商標取消審判
2023-300795
エックスブル、エクスブル
- 審判番号
- 2023-300795
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2016-016245
- 登録番号
- 5875047
- 請求日
- 2023年10月31日
- 審決日
- 2025年03月25日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヒュンダイ モーター カンパニー
- 【請求人代理人】弁理士法人R&C
- 【請求人】キア コーポレーション
- 【請求人代理人】弁理士法人R&C
- 【被請求人】シーオス 株式会社
- 【被請求人代理人】須藤 晃伸
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 良成
- 審判官 山田 啓之
- 審判官 大山 健
- 分類
- T132 .1 -Y (W09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第1号、商標法第50条第2項、商標法第2条第3項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5875047号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5875047号商標(以下「本件商標」という。)は、「Xble」の文字を標準文字で書してなり、平成28年2月16日に登録出願、第9類「電子計算機用プログラム,コンピュータ操作用プログラムを記憶させた記憶媒体,コンピュータ周辺機器,クラウドコンピューティング用のコンピュータソフトウェア,コンピュータネットワークからダウンロードされるコンピュータソフトウェア,監視用コンピュータプログラム,電気通信機械器具」及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定商品及び指定役務として、同年8月19日に設定登録されたものである。
そして、本件審判請求の登録日は、令和5年11月20日であり、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、令和2年(2020年)11月20日ないし同5年(2023年)11月19日である(以下「要証期間」という。)。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第9類「全指定商品」(以下「取消請求商品」という場合がある。)についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べるとともに、被請求人の答弁に対して、令和6年3月15日付けで審判事件弁駁書を提出し、要旨次のように述べ、また、被請求人の回答に対して、同年12月19日付けで審判事件弁駁書(第2回)を提出し、要旨次のように述べた。さらに、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、取消請求商品について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証について
乙第1号証の一部に、被請求人の所有商標の情報として本件商標が記載されているが、この記載は商標としての使用とはいえない。
(2)乙第2号証について
被請求人は、「クラウド/SaaS型WMX」(当審注:「WMX」は「WMS」の誤記と認める。以下同様。)の商品名として本件商標を被請求人のウェブサイトで使用していることの証拠として乙第2号証を提出しているが、日付の記載がない。
また、乙第2号証において、「2004年から続く信頼のWMSを、短期間・完全従量性で導入できるSaaS型で提供」及び「・・・シーオスのWMSをSaaS型にリニューアル」等の記載があることから、本件商標が、第9類の商品ではなく、第42類の役務「オンラインによるアプリケーションソフトウエアの提供(SaaS)」(当審注:以下では、「ソフトウェア」及び「ソフトウエア」についての表記揺れは、全て「ソフトウエア」に統一する。)に使用されていることがうかがえる。
(3)乙第3号証について
被請求人は、「クラウド/SaaS型WMX」の商品名として本件商標を付したリーフレットを頒布していることの証拠として乙第3号証を提出しているが、頒布日等の記載がない。なお、証拠説明書によれば、乙第3号証の作成年月日は2022年10月頃とのことであるが、それを裏付ける証拠は提出されていない。また、乙第3号証の第2頁には本件商標を付したウィンドウ画面が記載されているが、この画面が、ダウンロードした電子計算機プログラムを稼働して表示されるものなのか、何かしらのウェブサイトにアクセスして表示される画面なのか、それらを明示する記載はない。
