特許異議申立
2023-700007
自爪の発育促進方法
- 審判番号
- 2023-700007
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-015369
- 登録番号
- 7096959
- 請求日
- 2023年01月06日
- 審決日
- 2023年03月27日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】有限会社ル・グランクール
- 【権利者代理人】高橋 洋平
- 【異議申立人】上杉 隆一
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 芳枝
- 審判官 窪田 治彦
- 審判官 五十嵐 康弘
- 分類
- P1651.121-Y (A45D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7096959号発明「自爪の発育促進方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7096959号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯の概略
特許第7096959号の請求項1~5に係る特許(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は、概ね、次のとおりである。すなわち、令和3年2月2日に出願され(特願2021-15369号)、令和4年6月29日に特許権の設定登録がされ、令和4年7月7日に特許掲載公報が発行されたところ、これに対し、令和5年1月6日に特許異議申立人上杉隆一より、特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、本件特許に係る発明を請求項の番号に従って、「本件発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
軟質化処理剤を用いてエポニキウム及び前記ルースキューティクルを軟質化させる軟質化処理と、
前記軟質化処理後において前記ネイルプレートと前記ルースキューティクルとの接触部に対して前記ネイルプレートのフリーエッジ側から前記エポニキウムの下方までキューティクルプッシャを押し込むことにより、前記ネイルプレートの表面から前記エポニキウム及び前記ルースキューティクルを剥離させる剥離処理と、
前記剥離処理後において前記エポニキウムと前記ネイルプレートとの間にできたポケットから前記エポニキウムに傷をつけることなく前記ルースキューティクルのみを摘出する除去処理と、
前記除去処理後であって剥離した前記エポニキウムが前記ネイルプレートに接触する前(すなわち前記ポケットが閉じる前)において前記エポニキウムと前記ネイルプレートとの間(すなわち前記ポケットの内部)に乾燥防止剤を塗布する乾燥防止処理と、
を備えていることを特徴とする自爪の発育促進方法。
【請求項2】
前記除去処理おいて摘出される前記ルースキューティクルは、前記ポケット内において前記ネイルプレートの表面及び前記エポニキウムの裏面のどちらにも付着していないものだけでなく、前記ポケット内において前記ネイルプレートの表面又は前記エポニキウムの裏面に付着しているものも含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の自爪の発育促進方法。
【請求項3】
前記除去処理後において表面保護剤を用いて前記表面保護剤が前記エポニキウムと前記ネイルプレートとの間に入り込まないように前記ネイルプレートの表面を保護する表面保護処理と、
を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自爪の発育促進方法。
【請求項4】
前記ネイルプレートの伸び方向を水平方向とし、前記ネイルプレートの裏側から表側に向かう方向かつ前記水平方向との直交方向を垂直方向としたとき、前記フリーエッジの端面の傾斜角が前記ネイルプレートの伸び方向から前記垂直方向に向かって段階的又は連続的に増加していくように前記フリーエッジの端面を段階的又は連続的に研磨するとともに前記フリーエッジとサイドラインとのつなぎ目を面取りする研磨処理と、
を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自爪の発育促進方法。
