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特許異議申立

2022-700268

鉄道車両構体

審判番号
2022-700268
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-184922
登録番号
6944324
請求日
2022年03月29日
審決日
2023年06月22日
公報発行日
2023年09月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】川崎車両株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人有古特許事務所
  • 【異議申立人】竹谷 紀子
審判長/審判官
  • 審判長 河端 賢
  • 審判官 倉橋 紀夫
  • 審判官 星名 真幸
分類
P1651.113-YAA(B61D) / P1651.121-YAA(B61D) / P1651.537-YAA(B61D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6944324号発明「鉄道車両構体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6944324号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし9〕について訂正することを認める。 特許第6944324号の請求項1ないし6、8及び9に係る特許を維持する。 特許第6944324号の請求項7に係る特許についての特許異議申立てを却下する。

理由

理 由 特許第6944324号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成29年9月26日に出願され、令和3年9月14日にその特許権の設定登録がされ、令和3年10月6日に特許掲載公報が発行された。 そして、令和4年3月29日付けで特許異議申立人竹谷紀子(以下「特許異議申立人」という。)より請求項1ないし9に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、令和4年6月30日付けで取消理由通知書が通知され、令和4年8月16日に特許権者より意見書及び訂正請求書が提出され、令和4年9月9日に特許権者より当該訂正請求書についての手続補正書(方式)が提出され、令和4年10月28日に特許異議申立人より意見書が提出され、令和5年1月5日付けで特許異議申立人に対して審尋し期間を指定して回答書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人からは応答がなかった。その後、令和5年3月28日付けで取消理由通知書(決定の予告)が通知され、令和5年4月25日に特許権者より意見書及び訂正請求書が提出された。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和5年4月25日に特許権者より提出された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すために当審にて付与したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「車両長手方向から見て、前記ダブルスキン構造のうち」と記載されているのを、「車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されており、前記ダブルスキン構造のうち」に訂正する。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、3、8及び9も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に「前記ハモニカ型構造部が、前記屋根構体の車幅方向の前記中央部、前記軒桁の前記中央部、及び、前記側構体の前記吹寄せ部のうちの少なくともいずれかに配置されている」と記載されているのを、「前記ハモニカ型構造部が、前記屋根構体の車幅方向の前記中央部、前記軒桁の前記中央部、及び、前記側構体の前記吹寄せ部に配置されている」に訂正する。 請求項3を直接又は間接的に引用する請求項8及び9も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に「車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と軒桁の中央部との間の領域」と記載されているのを、「車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されており、前記屋根構体の車幅方向の中央部と軒桁の中央部との間の領域」に訂正する。 請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5ないし9も同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれか1項」と記載されているのを、「請求項1~6のいずれか1項」に訂正する。 請求項8を直接的に引用する請求項9も同様に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項9に「前記複数の中空形材のうち、前記軒桁及び前記吹寄せ部の少なくともいずれかに対応して配置された中空形材の前記内板部、前記外板部、及び前記連結板部の少なくともいずれかが、車両長手方向から見て、複数の位置で異なる板厚寸法を有している」と記載されているのを、「前記複数の中空形材のうち、前記吹寄せ部に対応して配置された中空形材の前記内板部、前記外板部、及び前記連結板部の少なくともいずれかが、車両長手方向から見て、複数の位置で異なる板厚寸法を有し、前記複数の中空形材のうち、前記軒桁に対応して配置された中空形材の前記内板部及び前記外板部が、車体の周方向に変化する板厚寸法を有している」に訂正する。 (7)一群の請求項についての説明 訂正前の請求項1ないし3、8及び9について、請求項2、3、8及び9は、請求項1を引用しているものであるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。また、訂正前の請求項4ないし9について、請求項5ないし9は、請求項4を引用しているものであるから、訂正事項3によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし9に対応する訂正後の請求項1ないし9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、請求項1に記載されている鉄道車両構体を、「車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されて」いる構成に減縮するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、請求項1に記載されている鉄道車両構体を、「車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されて」いる構成に減縮するものである。 したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0045】及び図1の記載に基づくものである。