(4)乙第4-1号証及び乙第4-2号証について
被請求人は、本件商標を含むアイコンが表示されるスマートフォンのプログラムを提供している証拠として乙第4-1号証及び乙第4-2号証を提出している。
まず、乙第4-1号証に「12月26日火曜日」との日付の記載があるが、証拠説明書において、撮影日は令和5年12月26日とされており、要証期間外である。同様に、乙第4-2号証には日付の記載がなく、証拠説明書に記載の撮影日は令和5年12月26日とされており、要証期間外である。
また、乙第4-1号証には本件商標が付されたアイコンが表示され、乙第4-2号証には本件商標が付されたログイン画面が表示されているが、これらが即座に電子計算機用プログラムに使用されている証拠とはいえない。つまり、乙第1号証等から、本件商標がいわゆる「SaaS」に使用されていることが推認されるところ、SaaSは、ユーザーがサービスをWebブラウザやプログラミングインターフェースを通してアクセスすることで利用するといった特徴を持つものであり第42類の役務に属するものである。このことを考慮すると、乙第4-1号証及び乙第4-2号証に表示されるアイコンやログイン画面は、独立して商取引の目的とされる商品としての電子計算機用プログラム(第9類)への使用ではなく、SaaSヘアクセスするためのツール、すなわち、SaaSの役務に付随するものといえる。また、乙第4-1号証及び乙第4-2号証に示される本件商標を付した電子計算機用プログラムが独立して商取引の目的とされているのであれば、通信事業者などが運営しているアプリストア等で本件商標を付した電子計算機用プログラムが販売されていることが一般的であるが、そのような証拠も提出されていない。
(5)乙第5-1号証及び乙第5-2号証について
被請求人は、本件商標を含むアイコンが表示されているハンディターミナル及びそのプログラムを提供していることの証拠として、乙第5-1号証及び乙第5-2号証を提出しているが、何れも日付の記載がなく、証拠説明書に記載の撮影日は令和5年12月18日であり、要証期間外である。
また、乙第5-1号証及び乙第5-2号証には本件商標が付されたアイコン及びログイン画面が表示されているが、これらは、独立して商取引の目的とされる電子計算機用プログラムヘの使用ではなく、SaaSの役務に付随するものである。
さらに、本件商標を付した専用品としてのハンディターミナルが、別個独立した商品として販売されているのであればともかく、単にSaaSを提供するために必要な汎用機器の本体画面上に、当該役務を提供するためのアクセスツールとして、本件商標をアイコンとして使用しているだけでは、本件商標をハンディターミナル自体に使用したとはいえない。
(6)乙第6-1号証ないし乙第6-3号証について
被請求人は、本件商標を付してハンディターミナル及びそのプログラムを顧客に提案したことの証拠として、乙第6-1号証ないし乙第6-3号証を提出している。
まず、乙第6-1号証には、要証期間である2023年7月19日の記載があるが、実際に乙第6-1号証が記載の日付で顧客に交付されたか不明である。
また、これらの証拠は、本件商標を付したハンディターミナルが独立して商取引の目的とされることを証明するものではない。
さらに、被請求人は乙第6-1号証の第1頁及び第11頁に本件商標が記載されていることをもって、本件商標のアプリケーションヘの使用である旨を主張しているが、WMSに係る業務に本件商標が使用されていることは確認できるが、その業務が取消請求商品の範ちゅうに属することは確認できない。乙第6-1号証の第11頁において、何らかのアプリケーションが稼働している画像は確認できるが、それが第42類「オンラインによるアプリケーションソフトウエアの提供(SaaS)」等の範ちゅうに属するのか、第9類「電子計算機用プログラム」等の範ちゅうに属するのかは明確ではなく、むしろ、被請求人の提出した乙第1号証等より、乙第6-1号証に係る業務は第42類の範ちゅうに入ると考えるのが自然である。加えて、乙第6-1号証の第4頁及び第6頁の記載から、「WMS(Xble)」に係るシステムは、基本的な部分は完成しているとしても、実際に使用する際には、顧客ごとにその顧客の業務状態に合ったシステムを作成及び追加して機能するものと解され、これは、その後の保守も含めて、第9類の商品を販売しているというよりは、第42類の役務「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」等の提供を行っていると解される。
(7)乙第7号証について
被請求人は、乙第6-1号証を用いてA倉庫社への提案が2023年7月19日に行われたことの証拠として、乙第7号証を提出しているが、乙第6-1号証と乙第7号証との間に何らかの連続性及び関連性を確認できる記載はないから、被請求人の主張は認められない。また、乙第7号証は契約書ではあるものの、商品の提供に係る売買契約書等に当たるものではなく、あくまで「Xbleソフトウエア」の使用についての合意書であり、これをもって本件商標が取消請求商品に使用されたことの証拠にはならない。また、「Xbleソフトウエア」がどのような内容のものかも明示されていない。
