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特許異議申立

2023-700413

缶体製造システム

審判番号
2023-700413
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-123674
登録番号
7166312
請求日
2023年04月21日
審決日
2023年08月08日
公報発行日
2023年09月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】アルテミラ株式会社
  • 【権利者代理人】古部 次郎
  • 【権利者代理人】水戸 洋介
  • 【権利者代理人】尾形 文雄
  • 【異議申立人】宮口 聡
審判長/審判官
  • 審判長 藤本 義仁
  • 審判官 門 良成
  • 審判官 貝沼 憲司
分類
P1651.113-Y (B41F) / P1651.121-Y (B41F) / P1651.537-Y (B41F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7166312号発明「缶体製造システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7166312号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7166312号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成29年1月30日に出願された特願2017-14603号(以下「原出願」という。)の一部を令和2年7月20日に特許出願した特願2020-123674号であって、令和4年10月27日に特許権の設定登録がされ、同年11月7日に特許掲載公報が発行され、令和5年4月21日にその請求項1ないし4に係る特許に対し、特許異議申立人 宮口 聡(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 特許第7166312号の請求項1ないし4に係る特許発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 缶体が移動する移動経路であって、分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する移動経路と、 前記複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路に設けられ、缶体を支持し永久磁石を備えた移動ユニットを電磁石を用いて移動させるリニア機構を用いて当該缶体の搬送を行うとともにインクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置と、 前記複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路に設けられ、刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置と、 を備え、 前記複数の分岐経路に含まれる前記一の分岐経路にて缶体への印刷が行われる際の印刷方式と、前記他の分岐経路にて缶体への印刷が行われる際の印刷方式とが異なっており、且つ、当該一の分岐経路にて行われる缶体の印刷の際にはリニア機構が用いられて缶体の搬送が行われる、 缶体製造システム。 【請求項2】 前記移動経路のうちの前記分岐部よりも上流側では、前記一の分岐経路に向かう缶体および前記他の分岐経路に向かう缶体の各々に対して共通の処理が行われる請求項1に記載の缶体製造システム。 【請求項3】 前記一の分岐経路と前記他の分岐経路は、前記分岐部よりも下流側に位置する合流部で合流し、 前記移動経路のうちの前記合流部よりも下流側では、前記一の分岐経路からの缶体および前記他の分岐経路からの缶体の各々に対して共通の処理が行われる請求項1又は2に記載の缶体製造システム。 【請求項4】 前記一の分岐経路では、缶体への印刷処理以外に、予め定められた他の処理が行われ、前記他の分岐経路でも、当該他の処理と同じ処理が行われる請求項1乃至3の何れかに記載の缶体製造システム。」 第3 特許異議申立理由の概要及び証拠 申立人は、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、概ね以下の申立ての理由を主張するとともに、証拠方法として以下に示す甲第1号証ないし甲第14号証(以下、それぞれ、「甲1」ないし「甲14」ということがある。)を提出している。 1 特許異議申立理由の概要 (1)分割要件違反を前提とする新規性欠如(第29条第1項第3号) 本件特許出願は、分割要件を満たさないので、その出願日は令和2年7月20日となるところ、本件特許発明1ないし4は、甲第14号証に記載された発明と同一であって、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。(以下、当該理由を「申立理由1」という。) (2)進歩性欠如(特許法第29条第2項、甲第1号証を主引用文献とする場合) 本件特許発明1ないし4は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである(以下、当該理由を「申立理由2-1」という。)。 (3)進歩性欠如(特許法第29条第2項、甲第2号証を主引用文献とする場合) 本件特許発明1ないし4は、甲第2号証に記載された発明、並びに、甲第1号証及び甲第5号証ないし甲第13号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである(以下、当該理由を「申立理由2-2」という。)。 (4)進歩性欠如(特許法第29条第2項、甲第3号証を主引用文献とする場合) 本件特許発明1ないし4は、甲第3号証に記載された発明、並びに、甲第1号証及び甲第5号証ないし甲第13号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである(以下、当該理由を「申立理由2-3」という。)。 (5)進歩性欠如(特許法第29条第2項、甲第4号証を主引用文献とする場合) 本件特許発明1ないし4は、甲第4号証に記載された発明、並びに、甲第1号証及び甲第5号証ないし甲第13号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである(以下、当該理由を「申立理由2-4」という。)。 (6)サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号) 本件特許発明2ないし4は、発明の詳細な説明に記載されたものではないので、請求項2ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである(以下、当該理由を「申立理由3」という。)。 (7)明確性要件違反(特許法第36条第6項第2号) 本件特許発明2ないし4は、明確ではないので、請求項2ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである(以下、当該理由を「申立理由4」という。)。 2 証拠 甲第1号証 :「Analysis Tonejet Today: An Update」,p.4-6,[onli ne],2012年1月,Tonejet Limited,[令和5年2 月24日検索],インターネット<URL:https://www.tone jet.com/media/pages/news/info-trends-report-2012/329 3961547-1666776314/tonejet_update_infotrends_jan2012 .pdf> 甲第2号証 :欧州特許出願公開第2669026号明細書 甲第3号証 :特開2008-183613号公報 甲第4号証 :欧州特許出願公開第2942195号明細書 甲第5号証 :特表2016-504211号公報 甲第6号証 :特開平7-53039号公報 甲第7号証 :米国特許出願公開第2011/0067584号明細書 甲第8号証 :米国特許出願公開第2013/0048653号明細書 甲第9号証 :特開2016-13548号公報 甲第10号証 :特開2015-196325号公報 甲第11号証 :特開2011-230797号公報 甲第12号証 :特開2015-227002号公報 甲第13号証 :特表2015-526312号公報 甲第14号証 :特開2018-12320号公報 第4 各甲号証の記載 1 甲第1号証 甲第1号証には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。なお、日本語訳は、特許異議申立書に添付された甲第1号証の翻訳文を参考にした。) (1)「The specifications cited above reflect the advances that Tonejet and Ball Packaging Europe made in 2011, when Tonejet installed a second generation print engine at Ball's Hassloch plant-one that replaced the first installation and doubled its productivity. Close data about the Ball beverage can printing system is proprietary, but several facts about it are public. The print system is located in-line with Ball's main can print production; cans are diverted from the production line, printed and varnished with the Tonejet system, then merged with the output of Ball's conventional offset print system. All the cans then go together through downstream processes, in particular shape forming, in which cylinder ends are necked. Finally, using scannable symbols, the system automatically separates the Tonejet-printed from the stream, for separate distribution to Ball's brand owner customers.」 (上記の仕様は、2011年にトーンジェット社とボールパッケージングヨーロッパ社が行った進歩を反映している。このとき、トーンジェット社は、ボール社のハスロッホ工場に第2世代のプリントエンジンを導入した。これにより、最初の設備が置き換えられ、生産性が2倍になった。 ボール社の飲料缶印刷システムに関する詳細なデータは同社独自のものであるが、それに関するいくつかの事実は公開されている。 印刷システムは、ボール社の主要な缶印刷生産とインラインに配置されている。 缶は生産ラインから離され、トーンジェットシステムで印刷およびニスが塗布され、ボール社の従来のオフセット印刷システムの出力と統合される。 その後、すべての缶が下流のプロセス、特にシリンダーの端にネックを付ける形状形成を経て一緒に進む。 最後に、システムはスキャン可能なシンボルを使用して、トーンジェットで印刷されたものをストリームから自動的に分離し、ボール社のブランド所有者の顧客に個別に配布する。) (2)上記(1)の記載の「生産ライン」について、一般的にベルトコンベアを用いてライン上で作業を進める手段のことを意味する。 そうすると、「生産ライン」が搬送手段を備えていることは自明である。 (3)上記(1)の記載から、「缶」が「トーンジェットシステムで印刷された後、オフセット印刷システムの出力と統合され、その後、すべての缶が下流の形状形成プロセスを経て一緒に進む」ことから、「缶」を「下流の形状形成プロセスを経て一緒に進」ませるための搬送手段があることは明らかである。 そうすると、上記(1)ないし(3)の事項から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「缶が生産ラインから離され、トーンジェットシステムで搬送及び印刷された後、オフセット印刷システムの出力と統合され、 その後、すべての缶が搬送手段により下流の形状形成プロセスを経て一緒に進む、 飲料缶印刷システム。」 2 甲第2号証 甲第2号証には、次の事項が記載されている。(なお、日本語訳は、特許異議申立書に添付された甲第2号証の翻訳文を参考にした。) (1)「[0005] Usually, these processing steps are executed consecutively by the different processing units, i.e. objects travel from one processing unit to the next in a predefined order to pass through the different processing steps successively. However, one processing step may include different processing units that run in parallel. In this case, a stream of objects running through the production line is split up in at least two parallel streams of objects that are processed in parallel by at least two different processing units. Usually, after this at least one processing step in which the objects are processed in parallel, one or more processing steps follow in which the objects are again processed by a common processing unit, i.e. the parallel streams of objects are merged again to a single stream of objects.」 ([0005]通常、これらの処理ステップは、異なる処理ユニットによって連続して実行され、すなわちオブジェクトは、1つの処理ユニットから次の処理ユニットへと所定の順序で異なる処理ステップを連続的に通過する。しかし、1つの処理ステップに並行して実行される種々の処理ユニットが含まれることもある。この場合、生産ラインを通過するオブジェクトのストリームは、少なくとも2種の異なる処理ユニットによって並列に処理される、オブジェクトの少なくとも2個の並列ストリームに分割される。通常、オブジェクトは並行に処理されるこの少なくとも1つの処理ステップの後に、1つ以上の処理ステップが後に続くオブジェクトは、再び、共通の処理ユニットによって処理され、すなわち、オブジェクトの並列ストリームは、オブジェクトの単一のストリームに再び併合される。) 「[0006] The reason for providing for a processing step with a least two different processing units operating in parallel may be that these specific processing units operate at a lower speed than the other processing units of a high-speed production line. Therefore, operating two processing units in parallel at a lower speed instead of one can make for a higher speed of the production line as a whole.」 ([0006]並行して動作する少なくとも2つの異なる処理ユニットを備えた処理ステップを設ける理由は、これらの特定の処理ユニットが高速生産ラインである他の処理ユニットよりも低速で動作するためである。したがって、1台の処理ユニットではなく2台の処理ユニットを低速で並行して動作させることで、生産ライン全体の速度を向上させることができる。) (2)「[0061] The field of application for the part of the production line arrangement according to Fig. 1 is the production of can bodies for metal beverage cans. The can bodies are processed consecutively in several processing steps in a single stream of can bodies indicated with dashed line 1. This stream of objects is divided into two different streams 2, 3 of objects wherein at least one processing step is carried out in parallel by at least two different processing units. ([0061]図1による生産ライン構成の一つの適用分野は、金属飲料缶の缶体の生産である。缶体は、破線1で示される缶体の単一のストリームで、いくつかの処理ステップで連続的に処理される。オブジェクトのこのストリームは、オブジェクトの2つの異なるストリーム2、3に分割され、少なくとも1つの処理ステップが、少なくとも2つの異なる処理ユニットによって並行して実行される。) 「[0062] In the example depicted in Fig. 1, the objects are processed in parallel by two decorators 10, 11. After the application of a color pattern in the decorators 10, 11, the objects in the two different streams of objects 2, 3 are then marked by marking units 20, 21 with a fiber laser. The stream of objects 2 being processed by the decorator 10 is marked with a first mark by the marking unit 20. The stream of objects 3 processed by the decorator 11 is marked with a second mark by the marking unit 21 with a fiber laser.」 ([0062]図1に示す例では、オブジェクトは、2つのデコレータ10、11によって並行して処理される。デコレータ10、11でカラーパターンを適用した後、オブジェクト2、3の2つの異なるストリーム内のオブジェクトは、マーキングユニット20、21によってファイバレーザでマーキングされる。デコレータ10によって処理されているオブジェクト2は、マーキングユニット20によって第1のマークでマーキングされる。デコレータ11によって処理されたオブジェクト3は、ファイバレーザを有するマーキングユニット21によって第2のマークでマーキングされる。) 「[0063] As an optional, quality-enhancing measure, the first and second marks applied by the marking units 20, 21 are verified by verifying units 22, 23. ([0063]オプションの品質向上手段として、マーキングユニット20、21によって適用された第1および第2のマークは、検証ユニット22、23によって検証される。) [0064] After that, the two different streams of objects 2, 3, are merged to a single stream of objects 4 comprising can bodies marked with first and second marks. Before the objects reach the single processing unit 30, one or several processing units can be arranged in between to perform one or several consecutive processing steps. ([0064]「その後、オブジェクト2、3の2つの異なるストリームは、第1および第2のマークでマーキングされた缶体を含むオブジェクト4の単一のストリームに併合される。オブジェクトが単一の処理ユニット30に到達する前に、1つまたはいくつかの処理ユニットを間に配置して、1つまたはいくつかの連続した処理ステップを実行することができる。) [0065] Preferably, all processing units that process a single stream of objects operate at line-speed. Those processing units that process different streams of objects in parallel can operate at a lower speed. ([0065]好ましくは、オブジェクトの単一のストリームを処理する全ての処理ユニットがライン速度で動作する。