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特許異議申立

2023-701005

避難誘導システム

審判番号
2023-701005
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-038343
登録番号
7246208
請求日
2023年09月21日
審決日
2024年08月22日
公報発行日
2024年12月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】能美防災株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人朝日特許事務所
  • 【異議申立人】近藤 玲子
審判長/審判官
  • 審判長 高野 洋
  • 審判官 稲葉 崇
  • 審判官 丸山 高政
分類
P1652.113-YAA(G08B) / P1652.121-YAA(G08B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第113条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7246208号発明「避難誘導システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7246208号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4、5、6について訂正することを認める。 特許第7246208号の請求項4及び6に係る特許を維持する。 同請求項1~3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯及び証拠方法 1 手続の経緯 特許第7246208号(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成31年3月4日に出願され、令和5年3月16日にその請求項1~5に係る発明について特許権の設定登録がされ、令和5年3月27日に特許掲載公報が発行された。その後の経緯は、次のとおりである。 令和5年 9月21日 :特許異議申立人 近藤 玲子(以下「申立人」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議申立書 11月21日付け:取消理由通知書 令和6年 1月22日 :特許権者による訂正請求書及び意見書 3月 8日 :申立人による意見書 4月12日付け:訂正拒絶理由通知書 5月 2日 :応対記録 6月12日付け:取消理由通知書(決定の予告) 7月16日 :特許権者による訂正請求書及び意見書 なお、令和6年1月22日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取下げられたものとみなす。 また、令和6年7月16日に提出された訂正請求書による訂正については、すでに申立人に意見書の提出の機会が与えられている場合であって、訂正の請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断したことにより、特許法120条の5第5項ただし書に規定された「特別の事情があるとき」に該当するから、申立人に再度の意見書の提出の機会を与えていない。 以下、令和6年6月12日付け取消理由通知書(決定の予告)を「決定の予告」といい、令和6年7月16日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。 2 証拠方法 (1)申立人が特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付した証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証:大規模・複雑化した建築物等における効果的な防火・防災安全対策の確保について(報告) 甲第2号証:特開2015-230653号公報 甲第3号証:特開2000-207653号公報 甲第4号証:特開平9-161188号公報 甲第5号証:非常警報設備の放送設備に関する認定評価細則 (以下、「甲第1号証」~「甲第5号証」を、「甲1」~「甲5」ということがある。) (2)申立人が令和6年3月8日に提出した意見書に証拠方法として添付した参考資料は、以下のとおりである。 参考資料1:特開平8-102370号公報 参考資料2:特開平8-161650号公報 参考資料3:特開2009-259458号公報 参考資料4:特開2010-33847号公報 第2 訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4-1 特許請求の範囲の請求項4の内、請求項1を引用する請求項2を引用するものを独立形式に改めるとともに、訂正前の請求項4において「前記誘導灯信号装置は、前記誘導灯が消灯時に前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記誘導灯を点灯させる」とあるのを、「前記誘導灯信号装置は、前記感知器が発報した場合には前記誘導灯を点灯させず、前記誘導灯が消灯時に前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記誘導灯を点灯させる」(下線は変更部分)と変更して、本件訂正後の請求項4とする。 (5)訂正事項4-2 特許請求の範囲の請求項4の内、請求項2を引用する請求項3を引用するものを独立形式に改めるとともに、訂正前の請求項4において「前記誘導灯信号装置は、前記誘導灯が消灯時に前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記誘導灯を点灯させる」とあるのを、「前記誘導灯信号装置は、前記感知器が発報した場合には前記誘導灯を点灯させず、前記誘導灯が消灯時に前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記誘導灯を点灯させる」(下線は変更部分)と変更して、本件訂正後の請求項6とする。 (6)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5の内、請求項1を引用する請求項4を引用するものを独立形式に改め、本件訂正後の請求項5とする。 (7)一群の請求項について 本件訂正は本件訂正前の請求項1~5についての訂正であり、本件訂正前の請求項2~5は請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正請求書による訂正請求は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に対して請求されたものである。 また、訂正後の請求項4、5、6については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とする求めがされている。 2 本件訂正の適否の判断 (1)訂正事項1~3 ア 訂正の目的について 訂正事項1~3は請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮(特許法120条の5第2項ただし書き1号)を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アで示したとおり、訂正事項1~3は請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」ということがある。)に記載した事項の範囲内の訂正であること 前記アで示したとおり、訂正事項1~3は請求項を削除するものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 エ 独立特許要件 訂正事項1~3に係る本件訂正前の請求項1~3は、いずれも、本件特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の適用はない。 オ 小括 前記ア~エのとおりであるから、訂正事項1~3に係る訂正は、適法なものと認められる。 (2)訂正事項4-1 ア 訂正の目的について 訂正事項4-1は、本件訂正前の請求項4の内、請求項1を引用する請求項2を引用するものを独立形式に改めるとともに、本件訂正前の請求項4において「前記誘導灯信号装置は、前記誘導灯が消灯時に前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記誘導灯を点灯させる」とあるのを、「前記誘導灯信号装置は、前記感知器が発報した場合には前記誘導灯を点灯させず、前記誘導灯が消灯時に前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記誘導灯を点灯させる」(下線は変更部分)と変更して、本件訂正前には特定されていなかった「感知器が発報した場合」の動作を特定することで、「誘導灯信号装置」の動作を限定するものである。 したがって、訂正事項4-1に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること(特許法120条の5第2項ただし書き4号)、及び特許請求の範囲の減縮(同1号)を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アで示したとおり、訂正事項4-1は「誘導灯信号装置」の動作を限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4-1により追加された「前記感知器が発報した場合には前記誘導灯を点灯させず」との事項は、明細書等の【0024】の「感知器発報時には誘導灯31を点灯させない」との記載に基づくものであると認められる。 したがって、訂正事項4-1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 エ 独立特許要件 訂正事項4-1に係る本件訂正前の請求項4は、本件特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の適用はない。 オ 小括 前記ア~エのとおりであるから、訂正事項4-1に係る訂正は、適法なものと認められる。 (3)訂正事項4-2 ア 訂正の目的について 訂正事項4-2は、本件訂正前の請求項4の内、請求項2を引用する請求項3を引用するものを独立形式に改めるとともに、本件訂正前の請求項4において「前記誘導灯信号装置は、前記誘導灯が消灯時に前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記誘導灯を点灯させる」とあるのを、「前記誘導灯信号装置は、前記感知器が発報した場合には前記誘導灯を点灯させず、前記誘導灯が消灯時に前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記誘導灯を点灯させる」(下線は変更部分)と変更して、本件訂正前には特定されていなかった「感知器が発報した場合」の動作を特定することで、「誘導灯信号装置」の動作を限定するものである。 したがって、訂正事項4-2に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること(特許法120条の5第2項ただし書き4号)、及び特許請求の範囲の減縮(同1号)を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アで示したとおり、訂正事項4-2は「誘導灯信号装置」の動作を限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4-2により追加された「前記感知器が発報した場合には前記誘導灯を点灯させず」との事項は、明細書等の【0024】の「感知器発報時には誘導灯31を点灯させない」との記載に基づくものであると認められる。 