(8)乙第8号証について
被請求人は、本件商標の商品名で「WMS:倉庫システム」を2022年8月1日から販売していることの証拠として、乙第8号証を提出している。
まず、乙第8号証には、要証期間である2022年8月1日の記載があるが、この日付が何を示すのか不明である。また、乙第8号証から、本件商標が「WMS:倉庫システム」に付されて提供されていることは確認できるが、乙第8号証に係る業務は、第42類「オンラインによるアプリケーションソフトウエアの提供(SaaS)」又は「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」等の範ちゅうに属するものと考えられる。
(9)乙第9号証について
被請求人は、「Xble」の商品名で「WMS:倉庫システム」を2023年4月3日時点で販売していることの証拠として乙第9号証を提出している。
まず、乙第9号証において、「スモールスタートOK!使用した分だけ支払う完全従量性SaaS型 WMS」、「提供形態 クラウド/SaaS」、及び「(個別要件に対して、当社エンジニアによるカスタマイズ対応も可能)」との記載があることから、乙第9号証に係る業務は、第42類「オンラインによるアプリケーションソフトウエアの提供(SaaS)」又は「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」等の範ちゅうに属するものと考えられる。
3 回答に対する弁駁
(1)被請求人は、今般新たに乙第10号証及び乙第11号証を提出し、乙第1号証ないし乙第11号証をもって、要証期間に本件商標を第9類で指定した類似群コード「11B01,11C01」に係る商品について使用したと主張する。
しかしながら、以下に述べるとおり、提出された乙第1号証ないし乙第11号証は、依然としていずれも要証期間に本件商標を取消請求商品について使用されたことを証明する証拠とはなり得ない。
(2)乙第10号証について
被請求人は、既に提出された乙第6-1号証を補足するものとして乙第6-1号証から墨消しを外した乙第10号証を提出し、乙第6-1号証及び乙第10号証が、要証期間にクライアントとの取引に使用されたこと、及び「Xble」がインストールされるソフトウエア(すなわち、第9類「電子計算機用プログラム」)であり、価格表又は取引書類に「Xble」を付して頒布していることを主張している。
しかしながら、まず、乙第6-1号証及び乙第10号証に日付の記載はあるが、それらが実際に顧客に交付された日付であるかは明らかでない。
次に、乙第10号証の2葉目より、「Xble」の使用に当たりインストールが必要であることはうかがえるが、ここから直ちに「Xble」が電子計算機用プログラムに使用されているということはできない。例えば、乙第10号証の2葉目には、「単位/月額」及び「項目/I.Xbleライセンス料」との記載があり、これらより、「Xble」の使用には月額のライセンス料を支払う必要があること、つまり、「Xble」が買い切り型(永続ライセンス)のプログラム(又はソフトウエア)ではなく、月額定額制(サブスクリプションライセンス)のプログラム(又はソフトウエア)であると解される。電子計算機用プログラム(第9類)は、買い切り型の商品を指すものであると考えられるところ、ライセンス料の支払停止等でプログラム(又はソフトウエア)が使用できなくなるこのような使用契約は、電子計算機用プログラムへの使用とはいえない。むしろ、このような使用契約は、サービス提供事業者側で稼働しているプログラム(又はソフトウエア)をインターネットなどのネットワークを経由して使用する、いわゆる「SaaS」(オンラインによるアプリケーションソフトウエアの提供)に係る契約であると考えるのが自然である。なお、「Xble」の使用に当たり何らかのアプリケーションをインストールする必要があることは、乙第4号証及び乙第5号証からもうかがえるものであるが、アプリケーションそのものが独立して商取引の目的とされている証拠は提出されておらず、これらはSaaSの役務に付随するものである。そうすると、乙第10号証は、被請求人がインターネット上で提供する「Xble」の使用(商取引の目的)に月額のライセンス料が必要であること、権限を付すことでインターネット上の「Xble」というサービスヘアクセスするための端末台数を制限していること、及びインターネット上の「Xble」というサービスにアクセスするための単なる付随物であるアプリケーションを各端末にインストールする必要があることを示しているにすぎないと考えるのが自然である。つまり、当該インストール行為は、あくまでインターネット上の「Xble」というサービスを利用する際の付随的な行為であるといえる。
