2023-020771
液化天然ガスタンク用断熱材およびその施工方法並びに液化天然ガスタンク
- 審判番号
- 2023-020771
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-173796外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年12月06日
- 審決日
- 2024年11月07日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アスク・サンシンエンジニアリング株式会社
- 【請求人代理人】井上 正則
- 分類
- P18 .121-Z (F17C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本願は、令和元年9月25日に出願された特願2019-173796号であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
同年 6月21日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月28日付け :拒絶査定
(同年10月 3日送達)
同年12月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年12月6日にされた手続補正について補正却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和5年12月6日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
〔理由〕
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
「タイプCの液化天然ガスタンクのタンク鋼板の外表面に設けられる断熱材であって、前記断熱材は、樹脂発泡体からなる層と真空断熱材からなる層とを含み、前記断熱材は、前記タンク鋼板側から外側に向かって80kg/m3~30kg/m3の範囲で前記樹脂発泡体からなる層の密度が減少する密度勾配を有し、使用される前記樹脂発泡体が、すべてポリウレタンフォームであるすることを特徴とする液化天然ガスタンク用断熱材。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和5年6月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「タイプCの液化天然ガスタンクのタンク鋼板の外表面に設けられる断熱材であって、前記断熱材は、樹脂発泡体からなる層と真空断熱材からなる層とを含み、前記断熱材は、前記タンク鋼板側から外側に向かって80kg/m3~30kg/m3の範囲で前記樹脂発泡体からなる層の密度が減少する密度勾配を有することを特徴とする液化天然ガスタンク用断熱材。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「樹脂発泡体」について、「使用される前記樹脂発泡体が、すべてポリウレタンフォームである」ことの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本願補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項に適合するものか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献に記載された事項及び引用発明
ア 引用文献1
(ア)記載事項
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本願の出願日前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用した特開2010-249174号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下、同様。)。
a 「【0001】請求項に係る発明は、LNG(液化天然ガス)タンク等の低温タンクの外壁に構成される断熱構造およびその施工方法に関するものである。」
b 「【0019】図1に発明の実施形態を示す。図1(a)・(b)は、球形の舶用LNGタンクの外壁1に施工した断熱構造を示し、図2は、図1の断熱構造を採用した場合の計算結果を示している。【0020】図1(a)に示す断熱構造の構成はつぎのとおりである。低温タンクであるLNGタンクの外壁1の外側(図示上側)には、合計で数千枚に及ぶ断熱パネル2を敷き詰め、外壁1に設けたスタッドボルト(図示省略)によって当該パネル2を固定している。図の紙面と直角な方向にも、断熱パネル2は図示と同様に配置し外壁1上に固定している。断熱パネル2は、クラック防止のための金網6をはさんで内外の2層を積層一体化したもので、内層はフェノールフォームにてなるパネル3、外層は、真空断熱材4a(芯材とするグラスウールを多層ラミネートフィルムにて真空パックしたもの)の周囲を硬質ポリウレタンフォーム4bで包んだパネル4である。」