したがって、訂正事項4-2は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 エ 独立特許要件 訂正事項4-2に係る本件訂正前の請求項4は、本件特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の適用はない。 オ 小括 前記ア~エのとおりであるから、訂正事項4-2による訂正は、適法なものと認められる。 (4)訂正事項5 ア 訂正の目的について 本件訂正前の請求項5は請求項4を引用し、請求項4は請求項1~3のいずれか1項を引用するものである。 訂正事項5は、本件訂正前の請求項5から、請求項2を引用する請求項4を引用するもの、及び、請求項3を引用する請求項4を引用するものを削除した上で、請求項1を引用する請求項4を引用するもののみを独立形式に改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮(特許法120条の5第2項ただし書き1号)、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること(同4号)を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アで示したとおり、訂正事項5は、本件訂正前の請求項5の内、請求項2を引用する請求項4を引用するもの、及び請求項3を引用する請求項4を引用するものを削除した上で、請求項1を引用する請求項4を引用するものを独立形式に改めるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 前記アで示したとおり、訂正事項5は、本件訂正前の請求項5の内、請求項2を引用する請求項4を引用するもの、及び請求項3を引用する請求項4を引用するものを削除した上で、請求項1を引用する請求項4を引用するものを独立形式に改めるものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 エ 独立特許要件 訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり(前記ア)、訂正事項5に係る本件訂正前の請求項5に対しては特許異議の申立てがなされていない。 よって、訂正事項5に係る本件訂正後の請求項5は、独立特許要件を満たす必要があるが、前記アで示したとおり、訂正事項5は、本件訂正前の請求項5の内、請求項2を引用する請求項4を引用するもの、及び請求項3を引用する請求項4を引用するものを削除した上で、請求項1を引用する請求項4を引用するものを独立形式に改めるものであるところ、本件訂正後の請求項5に係る発明が独立して特許を受けることができないとする特段の事情は存在しない。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に適合する。 オ 小括 前記ア~エのとおりであるから、訂正事項5による訂正は、適法なものと認められる。 3 本件訂正についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は適法なものと認められる。 また、訂正後の請求項4、5、6について、別の訂正単位とする求めがされている。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4、5、6について訂正することを認める。 第3 本件発明 前記第2、3のとおり、本件訂正は認められ、請求項1~3は削除されたから、本件訂正後の請求項4~6に係る発明は、本件訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項4~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、本件訂正後の請求項4~6に係る発明を、それぞれ「本件発明4~6」といい、まとめて「本件発明」ということがある。) 「【請求項4】 客を収容する客エリアと、当該客エリアの管理人が執務する管埋人エリアとを含む防火対象物のための避難誘導システムであって、 前記防火対象物の各所に設置される感知器と、 前記防火対象物の各所に設置される発信機と、 前記防火対象物の各所に設置されるスピーカと、 前記感知器が作動すると又は前記発信機が操作されると、移報信号を出力する受信部と、 前記スピーカを通じて非常放送を行う放送設備制御部と を備え、 前記放送設備制御部は、前記受信部から感知器発報信号を受信すると、前記管理人エリアに設置されたスピーカを通じて感知器発報放送を行う一方で、前記客エリアに設置されたスピーカを通じては感知器発報放送を行わず、 前記放送設備制御部は、前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記管理人エリアに設置されたスピーカを通じて火災放送を行うとともに、前記客エリアに設置されたスピーカを通じて火災放送を行い、 前記客エリアは劇場エリアであり、 前記管理人エリアは劇場事務室であり、 前記客エリアの各所に設置される誘導灯と、 前記誘導灯の点灯を制御する誘導灯信号装置と をさらに備え、 前記誘導灯信号装置は、前記感知器が発報した場合には前記誘導灯を点灯させず、前記誘導灯が消灯時に前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記誘導灯を点灯させることを特徴とする避難誘導システム。 【請求項5】 客を収容する客エリアと、当該客エリアの管理人が執務する管理人エリアとを含む防火対象物のための避難誘導システムであって、 前記防火対象物の各所に設置される感知器と、 前記防火対象物の各所に設置される発信機と、 前記防火対象物の各所に設置されるスピーカと、 前記感知器が作動すると又は前記発信機が操作されると、移報信号を出力する受信部と、 前記スピーカを通じて非常放送を行う放送設備制御部と を備え、 前記放送設備制御部は、前記受信部から感知器発報信号を受信すると、前記管理人エリアに設置されたスピーカを通じて感知器発報放送を行う一方で、前記客エリアに設置されたスピーカを通じては感知器発報放送を行わず、 前記放送設備制御部は、前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記管理人エリアに設置されたスピーカを通じて火災放送を行うとともに、前記客エリアに設置されたスピーカを通じて火災放送を行い、 前記客エリアの各所に設置される誘導灯と、 前記誘導灯の点灯を制御する誘導灯信号装置と をさらに備え、 前記誘導灯信号装置は、前記誘導灯が消灯時に前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記誘導灯を点灯させ、 前記客エリアに設置される表示装置であって、火災放送時に前記誘導灯を点灯させることを通知するメッセージを表示する表示装置をさらに備えることを特徴とする避難誘導システム。 【請求項6】 客を収容する客エリアと、当該客エリアの管埋人が執務する管理人工リアとを含む防火対象物のための避難誘導システムであって、 前記防火対象物の各所に設置される感知器と、 前記防火対象物の各所に設置される発信機と、 前記防火対象物の各所に設置されるスピーカと、 前記感知器が作動すると又は前記発信機が操作されると、移報信号を出力する受信部と、 前記スピーカを通じて非常放送を行う放送設備制御部と を備え、 前記放送設備制御部は、前記受信部から感知器発報信号を受信すると、前記管理人工リアに設置されたスピーカを通じて感知器発報放送を行う一方で、前記客エリアに設置されたスピーカを通じては感知器発報放送を行わず、 前記放送設備制御部は、前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記管理人エリアに設置されたスピーカを通じて火災放送を行うとともに、前記客エリアに設置されたスピーカを通じて火災放送を行い、 前記客エリアは劇場エリアであり、 前記管理人エリアは劇場事務室であり、 前記放送設備制御部は、非火災放送スイッチが操作されると、前記管理人エリアに設置されたスピーカを通じて非火災放送を行う一方で、前記客エリアに設置されたスピーカを通じては非火災放送を行わず、 前記客エリアの各所に設置される誘導灯と、 前記誘導灯の点灯を制御する誘導灯信号装置と をさらに備え、 前記誘導灯信号装置は、前記感知器が発報した場合には前記誘導灯を点灯させず、前記誘導灯が消灯時に前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記誘導灯を点灯させることを特徴とする避難誘導システム。」 第4 決定の予告の概要 当審にて令和6年6月12日付けで特許権者に通知した決定の予告における取消理由の概要は、次のとおりである。 取消理由1(進歩性) 本件訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1~4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 第5 決定の予告についての当審の判断 決定の予告における取消理由1は、本件訂正前の請求項1~4を対象としたものである(前記第4)ところ、前記第2のとおり、本件訂正により、本件訂正前の請求項1~3は削除され、また、本件訂正前の請求項4について、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正がされ、本件訂正後の請求項4及び6とされた。 したがって、以下では、決定の予告における取消理由1により、請求項4及び6に係る特許を取り消すことができるかについて検討する。 1 甲2及び甲1の記載事項 (1)甲2の記載事項及び甲2発明 ア 甲2の記載事項 甲2には、次の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した(以下同様)。 (ア)「【0001】 本発明は、火災報知設備による火災検知に連動して非常用放送設備から自動的に放送する防災設備に関する。」 (イ)「【0028】 図1に示すように、火災報知設備10は火災受信機14を備え、また非常放送設備12は非常放送装置20を備え、火災受信機14と非常放送装置20の間は伝送路28と1回線の移報回線30で接続し、火災受信機14の火災受信に連動して非常放送装置20で非常放送を行うようにしている。 (火災報知設備の概要) 図1に示すように、火災報知設備10は火災受信機14を備え、火災受信機14から警戒区域毎に感知器回線L1~Lnを引き出し、コモン線Cとの間に、感知器回線L1に代表して示すように、火災感知器16を接続している。 【0029】 火災感知器16は煙感知器又は熱感知器等であり、火災に伴う煙や熱等の物理現象の変化を検出して発報し、発報信号を火災受信機14に送信する。火災受信機14は火災感知器16からの発報信号を受信すると火災警報を出力する。 【0030】 また、感知器回線L1とコモン線Cの間には必要に応じて発信機18を接続しており、発信機18には更に火災受信機14から応答信号線Aを接続している。また発信機18は電話ジャックを設けていることから、火災受信機14から電話線Tを接続している。 【0031】 発信機18は火災発見者等の押し釦操作によるスイッチ作動で発信信号を火災受信機14に送信し、この発信信号を受信した火災受信機14は火災確認を検出して火災警報を出力すると共に応答信号線Aに応答信号を送信して発信機18に設けた応答表示灯を点灯して火災受信を行ったことを知らせる。 【0032】 火災受信機14の火災警報動作は、火災感知器16からの発報信号を受信した場合は、火災代表灯を点灯又は点滅して火災警報音を出力すると共に火災発報のあった感知器回線に対応した地区表示灯を点灯又は点滅して火災発生区域を示す。この火災警報に対し防災センターの係員等は火災発報のあった現場に出向き、火災を確認した場合には、防災センターに連絡することで火災受信機14に設けた火災確認スイッチを操作させるか、或いは火災現場の近くに設置している発信機18を操作して発信信号を送信することで、火災受信機14で火災確認を検出し、地区音響警報の出力制御等を行う。 