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3に「前記ハモニカ型構造部が、前記屋根構体の車幅方向の前記中央部、前記軒桁の前記中央部、及び、前記側構体の前記吹寄せ部のうちの少なくともいずれかに配置されている」と記載されているのを、「前記ハモニカ型構造部が、前記屋根構体の車幅方向の前記中央部、前記軒桁の前記中央部、及び、前記側構体の前記吹寄せ部に配置されている」に訂正するというものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3に「前記ハモニカ型構造部が、前記屋根構体の車幅方向の前記中央部、前記軒桁の前記中央部、及び、前記側構体の前記吹寄せ部のうちの少なくともいずれかに配置されている」と記載されているのを、「前記ハモニカ型構造部が、前記屋根構体の車幅方向の前記中央部、前記軒桁の前記中央部、及び、前記側構体の前記吹寄せ部に配置されている」に訂正するというものである。 したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0026】並びに図1及び図2の記載に基づくものである。 したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、請求項4に記載されている鉄道車両構体を、「車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されて」いる構成に減縮するものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、請求項4に記載されている鉄道車両構体を、「車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されて」いる構成に減縮するというものである。 したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、願書に添付した明細書の段落【0045】及び図1の記載に基づくものである。 したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項7を削除するものである。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項7を削除するものである。 したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項7を削除するものであるから、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。 したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正事項5は、請求項8が従属する請求項を「請求項1~7のいずれか1項」から「請求項1~6のいずれか1項」に減縮するものである。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項5は、請求項8が従属する請求項を「請求項1~7のいずれか1項」から「請求項1~6のいずれか1項」に減縮するというものである。 したがって、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項5は、請求項8が従属する請求項を「請求項1~7のいずれか1項」から「請求項1~6のいずれか1項」に減縮するというものであるから、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。 したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的について 訂正事項6は、特許請求の範囲の請求項9に「前記複数の中空形材のうち、前記軒桁及び前記吹寄せ部の少なくともいずれかに対応して配置された中空形材の前記内板部、前記外板部、及び前記連結板部の少なくともいずれかが、車両長手方向から見て、複数の位置で異なる板厚寸法を有している」と記載されているのを、「前記複数の中空形材のうち、前記吹寄せ部に対応して配置された中空形材の前記内板部、前記外板部、及び前記連結板部の少なくともいずれかが、車両長手方向から見て、複数の位置で異なる板厚寸法を有し、前記複数の中空形材のうち、前記軒桁に対応して配置された中空形材の前記内板部及び前記外板部が、車体の周方向に変化する板厚寸法を有している」に訂正するというものである。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項6は、特許請求の範囲の請求項9に「前記複数の中空形材のうち、前記軒桁及び前記吹寄せ部の少なくともいずれかに対応して配置された中空形材の前記内板部、前記外板部、及び前記連結板部の少なくともいずれかが、車両長手方向から見て、複数の位置で異なる板厚寸法を有している」と記載されているのを、「前記複数の中空形材のうち、前記吹寄せ部に対応して配置された中空形材の前記内板部、前記外板部、及び前記連結板部の少なくともいずれかが、車両長手方向から見て、複数の位置で異なる板厚寸法を有し、前記複数の中空形材のうち、前記軒桁に対応して配置された中空形材の前記内板部及び前記外板部が、車体の周方向に変化する板厚寸法を有している」に訂正するというものである。 したがって、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項6は、願書に添付した明細書の段落【0061】、【0062】及び【0094】並びに図6に基づくものである。 したがって、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 3 小括 本件訂正による訂正事項1ないし6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合する。 よって、訂正後の請求項〔1ないし9〕について訂正を認める。 第3 本件発明 上記のとおり、請求項1ないし9についての訂正は認められるから、本件の請求項1ないし9に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 側梁を有する台枠と、側構体と、屋根構体とを備え、 前記側構体と前記屋根構体と前記側梁とは、内壁部と、外壁部と、前記内壁部と前記外壁部とを壁面を離隔させた状態で連結する複数の連結板部とを含むダブルスキン構造を有し、 前記ダブルスキン構造は、車両長手方向から見て、前記複数の連結板部のうちの隣接する2つの連結板部と前記内壁部と前記外壁部とにより形成される閉空間が四角形であるハモニカ型構造部と、車両長手方向から見て、前記ハモニカ型構造部に隣接し、前記2つの連結板部と、前記内壁部又は前記外壁部とにより形成される閉空間が三角形であるトラス型構造部とを有し、 車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されており、前記ダブルスキン構造のうち、前記屋根構体の車幅方向の中央部と軒桁の中央部との間の領域、前記軒桁の前記中央部と前記側構体の吹寄せ部との間の領域、及び、前記側構体の吹寄せ部と前記側梁との間の領域の少なくともいずれかに、車体の周方向の両側に隣接する隣接領域に挟まれ、前記隣接領域に比べて、前記内壁部が前記外壁部に向けて部分的に窪んで車外側に配置されることにより、構体厚み寸法が縮小された厚み縮小部が形成されている、鉄道車両構体。 【請求項2】 前記厚み縮小部は、車両長手方向から見て、鉄道車両構体に負荷される曲げモーメントの絶対値が最小値となる位置に対応して形成されている、請求項1に記載の鉄道車両構体。 【請求項3】 前記ハモニカ型構造部が、前記屋根構体の車幅方向の前記中央部、前記軒桁の前記中央部、及び、前記側構体の前記吹寄せ部に配置されている、請求項1又は2に記載の鉄道車両構体。 