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特許異議申立

2023-700346

建物用庇

審判番号
2023-700346
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-116542
登録番号
7153480
請求日
2023年04月06日
審決日
2023年06月15日
公報発行日
2023年07月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社ダイケン
  • 【権利者代理人】弁理士法人森本国際特許事務所
  • 【異議申立人】アルフィン 株式会社
  • 【異議申立人代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
  • 【異議申立人代理人】鈴木 由充
審判長/審判官
  • 審判長 前川 慎喜
  • 審判官 津熊 哲朗
  • 審判官 土屋 真理子
分類
P1651.121-Y (E04F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7153480号発明「建物用庇」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7153480号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

理 由 1 手続の経緯 特許第7153480号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成30年6月20日に出願され、令和4年10月5日にその特許権の設定登録がされ、同月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1ないし4に係る発明の特許に対し、令和5年4月6日に特許異議申立人アルフィン株式会社(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 2 本件発明 本件特許の請求項1ないし4の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件特許発明1」等という。)。 「【請求項1】 複数の庇構成材が互いに幅方向に連結されてなる庇本体と、複数の庇構成材の前端部に跨って庇本体の前端部に取り付けられる先端見切り材と、を備え、前側ほど下方となるように傾斜されて配置されている建物用庇であって、 先端見切り材または先端見切り材の前方に、庇本体の上面部に沿って流れ落ちてきた雨水と、庇構成材同士の間の隙間を通って流れ落ちてきた雨水と、を合流させる合流部が設けられ、 合流部で合わされた雨水を先端見切り材の前縁または前縁前方箇所から排水するよう構成していることを特徴とする建物用庇。 【請求項2】 先端見切り材に、庇構成材同士の間の隙間を通って流れ落ちてきた雨水を通す連結部間雨水用通路が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建物用庇。 【請求項3】 先端見切り材に、連結部間雨水用通路が設けられている箇所を覆う覆い部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の建物用庇。 【請求項4】 先端見切り材が、底面部と、底面部から立設する立設部と、前側ほど下方に傾斜する覆い部と、を有し、立設部に連結部間雨水用通路としての雨水用孔部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の建物用庇。」 3 申立理由の概要 申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、次の証拠方法を提出するとともに以下のとおり主張している。 なお、申立ての理由の要約(申立書の第3頁)における「〇4(「〇4」等は丸数字を表す。)請求項4の発明は、甲第1号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。〇1請求項5の発明は、甲第1号証及び第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。」との記載は、本件特許に請求項5が存在しないこと、本件特許申立書の4.(4)〇3(エ)、(4)〇4(エ)及び(5)〇4の記載から、「〇4請求項4の発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。」の誤記と認められる。 (1)特許法第29条第2項 本件特許発明1ないし3は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件特許発明4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 [証拠方法] 甲第1号証:特開2010-209578号公報 甲第2号証:特開2015-086572号公報 4 当審の判断 (1)各甲号証の記載 ア 甲第1号証 (ア)甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、以下の記載がある(当審で下線を付した。