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特許異議申立

2023-700858

ガラス接合材およびその利用

審判番号
2023-700858
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-068315
登録番号
7232106
請求日
2023年08月18日
審決日
2023年12月12日
公報発行日
2024年01月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
  • 【権利者代理人】安部 誠
  • 【異議申立人】馬場 資博
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 立木 林
  • 審判官 増山 淳子
分類
P1651.121-Y (C03C) / P1651.537-Y (C03C) / P1651.55 -Y (C03C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7232106号発明「ガラス接合材およびその利用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7232106号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7232106号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成31年3月29日に出願され、令和5年2月21日にその特許権の設定登録がされ、同年3月2日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~7に係る特許に対し、令和5年8月18日に特許異議申立人 馬場資博(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件特許について 1 特許請求の範囲の記載(本件発明) 特許第7232106号の請求項1~7に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項1~7に係る発明を、項番に従って「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)。 「【請求項1】 650℃以下の低温焼成で無機部材を封止接合するガラス接合材であって、 主成分としてガラス組成物を含有し、 前記ガラス組成物は、アルカリ金属元素、P、Pb、Bi、Te、V、Asを実質的に含まず、かつ、当該ガラス組成物全体を100mol%としたときに、95mol%以上が酸化物換算のモル比で、 MO :30~75mol%、 Al2O3 :0.7~12mol%、 SiO2 :5~30mol%、 B2O3 :15~45mol%、 ZnO :1~10mol%、 (ここで、上記MOは、2族元素の酸化物であり、かつ、MgOを3mol%以上25mol%以下含む。)の成分で構成されている、ガラス接合材。 【請求項2】 前記ガラス組成物は、Cu2O、Fe2O3、NiO、ZrO2からなる群から選択される少なくとも1種を1mol%以下含む、請求項1に記載のガラス接合材。 【請求項3】 650℃における粘度が5Pa・s~8Pa・sである、請求項1または2に記載のガラス接合材。 【請求項4】 30℃から500℃までの熱膨張係数が6×10-6K-1~13×10-6K-1である、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラス接合材。 【請求項5】 大気雰囲気中で650℃以上かつ100時間以上の熱曝露を行った際の前記熱曝露前後の熱膨張変化率が10%以下である、請求項1~4のいずれかに記載のガラス接合材。 【請求項6】 2つ以上の無機部材と、該2つ以上の無機部材を封止接合する封止接合部とを備えた無機部材接合体であって、 前記封止接合部は、アルカリ金属元素、P、Pb、Bi、Te、V、Asを実質的に含まず、かつ、当該封止接合部全体を100mol%としたときに、95mol%以上が酸化物換算のモル比で、 MO :30~75mol%、 Al2O3 :0.7~12mol%、 SiO2 :5~30mol%、 B2O3 :15~45mol%、 ZnO :1~10mol%、 (ここで、上記MOは、2族元素の酸化物であり、かつ、MgOを3mol%以上25mol%以下含む。)の成分で構成されている、無機部材接合体。 【請求項7】 前記封止接合部は、BaMgSiO4、BaAl2O4、BaZnSiO4、BaAl2Si2O8、MgSiO3からなる群から選択される結晶が少なくとも1種生成されている、請求項6に記載の無機部材接合体。」 2 発明の詳細な説明の記載 本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は、ガラス接合材に関する。詳しくは、低温焼成で無機部材を封止接合するガラス接合材に関する。 【背景技術】 【0002】 アルミナやジルコニア等のセラミック材料を主成分とするセラミック部材や、ステンレス鋼等の金属材料を主成分とする金属部材などの無機部材は、種々の分野において広く使用されている。かかる無機部材の接合には、用途や接合条件等に応じて様々な接合材が用いられている。