【請求項4】 側梁を有する台枠と、側構体と、屋根構体とを備え、 前記側構体と前記屋根構体と前記側梁とは、内壁部と、外壁部と、前記内壁部と前記外壁部とを壁面を離隔させた状態で連結する複数の連結板部とを含むダブルスキン構造を有し、 車両長手方向から見て、前記内壁部、前記外壁部、及び前記複数の連結板部の少なくともいずれかが、複数の位置で異なる板厚寸法を有し、 車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されており、前記屋根構体の車幅方向の中央部と軒桁の中央部との間の領域、前記軒桁の前記中央部と前記側構体の吹寄せ部との間の領域、及び、前記側構体の吹寄せ部と前記側梁との間の領域の少なくともいずれかに、車体の周方向の両側の隣接領域に挟まれ、前記隣接領域に比べて前記内壁部が前記外壁部に向けて部分的に窪んで車外側に配置されることにより、構体厚み寸法が縮小された厚み縮小部が形成されている、鉄道車両構体。 【請求項5】 車両長手方向から見て、前記複数の連結板部のうちいずれかが、前記車体の車内側と車外側とのうち一方から他方に向けて、板厚寸法が漸減した漸減領域を有する、請求項4に記載の鉄道車両構体。 【請求項6】 前記ダブルスキン構造は、車両長手方向から見て、前記複数の連結板部のうちの隣接する2つの連結板部と前記内壁部と前記外壁部とにより形成される閉空間が四角形であるハモニカ型構造部を更に備え、 車両長手方向から見て、前記ハモニカ型構造部内に配置された前記複数の連結板部のうち前記車体の周方向に隣接する2以上の連結板部が、互いに交差する方向に延びている、請求項4又は5に記載の鉄道車両構体。 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 前記側構体と前記屋根構体とは、複数の中空形材を有し、 前記複数の中空形材の各々は、前記車体の車内側に配置された内板部と、前記連結板部と、前記車体の車外側に配置され、前記内板部と板面を離隔させた状態で前記内板部と前記連結板部により連結された外板部とを含み、 前記複数の中空形材において、複数の前記内板部が結合されて前記内壁部が形成されていると共に、複数の前記外板部が結合されて前記外壁部が形成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の鉄道車両構体。 【請求項9】 前記複数の中空形材のうち、前記吹寄せ部に対応して配置された中空形材の前記内板部、前記外板部、及び前記連結板部の少なくともいずれかが、車両長手方向から見て、複数の位置で異なる板厚寸法を有し、 前記複数の中空形材のうち、前記軒桁に対応して配置された中空形材の前記内板部及び前記外板部が、車体の周方向に変化する板厚寸法を有している、請求項8に記載の鉄道車両構体。」 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が令和5年3月28日付けで特許権者に通知した取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。 本件特許出願は、特許請求の範囲の請求項7の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、請求項7ないし9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 2 当審の判断 上記1の取消理由の対象である本件請求項7に係る特許は、本件訂正により削除された。さらに、本件訂正により請求項8及び請求項8を引用する請求項9が請求項7を引用しないものとなった。 したがって、上記取消理由によっては、本件請求項7に係る特許を取り消すことはできない。 第5 取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要 本件訂正により削除されていない本件発明1ないし6、8及び9に対する、取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 (1)理由1 本件特許の請求項1ないし3及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1ないし3及び8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)理由2 本件特許の請求項1ないし6、8及び9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証ないし甲第8号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし6、8及び9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 <甲号証一覧> 甲第1号証:特開2004-130872号公報 甲第2号証:特開2004-90850号公報 甲第3号証:特開平2-246863号公報 甲第4号証:特開平9-221024号公報 甲第5号証:国際公開第2012/110045号 甲第6号証:遠藤友幸,田中修司,齋藤裕之,JR東日本E5系新幹線電 車(量産先行車)の概要,車両技術,日本鉄道車輌工業会, 2010年3月,239号,3~21ページ 甲第7号証:特開2004-34818号公報 甲第8号証:特開平10-138918号公報 (以下、「甲第1号証」ないし「甲第8号証」を、「甲1」ないし「甲8」という。) 2 甲1に記載された発明 甲1(特に、段落【0009】ないし【0028】及び【0031】ないし【0037】並びに図1を参照。)には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 〔甲1発明〕 「側梁130を有する台枠10と、側構体40と、屋根構体20とを備え、 前記側構体40と前記屋根構体20と前記側梁130の各中空形材は、車内側の面板と、車外側の面板と、この両側の面板を接続する複数の接続板とからなり、接続板は面板とによってトラスを構成するように配置され、 屋根中央部21の中空形材210と、軒桁60の中空形材610、620と、側構体40の中央部41の中空形材420、430とは、それぞれ厚さを有し、前記屋根構体20の端部の中空形材240のほぼ中央部であって、前記屋根中央部21と軒部60の中央部との間には、前記屋根構体20の中空形材で最も薄く、前記軒部60の中空形材610、620よりも薄い部分243があり、前記中空形材240の車内側の面板は車外側に凸の曲面で構成されている、鉄道車両構体。」 3 甲2に記載された発明 甲2(特に、段落【0004】、【0010】、【0024】、【0037】、【0042】ないし【0045】、【0048】ないし【0054】、【0064】及び【0071】並びに図1、8、10及び11を参照。)には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。 〔甲2発明〕 「台枠4と、前記台枠4に固定するための固定部2aを有する側構体2と、屋根構体3とを備え、 前記側構体2と前記屋根構体3とは、内側面板7と外側面板6とを中板8で連結し、2つの中板8と内側面板7又は外側面板6とにより形成される閉空間が三角形である中空形材5を複数接続して構成され、 屋根構体3の中心位置3aにおける構体厚W2が厚く形成され、前記側構体2と前記屋根構体3が結合する部分である構体肩部14の構体厚W1が固定部2aを除いて構体の内で最も厚く形成され、側構体2の中央付近の構体厚W4が薄く形成され、前記屋根構体3において、前記中心位置3aと、前記構体肩部14との間の構体厚W3が、内側面板7が外側面板6に向けて部分的に窪んで車外側に配置されることにより薄く形成されている、鉄道車両用構体。」 4 理由1(特許法第29条第1項第3号)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「側梁130」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1の「側梁」に相当し、以下同様に、「台枠10」は「台枠」に、「側構体40」は「側構体」に、「屋根構体20」は「屋根構体」に、「車内側の面板」は「内壁部」に、「車外側の面板」は「外壁部」に、「接続板」は「連結板部」に、「屋根中央部21」は「屋根構体の車幅方向の中央部」に、「軒部60」は「軒桁」に、「側構体40の中央部41」は「側構体の吹き寄せ部」に、それぞれ相当する。 