以下同様。)。 a 「【0016】 図1および図2は、この発明の一実施例である庇1の外観を示している。 図示の庇1は、建物の外壁面10から前方へ張り出すように設置される庇板2と、建物の外壁面10に固着され庇板2を前方へ張り出した状態で庇板2の後端部を保持する保持枠3と、庇板2の開放された前端面29を塞ぐように全幅にわたって取り付けられる前縁板4とで構成されている。庇板2、保持枠3、および前縁板4を構成する各部材はアルミニウムの押出型材が用いられる。なお、図中、49は前縁板4の両端面に被せられる端枠部材である。 【0017】 庇板2は、図1および図3に示すように、側端面を互いに突き合わせるようにして幅方向へ連結される複数の中間板材20と、両側位置の中間板材20の外側端面にそれぞれ装着される側板材21,22とで構成されている。各中間板材20および各側板材21,22は、アルミニウムの押出成形により形成され、各板材の上下に対向する上板部2aと下板部2bとの間は全長にわたる中空部となっている。」 b 「【0028】 庇板2の開放された前端面29、すなわち、各中間板材20および各側板材21,22の各前端面は、図7に示すように、上板材2aの上面および下板材2bの下面に対して直角に切断されて成るものであり、この庇板2の前端面29に前記した前縁板4が装着されている。 図示例の前縁板4は、庇板2の開放された前端面29に当接しフラットな前面が雨水を下方へ導くガイド面40aとなっている縦板部40と、庇板2の上面に当接され上面が雨水を縦板部40のガイド面40aへ導くガイド面41aとなっている横板部41とが一体に形成されたものである。以下の説明では、横板部41のガイド面41aを「第1ガイド面41a」、縦板部40のガイド面40aを「第2ガイド面40a」という。」 c 「【0031】 前縁板4の縦板部40の下部内面には全幅にわたって樋状の凹部44が形成されている。凹部44の開口部分の幅は全長にわたって一定であり、凹部44の両側端は開放されている。凹部44の開口下端縁47は庇板2の前端面29の下方に被さるように突き出ており、開口下端縁47と庇板2の下面との間には雨水が流れ出るための隙間46が形成されている。凹部44は開口部分の上部が庇板2の中空部と連通するように庇板2の開放された前端面29と対向している。凹部44の開口部分の下部は外部と連通するように庇板2の下方へ突き出ている。 縦板部40の下端面40bは後側が前側より低くなるように傾斜させており、第2ガイド面40aを流下した雨水が縦板部40の下端面40bの傾斜を伝って開口下端縁47へ導かれるようになっている。」 d 「【0033】 上記した構成の庇1において、図2に示すように、庇板2の上面に溜まった雨水Pは、庇板2の上面を伝って前端の前縁板4まで導かれ、横板部41の第1ガイド面41aを経て縦板部40の第2ガイド面40aに導かれる。この場合に、前縁板4の横板部41の先端面が斜め上向きのテーパ面41bに形成されているので、庇板2の上面を伝って前端の前縁板4まで導かれた雨水はテーパ面41bによって第1ガイド面41aに乗り上がり、庇板2の上面を伝う雨水の流れが円滑となる。 縦板部40の第2ガイド面40aに至った雨水は、第2ガイド面40aを伝って下方へ流下し、縦板部40の下端より落下する。 【0034】 庇板2の板材間の連結部分などから庇板2の中空内部に浸入した雨水Qは、庇板2の中空部を前端面29に向けて流れ、開放された前端面29より前縁板4の縦板部40の凹部44内に流れ込んだ後、凹部44から溢れ出て縦板部40の下端より落下する。 庇板2の上面を伝って前縁板4まで導かれた雨水Pのうち庇板2と前縁板4の横板部41との隙間へ浸入した雨水は、前縁板4の縦板部40の内面を伝って下方へ流下し、凹部44内に流れ込んだ後、凹部44から溢れ出て縦板部40の下端より落下する。 縦板部40の下端面40bは後側が前側より低くなるように傾斜しているので、庇板2の上面を流れる雨水Pは前縁板4の前記した第1ガイド面41aおよび第2ガイド面40aを経て縦板部40の下端に達した後、縦板部40の下端面40bの傾斜下端から庇板2の内部を流れる雨水Qや縦板部40の内面を伝った雨水と一緒になって流れ落ちる。 縦板部40の凹部44は縦板部40の内面側に開口しているので、塵芥が溜まりにくく、仮に塵芥が凹部44内に付着しても雨水により外部へ容易に洗い流される。」 e 図2は次のとおりである。 [図:0001399429000001.jpg] f 上記dの【0033】の「庇板2の上面に溜まった雨水Pは、庇板2の上面を伝って前端の前縁板4まで導かれ」るとの記載をふまえ、図2より、庇板2は前側ほど下方となるように傾斜されて配置されていることが見てとれる。 