c 「【0024】低温タンクの外壁1に対するこうした断熱構造の施工は、つぎのような手順により行うことができる。すなわち、1) 事前に積層一体化された上記の断熱パネル2を、外壁1の外側に敷き詰めて固定する。固定は、タンク外壁1に事前に設けられたスタッドボルトを用い、内層パネル3を外壁1の表面に押さえ付けることにより行う。」
d 「図1(a)[図:0001418980000001.jpg]」
(イ)引用発明
上記「(ア)」からみて、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)。
(引用発明)
「球形の舶用LNGタンクの外壁に施工した断熱構造における(【0019】)、断熱構造の構成である断熱パネル2であって、LNG(液化天然ガス)タンクの外壁1に断熱パネル2を敷き詰めて固定し、固定は、内層パネル3を外壁1の表面に押さえ付けることにより行われ(【0020】、【0024】)、断熱パネル2は、内層はフェノールフォームにてなるパネル3、外層は、真空断熱材4aの周囲を硬質ポリウレタンフォーム4bで包んだパネル4である(【0020】)、断熱パネル2。」
イ 引用文献2
(ア)記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
本願の出願日前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用した韓国公開特許第10-2012-0013247号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、翻訳文(以下、「当審訳」という。)は当審合議体が作成したものである。
a 「[図:0001418980000002.jpg](当審訳:背景技術[0002] 運搬船の場合、極低温で液化した液化天然ガス(liquefied natural gas, LNG)を運搬する船舶として液化天然ガスを貯蔵および保管できる設備を備えている。このような液化天然ガス運搬船は、液化天然ガスの極低温を維持しながら運搬できる液化天然ガス貯蔵タンク(cargo containment system, CCS)の設計が核心技術である。[0003] このような液化天然ガス貯蔵タンクは、極低温を維持するために液化天然ガスが直接接触する部分に位置する一次障壁、一次障壁を支持する上部断熱板、上面に二次障壁が設けられ、上部断熱板を支持する。内側の船体に固定されている下部断熱板を含む。[0004] 上部断熱板および下部断熱板の断熱部材は、ポリウレタンフォーム、フライウッドなどからなり、貯蔵タンクの内部を極低温に保ちながら、貯蔵タンク内部の液化天然ガスが船体を損傷しないようにする。)」
b 「
[図:0001418980000003.jpg]
[図:0001418980000004.jpg]
(当審訳:[0027] 具体的には、断熱部材は、第1断熱部材24aと第2断熱部材24bとを含む上部断熱部材24、第3断熱部材42aと第4断熱部材42bとを含む下部断熱部材42を含む。
[0028] 第1断熱部材24a~第4断熱部材42bは、同じ材料、例えば補強ポリウレタンフォーム(R-PUF)からなることができる。
[0029] 強化ポリウレタンフォームは密度によって断熱性と強度が異なる。すなわち、密度が増加するほど強度が増加し、密度が低くなるほど気孔が増加し、断熱性が良くなる。
[0030] したがって、本発明の一実施形態の断熱部材は、第1断熱部材24aから第4断熱部材42bに向かうにつれてポリウレタンであるフォームの密度が減少するので、第4断熱部材42bに向かうにつれて断熱性が増加し、第1断熱部材24aに向かうにつれて強度が増加する。すなわち、密度を基準に、第1断熱部材24a>第2断熱部材24b>第3断熱部材42a>第4断熱部材料42bの順に上部から積層することができる。このとき、第1断熱部材24aは100kg/m3~150kg/m3の密度を有する。そして、第2断熱部材24b及び第3断熱部材42aは、40kg/m3~110kg/m3の密度を有し、第4断熱部材42bは30kg/m3~50kg/m3の密度を有する。
[0031] このように、本発明の一実施形態と同様に、第1断熱部材24a~第4断熱部材42bの密度を減少させながら順次積層すると、断熱部材の強度と断熱性を同時に得ることができる。
[0032] このような断熱板を用いると、液化天然ガスの貯蔵タンク断熱板として使用することができる。つまり、液化天然ガス貯蔵タンクは液化天然ガスに隣接するほど内部荷重を支えるために強度が必要で、遠くなるほど断熱板に衝撃が一部吸収されるので断熱性を必要とする。したがって、液化天然ガスに隣接した順序で第1断熱部材24a、第2断熱部材24b、第3断熱部材42a及び第4断熱部材43bを積層することにより液化天然ガス貯蔵タンクの強度と断熱性を同時に得ることができる。
[0033] 以上の実施形態では、第1~第4断熱部材を含む断熱部材について説明したが、以下では以上説明した本発明の一実施形態による断熱部材を含む液化天然ガス貯蔵タンクについて図2を参照して、具体的に説明する。
[0034] 図2本発明の一実施形態に従って形成された液化天然ガス貯蔵タンクの概略断面図である。