例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)では、セラミック部材である燃料極(アノード)と、金属部材であるガス供給管とを封止接合する封止接合部が形成されるが、この封止接合部の形成にガラス接合材が用いられる。かかるガラス接合材は、主成分としてガラス組成物を含んでおり、所定の温度の焼成処理でガラス組成物を融着固化させることによって緻密な封止接合部を形成する。このときの焼成温度は、通常、SOFCの作動温度に応じた温度に設定される。例えば、一般的なSOFCの作動温度は700℃~900℃程度であるため、700℃を超える温度で焼成処理が行われる。 【0003】 ガラス接合材の一例として、特許文献1~3に記載のガラス接合材が挙げられる。特許文献1には、BaO、ZnO、SiO2、Al2O3、B2O3を所定の比率で含有し、かつ、アルカリ金属、MgおよびPb成分を実質的に含まないガラスマトリックス(ガラス組成物)を有するガラス封止材料が開示されている。かかる特許文献1に記載のガラス封止材料は、600℃以上(例えば700℃~900℃)で焼成され、800℃~850℃の環境において好適な粘性、耐熱性、耐久性を発揮するものである。また、特許文献2には、BaO、MgO、CaO、SiO2、Al2O3、Bi2O3を所定の比率で含有し、かつ、ホウ素成分およびアルカリ成分を実質的に含まない耐熱性ガラス接合材が開示されている。かかる特許文献2に記載の耐熱性ガラス接合材は、1000℃以上という高温環境において好適な耐熱性と耐久性を発揮するものである。そして、特許文献3には、SiO2、Al2O3、Na2O、K2O、MgO、CaO、B2O3を所定の比率で含有し、かつ、ガラスマトリックス中にリューサイト結晶が析出している接合材が開示されている。かかる特許文献3に記載の接合材も、800℃~1200℃という高温域における使用を想定したものである。 【0004】 一方で、近年の電気化学システム(例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC))の分野では、作動温度の低温化が求められている。例えば、SOFCにおいては、作動温度を650℃以下に低下させることによって、材料コストや運転コスト等を低減して汎用性を高めることが期待されている(特許文献4参照)。上述したように、ガラス接合材から封止接合部を形成するときの焼成温度は、SOFCの作動温度に応じた温度に設定されるため、当該作動温度の低温化に伴って650℃以下の低温焼成で封止接合部を好適に形成できるガラス接合材が求められている。このような低温焼成で融着固化し得るガラス組成物の一例として、非特許文献1に記載の低融点ガラス(鉛系ガラス、リン酸塩系ガラス、テルライド系ガラス、バナデート系ガラス、フッ化物系ガラス、カルコゲナイド系ガラス等)が挙げられる。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、上述した低融点ガラスは、種々の問題を有しており、SOFC等の電気化学システムの接合材として使用することが困難であった。具体的には、鉛系ガラスやフッ化物系ガラスは、鉛成分(Pb)を含んでいるため、環境や人体への悪影響が懸念されている。さらに、リン酸塩系ガラスに含まれるリン成分(P)は、SOFCの化学的劣化(リン被毒)の原因になり得る。さらに、テルル成分(Te)を含むテルライド系ガラス、バナジウム成分(V)を含むバナデート系ガラス、ビスマス(Bi)を含む高ビスマス-鉛系ガラス等は、焼成処理中に還元されて導電性が生じる可能性があるため、電気化学システムの接合材として使用することが難しい。また、カルコゲナイド系ガラスについても、ヒ素成分(As)を含んでいるため、人体や環境に対して悪影響を与える可能性がある。 【0008】 一方で、特許文献1~3に記載されているような通常のガラス接合材を低温焼成に使用すると、ガラス組成物が適切に溶融されずに焼成中の流動性が不足するため、焼成後の封止接合部の接合性が低下する傾向がある。また、ガラス組成物の溶融温度を低くすれば低温焼成で溶融するガラス接合材を作製できるが、このような低温で溶融するガラス接合材は、耐熱性が低くなる傾向がある。このように、低温焼成用のガラス接合材の分野では、接合性と耐熱性とを高いレベルで両立させることが困難である。 【0009】 本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、環境への悪影響などの種々の問題を生じさせることなく、650℃以下の低温焼成で接合対象を好適に接合することができ、かつ、焼成後に好適な耐熱性を発揮することができるガラス接合材を提供することである。 ・・・ 【0017】 本発明は、他の側面として、無機部材接合体を提供する。・・・」 (2)「【0021】 ≪ガラス接合材≫ ここに開示されるガラス接合材は、650℃以下の低温焼成で無機部材を接合するために用いられる低温焼成用のガラス接合材である。なお、詳しくは後述するが、本明細書における「無機部材」とは、セラミック材料を主成分とするセラミック部材と、金属材料を主成分とする金属部材を包含する概念である。 【0022】 1.ガラス組成物 ここに開示されるガラス接合材は、主成分としてガラス組成物を含んでいる。