g 図7は次のとおりである。 [図:0001399429000002.jpg] (イ)上記(ア)を総合すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、関連する段落または上記(ア)中の項目を括弧書きで付した。以下同様。) (甲1発明) 「建物の外壁面10から前方へ張り出すように設置される庇板2と、建物の外壁面10に固着され庇板2を前方へ張り出した状態で庇板2の後端部を保持する保持枠3と、庇板2の開放された前端面29を塞ぐように全幅にわたって取り付けられる前縁板4とで構成されている庇1であって、(【0016】) 庇板2は、側端面を互いに突き合わせるようにして幅方向へ連結される複数の中間板材20と、両側位置の中間板材20の外側端面にそれぞれ装着される側板材21,22とで構成されており、(【0017】) 庇板2は前側ほど下方となるように傾斜されて配置されており、(上記f) 庇板2の開放された前端面29、すなわち、各中間板材20および各側板材21,22の各前端面は、上板材2aの上面および下板材2bの下面に対して直角に切断されて成るものであり、この庇板2の前端面29に前記した前縁板4が装着されており、(【0028】) 前縁板4は、庇板2の開放された前端面29に当接しフラットな前面が雨水を下方へ導く第1ガイド面40aとなっている縦板部40と、庇板2の上面に当接され上面が雨水を縦板部40の第1ガイド面40aへ導く第2ガイド面41aとなっている横板部41とが一体に形成されたものであり、(【0028】) 前縁板4の縦板部40の下部内面には全幅にわたって樋状の凹部44が形成されており、凹部44の開口下端縁47は庇板2の前端面29の下方に被さるように突き出ており、開口下端縁47と庇板2の下面との間には雨水が流れ出るための隙間46が形成されており、凹部44は開口部分の上部が庇板2の中空部と連通するように庇板2の開放された前端面29と対向しており、凹部44の開口部分の下部は外部と連通するように庇板2の下方へ突き出ており、(【0031】) 庇板2の上面に溜まった雨水Pは、庇板2の上面を伝って前端の前縁板4まで導かれ、横板部41の第1ガイド面41aを経て縦板部40の第2ガイド面40aに導かれ、縦板部40の第2ガイド面40aに至った雨水は、第2ガイド面40aを伝って下方へ流下し、縦板部40の下端より落下し、(【0033】) 庇板2の板材間の連結部分などから庇板2の中空内部に浸入した雨水Qは、庇板2の中空部を前端面29に向けて流れ、開放された前端面29より前縁板4の縦板部40の凹部44内に流れ込んだ後、凹部44から溢れ出て縦板部40の下端より落下し、(【0034】) 庇板2の上面を伝って前縁板4まで導かれた雨水Pのうち庇板2と前縁板4の横板部41との隙間へ浸入した雨水は、前縁板4の縦板部40の内面を伝って下方へ流下し、凹部44内に流れ込んだ後、凹部44から溢れ出て縦板部40の下端より落下し、(【0034】) 縦板部40の下端面40bは後側が前側より低くなるように傾斜しているので、庇板2の上面を流れる雨水Pは前縁板4の前記した第1ガイド面41aおよび第2ガイド面40aを経て縦板部40の下端に達した後、縦板部40の下端面40bの傾斜下端から庇板2の内部を流れる雨水Qや縦板部40の内面を伝った雨水と一緒になって流れ落ちる、(【0034】) 庇1。」 イ 甲第2号証 (ア)甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、以下の記載がある。 a 「【0029】 図6は、庇板2の前端縁に沿って全幅にわたって装着される前縁板5を示している。この前縁板5は、全長にわたる上面開口の樋溝51を有しており、樋溝51の溝底53上に庇板2の前端面にビス止めにより固定される支持板部50が樋溝51の全長にわたって突設されている。樋溝51の溝底53は支持板部50より前側の前底部54aと支持板部50より後側の後底部54bとからなり、樋溝51は支持板部50によって前底部54a上の前溝部52aと後底部54b上の後溝部52bとに区分されている。」 b 「【0033】 支持板部50の下端部には前溝部52aと後溝部52bとを連通させる複数個の連通孔56が一定間隔毎に形成されている。前溝部52aに溜まる雨水と後溝部52bに溜まる雨水とは、液面の高い方から低い方へ流れ込むもので、これにより樋溝51からの溢水が抑えられている。前溝部52aおよび後溝部52bより成る樋溝51の両側端は塞ぎ板8により塞がれ、樋溝51の前底部54aには前溝部52aと連通する竪樋11が連設されている。 なお、この実施例の塞ぎ板8は、図2に示すように、樋溝51に溜まった雨水が塞ぎ板8より溢れ出ないように樋溝51の上面の開口面にまで達する高さのものを用いているが、図7に示すように、樋溝51に溜まった雨水が過剰なときには両端部より溢れさせて放出し得るように高さの低い溢水部81を設けてもよい。」 