オブジェクトの異なるストリームを並列に処理する処理ユニットは、より低い速度で動作することができる。) [0066] In the preferred embodiment the detection of marks is carried out by the single processing unit 30 that is a necking unit. A first sub-unit of the necking unit 30 is a detection or recognition unit 31 for detecting marks on the can bodies in the at least one following processing step in which the can bodies are processed by the single processing unit 30. The detection or recognition unit 31 generates detection results containing information whether a specific can body is marked with the first mark, the second mark, with no mark or with a deficient or unknown mark. These detection results are transmitted to the first separation unit 40 and preferably also to the light testing unit 32 at the end of the necking unit 30. The detection results are transmitted such that for each can body in the first separation unit 40 and preferably also for each can body in the light testing unit 32 a corresponding detection result for that specific can body is available. Preferably, either in the necking unit the sequence of can bodies must not be changed or the sequence of the detection results has to be changed according to any changes occurring in the sequence of the can bodies being conveyed through the necking unit 30 to the first separation unit 40. In the separation unit 40, the single stream of can bodies is again separated into two different streams of objects 6, 7 in that can bodies marked with the first mark are conveyed in stream 6 and can bodies marked with the second mark are conveyed in stream 7.」 ([0066]好ましい実施形態では、マークの検出は、ネッキングユニットである単一の処理ユニット30によって実行される。ネッキングユニット30の第一のサブユニットは、缶体は、単一の処理ユニット30によって処理される少なくとも1つの後続の処理ステップにおいて、缶体上のマークを検出するための検出ユニットまたは認識ユニット31が設けられている。検出ユニットまたは認識ユニット31は、特定の缶体に第1のマークが付いているか、第2のマークが付いているか、マークが付いていないか、または欠陥または未知のマークが付いているかどうかの情報を含む検出結果を生成する。これらの検出結果は、第1分離ユニット40に、好ましくはネッキングユニット30の最後にある光検査ユニット32にも伝達される。検出結果は、第1分離ユニット40の各缶体に対し、好ましくは、光検査ユニット32のそれぞれの缶体についても特定の缶体に対応する検出結果が利用可能であるように、送信される。好ましくは、ネッキングユニットの缶体の順序は変更されるべきでなく、また、検出結果の順序は、ネッキングユニット30を通って第1の分離ユニット40に搬送される缶体の順序の変化に合わせて変更する必要がある。分離ユニット40では、缶体の単一のストリームは、再び缶体6、7の2種の異なるストリームに分離され、第1マークが表示された缶体がストリーム6に搬送され、第2のマークが表示された缶体がストリーム7内に搬送される。) (3)「Fig.1 [図:0001401693000001.jpg] 」 そうすると、上記(1)ないし(3)の事項から、甲第2号証には、次の技術事項(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 「缶体が、単一のストリームで処理され、その後単一のストリームは2つの異なるストリームに分割され、デコレータによるカラーパターンの適用を含む少なくとも1つの処理ステップが、2つの異なる処理ユニットによって並行して実行され、 その後、2つの異なるストリームが単一のストリームに併合される、 缶体の生産ライン。」 3 甲第3号証 甲第3号証には、次の事項が記載されている。 (1)「【技術分野】 【0001】 この発明は、外周面の印刷内容が異なる複数品種の缶体を製造する方法、およびこの製造方法に用いる缶体の分別装置に関する。」 (2)「【0007】 本発明は、上述した技術背景に鑑み、印刷内容の異なる多品種の缶体を効率良く製造できる複数品種の缶体の製造方法、およびこの製造方法に用いる缶体の分別装置の提供を目的とする。」 (3)「【0027】 図1は、本発明の缶体の製造方法を採用した飲料用アルミニウム缶の製造工程図である。以下に、図1を参照しつつ、複数品種のアルミニウム缶を製造する方法について詳述する。カッピングプレス(CP)以降の工程において、二重線または単線で接続されている工程はコンベアによる缶体移送を伴う工程であり、枠線が直結する工程は缶体を移送することなく連続して処理をする工程である。また、図2に参照されるように、二重線で示す移送は複数の缶体(S)を整列させることなく移動させるマスコンベア(1)による移送であり、単線で示す移送は缶体(S)を一列に整列させて移動させるシングルコンベア(2)による移送である。また、マスコンベア(1)からシングルコンベア(2)に移動させる場合は、入口側から出口側に向かって幅を縮小し、出口を缶体1個が通過する幅に設定したシングルファイラー(3)を介在させると、シングルファイラー(3)上を移動する間に缶体(S)は一列に整列し、整列した缶体(S)をシングルコンベア(2)に送り込むことができる。逆に、シングルコンベア(2)からマスコンベア(1)に移動させる場合は、シングルコンベア(2)から直接マスコンベア(1)に缶体を送り込めば良く、順次送り込まれる缶体(S)はマスコンベア(1)の幅方向に広がりながら移送される。図2は、図1のベークオーブン(BO)への導入からソーター(STR)への導入まで移送を例示したものであり、他の工程間のマスコンベア(1)およびシングルコンベア(2)による移動も同様にして行われる。 【0028】 (1)アンコイラー(UC)において、コイルに巻いたアルミニウム薄板を巻き解きながら、ルブリケーター(LU)で成形加工のための潤滑油を塗布する。 【0029】 (2)カッピングプレス(CP)において、円形のブランク材を打ち抜き、さらに絞り加工により浅いカップ状素材を成形する。 【0030】 (3)ボディメーカー(BM)において、前記カップ状素材に対して絞り加工およびしごき加工を施して、周壁を所定厚さに成形する。さらに缶体の底部をドーム状に成形する。 【0031】 (4)ボディメーカー(BM)による成形に続いて、トリマー(TR)において、周壁上部の耳部を切り揃える。これにより、円筒状の素缶体が成形される。 【0032】 (5)ウォッシャー(WS)において、素缶体を洗浄し、加工のために塗布した潤滑油やその他の付着物を除去する。 【0033】 (6)プリンター(PR)において、素缶体の外周面に所要の図柄および図柄に対応する識別マークを印刷する。2台のプリンター(PR)においてA、B2種類の異なる図柄を印刷する。 【0034】 (7)ボトムコーター(BTC)において、缶底外面の接地部分を塗装する。 【0035】 (8)ピンオーブン(PO)において、素缶体の外周面の印刷および缶底の塗装を焼き付ける。前記(6)工程の印刷から本工程までは缶体(A)と缶体(B)とを別ラインで行う。 【0036】 (9)移送の間にシングルコンベアからマスコンベアに移し、素缶体(A)および素缶体(B)を混在させた状態でインサイドスプレー(INS)に送り込み、内面を塗装する。 【0037】 (10)ベークオーブン(BO)において、素缶体(A)および素缶体(B)の内面塗装を焼き付ける。 【0038】 (11)ネッカー・フランジャー(QNF)において、素缶体(A)および素缶体(B)の開口縁を縮径するともに、プレート状の缶蓋をかしめて取り付けるためのフランジを成形する。本工程により、最終形状の缶体(A)および缶体(B)が製作される。 【0039】 (12)ソーター(STR)において、缶体(A)および缶体(B)の外周面に印刷された識別マークを検出し、検出結果に基づいて缶体(A)および缶体(B)を分別し、それぞれのラインに載せる。以降の工程は缶体(A)と缶体(B)とを別ラインで行う。 【0040】 (13)ディフェクティブキャンテスター(DCT)において、缶体(A)および缶体(B)の外観および印刷の状態を検査し、不良品があれば取り除く。 【0041】 (14)ライトテスター(LT)において、缶体(A)および缶体(B)の穴あきの有無を検査し、不良品があれば取り除く。 【0042】 (15)パレタイザー(PT)において、検査に合格した缶体(A)および缶体(B)をパレットに積載する。 【0043】 なお、図1に示すように、ボディメーカー(BM)、トリマー(TR)、インサイドスプレー(INS)、ソーター(STR)、およびディフェクティブキャンテスター(DCT)は、2台またはそれ以上の複数台の装置を用いてそれぞれの工程を実施している。これは、これらの工程の実施に時間がかかるため、1台のみで実施するとその工程によって全工程が律速されるためである。時間のかかる工程で複数の装置で並行して処理することにより、全工程をよどみなく進行させることができる。ただし、これらの装置でも、処理速度が速く複数台を必要としない場合は1台で良い。」 (4)「【0080】 実施例の製造ラインは図1に示したものであり、プリンター(PR)と印刷後に連続処理するボトムコーター(BTC)およびピンオーブン(PO)を2組備え、2台のソーター(STR)を備えている。以下の説明において、2台のプリンター(PR)を第1プリンター(PR1)、第2プリンター(PR2)と称する。また、前記ソーター(STR)は図3~5に示したものであり、識別部(20)は24個のポケット(22)を有するメインターレット(21)を備え、整列部(10)および分離部(40)は18個のポケット(11)(41)を有するスターホイール(12)(42)を備えている。識別マーク(M)として商品識別用のバーコードを用い、検出器(26)としてバーコードリーダーを用いた。さらに前記ソーター(STR)後のディフェクティブキャンテスター(DCT)は複数台を用いて缶体が滞留しないようにした。」 (5)「【図1】 [図:0001401693000002.jpg] 」 (6)図1より、WSの後、経路が分岐し、分岐した経路のうち一方の経路ではPR1(PR(A))、BTC(A)、PO(A)を備え、他方の経路ではPR2(PR(B))、BTC(B)、PO(B)を備えるとともに、PO(A)及びPO(B)の後、分岐した経路が合流することが看取できる。 (7)上記(6)で看取された事項と、図1、及び、上記(3)の「二重線または単線で接続されている工程はコンベアによる缶体移送を伴う工程であり」との記載から、WSの後、缶体の移送経路が分岐し、分岐した移送経路のうち一方の移送経路ではPR1(PR(A))、BTC(A)、PO(A)を備え、他方の移送経路ではPR2(PR(B))、BTC(B)、PO(B)を備えるとともに、PO(A)及びPO(B)の後、分岐した移送経路が合流するといえる。 そうすると、上記(1)ないし(7)の事項から、甲第3号証には、次の技術事項(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ウォッシャー(WS)での行程後、缶体の移送経路が分岐し、分岐した移送経路のうち一方の経路では、第1プリンター(PR1)、ボトムコーター(A)(BTC(A))およびピンオーブン(A)(PO(A))を備え、一方の移送経路では、第2プリンター(PR2)、ボトムコーター(B)(BTC(B))およびピンオーブン(B)(PO(B))を備えるとともに、それぞれの移送経路におけるピンオーブン(PO)での行程後に、分岐した移送経路が合流する、缶体の製造ライン。」 4 甲第4号証 甲第4号証には、次の事項が記載されている。(なお、日本語訳は、特許異議申立書に添付された甲第4号証の翻訳文を参考にした。) (1)「[0001] The invention relates to a machine for printing hollow articles such as cans, tubes, cartridges, other types of containers or closures.」 ([0001]本発明は、缶、チューブ、カートリッジ、その他の容器またはクロージャのような中空物品を印刷するための装置に関するものである。) (2)「[0007] It is the object of the invention to create a machine pertaining to the technical field initially mentioned, that allows for high throughput also in case of smaller lots.」 ([0007]本発明の目的は、最初に述べた技術分野に属し、小ロットの場合に高いスループットを可能にする装置を提供することである。) (3)「[0046] Figure 1 is a block diagram of the printing section of a machine line according to the invention, e. g. a machine line for the manufacture of aluminium aerosol cans. As known from the prior art, the machine line 1 comprises a number of sections related to different processing steps, such as a forming section, a cutting section, a coating section, the printing section, an over varnishing section, a necking section, a packing section etc. Each section not only comprises the respective station but auxiliary devices such as conveyors, (buffer) storages (accumulators), dryers etc. The printing section according to the invention and as described in the following may be used in the context of machine lines of different configurations. In principle it may replace prior art printing sections when down times due to the changeover of printing stations are to be reduced.」 ([0046]]図1は本発明による装置のラインにおける印刷部の構成を示すブロック図である。例えば、アルミニウムエアゾール缶を製造するための装置のライン。従来技術から知られているように、装置のライン1は、成形部、切断部、コーティング部、印刷部、ニス引き部、ネック部、パッキング部等の異なる処理ステップに関連する一連のセクションを備えている。各部分は、それぞれのステーションだけでなく、コンベヤ、(バッファ)記憶部(アキュムレータ)、乾燥機などの補助装置を含む。本発明および以下に記載するように、前記印刷部は、異なる構成の装置で使用することができる。原理的には、印刷ステーションの切り替えに伴うダウンタイムを低減しようとすると、従来技術の印刷部を置き換えることができる。) 「[0047] At the entrance, receiving pre-processed articles, the printing section 100 of the machine line 1 comprises a selector station 110. This station selectively routes the articles to a first path 101 or to a second path 102. In the first path 101, the selector station 110 comprises a manual inserting mechanism 111. On the first path 101, the selector station 110 is linked to a first printing station 151 and further to a first drying station 161. On the second path 102, the selector station 110 is linked to a manual inserting station 140, to a second printing station 152 and further to a second drying station 162. The output of both drying stations 161, 162 pass a takeout station 170, where individual articles may be selectively singled out. The articles that are not singled out at the takeout station 170 are further conveyed to a merging station 180, where the two paths 101, 102 are merged and the articles are delivered at a single output 181.」 ([0047]入口では、前処理済みの物品を受け取り、装置のライン1の印刷部100は、セレクタステーション110を備えている。このセレクタステーションは、第1経路101と第2経路102に物品を選択的に経路指定する。第1経路101において、セレクタステーション110は手差し機構111を備える。第1経路101上で、セレクタステーション110は、第1印刷ステーション151に連結され、さらに第1乾燥ステーション161に連結されている。第2の経路102上で、セレクタステーション110は、手動挿入ステーション140に連結され、第2印刷ステーション152、さらに第2乾燥ステーション162に連結されている。両方の乾燥ステーション161、162の出力は、取り出しステーション170を通過し、個々の物品を選択的に選び出すことができる。取り出しステーション170で選び出されなかった物品は、合流ステーション180にさらに搬送され、そこで2本の経路101、102が合流し、かつ、物品は単一の出口181に搬送される。) (4)「Fig.1 [図:0001401693000003.jpg] 」 (5)Fig.1から、110にて経路が101と102に分岐し、経路101は151、161を備え、経路102は152、162を備えるとともに、経路101、102は共通の170を備え、180にて合流することが看取できる。 (6)上記(3)の「入口では、前処理済みの物品を受け取り、装置のライン1の印刷部100は、セレクタステーション110を備えている」との記載から、セレクタステーション110まで物品が搬送されることが読み取れる。 (7)上記(3)の「取り出しステーション170で選び出されなかった物品は、合流ステーション180にさらに搬送され、そこで2本の経路101、102が合流し、かつ、物品は単一の出口181に搬送される」との記載から、2本の経路101、102では物品が搬送され、合流後も搬送されることが読み取れる。 そうすると、上記(1)ないし(7)の事項から、甲第4号証には、次の技術事項(以下「甲4発明」という。)が記載されているものと認められる。 「缶が第1経路101と第2経路102に物品を選択的に経路指定するセレクタステーション110に搬送され、搬送経路は、第1印刷ステーション151、第1乾燥ステーション161を備える第1経路101と第2印刷ステーション152、第2乾燥ステーション162を備える第2経路102に分岐し、第1乾燥ステーション161及び第2乾燥ステーション162の出力は、合流ステーション180にさらに搬送され、そこで2本の経路101、102が合流し、缶は単一の出口181に搬送される、 缶を製造するためのライン。」 