に公知となっていたことを直接示すものとはなり得ません。
請求人によれば、甲第17号証は、現在のウェブページであるとのことです。また、請求人によれば、甲第18号証は、この現在のウェブページからダウンロードしたものであるとのことです。請求人のこれらの証拠自体はいずれも、甲第3号証の内容が本件特許の優先日前に公知となっていたことを示すものとはなり得ません。仮に、請求人の述べるように甲第18号証が甲第3号証を改訂したもので、かつ、甲第3号証と甲第18号証が実質的に同じ内容である(1つの版番)と仮定しても、依然として甲第3号証の内容が本件特許の優先日前に公知となっていたことを客観的に示すものとはなり得ません。(平成27年6月9日付け被請求人口頭審理陳述要領書5~7頁。)
ア-3 当審の判断
甲第3号証は、そのタイトル、著作権表示や下部に頁番号が振られている等の体裁から見て、型番がADP3801、ADP3802であるリチウムイオンバッテリー充電ICの技術仕様を公表することを目的としたデータシートである。
甲第15号証(出版社EE Timesの記事)によれば、型番がADP3801、ADP3802である製品が、本件出願の優先権主張日(2001年(平成13年)8月17日)前である1999年2月26日において、アナログデバイスにより販売されていたことが認められる。また、甲第16号証(アナログデバイスの技術誌の記載)の記載によれば、1997年には既に、アナログデバイスの製品のデータシートは、インターネット回線を通じて入手可能とされており、甲第15号証と甲第16号証とを併せてみれば、型番がADP3801、ADP3802である製品がアナログデバイスにより販売されていた時点で、データシートも、その製品の購入者がインターネット回線を通じて入手可能であったことが認められる。
そして、甲第3号証が少なくとも1998年12月末までに公表されていたことは、甲第3号証の表紙に1998年の著作権マークとアナログデバイスのウェブサイトのHTMLアドレスの記載があること、また、最終頁に、PRINTED IN U.S.A.10/98の記載があることからみて、特段の事情がない限り推認することができるものである。
しかも、甲第14号証(Internet Archiveによるアーカイブ記録)、甲第15号証(出版社EE Timesの記事)及び甲第16号証(アナログデバイスの技術誌の記載)は、甲第3号証が本件出願の優先権主張日(2001年(平成13年)8月17日)前にインターネット上に公表されていたことと整合するものである。
さらに、甲第17,18号証に示される版番の記載からみて、甲第3号証に改変がないことも推認できるものである。
被請求人の主張は、甲第14~18号証は、甲第3号証の内容が本件特許特許の優先権主張日前に公知となっていたことを客観的に示すものとはなり得ないとするのみで、本件出願の優先権主張日前に甲第3号証が公知でないことを証明するものではない。
したがって、甲第3号証は、アナログデバイスのウェブサイトで本件出願の優先権主張日よりも前に公表され、少なくとも電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を示すものである。
イ.甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、次の事項が図面と共に記載されている。摘示箇所の邦訳は請求人が記載したものを記す。
なお、被請求人は邦訳に対し、疑義を申し立てていない。
(ヒ)6頁「図14.デューテイサイクル対COMPピン電圧
(フ)7頁右欄「Battery Charging Overview」の項
「Figure 20 shows a simplified Buck type battery charger application circuit for the ADP3801/ADP3802. When a discharged battery is first placed in the charger, the battery voltage is well below the final charge voltage, so the current sense amplifier controls the charge loop in constant current mode. The charge current creates a voltage drop across the sense resistor Rcs.This voltage drop is buffered and amplified by amplifier GM1.Amplifier GM2 compares the output of GM1 to an external current control voltage probided at the ISET pin and servos the charger loop to make these voltages equal. Thus, the charge current is programmed using the ISET input voltage.
The output of GM2 is analog OR'ed with the output of GM3, the voltage loop amplfier. Only one or the other amplifier controls the charge loop at any given time. As the battery voltage approaches its final voltage, GM3 comes into balance. As this occurs,the charge current decreases, unbalancing GM2, and control of the feedback loop naturally transfers to GM3.
The ADP3801/ADP3802 can control the charging of two independent battery stacks or a single battery stack. The A/B SELECT MUX has a logic input to choose between the two batteries.」
(図20は、ADP3801/ADP3802のための簡略化されたBuckタイプのバッテリ充電器適用回路を示す。放電済みバッテリが充電器に最初に設置される場合、バッテリ電圧が最終充電電圧を十分に下回っており、電流感知アンプは定電流モードで充電ループを制御する。充電電流により感知抵抗Rcsの両端に電圧降下が生ずる。この電圧降下は、GM1アンプによって一旦受け取られて増幅される。アンプGM2はISETピンに供給される外部電流制御電圧とGM1の出力とを比較し、これらの電圧が等しくなるように充電ループを安定方向へ自動制御する。このように、充電電流はISET入力電圧を用いてプログラムされる。
GM2の出力は、電圧ループアンプGM3の出力とアナログORが取られる。一方のアンプまたは他方のアンプの中の何れか1つが任意の所与の時点で充電ループを制御する。バッテリ電圧がその最終電圧に近づくと、GM3は平衡状態になる。この状態が生ずると、充電電流が減少してGM2を非平衡状態にし、フィードバックループの制御は、自然にGM3に移る。
ADP3801/ADP3802は、2つの独立したバッテリスタック又は単一のバッテリスタックの充電を制御することができる。A/B SELECT MUX は2つのバッテリのどちらかを選択するためのロジック入力を備えている。)
(ヘ)8頁「図20. 簡略化された適用図」
(ホ)8頁左欄「Setting the Final Battery Voltage」の項
「The final battery voltage is determined by the voltage on the Battery Programming (PROG) pin. This pin controls the state of the PROG multiplexer, which selects the appropriate tap from the internal battery voltage resistor divider.」
(最終的なバッテリ電圧は、バッテリプログラミング(PROG)ピンの電圧によって決定される。このピンは、内部のバッテリ電圧抵抗分割器から適切なタップを選択するPROGマルチプレクサの状態を制御する。)
(マ)10頁左欄「Current Sense Amplifier』の項
「The charge current is controlled by the voltage on the ISET pin according to the following formula:
The factor of 10 is due to the GM1's gain of 10 V/V. To set a charge current of 1.5A with Rcs =0.1Ω,VISET must be 1.5V.」
(充電電流は、次の式に従って、ISETピンの電圧で制御される。
10のファクターはGMlの10V/Vのゲインのためである。Rcs=0.1Ωで充電電流を1.5Aに設定するためには、VISETは1.5Vでなければならない。)
(ミ)11頁右欄「COMP Node」の項
「Both the carrent loop and the voltage loop share a common, high impedance compensation node, labeled COMP. A series capacitor and resistor on this node help to compensate both loops. The resistor is included to provide a zero in the loop response and boost phase margin.
The voltage at the COMP node determines the duty cycle of the PWM. The threshold levels are typically 1.0 V for 0%duty cycle and 2.0 V for 100% duty cycle, resulting in a total range of 1.0V. When the ADP3801/ADP3802 first turns on, the COMP capacitor is at 0.0 V. It has to charge up to at least 1.0 V before the duty cycle rises above 0% and the pass transistor turns on. ・・・
The current available to charge and discharge the COMP capacitor during normal operation is 100μA」
(電流ループと電圧ループの両者が、COMPと名付けられた共通の高インピーダンスの補償ノードを共有する。このノード上の直列接続されたキャパシタと抵抗は、両方のループを補償するのに役立つ。抵抗が含まれているのは、ループ応答にゼロを提供し、位相マージンを高めるためである。
COMPノードの電圧は、PWMのデューティサイクルを決定する。閾値レベルは、典型的には0%のデューティサイクルに対して1.0V、100%デューティ・サイクルに対して2.0Vであり、その結果トータルレンジは1.0Vである。ADP3801/ADP3802が最初にオンになる場合、COMPキャパシタは0.0Vである。COMPキャパシタは、デューティサイクルが0%を超えて上昇し、パス・トランジスタがオンする前に、少なくとも1.0Vまで充電しなければならない。
・・・
通常動作期間にCOMPキャパシタを充電及び放電するために利用可能な電流は100μAである。)
(ム) 1 5頁右欄「Feedback Loop Compensation Design」の項
「Figure 29 shows a typical ac model of the ADP3801/ADP3802. The current loop and voltage loop are comprised of voltage controlled current sources (GM stages). The gains given in the schematic and the impedance at the COMP node are typical values for both the ADP3801 and ADP3802. This model can be used to simulate the small signal ac behavior of the part using a SPICE-based simulator when paired with an ac model of a buck regulator. However, transient and dc behavior is not modeled with this model. The GM stages are actually modeled using the Table component in PSpice, which limits the dc levels to ease dc convergence. The coefficients on the schematic give the table coefficients. The input resistors (R1 and R2)are currently set for a 4.2V final battery voltage. Use the accompanying table to adjust R1 and R2 for the other voltage options.」
(図29は、ADP3801/ADP3802の典型的な交流モデルを示す。電流ループと電圧ループは、電圧制御電流源(GMステージ)で構成される。概略図において与えられる利得とCOMPノードにおけるインピーダンスは、ADP3801とADP3802の双方に対して典型的な値である。このモデルは、Buckレギュレータの交流モデルと組み合わせた場合、SPICEベースのシミュレータを用いてこの製品の小信号交流動作をシミュレートするために使用することができる。しかしながら、過渡的動作及び直流動作はこのモデルではモデル化されていない。GMステージは、実際にはPSpice中の「Table」コンポーネントを使用してモデル化されるが、これによりDCレベルを制限してDC収束を容易化する。概略図上の係数は表の係数を与える。入力抵抗(R1およびR2)は、現時点で、4.2Vの最終バッテリ電圧に対して設定されている。他の電圧オプションについては、R1とR2を調整するために添付の表を参照のこと。)
(メ)15頁「図29. ADP3801及びADP3802に対する交流動作SPICEモデル」
(モ)17頁「図33 低オーバヘッド充電に関するローサイド電流検知」
摘記事項の記載及び図面を参照する。
(A)摘記事項(ヘ)の「図20.簡略化された適用図」とされる図20の回路図、また、摘記事項(フ)の「図20は、ADP3801/ADP3802のための簡略化されたBuckタイプのバッテリ充電器適用回路を示す。」、及び、摘記事項(ミ)の「COMPノードの電圧は、PWMのデューティサイクルを決定する。」の記載を参照すると、バッテリを充電する際にPWM信号のデューテイサイクルを決定するための回路が記載されているといえる。
(B)摘記事項(フ)には、「充電電流により感知抵抗Rcsの両端に電圧降下が生ずる。この電圧降下は、GM1アンプによって一旦受け取られて増幅される。アンプGM2はISETピンに供給される外部電流制御電圧とGM1の出力とを比較し、これらの電圧が等しくなるように充電ループを安定方向へ自動制御する。このように、充電電流はISET入力電圧を用いてプログラムされる。」と記載されるように、充電電流は感知抵抗RCSによって感知されてアンプGM1によって増幅され、アンプGM2はプログラムされる充電電流値とGM1の出力とを比較し制御するものといえる。
(C)摘記事項(メ)図29には、GM2の特性が、gm=8E-3,(入力,出力)=(-12.5mV,-200μA)、(12.5mV,0μA)であることが記載されている。
かかる記載から、GM2のgm(電圧から電流への変換係数。トランスコンダクタンスゲイン)は0.008であり(なお、8E-3=8*10-3=0.008)、GM2の+入力と-入力の入力電位差(入力電圧)が-12.5mVのとき出力電流が-200μA、該入力電圧が12.5mVのとき出力電流が0μAである。