【0033】 また、火災受信機14は火災発報及び火災確認を検出すると、非常放送設備12を含む外部装置に連動信号を出力する移報動作を行う。火災受信機14が非常放送設備12に出力する連動信号としては、発報区域識別信号、発報代表信号及び火災確認信号がある。 【0034】 発報区域識別信号は、火災感知器16が発報した感知器回線L1~Lnに対応した発報区域を示す信号であり、例えば非常放送設備12の設置が義務付けられた地上11階以上の建物であれば火災発報階を示す階別信号を伝送路28により非常放送装置20に送信する。なお、以下の説明では、発報区域識別信号を、階別信号として説明する。」 (ウ)「【0036】 火災確認信号は、火災受信機14が発報後に火災の確認を検出した場合に伝送路28により非常放送装置20に送信する信号である。」 (エ)「【0039】 また、非常放送装置12からはスピーカ回線SLを引き出しており、スピーカ回線SLは例えば建物の階別等の放送区域毎に分けて複数回線を引き出し、各回線に複数のスピーカ26を接続している。スピーカ26は居室、非居室、廊下、階段といった設置場所に応じて消防法令で決められた出力音圧のものを設置している。また、1つのスピーカ回線SLは、ノーマル放送線N、非常放送線R及びコモン線Cの3本の信号線を使用している。ノーマル放送線Rにはスピーカ分岐側に音量調整用のアッテネータ(減衰器)を設ける場合がある。 【0040】 非常放送装置20は、連動信号による基本的な放送制御として、火災報知設備10の火災受信機14から階別信号を伝送路28により受信した場合に、火災発生階及び直上階のスピーカ回線を選択してスピーカから所定の感知器発報放送を出力させる。なお、火災発生階が1階の場合は地下階を含む。 【0041】 また、非常放送装置20は、感知器発報放送を行った後に火災受信機14から火災確認信号を伝送路28により受信した場合、火災発生階及び直上階のスピーカから所定の火災放送を出力させる。更に、火災放送から予め設定した一定時間を経過した場合に、全階のスピーカから火災放送を出力させる一斉放送に切替える。」 (オ)「【0043】 また、非常放送装置20は、非火災を現場確認して非火災放送スイッチを操作した場合に、火災発生階及び直上階のスピーカから所定の非火災放送を出力させる。」 (カ)「【0045】 図2に示すように、火災受信機14は受信制御部32を備え、受信制御部32は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。」 (キ)「【0051】 伝送部42は、受信制御部32の指示に基づきヘッダ部とデータ部でなるパケット形式の階別信号又は火災確認信号を、伝送路28を構成するLANケーブルを介して非常放送装置20に送信し、また伝送路28を介して非常放送装置20からパケット形式の鳴動停止信号を受信する。」 (ク)図2 [図:0001417619000001.jpg] 図2によれば、火災受信機14は伝送部42を備えている。 (ケ)「【0058】 また、受信制御部32は、火災発報を検出した場合、発報階を示す階別情報を含む階別信号を生成し、伝送部42に指示してパケット形式の階別信号に変換して伝送路28により非常放送装置20へ送信する制御を行う。」 (コ)「【0060】 また、受信制御部32は、火災発報を検出した後に、発信信号の受信又は火災断定スイッチの操作等から火災確認を検出した場合、火災確認情報を含む火災確認信号を生成し、伝送部42に指示してパケット形式の火災確認信号に変換して伝送路28により非常放送装置20へ送信する制御を行う。」 (サ)「【0068】 マイク60は非常放送装置20の操作パネルに設けており、必要に応じて防災センターの係員が避難誘導などを指示する放送入力を行うことを可能とする。また、係員がマイク60を操作パネルからピックアップするとマイクスイッチがオンし、マイク使用を示す検出信号を制御部48に出力し、鳴動停止信号を伝送路28により火災受信機14に送信させる。」 イ 甲2発明 前記ア(ア)~(サ)の記載によれば、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲2発明をa~tに分説し、「分説a」などのようにして参照する。 <甲2発明> 「a 火災報知設備による火災検知に連動して非常用放送設備から自動的に放送する防災設備であって、(【0001】) b 火災報知設備10は火災受信機14を備え、非常放送設備12は非常放送装置20を備え、火災受信機14の火災受信に連動して非常放送装置20で非常放送を行い、火災受信機14から警戒区域毎に感知器回線L1~Lnを引き出し、コモン線Cとの間に、感知器回線L1に代表して示すように、火災感知器16を接続し、(【0028】) c 火災感知器16は、火災に伴う煙や熱等の物理現象の変化を検出して発報し、発報信号を火災受信機14に送信し、(【0029】) d 感知器回線L1とコモン線Cの間には発信機18を接続し、(【0030】) e 発信機18は火災発見者等の押し釦操作によるスイッチ作動で発信信号を火災受信機14に送信し、(【0031】) f 火災受信機14の火災警報動作は、火災感知器16からの発報信号を受信した場合は、火災警報音を出力すると共に火災発生区域を示し、この火災警報に対し防災センターの係員等は火災発報のあった現場に出向き、火災を確認した場合には、火災現場の近くに設置している発信機18を操作して発信信号を送信することで、火災受信機14で火災確認を検出し、(【0032】) g 火災受信機14は火災発報及び火災確認を検出すると、非常放送設備12を含む外部装置に連動信号を出力する移報動作を行い、火災受信機14が非常放送設備12に出力する連動信号としては、発報区域識別信号、火災確認信号があり、(【0033】) h 発報区域識別信号は、火災感知器16が発報した感知器回線L1~Lnに対応した発報区域を示す信号であり、例えば非常放送設備12の設置が義務付けられた地上11階以上の建物であれば火災発報階を示す階別信号を非常放送装置20に送信し(【0034】) i 火災確認信号は、火災受信機14が発報後に火災の確認を検出した場合に非常放送装置20に送信する信号であり、(【0036】) j 非常放送装置12からはスピーカ回線SLを引き出しており、スピーカ回線SLは例えば建物の階別等の放送区域毎に分けて複数回線を引き出し、各回線に複数のスピーカ26を接続しており、(【0039】) k 非常放送装置20は、火災受信機14から階別信号を受信した場合に、火災発生階及び直上階のスピーカ回線を選択してスピーカから所定の感知器発報放送を出力させ、(【0040】) l 非常放送装置20は、火災受信機14から火災確認信号を受信した場合、火災発生階及び直上階のスピーカから所定の火災放送を出力させ、(【0041】) m 非常放送装置20は、非火災を現場確認して非火災放送スイッチを操作した場合に、火災発生階及び直上階のスピーカから所定の非火災放送を出力させ、(【0043】) n 火災受信機14は受信制御部32を備え、(【0045】) o 伝送部42は、受信制御部32の指示に基づき階別信号又は火災確認信号を非常放送装置20に送信し、(【0051】) p 火災受信機14は伝送部42を備えており、(図2) q 受信制御部32は、火災発報を検出した場合、階別信号を生成し、非常放送装置20へ送信する制御を行い、(【0058】) r 受信制御部32は、火災発報を検出した後に、発信信号の受信から火災確認を検出した場合、火災確認信号を生成し、非常放送装置20へ送信する制御を行い、(【0060】) s マイク60は非常放送装置20の操作パネルに設けており、必要に応じて防災センターの係員が避難誘導などを指示する放送入力を行うことを可能とする、(【0068】) t 防災設備。」 (2)甲1の記載事項及び甲1に記載された技術 ア 甲1の記載事項 甲1には、次の事項が記載されている。 以下では、円で囲われた数字を摘記する際に、「○」の次に囲われた数字を書く形で摘記する。例えば、「2」が円で囲われているものは、「○2」のように表記する。 (ア)「ウ 超高層ビル○3 ・延べ面積約10万3,000m2、軒高約145mの大規模・高層の複合用途建築物 ・本対象物は、国際会議場、科学情報館、展示場、ホール、商業店舗、事務所、飲食店及び駐車場で構成され、令別表第一(16)項イに該当 ・防災センターは1か所であるが、駐車場監視室に副防災監視盤、楽屋事務・管理室、新市民会館事務室(市施設)及びエリアマネジメントセンター(県施設)には副表示機を設けるなど、運用管理を考慮した総合消防防災システムを構築 ・非常放送は、建物構造や用途及びパニック防止を考慮した区分放送を行っており、国際会議場やホール等では、これらの場所以外において自動火災報知設備の感知器が発報した際には、火災であることが確認された旨の放送以外の放送(非火災報)を行わないよう措置。ただし、ホール内の感知器が作動した場合は、当該ホール内で感知器の発報放送」(3~4頁) (イ)「カ ターミナル駅ビル○3 ・延べ面積約27万2,000m2、軒高約54m、地上11階、地下3階であり、駅ビルと駅施設(JR駅A、JR駅B)が一体となった大規模複合用途の建築物 ・本対象物は、百貨店、店舗、飲食店、集会場、映画館(シネマコンプレックス)、駐車場及び駅施設で構成され、令別表第一(16)項イに該当 ・本対象物は、既存のJR駅A、JR駅B、店舗及び飲食店が入居するDビル並びにEビルに、Cビルを増築しており、管理区分を5つに区分。また、増築したCビル防災センターで全体の統括防災管理を実施 ・非常放送は、管理区分を考慮して既存のビルや駅施設をまとめたエリアと増築したCビルのエリアとに大別されるが、避難誘導を考慮した鳴動方法 ・シネマコンプレックス部分の非常放送は、当該部分以外の部分において自動火災報知設備の感知器が発報した際には、シネマコンプレックス部分に当該感知器の発報放送を行わず、火災であることを確認した後に放送される火災発報のみ放送。ただし、シネマコンプレックス内の感知器が作動した場合は、当該シネマコンプレックス内で感知器発報放送を実施」(4頁) (ウ)「ク 大規模集客施設○2 ・延べ面積約21万7,000m2、地上5階である大規模商業施設を含む複合用途の建築物 ・本対象物は、店舗、飲食店及び映画館(シネマ)で構成された店舗棟と、駐車場棟の2棟で構成され、令別表第一(16)項イ及び(13)項イに該当 ・防災センターは、店舗棟1階に設け、24時間集中監視を実施。また、店舗棟1階のGMS商品管理室、2階販売店事務室及び映画館事務室に火災表示機を設け、防災センターの補助機能として位置付け ・放送設備は、店舗棟を防火区画の区分け等により4ブロックに区分し、非常放送による混乱を配慮した区分鳴動方式。また、シネマエリアは、観客のパニックを防止するため感知器作動放送をシネマ事務室に限定し、駆け付け要員等による火災確認後にシネマエリアに対する火災放送を実施」(5頁) (エ)「(3)防災センターの機能 ・超商層ビル及びターミナル駅ビルにおける事例は、基本的に以下の○1及び○2のとおりであった。 ○1 (主)防災センターでは、防犯警備や電気、空調設備等の中央管理室機能が一体化している。 ○2 他の防災センターや近接建物(地下街、地下鉄駅等)との間において、火災代表表示、ホットラインによる連絡通報等により情報の共有化を図っている。 ・ターミナル駅ビルでは、(副)防災センターが平常時は百貨店の管理区分内の防災管理を行い、管理区分内において火災が発生した時には、(主)防災センターが(副)防災センターの活動をサポートし、(副)防災センターが優先して災害対応活動を行うような事例があった。 ・ターミナル駅ビルにおいて(主)防災センターに中央管理室の機能が一体化していない事例では、非常時における連絡体制を構築するために、常にインターホンで連絡が取れるようになっている。なお、この事例では、中央管理室の機能が(副)防災センターと一体化していた。 ・超高層ビルの高層部にホテル等があるケースにおいて当該超高層ビルの上階に(副)防災センターを設置する場合は、事業者の管理運用上の(副)防災センターになるものとし、消防隊が活用すると指揮系統が分散する恐れがあるとのことから、このような(副)防災センターの活用に否定的であるとする消防機関側の意見があった。 ・大規模集客施設では、(主)防災センターに中央監視機能を併置しているケースと、中央監視機能は併置していないが、火災連動信号の送出及びインターホンによる連絡手段を設けているケースがあるが、いずれのケースにおいても、建築物等全体の火災・防災情報を監視・制御する機能を有しており、非常時には建築物等全体を統括するようになっている。」(11~12頁) (オ)「(4)防災センターに設置される防災設備等 ・各建築物等に設置している防災設備等を列挙すると、以下のとおりであった。 ○1 超高層ビル 総合操作盤、自動火災報知設備、非常電話、放送設備、放水型スプリンクラー制御盤、GR型受信機、防災センターの消火設備として不活性ガス消火設備(窒素ガス) ○2 ターミナル駅ビル 総合操作盤、自動火災報知設備、放送設備、緊急地震速報装置、他の建築物等を監視する統括監視装置 ○3 大規模集客施設 総合操作盤、自動火災報知設備、放送設備、中央監視盤、火災通報装置、緊急地震速報装置、火災監視制御卓(液晶ディスプレイモニター、地図グラフィックパネル、消火設備グラフィックパネル)、火災監視・緊急放送・連絡用インターホン制御盤、全域グラフィックパネル、消防機関直通電話、警備系監視システム(ITV等で人の滞留等の情報を収集)」(12頁) (カ)「(5)映画館や会議場等における特別な鳴動方法 建築物等内に映画館や会議場等の施設がある場合における嗚動方法の事例については、以下のとおりである。 ア 超高層ビル○3 ホール等(大・小ホール、国際会議場等)は、2階層から5階層にまたがるため、以下のような措置を施している。 ・ホール等では、誘導灯も通常は消灯し、非常放送起動時に点灯させる。 ・非火災放送等による公演等の中断を防止するため、当該ホール棟以外の感知器が作動した場合は、火災であることを確認した後に放送する火災放送のみを放送可能とするカットリレーを設けている。ただし、ホール等内の感知器が作動した場合は、当該ホール等で感知器発報放送を行う。管理室には副受信機を設置しており、感知器発報の状況が確認でき、副受信機に連絡用電話のプラグを差し込むことにより、防災センターと通話することが可能となっている。 イ ターミナル駅ビル○1 ・非常放送による映画上映の中断を防止する目的で、各フロアにカットリレーを設置し、映画館エリアに直接関係するフロア以外での非常放送の影響を防ぐことができるようにしている。 ウ ターミナル駅ビル○3 ・Cビルの管理区分にある映画館エリアは、非火災報等による映画上映の中断を防止するため、当該映画館以外の感知器が作動した場合は、感知器発報放送、非火災放送を行わず、火災であることを確認した後に放送される火災放送のみを放送する。ただし、シアター内の感知器が作動した場合は、当該シアターで感知器発報放送を行う。映画館事務所には副受信機を設置しているので感知器発報の状況が確認でき、副受信機に連絡用電話のプラグを差し込むことにより、防災センターと通話できる。 ・レストラン街の厨房で何回か感知器が作動したが、この非火災報対策が効果を発揮している。 ・Cビルの3階にあるFMスタジオは、スピーカーを設置できないため、火災表示灯を設置している。 エ 大規模集客施設○1 ・映画館等は特別な放送区域とせず、他の区域と同様に放送している。上映中は、映写設備が火災信号を受信するとカットリレーにより自動的に上映を中断する方式としている。 オ 大規模集客施設○2 ・映画館等の非常放送設備の鳴動方法は、映画館等内及び直下階の店舗エリアで感知器が作動しても、感知器作動警報を行わないようにしており、現場において火災であることを確認した後に、防災センターから手動で放送を行う。 ・感知器の作動は、防災センターと映画館等事務室内の火災表示盤で確認し、防災センター要員のみならず映画館等従業員も現場に駆け付けて確認する。」(54~55頁) (当審注:「ア 超高層ビル○3」における、「ホール棟以外」との記載は、「ホール等以外」の誤記と認められる。) (キ)「大規模建築物等においては、消防法令により区分鳴動方式を導入できるものとされており、感知器が発報した後、一定の時間が経過した場合又は新たな火災信号を受信した場合には、全館鳴動することとなっている。しかし、2つの棟が接続された建築物等において、火災発生の際、火災が発生した棟では感知器が発報し火災放送が流れたが、他の棟では業務放送が中断され無音状態になるよう設定していたため、在館者は当該建築物等において何か不測の事態が発生したものと思い込みパニックに陥った事例があった。また、震災調査報告においては、低層階(3階以下)と高層階(40階以上)の感知器が発報したために全館一斉鳴動となり、その結果、避難階段に在館者が殺到し避難渋滞が発生した事例もあった。よって、事業者等は、このような事例も参考にしながら、消防機関と建築物等の運用実態等を踏まえた鳴動範囲、鳴動方式について検討する必要がある。」(55頁) イ 甲1技術1 前記アの記載によれば、甲1には、次の技術(以下「甲1技術1」という。)が記載されていると認められる。 <甲1技術1> 「地上5階である大規模商業施設を含む複合用途の建築物であり、店舗、飲食店及び映画館(シネマ)で構成された店舗棟を備えた大規模集客施設○2において、(前記ア(ウ)) 防災センターを設け、映画館事務室に火災表示機を設け、放送設備は、店舗棟を防火区画の区分け等により4ブロックに区分し、非常放送による混乱を配慮した区分鳴動方式であり、シネマエリアは、観客のパニックを防止するため感知器作動放送をシネマ事務室に限定し、駆け付け要員等による火災確認後にシネマエリアに対する火災放送を実施し、(前記ア(ウ)) 映画館等の非常放送設備の鳴動方法は、映画館等内及び直下階の店舗エリアで感知器が作動しても、感知器作動警報を行わないようにしており、現場において火災であることを確認した後に、防災センターから手動で放送を行うこと。(前記ア(カ))」 ウ 甲1技術2 前記アの記載によれば、甲1には、次の技術(以下「甲1技術2」という。)が記載されていると認められる。 <甲1技術2> 「大規模・高層の複合用途建築物であり、国際会議場、科学情報館、展示場、ホール、商業店舗、事務所、飲食店及び駐車場を備えた超高層ビル○3において、(前記ア(ア)) 非常放送は、建物構造や用途及びパニック防止を考慮した区分放送を行っており、国際会議場やホール等では、これらの場所以外において自動火災報知設備の感知器が発報した際には、火災であることが確認された旨の放送以外の放送(非火災報)を行わないよう措置し、ただし、ホール内の感知器が作動した場合は、当該ホール内で感知器の発報放送を行い、(前記ア(ア)) ホール等では、誘導灯も通常は消灯し、非常放送起動時に点灯させ、非火災放送等による公演等の中断を防止するため、当該ホール等以外の感知器が作動した場合は、火災であることを確認した後に放送する火災放送のみを放送可能とするカットリレーを設けており、ただし、ホール等内の感知器が作動した場合は、当該ホール等で感知器発報放送を行うこと。(前記ア(カ))」 2 対比・判断 (1)本件発明4について ア 対比 本件発明4と甲2発明とを対比すると、以下のとおりとなる。 (ア)「客を収容する客エリアと、当該客エリアの管理人が執務する管理人エリアとを含む防火対象物のための避難誘導システムであって、」について a 甲2発明は、「建物」において「非常放送設備12」が「設置」(分説h)され、「火災検知に連動」して「放送」が行われる「防災設備」(分説a)であるから、甲2発明の「建物」は、火災に対する防災の対象物であり、「防火対象物」であるといえる。 b 甲2発明の「防災設備」(分説a、t)では、「避難誘導」の「指示」(分説s)がされるから、甲2発明は、「避難誘導システム」であるといえる。 c 前記a及びbによれば、本件発明4と甲2発明は、「防火対象物のための避難誘導システム」である点で共通する。 他方、甲2発明では、「防火対象物」が「客を収容する客エリアと、当該客エリアの管理人が執務する管理人エリアとを含む」か否かが不明である。 (イ)「前記防火対象物の各所に設置される感知器と、」について 甲2発明は、「建物」を「防火対象物」とし(前記(ア)a)、「警戒区域毎」に「火災感知器16」(分説b)を備えるものであるから、甲2発明では、「防火対象物の各所」に「感知器」が「設置」されているといえる。 したがって、本件発明4と甲2発明は、「前記防火対象物の各所に設置される感知器」を備える点で一致する。 (ウ)「前記防火対象物の各所に設置される発信機と、」について 甲2発明では、「感知器回線」に「発信機18」が「接続」(分説d)されており、「感知器回線」は「警戒区域毎」(分説b)に設けられているから、「発信器」が「各所に設置」されているといえる。 また、甲2発明は、「建物」を「防火対象物」とする(前記(ア)a)ものである。 したがって、本件発明4と甲2発明は、「前記防火対象物の各所に設置される発信機」を備える点で一致する。 (エ)「前記防火対象物の各所に設置されるスピーカと、」について 甲2発明は、「建物」を「防火対象物」とし(前記(ア)a)、「建物」の「放送区域毎」に「スピーカ26」(分説j)が設けられていると認められるから、甲2発明では、「防火対象物の各所」に「スピーカ」が「設置」されているといえる。 したがって、本件発明4と甲2発明は、「前記防火対象物の各所に設置されるスピーカ」を備える点で一致する。 (オ)「前記感知器が作動すると又は前記発信機が操作されると、移報信号を出力する受信部と、」について a 甲2発明では、「火災感知器16」が、「火災に伴う煙や熱等の物理現象の変化を検出して発報」(分説c)するから、火災に伴い感知器が作動して発報しているといえる。 b 甲2発明では、「火災発報を検出した場合」に「受信制御部32」は「階別信号」を「送信する制御」(分説q)を行っており、前記aのとおり、火災に伴う発報は感知器が作動することで生じるから、甲2発明では、感知器が作動すると、受信制御部32は階別信号を送信する制御を行っているといえる。 また、感知器が作動すると生じる「階別信号」は「受信制御部32の指示」に基づいて「伝送部42」が「送信」(分説o)しており、「伝送部42」は「火災受信機14」が「備え」る(分説p)構成であるから、甲2発明では、感知器が作動すると、火災受信機14は階別信号を送信、すなわち、出力しているといえる。 c 甲2発明では、「階別信号」は「発報区域識別信号」(分説h)であり、「発報区域識別信号」は「移報動作」において「出力」(分説g)される信号であるから、階別信号は、移報動作、すなわち、火災等の発生時に火災報知設備などから他の機器へ信号を伝える動作において出力される信号であり、移報信号であるといえる。 d 前記b及びcによれば、甲2発明では、感知器が作動すると、火災受信機14は移報信号を出力していると認められる。 そうすると、甲2発明の「火災受信機14」は、本件発明4の「受信部」に相当し、本件発明4と甲2発明とは、「前記感知器が作動すると」「移報信号を出力する受信部」を備える点で一致する。 e 甲2発明では、「発信機18」が「操作」されると「火災受信機14で火災確認を検出」(分説f)し、「受信制御部32」が「火災確認信号」を「送信する制御」(分説r)を行っており、また、「火災確認信号」は「受信制御部32の指示」に基づいて「伝送部42」が「送信」(分説o)しており、「伝送部42」は「火災受信機14」が「備え」る(分説p)構成であるから、甲2発明では、発信機が操作されると、火災受信機14は火災確認信号を送信、すなわち、出力しているといえる。 f 甲2発明では、「火災確認信号」は「移報動作」において「出力」(分説g)される信号であるから、火災確認信号は、移報動作、すなわち、火災等の発生時に火災報知設備などから他の機器へ信号を伝える動作において出力される信号であり、移報信号であるといえる。 g 前記e及びfによれば、甲2発明では、発信機が操作されると、火災受信機14は移報信号を出力していると認められる。また、前記dのとおり、「火災受信機14」は「受信部」に相当する。 