5 甲第5号証 甲第5号証には、次の事項が記載されている。 (1)「【0001】 本発明は、概してデジタル印刷の分野におけるものであり、特に湾曲面上に印刷するための印刷システムおよび方法に関する。」 (2)「【0007】 当該分野では、複数の物体への同時印刷を可能にすることにより、印刷技術を最大限利用(高効率)できるようにしながら、印刷工程を促進するための印刷技術が必要である。さらに、こうした印刷技術は、非常に高いシステム精度(ミクロン)で、比較的高い印刷解像度を保つ必要があるため、現実の製造ラインでのインクジェット印刷技術の使用は非常に困難である。そのため、このような技術では、製造ランを実行する上で、印刷エンジンを最大限利用して高い効率水準を維持することが必要である。」 (3)「【0054】 図1は、閉ループレーン10(例えば楕円軌道)を採用したいくつかの可能な実施形態による印刷システム17を示す略図であり、閉ループレーン10は、印刷対象の物体(図示せず)を該レーン10内に設けられた印刷ゾーン12zへ送るべく、これに沿って並進させるためのものであり、印刷ゾーン12zは1つ以上の印刷ヘッドアセンブリ100(例えば、各色の印刷ヘッドを具備する)を備えている。この非限定的な実施例では、印刷システム17は、製造ラインから複数の印刷対象物体を自動搭載するように構成された搭載ゾーン306lを備える。搭載ゾーン306lは、独立型の制御部および1つ以上のセンサを採用した搭載部、モータ、機械要素、空気圧素子を備え、また、搭載工程を時間調整、監視、管理するために、測定されたセンサデータを印刷システム17の制御部300に通信するように構成されている。いくつかの実施形態において、搭載部は、物体流を、同一の正確なインデックス(例えば、物体が先行のマークまたはキャップの向きを有する場合などに、物体の表面上に印刷開始点をマーキングするために使用される)でシステムレーンに搭載するように構成されている。 【0055】 いくつかの実施形態では、搭載された物体は複数のキャリッジC1、C2、C3、...、Cn-1、Cn(「支持プラットホーム」または「キャリッジCi」とも呼ばれる)に取り付けられ、これらのキャリッジは、レーン10にかけて連続移動するように、また、キャリッジCiの動作状態に関するデータ(例えば、速度、位置、エラーなど)を制御部300と通信するように構成されている。以降で詳細に説明するように、キャリッジCiは、キャリッジCiをレーン10に沿って、同時または断続的に、あるいは個別に制御された方法で、移動させ、さらに、キャリッジCiに取り付けられた物体を、事前処理部204にて処理され(本明細書では「下準備ステーション」とも呼ぶ)、および/または、印刷ゾーン12z内での印刷前、最中、またはその後に、処置/コーティング/下準備されながら、同時または断続的に、あるいは個別に制御された方法で、移動および回転(例えば、図1には示していない回転可能な心棒の使用による)させるように構成されている。」 (4)「【0063】 図3A、図3Bに例示されるように、印刷ヘッドユニットは、物体101の表面に材料組成物を吐出できるように構成された、1以上のノズルまたは吐出孔(一般に符号130で示す)を設けてよい。材料組成物は、流体(例えば、インクジェット印刷、プラスチック噴射または/および印刷の場合)、および/または固体(例えば、レーザ印刷の場合、粉体)であってよい。「印刷」とは、本明細書では、物体表面へのあらゆるタイプの材料吐出、および/または、物体表面へのドット、ライン、パターンの刻印またはマーキングを含むことを意味する。従って、例えば、「印刷」には、物体の表面に材料を吐出する、物体の表面にマークを刻印および/または付加することにより、例えば物体の色、形状、または質感を変更することが含まれる。例えば、非限定的に、印刷ヘッドユニットは、印刷ゾーン12zを横断する物体の外面に可視および/または不可視の(つまり、電子の電荷など機能的なもの)マーキングを付加するように構成された1つ以上のマーカ(例えば刻印工具、レーザマーカ、ペイントマーカなど)を備えてよい。」 (5)「【0140】 図18は、いくつかの可能な実施形態による、キャリッジCiのレーン10への連結を示す。この非限定的な実施例では、各滑動台22は4つの水平車輪22wを備え、この2対の車輪22wが滑動台22の両側に取り付けられ、また、各対の車輪22wは、トラック10rの側部に沿って形成された側部溝22c内に押入されている。レーン10は、これに沿って取り付けられ、キャリッジCiに設置されたリニアモータ用の磁石トラック(2次モータ素子)を形成している、複数の磁気素体10mをさらに設けてよい。各々の取り外し可能なプラットホーム37の底面に取り付けられ、キャリッジの電源(例えば、電池、誘導性充電、および/または可撓ケーブル)から電力を受容するリニアモータコイル部29(フォーサ/1次モータ素子)を、レーン上でキャリッジを動かすために使用する。キャリッジCiの底面に取り付けたエンコーダ部23rは、リアルタイムのキャリッジ位置決め信号をキャリッジの制御部に提供するために使用される。そのため、各キャリッジCiは、少なくとも1つのリニアモータコイルと、少なくとも1つのエンコーダを設け、制御部300がキャリッジCiの位置決めを訂正できるようにしている。こうすることで、レーン10の直線領域と曲線領域にわたりキャリッジ移動の高精度な位置決めを達成しつつ、キャリッジCiのリニアモータの起動が実行され得る。」 そうすると、上記(1)ないし(5)の事項から、甲第5号証には、次の技術事項(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認められる。 「インクジェット印刷を行う印刷ヘッドユニットと、リニアモータコイルを設けたキャリッジと、リニアモータ用の磁石トラックを形成する磁気素体を設けたレーンを有する、湾曲面上に印刷するための印刷システム。」 6 甲第6号証 甲第6号証には、次の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、物品、特に缶などの有底円筒状の物品を搬送するために用いられる搬送装置に関するものである。」 (2)「【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記の事情に鑑みてなされたもので、保守作業が簡易であって、しかも、工場騒音を減少させることのできる物品の搬送装置を提供することを目的としている。」 (3)「【0010】まず、図1~図3を参照しつつ、本例に係る物品の搬送装置の基本的、概略的な構成を説明する。本例の装置は、缶(物品)4を搬送するために用いられるものであって、横断面C字型に形成された長尺状のガイド10と、このガイド10の内面によって支持される基本ユニット20と、ガイド10の長手方向に沿って、ガイドの裏面(図1中下面)に固定された多数のリニアモータの固定子30とから構成されている。 【0011】ガイド10の材質としては、テフロン(商品名)やエポキシ系樹脂などの非磁性体が用いられている。 【0012】基本ユニット20は、円盤状に構成されたユニット本体21とこのユニット本体21の上面に立設された棒状のピン(支持部)22とから構成されている。ピン22の上端には、ピンチップ22aが嵌合されて固定されている。ピン22は、ガイド10の長手方向に沿って形成されている開口部10aの内部に挿入されている(図1および図2参照)。前記ユニット本体21は、鉄板21aとアルミ板21bとを貼り合わせて構成されている。ピン22は、アルミ合金によって構成されているが、鉄製であってもよい。 【0013】リニアモータの固定子30は、ガイド10の内部に挿入されて支持されている基本ユニット20に対して、ガイド10の長手方向(正逆方向)への力を付与することができるように構成されている。固定子30は、ガイド10の長手方向全長に渡って配置されている。ただし、自重によって基本ユニット20を落下させることができる箇所などには、固定子30の配置を省略することができる。」 (4)「【0022】つぎに、前記のように構成された本例の搬送装置の動作について説明する。まず、乾燥装置50を稼働させておくと共に、固定子30に通電する。すると、固定子30から電磁力が生じ、これが、ガイド10の内部に保持されている基本ユニット20に作用する。すると、基本ユニット20は、図4および図5中における矢印方向(すなわち、ガイド10の長手方向)に沿って移動する。ガイド10の内部を移動してきた基本ユニット20は、駆動ターレット11のポケット11aの内部に一旦保持され、駆動ターレット11の自転により、さらに下流側のガイド10の内部に移動する。」 (5)「【0030】さらに、本例の搬送装置は、缶の乾燥工程に適用されているが、他の工程に適用することも可能である。」 そうすると、上記(1)ないし(5)の事項から、甲第6号証には、次の技術事項(以下「甲6技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「長尺状のガイドと、このガイドの内面によって支持される基本ユニットと、ガイドの長手方向に沿って、ガイドの裏面に固定されたリニアモータの固定子とから構成されている缶の搬送装置において、固定子に通電すると、固定子から電磁力が生じ、これが、ガイドの内部に保持されている基本ユニットに作用する缶の搬送装置。」 7 甲第7号証 甲第7号証には、次の事項が記載されている。(なお、日本語訳は、特許異議申立書に添付された甲第7号証の翻訳文を参考にした。) (1)「[0002] The invention relates to a linear printing machine, preferably a rotary printing machine, for printing on hollow bodies which are held by spindles, wherein the hollow bodies are sequentially fed to a first and a second printing station, and a first printed image is printed on the hollow bodies using a first printing method in the first printing station and a second printed image is printed on the hollow bodies using a second printing method in the second printing station, wherein the first printing method and the second printing method can be the same printing method, for example screen printing, or can be different printing methods, for example screen printing and offset printing.」 「[0002]本発明は、スピンドルによって保持された中空体に印刷するためのリニア印刷機、好ましくは輪転印刷機に関し、中空体は第1および第2の印刷ステーションに順次供給され、中空体は第1の印刷ステーションで第1の印刷方法を使用して第1の印刷画像が印刷され、第2の印刷ステーションで第2の印刷方法を使用して第2の印刷画像が印刷され、第1の印刷方法と第2の印刷方法は同じ印刷であってもよい。 または、スクリーン印刷やオフセット印刷などの異なる印刷方法を使用することもできる。」 (2)「[0021] The printing modules are different printing units using which the hollow bodies can be printed on using either screen printing, cold embossing, hot embossing, laser colour transfer or inkjet. Each of these different printing modules can be used in each of the printing stations, i.e. if there are n printing stations, images can be printed onto the hollow body using a maximum of n different printing methods, wherein the production run alone decides which printing module is used at which printing station of the linear printing machine. Thus, a printing module which is embodied as a flexographic printing unit can for example be used at the first printing station in one production process, while a printing module which is formed by an offset printing unit can be used at the same point in another production process. Each printing station can in principle accommodate each printing module, irrespective of the method according to which it prints.」 ([0021]印刷モジュールは、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、冷間エンボス加工、ホットエンボス加工、レーザーカラー転写又はインクジェットのいずれかを使用して中空体を印刷することができる印刷ユニットである。これらの異なる各印刷モジュールは、印刷ステーションの各々に使用することができる、すなわち、n個の印刷ステーションがある場合、画像は、最大n個の異なる印刷方法を使用して、中空体上に印刷することができ、生産工程のみからリニア印刷機の印刷ステーションでどの印刷モジュールが使用されるか決定される。このように、フレキソ印刷ユニットとして構成された印刷モジュールは、例えば一つの製造工程の第1の印刷ステーションで使用することができ、オフセット印刷装置により構成された印刷モジュールは、別の製造工程における同じ場所で使用することができる。各印刷ステーションは、原理的には、各印刷モジュールを収容することができるが、印刷による方法とは無関係である。) (3)「[0032] FIG.1 is a schematic top view onto a linear printing machine 1 in accordance with the invention which shows the essential elements of the linear printing machine 1. The linear printing machine 1 comprises a transport means 2 in the form of a linear motor, a belt or a chain. Mandrels 3 which each comprise a mandrel bearing 4 are fastened on the transport means 2. Each of the mandrels 3 bears one hollow body 5. The transport means 2 is tensed between two rollers 6, wherein at least one of the rollers 6 is rotary-driven. The input means for inputting the hollow bodies 5 into the linear printing machine 1 and the removing means for removing the hollow bodies 5 are not shown in FIG.1.」 ([0032]図1は、リニア印刷機1の要部を示す本発明によるリニア印刷機1の概略的な上面図である。リニア印刷機1は、リニアモータ、ベルト又はチェーンの形態の搬送手段2を備えている。マンドレル軸受4を有する個々のマンドレル3は、搬送手段2に固定されている。マンドレル3のそれぞれは、1つの中空体5を支持している。搬送手段2は、2つのローラ6の間に張設され、ローラ6のうちの少なくとも1つは、回転駆動される。中空体5をリニア印刷機1に投入するための投入手段と中空体5を除去するための除去手段は、図1に示されていない。) そうすると、上記(1)ないし(3)の事項から、甲第7号証には、次の技術事項(以下「甲7発明」という。)が記載されているものと認められる。 「スピンドルによって保持された中空体に印刷するための印刷機において、 印刷機は、リニアモータを有する搬送手段と、スクリーン印刷またはインクジェット印刷を行う印刷ユニットを備えている印刷機。」 8 甲第8号証 甲第8号証には、次の事項が記載されている。(アキュート・アクセント記号は省略した。なお、日本語訳は、特許異議申立書に添付された甲第8号証の翻訳文を参考にした。) (1)「[0021] For solving this problem, various inventions have been made, which are particularly advantageous in combination. A first invention relates to directly imprinting the metal band. A second invention relates to forming an inner coating, closed in circumferential direction, after forming the laser seam at the metal band formed in a tube-shaped manner, namely prior to severing individual can shells. A third invention relates to the use of at least one digital printing system. All inventions are based on the recognition that slow and fast treatment steps can be combined, wherein however one has to do it without a linear inline-production and, for example, fast treatment steps have to be realized in a single line, and slower ones in parallel lines or simultaneously in several treatment stations. In addition, a metal band imprinted in a fast manner may also be wrapped into a coil, wherein such coils are further processed in parallel with slower treatments. The metal web of a coil may also be subdivided into partial webs by at least one longitudinal cut prior to further processing. In order to be able to satisfy versatile decorative wishes, optionally different printing processes are combined and are used at different places of can production, or a digital printing process is used only when filling the cans.」 ([0021] この問題を解決するために、特に組み合わせて有利となる様々な発明がなされている。第1の発明は、金属バンドへの直接インプリントに関する。 第2の発明は、管状に形成された金属バンドにレーザーシームを形成した後、すなわち個々の缶シェルを切断する前に、周方向に閉じた内側コーティングを形成することに関する。第3の発明は、少なくとも1つのデジタル印刷システムの使用に関する。すべての発明は、低速処理ステップと高速処理ステップを組み合わせることができるという認識に基づいているが、その場合、リニアインライン生産を使用せずに実行する必要があり、たとえば、高速処理ステップは単一ラインで実現する必要があり、低速処理ステップは複数の処理ステーションで並行のライン又は同時進行のラインで実現する必要がある。さらに、高速でインプリントされた金属バンドをコイルに巻き付けることもでき、そのようなコイルは、より遅い処理と並行してさらに処理される。コイルの金属ウェブは、さらに加工する前に、少なくとも1回の長手方向の切断によって部分ウェブに細分することもできる。