すなわち、GM2の出力はマイナスの電流、すなわち引込電流(以下、「GM2引込電流」という。)であり、相互コンダクタンス増幅器の比例出力特性により、該入力電圧に応じてその大きさが0μAから200μAまで比例変化する。
GM2引込電流が0μAから変化し始める、すなわち流れ始める条件(以下、「引込開始条件」という。)は、図29(前記摘記事項(メ))より、+入力のISETの電位よりも、-入力のバッテリ充電電流に対応する電位(具体的には、バッテリ充電電流を感知したGM1の出力電流によるR3における電圧降下分)が、12.5mV低い状態である(上記特性の(12.5mV,0μA)のとき)。
そして、図29には、充電電流を感知した値を増幅するGM1の特性が、gm=1E-4,(入力、出力)=(0V,0A)、(0.2V,20μA)であることが記載されているところ、バッテリ充電電流が引込開始条件に対応する電流値からなおも増加する場合、GM1はより大きな電流を流し、R3における電圧降下が大きくなることにより、該入力電圧は12.5mVよりも小さくなっていく。それに応じて最大200μAまでGM2引込電流が流れる。
ここで、摘記事項(フ)の「アンプGM2はISETピンに供給される外部電流制御電圧とGM1の出力とを比較し、これらの電圧が等しくなるように充電ループを安定方向へ自動制御する。このように、充電電流はISET入力電圧を用いてプログラムされる。」の記載を併せて参照すると、GM2は、充電電流がISETでプログラムされる値に近づいた所定の充電電流値(引込開始条件に対応する充電電流値)となった時に電流の引き込みを開始し、その後は当該所定の充電電流値(引込開始条件に対応する充電電流値)を超過する量に比例したGM2引込電流を流すといえる。
(D)摘記事項(ヘ)の「図20.簡略化された適用図」とされる図20の回路図、また、摘記事項(ホ)の「最終的なバッテリ電圧は、バッテリプログラミング(PROG)ピンの電圧によって決定される。このピンは、内部のバッテリ電圧抵抗分割器から適切なタップを選択するPROGマルチプレクサの状態を制御する。」の記載を参照すると、充電電圧は抵抗分割により感知されるものといえる。
(E)摘記事項(メ)図29には、GM3の特性が、gm=1.6E-3,(入力,出力)=(-62.5mV,-200μA)、(62.5mV,0μA)であることが記載されている。
かかる記載から、GM3のgm(電圧から電流への変換係数。トランスコンダクタンスゲイン)は0.016であり、GM3の入力電圧が-62.5mVのとき、出力電流が-200μA、GM3の人力電圧が62.0mVのとき、出力電流が0μA、である。
すなわち、GM3の出力はマイナスの電流、すなわち引込電流(以下、「GM3引込電流」という。)であり、相互コンダクタンス増幅器の比例出力特性により、入力電圧に応じてその大きさが0μAから200μAまで比例変化する。
ここで、GM3引込電流が0μAから変化し始める、すなわち流れ始める条件(「引込開始条件」)は、摘記事項(メ)図29より、+入力の1.65Vよりも、-入力のバッテリ電圧が抵抗分割された電圧(バッテリ電圧×R2/(R1+R2))が、62.5mV低い状態である(上記特性の(62.0mV,0μA)のとき)。
そして、バッテリ電圧が引込開始条件に対応する電圧からなおも増加する場合、該入力電圧(+入力と-入力の電位差)は、62.5mVよりも小さくなっていき、それに応じて最大200μAまで引込電流ISINK(BAT)が流れるといえる。
ここで、摘記事項(ホ)の「最終的なバッテリ電圧は、バッテリプログラミング(PROG)ピンの電圧によって決定される。」の記載を併せて参照すると、GM3はバッテリ電圧が、プログラムされる値に近づいた所定のバッテリ電圧値となった時に電流の引き込みを開始し、その後は当該所定のバッテリ電圧値を超過する量に比例したGM3引込電流を流すものといえる。
(F)摘記事項(ヘ)の「図20.簡略化された適用図」とされる図20の回路図、摘記事項(メ)の図29、摘記事項(ミ)の記載を参照すると、
アンプGM2、GM3は、それぞれ、COMPノードに接続されており、電流ループ及び電圧ループのいずれか1つがプログラムされた値に近づくと、各アンプGM2、GM3は、COMPノードに接続された100μA定電流源により充電されたCOMPキャパシタから電荷の引き込みを開始し、COMPキャパシタは、100μA定電流源の充電電流とgmアンプの引込電流の差に基づいて動作し、GM2引込電流、GM3引込み電流は、前記COMPノードを介してCOMPキャパシタ上の電圧を低減させるものといえる。
そして、COMPノードにおいて、前記100μA定電流源により供給される電流と、GM2引込電流、GM3引込み電流とが合計されることになるといえる。
(G)摘記事項(ヘ)の「図20.簡略化された適用図」とされる図20の回路図には、その+入力にCOMPノードからの配線が接続された比較器が示されている。
また、図20には、固定周波数の発振器(図中のOSCILLATOR)が示されており、その信号は前記比較器の-入力に入力されている。
摘記事項(ミ)の「COMPノードの電圧は、PWMのデューティサイクルを決定する。閾値レベルは、典型的には0%のデューティサイクルに対して1.0V、100%デューティ・サイクルに対して2.0Vであり、その結果トータルレンジは1.0Vである。ADP3801/ADP3802が最初にオンになる場合、COMPキャパシタは0.0Vである。COMPキャパシタは、デューティサイクルが0%を超えて上昇し、パス・トランジスタがオンする前に、少なくとも1.0Vまで充電しなければならない。」の記載を参照すると、COMPキャパシタ上の電圧が低減すると、PWM信号のデューティサイクルが低減することから、PWM信号のデューティサイクル情報を生成する比較器が、前記固定周波数の発振器から発生される周期的な波形とCOMPキャパシタ上の電圧とを比較し、前記COMPキャパシタ上の電圧に基づいてPWM信号を生成しているものといえる。
ウ.以上を総合すれば、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明1」、「甲3発明2」、「甲3発明3」、「甲3発明4」、「甲3発明5」という。)が記載されている。
(ア)甲3発明1
「バッテリを充電する際にPWM信号のデューテイサイクルを決定するための回路であって、
抵抗RCSで感知したバッテリ充電電流がプログラムされる値に近づいた所定の充電電流値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電流値を超過する量に比例したGM2引込電流を生成するアンプGM2と、
抵抗分割により感知したバッテリ充電電圧がプログラムされる値に近づいた所定の充電電圧値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電圧値を超過する量に比例したGM3引込電流を生成するアンプGM3と、
COMPノードに接続され、前記PWM信号のデューティサイクルを決定するためのCOMPキャパシタと、
前記COMPキャパシタを充電する100μA定電流源と、
前記GM2引込電流およびGM3引込電流が前記100μA定電流源の充電電流との差に基づき前記COMPキャパシタにより電圧に変換され、前記COMPキャパシタにより作り出される前記COMPノードの電圧に基づいて前記PWM信号を生成する比較器と
を具備し、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記COMPキャパシタ上の電圧に基づき、
前記COMPノードにおいて、前記100μA定電流源により供給される電流と、前記GM2引込電流、GM3引込電流とが共に合計され、
前記前記GM2引込電流、GM3引込電流は、前記COMPノードを介して前記COMPキャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する
回路。」
(イ)甲3発明2
「バッテリを充電する際にPWM信号のデューテイサイクルを決定するための回路であって、
抵抗RCSで感知されたバッテリ充電電流がプログラムされる値に近づいた所定の充電電流値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電流値を超過する量に比例したGM2引込電流を生成するアンプGM2と、
抵抗分割により感知したバッテリ充電電圧がプログラムされる値に近づいた所定の充電電圧値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電圧値を超過する量に比例したGM3引込電流を生成するアンプGM3と、
COMPノードに接続され、前記PWM信号のデューティサイクルを決定するためのCOMPキャパシタと、
前記COMPキャパシタを充電する100μA定電流源と、
前記GM2引込電流およびGM3引込電流が前記100μA定電流源の充電電流との差に基づき前記COMPキャパシタにより電圧に変換され、前記COMPキャパシタにより作り出される前記COMPノードの電圧に基づいて前記PWM信号を生成する比較器と
を具備する回路であって、
前記抵抗RCSで感知されたバッテリ充電電流はアンプGM1で増幅され、
前記アンプGM2は、バッテリ充電電流をプログラムする値と、アンプGM1の出力とを比較し、GM2引込電流を生成する、
回路。」
(ウ)甲3発明3
「バッテリを充電する際にPWM信号のデューテイサイクルを決定するための回路であって、
抵抗RCSで感知されたバッテリ充電電流がプログラムされる値に近づいた所定の充電電流値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電流値を超過する量に比例したGM2引込電流を生成するアンプGM2と、
抵抗分割により感知したバッテリ充電電圧がプログラムされる値に近づいた所定の充電電圧値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電圧値を超過する量に比例したGM3引込電流を生成するアンプGM3と、
COMPノードに接続され、前記PWM信号のデューティサイクルを決定するためのCOMPキャパシタと、
前記COMPキャパシタを充電する100μA定電流源と、
前記GM2引込電流およびGM3引込電流が前記100μA定電流源の充電電流との差に基づき前記COMPキャパシタにより電圧に変換され、前記COMPキャパシタにより作り出される前記COMPノードの電圧に基づいて前記PWM信号を生成する比較器と
を具備する回路。」
(エ)甲3発明4
「甲3発明1において、PWM信号のデューティサイクル情報を生成する比較器が、前記固定周波数の発振器から発生される周期的な波形とCOMPキャパシタ上の電圧とを比較し、前記COMPキャパシタ上の電圧に基づいてPWM信号を生成する回路。」
(オ)甲3発明5
「バッテリを充電する際にPWM信号のデューテイサイクルを決定するための方法であって、
抵抗RCSで感知したバッテリ充電電流がプログラムされる値に近づいた所定の充電電流値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電流値を超過する量に比例したGM2引込電流を生成する段階を有するアンプGM2と、
抵抗分割により感知したバッテリ充電電圧がプログラムされる値に近づいた所定の充電電圧値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電圧値を超過する量に比例したGM3引込電流を生成する段階を有するアンプGM3と、
COMPノードに接続され、前記PWM信号のデューティサイクルを決定するためのCOMPキャパシタを充電する段階と、
前記GM2引込電流およびGM3引込電流が前記100μA定電流源の充電電流との差に基づき前記COMPキャパシタにより電圧に変換され、前記COMPキャパシタにより作り出される前記COMPノードの電圧に基づいて前記PWM信号を生成する段階と
を具備し、
前記COMPノードにおいて、前記100μA定電流源により供給される電流と、前記GM2引込電流、GM3引込電流とが共に合計される段階と、
前記前記GM2引込電流、GM3引込電流は、前記COMPノードを介して前記COMPキャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する段階と
をさらに具備する方法。」
(3)甲第4号証
ア.甲第4号証の記載事項
甲第4号証、データシート(Low-Cost, Multichemistry Battery-Charger Building Block MAX1772)(2000年7月発行)には、次の事項が説明とともに記載されている。摘示箇所の邦訳は請求人が記載したものを記す。
なお、被請求人は邦訳に対し、疑義を申し立てていない。
(ヤ)甲第4号証の11頁左欄「Detailed Description」
「The MAX1772 features a voltage-regulation loop (CCV) and two current-regulation loops (CCI and CCS). The CCV voltage-regulation loop monitors BATT to ensure that its voltage never exceeds the voltage set by VCTL. The CCI battery current-regulation loop monitors current delivered to BATT to ensure that it never exceeds the current limit set by ICTL. A third loop (CCS) takes control and reduces the battery-charging current when the sum of the system load and the battery-charging current exceeds the charging source current limit set by CLS.」
(詳細)
(MAX1772は、電圧レギュレーションループ(CCV)及び2つの電流レギュレーションループ(CCI及びCCS)を特色としている。CCV電圧レギュレーションループは、BATTを監視して、その電圧がVCTLによって設定された電圧を決して超えないようにしている。CCIバッテリ電流レギュレーションループは、BATTに送られる電流を監視し、ICTLによって設定された電流制限値を決して超えないようにしている。3番目のループ(CCS)は、システム負荷及びバッテリ充電電流の合計がCLSによって設定された充電ソース電流制限値を超えた時に、バッテリ充電電流を制御し低下させる。)
(ユ)14頁、図2「ファンクションダイアグラム」
(ヨ)17頁、図5「DC-DCコンバータのファンクションダイアグラム」
摘記事項(ヤ)には、「システム負荷及びバッテリ充電電流の合計がCLSによって設定された充電ソース電流制限値を超えた時に、バッテリ充電電流を制御し低下させるという機能を有する」、「3番目のループ(CCS)」が開示されている。
摘記事項(ヨ)の図5には、増幅器「CSS」、gmアンプ「GMS」が記載されている。
イ.以上を総合すれば、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。
甲4発明
「バッテリ充電電流の制御、バッテリ電圧の制御に加え、システム負荷及びバッテリ充電電流の総量の制御を行う回路。」
(4)甲第5号証
ア.甲第5号証の記載事項
甲第5号証、データシート(OZ950-DS-1.05 Smart Battery Charger Controller)(1998年4月29日発行)には、次の図面が、説明とともに記載されている。
甲第5号証は、バッテリ充電制御器に係る技術を開示するものであり、図8の回路図を参照すると、感知抵抗RSENを通る電流(バッテリに供給される電流)による電圧降下VSENとスイッチ素子に接続された抵抗R2とを流れる電流I2との関係は、I2=I1-VSEN/Rbで表される(但し、I1は定電流源により与えられる電流値である)。
回路図の構成との対応関係として、
・オペアンプ(Op Amp)は、感知抵抗RSENに並列に連結されており、前記オペアンプ(Op Amp)の出力によりスイッチ素子の導通が制御される。
・抵抗R2の両端電圧V(バッテリに供給される電流を示す信号は、第1の利得抵抗に相当する抵抗Rb、第2の利得抵抗に相当する抵抗R2、及び、感知抵抗RSENを通る電流(バッテリに供給される電流)による電圧降下VSENを用いて、V=R2*I2=R2*(I1-VSEN/Rb)として与えられる。
イ.以上を総合すれば、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認める。
甲5発明