・・・そして、ここに開示されるガラス組成物の95mol%以上は、2族元素の酸化物(MO)と、アルミニウム成分(Al2O3)と、ケイ素成分(Si2O)と、ホウ素成分(B2O3)と、亜鉛成分(ZnO)によって構成されている。以下、各成分について説明する。 【0023】 (1)2族元素の酸化物 ・・・かかる2族元素の酸化物としては、MgO、CaO、BaO、SrO、RaO等が挙げられる。・・・これらの観点から、ここに開示されるガラス接合材のガラス組成物は、2族元素の酸化物(MO)を30mol%以上含有し、かつ、MgOを3mol%以上含有している。・・・また、他の成分を含有させて物理的安定性を向上させるという観点から、MOの割合の上限は、75mol%以下に設定され、・・・一例として、MgOの割合の上限は、・・・25mol%以下であってもよく、20mol%以下であってもよい。・・・ 【0024】 (2)アルミニウム成分 ・・・かかる観点から、ここに開示されるガラス接合材では、ガラス組成物全体に占めるAl2O3の割合が0.7mol%以上・・・に設定されている。一方で、アルミニウム成分を増加させすぎると低温焼成における接合性が低下する傾向があるため、Al2O3の割合の上限は、12mol%以下・・・に設定される。 【0025】 (3)ケイ素成分 ・・・このため、ガラス組成物全体に占めるSi2Oの割合は、酸化物換算のモル比で5mol%以上に設定され、・・・また、焼成時に一定の粘度を確保するという観点から、上記Si2Oの割合の上限は、30mol%以下に設定され・・・ 【0026】 (4)ホウ素成分 ・・・このため、ガラス組成物全体に占めるB2O3の割合は、15mol%以上に設定され、・・・ガラス組成物全体に占めるB2O3の割合の上限は、45mol%以下に設定され、・・・ 【0027】 (5)亜鉛成分 ・・・かかる観点から、ガラス組成物全体に占めるZnOの割合は、酸化物換算のモル比で、1mol%以上に設定され、・・・かかる観点から、ZnOの割合の上限は、10mol%以下に設定され、・・・ 【0028】 (6)他の成分 ここに開示されるガラス組成物は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上記5種の主要構成成分以外の任意成分を含んでいてもよい。かかる任意成分の一例として、Cu2O、Fe2O3、NiO、ZrO2、TiO2、Nb2O5、FeO、Fe3O4、CuO、SnO、SnO2、La2O3、CeO2等が挙げられる。・・・なお、これらの任意成分を添加する場合、ガラス組成物全体に占める上記任意成分の割合は、0.01mol%~1mol%以下であることが好ましく、・・・ 【0029】 (7)禁止成分 ここに開示されるガラス接合材は、上述した種々の問題の発生を未然に防ぐために、実質的に含有しない成分(禁止成分)が定められている。先ず、ここに開示されるガラス接合材のガラス組成物は、アルカリ金属元素を実質的に含まない。かかるアルカリ金属元素としては、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr等が挙げられる。・・・ 次に、ここに開示されるガラス接合材のガラス組成物は、鉛成分(Pb)、ヒ素(As)を実質的に含まない。・・・さらに、ここに開示されるガラス接合材では、リン成分(P)を実質的に含有していない。・・・そして、ここに開示されるガラス接合材のガラス組成物は、ビスマス成分(Bi)、テルル成分(Te)、バナジウム成分(V)も実質的に含有しない。・・・ 【0030】 ここに開示されるガラス接合材、650℃における粘度が5Pa・s~8Pa・sであることが好ましい。・・・ 【0031】 また、上述したガラス組成物の成分は、接合対象である無機部材との間で熱膨張係数を近似させるという観点で適宜調整されているとより好ましい。例えば、ガラス接合材の熱膨張係数は、6×10-6K-1~13×10-6K-1・・・の範囲内に調整されているとよい。・・・なお、本明細書における「熱膨張係数」は、30℃から500℃における平均線熱膨張係数を指す。 【0032】 また、ここに開示されるガラス接合材は、大気雰囲気中において650℃以上かつ100時間の熱曝露を行った際の上記熱曝露前後の熱膨張係数の差が10%以下となる。・・・ 【0039】 ≪接合方法≫ 上述したように、ここに開示されるガラス接合材は、650℃以下の低温焼成で容易に定着し、かつ、焼成後に好適な耐熱性を発揮できる。このため、650℃以下という従来よりも低温の温度環境で使用される無機部材接合体(例えば、低温作動型SOFC)の封止接合部の形成に好ましく適用される。 ・・・ 【0042】 なお、焼成後の封止接合部に、BaMgSiO4、BaAl2O4、BaZnSiO4、BaAl2Si2O8、MgSiO3からなる群から選択される結晶が生成されることがある。・・・」 (3)「【0049】 [試験例] 以下、本発明に関する幾つかの試験例を説明するが、本発明をかかる試験例に示すものに限定することを意図したものではない。 【0050】 1.サンプルの準備 本試験では、ガラス組成物の成分を異ならせた計23種類のガラス粉末(サンプル1~サンプル23)を作製した。具体的には、先ず、所定の組成の原料粉末を900℃~1200℃で溶融した後に急冷してガラス体を得た。次に、このガラス体を粉砕・分級してガラス粉末を得た。各サンプルにおけるガラス組成物の成分を表1に示す。なお、表1中の数値の単位は「mol%」である。 