甲1発明における「前記側構体40と前記屋根構体20と前記側梁130の各中空形材は、車内側の面板と、車外側の面板と、この両側の面板を接続する複数の接続板とからな」る態様は、本件発明1における「前記側構体と前記屋根構体と前記側梁とは、内壁部と、外壁部と、前記内壁部と前記外壁部とを壁面を離隔させた状態で連結する複数の連結板部とを含むダブルスキン構造を有」する態様に相当する。 甲1発明における「接続板は面板とによってトラスを構成するように配置され」る態様は、本件発明1における「前記2つの連結板部と、前記内壁部又は前記外壁部とにより形成される閉空間が三角形であるトラス型構造部とを有」する態様に相当する。 甲1発明における「屋根中央部21の中空形材210と、軒桁60の中空形材610、620と、側構体40の中央部41の中空形材420、430とは、それぞれ厚さを有し」と本件発明1の「車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹き寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されており」とは、「車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹き寄せ部とは、前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法が設定されており」という限りにおいて一致する。 甲1発明における「前記屋根構体20の端部の中空形材240のほぼ中央部であって、屋根中央部21と軒部60の中央部との間」は、本件発明1における「前記ダブルスキン構造のうち、前記屋根構体の車幅方向の中央部と軒桁の中央部との間の領域」に相当する。 甲1発明の「中空形材240のほぼ中央部」に「前記屋根構体20の中空形材で最も薄く、軒部60の中空形材610、620よりも薄い部分243があり、前記中空形材240の車内側の面板は車外側に凸の曲面で構成されている」態様は、本件発明1における「車体の周方向の両側に隣接する隣接領域に挟まれ、前記隣接領域に比べて、前記内壁部が前記外壁部に向けて部分的に窪んで車外側に配置されることにより、構体厚み寸法が縮小された厚み縮小部が形成されている」態様に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 〔一致点〕 「側梁を有する台枠と、側構体と、屋根構体とを備え、 前記側構体と前記屋根構体と前記側梁とは、内壁部と、外壁部と、前記内壁部と前記外壁部とを壁面を離隔させた状態で連結する複数の連結板部とを含むダブルスキン構造を有し、 前記ダブルスキン構造は、車両長手方向から見て、前記2つの連結板部と、前記内壁部又は前記外壁部とにより形成される閉空間が三角形であるトラス型構造部とを有し、 車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹き寄せ部とは、前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法が設定されており、前記ダブルスキン構造のうち、前記屋根構体の車幅方向の中央部と軒桁の中央部との間の領域、前記軒桁の前記中央部と前記側構体の吹寄せ部との間の領域、及び、前記側構体の吹寄せ部と前記側梁との間の領域の少なくともいずれかに、車体の周方向の両側に隣接する隣接領域に挟まれ、前記隣接領域に比べて、前記内壁部が前記外壁部に向けて部分的に窪んで車外側に配置されることにより、構体厚み寸法が縮小された厚み縮小部が形成されている、鉄道車両構体。」 〔相違点1〕 ダブルスキン構造に関し、本件発明1は、「車両長手方向から見て、前記複数の連結板部のうちの隣接する2つの連結板部と前記内壁部と前記外壁部とにより形成される閉空間が四角形であるハモニカ型構造部」を有し、「前記ハモニカ型構造部に隣接」したトラス型構造部を有するのに対して、甲1発明は、そのようなハモニカ型構造部を有するのか否か不明な点。 〔相違点2〕 ダブルスキン構造の構体厚み寸法に関し、本件発明1は、「前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されて」いるのに対して、甲1発明は、そのような厚みとなっていない点。 イ 判断 (ア)相違点2について 事案に鑑みて、上記相違点2について、まず検討する。 甲1には、以下の記載事項がある。なお、下線は、当審で付した。 「【0007】 本発明の目的は、軽量で車内空間が広い車両構体を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】 上記目的は、屋根構体と、側構体と、台枠とからなり、前記屋根構体、前記側構体を複数の中空形材を接合して構成してなる車両構体において、気密圧力によって前記屋根構体、前記側構体に発生する曲げ変形や曲げ応力が小さい部分の中空形材の厚さを薄くすること、によって達成できる。」 「【0022】 軒部60の中空形材610の最も厚い部分の厚さ、及び屋根中央部21の中空形材210の厚さは、従来よりも若干厚い。」 「【0026】 例を説明すると、車両構体の幅方向の中心から側構体50の車外側の面板までの距離は水平方向に約1700mm、最も薄い部分243の位置は車両構体の中心から水平方向に約1000mmの位置である。中空形材210の厚さは60mm、面板の厚さは2mm、接続板の厚さは1.5mmである。最も薄い部分243の中空形材の厚さは30mm、面板の厚さは2mm、接続板の厚さは1.5mmである。中空形材610,620の最も厚い部分の中空形材の厚さは90mm、面板の厚さは2mm、接続板の厚さは1.5mmである。 【0027】 側構体40の中央の最も薄い部分460の中空形材の厚さは30mmである。この部分の面板の厚さは3mm、接続板の面板の厚さは1.8mmである。中空形材410、130の最も厚い部分の中空形材の厚さは50mm、面板の厚さは2mm、接続板の厚さは1.8mmである。 【0028】 かかる構成によれば、後述するように、気密圧力が作用した場合においても、最大発生応力や最大変形量が減少するため、車両構体の構造強度が向上する。また、屋根中央部21と軒部60との接続部の中空形材240の厚さを低減できる。また、側構体40の中央部41の中空形材410,420の厚さを低減できる。このため、車両構体の質量を低減できると共に、車内空間を大きくできる。特に、車両の幅方向の車内空間を広くできるため、中央の通路幅や座席幅を広くでき、乗客の快適性を大きく向上できる。」 「【0031】 ここで、車両構体においては、車内空間を広くすることを主目的として、ほぼ長方形状に断面(車体の幅方向の断面)を構成することが一般的である。この場合、内圧に対して、長方形の長辺側中央部となる屋根中央部21、及び角部となる軒部60、側梁130に大きな曲げ変形が生じると共に、大きな曲げ応力が発生し、車両構体の最大発生応力や最大変形量が大きく増加する。ただし、重量のある艤装品が複数取り付けられる台枠10は剛な構造になっているため、長方形の長辺側に存在しているにも関らず、その中央部に大きな曲げ変形や曲げ応力は発生しない。 【0032】 このため、これらの部位の中空形材の高さを増加させ、断面二次モーメントを増加させることにより、それらの部位に発生する曲げ変形や曲げ応力を低減でき、車両構体の最大発生応力や最大変形量を低減できる。 【0033】 一方、曲げ変形や曲げ応力がさほど発生しない部分23(最も薄い部分23)や側中央部41の中空形材の厚さを低減しても車両構体の最大発生応力や最大変形量はさほど増加しない。 【0034】 したがって、曲げ変形や曲げ応力が小さい部分23、側中央部41の中央部460の中空形材の厚さを低減することにより、質量を低減できると共に車内空間を広くできるものである。」 