「バッテリに供給される電流を感知する感知抵抗にオペアンプが並列に接続され、前記オペアンプの出力によりスイッチ素子の導通が制御され、バッテリに供給される電流を示す信号がスイッチ素子に接続された抵抗から得られる回路。」
2 無効理由1について
(2-1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1(ここで、「前者」という。)と甲2発明1(ここで、「後者」という。)とを対比する。
後者の「PWM信号のデューテイサイクルを制御するためのPWMコントローラを含むバッテリ充電管理のための回路」は、前者の「PWM信号のデューテイサイクルを制御するための回路」に相当する。
後者の「抵抗R6で感知したバッテリ充電電流ICH」は、電池(バッテリ)を充電している電流であり、前者の「電池充電電流」に相当する。
後者の「引込電流ISINK(CH)」は、バッテリ充電電流ICHを制御するための信号といえ、前者の「電流制御信号」に相当する。
後者の「引込電流ISINK(CH)を生成するgmアンプ」は、バッテリ充電電流ICHを制御するための信号を生成する制御部といえ、前者の、「電流制御信号を生成する電池電流制御部」に相当する。
後者の「抵抗R6で感知したバッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(CH)を流し始め、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(CH)を流し、さらにバッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(CH)を生成する」と、前者の「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する」とを比較すると、「電池充電電流と所定の電池充電電流値とを比較して電流制御信号を生成する」という概念において一致する。
後者の「抵抗R7、R9で感知したバッテリ電圧VBAT」は、電池(バッテリ)の充電電圧であり、前者の「電池電圧」に相当する。
後者の「引込電流ISINK(BAT)」は、バッテリ電圧VBATを制御するための信号といえ、前者の、「電圧制御信号」に相当する。
後者の「引込電流ISINK(BAT)を生成するgmアンプ」は、バッテリ電圧VBATを制御するための信号を生成する制御部といえ、前者の「電圧制御信号を生成する電池電圧制御部」に相当する。
後者の「抵抗R7,R9で感知したバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(BAT)を流し始め、バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(BAT)を流し、さらにバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(BAT)を生成する」と、前者の「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する」とを比較すると、「電池電圧と所定の電池電圧値とを比較して電圧制御信号を生成する」という概念において一致する。
後者の「COMPピンに接続され」た「キャパシタ」および「前記COMPピンを内部的にバイアスアップし、前記キャパシタを充電する100μAの定電流源」は、COMPピンに接続された補償回路を構成するキャパシタを充電する定電流源であり、前者の「補償キャパシタ、および、該補償キャパシタを充電する電流源」に相当する。
後者の「COMPピンに接続され、前記PWM信号のデューティサイクルを決定するためのキャパシタ」は、前者の「PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づ」く構成に相当する。
後者の「前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)および前記引込電流ISINK(ADPT)が前記100μA定電流源の充電電流との差に基づき前記キャパシタにより電圧に変換され、前記キャパシタにより作り出される前記COMPピンの電圧VCに基づいて前記PWM信号を生成するPWMコンパレータ」は、引込電流ISINK(CH)が電流を制御する信号であり、引込電流ISINK(BAT)が電圧を制御する信号であって、それぞれ増減する電流値を用いて制御するものであるから、信号に振幅を有するものということができ、前者の「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器」に相当する。
後者の「前記COMPピンにおいて、前記100μAの定電流源により供給される電流と、前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)、ISINK(ADPT)とが共に合計され、前記PWM信号のデューティサイクルは、前記COMPピンに接続されたキャパシタ上の電圧に基づき、前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)、ISINK(ADPT)は、前記COMPピンを介して前記キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する」は、アダプタ電流制御に関する制御信号(引込電流ISINK(ADPT))をも有している点では相違するものの、前者の「前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とは、共通のノードにおいて共に合計され、前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する」に相当する。
したがって両者は
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって、
電池充電電流と所定の電池充電電流値とを比較して電流制御信号を生成する電池電流制御部と、
電池電圧と所定の電池電圧値とを比較して電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器とを具備し、
補償キャパシタ、および、該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とは、共通のノードにおいて共に合計され、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減することを特徴とする回路。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-1]
電流制御信号の生成に関し、本件特許発明1は、「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成」するものであるのに対し、甲2発明1は、「バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(CH)を流し始め、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(CH)を流し、さらにバッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(CH)を生成する」ものである点。
[相違点1-2]
電圧制御信号の生成に関し、本件特許発明1は、「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成」するものであるのに対し、甲2発明1は、「バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(BAT)を流し始め、バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(BAT)を流し、さらにバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(BAT)を生成する」ものである点。
イ 判断
上記[相違点1-1]について検討する。
甲2発明1の引込電流ISINK(CH)の生成は、gmアンプによって行われるから、例えば、甲第2号証の5頁の表に「gm Transconductance gain」、「90(MIN)、150(TYP)、210(MAX)」「mA/V」とあるように、90(最小)~150(典型)~210(最大)mA/Vのごとき所定の値のトランスコンダクタンスゲインにより、gmアンプの動作する領域では、入力(抵抗R6で感知したバッテリ充電電流ICHに対応する電圧)と出力(引込電流ISINK(CH))とが線形的に関連付けられる(比例する)ものであるといえる。
ここで、甲2発明1において、gmアンプによって行われる引込電流ISINK(CH)の生成は、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に近づいた時に始まるから、この時のバッテリ充電電流ICHの値を比例関係の始点(入力ゼロ)として、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に達した場合のバッテリ充電電流ICHの値(入力ゼロを超過する値)が入力されるとき、出力である引込電流ISINK(CH)が100μAとなる比例関係は、gmアンプの動作が行われる領域において成り立つものといえ、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に近づいた時の値から超過する量に比例して引込電流ISINK(CH)を生成するものといえる。
そして、甲2発明1において、gmアンプがCOMPピンから「電流を分路し始める」プログラムされた制限に近づいた時の「バッテリ充電電流の値」は、引込電流ISINK(CH)を生成し始める値であるから、「閾値」ということができ、本件特許発明1のごとく「電池充電電流閾値」とすれば、引込電流ISINK(CH)の生成は、「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する」ものとなり、本件特許発明1と実質的に相違しないものである。
上記[相違点1-2]について検討する。
甲2発明1の、バッテリ電圧VBATに対応する引込電流ISINK(BAT)の生成は、引込電流ISINK(CH)の生成と同様、gmアンプによって行われるから、前記相違点1の検討と同様、バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に近づいた時の値から超過する量に比例して、引込電流ISINK(BAT)が生成されるものといえる。
そして、甲2発明1において、gmアンプがCOMPピンから「電流を分路し始める」プログラムされた制限に近づいた時の「バッテリ電圧の値」は、引込電流ISINK(BAT)を生成し始める値であるから、「閾値」ということができ、本件特許発明1のごとく「電池電圧閾値」とすれば、引込電流ISINK(BAT)の生成は、「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する」ものとなり、本件特許発明1と実質的に相違しないものである。
したがって、本件特許発明1は、甲2発明1と実質的に相違しない発明、あるいは、甲2発明1から容易に想到し得た発明である。
[本件特許発明1の「閾値」に関する、被請求人の主張について]
被請求人は本件特許発明1の「閾値」に関し、口頭審理陳述要領書(2)において、大要以下のような主張を行っている(口頭審理陳述要領書(2)の2頁下から2行~4頁下から4行を参照。)。
「(i)本件特許発明1の「閾値」は、甲第2号証に全く開示されていない。
(ii)本件特許発明1の「閾値」に相当する値を算出することが甲第2号証に記載されているに等しいとは到底言えず、かつ、当業者にとって容易に想到し得るものでもない。
(iii)仮に、甲第2号証に本件特許発明1の「閾値」に相当する値が記載されている、あるいは、記載されているに等しい、と仮定しても、甲第2号証に示される「引き込み電流」は、あくまでデューティサイクルの増加を目的とした制御を行うのであって、甲第2号証の14頁最終段落に、例外的にデューティサイクルが超えてしまった場合の記載があるにしても、デューティサイクルの低減を目的とした制御を行う制御信号である本件特許発明の「電流制御信号」および/または「電圧制御信号」とは、制御の目的が根本的に異なる。
従って、本件特許発明の「閾値」と、甲第2号証から導き出される「電流を分路し始める時の値」は、直接設定されるか間接的に設定されるかの違いといった程度のものではない。」
しかし、甲第2号証には、gmアンプがCOMPピンから「電流を分路し始める時の値」が、「3つの制御ループのいずれか1つがプログラムされた制限に近づくと、gmアンプはCOMPピンから電流を分路し始める。」(摘記事項(ツ)参照。)と記載されており、甲第2号証の記載から、本件特許発明1の「閾値」に相当する値を読み取ることができるものである。
また、甲第2号証には、「DPM機能は、バッテリ充電調節電圧、バッテリ充電電流、及びアダプタ充電電流の3つの制御ループを含めることによって、PWMコントローラに組み込まれるように本質的に設計されている。PWMコントローラについては図3を参照されたい。ユーザによりプログラムされるこれら3つの制限のいずれか1つに達した場合、対応する制御ループがPWMコントローラに対してデューティサイクルを減少させるように指令し、これにより、バッテリ充電電流が減少する。」(摘記事項(シ)参照。)、とあるように、デューテイサイクルの低減を目的とした制御を行うことも明確に記載されている。
したがって、被請求人の上記主張は採用できない。
(2-2)本件特許発明2について
ア 対比
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用するものであり、上記(2-1)ア の対比結果をふまえ、本件特許発明2(ここで、「前者」という。)と甲2発明1(ここで、「後者」という。)とを対比する。
後者の「ノートPC等のシステム」は、後者の「アクティブシステム」に相当する。
後者の「前記バッテリ充電電流ICH」は、後者の「電池充電器」の「電流」に相当する。
後者の「抵抗R5で感知した、ノートPC等のシステムに供給されるシステム電流と前記バッテリ充電電流ICHの和としてAC-DCアダプタより供給されるアダプタ電流IADPT」は、AC-DCアダプタより供給される電流の総量であり、前者の「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量」に相当する。
後者の「引込電流ISINK(ADPT)」は、電流の総量を制御する信号であり、AC-DCアダプタより供給される総電力を制御するものであるから、前者の「電力制御信号」に相当する。
後者の「引込電流ISINK(ADPT)を生成するgmアンプ」は、アダプタ電流IADPTを制御するための信号を生成する制御部といえ、前者の、「電力制御信号を生成する電力制御部」に相当する。
後者の「抵抗R5で感知した、ノートPC等のシステムに供給されるシステム電流と前記バッテリ充電電流ICHの和としてAC-DCアダプタより供給されるアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(ADPT)を流し始め、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(ADPT)を流し、さらにアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(ADPT)を生成する」と、前者の「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する」とを比較すると、「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に基づき電流制御信号を生成する」という概念において一致する。
後者の「前記COMPピンにおいて、前記100μAの定電流源により供給される電流と、前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)、ISINK(ADPT)とが共に合計され、前記PWM信号のデューティサイクルは、前記COMPピンに接続されたキャパシタ上の電圧に基づき、前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)、ISINK(ADPT)は、前記COMPピンを介して前記キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する」は、前者の「前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とは、前記共通のノードにおいて共に合計され、 前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する」に相当する。