したがって、本件発明4と甲2発明とは、「前記発信機が操作されると」「移報信号を出力する受信部」を備える点で一致する。 h 前記d及びgによれば、本件発明4と甲2発明は、「前記感知器が作動すると又は前記発信機が操作されると、移報信号を出力する受信部」を備える点で一致する。 (カ)「前記スピーカを通じて非常放送を行う放送設備制御部と」について 甲2発明では、「非常放送装置20」が「スピーカ回線を選択」して「スピーカから所定の感知器発報放送を出力」(分説k)させており、スピーカ回線の選択や、スピーカから所定の放送を出力させる動作は、放送設備の制御であるといえる。 したがって、甲2発明の「非常放送装置20」は、本件発明4の「放送設備制御部」に相当し、本件発明4と甲2発明は、「前記スピーカを通じて非常放送を行う放送設備制御部」を備える点で一致する。 (キ)「前記放送設備制御部は、前記受信部から感知器発報信号を受信すると、前記管理人エリアに設置されたスピーカを通じて感知器発報放送を行う一方で、前記客エリアに設置されたスピーカを通じては感知器発報放送を行わず、」について a 甲2発明では、「非常放送装置20は、火災受信機14から階別信号を受信した場合」に、「火災発生階及び直上階」の「スピーカから所定の感知器発報放送を出力」(分説k)させており、階別信号は、「火災感知器16」が「発報」(分説c)したときに、「火災受信機14」から「出力」される(前記(オ)b)ものであるから、「感知器発報信号」であるといえる。 また、甲2発明の「非常放送装置20」、「火災受信機14」は、それぞれ本件発明4の「放送設備制御部」、「受信部」に相当する(前記(オ)d及び(カ))。 b したがって、本件発明4と甲2発明は、「前記放送設備制御部は、前記受信部から感知器発報信号を受信すると、所定の場所に設置されたスピーカを通じて感知器発報放送を行」う点で共通する。 他方、前記(ア)のとおり、甲2発明では、防火対象物が「客エリア」と「管理人エリア」とを含む否かが不明であり、「客エリア」、「管理人エリア」において感知器発報放送を行うか否かについても不明である。 (ク)「前記放送設備制御部は、前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記管理人エリアに設置されたスピーカを通じて火災放送を行うとともに、前記客エリアに設置されたスピーカを通じて火災放送を行い、」について a 甲2発明では、「非常放送装置20は、火災受信機14から火災確認信号を受信した場合、火災発生階及び直上階のスピーカから所定の火災放送を出力」(分説l)させている。 また、火災確認信号は、「防災センターの係員等」が「現場に出向き、火災を確認した場合」(分説f)に、「火災受信機14」から「出力」される(前記(オ)e)ものであり、人手による現場での確認により火災であることが確定されているといえるから、甲2発明の火災確認信号は、「火災確定信号」であるといえる。 b 甲2発明の「非常放送装置20」、「火災受信機14」は、それぞれ本件発明4の「放送設備制御部」、「受信部」に相当する(前記(オ)d及び(カ))。 c 前記a及びbによれば、本件発明4と甲2発明は、「前記放送設備制御部は、前記受信部から火災確定信号を受信すると、所定の場所に設置されたスピーカを通じて火災放送を行」う点で共通する。 他方、前記(ア)のとおり、甲2発明では、防火対象物が「客エリア」と「管理人エリア」とを含むか否かが不明であり、「客エリア」、「管理人エリア」において火災放送を行うか否かについても不明である。 (ケ)「前記客エリアは劇場エリアであり、」について 前記(ア)のとおり、甲2発明では、防火対象物が「客エリア」を含むか否かが不明であり、「劇場エリア」を含むか否かも不明である。 (コ)「前記管理人エリアは劇場事務室であり、」について 前記(ア)のとおり、甲2発明では、防火対象物が「管理人エリア」を含むか否かが不明であり、「劇場事務室」を含むか否かも不明である。 (サ)「前記客エリアの各所に設置される誘導灯と、」について 前記(ア)のとおり、甲2発明では、防火対象物が「客エリア」を含むか否かが不明であり、「客エリアの各所に設置される誘導灯」を備えるか否かについても不明である。 (シ)「前記誘導灯の点灯を制御する誘導灯信号装置と」について 前記(サ)のとおり、甲2発明では、「客エリアの各所に設置される誘導灯」を備えるか否かが不明であり、それに付随して、「誘導灯の点灯を制御する誘導灯信号装置」を備えるか否かも不明である。 (ス)「前記誘導灯信号装置は、前記感知器が発報した場合には前記誘導灯を点灯させず、前記誘導灯が消灯時に前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記誘導灯を点灯させる」について 甲2発明では、「火災確定信号」が「受信部」から「出力」される(前記(ク)a及びb)が、前記(シ)のとおり、甲2発明では、「客エリアの各所に設置される誘導灯」や「誘導灯信号装置」を備えるか否かが不明であり、「誘導灯信号装置は、感知器が発報した場合には誘導灯を点灯させず、誘導灯が消灯時に受信部から火災確定信号を受信すると、誘導灯を点灯させる」か否かについても不明である。 (セ)「ことを特徴とする避難誘導システム」について 前記(ア)のとおり、甲2発明は「避難誘導システム」であるから、本件発明4と甲2発明は、「ことを特徴とする避難誘導システム」である点で一致する。 (ソ)一致点及び相違点 以上のことから、本件発明4と甲2発明とは、以下の点で一致及び相違する。 <一致点> 「 防火対象物のための避難誘導システムであって、 前記防火対象物の各所に設置される感知器と、 前記防火対象物の各所に設置される発信機と、 前記防火対象物の各所に設置されるスピーカと、 前記感知器が作動すると又は前記発信機が操作されると、移報信号を出力する受信部と、 前記スピーカを通じて非常放送を行う放送設備制御部と を備え、 前記放送設備制御部は、前記受信部から感知器発報信号を受信すると、所定の場所に設置されたスピーカを通じて感知器発報放送を行い、 前記放送設備制御部は、前記受信部から火災確定信号を受信すると、所定の場所に設置されたスピーカを通じて火災放送を行う ことを特徴とする避難誘導システム。」 <相違点1> 本件発明4では、防火対象物が「客を収容する客エリアと、当該客エリアの管理人が執務する管理人エリアとを含」み、「客エリアは劇場エリア」であり、「管理人エリアは劇場事務室」であるとともに、「客エリアの各所に設置される誘導灯」、「誘導灯の点灯を制御する誘導灯信号装置」を備え、感知器発報放送について、「管理人エリア」では「行」い、「客エリア」では「行わず」、火災放送については、「管理人エリア」及び「客エリア」で「行」い、また、「誘導灯信号装置は、感知器が発報した場合には誘導灯を点灯させず、誘導灯が消灯時に受信部から火災確定信号を受信すると、誘導灯を点灯させる」のに対して、甲2発明では、防火対象物が「客を収容する客エリアと、当該客エリアの管理人が執務する管理人エリアとを含む」か否かは不明であり、それに付随して、「劇場エリア」、「劇場事務室」を含むか否かについても不明であり、また、「客エリアの各所に設置される誘導灯」や「誘導灯信号装置」を備えるか否かは不明であり、「客エリア」、「管理人エリア」において感知器発報放送、火災放送を行うか否かや、「感知器が発報した場合」及び「火災確定信号を受信」した場合の誘導灯の制御についても特定されていない点。 イ 相違点についての判断 (ア)甲1技術1の「大規模商業施設」は、「防災センター」が設けられ、「火災放送」が「実施」されるから、防火対象物であるといえる。 また、甲1技術1では、「シネマエリアは、観客のパニックを防止するため感知器作動放送をシネマ事務室に限定」しているから、シネマエリアは、シネマ事務室と、観客が入るエリアから構成されており、シネマ事務室において行われる事務的な業務には、当然映画館の管理も含まれるものと認められる。 したがって、甲1技術1では、防火対象物は、客を収容する客エリアと、当該客エリアの管理人が執務する管理人エリアとを含むものといえる。 (イ)甲1技術1では、「シネマエリアは、観客のパニックを防止するため感知器作動放送をシネマ事務室に限定」しているから、感知器発報放送について、管理人エリアにおいて行う一方、客エリアにおいては行わないものといえる。 (ウ)甲1技術1では、「駆け付け要員等による火災確認後にシネマエリアに対する火災放送を実施」しており、シネマエリアは、シネマ事務室と、観客が入るエリアから構成されている(前記(ア))から、甲1技術1では、火災放送については、管理人エリア、客エリアの両者において行うものといえる。 (エ)前記(ア)~(ウ)によれば、甲1技術1は、防火対象物は、客を収容する客エリアと、当該客エリアの管理人が執務する管理人エリアとを含み、客のパニックを防止するために、感知器発報放送については、管理人エリアにおいて行う一方、客エリアにおいては行わず、火災放送については、管理人エリア、客エリアの両者において行うものといえる。 (オ)甲1技術2の「超高層ビル」では、「ホール等では、誘導灯も通常は消灯し、非常放送起動時に点灯させ」ており、また、「非火災放送等による公演等の中断を防止するため、当該ホール等以外の感知器が作動した場合は、火災であることを確認した後に放送する火災放送のみを放送可能」としているから、甲1技術2では、ホール、すなわち客エリアに誘導灯を備え、ホール以外の場所の感知器が作動した場合には、ホールでは感知器発報放送は行われず、誘導灯も点灯されず、火災を確認した後の火災放送がホールで行われる時に、誘導灯が点灯されるものと認められる。 (カ)しかしながら、甲1技術1及び甲1技術2は、ともに甲1に記載されている技術ではあるが、甲1技術1は「大規模集客施設○2」、甲1技術2は「超高層ビル○3」という異なる事例におけるものであり、甲1技術1では、「映画館等内及び直下階の店舗エリアで感知器が作動しても、感知器作動警報を行わない」から、客エリアである映画館内の感知器が作動した場合に、映画館において感知器発報放送は行われないものと認められる一方、甲1技術2では、「ホール内の感知器が作動した場合は、当該ホール内で感知器の発報放送を行」うから、客エリアであるホール内の感知器が作動した場合に、ホールにおいて感知器放送が行われるものと認められる。つまり、甲1技術1と甲1技術2とは、客エリアで感知器が作動した場合の放送の有無において異なるものであり、両者の制御の態様は相容れないものである。 加えて、甲1には、異なる建築物等における発報や放送の制御を統合することについて記載も示唆もなく、むしろ、甲1には「事業者等は、このような事例も参考にしながら、消防機関と建築物等の運用実態等を踏まえた鳴動範囲、鳴動方式について検討する必要がある。」(前記第5、1(2)ア(キ))との記載があり、発報や放送の制御は、建築物等毎に個別に検討すべきものとされている。 したがって、甲1技術1及び甲1技術2は、統合して同時に用いることが想定されるものとは認められず、甲1技術1に含まれる客エリアと管理人エリアに対する感知器発報放送及び火災放送の方法を甲2発明に適用しつつ、併せて、甲1技術2に含まれる、感知器作動時や火災確認後の客エリアにおける誘導灯の点灯方法を甲2発明に適用する動機付けは存在せず、むしろ、阻害要因が存在すると認められる。 (キ)したがって、相違点1に係る本件発明4の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明4は、甲2発明及び甲1に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 申立人の主張について (ア)申立人は、令和6年3月8日に提出された意見書(以下「申立人意見書」という。)において、以下のa~cを主張している。 a 「甲1には、「大規模集客施設○2において、映画館等内で感知器が作動しても、感知器作動警報を行わないこと」が記載されています。この記載には、誘導灯は明記されていませんが、大規模集客施設において誘導灯が設けられていることは、本件特許の出願日以前における防災設備の技術常識に照らして明らかです。