特許異議申立
2023-700405
輪軸用RFIDタグユニット
- 審判番号
- 2023-700405
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-521136
- 登録番号
- 7161527
- 請求日
- 2023年04月20日
- 審決日
- 2024年02月29日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】川崎車両株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人有古特許事務所
- 【異議申立人】谷口 充弘
- 審判長/審判官
- 審判長 中村 則夫
- 審判官 筑波 茂樹
- 審判官 八木 誠
- 分類
- P1651.121-YAA(B61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7161527号発明「輪軸用RFIDタグユニット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7161527号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7161527号の請求項2~8に係る特許を維持する。
特許第7161527号の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続きの経緯
特許第7161527号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)4月26日(優先権主張外国庁受理 平成30年5月25日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和4年10月18日にその特許権の設定登録がなされ、同年10月26日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 4月20日 :特許異議申立人 谷口充弘(以下「申立人
」という。)による請求項1~8に係る特許
に対する特許異議の申立て
同年 8月17日付け:取消理由通知
同年 9月26日 :特許権者による訂正請求書・意見書の提出
同年11月 1日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年9月26日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記輪軸の車軸は、その端面に開口する中空空間を有する中空車軸であり、前記取付部材は、前記車軸の前記端面の開口を塞ぐ樹脂プラグである、請求項1に記載の輪軸用RFIDタグユニット。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「鉄道車両の輪軸に取り付けられるRFIDタグユニットであって、ベースシートと、前記ベースシートに搭載されたICチップと、前記ベースシートに搭載され且つ前記ICチップに接続されたアンテナとを有するRFIDタグと、前記RFIDタグが搭載され、前記輪軸に取り付けられる取付部材と、を備え、前記取付部材のうち少なくとも前記RFIDタグに面する部分が非金属材料であり、前記取付部材は、前記RFIDタグと前記輪軸との間に介在し、前記ベースシートは、前記取付部材の表面に接着されており、前記輪軸の車軸は、その端面に開口する中空空間を有する中空車軸であり、前記取付部材は、前記車軸の前記端面の開口を塞ぐ樹脂プラグである、輪軸用RFIDタグユニット。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記輪軸の車輪のリム部の内周面には、溝が形成されており、前記取付部材は、前記輪軸の前記溝に嵌合される弾性材料からなる防音リングである、請求項1に記載の輪軸用RFIDタグユニット。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「鉄道車両の輪軸に取り付けられるRFIDタグユニットであって、ベースシートと、前記ベースシートに搭載されたICチップと、前記ベースシートに搭載され且つ前記ICチップに接続されたアンテナとを有するRFIDタグと、前記RFIDタグが搭載され、前記輪軸に取り付けられる取付部材と、を備え、前記取付部材のうち少なくとも前記RFIDタグに面する部分が非金属材料であり、前記取付部材は、前記RFIDタグと前記輪軸との間に介在し、前記ベースシートは、前記取付部材の表面に接着されており、前記輪軸の車輪のリム部の内周面には、溝が形成されており、前記取付部材は、前記輪軸の前記溝に嵌合される弾性材料からなる防音リングである、輪軸用RFIDタグユニット。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記輪軸の車輪の円板部には、吊穴が形成されており、前記取付部材は、前記車輪の前記吊穴を塞ぐ樹脂プラグである、請求項1に記載の輪軸用RFIDタグユニット。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「鉄道車両の輪軸に取り付けられるRFIDタグユニットであって、ベースシートと、前記ベースシートに搭載されたICチップと、前記ベースシートに搭載され且つ前記ICチップに接続されたアンテナとを有するRFIDタグと、前記RFIDタグが搭載され、前記輪軸に取り付けられる取付部材と、を備え、前記取付部材のうち少なくとも前記RFIDタグに面する部分が非金属材料であり、前記取付部材は、前記RFIDタグと前記輪軸との間に介在し、前記ベースシートは、前記取付部材の表面に接着されており、前記輪軸の車輪の円板部には、吊穴が形成されており、前記取付部材は、前記車輪の前記吊穴を塞ぐ樹脂プラグである、輪軸用RFIDタグユニット。」