したがって両者は
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって、
電池充電電流と所定の電池充電電流値とを比較して電流制御信号を生成する電池電流制御部と、
電池電圧と所定の電池電圧値とを比較して電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器と
アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に基づき電力制御信号を生成する電力制御部を具備し、
補償キャパシタ、および、該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とは、前記共通のノードにおいて共に合計され、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減することを特徴とする回路。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点2-1]
上記(2-1)ア の[相違点1-1]と実質的に同じ。
[相違点2-2]
上記(2-1)ア の[相違点1-2]と実質的に同じ。
[相違点2-3]
電力制御信号の生成に関し、本件特許発明2は、「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する」するものであるのに対し、甲2発明1は、「アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(ADPT)を流し始め、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(ADPT)を流し、さらにアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(ADPT)を生成する」ものである点。
イ 判断
[相違点2-1],[相違点2-2]についての判断は、(2-1)イ の[相違点1-1],[相違点1-2]についての判断と実質的に同じ。
上記[相違点2-3]について検討する。
甲2発明1の引込電流ISINK(ADPT)の生成は、gmアンプによって行われるから、例えば、甲第2号証の5頁の表に「gm Transconductance gain」、「90(MIN)、150(TYP)、210(MAX)」「mA/V」とあるように、90(最小)~150(典型)~210(最大)mA/Vのごとき所定の値のトランスコンダクタンスゲインにより、gmアンプの動作する領域では、入力(抵抗R5で感知した、ノートPC等のシステムに供給されるシステム電流と前記バッテリ充電電流ICHの和としてAC-DCアダプタより供給されるアダプタ電流IADPT)と出力(引込電流ISINK(ADPT))とが線形的に関連付けられる(比例する)ものであるといえる。
ここで、甲2発明1において、gmアンプによって行われる引込電流ISINK(ADPT)の生成は、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づいた時に始まるから、この時のアダプタ電流IADPTの値を比例関係の始点(入力ゼロ)として、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に達した場合のアダプタ電流IADPTの値(入力ゼロを超過する値)が入力されるとき、出力である引込電流ISINK(ADPT)が100μAとなる比例関係は、gmアンプの動作が行われる領域において成り立つものといえ、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づいた時の値から超過する量に比例して引込電流ISINK(ADPT)を生成するものといえる。
そして、甲2発明1の、アダプタ電流IADPTに基づく引込電流ISINK(ADPT)を生成するgmアンプは、アダプタ電流IADPTが、アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に相当することから、本件特許発明2の「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する電力制御部」と実質的に相違しないものである。
したがって、本件特許発明2は、甲2発明1と実質的に相違しない発明、あるいは、甲2発明1から容易に想到し得た発明である。
(2-3)本件特許発明3について
ア 対比
本件特許発明3は、本件特許発明2を引用するものであり、上記(2-1)ア 、(2-2)ア の対比をふまえ、本件特許発明3(ここで、「前者」という。)と甲2発明1(ここで、「後者」という。)とを対比する。
後者の「ノートPC等のシステムに供給されるシステム電流と前記バッテリ充電電流ICHの和としてAC-DCアダプタより供給されるアダプタ電流IADPT 」は、前者の「電源により生成される電流の総量」、及び、「DC電源により生成される前記電流の総量」に相当する。
一般に「相互コンダクタンス増幅器」は、入力電圧に比例した電流を出力する増幅器のことをいい「gmアンプ」と称されるものであるから、後者の「引込電流ISINK(ADPT)を生成するgmアンプ」は、入力電圧に比例した電流を出力する増幅器という概念において、前者の「相互コンダクタンス増幅器」に相当する。
そして、前者の「相互コンダクタンス増幅器」は、引用する本件特許発明2の「電力制御部」を構成するものであって、さらに、「前記電源により生成される前記電流の総量を、所定の電力値と比較する」という構成を有するものである。
前記(2-2)ア で対比したように、後者の「引込電流ISINK(ADPT)を生成するgmアンプ」は、アダプタ電流IADPTを制御するための信号を生成する制御部といえ、前者の、「電力制御信号を生成する電力制御部」に相当する。
さらに、後者の「引込電流ISINK(ADPT)を生成するgmアンプ」は、「アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(ADPT)を流し始め、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(ADPT)を流し、さらにアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(ADPT)を生成するgmアンプ」であるから、前者の「前記電源により生成される前記電流の総量を示す前記信号を、所定の電力閾値信号と比較する相互コンダクタンス増幅器」と比較すると、「前記電源により生成される前記電流の総量を、所定の電力値と比較する相互コンダクタンス増幅器」という概念において一致する。
したがって、両者は、
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって、
電池充電電流と所定の電池充電電流値とを比較して電流制御信号を生成する電池電流制御部と、
電池電圧と所定の電池電圧値とを比較して電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器と
アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に基づき電力制御信号を生成する電力制御部を具備し、
補償キャパシタ、および、該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とは、前記共通のノードにおいて共に合計され、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減することを特徴とする回路であり、
前記電力制御部は、
前記電源により生成される前記電流の総量を、所定の電力値と比較する相互コンダクタンス増幅器と
を具備する回路。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点3-1]
上記(2-1)ア の[相違点1-1]と実質的に同じ。
[相違点3-2]
上記(2-1)ア の[相違点1-2]と実質的に同じ。
[相違点3-3]
本件特許発明3は、「前記電源により生成される電流の総量を感知するための、かつ、DC電源により生成される前記電流の総量を示す信号を生成するための感知増幅器」を有するものであるのに対し、甲2発明1は、ノートPC等のシステムに供給されるシステム電流と前記バッテリ充電電流ICHの和としてAC-DCアダプタより供給されるアダプタ電流IADPTを抵抗R5で感知するものであり、「感知増幅器」に相当する構成がない点で相違する。
[相違点3-4]
上記(2-2)ア の[相違点2-3]と実質的に同じ。
[相違点3-5]
相互コンダクタンス増幅器に関し、本件特許発明3は、「前記電源により生成される前記電流の総量を示す前記信号を、所定の電力閾値信号と比較する相互コンダクタンス増幅器」であるのに対し、甲2発明1は、「アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(ADPT)を流し始め、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(ADPT)を流し、さらにアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(ADPT)を生成するgmアンプ」である点で相違する。
イ 判断
[相違点3-1],[相違点3-2]についての判断は、(2-1)イ の[相違点1-1],[相違点1-2]の判断と実質的に同じ。
上記[相違点3-3]について検討する。
電流量の測定に当たり、測定量を増幅器により増幅して「電流の量を示す信号」として出力することは一般に周知慣用の技術手段であり、[相違点3-3]の差異は、周知慣用の技術を単に付加するものであって、実質的な差異ではない。
甲2発明1の、引込電流ISINK(ADPT)を生成する「gmアンプ」を「相互コンダクタンス増幅器」と称することは適宜なし得ることであり、[相違点3-4]についての判断は、(2-2)イ の[相違点2-3]の判断と実質的に同じである。
上記[相違点3-5]について検討する。
甲2発明1において、gmアンプによって行われる引込電流ISINK(ADPT)の生成は、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づいた時に始まるから、「所定の電力閾値信号と比較する」ものといえ、本件特許発明3の「前記電源により生成される前記電流の総量を示す前記信号を、所定の電力閾値信号と比較する相互コンダクタンス増幅器」と、実質的に相違しない。
したがって、本件特許発明3は、甲2発明1と実質的に相違しない発明、あるいは、甲2発明1から容易に想到し得た発明である。
(2-4)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4は、本件特許発明3を引用するものであり、上記(2-1)ア ~(2-3)ア の対比をふまえ、本件特許発明4(ここで、「前者」という。)と甲2発明1(ここで、「後者」という。)とを対比する。
前者の「前記電源により生成される前記電流の総量を示す前記信号が前記電力閾値信号を超過する場合には、前記電力制御信号は、ゼロではない値を有する」は、電力制御信号に関する構成である。
前記(2-2)ア で対比したように、後者の「引込電流ISINK(ADPT)」は、前者の「電力制御信号」と、「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に基づき生成される」という概念において一致する。
ここで後者の「抵抗R5で感知した、ノートPC等のシステムに供給されるシステム電流と前記バッテリ充電電流ICHの和としてAC-DCアダプタより供給されるアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(ADPT)を流し始め、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(ADPT)を流し、さらにアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(ADPT)」として生成される「ISINK(ADPT)」は、プログラムされた制限に近づいて、引込電流ISINK(ADPT)を流し始めたときにはゼロではない値を有するといえ、前記(2-2)ア 、(2-3)ア での対比をふまえ、前者の「前記電源により生成される前記電流の総量を示す前記信号が前記電力閾値信号を超過する場合には、前記電力制御信号は、ゼロではない値を有する」と比較すると、「前記電源により生成される前記電流の総量を示す前記信号が前記所定の電力値を超過する場合には、前記電力制御信号は、ゼロではない値を有する」という概念において一致する。
したがって、両者は、
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって、
電池充電電流と所定の電池充電電流値とを比較して電流制御信号を生成する電池電流制御部と、
電池電圧と所定の電池電圧値とを比較して電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器と
アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に基づき電力制御信号を生成する電力制御部を具備し、
補償キャパシタ、および、該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とは、前記共通のノードにおいて共に合計され、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減することを特徴とする回路であり、
前記電力制御部は、
前記電源により生成される前記電流の総量を、所定の電力値と比較する相互コンダクタンス増幅器と
を具備する回路であり、
前記電源により生成される前記電流の総量を示す前記信号が前記所定の電力値を超過する場合には、前記電力制御信号は、ゼロではない値を有する回路。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点4-1]
前記(2-1)ア の[相違点1-1]と実質的に同じ。
[相違点4-2]
前記(2-1)ア の[相違点1-2]と実質的に同じ。
[相違点4-3]
前記(2-3)ア の[相違点3-3]と実質的に同じ。
[相違点4-4]
前記(2-3)ア の[相違点3-4]と実質的に同じ。
[相違点4-5]
前記(2-3)ア の[相違点3-5]と実質的に同じ。
イ 判断
本件特許発明3についての判断(前記(2-3)イ )と同様、本件特許発明4は、甲2発明1と実質的に相違しない発明、あるいは、甲2発明1から容易に想到し得た発明である。
(2-5)本件特許発明9について
ア 対比
本件特許発明9は、本件特許発明1を引用するものであり、上記(2-1)ア の対比をふまえ、本件特許発明9(ここで、「前者」という。)と、甲2発明1に構成を付加したものである甲2発明3(ここで、「後者」という。)とを対比する。
後者の、「内部的に固定された300kHz発振器」である「前記PWMコンパレータの一方の入力に供給するノコギリ波を発生する発振器」は、前者の「固定周波数のノコギリ波信号を生成する発振器」に相当する。
後者の、「PWMコンパレータは、COMPピンの電圧VCと、内部的に固定された300kHz発振器のノコギリ波とを比較してPWM駆動用のデューティーサイクル情報を提供する」は、COMPピンの電圧VCはキャパシタの充電電圧であり、また、PWM駆動用のデューティーサイクル情報を提供することは、PWM信号を生成するための情報であるから、前者の「ノコギリ波信号と前記充電キャパシタ上の電圧の前記振幅とを比較し、かつ、前記充電キャパシタ上の電圧の前記振幅により調整されたデューティサイクルを有する前記PWM信号を生成」に相当する。
上記(2-1)ア で対比した事項を考慮すると、両者は、
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって、
電池充電電流を検出して電流制御信号を生成する電池電流制御部と、
電池電圧を検出して電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器とを具備し、
補償キャパシタ、および、該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とは、共通のノードにおいて共に合計され、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する回路であって、
固定周波数のノコギリ波信号を生成する発振器をさらに具備し、