また、映画館などにおいて、感知器作動警報を行わない場合に、誘導灯の点灯も行わないようにすることは、本件特許の出願日以前における周知技術です(例えば、参考資料1(段落0002、0022、0039)、参考資料2(段落0001、0034)、参考資料3(段落0003、0027)、参考資料4(段落0002、0040、0041))。また、大規模集客施設○2の映画館等内は、本件特許発明の客エリアに対応します。これらのことから、甲1には、「客エリア又は管理人エリアで感知器が作動しても、感知器作動警報を行わず、誘導灯の点灯も行わないこと」が少なくとも当業者に自明な程度に記載されています。」(申立人意見書6~7頁) b 「仮に、大規模集客施設○2における誘導灯の制御が甲1から当業者に自明ではないとしても、超高層ビル○3における誘導灯の制御が甲1に明示されています。つまり、甲1には、「超高層ビル○3において、ホール等では、誘導灯も通常は消灯し、非常放送起動時に点灯させる。」ことが記載されており、超高層ビル○3のホール等(本件特許発明の客エリアに対応する)において、誘導灯の点灯制御を感知器作動制御に連動させる点が開示されています。 そして、甲1における大規模集客施設○2の技術と超高層ビル○3の技術は、甲1という同一文献中に開示された技術であり、いずれも映画館やホール等における公演や映画上映の中断を防止するという共通した課題・目的を持つ技術であって、所定の場合には警報制御を行わないという共通した解決手段に関する技術であるため、当業者にとって両者を組み合わせることについて動機付けがあります。 この動機付けに基づいて両者を組み合わせると、当業者であれば「客エリア又は管理人エリアで感知器が作動しても、感知器作動警報を行わず、当該感知器作動警報行わない場合(つまり通常時の場合)には、誘導灯も消灯する」という技術(本件特許権者が本件発明4と甲2の相違点として挙げた技術)に容易に想到できることは明らかです。」(申立人意見書7~8頁) c 「甲1には、超高層ビル○3に関して、「ホール棟以外の感知器が作動した場合は、火災であることを確認する迄は、火災放送は放送しない」ことが開示されています。ここで、「ホール棟以外の感知器が作動した場合であっても、火災であることを確認する迄」という時間は、「火災放送は放送しない」時間であるため、「非常放送起動時」には該当せず、「通常」に該当します。また、甲1には、超高層ビル○3に関して、「誘導灯も通常は消灯し、非常放送起動時に点灯させる。」ことが開示されています。さらに、甲1における超高層ビル○3の「ホール等」とは、「大・小ホール、国際会議場等」であり、「管理室」(本件特許発明の管理人エリアに対応する)を含まないエリアであるため、「ホール棟以外の感知器が作動した場合」とは「管理人エリアの感知器が作動した場合」を含みます。これらを総合すると、甲1には、「管理人エリアの感知器が作動した場合は、火災であることを確認する迄(つまり、通常時)は、火災放送は放送せず、誘導灯も消灯する」ことが少なくとも当業者に自明な程度に開示されています。 したがって、甲1を参照することで、当業者であれば「客エリア又は管理人エリアで感知器が作動しても、感知器作動警報を行わず、当該感知器作動警報行わない場合(つまり通常時の場合)には、誘導灯も消灯する」という技術(本件特許権者が本件発明4と甲2の相違点として挙げた技術)に容易に想到できることは明らかです。」(申立人意見書9頁) (イ)しかしながら、まず前記(ア)aの主張について、参考資料1~4には、非常時に誘導灯を点灯させることは記載されているものの(参考資料1には「火災報知装置から避難信号が入力」された時に、「避難誘導灯12」を「全光点灯させ」ること(【0039】)が記載されている。参考資料2には、「非常時」に「光源3が点灯」し、「誘導灯としての機能を果たす」こと(【0034】)が記載されている。参考資料3には、「火災などの非常事態の発生時」に「非常時用照明装置」は「点灯する」こと(【0027】)が記載されている。参考資料4には「火災が発生した場合」に、「誘導灯2A」では「ランプ21を点灯」させ、「誘導灯2B」では「ランプ27を点滅させる」こと(【0051】)が記載されている。)、感知器作動警報を行わない場合に、誘導灯の点灯も行わないことは記載されておらず、映画館などにおいて、感知器作動警報を行わない場合に、誘導灯の点灯も行わないようにすることが、参考資料1~4から周知技術であるとは認められない。 (ウ)また、前記(ア)b及びcの主張について、前記イ(カ)のとおり、大規模集客施設○2における甲1技術1、及び超高層ビル○3における甲1技術2は、ともに甲1に記載されている技術ではあるが、異なる事例におけるものであり、相容れない制御を行うから、同時に用いることが想定されるものとは認められず、加えて、異なる建築物等の鳴動制御はそれぞれ個別に検討すべきものであるとされているので、甲1技術1に含まれる客エリアと管理人エリアに対する感知器発報放送及び火災放送の方法を甲2発明に適用しつつ、併せて、甲1技術2に含まれる、感知器作動時や火災確認後の客エリアにおける誘導灯の点灯方法を甲2発明に適用する動機付けが存在するとは認められない。 (エ)したがって、申立人の主張は採用できない。 (2)本件発明6について 本件発明6は、本件発明4の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものである(前記第3)。 したがって、本件発明6と甲2発明とは、少なくとも、前記(1)アに示した相違点1において相違する。 そして、前記(1)イに示したとおり、前記相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明6は、甲2発明及び甲1に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 小括 前記2(1)及び(2)のとおり、本件発明4及び6は、甲2発明及び甲1に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、決定の予告に記載した取消理由により、請求項4及び6に係る特許を取り消すことはできない。 第6 決定の予告で採用しなかった特許異議申立理由について 1 決定の予告で採用しなかった特許異議申立理由の概要 (1)申立理由1(新規性) 本件訂正前の請求項1及び2に係る特許発明は、甲1に記載された発明と同一であって、特許法29条1項3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項1、2及び4に係る特許発明は、甲1に記載された発明及び甲2~甲4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件訂正前の請求項3に係る特許発明は、甲1に記載された発明、甲2及び甲5に記載された技術、並びに甲2~甲4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、本件訂正前の請求項1~4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し取り消すべきものである。 2 決定の予告で採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断 申立理由1は、本件訂正前の請求項1及び2を対象としたものである(前記1(1))ところ、前記第2のとおり、本件訂正により、本件訂正前の請求項1及び2は削除された。 また、申立理由2は、本件訂正前の請求項1~4を対象としたものである(前記1(2))ところ、前記第2のとおり、本件訂正により、本件訂正前の請求項1~3は削除され、本件訂正前の請求項4について、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正がされ、本件訂正後の請求項4及び6とされた。 したがって、以下では、申立理由2により、請求項4及び6に係る特許を取り消すことができるかについて検討する。 (1)甲1の記載事項及び甲1発明 前記第5、1(2)イのとおり、甲1には、甲1技術1が記載されているところ、当該甲1技術1を、甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)として認定し、後の参照の便宜のため、以下のとおり1a~1eに分説し、「分説1a」などのようにして参照する。 <甲1発明> 「1a 地上5階である大規模商業施設を含む複合用途の建築物であり、店舗、飲食店及び映画館(シネマ)で構成された店舗棟を備えた大規模集客施設○2において、 1b 防災センターを設け、映画館事務室に火災表示機を設け、 1c 放送設備は、店舗棟を防火区画の区分け等により4ブロックに区分し、非常放送による混乱を配慮した区分鳴動方式であり、 1d シネマエリアは、観客のパニックを防止するため感知器作動放送をシネマ事務室に限定し、駆け付け要員等による火災確認後にシネマエリアに対する火災放送を実施し、 1e 映画館等の非常放送設備の鳴動方法は、映画館等内及び直下階の店舗エリアで感知器が作動しても、感知器作動警報を行わないようにしており、現場において火災であることを確認した後に、防災センターから手動で放送を行うこと。」 (2)甲2の記載事項及び甲2技術 前記第5、1(1)イのとおり、甲2には、甲2発明が記載されているところ、当該甲2発明を、甲2に記載された技術(以下「甲2技術」という。)として認定する。 (3)甲3の記載事項及び甲3技術 ア 甲3の記載事項 甲3には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0011】 【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態について、図面とともに説明する。図1は本発明の火災報知システムの要部構成の一例を示したブロック図である。ここでは、火災受信機1は、すべての火災感知器や発信機などを共通の多重伝送線L1で接続する、いわゆるR型受信機を用いているが、本発明はこれには限定されず、各階に設置された火災感知器や発信機毎に、複数の感知器回線を用いて並列に接続する、いわゆるP型受信機を用いてもよい。」 (イ)「【0016】このような火災報知システムでは、火災受信機1は、通常の監視状態では、火災感知器のアドレス情報を基に、多重伝送線L1を介したポーリングによって、動作異常や回線の断線などを監視しているが、このような状態で、火災感知器や発信機が発報し、割り込みによって火災信号を受信したときには、以下のように動作する。 【0017】火災信号を受けた火災受信機1は、火災感知器の作動を示す表示灯(不図示)を点灯あるいは点滅させ、発報した感知器の設置箇所に対応した地区窓(不図示)を点灯あるいは点滅させたりし、内蔵した音響装置(不図示)から警報音を出力する。そして、予め、感知器に対応して設定された、地区音響装置(不図示)から警報を出力させ、また、防排煙機器(不図示)を作動させ、排煙区画を形成している。すなわち、火災受信機1には、防排煙回線(不図示)を介して防火戸などの防排煙機器や、地区音響回線(不図示)を介してベルなどの地区音響装置を接続しており、火災の発生を確認すると、これらを連動制御するようになっている。 【0018】更に、火災受信機1には、非常放送設備2a,2bを接続しているので、この非常放送設備2a,2bから建物内の適所に設置されたスピーカに対し、火災放送、感知器の作動放送、誤報であったことを知らせる非火災放送等ができるようになっている。本発明は、火災受信機1が、非常放送設備2a,2bに信号を移信出力するときの動作に特徴があり、火災感知器の作動によって、受信部11が火災信号を受信したときには、グループ判別部12が、棟データテーブル13Aを参照して、この火災感知器が設定されている棟データを得た後、グループデータテーブル13Bを参照し、この火災感知器の作動が、同じグループ内の棟において、初めての作動であるときには、非常放送設備2a,2bに対し、移信出力部14a,14bから、その感知器が設置された階の階別信号を移信出力する。