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記取付部材は、前記輪軸の軸線周りの周面に嵌合される実質的にリング状の部材である、請求項1に記載の鉄道車両輪軸用RFIDタグユニット。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「鉄道車両の輪軸に取り付けられるRFIDタグユニットであって、ベースシートと、前記ベースシートに搭載されたICチップと、前記ベースシートに搭載され且つ前記ICチップに接続されたアンテナとを有するRFIDタグと、前記RFIDタグが搭載され、前記輪軸に取り付けられる取付部材と、を備え、前記取付部材のうち少なくとも前記RFIDタグに面する部分が非金属材料であり、前記取付部材は、前記RFIDタグと前記輪軸との間に介在し、前記ベースシートは、前記取付部材の表面に接着されており、前記取付部材は、前記輪軸の軸線周りの周面に嵌合される実質的にリング状の部材である、鉄道車両輪軸用RFIDタグユニット。」
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、請求項1を削除する訂正が、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しないことは明らかである。
(2)訂正事項2~5について
訂正事項2~5は、訂正前の請求項2~5がそれぞれ請求項1を引用していたのを、独立形式に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項2~5は、訂正の前後でその内容に変更はないから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しないことは明らかである。
3 一群の請求項
本件訂正前の請求項2~5は、それぞれ本件訂正前の請求項1を引用しているところ、本件訂正前の請求項1~5は一群の請求項であり、訂正事項1~5の訂正は、当該一群の請求項〔1~5〕に対して請求されたものである。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について、訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」で説示したように本件訂正請求は認められるから、本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項2~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明2」~「本件発明8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
鉄道車両の輪軸に取り付けられるRFIDタグユニットであって、
ベースシートと、前記ベースシートに搭載されたICチップと、前記ベースシートに搭載され且つ前記ICチップに接続されたアンテナとを有するRFIDタグと、
前記RFIDタグが搭載され、前記輪軸に取り付けられる取付部材と、を備え、
前記取付部材のうち少なくとも前記RFIDタグに面する部分が非金属材料であり、
前記取付部材は、前記RFIDタグと前記輪軸との間に介在し、
前記ベースシートは、前記取付部材の表面に接着されており、
前記輪軸の車軸は、その端面に開口する中空空間を有する中空車軸であり、
前記取付部材は、前記車軸の前記端面の開口を塞ぐ樹脂プラグである、輪軸用RFIDタグユニット。
【請求項3】
鉄道車両の輪軸に取り付けられるRFIDタグユニットであって、
ベースシートと、前記ベースシートに搭載されたICチップと、前記ベースシートに搭載され且つ前記ICチップに接続されたアンテナとを有するRFIDタグと、
前記RFIDタグが搭載され、前記輪軸に取り付けられる取付部材と、を備え、
前記取付部材のうち少なくとも前記RFIDタグに面する部分が非金属材料であり、
前記取付部材は、前記RFIDタグと前記輪軸との間に介在し、
前記ベースシートは、前記取付部材の表面に接着されており、
前記輪軸の車綸のリム部の内周面には、溝が形成されており、
前記取付部材は、前記輪軸の前記溝に嵌合される弾性材料からなる防音リングである、輪軸用RFIDタグユニット。
【請求項4】
鉄道車両の輪軸に取り付けられるRFIDタグユニットであって、
ベースシートと、前記ベースシートに搭載されたICチップと、前記ベースシートに搭載され且つ前記ICチップに接続されたアンテナとを有するRFIDタグと、
前記RFIDタグが搭載され、前記輪軸に取り付けられる取付部材と、を備え、
前記取付部材のうち少なくとも前記RFIDタグに面する部分が非金属材料であり、
前記取付部材は、前記RFIDタグと前記輪軸との間に介在し、
前記ベースシートは、前記取付部材の表面に接着されており、
前記輪軸の車輪の円板部には、吊穴が形成されており、
前記取付部材は、前記車輪の前記吊穴を塞ぐ樹脂プラグである、輪軸用RFIDタグユニット。
【請求項5】
鉄道車両の輪軸に取り付けられるRFIDタグユニットであって、
ベースシートと、前記ベースシートに搭載されたICチップと、前記ベースシートに搭載され且つ前記ICチップに接続されたアンテナとを有するRFIDタグと、
前記RFIDタグが搭載され、前記輪軸に取り付けられる取付部材と、を備え、
前記取付部材のうち少なくとも前記RFIDタグに面する部分が非金属材料であり、
前記取付部材は、前記RFIDタグと前記輪軸との間に介在し、
前記ベースシートは、前記取付部材の表面に接着されており、
前記取付部材は、前記輪軸の軸線周りの周面に嵌合される実質的にリング状の部材である、鉄道車両輪軸用RFIDタグユニット。
【請求項6】
鉄道車両の輪軸に取り付けられるRFIDタグユニットであって、
ベースシートと、前記ベースシートに搭載されたICチップと、前記ベースシートに搭載され且つ前記ICチップに接続されたアンテナとを有するRFIDタグと、
前記RFIDタグが搭載され、前記輪軸に取り付けられる取付部材と、を備え、
前記ベースシートは、前記取付部材の表面に接着されており、
前記取付部材は、遠心力に抗するように前記RFIDタグを前記輪軸の外径側から支持する部分を有する、鉄道車両輪軸用RFIDタグユニット。
【請求項7】
前記取付部材は、前記輪軸の軸線周りの周面に嵌合される実質的にリング状の部材である、請求項6に記載の鉄道車両輪軸用RFIDタグユニット。