前記比較器は、前記ノコギリ波信号と前記充電キャパシタ上の電圧の前記振幅とを比較し、かつ、前記充電キャパシタ上の電圧の前記振幅により調整されたデューティサイクルを有する前記PWM信号を生成することを特徴とする回路。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点9-1]
電流制御信号の生成に関し、本件特許発明9は、「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成」するものであるのに対し、甲2発明3は、「バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(CH)を流し始め、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(CH)を流し、さらにバッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(CH)を生成する」ものである点。
[相違点9-2]
電圧制御信号の生成に関し、本件特許発明9は、「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成」するものであるのに対し、甲2発明3は、「バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(BAT)を流し始め、バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(BAT)を流し、さらにバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(BAT)を生成する」ものである点。
イ 判断
上記[相違点9-1]について検討する。
甲2発明3の引込電流ISINK(CH)の生成は、gmアンプによって行われるから、例えば、甲第2号証の5頁の表に「gm Transconductance gain」、「90(MIN)、150(TYP)、210(MAX)」「mA/V」とあるように、90(最小)~150(典型)~210(最大)mA/Vのごとき所定の値のトランスコンダクタンスゲインにより、gmアンプの動作する領域では、入力(抵抗R6で感知したバッテリ充電電流ICHに対応する電圧)と出力(引込電流ISINK(CH))とが線形的に関連付けられる(比例する)ものであるといえる。
ここで、甲2発明3において、gmアンプによって行われる引込電流ISINK(CH)の生成は、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に近づいた時に始まるから、この時のバッテリ充電電流ICHの値を比例関係の始点(入力ゼロ)として、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に達した場合のバッテリ充電電流ICHの値(入力ゼロを超過する値)が入力されるとき、出力である引込電流ISINK(CH)が100μAとなる比例関係は、gmアンプの動作が行われる領域において成り立つものといえ、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に近づいた時の値から超過する量に比例して引込電流ISINK(CH)を生成するものといえる。
そして、甲2発明3において、gmアンプがCOMPピンから「電流を分路し始める」プログラムされた制限に近づいた時の「バッテリ充電電流の値」は、引込電流ISINK(CH)を生成し始める値であるから、「閾値」ということができ、本件特許発明9のごとく「電池充電電流閾値」とすれば、引込電流ISINK(CH)の生成は、「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する」ものとなり、本件特許発明9と実質的に相違しないものである。
上記[相違点9-2]について検討する。
甲2発明3の、バッテリ電圧VBATに対応する引込電流ISINK(BAT)の生成は、引込電流ISINK(CH)の生成と同様、gmアンプによって行われるから、前記[相違点9-1]の検討と同様、バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に近づいた時の値から超過する量に比例して、引込電流ISINK(BAT)が生成されるものといえる。
そして、甲2発明3において、gmアンプがCOMPピンから「電流を分路し始める」プログラムされた制限に近づいた時の「バッテリ電圧の値」は、引込電流ISINK(BAT)を生成し始める値であるから、「閾値」ということができ、本件特許発明9のごとく「電池電圧閾値」とすれば、引込電流ISINK(BAT)の生成は、「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する」ものとなり、本件特許発明9と実質的に相違しないものである。
したがって、本件特許発明9は、甲2発明3と実質的に相違しない発明、あるいは、甲2発明3から容易に想到し得た発明である。
(2-6)本件特許発明10について
ア 対比
本件特許発明10は、本件特許発明3を引用するものであり、上記(2-1)ア ~(2-3)ア の対比結果をふまえ、本件特許発明10(ここで、「前者」という。)と甲2発明1(ここで、「後者」という。)とを対比する。
両者は、
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって、
電池充電電流を検出して電流制御信号を生成する電池電流制御部と、
電池電圧を検出して電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器とを具備し、
補償キャパシタ、および、該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とは、共通のノードにおいて共に合計され、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する回路であって、
アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する電力制御部をさらに具備し、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とは、前記共通のノードにおいて共に合計され、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する回路であり、
前記電力制御部は、
前記電源により生成される前記電流の総量を、所定の電力閾値信号と比較する相互コンダクタンス増幅器と
を具備することを特徴とする回路」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点10-1]
上記(2-1)ア の[相違点1-1]と実質的に同じ。
[相違点10-2]
上記(2-1)ア の[相違点1-2]と実質的に同じ。
[相違点10-3]
上記(2-3)ア の[相違点3-3]と実質的に同じ。
[相違点10-4]
上記(2-3)ア の[相違点3-4]と実質的に同じ。
[相違点10-5]
上記(2-3)ア の[相違点3-5]と実質的に同じ。
[相違点10-6]
本件特許発明10は、「感知増幅器は、感知抵抗と並列に連結された演算増幅器と、前記演算増幅器の1入力とグラウンドとの間に連結されたスイッチと、前記感知抵抗と前記演算増幅器の前記1入力との間に、および、前記スイッチと基準ノードとの間に、それぞれ配置された第1および第2利得抵抗とを具備し、前記演算増幅器は、感知抵抗を通る電流を感知し、前記感知抵抗を通る前記電流は、前記電池に供給される前記電流を示し、前記スイッチの伝導状態は、前記演算増幅器の出力により制御され、前記電池に供給される前記充電電流を示す前記信号は、前記第2抵抗と前記スイッチとの間のノードから得られる」を有するものであるのに対し、甲2発明1は、「感知増幅器」がない点で相違する。
イ 判断
[相違点10-1]、[相違点10-2]、[相違点10-3]、[相違点10-4]、[相違点10-5]に関する判断は、上記(2-1)イ ~(2-3)イ における[相違点1-1]、[相違点1-2]、[相違点3-3]、[相違点3-4]、[相違点3-5]に対する判断と実質的に同じである。
[相違点10-6]について判断すると、感知増幅器が、感知抵抗と並列に連結された演算増幅器と、前記演算増幅器の1入力とグラウンドとの間に連結されたスイッチと、前記感知抵抗と前記演算増幅器の前記1入力との間に、および、前記スイッチと基準ノードとの間に、それぞれ配置された第1および第2利得抵抗とを具備し、前記演算増幅器は、感知抵抗を通る電流を感知し、前記感知抵抗を通る前記電流は、前記電池に供給される前記電流を示し、前記スイッチの伝導状態は、前記演算増幅器の出力により制御され、前記電池に供給される前記充電電流を示す前記信号は、前記第2抵抗と前記スイッチとの間のノードから得られる構成は、甲2発明1に示されるものでも、甲2発明1から容易に想到し得るものでもない。
また、甲5発明には、「バッテリに供給される電流を感知する感知抵抗にオペアンプが並列に接続され、前記オペアンプの出力によりスイッチ素子の導通が制御され、バッテリに供給される電流を示す信号がスイッチ素子に接続された抵抗から得られる回路」の構成が示され、本件特許発明10の「電池に供給される充電電流を示す信号が、第2抵抗とスイッチとの間のノードから得られる構成」の点で類似するとしても、本件特許発明10の「スイッチ」は、「演算増幅器の1入力とグラウンドとの間に連結されたスイッチ」であり、「スイッチがONされると、フィードバックループが構成される」(審判事件答弁書24頁18,19行参照。)ものであるから、甲2発明1に、甲5発明を併せて参照したとしても、本件特許発明10の構成が導かれるものではない。
したがって、本件特許発明10は、甲2発明1から容易に想到し得たものでない。
(2-7)本件特許発明11について
ア 対比
本件特許発明11は、本件特許発明2を引用するものであり、上記(2-1)ア 、(2-2)ア の対比結果をふまえ、本件特許発明11(ここで、「前者」という。)と甲2発明1(ここで、「後者」という。)とを対比する。
後者の「ノートPC等のシステム」は、前者の「携帯用コンピュータを具備する」「アクティブシステム」に相当する。
したがって、両者は、
「「PWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって、
電池充電電流と所定の電池充電電流値とを比較して電流制御信号を生成する電池電流制御部と、
電池電圧と所定の電池電圧値とを比較して電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器と
アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に基づき電力制御信号を生成する電力制御部を具備し、
補償キャパシタ、および、該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とは、前記共通のノードにおいて共に合計され、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する回路であって、
前記アクティブシステムは、携帯用コンピュータを具備する回路。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点11-1]
上記(2-1)ア の[相違点1-1]と実質的に同じ。
[相違点11-2]
上記(2-1)ア の[相違点1-2]と実質的に同じ。
[相違点11-3]
上記(2-2)ア の[相違点2-3]と実質的に同じ。
イ 判断
(2-2)イ の判断と同様、本件特許発明11は、甲2発明1と実質的に相違しない発明、あるいは、甲2発明1から容易に想到し得た発明である。
(2-8)本件特許発明12について
ア 対比
本件特許発明12は、本件特許発明3を引用するものであり、上記(2-1)ア ~(2-3)ア の対比結果をふまえ、本件特許発明12(ここで、「前者」という。)と甲2発明1(ここで、「後者」という。)とを対比する。
後者の「AC-DCアダプタ」は、前者の「AC/DCアダプターを具備する」「DC電源」に相当する。
したがって、両者は、
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって、
電池充電電流と所定の電池充電電流値とを比較して電流制御信号を生成する電池電流制御部と、
電池電圧と所定の電池電圧値とを比較して電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器と
アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に基づき電力制御信号を生成する電力制御部を具備し、
補償キャパシタ、および、該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とは、前記共通のノードにおいて共に合計され、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減することを特徴とする回路であり、
前記電力制御部は、
前記電源により生成される前記電流の総量を、所定の電力値と比較する相互コンダクタンス増幅器とを具備し、
前記DC電源は、AC/DCアダプターを具備する回路。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点12-1]
上記(2-1)ア の[相違点1-1]と実質的に同じ。
[相違点12-2]
上記(2-1)ア の[相違点1-2]と実質的に同じ。
[相違点12-3]
上記(2-3)ア の[相違点3-3]と実質的に同じ。
[相違点12-4]
上記(2-3)ア の[相違点3-4]と実質的に同じ。
[相違点12-5]
上記(2-3)ア の[相違点3-5]と実質的に同じ。
イ 判断
上記(2-3)イ の判断と同様、本件特許発明12は、甲2発明1と実質的に相違しない発明、あるいは、甲2発明1から容易に想到し得た発明である。
(2-9)本件特許発明13について
ア 対比
本件特許発明13(ここで、「前者」という。)と甲2発明4(以下、「後者」という。)とを対比する。
後者の「PWM信号のデューテイサイクルを制御するためのPWMコントローラを含むバッテリ充電管理のための方法」は、前者の「PWM信号のデューテイサイクルを制御するための方法」に相当する。
後者の「抵抗R6で感知したバッテリ充電電流ICH」は、電池(バッテリ)を充電している電流であり、前者の「電池充電電流」に相当する。
後者の「引込電流ISINK(CH)」は、バッテリ充電電流ICHを制御するための信号といえ、前者の「電流制御信号」に相当する。
後者の「引込電流ISINK(CH)を生成する段階を有する」は、バッテリ充電電流ICHを制御するための信号を生成する段階といえ、前者の、「電流制御信号を生成する段階」に相当する。
後者の「抵抗R6で感知したバッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(CH)を流し始め、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(CH)を流し、さらにバッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(CH)を生成する」と、前者の「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する」とを比較すると、「電池充電電流と所定の電池充電電流値とを比較して電流制御信号を生成する」という概念において一致する。
後者の「抵抗R7、R9で感知したバッテリ電圧VBAT」は、電池(バッテリ)の充電電圧であり、前者の「電池電圧」に相当する。
後者の「引込電流ISINK(BAT)」は、バッテリ電圧VBATを制御するための信号といえ、前者の、「電圧制御信号」に相当する。
後者の「引込電流ISINK(BAT)を生成する段階を有する」は、バッテリ電圧VBATを制御するための信号を生成する段階を有する制御部といえ、前者の「電圧制御信号を生成する段階」に相当する。
後者の「抵抗R7,R9で感知したバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(BAT)を流し始め、バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(BAT)を流し、さらにバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(BAT)を生成する」と、前者の「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する」とを比較すると、「電池電圧と所定の電池電圧値とを比較して電圧制御信号を生成する」という概念において一致する。