多様な装飾的な要望を満たすことができるように、オプションで異なる印刷プロセスを組み合わせて、缶生産のさまざまな場所で使用したり、缶に充填するときにのみデジタル印刷プロセスを使用したりすることもできる。) (2)「[0064] In the field of digital printing, there are several printing technologies, such as ink jet printing, wax printing, thermo-transfer printing, digital screen printing, laser printing and so on, each with corresponding properties. When further processing after printing, there is also a broad choice of coating and protection possibilities. Preferred is digital printing using dry or liquid toners. Ink layers applied in hot condition are mostly very resistant. Wax printing, due to thick ink application, achieves high brilliancy and intensity. Digital screen printing is reasonably priced and fast. Inkjet imprints offer the best resolution and photo quality on special primers. Color laser printers are low priced to purchase and with respect to costs per printed decor.」 ([0064] デジタル印刷の分野では、インクジェット印刷、ワックス印刷、熱転写印刷、デジタルスクリーン印刷、レーザー印刷等、それぞれに対応する特性を持つ幾つかの印刷技術がある。印刷後にさらに加工する場合、コーティングと保護についても幅広い選択肢がある。好ましいのは、ドライトナーまたは液体トナーを使用するデジタル印刷である。高温状態で塗布されたインク層は、ほとんどの場合非常に耐久性がある。ワックス印刷は、インクを厚く塗布することにより、高い光沢と強度を実現する。デジタルスクリーン印刷は手頃な価格で迅速である。 インクジェット印刷は、特別なプライマー上で最高の解像度と写真品質を提供する。 カラーレーザープリンタは、購入価格も印刷装飾あたりのコストも低価格である。) (3)「[0092] FIG.1 shows a device, that enables efficient and versatile production of a decor of cans. Metal bands 1 are fed to a desired printing line. A printing device 2, having cylindrical printing plates, imprints the metal band with a desired number of colors. In doing so, decor surfaces and longitudinal register mark will come into existence wherein, in a first direction of the metal band, preferably in its longitudinal direction, the decor surfaces exhibit a height dimension of the can decor in the direction of the can's axis, and exhibit the circumferential can decor transversely to the first direction. The longitudinal register marks are situated in the area of the decor surfaces. In some cases, first a primer is applied by at least one printing plate. For intensely individualized prints or for small series, digital printing systems 3 are used. Since these print in a slower manner, it is suitable in some cases to imprint several bands in parallel. If required, a metal band imprinted by the printing device 2 is fed to a digital printing system 3 for applying small supplements.」 ([0092] 図1は、缶の装飾の効率的かつ多用途な製造を可能にする装置を示す。金属バンド1は所望の印刷ラインに供給される。円筒状の印刷版を有する印刷装置2は、金属バンドに所望の色数を印刷する。その際に、金属バンドの第1の方向、好ましくはその長手方向において、装飾表面および長手方向の見当マークが存在し、装飾表面は、缶の軸方向における缶装飾の高さ寸法を示し、そして、第1の方向に対して垂直方向に円周方向の缶装飾を示す。長手方向の見当マークは装飾面の領域にある。いくつかの場合において、第1のプライマーは、少なくとも1つの印刷版により塗布される。非常に個性的なプリントや小規模なシリーズのプリントには、デジタル印刷システム3が使用される。これらは印刷速度が遅いため、場合によっては、複数のバンドを並行して印刷するのに適している。 必要に応じて、印刷装置2によって印刷された金属バンドがデジタル印刷システム3に送られ、少量の補足が加えられる。) [0093] An imprinted metal band is supplied to a shaping device 4 including a first laser welding device and a severing device. Therein, the metal band is moved in its longitudinal direction and, in a shaping step, is formed continuously to a tube by bringing the lateral edge surfaces of the metal band in butted form together. In a welding step at the laser welding device, the shaped tube is closed in circumferential direction by a longitudinal laser seam at the butt joined lateral edge surfaces. In severing steps with a severing device 5, sections of the closed tube are severed. For cans to have an inner coating, after the welding device and before the severing device the metal band is provided with an inner coating, which adheres to the inner side of the closed tube, and which is closed in circumferential direction, thus covering the seam. ([0093] インプリントされた金属バンドは、第1のレーザ溶接装置および切断装置を含む成形装置4に供給される。そこで、金属バンドをその長手方向に移動させて、成形工程において、金属バンドの側端面を突き合わせて、管状に連続的に形成する。レーザ溶接装置の溶接工程では、成形された管は、突合せ接合された側端面における長手方向のレーザー継ぎ目によって円周方向に閉じられる。切断装置5を用いた切断工程では、密閉管の部分が切断される。 缶に内側コーティングを施す場合、溶接装置の後、切断装置の前に、金属バンドに内側コーティングが施される。内側コーティングは密管の内側に付着し、周方向に閉じられて継ぎ目が覆われる。) [0094] In an attachment device 6a can bottom is fixed at one front side of each can shell. Optionally, the upper can end too is formed in correspondence with the desired can type. A further digital printing system is designed to imprint a can shell over a printing height and the entire circumference of the can. To this end, all inks of the at least one digital printing system are applied on the can shell within a time interval in common and at one course of movement in common of the can shell relative to the further digital printing system 7 by corresponding printing heads in the respectively required proportions, wherein all printing heads of the further digital printing system are assigned to a printing area in common, in which printing area the can shell is located during the course of movement. The completely imprinted cans are filled in a filling installation 8 and are closed. ([0094] 取り付け装置6aでは、缶底部が各缶シェルの一方の前面に固定される。 任意選択で、上部缶端も、所望の缶タイプに対応して形成される。さらなるデジタル印刷システムは、缶の高さと全周にわたって缶シェルを印刷するように設計されている。この目的のために、少なくとも1つのデジタル印刷システムのすべてのインクは、共通の時間間隔内で、それぞれ必要とされる割合で対応する印刷ヘッドによってさらなるデジタル印刷システム7に対する缶シェルの共通の1コースの移動で缶シェル上に塗布される。ここで、さらなるデジタル印刷システムのすべての印刷ヘッドは共通の印刷領域に割り当てられ、その印刷領域内に缶シェルが移動中に配置される。完全に印刷された缶は、充填設備8に充填され、密閉される。)」 (4)「Fig.1 [図:0001401693000004.jpg] 」 (5)上記(3)の「必要に応じて、印刷装置2によって印刷された金属バンドがデジタル印刷システム3に送られ」との記載から、印刷装置2からデジタル印刷システム3へ、金属バンドが搬送されることが読み取れる。 (6)上記(5)の事項をふまえると、Fig.1の2から3へと結ばれる矢印は、金属バンドの搬送経路を示すと解される。 (7)上記(3)の「1つのデジタル印刷システムのすべてのインクは、共通の時間間隔内で、それぞれ必要とされる割合で対応する印刷ヘッドによってさらなるデジタル印刷システム7に対する缶シェルの共通の1コースの移動で缶シェル上に塗布される。」との記載から、デジタル印刷システム7に対して缶シェルが移動する、すなわち、搬送されることが読み取れる。 (8)上記(7)の事項をふまえると、Fig.1の7を通る矢印は、缶シェルの搬送経路を示すと解される。 (9)上記(6)及び(8)の事項から、Fig.1の矢印は、金属バンド、あるいは、缶シェルの搬送経路を示すと解される。 (10)上記(9)をふまえると、Fig.1から、2を有する搬送経路と3を有する搬送経路が合流した後に、4を有する搬送経路が看取できる。 そうすると、上記(1)ないし(10)の事項から、甲第8号証には、次の技術事項(以下「甲8技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「金属バンドが、印刷版を有する印刷装置を備える搬送経路またはインクジェット印刷を行うデジタル印刷システムを備える搬送経路に搬送され、両搬送経路が合流した後に成形装置に搬送される、缶の製造装置。」 9 甲第9号証 甲第9号証には、次の事項が記載されている。 (1)「【0010】 以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。 図1は、画像形成システム100を上方から眺めた場合の図である。 本実施形態における画像形成システム100は、飲料缶などに用いられる缶体10に対してデジタルの画像情報に基づき画像を形成する。ここで、この画像形成システム100には、インクジェット方式を利用して缶体10への画像形成を行う複数の画像形成装置200と、不図示の缶体製造工程にて製造された缶体10をこの複数の画像形成装置200へ順次供給する缶体供給機構300と、画像形成装置200により画像が形成された缶体10を排出する缶体排出機構400とから構成されている。また、画像形成システム100には、予め定められた処理プログラムに従ってデジタル演算処理を実行するCPUなどを備え、画像形成システム100に設けられた各装置、各機構部の制御を行う制御部500が設けられている。」 そうすると、上記(1)の事項から、甲第9号証には、次の技術事項(以下「甲9技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「インクジェット方式を利用して缶体への画像形成を行う画像形成装置。」 10 甲第10号証 甲第10号証には、次の事項が記載されている。 (1)「【0012】 以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。 図1は、缶体への画像形成を行うインクジェットヘッドを説明する図である。なお、同図(A)は、インクジェットヘッド等の正面図であり、同図(B)は、インクジェットヘッド等の右側面図であり、同図(C)は、インクジェットヘッドの底面(缶体の外周面に対向する対向面)を示した図である。」 そうすると、上記(1)の事項から、甲第10号証には、次の技術事項(以下「甲10技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「缶体への画像形成を行うインクジェットヘッド。」 11 甲第11号証 甲第11号証には、次の事項が記載されている。 (1)「【0012】 以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。 図1は、本発明の実施形態に係る容器20の斜視図である。 本実施形態に係る容器20は、いわゆる2ピース缶であり、飲料などの内容物が充填されている。また本容器20は、円筒状の容器本体21と、容器本体21の上部に取り付けられた蓋部材22とから構成されている。また容器20は、容器本体21の外周面に、商品名、商標名など他の商品と識別するための識別標記23を有している。また容器本体21の外周面には摩擦係数の異なる領域が2つ形成されている(後述)。さらに本実施形態では、容器本体21の外周面に円状のシールS(貼付材の一例)が貼付されている。なおこのようなシールSは、キャンペーンなどが実施される際に貼付されることが多い。」 (2)「【0054】 なお本容器20を製造する際には、上記と同様、搬送装置30による容器20の移動経路上に(移動経路の側方に)、オフセット印刷機やインクジェットプリンタなどの画像形成装置を設けておく。そして容器20の側方からこの容器20に対し、画像形成装置を用いて画像の形成(上記コード画像CDの形成)を行う。なお、図10に示すように、識別標記23の下部にコード画像CDを形成する場合(識別標記23が向く方向と同じ方向を向いたコード画像CDを形成する場合)は、図11(容器20の製造ラインの他の一例を示した図)に示すように、容器20の搬送ラインを直角方向に曲げておく。そして、識別標記23が正面を向いて搬送されてくる箇所(搬送ラインが屈曲する箇所、図中の破線で示す箇所)に、上記画像形成装置を設置し、識別標記23の下部に上記コード画像CDを形成する。」 そうすると、上記(1)及び(2)の事項から、甲第11号証には、次の技術事項(以下「甲11技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「2ピース缶である容器の移動経路上に、オフセット印刷機やインクジェットプリンタを設けること。」 12 甲第12号証 甲第12号証には、次の事項が記載されている。 (1)「【0012】 前述の課題を解決するために、本発明に係る缶の印刷方法は、缶の外周面の一部にインクを転写させずに抜き部を形成する抜き印刷を行う缶の印刷方法であって、各色毎に設けられた印刷版胴の外周面に、印刷する図柄に応じた各色の図柄パターンが形成された印刷版を配設するとともに、ブランケットホイールの外周面に、前記抜き部に対応する抜き部パターンを彫刻した印刷用ブランケットを配設し、前記印刷版に各色のインクを付着するとともに、前記印刷用ブランケットに複数の前記印刷版を接触させて各色のインクを写し取り、前記印刷用ブランケットを前記缶の外周面に接触させることで前記インクを前記缶の外周面に転写し、前記缶の外周面に前記抜き部を含む図柄を印刷することを特徴としている。」 (2)「【0027】 このような印刷缶40を印刷する缶の印刷装置10は、図1に示すように、インク付着機構11と、缶移動機構15とで概略構成されている。 インク付着機構11は、各色のインクをそれぞれ供給するインカーユニット20と、このインカーユニット20に接触してインクを写し取った後、缶胴41の外周面に接触して該インクを印刷する(付着させる)ブランケットホイール30とから構成される。 【0028】 インカーユニット20は、各色毎に設けられており、インク源21と、インク源21に接触してインクを受けるダクティングロール22と、このダクティングロール22に接続する中間ローラ23と、この中間ローラ23に接続するゴムローラ24と、このゴムローラ24に接続する印刷版胴26とからなる。本実施形態では、5色の図柄パターンに応じて、5つのインカ―ユニット20(20A、20B、20C、20D、20E)が配設されている。」 そうすると、上記(1)及び(2)の事項から、甲第12号証には、次の技術事項(以下「甲12技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「印刷版胴を有するインク付着機構と、缶移動機構とで構成される缶の印刷装置。」 13 甲第13号証 甲第13号証には、次の事項が記載されている。 (1)「【0044】 図1は、ステップ1から19において、飲料缶製造プロセスを示している。ステップ1では、未加工部材が打ち抜かれ、カップ状に深絞り加工される。これは、ステップ2において絞りしごき成形され、その開放端部がステップ3において切断ないしはトリミングされる。ステップ4において飲料缶から、残った潤滑剤が洗い流され、缶はオーブン内で乾燥される。その後、缶に、例えば白色の塗装剤で第1の外面塗装が施される(ステップ5)。続いて、ステップ6において飲料缶は乾燥のためにオーブンに運ばれる。次にステップ7において印刷機械内で飲料缶が凸版印刷方法で印刷され、続いて、ステップ8において、オーブン内で乾燥される。ステップ9におけるスプレーマシンを用いた第1の内面塗装およびステップ10におけるオーブン内での乾燥後に、飲料缶の開放端部がステップ11において絞られ、縁が設けられる。その後、ステップ12において、飲料缶の底面が底面塗装機械において塗装される。底面塗装は殊に、飲料缶がブリキ板から成る場合に必要である。」 そうすると、上記(1)の事項から、甲第13号証には、次の技術事項(以下「甲13技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「印刷機械内で飲料缶が凸版印刷方法で印刷されること。」 14 甲第14号証 甲第14号証には、次の事項が記載されている。 (1)「【0010】 以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。 図1は、印刷装置500を上方から眺めた場合の斜視図である。 印刷装置500には、缶体10を支持しながら移動する複数の移動ユニット550が設けられている。さらに、移動ユニット550を、直線状且つ一方向(図中矢印1Aで示す方向)へ移動させる第1直線部610が設けられている。また、移動ユニット550を、上記一方向とは反対方向(図中矢印1Bに示す方向)へ且つ直線状に移動させる第2直線部620が設けられている。」 (2)「【0022】 第1直線部610、第2直線部620の各々に設けられた移動機構560には、移動ユニット550の案内を行う案内部材561が設けられている。 案内部材561の内部には、電磁石(図1では不図示)が設けられている。また、移動ユニット550には、永久磁石(図1では不図示)が設けられている。本実施形態では、リニア機構を用いて、移動ユニット550を移動させる。 具体的には、案内部材561に設けられた電磁石によって発生する磁界と、移動ユニット550に設けられた永久磁石とによって、移動ユニット550に推進力が生じ、移動ユニット550が移動する。」 (3)「【0127】 図14は、缶体10の製造工程の全体を示した図である。言い換えると、図14は、印刷装置500を含んだ缶体製造システム900の全体を示した図である。 図14に示す缶体製造システム900では、製造工程の中ほどに、上述した印刷装置500が設けられている。言い換えると、インクジェット方式で缶体10への印刷を行う印刷装置500が設けられている。 さらに、この缶体製造システム900では、いわゆる刷版印刷により缶体10への印刷を行う刷版印刷装置950が設けられている。