【請求項8】
前記取付部材の取付面は、前記輪軸の軸線を中心とした円筒形状であり、前記輪軸の前記周面に形成された径方向に垂直な被取付面に取り付けられる、請求項7に記載の鉄道車両輪軸用RFIDタグユニット。」
第4 取消理由通知の概要
取消理由通知で通知した取消理由の概要は次のとおりである。
本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1
・引用文献等 甲第1号証又は甲第2号証 及び 甲第3~5号証
<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2005-309811号公報
甲第2号証:特開2006-38151号公報
甲第3号証:特開平10-300637号公報
甲第4号証:中国実用新案第204857058号明細書
甲第5号証:Simon Groom、"RFID BOLTS AND TRAIN WHEELS - DEVELOPING A TOTAL SOLUTION FOR ASSETT TRACKING"、11th World Congress on Railway Research、2016年
第5 甲号証及びその記載等
申立人は、異議申立書において、甲第1号証~甲第5号証に加え、以下の甲第6号証~甲第12号証を提出している。
甲第6号証:特開2006-83945号公報
甲第7号証:特開平10-58904号公報
甲第8号証:国際公開第2017/072963号
甲第9号証:特開2007-162805号公報
甲第10号証:鉄道車両新指導書編集委員会編、「鉄道車両新指導書 台車・輪軸編」、社団法人日本鉄道車両機械技術協会、2006年(平成18年)3月、p.194-199
甲第11号証:高速車両用輪軸研究委員会、「鉄道輪軸」、丸善プラネット株式会社、2008年(平成20年)12月30日、p.196~201
甲第12号証:広辞苑第7版、株式会社岩波書店、2018年(平成30年)1月12日、p.1642~1643
以下、「甲第1号証」~「甲第12号証」を、「甲1」~「甲12」という。
1 甲1について
(1)甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている。
「【請求項3】
ダイポールアンテナを備えるRFIDタグであって、
前記ダイポールアンテナの金属含有物品への取り付け面に、前記金属含有物品側から、スペーサと軟磁性材とスペーサとを備えることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項4】
前記スペーサは、多孔質プラスチック又は多孔質ゴム又は内部に中空領域を含む枠部材からなることを特徴とする請求項2又は3に記載のRFIDタグ。」
「【0041】
図4に示すように、本実施例のタグ2は、軟磁性材9(好ましくは第1の実施例で示した方法で製造された軟磁性材9)の一方の面に、通常のプラスチックやゴムなどよりも誘電率が小さいスペーサ11が配置され、その上に、UHF帯又はSHF帯等で作動するアンテナ3(好ましくはダイポールアンテナ)とICチップ5とが配置されて構成され、このタグ2が金属物品10上に設置される。・・・」
「【0046】
また、図4では、軟磁性材9とアンテナ3との間にスペーサ11を設けたが、軟磁性材9とスペーサ11とを用いる構造のバリエーションとして、図6に示すように、金属物品10と軟磁性材9との間にも誘電率の小さいスペーサ11を配置することもできる。」
「【図6】
[図:0001411284000001.jpg]
」
(2)甲1の認定事項
・請求項3の記載からRFIDタグは金属含有物品へ取り付けられるものと認められる。
・請求項3及び段落【0046】の記載及び図6から、RFIDタグは、金属含有物品側から、下側のスペーサと軟磁性材と上側のスペーサとを備えるものと認められる。
・段落【0041】の記載及び図6から、上側のスペーサの上に、ICチップ5とダイポールアンテナとが配置されるものと認められる。また、ダイポールアンテナがICチップ5に接続されることは当然である。
(3)甲1発明
以上を踏まえると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「金属含有物品へ取り付けられるRFIDタグであって、
金属含有物品への取り付け面に、前記金属含有物品側から、下側のスペーサと軟磁性材と上側のスペーサとを備え、
上側のスペーサの上に、ICチップ5とICチップ5に接続されるダイポールアンテナとが配置され、
前記スペーサは、多孔質プラスチック又は多孔質ゴムからなる、
RFIDタグ。」
2 甲2について
(1)甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
内周に複列の転走面を有する外方部材と、上記転走面に対向する転走面を有する内方部材と、これら外内の部材の対向する転走面間に介在した複列の転動体とを有し、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置において、非接触で交信が可能なICタグを取付けたことを特徴とする車輪用軸受装置。」
「【0020】
・・・
ICタグ9は、この例では、上記端面32Aaの表面に貼り付けによって取付けられている。なお、ICタグ9は、金属表面に取付可能のものを用いるか、または絶縁材または誘電体等の電波障害防止材(図示せず)を介在させた上に、ICタグ9を取付けるようにしている。
【0021】
・・・ICタグ9は、非接触で情報の記録および読取りが可能なもの、または上書き不能なものであり、ICチップ(集積回路のチップ)25と、アンテナ26とで構成される。これらICチップ25とアンテナ26は、例えば樹脂(図示せず)で一体に包囲される。ICタグには種々の形式,形状,大きさのものがあり、短冊状や板状の物の他、例えば1mm未満の大きさの角状や球状の物などがある。また、対象物に直接に印刷等で形成されるICタグもある。記憶容量も種々異なるものがあるが、用途や取付対象の大きさ,種類等に応じて適宜選択すればよい。
【0022】