したがって、乙第l0号証によっては、本件商標が要証期間に取消請求商品について使用されていたとはいえない。
(3)乙第11号証について
被請求人は、既に提出された乙第7号証を補足するものとして乙第11号証を提出し、乙第6-1号証及び乙第7号証とが、同一のクライアントの間で取引されたこと、及び「Xble」がダウンロード及びインストールされる電子計算機用プログラムであることを主張している。
しかしながら、まず、乙第7号証及び乙第11号証は、契約書ではあるものの、商品の提供に係る売買契約書等に当たるものではなく、あくまで「Xbleソフトウエア」の使用についての合意書であり、これをもって本件商標が取消請求商品に使用されたことの証拠にはならない。次に、乙第11号証の2葉目以降の「Xbleソフトウエア利用約款」に、「本ソフトウエアのダウンロード、インストールおよび/もしくは利用、・・・」との文言があるが、このような約款においては、網羅性を確保するために内容を広く記載するのが一般的であり、約款のこのような記載のみを根拠に、「Xbleソフトウエア」が電子計算機用プログラムに使用されているということはできない。現に、「Xbleソフトウエア利用約款」の第1条(2)及び(5)において、「(2)「Xbleソフトウエア」とは、シーオスがクラウド上で提供するソフトウエアで倉庫内の入荷、出荷、在庫移動、補充、在庫管理、棚卸、請求等特定マスタ管理の包括的倉庫管理を可能にする機能を有します。」及び「(5)「指定機器」とは、利用者がユーザー登録を行いIDの設定が行われ、PWが付与された上でweb上で、本ソフトウエアの提供を受け使用するためのメディアを意味します。」と定義されている。そうすると、「Xbleソフトウエア」はオンライン上で提供されるソフトウエアであり、当該役務は第42類に属する役務であると解される。
したがって、乙第11号証によっては、本件商標が要証期間に取消請求商品について使用されていたとはいえない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べるとともに、令和6年8月8日付け審尋に対して、同年9月24日付けで回答書を提出し、要旨次のように述べた。さらに、証拠方法として乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁
(1)緒論
被請求人は、第9類で指定した類似群コード「11B01,11C01」に係る商品について、本件商標を要証期間に使用している。
(2)本件商標の使用の事実
ア 被請求人は、「シーオス株式会社」の商号により事業を営む法人であり、「seaos.co.jp」のドメインによりウェブサイトを運営している(乙1)。
イ 被請求人は、「クラウド/SaaS型WMX」の商品名として、本件商標を被請求人のウェブサイトで使用している(乙2)。
ウ 被請求人は、「SaaS型WMX」の商品名として本件商標「Xble」を付したリーフレットを頒布している(乙3)。リーフレット(乙3)の第2頁右下には、「Seaos WMS Xble」の文字が左上に付されたウェブブラウザ上で起動するアプリケーションのウィンドウが掲載されている。
エ 「Xble」で用いられるスマートフォンの画面の写真を乙第4-1号証及び乙第4-2号証として提出する。乙第4-1号証及び乙第4-2号証から、スマートフォンにインストールされた電気計算機用プログラムにおいて、本件商標が使用されていることを確認できる。そして、スマートフォンの画面(乙4-1、乙4-2)に「Xble」を表示する行為は、類似群コード「11C01」に係る商品についての本件商標の使用(商標法第2条第3項第1号)に該当する。
また、「Xble」で用いられるハンディターミナルの画面の写真を乙第5-1号証及び乙第5-2号証として提出する。ハンディターミナルにインストールされた電気計算機用プログラムにおいて、本件商標が使用されていることを確認することができる。ハンディターミナルの画面(乙5-1、乙5-2)に「Xble」を表示する行為は、類似群コード「11B01,11C01」に係る商品についての本件商標の使用(商標法第2条第3項第1号)に該当する。
オ 乙第6-1号証は、被請求人がA倉庫社に2023年7月19日付けで提出した「Xble」の提案書の抜粋である。提案書(乙6-1)の第1頁では、商品名として「Xble」が使用されており、第4頁では「キーエンス(BT A500)」5台が計上されており、第6頁ではハンディターミナルの機器セットアップが支援項目としてあげられており、第11頁では「Seaos WMS Xble」の文字が左上に付されたアプリケーションのウィンドウが掲載されている。提案書(乙6-1)をA倉庫社に提示する行為は、類似群コード「11B01,11C01」に係る商品についての本件商標の使用(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