刷版印刷装置950では、版に付着させたインクを、この版から缶体10に転写して、缶体10への印刷を行う。 【0128】 この缶体製造システム900では、缶体の移動経路900Aが設けられている。ここで、この移動経路900Aは、分岐部900Bにて複数の分岐経路900Cに分岐するとともに、この分岐部900Bよりも下流側にて合流する。 さらに、缶体製造システム900では、複数設けられた分岐経路900Cのうちの一の分岐経路900Cに印刷装置500が設けられ、他の分岐経路900Cに刷版印刷装置950が設けられている。 【0129】 さらに、分岐部900Bには、上流側から搬送されてきた缶体10を、上記一の分岐経路900Cあるいは上記他の分岐経路900Cに振り分けられる振り分け機構(不図示)が設けられており、上流側から搬送されてきた缶体10は、印刷装置500および刷版印刷装置950の何れかに振り分けられる。印刷装置500あるいは刷版印刷装置950による缶体10への印刷が終了すると、缶体10はさらに下流側へ搬送されていく。 印刷装置500および刷版印刷装置950の上流側には、上流側工程900Xが設けられ、印刷装置500および刷版印刷装置950の下流側には、下流側工程900Yが設けられている。 【0130】 ここで、本実施形態では、上流側工程900Xおよび下流側工程900Yの共用化を図れる。言い換えると、本実施形態では、印刷装置500および刷版印刷装置950の各々に対応させて上流側工程900Xおよび下流側工程900Yを設けないで済み、1つの上流側工程900Xおよび下流側工程900Yだけで、インクジェットによる印刷が行われた缶体10、刷版印刷が行われた缶体10の製造を行える。 上流側工程900Xおよび下流側工程900Yを共用化すると、コストを低減でき、さらに、缶体製造システム900の専有面積の低減を図れる。 【0131】 なお、上流側工程900Xには、アンコイラー(UC)、ルブリケーター(LU)、カッピングプレス(CP)、ボディメーカー(BM)、トリマー(TR)、ウォッシャー(WS)の各工程が設けられている。 アンコイラー(UC)では、コイルに巻いたアルミニウム薄板を巻き解く。ルブリケーター(LU)では、このアルミニウム薄板に潤滑油を塗布する。カッピングプレス(CP)では、円形のブランク材を打ち抜き、さらに絞り加工を行いカップ状素材を成形する。 【0132】 ボディメーカー(BM)では、上記カップ状素材に対して絞り加工およびしごき加工を施して、周壁を予め定められた厚さにする。さらに底部をドーム状に成形する。トリマー(TR)では、周壁上部の耳部を切り揃える。これにより、円筒状の缶体10が成形される。ウォッシャー(WS)では、缶体10を洗浄し、潤滑油やその他の付着物を除去する。 【0133】 また、下流側工程900Yには、ボトムコーター(BTC)、ピンオーブン(PO)、インサイドスプレー(INS)、ベークオーブン(BO)、ネッカー・フランジャー(QNF)、ディフェクティブキャンテスター(DCT)、ライトテスター(LT)、パレタイザー(PT)の各工程が設けられている。」 そうすると、上記(1)ないし(3)の事項から、甲第14号証には、次の技術事項(以下「甲14発明」という。)が記載されているものと認められる。 「缶体の移動経路が設けられた缶体製造システムにおいて、 缶体の移動経路は、分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、この分岐部よりも下流側にて合流し、 分岐経路のうちの一の分岐経路にインクジェット方式で印刷を行う印刷装置が設けられ、他の分岐経路に刷版印刷装置が設けられており、 印刷装置には、缶体を支持しながら移動する複数の移動ユニットが設けられており、移動ユニットの案内を行う案内部材に設けられた電磁石によって発生する磁界と、移動ユニットに設けられた永久磁石とによって移動ユニットに推進力が生じるリニア機構を用いて、移動ユニットが移動する 缶体製造システム。」 第5 当審の判断 1 申立理由1(分割要件違反を前提とする新規性欠如) 申立人は、本件特許発明2ないし4が、新規性が欠如していることの前提として、分割要件違反を主張しているので、以下検討する。 (1)原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「原出願当初明細書等」という。)の記載 本件特許に係る原出願当初明細書等(甲14参照)には、次の記載がある。 ア「【0128】 この缶体製造システム900では、缶体の移動経路900Aが設けられている。ここで、この移動経路900Aは、分岐部900Bにて複数の分岐経路900Cに分岐するとともに、この分岐部900Bよりも下流側にて合流する。 さらに、缶体製造システム900では、複数設けられた分岐経路900Cのうちの一の分岐経路900Cに印刷装置500が設けられ、他の分岐経路900Cに刷版印刷装置950が設けられている。 【0129】 さらに、分岐部900Bには、上流側から搬送されてきた缶体10を、上記一の分岐経路900Cあるいは上記他の分岐経路900Cに振り分けられる振り分け機構(不図示)が設けられており、上流側から搬送されてきた缶体10は、印刷装置500および刷版印刷装置950の何れかに振り分けられる。印刷装置500あるいは刷版印刷装置950による缶体10への印刷が終了すると、缶体10はさらに下流側へ搬送されていく。 印刷装置500および刷版印刷装置950の上流側には、上流側工程900Xが設けられ、印刷装置500および刷版印刷装置950の下流側には、下流側工程900Yが設けられている。 【0130】 ここで、本実施形態では、上流側工程900Xおよび下流側工程900Yの共用化を図れる。言い換えると、本実施形態では、印刷装置500および刷版印刷装置950の各々に対応させて上流側工程900Xおよび下流側工程900Yを設けないで済み、1つの上流側工程900Xおよび下流側工程900Yだけで、インクジェットによる印刷が行われた缶体10、刷版印刷が行われた缶体10の製造を行える。 上流側工程900Xおよび下流側工程900Yを共用化すると、コストを低減でき、さらに、缶体製造システム900の専有面積の低減を図れる。 【0131】 なお、上流側工程900Xには、アンコイラー(UC)、ルブリケーター(LU)、カッピングプレス(CP)、ボディメーカー(BM)、トリマー(TR)、ウォッシャー(WS)の各工程が設けられている。 アンコイラー(UC)では、コイルに巻いたアルミニウム薄板を巻き解く。ルブリケーター(LU)では、このアルミニウム薄板に潤滑油を塗布する。カッピングプレス(CP)では、円形のブランク材を打ち抜き、さらに絞り加工を行いカップ状素材を成形する。」 イ「【0133】 また、下流側工程900Yには、ボトムコーター(BTC)、ピンオーブン(PO)、インサイドスプレー(INS)、ベークオーブン(BO)、ネッカー・フランジャー(QNF)、ディフェクティブキャンテスター(DCT)、ライトテスター(LT)、パレタイザー(PT)の各工程が設けられている。 【0134】 ボトムコーター(BTC)では、缶体10の底面のうちの接地部分に対して塗装を行う。ピンオーブン(PO)では、缶体10を加熱し、缶体10の外周面の印刷および缶底の塗装を焼き付ける。なお、本実施形態では、ボトムコーター(BTC)、ピンオーブン(PO)は、印刷装置500および刷版印刷装置950の各々に対応するように二組設けられているが、ボトムコーター(BTC)、ピンオーブン(PO)についても、一組だけ設け、設備の共用化を図ってもよい。」 ウ「【図14】 [図:0001401693000005.jpg] 」 (2)分割要件について 本件特許発明2ないし4が、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであるかどうかについて、原出願当初明細書等との関係で、新たな技術的事項を導入したか否かの観点で検討する。 ア 本件特許発明2及び3 本件特許発明2及び3の「処理」について、原出願当初明細書等に記載された各処理を具体的に列挙して記載するか、包括的に記載するかしか方法がないところ、包括的に「共通の処理」と記載したと認められる。 当該記載について、上記(1)ア及びイから、原出願当初明細書等には、上流側工程及び下流側工程を1つとして共用化することにより、コストを低減でき、さらに、缶体製造システムの専有面積の低減を図れることが記載されていると認められる。 そして、コストを低減し、さらに、缶体製造システムの専有面積の低減を図るために、上流側工程及び下流側工程を共用化することが技術的な特徴といえるところ、「共有化」する行程が何であるかは、当該技術的な特徴には関係しない。 また、本件特許発明2及び3の「処理」は、原出願当初明細書等に記載された処理以外の、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理といった処理を含み得るものの、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理は、缶体製造システムにおいてごく一般的に行われている処理であるから、本件特許発明2及び3の「処理」は、当然、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理をも想定していると認められる。 よって、本件特許発明2及び3の「処理」が、原出願当初明細書等に記載された処理以外のものを含み得たとしても、それによって新たな作用効果が生じるものでもないし、本件特許発明の「缶体製造システムの小型化を図る」なる効果を損なうものでもない。 そうすると、本件特許発明2及び3は、上流側工程及び下流側工程を1つとして共用化するという技術的事項が「共通の処理」として記載されているにすぎないため、新たな技術的事項を導入するものではない。 イ 本件特許発明4 本件特許発明4の「処理」について、原出願当初明細書等に記載された各処理を具体的に列挙して記載するか、包括的に記載するかしか方法がないところ、包括的に「処理」と記載したと認められる。 当該記載について、上記(1)ア及びイから、原出願当初明細書等には、分岐経路以外の経路を1つとすることにより、コストを低減でき、さらに、缶体製造システムの専有面積の低減を図れることが記載されていると認められる。 そして、コストを低減し、さらに、缶体製造システムの専有面積の低減を図るために、分岐経路以外の経路を1つとすることが技術的な特徴といえるところ、「処理」が具体的に何であるかは、当該技術的な特徴には関係しない。 また、本件特許発明4の「処理」は、原出願当初明細書等に記載された処理以外の、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理といった処理を含み得るものの、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理は、缶体製造システムにおいてごく一般的に行われている処理であるから、本件特許発明4の「処理」は、当然、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理をも想定していると認められる。 よって、本件特許発明4の「処理」が、原出願当初明細書等に記載された処理以外のものを含み得たとしても、それによって新たな作用効果が生じるものでもないし、本件特許発明の「缶体製造システムの小型化を図る」なる効果を損なうものでもない。 そうすると、本件特許発明4の「処理」の記載によって、新たな技術的事項を導入するものではない。 ウ 申立人の主張について (ア)申立人は、本件特許発明2ないし4の「処理」は具体的な処理が何ら特定されておらず、したがって、例えば2ピース缶TULCにおけるリドロープレスやボトル缶の口部成形などを含む、ありとあらゆる処理を包含するものと解されるところ、原出願当初明細書等には、分岐部の上流側の処理として、上流側工程が設けられることが記載され、前記上流側工程には、UC、LU、CP、BM、TR、WSの各工程が設けられていることが記載されているのみであり、分岐部よりも上流側で、これら以外の処理が行い得ることは記載も示唆もされていない旨、及び、印刷機よりも下流側の処理として、下流側工程が設けられることが記載され、前記下流側工程には、BTC、PO、INS、BO、QNF、DCT、LT、PTの各工程が設けられていること記載されているのみであり、合流部よりも下流側で、これら以外の処理が行い得ることは記載も示唆もされていない旨主張する。(申立書60頁16行~61頁11行) しかしながら、「処理」と記載することが、新たな技術的事項を導入するものでないことは、上記ア及びイで検討したとおりである よって、申立人の主張を採用することはできない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件特許発明2ないし4は、原出願当初明細書等との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであり、本件特許に係る出願は、当該原出願の一部を適法に新たな特許出願したものといえ、分割要件に違反するとする事情は認められない。 (3)新規性について 上記(2)のとおり、本件特許に係る出願は、分割要件を満たしており、出願日の遡及が認められるから、本件特許に係る原出願の公開公報(甲第14号証)は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物にはあたらない。 したがって、本件特許発明1ないし4は、甲第14号証を主引用例として、新規性を否定することはできない。 (4)まとめ したがって、本件特許発明1ないし4は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないので、本件特許発明1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2-1(甲1を主引用文献とする進歩性欠如) (1)本件特許発明1について ア 対比 (ア)本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「缶」、及び、「トーンジェットシステム」は、それぞれ、前者の「缶体」、及び、「『インクジェット方式で』『印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (イ)後者の「缶」が「搬送手段」により「進む」経路と、「トーンジェットシステムで搬送」される経路は、前者の「缶体が移動する移動経路」に相当する。 (ウ)後者の「トーンジェットシステムで搬送及び印刷された後、オフセット印刷システムの出力と統合され」る経路においては、印刷後に統合されるのであるから、統合の場所は「下流側」であるといえる。 そうすると、前者の「缶体が移動する移動経路であって、分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する移動経路」と、後者の「トーンジェットシステムで搬送及び印刷された後、オフセット印刷システムの出力と統合され」る経路とは、「缶体が移動する移動経路であって」、「下流側にて合流する」点で共通する。 (エ)後者の「オフセット印刷システム」は、その出力が「トーンジェットシステムで搬送及び印刷された」缶と統合されて、「下流の形状形成プロセスを経」ることから、缶に印刷していることは明らかであるので、前者の「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」に相当する。 (オ)前者の「一の分岐経路にて行われる缶体の印刷の際にはリニア機構が用いられて缶体の搬送が行われる」ことと、後者の「缶が生産ラインから離され、トーンジェットシステムで搬送及び印刷され」ることとは、「インクジェット印刷装置」で「缶体」へ印刷を行う際に「缶体の搬送を行う」点で共通する。 (カ)後者の「飲料缶印刷システム」は、「形状形成プロセス」を行うことから、前者の「缶体製造システム」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「缶体が移動する移動経路であって、下流側にて合流する移動経路と、 缶体の搬送を行うとともにインクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置と、 刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置と、 を備え、 インクジェット印刷装置による缶体の印刷の際には缶体の搬送が行われる、 缶体製造システム。」 <相違点1> 本件特許発明1は、「分岐部にて複数の分岐経路に分岐する」「移動経路」を備え、「複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路に設けられ」る「インクジェット印刷装置」と、「複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路に設けられ」る「刷版印刷装置」とを備え、「複数の分岐経路に含まれる前記一の分岐経路にて缶体への印刷が行われる際の印刷方式と、前記他の分岐経路にて缶体への印刷が行われる際の印刷方式とが異なって」いるのに対して、甲1発明は、「生産ラインから離され」た「トーンジェットシステム」と、「オフセット印刷システム」を備え、缶が「トーンジェットシステムで搬送及び印刷された後、オフセット印刷システムの出力と統合され」、「一緒に進む」点。 <相違点2> トーンジェットシステムでの缶の搬送について、本件特許発明1は、「缶体を支持し永久磁石を備えた移動ユニットを電磁石を用いて移動させるリニア機構を用い」るのに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点。 <相違点3> トーンジェットシステムでの缶の印刷の際の搬送について、本件特許発明1は、「リニア機構が用いられ」るのに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点。 イ 相違点についての判断 (ア)相違点1について a 甲2発明 (a)甲2発明の「缶体」、及び、「缶体の生産ライン」は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、及び、「缶体製造システム」に相当する。 (b)甲2発明の「ストリーム」は、「缶体」が流れていると解されることから、本件特許発明1の「移動経路」に相当する。 (c)甲2発明の「単一のストリームは2つの異なるストリームに分割され」る箇所は、本件特許発明1の「分岐部」に相当する。 (d)甲2発明の「2つの異なるストリームが単一のストリームに併合される」箇所は、「併合」が「分割」よりも後になされることから、「単一のストリームは2つの異なるストリームに分割され」る箇所よりも下流側にあるといえる。 そうすると、甲2発明の「『単一のストリームは2つの異なるストリームに分割され』、『2つの異なるストリームが単一のストリームに併合される』」ことは、本件特許発明1の「分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する」ことに相当する。 (e)甲2発明の「2つの異なるストリーム」は、前者の「複数の分岐経路」に相当する。 そして、甲2発明の「2つの異なるストリーム」のうちの一方は、本件特許発明1の「複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路」に相当し、甲2発明の「2つの異なるストリーム」のうちの他方は、本件特許発明1の「複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路」に相当する。 (f)甲2発明の「デコレータ」は、「缶体」に「カラーパターンの適用」を行うものであるから、本件特許発明1の「インクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」と、甲2発明の「デコレータ」とは、「『缶体への印刷を行う』『印刷装置』」の点で一致し、本件特許発明1の「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」と、甲2発明の「デコレータ」とは、「『缶体への印刷を行う』『印刷装置』」の点で一致する。 (g)よって、甲2には、上記相違点1のうち、「分岐部にて複数の分岐経路に分岐する」「移動経路」、及び、「複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路に設けられ」る「印刷装置」と、「複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路に設けられ」る「印刷装置」とを備えることが示されているといえるものの、分岐したそれぞれの経路に備えられる「デコレータ」が、それぞれ、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置である点は記載も示唆もされていない。 b 甲3発明 (a)甲3発明の「缶体」、及び、「移送経路」は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、及び、「移動経路」に相当する。 (b)甲3発明の「缶体の移送経路が分岐」する箇所は、本件特許発明1の「分岐部」に相当する。 (c)甲3発明の「分岐した移送経路が合流する」箇所は、「合流」が「分岐」よりも後になされることから、「缶体の移送経路が分岐」する箇所よりも下流側にあるといえる。 そうすると、甲3発明の「『移送経路が分岐し』、『分岐した移送経路が合流する』」ことは、本件特許発明1の「分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する」ことに相当する。 (d)甲3発明の「分岐した移送経路のうち一方の経路」は、本件特許発明1の「複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路」に相当し、甲3発明の「『分岐した移送経路のうち』『他方の移送経路』」は、本件特許発明1の「複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路」に相当する。 (e)甲3発明の「第1プリンター(PR1)」は、「缶体」を対象とするものであるから、本件特許発明1の「インクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」と、甲3発明の「プリンター」とは、「『缶体への印刷を行う』『印刷装置』」の点で一致する。 (f)甲3発明の「第2プリンター(PR2)」は、「缶体」を対象とするものであるから、本件特許発明1の「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」と、甲3発明の「第2プリンター(PR2)」とは、「『缶体への印刷を行う』『印刷装置』」の点で一致する。 (g)そうすると、本件特許発明1の「缶体製造システム」と、甲3発明の「缶体の製造ライン」とは、「分岐部にて分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する移動経路」を備え、「複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路に設けられ」、「缶体への印刷を行う印刷装置」と、「複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路に設けられ」、「缶体への印刷を行う印刷装置」とを備える点で一致する。 (h)よって、甲3には、上記相違点1のうち、「分岐部にて複数の分岐経路に分岐する」「移動経路」、及び、「複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路に設けられ」る「印刷装置」と、「複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路に設けられ」る「印刷装置」とを備えることが示されているといえるものの、分岐したそれぞれの経路に備えられる「プリンター」が、それぞれ、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置である点は記載も示唆もされていない。 c 甲4発明 (a)甲4発明の「缶」、「第1経路101」、「第2経路102」、「搬送経路」及び、「缶を製造するためのライン」、は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、「分岐経路」、「分岐経路」、「移動経路」及び、「缶体製造システム」に相当する。 (b)甲4発明の「搬送経路」が「第1経路101」と「第2経路102」に「分岐」する箇所は、本件特許発明1の「分岐部」に相当する。 (c)甲4発明の「2本の経路101、102が合流」箇所は、「合流」が「分岐」よりも後になされることから、「搬送経路」が「第1経路101」と「第2経路102」に「分岐」する箇所よりも下流側にあるといえる。 そうすると、甲4発明の「『搬送経路』が『第1経路101』と『第2経路102』に『分岐』し、『合流』する」ことは、本件特許発明1の「分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する」ことに相当する。 (d)甲4発明の「第1印刷ステーション151」は、「缶」を対象とするものであるから、本件特許発明1の「インクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」と、甲4発明の「第1印刷ステーション151」とは、「『缶体への印刷を行う』『印刷装置』」の点で一致する。 (e)甲4発明の「第2印刷ステーション152」は、「缶体」を対象とするものであるから、本件特許発明1の「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」と、甲4発明の「第2印刷ステーション152」とは、「『缶体への印刷を行う』『印刷装置』」の点で一致する。 (f)よって、甲4には、上記相違点1のうち、「分岐部にて複数の分岐経路に分岐する」「移動経路」、及び、「複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路に設けられ」る「印刷装置」と、「複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路に設けられ」る「印刷装置」とを備えることが示されているといえるものの、分岐したそれぞれの経路に備えられる「印刷ステーション」が、それぞれ、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置である点は記載も示唆もされていない。 d まとめ 甲1発明では、トーンジェットシステム及びオフセット印刷システムまで缶を移送しているか不明であり、また、甲1発明では異なる種類の印刷システムが設けられているところ、甲2ないし4発明は、異なる種類の印刷装置を使用するものでもないため、甲1発明に対し甲2ないし4発明を適用して、搬送経路が分岐し、分岐したそれぞれの経路に異なる種類のプリンタを備え、それぞれの経路で缶体に印刷するような搬送経路で缶を移送する構成とする動機付けがあるとはいえない。 そして、上記相違点1の構成とすることで、缶体製造システムの小型化を図ることができる(本件特許明細書【0004】参照)という、効果を奏するものである。 (イ)相違点2について a 甲5発明 (a)甲5発明の「インクジェット印刷を行う印刷ヘッドユニット」、「リニアモータコイル」、「キャリッジ」、及び、「磁気素体」は、それぞれ、本件特許発明1の「インクジェット印刷装置」、「電磁石」、「移動ユニット」、及び、「永久磁石」に相当する。 (b)甲5発明の「磁気素体」は、「リニアモータ用の磁石トラックを形成する」ものであるから、本件特許発明1の「リニア機構」と、甲5発明の「リニアモータコイルを設けたキャリッジと、リニアモータ用の磁石トラックを形成する磁気素体を設けたレーン」とは、「永久磁石」と「電磁石を用いて移動させるリニア機構」により立体物を搬送する点で一致する。 (c)しかしながら、甲5には、上記相違点2のうち、インクジェット印刷装置に、「永久磁石」と「電磁石を用いて移動させるリニア機構」を適用することが示されているといえるものの、「キャリッジ」に「磁気素体」を備える点は記載も示唆もされていない。 b 甲6技術事項 (a)甲6技術事項の「缶」、及び、「基本ユニット」は、本件特許発明1の「缶体」、及び、「移動ユニット」に相当する。 (b)甲6技術事項の「リニアモータの固定子」は、「通電する」ことにより「電磁力が生じ」ることから、本件特許発明1の「電磁石」に相当する。 (c)甲6技術事項の「リニアモータの固定子」から生じた「電磁力」が、「基本ユニットに作用」することから、本件特許発明1の「リニア機構」と、甲6技術事項の「基本ユニット」と、「リニアモータの固定子とから構成されている缶の搬送装置」とは、「電磁石を用いて移動させるリニア機構」により立体物を搬送する点で一致する。 (d)しかしながら、甲6には、上記相違点2のうち、「電磁石を用いて移動させるリニア機構」により缶体を搬送することが示されているといえるものの、「基本ユニット」に永久磁石を備える点は記載も示唆もされていない。 c 甲7発明 (a)甲7発明の「リニアモータ」、及び、「インクジェット印刷を行う印刷ユニット」は、本件特許発明1の「電磁石」、及び、「インクジェット印刷装置」に相当する。 (b)甲7発明の「搬送手段」は、「リニアモータを有する」ものであるから、本件特許発明1の「リニア機構」と、甲7発明の「リニアモータを有する搬送手段」とは、「電磁石を用いて移動させるリニア機構」により立体物を搬送する点で一致する。 (c)しかしながら、甲7には、上記相違点2のうち、インクジェット印刷装置に、「電磁石を用いて移動させるリニア機構」を適用することが示されているといえるものの、「搬送手段」に永久磁石を備える点は記載も示唆もされていない。 d まとめ (a)甲5には、「キャリッジ」に「磁気素体」を備える点が、甲6には、「基本ユニット」に永久磁石を備える点が、甲7には、「搬送手段」に永久磁石を備える点が記載も示唆もされていない。 (b)したがって、仮に甲1発明に甲5発明、甲6技術事項、及び、甲7発明を適用したとしても、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 そして、上記相違点2の構成とすることで、高速搬送ができ、構造がシンプルであり、また、省スペース化も可能である(本件特許明細書【0023】参照)という、効果を奏するものである。 (ウ)相違点3について 甲1発明の「トーンジェットシステム」と、甲5発明、甲6技術事項、及び、甲7発明(以下「周知の技術事項」という。)は、立体物を搬送する点で機能が共通しているので、上記周知の技術事項を適用する動機付けがあるといえる。 そうすると、甲1発明の「トーンジェットシステム」で「缶」を「搬送」する手段として、上記周知の技術事項を適用し、上記相違点3に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。 (エ)小括 よって、本件特許発明1は、甲1発明、及び、甲2ないし甲5発明、甲6技術事項、並びに、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明2ないし4について 本件特許発明2ないし4は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1に対して、さらなる発明特定事項を付加したものである。 よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件特許発明2ないし4は、特許法第29条第2項の規定に反してなされたものではない。 (3)まとめ したがって、本件特許発明1ないし4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないので、本件特許発明1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2-1によっては取り消すことはできない。 3 申立理由2-2(甲2を主引用文献とする進歩性欠如) (1)本件特許発明1について ア 対比 (ア)本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、後者の「缶体」、及び、「缶体の生産ライン」、は、それぞれ、前者の「缶体」、及び、「缶体製造システム」に相当する。 (イ)後者の「ストリーム」は、「缶体」が流れていると解されることから、前者の「移動経路」に相当する。 (ウ)後者の「単一のストリームは2つの異なるストリームに分割され」る箇所は、前者の「分岐部」に相当する。 (エ)後者の「2つの異なるストリームが単一のストリームに併合される」箇所は、「併合」が「分割」よりも後になされることから、「単一のストリームは2つの異なるストリームに分割され」る箇所よりも下流側にあるといえる。 そうすると、後者の「『単一のストリームは2つの異なるストリームに分割され』、『2つの異なるストリームが単一のストリームに併合される』」ことは、前者の「分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する」ことに相当する。 (オ)後者の「2つの異なるストリーム」は、前者の「複数の分岐経路」に相当する。 そして、後者の「2つの異なるストリーム」のうちの一方は、前者の「複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路」に相当し、後者の「2つの異なるストリーム」のうちの他方は、前者の「複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路」に相当する。 (カ)後者の「デコレータ」は、「缶体」に「カラーパターンの適用」を行うものであるから、前者の「インクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」と、後者の「デコレータ」とは、「『缶体への印刷を行う』『印刷装置』」の点で一致する。 (キ)後者の「デコレータ」は、「缶体」に「カラーパターンの適用」を行うものであるから、前者の「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」と、後者の「デコレータ」とは、「『缶体への印刷を行う』『印刷装置』」の点で一致する。 そうすると、本件特許発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「缶体が移動する移動経路であって、分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する移動経路と、 前記複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路に設けられ、当該缶体への印刷を行う印刷装置と、 前記複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路に設けられ、缶体への印刷を行う印刷装置と、 を備える、 缶体製造システム。」 <相違点1> 本件特許発明1は、「複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路に設けられ」る「缶体を支持し永久磁石を備えた移動ユニットを電磁石を用いて移動させるリニア機構を用いて当該缶体の搬送を行うとともにインクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」と、「複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路に設けられ」る「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」とを備え、「複数の分岐経路に含まれる前記一の分岐経路にて缶体への印刷が行われる際の印刷方式と、前記他の分岐経路にて缶体への印刷が行われる際の印刷方式とが異なって」いるのに対して、甲2発明では、そのような特定がされていない点。 <相違点2> 本件特許発明1は、「一の分岐経路にて行われる缶体の印刷の際にはリニア機構が用いられて缶体の搬送が行われる」のに対して、甲2発明では、そのような特定がされていない点。 イ 相違点についての判断 (ア)相違点1について a 甲1発明 (a)甲1発明の「缶」、及び、「トーンジェットシステム」は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、及び、「『インクジェット方式で』『印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)甲1発明の「缶」が「搬送手段」により「進む」経路と、「トーンジェットシステムで搬送」される経路は、本件特許発明1の「缶体が移動する移動経路」に相当する。 (c)甲1発明の「トーンジェットシステムで搬送及び印刷された後、オフセット印刷システムの出力と統合され」る経路においては、印刷後に統合されるのであるから、統合の場所は「下流側」であるといえる。 そうすると、本件特許発明1の「缶体が移動する移動経路であって、分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する移動経路」と、甲1発明の「トーンジェットシステムで搬送及び印刷された後、オフセット印刷システムの出力と統合され」る経路とは、「缶体が移動する移動経路であって」、「下流側にて合流する」点で共通する。 (d)甲1発明の「オフセット印刷システム」は、その出力が「トーンジェットシステムで搬送及び印刷された」缶と統合されて、「下流の形状形成プロセスを経」ることから、缶に印刷していることは明らかであるので、本件特許発明1の「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」に相当する。 (e)本件特許発明1の「一の分岐経路にて行われる缶体の印刷の際にはリニア機構が用いられて缶体の搬送が行われる」ことと、甲1発明の「缶が生産ラインから離され、トーンジェットシステムで搬送及び印刷され」ることとは、「インクジェット印刷装置」で「缶体」へ印刷を行う際に「缶体の搬送を行う」点で共通する。 (f)よって、甲1には、上記相違点1のうち、一方の移動経路に「缶体の搬送を行うとともにインクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」を備え、他方の移動経路に「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」を備えることが示されているといえるものの、経路が分岐したものである点、及び、トーンジェットシステムにおいてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (g)甲1発明は、甲2発明のように缶の移動経路が分岐するものとはいえない上に、甲2発明は、甲1発明のように「デコレータ」が異なる印刷方式を採用するといったものでもないため 、甲2発明に甲1発明を適用する動機付けがあるとはいえない。 b 甲8技術事項 (a)甲8技術事項の「印刷版を有する印刷装置」、及び、「インクジェット印刷を行うデジタル印刷システム」は、それぞれ、本件特許発明1の「『刷版方式で』『印刷を行う刷版印刷装置』」、及び、「『インクジェット方式で』『印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)甲8技術事項の「印刷版を有する印刷装置を備える搬送経路及びインクジェット印刷を行うデジタル印刷システムを備える搬送経路」が合流する経路においては、印刷後に合流されるのであるから、合流の場所は「下流側」であるといえる。 そうすると、本件特許発明1の「缶体が移動する移動経路であって、分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する移動経路」と、甲8技術事項の「印刷版を有する印刷装置を備える搬送経路及びインクジェット印刷を行うデジタル印刷システムを備える搬送経路」が「合流」する経路とは、物体が「移動する移動経路であって」、「下流側にて合流する」点で共通する。 (c)本件特許発明1の「一の分岐経路にて行われる缶体の印刷の際にはリニア機構が用いられて缶体の搬送が行われる」ことと、甲8技術事項の「金属バンド」が「インクジェット印刷を行うデジタル印刷システムを備える搬送経路に搬送され」ることとは、「インクジェット印刷装置」で物体へ印刷を行う際に、物体の搬送を行う点で共通する。 (d)よって、甲8には、上記相違点1のうち、一方の移動経路に「搬送を行うとともにインクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」を備え、他方の移動経路に「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」を備えることが示されているといえるものの、搬送経路が分岐したものである点、及び、インクジェット印刷を行うデジタル印刷システムにおいてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (e)甲8技術事項は、甲2発明のように缶の移動経路が分岐するものとはいえない上に、甲2発明は、甲8技術事項のように「デコレータ」が異なる印刷方式を採用するといったものでもないため 、甲2発明に甲1発明を適用する動機付けがあるとはいえない。 c 甲9技術事項 (a)甲9技術事項の「インクジェット方式を利用して缶体への画像形成を行う画像形成装置」は、本件特許発明1の「『インクジェット方式で』『缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)よって、甲9には、上記相違点1のうち、インクジェット方式で缶体への画像形成を行うことが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、仮に甲2発明に甲9技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 d 甲10技術事項 (a)甲10技術事項の「缶体への画像形成を行うインクジェットヘッド」は、本件特許発明1の「『インクジェット方式で』『缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)よって、甲10には、上記相違点1のうち、インクジェットヘッドで缶体への印刷を行うことが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、仮に甲2発明に甲10技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 e 甲11技術事項 (a)甲11技術事項の「2ピース缶」、「オフセット印刷機」、及び、「インクジェットプリンタ」は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」、及び、「『インクジェット方式で』『缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)よって、甲11には、上記相違点1のうち、缶体の移動経路上に、缶体の印刷を行うインクジェット印刷装置や刷版印刷機を設けることが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、仮に甲2発明に甲11技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 f 甲12技術事項 (a)甲12技術事項の「缶」、及び、「印刷版胴を有するインク付着機構」は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、及び、「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」に相当する。 (b)よって、甲12には、上記相違点1のうち、刷版印刷機を設けることが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、仮に甲2発明に甲12技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 g 甲13技術事項 (a)甲13技術事項の「飲料缶」、及び、「『凸版印刷方法で印刷』する『印刷機械』」は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、及び、「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」に相当する。 (b)よって、甲13には、上記相違点1のうち、刷版印刷機を設けることが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、仮に甲2発明に甲13技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 h まとめ 以上より、甲2発明に、甲1発明及び甲8ないし甲13技術事項を適用しても相違点1に係る本件特許発明1の構成にならない。 そして、上記相違点1の構成とすることで、缶体製造システムの小型化を図ることができ、高速搬送ができ、構造がシンプルである(本件特許明細書【0004】、【0023】参照)という、効果を奏するものである。 (イ)相違点2について 上記2(1)イ(ウ)のとおり、甲5発明、甲6技術事項、及び、甲7発明のように、リニア機構を用いて立体物を搬送することは、周知の技術事項と認められる。 しかしながら、本件特許発明1において、「一の分岐経路にて行われる缶体の印刷」には「インクジェット印刷装置」が用いられるところ、上記(ア)のとおり、甲2発明に甲1発明を適用する動機付けがあるとはいえず、また、甲2発明に甲8技術事項を適用する動機付けがあるともいえない。 そして、上記相違点2の構成とすることで、高速搬送ができ、構造がシンプルであり、また、省スペース化も可能である(本件特許明細書【0023】参照)という、効果を奏するものである。 (ウ)小括 よって、本件特許発明1は、甲2発明、並びに、甲1発明、甲5発明、甲6技術事項、甲7発明、及び、甲8ないし甲13技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明2ないし4について 本件特許発明2ないし4は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1に対して、さらなる発明特定事項を付加したものである。 よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件特許発明2ないし4は、特許法第29条第2項の規定に反してなされたものではない。 (3)まとめ したがって、本件特許発明1ないし4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないので、本件特許発明1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2-2によっては取り消すことはできない。 4 申立理由2-3(甲3を主引用文献とする進歩性欠如) (1)本件特許発明1について ア 対比 (ア)本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、後者の「缶体」、「移送経路」及び、「缶体の製造ライン」、は、それぞれ、前者の「缶体」、「移動経路」及び、「缶体製造システム」に相当する。 (イ)後者の「缶体の移送経路が分岐」する箇所は、前者の「分岐部」に相当する。 (ウ)後者の「分岐した移送経路が合流する」箇所は、「合流」が「分岐」よりも後になされることから、「缶体の移送経路が分岐」する箇所よりも下流側にあるといえる。 そうすると、後者の「『移送経路が分岐し』、『分岐した移送経路が合流する』」ことは、前者の「分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する」ことに相当する。 (エ)後者の「分岐した移送経路のうち一方の経路」は、前者の「複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路」に相当し、「『分岐した移送経路のうち』『他方の移送経路』」は、前者の「複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路」に相当する。 (オ)後者の「第1プリンター(PR1)」は、「缶体」を対象とするものであるから、前者の「インクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」と、後者の「プリンター」とは、「『缶体への印刷を行う』『印刷装置』」の点で一致する。 (カ)後者の「第2プリンター(PR2)」は、「缶体」を対象とするものであるから、前者の「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」と、後者の「第2プリンター(PR2)」とは、「『缶体への印刷を行う』『印刷装置』」の点で一致する。 そうすると、本件特許発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「缶体が移動する移動経路であって、分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する移動経路と、 前記複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路に設けられ、当該缶体への印刷を行う印刷装置と、 前記複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路に設けられ、缶体への印刷を行う印刷装置と、 を備える、 缶体製造システム。」 <相違点1> 本件特許発明1は、「複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路に設けられ」る「缶体を支持し永久磁石を備えた移動ユニットを電磁石を用いて移動させるリニア機構を用いて当該缶体の搬送を行うとともにインクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」と、「複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路に設けられ」る「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」とを備え、「複数の分岐経路に含まれる前記一の分岐経路にて缶体への印刷が行われる際の印刷方式と、前記他の分岐経路にて缶体への印刷が行われる際の印刷方式とが異なって」いるのに対して、甲3発明では、そのような特定がされていない点。 <相違点2> 本件特許発明1は、「一の分岐経路にて行われる缶体の印刷の際にはリニア機構が用いられて缶体の搬送が行われる」のに対して、甲3発明では、そのような特定がされていない点。 イ 相違点についての判断 (ア)相違点1について a 甲1発明 (a)甲1発明の「缶」、及び、「トーンジェットシステム」は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、及び、「『インクジェット方式で』『印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)甲1発明の「缶」が「搬送手段」により「進む」経路と、「トーンジェットシステムで搬送」される経路は、本件特許発明1の「缶体が移動する移動経路」に相当する。 (c)甲1発明の「トーンジェットシステムで搬送及び印刷された後、オフセット印刷システムの出力と統合され」る経路においては、印刷後に統合されるのであるから、統合の場所は「下流側」であるといえる。 そうすると、本件特許発明1の「缶体が移動する移動経路であって、分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する移動経路」と、甲1発明の「トーンジェットシステムで搬送及び印刷された後、オフセット印刷システムの出力と統合され」る経路とは、「缶体が移動する移動経路であって」、「下流側にて合流する」点で共通する。 (d)甲1発明の「オフセット印刷システム」は、その出力が「トーンジェットシステムで搬送及び印刷された」缶と統合されて、「下流の形状形成プロセスを経」ることから、缶に印刷していることは明らかであるので、本件特許発明1の「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」に相当する。 (e)本件特許発明1の「一の分岐経路にて行われる缶体の印刷の際にはリニア機構が用いられて缶体の搬送が行われる」ことと、甲1発明の「缶が生産ラインから離され、トーンジェットシステムで搬送及び印刷され」ることとは、「インクジェット印刷装置」で「缶体」へ印刷を行う際に「缶体の搬送を行う」点で共通する。 (f)よって、甲1には、上記相違点1のうち、一方の移動経路に「缶体の搬送を行うとともにインクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」を備え、他方の移動経路に「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」を備えることが示されているといえるものの、トーンジェットシステムにおいてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (g)甲1発明は、甲3発明のように缶の移動経路が分岐するものとはいえない上に、甲3発明は、甲1発明のように「第1プリンター(PR1)」と「第2プリンター(PR2)」が異なる印刷方式を採用するといったものでもないため 、甲3発明に甲1発明を適用する動機付けがあるとはいえない。 b 甲8技術事項 (a)甲8技術事項の「印刷版を有する印刷装置」、及び、「インクジェット印刷を行うデジタル印刷システム」は、それぞれ、本件特許発明1の「『刷版方式で』『印刷を行う刷版印刷装置』」、及び、「『インクジェット方式で』『印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)甲8技術事項の「印刷版を有する印刷装置を備える搬送経路及びインクジェット印刷を行うデジタル印刷システムを備える搬送経路」が合流する経路においては、印刷後に合流されるのであるから、合流の場所は「下流側」であるといえる。 そうすると、本件特許発明1の「缶体が移動する移動経路であって、分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する移動経路」と、甲8技術事項の「印刷版を有する印刷装置を備える搬送経路及びインクジェット印刷を行うデジタル印刷システムを備える搬送経路」が「合流」する経路とは、物体が「移動する移動経路であって」、「下流側にて合流する」点で共通する。 (c)本件特許発明1の「一の分岐経路にて行われる缶体の印刷の際にはリニア機構が用いられて缶体の搬送が行われる」ことと、甲8技術事項の「金属バンド」が「インクジェット印刷を行うデジタル印刷システムを備える搬送経路に搬送され」ることとは、「インクジェット印刷装置」で物体へ印刷を行う際に、物体の搬送を行う点で共通する。 (d)よって、甲8には、上記相違点1のうち、一方の移動経路に「搬送を行うとともにインクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」を備え、他方の移動経路に「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」を備えることが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷を行うデジタル印刷システム及び印刷版を有する印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷を行うデジタル印刷システムにおいてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (e)甲8技術事項は、甲3発明のように缶の移動経路が分岐するものとはいえない上に、甲3発明は、甲8技術事項のように「第1プリンター(PR1)」と「第2プリンター(PR2)」が異なる印刷方式を採用するといったものでもないため 、甲3発明に甲8技術事項を適用する動機付けがあるとはいえない。 c 甲9技術事項 (a)甲9技術事項の「インクジェット方式を利用して缶体への画像形成を行う画像形成装置」は、本件特許発明1の「『インクジェット方式で』『缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)よって、甲9には、上記相違点1のうち、インクジェット方式で缶体への画像形成を行うことが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、仮に甲3発明に甲9技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 d 甲10技術事項 (a)甲10技術事項の「缶体への画像形成を行うインクジェットヘッド」は、本件特許発明1の「『インクジェット方式で』『缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)よって、甲10には、上記相違点1のうち、インクジェットヘッドで缶体への印刷を行うことが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、仮に甲3発明に甲10技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 e 甲11技術事項 (a)甲11技術事項の「2ピース缶」、「オフセット印刷機」、及び、「インクジェットプリンタ」は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」、及び、「『インクジェット方式で』『缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)よって、甲11には、上記相違点1のうち、缶体の移動経路上に、缶体の印刷を行うインクジェット印刷装置や刷版印刷機を設けることが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、仮に甲3発明に甲11技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 f 甲12技術事項 (a)甲12技術事項の「缶」、及び、「印刷版胴を有するインク付着機構」は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、及び、「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」に相当する。 (b)よって、甲12には、上記相違点1のうち、刷版印刷機を設けることが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、仮に甲3発明に甲12技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 g 甲13技術事項 (a)甲13技術事項の「飲料缶」、及び、「『凸版印刷方法で印刷』する『印刷機械』」は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、及び、「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」に相当する。 (b)よって、甲13には、上記相違点1のうち、刷版印刷機を設けることが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、仮に甲3発明に甲13技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 h まとめ 以上より、甲3発明に、甲1発明及び甲8ないし甲13技術事項を適用しても相違点1に係る本件特許発明1の構成にならない。 そして、上記相違点1の構成とすることで、缶体製造システムの小型化を図ることができ、高速搬送ができ、構造がシンプルである(本件特許明細書【0004】、【0023】参照)という、効果を奏するものである。 (イ)相違点2について 上記2(1)イ(ウ)のとおり、甲5発明、甲6技術事項、及び、甲7発明のように、リニア機構を用いて立体物を搬送することは、周知の技術事項と認められる。 しかしながら、本件特許発明1において、「一の分岐経路にて行われる缶体の印刷」には「インクジェット印刷装置」が用いられるところ、上記(ア)のとおり、甲3発明に甲1発明を適用する動機付けがあるとはいえず、また、甲3発明に甲8技術事項を適用する動機付けがあるともいえない。 そして、上記相違点2の構成とすることで、高速搬送ができ、構造がシンプルであり、また、省スペース化も可能である(本件特許明細書【0023】参照)という、効果を奏するものである。 (ウ)小括 よって、本件特許発明1は、甲3発明、並びに、甲1発明、甲5発明、甲6技術事項、甲7発明、及び、甲8ないし甲13技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明2ないし4について 本件特許発明2ないし4は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1に対して、さらなる発明特定事項を付加したものである。 よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件特許発明2ないし4は、特許法第29条第2項の規定に反してなされたものではない。 (3)まとめ したがって、本件特許発明1ないし4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないので、本件特許発明1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2-3によっては取り消すことはできない。 5 申立理由2-4(甲4を主引用文献とする進歩性欠如) (1)本件特許発明1について ア 対比 (ア)本件特許発明1と甲4発明とを対比すると、後者の「缶」、「第1経路101」、「第2経路102」「搬送経路」及び、「缶を製造するためのライン」、は、それぞれ、前者の「缶体」、「分岐経路」、「分岐経路」、「移動経路」及び、「缶体製造システム」に相当する。 (イ)後者の「搬送経路」が「第1経路101」と「第2経路102」に「分岐」する箇所は、前者の「分岐部」に相当する。 (ウ)後者の「2本の経路101、102が合流」箇所は、「合流」が「分岐」よりも後になされることから、「搬送経路」が「第1経路101」と「第2経路102」に「分岐」する箇所よりも下流側にあるといえる。 そうすると、後者の「『搬送経路』が『第1経路101』と『第2経路102』に『分岐』し、『合流』する」ことは、前者の「分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する」ことに相当する。 (エ)後者の「第1印刷ステーション151」は、「缶」を対象とするものであるから、前者の「インクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」と、後者の「第1印刷ステーション151」とは、「『缶体への印刷を行う』『印刷装置』」の点で一致する。 (オ)後者の「第2印刷ステーション152」は、「缶体」を対象とするものであるから、前者の「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」と、後者の「第2印刷ステーション152」とは、「『缶体への印刷を行う』『印刷装置』」の点で一致する。 そうすると、本件特許発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「缶体が移動する移動経路であって、分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する移動経路と、 前記複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路に設けられ、当該缶体への印刷を行う印刷装置と、 前記複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路に設けられ、缶体への印刷を行う印刷装置と、 を備える、 缶体製造システム。」 <相違点1> 本件特許発明1は、「複数の分岐経路に含まれる一の分岐経路に設けられ」る「缶体を支持し永久磁石を備えた移動ユニットを電磁石を用いて移動させるリニア機構を用いて当該缶体の搬送を行うとともにインクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」と、「複数の分岐経路に含まれる他の分岐経路に設けられ」る「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」とを備え、「複数の分岐経路に含まれる前記一の分岐経路にて缶体への印刷が行われる際の印刷方式と、前記他の分岐経路にて缶体への印刷が行われる際の印刷方式とが異なって」いるのに対して、甲4発明では、そのような特定がされていない点。 <相違点2> 本件特許発明1は、「一の分岐経路にて行われる缶体の印刷の際にはリニア機構が用いられて缶体の搬送が行われる」のに対して、甲4発明では、そのような特定がされていない点。 イ 相違点についての判断 (ア)相違点1について a 甲1発明 (a)甲1発明の「缶」、及び、「トーンジェットシステム」は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、及び、「『インクジェット方式で』『印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)甲1発明の「缶」が「搬送手段」により「進む」経路と、「トーンジェットシステムで搬送」される経路は、本件特許発明1の「缶体が移動する移動経路」に相当する。 (c)甲1発明の「トーンジェットシステムで搬送及び印刷された後、オフセット印刷システムの出力と統合され」る経路においては、印刷後に統合されるのであるから、統合の場所は「下流側」であるといえる。 