後者の「前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)および前記引込電流ISINK(ADPT)が前記100μA定電流源の充電電流との差に基づき前記キャパシタにより電圧に変換され、前記キャパシタにより作り出される前記COMPピンの電圧VCに基づいてPWMコンパレータが前記PWM信号を生成する段階」は、アダプタ電流制御に関する制御信号(引込電流ISINK(ADPT))をも有している点では相違するものの、前者の「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する段階」に相当する。
後者の「100μAの定電流源により、前記COMPピンを内部的にバイアスアップし、キャパシタを充電する段階」は、COMPピンに接続された補償回路を構成するキャパシタを充電する段階であり、前者の「前記補償キャパシタを充電する段階」に相当する。
後者の「前記COMPピンにおいて、前記100μAの定電流源により供給される電流と、前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)、ISINK(ADPT)とが共に合計される段階と、前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)、ISINK(ADPT)は、前記COMPピンを介して前記キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する段階と、をさらに有する」は、前者の「前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とを、共通のノードにおいて共に合計する段階と、前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号に基づいて、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルを低減させる段階とをさらに具備する」に相当する。
したがって両者は
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための方法であって、
電池充電電流と所定の電池充電電流値とを比較して電流制御信号を生成する段階と、
電池電圧と所定の電池電圧値とを比較して電圧制御信号を生成する段階と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する段階と
を具備し、
補償キャパシタを充電する段階と、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とを、共通のノードにおいて共に合計する段階と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号に基づいて、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルを低減させる段階と
をさらに具備する方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点13-1]
電流制御信号の生成に関し、本件特許発明13は、「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成」するものであるのに対し、甲2発明4は、「バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(CH)を流し始め、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(CH)を流し、さらにバッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(CH)を生成する」ものである点。
[相違点13-2]
電圧制御信号の生成に関し、本件特許発明13は、「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成」するものであるのに対し、甲2発明4は、「バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(BAT)を流し始め、バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(BAT)を流し、さらにバッテリ電圧VBATがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(BAT)を生成する」ものである点。
イ 判断
上記[相違点13-1]について検討する。
甲2発明4の引込電流ISINK(CH)の生成は、gmアンプによって行われるから、例えば、甲第2号証の5頁の表に「gm Transconductance gain」、「90(MIN)、150(TYP)、210(MAX)」「mA/V」とあるように、90(最小)~150(典型)~210(最大)mA/Vのごとき所定の値のトランスコンダクタンスゲインにより、gmアンプの動作する領域では、入力(抵抗R6で感知したバッテリ充電電流ICHに対応する電圧)と出力(引込電流ISINK(CH))とが線形的に関連付けられる(比例する)ものであるといえる。
ここで、甲2発明4において、gmアンプによって行われる引込電流ISINK(CH)の生成は、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に近づいた時に始まるから、この時のバッテリ充電電流ICHの値を比例関係の始点(入力ゼロ)として、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に達した場合のバッテリ充電電流ICHの値(入力ゼロを超過する値)が入力されるとき、出力である引込電流ISINK(CH)が100μAとなる比例関係は、gmアンプの動作が行われる領域において成り立つものといえ、バッテリ充電電流ICHがプログラムされた制限に近づいた時の値から超過する量に比例して引込電流ISINK(CH)を生成するものといえる。
そして、甲2発明4において、gmアンプがCOMPピンから「電流を分路し始める」プログラムされた制限に近づいた時の「バッテリ充電電流の値」は、引込電流ISINK(CH)を生成し始める値であるから、「閾値」ということができ、本件特許発明13のごとく「電池充電電流閾値」とすれば、電流制御信号として「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成」するものとなり、本件特許発明13と実質的に相違しないものである。
上記[相違点13-2]について検討する。
甲2発明4の、バッテリ電圧VBATに対応する引込電流ISINK(BAT)の生成は、引込電流ISINK(CH)の生成と同様、gmアンプによって行われるから、前記相違点1の検討と同様、バッテリ電圧VBATがプログラムされた制限に近づいた時の値から超過する量に比例して、引込電流ISINK(BAT)が生成されるものといえる。
そして、甲2発明4において、gmアンプがCOMPピンから「電流を分路し始める」プログラムされた制限に近づいた時の「バッテリ電圧の値」は、引込電流ISINK(BAT)を生成し始める値であるから、「閾値」ということができ、本件特許発明13のごとく「電池電圧閾値」とすれば、電圧制御信号として「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成」ものとなり、本件特許発明13と実質的に相違しないものである。
したがって、本件特許発明13は、甲2発明4と実質的に相違しない発明、あるいは、甲2発明4から容易に想到し得た発明である。
(2-10)本件特許発明14について
ア 対比
本件特許発明14は、本件特許発明13を引用するものであり、上記(2-9)ア の対比結果をふまえ、本件特許発明14(ここで、「前者」という。)と甲2発明4(ここで、「後者」という。)とを対比する。
後者の「ノートPC等のシステム」は、後者の「アクティブシステム」に相当する。
後者の「前記バッテリ充電電流ICH」は、後者の「電池充電器」の「電流」に相当する。
後者の「抵抗R5で感知した、ノートPC等のシステムに供給されるシステム電流と前記バッテリ充電電流ICHの和としてAC-DCアダプタより供給されるアダプタ電流IADPT」は、AC-DCアダプタより供給される電流の総量であり、前者の「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量」に相当する。
後者の「引込電流ISINK(ADPT)」は、電流の総量を制御する信号であり、AC-DCアダプタより供給される総電力を制御するものであるから、前者の「電力制御信号」に相当する。
後者の「引込電流ISINK(ADPT)を生成する段階」は、アダプタ電流IADPTを制御するための信号を生成する制御部といえ、前者の、「電力制御信号を生成する段階」に相当する。
後者の「抵抗R5で感知した、ノートPC等のシステムに供給されるシステム電流と前記バッテリ充電電流ICHの和としてAC-DCアダプタより供給されるアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(ADPT)を流し始め、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(ADPT)を流し、さらにアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(ADPT)を生成する」と、前者の「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する」とを比較すると、「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に基づき電流制御信号を生成する」という概念において一致する。
後者の「前記COMPピンにおいて、前記100μAの定電流源により供給される電流と、前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)、ISINK(ADPT)とが共に合計される段階と、前記引込電流ISINK(CH)、ISINK(BAT)、ISINK(ADPT)は、前記COMPピンを介して前記キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する段階と、をさらに有する」は、前者の「前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とを、前記共通のノードにおいて共に合計する段階と、前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号に基づいて、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルを低減させる段階とをさらに具備する」に相当する。
したがって両者は
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための方法であって、
電池充電電流と所定の電池充電電流値とを比較して電流制御信号を生成する段階と、
電池電圧と所定の電池電圧値とを比較して電圧制御信号を生成する段階と、
アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する段階と、
を具備し、
補償キャパシタを充電する段階と、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とを、前記共通のノードにおいて共に合計する段階と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号に基づいて、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルを低減させる段階と
をさらに具備する方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点14-1]
上記(2-12)ア の[相違点13-1]と実質的に同じ。
[相違点14-2]
上記(2-12)ア の[相違点13-2]と実質的に同じ。
[相違点14-3]
電力制御信号の生成に関し、本件特許発明14は、「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する」するものであるのに対し、甲2発明4は、「アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づくと引込電流ISINK(ADPT)を流し始め、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に達すると100μAの引込電流ISINK(ADPT)を流し、さらにアダプタ電流IADPTがプログラムされた制限を超えようとした場合にはより大きな引込電流ISINK(ADPT)を生成する」ものである点。
イ 判断
[相違点14-1],[相違点14-2]についての判断は、(2-12)イ の[相違点13-1],[相違点13-2]についての判断と同じ。
上記[相違点14-3]について検討する。
甲2発明4の引込電流ISINK(ADPT)の生成は、gmアンプによって行われるから、例えば、甲第2号証の5頁の表に「gm Transconductance gain」、「90(MIN)、150(TYP)、210(MAX)」「mA/V」とあるように、90(最小)~150(典型)~210(最大)mA/Vのごとき所定の値のトランスコンダクタンスゲインにより、gmアンプの動作する領域では、入力(抵抗R5で感知した、ノートPC等のシステムに供給されるシステム電流と前記バッテリ充電電流ICHの和としてAC-DCアダプタより供給されるアダプタ電流IADPT)と出力(引込電流ISINK(ADPT))とが線形的に関連付けられる(比例する)ものであるといえる。
ここで、甲2発明4において、gmアンプによって行われる引込電流ISINK(ADPT)の生成は、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づいた時に始まるから、この時のアダプタ電流IADPTの値を比例関係の始点(入力ゼロ)として、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に達した場合のアダプタ電流IADPTの値(入力ゼロを超過する値)が入力されるとき、出力である引込電流ISINK(ADPT)が100μAとなる比例関係は、gmアンプの動作が行われる領域において成り立つものといえ、アダプタ電流IADPTがプログラムされた制限に近づいた時の値から超過する量に比例して引込電流ISINK(ADPT)を生成するものといえる。
本件特許発明14は、「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する」ものであり、「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量」と、生成される「電力制御信号」とが「比例」することのみ規定されるものであり、甲2発明4の、アダプタ電流IADPTに基づき引込電流ISINK(ADPT)を生成するgmアンプの動作と比較して格別の差異はない。
したがって、本件特許発明14は、甲2発明4と実質的に相違しない発明、あるいは、甲2発明4から容易に想到し得た発明である。
(まとめ)
本件特許発明1~4、9、11~14は、請求人が提出した甲第2号証の電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1~4、9、11~14に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
本件特許発明1~4、9、11~14は、請求人が提出した甲第2号証の電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1~4、9、11~14に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
請求人が主張する無効理由1により、本件特許発明10を無効とすることはできない。
3 無効理由2について
(3-1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1(ここで、「前者」という。)と甲3発明1(ここで、「後者」という。)とを対比する。
後者の「バッテリ充電電流」は、電池(バッテリ)を充電している電流であり、前者の「電池充電電流」に相当する。
後者の「GM2引込電流」は、バッテリ充電電流を制御するための信号であり、前者の「電流制御信号」に相当する。
後者の「アンプGM2」は、バッテリ充電電流を制御するための信号を生成する制御部といえ、前者の「電池電流制御部」に相当する。