【請求項5】
前記除去処理においては、前記ルースキューティクルの除去後7~14日以内に新たに生成された前記ルースキューティクルを除去する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の自爪の発育促進方法。
第3 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証~甲第6号証(以下、証拠の番号に従って「甲1」などという。)を提出し、請求項1~5に係る特許は、下記の理由により取り消すべき旨主張している。
1 本件発明1、2は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び甲3に開示された技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 本件発明3は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲3に開示された技術常識及び甲4に開示された周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 本件発明4は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲3に開示された技術常識及び甲4、5に開示された周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 本件発明5は、甲1に記載された発明、甲2、6に記載された事項、甲3に開示された技術常識及び甲4、5に開示された周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(証拠方法)
甲1:“ネイルテキスト”,インフォレスト株式会社,第2版,2004年7月31日,p.008,019-021
甲2:“ジェルネイルで爪が痛んでしまった人必見!自爪の健康にこだわった本質的ネイルケアサロン|美ノ匠-ビノタクミ-”,[online],2020年11月27日,株式会社ビーエイジア,[2022年12月15日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20201127145407/https://be-takumi.jp/feature_articles/grandcoeur/>
甲3:特開2020-93170号公報
甲4:特開2016-160220号公報
甲5:渡邉季穂,“ネイルファイリングの正しいやり方!爪やすりでの爪の形の整え方”,All About Beauty,[online],2020年9月1日,株式会社オールアバウト,[2022年12月26日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20201029225916/https://allabout.co.jp/gm/gc/44343/>
甲6:“手が美しい人の秘密は「爪の甘皮処理」にありました!ネイルケアの基本のき”,キナリノ,[online],2020年11月29日,株式会社カカクコム,[2022年12月26日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20201129080601/https://kinarino.jp/cat5/34726>
第4 特許異議申立ての理由についての判断
1 甲1について
(1) 甲1に記載された事項
甲1には以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与した。)。
・「ネイルケア
本来ネイルケアは、ツメの美しさを保つため、健康なツメの育成を促すために行われるもので、ネイル技術全般の、基本とされています。」(008頁)
・「クリーンアップ
1.ぬるま湯を入れたフィンガーボールに、液体ソープを1.2滴入れます。
2.キューティクルリムーバーもしくは、キューティクルクリームをキューティクル付近になじませます。
3.約2.3分フィンガーバスにつけて、キューティクルをふやかします。キューティクルが固い場合、温度が高めのお湯を使いましょう。」(019頁)
・「ネイルケアでの「クリーンアップ」とは、キューティクルを柔らかくふやかすところから、ガーゼクリーンの後のキューティクルニッパーを使ったルーズスキンの除去までをいいます。」(019頁)
・「