【0051】 【表1】 [図:0001405839000001.jpg] 【0052】 2.評価試験 (1)高温粘性の評価 各サンプルのガラス粉体の650℃における粘度を測定した。かかる粘度では、各サンプルのガラス粉体を直径7~10mm×高さ5~7mm程度の円柱状にプレス成形して650℃で10分間仮焼きした。そして、仮焼した試験片を再度加熱し、硝子平行板粘度測定装置を用いて室温(25℃)から650℃までの高さ方向の変形量を検出した。そして、測定試料の変形速度からGent式に基づいて650℃での粘度ηを算出した。 Gent式:η=2πMgH5/3V(-dH/dt)(2πH3+V) (ただし、η:粘度(Poise)、M:荷重(g)、H:試料の高さ(cm)、g:重力加速度(cm/s2)、V:試料体積(cm3)、dH/dt:試料変形速度(cm/s)である。) 【0053】 (2)接合性の評価 各サンプルのガラス粉体を溶剤(ターピネオール)と混合してペースト状のガラス接合材を調製した。このガラス接合材を板状の無機部材の表面に載せ、大気雰囲気下で2時間焼成した。そして、焼成後の無機部材を反転させて接合材(封止接合部)が落下したものを「×」、落下しなかったものを「○」と評価した。なお、本試験では、接合対象として、フェライト系ステンレス鋼(SUS430)、ジルコニア、アルミナの3種の無機部材を使用し、各々の無機部材に対する接合性を評価した。また、上記3種の無機部材に対して、焼成温度を600℃~700℃の範囲内で変更し、封止接合部が落下しなかった最低温度(接合温度)も測定した。 【0054】 (3)熱膨張係数の評価 上記作製したガラス粉体を、直径20mm、厚み7mmの円盤状にプレス成形し、600℃以上700℃以下の範囲内で2時間加熱した。そして、ダイヤモンドカッターを用いて直径5mm×15mm程度の円柱状に切り出して、熱機械分析装置(株式会社リガク製、TMA8310)を用いて熱膨張係数を測定した。具体的には、室温(25℃)から1000℃まで10℃/分の一定速度で昇温したときの、30℃から500℃の間の平均線膨張量から熱膨張係数を算出した。なお、サンプル22は、他のサンプルと異なり、30℃から300℃の間の平均線膨張量から熱膨張係数を算出した。 【0055】 (4)耐熱性の評価 各サンプルのガラス粉体について、上述の「熱膨張係数の評価」と同様の手順で熱膨張係数を求めた。次に、各々のサンプルにおいて、300℃から1000℃までの範囲内で加熱温度が50℃単位で異なる熱曝露(加熱時間:100時間)を行い、当該熱曝露露後の熱膨張係数を測定した。そして、熱曝露の前後で熱膨張係数が10%以上低下したときの温度を「耐久温度」とした。 【0056】 (5)結晶相の評価 上述の「熱膨張係数の評価」と同様の手順で加熱処理を行った後、得られたガラスを粉砕して粉末状の試料を得た。そして、当該粉末状の試料に粉末X線結晶回折(XRD)を行い、結晶析出の有無を確認すると共に、析出していた結晶を同定した。 ・・・ 【0058】 3.評価結果 上述した各々の評価試験の結果を表2に示す。 【0059】 【表2】 [図:0001405839000002.jpg] 」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠として甲第1号証~甲第5号証(後記4参照。以下、それぞれ「甲1」等という。)を提出し、以下の理由により、請求項1~7に係る特許は取り消すべきものである旨を主張している。 1 申立理由1(新規事項の追加) 令和4年10月31日付け手続補正書でした補正が、後記第5の1(1)の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないため、請求項1~7に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。 2 申立理由2(サポート要件違反) 本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 申立理由3(甲1を主たる証拠とする進歩性欠如) 本件発明1~7は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 4 証拠方法 甲1:特開2014-26800号公報 甲2:特開2018-20947号公報 甲3:特開2016-88806号公報 甲4:Alexander I. Boldyrev et al., "Ab Initio Study of the Si2O and Si3O Molecules", J. Phys. Chem., 1993, Vol.97, p.5875-5 881 甲5:M. Rashad et al., "Control optical characterizations of Ta+5-doped B2O3-Si2O-CaO-BaO glasses by irradiation dose", Optical Materials, 2021, Vol.112, 110613 第4 甲号証の記載事項 1 甲1の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様である。)。 (1)「【0035】 La2O3は流動性を向上させるための成分である。La2O3の含有量は、好ましくは0~15%、より好ましくは0.1~14%、さらに好ましくは1~13%である。