また、乙第6-2号証は、株式会社キーエンスの「ハンディターミナルBT-A500」に係るウェブサイトの出力物であり、これから、提案書(乙6-1)の第4頁に記載された「キーエンス(BT A500)」が、表示部を有するハンディターミナルであることが確認できる。
さらに、乙第6-3号証から、少なくとも2023年7月20日に提案書(乙6-1)に係るパワーポイントファイルが存在していたことを確認できる。
カ 乙第7号証は、A倉庫社と2023年7月28日に締結した「Xbleソフトウエア利用に関する基本契約書」の写しであり、これから、提案書(乙6-1)を用いてA倉庫社への提案が同月19日に行われたことを推認できる。
キ 乙第8号証は、一般社団法人日本倉庫協会の「Xble」についてのウェブサイトの出力物であり、被請求人が「Xble」の商品名で「WMS:倉庫管理システム」を2022年8月1日から販売していることが確認できる。また、乙第8号証から、本件商標に係る「WMS:倉庫管理システム」が、ハンディターミナル又はスマートフォンを基本システム構成に含むことを確認できる。
ク 乙第9号証は、「ITトレンド」のウェブサイトにおける「Xble」についてのウェブページの出力物であり、被請求人が「Xble」の商品名で「WMS:倉庫管理システム」を2023年4月3日時点で販売していることを確認できる。なお、乙第9号証にも、リーフレット(乙3)の第2頁右下に掲載されたアプリケーションのウィンドウと同じ図が掲載されている。
2 審尋に対する回答
(1)審尋に対し、被請求人は、新たに乙第10号証及び第11号証を提出する。乙第10号証は、提案書(乙6-1)の墨消しの一部を外したものであり、乙第11号証は、Xbleソフトウエア利用に関する基本契約書(乙7)の墨消しの一部を外したものと、Xbleソフトウエア利用に関する基本契約書(乙7)に別紙として連綴されていた「Xbleソフトウエア利用約款」を含め提出するものである。
乙第10号証及び乙第11号証により、被請求人が、要証期間に、商品に関する価格表又は取引書類に標章を付して頒布する行為(商標法第2条第3項8号)を実施したことが確認できる。
(2)乙第10号証について
被請求人が提供するXbleソフトウエアには、汎用ソフトウエアのような公開された希望小売価格の設定はなく、個別の提案時に提供価格を設定する運用としている。そのため、被請求人は、商品の価格に関する部分を墨消しした提案書(乙6-1)を提出したが、審尋を受け、墨消しを外した提案書を乙第10号証として改めて提出する。
乙第10号証は、その1葉目に「2023年7月19日 シーオス株式会社」との記載があり、要証期間に、被請求人が作成した提案書である。そして、乙第10号証では、乙第6-1号証では墨消しされていた部分を確認することができ、後述する乙第11号証の基本契約書が2023年7月28日付けで締結されていることからすれば、乙第10号証が実際にクライアントとの取引に使用されたものであると合理的に推認できる。また、乙第10号証の2葉目から、Xbleがインストールされるソフトウエア(すなわち、第9類「電子計算機用プログラム」)であること、及びインストールされるXbleソフトウエア自体も価格が付された商品であることが確認できる。
(3)乙第11号証について
乙第11号証の1葉目には、契約者「甲」の記載があることから、提案書(乙6-1)とXbleソフトウエア利用に関する基本契約書(乙7)とが同一のクライアントの間で取引されたものであることは明らかになった。また、「Xbleソフトウエア利用約款」(乙11の2葉目)に、「利用者は、WEB上のユーザー登録を行った上で指定機器に本ソフトウエアのダウンロード、インストールおよび/もしくは利用、または本サービスの利用のいずれかを行った時点で・・・」との記載があることから、Xbleソフトウエアは、ダウンロードしてインストールされる提供形態をも含むものである。
第4 当審の判断
1 被請求人提出の乙各号証によれば、以下のとおりである。
(1)提案書(乙6-1、乙10)
ア 乙第6-1号証(全4葉)は、被請求人が作成した、A倉庫社(以下「A社」という。)宛ての提案書であり、被請求人は、同提案書(乙6-1)の1葉目及び2葉目については、墨消しされていた部分の一部について墨消しを外したものを新たに乙第10号証(全2葉)として提出したというものであるから、以下では、乙第6-1号証及び乙第10号証を総合して「提案書」という。
イ 提案書(乙6-1、乙10)の1葉目には、「WMS(Xble)導入ご提案書」の記載とともに、「A倉庫株式会社御中」、「2023年7月19日」、「シーオス株式会社」の記載がある。