甲1の上記記載事項によると、甲1には、大きな曲げ変形が生じると共に大きな曲げ応力が発生する屋根中央部21及び軒部60の中空形材の高さを増加させる(段落【0031】及び【0032】参照。)一方で、曲げ変形や曲げ応力がさほど発生しない側構体40の中央部41の中空形材の厚さを低減することにより、質量を低減できると共に車内空間を広くした(段落【0028】、【0033】及び【0034】参照。)という技術事項が記載されている。そして、甲1の段落【0022】、【0026】及び【0027】には、屋根中央部21の厚さが60mm、軒部60の厚さが90mm、側構体40の中央部41の厚さが30mmと、各々異なった厚さが例示されており、側構体40の中央部41の厚さは、屋根中央部21や軒部60よりも薄いことが例示されている。 よって、甲1記載の屋根中央部21と、軒部60と、側構体40の側中央部41との中空形材の厚み寸法は、明らかに実質的に一定に設定されておらず、上記相違点2は、実質的な相違点である。 (イ)まとめ 上記(ア)のとおり、本件発明1の相違点2は実質的な相違点であるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明ではない。 (2)本件発明2、3及び8について 本件発明2、3及び8は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項を含むものであるから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2、3及び8は甲1発明ではない。 (3)小括 以上のとおり、本件発明1ないし3及び8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではなく、上記理由1によっては、本件発明1ないし3及び8に係る特許を取り消すことはできない。 5 理由2(特許法第29条第2項)について 5-1 甲1発明を主発明とした場合 (1)本件発明1について 本件発明1と甲1発明との対比、一致点、相違点は、上記4(1)アに記載のとおりである。 上記相違点2について、以下検討する。 上記4(1)イに記載のとおり、甲1には、大きな曲げ変形が生じると共に大きな曲げ応力が発生する屋根中央部21及び軒部60の中空形材の高さを増加させる一方で、曲げ変形や曲げ応力がさほど発生しない側構体40の中央部41の中空形材の厚さを低減することにより、質量を低減できると共に車内空間を広くしたという技術事項が記載されており、側構体40の中央部41の厚さを屋根中央部21や軒部60よりも薄くすることも例示されている。 よって、仮に、屋根構体の中央部と、軒桁と、側構体の吹寄せ部との構体厚み寸法を実質的に一定に設定することが公知又は周知であったとしても、各々に発生する曲げ変形や曲げ応力に鑑みて、側構体40の中央部41の厚さを屋根中央部21や軒部60よりも薄くして、質量を低減すると共に車内空間を広くした甲1発明に採用することには、阻害要因がある。 また、例えば、甲4の図4から、車両の長手方向から見て、構体の厚み寸法を全て実質的に一定に設定することが看て取れるが、上記のとおり、各々に発生する曲げ変形や曲げ応力に鑑みて各構体の厚さを変更している甲1発明に甲4記載の技術を採用する動機付けはない。 仮に採用したとしても、甲1発明の各構体全ての厚さが一定となり、すなわち「薄い部分243」も他の部分と一定の厚さとなり、新たな相違点が生じるだけである。 そして、各々に発生する曲げ変形や曲げ応力に鑑みて各構体の厚み寸法を変更しつつ、屋根構体の中央部と、軒桁と、側構体の吹寄せ部との構体厚み寸法を実質的に一定に設定することは、甲2ないし甲8のいずれにも記載されていない。 よって、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項が容易に想到し得るという理由は見いだせないから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1発明及び甲2ないし甲8記載の技術に基いても容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明4について 本件発明4も本件発明1の相違点2に係る発明特定事項と同じ発明特定事項を含むから、本件発明4と甲1発明とを対比すると、少なくとも相違点2と同じ点において相違する。 そして、相違点2については、上記(1)で説示したとおりである。 よって、本件発明4は、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1発明及び甲2ないし甲8記載の技術に基いても容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2、3、5、6、8及び9について 本件発明2、3、5、6、8及び9は、いずれも本件発明1又は4の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、上記(1)又は(2)に示した理由と同様の理由により、本件発明2、3、5、6、8及び9は、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1発明及び甲2ないし甲8記載の技術に基いても容易に発明をすることができたものではない。 5-2 甲2発明を主発明とした場合 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「固定部2a」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1の「側梁」に相当し、以下同様に、「台枠4」は「台枠」に、「側構体2」は「側構体」に、「屋根構体3」は「屋根構体」に、「内側面板7」は「内壁部」に、「外側面板6」は「外壁部」に、「中板8」は「連結板部」に、「屋根構体3の中心位置3a」及び「中心位置3a」は「屋根構体の車幅方向の中央部」に、それぞれ相当する。 甲2発明における「固定部2a」は「側構体2」の一部であるから、甲2発明における「前記側構体2と前記屋根構体3とは、内側面板7と外側面板6とを中板8で連結し、2つの中板8と内側面板7又は外側面板6とにより形成される閉空間が三角形である中空形材5を複数接続して構成され」る態様は、本件発明1における「前記側構体と前記屋根構体と前記側梁とは、内壁部と、外壁部と、前記内壁部と前記外壁部とを壁面を離隔させた状態で連結する複数の連結板部とを含むダブルスキン構造を有し、前記ダブルスキン構造は、車両長手方向から見て、前記2つの連結板部と、前記内壁部又は前記外壁部とにより形成される閉空間が三角形であるトラス型構造部とを有」する態様に相当する。 上記相当関係を踏まえ、甲2の図1を参照すると、甲2発明の「前記側構体2と前記屋根構体3が結合する部分である構体肩部14」は本件発明1の「軒桁」に相当し、同様に、「側構体2の中央付近」は「側構体の吹寄せ部」に相当する。そして、甲2発明の「屋根構体3の中心位置3aにおける構体厚W2が厚く形成され、前記側構体2と前記屋根構体3が結合する部分である構体肩部14の構体厚W1が固定部2aを除いて構体の内で最も厚く形成され、側構体2の中央付近の構体厚W4が薄く形成され」と本件発明1の「車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹き寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されており」とは、「車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹き寄せ部とは、前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法が設定されており」という限りにおいて一致する。 