La2O3の含有量が多すぎると、溶融中や封着時に失透しやすくなり、封着に適した流動性が得られにくくなる。 【0036】 Y2O3は流動性を向上させるための成分である。Y2O3の含有量は、好ましくは0~15%、より好ましくは0~14%、さらに好ましくは0~13%である。Y2O3の含有量が多すぎると、溶融中や封着時に失透しやすくなり、封着に適した流動性が得られにくくなる。 ・・・ 【0048】 次いで、ペーストを金属やセラミックからなる第一の部材の接着箇所に塗布し、乾燥させる。さらに、金属やセラミックからなる第二の部材をペースト乾燥膜に接触させた状態で固定して800~1000℃で熱処理する。この熱処理により、ガラス粉末が一旦軟化流動して第一および第二の部材を固着させる。結晶の析出は、ガラス粉末がある程度流動した段階で起こる。」 (2)「【実施例】 ・・・ 【0051】 表1および2は、本発明の実施例(試料No.1~8)および比較例(試料No.9~12)を示している。 【0052】 【表1】 [図:0001405839000003.jpg] ・・・ 【0055】 表中の組成になるように調合したガラス原料を、1200~1600℃で約1時間溶融した後、溶融ガラスを一対のローラー間に通してフィルム状に成形した。得られたフィルム状ガラスをボールミルにて粉砕し、分級して、粒度d50が約10μmのガラス粉末を得た。当該ガラス粉末に、対して表に示す割合でMgO粉末(粒度d50=2μm)を混合して固体酸化物型燃料電池用シール材料を得た。 ・・・ 【0064】 本発明の固体酸化物型燃料電池用シール材料は、SUSやFeといった金属や、フェライトやジルコニアといった高膨張セラミックスの接着材料として好適である。具体的には、SOFCを作製する際に使用される支持体基板、電解質、電極等を気密封止するための接着材料として好適である。」 2 甲2の記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 「【0026】 ガラス粉末は、封止部を形成する際の焼成温度(封止温度)環境下において、適度な流動性を有することが好ましい。一例では、当該温度における高温粘度(硝子平行板粘度測定装置を用いて測定した変形速度からGent式に基づいて算出される粘度)が、概ね1~10Pa・sであるとよい。これにより、封止温度を比較的低温(例えば700℃~900℃)に設定して、当該温度で被封止部材間を安定的に封止することができる。」 3 甲3の記載事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【0051】 〔耐熱性の評価〕 上記作製したガラスフリット(S1~8)および市販の耐熱用ガラスを、大気雰囲気中において800℃で100時間熱曝露させ、耐熱性を評価した。具体的には、先ず、熱曝露後の熱膨張係数を上記と同様に測定した。そして、熱曝露前の熱膨張係数からの変化量を求めた。結果を表2の該当欄に示す。なお、表2において「○」は熱膨張係数変化が±1.0×10-6K-1以下であったことを、「×」は熱膨張係数の変化がそれより大きかったことを、「-」は未測定であることを表している。 表2に示すように、サンプル3,4-2,5,6,7-2では、熱曝露前後の熱膨張係数の変化が小さく、耐熱性が高かった。」 4 甲4の記載事項 甲4のタイトルには、「Ab Initio Study of the Si2O and Si3O Molecules」(当審訳:Si2O及びSi3O分子の第一原理研究)と記載されている。 5 甲5の記載事項 甲5には、以下の事項が記載されている。 (1)「Control optical characterization of Ta+5-dopoed B2O3-Si2O-CaO-BaO glasses by irradiation dose」(タイトル) (当審訳:照射線量による、Ta+5ドープB2O3-Si2O-CaO-BaOガラスの光学的特性の制御) (2)「A taraditional solid-state method has been used to synthesize samples of the xTa2O5-(50-x)BaO-25B2O3-15SiO2-10CaO(x = 0, 4, 8, 12 and 15 wt%).」(第2ページ左欄11~13行) (当審訳:従来の固体法を用いて、xTa2O5-(50-x)BaO-25B2O3-15SiO2-10CaO(x = 0, 4, 8, 12 and 15 wt%)のサンプルを合成した。) 第5 当審の判断 1 申立理由1(新規事項の追加)について (1)申立理由1の具体的内容 申立理由1は、要するに、甲4、甲5に示すようにSi2O及びSiO2は何れもSi酸化物として存在し、ガラスの形成材料として使用されるものであるから、請求項1、6における「Si2O」との記載を「SiO2」に補正することは、誤記の訂正には該当せず、新規事項を追加するものである、というものである。 (2)当審の判断 ガラスの技術分野においてガラス組成を表す場合、酸化ケイ素はSiO2として換算することが技術常識であるから、当業者にとって補正前の請求項1、6に記載された「Si2O」は、「SiO2」の誤記と理解するのが自然であり、当該補正は新たな技術的事項(新規事項)を追加するものでない。 