ウ 提案書(乙6-1、乙10)の2葉目には、「概算御見積」のタイトル下、見積りを示す表が掲載され、「単位 月額」「項目 I.Xbleラインセンス料」について、「・Xbleインストール機器数5台でのお見積りとなります。/(インストール機器数1台あたり ○円×5台)/・インストール機器数が上記を超える場合は、別途のお見積りとなります。」との記載がある(「○」はゼロより大きい金額である。)。また、その直下に、「単位 初期」「項目 III.Xble機器費用」について、「キーエンス(BT-A500) ¥△×5台」との記載がある(「△」はゼロより大きい金額である。)。
エ 提案書(乙6-1)の3葉目には、「別紙1:導入ご支援内容について」のタイトル下、「以下内容にてWMS(Xble)導入をサポートします。」の記載があり、その下の表内に、「支援項目 機器セットアップ」の項目内に、「中項目 ハンディターミナルorスキャナー」、「詳細 HTの場合:インターネット接続確認、バーコードスキャン確認/スキャナの場合:Bluetooth接続確認、バーコードスキャン確認」の記載がある。
オ 提案書(乙6-1)の4葉目には、「【参考】Xble_トップ画面」のタイトル下、コンピュータ上のウィンドウの写しと思われる画像が添付され、このウィンドウの左上には「SEAOS WMS Xble」の表示があり、ウィンドウ上にアイコン又はタブと思われる、「入荷」、「補充・移動」、「入荷予定照会」、「格納照会」、「入荷データ/アップロード」などの表示がある。
(2)Xbleソフトウエア利用に関する基本契約書(乙7、乙11)
ア 乙第7号証(全1葉)は、2023年7月28日に締結された、被請求人とA社との間で締結されたXbleソフトウエア利用に関する基本契約書であるところ、被請求人は、同基本契約書について、新たに乙第11号証(全7葉)を提出することにより、同基本契約書(乙7)の1葉目において、墨消しされていた部分の一部について墨消しを外し、さらに同基本契約書に添付されていた「Xbleソフトウエア利用約款」を加えたものであるから、乙第7号証及び乙第11号証を総合して以下では「基本契約書」という。
イ 基本契約書(乙7、乙11)の1葉目には、「Xbleソフトウエア利用に関する基本契約書」、「A社(以下「甲」という)とシーオス株式会社(以下「乙」という)は乙が開発し、その全ての権利を有するXbleソフトウエア(以下「本ソフトウエア」という)の利用について以下の基本合意を行う。」、「1.甲はその施設において、甲の従業員に別途定められた「Xbleソフトウエア利用約款」に従って本ソフトウエアを使用することを希望する。」、「2.乙は甲に対し、甲の施設において、甲の従業員に別途定められた「Xbleソフトウエア利用約款」に従って本ソフトウエアを使用することを許諾する。」、「3.上記乙による甲に対する許諾を受けて、甲及び乙は甲の施設において、甲の従業員が別途定められた「Xbleソフトウエア利用約款」に従って本ソフトウエアを使用することに合意する。」、「2023年7月28日」などの記載があり、被請求人及びA社の代表取締役社長の署名などされている。
ウ 基本契約書(乙11)の2葉目には、「Xbleソフトウエア利用約款」、「Xbleソフトウエア(「本ソフトウエア」)をご利用になる前にこの利用約款(「本約款」)をよくお読み下さい。シーオス株式会社(「シーオス」は、個人または法人の利用者(「利用者」)が本約款の全ての条件に同意した場合に限り、利用者に本ソフトウエアのライセンス(「本ライセンス」)を付与し、サポートおよびメンテナンスサービス(「本サービス」)を提供します」、「利用者は、WEB上のユーザー登録を行った上で指定機器に本ソフトウエアのダウンロード、インストールおよび/もしくは利用、または本サービスの利用のいずれかを行った時点で、本約款のすべての条件を読み同意していること、ならびに利用者が前述のいずれかを行うと、利用者とシーオスの間に契約が成立することに同意しているものと見倣されます。本約款の全てに同意できない場合、利用者は、本ソフトウエアの利用権を取得できないため、直ちに利用を中止して、関連するすべてのソフトウエアおよびファイルを削除してください。」との記載がある。また、「第1条 定義」として、「(2)「Xbleソフトウエア」とは、シーオスがクラウド上で提供するソフトウエアで倉庫内の入荷、出荷、在庫移動、補充、在庫管理、棚卸、請求等特定マスタ管理の包括的倉庫管理を可能にする機能を有します。」及び「(5)「指定機器」とは、利用者がユーザー登録を行いIDの設定が行われ、PWが付与された上でweb上で、本ソフトウエアの提供を受け使用するためのメディアを意味します。」との記載がある。
(3)ハンディターミナルの画像(乙5-1、乙5-2、乙6-2)
乙第5-1号証は、ハンディターミナルを撮影した画像であるところ、ハンディターミナルの上部に「KEYENCE」の表示があり、ハンディターミナルの画面内には、「Xble」と表示されたアイコン(以下「Xbleのアイコン」という。)が表示されている。