[0035] 図2に示すように、本発明の一実施形態による液化天然ガス貯蔵タンクは内部船体の上に設置されている。内側船体から遠い順に、一次障壁100、上部断熱板200、主二次障壁300、下部断熱板400が順番に配置され、液化天然ガス貯蔵タンクの内部を密封し保護する。この時、下部断熱板は別途固定部材(図示せず)を介して船体に固定されている。
[0036] 上部断熱板200は、下部断熱板400よりも小さい六面体形状で構成することができる。
[0037] 具体的に説明すると、一次障壁100は-163℃の極低温状態の液化天然ガスと直接接触することになるので応力変化に対応できるアルミニウム合金、インバー、9%ニッケル鋼、ステンレス鋼など低温脆性に強い材質の金属材料でできています。そして繰り返し温度変化や貯蔵液の荷重変化にも膨張・収縮容易に中央部が隆起した複数のプリーツ部8を有し、プリーツ部8は、一次バリア100全体にわたって形成されている。プリーツ部8の内側には補強部材(図示せず)を充填することができる。
[0038] 隣接する一次障壁100は、その縁に沿って溶接によって互いに接合することができる。
[0039] 上部断熱板200は、上部断熱部材保護板22と上部断熱部材24とを含む。
[0040] 上部断熱部材保護板22は、プライウッド等の木材からなることができる。
[0041] そして、上部断熱部材24は、補強されたポリウレタンフォーム等の材質で形成することができ、図1と同様に異なる密度を有する断熱部材を積層することができる。すなわち、一次障壁100に近い順に第1断熱部材24a、第2断熱部材24bを積層する。このとき、第1断熱部材24aの密度は第2断熱部材24bの密度よりも大きい。これは、液化天然ガスと隣接するほど内部荷重を支えるために高強度を必要とし、液化天然ガスと離れるほど断熱ボードに衝撃が一部吸収されるので断熱性を増加させることができることが好ましい。)
c 「図1、図2[図:0001418980000005.jpg][図:0001418980000006.jpg]」
(イ)引用文献2記載の技術的事項
上記「(ア)」からみて、引用文献2には下記の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「引用文献2に記載の技術事項」という。)
(引用文献2記載の技術的事項)
「極低温を維持するために液化天然ガスが直接接触する部分に位置する一次障壁を支持する上部断熱板を含む液化天然ガス貯蔵タンクにおいて([0003])、上部断熱板200は、ポリウレタンフォームからなり([0004])、上部断熱板200は、上部断熱部材24を含み([0039])、第1断熱部材24aと第2断熱部材24bとを含む上部断熱部材24であり([0027])、第1断熱部材24a及び第2断熱部材24bは、同じ材料、例えば強化ポリウレタンフォーム(R-PUF)からなることができ([0028])、強化ポリウレタンフォームは密度によって断熱性と強度が異なり、すなわち、密度が増加するほど強度が増加し、密度が低くなるほど気孔が増加し、断熱性が良くなり([0029])、第1断熱部材24aからポリウレタンであるフォームの密度が減少し、密度を基準に、第1断熱部材24a>第2断熱部材24bの順に上部から積層することができ([0030])、一次障壁100に近い順に第1断熱部材24a、第2断熱部材24bを積層し、第1断熱部材24aの密度は第2断熱部材24bの密度よりも大きい([0041])、上部断熱版。」
(3)対比・判断
ア 本願補正発明と引用発明との対比
a 引用発明の「LNG(液化天然ガス)タンク」は、本願補正発明の「液化天然ガスタンク」に相当する。
b 引用発明の「断熱パネル2」は、本願補正発明の「断熱材」に相当する。
そして、引用発明の「断熱パネル2」は、「LNG(液化天然ガス)タンク」の「断熱構造」として「施工」されるものであるから、本願補正発明の「液化天然ガスタンク用断熱材」に相当する。
c 引用発明の「外壁1」は、「LNG(液化天然ガス)タンク」の外壁であり、その用途から鋼板からなることは明らかであるから、本願補正発明の「タンク鋼板」に相当する。
また、引用発明は、「LNG(液化天然ガス)タンクの外壁1に断熱パネル2を敷き詰めて固定し、固定は、内層パネル3を外壁1の表面に押さえ付けることにより行われ」るものであるから、引用発明の「外壁1の表面」は、本願補正発明の「タンク鋼板の外表面」に相当する。
d 上記「a」、「b」及び「c」から、引用発明の「LNG(液化天然ガス)タンク」は、「球形」であり、「断熱パネル2」からなる「断熱構造」を「外壁に施工」することにより形成されるものであり、2次防壁がないものであるから、本願補正発明の「タイプCの液化天然ガスタンク」に相当する。
e 引用発明の「フェノールフォームにてなるパネル3」及び「硬質ポリウレンタフォーム4b」は、本願補正発明の「樹脂発泡体からなる層」に相当する。
f 引用発明の「真空断熱材4a」は、本願補正発明の「真空断熱材からなる層」に相当する。
イ 一致点・相違点
したがって、本願補正発明と引用発明とは、
<一致点>
「タイプCの液化天然ガスタンクのタンク鋼板の外表面に設けられる断熱材であって、前記断熱材は、樹脂発泡体からなる層と真空断熱材からなる層とを含む、液化天然ガスタンク用断熱材。」