c 「【0036】 上記した構成の庇1において、庇板2の上面を流下してきた雨水は前端より前縁板5の樋溝51の前溝部52aに流れ込み、中間板材3および側板材31,32の中空内部を流下してきた雨水は各板材の前端より前縁板5の樋溝51の後溝部52bに流れ込む。また、両側板材31,32の樋溝部35に流れ込んだ雨水は樋溝部35を流下し、前端より前縁板5の樋溝51の後溝部52bに流れ込む。 【0037】 前溝部52aへの雨水の流入量は後溝部52bへの雨水の流入量より多いが、前溝部52aと後溝部52bとは連通孔56により連通しているので、前溝部52aの水位と後溝部52bの水位とが同じになるように、前溝部52aに溜まった雨水は連通孔56より後溝部52bへ流出し、その流出量だけ前溝部52aの液面が下がり、前溝部52aより雨水が溢れ出るのが抑えられる。 また、庇板2を構成する両側板材31,32の外側端部に樋溝部35が設けられているので、庇板2の両側より溢れ出た雨水は樋溝部35に流れ込み、庇板2の下面に雨水が回り込んで随所で滴下することもない。」 d 図6は次のとおりである。 [図:0001399429000003.jpg] (イ)甲2技術事項 上記(ア)を総合すると、甲第2号証には、以下の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 (甲2技術事項) 「庇の分野において、 庇板2の前端縁に沿って全幅にわたって装着される前縁板5を備え、(【0029】) 前縁板5は、全長にわたる上面開口の樋溝51を有しており、樋溝51の溝底53上に庇板2の前端面にビス止めにより固定される支持板部50が樋溝51の全長にわたって突設されており、樋溝51の溝底53は支持板部50より前側の前底部54aと支持板部50より後側の後底部54bとからなり、樋溝51は支持板部50によって前底部54a上の前溝部52aと後底部54b上の後溝部52bとに区分されており、(【0029】) 樋溝51の前底部54aには前溝部52aと連通する竪樋11が連設されており、(【0033】) 支持板部50の下端部には前溝部52aと後溝部52bとを連通させる複数個の連通孔56が一定間隔毎に形成されていることにより、(【0033】) 庇板2の上面を流下してきた雨水は前端より前縁板5の樋溝51の前溝部52aに流れ込み、中間板材3および側板材31,32の中空内部を流下してきた雨水は各板材の前端より前縁板5の樋溝51の後溝部52bに流れ込み、(【0036】) 前溝部52aへの雨水の流入量は後溝部52bへの雨水の流入量より多いが、前溝部52aと後溝部52bとは連通孔56により連通しているので、前溝部52aの水位と後溝部52bの水位とが同じになるように、前溝部52aに溜まった雨水は連通孔56より後溝部52bへ流出し、その流出量だけ前溝部52aの液面が下がり、前溝部52aより雨水が溢れ出るのが抑えられること。(【0037】)」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明において、「庇板2」は、側端面を互いに突き合わせるようにして幅方向へ連結される複数の「中間板材20」と、両側位置の中間板材20の外側端面にそれぞれ装着される「側板材21,22」とで構成されていることから、甲1発明における「庇板2」は、本件特許発明1における「庇本体」に相当する。 (イ)甲1発明において、「前縁板4」は、庇板2の開放された前端面29、すなわち、各中間板材20および各側板材21,22の各前端面を塞ぐように全幅にわたって取り付けられることから、甲1発明における「前縁板4」は、本件特許発明1における「先端見切り材」に相当する。 (ウ)甲1発明において、「庇板2」は前側ほど下方となるように傾斜されて配置されていることから、甲1発明における「庇1」は、本件特許発明1における「建物用庇」に相当する。 (エ)甲1発明において、「庇板2の上面」を流れる「雨水P」は、前縁板4の第1ガイド面41aおよび第2ガイド面40aを経て「縦板部40の下端」に達した後、「縦板部40の下端面40bの傾斜下端」から、「庇板2の板材間の連結部分」などから庇板2の中空内部に浸入し、庇板2の内部を流れる「雨水Q」と「一緒になって」流れ落ちることから、甲1発明における「縦板部40の下端面40bの傾斜下端」は、本件特許発明1における「合流部」に相当する。 また、本件特許発明1において、「合流部で合わされた雨水を先端見切り材の前縁または前縁前方箇所から排水するよう構成している」ことと、甲1発明において、「縦板部40の下端面40bの傾斜下端」で一緒になった雨水が「縦板部40の下端面40bの傾斜下端」から流れ落ちることとは、「合流部で合わされた雨水を先端見切り材の所定の箇所から排水するよう構成している」点で共通している。 (オ)以上を総合すると、本件特許発明1と甲1発明とは、 (一致点) 「複数の庇構成材が互いに幅方向に連結されてなる庇本体と、複数の庇構成材の前端部に跨って庇本体の前端部に取り付けられる先端見切り材と、を備え、前側ほど下方となるように傾斜されて配置されている建物用庇であって、 先端見切り材または先端見切り材の前方に、庇本体の上面部に沿って流れ落ちてきた雨水と、庇構成材同士の間の隙間を通って流れ落ちてきた雨水と、を合流させる合流部が設けられ、 合流部で合わされた雨水を先端見切り材の所定の箇所から排水するよう構成していることを特徴とする建物用庇。」 