ICタグ9としては、例えばRFID(無線周波数認識:Radio Frequency Identification)技術を応用したRFIDタグが利用できる。RFID形式のICタグは、伝送方式として静電結合、電磁結合、電磁誘導、マイクロ波、光などを用いる形式のものがあり、このうちいずれの形式のものを用いても良い。例えば電磁誘導形式のもの、またはマイクロ波のものが用いられる。」
(2)甲2の認定事項
・請求項1の記載からICタグ9は車輪用軸受装置に取り付けられるものと認められる。
・段落【0021】に記載されたICチップ25と、アンテナ26とで構成されるICタグにおいて、アンテナ26が、ICチップ25に接続されることは当然である。
・段落【0022】の記載から、ICタグ9は、RFIDタグであると認められる。
(3)甲2発明
以上を踏まえると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「車輪用軸受装置に取り付けられるICタグ9であって、
ICタグ9は、金属表面に、絶縁材又は誘電体の電波障害防止材を介在させた上に、取り付けられ、
ICタグ9は、ICチップ25とICチップ25に接続されたアンテナ26を樹脂で一体に包囲し、ICタグは、短冊状や板状の物であり、
ICタグ9は、RFIDタグである、
ICタグ9。」
3 甲5について
ア 甲5の記載事項
甲5には、次の事項が記載されている。なお、括弧内には申立人の提出した翻訳文を示す。
・第2ページ第2~4行
「Several solutions have been investigated by Alstom to improve the asset tracking and recording of a train wheelset, however a key initiative that has been identified has been the implementation of a wheelset encoded with an RFID chip, with stays with the wheelset for its life.」
(翻訳文:Alstomは、鉄道車両の輪軸の資産追跡及び記録を改善するために解決策を調査した。しかしながら、特定されている重要な構想は、輪軸にその寿命の間付されるRFIDチップによって輪軸のエンコードを実施することである。)
・第2ページ下から3行~末行
「As a result a solution was identified, based on experience from the automotive industry, to develop a bolt which could be installed, taking advantage of the oil injection hole which is typically found in rail vehicle wheelsets.」
(翻訳文:その結果、自動車業界での経験に基づいて、鉄道車両の輪軸に通常見られる油圧注入孔を利用して取り付けることができるボルトを開発するという解決策が特定された。)
・図1「
[図:0001411284000002.jpg]
」
(当審注:申立人が提出した甲5の図1はカラーである。)
・図1中の説明文
「This bolt contains a unique identifier which will tell you serial number or other data as needed.」
(翻訳文:このボルトは、必要に応じてシリアルナンバーや他のデータがわかる固有の識別子を含む。)
イ 甲5に記載された技術事項
上記アから、甲5には、次の技術事項(以下「甲5技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「鉄道車両の輪軸に通常見られる油圧注入孔を利用して取り付けることができるボルトにRFIDチップを設ける技術。」
4 甲8について
(1)甲8の記載事項
甲8には、次の事項が記載されている。
「[0002] 現在、様々な分野において、ICチップを備えたICタグが用いられた個体管理が行われている。かかる個体管理では、たとえばRFIDリーダ/ライタ装置と、ICタグとの間で無線通信を行うことにより、ICタグとRFIDリーダ/ライタ装置との間で情報の送受信を可能としている。
[0003] このようなICタグを用いた製品の中には、たとえば特許文献1,2に開示のように、ICタグを備えるボルト(以下、ICタグ組み込みボルトとする)が存在する。また、近年、たとえば鉄道車両等においては、ボルトの締め忘れ等による部品の脱落等の事故が問題となっている。そのため、上述したICタグ組み込みボルトを用いて、ボルトを確実に締結したか否か等を管理することが望まれている。」
「[0005] ところで、特許文献1,2に開示の構成では、ボルトの頭部側に凹部を形成し、その凹部にICタグが埋め込まれている。この場合、樹脂を凹部に充填して固定したり、接着剤を用いてICタグを固定することは、たとえば鉄道車両等のような長期に亘って振動が付与される屋外などの劣悪環境下においては、樹脂の劣化等を考慮すると、好ましくない。そのため、ボルトの頭部にICタグを取り付ける場合、接着剤や樹脂の充填によらずに、確実にICタグの脱落防止を図ることが望まれている。」
「[0007] 本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、接着剤を用いずに最小限の凹部を有してボルトの機械的な強度の低下を防ぎながらも、ICタグの脱落を防止可能なボルト取付用タグ、ICタグ組み込みボルトおよびタグ取付用ボルトを提供しよう、とするものである。」
「[0018]<ボルト取付用タグ10の構成について>
図1は、ボルト取付用タグ10の構成を示す側断面図である。図2は、ボルト取付用タグ10の構成を示す平面図である。図1および図2に示すように、ボルト取付用タグ10は、ICインレット20と、タグ保護部30とを有している。