そして、甲2発明の「中心位置3aと、前記構体肩部14との間」は「前記ダブルスキン構造のうち、前記屋根構体の車幅方向の中央部と軒桁の中央部との間の領域」といえるから、甲2発明の「前記屋根構体3において、前記中心位置3aと、前記側構体2と前記屋根構体3が結合する部分である構体肩部14との間の構体厚W3が、内側面板7が外側面板6に向けて部分的に窪んで車外側に配置されることにより薄く形成されている」態様は、本件発明1における「車両長手方向から見て、前記ダブルスキン構造のうち、前記屋根構体の車幅方向の中央部と軒桁の中央部との間の領域、前記軒桁の前記中央部と前記側構体の吹寄せ部との間の領域、及び、前記側構体の吹寄せ部と前記側梁との間の領域の少なくともいずれかに、車体の周方向の両側に隣接する隣接領域に挟まれ、前記隣接領域に比べて、前記内壁部が前記外壁部に向けて部分的に窪んで車外側に配置されることにより、構体厚み寸法が縮小された厚み縮小部が形成されている」態様に相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 〔一致点〕 「側梁を有する台枠と、側構体と、屋根構体とを備え、 前記側構体と前記屋根構体と前記側梁とは、内壁部と、外壁部と、前記内壁部と前記外壁部とを壁面を離隔させた状態で連結する複数の連結板部とを含むダブルスキン構造を有し、 前記ダブルスキン構造は、車両長手方向から見て、前記2つの連結板部と、前記内壁部又は前記外壁部とにより形成される閉空間が三角形であるトラス型構造部とを有し、 車両長手方向から見て、車両長手方向から見て、前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹き寄せ部とは、前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法が設定されており、前記ダブルスキン構造のうち、前記屋根構体の車幅方向の中央部と軒桁の中央部との間の領域、前記軒桁の前記中央部と前記側構体の吹寄せ部との間の領域、及び、前記側構体の吹寄せ部と前記側梁との間の領域の少なくともいずれかに、車体の周方向の両側に隣接する隣接領域に挟まれ、前記隣接領域に比べて、前記内壁部が前記外壁部に向けて部分的に窪んで車外側に配置されることにより、構体厚み寸法が縮小された厚み縮小部が形成されている、鉄道車両構体。」 〔相違点3〕 ダブルスキン構造に関し、本件発明1は、「車両長手方向から見て、前記複数の連結板部のうちの隣接する2つの連結板部と前記内壁部と前記外壁部とにより形成される閉空間が四角形であるハモニカ型構造部」を有し、「前記ハモニカ型構造部に隣接」したトラス型構造部を有するのに対して、甲2発明においては、ハモニカ型構造部を有するのか否か不明な点。 〔相違点4〕 ダブルスキン構造の構体厚み寸法に関し、本件発明1は、「前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されて」いるのに対して、甲2発明は、そのような厚さとなっていない点。 イ 判断 事案に鑑みて、上記相違点4について、まず検討する。 甲2には、以下の記載事項がある。なお、下線は、当審で付した。 「【0010】 そこで本発明は、かかる課題を解決すべく、構体の軽量化と高剛性化とを同時に実現できる鉄道車両用構体を提供することを目的とする。」 「【0042】 図1の鉄道車両用構体10は、側構体2と屋根構体3の構体厚Aが構体各部で変化している。側構体2と屋根構体3が結合する部分(以下、「構体肩部」という。)14の構体厚W1は、側構体2を台枠4に固定するための固定部2aを除いて、構体のうちで最も厚く形成されている。そして、側構体2では、中央付近の構体厚W4が薄く形成されている。また、屋根構体3では、構体幅方向の中心位置3aにおける構体厚W2が厚く形成され、構体中心部3aと構体肩部14との間の構体厚W3が薄く形成されている。 【0043】 そして、発明者は、車体外形線Mの異なる数種類の鉄道車両用構体について上記プログラムを実行して形状を最適化したところ、車両デザインすなわち車体外形線Mに基づいて車体内形線N1を決定することにより鉄道車両用構体の形状を最適化できることを確認した。 【0044】 鉄道車両用構体10は、最大幅位置を通る垂直線と、最大高さ位置を通る水平線によって構成される門型の領域内に曲線を用いて車体外形線Mを決定し、側構体2と屋根構体3を配置している。構体肩部14は、一般的に曲率が大きくなるため、断面方向に曲げようとする大きな力を受け、応力値が大きくなる。従って、車体外形線Mに基づいて、屋根構体3の中心位置3aから水平方向に第1直線L1を描き、構体最大幅位置から垂直方向に第2直線L2を描くことによって門型を形成し、第1直線L1と第2直線L2とが交差する第3点P3に相当する位置を車体外形線M上に何らかの方法で投影することができれば、鉄道車両用構体10の中で最も応力値が高くなるおおよその部位を求めることができる。 【0045】 かかる観点より、第1直線L1と第2直線L2とが公差する第3点P3は、車体外形線Mのうち構体肩部14を形成する曲線の中心点である第4点P4と第5直線L5で結ばれ、第5直線L5が車体外形線Mと公差する点である第6点P6が求められる。この第6点P6は、第3点P3が車体外形線M上に投影されたものと考えられるため、鉄道車両構体10は、固定部2aを除いて、第6点が位置する部位の構体厚W1を構体のうちで最も厚くすればよいことになる。」 「【0048】 本実施の形態では、構体肩部14の車体外形線Mに係る半径r1は400mmであり、これを半径r2を算出する関係式(半径r2(mm)=半径r1(mm)×1.1倍-80(mm))にあてはめると、半径r2は360mmになる。本実施の形態の平均構体厚は52.8mmであるから、構体肩部14の構体厚W1が平均構体厚の1.5~1.6倍すなわち79.20~84.48mmになるように第7点P7を第5直線L5上に規定し、半径r2(360mm)の曲線を描いて構体肩部14の形状を決定する。本実施の形態では、構体肩部14の構体厚W1が平均構体厚の1.54倍である81.05mmになるように第7点P7を規定している。 【0049】 また、側構体2は、鉄道車両用構体10の最大幅位置を含む範囲R2で構体厚W4を薄くする。すなわち、側構体2の下端部から構体厚W1が位置する構体肩部14までの距離に対して下端部からおおよそ7分の3~7分の5の範囲R2における構体厚W4を構体のうちで最も薄くする。当該部位を薄くできるのは、気密荷重によって側構体2を変形させようとする力と、屋根構体3が変形しようとする時に側構体2に伝えられる力とが互いに逆向きであるために打ち消し合うことになるためであると推定される。 本実施の形態では、構体厚W4が40mmになるように、最大幅位置を含む一定の範囲R2における車体内形線N1を形成している。 【0050】 一方、屋根構体3は、中心位置3aの構体厚W2を厚く、中心位置3aと構体厚W1が位置する構体肩部14との間の構体厚W3を薄くする。すなわち、屋根構体3は、中心位置3aの構体厚W2が平均構体厚の1.1~1.2倍になるように中心位置3aの車体内形線N1を形成する。このように構体厚W2を平均構体厚の1.1~1.2倍にするのは、平均構体厚の1.1倍未満にすると、構体の剛性が不足する一方、平均構体厚の1.2倍より大きくすると、剛性が過剰になるとともに客室空間を不必要に狭めることになるからである。 本実施の形態では、平均構体厚が52.8mmであるから、屋根構体3の中心位置3aの構体厚W2を58.0~63.3mmにすることが望ましい。よって、本実施の形態では、屋根構体3の中心位置3aの構体厚W2が平均構体厚の1.16倍である61mmになるように、中心位置3aの車体内形線N1を決定している。」 「【0054】 鉄道車両用構体10は、構体肩部14の構体厚W1を側構体2の固定部2aを除いた構体のうちで最も厚くすることにより構体の剛性と強度を高めており、これによって、屋根構体3と側構体2の変形を抑えることができる。