の点で一致しており、以下の点で相違する。 (相違点) 本件特許発明1では、「先端見切り材の前縁または前縁前方箇所」から排水するのに対し、甲1発明では、「前縁板4の縦板部40の下端面40bの傾斜下端」から排水しており、本件特許発明1の「先端見切り材」や甲1発明の「前縁板4」における排水位置が異なる点。 イ 判断 (ア)検討 上記相違点について検討する。 甲1発明では、「縦板部40の下端面40bの傾斜下端」から排水しており、排水位置を(先端見切り材の)「前縁または前縁前方箇所」とすることは、甲第1号証全体を見ても記載されておらず、そのように設計変更する動機もない。 さらに甲2技術事項について検討しても、甲2技術事項では、樋溝51の前底部54aには前溝部52aと連通する「竪樋11」が連設されていることから、「竪樋11」から排水するものであり、排水位置を「先端見切り材の前縁または前縁前方箇所」とすることが記載又は示唆されているものではない。 したがって、甲1発明、又は、甲1発明及び甲2技術事項から本件特許発明1を構成することは、当業者といえども容易になし得たことではない。 ウ 申立人の主張について (ア)申立人の主張 申立人は、 「(相違点) 請求項1の発明では、合流部で合わされた雨水を先端見切り材の前縁から排水するように構成しているのに対し、甲1発明では、合流部である縦板部40の下端で合わされた雨水を前縁板4の縦板部40の下端から排水するように構成している。 しかし、上記の相違点は実質的な相違ではなく、以下、この点に論及する。 請求項1の発明では、先端見切り材は「合流部」を有するものであるところ、その「合流部」は先端見切り材に設けられるものの、先端見切り材のどの位置に設けられるのかが特定されていない。本件公報の記載を参照すると、段落【0026】には、「この実施の形態では、合流部15は、先端見切り材4の下側材(下側先端見切り材)8における底面部上の前縁近傍箇所に配置され」と記載されている。この「前縁近傍箇所」は、前縁を含むから、請求項1の発明は、先端見切り材の前縁で雨水を合流し、その前縁から排水することを含んでいる。 一方、甲1発明では、前縁板4の縦板部40の下端で雨水を合流し、その下端から排水するものである。(甲第1号証の段落【0033】【0034】参照。) 次に、請求項1の発明の「先端見切り材の前縁」と甲1発明の「縦板部40の下端」とを対比するに、いずれの部位も雨水の流れの最下流端に当たり、「先端見切り板の前縁」と「縦板部40の下端」とは、部位の位置に実質的な差異はない。」(申立書第11頁第1行~第18行) と主張している。 (イ)主張の検討 本件特許発明1における「先端見切り材の前縁」と甲1発明の「前縁板4の縦板部40の下端」はいずれも雨水の流れの最下流端ではあるが、甲1発明の「縦板部40の下端面40b」は後側が前側より低くなるように傾斜しており、甲1発明の「縦板部40の下端」は「縦板部40」の後側であり、「前縁板4」全体からみてもその前縁とはいえるものではない。 したがって、本件特許発明1における「先端見切り材の前縁」と甲1発明の「前縁板4の縦板部40の下端」とは、部位の位置に実質的な差異がある。そして、上記(2)イ(ア)で検討したように、排水位置を「前縁または前縁前方箇所」とすることは、甲第1号証全体を見ても記載されておらず、そのように設計変更する動機もない。 さらに甲2技術事項について検討しても、甲2技術事項では、樋溝51の前底部54aには前溝部52aと連通する「竪樋11」が連設されていることから、「竪樋11」から排水するものであり、排水位置を「先端見切り材の前縁または前縁前方箇所」とすることが記載又は示唆されているものではない。 よって、申立人の主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、当業者が、甲1発明、又は、甲1発明及び甲2技術事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件特許発明2ないし4について 本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1の構成をすべて含み、更に減縮したものであるから、上記(2)に示した理由と同様の理由により、本件特許発明2ないし4は、甲1発明、又は、甲1発明及び甲2技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって。結論のとおり決定する。

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2023-700346

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