[0019] ICインレット20は、たとえばパッシブ型のICタグを構成する主要部分であり、電池を持たずにリーダ装置から送信される電磁波に基づいて電力を得て、その電力に基づいて電磁波を発信するものである。図3は、ICインレット20の構成を示す斜視図である。図3に示すように、ICインレット20は、ICタグ基板21と、ICチップ22と、コイルアンテナ23とを備えている。ICタグ基板21は、略矩形状をなす平板形状に形成されている。ICタグ基板21としては、たとえばガラスエポキシ基板あるいはPETを始めとした樹脂製のフィルムを用いることができる。ICタグ基板21は、ICチップ22と、コイルアンテナ23とを有しているが、そのうちICチップ22は、各種のデータを記憶する部分である。
[0020] かかるICインレット20を覆うようにタグ保護部30が設けられている。図1に示すように、タグ保護部30は、ICインレット20が屋外など外部環境に露出しないように、その全体、特に正面方向を覆っている。なお、図1および図2に示す構成では、矩形の平板状のICインレット20をタグ保護部30が覆う構成のため、タグ保護部30は、ボルト取付用タグ10が後述する嵌合穴52の形状に合わせた形状あってその外観が円盤状に設けられている。」
「[0039]<タグ取付用ボルト50について>
図6は、タグ取付用ボルト50の構成を示す斜視図である。図6に示すように、タグ取付用ボルト50の頭部51には、嵌合穴52が設けられている。そして、この嵌合穴52に上述したボルト取付用タグ10が嵌め込まれる。嵌合穴52は、頭部51の上面51aから所定深さだけ凹ませた穴部分である。この嵌合穴52付近の構成を、図7に示す。図7は、タグ取付用ボルト50の頭部51の嵌合穴52付近の構成を示す部分的な側断面図である。
[0040] 図7に示すように、嵌合穴52の開口側の縁部分には、内径側に向かって突出する抜け止め部521が設けられている。したがって、抜け止め部521の内径側の先端から嵌合穴52の径方向の中心までの距離は、嵌合穴52の奥側の半径よりも小さく設けられている。したがって、嵌合穴52にボルト取付用タグ10が嵌め込まれると、ボルト取付用タグ10が嵌合穴52から抜けるのが防止される。」
「[0047] このようにして嵌め込みが実現されると、スナップフィット機構が実現される。すなわち、嵌合穴52からボルト取付用タグ10を取り外そうとすると、タグ保護部30の外周側(係止部31側)が、抜け止め部521に引っ掛かる。そのため、ボルト取付用タグ10が嵌合穴52から抜けようとするのが阻止されると共に、ボルト取付用タグ10がタグ取付用ボルト50に固定される。」
「[0072]<ICタグ組み込みボルト100と工具60との間の通信について>
図14は、対象部材300に取付済みのICタグ組み込みボルト100と、工具60との間で、通信を行うイメージを示す図である。なお、図16においては、工具60として、ラチェット形のトルクレンチが図示されているが、たとえば打検ハンマーや通常のレンチ等、その他の工具でボルト取付用タグ10を検出する少なくとも読取部63が内蔵された工具であっても良い。図16に示す工具60においては、ICタグ組み込みボルト100と通信を行うために、リーダ装置65が搭載されている。」
「[0094] また、上述の各実施の形態においては、RFID通信にて用いられるUHF帯の周波数としては920MHzが好適である。・・・」
図1「
[図:0001411284000003.jpg]
」
図3「
[図:0001411284000004.jpg]
」
図7「
[図:0001411284000005.jpg]
」
(2)甲8の認定事項
・段落[0072]の「対象部材300に取付済みのICタグ組み込みボルト100」との記載から、対象部材300にICタグ組み込みボルト100が取り付けられるものであり、具体的に、タグ取付用ボルト50が対象部材300に取り付けられることは明らかである。
・段落[0094]の記載から、ICタグ組み込みボルト100はRFID通信を行うものと認められる。
・段落[0019]の記載及び図3から、ICタグ基板21にICチップ22が搭載され、また、ICタグ基板21にコイルアンテナ23が搭載されるものと認められる。また、コイルアンテナ23がICチップ22に接続されることは当然である。
(3)甲8発明
以上を踏まえると、甲8には、次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されていると認められる。
「対象部材300に取り付けられ、RFID通信を行うICタグ組み込みボルト100であって、
ICタグ基板21と、ICタグ基板21に搭載されたICチップ22と、ICタグ基板21に搭載され且つICチップ22に接続されるコイルアンテナ23とを有するICインレット20と、
前記ICインレット20を覆うタグ保護部30と、を有するボルト取付用タグ10と、
頭部に嵌合穴52が設けられ、この嵌合穴20にボルト取付用タグ10が嵌め込まれ、対象部材300に取り付けられるタグ取付用ボルト50とを備え、
タグ取付用ボルト50は、嵌合穴52の開口側の縁部分に、内径側に向かって突出する抜け止め部521が設けられ、嵌合穴52にボルト取付用タグ10が嵌め込まれると、タグ保護部30の外周側が、抜け止め部521に引っ掛かることにより、ボルト取付用タグ10が嵌合穴52から抜けるのが防止される、
対象部材300に取り付られ、RFID通信を行うICタグ組み込みボルト100。」
5 甲9について
(1)甲9の記載事項
「【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を固定するために使用されるボルトなどの固定具に関し、特に、電磁誘導又は電磁結合を利用して非接触でデータの交信を行うRFID(Radio Frequency Identification)タグを備えるタグ付きボルトに関する。」
「【0027】
また、図2に示すように、タグ2は、プラスチックフィルムやガラスエポキシなどの絶縁性部材で構成される基材2c上に、共振回路を構成するタグアンテナ2aとコンデンサ(IC2bに容量を含む場合は必ずしも必要ではなく、図では記載を省略している。)と、ボルト3を識別するための情報などが記憶されるIC2b(複数のタグ2の各々を識別する必要がない場合はIC2bは不要である。)とを備えており、内蔵する電源又はリーダ/ライタ4から供給される電力を用いて駆動される。そして、タグ2及びリーダ/ライタ4の共振周波数をキャリア周波数(例えば、13.56MHzなど)に合わせることにより、タグ2とリーダ/ライタ4との間でデータの交信が行われる。