また、屋根構体3は、例えば、気密荷重を受けた時に、構体幅方向の中心位置3aが大きく上下方向に変形しようとするが、構体幅方向の中心位置3aにおいて構体厚W2を平均構体厚より厚くして屋根構体3の剛性と強度を高めているので、屋根構体3の中心位置3aにおける変形が抑えられる。また、結果として、その他の屋根構体3の変形量も抑えることができる。」 「【0071】 【発明の効果】 従って、本発明の鉄道車両用構体は、外側面板と内側面板とを中板で連結した中空形材を複数接続して側構体と屋根構体とを別々に製作して、台枠上に立設した側構体の上に屋根構体を載せて結合し、あるいは、側構体と屋根構体とを一体として製作し、台枠に載せて結合したものにおいて、外側面板の断面方向位置により決定される車体外形線を一定とし、内側面板の断面方向位置を構体各部で発生する応力に基づいて変化させ、外側面板と内側面板とで形成される構体断面方向の厚さを応力の大きい部位では厚く、応力の小さい部位では薄くしているので、構体の軽量化と高剛性化とを同時に実現することができる。」 甲2の上記記載事項によると、甲2には、最も応力値が高くなる構体肩部14の構体厚W1を構体のうちで最も厚くする(段落【0044】及び【0045】参照。)とともに、屋根構体3の中心位置3aの構体厚W2を厚くして、構体の剛性と強度を高めつつ(段落【0054】参照。)、側構体2に伝えられる力が打ち消しあう部分の構体厚W4を薄くする(段落【0049】参照。)ことによって、構体断面方向の厚さを応力の大きい部位では厚く、応力の小さい部位では薄くしているので、構体の軽量化と高剛性化とを同時に実現した(段落【0071】参照。)ことが記載されている。 よって、仮に、屋根構体の中央部と、軒桁と、側構体の吹寄せ部との構体厚み寸法を実質的に一定に設定することが公知又は周知であったとしても、各構体の応力の大きさに鑑みて、屋根構体3の中心位置3aにおける構体厚W2が厚く形成され、前記側構体2と前記屋根構体3が結合する部分である構体肩部14の構体厚W1が固定部2aを除いて構体の内で最も厚く形成され、側構体2の中央付近の構体厚W4が薄く形成された甲2発明に採用することには、阻害要因がある。 また、例えば、甲4の図4から、車両の長手方向から見て、構体の厚み寸法を全て実質的に一定に設定することが看て取れるが、上記のとおり、各構体の応力の大きさに鑑みて各構体厚を変更している甲2発明に甲4記載の技術を採用する動機付けはない。 仮に採用したとしても、甲2発明の各構体の全ての構体厚が一定となり、すなわち薄く形成されている「前記屋根構体3において、前記中心位置3aと、前記構体肩部14との間の構体厚W3」も他の部分と一定の厚さとなり、新たな相違点が生じるだけである。 そして、各構体の応力の大きさに鑑みて各構体厚を変更しつつ、屋根構体の中央部と、軒桁と、側構体の吹寄せ部との構体厚み寸法を実質的に一定に設定することは、甲2ないし甲8のいずれにも記載されていない。 よって、本件発明1の相違点4に係る発明特定事項が容易に想到し得るという理由は見いだせないから、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲2発明並びに甲1及び甲3ないし甲8記載の技術に基いて容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2発明並びに甲1及び甲3ないし甲8記載の技術に基いても容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明4について 本件発明4も本件発明1の相違点4に係る発明特定事項と同じ発明特定事項を含むから、本件発明4と甲2発明とを対比すると、少なくとも相違点4と同じ点において相違する。 そして、相違点4については、上記(1)イで説示したとおりである。 よって、本件発明4は、当業者が甲2発明並びに甲1及び甲3ないし甲8記載の技術に基いて容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2発明並びに甲1及び甲3ないし甲8記載の技術に基いても容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2、3、5、6、8及び9について 本件発明2、3、5、6、8及び9は、いずれも本件発明1又は4の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、上記(1)イ又は(2)に示した理由と同様の理由により、本件発明2、3、5、6、8及び9は、当業者が甲2発明並びに甲1及び甲3ないし甲8記載の技術に基いて容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2発明並びに甲1及び甲3ないし甲8記載の技術に基いても容易に発明をすることができたものではない。 5-3 小括 以上のとおり、本件発明1ないし6、8及び9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、上記理由2によっては、本件発明1ないし6、8及び9に係る特許を取り消すことはできない。 6 令和4年10月28日に特許異議申立人より提出された意見書について (1)本件訂正の訂正事項1及び3は、令和4年8月16日に特許権者より提出された訂正請求書による訂正の訂正事項1及び3と同じであり、当該訂正事項1及び3で新たに追加された「前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されており」という発明特定事項に対し、特許異議申立人は、上記意見書において概略以下のように主張している。 ア 当該訂正事項1及び3で新たに追加された「前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されており」という記載は明確でなく、当該訂正事項1及び3に係る発明特定事項を含む本件発明1ないし9は、明確でない。 イ 当該訂正事項1及び3で新たに追加された発明特定事項は、甲4に記載されており、甲1発明又は甲2発明に甲4記載の技術を採用して、訂正事項1及び3で新たに追加された発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (2)上記特許異議申立人の主張について、以下検討する。 ア 明確性について (ア)まず、本件特許の請求項1及び4の「前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されており」という記載を検討すると、特許異議申立人が上記意見書で主張するように、「屋根構体の車幅方向の中央部のダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定、且つ、軒桁のダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定、且つ、側構体の吹寄せ部のダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定」(解釈α)であるとも、「屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、側構体の吹寄せ部とのダブルスキン構造の構体厚み寸法は、実質的に互いに等しく且つ各々の区間で一定」(解釈β)であるとも一応解される。 (イ)そこで、本件特許の発明の詳細な説明を考慮すると、段落【0037】ないし【0045】には、次のように記載されている。 「【0037】 ダブルスキン構造7は、車両長手方向から見て、複数の位置で異なる構体厚み寸法Dを有する。即ち、ダブルスキン構造7の構体厚み寸法Dは、車両長手方向から見て、鉄道車両構体1の周方向において変化している。これにより鉄道車両構体1では、その強度と重量とのバランスが最適化されている。 