申立人が論拠として挙げる甲4は、Si2O分子が記載されたものであっても、ガラス原料としてSi2Oを用いることが記載されたものでない。また、甲5には、「Si2O」だけでなく、上記第4の5(2)のように「SiO2」の表記もみられるところ、上記技術常識を踏まえれば、「Si2O」をガラス原料として用いることが甲5に記載されているとは言い難い。 そうすると、甲4及び甲5の記載は上記技術常識を覆すほどのものということはできない。 (3)申立理由1のまとめ 以上のとおりであるから、特許法第17条の2第3項に係る申立理由1に理由はない。 2 申立理由2(サポート要件違反)について (1)サポート要件の判断手法について 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、以下、この観点に立って検討する。 (2)サポート要件適合性について ア 上記第2の2(1)(【0001】、【0009】、【0017】)及び同(2)(【0039】)によれば、本件発明は、低温焼成で無機部材を封止接合するガラス接合材及び無機部材接合体に関するものであり、環境への悪影響などの種々の問題を生じさせることなく、650℃以下の低温焼成で接合対象を好適に接合することができ、かつ、焼成後に好適な耐熱性を発揮することができるガラス接合材を提供すること又は当該ガラス接合材を適用した無機部材接合体を提供すること、という課題(以下、「本件課題」という。)を有するものと理解できる。 イ そして、上記第2の2(3)には、本件発明1のモル比を満足するガラス組成物を用いたサンプルNo.1~20が記載されており、これらがアルミナ、ジルコニア又はステンレスの何れかにおいて650℃までの焼成により、良好な接合性、耐熱性を示すこと、すなわち本件課題を解決できることが記載されている。 さらに、上記第2の2(2)(【0021】~【0029】)をみると、発明の詳細な説明には、ガラス接合材におけるガラス組成物として、「アルカリ金属元素」、「鉛成分(Pb)、ヒ素(As)」、「リン成分(P)」、「ビスマス成分(Bi)、テルル成分(Te)、バナジウム成分(V)」を「実質的に含ま」ず(【0029】)、「ガラス組成物の95mol%以上は、2族元素の酸化物(MO)と、アルミニウム成分(Al2O3)と、ケイ素成分(Si2O)と、ホウ素成分(B2O3)と、亜鉛成分(ZnO)によって構成され」(【0022】)、「2族元素の酸化物(MO)を・・・30mol%以上、・・・75mol%以下」(【0023】)、「MgOを3mol%以上・・・25mol%以下」(【0023】)、「Al2O3の割合が0.7mol%以上・・・12mol%以下」(【0024】)、「Si2O(当審:上記1(2)で検討したとおり、「SiO2」の誤記と解される。)の割合は・・・5mol%以上・・・30mol%以下」(【0025】)、「B2O3の割合は、15mol%以上・・・45mol%以下」(【0026】)、「ZnOの割合は、・・・1mol%以上・・・10mol%以下」(【0027】)のものが記載されており、このようなガラス組成物を主成分として含むガラス接合材により、650℃以下の低温焼成で無機部材を接合することができることが理解できる。 そして、このようなガラス接合材は、本件発明1に係るガラス接合材にほかならない。 ウ そうすると、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲内のものといえるから、上記判断手法に当てはめてみると、特許請求の範囲の請求項1の記載は、サポート要件に適合するといえる。 さらに、本件発明2~7について検討しても事情は同じである。 (3)申立人の主張について 特許異議申立書における、申立人の主張について検討する。 ア 申立人は、本件発明の課題は、低い作動温度に応じて設定される低い焼成温度での焼成で好適に接合することができ、かつ、焼成後に好適な耐熱性を発揮することができるガラス接合材を提供することと解されるものの、本件発明1は装置の作動温度について特定していないから、本件発明1は、装置の作動温度が500℃、焼成温度が650℃という課題を解決できない形態を包含し、また、装置の作動温度が650℃超というそもそも上記課題が発生し得ない形態を包含する、と主張する(特許異議申立書の14ページ下から6行~15ページ14行)。 しかしながら、上記第2の2(1)(特に【0003】、【0004】、【0006】、【0008】)をみれば、従来より低温、具体的には650℃以下で焼成可能なガラス接合材が求められていることが理解できるから、本件発明の課題は、上記(2)アで検討したとおりであって、申立人の主張する課題は妥当なものとは認められず、上記主張は採用できない。 イ 申立人は、本件特許明細書の表1におけるサンプルNo.1~3、16、18、19は、ステンレス又はアルミナとの接合性が低く、またサンプルNo.9はアルミナとの最低接合温度が700℃であって、本件の課題を解決することができない形態を包含するから、サポート要件を満たさない旨を主張する(特許異議申立書の15ページ15行~16ページ17行)。 しかしながら、サンプルNo.1~3、16、18、19は、ステンレス、ジルコニア又はアルミナの何れかにおいて良好な接合性を発揮することが確認されているし、サンプルNo.9はステンレスにおいて最低接合温度が650℃であることも確認されているから、何れのサンプルも本件課題を解決し得るものといえ、上記主張は採用できない。 