また、この感知器の作動が、同じグループ内の棟において2つ目以上の作動であるときには、移信出力部14a,14bから、火災確認信号を移信出力する。」 イ 甲3技術 前記アの記載によれば、甲3には、次の技術(以下「甲3技術」という。)が記載されていると認められる。 <甲3技術> 「火災報知システムであって、(【0011】) 火災受信機1は、すべての火災感知器や発信機などを共通の多重伝送線L1で接続し、(【0011】) 火災受信機1は、火災感知器や発信機が発報し、割り込みによって火災信号を受信し、(【0016】) 火災信号を受けた火災受信機1は、火災感知器の作動を示す表示灯を点灯あるいは点滅させ、発報した感知器の設置箇所に対応した地区窓を点灯あるいは点滅させたりし、内蔵した音響装置から警報音を出力し、(【0017】) 火災受信機1には、非常放送設備2a、2bを接続しているので、この非常放送設備2a、2bから建物内の適所に設置されたスピーカに対し、火災放送、感知器の作動放送、誤報であったことを知らせる非火災放送等ができるようになっている、(【0018】) 火災報知システム。」 (4)甲4の記載事項及び甲4技術 ア 甲4の記載事項 甲4には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0010】 【発明の実施の形態】図1は本発明の防災監視装置のブロック図である。図1において、1は防災監視制御盤であり、防災監視制御盤1からは複数の火報用の感知器回線2が引き出され、それぞれの火報用の感知器回線2には複数の火報用の感知器3および発信機を接続し、終端には終端抵抗4を接続している。また、防災監視制御盤1からは複数の防排煙用の感知器回線5が引き出され、それぞれの防排煙用の感知器回線5には複数の防排煙用の感知器6を接続し、終端には終端抵抗7を接続している。 【0011】また、防災監視制御盤1からは複数の火報用の制御回線9および複数の防排煙用の制御回線10がそれぞれ引き出され、火報用の制御回線9には地区ベル11がそれぞれ接続され、防排煙用の制御回線10には防排煙機器としての自動閉鎖装置12がそれぞれ接続されている。感知器回線2,5は受信回路13A,13Bにそれぞれ接続され、制御回線9,10は制御回路14A,14Bにそれぞれ接続されるとともに自動閉鎖装置12は作動確認回路15にも接続されている。 【0012】また、防災監視制御盤1からは複数の警報回線16が引き出され、それぞれの警報回線16には、例えば消火栓ポンプ、スプリンクラーポンプなどが作動したとき閉じる監視用の接点17が接続されている。警報回線16は受信回路13Cに接続されている。なお、受信回路13A~13Cは各感知器回線2,5および警報回線16に流れる回線電流を監視しており、図3の説明で後述するように、回線電流を電圧に変換してMPU22に入力する。」 (イ)「【0015】表示部24には火災代表灯29、感知器回線2,5、警報回線16に対応した地区表示灯30が設けられている。この表示部24についても、これ以外に必要に応じて適宜の表示灯が設けられている。主音響装置25としてはブザー、スピーカなどが設けられ、EEPROM26には登録に必要な情報や連動情報などが予め格納されている。 【0016】また防災監視制御盤1には電源部32が設けられ、外部より商用AC100Vの電源供給を受け、防災監視制御盤1、感知器回線2,5、警報回線16、制御回線9,10に必要な指定の電源電圧を作り出している。MPU22には、第1,第2の監視部22A,22C、第1,第2の警報信号出力部22B,22Dが設けられている。 【0017】第1の監視部22Aは、感知器3,6から受信回路13A,13Bを介して入力する受信出力(出力電圧値)を常時監視し、第1の警報信号出力部22Bは、監視して検出した火災検出信号が第1の検出レベルを越えるとき、火災代表灯29、および対応する地区表示灯30を点灯させるとともに主音響装置25を鳴動させる警報信号を出力する。また第1の警報信号出力部22Bは、火災検出信号が第1の検出レベルより低い第2の検出レベル以下になったとき警報信号の出力を停止し、火災代表灯29および対応する地区表示灯30を消灯させるとともに主音響装置25の鳴動を停止させる。」 イ 甲4技術 前記アの記載によれば、甲4には、次の技術(以下「甲4技術」という。)が記載されていると認められる。 <甲4技術> 「防災監視装置であって、(【0010】) 防災監視制御盤1からは複数の火報用の感知器回線2が引き出され、それぞれの火報用の感知器回線2には複数の火報用の感知器3および発信機を接続し、(【0010】) 受信回路13A~13Cは各感知器回線2,5および警報回線16に流れる回線電流を監視しており、回線電流を電圧に変換してMPU22に入力し、(【0012】) MPU22には、第1の監視部22Aが設けられており、(【0016】) 第1の監視部22Aは、感知器3、6から受信回路13A、13Bを介して入力する受信出力(出力電圧値)を常時監視し、第1の警報信号出力部22Bは、監視して検出した火災検出信号が第1の検出レベルを越えるとき、火災代表灯29、および対応する地区表示灯30を点灯させるとともに主音響装置25を鳴動させる警報信号を出力し、また第1の警報信号出力部22Bは、火災検出信号が第1の検出レベルより低い第2の検出レベル以下になったとき警報信号の出力を停止し、火災代表灯29および対応する地区表示灯30を消灯させるとともに主音響装置25の鳴動を停止させる、(【0017】) 防災監視装置。」 (5)甲5の記載事項及び甲5技術 ア 甲5の記載事項 甲5には、次の事項が記載されている。 11頁 [図:0001417619000002.jpg] 11頁によれば、音声警報音の動作フローにおいて、非火災放送スイッチ押下により非火災報放送に移行し、非火災放送を放送する。 イ 甲5技術 前記アの記載によれば、甲5には、次の技術(以下「甲5技術」という。)が記載されていると認められる。 <甲5技術> 「音声警報音の動作フローにおいて、非火災放送スイッチ押下により非火災報放送に移行し、非火災放送を放送すること。」 (6)対比・判断 ア 本件発明4について (ア)対比 a 「客を収容する客エリアと、当該客エリアの管理人が執務する管理人エリアとを含む防火対象物のための避難誘導システムであって、」について (a)甲1発明の「大規模集客施設○2」(分説1a)では、「防災センターを設け、映画館事務室に火災表示機を設け」(分説1b)、「放送設備」を備え(分説1c)、「感知器作動放送」、「火災放送を実施」し(分説1d)、「感知器が作動」する(分説1e)から、「防災センター」、「火災表示機」、感知器作動放送及び火災放送のための「放送設備」、並びに「感知器」を含む、火災に対する防災設備(以下「防災設備」という。)を備えているものと認められ、「大規模集客施設○2」は、「防災設備」の防火対象物であるといえる。 (b)甲1発明の「防災設備」では、「放送設備」により火災放送が行われ(前記(a))、一般に、火災放送は、避難のための指示を含むものであるから、「防災設備」は、避難誘導システムであるといえる。 (c)したがって、甲1発明の「大規模集客施設○2」、「防災設備」は、本件発明4の「防火対象物」、「避難誘導システム」にそれぞれ相当し、本件発明4と、甲1発明の「防災設備」とは、「防火対象物のための避難誘導システム」である点で一致する。 (d)甲1発明の「大規模集客施設○2」(分説1a)では、「シネマエリアは、観客のパニックを防止するため感知器作動放送をシネマ事務室に限定」している(分説1d)から、シネマエリアは、「シネマ事務室」と、観客が入るエリア(以下「観客エリア」という。)から構成されており、「シネマ事務室」において行われる事務的な業務には、当然映画館の管理も含まれるものと認められる。 したがって、甲1発明の「観客エリア」は、本件発明4の「客を収容する客エリア」に相当し、また、甲1発明の「シネマ事務室」は、本件発明4の「当該客エリアの管理人が執務する管埋人エリア」に相当し、本件発明4の「防火対象物」と、甲1発明の「大規模集客施設○2」とは、「客を収容する客エリアと、当該客エリアの管理人が執務する管埋人エリアとを含む」点で一致する。 (e)前記(c)及び(d)によれば、本件発明4と、甲1発明の「防災設備」とは、「客を収容する客エリアと、当該客エリアの管理人が執務する管埋人エリアとを含む防火対象物のための避難誘導システム」である点で一致する。 b 「前記防火対象物の各所に設置される感知器と、」について 甲1発明の「防災設備」は「感知器」を備えており(前記a(a))、「感知器」は当然、「大規模集客施設○2」の各所に設置されていると認められる。 したがって、甲1発明の「感知器」は、本件発明4の「前記防火対象物の各所に設置される感知器」に相当し、本件発明4と、甲1発明の「防災設備」とは、「前記防火対象物の各所に設置される感知器」を備える点で一致する。 c 「前記防火対象物の各所に設置される発信機と、」について 甲1発明の「防災設備」では、防火対象物の各所に設置される発信機を備えることは特定されていない。 d 「前記防火対象物の各所に設置されるスピーカと、」について 甲1発明の「防災設備」は「放送設備」を備えている(前記a(a))から、「放送設備」には、当然、放送音声を発するためのスピーカ(以下「スピーカ」という。)が含まれ、「スピーカ」が、「大規模集客施設○2」の各所に設置されているものと認められる。 したがって、甲1発明の「スピーカ」は、本件発明4の「前記防火対象物の各所に設置されるスピーカ」に相当し、本件発明4と、甲1発明の「防災設備」とは、「前記防火対象物の各所に設置されるスピーカ」を備える点で一致する。 e 「前記感知器が作動すると又は前記発信機が操作されると、移報信号を出力する受信部と、」について 甲1発明の「防災設備」は「感知器」を備えている(前記a(a))が、「感知器」が作動すると移報信号を出力する受信部を備えることは特定されていない。 また、前記cのとおり、甲1発明の「防災設備」では、発信機を備えることは特定されておらず、発信機が操作されると、移報信号を出力する受信部を備えることも特定されていない。 f 「前記スピーカを通じて非常放送を行う放送設備制御部と」について (a)甲1発明の「防災設備」は、「放送設備」を備えており(前記a(a))、「放送設備」の制御を行う制御部(以下「放送設備制御部」という。)を、当然備えているものと認められる。 また、甲1発明では、「放送設備」により感知器作動放送及び火災放送が行われ(前記a(a))、放送音声は「放送設備」に含まれる「スピーカ」から発せられる(前記d)から、甲1発明の「放送設備制御部」は、感知器作動放送及び火災放送が行われる際に、スピーカを通じて当該放送を行うための制御を行うものと認められ、この意味で、「放送設備制御部」は、「スピーカ」を通じて非常放送を行うものといえる。 (b)したがって、甲1発明の「放送設備制御部」は、本件発明4の「前記スピーカを通じて非常放送を行う放送設備制御部」に相当し、本件発明1と、甲1発明の「防災設備」とは、「前記スピーカを通じて非常放送を行う放送設備制御部」を備える点で一致する。 g 「前記放送設備制御部は、前記受信部から感知器発報信号を受信すると、前記管理人エリアに設置されたスピーカを通じて感知器発報放送を行う一方で、前記客エリアに設置されたスピーカを通じては感知器発報放送を行わず、」について (a)甲1発明では、「シネマエリアは、観客のパニックを防止するため感知器作動放送をシネマ事務室に限定」している(分説1d)から、感知器発報放送について、「シネマ事務室」において行う一方、「観客エリア」においては行わないものと認められる。 また、感知器発報放送は、当然、「感知器が作動」(分説1e)した時に行われるものと認められる。 (b)甲1発明では、感知器発報放送及び火災放送は、「放送設備」により行われ(前記a(a))、「放送設備」には、「大規模集客施設○2」の各所に設置された「スピーカ」が含まれる(前記d)から、感知器発報放送及び火災放送は、当該放送が行われる場所に設置された「スピーカ」を通じて行われるものと認められる。 (c)前記(a)及び(b)によれば、甲1発明では、「感知器」が作動した時に、「シネマ事務室」に設置された「スピーカ」を通じて感知器発報放送が行われる一方で、「観客エリア」に設置された「スピーカ」を通じては感知器発報放送が行われないものと認められる。 したがって、本件発明4と、甲1発明の「防災設備」とは、「前記管理人エリアに設置されたスピーカを通じて感知器発報放送が行われる一方で、前記客エリアに設置されたスピーカを通じては感知器発報放送が行われない」点で共通する。 しかしながら、甲1発明では、感知器発報放送が、「感知器」の作動時に人により行われるものであるのか、「放送設備」において自動的に行われるものであるのかは不明であり、感知器発報放送が、受信部から感知器発報信号を受信した「放送設備制御部」により行われるものであることは特定されていない。 h 「前記放送設備制御部は、前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記管理人エリアに設置されたスピーカを通じて火災放送を行うとともに、前記客エリアに設置されたスピーカを通じて火災放送を行い、」について (a)甲1発明では、「駆け付け要員等による火災確認後にシネマエリアに対する火災放送を実施」しており(分説1d)、シネマエリアは、「シネマ事務室」と、「観客エリア」から構成されている(前記a(d))から、火災が確認された時に、「シネマ事務室」、「観客エリア」の両者において火災放送が行われるものと認められる。 また、火災放送は、当該放送が行われる場所に設置された「スピーカ」を通じて行われる(前記g(b))。 よって、甲1発明では、火災が確認された時に、「シネマ事務室」に設置された「スピーカ」を通じて火災放送が行われるとともに、「観客エリア」に設置された「スピーカ」を通じて火災放送が行われるものと認められる。 (b)したがって、本件発明4と、甲1発明の「防災設備」とは、「前記管理人エリアに設置されたスピーカを通じて火災放送が行われるとともに、前記客エリアに設置されたスピーカを通じて火災放送が行われる」点で共通する。 しかしながら、甲1発明では、「現場において火災であることを確認した後に、防災センターから手動で放送を行う」(分説1e)から、火災放送は、火災が確認された時に人により行われるものと認められ、受信部から火災確定信号を受信した「放送設備制御部」により行われるものではない。 i 「前記客エリアは劇場エリアであり、」及び「前記管理人エリアは劇場事務室であり、」について 甲1発明の「観客エリア」は、シネマエリアにおいて観客が入るエリアであり(前記a(d))、当該エリアにおいて、映画が上映されるものと認められる。 そして、一般に、演劇や映画等を観客に見せるための場所は劇場と呼ばれるから、甲1発明の「観客エリア」は、劇場エリアであるといえ、また、甲1発明の「シネマ事務室」は、劇場事務室であるといえる。 したがって、本件発明4と甲1発明とは、「前記客エリアは劇場エリアであり、」「前記管理人エリアは劇場事務室であ」る点で一致する。 j 「前記客エリアの各所に設置される誘導灯と、」について 甲1発明の「防災装置」では、「観客エリア」の各所に設置される誘導灯を備えることは特定されていない。 k 「前記誘導灯の点灯を制御する誘導灯信号装置と」について 前記jのとおり、甲1発明の「防災装置」では、誘導灯を備えることは特定されておらず、誘導灯の点灯を制御する誘導灯信号装置を備えることは特定されていない。 l 「前記誘導灯信号装置は、前記感知器が発報した場合には前記誘導灯を点灯させず、前記誘導灯が消灯時に前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記誘導灯を点灯させる」について 前記kのとおり、甲1発明の「防災装置」では、誘導灯信号装置を備えることは特定されておらず、誘導灯信号装置が、感知器が発報した場合には誘導灯を点灯させず、誘導灯が消灯時に受信部から火災確定信号を受信すると、誘導灯を点灯させることも特定されていない。 m 「ことを特徴とする避難誘導システム」について 前記a(c)のとおり、甲1発明の「防災設備」は、本件発明4の「避難誘導システム」に相当するから、本件発明4と甲1発明とは、「ことを特徴とする避難誘導システム」である点で一致する。 n 一致点及び相違点 以上のことから、本件発明4と甲1発明とは、以下の点で一致及び相違する。 <一致点> 「 客を収容する客エリアと、当該客エリアの管理人が執務する管埋人エリアとを含む防火対象物のための避難誘導システムであって、 前記防火対象物の各所に設置される感知器と、 前記防火対象物の各所に設置されるスピーカと、 前記スピーカを通じて非常放送を行う放送設備制御部と を備え、 前記管理人エリアに設置されたスピーカを通じて感知器発報放送が行われる一方で、前記客エリアに設置されたスピーカを通じては感知器発報放送が行われず、 前記管理人エリアに設置されたスピーカを通じて火災放送が行われるとともに、前記客エリアに設置されたスピーカを通じて火災放送が行われ、 前記客エリアは劇場エリアであり、 前記管理人エリアは劇場事務室である ことを特徴とする避難誘導システム。」 <相違点2> 本件発明4では、「防火対象物の各所に設置される発信機」を備えるのに対して、甲1発明では、防火対象物の各所に設置される発信機を備えることは特定されていない。 <相違点3> 本件発明4では、「前記感知器が作動すると又は前記発信機が操作されると、移報信号を出力する受信部」を備えるのに対して、甲1発明では、「感知器」を備えるものの、「感知器」が作動すると移報信号を出力する受信部を備えることは特定されておらず、また、発信機が操作されると移報信号を出力する受信部を備えることも特定されていない。 <相違点4> 本件発明4では、「感知器発報放送」は、「受信部から感知器発報信号を受信」した「放送設備制御部」により行われ、「火災放送」は、「受信部から火災確定信号を受信」した「放送設備制御部」により行われるのに対して、甲1発明では、感知器発報放送が、「感知器」の作動時に人により行われるのか、自動的に行われるのかは不明であり、受信部から感知器発報信号を受信した「放送設備制御部」により行われるものであることは特定されておらず、また、火災放送は、火災が確認された時に人により行われるものと認められ、受信部から火災確定信号を受信した「放送設備制御部」により行われるものではない点。 <相違点5> 本件発明4では、「前記客エリアの各所に設置される誘導灯と、前記誘導灯の点灯を制御する誘導灯信号装置とをさらに備え、前記誘導灯信号装置は、前記感知器が発報した場合には前記誘導灯を点灯させず、前記誘導灯が消灯時に前記受信部から火災確定信号を受信すると、前記誘導灯を点灯させる」のに対して、甲1発明では、「観客エリア」の各所に設置される誘導灯や、誘導灯の点灯を制御する誘導灯信号装置を備えることは特定されておらず、誘導灯信号装置が、感知器が発報した場合には誘導灯を点灯させず、誘導灯が消灯時に受信部から火災確定信号を受信すると、誘導灯を点灯させることも特定されていない。 (イ)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点5について検討する。 a 前記第5、2(1)イ(オ)のとおり、甲1技術2では、ホール、すなわち客エリアに誘導灯を備え、ホール以外の場所の感知器が作動した場合には、ホールでは感知器発報放送は行われず、誘導灯も点灯されず、火災を確認した後の火災放送がホールで行われる時に、誘導灯が点灯されるものと認められる。 b しかしながら、甲1技術2は、甲1発明と同じく甲1に記載されているものではあるが、甲1発明とは異なる事例におけるものであり、甲1発明では、「映画館等内及び直下階の店舗エリアで感知器が作動しても、感知器作動警報を行わない」(分説1e)から、客エリアである映画館内の感知器が作動した場合に、映画館において感知器発報放送は行われないものと認められる一方、甲1技術2では、「ホール内の感知器が作動した場合は、当該ホール内で感知器の発報放送を行」うから、客エリアであるホール内の感知器が作動した場合に、ホールにおいて感知器放送が行われるものと認められる。つまり、甲1発明と甲1技術2とは、客エリアで感知器が作動した場合の放送の有無において異なるものであり、両者の制御の態様は相容れないものである。 加えて、甲1には、異なる建築物等における発報や放送の制御を統合することについて記載も示唆もなく、むしろ、甲1には「事業者等は、このような事例も参考にしながら、消防機関と建築物等の運用実態等を踏まえた鳴動範囲、鳴動方式について検討する必要がある。」(前記第5、1(2)ア(キ))との記載があり、発報や放送の制御は、建築物等毎に個別に検討すべきものとされている。 したがって、甲1発明及び甲1技術2は、統合して同時に用いることが想定されるものとは認められず、甲1技術2における感知器作動時や火災確認後の客エリアにおける誘導灯の点灯方法を、甲1発明に適用する動機付けは存在せず、むしろ、阻害要因が存在すると認められる。 c さらに、甲1発明では、「現場において火災であることを確認した後に、防災センターから手動で放送を行う」(分説1e)から、甲1発明の「防災設備」は、火災が確認された時に、火災確認信号により「防災設備」が自動的に動作を行う構成となっているとは認められないところ、甲1技術2においても、「誘導灯」の消灯や点灯を、人が行っているのか、制御部により自動的に行っているのかは不明であり、「誘導灯」の制御を火災確定信号に連動させることは特定されていない。 したがって、甲1発明に甲1技術2を適用しても、誘導灯信号装置が、誘導灯が消灯時に受信部から火災確定信号を受信すると、誘導灯を点灯させる構成には想到し得ない。 d 甲2~甲5技術は、誘導灯の制御に関するものではないから、以上の点は、甲2~甲5技術を参照しても左右されない。 e したがって、相違点5に係る本件発明4の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、相違点2~4について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1発明及び甲1~甲5に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件発明6について 本件発明6は、本件発明4の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものである(前記第3)。 したがって、本件発明6と甲1発明とは、少なくとも、前記ア(ア)に示した相違点5において相違する。 そして、前記ア(イ)に示したとおり、前記相違点5に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明6は、甲1発明及び甲1~甲5に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)まとめ 以上のとおり、本件発明4及び6は、甲1発明及び甲1~甲5に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由2により、請求項4及び6に係る特許を取り消すことはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、決定の予告に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項4及び6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項4及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項1~3に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1~3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701005

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