乙第5-2号証は、乙第5-1号証のハンディターミナルの画面内に写っているXbleのアイコンをタップした際に、表示されるログイン画面を撮影したものであるところ、ハンディターミナルの画面内には、「SEAOS WMS/Xble」、「ユーザーコード」、「パスワード」、「ログイン」、「設定」、「○C SEAOS Inc.」(当審注:「○C」は「C」を丸囲みしたもの。)、「Ver1.3.16」の表示が確認できる。
また、乙第6-2号証は、キーエンス株式会社(以下「キーエンス社」という。)が製造及び販売するハンディターミナル BT-A500の商品情報が掲載されたウェブサイトの写しであるところ、その1葉目の左上に「KEYENCE」の表示があり、中央に、「ハンディターミナル BT-A500」の記載下、乙第5-1号証及び乙第5-2号証に写っているのと同じ外観のハンディターミナルの画像が掲載されている。
(4)上記(1)ないし(3)から、以下の事実が認められる。
ア 被請求人は、要証期間である2023年7月19日に、A社に対して、「WMS(Xble)導入ご提案書」(以下「使用商標1」という。)との題名が付された提案書(乙6-1、乙10)を用いて、キーエンス社製のハンディターミナル BT-A500を有償で5台販売すること、及びXbleソフトウエアを有償で5台にインストールすることを含む見積もりを提示して、「Xble」と称する倉庫管理システム(WMS)を導入することについての提案を行い、その後、同月28日に、被請求人とA社との間で「Xbleソフトウエア利用に関する基本契約書」と題する基本契約が締結され、被請求人がクラウド上で提供するXbleソフトウエアをA社が使用することについて合意がなされた(乙7、乙11)。
また、提案書(乙6-1)には、「SEAOS WMS Xble」(以下「使用商標2」という。)の表示を付して、「入荷」、「補充・移動」、「入荷予定照会」、「格納照会」、「入荷データ/アップロード」などタブやアイコンが表示されたXble_トップ画面の画像も添付されていた。
イ 被請求人とA社との間で上記アの基本契約が締結されたことにより、A社が有償で購入したキーエンス社製のハンディターミナルBT-A500に、有償のXbleソフトウエアがインストールされたこと(乙10)、及び当該インストールされたXbleソフトウエアにより、ハンディターミナルBT-A500の画面内にXbleのアイコンが表示され、当該アイコンをタップすることにより「SEAOS WMS/Xble」、「ユーザーコード」、「パスワード」、「○C SEAOS Inc.」などの表示があるログイン画面が表示され、ログインすることによりWMSに係る操作が可能となったことが推認できる。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)Xbleソフトウエアについて
Xbleソフトウエアは、「入荷」、「補充・移動」、「入荷予定照会」、「格納照会」、「入荷データ/アップロード」など、WMS(倉庫管理システム)に係る操作を可能にするものであるところ(乙6-1、乙11)、当該Xbleソフトウエアは、被請求人がクラウド上で提供するものとされ(乙11)、ハンディターミナルに有償でインストールされるものであるとともに(乙10)、少なくともハンディターミナルの画面内に「Xble」のアイコン及びログイン画面を表示させてWMSを使用可能とするもの(乙5-1、乙5-2)であるから、Xbleソフトウエアとは、クラウド(インターネット)を介してハンディターミナルにダウンロードされ、ハンディターミナル内でインストールされることにより、WMSを使用可能とするソフトウエアであると解される。
そうすると、Xbleソフトウエアは、顧客に対し、「入荷」、「補充・移動」などWMS(倉庫管理システム)に係る役務を提供する側面とともに、有償でクラウドを介して顧客のハンディターミナルにダウンロードされインストールされWMSを使用可能とするとの商品としての側面を有すると認めることができる。
したがって、Xbleソフトウエアは、インターネット上でダウンロードにより取り扱われるソフトウエアであると認められるから、取消請求商品中、第9類「電子計算機用プログラム」の範ちゅうに属する商品であるとみて差し支えない。
なお、請求人は、「Xble」が買い切り型(永続ライセンス)のプログラム(又はソフトウエア)ではなく、月額定額制(サブスクリプションライセンス)のプログラムであると解され、ライセンス料の支払停止等でプログラムが使用できなくなるこのような使用契約は、電子計算機用プログラムへの使用とはいえず、このような使用契約は、サービス提供事業者側で稼働しているプログラムをインターネットなどのネットワークを経由して使用する、いわゆる「SaaS」(オンラインによるアプリケーションソフトウエアの提供)に係る契約であると考えるのが自然である旨を主張している。