[図:0001396335000001.jpg]
」(019頁)
・「プッシュアップ
水で湿らせたバトネで、サイドウォールの端からキューティクルラインの中心に向かって、円を描くように薄皮を押し上げます。同じように反対側からも押し上げていきます。」(019頁)
・「メタルプッシャーを使うときも同じ要領ですが、金属なので、ツメの表面や、皮膚を傷つけないように注意しましょう。」(019頁)
・「「薄皮」は、ツメの表面に貼りついている薄い皮のことで「ルーズスキン」ともいいます。これがツメの成長を妨げていたり、カラーリングの時にでこぼこを作ります。」(019頁)
・「
[図:0001396335000002.jpg]
」(019頁)
・「ガーゼクリーンではルーズスキンや角質化したキューティクル、ささくれなどを除去します。基本的にはガーゼを使いますが、ガーゼでは除去できないものについては、キューティクルニッパーを使用します。」(020頁)
・「4.ガーゼクリーンでは取れなかった薄皮を、キューティクルニッパーでサイドウォールの端からプッシュアップと同じように除去していいます。また、ささくれがあるようでしたら、ここで除去します。
5.ツメやその周辺の油分が失われているので、キューティクルオイルで保湿してあげるといいでしょう。キューティクルにすり込むようにします。」(020頁)
・「
[図:0001396335000003.jpg]
」(020頁)
・「キューティクルニッパーは刃物ですから取り扱いに注意してください。切るというより、「つまんで切断」するようにして使います。特にキューティクルを傷つけないように注意しましょう。」(020頁)
・「
[図:0001396335000004.jpg]
」(020頁)
・「保湿
ガーゼクリーンなどのあとには、油分が失われていますから、オイルなどで保湿してあげましょう。」(021頁)
・「
[図:0001396335000005.jpg]
」(021頁)
(2) 甲1に記載された発明について
前記(1)の甲1の記載からすると、甲1には以下の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。
(甲1発明)
「キューティクルリムーバーもしくはキューティクルクリームをキューティクル付近になじませ、ぬるま湯を入れたフィンガーバスにつけて、キューティクルを柔らかくふやかす処理と、
バトネ又はメタルプッシャーで、サイドウォールの端からキューティクルラインの中心に向かって、円を描くように薄皮を押し上げる処理と、
ガーゼ又はキューティクルニッパーにて、キューティクルを傷つけないように、ルーズスキンを除去する処理と、
ツメやその周辺をキューティクルオイルで保湿する処理と、
を備える健康なツメの育成を促す方法。」
2 甲2~6について
(1) 甲2に記載された事項
・「ここからが大切!爪の付け根にある半月板の部分を「爪母(そうぼ)と呼びますが、これは髪の毛に例えると毛根に当たる部分。甘皮との間に代謝物が溜まりますので、きちんと取り除き栄養を与えることで健やかな自爪が育ちやすくなるのだとか。代謝物を取り除き「ポケット」を作っていきます。」(3.キューティクルケアI)
・「
[図:0001396335000006.jpg]
[図:0001396335000007.jpg]
」
(2) 甲3に記載された事項
・「【0009】
以下、本発明の一実施の形態に係る爪装飾方法について図面を参照して詳細に説明する。図1(A)および(B)に示すように、人の指1は爪甲11を有する。爪母20は、爪甲11を形成する部分である。後爪郭14は、爪甲11の爪根11aを固定している皮膚の部分である。側爪郭22は、爪甲11の側爪甲縁21に接している皮膚の部分である。爪上皮15は、後爪郭14から爪甲11側へ延出した皮膚の部分である。爪上皮角質16は、爪上皮15と爪甲11との間に介在する角質の部分である。爪床19は、爪甲11が密着している部分である。爪下皮17は、爪甲11の裏側に固定されている。爪下皮角質18は、爪下皮17に連続し爪甲11の裏側における爪下皮17が固定されている部分(以下、適宜「イエローライン」と称する。)よりも爪先側(以下、適宜「フリーエッジ」と称する。)を覆っている。そして、爪甲11の側爪甲縁21におけるイエローラインと交わる部分が、応力が集中しやすいストレスポイントSPとなる。また、爪甲11におけるフリーエッジは、爪甲11のフリーエッジ以外の部分に比べて水分含有量が少ない。」