後者の「抵抗RCSで感知したバッテリ充電電流がプログラムされる値に近づいた所定の充電電流値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電流値を超過する量に比例したGM2引込電流を生成するアンプGM2」と、前者の「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部」とを比較すると、「電池充電電流が所定の電池充電電流値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部」という概念において一致する。
後者の「バッテリ充電電圧」は、電池(バッテリ)の充電電圧であり、前者の「電池電圧」に相当する。
後者の「GM3引込電流」は、バッテリ充電電圧を制御するための信号であり、前者の「電圧制御信号」に相当する。
後者の「アンプGM3」は、バッテリ充電電圧を制御するための信号を生成する制御部といえ、前者の「電池電圧制御部」に相当する。
後者の「抵抗分割により感知したバッテリ充電電圧がプログラムされる値に近づいた所定の充電電圧値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電圧値を超過する量に比例したGM3引込電流を生成するアンプGM3」と、前者の「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する電池電圧制御部」とを比較すると、「電池電圧が所定の電池電圧値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する電池電圧制御部」という概念において一致する。
後者の「PWMのデューティサイクル」、「COMPキヤパシタ」、「100μAの電流源」、「COMPノード」は、それぞれ、前者の「PWM信号のデューテイサイクル」、「補償キャパシタ」、「補償キャパシタを充電する電流源」、「共通のノード」に相当する。
後者の「前記GM2引込電流およびGM3引込電流が前記100μA定電流源の充電電流との差に基づき前記COMPキャパシタにより電圧に変換され、前記COMPキャパシタにより作り出される前記COMPノードの電圧に基づいて前記PWM信号を生成する比較器」は、前者の「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器」に相当する。
後者の「前記COMPノードにおいて、前記100μA定電流源により供給される電流と、前記GM2引込電流、GM3引込電流とが共に合計され」ることは、前者の「補償キャパシタ、および、該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し、前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とは、共通のノードにおいて共に合計され」ることに相当する。
後者の「前記前記GM2引込電流、GM3引込電流は、前記COMPノードを介して前記COMPキャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する」ことは、前者の「前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する」ことに相当する。
したがって両者は
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって、
電池充電電流が所定の電池充電電流値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部と、
電池電圧が所定の電池電圧値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器とを具備し、
補償キャパシタ、および、該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とは、共通のノードにおいて共に合計され、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減することを特徴とする回路。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点I-1]
電流制御信号及び電圧制御信号の生成に関し、本件特許発明1は、「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成」及び「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成」するものであるのに対し、甲3発明1は、「バッテリ充電電流がプログラムされる値に近づいた所定の充電電流値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電流値を超過する量に比例したGM2引込電流を生成する」及び「抵抗分割により感知したバッテリ充電電圧がプログラムされる値に近づいた所定の充電電圧値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電圧値を超過する量に比例したGM3引込電流を生成する」ことによって、電流制御信号及び電圧制御信号が生成される点において相違する。
イ 判断
上記[相違点I-1]について検討する。
甲3発明1において、「バッテリ充電電流がプログラムされる値に近づいた所定の充電電流値」は、電流制御信号であるGM2引込電流を生成し始める電流値であるから、充電電流に関する閾値ということができるものである。
また、甲3発明1において、「バッテリ充電電圧がプログラムされる値に近づいた所定の充電電圧値」は、電圧制御信号であるGM3引込電流を生成し始める電圧値であるから、充電電圧に関する閾値ということができるものである。
甲3発明1は、制御信号(引込電流)が定電流源の電流と等しくなる時の充電電流値及び充電電圧値を用いて、充電電流及び充電電圧をプログラムするものであるが、制御信号(引込電流)が流れ始める時の充電電流値及び充電電圧値を用いて、充電電流及び充電電圧を設定するとしても、充電電流及び充電電圧の検出値が所定量シフトするにすぎないものである。
すると、例えば、充電電流の検出抵抗や充電電圧の分圧抵抗の値を調整する等して、感知される値を同様に所定量シフトすれば、制御信号(引込電流)が流れ始める時の充電電流値及び充電電圧値を用いたとしても、充電器の動作としては変わるところがない。
したがって、甲3発明1において、GM2引込電流を生成し始める電流値、GM3引込電流を生成し始める電圧値をそれぞれ閾値として特定すると、本件特許発明1の、「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成」及び「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成」することになるから、本件特許発明1は甲3発明1と相違しない発明、あるいは、甲3発明1から容易に想到し得た発明である。
(3-2)本件特許発明2について
ア 対比
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用するものであり、上記(3-1)ア の対比結果をふまえ、本件特許発明2と甲3発明1とを対比する。
本件特許発明2は、本件特許発明1に対して「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する電力制御部をさらに具備し、前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とは、前記共通のノードにおいて共に合計され、前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する」点を発明特定事項として付加したものである。
本件特許発明2と甲3発明1とを対比すると、上記(3-1)ア の[相違点I-1]に加え、甲3発明1は、上記発明特定事項を有していない点で相違する。
イ 判断
上記発明特定事項は、アクティブシステム(システム負荷)と電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成するものである。
ここで、甲4発明「バッテリ充電電流の制御、バッテリ電圧の制御に加え、システム負荷及びバッテリ充電電流の総量の制御を行う回路。」が示される甲第4号証には、バッテリ充電電流の制御、バッテリ電圧の制御に加え、システム負荷及びバッテリ充電電流の総量の制御を行うという技術思想は開示されているものの、本件特許発明2の「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する電力制御部」を有すること、また、「前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とは、前記共通のノードにおいて共に合計され、前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する」ことは、甲第4号証には記載されておらず、また、甲第4号証の記載から示唆されるものでもない。
したがって、本件特許発明2は、甲3発明1に、甲4発明を適用しても当業者が容易に発明し得たものではない。
(3-3)本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明2に対して「前記電力制御部は、前記電源により生成される電流の総量を感知するための、かつ、DC電源により生成される前記電流の総量を示す信号を生成するための感知増幅器と、前記電源により生成される前記電流の総量を示す前記信号を、所定の電力閾値信号と比較する相互コンダクタンス増幅器とを具備する」点を発明特定事項として付加したものに相当する。
したがって、本件特許発明2が、甲3発明1に、甲4発明を適用しても当業者が容易に発明し得たものではない以上、本件特許発明2に対して更に発明特定事項を付加した本件特許発明3も、当業者が容易に発明し得たとはいえない。
(3-4)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明3に対して「前記電源により生成される前記電流の総量を示す前記信号が前記電力閾値信号を超過する場合には、前記電力制御信号は、ゼロではない値を有する」点を発明特定事項として付加したものに相当する。
したがって、本件特許発明3が、甲3発明1に、甲4発明を適用しても当業者が容易に発明し得たものではない以上、本件特許発明3に対して更に発明特定事項を付加した本件特許発明4も、当業者が容易に発明し得たとはいえない。
(3-5)本件特許発明9について
ア 対比
本件特許発明9は、本件特許発明1を引用するものであり、上記(3-1)ア の対比をふまえ、本件特許発明9(ここで、「前者」という。)と、甲3発明1に構成を付加したものである甲3発明4(ここで、「後者」という。)とを対比する。
後者の、「周期的な波形」を発生する「固定周波数の発振器」と、前者の「固定周波数のノコギリ波信号を生成する発振器」とを比較すると、「固定周波数の信号を生成する発振器」に相当する。
後者の、「固定周波数の発振器から発生される周期的な波形とCOMPキャパシタ上の電圧とを比較し、前記COMPキャパシタ上の電圧に基づいてPWM信号を生成」することは、前者の「充電キャパシタ上の電圧の前記振幅により調整されたデューティサイクルを有する前記PWM信号を生成」することに相当する。
上記(3-1)ア で対比した事項を考慮すると、両者は、
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって、
電池充電電流が所定の電池充電電流値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部と、
電池電圧が所定の電池電圧値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器とを具備し、
補償キャパシタ、および、該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とは、共通のノードにおいて共に合計され、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する回路であって、
固定周波数の信号を生成する発振器をさらに具備し、
前記比較器は、前記信号と前記充電キャパシタ上の電圧の前記振幅とを比較し、かつ、前記充電キャパシタ上の電圧の前記振幅により調整されたデューティサイクルを有する前記PWM信号を生成することを特徴とする回路。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点IX-1]
電流制御信号及び電圧制御信号の生成に関し、本件特許発明9は、「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成」及び「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成」するものであるのに対し、甲3発明4は、「バッテリ充電電流がプログラムされる値に近づいた所定の充電電流値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電流値を超過する量に比例したGM2引込電流を生成する」及び「抵抗分割により感知したバッテリ充電電圧がプログラムされる値に近づいた所定の充電電圧値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電圧値を超過する量に比例したGM3引込電流を生成する」ことによって、電流制御信号及び電圧制御信号が生成される点において相違する。
[相違点IX-2]
固定周波数の信号を生成する発振器について、本件特許発明9は、ノコギリ波を生成するのに対し、甲3発明4は、ノコギリ波を用いるか否かは不明である点。
イ 判断
[相違点IX-1]についての検討は、実質的に上記(3-1)ア の[相違点I-1]についての検討と同様である。
[相違点IX-2]
PWM信号を生成する際に、「周期的な波形」として、「ノコギリ波」や「三角波」が通常用いられており、「固定周波数のノコギリ波」を用いることは周知慣用の手段である。
したがって、本件特許発明9は、甲3発明4から容易に想到し得たものである
(3-6)本件特許発明10について
本件特許発明10は、本件特許発明3に対して「前記感知増幅器は、感知抵抗と並列に連結された演算増幅器と、前記演算増幅器の1入力とグラウンドとの間に連結されたスイッチと、前記感知抵抗と前記演算増幅器の前記1入力との間に、および、前記スイッチと基準ノードとの間に、それぞれ配置された第1および第2利得抵抗とを具備し、前記演算増幅器は、感知抵抗を通る電流を感知し、前記感知抵抗を通る前記電流は、前記電池に供給される前記電流を示し、前記スイッチの伝導状態は、前記演算増幅器の出力により制御され、前記電池に供給される前記充電電流を示す前記信号は、前記第2抵抗と前記スイッチとの間のノードから得られる」ことを発明特定事項として付加したものに相当する。
本件特許発明3が、甲3発明1に、甲4発明を適用しても当業者が容易に発明し得たものではない以上、本件特許発明3に対して更に発明特定事項を付加した本件特許発明10も、当業者が容易に発明し得たとはいえない。
(3-7)本件特許発明11について
本件特許発明11は、本件特許発明2に対して「前記アクティブシステムは、携帯用コンピュータを具備する」点を発明特定事項として付加したものに相当する。
本件特許発明2が、甲3発明1に、甲4発明を適用しても当業者が容易に発明し得たものではない以上、本件特許発明2に対して更に発明特定事項を付加した本件特許発明11も、当業者が容易に発明し得たとはいえない。
(3-8)本件特許発明12について
本件特許発明12は、本件特許発明3に対して「前記DC電源は、AC/DCアダプターを具備する」点を発明特定事項として付加したものに相当する。
本件特許発明3が、甲3発明1に、甲4発明を適用しても当業者が容易に発明し得たものではない以上、本件特許発明3に対して更に発明特定事項を付加した本件特許発明12も、当業者が容易に発明し得たとはいえない
(3-9)本件特許発明13について
ア 対比
本件特許発明13(ここで、「前者」という。)と甲3発明5(ここで、「後者」という。)とを対比する。
後者の「バッテリ充電電流」は、電池(バッテリ)を充電している電流であり、前者の「電池充電電流」に相当する。
後者の「GM2引込電流」は、バッテリ充電電流を制御するための信号であり、前者の「電流制御信号」に相当する。
後者の「GM2引込電流を生成する段階を有するアンプGM2」は、バッテリ充電電流を制御するための信号を生成する段階といえ、前者の「電流制御信号を生成する段階」に相当する。