そうすると、本件特許発明1の「缶体が移動する移動経路であって、分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する移動経路」と、甲1発明の「トーンジェットシステムで搬送及び印刷された後、オフセット印刷システムの出力と統合され」る経路とは、「缶体が移動する移動経路であって」、「下流側にて合流する」点で共通する。 (d)甲1発明の「オフセット印刷システム」は、その出力が「トーンジェットシステムで搬送及び印刷された」缶と統合されて、「下流の形状形成プロセスを経」ることから、缶に印刷していることは明らかであるので、本件特許発明1の「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」に相当する。 (e)本件特許発明1の「一の分岐経路にて行われる缶体の印刷の際にはリニア機構が用いられて缶体の搬送が行われる」ことと、甲1発明の「缶が生産ラインから離され、トーンジェットシステムで搬送及び印刷され」ることとは、「インクジェット印刷装置」で「缶体」へ印刷を行う際に「缶体の搬送を行う」点で共通する。 (f)よって、甲1には、上記相違点1のうち、一方の移動経路に「缶体の搬送を行うとともにインクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」を備え、他方の移動経路に「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」を備えることが示されているといえるものの、トーンジェットシステムにおいてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (g)甲1発明は、甲4発明のように缶の移動経路が分岐するものとはいえない上に、甲4発明は、甲1発明のように「第1印刷ステーション151」と「第2印刷ステーション152」とが異なる印刷方式を採用するといったものでもないため、甲4発明に甲1発明を適用する動機付けがあるとはいえない。 b 甲8技術事項 (a)甲8技術事項の「印刷版を有する印刷装置」、及び、「インクジェット印刷を行うデジタル印刷システム」は、それぞれ、本件特許発明1の「『刷版方式で』『印刷を行う刷版印刷装置』」、及び、「『インクジェット方式で』『印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)甲8技術事項の「印刷版を有する印刷装置を備える搬送経路及びインクジェット印刷を行うデジタル印刷システムを備える搬送経路」が合流する経路においては、印刷後に合流されるのであるから、合流の場所は「下流側」であるといえる。 そうすると、本件特許発明1の「缶体が移動する移動経路であって、分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する移動経路」と、甲8技術事項の「印刷版を有する印刷装置を備える搬送経路及びインクジェット印刷を行うデジタル印刷システムを備える搬送経路」が「合流」する経路とは、物体が「移動する移動経路であって」、「下流側にて合流する」点で共通する。 (c)本件特許発明1の「一の分岐経路にて行われる缶体の印刷の際にはリニア機構が用いられて缶体の搬送が行われる」ことと、甲8技術事項の「金属バンド」が「インクジェット印刷を行うデジタル印刷システムを備える搬送経路に搬送され」ることとは、「インクジェット印刷装置」で物体へ印刷を行う際に、物体の搬送を行う点で共通する。 (d)よって、甲8には、上記相違点1のうち、一方の移動経路に「搬送を行うとともにインクジェット方式で当該缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置」を備え、他方の移動経路に「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」を備えることが示されているといえるものの、インクジェット印刷を行うデジタル印刷システムにおいてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (e)甲8技術事項は、甲4発明のように缶の移動経路が分岐するものとはいえない上に、甲4発明は、甲1発明のように「第1印刷ステーション151」と「第2印刷ステーション152」とが異なる印刷方式を採用するといったものでもないため、甲4発明に甲8技術事項を適用する動機付けがあるとはいえない。 c 甲9技術事項 (a)甲9技術事項の「インクジェット方式を利用して缶体への画像形成を行う画像形成装置」は、本件特許発明1の「『インクジェット方式で』『缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)よって、甲9には、上記相違点1のうち、インクジェット方式で缶体への画像形成を行うことが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、甲4発明に甲9技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計事項ともいえない。 d 甲10技術事項 (a)甲10技術事項の「缶体への画像形成を行うインクジェットヘッド」は、本件特許発明1の「『インクジェット方式で』『缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)よって、甲10には、上記相違点1のうち、インクジェットヘッドで缶体への印刷を行うことが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、甲4発明に甲10技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 e 甲11技術事項 (a)甲11技術事項の「2ピース缶」、「オフセット印刷機」、及び、「インクジェットプリンタ」は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」、及び、「『インクジェット方式で』『缶体への印刷を行うインクジェット印刷装置』」に相当する。 (b)よって、甲11には、上記相違点1のうち、缶体の移動経路上に、缶体の印刷を行うインクジェット印刷装置や刷版印刷機を設けることが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、甲4発明に甲11技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 f 甲12技術事項 (a)甲12技術事項の「缶」、及び、「印刷版胴を有するインク付着機構」は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、及び、「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」に相当する。 (b)よって、甲12には、上記相違点1のうち、刷版印刷機を設けることが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、甲4発明に甲12技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 g 甲13技術事項 (a)甲13技術事項の「飲料缶」、及び、「『凸版印刷方法で印刷』する『印刷機械』」は、それぞれ、本件特許発明1の「缶体」、及び、「刷版方式で缶体への印刷を行う刷版印刷装置」に相当する。 (b)よって、甲13には、上記相違点1のうち、刷版印刷機を設けることが示されているといえるものの、分岐経路のそれぞれに、インクジェット印刷装置及び刷版印刷装置を備える点、及び、インクジェット印刷装置においてリニア機構を用いる点は記載も示唆もされていない。 (c)したがって、甲4発明に甲13技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とはならないし、該構成は設計的事項ともいえない。 h まとめ 以上より、甲4発明に、甲1発明及び甲8ないし甲13技術事項を適用しても相違点1に係る本件特許発明1の構成にならない。 そして、上記相違点1の構成とすることで、缶体製造システムの小型化を図ることができ、高速搬送ができ、構造がシンプルである(本件特許明細書【0004】、【0023】参照)という、効果を奏するものである。 (イ)相違点2について 上記2(1)イ(ウ)のとおり、甲5発明、甲6技術事項、及び、甲7発明のように、リニア機構を用いて立体物を搬送することは、周知の技術事項と認められる。 しかしながら、本件特許発明1において、「一の分岐経路にて行われる缶体の印刷」には「インクジェット印刷装置」が用いられるところ、上記(ア)のとおり、甲4発明に甲1発明を適用する動機付けがあるとはいえず、また、甲4発明に甲8技術事項を適用する動機付けがあるともいえない。 そして、上記相違点2の構成とすることで、高速搬送ができ、構造がシンプルであり、また、省スペース化も可能である(本件特許明細書【0023】参照)という、効果を奏するものである。 (ウ)小括 よって、本件特許発明1は、甲4発明、並びに、甲1発明、甲5発明、甲6技術事項、甲7発明、及び、甲8ないし甲13技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明2ないし4について 本件特許発明2ないし4は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1に対して、さらなる発明特定事項を付加したものである。 よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件特許発明2ないし4は、特許法第29条第2項の規定に反してなされたものではない。 (3)まとめ したがって、本件特許発明1ないし4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないので、本件特許発明1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2-4によっては取り消すことはできない。 6 申立理由3(サポート要件違反) (1)申立理由 ア 請求項2ないし4について 本件出願の請求項2及び3には、「共通の処理」なる記載があるところ、前記「処理」がいかなる処理か特定されておらず、ありとあらゆる処理が含まれる記載となっている。 一方、本件特許の明細書には、分岐部9OOBの上流側の処理として、上流側工程900Xが設けられることが記載され、前記上流側工程900Xには、アンコイラー(UC)、ルプリケーター(LU)、カッピングプレス(CP)、ボディメーカー(BM)、トリマー(TR)、ウォッシャー(WS)の各工程が設けられていることが記載されているのみであり(段落0129、0131)、分岐部よりも上流側で、これら以外の処理が行い得ることは記載も示唆もされていない。 また、印刷機よりも下流側の処理として、下流側工程900Yが設けられることが記載され、前記下流側工程900Yには、ボトムコーター(BTC)、ピンオーブン(PO)、インサイドスプレー(INS)、ベークオーブン(BO)、ネッカー・フランジャー(QNF)、ディフェクティブキャンテスター(DCT)、ライトテスター(LT)、パレタイザー(PT)の各工程が設けられていること記載されているのみであり(段落0129、0133)、合流部よりも下流側で、これら以外の処理が行い得ることについても記載も示唆もされていない。 したがって、本件特許の請求項2及び3並びにこれらを引用する請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない発明に対し特許されたものである。 イ 請求項4について 本件特許の請求項4には、「予め定められた他の処理」なる記載があるところ、前記「他の処理」がいかなる処理か特定されておらず、印刷処理以外のありとあらゆる処理が含まれる記載となっている。 一方、本件特許の明細書には、第一の分岐経路と他の分岐経路に含まれ得る印刷処理以外の処理として、ボトムコーター(BTC)、ピンオーブン(PO)が記載されているのみであり(段落0134、図14)、第一の分岐経路と他の分岐経路で、これら以外の処理が行い得ることについて記載も示唆もされていない。 したがって、本件特許の請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない発明に対し特許されたものである。 (2)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるので、以下、検討する。 (3)サポート要件の判断 本件特許の発明の詳細な説明の【0004】によると、本件特許発明2ないし4の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は「缶体製造システムに複数の印刷装置を設けるにあたり、缶体製造システムの小型化を図ること。」である。 この課題の解決について、本件特許の発明の詳細な説明では、「この缶体製造システム900では、缶体の移動経路900Aが設けられている。ここで、この移動経路900Aは、分岐部900Bにて複数の分岐経路900Cに分岐するとともに、この分岐部900Bよりも下流側にて合流する。 さらに、缶体製造システム900では、複数設けられた分岐経路900Cのうちの一の分岐経路900Cに印刷装置500が設けられ、他の分岐経路900Cに刷版印刷装置950が設けられている。」(【0128】)と記載されている。 上記本件特許の発明の詳細な説明に記載された、移動経路900Aが、分岐部900Bにて複数の分岐経路900Cに分岐するとともに、この分岐部900Bよりも下流側にて合流する缶体製造システムは、印刷装置500が設けられた経路と刷版印刷装置950が設けられた経路とが独立して設けられた缶体製造システムに比べて、全体の経路長が短くなることは明らかであり、その結果、小型化が実現できることは明らかであるから、上記発明の課題を解決するための手段は、「缶体が移動する移動経路であって、分岐部にて複数の分岐経路に分岐する」「移動経路」及び「分岐部よりも下流側にて合流する移動経路」を備えることであると認められる。 そして、本件特許発明2ないし4は、引用する本件特許発明1において、「缶体が移動する移動経路であって、分岐部にて複数の分岐経路に分岐するとともに、当該分岐部よりも下流側にて合流する移動経路」と上記課題を解決するための手段が反映されているのであるから、本件特許発明2ないし4は上記課題を解決できるものであることを認識することができる。 したがって、本件特許発明2ないし4は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、本件特許発明1ないし11に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 (4)申立人の主張について 申立人は申立書において、本件特許発明2及び3においては、「共通の処理」にありとあらゆる処理が含まれ、本件特許発明4においては、「他の処理」に印刷処理以外のありとあらゆる処理が含まれることから、サポート要件違反を指摘している。 本件特許発明2及び3の「共通の処理」、及び、本件特許発明4の「予め定められた他の処理」について、発明の詳細な説明に記載された処理を包括的に「共通の処理」、及び、「予め定められた他の処理」と記載したと認められるところ、印刷装置を備えた缶体製造システムにおいて、発明の詳細な説明に記載された処理以外にも、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理が実施されることは技術常識であることから、本件特許発明2及び3の「共通の処理」は、当然、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理をも想定していると認められるし、本件特許発明4の「他の処理」は、印刷処理以外の処理である、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理をも想定していると認められる。 しかしながら、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理は、缶体製造システムが有するごく一般的な処理であるから、本件特許発明2及び3の「共通の処理」、及び、本件特許発明4の「他の処理」が、発明の詳細な説明に記載された処理以外の、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理を含み得たとしても、それによって新たな作用効果が生じるものでもないし、本件特許発明の「缶体製造システムの小型化を図る」なる効果を損なうものでもない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (5)まとめ 上記(3)及び(4)で検討したとおり、特許請求の範囲の請求項2ないし4の記載は特許法第36条第6項第1号の要件を満たさないとの主張には理由がない。 よって、申立理由3により本件特許発明2ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 7 申立理由4(明確性要件違反) (1)申立理由 ア 請求項2ないし4について 本件特許の請求項2及び3には、「共通の処理」なる記載があるところ、「共通の処理」が含み得る処理の範囲が明確でない。すなわち、缶体の製造工程においては、缶の種類等に応じて、例えば2ピース缶におけるリドロープレスやボトル缶の口部成形など多岐にわたる処理が含まれ得るところ、単に「共通の処理」という記載では、いかなる処理が含まれるのか不明である。 よって、本件特許の請求項2及び3並びにこれらを引用する請求項4は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさない発明に対し特許されたものである。 イ 請求項4について 本件特許の請求項4には、「予め定められた他の処理」なる記載があるところ、「予め定められた他の処理」が含み得る処理の範囲が明確でない。すなわち、缶体の製造工程においては、缶の種類に応じて、例えば2ピース缶におけるリドロープレスやボトル缶の口部成形など多岐にわたる処理が含まれ得るところ、単に「予め定められた他の処理」という記載では、いかなる処理が含まれるのか不明である。 (2)明確性要件の判断基準 特許を受ける発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであるので、以下、検討する。 (3)明確性要件の判断 本件特許発明2及び3の「共通の処理」、及び、本件特許発明4の「予め定められた他の処理」について、発明の詳細な説明に記載された処理を包括的に「共通の処理」、及び、「予め定められた他の処理」と記載したと認められるところ、印刷装置を備えた缶体製造システムにおいて、発明の詳細な説明に記載された処理以外にも、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理が実施されることは技術常識であることから、本件特許発明2及び3の「共通の処理」は、当然、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理をも想定していると認められるし、本件特許発明4の「他の処理」は、印刷処理以外の処理である、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理をも想定していると認められる。 よって、本件特許発明2及び3の「共通の処理」は、印刷より上流側の「アンコイラー(UC)」、「ルブリケーター(LU)」、「カッピングプレス(CP)」、「ボディメーカー(BM)」、「トリマー(TR)」、「ウォッシャー(WS)」による処理に加え、ヒートセットオーブンによる処理、合流部よりも下流側の「インサイドスプレー(INS)」、「ベークオーブン(BO)」、「ネッカー・フランジャー(QNF)」、「ディフェクティブキャンテスター(DCT)」、「ライトテスター(LT)」、「パレタイザー(PT)」に加え、ふた巻き締め処理が共通していることを意味する。 本件特許発明4の「予め定められた他の処理」は「缶体への印刷処理以外に、予め定められた他の処理」という記載の一部であるから、分岐経路の「印刷処理」以外の「ボトムコーター(BTC)」、「ピンオーブン(PO)」による処理を意味する。 また、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理は、缶体製造システムが有するごく一般的な処理であるから、本件特許発明2及び3の「共通の処理」、及び、本件特許発明4の「予め定められた他の処理」が、発明の詳細な説明に記載された処理以外の、ヒートセットオーブンによる処理やふた巻き締め処理を含み得たとしても、それによって新たな作用効果が生じるものでもないし、本件特許発明の「缶体製造システムの小型化を図る」なる効果を損なうものでもない。 よって、本件特許発明2及び3の「共通の処理」、及び、本件特許発明4の「予め定められた他の処理」について、これらの記載自体が明確でないとはいえない。 したがって、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時の技術常識を基礎とすれば、本件特許発明2ないし4に関し、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (4)申立人の主張について 申立人は申立書において、本件特許発明2及び3においては、「共通の処理」にいかなる処理が含まれるのか不明であり、本件特許発明4においては、「予め定められた他の処理」にいかなる処理が含まれるのか不明であることから、明確性要件違反を指摘している。 しかしながら、上記(3)のとおり、本件特許発明2ないし4に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえないので、申立人の主張は採用できない。 (5)まとめ 上記(3)及び(4)で検討したとおり、特許請求の範囲の請求項2ないし4の記載は特許法第36条第6項第2号の要件を満たさないとの主張には理由がない。 よって、申立理由4により本件特許発明2ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700413

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