・「【0011】
初めに、爪甲11に樹脂層が形成されていない状態から新たに爪甲11を装飾する場合について説明する。まず、爪上皮角質16を除去するいわゆる甘皮処理を行う。ここでは、例えばキューティクルニッパーとメタルプッシャーとを用いて、爪上皮角質16の除去を行う。メタルプッシャーを用いる場合、例えば爪甲11の表面に対して傾斜(好ましくは45度程度傾斜)した方向からメタルプッシャーの先端部を当てた状態で、メタルプッシャーを爪上皮15へ向かって押し上げる。そして、メタルプッシャーにより押し上げられたことにより捲れ上がった爪上皮角質16を、キューティクルニッパーを用いて除去する。」
・「【0033】
その後、爪上皮角質16を除去するいわゆる甘皮処理を行う。ここでは、例えばキューティクルニッパーとメタルプッシャーとを用いて、爪上皮角質16の除去を行う。メタルプッシャーを用いる場合、例えば爪甲11の表面に対して傾斜(好ましくは45度程度傾斜)した方向からメタルプッシャーの先端部を当てた状態で、メタルプッシャーを爪上皮15へ向かって押し上げる。そして、メタルプッシャーにより押し上げられたことにより捲れ上がった爪上皮角質16を、キューティクルニッパーを用いて除去する。」
・「【図1】
[図:0001396335000008.jpg]
」
(3) 甲4に記載された事項
・「【0019】
このネイルアートの形成を行うにあたり、光硬化型のネイルジェルを爪に塗る前に、予め前述したアグリカン溶液を塗り、アグリカンを含む指先保護層を設けておくことで、HEMA等のモノマーや、紫外線による損傷を防止することができる。また、このアグリカンを含む指先保護層を設ける工程は、サンディングや甘皮処理、ベースコート、カラーコート等の、光硬化型のネイルジェルによるトップコートを設ける前の工程のいずれかの段階で行っても良いし、トップコート後に行っても良い。特に、爪への浸透、保護効果を考えるとトップコート前に行っておいたほうが良い。」
(4) 甲5に記載された事項
・「「ファイリング」とは、ネイルファイル(エメリーボード)を使って、爪の長さや形を整えること。」(「ネイルファイリングの正しいやり方!爪の形を整える方法」)
・「3.次にサイドを整えます。同様に一定方向に動かしましょう。シャープになり過ぎないように45度程度の角度をつけて削ります。
4.最後に角を整えます。同様に外側から中心に向かって一定方向に動かしましょう。ラウンドネイルはコーナーを丸く整えるのがポイントです。」(「ネイルファイリングのやり方・ラウンドネイルの作り方」)」
(5) 甲6に記載された事項
・「甘皮には「キューティクル」と「ルースキューティクル」の2種類があります。」(「甘皮には「キューティクル」と「ルースキューティクル」の2種類がある」)
・「「甘皮のケア」は個人差はありますが、除去のしすぎに気をつけながら、1~2週間に1度の頻度で行うくらいがちょうどいいのだそう。ちょっと面倒に感じるなら、ネイルケアを行っているサロンにお任せするのもいいかもしれません」(「1~2週間に1度の頻度で行うのがおすすめ」)
・「次にプッシャー等で甘皮を押し上げます。」(「2.プッシャーで甘皮を押し上げる」)
3 本件発明1についての検討
(1) 対比
ア 本件発明1と甲1発明とを、その機能に照らして対比する。
(ア) 甲1発明の「キューティクルを柔らかくふやかす処理」は、「キューティクルリムーバーもしくはキューティクルクリームをキューティクル付近になじませ、ぬるま湯を入れたフィンガーバスにつけて、キューティクルを柔らかくふやかす」処理であるところ、「キューティクルリムーバー」、「キューティクルクリーム」、「ぬるま湯」は、本件発明1の「軟質化処理剤」に相当する。
また、本件特許明細書に「エポニキウム2(別名:甘皮、キューティクル)」(【0003】)と記載されていることから、甲1発明の「キューティクル」は、本件発明1の「エポニキウム」に相当し、甲1発明の「薄皮」は「ルーズスキン」ともいい(前記1(1))、「ルーズスキンを除去する処理」においてキューティクルニッパーにて除去されるものであるから、本件発明1の「ルースキューティクル」に相当する。
そして、甲1発明の「薄皮を押し上げる処理」において、「メタルプッシャーで、…薄皮を押し上げる」ことからすると、「キューティクルを柔らかくふやかす処理」において、「キューティクル」と同様に、「薄皮」も柔らかくふやかしていることは、技術的に明らかである。
