特許異議申立
2023-700076
腹腔鏡手術トレーニング器具
- 審判番号
- 2023-700076
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-101982
- 登録番号
- 7106095
- 請求日
- 2023年01月25日
- 審決日
- 2023年03月29日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社寿技研
- 【権利者代理人】佐原 雅史
- 【異議申立人】伊丹 勝
- 【異議申立人代理人】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 吉村 尚
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 佐藤 海
- 分類
- P1651.121-YAA(G09B) / P1651.537-YAA(G09B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7106095号発明「腹腔鏡手術トレーニング器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7106095号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7106095号の請求項1に係る特許についての出願は、平成30年5月29日に出願され、令和4年7月15日にその特許権の設定登録がされ、令和4年7月26日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年1月25日に特許異議申立人 伊丹勝(以下「特許異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7106095号の請求項1の特許に係る発明(以下「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
針状部材により穿孔可能又は刃物により切開可能な柔軟素材を有し、所定の面積を有するシート状の模擬腹壁と、
前記模擬腹壁を固定しつつ、前記模擬腹壁の下側に腹腔鏡下手術練習空間を形成する基台と、
を備え、
前記模擬腹壁は、
穿孔可能又は切開可能な前記柔軟素材からなる生地部と、
前記生地部を鉛直方向に保持して、前記基台と前記生地部の間に前記腹腔鏡下手術練習空間を形成するフレーム部と、を有し、
更に、前記生地部と前記フレーム部の間に挟持される照明装置を備えることを特徴とする腹腔鏡手術トレーニング器具。」
第3 申立理由の概要
1 申立理由1(進歩性)
特許異議申立人は、主たる証拠(甲第1号証)として米国特許出願公開第2012/0202179号明細書(以下「文献1」という。)及び従たる証拠として特開2013-12313号公報(甲第3号証。以下「文献3」という。)、特開2017-228712号公報(甲第4号証。以下「文献4」という。)、特表2007-518467号公報(甲第5号証。以下「文献5」という。)及び“フルカラーシリアルLEDテープ(1m)”、SWITCHSCIENCE、2013年7月5日、2023年1月25日検索、インターネット、URL:https://www.switch-science.com/products/1399(甲第6号証。以下「文献6」という。)、を提出し、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
また、特許異議申立人は、主たる証拠(甲第2号証)として“小児用トレーニングボックス(カメラ付) MDB1”、KOTOBUKIMedical株式会社、2018年3月16日、令和5年1月25日検索、URL:https://www.youtube.com/watch?v=42EHhOIc_So(以下「文献2」という。)及び従たる証拠として特開2013-12313号公報(甲第3号証。以下「文献3」という。)、特開2017-228712号公報(甲第4号証。以下「文献4」という。)、特表2007-518467号公報(甲第5号証。以下「文献5」という。)及び“フルカラーシリアルLEDテープ(1m)”、SWITCHSCIENCE、2013年7月5日、2023年1月25日検索、インターネット、URL:https://www.switch-science.com/products/1399(甲第6号証。以下「文献6」という。)、を提出し、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
2 申立理由2(サポート要件)
特許異議申立人は、“明細書の段落【0047】の記載から把握される課題は、練習空間を犠牲にすることなく明るい視野を確保することである。一方、本件特許発明1の発明特定事項「前記生地部と前記フレーム部の間に挟持される照明装置を備える」については、どのような構造の照明装置をどのような配向で配置するのか、また、どのような機構の組み合わせにより挟持するのか、その構造的関係が何ら規定されていない。そのため、例えば、照明装置の端部のみが生地部と前記フレーム部との間に挟持され、照明装置のその他の部分(発光部分等)がフレーム部内側の腹腔鏡下手術練習空間に突出している場合には、上記のような発明の課題を解決できないことは明らかである。また、例えば、照明装置からの発光面が生地部側に向けて配置されている場合や、フレーム部が透光性を有しない場合には、明るい視野は確保されない。