である点において一致し、下記の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明では、「前記断熱材は、前記タンク鋼板側から外側に向かって80kg/m3~30kg/m3の範囲で前記樹脂発泡体からなる層の密度が減少する密度勾配を有し」ているのに対して、引用発明ではそのような構成を備えていない点。
<相違点2>
本願補正発明では、「使用される前記樹脂発泡体が、すべてポリウレタンフォームである」のに対して、引用発明では、「フェノールフォームにてなるパネル3」及び「硬質ポリウレンタフォーム4b」である点。
ウ 判断
以下、相違点1、2について互いに関連するので、あわせて検討する。
(ア)引用文献2記載の技術的事項の「液化天然ガス貯蔵タンク」、「上部断熱板」、「強化ポリウレタンフォーム」はそれぞれ、本願補正発明の「液化天然ガスタンク」、「断熱材」、「樹脂発泡体」に相当する。
また、引用文献2記載の技術的事項の「一次障壁」は、「液化天然ガス貯蔵タンク」の障壁であり、その用途から鋼板からなることは明らかであるから、本願補正発明の「タンク鋼板」に相当する。
(イ)引用文献2記載の技術的事項の「上部断熱板」は、「第1断熱部材24aと第2断熱部材24bとを含む上部断熱部材24を含」む。
また、引用文献2記載の技術的事項の「上部断熱板」は、「同じ材料」である「強化ポリウレタンフォーム」からなる「第1断熱部材24a」、「第2断熱部材24b」であり、「一次障壁100に近い順に第1断熱部材24a、第2断熱部材24bを積層し、第1断熱部材24aの密度は第2断熱部材24bの密度よりも大きい」ことから、本願補正発明の「前記断熱材は、前記タンク鋼板側から外側に向かって、「前記樹脂発泡体からなる層の密度が減少する密度勾配を有し」ていることと、タンク鋼板の外側に設けられた樹脂発泡体の層の密度が、タンク鋼板側から外側に向かって減少する密度勾配を有することで共通する。
(ウ)そして、引用発明と引用文献2記載の技術的事項とは、ともに、液化天然ガスタンクを極低温に維持するために、液化天然ガスタンクの外側に断熱構造として断熱パネルを備えると共通の機能及び作用を有するものである。
(エ)引用発明の「フェノールフォームにてなるパネル3」と「硬質ポリウレタンフォーム4b」はともに「断熱材」を構成するものであって、「フェノールフォームにてなるパネル3」も「硬質ポリウレタンフォーム4b」もともに断熱機能をなすものであることは自明である。
また、引用文献1に、「フェノールフォームにてなるパネル3」や「硬質ポリウレタンフォーム4b」もともに断熱機能以外に特段の機能等を有するとの記載も示唆もない。
そうすると、断熱材の材質を適宜のものから選択するということは、当業者の通常の創作能力の範囲で変更することの動機はあるものである。
引用文献1の段落【0003】に記載された、破損による性能低下を防ぐために設けられる断熱材において、断熱材の材質を適宜のものから選択するということは、当然考慮されうる事項であり、引用文献1においても認識されうるものである。
よって、引用発明において、LNGタンクの外壁に施工した断熱構造における断熱パネルの具体的構成として、引用文献2記載の技術的事項である、「上部断熱板200は、ポリウレタンフォームからなり、上部断熱板200は、上部断熱部材24を含み、第1断熱部材24aと第2断熱部材24bとを含む上部断熱部材24であり」、「一次障壁100に近い順に第1断熱部材24a、第2断熱部材24bを積層し、第1断熱部材24aの密度は第2断熱部材24bの密度よりも大きい」構成を採用することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、結果として、樹脂発泡体からなる層が、すべてポリウレタンフォームからなることになる。
(オ)そして、本願補正発明の「密度」について、本願の発明の詳細な説明の段落【0021】に、
「【0021】例えば図3に示す形態において、樹脂発泡体からなる層21の密度は、例えば、36kg/m3~80kg/m3であり、好ましくは50kg/m3~65g/m3である。また、樹脂発泡体からなる層23の密度は、例えば33kg/m3~67kg/m3であり、好ましくは42kg/m3~58kg/m3である。また、樹脂発泡体からなる層25の密度は、例えば30kg/m3~55kg/m3であり、好ましくは35kg/m3~50kg/m3である。なお、樹脂発泡体からなる層21と23との密度差は、例えば3kg/m3~13kg/m3であり、好ましくは5kg/m3~11kg/m3である。樹脂発泡体からなる層23と25との密度差は、例えば3kg/m3~13kg/m3であり、好ましくは5kg/m3~11kg/m3である。」
と記載されているが、この数値範囲とすることの技術的意義を特に見いだすことはできない。
また、引用文献2にも、「密度」が実施例として記載されているが、特に技術的意義は記載されておらず、一例に過ぎないので、数値を変更することを阻害するものではない。
よって、引用発明に引用文献2記載の技術的事項を適用して、「密度」を最適なものにすることは、当業者の通常の創作能力の範囲である。
(カ)よって、本願補正発明に係る相違点1、2に係る構成は、引用発明、及び、引用文献2記載に基づいて、当業者が容易になし得たことである。
(4)審判請求人の主張について