しかしながら、取消請求商品に含まれる第9類「電子計算機用プログラム」の範ちゅうには、インターネット上でダウンロードにより取り扱われるものが含まれ、必ずしも買い切り型(永続ライセンス)のプログラムのみが含まれるとはいえないし、Xbleソフトウエアは、有償でインターネット上でダウンロードにより取り扱われてWMSを使用可能とする商品としての側面も有するものであるから、第9類「電子計算機用プログラム」の範ちゅうに包含されないとまでいうことはできない。
また、請求人は、アイコン及びログイン画面(乙5-1、乙5-2)は、独立して商取引の目的とされる電子計算機用プログラムヘの使用ではなく、SaaSの役務に付随するものである旨も主張しているが、ハンディターミナルの画面内のXbleのアイコン及びログイン画面は、有償でXbleソフトウエアをインストールすることにより、ハンディターミナルに導入されるものであるから、独立して商取引の目的とされないとまではいうことができないし、XbleソフトウエアがWMS(倉庫管理システム)に係る役務を提供する側面と、商品としての側面を有することは上述のとおりであるから、当該主張は採用できない。
(2)使用商標について
被請求人が、Xbleソフトウエアを販売するために、A社に対して頒布した提案書(乙6-1、乙10)には、使用商標1(「WMS(Xble)導入ご提案書」)、及び使用商標2(「SEAOS WMS Xble」)の表示が付されている。
まず、使用商標1(「WMS(Xble)導入ご提案書」)について検討すると、「WMS」の用語が倉庫管理システムを意味する用語として慣用であること(乙8の1葉目「WMS:倉庫管理システム」の記載、乙9の1葉目「倉庫管理システム(WMS)」の記載等参照。)に鑑みれば、使用商標1から、需要者は「Xble」の名称の倉庫管理システムを導入することについての提案であると理解するから、自他商品識別力を発揮する要部は「Xble」である。
また、使用商標2(「SEAOS WMS Xble」)についても検討すると、「SEAOS」は被請求人の名称であること、当該使用商標2に近接して、「入荷」、「補充・移動」、「入荷予定照会」、「格納照会」、「入荷データ/アップロード」などのタブやアイコンが表示され「WMS」(倉庫管理システム)を操作する画面であると理解できることに鑑みれば、自他商品識別力を発揮する要部は「Xble」であると解される。
そうすると、使用商標1及び使用商標2の要部と本件商標とは、「Xble」の文字構成が同一であるから、使用商標1及び使用商標2は、いずれも本件商標と社会通念上同一であると認められる。
(3)使用行為、使用時期、使用者について
被請求人である商標権者が、要証期間である2023年7月19日に、A社に対して、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標1及び使用商標2を付した提案書(乙6-1、乙10)を頒布し、その後、要証期間である同月28日に、被請求人とA社との間で「Xbleソフトウエア利用に関する基本契約書」と題する基本契約が締結されたことから(乙7、乙11)、商標権者が要証期間に、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標(使用商標1及び使用商標2)を付した取引書類を用いて、顧客と、取引請求商品に含まれる「電子計算機用プログラム」に属するXbleソフトウエアについての取引を行ったこと、すなわち商標法第2条第3項第8号に規定する使用行為を行ったと認めることができる。
なお、請求人は、提案書について、日付の記載はあるが、それらが実際に顧客に交付された日付であるかは明らかでない旨主張するが、2023年7月28日に、被請求人とA社との間で「Xbleソフトウエア利用に関する基本契約書」と題する基本契約が締結されていること(乙7、乙11)に鑑みれば、提案書(乙6-1、乙10)が、提案書に付された日付(「2023年7月19日」)にA社に頒布されたことについて疑わしい点は見当たらない。
(4)小括
上記(1)ないし(3)からすれば、商標権者は、要証期間に、日本国内において本件審判の請求に係る指定商品中、第9類「電子計算機用プログラム」の範ちゅうに含まれるXbleソフトウエアを販売するために、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標1及び使用商標2を付した取引書類を頒布した(商標法第2条第3項第8号に該当。)と認めることができる。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が、その審判の請求に係る指定商品について本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-300795