後者の「抵抗RCSで感知したバッテリ充電電流がプログラムされる値に近づいた所定の充電電流値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電流値を超過する量に比例したGM2引込電流を生成する段階を有するアンプGM2」と、前者の「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する段階」とを比較すると、「電池充電電流が所定の電池充電電流値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する段階」という概念において一致する。
後者の「バッテリ充電電圧」は、電池(バッテリ)の充電電圧であり、前者の「電池電圧」に相当する。
後者の「GM3引込電流」は、バッテリ充電電圧を制御するための信号であり、前者の「電圧制御信号」に相当する。
後者の「GM3引込電流を生成する段階を有するアンプGM3」は、バッテリ充電電圧を制御するための信号を生成する段階といえ、前者の「電圧制御信号を生成する段階」に相当する。
後者の「抵抗分割により感知したバッテリ充電電圧がプログラムされる値に近づいた所定の充電電圧値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電圧値を超過する量に比例したGM3引込電流を生成する段階を有するアンプGM3」と、前者の「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する段階」とを比較すると、「電池電圧が所定の電池電圧値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する段階」という概念において一致する。
後者の「PWMのデューティサイクル」、「COMPキヤパシタ」、「100μAの電流源」、「COMPノード」は、それぞれ、前者の「PWM信号のデューテイサイクル」、「補償キャパシタ」、「電流源」、「共通のノード」に相当する。
後者の「前記GM2引込電流およびGM3引込電流が前記100μA定電流源の充電電流との差に基づき前記COMPキャパシタにより電圧に変換され、前記COMPキャパシタにより作り出される前記COMPノードの電圧に基づいて前記PWM信号を生成する段階」は、前者の「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する段階」に相当する。
後者の「前記COMPノードにおいて、前記100μA定電流源により供給される電流と、前記GM2引込電流、GM3引込電流とが共に合計される段階」は、前者の「補償キャパシタ、および、該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し、前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とは、共通のノードにおいて共に合計される段階」に相当する。
後者の「前記前記GM2引込電流、GM3引込電流は、前記COMPノードを介して前記COMPキャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する段階」は、前者の「前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する段階」に相当する。
したがって両者は
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための方法であって、
電池充電電流が所定の電池充電電流値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する段階と、
電池電圧が所定の電池電圧値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する段階と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する段階とを具備し、
補償キャパシタを充電する段階と、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とは、共通のノードにおいて共に合計される段階と、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点XIII-1]
電流制御信号及び電圧制御信号の生成に関し、本件特許発明13は、「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成」及び「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成」するものであるのに対し、甲3発明5は、「バッテリ充電電流がプログラムされる値に近づいた所定の充電電流値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電流値を超過する量に比例したGM2引込電流を生成する」こと及び「抵抗分割により感知したバッテリ充電電圧がプログラムされる値に近づいた所定の充電電圧値に達したとき電流の引込を開始し、前記所定の充電電圧値を超過する量に比例したGM3引込電流を生成する」ことによって、電流制御信号及び電圧制御信号が生成される点において相違する。
イ 判断
上記[相違点XIII-1]について検討する。
上記相違点は、実質的に前記[相違点I-1]と同じものであり、前記(3-1)ア の判断と同様、本件特許発明13は、甲3発明5と実質的に相異しない発明、あるいは、甲3発明5から容易に想到し得た発明である。
(3-10)本件特許発明14について
ア 対比
本件特許発明14は、本件特許発明13を引用するものであり、上記(3-9)ア の対比結果をふまえ、本件特許発明14と甲3発明5とを対比する。
本件特許発明14は、本件特許発明13に対して「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する段階と、前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とを、前記共通のノードにおいて共に合計する段階と、前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号に基づいて、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減させる段階」を発明特定事項として付加したものである。
したがって、両者は、
「PWM信号のデューティサイクルを制御するための方法であって、
電池充電電流が所定の電池充電電流値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する段階と、
電池電圧が所定の電池電圧値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する段階と、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する段階とを具備し、
補償キャパシタを充電する段階と、
前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号とは、共通のノードにおいて共に合計される段階と、
前記PWM信号のデューティサイクルは、前記補償キャパシタ上の電圧に基づき、
前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号は、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減する方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点XIV-1]
上記(3-12)アの[相違点XIII-1]と実質的に同じ。
[相違点XIV-2]
甲3発明5は、請求項14で付加された上記発明特定事項「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する段階と、前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とを、前記共通のノードにおいて共に合計する段階と、前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号に基づいて、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減させる段階」を有していない点。
イ 判断
上記発明特定事項は、アクティブシステム(システム負荷)と電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成するものである。
ここで、甲4発明「バッテリ充電電流の制御、バッテリ電圧の制御に加え、システム負荷及びバッテリ充電電流の総量の制御を行う回路。」が示される甲第4号証には、バッテリ充電電流の制御、バッテリ電圧の制御に加え、システム負荷及びバッテリ充電電流の総量の制御を行うという技術思想は開示されているものの、本件特許発明14の「アクティブシステムと電池充電器とにより必要とされる電流の総量に比例した電力制御信号を生成する段階」を有すること、また、「前記電流源と、前記電流制御信号と、前記電圧制御信号と、前記電力制御信号とを、前記共通のノードにおいて共に合計する段階と、前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号、および/または、前記電力制御信号に基づいて、前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ、これにより、前記PWM信号のデューティサイクルが低減させる段階」は、甲第4号証には記載されておらず、また、甲第4号証の記載から示唆されるものでもない。
したがって、本件特許発明14は、甲3発明5に、甲4発明を適用しても当業者が容易に発明し得たものではない。
(まとめ)
本件特許発明1、9、13は、請求人が提出した甲第3号証の電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1、9、13に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
本件特許発明1、9、13は、請求人が提出した甲第3号証の電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1、9、13に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
請求人が主張する無効理由2により、本件特許発明2~4、10~12、14を無効とすることはできない。
第6 無効理由3についての当審の判断
1 「振幅」について
本件特許発明1には、「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器」との記載があり、また、本件特許発明13には、「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する段階」との記載がある。
請求人は、「本件明細書をみても、補償キャパシタの充電電圧値に基づいてPWM信号を生成する点が記載されているのみで、電流制御信号、電圧制御信号の電流値の「振幅」に基づいてPWM信号を生成することなどは一切記載されていないから、本件特許の明細書の記載を参酌しても、その構成は意味不明なものと言わざるを得ない。」と主張するのであるが、「PWM信号を生成する比較器」が「補償キャパシタの充電電圧値に基づいてPWM信号を生成する」ことは明らかであり、当該補償キャパシタの充電電圧値は、電流制御信号に基づいて増減し(甲1段落0011)、また、電圧制御信号に基づいて増減するものである(甲1段落0014)。
そうすると、電流制御信号、および、電圧制御信号は増減するものであるから、当然当該信号は振動しており、これを振幅と言うことができるものであり、かつ、この振幅がPWM信号の生成に関連していることも明らかであるから、本件特許発明1の「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する比較器」との記載、本件特許発明13の、「前記電流制御信号、および/または、前記電圧制御信号の振幅に基づいて、PWM信号を生成する段階」との記載について、不明なものとまでいうことはできない。
2 本件特許発明10と図2に示される回路について
請求人は、図2に示される回路により裏付けられる本件特許発明10は明確でないと主張している。
図2については、下記の、「第8 無効理由5についての当審の判断」に示すように、当業者が容易に実施をすることができないものではなく、本件特許発明10について、技術的な意味で不明なものということはできない。
(まとめ)
請求人が主張する無効理由3により、本件特許発明1~4、9~14に係る特許を無効とすることはできない。
第7 無効理由4についての当審の判断
1 「振幅」について
請求人は審判請求書において、「本件明細書には補償キャパシタの充電電圧値に基づいてPWM信号を生成する点が記載されているのみで、電流制御信号、電圧制御信号の電流値の「振幅」に基づいてPWM信号を生成することなどは一切記載されていないから、本件特許発明1、13はサポート要件違反に該当するものである。その余の発明は、請求項1、13を直接的又は間接的に引用するものであるから、やはり同様にサポート要件違反に該当するものである。」と主張している。
しかし、前記「第6 1」で検討したように、明細書には、電流制御信号、および、電圧制御信号は増減するものであって「振幅」を有すること、かつ、この「振幅」がPWM信号の生成に関連していることが読み取れるから、本件特許発明1、13はサポート要件違反に該当するものということはできない。
(まとめ)
請求人が主張する無効理由4により、本件特許発明1~4、9~14を無効とすることはできない。
第8 無効理由5についての当審の判断
被請求人は、本件特許の図2には、電流が流れる方向に関する誤記があり、電流が流れる向きは右から左であるとした上で、図2における処理の流れを説明している。(審判事件答弁書22頁下から5行~最終行)
これに関し、請求人は以下のように主張する。
・図2に示される回路は、仮に矢印の向きを逆にしても、常に動作するとは限らない。(口頭審理陳述要領書26頁16行)
・例えば、pチャネルトランジスタの閾電圧Vthが5[V]だった場合、バッテリ電圧が0[V]から5[V]になるまでは、本件特許明細書の図2の回路(ただし、充電電流の流れる向きを示す矢印を逆にした場合)は動作しない。(口頭審理陳述要領書(2)6頁18~20行)
しかし、本件特許の図2は、充電電流の流れる向きを示す矢印を逆にした場合に、通常の充電時に動作することは明らかなものといえ、極端なバッテリ電圧の低下時に動作することが常に求められるものでもないから、当業者が本件特許発明10に係る実施をすることができないとまでいうことはできない。
(まとめ)
請求人が主張する無効理由5により、本件特許発明10を無効とすることはできない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1~4、9、11~14に係る特許は、請求人が提出した甲第2号証の電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
本件特許発明1~4、9、11~14に係る特許は、請求人が提出した甲第2号証の電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
本件特許発明1、9、13に係る特許は、請求人が提出した甲第3号証の電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
本件特許発明1、9、13に係る特許は、請求人が提出した甲第3号証の電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許発明1~4、9、11~14に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
本件特許発明10は、請求人が主張するように、甲第2号証、甲第3号証の電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明でなく、甲第2号証、甲第3号証の電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
請求人の本件特許請求の範囲の記載についての主張は理由がない。
審判に関する費用については、特許法第169条2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、請求人がその10分の1を、被請求人が10分の9を負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2014-800075