ア 審判請求人の主張の概要
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審判請求人は、
(ア)引用文献2に記載された発泡樹脂体の密度勾配範囲が異なり、引用文献1および2を組み合わせたとしても、引用文献2に開示されていない樹脂発泡体の密度が減少する密度勾配範囲を設定することは、当業者にとって相当の困難性を伴うものである旨
(イ)タイプAとタイプCの液化天然ガスタンクの構造は全く異なるものであるので、タイプAの液化天然ガスタンクに関する文献である引用文献2の開示内容を、タイプCの液化天然ガスタンクの構造にそのまま適用する動機付けは当事者には存在しない旨
それぞれについて主張している。
イ 主張の検討
上記各主張について検討する。
(ア)主張(ア)について
審判請求人が主張するように、引用文献2では、「第1断熱部材24a」と「第2断熱部材24b」を順に積層し、「第1断熱部材24a」の密度は「第2断熱部材24b」の密度よりも大きくすることに関して、段落[0030]において、「第1断熱部材24aは100kg/m3~150kg/m3の密度を有する」及び「第2断熱部材24b」「は、40kg/m3~110kg/m3の密度を有」すると記載されており、発泡樹脂体の密度勾配範囲が異なっている。
しかし、本願補正発明に記載された「樹脂発泡体の密度勾配範囲」について、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、この数値範囲とすることの技術的意義を特に見いだすことはできない。
また、設置された箇所等、断熱性の諸条件を考慮して、必要な断熱性が得られるように、断熱性を得るための構成である樹脂発泡体について、その密度勾配範囲を決定することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
よって、審判請求人の上記主張(ア)は採用できない。
(イ)主張(イ)について
審判請求人が主張するように、引用文献1と2とは、タイプが異なる液化天然ガスタンクである。
しかし、引用文献2記載の技術的事項からもわかるように、強化ポリウレタンフォームは密度によって断熱性と強度が異なる、すなわち、密度が増加するほど強度が増加し、密度が低くなるほど気孔が増加し、断熱性が良くなるものである。
そして、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項のいずれも、液化天然ガスタンクのタンク自体に積層体として設けられた断熱材であり、また、液化天然ガスタンク断熱材を設ける際、断熱性を保つ必要があることは明らかであり、加えて、断熱性が保たれるように強度が求められることは明らかである。
そうしてみると、液化天然ガスタンクのタンク自体に積層体である断熱材を設けるにあたり、液化天然ガスタンクのタイプには関わらず、それが設けられるのは液化天然ガスタンクの外層自体であるから、引用発明に対して、引用文献2記載の技術的事項を採用することは、当業者が容易になし得ることである。
よって、審判請求人の上記主張(イ)は採用できない。
(5)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用文献1、及び、引用文献2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論ととおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年6月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2〔理由〕1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、下記のとおりである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2010-249174号公報
引用文献2.韓国公開特許第10-2012-0013247号公報
3 引用文献の記載、引用発明等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び引用発明、引用文献2及び引用文献2記載の技術的事項は、それぞれ上記第2〔理由〕2(2)のとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の〔理由〕2のとおり、本件補正発明の「樹脂発泡体」について、「使用される前記樹脂発泡体が、すべてポリウレタンフォームである」ことを追加することにより限定してものである。
そうしてみると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、上記限定した事項を含む本件補正発明が、前記第2の〔理由〕2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たことができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たものである。
第4 むすび
上記のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-020771