ウ 申立人は、本件特許明細書の表1における「◎」が何を意味するのか不明であるから、本件発明1は課題を解決できない形態を包含する、と主張する(特許異議申立書の16ページ18行~17ページ3行)。 しかしながら、一般的に「◎」が「〇」より良好な結果を示すものであって、本件特許明細書において「◎」が「〇」のものより良好な接合性を意味することは、当業者であれば当然に理解できるから、上記主張は採用できない。 エ 申立人は、本件特許明細書の表1におけるサンプルは、各成分の合計値が100.1%又は99.9%であって、合計値が100%でない例を含むから、これらのサンプルを根拠として課題を解決することを理解することはできない、と主張する(特許異議申立書の17ページ4~14行)。 しかしながら、ガラス組成における各成分の含有量は、四捨五入した数値で示すことが技術常識であるところ、このような四捨五入後の数値を合計すると、100%から0.1%程度のズレを生じることは一般的に起こり得ることであるから、本件特許明細書の表1のサンプルの組成が不明ということはできない。よって、上記主張は採用できない。 オ 申立人は、本件発明5における熱曝露の条件は、例えば1000℃、1000時間のような過酷な条件を含むが、明細書にはこのような過酷な条件でも、熱膨張係数の変化率が10%以下を満足することは記載されておらず、本件発明5はサポート要件を満たさない、と主張する(特許異議申立書の17ページ15行~同ページ末行)。 しかしながら、本件発明5は、請求項1~4のいずれかに記載のガラス接合材を前提とし、さらに「大気雰囲気中で650℃以上かつ100時間以上の熱曝露を行った際の前記熱曝露前後の熱膨張変化率が10%以下である」ものに限定するものである。上記主張は、請求項5に記載された熱曝露前後での熱膨張係数の変化率のみに着目し、前提となる請求項1~4のいずれかに記載のガラス接合材が前提となることを考慮するものでないから、当該主張は採用できない。 カ 以上のとおりであるから、申立人の主張はいずれも採用できず、本件発明が発明の詳細な説明に記載されたものであり、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲内のものであることに変わりはない。 (4)まとめ よって、特許法第36条第6項第1号に係る申立理由2に理由はない。 3 申立理由3(甲1を主たる証拠とする進歩性欠如)について (1)甲1に記載された発明(甲1発明) ア 上記第4の1(2)(【0054】【表1】、【0055】)によれば、甲1における実施例の固体酸化物型燃料電池用シール材料は、表1中の組成に調合されたガラス原料より得たガラス粉末と、表1に示す割合でMgO粉末とを混合して得られたことが理解できる。 イ そこで、甲1に記載された事項を、表1のNo.3に対応する「固体酸化物型燃料電池用シール材料」に注目して整理すると、甲1には以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲1発明」という。)。 「モル%で、SiO2が12%、B2O3が38%、MgOが20%、BaOが13%、CaOが6%、SrOが2%、Al2O3が2%、La2O3が5%、Y2O3が2%の組成に調合されたガラス原料より得たガラス粉末と、 10質量%のMgO粉末を混合した、 固体酸化物型燃料電池用シール材料。」 (2)本件発明1について ア 対比 (ア) 甲1発明における「固体酸化物型燃料電池用シール材料」は、「SUSやFeといった金属や、フェライトやジルコニアといった高膨張セラミックスの接着材料として」、「支持体基板、電解質、電極等を気密封止するため」に用いるものであるから(上記第4の1(2)【0064】)、本件発明1の「無機部材を封止接合する」「接合材」に相当する。 (イ) 甲1発明における「シール材料」は、ガラス粉末及びMgO粉末のみで構成されるものであるから、シール材料全体に対して、ガラス粉末は90質量%(=100質量%-10質量%(MgO粉末))ということができ、これは本件発明1の「主成分としてガラス組成物を含有」することに相当する。 (ウ) 甲1発明において、ガラス粉末とガラス原料の両組成は概ね同じと推認される。 また、甲1発明におけるガラス粉末において、甲1に明記されていない成分は含有されないと解される。 そして、甲1発明に係るガラス粉末の組成における2族元素酸化物MOの含有量(モル%)を計算すると、41%(=20%(MgO)+13%(BaO)+6%(CaO)+2%(SrO))となる。 (エ) そうすると、当該ガラス粉末の組成は、本件発明1の 「アルカリ金属元素、P、Pb、Bi、Te、V、Asを実質的に含まず、かつ、当該ガラス組成物全体を100mol%としたときに、 MO :30~75mol%、 Al2O3 :0.7~12mol%、 SiO2 :5~30mol%、 B2O3 :15~45mol%、 (ここで、上記MOは、2族元素の酸化物であり、かつ、MgOを3mol%以上25mol%以下含む。)の成分で構成されている」を満足する。 (オ) 以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明とは、 「無機部材を封止接合するガラス接合材であって、 主成分としてガラス組成物を含有し、 前記ガラス組成物は、アルカリ金属元素、P、Pb、Bi、Te、V、Asを実質的に含まず、かつ、当該ガラス組成物全体を100mol%としたときに、 MO :30~75mol%、 Al2O3 :0.7~12mol%、 SiO2 :5~30mol%、 B2O3 :15~45mol%、 (ここで、上記MOは、2族元素の酸化物であり、かつ、MgOを3mol%以上25mol%以下含む。)