【0028】
なお、ボルト3の形状や大きさ、材料などは特に限定されず、ボルト3によって固定される物品の形状や構造、締め付け強度などに応じて適宜変更することができる。また、上記物品の固定に使用される全てのボルト3に本実施例のタグ2を配設する必要はなく、少なくとも1つのボルト3にタグ2が配設されていればよい。また、図1では、タグ2をボルト3の頭部に埋設しているが、タグ2は、タグアンテナ2aのアンテナ面がボルト3の軸に略直交する方向を向くように配置されていればよく、例えば、ボルト3のネジ部の内部などに配設してもよい。」
「【0038】
そして、図4に示すように、ボルト3の頭部3aの凹部3cの内部に、導線を渦巻き状に巻回したループ状のタグアンテナ2aのアンテナ平面がボルト3の軸に略直交するようにタグ2を配設する。その際、単にタグ2を凹部3cに挿入するだけではタグ2がボルト3の凹部3cから飛び出したり、タグ2がスパナなどの締め付け工具に接触して破損する恐れがあることから、図11に示すように、凹部3cの内部に樹脂6などを充填してタグ2をボルト3の凹部3cの内部に固定して保護したり、図12に示すように、凹部3cにタグ2を配設した後、その外径が凹部3cの内径と略等しい、プラスチックなどの部材からなるキャップ7を被せてタグ2をボルト3の凹部3cの内部に固定して保護する構成とすることもできる。」
図2「
[図:0001411284000006.jpg]
」
図11「
[図:0001411284000007.jpg]
」
(2)甲9の認定事項
・段落【0028】の記載から、ボルト3は物品を固定するものであるから、ボルト3は物品に固定されるものと認められ、段落【0001】等の記載から、ボルト3は、RFIDタグを備えるタグ付きボルトと認められる。
・段落【0027】に記載されたタグアンテナ2aが、IC2bに接続されることは当然である。
(3)甲9発明
以上を踏まえると、甲9には次の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されていると認められる。
「物品に固定され、RFIDタグを備えるタグ付きボルトであって、
基材2cと、基材2c上にIC2bと、IC2bに接続されるタグアンテナ2aとを備えたタグ2と、
頭部3aに凹部3cが設けられ、タグ2を凹部3cの内部に固定し、物品に固定されるボルト3と、を備え、
タグ2は、凹部3cの内部に樹脂6などを充填して固定して保護される、
物品に固定され、RFIDタグを備えるタグ付きボルト。」
6 甲10について
甲10には、次の事項が記載されている。
・198ページ「
[図:0001411284000008.jpg]
」
7 甲11について
甲11には、次の事項が記載されている。
・197~198ページ「
[図:0001411284000009.jpg]
[図:0001411284000010.jpg]
」
第6 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
取消理由を通知した請求項1は、本件訂正により削除されたから、取消理由通知に記載した取消理由は解消した。
2 取消理由通知で採用しなかった異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、
本件発明2~5は、甲1又は甲2を主たる引用例とし、甲6、甲7等を従たる引用例として、
本件発明6は、甲8又は甲9を主たる引用例とし、甲5を従たる引用例として、
本件発明7、8は、甲1又は甲2を主たる引用例とし、甲7を従たる引用例として、
それぞれ進歩性がない旨を申立てているので、以下検討する。
2-1 本件発明2~5について
(1)甲1発明を主たる引用例とする場合
ア 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲1発明と対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。
相違点1A:RFIDタグユニットが取り付けられる物品が、本件発明2では「鉄道車両の輪軸」であり、さらに「前記輪軸の車軸は、その端面に開口する中空空間を有する中空車軸であ」り、RFIDタグが搭載され車軸に取り付けられる取付部材が「前記車軸の前記端面の開口を塞ぐ樹脂プラグである」のに対し、甲1発明のRFIDタグが取り付けられるのは「金属含有物品」であり、その取付箇所は、具体的に特定されない点。
(イ)判断
相違点1Aについて検討すると、鉄道車輪の中空車軸の端面の開口を塞ぐ樹脂プラグにRFIDタグを搭載することは、いずれの証拠にも記載も示唆もない。
すなわち、甲3~甲5には、鉄道車輪の輪軸の管理を行うためのRFIDタグについて記載されているものの、鉄道車輪の中空車軸の端面の開口を塞ぐ樹脂プラグに搭載することを示唆するものではなく、甲6には、鉄道用車輪の中空車軸の開口を塞ぐゴムキャップ24が記載されているものの、当該ゴムキャップ24にRFIDタグを搭載することは何ら記載も示唆もない。また、その他の証拠にも、鉄道車輪の中空車軸の端面の開口を塞ぐ樹脂プラグにRFIDタグを搭載することは、記載も示唆もない。
そうすると、甲1発明のRFIDタグは、その適用先が特定されていないところ、RFIDタグが取り付けられる物品を鉄道車両の輪軸とした上、さらに、鉄道車輪の中空車軸の端面の開口を塞ぐ樹脂プラグに搭載するものとして、相違点1Aに係る本件発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、本件発明2は、その余の点について検討するまでもなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明3~5について
(ア)対比
本件発明3~5と甲1発明と対比すると、両者は、RFIDの取り付け位置に関して、少なくとも以下の相違点1B~1Dでそれぞれ相違する。