してみると、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決しうるものではないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。”及び“本件特許発明1の発明特定事項1Dの「前記生地部と前記フレーム部の間に挟持される」とは、前記生地部と前記フレーム部の少なくともいずれか一方に接触することなく何等かの挟持部材により挟持される構成を含み得る。一方、図2及び図6には照明装置45が生地部60とフレーム部50の間に位置することが示されているが、これらの図からすると、当該照明装置45は生地部60とフレーム部50とによって挟みこまれていると見受けられる。すなわち、明細書及び図面では、具体的には、生地部60とフレーム部50との両方に接触し挟まれる構成が示されているのみである。してみると、本件特許発明1は、発明の詳細に記載された範囲を超えるものである。したがって、本件特許発明1は特許法第36条第6項第1号のサポート要件を満たしていない。”旨、主張する。
3 申立理由3(明確性要件)
特許異議申立人は、“本件特許発明1の発明特定事項「前記生地部と前記フレーム部の間に挟持される照明装置を備える」とは、種々の構成が想定できるため、発明の範囲が明確でない。したがって、本件特許発明1は特許法第36条第6項第2号の明確性要件を満たしていない。”旨、主張する。
第4 文献の記載
1 文献1
文献1には、
「腹腔鏡外科手術器具の操作をデモンストレートするための腹腔鏡手術シミュレータ装置10であって([0007])、
切開可能な、人の皮膚を模したシリコンゴム製の外側層82を有する模擬腹壁28([0020]、[0033]、[0034]、図1)と、
手術対象となるサンプルを支持するサンプルトレイ14と([0020]、[0021]、図1)、
装置10の床面にあり装置10の下部を形成する複数のアルミニウムの柱48([0022]、図1)からなる部位とを含み、当該装置10の床面にある複数のアルミニウムの柱48および前記サンプルトレイ14と前記模擬腹壁28との間には手術練習空間が形成され(図1)、
前記模擬腹壁28は、外側から、切開可能な、人の皮膚を模したシリコンゴム製の外側層82([0033]、[0034])と、前記外側層82の下に設けられたポリスチレン等からなる比較的堅い中間層90([0035])と、アルミニウムの柱48([0022]、図1)とから構成され、
前記外側層82と前記中間層90はボルト孔を介して接続され、中間層90には手術具が通るように複数の開口部が設けられており([0035])、
前記中間層90は、アルミニウムの柱48とともに前記外側層82を鉛直方向に支持し([0035]、図1)、
手術を行うための空間を形成している装置10上部のアルミニウムの柱48には帯状の照明ストリップ34が固定され、前記サンプルトレイ14や前記模擬腹壁28内壁を照らすものである([0020]、[0026])
腹腔鏡手術シミュレータ装置10。」
の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
2 文献2
文献2には、
「トロカー(針状部材)により穿刺可能な柔軟素材を有し、所定の面積を有するシート状の模擬腹壁と、(0:00/3:08~0:19/3:08)
前記模擬腹壁の下側に連なり、腹腔鏡下手術練習空間を形成する基台と、(0:19/3:08~2:05/3:08)
前記腹腔鏡下手術練習空間を撮影した映像を表示するモニタと、(2:05/3:08~3:08/3:08)
からなる腹腔鏡手術トレーニング器具。」
の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
3 文献3
文献3には、
「樹脂材料等により形成された透明な保護パネル910は、光を透過させる透過性を有する樹脂材料等により形成されたパネルであり、
有機EL170は、柔軟性を有し、広がりのある面全体から光を発する発光面171を有する面光源であり、
表示板ケース180のケース前面183とケース側面182との角部の内側に、樹脂材料等により形成された透明な保護パネル910及び有機EL170とを挟み込んで、表示板ケース180に係止する挟持爪部189を備え、挟持爪部189は、角部の上方と下方との2カ所に設けられ、両側の角部で合計4カ所に設けられたパネル。」(【0011】、【0039】、【0055】参照。)
が記載されていると認められる。
4 文献4
文献4には、
「集光レンズ2の入射面とLED光源1との間に、透光性を有し柔軟な柔軟性樹脂3が挟持されているLED発光装置であって、
LED発光装置は、LED光源1、柔軟性樹脂3及び集光レンズ52を支持部材60に収納し、
LED発光装置は集光レンズ52の上面の周辺にフランジ部52fを設け光学系を支持部材60に固定している、LED発光装置。」(【0029】、【0045】参照。)
が記載されていると認められる。
5 文献5
文献5には、
「フレキシブル基板のそれぞれの領域上に形成された1つ又はそれ以上のフレキシブル発光ダイオードを含む医療用光源であって、
動作中に前記光源から光が照射されることになる患者の身体の一部分に対して前記光源が共形となることができる程十分にフレキシブルであるように配置される医療用光源。」(【特許請求の範囲】、【0022】参照。)
が記載されていると認められる。
6 文献6
文献6には、
「照明ストリップ」
が記載されていると認められる。
第5 当審の判断
1 申立理由1
1-1 引用発明1を主引用発明とした理由について
(1)対比・判断
本件発明と引用発明1とを対比すると、両発明は、
[一致点]
「針状部材により穿孔可能又は刃物により切開可能な柔軟素材を有し、所定の面積を有するシート状の模擬腹壁と、