そうすると、甲1発明の「キューティクルを柔らかくふやかす処理」は、本件発明1の「軟質化処理」と同様に、「軟質化処理剤を用いてエポニキウム及び前記ルースキューティクルを軟質化させる軟質化処理」であるといえる。
(イ) 甲1発明の「薄皮を押し上げる処理」は、「バトネ又はメタルプッシャーで、サイドウォールの端からキューティクルラインの中心に向かって、円を描くように薄皮を押し上げる」処理であるところ、「メタルプッシャー」は、本件発明1の「キューティクルプッシャ」に相当し、「サイドウォールの端からキューティクルラインの中心に向かって、…薄皮を押し上げる」動作は、甲1の図面(前記1(1))からもわかるように、ネイルプレートと薄皮との接触部に対してネイルプレートのフリーエッジ側からメタルプッシャーを押していく、といった動作ということができるとともに、「薄皮を押し上げる」ことにより「薄皮」を剥離させているといえる。
そうすると、甲1発明の「薄皮を押し上げる処理」は、本件発明1の「剥離処理」と、「前記軟質化処理後において前記ネイルプレートと前記ルースキューティクルとの接触部に対して前記ネイルプレートのフリーエッジ側から」「キューティクルプッシャ」を押していくことにより、「前記ネイルプレートの表面から」「前記ルースキューティクルを剥離させる剥離処理」との限りで一致する。
(ウ) 甲1発明の「ルーズスキンを除去する処理」は、「ガーゼ又はキューティクルニッパーにて、キューティクルを傷つけないように、ルーズスキンを除去する」処理であるところ、「キューティクルを傷つけないように、ルーズスキン」を除去することから、「ルーズスキン」のみを除去していることは技術的に明らかである。
そうすると、甲1発明の「ルーズスキンを除去する処理」は、本件発明1の「除去処理」と、「前記剥離処理後において」「前記エポニキウムに傷をつけることなく前記ルースキューティクルのみ」を除去する「除去処理」との限りで一致する。
(エ) 甲1発明の「保湿する処理」は、「ツメやその周辺をキューティクルオイルで保湿する」処理であるところ、「キューティクルオイル」は、本件発明1の「乾燥防止剤」に相当し、この「保湿する処理」に「キューティクルオイル」を塗布する行為が伴うことは技術的に明らかである。
そうすると、甲1発明の「保湿する処理」は、本件発明1の「乾燥防止処理」と、「前記除去処理後であって」「乾燥防止剤を塗布する乾燥防止処理」との限りで一致する。
(オ) 甲1発明の「健康なツメの育成を促す方法」は、本件発明1の「自爪の発育促進方法」に相当する。
(カ) 以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、相違する。
(一致点)
「軟質化処理剤を用いてエポニキウム及び前記ルースキューティクルを軟質化させる軟質化処理と、
前記軟質化処理後において前記ネイルプレートと前記ルースキューティクルとの接触部に対して前記ネイルプレートのフリーエッジ側からキューティクルプッシャを押していくことにより、前記ネイルプレートの表面から前記ルースキューティクルを剥離させる剥離処理と、
前記剥離処理後において前記エポニキウムに傷をつけることなく前記ルースキューティクルのみを除去する除去処理と、
前記除去処理後であって乾燥防止剤を塗布する乾燥防止処理と、
を備えていることを特徴とする自爪の発育促進方法。」
(相違点1)
「剥離処理」に関し、本件発明1は、前記軟質化処理後において前記ネイルプレートと前記ルースキューティクルとの接触部に対して前記ネイルプレートのフリーエッジ側から「前記エポニキウムの下方まで」キューティクルプッシャを「押し込む」ことにより、前記ネイルプレートの表面から「前記エポニキウム」及び前記ルースキューティクルを剥離させるのに対し、甲1発明は、メタルプッシャーで、サイドウォールの端からキューティクルラインの中心に向かって、円を描くように薄皮を押し上げるものの、キューティクルの下方までメタルプッシャーを押し込むか不明であり、ネイルプレートの表面からキューティクルも剥離させるか不明である点。
(相違点2)
「除去処理」に関し、本件発明1は、前記剥離処理後において「前記エポニキウムと前記ネイルプレートとの間にできたポケットから」前記エポニキウムに傷をつけることなく前記ルースキューティクルのみを「摘出する」のに対し、甲1発明は、ガーゼ又はキューティクルニッパーにて、キューティクルを傷つけないように、ルーズスキンを除去するものの、キューティクルとネイルプレートとの間にできたポケットから、摘出するか不明である点。