の成分で構成されている、ガラス接合材。」 の点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1が「650℃以下の低温焼成」で封止接合するガラス接合材であるのに対し、甲1発明に係るシール材料で封止する際の焼成温度が不明である点。 <相違点2> 本件発明1が、「ガラス組成物全体を100mol%としたときに、95mol%以上が酸化物換算のモル比で、」「MO」、「Al2O3」、「SiO2」、「B2O3」及び「ZnO」「の成分で構成され」、そのうち「ZnO」が「1~10mol%」であるのに対し、甲1発明のガラス粉末は、ZnO成分を含有しておらず、MO、Al2O3、SiO2、B2O3及びZnOの成分の合計量は93モル%(=41%(MO)+2%(Al2O3)+12%(SiO2)+38%(B2O3)+0%(ZnO))である点。 イ 判断 (ア)相違点1について 甲1には第一および第二の部材を固着させる際に、800~1000℃で熱処理することが記載されているのみで(上記第4の1(1)【0048】)、シール材料を650℃以下で焼成することについて記載も示唆もない。 よって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 (イ)相違点2について 甲1には、ガラス粉末において「MO」、「Al2O3」、「SiO2」、「B2O3」及び「ZnO」の成分が95モル%以上で構成されるようにしつつ、ZnOを1~10モル%とすることについて、記載も示唆もない。また、このような事項は、甲2、3にも記載されていないし、技術常識であることを示す証拠もない。 よって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 (ウ)判断のまとめ 以上の検討より、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1~3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものであったということはできない。 (3)本件発明2~7について 本件発明1に係る請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件発明2~5についても上記(2)と事情は同じであるから、本件発明2~5は、甲1に記載された発明及び甲1~3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものであったということはできない。 また、本件発明1と同様の特定事項を有する本件発明6、及び請求項6の記載を引用する本件発明7についても、上記(2)と同様の事情により、甲1に記載された発明及び甲1~3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものであったということはできない。 (4)申立人の主張について ア 申立人の主張の概略 申立人は、甲1発明におけるガラス粉末とMgO粉末を合わせて、シール材料全体の組成を算出した上で本件発明1と対比し、その相違点について、次のとおり主張している。 ・甲1発明において、シール材料の耐熱性や流動性を考慮して、MgOの含有量(28.0mol%)を、本件特許発明1に規定された3~25mol%という数値範囲内の値に変更することは、当業者により容易に想到し得ることである。 ・甲第1号証には、ガラス粉末におけるZnOの好ましい含有量が1~58%モル%であり、ZnOの含有量が多すぎると、失透しやすくなり、また流動性が低下する傾向があることが開示されており、甲1発明において、ZnOの含有量(0mol%)を、本件特許発明1に規定された1~10mol%という数値範囲内の値に変更することは、当業者により容易に想到し得ることである。 ・シール材料による接合の際の焼成温度をどの程度にするかは、当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎない。 イ 申立人の主張に対する当審の判断 甲1発明におけるMgO粉末は、ガラス粉末とは別体のものであるから、ガラス組成物におけるMgOのモル比を求めるにあたり、MgO粉末由来のMgOを算入することは妥当なものとはいえず、その前提が誤っている。 そして、上記(2)イ(ア)及び同(イ)で検討したとおり、各ガラス組成の成分や焼成温度を調整し、本件発明1に想到することは容易想到の事項とはいえない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 (5)まとめ よって、特許法第29条第2項に係る申立理由3に理由はない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1~7に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700858

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