前記模擬腹壁を固定しつつ、前記模擬腹壁の下側に腹腔鏡下手術練習空間を形成する基台と、
を備え、
前記模擬腹壁は、
穿孔可能又は切開可能な前記柔軟素材からなる生地部と、
前記生地部を鉛直方向に保持して、前記基台と前記生地部の間に前記腹腔鏡下手術練習空間を形成するフレーム部と、を有する腹腔鏡手術トレーニング器具。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本件発明が「生地部とフレーム部の間に挟持される照明装置」を備えるのに対し、引用発明1は「装置10上部のアルミニウムの柱48」に「帯状の照明ストリップ34」が「固定され」ている点。
上記[相違点1]につき、本件発明の「照明装置」は、「生地部とフレーム部の間に挟持され」ていることからすると、フレーム部材が透光性を有しているものと推認できる(願書に添付した明細書にも「【0031】フレーム部50は、無色透明なPET(Polyethylene terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)の薄板で、例えば格子状に作成されることが望ましい。」と記載されている。)のに対し、引用発明1の照明ストリップ34は、装置10上部のアルミニウムの柱48に固定されているところ、空間側のアルミニウムの柱48は透光性がないものであるから、模擬腹壁28とアルミニウムの柱48との間に挟持させる動機付けはないし、仮に、模擬腹壁28とアルミニウムの柱48との間に挟持させたとしても、照明ストリップ34からの光が手術練習空間に照射されないことは明らかである。
そうすると、文献3及び4にあるとおり、透光性部材とフレームとの間に照明装置を挟持していたとしても、引用発明1において、空間側に透光性のないアルミニウムの柱48がある以上、模擬腹壁28とアルミニウムの柱48との間に照明ストリップ34を挟持させる動機付けもないし、設計上の阻害要因もあるから、引用発明1に、文献3及び4の記載の事項を適用することはできない。
そして、本件発明は、上記相違点1に係る構成により、「生地部60とフレーム部50の間に照明装置45が挟持されるので、照明部45が腹腔鏡下手術練習空間10内に突出しないため、練習空間を犠牲にすることなく明るい術野が確保でき、より適切に手術の練習ができるという優れた効果を奏する。」(【0047】参照。)及び「厚みが薄く、軽量であるため、容易にフレーム部50と生地部60の間に挟持でき、配設する場所も簡単に変えることができる。」(【0048】等参照。)という効果を奏するものである。
そうすると、本件発明は、引用発明1及び文献3乃至6から、当業者が容易に発明できたものとすることができない。
1-2 引用発明2を主引用発明とした理由について
(1)対比・判断
本件発明と引用発明2とを対比すると、両発明は、
[一致点]
「針状部材により穿孔可能又は刃物により切開可能な柔軟素材を有し、所定の面積を有するシート状の模擬腹壁と、
前記模擬腹壁を固定しつつ、前記模擬腹壁の下側に腹腔鏡下手術練習空間を形成する基台と、
を備え、
前記模擬腹壁は、
穿孔可能又は切開可能な前記柔軟素材からなる生地部と、
前記生地部を鉛直方向に保持して、前記基台と前記生地部の間に前記腹腔鏡下手術練習空間を形成するフレーム部と、を有する腹腔鏡手術トレーニング器具。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点2]
本件発明が「生地部とフレーム部の間に挟持される照明装置」を備えるのに対し、引用発明2は「前記腹腔鏡下手術練習空間を撮影した映像を表示するモニタ」を備えているものの照明装置の配置位置については定かでない点。
そうすると[相違点2]は実質的に[相違点1]と同様のものであるから、本件発明は、引用発明2及び文献3乃至6から、当業者が容易に発明できたものとすることができない。
1-3 小括
上記のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、上記申立理由1により、本件特許請求の範囲の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(サポート要件)について
本件特許明細書には以下のとおり記載されている。
「本第三実施形態に係る腹腔鏡手術トレーニング器具1によれば、生地部60とフレーム部50の間に照明装置45が挟持されるので、照明部45が腹腔鏡下手術練習空間10内に突出しないため、練習空間を犠牲にすることなく明るい術野が確保でき、より適切に手術の練習ができるという優れた効果を奏する。」(【0047】参照。)
そうすると、本件特許請求の範囲の「前記生地部と前記フレーム部の間に挟持される照明装置を備える」との構成により、上記記載における「練習空間を犠牲にすることなく明るい術野が確保でき、より適切に手術の練習ができる」との効果が奏することが理解できる。
してみると、上記特許異議申立人が主張する取消理由は採用できない。
3 申立理由3(明確性要件)について
上記2のとおり、本件特許請求の範囲の「前記生地部と前記フレーム部の間に挟持される照明装置を備える」との構成を備えることにより、本件特許明細書の「練習空間を犠牲にすることなく明るい術野が確保でき、より適切に手術の練習ができる」(【0047】参照。)との効果が奏することが理解できる。
してみると、照明装置が生地部とフレーム部の間に挟持されていれば足り、種々の構成が想定されたとしても、何ら、不明確であるとする理由にはならない。
してみると、上記特許異議申立人が主張する取消理由は採用できない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700076