(相違点3)
「乾燥防止処理」に関し、本件発明1は、前記除去処理後であって「剥離した前記エポニキウムが前記ネイルプレートに接触する前(すなわち前記ポケットが閉じる前)において前記エポニキウムと前記ネイルプレートとの間(すなわち前記ポケットの内部)」に乾燥防止剤を塗布するのに対し、甲1発明は、ツメやその周辺をキューティクルオイルで保湿するものの、剥離したキューティクルがネイルプレートに接触する前(すなわちポケットが閉じる前)においてキューティクルとネイルプレートとの間(すなわちポケットの内部)にキューティクルオイルを塗布するか不明である点。
(2) 判断
ア 相違点1について検討するに、甲1発明は、バトネ又はメタルプッシャーで、サイドウォールの端からキューティクルラインの中心に向かって、円を描くように薄皮を押し上げるものであるが、甲1には、キューティクルの下方までメタルプッシャーを押し込むことにより、ネイルプレートの表面からキューティクルも剥離させることについて特段記載はない。甲1に、プッシュアップの際、メタルプッシャーを使うとき、ツメの表面や、皮膚を傷つけないように注意すべき旨記載されていることも踏まえると(前記1(1))、積極的に、キューティクルの下方までメタルプッシャーを押し込むことにより、ネイルプレートの表面からキューティクルも剥離させることについて示唆があるとも解されない。
また、甲2には、爪母と甘皮との間に代謝物が溜まるので、この代謝物を取り除き「ポケット」を作る点が記載されているが(前記2(1))、これは、代謝物を取り除くことで「ポケット」を作ることを意味し、図面を併せてみても、ここでいう「ポケット」は、軟質化処理後においてネイルプレートとルースキューティクルとの接触部に対してネイルプレートのフリーエッジ側からエポニキウムの下方までキューティクルプッシャを押し込むことにより、ネイルプレートの表面からエポニキウム及びルースキューティクルを剥離させた後に、エポニキウムとネイルプレートとの間にできた「ポケット」を指すものとは認められない。
そして、甲3には、爪甲11の表面に対して傾斜した方向からメタルプッシャーの先端部を当てた状態で、メタルプッシャーを爪上皮15へ向かって押し上げ、メタルプッシャーにより押し上げられたことにより捲れ上がった爪上皮角質16を、キューティクルニッパーを用いて除去する点が記載されているが(前記2(2)(【0011】、【0033】))、爪上皮15(エポニキウム)の下方までメタルプッシャーを押し込むことにより、爪甲11(ネイルプレート)の表面から爪上皮15(エポニキウム)及び爪上皮角質16(ルースキューティクル)を剥離させる点については記載、示唆はない。
さらに、甲6には、プッシャー等で甘皮を押し上げる点が記載されているが(前記2(5))、キューティクル(エポニキウム)の下方までプッシャーを押し込むことにより、ネイルプレートの表面からキューティクル(エポニキウム)及びルースキューティクルを剥離させる点については記載、示唆はない。
その他の証拠(甲4、5)をみても同様で、軟質化処理後においてネイルプレートとルースキューティクルとの接触部に対してネイルプレートのフリーエッジ側からエポニキウムの下方までキューティクルプッシャを押し込むことにより、ネイルプレートの表面からエポニキウム及びルースキューティクルを剥離させる点について記載、示唆はない。
このように、甲1発明において、キューティクルの下方までメタルプッシャーを押し込むことにより、ネイルプレートの表面からキューティクルも剥離させること、すなわち、前記相違点1に係る構成とすることについて、動機付けは特段認められない。
そうすると、相違点2、3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
4 本件発明2~5についての検討
本件発明2~5は、本件発明1を特定するための事項を全て含むものであるから、その余の事項を検討するまでもなく、本件発明2~5は、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
第5 むすび
以上のとおり、本件特許(請求項1~5に係る特許)は、特許法29条2項の規定に違反してされたものとは認められないから、特許異議申立ての理由により取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700007