・本件発明3
相違点1B:RFIDタグユニットが取り付けられる物品が、本件発明3では「鉄道車両の輪軸」であり、さらに「前記輪軸の車綸のリム部の内周面には、溝が形成されており」、RFIDタグが搭載され車軸に取り付けられる取付部材が「前記輪軸の前記溝に嵌合される弾性材料からなる防音リングである」のに対し、甲1発明のRFIDタグが取り付けられるのは「金属含有物品」であり、その取付箇所は、具体的に特定されない点。
・本件発明4
相違点1C:RFIDタグユニットが取り付けられる物品が、本件発明4では「鉄道車両の輪軸」であり、さらに「前記輪軸の車輪の円板部には、吊穴が形成されて」いるものであり、RFIDタグが搭載され車軸に取り付けられる取付部材が「前記車輪の前記吊穴を塞ぐ樹脂プラグである」のに対し、甲1発明のRFIDタグが取り付けられるのは「金属含有物品」であり、その取付箇所は、具体的に特定されない点。
・本件発明5
相違点1D:RFIDタグユニットが取り付けられる物品が、本件発明5では「鉄道車両の輪軸」であり、RFIDタグが搭載され車軸に取り付けられる取付部材が「前記輪軸の軸線周りの周面に嵌合される実質的にリング状の部材である」のに対し、甲1発明のRFIDタグが取り付けられるのは「金属含有物品」であり、その取付箇所は、具体的に特定されない点。
(イ)判断
相違点1B~1Dに係る本件発明3~5のRFIDタグの取り付け位置とすることは、いずれの証拠にも記載も示唆もない。そうすると、甲1発明において、RFIDタグユニットが取り付けられる物品を鉄道車両の輪軸とした上、さらに、具体的な取付箇所について、相違点1B~1Dのようにすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、本件発明3~5は、その余の点について検討するまでもなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)甲2発明を主たる引用例とする場合
本件発明2~5と甲2発明と対比すると、少なくとも上記相違点1A~1Dと同様の点で、それぞれ相違する。
そして、相違点1A~1Dについて上記(1)ア、イで説示したことは、甲2発明を主たる引例とした場合でも同様であるから、甲2発明において、これらの相違点のようにすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、本件発明2~5は、その余の点について検討するまでもなく、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2-2 本件発明6について
(1)甲8を主たる引用例とする場合
ア 対比
本件発明6と甲8発明と対比すると、両者は以下の点で相違する。
[相違点]
相違点8A:RFIDタグユニットが取り付けられる対象部材が、本件発明6は「鉄道車両の輪軸」であるのに対して、甲8発明のICタグ組み込みボルト100(RFIDタグユニット)は、取り付けられる対象部材が特に特定されていない点。
相違点8B:ベースシートと取付部材との関係について、本件発明6は「前記ベースシートは、前記取付部材の表面に接着されて」いるのに対し、甲8発明はICタグ基板21(ベースシート)を含むICインレット20がタグ保護部30に覆われて、タグ保護部3の外周側が、抜け止め部521に引っ掛かることで、取付用ボルト50(取付部材)の嵌合穴52から抜けるのが防止される点。
相違点8C:取付部材について、本件発明6は「遠心力に抗するように前記RFIDタグを前記輪軸の外径側から支持する部分を有する」のに対し、甲8発明の取付用ボルト50(取付部材)は、そのような特定がない点。
イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点8Bについて検討する。
相違点8Bに係る甲8発明の構成は、上記のとおり、ICタグ基板21を含むICインレット20がタグ保護部30に覆われて、タグ保護部3の外周側が、抜け止め部521に引っ掛かるというものである。
そうすると、甲8発明において、相違点8Bに係る本件発明6の発明特定事項、すなわち、ベースシート(ICタグ基板21)が取付部材(取付用ボルト50)の表面に接着されるものとするためには、タグ保護部30を用いないものとして、ICタグ基板21を取付用ボルト50に接着する必要がある。
しかしながら、甲8の段落[0005]、[0007]等を参照すると、甲8発明の解決しようとする課題は、接着剤や樹脂の充填によらずにICタグをボルトに取り付けることであり、そのために、甲8発明では、タグ保護部30を用いて、タグ保護部30の外周側が抜け止め部521に引っ掛かるものとしたところ、甲8発明を、タグ保護部30を用いないものとして、ICタグ基板21(ベースシート)を取付用ボルト50(取付部材)の表面に接着するように変更する理由はない。また、甲8発明において、そのような変更を行うことを示唆又は教示する記載は、甲5を含め、提出されたいずれの証拠にもない。
そうすると、相違点8Bに係る本件発明6の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
よって、相違点8A及び8Cについて検討するまでもなく、本件発明6は、甲8発明及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和5年11月1日の意見書で「部品同士を取り付けるに際して両者を接着することは、多くの分野で用いられる周知慣用技術に過ぎず、甲8発明において、ICタグ基板11とタグ取付用ボルト50との間を直接又は間接的に接着するものすることは当業者が適宜なし得たものである旨、主張する(8ページ「イ 相違点2について」)。
しかしながら、本件発明6は、ベースシートが取付部材の表面に接着されているのに対して、甲8発明は、ICタグ基板21(ベースシート)がタグ保護部30で覆われているのであって、仮にタグ保護部30を取付用ボルト50(取付部材)の表面に接着するとしても、ICタグ基板21(ベースシート)は、取付用ボルト50(取付部材)の表面に接着することにはならない。そして、提出されたいずれの証拠にも、甲8発明において、タグ保護部30を用いないものとして、ICタグ基板21を取付用ボルト50の表面に接着するよう変更することを示唆又は教示する記載がないことは、上記イで説示したとおりである。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(2)甲9を主たる引用例とする場合