【0038】 具体的に鉄道車両構体1には、車両長手方向から見て、ダブルスキン構造7のうち、屋根構体4の車幅方向の中央部4aと軒桁の車体の周方向の中央部1aとの間の領域C1、軒桁の中央部1aと側構体3の吹寄せ部3bとの間の領域C2、及び、吹寄せ部3bと側梁2aとの間の領域C3の少なくともいずれか(ここでは全て)に、隣接領域に比べて内壁部7aが車外側に配置されることにより構体厚み寸法Dが縮小された厚み縮小部R1~R3が形成されている。 【0039】 厚み縮小部R1~R3は、車体の周方向に離隔して配置されている。車両長手方向から見て、厚み縮小部R1~R3の各々における車体の周方向の両側には、鉄道車両構体1の厚み縮小部R1~R3よりも構体厚み寸法Dが大きい部分が配置されている。言い換えると、厚み縮小部R1~R3は、鉄道車両構体1の内壁部7aが外壁部7bに向けて部分的に窪んだ窪み部であると言うことができる。 【0040】 厚み縮小部R1~R3は、車両長手方向に延びている。車両長手方向から見た厚み縮小部R1~R3の最大深さ寸法は、同一でなくてもよい。本実施形態では、厚み縮小部R1の最大深さ寸法は、一例として、厚み縮小部R2,R3の最大深さ寸法よりも大きくなっている。 【0041】 厚み縮小部R1~R3は、鉄道車両構体1のうち、車内外の気圧差により発生する曲げモーメントが最大値未満となる(ここでは最小値となる)領域C1~C3に形成されている。厚み縮小部R1~R3では、車両長手方向から見て、連結板部6cの長さ寸法が短縮されることにより、鉄道車両構体1の軽量化が図られている。 【0042】 なお、厚み縮小部R1~R3の車外側の面は、外壁部7bと滑らかに連続するように形成されており、鉄道車両構体1の外観形状に影響を与えないような構成としている。 【0043】 また、厚み縮小部R1~R3における内壁部7aの最大深さ寸法は、例えば、厚み縮小部R1~R3が形成される位置の鉄道車両構体1の曲げモーメントの大きさや、厚み縮小部R1~R3が形成される位置とその周辺位置とにおける鉄道車両構体1の曲げモーメントの分布によって設定される。 【0044】 なお、厚み縮小部R1~R3の形状は、同一でなくてもよい。また厚み縮小部R1~R3の形状は、例えば、車両長手方向から見て、内壁部7aが外壁部7bに向けて湾曲した形状でもよいし、内壁部7aが外壁部7bに向けて楔形や矩形に屈曲した形状でもよく、その形状は限定されない。 【0045】 また鉄道車両構体1では、曲げモーメントが比較的大きい領域(屋根構体4の中央部4a、軒桁、及び、側構体3の吹寄せ部3b)におけるダブルスキン構造7の構体厚み寸法Dが、実質的に一定となるように設定されている。これにより、当該領域における鉄道車両構体1の強度が高められている。」 段落【0037】ないし【0045】には、まず、段落【0037】において、ダブルスキン構造7の構体厚み寸法Dが、車両長手方向から見て、鉄道車両構体1の周方向において変化している旨が記載され、次に、段落【0038】ないし【0044】において、その具体的な箇所や形態について記載され、最後に、段落【0045】において、曲げモーメントが比較的大きい領域(屋根構体4の中央部4a、軒桁、及び、側構体3の吹寄せ部3b)におけるダブルスキン構造7の構体厚み寸法Dが、実質的に一定となるように設定されている旨が記載されている。 一方で、「屋根構体4の中央部4a」、「軒桁」及び「側構体3の吹寄せ部3b」におけるダブルスキン構造7の構体厚み寸法Dの相互関係については、本件特許明細書に記載は存在しない。 なお、段落【0051】には、屋根構体4の中央部4aに設けられる第1中空形材10に関し「図3に示すように、車両長手方向から見て、第1中空形材10は、厚み寸法(構体厚み寸法D)が実質的に一定である。」と記載されており、段落【0062】には、軒桁に設けられる第5中空形材14に関し、「第5中空形材14の厚み寸法(構体厚み寸法D)は、第5中空形材14の車両長手方向から見た屋根構体4の中央部4a寄りの端部を除いて実質的に一定である。」と記載されているが、第1中空形材10の厚み寸法(構体厚み寸法D)と第5中空形材14の厚み寸法(構体厚み寸法D)の相互関係まで述べたものではない。 以上を踏まえれば、段落【0037】の「ダブルスキン構造7は、車両長手方向から見て、複数の位置で異なる構体厚み寸法Dを有する。即ち、ダブルスキン構造7の構体厚み寸法Dは、車両長手方向から見て、鉄道車両構体1の周方向において変化している。」は、「異なる構体厚み寸法Dを有する」箇所は、段落【0038】ないし【0044】に記載されている厚み縮小部R1~R3であって、「異なる構体厚み寸法Dを有する」箇所以外の箇所における構体厚み寸法Dは全て一定(全て同じ)であると解するのが自然かつ合理的である。 そうすると、屋根構体4の中央部4a、軒桁、及び、側構体3の吹寄せ部3bは、「異なる構体厚み寸法Dを有する」箇所に該当しないので、「屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、及び、側構体の吹寄せ部とのダブルスキン構造の構体厚み寸法は、実質的に等しく且つ各々の区間で一定」と解される。 よって、このような本件特許の発明の詳細な説明の記載を考慮すると、本件特許の請求項1及び4の「前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されており」という記載は、「屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、及び、側構体の吹寄せ部とのダブルスキン構造の構体厚み寸法は、実質的に互いに等しく且つ各々の区間で一定に設定されている」ことを意味すると解するのが妥当である。 (ウ)さらに、「実質的に一定」という記載に関し、特許異議申立人が当該意見書で主張するように「所定部位の厚み寸法を完全に一定となるように設計しつつも製造誤差により若干変動してしまう場合を、所定部位の厚み寸法が実質的に一定と言う」と解するのが妥当である。 特許異議申立人は、当該意見書において、本件特許の図3を参照することにより、「製造誤差により若干変動した場合に限らず、積極的に構体厚み寸法を変動させる場合も含んでいます。」と主張するが、図3はあくまでも模式図であって、設計図のような緻密な図ではない。よって、図3の図示内容の厚み寸法が若干変動していたとしても、「実質的に一定」という記載が積極的に構体厚み寸法を変動させる場合も含んでいると解することはできない。 (エ)以上より、本件特許の請求項1及び4の「前記屋根構体の車幅方向の中央部と、軒桁と、前記側構体の吹寄せ部との前記ダブルスキン構造の構体厚み寸法は実質的に一定に設定されており」という記載は明確であり、本件発明1及び4、さらに、本件発明1又は4を引用する本件発明2、3、5、6、8及び9は、いずれも明確である。 イ 進歩性について 甲4記載の技術が甲1発明及び甲2発明に採用できないことは、上記5-1(1)及び5-2(1)イに説示したとおりである。 (3)以上より、当該意見書における特許異議申立人の主張は、いずれも当を得たものではなく、採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1ないし6、8及び9に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件発明1ないし6、8及び9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件の請求項7に係る特許については、本件訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による申立てのうち、請求項7に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700268

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