ア 対比
本件発明6と甲9発明とを対比すると、両者は次の点で相違する。
[相違点]
相違点9A:RFIDタグユニットが取り付けられる物品が、本件発明6は「鉄道車両の輪軸」であるのに対して、甲9発明は特に特定されていない点。
相違点9B:取付部材について、本件発明6は「遠心力に抗するように前記RFIDタグを前記輪軸の外径側から支持する部分を有する」のに対し、甲9発明のボルト3(取付部材)は、そのような構成を有しない点。
イ 判断
相違点9A及び9Bは互いに関連するものであるので、合わせて検討する。
甲5には、鉄道車両の輪軸に通常見られる油圧注入孔を利用して取り付けることができるボルトにRFIDチップを設ける技術が開示されている(甲5技術事項)。
しかしながら、甲5では輪軸のどのような位置に設けられる油圧注入孔であるのか判然としない。仮に、これが甲5の図1の赤枠部分に設けられるとしても、これは、輪軸そのものではなく、輪軸に隣接した円筒状の部材の下端部付近であって、この円筒状の部材は回転しない部分と考えられる。そうすると、この位置にタグ付きボルトを取り付けたとしても、ボルトに遠心力が作用することはないから、ボルトは、遠心力に抗するようにRFIDタグを輪軸の外径側から支持する部分を有するものとはいえない。
したがって、甲9発明のタグ付きボルトに甲5技術事項を適用したとしても、相違点9Bに係る本件発明9の発明特定事項とはならない。
また、甲10及び甲11には、それぞれ図4.44及び図8.2.2に、輪軸に設けられた油圧注入孔(甲10では「油圧誘導孔」、甲11では「油圧孔」)が記載されている。
しかしながら、甲10、甲11には、油圧注入孔にボルトを取り付けることは記載されていない上、仮に、甲10、甲11の油圧注入孔において、甲5技術事項にしたがって、RFIDチップを設けたボルトを取り付けることとし、さらに、当該ボルトとして、甲9発明のタグ付きボルトを用いたとしても、次に示すように、ボルト3(取付部材)が遠心力に抗するように前記RFIDタグを前記輪軸の外径側から支持する部分を有するものとはならない。
すなわち、甲10、甲11の油圧注入孔は、その図からみて、軸線方向とのなす角度は45度程度であり、仮に甲9発明のタグ付きボルトを甲10、甲11の油圧注入孔に取り付けたとしても、タグ2の重心位置を考えると、以下の【参考図】に示すように、凹部3cの側面は、タグ2に作用する遠心力を受けるものとはならず、凹部3cの側面は、遠心力に抗するように支持する部分にはならない。
したがって、甲9発明のタグ付きボルトを甲10、甲11に記載された輪軸に設けられた油圧注入穴に適用したとしても、相違点9Bに係る本件発明6の発明特定事項とはならない。
【参考図】甲9の図11を45度程度傾け、当審で加筆したもの
[図:0001411284000011.jpg]
また、提出されたその他の証拠も、上記相違点9Bに係る本件発明6の発明特定事項とすることを記載あるいは示唆するものではない。
よって、本件発明6は、甲9発明並びに甲5に記載された事項及び甲10、甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和5年11月1日の意見書で、以下の点を主張する(12~13ページ「イ 相違点2について」)。
(ア)本件発明6の「前記取付部材は、遠心力に抗するように前記RFIDタグを前記輪軸の外径側から支持する部分を有する」の構成は、取付部材の少なくとも一部が輪軸の外径側からRFIDタグを支持していれば足りると解され、鉄道車輪の輪軸の油圧注入孔(甲10、甲11)は、車輪の径方向に対して傾くように設けられているから、必然的に凹部3cの側面の一部により、タグ2が輪軸の外径側から遠心力に抗するように支持されることになる。
(イ)甲9の段落【0038】及び図11に示される通り、タグ2が樹脂6によってボルト3の凹部3c内に埋設されており、甲9発明の物品を鉄道車両の輪軸として物品用タグ付きボルトが輪軸に取り付けられた際には、物品用タグ付きボルトの輪軸への取り付け方にかかわらず、ボルト3によってタグが外径側から支持されることになるといえる。
上記申立人の主張について検討する。
(ア)の主張については、上記イで検討したとおりであって、凹部3cの側面は、遠心力に抗するようにタグを輪軸の外径側から支持する部分ではない。
(イ)の主張について、樹脂6は、ボルト3にタグ2を「固定して保護」するためのものであって(甲9の段落【0038】)、ボルト3の一部分ではないから、取付部材(ボルト3)は、遠心力に抗するように前記RFIDタグを前記輪軸の外径側から支持する部分を有するものではない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
2-3 本件発明7、8について
本件発明7、8は、本件発明6の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものである。そして、「2-2(1)イ」及び「2-2(2)イ」で説示したように、相違点8Bや相違点9Bに係る本件発明6の発明特定事項は、いずれの文献にも記載も示唆もない、すなわち、甲1、甲2、甲7にも記載も示唆もない。
そうすると、本件発明7、8は、甲1発明又は甲2発明、及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件特許の請求項2~8に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項2~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項1に係る特許については、本件訂正請求により削除されたから、請求項1に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700405